
今、お笑い界を震撼させている1組の若手女性コンビがいる。アウトローな関西人カップルの逃避行を描いた「ナニワシンドローム」など、過剰なまでにディテールにこだわったコントを演じる日本エレキテル連合だ。彼女たちは今年の「キングオブコント」でも準決勝に進出。『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)、『ぐるぐるナインティナイン』『芸人報道』(ともに日本テレビ系)などにも出演経験があり、業界内での評価は高い。
あの独創的でどぎつい世界観のコントはどこから生まれているのか? 普段は何をしているのか? すべてが謎に包まれている2人の素顔に迫る。
――コンビを組んだきっかけは?
中野 私たちはもともと関西のお笑い養成所に通っていて、そこで知り合ったんです。初めはそれぞれがピンで活動してました。私の相方に対する第一印象は最悪で「こいつ、売れないな」って思ってました。
――どう悪かったんですか?
中野 本当に寒かったんです。面白くなくて、イタい感じだったんで。同期で女の子は私たち2人だけだったんですけど、こいつとだけは絶対やりたくないなあと。どうせすぐ結婚して辞めるんだろうなあ、って思ってました。
橋本 めっちゃ言うやん!(笑)ピンで活動していたときは、同期で女の子が2人しかいなかったので、お互い意識はしていたんです。でも、中野さんのほうがライブに出てもウケるし、お客さんの投票でどんどん上の方のライブに昇格していって。私はずっとスベってたんで、そこは差がありました。
――コンビを組もうと切り出したのはどちらからですか?
橋本 私からです。1人でやっててもらちが明かないので、「どうかコンビを組んでください、お願いします」って、土下座して。
中野 そのときに「なんでもするから」って言われたんですよ。それで「なんでもするなら組んでやるよ」って。いまだにその約束は続いてます。
橋本 いま一緒に住んでるんですけど、毎朝モーニングコーヒーを入れて起こしてあげたりとか、なんでも言うことを聞いて、中野さんの世話をしてます。
中野 パジャマののり付けまでさせてますから。
――橋本さんとしては、そこまでしてでも組みたかった、と。
橋本 はい、私は中野さんがすごく面白いと思っていたので、この人の力を借りてなんとかやっていこう、って思いまして。
中野 私はこの人の我(が)を出さないようにして、一から作り上げていきました。この人が私のキャンバスなので。コンビを組んで育てていくのが楽しかったですね。
――実際に組んでみてからはどうでしたか?
中野 本当に苦労しました。なんでも言うこと聞くって言ったのに何もできなくて。例えば、ボケとツッコミっていう役割があるのに、そんなにボケないし、かといってツッコミもできない。あと、買い物を頼んでも間違えたりとか。
――別のものを買ってきちゃうとか?
中野 それもありますし、何を買うか忘れて「んあんだっけ?」って電話かかってきたり。
橋本 そうね、買い物に行っても中野さんに5回ぐらいは電話かけたりしてましたね。今はちゃんと学習をして、メモを取るっていうことを覚えたので。
――取ってなかったんですね!
橋本 でも、私は私で、中野さんが人見知りで人付き合いが苦手っていうのはわかってるので、そこはがんばってフォローするようにしてます。この間、中野さんが先輩の長井秀和さんとしゃべっていて。人見知りすぎて何を話したらいいかわからなくて、血液型を聞いてましたから(笑)。

――コントの衣装と小道具へのこだわりが強くて、大量に持っているそうですね。
中野 はい、ネタで使ってない衣装も多いです。私たち、コントのネタは30本くらいしかないんですけど、衣装だけで300着ぐらいあります。そのために家を一軒借りました。あと、ガレージも借りたりして、そういうところにもお金がかかってます。
――一度買ったものは捨てられない、っていう感じですか?
中野 そうですね、ゴミ屋敷です。
橋本 モノが多すぎて管理ができないのがつらいですね。本当はもっといっぱいいろいろ欲しいのに、どこにしまっていいかわからない。だから、コントで「これが欲しい」って思ったら、準備のために3時間ぐらい前から探し始めないといけないんです。
中野 一応、1つの部屋に3本物干し竿をかけて、そこに衣装がバーッとかけてあるんですけど、それでも足りなくて。メガネだけで50個ぐらいあったりして、それがいろんなところに散らばってます。
――普段はどうやって衣装や小道具を探してるんですか? よく行く店とかありますか?
中野 あります。近所に行きつけの店が4つ。そのうちの1つのリサイクルショップはすごいですよ。今そこで狙ってるのが、でっかいお琴。ゴルフクラブが1本100円だったりとか、とにかく格安なんです。
橋本 あと、作業服・作業用品の専門店。あそこは楽しいですね。
中野 私たち、ルミネとか行って買い物するよりキャッキャ言ってますね。「ゴム手袋がある!」とか「どのヘルメットにしよう?」とか、そういうのが楽しいです。
橋本 「胸に差すボールペンは何色にする?」とか、いろいろアイデアが膨らんで2人でテンション上がっちゃいますね。あと、フリーマーケットとか骨董市は必ず調べて、時間があるときは遠出してでも行こうって決めていて。それと、市のリサイクルの掲示板みたいなのがあって、そこに「燕尾服譲ってください」っていうのは出してます。探してるんですよ、燕尾服。
中野 あと、十二単。
橋本 なかなかないんですよね。
――でも、そういうやり方で衣装や小道具を買ったりしていると、さすがに出費がかさみそうですね。
中野 でも、見ちゃうと欲しくなるんです。「あのときあれを買ってなかったからこのネタができない」ってなる方が怖い。
橋本 その辺は2人で意見が一致していて、お金を惜しまず買うようにしてます。最近、こんな(両腕で抱えるくらいの)でっかい鈴が欲しいって言ってて。
中野 何に使うかっていうのは決めてないんですけど、でっかい鈴は探してます。
――ご自分たちの普段着は買わないんですか?
中野 そうですね。相方は今年の夏、Tシャツ2枚だけで乗り切りました。
橋本 帰ったらすぐ洗って、干して。
中野 自分たちの服なんてもう何年も買ってないですね。興味がないわけじゃないんですけど、そのお金があるなら衣装を買いたい。
――衣装と小道具にそこまでこだわるのはなぜですか? もともと買い物好きなんですか?
中野 いや、違います。コントのためです。女子だから、変身願望があるというか、違う人になれるのが楽しくて。アクセサリーとかまでこだわっちゃうんです。別の役なのに同じ衣装を着てるっていうのがすごく嫌で、変えちゃったりとかするんです。いろいろなネタをやるけど、メガネやネクタイも一度もカブってないです。そんなとこ誰も見てないんですけど。

――お2人がコントで演じるキャラは、しゃべり方などにもクセがあって、アクが強い人が多いですね。それはどうしてですか?
中野 最初はおとなしいんですけど、キャラを入れていくうちにだんだんおかしくなるんです。初めは普通だったのに、完成したら全然違う。
橋本 だんだん盛っていって、原型をとどめてない。最近はキャラを演じながら、お互いを笑わせようっていう感じでやってるので、楽しいですね。
中野 見ている人の中には原型の方が好きだったっていう人もいますね。最近はだんだんわけわからなくなってきて、抽象絵画みたいになってるので。
橋本 「最初こんなんだったっけ?」って言われます。
――ネタはどうやって作ってるんですか?
中野 いろいろなパターンがあるんですけど、衣装を着て鏡の前に立って、さあ、何しよう、って考える場合もあります。あとは、街を歩いていて「あの人、やりたいなあ」って思いついたり。
橋本 ネタは全部中野が書いてるんですけど、「このせりふが言いたい」っていうところから作っていったネタもあります。
――例えば?
中野 「政治家の愛人やるんだったら、本妻が訪ねてきたときにお茶出すぐらいの器量ってもんを持っときなさいよ」って啖呵(たんか)が切りたい、とか。私が政治家の妻という役柄でそのせりふを言いたくて、そこからネタを作ったりしましたね。
――ネタの発想はどこから来ているんでしょうか?
橋本 ネタが始まって板付き(演者が舞台に立っている状態)で明転(舞台が明るくなること)したときに「こいつら何やるんだろう?」って思わせるようなことを考えます。
中野 一番最初の印象でウケないと最後までウケないんです。最初に明転したときに2人を見て笑いが起きたら、だいたい最後まで行ける。
――ネタを見ているときのお客さんの反応はどうですか? 笑われる以外にもあります?
中野 悲鳴があがることもありますね。あと、「何やってんだ」という感じでにらみつけてくる人もいます。そういう反応には慣れてますけど。かといって、あまりに笑われるとこっちが戸惑うんです。笑ってくれるのはありがたいんですけど、自分たちも探り探りやってるので、ああ、こういうのがウケるんだ、とか思ったり。
――最近はテレビに出る機会も増えてますね。
中野 本当にありがたいんですけど、「世も末だな」って思います(笑)。私たち、ずっと「何してるの?」って言われてきて、全然ウケなかったのに。だんだん認められて、ウケるようになってきて、ありがたいんですけど戸惑ってます。私たちにみんなが合ってきてるっていうのが今度は怖くなってきて。逃げなきゃ、って思いますね。
橋本 何が目的なの?(笑)
――今後の目標はありますか?
橋本 とにかくコントで認められたいっていうのがあるので、「コントが面白いやつといえば、日本エレキテル連合」とみんなに認識されるようになりたいです。
中野 コントでは「見た目が中身を邪魔しない」っていうのを目指してます。見た目も中身のディテールも両方成立してるのって、歌舞伎ぐらいだと思っていて。それをやっている芸人さんがほかにまだいないので、できるようになりたいです。
(取材・文=お笑い評論家・ラリー遠田/撮影=名鹿祥史)
●にほんえれきてるれんごう
橋本小雪と中野聡子からなるお笑いコンビ。2007年結成。
https://twitter.com/elekitel_denki
http://ameblo.jp/elekitel/