モー娘。「黄金期の再来」目指すオーディション 道重が“原点回帰”を唱えるワケ

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モーニング娘。'14『モーニング娘。'14カップリングコレクション2(初回生産限定盤)』(UP-FRONT WORKS)

【リアルサウンドより】  モーニング娘。'14が3月15日、東京・オリンパスホール八王子にて行った『モーニング娘。'14コンサートツアー2014春~エヴォリューション~』にて、新メンバーを募集するオーディション「モーニング娘。'14<黄金(ゴールデン)>オーディション!」を開催することを発表し、話題となっている。昨夏、実施された『モーニング娘。12期メンバー「未来少女」オーディション』では合格者なしという結果だったため、今回選ばれるメンバーは12期生となる予定だ。  プロデューサーのつんく♂は、自身のブログにて「歌が大好き!で、自分の未来を信じてる人!や、活躍している自分の姿!が想像出来る人は大歓迎!!まだまだちょっと自分に自信はないけど、それでも自分を試してみたい!と感じている人などなど、10歳~17歳までの独身女性なら国籍問わずどなたでも応募が出来ます。今こそJ-popを代表するサウンドで世界を相手に活躍してみませんか! 僕も腕が鳴ります!」と、オーディション参加者を募り、「黄金期の再来」を目指すことを表明している。  2013年は3作品連続でオリコンシングルチャート1位を獲得するなどして、再ブレイクを果たしたモーニング娘。。アイドル界でも無二の存在感を放つ同グループが、ここにきて新メンバーを募集する背景にはどんな狙いがあるのか。 ハロプロの熱烈フォロワーであるアイドル書籍編集者の中野潤氏(BLOCKBUSTER)は、今回のオーディションのポイントを次のように解説する。 「最年長であり現リーダーの道重さゆみさん(6期)はオーディション発表時、『1年前のオーディションでは「可愛い子に入ってきてほしい」と言ってたんですね。でもね、よく考えてみたら、モーニング娘。ってオーディションに落ちてしまったけど、それでも頑張りたいという女のコたちの集まりだったじゃないですか。私は、そんなモーニング娘。を観て、「元気もらえるな」とか「応援したいな」と思ったんです。最近だと、初めからダンスが上手いメンバーもいますけど、モーニング娘。の根本の“一生懸命頑張れるコ”に来てほしいなと思います』とコメントしています。もともとモーニング娘。は、1997年に平家みちよさんが優勝した『シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション』の落選者を集めたグループであり、そんな彼女たちが次第に輝いていく過程こそが、2000年代前半の黄金期を築いてきました。  しかし、最近のモーニング娘。では、アクターズスクール広島出身の鞘師里保さん(9期)や、ハロプロエッグ出身の譜久村聖さん(9期)や工藤遥さん(10期)、元楽天チアダンサーの石田亜佑美さん(10期)、ハロプロエッグの後継組織であるハロプロ研修生だった小田さくらさん(11期)など、すでにダンスや歌のトレーニングを積んだ“デキる子”を採用して、そういったメンバーたちを前面に推し出していく傾向がありました。おそらく、つんく♂氏が邁進してきたEDM路線のフォーメーションダンスをしっかりとこなすには、それも必要なことだったのでしょう。  ところが、今回の道重さんの発言からは「黄金期を再来させるには原点回帰が必要ではないか」という意向が読み取れます。実際、モーニング娘。のファンとして知られるマツコ・デラックス氏は、生田衣梨奈さん(9期)、鈴木香音さん(9期)、佐藤優樹さん(10期)といった、パフォーマンスではあまり目立たないポジションにいるメンバーこそが面白いと言っていて、必ずしも“デキる”メンバーだけがモーニング娘。の魅力ではないことを示唆しています。道重さん自身もモーニング娘。に加入したばかりの2003年頃は、ほかのメンバーに比べてダンスも歌も劣りがちでしたが、今やグループの顔と言える存在になりました。今のモーニング娘。を黄金期に突入させるのに必要なのは、歌やダンスが素人でも、圧倒的な輝きを持ったダイヤの原石である、ということは、道重さんだけではなく、運営側も考えていることなのではないでしょうか」  また、今回のオーディションではハロプロ研修生にも注目したいと、同氏は続ける。 「ダイヤの原石が必要な一方、ハロプロ研修生からの昇格メンバーがいるのか否か、という点も気になるところです。現在、研修生は人気が出てきていて、単独でのツアーやCDのリリースなどにも力を入れています。その中にはメジャーデビューしたメンバーにひけをとらない精鋭もそろっていて、彼女らが今後、モーニング娘。に加入するということは、研修生たちのモチベーションを保つうえでも充分に考えられることです。9期~11期と研修生出身のメンバーが必ず入ってきていたので、可能性は高いでしょう。早ければ夏のハロコン、遅くとも秋の単独ツアー時には12期メンバーが発表されると思うので、今年の紅白では新体制での出演を期待したいですね」  2014年に入ってからも、グループ名の変更や森三中とのユニット「モリ娘。」などの企画で、ますます注目を集めているモーニング娘。'14。今回のオーディションは、同グループの今後の方向性を定めるうえでも、極めて重要なものといえそうだ。 (文=松下博夫)

Sexy Zone・中島健人はなぜ「天性のアイドル」と呼ばれる? 王子様パフォーマンスの魅力を解析

【リアルサウンドより】
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ジャニーズの若手の中でも圧倒的な人気を誇る中島健人。

 ジャニーズの若手グループの中でも、ハイレベルなビジュアルに定評があるSexy Zone。2011年のデビューから様々な経験を経て、今や内面的にも磨かれたアイドルとしての地位を築きつつある。  そんなSexy Zone内では明確なリーダーポジションは設けられていない。だが、最年長の中島健人は劇場版『BAD BOYS J』、『銀の匙 Silver Spoon』と立て続けに映画の主演を務めるなど、実質的にグループを引っ張り続けている存在といえよう。  中島の魅力は、何に対しても一生懸命な姿勢に尽きる。その本気さ加減が少しおもしろいのも、親しみやすさのひとつだ。たとえば、グループ名を言うときも彼は忠実に「セクスィーゾーン」と発音し、ファンのことも「セクスィーガール」と呼ぶなど、少し行き過ぎなくらいこだわりを感じさせるのも彼らしい。  歌に関しても、その姿勢は健在。発声に少し癖はあるが、音程を外さず安心して聞ける。そして、胸をはだけさせたり腰を回す“セクスィー”なパフォーマンスは、常に全力だ。投げキスは「チュッ」とマイクがリップ音を拾うほど熱烈である。  また、グループで歌っている「スキすぎて」でも彼の個性は爆発。マイクスタンドで歌いつつ腕を回転させる振り付けでは、ひとりだけ超高速な動きを披露してファンの中で話題になったほど。さらに、自身が主演したドラマの主題歌となった「BAD BOYS」での気合の入り方は、ほとばしる汗に比例。カウントダウンコンサートでも縦横無尽に走り抜け、歌い上げた。  シンメトリーで踊る菊池風磨とは、ジャニーズJr.時代から「目立ちすぎ」と怒られた逸話が残るほど、ふたりとも自分の存在をアピールする手法に長けていた。危険な男を匂わせるような色気をまとう菊池に対して、中島はまっすぐに王子様キャラの道を進んでいったのだ。  “ラブホリ王子”の異名を持つほど、甘いセリフを得意とするキャラクターからソロ曲「CANDY〜Can U be my BABY〜」も誕生。年頃の男子ともなれば、コテコテのアイドルソングを恥ずかしがる傾向にあるが、彼の場合はそんな気配は微塵も見せない。だからこそ、ファンは安心して彼が魅せるキラキラな世界に浸ることが出来る。  その軸のブレないところが、中島健人の最大の武器。なぜなら、彼はいつも本気だからだ。どんなにクールにキメても、どんなにキュートにはにかんでも、ウソ偽りのない表情だと信じられる。天性のアイドルと呼ばれることも少なくない彼の才能は、そこにある。 (文=ジャニ子)

BUMP、冨田勲、渋谷慶一郎……初音ミクと大物アーティストがコラボする意義とは?

【リアルサウンドより】  BUMP OF CHICKENと初音ミクとのデュエット・バージョンによる新曲「ray」のミュージックビデオがバンドの特設サイトにて公開され、大きな反響を呼んでいる。

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」

 この曲は、ニューアルバム『RAY』の収録曲「ray」の別バージョン。初音ミクの歌声プログラミングはkz(livetune)が、ミュージックビデオの監督は東市篤憲(A4A)が担当し、リアルタイムでバンドと初音ミクの共演が実現した。  両者のファンは勿論、広く音楽ファンにも衝撃を持って受け止められたこのコラボレーション。YouTubeのコメント欄やツイッターの反響を見る限りでは、かなり賛否両論の反応も巻き起こしてもいるようだ。そこで、この原稿では、BUMP OF CHICKENと初音ミク、その両方の流れを追ってきた人間として、この「異色のコラボ」が、いかに必然的な結びつきだったのかを解説したい。  まずはBUMP OF CHICKENの側から見た初音ミクについて。バンドはこれまでボーカロイドのシーンとは直接関わってきてはいない。しかし、そもそも彼らがアニメやゲーム的な想像力、バーチャルなキャラクターに対する愛情と相通じる感性を持つバンドであることは間違いない。たとえば初期の名曲「アルエ」が『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクター・綾波レイにインスパイアされた曲だというのは、ファンの間では有名な話だ。またアルバム『RAY』収録曲の「ゼロ」でゲーム『FINAL FANTASY 零式』主題歌をつとめたときも、単なるタイアップだけに留まらないファイナルファンタジーシリーズへの強い思い入れを明らかにしている。  筆者が担当した特設サイトのインタヴューでも、「僕は実は、こういうコラボレーションが夢だったんです」(直井由文)、「敬意を感じずにはいられなかったし、とても素敵なことだと思いました」(藤原基央)など、今回のコラボにかける意気込みを語っている。  一方、初音ミクの発売元であるクリプトン・フューチャー・メディアにとっても、今回のコラボは大きな意味を持つものだった。撮影にあたっては、クリプトン社が「14(イチヨン)モデル」という新たな3DCGモデルの初音ミクを制作。ミュージックビデオには企画段階から関わり、リアルタイムで初音ミクの動きを制御するプログラムを開発し、撮影・収録にあたっても全面的に協力したという。初音ミクのオフィシャルYouTubeチャンネル「39ch」では、制作の背景を追うドキュメンタリービデオも公開されている。

初音ミク ドキュメンタリー テクノロジー編 / 39ch Documentary: Technology

 実は、初音ミクと第一線のプロミュージシャンのコラボは、2010年代に入ってきてから行われるようになった新しい動きだ。00年代後半のボーカロイドのシーンはあくまでアマチュアミュージシャンたちが中心になって作り上げたものだった。ボカロPがメジャーデビューすることはあれど、メジャーな領域で活動してきたアーティストが初音ミクとコラボすることは、なかなか無かったわけである。  その先陣を切る大きな動きとなったのが、2012年11月に世界初演された冨田勲による『イーハトーヴ交響曲』だった。  宮沢賢治の物語世界をモチーフに、総勢300人におよぶオーケストラ・合唱団と初音ミクが共演したことで話題を呼んだこの作品。日本が世界に誇るシンセサイザー音楽のパイオニアと初音ミクとのコラボにあたっては、クリプトン社が全面的に技術開発に協力している。実は、この時にクリプトン社が独自開発したスクリーンを元にした「イーハトーヴ仕様スクリーン円筒版」が、今回の「ray」のミュージックビデオ撮影にも用いられている。  そして、続いて初音ミクにとって大きなコラボとなったのが、ルイ・ヴィトンの衣装提供も注目を集めた、渋谷慶一郎+初音ミクによるボーカロイドオペラ『THE END』だった。  2012年の年末に山口情報芸術センター「YCAM」で初演された同作は、2013年5月にはBunkamuraオーチャードホールにて上演。11月にはフランス・パリのシャトレ座で上演され、世界的な評価を獲得している。この『THE END』のプロジェクトにプロデューサーとして携わったのが、クリエイティブカンパニーA4Aの東市篤憲氏。今回のミュージックビデオ「ray」の監督だ。  つまり、初音ミクの側にとっても、今回の「ray」は、『イーハトーヴ交響曲』『THE END』と積み重ねてきた“本気”のコラボレーションの流れに繋がるものだったわけである。  今回、初音ミクの歌声のプログラミングを手掛けたkz(livetune)は、「Tell Your World」などボーカロイド楽曲の数々を手掛けてきたシーンの代表的なクリエイターの一人。今回のコラボにあたっては「誠心誠意、一ファンとして尽力しました」と、ツイッターにてコメントを発表している。彼と同じく、20代の音楽リスナーの中には、中学生や高校生の頃にBUMP OF CHICKENにハマり、大学に入ってから初音ミクに出会ったという世代の人も多いだろう。  また、近年では初音ミクのファン層が低年齢化し、リスナーは女子中高生や小学生にまで裾野が広がっている。そういった人たちの中には、今回のコラボがBUMP OF CHICKENというバンドに触れる初めてのきっかけになる人も多いはずだ。これを機会に、バンドの持つ思春期性が新しいリスナー層に改めて大きな魅力となって伝わることも予想される。  今回のBUMP OF CHICKEN×初音ミクのコラボが、お互いにとって、そして今後の音楽シーンにとって、大きな布石となることは間違いなさそうだ。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

マーティ・フリードマンがJ-POPへの”愛と嫉妬”を告白「AKBの『ヘビロテ』は僕が書きたかった」

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J-POPへの愛を語る、マーティ・フリードマン氏。

【リアルサウンドより】  メタル界でもっとも有名なバンドのひとつである、メガデスの元ギタリストであり、音楽評論家やプロデューサーとしての功績も数多い、マーティ・フリードマン氏。そんな彼がプロデューサー兼ギタリストを務める鉄色クローンXは、2012年12月に、ももいろクローバーZの楽曲をメタル調にカバーしたアルバム『鉄色クローンX』を発表し、日本最大のメタルフェス『LOUD PARK 13』に出演するなど、勢いのあるメタルバンドのひとつとして活躍している。リアルサウンドでは今回、日本の音楽が大好きなあまり、日本に住むことを選んだというマーティ・フリードマン氏が、現代の音楽シーンや、鉄色クローンXで行っている「コミカルな日本語詞とメタル音楽の融合」について、独自の切り口で語ってくれた。  

BABYMETALはアイドルとメタルをうまく融合出来ている

——最近ブレイクしたアーティストで、マーティさんが気になっているのは? マーティ:最近だと、BABYMETALは初期の頃から聴いてましたよ。僕のサイドギターである大村孝佳さんが彼女たちの「神バンド」のギターもやってるから。この間『ミュージックステーション』にベビメタが出たときも、バックでやってたり、『LOUD PARK 13』では僕のバンドとベビメタの両方に出て、忙しそうにしてたよ。世界って狭いよね(笑)。 ——ベビメタと、鉄色クローンXの共通点として、「メタルに日本語のコミカルな歌詞が乗っている」ということが挙げられます。 マーティ:日本という国が持っている伝統的な雰囲気や文化と、メタルという音楽は合っていると思ってるよ。だから僕は『TOKYO JUKEBOX』シリーズを作ったわけだし。 BABYMETALがウマいなと思うのは、その若さを上手く活かしているところ。僕も彼女たちがデビューした頃に、雑誌やネットで対談とかをやらせてもらってたんだけど、正直、リスナーがどういう風に楽しむかわからなかったんだよね。メタル好きの若い男は、セクシーなお姉ちゃんの方が興奮するだろうって考えてたから(笑) 彼女たちのコンセプトはとにかく面白すぎるけど、評価されるまでのハードルはかなり高いなあと思ってた。でも、どんどん進化を続けて、素晴らしいものになってるから、彼女たちを見守ってきた立場としては、とてもうれしい。 僕が彼女たちを気に入っている部分は、ハッピーな部分とメタルな部分のバランスなんだ。雰囲気がメタルっぽくて、サビになるとポップになるアイドルソングっていうのがたまにあったりするんだけど、それって海外のメタルファンからすると恥ずかしいんだよね(笑)。彼女たちはハッピーな部分でも、ちゃんと音はメタルで、アイドルとメタルをうまく融合出来ていると思う。ヴィジュアル系もそうだったりするけど振付があることって、洋楽の文化とは全然違うものだし。このBABYMETALはそれをうまく利用していて素晴らしいですね。 ——本場のメタルファンは彼女たちを見てどう思うんでしょうね? マーティ:クレイジーだけど凄く目立って応援しやすい。「日本は最高の国だ!子供だってメタルをやってる!」って思うのかも(笑)。向こうの11歳のティーンって、ヒップホップばっかり聴いてるからさ(笑)。もしかしたら、オジー・オズボーンなんかも同じことを思ってるかもね。アメリカで「日本のBABYMETALって知ってるか?」って聞いて回っててもおかしくないよ。 あと、最近は自分のレコーディングに集中していて、BGMほどにしか聞けてないけど、最近いいなと思ったのがあって。「夢ふうせん」って知ってますか? ——おはガール!ちゅ!ちゅ!ちゅ!が2013年11月5日に出した『夢ふうせん』のことですか?彼女たちのサウンドプロデューサーは元JUDY AND MARYのTAKUYAさんですよね。 マーティ:そう。TAKUYAはやっぱり凄いよね! これ聴いてハッピーにならないわけないもん。そういえば、「元気になれる曲」を表現するのって日本の特徴かも。向こうだと「大変な時期があった時にこの曲に救われた」って表現になるんだけど、これって似てるけどちょっと違うように思う。 ——マーティさんも、TAKUYAさんのように、アイドルプロデュースをやるつもりは? マーティ:過去に北出菜奈さんのプロデュースをしたことがあるよ。またやりたいなーと思うね。いいきっかけがあるといいけど。僕の音楽はアイドルの世界に対して、遠回りに合っているとは思うから。まだまだいろいろ、アイドル以外にもできそうな気がする。J-POPも好きだし。愛さえあれば、うまく融合できる気もする。

これがアイドル界の「ボヘミアン・ラプソディ」だ

——アイドルの現場だと、お客さんがメタルっぽい楽曲でも振り付けを加えて踊っていますよね。これについてはどう思いますか? マーティ:2011年の『ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会』に参加して気付いたのは、曲はメタルじゃないけど、お客さんがメタルより激しいってこと(笑)。常にシャウトしてるし、汗臭いし。その時、僕はステージの下から出てきたんだけど、メタルのライブよりうるさい男の声が聞こえてきて、「ここはどこだろう?」って。ずっとメタルをやってて、男の歓声には慣れているはずなのに、メタルより凄い反応だから「これパンテラのライブじゃなくてももクロのライブだよね!?」って何回もわかんなくなった(笑)。男の人たちはもしかしたらメタル好きなのかもしれないけど、そんな人がアイドルも応援するって、海外の環境ではなかなか無い文化ですね。 僕は彼女たちのプロジェクトに参加できて、ホントによかったと思ってる。どんなアーティストも、まずは曲ありきだと思ってるから言うけど、ヒャダインさんは天才だよ。はじめに曲を聴かせてもらった時に、これは冒険だなと思った。100人の合唱と、編拍子の捻ったフレーズと、ももクロ5人の掛け合いが混ざっている。そこに僕の変態ギターフレーズから出るメロディーを全部融合させちゃうんだもん。ホント夢みたいだったよ。でも、自分のギターだけをレコーディングする時は、ハードな音だし、冒険的すぎるからこんな大勢の人が聴くと思ってなかった。でも完成した曲を聴いたとき、僕は「これがアイドル界の『ボヘミアン・ラプソディ」だ』と確信したよ。自画自賛とかじゃなくて(笑)。でも、これが流行る国に住むしかないと思ったね。曲が完成したとき、僕はラスベガスにいたんだけど、音源をいただいた後、ラスベガスのストリップでももクロの曲を大音量で流したんだ。それがあまりにも場違いで、急に日本が恋しくなった。母国にいるのに、健康的な日本の音楽環境が懐かしくなっちゃったんだよ。

「ヘビーローテーション」に嫉妬心を覚えた

——マーティさんが推してるアイドルって誰なんですか? マーティ:関わってるアイドルは気まずいから、AKB48でいいかな?(笑)。それだったら、まゆゆ(渡辺麻友)かな。AKB48といえば、先日のFNS歌謡祭に八代亜紀さんのギターとして出演したときのことなんだけど、出番を待ってる間に大広間でライブを見ていたら、彼女達が僕の1メートルくらい前で「ヘビーローテーション」を歌ってくれたんだ。その時の鳥肌の立ち方は半端じゃなかった。皆でアイコンタクトしながら踊ってるのなんかも凄いし、ドキドキしちゃって、このまま心臓が止まるんじゃないかと思ったよね(笑) ——「ヘビーローテーション」をマーティさん的に分析すると? マーティ:この曲はね、初めて聞いた瞬間に嫉妬心が芽生えたんだ。「なんでこの曲を僕が作れなかったんだろう」「完全に僕の中にエッセンスとしてはあったのに!」って。ブライアン・ウィルソンが、フィル・スペクターの「Be my baby」を聴いたときに多分そんな気持ちになったんじゃないかな。それくらいツボなんだよね。この曲を聴いたとき、色々なことが頭に浮かんだ。「なんでこんな曲を作れたんだろう」、「どこからの影響だろう」って深く分析して、自分の曲作りに関してもう一度考えさせられる良い機会になった。どうやったら、もう一回「ヘビーローテーション」みたいな曲が作れるのかなって考えているよ。

ジャニーズは成熟したJ-POP

——最近の男性アイドルについてはどう思いますか? マーティ:ジャニーズは、音楽的に素晴らしい、成熟したJ-POPだと思う。のベスト盤を聞いたら、次から次へヒットするような曲しか出てこないし、聴き入ってしまう。例えば、彼らがイケメンじゃなくて、曲だけで聴かれてたとしても売れてると思うよ。  この音はTHE 日本の音!って感じ。海外に行って、戻ってきてまずこういう曲が耳に入ってくる。ビートとボーカルのユニゾンとかハモりとか生活に根付いた音だよね。 ——ジャニーズの中でも、J-POPから少し離れているものもありますよね。KAT-TUNとか。 マーティ:それは彼らの年齢に関係あるんじゃないでしょうか。その年齢らしいというか。Hey!Say!JUMPは、成長しながら音が男っぽくなっていってるし。プロデュースのやり方が良いんだろうね。音色とか、コード進行なんかも。ボーカルのユニゾンが非常に多いし、四分打ちのディスコ・ハイハット・ビートが多い印象かな。 ——同じような年代の子がやってる、EXILE TRIBEは? マーティ:彼らの音はK-POPを思いださせるね。 ——K-POPっぽいというのは? マーティ:僕の思うK-POPっぽさって、「振り付けが多いMV」のことなんだよね。あと、メロディとサビが印象に残りやすい。K-POPのヒット曲ってサビのときに同じ言葉を繰り返すことが多いかも。「HELLO,HELLO,HELLO……」みたいな。だからわかりやすくて覚えやすい。MVも、人が家で見て真似できるようなレッスンビデオみたいになってるんだ。 ——音とふりを合わせて一緒に覚える? マーティ:そう。日本ではそれもあるけど、基本的にはアーティストのことを魅力的に映そうとしているものが多いよね。見やすいように、真似したければ、曲の真似だけじゃなくて、フリのマネも出来るようにっていうスタンスなんだろうね。EXILEグループって、フリとかダンスが素晴らしいから、もしEXILE TRIBEがこのやり方で勝負したら、若いファンはすごく喜ぶんじゃないかな。EXILE の「RISING SUN」よりは覚えやすいと思うし(笑)。 ——K-POPとアメリカのダンスミュージックとの違いは? マーティ:K-POPのサウンドはアメリカの2~3年前の音を目指してるんじゃないかなと思ってる。だからサウンド的には邦楽ほどオリジナリティはないかもね。LADY GAGAの流れに合わせてみたり、ダブステップの音をそのまま取り入れたり。東洋的な味が少ないと思うし。もう少しR&Bっぽいダンスミュージックになればいい曲が生まれてくるんじゃないかな。日本って、ダンスミュージックでもメロディがしっかりしてるものが多い。J-POPではどんな作品でもメロディがしっかりしていないとある程度しか売れないのかも。世界的にも、きゃりーぱみゅぱみゅPerfumeみたいな、東洋的なユーモアを入れたダンスミュージックが評価されてるから、中田ヤスタカさんはスゴイと思う。

女性アイドルは売れてなくても、冒険的な曲がいっぱいある

——男性アイドルと女性アイドルの違いは? マーティ:やっぱり男性向きのアイドルと女性向きのアイドルはそもそも違うからね。一番の違いは歌詞かな。男性アイドルは勇気が出るような応援ソングが多いんだけど、ももクロとかAKB48みたいな女性アイドルは、可愛さを持ち出すフレーズが多い。 ——男性アイドルよりも、女性アイドルの方がチャレンジする楽曲が多いのはのはなぜ? マーティ:いい質問だね。男性アイドルはスタンダードな路線が多くて、女性アイドルは売れてなくても、冒険的な曲がいっぱいある。 ファンの割合も違うのかも。女性アイドルは女性ファンと男性ファンが大体同じくらいいるじゃん。でも男性アイドルに男性ファンはあんまりいない。女性が見る理想の男性像はそんなに変化していないから、女性向けのコンテンツとして、ずっと安定しているのかもね。あとは、女の子のアイドルって、正統派よりもアウトサイダーなのが多いから、応援したくなるのかも。男性が応援したくなるような、アウトサイダーな男のアイドルが現れることを楽しみにしてるよ。 (後編へ続く) (取材=吉住哲/構成=中村拓海)
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鉄色クローンX-『LOUDER THAN YOUR MOTHER』(極辛レコーズ)

■リリース情報 『LOUDER THAN YOUR MOTHER』 発売:2014年3月19日 価格:¥ 3,150(税込) <収録曲> 1. KRITIKA 2. ダメ元Test yourself 3. Cheers!!! 4. ICHIBAN 5. 東京人間クロスロード 6. ボンバイェ 7. BITE 8. Quell the Souls in Sing Ling Temple 9. METAL CLONE ARMY 10. 胸キュンLOVERS

いまアイドルをどう語るべきか 必読の書『アイドル楽曲ディスクガイド』執筆者座談会

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『アイドル楽曲ディスクガイド』(アスペクト)

【リアルサウンドより】  アイドルという概念が成立した1971年から、アイドル戦国時代といわれる2010年代までの楽曲950タイトルを徹底レビューした書籍『アイドル楽曲ディスクガイド』が2月27日、アスペクトより刊行された。アイドル楽曲をこよなく愛する執筆陣によって書かれた渾身のレビューの数々を、系譜的に網羅することによってある種の批評性を帯びた本書は、すでに多くのアイドルファン・音楽ファンの間で大きな話題となっている。そこで今回、リアルサウンドでは編者のピロスエ氏、レビュアーの栗原裕一郎氏、さやわか氏、岡島紳士氏を招いて座談会を開催。同書編集の意図から、アイドルシーンの現状まで存分に語り合った。

ピロスエ「1971年から現在まで、すべて掘り下げました」

——まずは今回『アイドル楽曲ディスクガイド』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。   ピロスエ:近年、ヲタ的な属性を持ちつつ、それを仕事と関連づけてめざましい成果を挙げているという方々が増えてきています。代表的なのはタワレコの嶺脇社長ですね。そのようにファンと職業の境が揺らいでいる中で、自分も何か面白いことがやりたいと考えて、この本を企画しました。企画自体は2012年の春くらいには立てていましたが、夏頃にアイドル専門のディスクガイド本『アイドルソング・クロニクル』が出ました。しかしこの本は2002〜2012年をカバーしている本だったので、こちらのコンセプトとは少し違います。2010年あたりからアイドル戦国時代と言われていますので、そのあたりから取り上げていくのがセオリーだとは思いますが、それでは当たり前すぎて面白くないと思いました。2000年代以前にも、アイドルカルチャーがずっとあったことを、若い人たちは知識として知っていても実感としては忘れがちです。そこで、さらに遡った歴史に目を向けるきっかけになればいいなと思って、この本では女性アイドルという概念が成立したとされる1971年から現在まで、すべて掘り下げました。71年から今までずっと現役でアイドルファンをやっている人って、いるかもしれないけれどごく少数ですよね?   栗原:中森明夫さんくらいですかね(笑)、メディアに出る人では。90年代にやはり断絶があって、80年代、90年代の歌謡曲やJポップ、アイドル評論で前線を張っていた人で、現在のアイドルシーンでも存在感のある人ってすごく少ない。ファンのほうも、リアルタイムのアイドルヲタは過去にあまり目が向かないものだし、往年のアイドルマニアも昔の思い出に浸りがち。それはまあ、しょうがないことですよね。   ピロスエ:たいていの人はどこかにピークがあって、そのテンションはずっとは続かないと思います。どこかで夢中になった時期がある人なら誰が読んでも面白い、という本にしたかったので、このような全年代対応型のアイドルディスクガイドになりました。   ——では、レビュアーの方を集めるにあたっても、その時期に精通する方を選ぶ、という形でしたか。   ピロスエ:そうですね。レビューを書くにあたって、そのアイドルに愛情を持っている人が書く方が絶対に面白いですよね。なるべくその時代、そのアイドルが好きな方に書いていただきました。たとえば70〜80年代は、その時代のアイドルシーンに詳しい馬飼野元宏さんという方に書いていただきました。   栗原:馬飼野さん、いっぱい書いてますよね(笑)。最近は、70〜80年代のアイドルというと馬飼野さんに依頼が集中している印象があるんですけど、本当なら『よい子の歌謡曲』の人たちがもう少し出てきてもいいんじゃないかな、とは思います。80年代の歌謡曲~アイドルのミニコミでは、『よい子の歌謡曲』と『季刊リメンバー』が双璧で、対立というんではないんだけど、指向がずいぶん違っていた。『季刊リメンバー』が研究的というか実証性重視だったのに対して、『よい子の歌謡曲』はどちらかと言うと主観的に「アイドルを面白く語る」という方向でした。   ピロスエ:レビュー執筆をお願いするにあたって、具体的なことを客観的に書いていくという方向性と、文章として面白く書く、という2つの方向性の、どちらが正解なのかというとけっこう難しい問題です。どちらにも正解はあると思うのですが、あまりに客観性がないのは自分の好みではなかったので。   栗原:アイドルは調べ倒されている人が多いので、ネットで検索すれば、情報は大方出てきてしまうことが少なくない。そういう意味では、もちろん人によりますけど、情報の煮詰まった過去のアイドルについてはそれほどデータを載せなくてもいい、というケースもあるかもしれない。特に短いレビューなんかの場合、データの優先順位が絞られるので、Wikipediaの要約のようになってしまうときがあって、これが書き手としてはけっこうつらいんですよね。読者からも「ウィキのコピペじゃねーか」とか言われるし(笑)。なので、昔のものに関しては、あえて主観を前面に出すようにしたものもあります。バランスが難しいところですけど。   岡島:僕と岡田康宏さんで書いた『グループアイドル進化論』でもそうでしたが、よくこういうデータ性の強い本に対して「ただのネットのまとめ」というようなことを言う人がいますが、それはそのアイドルの情報をネットなどで見たことがあるから言うことなんです。つまり誰に向けて書くのか、ということを意識しないといけなくて、ディスクガイド本ならディスクガイドを欲している人のために書くわけです。これからアイドルを知りたい人、そのうちの誰かのことは好きだけれど他の人のことは知らない人を視野に入れて作るものです。だから「Wikipediaに書いてあることが載っている」ということを指摘するのは意識が低くて、「その情報とこの情報をつなげるとこういうことが言える」ということが書いてあれば、それは意味のあるテキストになります。それがわからない人にはWikipediaに書いてあることが載っていると「ネットのまとめ」としか読めないんでしょうね。編集の意識や、自分の見方や切り取り方にオリジナリティは出てくるので、それを心がけるだけでも資料性がありつつ最低限オリジナリティがあって意義のあるテキストになります。そしてもちろんアイドル楽曲に詳しい人も読者層に入るので、その上でプラスアルファのテキストをできるだけ入れ込むことを心掛けました。   ——『アイドル楽曲ディスクガイド』は、2010〜12年が最初にあって、過去を掘り下げ、最後に2013年に戻る、という面白い構成になっていますね。2010〜2012年を象徴的に取り上げたことの意味はどういうものでしょう?   ピロスエ:第1章の概論にも書きましたが、2010年の5月にNHKの番組でアイドル戦国時代特集が組まれました。当時のシーンを的確に捉えた番組内容でしたが、そこで初めて現状を知った、気付いた、という人は多いと思います。だから2010年から始めるのがいいかな、と思いました。キリもいいですしね。最初に言ったように、本当は2012年内に出したいと考えて企画を立てていました。それがずれ込んでしまったので、2013年の扱いをどうするかは二転三転しました。最終的に2014年2月の発売になったので、2013年も本書の中で取り上げることができるようになりました。  

岡島「ピロスエさんの本だからピロスエさんがセレクトするのが面白い」

——2010年以降のシーンというのは、楽曲の質も含めて80〜90年代とは明らかに違うものですか?   ピロスエ:ガラッと変わった、というわけではないと思います。2010年に限らず、やっぱり歴史っていうものはグラデーションを描いて変化していることは、この本をザッと眺めるだけでもわかってもらえるかな、と。2000年代後半にAKB48Perfumeが出てきて、それがその後のアイドル戦国時代の予兆だったんだと、今になれば言えるのではないかと。そういうものの積み重ねで歴史が紡がれているんだ、ということは何となくみんな思っていることでしょうけれど、個々の楽曲や実際の発売日も含めて並べてあると、それが大きな説得力を持つんじゃないかと考えました。   岡島:セレクションはどういう観点でやられたんですか?   ピロスエ:256ページでオールカラー、と、まずページ数を決めました。その中で1ページ5枚というレイアウトを決めました。それで950タイトルという数が決まったんですけれど、選盤の作業が一番大変で時間かかりましたね。でもそれがディスクガイド本の背骨になる部分なので、そこは妥協せずに念入りにやりました。   岡島:目次に「選盤協力」と書いてある人たちに手伝ってはもらったんですよね?   ピロスエ:僕が出したタイトルに「これじゃなくてあっちの方がいいんじゃないですか?」と提言してくれた人たちがここに書いてある人たち(笑)。まあ本数的にはちょっとでしたけど。   岡島:僕は、ピロスエさんの本だからピロスエさんがセレクトするのが面白いと思いました。「僕はこれを入れたい」というのもありましたけど、そうすると意味がわからなくなってきます。それに、たぶん読んでそう思う人ってたくさんいるってことですよね。そうすると「俺の好きな○○が入ってない」とかツイッターで書くじゃないですか。そうやって情報が拡散していけばいいと思います。どうせ全部入れることはできないし。   ピロスエ:「知られていない名曲」を紹介するというのは、もちろんディスクガイド本の機能の一側面です。一方でこの企画の元々のテーマで、アイドルの歴史を表現したい、というのがあって、そのコンセプトに基づいて選曲したラインがある。この2つの要素のバランスにはけっこう悩みました。最終的にはレア曲紹介的な要素は全体の1割くらいでいいかな、と考えました。それよりも「基本中の基本」というような曲をすべて載せないことにはしょうがない、という。   岡島:そこのバランス感覚は素晴らしいと思います。レアなものをピックアップして「俺はこんなに知っている」とひけらかすような本もありますけれど、それは自己満足で外に広がらないので、ネットや同人誌でやる面白さはあるし僕も好きですが、現状出版社から書籍として出す意味を、僕自身はあまり感じません。さっきも言いましたけれど、ディスクガイドである以上は、ガイドしてほしい人が読むべきものになっていないといけません。AKB48はほとんどの全シングルが載っていますよね?   ピロスエ:最終的にAKB48とモーニング娘。のシングルは(2012年までの分は)すべて載せています。どちらも活動期間が長いです。すべて載せることでその変遷のグラデーションがわかるようなものがいくつか欲しいと考えました。それから単純にページ数の都合もありますね。たとえば広末涼子はシングル全7枚でちょうど見開き2ページに収まるので、そういう場合はすべて載せています。  

栗原「この本の一番の批評性は『網羅した』というところ」

——歴史を追うということは、ガイドとして網羅するという面と、時代を象徴するものをセレクトする、という批評的な側面があると思いますが――。   栗原:この本の一番の批評性は「網羅した」というところだと思いますね。   岡島:それでもピロスエさんの視点が出ていますよね。僕は昔のアイドルはわからないけれど、広末以降では、例えばさっき言ったように、楽曲派のDJがかけるような定番曲が全て入っているわけではなく、AKB48が全曲入っているように、普通に売れたアイドルの曲を入れていく。そういうバランス感覚です。それが昔からピロスエさんの一番の特徴だと思っています。『エスロピ』という個人ニュースサイトで、ハロプロのニュース情報を網羅するとか、菊地成孔の情報を全部リンク貼るとか、そもそもハロプロ楽曲大賞、アイドル楽曲大賞もそうなんですけど、ものすごい作業量なのに、情熱でやってしまう。だからこの本も、ピロスエさんだからこその本になっていると思います。   栗原:世代なのかな、ピロスエさんには「網羅してアーカイヴにしたい」欲望というか性癖(笑)がある気がする。過去の批評とか評論って、恣意的で独善的な傾向が強かったんですね。むしろそれがいいんだとする時代風潮もあった。僕は仕事柄いろんなジャンルの批評や評論を大量に読んでるんですけど、その反動で、「もっと事実に即して押さえるべきところは押さえなきゃ駄目じゃないか?」という機運が、ジャンル問わず、あらゆる方面で起こっている印象はあります。   さやわか:現在、アイドルについては、自分の体験や愛情に根ざして語る語り方しかほとんど存在しません。それが歴史を語るような語り口になっていても、結局は自分たちあるいは自分の個人史に近いところになっていました。ピロスエさんはそうじゃないことをやろうとしているのが面白いところですね。これはいわば、全体性をカバーすることを意識されているということかなと思います。批評というものはある種、全体性をカバーした書き方をしなければならないんだけど、情報量が増えるに従って限界が出ています。そこに抗うような作業をピロスエさんはやっているのかな、と。だからアイドル楽曲の非常にポピュラーも、逆にマイナーな楽曲も、両方をカバーする、という視点があります。  たとえば松田聖子のことでも、今さらこれだけの枚数の楽曲を持ってきて語る必要はないと思う人も多いはずです。どうかすると今アイドルを好きな人たちは、昔のアイドルの話なんてどうでもいいと思っているかもしれない。だけどこの本は、今自分が立っている地平は昔と接続されているんだ、という話をしたかったんだと思うんです。それはこの本の第1章が2010年から始まるところでわかりますよね。ここですでに批評的な意図が働いていると思います。単なるディスクガイドであり、カタログであるなら2010年代は最後でいいはずですから。「今、私たちが立っている場所は、どうやって作られたのでしょう?」という問いを感じさせる。書き手はたくさんいるけれども、企画や本の構成の時点でピロスエさんがきちんと批評的意図を込めているわけです。  

さやわか「アイドルを包括的に語る上で、楽曲がひとつの軸になれる」

栗原:レイアウトが決まった状態で依頼をもらっているんですが、そのリストアップの時点でもう流れができていた。例えば、90年代のアイドル冬の時代に入ると、アイドルの本職が歌手じゃなくて女優になっていきます。かつては「アイドルは歌を歌うもの」だったのが、90年あたりを境に「アイドルの本業は女優でついでに歌も歌う」というふうに変わっていくんですけど、そういうストーリーがレイアウトの流れとして暗に示されている。だから、別に何の注文もされていないんだけど、書いていると自然に、そのストーリーを文章で完結させる形になるわけです。「ああ、ピロスエさんに踊らされているなあ」と何度か思いました(笑)。   ピロスエ:自分でそういうストーリーを作ろうと思って作ったわけじゃなくて、「ここは押さえておくべきだ」と選盤していったら結果的にそうなった、という部分が大きいですね。もちろん意図した部分もあります。でも誰がやってもある程度はこういうストーリーになるんじゃないかな?   さやわか:いや、どうかな? 例えば栗原さんが仰った時代のように、宮沢りえや観月ありさってアイドルの楽曲のディスクガイドに入ってこなくてもいいかもしれないじゃないですか? でも、この本はそこに文脈を込めて紹介していて、順番に読んでいくと「ああ、なるほどな」と思わされる。   ピロスエ:狭義のアイドルと広義のアイドル、という風に考えると、アイドルがすごく好きな人は前者を重視すると思うんです。安室奈美恵やSPEEDも微妙なところで、「アイドル」と言わずに「アーティスト」という言い方もできるし。そういうところは全て「広義のアイドル」と考えて全部入れました。   さやわか:さとう珠緒とか釈由美子も入ってますからね(笑)。   ピロスエ:最終的には「若い女の子が歌っていれば全部アイドルなんじゃないか」というところに行き着いちゃいますよねー。   さやわか:非常に明快な定義ですね。それと同時に、ディスクガイドということもあってすべてが「音楽」に紐つけられている。そういうやり方で扱う対象を広くできたからこそ、全体的な文脈がうまく築けたのかな、と思います。扱う対象が狭いと、必然的に自分の興味のあるアイドルの話になってしまいますから。   岡島:選盤や企画にあたって参考にしたアイドル関係の本はあるんですか?   ピロスエ:アイドル関係では昔の本をけっこうあたったんですけど、「これはいいな」というより反面教師が多かったですね(笑)。ある80年代アイドルの本は、最初の方にレビューがあって、80年代の10年間を150枚くらいで取り上げていたんですけど、そういう切り口だと本当に恣意的で浅いものにしかならなくて、やはりある程度の分量・範囲がないと面白くならないと考えました。そういう意味で影響を受けたのは、いくつかあるんですが一冊挙げると、2003年に河出書房新社から出た『テクノ:バイヤーズ・ガイド』という本です。あの本はテクノのアルバムや12インチを4000枚レビューしていて、頭おかしいなと思いましたが(笑)、やっぱりそういう方が面白くて美しいですよね。   さやわか:そうやって表紙がレコードのジャケットで埋まっているような90年代サブカルチャー的なディスクガイド本は、昔はいっぱいあったじゃないですか。でも今、流行っているグループアイドルのファンは、そういう網羅性よりもそれこそ「接触」のように現場中心で、作品よりアイドル本人の方が重視されていると思います。だから僕が『AKB商法とは何だったのか』という本を書いた2013年初頭には、結論として「もう楽曲にこだわることはあんまり意味がない」ということを書きました。この本はそれに抗ったというか、むしろこの本が成立すること自体が、少し状況が変わってきているのかなと思わされました。楽曲がどんなものでも構わなくなった結果、むしろいい曲を作ってもかまわない状況になっているというか。アイドルファンの中でも楽曲派、在宅派、現場派と分けたときに、楽曲派ってここ10年くらいマイナーな位置づけだった気がするんだけど、これだけアイドルブームが安定して広がってくると、楽曲は普通によくなってるし、こういう本が成立してもいいじゃん、という風潮になっているんじゃないかな、と思いました。   栗原:現場の数はもちろん市場規模が大きくなりすぎて、個々人でフォローできる状況ではなくなってきたことが、楽曲自体の存在価値を押し上げている面もあるかもしれないですね。楽曲が良い悪い以前に、もう何だかよくわからないという状況があるんだけど、すると受け手の尺度として逆説的に楽曲が浮上してくるというか。ピロスエさん主催の「アイドル楽曲大賞」でも、昨年末の2013年度インディーズ楽曲部門の1位が、福岡のローカルアイドル・青SHUN学園だったじゃないですか。発表された瞬間、会場はコアなヲタばかりなのに、「まるで想定外」「誰それ」みたいにどよめてましたよね。ピロスエさんも「青SHUN学園という名前は知ってるけど、この曲は聞いたことない」って漏らして。それが1位になるという。   さやわか:そうなんですよね。昔は単純にメジャーなアイドルがハイクオリティなものを作っていて、地下ではよくわからないチープな曲をやっている、というのがわりと普通だったんですけど、今は地下でも全然いい曲があったり、逆に地下の方が時間を掛けてクオリティの高いものを作っていたりします。そんな感じで、少なくとも楽曲で見た時にアイドルの質が一定になってきたからこそ、楽曲というものがアイドルを包括的に語る上でひとつの軸になれるんでしょうね。地下だろうとメジャーだろうと、全部を並列に並べて論じることができます。これは、こういう時代になったからこその強みかもしれません。 (取材・構成=編集部)
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左から、さやわか氏、ピロスエ氏、岡島紳士氏、栗原裕一郎氏。

■イベント情報 『アイドル楽曲ディスクガイド』出版記念トークイベント 日時:OPEN 11:30 / START 12:00 価格:前売¥1,800 / 当日¥2,000(飲食代別・要1オーダー) ※前売はローソンチケット、web予約にて3/1(土)より発売開始予定 【Lコード:33642】 場所:ロフトプラスワン 160-0021 新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 【司会】ピロスエ、岡島紳士 【ゲスト】栗原裕一郎、坂本寛、さやわか、鈴木妄想、田口俊輔、DJフクタケ、 原田和典、宗像明将、岩切浩貴 【VJ】fardraut films イベント概要:南沙織からAKB48まで。シングル850枚+アルバム100枚=950タイトル、徹底レビュー。70年代から現在までの女性アイドル史を捉えた驚愕の書『アイドル楽曲ディスクガイド Idol Music Disc Guide 1971-2013』を巡り、執筆者たちが集まって語ります! 詳細はこちら ■書籍詳細情報 ピロスエ・編『アイドル楽曲ディスクガイド Idol Music Disc Guide 1971-2013』 発売日:2014年2月27日 発行・発売:株式会社アスペクト 判型:A5判(オールカラー256ページ) 定価:2500円+税

Kis-My-Ft2はなぜブレイクしたか? SMAP譲りのキャラ立ち戦略を読み解く

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Kis-My-Ft2『光のシグナル(初回生産限定盤B)』(avex trax)

【リアルサウンドより】  Kis-My-Ft2のシングル『光のシグナル』が初週20万枚を越えるセールスを記録し、オリコン週間チャートの1位にランクインした。  Kis-My-Ft2は昨年、SMAP中居正広のプロデュースによる派生ユニット「舞祭組」が注目を集めるなどして、人気が高まっていた。冠番組であるバラエティ『キスマイBUSAIKU!?』は4月3日から全国放送に昇格。ますます勢いを増していることが伺える。  ジャニーズの若手グループの中でも、同グループが特にブレイクした理由を、ジャニーズの動向に詳しい芸能ライター・ジャニ子氏は次のように分析する。 「Kis-My-Ft2がブレイクした背景には、SMAPチーフマネージャーである飯島三智さんの管轄にあるということが、まず挙げられるでしょう。ジャニー喜多川さんが舞台での活躍を重視するのに対し、飯島さんはテレビでの露出を重視する傾向があります。Kis-My-Ft2はかねてより、SMAPと多数共演することによって、その知名度を高めてきました。また、彼らは前列の3人と後列の4人に明らかな格差があることが知られていますが、舞祭組などでそれをネタにすることによって、各メンバーが明確なキャラクターを打ち出すことに成功しています。先日放送された『中居正広のミになる図書館』では、舞祭組の千賀健永さんがそろばん検定に挑戦し、中居さんに『一番スケジュールが開いていたからお前に振った』と弄られていましたが、先輩からそんな風に扱われるのは“キャラが立っているから”こそだと思います。SMAPでは木村拓哉さんや稲垣吾郎さんが男前路線、草なぎ剛さんや中居正広さん、香取慎吾さんがバラエティ路線のキャラクターを、それぞれ打ち出すことによってグループとしての活動の幅を広げてきましたが、そのスキームはKis-My-Ft2にも引き継がれているのかもしれません」  また、Kis-My-Ft2はパフォーマンスの面でも優れている面があると、同氏は続ける。 「Kis-My-Ft2は光GENJIを彷彿とさせるローラースケートでのパフォーマンスを得意としており、それによってわかりやすく『自分たちはアイドルである』ということを示すことができているのも、大きな強みではないかと思います。現在、EXILEや韓流アイドルなどの活躍によって、いったいどういう存在が男性アイドルなのかが不明瞭になっているかと思うのですが、そういった時代に“最後のスーパーアイドル”とも呼ばれた光GENJIのスタイルを踏襲していることは、とても象徴的です。彼らのステージングには、単にかっこいいだけじゃない、アイドル的なきらびやかさがあります。加えて、バラエティでのキャラクターとのギャップも、ファンを夢中にさせる要因のひとつとなっているのではないでしょうか」  ジャニーズ若手の中でも、一歩抜きん出た感のあるKis-My-Ft2。SMAPの後を次ぐアイドルグループとなるのは、彼らなのかもしれない。 (松下博夫)

佐村河内氏が記者会見で力説 「調性音楽の復権」はどのような文脈で登場したか

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岡田 暁生-『西洋音楽史』

【リアルサウンド】  全聾の作曲家として知られ、「交響曲第1番《HIROSHIMA》」などのヒットから一時は「現代のベートーベン」とも評された佐村河内守氏。しかし後の週刊誌のスクープにより、それらの楽曲の大半が音楽家の新垣隆によって手がけられていた、いわゆる「ゴーストライター」の手によるものであったことが明らかとなった。3月7日に行われた謝罪会見で佐村河内氏は次のように語っている。「私は70年間に渡る現代音楽というものに対して肯定的ではありませんで、昔の「調性音楽」というものの復権、そういう尖兵が現れて時代が変わればいいなあというような希望を持っておりました。当然この70年間続いたアカデミズムの伝統ですから、絶対に生きているうちにはこの長大な音楽、交響曲は演奏されないと思っておりました。でもそのことと、それを世に残しておく。いつか尖兵が現れて、時代が変わったときに「今の時代に見合うような音楽がここにもある」と誰かが拾ってくれればそれでいい、というようなことで(ゴーストライターを使ってまで)完成させたのが、交響曲第1番です」。  音楽学者の岡田暁生は著書『西洋音楽史』において、20世紀における西洋音楽の行方を三つのモードに区分している。第一に広範な聴衆の支持を犠牲にしてでも「芸術」のエリート性を保とうとする、一部の前衛的な作曲家たちが選んだ現代音楽。第二に創作面が現代音楽というある種のアングラ音楽と化していくなかで、西洋音楽の「公的音楽」としての側面が演奏文化に継承されていく「クラシック音楽のクラシック化」 。新曲を楽しむというより固定されたレパートリーについて演奏の差異を味わうという音楽鑑賞の形態は、録音メディアの発達も後押しとなり20世紀に入って加速度的に進行していくこととなる。そして第三にポピュラー音楽の勃興。娯楽音楽の発信地がヨーロッパからアメリカへと移行するなかで、サロン音楽をルーツにもつポピュラー音楽がクラシック音楽の受け皿となった。従来ならオペラやサロン・ピアノ音楽などの作曲家になっていただろう多くの人が20世紀においては産業音楽に従事するようになったのは周知の事実である。  ゲーム音楽という産業音楽をキャリアの原点にもつ佐村河内氏は、会見における発言からも上記のような現在のクラシック音楽が置かれている状況に対する強い不満があったのだろう。すなわち20世紀後半以降は作曲家と演奏家が決定的に分離され、アカデミックに評価される創作は一般に難解な現代音楽が主流とされていること。自身の愛するクラシック音楽においては「作品を作ること」から「作品を演奏すること」へ創作の対象がシフトしており、自分で曲を書くかわりに他人の書いた曲を独創的かつ鮮やかに演奏することをもって新しい創作とされる「クラシック音楽のクラシック化」が進んでいること。そのなかで現代音楽とは異なる形の(調性のある)新しいクラシックの登場を渇望した結果、(ゴーストライターの手を借りて)自ら曲を創る道に至ったものだと考えられる。  クラシックジャーナルの編集長である中川右介氏はWEB RONZAでこう指摘する。「佐村河内氏は現代の音楽界への異議申し立てとして『自分はあえて昔ながらのロマン派風の交響曲を時代錯誤と分かっているけど書くのだ』というようなことを言って登場した。それはそれでひとつの考えである。だからそういう考えで書いてそれが売れるのなら、それはある意味でクラシック音楽業界が見逃していたマーケットの開拓である」(参考:WEB RONZA)。今回の「交響曲第1番《HIROSHIMA》」のヒットがどこまで佐村河内守というパーソナリティによるものなのかは知る由もない。しかし騒動前にこれだけの評価と賞賛を集め、普段はクラシックと縁遠いであろうリスナーまで惹きつけたことは事実として忘れてはならない。調性音楽としての完成度を備えた作品が、ポピュラー音楽のように一般のリスナーから歓迎され得ることが改めて示されたのである。   ゴーストライターなどのスキャンダラスな話が先行して「交響曲第1番《HIROSHIMA》」について論じられることはほとんど無くなってしまったが、かの曲が現在のクラシックへ一石を投じた問題提起について我々はもう一度、冷静に考えてみる必要があるのではないだろうか。 (文=北濱信哉)

乃木坂46はAKB48を超えるか? 躍進の背景にテレビ重視のメディア戦略

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乃木坂46『乃木坂46 1ST YEAR BIRTHDAY LIVE 2013.2.22 MAKUHARI MESSE』(SMR)

【リアルサウンドより】  AKB48の公式ライバルである乃木坂46が、日に日にその存在感を増している。  2月5日にリリースされた『乃木坂46 1ST YEAR BIRTHDAY LIVE 2013.2.22 MAKUHARI MESSE』は約1万2000枚を売り上げ、1999年の集計開始以来初めてとなる、女性グループファーストライブDVDでの初登場首位獲得という快挙を達成。また、2月22日には、デビュー2周年を記念するライブを横浜アリーナで敢行、同舞台に辿り着くまでに4年と1ヶ月を要したAKB48を大幅に上回る結果となった。  CDのセールスも、リリースを重ねるごとに右肩上がりとなっている。オリコンによる乃木坂46のシングル売り上げランキングを見ると、上位から『バレッタ』『ガールズルール』『君の名は希望』となっており、新しい作品ほどよく売れていることがわかる。  乃木坂46がこのように勢いを増している背景には、彼女たちがいわゆる「メディア型アイドル」というスタンスを継続してきたことが、ひとつの要因として挙げられるだろう。AKB48が「ライブ型アイドル」として、握手会や劇場公演の活動に重点を置いているのに対し、乃木坂46はテレビバラエティである『乃木坂って、どこ?』(テレビ東京系)や『NOGIBINGO2!!』(日本テレビ系)といった冠番組でのメディア出演を、主な発信の場としてきた。もちろん、乃木坂46もライブや握手会を行うが、AKB48のように劇場での活動を主軸にしているわけではないので、ライブ現場などに足繁く通わずとも、その活動の全容を把握しやすいという特徴があった。  気鋭の批評家/情報環境研究者でアイドル文化にも詳しい濱野智史氏は、過去のリアルサウンドのインタビュー(参考:「みんなが疲弊しないアイドル環境を作りたい」濱野智史が“厄介ヲタ”になりかけて決意)において、乃木坂46の強みを次のように語っている。 「いわゆる在宅ヲタ――つまり、アイドルは大好きだけど、握手会やライブにはほとんど足を運ばないというファンにとっては、乃木坂46のように基本的にテレビやネットを見ているだけでシーンを追えるアイドルグループは、親しみを持ちやすいのではないでしょうか。たまに握手会に参加するくらいが丁度良いというファンにとっては、良いグループなのだと思います。もしかしたら、それくらいの距離感のほうが、メンバーもヲタにとっても疲弊も少ないのかもしれませんし」  3月9日放送の『乃木坂って、どこ?』(テレビ東京)では、8枚目のニューシングルである『気づいたら片想い』の新センター、西野七瀬がすっぴんを披露するなどして、そのキャラクターをアピールしており、乃木坂46のメディア戦略が粛々と継続されていることが伺えた。AKB48のような「ライブ型アイドル」が飽和点を迎えているようにも見える今、彼女たちの「メディア型アイドル」というスタンスは、より際立つのかもしれない。AKB48大組閣では、乃木坂46の生駒里奈が交換留学生としてAKB48兼任メンバーとなり、両グループがかつてないほど接近しているが、そのような状況において乃木坂46のメディア戦略が果たしてどのように機能するのか、動向を見守りたい。 (文=松下博夫)

GLAY、亀田誠治、ドレスコーズ志摩、AKB48も…ストーンズ来日にミュージシャンも熱狂

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ローリング・ストーンズ - 『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実 [Blu-ray]』(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ)

【リアルサウンドより】  ザ・ローリング・ストーンズが2014年2月26日、3月4日、3月6日に東京ドームで8年ぶりの来日公演を行った。最終公演の6日には今回のツアーで最多となる約53000人が来場。会場は最後席までびっちりと観客で埋め尽くされ、訪れた人々は“ロックの伝説”ストーンズに大熱狂した。  そんな最終公演から3日が経ち、伝説を目撃したアーティストからの感想が、Twitterやブログなどに続々と寄せられている。GLAYのTERUは「ストーンズ、凄かったです。継続って、素晴らしい!ただ、継続するじゃなく、軌跡が奇跡を生む瞬間!その瞬間をしっかり見てきました! 」と感動をツイート。そしてJUN SKY WALKER(S)の宮田和弥は「ストーンズを観て長生きしたいと思いお酒の飲み過ぎには気を付けようと思いながらだけど今日は飲みまくる!ローリングストーンズに乾杯!そしてありがとう」とツイートし、自らが強い影響を受けたストーンズに、彼らしい敬意を表した様子だ。そして同じく訪れていた音楽プロデューサーの亀田誠治もそんな宮田に「最高中の最高♪まだ、シビれてるー」とリプライし、興奮を隠さない。また、意外なところでは前田敦子とAKB48の小嶋陽菜も2人揃ってライブを見た模様で、パンフレットとともに笑顔を浮かべる写真がインスタグラムに掲載されている。  また、最終公演と同じ日に誕生日を迎えたドレスコーズの志磨遼平は3公演全てに足を運んだようで、「キース・リチャーズが昔こんなことをインタビューで話していた。“誰が俺たちを『世界最高のロックンロール・バンド』なんて呼んだ? 俺たちはクソみたいな演奏もする。俺たちは、たまに世界最高になるんだ。毎晩最高なんて、心電図で言えば死んでるのも同じさ。アップダウンがあるからやめられないんだ。”ぼくは3日間通って、この言葉の生き証人になったのだ。(中略)ストーンズさえいてくれれば、ぼくらはずっとこんな風に幸せなのに、彼らはもう次の国へと旅立ってしまう。悲しい。留守は立派に守ろうと思う」と、ブログにストーンズへの熱い想いを寄せた。(参考:日本語のドレスコード)他にもたくさんのアーティストからの感想がネット上に並んでいるが、日本のロックアーティスト達にとっても、やはりストーンズは神様のような存在だからなのだろうか。ストーンズを体験した感激を、素直に綴った言葉が目立つ。    そして今回の来日公演を体験したファンからは、いまだ数多くの感想がTwitter上に届け続けられている。今回が、最初で最後のストーンズ体験かもしれないという若年層から、メンバーと同世代のストーンズ・ファンまで、あらゆる世代の人々が会場には集まっていたが、感想も世代によって様々。しかし共通して多く見受けられたのが「ミック・ジャガーのパワフルさ、チャーミングさに感銘を受けた」というもの。御年70歳のミック・ジャガーがステージの端から端まで走り回り、エネルギッシュなステージを展開していたことや、片言ながら日本語を用いたMCでメッセージを伝えてくれたことに感銘を受けたというツイートが多々見受けられる。そして、3公演を通じてセットリストが異なったことや、往年の名曲から新曲まで彩り豊かに聴かせたことで、ストーンズが当然ながら未だ現役、世界が誇るロックバンドであることを再認識したという声も多かった。  近年海外の大物ミュージシャンの来日が続いているが、“最後の大物”という呼び声も少なくなかった今回のストーンズ来日。期待以上のパフォーマンスは、多くのロックファンの心を揺さぶったようだ。最終日にミック・ジャガーが発した「また会おう!」という言葉を受け、次にストーンズに会える日を、今から待ちわびている人も多いだろう。 (文=岡野里衣子)

銀杏BOYZ峯田和伸×豊田道倫特別対談「街は静かだけど、心のノイズは増えている」

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左、豊田道倫。右、峯田和伸。東京・下北沢にて。

【リアルサウンドより】  9年ぶりのオリジナルアルバム『光のなかに立っていてね』と、ライブアルバム『BEACH』を同時リリースし、轟音ノイズに満ちたサウンドで2014年初頭の音楽シーンを震撼させた、銀杏BOYZの峯田和伸。そして、90年代半ばよりパラダイスガラージおよびソロ名義でオルタナティブな音楽作品を連発し、峯田を含めた後続世代からもリスペクトされている孤高のミュージシャン、豊田道倫。バンドサウンドに深く取り組んだ新作『FUCKIN' GREAT VIEW』をリリースした豊田は、銀杏BOYZの新作から近年にない「カオス」を感じ取ったという。リアルサウンドでは今回、奇しくも同じ日に新作を発表した両者の対談が実現。和やかな雰囲気のなかで、二人の会話は互いの音楽に対する思いから、「街」「ノイズ」をめぐるディープな考察へと展開した。

峯田「豊田さんの声は、出そうと思って出せる声じゃない」

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ツアーの際は、車で豊田の音楽をよく聴いていたという峯田。

峯田:昨日、豊田さんの昔のパラダイス・ガラージの音源を聴いてみようと思って。『グッバイ大阪』とかあったじゃないですか。なんかあの、風俗店のような空気感がすっごい面白かったです。編集盤って感じしなかった。なんか映画みたいな、いい感じのところで「移動遊園地」が流れてバーンって。「おやすみ、ねずみくん」とか、ハーモニカの音が鳴らないで、息が「ふーっ!」って、ああいう感じとかがすごいですね。なんていうんですかね、ベッドルーム感というか。 豊田:当時はああいうのがあちこちであったんだよね。アメリカの音楽だとローファイとか。自分ではぜんぜん意識していないんだけど、同時多発的にああいうのがちょこちょこあって。それは90年代の特色かもしれないね。でも、今の日本のロックと欧米のロックがリンクするかというと、あんまりわからない。僕は、2000年の時にちょうど30歳で、その時くらいから自分はロックシーンとは違うところにいるんだなって思っていて。それからしばらくして峯田くんとか、また違ったバンドがどーっと出てきて、自分と違うロックファン、あるいは若者たちの熱気を感じてた。ただ、当時は雑誌とかメディアとかの言葉がこそばゆすぎて、若いバンドを聴こうっていう気持ちがあんまりなかった。もしかしたら、僕の世代はそうかもしれない。でも、自分が39歳のときに昆虫キッズっていうバンドと一緒にアルバムを作って、そこから初めて若いバンドとやるようになった。で、彼らが銀杏を聴いていた世代だったので、やっと2000年代のCDを聴いて、「あぁ、彼らはこういうこと歌っていたんだ」と理解した。 峯田:99年にGOING STEADYって言うバンドでCD出させていただいたんですけど、そこからレコード会社と契約、アーティストになって、セカンドアルバムが2001年。その頃にUK.PROJECTの人に「これ聴いてみな」って、パラダイス・ガラージの『かっこいいということはなんてかっこいいんだろう』を渡されて。そっから俺は豊田さんのファンになりました。豊田さんの声は、出そうと思って出せる声じゃなくて。俺、好きなアーティスト何人かいますけど、なんで好きなんだろうと思うと、メロディとか歌詞とかもあると思うんですけど、一番は声なんですよ。発声法とかボイトレじゃなくて、その人の体、その人の器官、その人の体の仕組みからしか生まれないものをちゃんと出せる人が好きなんですね。やっぱ豊田さんは、なんか叙情性とかいろいろあると思うんですけど、俺は声が好き。その声は一回聴くと、あーもう充分だって思うくらいにわかっちゃうんですよね。スタジオにマイクがあって、マイクの前にこう、網になっているのがあって、そこで歌っているのとは違う。室内の環境とか過程とか、そういうのも含めた“声の鳴り方”もちゃんと自分でわかっていて、「俺はこうしないと歌えないんだ」とか、「こうして歌いたいんだ」っていうのがすごく伝わってくるんですよね。 豊田:数少ない支持者だね(笑)。

豊田「銀杏BOYZは、若いバンドの心の支柱になっている」

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豊田と峯田の間には共通の知人も多く、互いの近況が伝わっていた。

ーー先ほど豊田さんは、峯田さんたちの世代の音楽を、じっくり時間をかけて受け入れたって言いましたが、実際にその音楽と向き合ってみて、どう感じましたか。 豊田:僕の周りには20代のバンドやっている子がけっこういて、彼らの銀杏BOYZへの気持ちってハンパないなっていうのをまず感じる。その一人はタワーレコードに行って、エレベーター上がって店内の新作のポップ見ただけで号泣したって。その辺のバンドの心の支柱になってるよね。神聖かまってちゃんが出たときも、銀杏の音楽を聴いていた子たちが今、ここに来ているのかって思った。次の時代の人たちを掴む、一つの象徴的な存在なんじゃないかな。今回のCDを聴いても、峯田くんはちゃんとそういう責任感を背負っている気がした。ただその責任感を、ああいうサウンドで勝負してくるとは思わなかったかな。それは面白いし、いったい何を考えているのかわからないところでもあった。 峯田:9年ぶりだったんですよね。レコーディングしているときは、9年もかかると思わなかった。でもいろいろあって、結果9年かかったんですよ。やんなきゃなぁ、早く出さなきゃなぁって、ずっと思ってて。やっぱりいろんな若いバンドも出てくるし、なんか俺のことを好きでいてくれた女の子がほかの男のところにいっちゃうような感覚で、悔しいんですよね。ここ何年かは女性と遠距離恋愛している感じで。早く会わないと、俺のこと振り向いてくれないなって言う気持ちだった。んで、ようやく出せたので、ちょっと気が楽になりましたけどね、半年くらい前に比べたら。 豊田:今メンバーいないけれど、このサウンドを作ったときに、ライブとかツアーは考えてなかったの? 峯田:考えてました。2011年、震災の後に東北の方にツアーに行って、それが最後のライブなんですけど、その時はもうエフェクターとかもレコーディングでそのまま使っていたヤツをライブで使っていて。初日はあんまりうまく行かなかったんですけど、えーと仙台は三ヵ所目かな? あのくらいからなんかやっとデジタルと生身のライブがいい感じになってきて「あーこれいけるなぁ」って思ったんですけどね。んで、最初にギターのチン中村が抜けて。でも一人抜けたぐらいだし、友達にギター弾いてもらってツアーやろうかと思ってたんですけど、一人、二人、三人とメンバーが……。 豊田:そこはすごく気になっていて。小沢健二さんが『Eclectic』っていうダンスミュージックのやつ出した時、いっさいライブ活動しなかった。でも、あれをライブでやればなんかシーンが変わった気がするんだよね。あとは大滝詠一さんが昔出した『NIAGARA MOON』っていうレコードがあるんだけど、それがすっごいリズムの実験しているんだ。でも、ライブではあんまりやっていなくて、もったいない。今回の銀杏BOYZのアルバムも、ライブで日本中を回ったら、もしかしたらスゴいことになっていたのかもしれない。 峯田:レコードが出てもライブができていないっていうのはずっと気にしてて……。いま二つ考えていて、一つはオーディションしてロックバンドの銀杏BOYZとして、固定メンバーで練習して、シングルかアルバムすぐ録って、アルバムのレコ発ツアーをやるっていうのと、もう一つは今の一人だけという状態で、もう音源を録っちゃうという。こういう時期を逆手にとって、一人の状態の今の空気感で、今の新曲をパッケージしようかなっていう。でも回りたかったですね、ツアーで全国に。3年前のツアーはCDのアレンジとまた違う感じで、ツアー後半はけっこう手応えがあって、あの感じでやりたかったなーって思いますね。

峯田「街からノイズは減っているのに、テレビとかネットでは増えている」

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山形出身の峯田。方言の交ざった朴訥な口調も印象的だった。

豊田:銀杏BOYZのレコードを聴いたときのノイズ感、カオス感。あれ多分、メンバーがそのときに聴いたサウンドというか、心のサウンドなのかと思った。下北とか渋谷を歩くと、僕はもう全然、そういうカオス感とか感じないんですよ。でも、みんなの中にはああいうノイズとか、カオス感があったなーって。僕の場合は今回の作品を作るときに、最初は爆音で作るってみんな思ってたんだけど、あんまりそういう感じはなかったんだよね。ノイズ好きだけど、街の中でそんなにノイズを聴いていないからかな。 峯田:街だったり、まぁ世界でもいいんですけど、ノイズは減っていると思います。でもテレビとか、メディア、ネットでは増えている。俺が東京来た時はもっといかがわしかったけど、歌舞伎町も浄化されていて、一見すごく静かで。でも俺、たまにパチンコ屋に行くんですよ。阿佐ヶ谷のパチンコ屋がすっごいうるさくて。ほんとシューゲイズみたいなすっごいノイズで。あれが味わいたくてたまに行くんですよ。行くところに行くとうるさいぐらいで、あとはみんな静か。でも、テレビでバラエティ観ていても、前だったらそんな演者がしゃべってるのに合わせて、テロップとか出てませんでしたよね。そういうテロップとか右上とか左上にも、いろんな情報とかノイズっていうのがものすごくて。街から減っているのに、テレビとかネットとかではノイズは増してて、うざったらしい。なんでこんなに画面がうるさいのか。それが気持ち悪いんですよね、自分にとって。街はもっとうるさくていいから、娯楽とかそういうのはもっとひっそり観たい。街がうるさくて、嫌だからテレビ観てるとか。今は逆行していて、街が静かだからテレビがうるさくて、落ち着ける場所がなくなっている気がするんですよ。それをなんか払拭したくって、(新しいアルバムで)ノイズが増えていったのかなって、今になって思うんですよね。もう、うるさい曲は、曲の輪郭わからないくらい抽象的なノイズというか。抽象的になるためのノイズで、それはメルツバウとか、そういうノイズアーティストのアイテムとしてのノイズではなくて、なんかもっと骨組みを抽象的にする役割としてのノイズというか“ノイジーな気分”だったんでしょうね。僕以外の三人もそうだったんだと思います。これ、こうしちゃうとベースライン聴こえない、いやでもそうしたほうが気分的にはいいかなってなったんでしょうね。 豊田:こないだ二日間、大阪の実家に帰ったんだけど、めちゃくちゃ街がうるさい。東京に帰ると静かでいいなぁって思って。どっちがいいのかわからないけど。さっきも言ってたように、人間の心の暗部とかは、どんどんノイズ感が増えているんだけど、街として聴こえてくる音は、前よりもきれいになったというか、あんまり大きな音じゃない。で、今の若い子たちの音楽も割とそんな感じなんですよ。割とプラスティックな感じ。ちゃんとプラモデルを作っているのが多い。そういうところに突然、峯田くんがああいうレコード出したのは、90年代っぽい、グランジとかジャンクとかいう雰囲気で1回ぶっ潰すような感覚はあったかもしれない。(後編に続く) (取材=神谷弘一/構成=松田広宣/写真=金子山)