“体験をパッケージ”する発想をーーダイノジ大谷が提言する、これからの音楽サバイバル術

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ライブやDJイベント主催するなど、大谷氏の“現場”への貢献は大きい。

【リアルサウンドより】  昨年末に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCKLIFE』を上梓したダイノジの大谷ノブ彦氏が、自身の音楽観・リスナー観について語るインタビュー後編。前編【ダイノジ大谷がロックを語り続ける理由「こっちだっていい曲だ、バカヤローって足掻きたい」】では、これまでのリスナー遍歴や、音楽評論・リコメンドのあり方について語った。後編では、ビジネス面の苦境が指摘されてきた2000年以降の音楽シーンを分析しつつ、さまざまな課題への提言を述べる。 ――2000年代に入ってから、CDが売れないとさかんに言われるようになります。そういった状況をどのように見ていましたか? 大谷ノブ彦(以下、大谷):ラジオをやってきて、先週までいたレコード会社の人が急にいなくなったりするのを見てきて、状況の厳しさは感じてきました。僕ら芸人も、お笑いブームで現場がすごく増えたと思ったら、次の年から急に使われなくなったりといった状況を体験しているので、その苦しさはわかります。だから、1組でも多くのバンドが潤ったり、継続していくことができるように力を貸したいし、少しでも自分ができることをしたい。それをDJでやるのかはわからないけど、そういう気持ちはすごくある。 ――大谷さんの音楽に関する仕事は、そうした状況の中で存在感を増していきました。 大谷:自分の場合は、2005年の時にぱっと仕事がなくなって子供もできた時に、DJの仕事を紹介されて。これは新しいエンターテイメントとして使えるんじゃないかって思った時に、道が開けた気がします。それまでは音楽を知らないフリする方が笑いになると思っていたのですが、「これは自分にしかできない武器になるんじゃないか」って気づいたんですよね。ダウンタウンさんの『HEY!HEY!HEY!』は、ミュージシャンをお笑いの現場に連れてきてしまうことが画期的でした。それとは逆に、ミュージシャン側の価値観に寄り沿って語るのは、実は僕たちにしかできないのではないかと。それで一生懸命勉強しました。 ――ご自身でもフェスを主催するなどライブと深く関わってこられましたが、ライブの現場の動きをどのように見ていますか。 大谷:CDはなかなか売れないと言われていますが、やっぱり現場で人の気持ちを一瞬にして掴めるとか、ファンを獲得するために何をすべきか、明確なビジョンを持っているバンドは、ちゃんと独立できていると思います。ちょうど2000年前後くらいに曽我部恵一さんが独立して、ある時、僕らのイベントに出てくれたんです。曽我部さんは、ライブが終わるとすぐに物販のところ行くんですよ。そしてグッズを直売して、サインを書いている。フラワーカンパニーズも、スクービードゥーも同じことをしていました。彼らは、明らかにCDが売れなくなるって気づいていて、物販も含めてどう売っていくべきか考えていたんだと思います。ファンひとりひとりに手渡ししていくっていうことは、実はすごく大事だと思う。手売りすればファンはSNSなどでそのことを拡散してくれるし、その人にとって忘れられない思い出になるし、きっと次も買ってくれると思うんです。 ――状況に対応して、ミュージシャンの間でも経済的に自立する動きが出てきたということですね。先ほどフジロックの話が出ましたが、フェスの盛り上がりが音楽シーンに与えた影響についてはどう見ていますか。 大谷:ミュージシャンにとってフェスが一つのツールになっている部分があって、フェスで盛り上がる曲を作らなきゃいけないっていう問題もあると思います。ただ、ミュージシャンのあり方に変化が生まれたのは、面白いことだと思います。たとえば『京都大作戦』では、10-FEETが進行もやっているんですよ。自分たちでミュージシャンも呼びに行ったりしていて、フェスの全体を見ている。あのフェスって最初の年はゴミがすごく多かったのに、ミュージシャンたちのMCがすごく長くなって、みんなで注意したら本当になくなったんです。今までは言いたいことは音楽で言えばよかったのに、それじゃ伝わらないってことに誰かが気づいたのかもしれません。それは決して悪いことじゃなくて、言葉も込みでミュージシャンの魅力になってきたということかと。3.11以降は、さらにその傾向は強くなったと思います。ブラフマンがステージでしゃべるようになったのもまさにそうで、言葉で伝えることによって、その人たちの生き方とか歌詞が、よりリスナーの人生観とかにクロスオーバーしていくっていう現象が起こってきている。これはすごくエモーショナルなことだと思います。  マキシマム ザ ホルモンがあそこまで激情的な歌になって、メロディもわかりやすくなってきているのも、思いをちゃんと伝えていこうっていう意思の表れなのかなって思います。『予襲復讐』に50ページのブックレットを付けたのは、そういう意味合いがあったと思うし、CDだけではない、新しいパッケージを作るという意図もあったはずです。 ——音楽だけでなく、自分たちの表現を丸ごとパッケージして伝えようとしている、と。 大谷:お笑いの現場でも面白い現象があって、多くの劇場はお客さんが少なくなってきているのに、歌舞伎座とか明治座にはいつも人がいっぱい入っていて、その多くはおばちゃんなんですね。なぜだろうと思ってよく観察してみたら、歌舞伎座のまわりには喫茶店がすごく多いことに気づいたんです。おばちゃんたちは10時に喫茶店で待ち合わせて、おしゃべりを楽しんで、12時になったら劇場に入って、公演の休憩でちょっと贅沢な1000円のお弁当食べて、見終わったら帰りに銀座で買い物して帰る。つまり、おばちゃんたちはそのエリアでパッケージされた一日を消費しているんです。 ――舞台だけでなく、それを観るプロセス全部が楽しみなんですね。これはライブハウスでも応用できそうな発想です。 大谷:ライブハウスでも絶対展開できると思う。お酒のサービスの仕方にしても、もっと気軽に飲めるようにするとか、気軽に酔えるようにするとか、いろいろ知恵を出し合えると思うんですよ。ライブハウスはもっと体験ってことに対してしっかり向き合うべきだと思う。昔は大人の社交場で、みんなが憧れて行ってたけれど、それだけじゃダメなんですよ。記念写真をライブハウス側が撮って、それをライブハウスの壁に貼っていくとか、そういうアイデアはいくらでも出せると思う。グッズだって、面白いこといっぱいできますよ。ホルモンのフード付きタオルとか、テレフォンズのサングラスとか、すごく売れている。 ——なるほど。ライブハウスに行くこと自体がエンターテイメントの一つである、という考え方ですね。 大谷:だからパッケージを作るってことに対して自覚的であり、独立するってことに対して自覚的なミュージシャンっていうのは潤っているし、結果として自然と良い作品ができているっていうイメージがすごくありますね。もちろん純度の高い音楽っていうのは大事なんだけど、そこがなければバンドを続けることもままならないのかなって思います。 ――大谷さん自身は、今後も音楽にまつわる仕事を増やしていく予定ですか。 大谷:良い音楽をシェアしていきたいという気持ちはすごくあるので、どんどんやりたいですね。以前、『申し訳ないと』のミッツィー申し訳さんとDJのイベントで会ったときに、初めてDJプレイを褒められたんですよ。その時、僕はてらいもなくいろんなタイプのロックをかけていたら、ミッツィーさんがぼそっと「地球上に悪い音楽ないからね、良い曲も悪い曲もDJ次第だから」って言ってくれたんです。本来、音楽はすべて良いものだけど、良いように聴かせることも、悪いように聴かせることもできる。ただ、楽しませ方はいろいろあるので、なるだけ多くの音楽を聴いてもらえるように、芸人特有のギミックを使いながらやっていきたいかな。今年は流行りの音楽とか、リスナーが多い音楽に乗っかるだけじゃなくて、その先にある楽しみを絶対伝えたいですね。 (取材・文=神谷弘一/編集協力=梶原綾乃)
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『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』(シンコーミュージック)

■書籍情報 『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』 価格:1,400円(税込み定価1,470円) 発売日:12月20日  人気ラジオ番組『オールナイトニッポン』(水曜・第一部)や『Good Jobニッポン』(月〜木)のパーソナリティを務める大谷ノブ彦(漫才コンビ、ダイノジの一人)の、クロスビート誌(現在は休刊)の連載「俺のROCK LIFE!」をまとめた一冊。単行本化に当たり、大谷がロックと向き合う姿勢に迫ったインタビューや、本人による「人生の10枚」の選盤/解説なども収録。

ダイノジ大谷がロックを語り続ける理由「こっちだっていい曲だ、バカヤローって足掻きたい」

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取材前夜は『オールナイトニッポン』の放送日だったにも関わらず、熱く語ってくれた大谷ノブ彦氏。

【リアルサウンドより】  お笑い芸人として数多くの番組・舞台に出演しつつ、ロックを軸としたポップ・ミュージックへの造詣の深さで活動の場を広げる、ダイノジの大谷ノブ彦氏。最近では人気ラジオ番組『オールナイトニッポン』(水曜・第一部)のパーソナリティとして、音楽の”評論芸”やインタビューにも力を注ぐ大谷氏が、洋楽専門誌『クロスビート』誌の連載コラムをまとめた書籍『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCKLIFE』を上梓した。音楽のジャンル・嗜好が細分化する今、大谷氏が情熱的にロックを語り続ける理由とは何か。インタビュー前編では、自身のリスナー遍歴を踏まえた音楽シーン分析、音楽評論に対する考えを大いに語った。 ――今回の著書『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCKLIFE』は『クロスビート』の連載コラムが元になっていますが、連載中はどんなことを意識して執筆していましたか。 大谷ノブ彦(以下、大谷):基本的に、音楽そのものの評論とか批評は自分にはできないので、これまでの体験を通して、好きな音楽について語るだけなんですよね。ただ、読者がそこで紹介しているアーティストやエピソードを知らなくて、その音楽を聞いたことがなくても、本を読み終わったらなんとなく聴いてみたいな、と思える感じは目指しています。何を聴いていいかわからない人たちに、専門用語以外の言葉を使って、良い音楽をわかりやすくシェアするということですね。さらに、この本が音楽の評論とか批評の入り口になれば、なお嬉しいです。 ――『ロッキング・オン』などでは昔から体験談を交えた批評文を投稿するコーナーがありますが、大谷さんの文章はそのようなタイプの音楽ガイドとしても成立しているように思います。 大谷:実は僕、過去に3回くらいロッキング・オンに載っているんですよね。エレファントカシマシについて書いて。山崎洋一郎さん、兵庫慎司さん、鹿野淳さんなどが中心となって執筆していた時代はかなり読みました。 ――投稿コーナーに代表されるような「音楽を語る」文化は脈々とブログなどでも続き、最近は個人が発信する時代になってきました。 大谷:その中で、個人の感想と作品のクオリティのバランスが崩れてきている気はしますね。良い作品でも、なかなか素直に受け入れられる環境がないというか。たとえば、先日ラジオで対談した銀杏BOYZの新しいアルバム『光のなかに立っていてね』のラストには、「僕たちは世界を変えられない」という曲があって、そのイントロがスーパーで流れている音楽なんですよ。また、MGMTの「kids」という曲は、カラオケのトラックを流して、3流ポップスのパロディをやったら、バンドの代表曲になっているんですね。音楽って、そういうふうにある意味ではチープな表現をクールなものとして解釈することもできて、それはとても素敵なことだと思うんです。ただ、そういう感覚を今の中学生の男の子とかに言葉で伝えるのはすごく難しい。個人の発信が増えた分、そういった文脈の深い作品が正当に評価されにくくなっていて、表層的にわかりやすいものが受けやすくなっているというか。 ――大谷さん自身は、音楽に詳しくどっぷりハマっている人というより、音楽にハマりかけている人に語りかけようとしていると? 大谷:そうですね。僕は何度かフェスにDJとして出させてもらっていて、そこでもそういったアプローチを心がけています。邦楽のDJブースって昔と違っていろんな曲がかからないんですよ。盛り上がる曲が決まっていて、リスナーも知っている曲で盛り上がりたいという人が多い。DJはそのためのツールみたいになっていて、同じ曲を何回もかける傾向になっていく。ハイスタの「Stay Gold」何回かかるんだ?みたいな(笑)。だから、「Stay Gold」をかけるにしても、違う聴かせ方できないかとか、今のアークティックモンキーズとかをどうやって入れて、「いいじゃん」って思わせるかっていうことを考えている。でも、終わったあとは結局、Twitterで「やばかった Stay Gold」とかしか書かれないんですよ。アクモンかけたってことはだれも評価してくれない。でも、そこは足掻きたい。「こっちだっていい曲だ、バカヤロー」って言いたい。 ――それは、ラジオでリスナーと向き合う時に、大谷さんがあえて普通はかけないような曲をぶつける感じと通じますね。 大谷:罠をしかけて、かかったら「この曲もいいじゃん」って思わせたいです。たとえば僕は、twitterで時々、ジャニーズのことを音楽的に評価するんですね。そうすると、ものすごくRTされるんですよ。だから、RTを増やしたかったら、 ずっとジャニーズのことをつぶやけばいいんです。でも、それをやったら僕じゃなくなるし、逆にジャニーズの音楽を冒涜することになると思う。本当に真面目に聴いているのなら、彼らがどういうイメージでその音楽を作っているかというところまで向き合わないとだめだから。罠っていうと語弊があるかもしれないけど、どの音楽もフラットに聴いてもらって、そこから普段は聴いていない曲のかっこ良さを発見してもらえたらいいなと思います。 ――なるほど。ここからは、本のテーマにもなっている大谷さんの音楽遍歴を探ってみたいと思います。そもそも音楽にハマったきっかけは? 大谷:中3の時にバンドブームが来るんですよ。クラスのみんなBOOWYやレベッカなんかを聴いていた。で、その頃に生まれて初めて友達の家に泊まりに行って、友達にパンクロックを教えてもらったんです。純粋に「こういうやり方あるんだ!」ってびっくりしました。全然、歌うまくないし、テレビで流れてる歌謡曲の方が芸として優れているのに、すごくかっこいい。で、みんなが好きだっていってるバンドじゃなくて、自分だけのバンドがほしくなった。それが自分のパンク的な活動になると思って。だからエレファントカシマシとか群馬のROGUEとか聴いて、これみんな好きにならないだろうから俺のバンド、っていう感じで、変わったバンドが好きになっていったんです。さらに、そのアーティストたちが影響を受けた洋楽を聴くようになって、 誰かがエルヴィス・コステロのことをレコメンドしていたんですね。スーツにメガネかけて漫才師みたいな格好しているのに、パンクロックで渋かった。で、これも俺のもんだなって思って、そこから一気に、スリッツとかトーキングヘッズとかどんどん掘り始めて、もう音楽が楽しくてしょうがなくなっていった。それが高校生の時くらいですね。 ――かなり掘り下げていますね。大学時代はどうでしたか? 大谷:僕、大学で全然しゃべらなかったんですけど、唯一仲良かった2人がいて。ひとりが福岡出身でベタな博多人なんですよ。いまどきリーゼントみたいなやつで、めんたいロックとか教えてくれて。もう一人は東京の吉原が実家で、見かけはちょっとしょぼいやつなんだけど、とにかく音楽がすごく好きで。当時、彼に対して、「プリンスはあんまり好きじゃない」っていったら、すごい剣幕で怒ってきたんですよ。 ――はははは。 大谷:そこから彼は音楽の師匠という感じになっていきました。エレファントカシマシのライブもそいつと行った。僕が持っているものと彼が持っているものを交換しあうようになったりして、そのうち授業のたびに「これ聴いた?」みたいな感じになりましたね。それから、御茶ノ水のレンタル屋のジャニスに行ったり、渋谷の中古レコード屋を回ったり……。20代前半は、お笑いライブとレコードとライブ、あとは映画館。わかりやすいですね(笑)。 ――当時の自分を含めた同世代を振り返ると、ロックにしても文学にしても映画にしても、命がけといった心持ちでカルチャーに向き合っていたような気がします。90年代前半という時代性もあったのでしょうか。 大谷:あの時代の人たちは、世界を変えてやろうって気概で、楽器を持ったり、映画を撮ったり、文章を書いたりしていました。ただ、95年にオウムの事件があってからは、明らかに風潮が変わったと思います。というのも、オウムの人たちの精神性って、サブカルチャーにハマる人たちと、実はそれほど差がなかったのではないかと。彼らは世界を変える方法として、ロッキング・オンや映画ではなく、麻原を信じたことで、結果的に人殺しをしてしまった。あれ以来、カルチャーに向き合っていた人たちにとっても、今まで信じていた言葉が一気に重くなってしまいました。スチャダラさんが、 ものすごくシリアスなアルバム出したりとか、そういう風に変わっていった。ただそんな中、小沢健二だけが天使の羽つけて、すごいアホなふりをしてテレビに出て、自分を王子様とか言ったりしていました。あれは、カルチャーに煌びやかな世界を取り戻そうっていう意味合いがあって、「life is coming back」ってことなんだろうと思います。それってすごくコメディ的ですが、熱いですよね。一見バカみたいに見えるけれど、実は鋭い批評性がある。そういう人だけが時代を変えられるような気がします。 ――大谷さん自身、90年代後半から芸人として活動されていく中で、音楽との距離感はどう変わりましたか。 大谷:95年以降は1回「自分がやってきたのはオウムと同じことだった」という風になっちゃったんです。そんな中、ブラッドサースティ・ブッチャーズやイースタン・ユースが北海道のライブハウスで演っているのを観る機会があって。当時はバンドブームも終わったところだったし、ほとんど人がいなかったんですよ。でも、僕にはものすごい衝撃だったんです。90年代の後半くらいから、ギターウルフとかハイ・スタンダード、ブラフマンとかが出てきました。ストリートで洋楽のコンプレックスとは別のところで生まれているユースカルチャーが、ライブハウスで一気に生まれてきたんですね。そのうちフジロックが始まりました。 ――そこで大きな変化を感じたと。 大谷:舞台が変わった感じですね。フジロックはある種の夢みたいなものが叶っちゃったという感覚もあった。やはり1回目、2回目のフジロックの衝撃はすごかったですね。 (後編に続く) (取材=神谷弘一/編集協力=梶原綾乃)
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『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』(シンコーミュージック)

■書籍情報 『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』 価格:1,400円(税込み定価1,470円) 発売日:12月20日  人気ラジオ番組『オールナイトニッポン』(水曜・第一部)や『Good Jobニッポン』(月〜木)のパーソナリティを務める大谷ノブ彦(漫才コンビ、ダイノジの一人)の、クロスビート誌(現在は休刊)の連載「俺のROCK LIFE!」をまとめた一冊。単行本化に当たり、大谷がロックと向き合う姿勢に迫ったインタビューや、本人による「人生の10枚」の選盤/解説なども収録。

Perfumeの対バンツアーはなぜ「フェス」と銘打たれた? ブッキングの意図を読む

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バンドシーンと積極的に関わっていく姿勢を見せるPerfume

【リアルサウンドより】  Perfumeが3月15日(土)のNHKホールを皮切りに対バンツアー「Perfume FES!! 2014」をスタートさせることを発表した。  昨年の5月から6月にかけて行われた初の対バンツアーでは、斉藤和義や奥田民生、マキシマム ザ ホルモンと前代未聞の対バンを組み、音楽業界やファンの間で大きな話題となった。今回のツアーでも、東京スカパラダイスオーケストラやRHYMESTER、RIP SLYME、9mm Parabellum Bullet、秦 基博といったライブに定評のあるミュージシャンから、あ~ちゃんこと西脇綾香の妹が所属するアイドルグループの9nine、気鋭のシンガーソングライターである高橋優、前回に引き続き登場するマキシマム ザ ホルモンまで、個性豊かな面々が揃っている。  だが、2回目となる今回の興味深いポイントは、共演者のメンツだけではなく、「ツアータイトル」にもあると、音楽ジャーナリストの柴那典氏は指摘する。 「今回のツアータイトルですが、ホール主体の対バンツアーでありながら『Perfume FES!! 2014』と名付けられているところがポイントです。一般的な音楽ファンはこの形式のライヴを『フェス』とは思わないでしょう。しかし、だからこそ、そこからPerfumeが『フェス』というものをどうイメージしているかを読み解くことができる。ポイントはメンバー自らがツアーを発案し、ゲストアーティストを選び、自らオファーしたということです。  昨年開催された第1弾の対バンツアー『ずっと好きだったんじゃけぇ~さすらいの麺カタPerfume FES!!』の際には、斉藤和義、奥田民生、マキシマム ザ ホルモン宛にメンバー3人からオファーをお願いするビデオレターが送られていました。今回のツアーも、公式でこそ発表されていませんが、ラインナップを見るに、メンバーの意思を尊重して決まった対バン相手だと思われます。最近ではロックフェスにアイドルが出ることはもはや珍しいことではなくなりました。しかし、「アイドル自らがバンドにオファーをして対バンツアーを組む」というのは、まだ誰もやっていなかったこと。またしてもPerfumeが先駆者的な試みを実現させたと言えるのではないでしょうか。そして、これを『フェス』と銘打っているということは、つまりPerfumeは、単なる対バンライブイベントとフェスの違いを『ブッキングしている人の顔が見えること』として捉えているのではないか?という風に考えられるわけです。  これはASIAN KUNG-FU GENERATIONが主催する『NANO-MUGEN FES』と対比させて考えると分かりやすいでしょう。『NANO-MUGEN FES』も、実際にアーティスト側がブッキングして行っている。そして、横浜アリーナで行う通常の形だけでなく、対バン形式で全国をまわるツアーイベント『NANO-MUGEN CIRCUIT』も、いわゆるフェスの範疇として受け止められている。いわば今回のPerfumeのツアーと『NANO-MUGEN CIRCUIT』のやっていることは同じ構図なわけです。『NANO-MUGEN CIRCUIT』でアジカンがいる立ち位置にPerfumeを置き換えて考えると、対バンツアーに『Perfume FES!! 2014』というタイトルを名付けた意図が見えてくる。これはどのアイドルよりも先にロックの現場に飛び出し、交流をしてきたからこそ生み出すことが出来た、Perfumeなりの『FES』への発想なのではないでしょうか」  たしかに最近では『アイドルとロックバンドが対バンする事による異種格闘戦』が盛り上がりを見せており、ありそうでなかった組み合わせのブッキングで好評なロックイベント『QUATTRO MIRAGE』と、アイドルやアニメといったカルチャーを融合したイベント『@JAM』がコラボした、『QUATTRO MIRAGE vs @JAM』という大きなイベントまで企画されているほど。Perfumeはその潮流を見越して、今回の『FES』を仕掛けたのかもしれない。また、柴氏は今後の展開について、次のような展望を述べる。 「前回のツアーでは各アーティストとのコラボも繰り広げられたので、今回もその貴重な機会が実現するのではないかと思います。そして、まだ発表されてはいないですが、アルバムを引っ提げての海外展開、つまり再び行われるであろうワールドツアーをどれだけ成功させるかにも期待は高まります。また、この先には、対バンツアーで共演した面々を含む様々なアーティストやアイドルが一堂に会する、『Perfume主催の一大イベント』が開催される可能性も生まれてきた。とても楽しみですね」  これまで斬新なプロジェクトを数多く実現してきたPerfumeとその制作陣なら、その話も遠い将来ではないのかもしれない。 (文=中村拓海)
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ツアー開催の発表と合わせて、Perfumeが2月12日にリリースする初のビデオクリップ集『Perfume Clips』

■イベント情報 Perfume FES!! 2014 2014年3月15日(土)東京都 NHKホール <出演者> Perfume / 東京スカパラダイスオーケストラ 2014年3月16日(日)東京都 NHK ホール <出演者> Perfume / RIP SLYME 2014年3月20日(木)広島県 上野学園ホール <出演者> Perfume / 9nine 2014年3月21日(金・祝)広島県 上野学園ホール <出演者> Perfume / 9nine 2014年4月4日(金)静岡県 静岡市民文化会館 <出演者> Perfume / 9mm Parabellum Bullet 2014年4月7日(月)石川県 本多の森ホール <出演者> Perfume / RHYMESTER 2014年4月9日(水)香川県 アルファあなぶきホール <出演者> Perfume / 秦基博 2014年4月11日(金)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール <出演者> Perfume / 高橋優 2014年4月20日(日)韓国 UNIQLO-AX <出演者> Perfume / マキシマム ザ ホルモン

ももクロ新曲に鎮座DOPENESSら参加 ヒップホップ界の鬼才を起用した意味とは?

【リアルサウンドより】  ももいろクローバーZが主題歌を担当する映画『偉大なる、しゅららぼん』の最新予告映像が1月22日にYouTubeにて公開され、最近の王道的なポップソングとは異なる、ヒップホップを採り入れた音楽性に注目が集まっている。

映画 『偉大なる、しゅららぼん』 主題歌版予告編

 主題歌となる「堂々平和宣言」は、作詞を鎮座DOPENESS、作曲をMICHEL☆PUNCH、KEIZOmachine!(HIFANA)、EVISBEATSの3人が共同で手がけている。いずれもヒップホップ・ブレイクビーツ界隈で高い評価を得ているミュージシャンだ。鎮座DOPENESSは、こぶしの効いたフロウと遊び心のある言葉選びが特徴的なラッパーで、『ULTIMATE MC BATTLE GRAND CHAMPION SHIP 2009』で優勝するなど、その実力も折り紙付き。HIFANAのKEIZOmachine!は、サンプラーをリアルタイムで叩いてビートを生み出す「人力ブレイクビーツ」の名手として知られている。DVD-Jなどの最新音楽機材を駆使した、視覚的にも楽しめるパフォーマンスは海外でも評価が高く、NIKEとのタイアップ企画なども行っている。鍵盤奏者のMICHEL☆PUNCH、トラックメイカーのEVISBEATSも、先端的な音楽性を持ち、日本のクラブシーンでは名の知れた存在だ。

KEIZOmachine!による「人力ブレイクビーツ」

 アイドルソングとしては異例とも言える製作陣となった今回の楽曲の方向性について、アイドルカルチャーに詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は次のように語る。
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ももいろクローバーZ『5TH DIMENSION』(キングレコード)

「『堂々平和宣言』は、映画のために作った新曲ということで注目を集めていますが、シングル曲ではないので、そこまでキャッチーな方向に振る必要はなかったのかもしれません。ももクロはシングル曲でこそキャッチーな楽曲をリリースしていますが、アルバム収録曲では今回のように尖った楽曲を披露し、その音楽性の幅広さを確保してきました。『5TH DIMENSION』には、いとうせいこうが作詞し、MUROらが作曲した『5 The POWER』という、日本のヒップホップの文脈をきちんと押さえた楽曲も収録されています。今回の新曲は、そういった流れを汲んだ作品で、アイドルソングとしてはたしかに珍しいですが、ももクロとしては大きな方向転換をしたわけではないと思います。アルバムに収録しているような尖った楽曲が、映画の主題歌として目立つ形で世に出たため、新鮮に感じる人が多くなっている、というのが実情ではないでしょうか」  ただ、今回の楽曲は、さらに深読みすることも可能だとさやわか氏は続ける。 「ももクロは3月に、目標に掲げてきた国立競技場でのライブを行うことが決定しています。王道的なサクセスストーリーがすでに完成に近づいている状態で、ある意味では刺激が少ない状態ともいえます。そこで、あえてブレのようなものを作ることによって、既定路線を避けているのかもしれません。尖った楽曲を目立つ形で提示することによって、世間から見て『あれ、なにか違うことをやっているぞ』という風に思わせることは可能でしょう。いずれにせよ、深読みができるのも彼女たちの魅力のひとつであることは間違いありませんし、鎮座DOPENESSらのようなアンダーグラウンド寄りのミュージシャンとクロスオーバーしていくのは面白いことなので、フルサイズで聴けるのが楽しみですね」  3月の国立競技場に向け、ますます注目を集めているももいろクローバーZ。ヒップホップシーンのクリエイター陣とタッグを組んだ今回の楽曲によって、その音楽性の幅広さをさらに印象づけそうだ。 (文=編集部)

SCANDAL、Silent Siren、LoVendoЯ…アイドル並の華やかさを持つガールズバンドまとめ

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先日、プリンセスプリンセス以来、ガールズバンド史上2組目の快挙である横浜アリーナ2days公演の決定が話題となった4人組ガールズバンドSCANDAL。

【リアルサウンドより】  SCANDALの新曲「Runners high」(1月23日リリース)のMVが、1月22日より公開された。同曲は戦国アクションゲーム『戦国BASARA4』のエンディングテーマとなっており、同ゲームのオープニングテーマを担当するT.M.Revolutionとのスプリットシングル『Count ZERO | Runners high ~戦国BASARA4 EP~』としてリリースされることが決定している。

SCANDAL『Runners high short ver.』

 作詞を担当したボーカルのHARUNAは、この楽曲について「目標が目の前にある時や、いろいろな夢を持っている時に、不安になることってよくあると思います。だけど、そういうときに立ち止まっていても何も始まらない。走り続けることに意味があるし、その目標に達してしまったときも走り続けていれば、次の目標が見つかる。そんなポジティブな願いを込めて詞を書きました」とコメントを寄せている。大阪結成のバンドであるSCANDALにとって、夢の舞台であった大阪城ホールでのワンマンライブを行う直前に制作された曲のため、当時の心境が色濃く反映されているのだろう。前向きでありつつ色香も漂う、SCANDALらしい一曲と言えそうだ。  SCANDALのように華やかなガールズバンドはほかにもある。アイドルブームの最盛期で「バンドは売れない」というネガティブな意見も少なくない昨今、あえて自ら楽器を演奏し、アイドルに負けない人気を得ているガールズバンドをいくつか紹介したい。

Silent Siren

Silent Siren 2nd Single「stella☆」MUSIC VIDEO

 メンバー全員が「CUTiE」や「mina」、「Ray」などの女性向けファッション雑誌で読者モデルをしているという異色のガールズバンド。ファッショナブルなルックスはバンド文化とは無縁に見えるが、実は音楽経験者や音楽好きの読者モデルが集まっており、音楽的背景もしっかりしている(本人達もバンドとして勝負して行きたいと各方面で語っている)。鍵盤の入ったカラフルなサウンドと、ダンサブルな四つ打ちビートが特徴的で、ティーンのロックカルチャーとも親和性の高い一組だ。

たんこぶちん

たんこぶちん『ドレミFUN LIFE』(Music Video)

 メンバーが全員18歳のいわゆるJKバンド。キャリアは浅そうに思えるが、実は小学生6年生の時に結成され、今年で6年目を迎えるバンドだ。今回紹介する中では一番若々しく、しかも全員が黒髪でナチュラルメイクという「清純派」なルックスも大きな魅力。また、作詞には高橋久美子(ex.チャットモンチー)や中山加奈子(プリンセスプリンセス)が参加しており、正統派ガールズロックの系譜を受け継ぐべき次世代バンドとしても期待を寄せられる5人組だ。

Cyntia

Cyntia/Return to Myself~しない、しない、ナツ。

   昨今、メタルやロックテイストの音楽に乗せて踊るアイドル(バンドル)が増えてきているが、Cyntiaはそれらとは一線を画する正真正銘のメタルバンド。アイドル級のルックスからは想像もできないほど高い演奏力で、各専門誌でもメタルファンから軒並みの高評価を得ており、その実力が本物であることが伺える。また、メンバー全員が成熟した大人のエロスを醸し出し、MVではグラビアアイドル顔負けのナイスバディーを惜しげも無く披露しているのも見逃せない。

LoVendoЯ

LoVendoЯ『SEXY BOY~そよ風に寄り添って~』(Live ver)

 元モーニング娘。の田中れいながグループ所属時代から並行して続けていたガールズロックバンド。現在は歌謡曲のカバーなどもしつつ、徐々にオリジナル曲を増やし続けている。正式メンバーはボーカル2人とギター2人で、オーディションで4000名の中から選抜されただけの美貌と実力を兼ね備えている。また、田中自身もモーニング娘。の頃より歌唱力に定評があり、結成からここまでバンドとして順調に成長を続けている。ルックスとしてはフロント2人が完全にロックアイドル。田中と共にツインヴォーカルを勤める岡田万里奈は典型的なハロプロ顔で飯田圭織に似ており、昔からのハロプロ好きには受けがいいようだ。  アイドル全盛の中、自ら演奏することを選んだ新世代のガールズバンドたち。ギターをかき鳴らして歌う姿には、新たな魅力があるのではないだろうか。 (文=松下博夫)
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T.M.Revolution | SCANDAL『Count ZERO | Runners high ~戦国BASARA4 EP~』(ERJ)

■リリース情報 『Count ZERO | Runners high ~戦国BASARA4 EP~』T.M.Revolution | SCANDAL 発売:2014年2月12日(水) 価格:初回生産限定盤(CD+DVD)\1,714+税、 通常盤(初回仕様限定盤)価格:\1,165+税 【収録曲】初回生産限定盤・通常盤共通 01. Count ZERO ・「戦国BASARA4」オープニングテーマ 02. Runners high ・「戦国BARASA4」エンディングテーマ 03. Count ZERO (Instrumental) 04. Runners high (Instrumental) 【DVD内容】 ・戦国BASARA4のオフィシャルムービー ・ここでしか見られない!!T.M.RevolutionとSCANDAL撮り下ろしオリジナル番組 【初仕様のみ】 T.M.Revolution・SCANDALそれぞれの本人絵柄ステッカー2枚組で封入

きゃりーが見せた未来型エンターテインメントーー横浜アリーナ公演の画期性とは?

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宙を舞い剣を振るう、きゃりーぱみゅぱみゅ。

【リアルサウンドより】  先週末の土曜と日曜の2日間、横浜アリーナでの『きゃりーぱみゅぱみゅのマジカルワンダーキャッスル』を成功させたきゃりーぱみゅぱみゅ。2012年11月の武道館公演に続いて今回アリーナ公演も制覇し、来月から始まるワールドツアー(世界11か国)を終えた後は、全国アリーナツアー、あるいは初のドーム公演といった次の大きな展開も着々とその視野に収めつつある。まさに、とどまることを知らないきゃりー旋風といった感じだが、最初のMCで「今日は『ライブに来ている』というより『テーマパークに遊びに来ている』ような感覚でライブを楽しんでいただけたらいいなと思います!」ときゃりーが語った今回の横浜アリーナ公演は、この国のエンターテインメント界の常識を更新してしまうような、とても大きな可能性を感じさせてくれるライブだった。
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ステージには大きな城。セットは何度も変化した。

 音楽ビジネスの中心がCDからライブへと移行する中で、昨今頻繁に語られるようになった「ライブ空間のテーマパーク化」といった観点。ただ、これはなにもこの1、2年に始まったことではなく、たとえば木村カエラは2009年の時点で明確に「テーマパーク」をコンセプトにした2万人規模のライブ『GO!5!KAELAND』を開催していたし、もっと過去を辿れば、松任谷由実が夫の松任谷正隆の総合演出のもと1999年、2003年、2007年と4年おきに開催していた『SHANGRILA』、同じく4年おきに現在進行形(次は2015年?)で開催されているDREAMS COME TRUEの『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND』など、テーマパーク的な大掛かりな演出を前面に押し出したイベントの前例はあった。昨年、「総製作費5億円」というステージセットで話題を集めたSEKAI NO OWARIの『炎と森のカーニバル』も、「メジャーデビューから2年でここまで!」という驚きはあったものの、その系譜にあるものと言っていいだろう。
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ライブ中盤ではきゃりーが“銃撃”されるシーンも。

 今回の『きゃりーぱみゅぱみゅのマジカルワンダーキャッスル』が画期的だったのは、もはやそんな「ライブ空間のテーマパーク化」という概念が逆転して、「テーマパーク空間のライブ化」という境地に達していたこと。昨年の全国ツアー『なんだこれくしょんツアー ~きゃりーぱみゅぱみゅの宇宙シアター~』のオーディエンス層の時点である程度は予想していたものの、週末の夕方早めの時間の開演となった今回、会場内で目立っていたのはコスプレをしたオーディエンスと子供たちの多さ(言うまでもなく、一番目立っていたのはコスプレ×子供の最強コンボだ)。「演奏中に騒いで迷惑」という以前からよくある声に加えて、近年は、真夏の炎天下での長時間の野外イベントやスタンディングの会場の前方に子供を連れてくる非常識な親に対しての「ほとんど幼児虐待」という声も多く、「ライブにおける子供問題」というのは重要なトピックの一つでもあるのだが、きゃりーの単独ライブはそれらの問題とは無縁。室内の巨大な空間の中で、正義と悪が戦うステージ上のストーリー展開に脇目も振らず夢中になって、中田ヤスタカの4つ打ちに合わせてサイリウムを振りながら身体を揺らす子供たちの姿は、普段の生活では滅多に感じることのない、「この国の明るい未来」を感じさせてくれるものだった。
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約1万2000人の観客には、家族連れの姿も目立った。

 《さみしい顔をした小さなおとこのこ/変身ベルトを身に着けて笑顔に変わるかな/おんなのこにもある 付けるタイプの魔法だよ/自信を身に着けて 見える世界も変わるかな》。その後のきゃりーの快進撃の起爆点となった、ちょうど2年前にリリースされた2ndシングル「つけまつける」のよく知られた一節。この歌詞の何がすごいって、過去にも数多くの前例があった小さな女の子の憧れとしての女性シンガー像を作り上げるだけでなく、「変身ベルト」と「つけまつげ」を対比させることで、小さな男の子への視点もちゃんと入っているところ。大人から子供まで、そして小さな女の子だけでなく小さな男の子まで、まるで本当のテーマパークで遊んでいるかのようにみんなが一緒になってきゃりーを応援していたこの日の会場の光景を、その時点で中田ヤスタカがイメージをしていたとしたら、「おそるべし」と言うしかない。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

“絶頂期”を迎えるベテランバンドが増加中 エレカシ、怒髪天、人間椅子らが今輝く背景とは

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結成25周年にして勢いを増している人間椅子。会場には若年層のロックファンも多かった。(撮影:KASSAI / 3PO DESIGN WORKSHOP)

【リアルサウンドより】  今年25周年を迎える人間椅子がワンマンツアー『バンド生活二十五年~猟奇の果~』のファイナル公演を1月18日に東京・TSUTAYA O-EASTで行った。彼らのワンマンライブとしては25年間の歴史の中で最大の会場であったが、チケットはソールドアウト。ギター・ボーカルの和嶋慎治は「バンド活動を死ぬまでやります」と宣言し、ドラムスのナカジマノブは「怒髪天は“最遅”で武道館ライブをやったようだけど、人間椅子は武道館公演の最年長記録を狙います」と、意気込みを語った。  人間椅子のほかにも、結成20周年を越えて、今まさにピークを迎えようとしているバンドは少なくない。今年で結成33年を迎えるエレファントカシマシは、ボーカル・宮本浩次の急性感音難聴のため、2012年10月から約1年、活動を休止していたが、2013年9月に日比谷野音ステージにて復活。2014年1月11日には、さいたまスーパーアリーナにてバンド史上最大規模のライブを成功させた。怒髪天もまた、結成30周年にして勢いを増しているバンドだ。2013年にはももいろクローバーZに「ももいろ太鼓どどんが節」を提供し、従来のファン層以外からも注目を集めた。そして2014年1月12日には、人間椅子のナカジマが言ったように、活動30年にして武道館ライブ達成という史上“最遅”記録を打ち立てた。  音楽ジャーナリストの柴那典氏は、このようにベテラン・バンドが活躍している背景事情を、次のように分析する。 「まず、この3つのバンドに共通しているのは、とにかくライブパフォーマンスが凄い、ということです。彼らは単なる演奏の巧みさではなく、その人自身の歩んできた生き様や人間性と不可分のパフォーマンスを披露している。ベテランのバンドにしか出せない迫力を持っています。また、そういったバンドのファンは、彼らの音楽性だけではなく、人間性にも魅せられているため、流行り廃りとは関係なく追い続けるのではないでしょうか」  また、バンドを取り巻く環境が変わってきていることも、彼らの人気を高める要因となっているという。 「これらのバンドの特徴は00年代以降にファンの世代が若返っていること。90年代以前は10代や20代の音楽ファンがベテラン・バンドのライブに触れる機会はなかなかありませんでした。バンドにとっても、ファンと一緒に年を重ねていくのが普通で、自分たちと異なる世代のファンを獲得するのは今に比べて難しかった。しかし最近ではロック・フェスティバルが一般的になったことで、状況は変わりました。フェスにはある意味ではショウケース的なところがあり、ベテランのバンドから若手のバンドまで、一挙に出演します。すると、先述したようなライブに強いベテラン・バンドは、そのパフォーマンスの凄みによって、世代を越えたファン層を獲得することができる。忌野清志郎さんがそういった流れの先駆者でしょう。彼はフジロックに出演したことにより、往年のロックファンから、バンドを始めたばかりの若者まで、幅広い支持を集めました」
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目標に「武道館公演」を掲げたナカジマノブ。当日は熱のこもったMCで会場を湧かせた。

 さらに、世界的な傾向を見ても、この“ベテラン・バンドの再興”はひとつの潮流となっていると、柴氏は続ける。 「2000年くらいから、海外のロックシーンでもリバイバルブームが続いています。実際、1999年にアメリカで結成されたザ・ストロークスを筆頭に、イギリスのジェイク・バグ、最近ではザ・ストライプスなどが、一昔前のロックを彷彿とさせるサウンドで人気を博しています。70年代のパンク、80年代のニューウェイブなど、かつてのロックは、前の世代の音楽を否定することで発展を遂げてきた部分がありますが、最近ではそういう傾向が少なくなったと言える。むしろ前の世代の音楽もまた、クールな音楽のひとつとして捉える若者が増加している傾向にあるようです。2013年に世界最大のロックの祭典といわれるグラストンベリー・フェスティバルにてザ・ローリング・ストーンズがヘッドライナーを務め、またブラック・サバスの約35年ぶりの復活作アルバムが全米・全英1位を記録したのは象徴的な出来事ではないでしょうか。エレカシや怒髪天、人間椅子といったバンドが新しいファン層を獲得している背景には、古いものはクールではないという価値観が支配的ではなくなった、という世界的な傾向も影響しているのかもしれませんね」  CD不況の反面、ライブ市場が活況となっている昨今、キャリアと実力をかね揃えたベテラン・バンドの活躍は、今後ますます勢いを増しそうだ。 (文=編集部)

激動する世界の音楽業界 3大メジャーの命運を左右する「資本」の動向とは

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この10年でレコード業界の様相はずいぶん変わってきている。

【リアルサウンドより】  ほんの10数年前、90年代後半まで世界の音楽業界の有力プレイヤーは6大メジャーと呼ばれていた。「ユニバーサルミュージック」(MCAレコードから改名)「ソニーミュージック」「BMG」「ワーナーミュージック」「ポリグラム」「EMI」がそれにあたる。しかしその後ユニバーサルミュージックがポリグラムを買収し、ソニーミュージックはBMGを買収。2011年にはユニバーサルミュージックがEMIのレコード音楽部門をシティグループから19億ドルで、ソニーミュージックが22億ドルでEMIの音楽出版部門を買収する事で合意。現時点では「ユニバーサルミュージック」「ソニーミュージック」「ワーナーミュージック」の3大メジャーとなっている。CDが売れないと言われるようになったこの10年強の間に、各社は経営の合理化と不採算部門の清算に追われ、身売りと買収が繰り返された結果、メジャーレーベルの数は半数となったのだ。  現在の3大メジャーに目を向けてみよう。ソニーミュージックは2004年にBMGと合併、ソニーBMGとしてソニーグループとベルテルスマングループが50%ずつ出資することで発足したが、2008年にソニーグループがベルテルスマン側の持ち分を取得することで合意。ソニーグループの完全子会社となった翌年、社名をソニーミュージックに変更している。ユニバーサルミュージックは2006年にフランスのメディア企業であるビベンディが松下電器産業から所有する株式のすべてを買い取り完全子会社化。 ワーナーミュージックは2004年に親会社だったタイムワーナー社が投資家グループに売却しており、2011年にはアメリカの複合企業アクセス・インダストリーズ社による約33億米ドルの買収を受け入れることで合意した。このように残った3大メジャーにしても、その資本は目まぐるしく変化してきている。  昨年にはソフトバンクによるユニバーサルの買収話が話題となった。イギリスのフィナンシャル・タイムズによれば、ソフトバンクが85億ドルでユニバーサルミュージックの買収を提示したが、親会社であるビベンディの取締役会はこの打診を拒否。しかし「ビベンディ社は株価低迷や携帯電話市場での苦境を背景に事業構成の見直しを進めており、ユニバーサルミュージックの売却案も以前から水面下で取り沙汰されていた模様」だと報じられている。ユニバーサルミュージックに限らず、今後も資本が移り変わる可能性は大いに考えられる。  親会社をもつ各社にとって上記のようなリスクは常につきまとう。ビベンディのように他の事業の不調から身売り話が出てくることもあれば、音楽事業自体が親会社にとって魅力のないものに映る可能性もある。上場企業であるワーナーミュージックと非上場の他2社とは事情がやや異なるが、各社とも利益を上げて企業価値を高めることが求められており、裏を返せば経営の足かせとなったときは手放される可能性もあるのだ。  3大メジャーが拡大路線をとる背景もここにある。EMIのレコード部門を買収したユニバーサルミュージックは傘下にある名門レーベル所属のミュージシャンを抱えることでシェアを拡大し、存在感をみせつつある。また音楽出版部門を手にしたソニーミュージックは、ビートルズなどEMIの有する錚々たる顔ぶれのカタログを二次使用することで利益を生み出そうとしている。とはいえ両社とも規模が拡大した分だけコストも大きくなるので、組織合理化などこれまで以上の経営努力が必要となる。  利益を生み出すことが大きな課題となる中、日本の独立資本系レコード会社の最大手であるエイベックスの動向は異彩を放っている。同社は音楽・映像コンテンツ制作とマネジメント事業を主軸に置きながらも、通信会社と強いパートナーシップを結んでプラットフォーム事業で利益を生み出すことに成功した(同社はBeeTVに代表される映像配信サービスの好調により、2013年3月期の決算で売上高1387億円(前期比15%増)、営業利益140億円(同14%増)と創業25年の歴史の中で過去最高を記録している)。音楽事業者として総合的に利益を生み出す「魅力的な企業」になるという意味で、同社の事例は参考になる点が多く存在するのではないだろうか。  今後も、傘下レーベルの移動を含めて世界のレコード会社の再編は続くと見られるが、その際に各社はどのような資本と手を結ぶのか。音楽という文化をうまく活かしていく方向に期待したい。 (文=北濱信哉)

「音にフォーカスすると国境を越える可能性はある」瀧見憲司がJPOPと距離を置く理由

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オーストラリア・ツアー時、メルボルンにてプレイするKENJI TAKIMI。(写真=moon-rocks

【リアルサウンドより】  日本を代表するDJであり、自ら音源制作を手がけるアーティストであり、レーベル「クルーエル」のオーナーでもある瀧見憲司が、国内外の音楽シーンについて語るインタビュー後編。前編【「DJに求められるものが違う」瀧見憲司が語る、海外のクラブ現場事情】に続く後編では、クルーエルで音源制作・リリースを行ってきた経験をもとに、JPOPと距離を置きながら音楽活動を展開する理由や背景、さらにはクラブシーンや音楽メディアの課題についても語った。聞き手は音楽評論家の小野島大氏。(編集部) ――現実にクルーエルのレコードは、海外でも引き合いがあるんですよね。 瀧見憲司(以下、瀧見):何百枚って単位ですけどね。ただ売れてる枚数からすると影響力というか、影響力のある人に対する訴求力は大きい方だと思いますね。具体的に数値化はされてないけど、明らかにそうですね。 ――そんな状況でアーティストとして曲を作る場合、誰に向けて作っている意識なんでしょうか。 瀧見:曲によるけど、このレベルなら(DJが)絶対かけたくなるはずだ、という気持ちで作ってますね。自分の認める音楽のレベルと同等かそれ以上のものかという。 ――「レベル」というのは? 瀧見:出音も含めて、音の構成、成り立ちというか。僕らが作ってるような音楽と、いわゆるJPOP的 な音楽の何が違うかというと、聞き手の側が、音を聴いてるのか曲を聴いてるのかという違いだと思うんですよ。「Jの音楽」って基本的には曲とか歌を聴かせるわけで。どんなに最新のトラックを作ったとしても、結局歌のオケに過ぎないんですよ、突き詰めれば。ロックにしても演奏と歌が一体になったものがロックだと思うんですけど、日本の場合、「オケと歌」になってしまっている。市場で大勢を占める聞き手の関心の方向が「音」に行かないってことでしょうね。 ――そういう聞き手にとっては、歌詞の内容に共感できるかどうかが一番大事だったりするのかもしれませんね。 瀧見:だからJの ほとんどはドメスティックなマーケットで消費されてるだけでしょ。すごくローカライズされてる。音にフォーカスすると国境を越える可能性はあると思いますけれどね。 ――なるほど。さきほど「一曲単位のインパクトではギター一本の弾き語りにはかなわない」という話がでましたけど、「長編小説」であるDJ/クラブ・ミュージックでは、曲や歌というより、音全体を聴かせることが大事であると。 瀧見:その「音を聴く」人の市場は小さいかもしれないけど、自分としてはそういう人たちにフォーカスしたい。そういうところを広げたいな、というところはあります。 ――でもクルーエル・レコードも90年代はラヴ・タンバリンズやカヒミ・カリィなど、「渋谷系」の中核として、今で言うJPOP的な流れに接近した時期もあったと思うんですが、どこかで考え方が変わってきた部分があったんでしょうか。 瀧見:うーん、結局あの渋谷系のブームって、バブル崩壊後から、95年 のオウムと阪神淡路大震災までの時期における、日本の社会が変わっていく変節期の、日本の音楽マーケットの最後の徒花的なものだったと思うんです。クルーエルの場合、そういうブームに乗っかったという自覚も当時はなくて、わけわかんない間にめちゃくちゃ売れてたという感じですね。 ――じゃあ渋谷系のブームを利用して日本のポップス・シーンに切り込んでいたとか、そういうつもりもなかっ た。 瀧見:ないですねえ。結果からみれば、YMOとか拓郎,陽水、松任谷由実とか、ああいう前の世代のミュージシャンの力ってほんとでかいなと思いますけどね。結局あとの世代は彼らを超えてないわけだから、セールス的にも影響力という意味でも。あとクルーエルに関して言えば、自社内フォロワーみたいなものを作らなかったんで。それをやっていたら、違う展開もあったかもしれない。同じような音楽性でも、それ以上のアーティストでなければやる意味がないと思ってたから。明らかに、その当時売れてたうちのアーティストを見本にしたようなアーティストやタレントの売り込みが、ほんと一杯あったんですよ。その後別の会社で大ヒットした人もいましたね。 ――ラヴ・タンバリンズは明らかにその後のディーヴァ・ブームの先駆でしたよね。そこで二の矢三の矢を放っていれば……。 瀧見:そこまでできなかったんですよねえ。 ――拒否してた? 瀧見:拒否とも違うんだよな……ま、ビジネスセンスがなかったんですよ、という事にしといて下さい(笑)。 ――でもそこでイケイケにならなかったから、ブームに流されず、25年近くもやれたというのがあるんじゃないですか。25年前から続いているインディーズ・レーベルがいくつあるか考えたら……。 瀧見:そう考えるしかないんですかね(笑)。
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久方ぶりのオフィシャル Mix CD『XLAND RECORDS presents XMIX 03』で、鋭敏な音楽センスを改めて示した。

――渋谷系そのものはどう評価してますか。 瀧見:過去に開かれてたムーヴメントでしたよね。ミュージシャンにとってもリスナーにとっても。あの音楽を聴いて、皆ほかの音楽も聴くようになったじゃないですか。アーティスト個々というよりは音楽そのもののファンを増やしたという意味では、意義のある動きだったと思います。60年代のサンフランシスコみたいな感じで、渋谷に来てドラッグの代わりにレコード買ってたという(笑)。今はそういうリサイクルの幅がすごく狭くなっているでしょう。渋谷系の時代とは反対にリスナーが音楽史を遡ったり、過去の音楽を聞かなくなっている、という感じはしますね。ロックにしても、孫引きのリサイクルみたいなのばかりになってる。でもDJは過去のものを聴かなきゃ絶対できないですからね。最近面白いと思うのは、今の20代ぐらいのハウスやテクノのDJって、90年代ぐらいのハウスやテクノをレア・グルーヴとして買い漁ってるんですよ。こんなのが欲しいのか!っていうようなものを(笑)。ちょっと前の100円コーナーで叩き売られていたようなレコード。逆に今、そういうのは探せなくなっているから。それを、当時を知らない若者が、このレコードのB面がヤバイって言って探してるという。もちろん新しいジャンルやムーブメントと一緒に出て来る時に新譜だけしかかけないってDJもいるけど、そういう風にやってきた人はいずれ行き詰まる。その後どうするかっていうのは、絶対直面する問題ですね。 ――なるほど。ほかにクラブの現場の変化について思うところはありますか。 瀧見:うーん、今は厳しいと思いますね。世代交代のこととか風営法の問題も含めて。あと、音だけならクラブに行かなくても聴けるじゃないですか。ネットで人のDJミックスをいくらでも聴ける時代だし。でもそれではクラブの魅力は伝わらない。一方で、今の日本のジャーナリストでクラブの現場にまめに足を運んでいる人ってほとんどいないと思うんですよ。年齢的な問題もあるし……。 ――すいません(笑)。 瀧見:実際、朝まで5時間いろって言われても難しいでしょう? ――はい、確かに(苦笑)。 瀧見:音そのものだけでなく、クラブ的な体験まで含めて、その魅力をきちんと言葉で伝えることのできる人や場が少なくなっている気がしますね。だから(客の)年齢層がすごく高くなってる。アラサーとかアラフォーの世界ですよ、クラブに来る人たちは。高年齢化によって懐古主義の壁を越えられなくなってるんですよ。それを体験していてもしてなくても、昔はよかったなあって。特定のジャンルだけでなく、クラブ全体がそうなってると思う。ロックもそうなのかもしれないけど。 ――若い人にクラブの魅力を伝えきれてないから。 瀧見:風営法の問題も大きいですけどね。そのことに限らず、今若い世代に向けて「批評」というものが極端に少なくなっている。メディアもアーティストの言うことをそのまま載っけてるだけで、ジャーナリスト的な視点が欠落しちゃってる。読み手の側もそれを求めていないっていうのが寂しいですね。だからウチの作品もレコードに関しては媒体には何も載らないんですよ。載らないけど、そこそこの数は出てビジネスとしては成立してる。レコード屋のバイヤーの人のレビューだけで成り立っている。 ――そのへんは元ジャーナリストとして忸怩たるものがある。 瀧見:自分が読みたいと思うものを書いてる人がいないっていうのも、正直あるんですけどね。クラブ文化に関しては、なかなか現場に来ることが難しいのはわかるし、またそれを文章にするのも難しいというのも理解できるけど、そこで現場とメディアがどんどん離れていってる。離れていても成り立ってしまっているのが現実のマーケットと構造なんですね。 ――でも、それは必ずしも悪いことばかりじゃないですよね。 瀧見:うん。そういう目に見えない小さなマーケットはあちこちにいっぱいあるんじゃないかな。「Jの経済圏」からは離れていても。クルーエルの場合も、たとえ数百枚単位でも、必要とされて、そこから違う国や文化圏に着実に広がっているという、しっかりとした手応えがありますからね。そこはヴァイナルにこだわってやってきた意味のひとつでもあると思う。 (取材・文=小野島大)
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KENJI TAKIMI『XLAND RECORDS presents XMIX 03』(KSR Corp.)

■リリース情報 『XLAND RECORDS presents XMIX 03』 発売:2013年10月9日 価格:¥2,520(税込み) Crue-L facebook

前田敦子が挑んだ異例の「ミュージック・シネマ」――映画女優路線を進む彼女の野望とは?

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前田敦子の「ミュージック・シネマ」『Seventh Code』

【リアルサウンドより】  前田敦子が主演を務めた映画『Seventh Code』が1月11日から一週間限定で公開され、小規模公開ながら、劇場では連日満員の状態が続いている。この映画は、元々は3月5日に発売されるシングル、『セブンスコード』のMVとして制作されたものだ。ザクザクとしたギターのリフレインが耳に残る、アップテンポな疾走感のあるロック楽曲。そのイメージを元に、『CURE』『カリスマ』などで知られ、海外の受賞経験もある鬼才黒沢清監督がメガホンをとった。AKB48のプロデューサー秋元康に「映画らしいものを」と依頼され、監督自身が脚本を書き起こした。結果的に、エンディングで突然前田敦子が歌いだすという、MVの枠を超えた異例の「ミュージック・シネマ」が仕上がった。  黒沢清といえば、熱狂的なファンを持つ、海外からの評価も非常に高い監督。今回の『Seventh Code』もMVでありながら『第8回ローマ国際映画祭』で監督賞と技術貢献賞の二冠に輝いた。前田敦子も頻繁に名画座通いをするなど、大変な映画好きで知られる。その2人のコラボに期待して、映画ファンが押しかけた。  デビュー映画『あしたの私のつくり方』以来、定期的に映画に出演してきた彼女。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』などのライトな層に向けた映画だけではなく、最近は、映画通から評価が高い山下敦弘の作品(『苦役列車』『もらとりあむタマ子』)に出演するなど、本格的に映画女優としての道を歩もうとしている。今回の黒沢清監督とのコラボは、前田敦子としても願ったりかなったりの企画だろう。黒沢清監督も、前田敦子を唯一無二の存在であるとして絶賛の声を送っている。  「世界の黒沢」が認めた彼女の魅力はどのようなところにあるのだろう。映画評論家の前田有一氏は以下のように分析する。  「もともと彼女は映画が大好きで、女優志向が強い方でしたよね。AKB48のセンターを務めていたのに、大作映画からは背を向けて、山下敦弘監督作品などのように少々マニアックな映画ファンが見るような映画に出演する。自身が映画ファンであるだけに、アイドルとしてだけ見られるというのではなく、本格的な作品で女優として認められたいという思いがあったのでしょう」  「アイドルがやらない役も引き受ける」という、彼女の体当たり的な役作りも業界筋からの評価が高い一因のようだ。  「批評家筋からも認められた『もらとりあむタマ子』では、20代のやさぐれたニートという、だらしのない汚れ役を演じるなど、アイドル女優なのに度胸の据わったところがあります。コタツでだらだら過ごして、お尻をかいたりするような役なんて、他のアイドル女優はやりたがらないですよね。すごくプロ意識が高いところがある。こういう役柄はやりたくない、というのではなく、演技力を高めるために様々な要素を吸収していこうという気概が感じられます。だからこそ前田敦子は映画監督からも評価されているのでしょう。大きな事務所に所属するタレントさんを起用した場合、事務所からの色々な制約の中で映画監督は映画を撮らなくてはいけない。例えば、戦争モノを撮るのに坊主にはなれない、これはいやだ、あれはいやだ、というような。そんな中で前田敦子は先に述べたニートの役など、監督の意図どおりに、なんでもやってくれる。『苦役列車』では下着一枚になって水辺で戯れるというシーンもあったり、『あしたの私のつくり方』では、16歳で入浴シーンにチャレンジしたり、役作りのためにばっさりと髪を切ったりしています。そのような真面目な姿勢が業界では評価されているのでしょう。いまどきの映画のギャランティーはそれほど高くありませんから、専業俳優の方でも、一本の映画のために役作りをしてしまうと他の映画出演時に影響が及んでしまうので、極端なキャラクター付けが必要な映画を避ける傾向があります。そのようなキャラクター付けを厭わない前田敦子は貴重な存在なのでしょう」  だが、「前田敦子は現段階では代表作がない」と前田有一氏は指摘する。 「厳しい言い方をすると、まだ突出して演技力があるというわけではないのですが、アイドルなのに『やる気がある』というところが垣間見えます。まだまだ前田敦子の限界を引き出してくれる作品、監督には出会えていない印象がありますが、それだけ伸び代があるということ。いい意味で彼女を『いじめる』作品、監督に出会うことで、今後本格派映画女優として大成する可能性は大いにあります」 今回のMVはやる気のある主演女優・歌手と、スタイリッシュな映像美を誇る監督がタッグを組んだ、相性の良いコラボレーション作品となった。劇場で見逃した方も、3月5日発売シングル『セブンスコード』特別盤に特典DVDとして『Seventh Code』が付属される予定なので、そちらをぜひチェックしてみてほしい。前田敦子の、歌手としての魅力だけでなく、「映画女優」としての魅力にも触れられるはずだ。 (文=編集部)

映画『Seventh Code : セブンスコード』予告編