
『リアル脱出ゲームTV』|TBS
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「テレビの醍醐味はライブ性。リアルタイムで見なければ、面白さが損なわれてしまう」
よく語られるテレビの特性のひとつである。これは半分正しいが、半分は間違っていると思う。しかし、『リアル脱出ゲームTV』(TBS系)に関しては、100%正しい。
この番組は2013年1月1日深夜に第1弾が放送され、4月5日の第2弾を経て、ついに8月14日、ゴールデンタイムで放送された。主演のバカリズムが「謎男」を演じ、クイズを出題する視聴者参加型のドラマ・クイズ番組である。視聴者はドラマの登場人物が挑む謎解きに、テレビを見ながら同時に挑戦できる仕組みだ。答えが分かったら、番組ホームページにアクセス。答えを入力し正解した場合、ドラマの進行より先に次の問題に進めるようになっている。もちろん、ドラマの中にはヒントが散りばめられている。
これまでも、この手の視聴者参加型の番組はあった。しかし、成功した番組は数少ない。この番組は、それらとはどこかが違う。その違いこそが、テレビの可能性を広げるという難題への解答に対するヒントになっているのではないだろうか。
登場人物の警官・香山(木南晴夏)は言う。
「謎男が最初にビジョンで言った言葉、覚えてる? 『サッカーで熱くなった全国の皆さん、こんばんは』。だからこの問題は、過去のデータと照合しているようなプロフェッショナルより、さっきまでサッカー見てた私みたいなシロウトにこそ、謎を解くチャンスがあると思う」と。
たとえば今回、謎男が最初に出題した「暗号」はこうだ。
『81(2-4)598』
そして、「ここに来てくれ」というのだ。この場所を示すとされる数式について、ドラマの登場人物のセリフを通してさまざまなヒントが提示される。
「数式として考えたらあかん」「場所で数字っていうと、緯度と経度?」「住所は?」「電話番号は?」「数字をひらがなに置き換えるパターン?」「ポイントはこのカッコの中の数式だと思う。マイナスと読まずに、ハイフォンと読むとか」「一般人でも分かるような……」と。
ヒントを与えながら、同時にミスリードもしていくのが巧みだ。驚くべきことに、まだそんなヒントが出る前の、番組開始からわずか9分弱で最終問題正解者が「1人」出たことを示すテロップが表示された。だが、決して簡単な問題ではないことは、上記の「暗号」からも分かるはずだ。実際、この日の正解率は約1.97%だったという。(ちなみに第1回は1.8%、第2回は0.1%)
実はこの日、前述の香山のセリフからも分かるように、TBSでは『リアル脱出ゲームTV』放送直前にサッカーの日本代表戦が放送されていた。バカリズムからの出題VTRも、サッカースタジアムのオーロラビジョンからのものだった。ちなみに日本は、ウルグアイ相手に2-4で敗れた。
ん?
そう思い返した瞬間のカタルシス!
そう、暗号の「(2-4)」の部分は、サッカーの試合結果を意味していたのだ。だとすれば「81」は日本を示す番号、すなわち、日本の国際電話の国番号。「598」は言わずもがなだ。そこから導き出される場所は、試合が行われていた「宮城スタジアム」しかない!
ひらめきを得た瞬間の快感を誘発する、絶妙なさじ加減の難易度。リアルタイムで見ているからこそ解ける問題、という工夫に驚嘆する。しかし、サッカーはもちろん生放送。その結果は試合終了まで分からない。しかも、ドラマ中にもサッカーの映像が挟み込まれていた。一体どのようにして作られたのだろうか?
もともと、この番組はバラエティ班とドラマ班ががっぷり組んで制作されている。それに加え、今回はスポーツ班も協力という、史上まれに見る制作体制だった。しかし、それだけではない。実は番組スタッフのツイートによると、どんな試合結果になっても対応できるよう、25パターンものVTRを準備していたという。そして特別なアナウンスこそなかったが、バカリズムが進行していた部分は「生放送」だった。多くの番組は「生放送」の場合、それ自体を強調し煽る。特にそれが作り手として困難な「生ドラマ」であればなおさらだ。しかし、この番組ではそれをしなかった。なぜなら、「生放送である」という事自体が、謎解きの重大なヒントになってしまうからだ。いや、それ以上にスタッフは分かっていたのだろう。「生放送」自体が番組を面白くするのではない、と。生放送であろうがなかろうが、そのライブ感こそが大切なのである。それは別に、「生放送」「生ドラマ」などと煽らなくても視聴者に伝わるのだ。
続いての謎男から「爆弾の解除コードを示す暗号」として出題された問題も、また難題だった。
『こうこえひ/たのとえな/つはかのも/3×5→ 5×3』
多くの視聴者参加型のクイズ番組の場合、参加のハードルを下げるため、難易度は低めに設定される。視聴者があきらめてしまったらチャンネルを変えられてしまうし、参加者が少なければ盛り上がらないからだ。参加させなければ意味がなくなってしまう。しかし、この番組は正解率1%前後と、難易度はかなり高い。
「すべての人が分かる、分かりやすいもの」よりも、「面白さ」を優先させればそのように高い難易度を設定するのは当然だ。なぜなら、分からなくても挑戦していること自体が面白いのだから。
思えばこれは、テレビ番組のあり方そのものに問われるべき問題だ。ゴールデンタイムの番組の多くが、「すべての人が分かる、分かりやすいもの」になった結果、今、テレビがつまらなくなった、などと言われるようになってしまった。僕たちがかつてテレビに興奮したのは、そこに理解不能な自分たちの知らない世界が映し出されていたからだ。僕たちは「分からないもの」に釘付けになるのだ。『リアル脱出ゲームTV』の挑戦は、それを証明しようとしている。
ちなみに2問目の問題は、いくら今解こうとしても不可能である。なぜなら、テレビのとある機能を利用した問題だからだ。まさにテレビ自体を遊び道具に使ったゲームなのだ。番組の最後には一番早く解答した視聴者に生電話。革新的な番組のエンディングが、「視聴者生電話」という昔ながらの牧歌的な手法というのもある意味皮肉だ。
そこで、クルマがプレゼントされるというサプライズがあった。そんなこと、一切事前告知はなかった。別に視聴者はクルマや賞品が欲しくてクイズに参加するわけではない。面白いから参加するのだ。
視聴者をバカにせず、信頼し、向き合ったからこそできた『リアル脱出ゲームTV』。それこそがテレビの可能性を拡げるヒントであり、本当の意味で視聴者のための、視聴者参加型番組だったのだ。
(文=てれびのスキマ <
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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