ウルフルズ、4年半ぶりに再始動  ソウルフルでコミカルな音楽性はなぜ支持され続ける?

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実に4年半ぶりとなる復活、活動再開を宣言したウルフルズ。

【リアルサウンドより】  2009年に活動休止したウルフルズが4年半ぶりに復活、活動を再開させることをオフィシャルホームページ上で発表した。バンドを休んでいる間も、ソロで活動を続けていた各メンバー。昨年8月に行われたトータス松本のライブに、ギターのウルフルケイスケがゲスト出演したことがバンド復活のきっかけとなった。翌9月にはベースのジョン・BとドラムのサンコンJr.を合わせた4人でスタジオに入り「ガッツだぜ!!」を演奏。手応えを感じることができたため「本格的にやろう」と決心、今回の活動再開に至ったのだという。  ウルフルズの奏でる音楽についてギタリストのマーティー・フリードマンは次のように述べている。「歌詞はコミカルで遊び心が満載だけど、サウンド自体はすごくちゃんとしてる。メロディーは歌謡曲の王道で分かりやすいし、コミカルさとまじめさが混じっている」(日経トレンディネットより引用)。あくまで歌謡曲をベースに、コミカルな歌詞やグルーヴィなバンドサウンドなど様々な要素を取り入れたのがウルフルズの音楽性というわけだ。そんな中でも彼らのオリジナリティとなっているのがトータス松本のソウルフルなボーカル。シングル曲に「サムライソウル」と名付けるほど、ウルフルズとソウルミュージックは切っても切れない深い関係がある。  ソウルミュージックとは1950年代から1960年代の初期にかけて生まれた、ゴスペルやリズムアンドブルース、ジャズなどから派生した音楽の体系。70年代にはマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハサウェイなどの登場により一般にも浸透し、日本でもその影響を受けたミュージシャンが現れるようになる。ラッツ&スターの鈴木雅之、大澤誉志幸、佐藤竹善、久保田利伸。そういった先輩ミュージシャンの影響を直系で受けたトータスのボーカルもまた、エモーショナルで表情豊かなものである。特筆すべきなのはこういったソウルフルなボーカルを比較的ストレートなバンドサウンドに持ち込んだこと。日本人ミュージシャンではソロシンガーが一般的だったソウル・ミュージックをウルフルズというバンドで行ったこと。そしてマーティー・フリードマンの指摘するように、それらのサウンドを歌謡曲とも融合させたことにウルフルズの独自性、そして息の長い人気の秘密が隠されているのかもしれない。
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ウルフルズ - 『ONE MIND (初回生産限定盤:ベストアルバム付き 復活だぜ!!盤/復活記念77,777枚限定)』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 ウルフルズは本日、配信限定シングルとなる『どうでもよすぎ』をリリース。今月28日には『MUSIC STATION』に出演し、3月16日に復活後一発目のライブ「uP!!!SPECIAL MUSIC COMPLEX 2014,Spring」を両国国技館で開催。5月21日に約6年半ぶりとなるオリジナルアルバム『ONE MIND』のリリースを控えている。再び日本中にソウルフルな歌声を響かせるか、その活躍に期待したい。 (文=北濱信哉)

AKB48「大組閣」最大の懸念 SKE48松井と乃木坂46生駒の交換留学は成立するのか

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乃木坂46『前しか向かねえType A(初回限定盤)』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  昨夜、Zepp DiverCity TOKYOで行われた『AKB48グループ大組閣祭り』。Google+でのメンバーが以前投稿した内容によると、プロデューサーの秋元康氏は「涙涙の組閣にはしない」「必ずプラスになる組閣にする」と伝えていたというが、結果的には一部メンバーは泣き崩れるなど、たくさんの涙を生む結果となった。AKB48の中でも中堅と言われていた、佐藤すみれがSKE48TeamE、藤江れいながNMB48TeamN、そして近野莉菜はJKT48へと移籍が発表され、受け入れがたさを感じさせる表情を見せていた。やはり、オリジナルメンバーを追いかけながらAKB48が大きくなる時間を過ごしてきた彼女たちにとって、秋葉原を離れることには多少なりとも不安と憤りがあるのであろう。彼女たちの中で心の整理が出来るまでには時間が必要かもしれない。  対して、AKB48の9期メンバーは事前に大場美奈、市川美織は兼任をしていたこと、そして旧大場Team4として一度チームの解体という経験を積んでいるということもあるのか、現状を前向きに捉えているように感じる。SKE48TeamSへの移籍が決まった山内鈴蘭は「SKE48の名に恥じぬよう山内鈴蘭、一生懸命がんばります!!!」とGoogle+で早くも発言している。上が詰まっているAKB48の先輩たち、そしてフレッシュさで今プッシュされている小嶋真子、岡田奈々、西野未姫らの世代との狭間で、新たなチャンスを求めていた部分もあり、この組閣で新たな活路となる可能性を見出しているのであろう。  さて、この辺で簡単にではあるが今回の組閣の各チームの状況を分析してみたいと思う。AKB48から。TeamAは高橋みなみのキャプテン復帰&小嶋陽菜のTeamA復帰で本来持ち合わせていたAKB48らしいTeamAカラーの復活を目指していると考えられる。島崎遥香、宮脇咲良、矢倉楓子とAKB48のセンター候補が揃っているのも心強い。TeamKの人事は山本彩の加入に尽きる。今回の組閣では、一番のテーマは間違いなく大島優子卒業後のTeamKの再生だったはず。そこへの山本の補強は間違いなく大きい。また、キャプテン横山由依とは横山のNMB兼任期に友情を築いているだけに、横山の負担の軽減にも繋がるだろう。TeamKの“成り上がり”的なカラーがハッキリした形となった。  TeamBで特筆すべきは、何よりも渡辺麻友の復帰であろう。柏木由紀との“まゆゆきりん”こそが世間が持つTeamBのカラーだったことを考えると、TeamBの原点回帰。さらにいうと今回の組閣は、第一期の組閣前へのAKB48グループ全体の原点回帰路線に見える。このペースでSKE48の分析へ……と筆を進めて行きたいが、このままだと記事が終わらないので、それはまた別の機会とさせて頂きたい。  ここで、一つ最大の懸念を感じている部分を上げておこう。それは乃木坂46生駒里奈とSKE48松井玲奈の交換留学という形での兼任である。AKB48グループと乃木坂46は公式ライバルで、同じ空間、時系列で存在しながらも、別々の世界が存在するパラレルワールドのような関係性を作り上げてきた。そんな中、実際に交わらせることでお互いの世界を崩してしまうのではないのか?という懸念がある。生駒が劇場公演を経験することで得るモノとは何なのか? 総選挙へ出る必要があるのか? そして、2月22日の横浜アリーナのコンサートで発表された『16人のプリンシパルⅢ』に松井玲奈は参加出来るのか? 劇場公演がAKB48の根幹なら、プリンシパルこそが今の乃木坂46の魂の礎である。果たして、この交換留学は成立するのだろうか?  兼任、交換留学に続いて、SKE48木崎ゆりあ、NMB48小笠原茉由、HKT48中西智代梨ら、各グループからのAKB48への完全移籍メンバーも生まれ、今後チームは常に流動化するという概念を提示することが一つの目的だったのではないか?という憶測も出来なくはない。実際にこのような戦力分析的なことが行えるのも、ペナントレースという土台のもと、劇場公演のゲーム化へと繋がっているからかもしれない。そのためには、常に流動的なペナント運営が必要である、ということなのだろう。あくまでもゲームとして考えた時には非常にわかりやすく、新しいファンを取り込める可能性は秘めているかもしれない。ただ、これまで愛情を込めて劇場へと足を運んできたファンにとっては、流動化するチームどう受け止めたらいいのか?  その思いに応えるだけの、答えを提示出来るか否かが、これからのAKB48グループの大きな課題となるだろう。 ■エドボル 放送作家。『妄想科学デパートAKIBANOISE』(TOKYO FM水曜25:00-)『安田大サーカスクロちゃんのIdol St@tion』(目黒FM隔週木20:00-)、『Tokyo Idol Festival2013』(フジテレビNEXT)など、テレビ・ラジオなどの構成を担当。サイゾー、SPA!などでもアイドル関連のインタビューを中心に執筆中。

「地下アイドル」化するグラビアアイドルたち AKB48の水着パフォーマンスも影響か? 

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危ない女の子シスターズ『ココロノスキマ』(トリプルディープロモーション)

【リアルサウンドより】  最近、イメージビデオなどで活躍するグラビアアイドルが、地下アイドルとして歌手活動を展開するケースが目立っている。  FineColorの新原里彩、ガールズバンド・BRATSの黒宮れい、危ない女の子シスターズの高岡未來などは、いずれもグラビアアイドルとしても人気だ。高岡未來はキャリアも長く、2007年から12歳にしてジュニアアイドルとして活躍していたことから、現在、本格的にアイドルとしてCDをリリースしていることに新鮮さを覚えるファンも少なくないだろう。2人組のユニットだったWinkを、エレクトロ・ポップを基調とした楽曲で現代的に再解釈したような音楽性は、Base Ball Bearの小出祐介にも絶賛されている。

危ない女の子シスターズ / ココロノスキマ

 かつてグラビアアイドルと、歌手活動を展開するアイドルの間にはある程度の線引きがあったが、ここにきてグラビアアイドルが歌を披露するようになったことには、どんな背景事情があるのか。  イメージビデオや地下アイドルの業界に詳しい、AVメーカー「性格良し子ちゃん」のターボ向後氏は、その理由を次のように語る。 「イメージビデオなどに出演していたグラビアアイドルが、地下アイドルとして活動するようになったのは、AKB48が『Baby! Baby! Baby!』などで水着姿を披露するようになったことが影響しているのではないでしょうか。これまでもアイドルが水着を披露したり、また逆にグラビアアイドルが歌手デビューすることはありましたが、明確に『グラビアアイドルのアイドル化』が意識されるようになったのは、AKB48以降だと思います。彼女たちが水着で歌う姿を観て、グラビアアイドルの事務所が自社のタレントを歌わせるようになったのかと。また、これまでイメージビデオや握手会などが主な仕事だったタレントに、仕事の機会を増やして、モチベーション上げるという意図もあるのかもしれません。実際、かつてはイメージビデオを2、3作品出しただけで辞めてしまうタレントが多かったですが、最近は息の長い活動を続けるケースが増えているように感じます」  また、グラビアアイドルのステージングには、特有の面白さもあると、同氏は指摘する。 「もともと歌手志望ではないタレントたちが歌っているケースも多いため、アイドルの魅力のひとつである『拙さ』がより際立っている場合があり、ある種の生々しさを感じます。また、ステージに立ち続けているうちに、歌やダンスの楽しさに気づいて急成長するメンバーがいたりと、予測できないところも面白い。グラビアやイメージビデオを通じて自分の『見せ方』をよく知っているため、セルフプロデュースに優れた一面がある場合もありますね」  グラビアアイドルのファンにとっては、彼女たちがアイドル化することによって新たな魅力を発見することが出来るため、こうした流れは歓迎されているとのことだ。なお、ターボ向後氏おすすめの地下アイドルグループについては、近日記事を公開する予定である。 (文=松下博夫)

嵐・大野智がステージで見せる集中力 シャイな性格に秘めたエネルギーとは

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シャイな性格で知られる大野智。

【リアルサウンドより】  2月13日にFM yokohamaで放送された「ARASHI DISCOVERY」。リスナーから届いた「大野くんにはキスシーンのイメージがほとんどありませんが、自分のキスシーンはあった方が嬉しいですか? それとも恥ずかしいですか? 私は大野くんの熱烈なキスシーンが見たいと思っています」というお便りに対し「僕はムリだわ。恥ずかしいからキスはないなぁ。松潤は何回キスシーンをやってるんだろうね?」と話したの大野智。彼のシャイな性格はファンの間でも有名なところである。  ミュージシャンや芸人の中には割りとよく見かけるシャイな人々(というかむしろ彼らのような職業では多数を占めるかもしれない)。しかしタレントやアイドルなど「他人に見られること」を生業としている彼らの場合はたいてい「明るく元気、社交的」なことが大半で、シャイな性格にも関わらず活躍できている人は少数派だ。しかしジャニーズに限って言えば、男社会ということもあってか特に女性に対してシャイなメンバーが多い。そんな中でも大野のシャイっぷりは群を抜く。写真家のshizuru-satonakaは雑誌『anan』の巻頭グラビアで大野の写真を撮影したときのウラ話を自身のtumblr.でこう綴っている。「大野さんが正直照れ屋、というかシャイな性格でいらっしゃる、というのはいまやファンならずとも周知の事実。『目線くださーい』『笑顔お願いしますー』そんな声がかかると、シャイな大野さんはやっぱり少し緊張されたり、照れられたり…。大野さんって『このカット、ラスト1枚です!』ってシャッター切り終わった直後が一番リラックスして、いい笑顔になるんです」。キスシーンや女性に対してのみならず、普段の仕事、写真撮影のようなときから大野のシャイっぷりは発揮されているようだ。  もっとも彼の場合、シャイな性格はネガティヴに働かない。普通に考えると「恥ずかしがり屋」という性格は消極的だったりナイーヴだったりと仕事に支障をきたしそうなものだが、大野のシャイな性格は音楽や芝居をやる上でプラスに作用しているようだ。舞台『プーシリーズ』を手がけた劇作家のきだつよし氏は雑誌『ASIAN POPS MAGAZINE』のインタビューで以下のように語っている。「(大野智は)ああいうシャイな人だから、中にものすごいエネルギーを持っているはずなんです。あと、彼は集中力がある人なので、吹っ切るというより集中していると僕は感じているんです。その瞬間にハンパなく集中している。ドラマ『魔王』でもすごく集中しているシーンがありましたね。あれを見て、“この人はアイドルなのに鼻水たらしながら泣いている姿をテレビでさらせるほど集中できる人なんだ”と改めて感動しました。踊りにせよ、絵にせよ、芝居にせよ、全て彼の集中力の賜物なんだと思います」。シャイな性格の中に秘めたエネルギーと集中力は、コンサートのステージや芝居の舞台といった大一番で発揮される。それが大野智をトップアイドルたらしめているものなのかもしれない。  先のラジオで「俺は基本的に恋愛物はやりたくないんだよね。40歳くらいになって恋愛物をやりたいって思うかもしれないけど。いつになるか分からないけど…見れるかもしれないですね」と話を締めくくった大野。ファンが彼のキスシーンを観れるようになるには、まだしばらく時間がかかるかもしれない。 (文=北濱信哉)

剛力彩芽、JUJU、the pillowsも 「ダンスコンテスト」が増えている背景は?

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剛力彩芽『あなたの100の嫌いなところ』(Sony Music Records)

 新曲のリリースにともない、「ダンスコンテスト」を開催するミュージシャンが目立っている。  剛力彩芽はニューシングル『あなたの100の嫌いなところ』が2月26日にリリースされることを記念し、特設ページにて「“ガオガオ”ダンス!コンテスト」を開催。振付師のWARNERとともに創作したという「ガオガオダンス」は、ヒップホップを軸にしながらも、ガーリーな仕草が散りばめられた振り付けが特徴的で、上手く踊るには機敏さと愛嬌が求められそうだ。

剛力彩芽『あなたの100の嫌いなところ Let's Dance! ver.』

 JUJUもまた、両A面シングル『Door/Hot Stuff』が2月19日にリリースされたのをきっかけに「Hot Stuff ダンスコンテスト」の開催を発表。オフィシャルサイトにて、二人組以上で「Hot Stuff DANCE ver」をコピーして踊る動画、もしくは完全オリジナルダンス動画を募っている。セクシーかつクールな楽曲だけに、踊り手にはある種の色気も必要かもしれない。

JUJU 「Hot Stuff ~DANCE ver.~」 資生堂マキアージュCMソング

 異色の試みとしては、今年で結成25周年を迎える実力派ロックバンド・the pillowsが、楽曲のカバー映像とともに、「Fuuny Bunny」にあわせて踊る映像を募集している。YouTubeでは、エアギターの動作が印象的な模範振り付け映像も公開中である。

ダンスコンテスト 模範ダンス映像

【リアルサウンドより】  このように「ダンスコンテスト」を行うミュージシャンが増加している背景には、メディア環境の変化が大きいだろう。かつて新曲のプロモーションは、テレビやラジオ、あるいは雑誌といったメディアを介して一方向的に行われることが普通だった。しかし、YouTubeやニコニコ動画といったネットメディアの興隆にともない、個人が自由に情報を発信できるようになると、ユーザーはただ視聴するのではなく、自主的に「参加できる」コンテンツを求めるようになってきた。そうしたニーズに応える手法のひとつが「ダンスコンテスト」だ。ダンスは多くのひとが気軽に参加できるうえ、その動画映像はSNSなどでのバイラル効果も強く、ネットとの親和性も高い。加えて、ダンスを覚えるためにユーザーがCDを購入する可能性も高まる。  2013年に大ヒットしたAKB48『恋するフォーチュンクッキー』は、そうしたプロモーションの最も成功した事例のひとつ。覚えやすい振り付けが多くの人々に好まれ、企業や自治体までが、同作のダンス動画をYouTubeに公開したのは記憶に新しいところだ。CDもロングヒットしており、累計売上は150万枚を超えたという。多くの人のあいだで同曲を踊ることが、かつてのカラオケのようにコミュニケーションのキッカケとして機能しているのは間違いない。  アイドルやダンスユニットだけではなく、シンガーソングライターやバンドにも広がる、この「ダンスコンテスト」というプロモーション手法。こうした流れがさらに一般的になると、90年代に「カラオケで楽しめる曲」が求められたように、「ダンスで楽しめる曲」のニーズが高まり、JPOPの音楽的傾向に変化が生まれる可能性もありそうだ。 (文=松下博夫)

松任谷由実、aiko、そしてmiwaへ 女性シンガーソングライターの美しき系譜とは?

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miwa - 『Faith(初回生産限定盤)(DVD付) 』(SMR)

【リアルサウンドより】  2011年にリリースされたファーストアルバム「guitarissimo」でいきなりオリコン1位を獲得。昨年は自身初となる武道館公演を成功させ年末の紅白にも出場と、若手ミュージシャンのなかでは頭ひとつ抜きん出た感のあるmiwa。これまで松任谷由実からaikoらへ脈々と受け継がれてきた女性シンガーソングライターの系譜を引く継ぐ存在として、音楽業界内外から彼女への期待が高まっている。そこで今回はmiwaが先輩シンガーソングライターたちから引き継いだ「素養」に注目してみようと思う。  ユーミン、aikoそしてmiwa。三者を並べて聴いてみるといくつかの特徴に気がつく。例えば歌唱法はそのひとつ。彼女たちはみな軽く鼻にかかったような歌い方をするのだが、これは「鼻腔反響法」という立派なテクニック。口と鼻の中で自分の声をいったん響かせてから発声する方法で、乾燥した気候の下で暮らす欧米人は(喉を傷めないため)自然とこの発声を身に付けるが、高湿度な環境下にある日本人は意識してトレーニングに取り組まないとこの技術は身に付けられないといわれる(よく日本人シンガーが「喉で歌っている」と形容されるのもこれが理由)。  また女の子の気持ちを代弁したリアルな詞世界も三人の特徴といえそうだ。miwaは普段メロディーが先に出来上がり、あとからその曲に合った詞を考えるのに苦労するとインタビューで語っているが、彼女のインスピレーションの素、少女マンガに実体験を織り交ぜた真っ直ぐな歌詞は多くの女子たちから共感を呼んでいる。ソチ五輪のスキージャンプ女子個人ノーマルヒルで4位に入賞した高梨沙羅選手はmiwaのファンを 公言しており、これまでのジャンプスタイルに限界を感じていたときに「chAngE」を聴いて、新たなスタイル導入というチャレンジへ背中を押してもらったという。  さらにひとつのジャンルに囚われず、幅広いジャンルの曲を手がけているのも彼女たちの共通点。三人とも出自の弾き語りにはじまり、ポップスからバラード、ロック調のものまで様々なスタイルの楽曲へ意欲的に取り組んでいる。そのような「枠にとらわれない」活動スタイルはmiwaが現在目指しているものであり、ユーミンやaikoがかつて切り開いてきた道でもある。もちろん優れたソングライティング能力についても忘れてはいけない。miwaの場合Naoki-Tという強力なプロデューサーが存在するのも大きい。昨年リリースしたアルバム「Delight」からはこれまで以上に二人三脚で曲作りをするようになったと本人は語っているが、miwaの持って生まれった良質なポップセンスにNaoki-Tの変幻自在なアレンジが加わることで、楽曲の幅が格段に広がりポップに「豊かさ」が加わったように感じられるようになった。  2月12日には13枚目となるシングル「Faith」をリリースしたmiwa。およそ5ヶ月ぶりとなる本作は収録された3曲すべてにタイアップのついたシングルで、エレクトロを導入したロック曲「Faith」やポップ全開の新機軸となる「It’s you!」などバリエーション豊かな聴き応えのある作品だ。ぜひ実際に本作を手に取り、次世代を担うシンガーmiwaの「いま」を感じて欲しい。 (文=北濱信哉)

羽生結弦、平野歩夢、平岡卓らが好きな曲は? ソチ五輪選手の音楽事情まとめ

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back number『繋いだ手から(初回限定盤)』(ユニバーサル・シグマ)

【リアルサウンドより】  2月7日よりロシア連邦のソチで開催されている冬季オリンピックが、連日メディアを騒がせている。特に今回の日本勢はキャラの立った選手が多く、結果はもちろんのこと人物像も大いに注目されているところだが、では、そんな彼らは普段どんな音楽を聴いているのか? 各所で語った証言などから探ってみた。  まずは、日本男子フィギュア初の金メダルを獲得した羽生結弦選手。ショートプログラムで使用したゲイリー・ムーア「パリの散歩道」も、再プレスされるなど話題だが、もう1組、そんな“羽生効果”の最中にいるのが3人組バンド・back numberだ。とあるインタビューで羽生選手がファンを公言して以降、一般の注目度も急上昇。ついにはオリコンシングルチャートでトップ10入りも果たした。羽生選手はこのほかにも、BUMP OF CHICKENなども挙げているが、一方でTVアニメ『SKET DANCE』より生まれた3ピースバンド・The Sketchbookもお好きのよう。この発言に加え、好きな映画に細田守監督『時をかける少女』『サマーウォーズ』と答えていることから、一部ではアニオタ説も浮上している。  続いて、スノーボードの男子ハーフパイプで銀メダルに輝いた平野歩夢選手が好んで聴いているのは、ジャパニーズヒップホップやレゲエ。しかも卍LINEやRYO THE SKYWALKERなど、15歳という年齢には似合わずなかなかにコアなアーティストが好きらしいが、これも彼が「かずくん」と呼んで慕う元オリンピック代表・国母和宏選手の影響だろうか? このほかにはAKB48UVERWORLDも挙げているが、ソチで実際に競技直前まで聴いていたとされるのがHilcrhymeのTOCによる未発表曲「Swag in my skill」。平野選手とTOCは同郷で以前から親交があるのだとか。また、同じく銅メダルを獲得した平岡卓選手も、好きな音楽はレゲエやヒップホップで、韻踏合組合Def TechZeebra、LAMP EYEがお気に入りだそう。スノボ文化とヒップホップ・レゲエの親和性の高さが見てとれる。一方、スノーボード男子スロープスタイル代表の角野友基選手は、”金爆”ことゴールデンボンバーをよく聴いているようだ。  ノルディックスキー複合の個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁斗選手も長時間の移動の際などはiPodが欠かせないとブログで度々綴っている。中でも、山下達郎「パレード」には車酔いを抑えてくれる効果があるとし、「まるでそこにパレードを見ているかのような気分になる」のだそう。  そして、数々の世界大会を総なめにしながら、惜しくもメダルに手が届かなかった女子スキー・ジャンプの高梨沙羅選手。彼女は試合前のウォーミングアップなどの際、いつもイヤホンをしている姿が目撃されている。最近のお気に入りはシンガーソングライター・miwaで、「don’t cry anymore」「chAngE」を聴いて彼女のファンになり、練習の際にもよく聴いていると語っている。さらには、その話を知ったmiwaが高梨選手の言葉に励まされながら当時制作中だった『again×again』を完成させたというエピソードも。アスリートとミュージシャンがお互いに高めあっている様子はやはり感動的でもある。一方、高梨選手は、別の取材でいつも聴いている音楽について質問を受けた際、「(アップ中には)特に曲名を意識してはいない。適当に入れているのをバラバラに聴き流しているだけ」とも答えており、アーティスト名こそ明らかにしていないものの、音楽ファンであることは間違いなさそうだ。  短期間で集中力を高める際に、音楽が有効だと言うことはさまざまなところで言われているが、それはことアスリートにとっても例外ではないよう。とすると、この輝かしい結果にも多かれ少なかれ音楽が貢献していると考えることもできるのではないだろうか。 (板橋不死子)

「ソロアイドルの時代」の幕開けか? 武藤彩未、遠藤舞らが輝きはじめたワケ

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ソロアイドルの注目株として期待される武藤彩未。

【リアルサウンドより】  AKB48ももいろクローバーZモーニング娘。といった「グループアイドル」が一大ムーブメントとなって久しいが、ここに来て再び「ソロアイドル」にも注目が集まりはじめている。  元・さくら学院のメンバーで、2013年4月よりソロ活動を開始した武藤彩未は、2014年4月23日にメジャーデビューアルバム『永遠と瞬間』をリリースすることが決定。ユース・カルチャー誌『QuickJapan』で2号に渡って特集が組まれるなど、メディアへの露出も増加中である。アイドリング!!!のリーダーを務めていた遠藤舞は、2月14日に卒業ライブ『さよならは別れの言葉じゃなくて 再び逢うまでの遠い約束ング!!!』にて同グループを卒業するとともに、赤い公園の津野米咲からの楽曲提供によるセカンド・ソロシングル『MUJINA』のリリースを発表。ピアノ演奏という得意分野を武器に「Piano Pop Rock」というジャンルを開拓していくとのことだ。福岡を拠点に活動するLinQの姫崎愛未は、ボカロアイドル・“amihime”としてソロデビューすることが決定している。現在アイドルとして活動中の姫崎を一種の「ボーカロイド」と見立てて、ニコニコ動画等で注目を集めるボカロPたちがamihimeのためにオリジナル楽曲を制作するという挑戦的なプロジェクトだ。  このように、ソロとして活動するアイドルが目立っている背景には、どんな事情があるのか。『グループアイドル進化論』『映画秘宝EX激動!アイドル10年史』などの共著者である、アイドル専門ライターの岡島紳士氏は、その理由を次のように分析する。 「グループアイドルの場合は、メンバーが9人いれば9人分のファンが集まるため、ライブの動員数も増やしやすく、握手会などによってCD売り上げ枚数を重ねることができます。そのため、ソロアイドルよりも有利な面がありました。しかし、AKB48のような王道的なアイドルグループだけではなく、ももいろクローバーZのような非王道的なアイドルグループがブレイクしたことにより、アイドルのスタイルが多様化し、これまでになかったようなグループが多数生まれました。そのひとつとして、ソロアイドルも面白くなってきたのではないでしょうか」  グループとして活躍するアイドルが多くなると、その反面、ソロアイドルが新鮮に映ることもあるだろう。また、グループに推しているメンバーがいる場合、そのソロ歌唱も聴いてみたくなるのは、ごく自然なファン心理ではなかろうか。アイドルが、ソロだからこそ表現できることだってあるはずだ。こうしたニーズが掘り起こされた結果、ソロアイドルに注目が集まるようになってきたのかもしれない。そして、市場の変化もまた、ソロアイドルの成立を手助けしているようだ。 「市場規模の拡大により、メジャーな事務所やレコード会社が時間と資金をかけてソロアイドルを売り出すことができるようになったことも大きいと思います。ソロアイドルはひとりの活動なので、これまでアーティストや歌手として売り出してきた人たちとの違いが見えにくいところがあります。そのため、うまくアイドルブームに乗せるためには、きちんとアイドルとして見せることができて、かつ他のアイドルと明確に差別化できるコンセプトが重要になります。大手がしっかりと手がけることにより、それはより実現しやすくなるのでは」(岡島)  武藤彩未はアミューズとA-Sketchがタッグを組んで設立した新レーベル「SHINKAI」から、遠藤舞はエイベックス内のロック専門レーベル「binyl records」から、姫崎愛未はタワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」から、それぞれリリースすることが決定している。彼女らを世に送り出すために、いずれもしっかりとスキームを組んでいる印象だ。ソロアイドルがシーンにおいて大きな存在感を放つ日も、そう遠くないのかもしれない。 (文=松下博夫)

アリス十番を脅迫の男逮捕……一部アイドルファン「暴走」の背景事情とは?

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アリス十番公式サイトより

【リアルサウンドより】  アリス十番のセンターを務める立花あんなに「殺害予告」などの脅迫をしていたとして、福井県大野市の会社員・安川昌吾容疑者が2月16日に逮捕された。安川容疑者はTwitterでフォローしてもらえなかったため、少しでも彼女の気をひくつもりで、過激な投稿を繰り返していたようだ。  アイドルがファンとトラブルになるケースは他にもある。2014年1月には、AKB48の岩田華怜(15歳)に結婚を申し込み、断られた男性がAKB運営らを提訴している。男性は握手会にて、岩田華怜に「8年後か10年後かわからないけど、結婚してください」と伝えたところ、「ホントそういうのやめてください。迷惑なんで…」と断られ、握手レーンから追い出されてしまったが、男性は運営側が作意的にそうするように仕向けたと主張し、握手の権利などの賠償を求めているとのことだ。2013年の12月には、乃木坂46の運営委員会が公式サイトにて「ファンのみなさまへのお願い」と題して、マナーを守れないファンに対してイベント参加禁止を含む処置を講じる警告を行ったことも記憶に新しい。  トラブルを起こすのはごく一部のファンとはいえ、最近のアイドルグループにはこうした事例が目立っている。アイドルカルチャーに詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は、その理由を次のように分析する。 「昔からアイドルや芸能人に対し、熱を入れすぎたファンが過激なアプローチをすることはありましたが、最近そういったケースが目立つとしたら、昨年あたりからファンとアイドルが直に『接触』する握手会のようなイベントがますます重視されるようになったことが、ひとつの要因なのかもしれません。それによって、アイドルに本気の恋をしてしまう『ガチ恋』のファンがより増えることはあるのではないでしょうか。もちろん、ガチ恋自体はとがめられるものではありませんが、そういうファンが増えたことにより、節度を守ることができないひとが目立ってきているのかもしれません。アイドルが自分に対して興味を持っていると錯覚したり、逆に興味を持ってくれないことに対して逆恨みをしたりといったケースは、『接触』の機会が増え、アイドルがファンを認知し、好意的に見ているという錯覚が起きやすくなっているせいもあるのではないでしょうか」  マナーが悪かったり、アイドルが嫌がるようなコミュニケーションをするファンは、当然ながらイベント会場から出禁になるなどの処置を取られるが、多くのアイドルグループは数少ないスタッフで運営しているため、プライベートではアイドルが自衛するケースも少なくないという。このような状況へは、どのように対処すべきだろうか。 「理想的なのはファン同士の自浄作用を高めるということでしょう。ジャニーズなどの男性アイドルの場合なら、アイドルに対して行き過ぎたアプローチをするファンは『ヤラカシ』と呼ばれ、ほかのファンから蔑まれる文化が根付いています。同じように、女性アイドルのファンも、ストーキング行為などに及ぶのは明らかにアイドル側ではなく、度を越したファンに非があるということを、みんなが強く意識する必要があるのだと思います。また個人的には、アイドルの側からもファンの熱心すぎるアプローチを、自然に断れる環境作りが必要ではないかと思います。現状、多くのアイドルはファンを増やすために、なかなか本音をいえない場合が多いように感じます。先日、宇多田ヒカルさんが、ファンが彼女の結婚式を祝うバスツアーを計画したことに対し、『祝福のお気持ちに感激しています…なのでとても心苦しいのですが、結婚式はショーではないことをご理解ください』と、うまくアナウンスしてファンの納得を得ていましたが、そのようにファンと適切なコミュニケーションを行う技術を養い、またそれが許される雰囲気作りをするのも、アイドルには必要なのかもしれません。“相手が自分を好いているように見える”パフォーマンスとしてのアイドル文化が今後も発展していくためには、そういった部分も成熟させなければいけないでしょう」  AKB48以降、実際に「会えるアイドル」が増加し、ファンとの交流が密になっている昨今。ファンはもちろん、アイドルにも適切なコミュニケーションの作法が求められていると言えそうだ。 (文=松下博夫)

「俺らこそが真のパンクや!」中川敬が振り返る、初期ソウル・フラワー・ユニオンの精神

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ソウル・フラワー・ユニオンを率いる中川敬。

【リアルサウンドより】  ソウル・フラワー・ユニオン初の評伝『ソウル・フラワー・ユニオン 解き放つ唄の轍』(河出書房新社)が刊行された。彼らを追いかけ続けたフォトグラファー/音楽ジャーナリストの石田昌隆・著による渾身の一作である。「音楽は、ミュージシャン個人の内面から出てきたものより、ミュージシャンを媒介して、ひとかたならない現実の断片が吹き出してくるところを捉えたもののほうがズシンと伝わってくる」(本書より)という著者の音楽観が明かされ、それを体現する存在としてのソウル・フラワー・ユニオンが描かれる。阪神淡路大震災、東日本大震災、寄せ場、韓国、東ティモール、パレスチナ、アイルランド、辺野古、そして官邸・関電前と、世界中のさまざまな現場と関わり、世界中のさまざまな音楽と交わることで形作られ、いまもなお変容し続ける稀代のミクスチャー・バンドの現在に至る道を鮮やかに照らし出した、必読の一冊である。  今回の取材では、同書からこぼれ落ちた、あるいは描かれなかった彼らの一面を浮き彫りにすべく、リーダー中川敬への取材を試みた。

94、95年くらいから「ロック」というより「音楽」を好きって人たちが増えた

――大変な力作で、私は「ソウル・フラワー・ユニオンの本」というよりは、「石田昌隆の本」というふうに受け止めました。読んでみていかがでした? 中川敬(以下、中川):これは力作やね。自分のことながらグッとくる箇所が何箇所もあって(笑)。神戸や女川(宮城県牝鹿郡)のことを書いた章とか。 ――私が本書でまず興味深かったのは、92~93年ぐらいにニューエスト・モデル~ソウル・フラワー・ユニオンのアルバム・セールスがピークを迎え、『クロスビート』の人気投票で上位に来たり、『ロッキング・オン・ジャパン』の表紙を再三飾るなどロック・フィールドからの評価も得ていた、しかしソウル・フラワーが結成当初の理念を追求し実践していく過程で、「次第にいわゆるロック・ファンは少しずつ離れていき」、代わりに「新たな層の人々に届くようになっていった」、というくだりです(56ページ)。中川くんもそういう実感があったんでしょうか。 中川:当時はライヴ会場でよくアンケートをとってたよね。<ソウル・フラワー以外に好きなバンド>という項目の答えが、どんどん変わっていったのは覚えてるな。ニューエストの初期の頃はいわゆるパンク・バンドの名前が多くて、それが徐々にボ・ガンボスやフリッパーズ・ギターの名前が増えて、(喜納昌吉&)チャンプルーズが出てきたりとか。とはいえ、そこにはDIP THE FLAGみたいな人たちの名前も出てきてたり。幅広いロック・ファンから聞かれてるんやなって思ったけど、ソウル・フラワー・ユニオンになってから、俺らのファンが『ロッキング・オン』や『クロスビート』を読みながらロックを聴くようなリスナーだけではなくなり始めたことは確かやろうね。 ――それはどう感じてたんですか。 中川:まあ、そのまんま受け止めてたけどね。自分らのやりたいことがあるから。ただ面白いなと思ったのは、人は上々颱風とかチャンプルーズみたいな名前ばっかり挙がってたと思うかもしれんけど、実は中島みゆきとかサザン・オールスターズみたいな人たちの名前を書く人が増え始めたっていうことでもあった。94、95年ぐらい。震災の前後の頃。一般的な音楽ファンが聴き始めたっていうことやね、現象としては。だから「ロック」というよりは「音楽」を好きっていう人たちが増えてきたという。確かに、当時の感覚では、もっとロック・ファンに来てほしいというのはあったけど。 ――自分たちとしては、バリバリのロックやってるって自覚あったんですか。 中川:今もあるよ(笑)。 ――いやいや、それはわかってるって(笑)。ソウル・フラワー・ユニオンの結成宣言文(93年)には「“個人単位に於ける創造が”希薄な“仲良しクラブの余興”とは一線を画し“」という表現があります。石田さんはこれについて「日本のポピュラー音楽が構造的に抱えている問題点を見事に突いていた」と書いていますが、実際そういう実感、不満はあったわけですか。 中川:いや、鳴ってる音楽自体に関してはね、当時おもしろいものがどんどん出てきてるっていう実感のほうが実は強くて。フリッパーズ・ギターとか大好きやったしね。フィッシュマンズとかもこの頃に出てきた。オリジナル・ラヴとか。これからどんどん面白いものが出てくるんやろうなっていう感じがあった。ああいう切り口でやりたいとは思わなかったけども、彼らが出てきて嬉しかった。プロダクション・ワークの質がグッとあがったというか。サウンドの質、アレンジの妙。英米ロックの引用をやってきた日本のロックが、引用のレベルがちょっとあがったというか(笑)。いやいや、それは嬉しかったし、刺激を受けたよ。バンド・ブームの頃はその辺が不満やったからね。大好きなボ・ガンボスですら、もっといいCD作ってや!とか思ってたし(笑)。特にフリッパーズ・ギターかなあ、はっきり覚えてるのは。
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ファーストアルバム『カムイ・イピリマ』でメイン・ボーカルを務めたうつみようこ在籍時のソウル・フラワー・ユニオン。

進んで孤立したわけじゃないけど、俺らは違うぞ、っていうのはあった

――当時、フリッパーズ・ギターと対談やってたよね。 中川:やったやった(笑)。『ロッキング・オン・ジャパン』で。彼らは目の中に星が入ってて、違う星に住んでる人たちやな~と思ったけど(笑)。だから当時、日本の音楽カルチャーは面白かったんよ。ただ、あの頃は、俺も若かったから、業界の中の話で、同業者にがっくりくるような話を当時たくさん聞いてて……。 ――たとえば? 中川:言わない(笑)。言ってもしょうがない話。まあ、簡単に言うと、いかに表現する側が自立していないか、自分たちで決めてやっていないかっていう…。表現者として、それはないやろう、と。当時の感覚やね。それがこういう宣言文に……まあヒデ坊(伊丹英子)と笑いながら書いてたんやけど(笑)。そういうものは強くあったな。 ――そういう連中とは一線を画したいと。 中川:別に一線は画したくないよ。進んで孤立したいわけではなかった(笑)。でも俺らは違うぞ、っていうのはあったよね。当時は若かったし、自分らの考えが確としてあったから。今に続いてる要素もその中にはいっぱいあるし。根っからのパンク的な気質が一番出てた頃じゃないかな? 音楽的にはだいぶパンク・ロックの文脈から離れてたと思うけど、一番そういうのが強かった時期やと思う。今から振り返るとね。92年から95年ぐらい。俺らこそが真のパンクや!みたいな。当時はもちろんそういう風に言語化してあったわけやないけど、今から振り返ったらそういう感じがすごく強かった時期やな。 ――パンクという言葉を使うといろいろ誤解を招くけど、精神としてはそうだったと。 中川:そう。あのころはパンクっていう意識、強かったね、モノノケ・サミットもそうやったし。俺は20代後半やね。10代後半にニューエスト・モデルを結成して、エッグプラントでライヴをやって、ハード・パンクな感じのサウンドで始まって、いろんな音楽、人間、現場と出会いながら95年まで辿り着いた10年間ぐらいっていうのは、相当パンクやったと思うよ。 ――なるほど。でもそういう本人の意識とは別に、いわゆるロック・ファンは離れていったと。 中川:どうやろ? ニューエスト・モデル、メスカリン・ドライヴ、ソウル・フラワーみたいなのを好きなタイプの人たちっていうのは、常に、いつの時代もいて、例えば一旦離れてもまた5年10年ぐらいたつと戻ってくる、みたいな感じでずっとあって。今もそういう感じでやってるけどね。 ――自分はずっとロックやってるつもりという話ですが、ロックの定義ってなんでしょう。 中川:ステージでああいう風にやる芸、やね(笑)。2~3年ぐらい前から弾き語りのライヴをやるようになって。弾き語りをやってると、みんなシーンとなって聴いてる。これは一体なんやねん!と思ったね(笑)。もちろんそれはそれで面白い世界なんやけど、それまで30年ぐらい、無数のアホウが踊り狂う世界でやってきてるから、弾き語りっていうのはすごく変な世界やなと(笑)。嗚呼、俺ってああいう(ロック・バンドの)世界でやってきた人やねんなと、あらためて痛感したわけ。“ロック芸”でずっと生きてきて、しかもそれこそが、俺の十八番やな、という。 ――ロック芸、ですか。 中川:うん。歌詞聴こえないかもしれないけど、大音量でガーッとやって、それ聴いて、鬱屈した日常を抱えた人たちがみんな踊って騒いで、ワーッとなってちょっとはすっきりして、さあ明日から頑張ろう、さあ明日上司しばいたろって、家に帰っていくという(笑)。 ――それが「ロック芸」の役割。 中川:誇れる労働。弾き語りでは実現できない世界がある。単に“聴く音楽”だけじゃない要素。やっぱりこれをやっていきたいというのはある。そういう意味での“ロック芸”。 ――「芸」というからには、エンタテイメントという意識はあるんですか。 中川:もちろんもちろん。舞台に上がって、お金払ってくれたお客さんの前でやるんやから。 ――本の中にも、被災地で演奏することで、求められているもの(歌)を提供するのが自分たちの仕事だと気づいた、というような発言がありますね。そこはやはり一番変わってきた部分ですか。 中川:徐々にやけどね。確かに95年のモノノケ・サミットが大きかった。その前から少しずつ始まってたことではあるけどね。ただそれまではもっとアート志向が強くて、これが俺らのアートや、みたいな。ただ、そこからいきなり芸人に転向したわけでもなんでもなくて(笑)。今でもアート志向は強くあるしね。自決の芸である、っていうことがかなめやね。(後編につづく) (取材・文=小野島大)
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石田昌隆『ソウル・フラワー・ユニオン : 解き放つ唄の轍』(河出書房新社)

■書籍情報 『ソウル・フラワー・ユニオン : 解き放つ唄の轍』 著者:石田昌隆 版元:河出書房新社 発売:1月28日 価格:¥2,520