AKB48大島優子の気になる卒業後 女優としてコミカルな資質を活かせるか

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AKB48『ギンガムチェック』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  AKB48の大島優子が、2013年末の紅白歌合戦にて卒業を発表し、各界で話題となっている。大島は現在、AKB48の中では最年長の25歳で、卒業はかねてより噂されていたため、ファンの間でも、今回の発表はだいぶ前から計画されていたものと見る向きが強い。  紅白の舞台で卒業を宣言したことに対しては、「私的な発表をする場ではない」などの厳しい意見もあったが、多くのファンは今回の発表を好意的に受け取るとともに、大島のAKB48卒業後の活動に関心を寄せているようだ。  大島は今後、以前より公言していた通り、本格的に女優への道を進むと思われるが、そこにはいったいどんな期待と懸念があるだろう。AKB48に詳しい放送作家のエドボル氏に話を訊いた。 「大島さんは、前田敦子さんよりも早く卒業したかったと公言していたくらいですから、今回の発表には多くのファンが納得しているのではないでしょうか。また、前田敦子さんと同じように女優を目指すというのも、ごく自然なことかと思います。ただ少し懸念があるとすれば、まだ彼女自身がしっかりとしたドラマや映画と出会っていないこと。彼女は『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(TBSテレビ)に出演していましたが、当たり役と呼べるほどではありませんでした。もしかしたら、舞台などでの経験を積めば、彼女はよりポテンシャルを発揮できるようになるかもしれませんね。卒業するからには、本腰を入れて打ち込める作品に出合ってほしいと思います」  また大島は、AKB48を先に卒業し、現在、女優としての評価を高めつつある前田敦子とは、また異なる可能性を持っているという。 「前田さんの場合はどちらかというと映画女優に向いているタイプで、彼女特有の憂いのようなものを持っていますが、大島さんの場合はもっと世間に近い存在というか、親しみやすい役柄があっているのではないかと思います。たとえばエンターテイメント系の映画やコメディタッチのドラマなどで、実力を発揮できるのではないでしょうか。また、コントやバラエティ番組などにも向いているタイプかとも思います。AKB48を卒業することによって制約が少なくなる部分もあるでしょうから、いろいろなことに挑戦してほしいですね」  いっぽう、歌手活動に関してはあまり期待ができないと、エドボル氏。 「大島さん自身、ソロで歌手を続けるといった願望はあまり抱いていないのではないでしょうか。なにかの企画などで歌を歌うことはあるかと思いますが、前田さんとは異なり、今後は女優業に専念していくと思います。よく指摘されていることですが、彼女は永作博美さんに似ているため、年齢を重ねても可愛らしい役柄ができるタイプだと思います。彼女の歌を聴けなくなるのは残念ですが、今後はそのキャラクターを活かして、息の長い活躍をしてくれることを願いたいですね」  AKB48を卒業し、いよいよ夢として抱いていた女優への道を歩みださんとしている大島。その活躍は、かつての仲間たちにとっても大いに刺激となりそうだ。 (文=編集部)

2014年のクラブ・シーンはどうなる? 『恋チュン』級ヒットを生み出すための条件

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Baauer『Harlem Shake』(Mad Decent)

【リアルサウンドより】  2014年、新たな年を迎えてクラブ・シーン、そして流行するサウンドはどのような変化を見せていくのでしょうか。EDMはひとつのジャンルとして確立し、大型クラブのような場所での盛り上がりには欠かせないものへと成長を遂げました。サウンドとしてのキャッチーさと、刺激ある高揚感を生み出す手法はポップス・フィールドでも取り入れられています。  しかし、EDMと簡単にひとくくりにしてしまうことで誤解を受けやすくなっていることも間違いありません。キャッチーさだけが際立つ、万人受けを狙ったような楽曲ばかりがクローズアップされがちですが、この道を追求するDJなら膨大な楽曲と向き合わなくてはならないし、それを極めるプロも多く存在します。単純にバカ騒ぎできるようなモンスター級のヒットは1年に何曲も誕生するわけではないので、ライト・ユーザーが多く集まるクラブでは、繰り返し同じ曲ばかりがプレイされて飽和していることは否めません。このようにシーンは変遷期に突入しています。EDMという言葉が一人歩きしたバブル期は過ぎ去ったので、もっと本格的なダンス・ミュージックとしてのEDMが求められているとも言えるのではないでしょうか? そういった意味では、今はどのジャンルも同じスタートラインに立っているのかもしれません。  2013年にバウアーの「Harlem Shake」というヒット曲が誕生しました。ベース・ミュージックや、サウス系ヒップホップの要素が入り交じったハイブリッドな楽曲で、その曲に合わせてダンスする動画をYouTubeに投稿することがムーブメントとなり、全米ビルボード・チャートで5週連続1位を獲得、年間チャートでも4位に入るほどの盛り上がりとなりました。

Baauer『Harlem Shake』(World edition)

 世界ではインターネットでバズが起こることがヒットの必須条件。レディー・ガガやブラック・アイド・ピーズが台頭したときには、プロ・アマ問わずに毎日多くのリミックスがインターネット上に投稿されました。これらを取り締まる動きよりも、バイラルな広がりによって話題を独占するプロモーションが成功したのです。  ビヨンセのライブでは観客のスマートフォンなどによる撮影が許可されています。これはどこを切り取られても完璧なショウであるという自信の裏返しと、インターネット上にアップロードされることでSNSでの広がりを狙っているからです。個人が1日に得る情報量の何%を占められるか? それに向けた仕掛け方が重要だという考えですね。簡単に著作権を放棄することが正解だとは言いませんが、グレーゾーンすら自らのプロモーションに変革させる逆転の発想が勝利を生んでいます。日本のメジャー・レコード会社でも、今以上にインターネットを駆使したアイディアを活かすことが命題でしょう。  そして、今後のキーとなるのは国内のクラブ系音楽プロデューサーたちだと思います。彼らの多くは自身らのコミュニティを持ち、SNSを駆使したインターネット上でのセルフ・プロモーションにも長けている。今後はいくつかのコミュニティを結びつけることで大きなチカラを作り出すことが重要になってきます。2~3つのジャンルが混ざり合っても、お互いのスタンスを崩さないままに表現できるのが、国内のクラブ系音楽プロデューサーたちなのです。  MISIA「つつみ込むように」はDJ WATARAIによるリミックスがクラブ・シーンで注目されたことから火が付きました。ヒップホップ・スターとアイドルを融合させたEAST END×YURI「DA.YO.NE」をヒットさせた北海道のFM局の取った手法は、今のインターネット・ラジオがやるべき手法かもしれない。TV CMで「One More Time」(ダフト・パンク)や「Party Rock Anthem」(LMFAO)のような何年も前のヒット曲を採用するのではなく、SONPUB「Dondada」が使われてたら、もっとCM自体がバズってたよ! と言いたいし。  AKB48「恋するフォーチューンクッキー」のダンス動画は、「Harlem Shake」のアイディアをうまく置き換えたものでしたね。しかもダフト・パンクやロビン・シックらに代表されるようなディスコ/ブギー・サウンドの流行を取り入れた楽曲でした。ポップス側もしっかりクラブ側のマーケティングを落としこんできている一例です。  これらがもっと融合し、お互いの世界が近づくこと。これらが重なり合うことで2014年はもっと面白くなりそうな気がします。どのジャンルでもまず1曲。“邦楽”としてのクラブ・ミュージックからお茶の間に届く“特大ヒット曲”が誕生することに期待したいですね。そのことがクラブ・シーン全体を牽引することになりますからね! ■YANATAKE レコード・ショップ『CISCO』のヒップホップ・チーフバイヤーとして渋谷宇田川町の一時代を築き、レコード・レーベル「Def Jam Japan」の立ち上げやMTV Japanに選曲家として参加するなどヒップホップ・シーンの重要な場面を担う。block.fmの人気ヒップホップ番組『INSIDE OUT』のディレクター、HIP HOP DJ、音楽ライター、USTREAMなどのオペレーターとしても活躍中。12月27日に『DEEP INSIDE OF FILE RECORDS CLASSICS -compiled by YANATAKE & SEX山口-』リリース。 Twitter facebook Blog block.fm

EXILEはどこまで拡大するのか 200万人ツアー動員を目指す2014年の動きを検証

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『EXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~』 (CD+DVD/rhythm zone)

【リアルサウンドより】  去る2013年12月30日に放送された『第55回 輝く!日本レコード大賞』(TBS)にて、『EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜』が大賞を受賞。翌日の『第64回 NHK紅白歌合戦』(NHK)で同曲を披露し、同年限りの引退を表明していたEXILE のリーダー兼パフォーマーのHIROは、有終の美を飾ることとなった。  しかし、そんなHIROの引退を悲しむ隙すら与えないのが、今月から始動する『EXILE TRIBE PERFECT YEAR 2014』 だ。  昨年4月から開催された『EXILE LIVE TOUR 2013 "EXILE PRIDE"』にて発表された内容は、現時点で下記の通り。 第1弾:三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR『BLUE IMPACT』 第2弾:EXILE ATSUSHI SOLO LIVE TOUR『Music』 第3弾:DJ MAKIDAI presents『CLUB EXILE』 第4弾:DANCE EARTH Project公演『Changes』 第5弾:『THE SURVIVAL』 10Days!!@さいたまスーパーアリーナ 第6弾:VOCAL BATTLE AUDITION Presents『VOCAL BATTLE STAGE』 第7弾:劇団EXILE公演『歌姫』 第8弾:居酒屋えぐざいる 第9弾:EXILE CUP 2014 第10弾:武者修行 第11弾:EX SHOW 2014 第12弾:LIVE TOUR『TOWER OF WISH 2014』  これがEXILE流「HIRO引退の悲しみを祭りで埋める」作業であり、ローソンが発行するフリーペーパーのスペシャル・イシューとして配布されている『EXppi』に掲載されたHIROの独占インタビューでも、「『EXILE TRIBE PERFECT YEAR 2014』は“かつてない最大のお祭り”となる」と記述されているほどだ。    上記に記されていないものも、コメントとともに列挙したい。 ◎『EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION』一般公募開始 →次世代のボーカリストを決める『VOCAL BATTLE STAGE』ではなく、HIROの空いた穴を埋めるEXILE本体のパフォーマーのオーディションの一般公募がスタートした。もしかしたら、三代目 J Soul BrothersやGENERATIONSからの抜擢もあり得るのかもしれない。 ◎ATSUSHIの新作『青い龍』がドラマ主題歌に決定 →3月にセカンド・アルバム「Music」をリリースすることも決定したATSUSHIのソロ・シングルがドラマ『医龍4〜Team Medical Dragon〜』(フジテレビ)の主題歌に決定。トレードマークのサングラスを外しただけで大きな話題をかっさらう。 ◎小ネタで攻める三代目J Soul Brothers →ベスト・アルバム&4作目となるオリジナル・アルバム『THE BEST/BLUE IMPACT』の発売プロモーションの一環として、東京メトロ丸ノ内線「新宿三丁目駅」をジャックした「三丁目 J Soul Brothers」、同じくJR大阪環状線の三両目 をジャックした「三両目 J Soul Brothers」が登場。今後もこういう小ネタに期待したい。 ◎E-girls、アリーナ・ツアーを敢行 →Dream/Happiness/Flowerの複数のガールズ・ユニットの選抜+9人のパフォーマー加えた“女性版EXILE”と言われるE-girls初のツアーが、アリーナ規模の会場で行われると報道され話題を呼んだ。『EXILE TRIBE PERFECT YEAR』を支えるのは、なにも野郎軍団ばかりではない。 ◎TAKAHIRO、俳優デビュー →EXILEのボーカリストであるTAKAHIROが1月11日スタートのドラマ『戦力外捜査官』で俳優デビューを果たし、ソロ第二弾となる『Love Story』が主題歌に決定。続々と俳優デビューを果たすEXILEのメンバーだが、その実力は「能あるTAKAは爪を隠していた」と評価されるか否か。  この他にもタイアップ企画などが続々と控えている。いま振り返ってみれば、TAKAHIROがボーカルに加入したときも、EXILE本体のメンバーが増員したときも、少なからず生まれるであろうネガティブな雰囲気は、すべてこの“お祭りテンション”で乗り越えられてきた。  また、昨年4月のツアー開始とともに発表した『EXILE TRIBE PERFECT YEAR 2014』では、EXILEをはじめ、三代目 J Soul BrothersやGENERATIONS、そしてE-girlsなどのLDH所属グループのツアーで“200万人動員”を宣言。その数が現実のものとなれば、日本のポピュラー音楽史上でも最大規模となるのは間違いない。「売上・パフォーマンス・動員数」に加え、各ツアーのステージ演出にも相当こだわっているようであり、ステージセットなどはこれまで以上にスペクタクル性の高いものとなりそうだ。  引退後、プロデューサーとしての手腕を(これまで以上に)発揮させねばならないHIROの『EXILE TRIBE PERFECT YEAR 2014』にかける情熱は、果たしてどのような結果をもたらすのか。 (文=讀賣蘭堂)

「高速化するJPOP」をどう受け止めるか 音楽ジャーナリスト3人が徹底討論

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ヒャダイン『20112012(初回限定盤)(DVD付)』(ランティス)

【リアルサウンドより】  リアルサウンドでもおなじみのライター・物語評論家のさやわか氏が、音楽ジャーナリストの宇野維正氏、柴 那典氏を招いて、2013年の音楽ジャンルを再総括するトークイベント『さやわか式☆現代文化論 第2回』のレポート後編。前編「今、ボカロやアイドルをどう語るべきか 音楽ジャーナリスト3人が2013年のシーンを振り返る」では、芸能と音楽の関係性についての考察から、ボカロシーンの是非、さらにはJPOPシーン全体の傾向の変化についてまで話が及んだ。後編では、最近の楽曲の傾向から、ボカロシーンの可能性についてまで、ざっくばらんに語った。 さやわか:前半ではシーン全体についての話が多かったんですが、今の音楽批評の問題として楽曲じたいに対する議論がなかなかうまく広がらない気がしています。そこで今日は音についても、もう少し話をしたいのですが。 柴那典(以下、柴):いろんなところで言ってきた話なんですけど、最近BPMが高速化しているというか、音数が多い楽曲が増えているという流れがあって。すべてのJ-POPが高速化しているとは思っていないんですけど、明らかに高密度な音楽が、ロックバンドとアニソンとアイドルとボカロに生まれている。沢山の言葉と沢山のフレーズと沢山のメロディが3~4分に入っている楽曲が増えた。 さやわか:同じことは僕もヒャダインさんから伺いました。彼はニコニコ動画で人気が出たタイプなんですが、「2分で人は飽きると言っていました。だからニコニコ動画で2分以内に動画の視聴者から面白がってもらうためには、BPMを超速くして、とにかく展開をごちゃごちゃ入れなきゃいけない。その話を聞いて何を思ったかっていうと、曲を聴く状況――場所とかメディアにカスタマイズされた曲が増えたというか、リスナーがいる場所に合わせて曲を作るようになっていて、それによってシーン全体で楽曲の方向性が生まれているんじゃないかって。 柴:なぜJ-POPが高速化しているか?という理由なんですけれど、まずアニソンの分野では、作り手でもあるfhánaの佐藤純一さんが面白いことを言っていて。89秒というTVサイズの尺の中に展開を詰めこむために試行錯誤した挙げ句、BPMがどんどん上がっていったという話で。つまり情報量を詰め込むためにテンポが上がっている。アイドルやボカロのシーンで、そういう高密度化現象が起こっています。今のアイドルの主流はグループアイドルで、ということは沢山の女の子がいっぺんに歌っている。そうするとどうなるかというと、声の情報量がなくなるんですね。つまり声に色気を乗せたり、声にフェイクを乗せたり、しゃくりあげたり、こぶしをきかせたりとか、そういう風に歌の上手さを見せる場所が少なくなる。ボカロにいたっては、そもそも基本的にフラットな声ですからね。圧倒的に歌の上手い人がスターになっている海外シーンとは大きく違う。そういうところに、逆に言えばDIVAの時代の退潮も感じていて。僕はやっぱり「宇多田ヒカルの不在」は大きいと思います。宇多田ヒカルさんはいろんな意味で天才だと思うけれど、まずあの人の声には圧倒的に情報量があるわけで。 さやわか:なんだか話がだんだん、最初に宇野さんが仰っていた、あんまり良くない世界に近づいているような……(笑)。 宇野:マーケティングの話してるなぁって感じはするよね。芸能とはちょっと違うんだけど。高速化するポップ、高密度化するポップ? いいんだけどさ……でも大前提として、柴君はそういうの好きなの? 柴・さやわか:(爆笑) 宇野:それが問題なのよ。一音楽愛好家として、ジャーナリストである以前の良心っていうのがあるじゃない。 柴:あのね……これが、好きなんです(笑)。自分でもどうかと思ってたんだけど、聴いてるうちにどんどん好きになっていった。 さやわか:それは鍛錬して好きになったんですか?
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KANA-BOON『DOPPEL』(KRE)

柴:鍛錬じゃないですけどね(笑)。高速化の話に関してはKANA-BOONというロックバンドとの出会いが大きかったかもしれないです。彼らはほとんどの曲がBPM170オーバーで、フェスに出たら一見さんの観客も含めて全員を踊らせてるんですよ。僕も実際その光景を見ているんですけど、それがかなり気持ちよかった。話を訊いたら、彼ら自身も「このテンポが気持ちいいんです」っていう風に言っていた。そういう感覚を踏まえて、ボカロの170オーバーを聴くと、ぜんぜん気持ちいいっていう発見をしたんです。 さやわか:つまりKANA-BOONみたいなバンドが持っている構造を捉えて、同じものをアイドルとかボカロに見出す感じですよね。たしかにKANA-BOONはジャンル的にはロック的なんだけど、ボカロやアイドルと近しい部分があって、音楽シーン全体で同じ動きがあるんだと思わせてくれる存在です。 宇野:今年インタビューした中で衝撃を受けたのはKANA-BOONで、彼らって洋楽のバックグラウンドがほとんどゼロなんですよ。それこそはっぴぃえんどや筒美京平さんから綿々と続いてきた日本のポップミュージックの基本は、洋楽的なバックグラウンドがあって、そこから日本独自のアレンジを探求していくことだったと思うんですよね。だけど、ヒャダインさんもそうだしボカロの速いやつもそうだけど、共通して洋楽的バックグラウンドが希薄なんですよね。歌詞の面でも、たとえばクリープハイプの尾崎(世界観)くんにインタビューしててね、「この歌詞ってスミスみたいだね」って言うとキョトンとされる。だけど僕は、KANA-BOONもクリープハイプも好きなんですよね。ただ、ボカロやアイドルソングの高速化、高密度化は頭も身体も全然受けつけない。 柴:多分、それは慣れの問題だと思います(笑)。 宇野:でもさ、やっぱりマーケティングで速くなっていくものと、本人が速くしたくてするものでは違うじゃない。 柴:wowakaさんとかハチさんとか、マーケティング的な発想じゃなくて速くなっている人は当然います。 さやわか:ボカロはセルフ・プロデューサー的な発想はあるけれども、マーケティングというわけではないと思いますよ。ランキングを見て「速い曲のほうが人気が出る」と思った人はいるかもしれないけど、それこそ元を正せば速さに単純な快楽を感じているからこそ速くするわけで。 柴:そうなんです。誤解して欲しくないのは、速いのが正義だとは本当に思っていないんですよ。なんで僕が高速化について話すかというと、さやわかさんが言っていた「なぜ批評するか?」と同じことで、現状を説明して「今はみんな高速化している流れがあるよ」って明確に言葉にすると、それに関してのアンチテーゼが生まれるんですよね。「俺はその流れには乗らない」「俺の快楽はここにない」って思う人が必ず出てくる。むしろその人たちのために、現状を説明しているんです。 さやわか:それはつまり、現状を説明した上でどんなアーティストがいるのかという話をしないといけないということですよね。そうすれば、宇野さんみたいにボカロ全般に「ぜんぶマーケティングで速いんでしょ?」ってシーンを捉えている人にも届くと思うんだよね。 柴:でも、ボーカロイドの話で改めて言っておかなきゃいけないと思うのは、初音ミクって、やっぱり楽器なんですよ。supercellやlivetuneみたいな作曲家に「初音ミクとはなんですか」って訊くと、全員「楽器です」って答えるんですね。で、初音ミク以外にもボカロのソフトって沢山出ているんですよね。でもいまだに中心的に使われているのは初音ミクで。これは何故かというと、もちろんキャラクター人気もあるけど、実は楽器としての性能が高いんじゃないかという。テクノの世界にはローランドのTR-808という『名機』と言われるリズムマシンがあって。それに近い『名機』感があるって、渋谷慶一郎さんが言っていたんですよね。そもそもTR-808って、ドラムの音なんて全然再現できてないんです。「チッ、チッ、チーッ」って、オモチャみたいなハイハットが鳴る。で、実はこれは、佐々木渉さんという開発者の方が言っていたこととも符合していて。実は初音ミクって、あえてオモチャっぽくしようって意識を持って作っていたそうなんです。リアルな声の再現はそもそも目指してなかった。あえてトイポップっぽい方向性にしようと思って、声優の藤田咲さんを採用しているんです。だから、初音ミクもTR-808も、音の特徴として、ハイ(高域)が強いんですよね。 さやわか:ボカロはそういう語られ方があまりないんですよね。もう初音ミクが発売されて5年以上経っているのに、なんか単にチャラチャラしている感じに思われていて「中学生とかが聴いてるんだろ」って思われちゃう。いま柴さんが言ったように、初音ミクについては「楽器です」と言っているミュージシャンがかなり多いんですけど、よく知らない人はそうではなくて「萌え」とかキャラクター文化みたいなカルチャーと安易に結びつけて語ってしまう。これ、どうしたらいいんでしょうね。 宇野:柴君の話はすごく良くわかるし、その通りだと思う。でもさ、みんなちょっと知名度が出てくると、生音使い始めるじゃない。ボーカリストも呼んだりとかして。結局、今の音楽シーンの価値観を転換すると思われた人たちが、既存の音楽に取り込まれていってしまう。
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じん(自然の敵P)『メカクシティデイズ(DVD付) 』(ソニー・ミュージックダイレクト)

柴:ただまあ、それは当然の成り行きですよね。たとえばシンセサイザーやリズムマシンが登場して、テクノが誕生して、それは大きなムーブメントになったけれど、別に生音主体の音楽シーンの価値観をひっくり返したかって言うと、そうではないわけで。そういう意味では、ボーカロイドっていうのも、僕は今はまだ一つのタグでしかないと思っています。 さやわか:まだ「その楽器を使った音楽でしかない」ってことですよね。ただ、今の宇野さんの意見に補足すると、実は最初に初音ミクを使った世代の人たちのほうが生音に行きがちなんですよね。初期にやっていた人っていうのは最初バンドで音楽をやっていたんだけど、なかなか上手く行かなくて、DTMみたいなものにいきついた果てで初音ミクを使っている場合が多い。だからやがて才能が認められて、人気が出て、自由にお金や人を使えるようになったら、自然な形でバンドスタイルに戻っていく。ところがもうちょっと下の世代になると「初音ミクこそがいい」っていう雰囲気がだんだん生まれてくる。つまりさっきのBPM高速化の話なんかもそうだけど、ニコ動や初音ミクも十把一絡げにジャンルとして捉えられるものではなく、既に世代の違いが生まれ始めているんですね。言い換えるとシーンとしてはここからなのかなって感じがします。 柴:これからの世代という意味ですごく面白かったのは、横浜アリーナの『マジカルミライ』っていう初音ミクのイベント行った時のことですね。U-18の公演だったんですけど、小学生や中学生の女子が本当に沢山いる。親子連れで来てるんです。それがライヴの初体験になっている。じん(自然の敵P)のライヴでも、本当に10代ばっかりで。 さやわか:中学生がロックで衝撃を受けるみたいなことが、ボカロシーンで起き始めているっていうことですよね。そういうエピソードがあるというのは、今後が期待できそうな感じがしますよね。 宇野:でも、そういう新しい文化ってさ、ヒップホップもパンクもそうだったけど、最初はとにかくかっこよかったじゃない。そういう吸引力がないよね。かっこいいか悪いかっていうのは、音楽にとってものすごく重要な価値基準だと思うんだよね。もうね、今日は旧世代を代表してのポジショントークみたいになってきてるけど(笑)、本音でそう思うんだよ。 柴:じんさんの音楽に関していうと、これを37歳の自分が冷静に聴くとノレない部分もあるんですけど、でも、自分の心の中にいる「かつての14歳の自分」が聴くと、すごくノレるんです。熱くなる。 さやわか:たとえば自分が14歳の時に聴いていて、マジかっこいいと思ってた音楽を、今聴いたらどう思うんですか? 柴:今でも泣きそうになることはありますね。僕の14歳の時はニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」がリアルタイムで。今聴いても盛り上がる。逆に、セックス・ピストルズが全然ダメで。パンクだって言うから攻撃的なイメージを持って聴いてみたら、全然音が薄かった。たぶんメタルで育ってきたせいだと思いますね。僕の原点は高校生の頃に友達と作ってたメタル同人誌で。『鋼鉄春秋』っていうタイトルだったんですけど……。 さやわか・宇野:(爆笑) 柴:15歳のときにニルヴァーナのレビューで「キッズたちが盛り上がっているのは何故か」とか書いてました。「キッズはお前じゃねえか!」って話ですが(笑)。 さやわか:そう考えると正直、僕もわからないところがあるし、柴さんですら速ければいいってもんじゃないって言っているけれど、もしかしたら今の「キッズたち」は、ボカロ曲を聴いて単純に「速くてマジかっこいい」と思っているかもしれないですよね。つまり大人にはわからない、ある種の断絶のある文化になっている。僕がさっき今後が期待できると言ったのはそこなんですよ。あらゆるシーンがフラット化していると言われながらも、いま「ユースカルチャー」という言葉が新しい形で復古しているのであれば、それは面白いことだし、ポジティブに捉えられることだと思っています。
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左から宇野氏、柴氏、さやわか氏。

■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter

今、ボカロやアイドルをどう語るべきか 音楽ジャーナリスト3人が2013年のシーンを振り返る

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AKB48『鈴懸(すずかけ)の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの (Type A)(多売特典付き)』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  リアルサウンドでもおなじみのライター・物語評論家のさやわか氏が12月6日、五反田の「ゲンロンカフェ」にてトークイベント『さやわか式☆現代文化論 第2回』を開催した。音楽ジャーナリストの宇野維正氏、柴 那典氏を招いて行われたこのイベントでは、「音楽ジャンル再総括!―2013年末から振り返る、90年代 J-POPからきゃりーぱみゅぱみゅ、初音ミクまで」をテーマに、音楽ジャーナリズムの一線で活躍する彼らが、2013年の音楽シーンについて濃密な意見を交わした。前編では、芸能と音楽の関係性についての考察から、ボカロシーンの是非、さらにはJPOPシーン全体の傾向の変化についてまで話が及んだ。 柴:考えてみたらみんな、リアルサウンドの「チャート一刀両断!」を書いているメンツですね。 さやわか:でも最近思うんですけど、オリコンチャートがなんらかの時代性を担保している訳ではないのに「オリコンチャートに出ることは重要」みたいな風潮だけが残っていますよね。 宇野:そうだね、オリコンとかってもはや音楽業界の人しか気にしてないんじゃないかっていう気もする。リアルサウンドではオリコンのアルバムチャートとシングルチャートを一週おきに分析しているんだけど、きっと一番興味を持って読んでるのは音楽業界の人なんじゃないかな。オリコン自体が、もはや完全に業界紙ですからね。音楽の世界で仕事している上で、チャートを分析することにまったく意義を感じていない訳ではないんですけど。ただ、チャートを軸に音楽と芸能を一緒に語ることに、僕はすごく違和感がある。 さやわか:それは、本当にそうですね。 宇野:僕自身、芸能も大好きなので、それを下に見ているわけではないんだけど、音楽と芸能ってやっぱり別物で。言ってしまえばAKB48は芸能ですから、音楽の文脈でAKB48を語ることに違和感というか……やっぱり音楽としてのクオリティが歴然と違うからさ。作り手も、そういう聴き方を想定してないだろうし。だから、自分にとっては批評の対象外なんですよね。ボカロに関しても、現象としての面白さっていう、ジャーナリスティックな関心はありつつも、一音楽愛好家として愛聴しているものはない。それは乱暴に言ってしまえば、音楽の歴史性に関わってくるんですけど。ボカロといわれるもの……もちろん中には例外的なものもありますが、その大部分のものに関して感じる”根っこのなさ”がどうしてもネックになってしまう。 さやわか:根っこのなさとは? 宇野:小説で例えると、純文学とラノベがあったとして、別に純文学の方が偉いわけじゃないけど、ボカロはラノベなんじゃないかとか。映画で例えると、映画史への参照点がない作品は、基本的に映画として成り立たないんですよね。松本人志の映画がいい例だけど。それと同じようなものを、大部分のボカロに感じずにはいられない。柴君は最近ボカロの本を準備していて、来年出版するんだよね? 柴:来年2月予定です。で、これはまさに20世紀のポピュラー音楽の歴史と初音ミクなどのボーカロイドの歴史を繋げようと思って書いた内容です。なぜこれを書こうと思ったかと言うと、宇野さんが指摘されている“根っこのなさ”って、僕は作り手ではなく批評する側の責任だと思っていて。端的に言うと、音楽ジャーナリズムがそれを無視してきたということの失敗だと思っているんです。初音ミクに歴史性がなかったのは、音楽批評側の人間がそれを繋げる作業をちゃんとやらなかったからなのではないかという。 さやわか:柴さんは、批評をする立場から、ミクと歴史を繋げなければいけないと考えている? 柴:『やらなきゃ』っていう謎の使命感に駆り立てられているんですよね。 さやわか:僕の場合も、なにか違う領域同士を繋げなきゃっていう意識はあります。それは多分、柴さんがおっしゃった『謎の使命感』と同じだと思うんだけど。たとえば僕はアイドルの仕事をよくやっているんだけど、ファン目線みたいな立場から仕事をしているわけではないんです。だけど、音楽について語る言葉に更新をかけるとしたら、ここ(アイドルシーン)をやらなくちゃだめだなって思っている。
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supercell『supercell』(Sony Music Direct)

柴:そうですよね。で、宇野さんが仰る「ラノベみたいなもんでしょ」というイメージもまったくその通りで。要はボカロが出てきたときって、主に『東方(東方project)・アイマス(アイドルマスター)・初音ミク』っていう括りで語られていたんですよね。要は、キャラクター文化と二次創作の現象として初音ミクが語られていた。でも、僕はクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤社長に何度も取材してきたんですけど、クリプトンってもともとサンプル音源を売っていた会社だし、ボーカロイドの技術を開発したのもYAMAHAなんですよね。だから、作っている側は完全に新しいシンセとして作っている。ってことは、シンセの存在がテクノを生み、ターンテーブルの存在がヒップホップを生み、エレキギターの登場がロックを生んだように、ボカロは新しい楽器が生まれたことによって作られた、新しいジャンルなんだと思います。 さやわか:それはその通りですね。ただ僕は宇野さんが言っていることが、別の側面からわかるような気がする。というのは、クリプトンはギーク的な技術屋とかハッカー文化にすごく近しいメンタリティの会社なんですよ。だから、あんまり著作権のこととかをとやかく言わないで、新しい音楽シーンを築くことにも積極的なんだけど、そのぶん従来的な、つまり商業的な音楽シーンとは距離が生まれやすいきらいはある。ここ2年くらいでそれが微妙に変わってきたようにも思いますけど、いずれにしても今シーンとして成り立っているボカロを、宇野さんの言うような従来的な音楽文化と地続きのものとして見るべきかって言ったら、そうではないということになるんじゃないかな。 宇野:あとは、単純に快楽の話なんですけどね。やっぱり音楽っていうのは快楽と密接に関わっているものだと思っているので、そこの部分でも琴線にまったく触れないんですよね。シンセの進化がボカロを生んだのも、ギターがエレクトリックになったことでロックが生まれたのも同じ構造だっていうのは理屈ではわかるんですけど、音楽の快楽性の部分でやはり違和感がある。今日はそれをぬぐい去るきっかけになればと思います。 柴:そもそも音楽ジャンルってなんだろうって思うんです。要はロック、ヒップホップ、テクノ、そういう音楽ジャンルってあります。でも日本って、JPOPとその下の○○系しかないんじゃないかと思っていて。渋谷系とか、ロキノン系とか。 さやわか:それ、さっき宇野さんが仰った「芸能」のお話とかなり近いと思います。90年代にあれだけ「豊かな」というか、ハイセンスな音楽シーンが盛況だったのは、「芸能」みたいな人たちがちゃんと音楽産業全体を潤わせていたし、音楽ファンの裾野も広げていたせいでもあると思います。「宇野さんが何と言おうと今の音楽シーンは芸能じゃなくて文化なんだ」とは言わないですけれど、今の状況が広がっていくと、最終的には裾野が広がって宇野さんの不満も自然と解消されるのではないかと思います。 柴:さきほど、音楽と芸能を一緒に語ることに違和感があると宇野さんは仰ってましたけど、僕は宇野さんと全然違って『これは芸能』『これは音楽』という区別をしていなくて。音が鳴っていて、歌が歌われているんだったら、それは全部音楽っていう風に僕は捉えています。その上で、着うたとかカラオケとかで『コミュニケーションツールとして利用される音楽』と『リスニング対象として利用される音楽』の違いは、歴然とあると思っていて。ゴールデンボンバーの『女々しくて』をみんなでカラオケで歌うと盛り上がるし、一方で一昔前だったらレコードの前に正座したり、今だったらヘッドホンで一人でMP3で聴くような、リスニング対象としての音楽もある。そういう区別をしていて。 さやわか:結局は捉え方の違いというか、音楽体験に対して、どのようなアプローチを取るかの違いなんだと思います。たとえば僕は今年AKB48を産業として捉えた本を書きました。その点では僕と宇野さんの立場って全然違うと思う。しかし僕の本も、よく読むと音楽的な側面からJPOPの歴史を俯瞰したものとしても読むことができるように書いたんです。 柴:産業的なJ-POPというものは如実にありますよね。その象徴が、いわゆる「桜ソング」だと思うんです。実は90年代時点では桜ソングはスピッツの「チェリー」しかなかった。それが、福山雅治さんの「桜坂」をきっかけにして、2000年代になって急激に桜ソングが増えた。それだけじゃなくて、春は桜ソング、夏になるとアゲアゲなお祭りソングで、冬にはバラード。そんな風にして、聴き手の生活とか季節感に過剰に寄り添う形で音楽が消費されていて。でも、その結果、すごく貧困な想像力しか稼働しなくなっていった。たとえば『会えない』とか、『会いたくて震える』とかね(笑)。 宇野:いわゆる着うたソングだよね。一時期レコード会社がばかばか作っていたフィーチャリングものとか。完全に下火になったよね、今。 柴:完全に行き詰まったと思います。で、それが行き詰まった末に何が生まれたかって言うと、アーティストの側で勝手に物語を作っちゃうという手法。
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じん(自然の敵P)『メカクシティデイズ(DVD付) 』(ソニー・ミュージックダイレクト)

さやわか:それはまさにそう。さっきのボカロ系の話と接続させて言うと、自然の敵Pとかの曲なんかは、まんまロキノン系の自意識というか、切ない若者の心情を描いた歌詞な訳ですよ。ただし、そこで苦悩している人物っていうのは、歌い手ではなくて、現実とは全然関係ない物語の登場人物、アニメキャラみたいなやつの話になっているわけです。そうやって、ボカロのシーンは過去の音楽シーンと切断されながらも、しかし連続していると言うことができる。そして、今の柴さんのお話は、今日のリスナーは聞き手の生活に寄り添うよりもそういうものを求めているということですね。感情移入の対象も態度も変化している。アイドルも同じですよね。ももクロなんかもよく売れているんですけど、ももクロが聞き手の生活に寄り添うかって言ったら、まったくそうじゃないですよね。 柴:『5TH DIMENTION』は「5次元」だし、『GOUNN』は仏教ですからね(笑)。AKB48も、基本的にはAKB48の物語の中で消費されている。 宇野:今、春になったら卒業ソング歌って、夏になったら夏の歌を歌っているのって、AKB48くらいですよね。それがまだ許されているっていうか。逆に言うと、あれくらいCDを売るためのシステムを総動員できないと、それが成り立たない。 さやわか:桜ソングみたいなことやるのって、さっきの話でいうと芸能的なことなんじゃないでしょうか。むしろその力の締め付けが弱まって、ある意味アーティストの自由意志みたいなもので音楽を作れるようになってきたように思います。 宇野:だからね、ああいうものが無くなったのって、すごく気分のいいことなんですよ(笑)。桜ソングは芸能っていうか、マーケティングですよね。もちろん未だに残っています。でも、実はここ数年、そういうものが減ったことで、音楽業界はすごく風通しが良くなっている。売れ行きうんぬんは別にしてね。音楽に関わっている人の表情も含めて、全体的な空気がちょっと澄んできたと感じたのが2013年。 柴:生活に寄り添うっていうのは、マーケティングで音楽を作らなければならないということですからね。「今の子達ってどんな気持ちなんだろう」「今の子達ってどんな不安や喜びを抱えてるんだろう」ってことを、マーケティング的に考えなきゃいけない。でも最近の「自分たちで物語を作ってしまえばいい」って風潮は、言ってしまえば、「自分たちが面白いと思うことをやればいい」ってことなんですよね。 後編に続く
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左から宇野氏、柴氏、さやわか氏。

■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

さようなら大瀧詠一さん 日本のポップ史を変えた偉大な功績を振り返る

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大瀧詠一『A LONG VACATION 30th Edition』(SMR)

【リアルサウンドより】  大瀧詠一が12月30日、解離性動脈りゅうのため急逝し、各界に衝撃が走っている。MSN産経ニュースなどが報じ、その後NHKニュースなどで死因が判明した。はっぴぃえんどの元メンバー・細野晴臣や、大瀧に才能を見出された佐野元春、サンボマスターの山口隆などが追悼の意を告げている。  大瀧詠一は1970年、はっぴぃえんどのボーカル・ギターとしてデビュー。1971年にはソロ活動も開始し、1972年にアルバム『大瀧詠一』を発表している。1973年には自身のレーベル「ナイアガラ」を立ち上げ、山下達郎や大貫妙子が所属していたバンド、シュガー・ベイブのプロデュースなども行った。  1981年にははっぴぃえんど時代の盟友、松本隆と組んだソロアルバム『A LONG VACATION』がミリオンセラーを記録し、大きな商業的な成功を収めた。音楽ジャーナリストの宇野維正氏は、当時の大瀧詠一の印象について、次のように語る。 「大瀧さんはリスナーの世代によって捉え方が異なってくるミュージシャンだと思います。きっと30代以下の世代にとっては伝説のミュージシャンというイメージだと思いますが、自分のような40代前半の世代はギリギリ、『A LONG VACATION』と『EACH TIME』の両名作をリアルタイムで聴くことができた最後の幸福な世代です。『A LONG VACATION』リリース当時、自分は小学生でしたが、ちょっとませた小学生の自分にも届くくらい、このアルバムは一大ムーブメントを築いた作品でした。永井博によるジャケットのアートワークは、まさに80年代前半のお洒落なカルチャーを象徴するものでしたね。あれだけの商業的な成功と、音楽としてのクオリティと、今で言うところのチャラいお兄ちゃんやお姉ちゃんも聴いているような風俗性をすべて合わせ持っていた作品は、ちょっと他には思い浮かびません。大瀧さんはその3 年後にリリースした『EACH TIME』以降、結局30年オリジナルアルバムを出さなかったことになりますが、それにもかかわらず、いまだに日本のポップミュージック界において後輩の山下達郎と双璧を成す存在として位置づけられていることからも、その偉大さがわかるのではないでしょうか」  大瀧詠一が日本の音楽界に残した功績は、今も息づいているという。 「大瀧さんは、たとえば今年の紅白に出演していた森進一、松田聖子、小泉今日子、薬師丸ひろ子にもとびきりの楽曲を提供しています。寡作な方だったので作品の数は多くありませんが、そのどれもが日本のポップミュージック史に残る名曲です。また、ファースト・アルバムの『大瀧詠一』は、はっぴぃえんどの傑作群と同格か、場合によってはそれ以上の影響を、後のロックバンドに与えた作品と言っていいと思います。自分は先に述べたように『A LONG VACATION』で大瀧さんの音楽と出会って、彼がナイアガラ・サウンドを確立して以降のイメージを強く持っていたので、その数年後に後追いで『大瀧詠一』を初めて聴いた時は、その音楽性の幅広さとある種のクールさに驚いたものです。その作品で大瀧さんは、フォーク、ロックからソウルミュージックまで、ありとあらゆるアメリカの音楽を消化して完全に自分だけの表現にしていました。渋谷系と呼ばれたミュージシャンたち、そして、その後のサニーデイ・サービス(曽我部恵一)、くるり、踊ってばかりの国、森は生きているといった現在活躍しているミュージシャンも、大瀧さんからの影響を強く受けていると思います」  また、ミュージシャンとしてのスタンスにも、独特のものがあったと宇野氏。 「大瀧さんはほとんど公の場に出てこないことでも知られていました。近年では、年に一度、新春のラジオ番組『山下達郎のサンデーソングブック』の新春放談という企画に出演するくらいで、それ以外はメディアに露出することがほとんどありませんでした。音楽の匿名性を何よりも大事にしていたにもかかわらず、その音楽自体は誰よりも記名性が高かったというのは、大瀧詠一という不世出のミュージシャンの大いなる矛盾であり、最もユニークなところだと思います。ただ、大瀧さんは隠遁してはいたものの、決して世捨て人のような生活を送っていたわけではなかったようです。真偽はわかりませんが、数年前に聞いた自分の好きなエピソードは、彼は一般紙からスポーツ紙までほぼすべての新聞をとっていて、今でも毎朝自宅で起きると、まずそのすべてに目を通してから一日の生活を始めるという話です。そのエピソードにも象徴されているように、あらゆる事象に対する探究心が異常に強く、それが大衆音楽の探求というかたちで最大限に発揮されていたのが、彼の音楽だったのではないかと思います。異常な量のインプットと、異常に研ぎ澄まされた数少ないアウトプット。1人のファンとして、もうちょっと多くの作品を残していてくれていたらと思わないわけではないですが、その才能の在り方と作品の少なさは分ちがたく結びついていたのだと思います。発表から何十年も経った今でも、決して歴史に回収されず、聴く度に新たな発見があるのが大瀧さんの音楽の特別なところだと思います」  日本におけるポップスの在り方を決定づけたミュージシャンとして、今なお音楽シーンに影響を与え続ける大滝詠一。彼が残したきら星のような名曲たちは、これからも色褪せることなく、人々に愛聴され続けるだろう。 (文=編集部)

紅白の“真の優勝者”は綾瀬はるかだった!? どこよりも早い全曲レビュー

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綾瀬はるかの噛みまくり司会も話題を呼んだ『第64回NHK紅白歌合戦』

【リアルサウンドより】 新年あけましておめでとうございます。 突然ですが「第64回NHK紅白歌合戦」、全曲目の感想をなぜか急いで書きます。 ご覧になっていた方も、録画してこれから観るという方も「どこよりも早い全曲レビュー!」ってことなので、どうぞ慌てて読んでください。 1. 浜崎あゆみ 「INSPIRE」 歌詞がひどく平凡で「ブログに書いておけばいいんじゃないのかな」と思うレベルですが、かつて中傷の対象だった歌唱力が如実に復調しているように思えました。一時代を築いた大スターに対する感想とは思えませんが率直に「歌がうまいな」と思いました。歌い終わったあとの「ありがとうございましたっ」という挨拶が体育会系で清々しかったです。 2. Sexy Zone 「Sexy平和Zone組曲」 一曲一曲を知らないのにブツ切りにメドレーにされているから正直よくわからないのですが、キャッチーで、あとルックスがめちゃくちゃ可愛い男の子たちだということはわかりました。紅白って、今はなきフジテレビの『新春かくし芸大会』の要素も盛り込まれてきているのかもしれないですね。 3. NMB48 「カモネギックス」 司会の綾瀬はるかの様子がおかしい。どうにもテンポがズレていて、でも、そこが良いです。この曲はちょっと古臭くて荻野目洋子でも出てきそうなユーロビート洋楽カバーみたいなテイストですが、こういうのEDMっていっちゃうんですかね。おもしろいけど起伏に乏しく、いつの間にか終わっちゃう感じ。そもそも紅白っていつからフルコーラスじゃなくなったんでしょうか。1.5コーラスって感じですよね? 日本の放送界でもっとも注目される音楽番組でこれは由々しき問題で、改善の余地があるのでは、と思います。 4. 細川たかし 「浪花節だよ人生は 2013」 NMBを従えた細川さんの定番曲。相変わらず目が笑っていなくて、私この人、昔っからすごく怖いんです。2013と副題の付いたリミックス・バージョンはカラオケ業者さんなら20分で納品しそうな超テキトーなトラックで、めちゃくちゃ軽い印象でした。 5. 徳永英明 「夢を信じて」 可愛くて不思議な声の徳永さん。何とも落ち着きます。なぜこんなに落ち着くのでしょう。理由がわかりました。バックダンサーがいないからです。全組こういうシンプルなステージが良いなあ。 6. 香西かおり 「酒のやど」 演歌もフルコーラスじゃないんですね……。もはやテレビ番組にフルコーラスという概念はないのでしょうか。この曲の詩情は美しいですが「さすらいの酒をのむ」「こぼれ灯の酒の宿」って、とにかく酒飲みすぎでしょう。 7. 郷ひろみ 「Bang Bang」 これもかくし芸大会なんですよねえ。郷ひろみなんだから歌だけ見せてほしいです。しかし、この曲、初めて聴きましたけど、すごくバカバカしい曲で笑ってしまいました。なんの主張も叙情もありません。「Bang Bang」って言いたいだけ。いやー笑った。 8. E-girls 「E-girls 紅白スペシャルメドレー2013」 なんだか六本木ロアビルのネットカフェで時間つぶししてる感じのお姉さんがたくさん出てきました。楽しそうな歌を元気に踊っていました。紅組司会の綾瀬はるかがまだ緊張しているようでおもしろいです。 9. 三代目 J Soul Brothers 「冬物語」 非常に凡庸な詩の世界に、いかにもそれらしい旋律と、紋切型の発声法。すべてが使い回しで新しい要素が一切ありません。私はこういう音楽に価値を感じません。 10. 伍代夏子 「金木犀」 AKBのみなさんがバック・ダンサーで、また賑やかなことでございます。歌はよく聞いていなかったのですが、なんだかやけに「待つ女」を強調されていたようです。 11. AAA 「恋音と雨空」 「あまちゃん」に関する寒々しい茶番が非常に長くて疲れました。AAAは西島隆弘くんが可愛くてたまらないです。ちゃんと構成された曲で、男女パートの歌、ラップのブリッジも展開が小気味よく、好きになりました。しかし、この曲が好きで、三代目 J Soul Brothersには価値を感じない私。その違いはいったい何なんでしょうね。今年ゆっくり考えます。 12. 福田こうへい 「南部蝉しぐれ」 民謡歌手ご出身で、さすがの歌唱力。歌に向き合う姿勢の強さ、声量の豊かさ。素晴らしい歌手だと思うのですが、「いかにも」な演歌で、もう完全に形骸化した、演歌のミイラみたいな曲で、その素質がすごーくもったいない気がしました。 13. 藤あや子 「紅い糸」 ここで壇蜜登場! 秋田美人共演! 歌詞も「あ〜 あ〜 あ〜」と性的な連想をさせるところがあり、一気に官能的な世界へ。壇蜜、お尻半分ぐらい出すかと思いましたが、ひとしきり舞っておとなしく帰っていきましたね、残念。 14. サカナクション「ミュージック」 クラフトワーク・スタイルの全員ラップトップ並びからバンド編成への早変わり。ライブに定評ありフェスでも大盛り上がりのサカナクションですが、紅白の短い持ち時間では魅力が伝わらなかったですね。まるで気合いが空回りしてしまったように見えてしまって、ファンとしては少し残念な気がしました。 15. miwa「ヒカリへ」 ぜんぜん知らない人です。サカナクションがいまいちだったなあ、と思ったのは、こんなぜんぜん知らない女の子のぜんぜん知らない曲のほうがサカナクションよりも盛り上がってる気がしたからです。期せずしてサカナクションの浮きっぷりを際立たせてしまったような……。miwaちゃんにはなんの罪もありませんが。 16. ポルノグラフィティ 「青春花道」 このサイト(リアルサウンド)の編集長から「山口さん、紅白実況、どうしますか。時間との勝負です」とメールが来ました。「え? 実況ですか? わたし全曲感想書く、とは言いましたけど、実況だとは思ってなくて、今もメモ書きながらのんびり観てます」と返信。メールのやりとりをしていたのでポルノグラフィティを観ていませんでした。 17. 天童よしみ 「ふるさと銀河」 ふなっしーの放送コードギリギリレベルで狂っている感じと、綾瀬はるかのまったく雰囲気を読まない声の張り具合で紅白史上稀に見るカオス。やはりこの原稿は「実況」ではなく「全曲の感想を書き終わった時点で元日にアップする」とのこと。よかった。メールの返信を読んでいたので、残念ながら天童よしみのステージを観ていませんでした。 18. Linked Horizon「紅蓮の弓矢 [紅白スペシャルver.]」 世相にまったく疎い私は「進撃の巨人」とやらもぜんぜん存じ上げないのですが、一世を風靡している作品の主題歌にしては、声が細くて、近藤真彦さんがサングラスしているのかと思いました。「なぜこの作風で水木一郎ではダメなのか?」と思ってしまいます。 19. 水樹奈々×T.M.Revolution 「-革命2013- 紅白スペシャルコラボレーション」 熱い。熱さもここまでくると気持ちいいですね。この暑苦しさ、プロフェッショナルです。 20. SKE48 「賛成カワイイ」 キムタクのフリートークの安定感と、まったく安定しない綾瀬はるかの司会っぷりに軽く感動しながらSKE。SKEの2013年は大量卒業で始まった苦難の年でしたが、こうして紅白に出れて良かったですね。小木曽ちゃん、秦さん、どうしているかしら。この曲は某カレーチェーン店でよく聴きました。トマトアスパラを1辛で。 21. 森進一 「襟裳岬」 「襟裳の春はなにもない春です」と言っているのに、これだけ歌い続けられているのは素晴らしいことです。なにもないがゆえに聴き継がれているのでしょう。 22. 坂本冬美 「男の火祭り」 一方、冬美さんは、かなり唐突にあっぱれあっぱれと歌いだし、大地の恵みに千年萬年などと、頭がおかしくなったかのようです。「襟裳岬にはなにもない」と歌ってた森さんとはすごい温度差です。 23. コブクロ 「今、咲き誇る花たちよ」 オリンピック関係の曲みたいです。最初の四小節にありったけのポジティブな言葉を詰め込んでいます。こんな説明的で直接的な歌詞で自分を鼓舞できるリスナーの文学的素養の低さを憂うばかりです。軽率で空虚な言葉の羅列が聴く者の想像力を拒否しています。背の高いほうの人のルックスや歌い方に玉置浩二の要素が入ってきています。 24. EXILE「EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜」 なんだか最近の男の子がチンピラみたいな格好をしてるなあと思ったらこの人たちの影響なのですね。きっと心根はいい子たちばかりなのでしょうけど、わたしはちょっとタイプじゃないです。「手繰り寄せたその絆がROCK PRIDE」と繰り返し歌われるのですが、タイトルは「EXILE PRIDE」ですよね。手繰り寄せた絆ってほんとは「EXILE PRIDE」なんじゃないですか? 「ROCK PRIDE」でいいの? どっちでもいいの? はっきりしたほうがいいと思います。 25. ももいろクローバーZ「ももいろ紅白2013だZ!!」 昨年は早見あかりに向けた隠されたパフォーマンスでファンを感涙させたももクロちゃん。個人的なことですが、今、紅白でももクロ観て気づいたんですが、わたし2013年一秒もももクロの曲を聴いてなかったです。これはいけないですね、有線放送が全チャンネル聴けるアプリが出たらしいので今年はそれで新譜を聴くようにします。 26. ゴールデンボンバー「女々しくて」 仕込まれた体操選手がメンバーに扮して鉄棒をグルグル回るというおもしろいネタだったようです。誰しも感じたことだと思いますが、体操選手の割に着地が普通だったのではないでしょうか。微妙なオチだろうがなんだろうが、綾瀬はるかは容赦なく「はい、ありがとうございました!」と切り上げます。もう今年の紅白は綾瀬はるかの優勝でよいと思います。 27. aiko「Loveletter」 素晴らしい歌詞と力強いaikoのステップ。「ラブレターをもらった」っていうだけのシチュエーションなんですよ。それなのに、なぜ、こんなに物語を感じさせるのでしょうか。イマジネーションを刺激する素敵なレトリック。それを瑞々しく再現するaikoの歌。すごい。愛しい。眩しい。初めて聴いたのですが、泣いてしまいました。 28. 氷川きよし 「満天の瞳」 可愛いきよしくん。でも曲は抽象的で何を言いたいのかよくわからないです。 29. 西野カナ「さよなら」 可愛いカナちゃん。歌詞は失恋した女の子のブログ・レベル。きよしくんの「満天の瞳」と歌詞を入れ替えても成立しそうな気がします。 30. TOKIO 「AMBITIOUS JAPAN!」 20回目の出場ですって。若々しいですね。曲については記憶に残っていません。 31. 和田アキ子 「今でもあなた」 「愛の鼓動は死ぬまで続く」ですって。鼓動はたいてい死ぬまで続きます。歌詞についてグダグダ文句を書いてきましたが、これ、決定版でしょ。なんじゃこの歌詞。「命とは道筋」って何? もうほんとに心に響かない適当な言葉の羅列を歌詞と呼ぶのやめましょうよ。そろそろ阿久悠先生が化けて出てきますよ! 80〜90年代に面白い歌詞を書いていた先生たちはどこへ行ってしまったんでしょうか。この曲の作詞は秋元康さんだそうです。 32. DREAMS COME TRUE 「さぁ鐘を鳴らせ」 陸前高田からの素晴らしいライブ中継でした。歌詞に込められたのは、絶望を受け入れたうえで鳴らされる、それぞれの鐘の温かさ。振り上げた腕から、声から、伝わってくる歌の力を実感しました。このシチュエーションで、この町で歌われる、吉田美和のパワーに感涙しました。マイケル・ジャクソンみたいな無駄なシャウトがなければ完璧でした。 33. 関ジャニ∞ 「紅白2度目!  呼ばれて飛び出てじぇじぇじぇじぇ!!」 とても鑑賞する気になれない軽薄なタイトルなのでトイレに行っていました。逆にこのタイトルに惹かれる人の意見が聞きたいわ。 34. きゃりーぱみゅぱみゅ「紅白2013きゃりーぱみゅぱみゅメドレー」 リアルサウンドで宇野維正さんが書いてた「もったいないとらんど」の解説が秀逸だったなあ、と思い出しました。この曲はほんと圧巻です。でも、前半の「にんじゃりばんばん」はいらない気がしました。なぜわざわざメドレーにするのでしょうか。 35. 五木ひろし 「博多ア・ラ・モード」 粘っこい声だなあ。こんなに粘る必要があるのだろうか。もはやオートチューンの域。「ITSUKI」っていうモードのボコーダーとかありそう。舞台が博多である必要性をまったく感じない。そもそも「ア・ラ・モード」ってどういう意味だっけ。”フランス語で「流行」「洗練されたもの」の意。英語では「アイスクリームを添えた」という意味”とのこと。ますます意味わからん。 36. Perfume「Magic of Love」 世界を震撼させた、例の白い衣装にCGを投影するパフォーマンスを軽く再現した感じでしょうか。Perfumeこそメドレーにして数曲ノンストップ・ミックスで聴きたいと思いました。 37. ゆず 「雨のち晴レルヤ」 工夫のない歌詞と作編曲で、まったく感心しませんでした。 38. 水森かおり 「伊勢めぐり」 小林幸子の巨大衣装枠を引き継いだようです。NHKの予算は欧州の宇宙開発関連の予算よりも高いと聞いたことがあります。水森かおりを1mでも高く持ち上げるためなら国民は全員受信料を払うべきでしょう。ウソです。受信料を払う気を削ぐような悪趣味なステージに伊勢神宮は抗議すべきでしょう。 39. 石川さゆり 「津軽海峡・冬景色」 石川さゆりさんって何才でしょう。首筋や喉あたりを見ると老けた感じもしますが、声や表情だけを見ているとぜんぜん可愛いです。検索しました、55才。素晴らしい美貌に感動です。島倉千代子さんが亡くなり、松原のぶえさんも闘病されている番組を見ました。さゆりさんはお元気そうで良かったです。 40. 美輪明宏 「ふるさとの空の下に」 去年「ヨイトマケの唄」で話題を攫った美輪さん。今年の歌はなんだか救いようのない感じで、しかも説明的で長い。「やっぱりヨイトマケの唄はすごい」と再認識させてくれた。細川たかしなんか毎年「浪花節だよ人生は」なのですから美輪さんも毎年「ヨイトマケの唄」でお願いします。 41. AKB48「紅白2013SP〜AKB48フェスティバル!〜」 胃もたれするような音楽が続く中で歌われた「恋するフォーチュンクッキー」の爽快さはやはり出色です。どれほどの数のメンバーが踊っても入山杏奈の美しさは際立っていますね。大島優子の卒業宣言がサプライズだったようですが、私の心は1mmも揺れませんでした。数日前の私立恵比寿中学から三人が転校するニュースのほうが何倍も衝撃的でした。 42. 福山雅治 「2013スペシャルメドレー」 台湾からの中継だそうです。稀代の美男子ではありますが、正直なにを伝えたいのかよくわからない曲を恩着せがましいトーンで歌うので、時間の無駄だなあと思いました。 43. 泉谷しげる 「春夏秋冬2014」 この曲、ずっと何が言いたいのかよくわからなかったんですが、泉谷さんの説教じみた言葉でなんとなく意味がわかりました。「明日から頑張ろうぜ」ってことですね。オルタナっぽいアレンジもかっこよくて、素晴らしいステージだったと思います。 44. いきものがかり「笑顔」 構成が単純な曲で、なんと評していいかわかりません。ボーカルの女の子の顔が会社の後輩にそっくりだなあという感想とともに「ポップスってこんな感じでいいんでしたっけ」という根源的な疑問が湧き上がります。 45. 「New Year's Eve Medley 2013」 嵐もEDM寄りの楽曲でコレオグラフィが凝っているのですね。いかにもアイドルって感じで好感が持てます。わたし、EXILEとかより嵐が好きです。 46. 松田聖子&クリス・ハート 「New Year's Eve Special Love Song Medley 2013」 聖子ちゃん肌ツヤッツヤ! クリス・ハート日本語ペラッペラ! まったく場のトーンを無視して切り込んでくる綾瀬はるかの曲紹介。いろいろ面白いシーンでした。聖子ちゃんはメドレーが嬉しいですね。この人は人間国宝に認定されるべきだと思うのです。 47. 高橋真梨子 「for you...」 紅組のトリは有名な旋律のバラードです。「あなたが欲しい、あなたが欲しい」と連呼する、欲情しきったセックスの歌です。「もっと奪って私を」「すべてが欲しい」など下品な官能小説のようなフレーズをロマンティックに歌っているのは少し滑稽に見えます。 48. SMAP 「Joymap!!」 ぜんぜん知らない曲でしたが出場歌手みなさんを巻き込んで会場が一体となった感じでハッピーでした。いつもの「世界に一つだけの花」でナンバーワンを諦めた感じの年越しにならなくて良かったのではないでしょうか。 49. 北島三郎 「まつり」 50回目の出場で今回を最後に紅白を勇退するとおっしゃっている大師匠をあんな大きな龍の首に乗せて高いところをブンブン振り回してドキドキしました。最終的に着地して歌われていましたが、ほんとうは最初からきちんと地面で歌いたかったのではないでしょうか。 ■山口真木(やまぐち・まき) 大阪出身の27才、OL。ポップスとロックと女の子をこよなく愛する。何かに毒づいてばかりの思春期まっただ中。リアルサウンドの忘年会でなぜか「紅白の全曲レビュー書きますよ」と宣言してしまったので、こんなことになってしまいました。新年早々、走り書き原稿で申し訳ありません。取り急ぎ、今年もよろしくお願いいたします!!!

SMAP初週売り上げ12万枚ダウン SGチャートに見る“国民的グループ”の不安定さ

【リアルサウンドより】

2013年12月16日~2013年12月22日のCDシングル週間ランキング

1位:シャレオツ/ハロー(SMAP) 2位:ナノ・セカンド(UVERworld) 3位:ええか!?/「良い奴」(スマイレージ) 4位:Fall in Love/Shape your heart(U-KISS) 5位:棚からぼたもち(舞祭組) 6位:鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの(AKB48) 7位:からたちの小径(島倉千代子) 8位:バレッタ(乃木坂46) 9位:蒼い空を望むなら(愛乙女★DOLL) 10位:Sad Movie/クリスマスキャロルの頃には(BEAST)
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SMAP『シャレオツ / ハロー【初回限定盤A】』(ビクターエンタテインメント)

 12月30日付け、2013年最後のシングルチャート。一位のSMAPは初週売り上げが20万枚を超えた。これは好調と言っていい数字だ。ただ前回のシングル『Joy!!』は初週で32万枚を売り上げていたので、この結果を見てSMAPは人気が急落したと考える人もいるかもしれない。しかしもともとSMAPは『Hey Hey おおきに毎度あり』で初めてチャート1位となった90年代半ば以降、一貫して売り上げが安定しないグループなのである。順位だけに注目すると2002年以降、すべてのシングルがチャート1位になっている誉れ高いグループだと感じられるが、好調なシングルは1位になってからもずっと売れ続けるし、そうでないものはすぐに動きが止まる。CDショップのバイヤーにとってはやっかいなタイプのミュージシャンかもしれない。  おそらくこのグループはよくも悪くも国民的な人気者であり、売り上げが「状況によっては買う」という浮動票に左右される割合が高いのではないかと思われる。曲がいいからとか、どんな施策をしたからとか、どんなタイアップが付いたからという理由でチャートの浮沈は予測できない。  ただ、近年にジャニーズが注力するようになった複数アイテム展開による売り上げの底上げが、SMAPにおいても功を奏しているのは明らかだ。それからもうひとつ、今回のシングルはSMAPの2013年3枚目となるCDで、シングルを積極的に売るという今の音楽産業のトレンドがSMAPにもちゃんと反映されているのを感じさせる。1位になりながらも売り上げの予測が立ちにくいというSMAPらしいチャート動向を貫きつつ、しかし商品展開としては今の旬にしっかり乗っているというのはちょっと面白い。  一方、今週2位のUVERworldも今ひとつ動きの安定しないグループで、数年前からやりようによってはさらなるブレイクが目指せる域に入っているのだが、現状維持を貫こうという余裕があるのか、積極的に売り上げ枚数を増やす方針を感じさせない。チャート内での立場としては少しヴィジュアル系に近いのだが、ヴィジュアル系よりも浮沈が大きくてややこしいグループではある。  ほか、今週のチャートにはU-KISSとBEASTという、二つの男性K-POPアイドルが入っているのも気になるところだ。実は2013年は男性K-POPアイドルがコンスタントに5位以内に入り続けていた年で、今年デビューしたばかりのグループも順調だった。チャート10位以内まで視野を広げれば、かなりの数のK-POP男性アイドルを見つけられるだろう。K-POPと言えばKARAやT-ARAなどの女性グループがいまだに有名だが、2013年にチャート上での存在感が維持されていたのは少女時代くらいで、女性グループは2、3年前の好調さに比べると人気に翳りを感じずにいられない。だからこそ余計に男性グループの堅調さは目立っている。邦楽だけを見ていると男性アイドルはジャニーズの独壇場なのだが、規模は及ばないもののK-POPは根強いシーンを築いている。もう少し拡大していくと、男性アイドルシーンが多様化して面白くなるかもしれない。 ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter

嵐、KAT-TUN、キスマイ……ジャニーズ「激動の2013年」を検証する

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ファンの顔を覚えているという大野智。

【リアルサウンドより】  東京オリンピックが決定し、最弱球団と言われていた楽天が日本一になり、30年以上つづいた『笑っていいとも』の終了が発表され…。まさかと思っていたことが、次々と実現した2013年。それはジャニーズの世界でも同じ。激動の2013年を振り返ってみることにしよう。 ■1月、Hey!Say!JUMPの山田涼介が『ミステリー・ヴァージン』でソロデビュー  2012年2月にリリースされた『SUPER DELICATE』から約1年ぶりに発売されるシングルが、まさかのソロということで、ファンに衝撃が走った。メンバー間でも複雑な気持ちが交錯したかに思えたが、最近のインタビューでは「ソロで活躍したことをJUMPに還元していくことが、グループとして成長できる」と、プラスに捉えられているようだ。2013年後半に、マネジメント体制が変わったと見られるJUMPは、2月に『AinoArika/愛すればもっとハッピーライフ』(両A面)の発売も決定している。2014年はドラマへの露出も上がり、飛躍の年になりそうだ。 ■2月、が被災地でシークレットライブを開催  宮城県七ヶ浜町で被災者500人を無料招待し、11曲を披露。さらに、全員と握手をして会場を後にしたよう。5人が仮設住宅をアポなしで訪問し、直接元気づける光景も。トップアイドルの突然の訪問にさぞかし驚いたことだろう。ジャニーズではこれまでMarching J(マーチング ジェイ)と名付けて、災害支援プロジェクトを行ってきた。時間のかかる復興支援に、彼らが動き続けることで日本全体における震災の記憶の風化を防いでくれることだろう。 ■3月、40人グループ『Twenty・Twenty』の構想が発表される  2020年のオリンピック開催に合わせてデビューを目指すグループを結成するという構想が、舞台『ジャニーズ・ワールド』の東京ドーム公演で突如発表された。しかし、現在再演されている『JOHNNYS' 2020 WORLD』では、何も触れられていないため、もしかしたら空中分解してしまった様子。応援しているJr.には、7年後を待たずにデビューしてほしいというのがファンの心理なのかもしれない。 ■4月、SMAP5人旅で話題沸騰  『SMAP×SMAP』のスペシャル番組として、初めて5人だけで旅行するという企画が実現。ふだん、プライベートでも5人で揃うことはないSMAPだけに、「よく実現した!」とファンは大喜び。なかでも、5人がカラオケをしたとき、SMAPメドレーで盛り上がる中、『ベスト・フレンド』で中居正広が大号泣する展開に、もらい泣きした視聴者もいたことだろう。 ■5月、『J'J A.B.C-Z オーストラリア縦断 資金0円ワーホリの旅』で高視聴率をマーク  J'Jシリーズでは、山下智久、滝沢秀明、JUMPにの知念侑李に髙木雄也…と、ジャニーズの主要メンバーが旅をしてきた。だが、旅人がA.B.C-Zに変わった瞬間、バラエティ要素が増加。なんと資金を自分たちで稼ぎながら旅をするというもの。ジャニーズではあまりみない体当たり企画に、視聴率も好調。A.B.C-Zの可能性を大きく広げた。 ■6月、嵐・大野が「ファンに自分から声をかけた」発言が話題に  大野智がレギュラーを務めるラジオ番組で「ライブに通ってくれるお客さんは見てわかるんです」と話し、さらには、カフェの店員に「ライブに来てくれるよね」と話しかけたというエピソードも披露。ファンが沸いた。今や、嵐のコンサートといえばドームか国立競技場と大きな会場ばかり。そんな中、ファン1人ひとりの顔をしっかり見つめているというのだから驚きだ。 ■7月、恋愛バーチャルドラマ『JMK 中島健人ラブホリ王子様』がスタート  Sexy Zoneの中島健人は、Jr.時代からファンの中では少女マンガの中から出てきたかのように、キザな会話をサラッと披露することで有名だった。そこから「ラブホリ先輩」と呼ばれるようになったが、ついにテレビ番組になることに。見ているこちらが恥ずかしくなるほど甘いセリフのオンパレードで、中島健人のキャラクターが一気に浸透したはずだ。 ■8月、嵐、『24時間テレビ』発の2年連続メインパーソナリティーに  夏の風物詩とも言える、『24時間テレビ』で嵐が2年連続でメインパーソナリティーを務めた。これは、1978年に番組が始まって以来、初のこと。視聴率も歴代最高に迫るいきおいで、番組を盛り上げた。なかでも櫻井翔が『旅立ちの日に...』のピアノ伴奏に挑戦。すばらしい演奏だったが、「完璧に弾けなかった」と悔し泣きをする姿と、たくさんの書き込みがされた楽譜が舞台裏の映像としてオンエアされた。スマートな印象を持つ櫻井の陰ながらの努力を垣間見ることができた。 ■9月、V6の三宅健が『アウト×デラックス』で親しみやすさ全開  アウトな人たちをゲストに迎えるトークバラエティ番組に三宅健が再登場し、大きな話題を呼んだ。7月の初登場では「メンバーのひざの上に今でも乗ってしまう」や「怒られるとつい笑ってしまう」など、子供っぽいキャラを微笑ましいエピソードで語っていたが、今回は自主的にコントをしたり、下ネタを連発したりと大暴れ。「下手な芸人さんより面白い」と視聴者からは、新しい三宅健を見たという反応が多く寄せられていた。 ■10月、田中聖が事務所契約解除&KAT-TUNを脱退  ジョーカーという異名を持つ田中聖が、これまでの問題行動を理由にジャニーズ事務所を去ることに。だが、田中聖はすぐにツイッターを通じて自らの言葉でファンに思いを伝えた。気がつけば、フォロー人数は現在21万人を突破。リプ祭りと称して、ファンに直接メッセージを返信するなど、今でも注目を集め続けている。来春には、品川ヒロシ監督・藤原竜也主演の映画にも出演が決まっており、これからも多くのファンを魅了してくれることだろう。 ■11月、キスマイの4人を『舞祭組』として、中居正広プロデュース  バラエティ番組『キスマイBUSAIKU!?』でゲスト出演した中居の一言から始まったプロデュース企画。目立たな4人をスポットライトを当てる目的だったが、今や、キスマイのコンサートで最も盛り上がる曲と言っても過言ではないほど、ファンの心を掴んだ。後輩育成という新しいジャンルを開拓した中居。2014年には、第二弾もしくは全く新しいユニットの誕生に期待してしまう。 ■12月、A.B.C-ZがついにCDデビューを発表  圧倒的な身体能力でパフォーマンスが売りのA.B.C-Zは、2012年にジャニーズ初のDVDデビューという形をとった。だが、同時に「通学・通勤中に聞きたいのに…」、「やっぱりCDデビューしてほしい」というファンの声も多く上がっていた。そして、舞台『JOHNNYS' 2020 WORLD』でついに来春CDデビューすることがメンバーの河合郁人の口から告げられた。しかし、重大発表の割にはマスコミの呼び込みもなく、「あくまでも噂?」という声も漏れ聞こえてくる。正式なリリースが、今から待ち遠しい限りだ。  それぞれグループや個人で新しい取り組みや、潜在能力を発揮させた今年のジャニーズメンバーたち。常に、現状に満足しない彼らが、2014年はどんなことに挑戦してくれるのか、今後も注目したい。 (文=ジャニ子)

前田敦子が凄腕バンドと共にCDJ登場! ロックフェスの客は彼女をどう受けとめたか

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前田敦子『タイムマシンなんていらない』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  前田敦子が、初のロックフェス出演を果たした。12月28日、今年で11年目を迎えた「COUNTDOWN JAPAN 13/14」(以下CDJ)初日のトップバッターとしてステージに登場。3月5日にリリースされる新曲『セブンスコード』を初披露し、他にもシングル『タイムマシーンなんていらない』など全5曲を歌い上げた。  彼女のフェス進出を報じるニュースは大きな波紋を呼び、開催前には賛否両論も巻き起こしていた。(参考:前田敦子が年末の大型フェスCDJに出演決定 アイドルのロックフェス出演はなぜ増えた?)今年夏にはBABYMETALでんぱ組.incなど女性アイドルグループのロックフェスへの出場が話題を呼び、今回のCDJにも、東京女子流や℃-uteなど引き続き多数のアイドルグループが出演を果たしている。アイドルグループの出演自体はおおむね好意的に受け入れられているものの、やはりトップアイドルAKB48のセンターをつとめた前田敦子の登場は大きなインパクトを持って迎えられた模様だ。  では、肝心のライヴはどうだったのか? 開演前のフロアの様子は、サマソニへのももクロの出演前にあった熱気などに比べて、どちらかと言うと様子見の雰囲気が強い。「こんにちは、前田敦子です!」と言う最初のMCにざわめきが起こったのを見ても(おそらく大多数のお客さんが「キンタロー、似てる!」と思ったはず)、「話題の人を見にきました」というムードだ。もちろんヲタ芸を打つ熱狂的なファンも見かけたが、あくまで大多数はAKB48や前田敦子のコアファンではなく、フェスのオーディエンス。アウェイの場ではあったが、そこで披露されたのは、ストレートな彼女のロック愛が伝わる、好感のもてるステージだった。  開演を迎えると、ステージには、前田敦子と5人のバックバンドが登場。ギターに藤井一彦(THE GROOVERS)、ベースにウエノコウジ(the HIATUS)、ドラムに白根賢一(GREAT3)、キーボードに高野勲、コーラスに廣野有紀と、実力派ミュージシャンを揃えた本気のメンツだ。だけあって、演奏の迫力は申し分なし。緊張していたせいか歌い出しは若干上ずっていたものの、シュアなプレイに支えられて伸びやかな歌を響かせる。  何より、会場のお客さんの心をグッと掴んだのが後半で披露したMCだった。  「去年の31日、実はお友達と一緒にここ(幕張メッセ)に来てたんです。カウントダウンにはくるりを観てました。女王蜂も観たかったんだけど、混んでて入れなくて……。だから、今年呼ばれて、ほんとに驚いたんです」  去年のフェスに一人のお客さんとして訪れていたというエピソードを明かし、オーディエンスの驚きと共感を呼んでいた。これまでテイラー・スウィフトの大ファンと公言し、たびたび憧れを表明してきた彼女だが、ソロ転向後の音楽性も50年代~60年代の古き良きアメリカンポップスやロックを踏襲するもの。そういう意味ではキャリアある凄腕プレイヤーを揃えたバックバンドとの相性もいい。新曲のロック路線もどちらかと言えばオーセンティックなもので、いわば「和製テイラー・スウィフト」として、彼女本人の志向性にもかなりハマるものになっている。  ただし、課題もあった。中盤に披露した「頬杖とカフェマキアート」「Flower」は、どちらもミドルテンポのバラード。曲としては悪くないのだが、お客さんの大多数が一体感を持って盛り上がることを求めているフェスやライヴの場では、あまり機能しづらいタイプの曲調である。実際、様子見っぽいムードを醸し出していたお客さんがこの2曲の間にポツリポツリとステージを去り、満員に近かったフロアに少しずつ空きが生まれていた状況もあった。その後のMCでグッと会場のムードを変えただけに、このあたりのステージ構成は、この先に向けて改善の余地ありと言ったところだろう。  最後にはバックをつとめたミュージシャンを一人ずつ紹介、「バンドメンバーにも拍手を!」と呼びかけていた前田敦子。終演後には「バンドメンバーの皆さんのおかげ!!大好き!!」とツイート。ラストに披露した「セブンスコード」の最後にはジャンプした勢い余って尻もちをついていた。そういうところも含めて、女優兼ロックシンガーとして憎めないキャラ、愛されるアイコンになっていきそうな彼女の可能性を感じた。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter