福山雅治、西野カナ、EXILE……アジアで人気拡大するミュージシャンたち

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台湾観光親善大使に任命されている福山雅治。

【リアルサウンドより】  福山雅治が4月2日に発売したアルバム『HUMAN』より、収録曲の「暁」の中国語バージョン「破曉(ポーシャオ)」を制作したことを明らかにした。  福山は、2月に台湾で行ったアジアツアーの会見で、台湾のテレビ局・民視無線台の連続ドラマ「你照亮我星球(You Light Up My Star)」(台湾時間で6月1日スタート、日曜22時)の主題歌を担当することを明らかにしており、今回、台湾の音楽スタッフのもと、すべての歌詞を中国語に変えたという。なお、福山が海外バージョンの楽曲を制作するのは初となる。台湾観光親善大使にも任命されている福山だけに、今後同国でのさらなる人気拡大が期待される。  福山のほかにも、アジア圏で人気を博し、現地の人々に寄り添った活動を展開するミュージシャンは増えている。ここ数年で代表的なのは、2011年9月に初の北京公演を行ったSMAPだろう。同グループは公演にて、代表曲である「世界にひとつだけの花」の中国語バージョンも披露。同年5月に行われた日中韓サミットでは、中国・温家宝首相と会見も果たし、日中友好の架け橋となったことも大いに話題となった。EXILEは2012年1月にアルバム『EXILE JAPAN』を中国、香港、台湾でも同時発売。中華圏の特典CDには、ボーカルのATSUSHIが中国語で歌うフェイ・ウォン(王菲)のカバー曲「我願意(あなたに尽くします)」も収録されている。AKB48グループの派生グループであるSNH48は2012年に上海にて結成、AKB48の楽曲を中国語に翻訳して使用している。2013年11月には広州国際体育センターで1万人規模のコンサートを開催しており、現地メンバーとともに着実に人気が上昇していることが伺える。
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中華圏でも圧倒的な人気を誇る西野カナ。

 最近のニュースだと、西野カナが4月23日、ザ・ベネチアン・マカオ コタイ・アリーナにて開催された『第18回 China Music Award』で「Asian Most Influential Japanese Singer賞」(アジアで最も影響力のある邦人女性アーティスト賞)を受賞。音楽性だけではなく、ファッション・アイコンとしても高く評価された。西野カナは2012年1月、台湾の紅白歌合戦といわれる「超級巨星紅白藝能大賞」出演をきっかけに海外進出。同番組出演の際は、現地で歌い継がれる名曲を中国語で披露する一幕もあった。2013年の春には自身初のアジアツアーを台湾、香港にて開催し、両都市ともにチケット完売。その国際的な人気を知らしめている。  このようにアジア圏で活躍するミュージシャンが増加している背景には、各国の音楽市場の拡大がある。一般社団法人・日本レコード協会が2013年度6月に発表したレポート「2012年世界の音楽産業」によると「中国は音楽産業にとって非常に大きなチャンスのある市場でもある。Boston Consulting Groupの予想では、中国は今後3年間で日本を抜いて、世界第2位の消費大国になると予測されている。(中略)音楽は、携帯電話、PCの双方において、中国のエンターテイメントの中心的コンテンツとなっている」と、同国の音楽市場に光明を見いだしている。また、大物日本人ミュージシャンの中国進出が目立った2011年度、11月19日の日本経済新聞では「中国のCD単価は375~450円(海賊盤を除いた正規盤のみ)と、日本に比べて低いが、コンサートチケット代は3000~27000円に上るという。4500~8000円という国内の相場を上回る場合もある」と、同国でのライブ興行にも期待できることを示している。ほか、インドでは2012年に音楽売上が過去最高を記録、韓国ではK-POP人気に牽引されてパッケージ売上が対前年比19%増加するなど、市場を拡大している国は少なくない。  ミュージシャンの海外進出において、現地の言葉で歌ったり、現地のテレビ番組に出演したりといった施策が目立っている昨今。ミュージシャンの海外進出が、国内音楽市場の発展に繋がることを期待を寄せるとともに、これらの文化的交流が各国間の友好の架け橋となることを願いたい。 (文=松下博夫)

モー娘。、きゃりー、ClariSが好セールス達成 売上チャートで見えたそれぞれの方向性とは?

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モーニング娘。'14『時空を超え 宇宙を超え/Password is 0』(UP-FRONT WORKS)

【リアルサウンドより】 参考:2014年04月14日~2014年04月20日のCDシングル週間ランキング(2014年04月28日付)(ORICON STYLE)  モーニング娘。'14きゃりーぱみゅぱみゅ、ClariSが初登場という、各ジャンルの人気者が集まった感のある今週のシングルチャート。毎週チャートを見ている者としてはこういう週は華やかで実に楽しい。  まずモーニング娘。'14だが、1位になったことは純粋に喜ばしい。初回盤4種に通常盤2種という前作と同じ布陣による商品構成だったわけだが、結果としてはうまくモーニング娘。の狙っていた「5作連続チャート1位」を達成することができた。ただ前作、前々作と15万枚に手が届くところまで来ていたところで、今作は12万枚弱。決して悪い数字ではないが、auのCMで大量に露出していたのを考えると、ちょっぴりもの足りない感もある。しかしまだ15万枚越え、20万枚到達を狙える圏内にはいると思うので気持ちを切り替えて今年後半に弾みをつけていくのがいいだろう。ここまで安定してセールスの伴った1位を続けていれば、もはや今年の紅白歌合戦出演も順当に望めるようになってきたはずだ。  ただ今週のモーニング娘。の横綱相撲に対しては、他がちょっと力不足だった感も否めない。2位のきゃりーぱみゅぱみゅは1.5万枚、つまりモーニング娘。のほうが8倍というスコアになってしまった。ただし、だからといって単純にきゃりーが劣っていると評価できるわけではない。たしかに彼女のシングルセールスは昨年の「にんじゃりばんばん」あたりで初週2万枚、累計で5万枚に到達したのを最後にセールスを下げているが、その代わり昨年6月のアルバム「なんだこれくしょん」は初週12万枚、累計で26万枚も売っているのだ。つまり彼女は公言しているとおり確実に「アーティスト」路線、シングルよりもアルバムで売り上げるタイプのミュージシャンへとシフトしつつあると見ることができるわけだ。逆に言えばきゃりーの勝負は今年も発売されるであろう次のアルバムにあるわけで、そこで昨年同様の結果を出せるかどうかが注目すべきところとなる。  3位のClariSは『魔法少女まどか☆マギカ』など人気アニメの主題歌も歌う二人組で、顔を出さず、さまざまなイラストレーターによるイラストでビジュアルイメージが提示されているのが特徴。ClariSもきゃりーぱみゅぱみゅ同様、従来作よりは数字を大きく落としている。しかし昨年末に発売されたシングル「カラフル」は累計7万枚を越えており、こちらはさらにシングルを売ることができる存在としても期待できる。アルバムも昨年6月の前作は5万枚を超えており、この調子なら次作はもう少し上が望めるかもしれない。  今週の数字だけを見ると「モーニング娘。'14の一人勝ち」というふうに感じるかもしれないが、上位は三者三様、それぞれの方向性で勝負した者の集まったチャートだと見た方が正しいだろう。そんなわけで、やはりバラエティ感があって楽しい週になった。 ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』『一〇年代文化論』がある。Twitter

キスマイ宮田のキスシーンにELT持田ドン引き 『キスマイBUSAIKU!?』でセクハラ疑惑

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ジャニーズらしからぬ体当たり企画の数々で人気のKis-My-Ft2。

【リアルサウンドより】  Kis-My-Ft2の冠番組『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ)が4月24日24時10分より放送され、ゲストにはEvery Little Thingの持田香織が出演した。  同番組は、Kis-My-Ft2のメンバーが“自分のカッコ良さが最も出る瞬間”をテーマに、各メンバーが本気で“かっこいい”と思うシーンを考え、自らが主演した映像を制作。そのセルフプロデュースした映像を、キスマイのことをよく知らない女性100人に審査してもらい、1位(=チョーカッコイイ)から7位(=BUSAIKU)まで順位付けされるという内容で、ジャニーズらしからぬ体当たりな企画が人気となり、今春から全国ネットになったばかり。  今回のテーマは「大学の講義中にバレないようにするキス」とのことで、架空の彼女「マイコ」に、メンバーそれぞれが工夫を凝らした方法でキスをした。  まず最初に映像が発表されたのは、第三位にランクインした玉森裕太。教室の一番後ろの席に座っているマイコのもとに、寝坊のため遅刻してきた玉森は、さっそく彼女に講義の内容を尋ねる。テロップには「もう、おバカさん」などと、一般女性のわりと好意的な声が並ぶ。教えてもらっている途中に自然な形でキスをし、持田はその鮮やかな手法に「そういうことね」と、納得した様子を見せた。  続いては第二位にランクインした北山宏光が登場。出席カードだけ出してすぐに帰ろうとするなど、細かな芸を挟んだ北山は、さりげなくマイコの手をつなぎ、不意打ちのようにキスをする。テロップには「チャラさが良い」などと、肩の力の抜けた方法を評する声が寄せられた。  第四位からは「怒濤のブサイク4連発」として、まずは横尾渉が登場。遅刻してきたにも関わらず「良かった、間に合った~」と言いながら教室に入ってきた横尾に対し、テロップではさっそく「間に合ってねぇよ」などと手厳しい突っ込みが入る。「ちょっと寄せて!」と言いながら、不自然にマイコに接近する横尾。ぎこちない仕草で手をつなぎ「マイコ髪崩れている」と、彼女の髪を撫でた横尾は、そこから強引にロングキスに持っていく。テロップには「え?正気?」「下手にも程がある」「長ぇ~よ!」などと、辛辣な意見が並んだ。  第五位は千賀健永。「俺ね、マイコとこうやって授業受けるのけっこう好きなんだ。おたがい違う大学行ってたら、こういう風に過ごすことできなかったじゃん」などと、とうとうと語る千賀に対し、テロップでは「話長いよ」「講義中に語るね」といった突っ込みが入る。千賀がおもむろに「マイコ、キスしよ」と迫ると、テロップでは「目がエロい」「どん引き」と、その強引さにあきれる声が目立つ。マイコもこれには難色を示していたが、すると。千賀は「いいこと思いついた」と言い放ち、教科書で顔を隠してキスをするという行為に出た。テロップでは「最近マンガでもやらない」「発想が幼稚すぎる」などといった意見が並ぶ。  第六位となった二階堂高嗣は、教科書を忘れてくるという作戦を展開。そのうえ、唐突に「マイコ、キスして」と無茶な要求を突きつけるという暴挙に出た。マイコが無視をしていると、さすがに気まずいと感じたのかペン回しを開始。しかし失敗し、ペンは床に落ちてしまう。マイコがそれを取りにしゃがみ込むと、二階堂もともに椅子を離れる。そしてそのままマイコの首を押さえ込み、強引に唇を奪った。その一部始終を観た視聴者からは「首ホールドするなよ」「やべーなこの人」といった、恐怖すら感じているような声が寄せられた。  最も気持ち悪がられたのは、宮田俊哉だ。宮田の場合、マイコが教科書を忘れたという設定から開始。マイコが教科書を見せてほしいと懇願すると、宮田は「どうしようかな、じゃあチューしていい? チューさせてくれたら見せてあげるよ」と、相手の弱みにつけ込んだ取引を始める。「それ、セクハラ」「目つきヤバ」といったテロップが並ぶ中、宮田の取引はさらに卑劣に。半ば強引にマイコのほっぺにキスをした挙げ句、教科書を手で隠し、マイコが「見せてよ」と迫ると「じゃあもっとこっち寄ってよ」とセクハラ行為を続ける。挙げ句に「この授業つまらないからどっか行こう」と、マイコにサボることを提案。マイコとともに教室を後にしようと席を立つが「教科書忘れた」と一瞬席に戻り、その後「もうひとつ忘れた」と言って、マイコの唇を奪う。教室の後ろで立った状態で思いっきりキスをするという状況となり、テロップでは「え、絶対バレるよね?」「公開処刑」「趣旨わかってます?」といった非難が殺到し、持田も苦笑を禁じ得なかった。  対して1位となったのは藤ヶ谷太輔。藤ヶ谷は教室に入るなり「マイコごめん、遅くなっちゃった」と素直に謝罪。そして「マイコに起こしてもらうの大好きなんだ。でもちゃんと起きるようにする」と続けると、テロップでは「少年っぽくて可愛い」といった声が。マイコが夜はバイトだと言うと、寂しそうな仕草を見せたのち、自然に手をつなぎ流れるようにキスをした藤ヶ谷。「バイト頑張ってね。終わるまで待っているから」と、マイコに声をかけると、「めっちゃバイト頑張れる」「大学生に戻りたい」「これぞ憧れのキャンパスKiss」といった好意的な声が多数寄せられた。持田もこれには「甘えて、寂しがって、さりげなくキスをする。女心をわかっている」と称えた。  アイドルらしい甘さと、アイドルらしからぬ笑いという、Kis-My-Ft2ならではの二面性が見受けられた今回の『キスマイBUSAIKU!?』。次回5月1日深夜放送回のゲストには、恋愛心理学に詳しいアンジャッシュの渡部建がゲスト出演。「ゴールデンウィークに『ドキドキする』デートプラン」がテーマとなる予定だ。 (文=編集部)

『アナ雪』熱唱で改めて注目 歌手・松たか子の実力とキャリアとは?

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『アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック』(WALT DISNEY RECORDS)

【リアルサウンドより】  現在大ヒット中の映画『アナと雪の女王』の勢いが止まらない。4月18日の公開36日間時点で累計動員数が800万人を突破し、4月19日には累計興行収入が100億円に到達したことが明らかになった。  この勢いは音楽業界にも波及しており、劇中で使用されている「レット・イット・ゴー」などの曲は、本国アメリカ版で同曲を歌っているイディナ・メンゼル、日本語吹き替え版の劇中で同曲を歌っている松たか子のほか、ヒットチャートを席巻しつつある。(参考:CDチャートには反映されない、史上空前の『アナと雪の女王』旋風)  その中でも歌手としての評価が一気に高まっているのは、同作品でエルサの声を務める松たか子である。俳優として一般的には認知されている彼女だが、音楽ファンの間では歌手として評価されることも実は少なくない。  6枚目のオリジナルアルバム『harvest songs』では小田和正や片寄明人(GREAT3)などを迎えて制作され、7枚目の『僕らがいた』ではスキマスイッチ、TRICERATOPS、真島昌利を、8枚目の『Cherish You』では竹内まりやを迎えるなど超一流の制作陣を迎えたアルバムをリリースしている。  豪華ゲストを迎えて高い評価を得てはいたものの、売上という面ではここまで日の目を見ていなかった彼女。その理由とは一体何なのだろうか? 音楽業界関係者はこう分析する。 「1997年に『明日、春が来たら』でデビューしたとき、既に彼女はトップ女優としてドラマや舞台で大活躍していました。同曲は話題性が先行して50万枚以上の売上を記録、自身最大のヒットとなりましたが、その後はどうしても『本業は役者』というイメージが払拭できなかった。また役者業が多忙なため通常のミュージシャンのように積極的なプロモーション露出ができなかったことも彼女の歌手業を一般に浸透できなかった要因でしょう」  最後にシングルがリリースされたのは2009年の「君となら」、その前だと2006年の「みんなひとり」まで遡る。その間アルバムこそリリースしていたものの、コンスタントにシングル盤をリリースできなかったことも「歌手・松たか子」として認知が高まらなかった理由かもしれない。  マルチな才能を持ったが故の不遇。しかし、ミュージシャンのなかには以前から松たか子のシンガーとしての実力を高く評価しているものも多い。山下達郎は自身がパーソナリティを務めるラジオ番組「山下達郎のサンデーソングブック」のなかで彼女について「松たか子さんは実はピアノが上手で読譜力も抜群なんです。(竹内まりや作詞作曲の『リユニオン』を聴きながら)こういうリズム感や安定感はさすがですね」と評した。また高橋優は「たまたまテレビで流れていた『ほんとの気持ち』という曲に一目惚れならぬ”一聴き惚れ”をしました。声や唄い方にビビッと来て、一気に松たか子という存在が僕の中で大きくなるのを感じました」と語っていた。  前述の業界関係者も「元々もっていた声質や音楽的素養に加え、ミュージカルの舞台を数多く経験することで歌の表現力が大きく広がった。キャリアを重ね脂が乗ったこの時期に『レット・イット・ゴー』が大ヒットしたことは必然だったのかもしれません」と話す。  4月26日(土)からは新たなバージョンとして、3D吹替え版の上映が全国でスタートするほか、映画にあわせて歌うことができる特別興行「みんなで歌おう♪歌詞付版」の上映も実施されるなど、『アナ雪』現象はまだまだ止まる所を知らないようだ。 (文=北濱信哉)

HaKU辻村有記が明かす音楽人生のターニングポイント「人間ってこういう風に変わっていけるんだ」

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【リアルサウンドより】  中性的で透明感あふれる辻村有記のボーカルと、人力のみで多角的な音を構築するオルタナティブ・ギターダンスロックバンド・HaKU。彼らの2ndアルバム『シンバイオシス』は、これまでの作品とは変わり、外に向かった作品。辻村の「どうしたら言葉が人の心に素直に入るのか」「どういう音作りをしたら自分の特徴的な声が人の気持ちの奥底に入るのか」という今作に向けた真摯な思いを聞くことができた。

「昔の自分は、音楽が救いだった」

――HaKUのニューアルバム『シンバイオシス』を聴くと、ツインリードギターとか所々でヘヴィメタルの要素を感じますが、辻村さんの音楽的なルーツを聞かせてください。 辻村有記(以下:辻村):メタルに関しては、中3のときにスレイヤー、パンテラとかからのめり込んだんです。リアルタイムの世代ではないんですが、近くにメタル好きがいて自然と染まったんです。元々はB'zが好きで、松本さんから速弾きギタリストのカッコよさに惹かれました。ダイムバック・ダレル、ケリー・キングとかのギタリストを知ったことで、メタルに入っていって、どんどんデスメタル、ブラックメタルとか聴いていきましたね。 ――ザ・ルーツとかのヒップホップも好きだったとか? 辻村:メタルに疲れたらR&Bを聴いてたんです(笑)。ベイビーフェイスブライアン・マックナイトディアンジェロとか。生音のヒップホップ、ザ・ルーツが好きで、そこからファンクに行ったり、ニューオリンズ系のギャラクティックを聴いたりしました。 ――楽曲からはポストロック的な感覚も感じますね。 辻村:そこはスクリーモとか、メタルの方から入ったんです。洋楽はいろいろ聴いてました。音楽が救いでもあったので。 ――音楽が救いだったというのは? 辻村:昔の自分は、自分で妄想するのが好きで、外とシャットダウンするひとつのアイテムでもあったんです。今は大人になったので大丈夫ですが(笑)。メタルに関しては、いなたくてカッコいい感じが好きだったんですよね。ギターが上手い友だちがいて、スレイヤーとかアイアン・メイデンとか見よう見まねでマネしてたんです。で、兵庫から18歳で音楽の専門学校に入るために大阪に出たんです。 ――バンドを組もうと思ったんですか? 辻村:いえ、照明の勉強をしたかったんですよ。B'zの京セラドームを見に行くのが恒例になっていて、毎回照明がすごかったんです。華やかなものを作るのに憧れたんですよ。でも照明の仕事って、どんなバンドでもカッコいい色を付けなきゃいけない。それを僕は一生の仕事にできないなって、早い段階で違うって気づいたんです。 ――そこから音楽をやる方向に向かったきっかけは? 辻村:ギター専攻にいた(藤木)寛茂と知り合って、学校のスタジオでセッションしてたんです。ソロを弾き合ってるのが楽しかったんですけど、もの足りなさが出てきて、ドラムとベースを入れようってこの4人が集まったんです。それがバンドのスタートですね。

「歌よりリフを歌ってしまう、そういうものが作れたらなって」

――全ての歌詞を辻村さんが手がけていますが、歌詞を書くことへの興味は強かったんですか? 辻村:全く無かったです。それこそ結成した頃は生音のヒップホップバンドをやろうと思っていたので、歌詞を作らずフリースタイルで歌ってたんです。でも全然お客さんとつながれなくて、どうしたら人と楽しめるのか、ライブをやる意味を見いだそうと試行錯誤した結果、ダンスミュージックにたどり着いたんです。 ――ダンスミュージックとの出会いは、何がきっかけだったんですか。 辻村:サカナクションのライブです。4つ打ちでお客さんがノッてる姿が新鮮で、こういう一体感のうまれ方もあるんだ、僕らもやってみようって思ったのが最初のきっかけですね。当時は、メンバーの誰も4つ打ち音楽を聴いてなかったので、だからこそ試行錯誤してオルタナティブでプログレッシブでダンスミュージックっていう、相反するものが全部くっついた音楽が生まれたんです。そこが今のHaKUの音楽の原点です。そこからいろんなものを付け足して、ようやく自分たちの音楽が今回のアルバム『シンバイオシス』でできたなと思います。 ――なるほど。ちなみに今はどんな音楽が好きですか。 辻村:EDMはかなり聴いてます。アヴィーチー、ゼッド、スクリレックスはもちろん、アフロジャックとか、『Tomorrowland Fes.』に出る人たちはみんな好きです(笑)。 ――HaKUは、ダンサブルなサウンドを人力で演奏するのが特徴的ですね。 辻村:最初、同期の能力が無かったんです(笑)。無ければ出る音を探せばいいだけで、それで出せたのがギターの音色で、そこから今の流れになっていくんですけど。結果的に生でやることによって伝わる力ってあると思うし。打ち込みだと作られたものだけになってしまうけど、お客さんの鼓動と一緒に自分の鼓動も上がって、自分の感情でコントロールして演奏できるのが良いなって。もちろん、この先に打ち込み入れないってことではないですよ。ただ、今はまだその面白さを追求してますね。 ――またメタルの話になってしまいますが、速弾き、2バスとか、メタルって人力感の究極を行ってるところありますよね。 辻村:それはすごい近いかも。ドラゴンフォースなんかどの曲もギターソロが3分あって、ライブでボーカルがステージをはけたり(笑)。それがカッコいいし、ショーとして成立してるじゃないですか。メタルのある種、Mみたいな部分が好きなんですよ(笑)。がんばってやるっていうのが心に響く。追い込んでやるみたいな気持ちはこのバンドにも通じてますね(笑)。 ――あと、ギターのリフって、ダンスミュージックのループ感に通じるなと。 辻村:それもあります。耳に残るギターフレーズが一番重要だなと思います。スウェーデンのEDMも耳に残るの多いじゃないですか。気持ちいいし覚えやすいし、口ずさめるし。歌よりリフを歌ってしまう、そういうものが作れたらなって。今回、そういう楽曲を作れたと思いますね。耳に残るもので、ちゃんとひねくれた部分も入ってるものが、すごくバランス良く録れたなって。

「25歳になったときに上がってる人と、落ちている人、2つしか見えなかった」

――ではアルバムの話題に寄せていこうと思います。この1~2年で辻村さんの中で、すごく変化があったそうですが。 辻村:そうですね。このアルバムは、人の変化の過程を楽しんでもらえるアルバムだと思っていて。人間ってこういう風に変わっていけるんだっていうのをひとつ表した作品だと思っています。まず、言葉の変化だと、これまではすごく内向的な楽曲、悲観する楽曲が多いバンドだったんです。問題提起をして、お客さんと一緒に答えを考えるような感じですね。ふわっとした今の世の中だから感じるものを楽曲の中で言って、曖昧なものを一緒に考えて答えを出そうよってスタンスでした。 ――もどかしさを、そのままを曲にしていたと。 辻村:そうです。ただ、26歳にもなると、ひとつやふたつ、正解だと思える答えが自分にも出てきて、それを教えてあげたいと思うようになっていったんです。それがここ2年くらいですね。自分なりに出てきた言葉も力強くて、その歌詞が歌えたのがうれしかったし。だからストレートな曲もすごくあるんです。「think about you」なんてタイトルが付けられる日が来ると思わなかったし、それができるようになったのがうれしくて。そういう変化はあります。 ――25~26歳の頃って、物事がフラットに見渡せるようになる時期だったりしますよね。 辻村:それはありました。20歳くらいだとみんなまだふわっとしてて、自分が幸せだと思ってるんだけど、でもそこからいろいろ抱えていき、25歳になったときに周りを見渡してみたら、そこから上がってる人と、落ちている人、2つしか見えなかったんです。僕は、前を走ってる人たちを見たときに、あと5年しか無いなって、良い意味で焦りを覚えたんです。 ――30歳までに何かしら目に見える結果を出さないとダメだってことですか? 辻村:決して30歳になって音楽をやめるってことではないけど、ここからの5年はすごく大きいなと思えたんです。それが自分に拍車をかけてくれて、前に進むスピード感をすごく与えてくれて、それが言葉にも出てきました。 ――ちなみにその25歳のときに見た「前を走っている人」というのは? 辻村:僕の場合は、バンドマンよりも、社会に出て働いてるサラリーマンの友だちですね。バンドを結成して7年くらいですけど、仲の良い友人が結婚して子供がいて、その子がちょうど7歳なんですよ。スタート地点は一緒だったけど、友人は僕よりもっと大きなものを背負っていて、社会に出て徐々に地位も上げているなって。もちろん、僕も気持ちよく前に進んでいると思ってますけど、それ以上に重みみたいなものを感じて、前に進んでる力が僕よりもあると思ってしまった時期があったんです。そこでもっとがんばって、逆に友人を越えたいと思ったし。音楽でもっと前に出たいと思ったのは大きいですね。 ――社会人でがんばっている友人から、自分に足りない部分に気づけたと。 辻村:気づけましたね。それによって言葉が変化したのもあるんですけど、あと、自分自身も受け入れられる姿勢が整ってきたと思います。20歳くらいだと、音楽でも人でも、好きなものだけで生きていけたんです。でも、音楽をやっていく中で、人に伝えるためには嫌いなものでも一度自分の腹の中に入れてみないと、その人の気持ちも分からないし、人に訴える言葉も出ないと思ったんです。好き嫌いじゃなく、一度自分の中に吸収して吐き出した言葉、曲が最近できるようになってきました。だから、情景が見える楽曲、人に歩み寄った楽曲ができたんです。それもこのアルバムでの変化ですね。

「僕たちは、たくさんのアーティストに夢を見れたギリギリの世代。そのワクワク感を伝えたい」

――例えば、食わず嫌いなものでも、なぜ嫌いかを確認する作業ができるようになったってことですよね。 辻村:そうです。僕らは多分、そういう確認ができるギリギリの世代なんです。 ――確認ができるギリギリの世代というのは? 辻村:嫌いな理由を知りたいというのは、音楽に通じますよね。今はネットで自由に音楽が聴ける時代で、嫌いなものを聴こうとする若い子はいないと思うんです。僕らは学生時代にバイトしてお金握りしめてレコードショップでCDを買いに行ってたんです。ジャケ買いをしたり、試聴機に並んで5時間聴いたりとか(笑)。大量に買って家で聴くってサイクルがあった。でもその中にも、はずれ、自分の好みじゃないものがちゃんとあったんです(笑) 。もちろん今、1曲だけでも買えて、音楽を聴きやすくなった状況は素晴らしいと思います。ただ、嫌いなものを受け入れる環境が昔に比べて少なくなったのは事実だし、僕らはそれに気づけるギリギリの世代。だからこそ、そういうことをもっと世の中に発表して、下の世代にも伝えていきたいというのはあるんです。 ――トライ&エラーは生きていく上で面白いというのを、音楽で伝えられる状態になったということですね。 辻村:そうですね。メタルの話をしましたけど、たくさんのアーティストに夢を見れたじゃないですか。そのワクワク感が学生時代に一番の楽しみだったんですよ。新しいアルバムを聴く感覚がたまらなく楽しくて。今みたくネットが発達してなかったので、雑誌見て発売情報つかんで、店着日に昼から並んでましたから(笑)。そういうワクワク感を知ったら最高だぜってことをどんどん提供できたらと思ってますね。 ――音楽を発信する側としての意識も高まったんじゃないですか? 辻村:はい。僕らは僕らで、アルバムを出す意味をすごく大事にしたいし。ひとつのパッケージされたもの、ジャケットも含めて、こういう気持ちを伝えたいって意思が見せるものを出していかないといけない。残るものはずっと作り続けていきたいし、そういう思いから今回のアルバムができたのはあります。

「音、言葉、全てのことに能動的に。自分たちが周りを動かしたい」

――タイトルの「シンバイオシス」には、共生という意味がありますが。 辻村:「シンバイオシス」ってタイトルは、ずっと持っていた言葉で、いつか付けられたらなと思っていたんです。素晴らしい言葉が歌えている、良い音楽ができているときに使える言葉だと思っていて。それがようやく使えるアルバムが生み出せたと思っていて。ともに生きる、人と一緒に生きるのは素晴らしいことですし、アルバムがいろんな世代に訴えかけられるものになればなって願いもありますね。今回のアルバムは、人に届けることを意識したので、だからライブをすごく意識しました。人が集まって交わることの終点はライブだと思うので。 ――外に向かっていく、発信していく思いは、歌詞、音からも感じます。言葉が変化したことで、制作においても変わったことが多かったんじゃないでしょうか? 辻村:どうしたらこの言葉が人の心に素直に入るんだろう、どういう音作りをしたら自分の特徴的な声が人の気持ちの奥底に入っていけるんだろうって、僕もメンバーも妥協せずに真剣に考えました。すごく明るいことを歌っているときは、明るい言葉を後押しして、内向的なことを歌ってるときは冷めた音でって。音が言葉を押し上げてくれる、そういうアルバムにしたかったんです。ここまで4人がひとつになって作ったのは無かったですね、話し合いもすごくしましたし。 ――そこは大きいですね。まず最初に共有していかなければいけないのはメンバーですし。 辻村:ほんとそうでした。まず4人が共有しなきゃ新しいものは生まれないと思いましたし。歌も、どういう歌い方をしたらもっと届くんだろうってすごく考えたし。音に関しても、前まではメタル感は押し出してなかったけどそこも素直に出せたんです。今まで押さえてた部分を爆発させたら、案外いけるなって、良い落としどころをこのアルバムでみんなが見つけられたんです。自分のスペースを見つけられて、それが上手い具合に絡み合えて。こういう風になったのは必然かなと思います。 ――アルバムの柱になった曲を挙げるとすると? 辻村:「dye it white」ですね。初めてタイトルに“白”って言葉が入ってるんです。“HaKU”ってバンド名を初めて楽曲の中に入れられたんです。サウンド面も、今まで培ったものをきれいにまとめて上手く削ぎ落して、なおかつちゃんとひねくれたものも残っていて、聴きやすくて乗りやすくてって、自分ら的には全部詰め込めたと思えて。これができて、このアルバムはいけると思いました。その過程で14曲目の「the day」ができて。日常的なものを切り取った歌詞、言葉を書けると思わなかったし、これをアルバムの最後に歌えたのがポイントになったと思います。 ――「the day」には、日常で傷つきながらも前に進んでいくポジティブな思いが詰まっています。 辻村:今までは、13曲目の「透明で透き通って何にでもなれそうで」みたいに、人に投げかけるように終わっていたアルバムが多かったんですが、初めて明るくアルバムの物語を終わらせられたのは、自分にとってすごくうれしかったことです。 ――人によって起きた気持ちの変化という意味では、海外でのライブも大きかったと思うんですが。 辻村:それはあります。マレーシア、インドネシアと海外でライブさせてもらえる機会があって、そこで受けた刺激も大きかったです。「What's with him」を英語詞で作ったんですけど、それは海外で出会った人たちと向き合った結果、生まれた曲ですね。あと個人的には、11曲目「行動と言動のキャスティング」の最後に“生きていく”って言葉を歌えたのも良かった。前の世代の負の遺産を自分たちが変えてやるって気持ちを歌えたので。力強さで言うとこの曲はデカいですね。今、一番歌いたいと思ったのはそういう言葉なのかなって。 ――喜怒哀楽が全て歌に表れてますね。 辻村:答えの見えない今までのスタンスを貫いてる曲もありますけど、でも力強く歌えた自分がいたのも事実ですし。こういうアルバムって二度と作れないと思うんです。 ――変化の過程が詰まった、HaKUにとってのターニングポイントの作品と言えますね。 辻村:そうですね。音、言葉、全てのことに能動的で、自分たちが周りを動かしたいって思いが込められるアルバムだなって。自分でもすごくワクワクするし、リスナーが1曲目から再生してドキドキし続けられるものができたと思うし。それはバンドマン冥利に尽きるなって。 (取材・文=土屋恵介)
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HaKU『シンバイオシス』(EMI RECORDS)

■リリース情報 『シンバイオシス』 発売:4月30日(水) 価格:初回限定盤(CD+DVD) ¥3,800(税抜)    通常盤(CD) ¥3,000(税抜) <収録曲> 1.dye it white 2.think about you 3.masquerade(シンバイオシスmix) 4.What’s with him(シンバイオシスmix) 5.リネイム 6.listen listen 7.アンドラマティック 8.黄昏の行方 9.Everything but the love 10.Archaic smile 11.行動と言動のキャスティング 12.Yeah Right! 13.透明で透き通って何にでもなれそうで 14.the day <初回限定盤DVD収録内容> インディーズ時代から「the day」ませのMV全てを収録(12曲) ・光 ・ないものなだり ・解放源 ・Karman Line ・Gravity ・1秒間で君を連れ去りたい ・アステリズム ・masquerade ・everything but the love ・What’s with him ・dye it white ・the day ■ライブ情報 『HaKU“シンバイオシス”Release TOUR 2014』 5月30日(金) 宮城・仙台 PARK SQUARE 6月1日(日) 北海道・札幌 SPIRITUAL LOUNGE 6月8日(日) 福岡・Queblick 6月14日(土) 東京・渋谷club asia 6月15日(日) 新潟・CLUB RIVERST 6月21日(土) 愛知・名古屋APOLLO BASE 6月22日(日) 大阪・心斎橋 Music Club JANUS ■iTunes http://itunes.apple.com/jp/album/id850376772 M-2 「think about you」iTunesプリオーダー(予約受付)スタート

米津玄師が語る、“ボカロ以降”のポップミュージック「聴いてくれる人ともっと密接でありたい」

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【リアルサウンドより】  ボーカロイドプロデューサーの”ハチ”として数々の有名曲を発表後、本名名義で独自の歌世界を切り開きつつある米津玄師が、4月23日にセカンドアルバム『YANKEE』をリリースする。今作の特徴のひとつはバンドサウンドの導入。“ハチ”作品のエッセンスを取り入れつつ、前作『diorama』とも異なる、ダイナミックな演奏を聴かせている。インタビュー前編では、彼がシングル『サンタマリア』で宅録スタイルからバンドサウンドに移行したきっかけや、「普遍性」への志向、さらには想定するリスナー層についても語った。

「自分が作ったものに手を加えられるのが嫌だった」

――新しいアルバム『YANKEE』は、前作とはまた違ったバンド色の強い作品です。まず、どのような形で作り始めたのでしょうか。 米津:一曲一曲作っていって、曲が溜まってきたのでアルバムにしようと思って。だから前回とは全然違うアプローチで作りました。 ――前作『diorama』はコンセプトを決めてから? 米津:前回は「街」というコンセプトを決めて、そこから作り始めたんですが、今回はそういう感じはなかったですね。 ――今回、曲単位で作ったのはどんな理由からでしょうか。 米津:なんというか……前作でコンセプチュアルなものを作ったから、次は違うことをやろうというものがあって。というのも『diorama』は自分の家で一人で作って、誰かとやりとりして作ったものではなかったので。それが『サンタマリア』からバンド形式にして、ミュージシャンを招いてやるようになって。「これは慣れが必要だな」と思った。今まではやってこなかったことだったので、右も左も分からないというか。とりあえずそこに染まっていくために、ある程度時間と経験が必要だなと思いました。そういうところに向かって行くための実験とか訓練とか、そういう意味合いが少なからずありますね。 ――その「サンタマリア」以降、アレンジ面でもバンドサウンドになったわけですが、どんな発見がありましたか。 米津:『diorama』の頃は、自分が作ったものに手を加えられるのが嫌だったんです。手を加えられた結果として作品が悪くなったとか、他の人の感性が悪いものだとは思わないし、客観的に見るとそっちの方が良いという意見もあると思うんですけど、自分の中に明確な線引きがあって。エゴの塊というか、自分が「許す・許さない」の線引きがあって。自分の中で「許さない」のラインに入っているものを提示されると、それだけでもう嫌になってしまう。そういうのがあって、自分一人で作ってきたんですけど、そういうところでずっとやっていても、同じことの繰り返しになるし、一人で作ることには限界がある。だから、ある種無理やりにでも、そういうところから出て行かないといけないと思って。それで「サンタマリア」を作っていくうちに、だんだん許せるようになってきたんですよ。デモの状態から音一つずらされるだけで本当に嫌だったんですけど、だんだん許せるようになってきて。 ――なぜ許せるように? 米津:自分自身の変化もあると思いますが。ドラム、ベース、ギターにアレンジしたほぼ完成形のデモを渡して、で、レコーディングという手順を取っているんですけど、凄く良く理解してくれるんですよね。 ――今作参加のプレイヤーとの出会いが大きかったんですね。さて『diorama』の密室的な感じも良かったですが、今回の音の跳ね方、リズムの感覚はまた新しい一面だと思います。今回のレコーディングではどのような音を求めていました? 米津:大きく変わったのは、「いろんな人にわかりやすく、ポップに」というのを、すごく心がけましたね。 ――よりリスナーにダイレクトに伝わる音と? 米津:そう。 ――ただ、米津さんの音楽はオリジナル性が高いもので、このスピード感、このテイストの音、密度は他にないように思います。 米津:わかりやすくというのは心がけたんですが、人と同じことをやってもしょうがないと思うので、それをどう文脈に乗っ取ってやるか、どう外すかっていうのは自分の中でも考えるところ、重要視するところですね。

「普遍的なものに対する興味があった」

――歌詞などでも、内面を掘り下げていく部分が多く出ているのでは? 米津:なんかやっぱり、聴いてくれる人ともっと密接でありたいと思ったんですね。前作は言ってしまえばそういうところをあまり気にしていなくて、自分の中にある「街」を具現化するところに重きを置いていたので。「わかりやすく」というテーマはそのころからあったにはあったと思うんですけど。もっとこう、愚直に作っていたというか、自分の楽しいとか美しいと思うものっていうのを素直に純度高く抽出しようと思ったんです。  だからといって(今作は)別に美しくないものを作ろうというわけではなくて、「わかりやすいもの」。これってすごくネガティブにとられる可能性があるとは思うんですけど、決してそういうことではなくて、表現の一環としてそういうところに自分はこう落とし込んでいくというか。そうするとどうなるのかな、そういうことを自分はやれるのかな?という。チャレンジみたいな精神はあって。 ――わかりやすさの追求と、内面的な世界の掘り下げと。そうした一見相反する欲求が出てきたのは前作以降? 米津:ちょっと前から普遍的なものに対する興味があって。そもそも「普遍的」ってなんなんだろうと考えた時期がありました。それは『diorama』を作り終わって、『サンタマリア』を作るまでの時期だったんですけど、人間が意識の領域にまで持ち込まなくても、無意識の中に確実にあるものって何だろう……と探していたりしました。とても不思議な、なんで覚えたかわからないけど、知ってることってあるじゃないですか。自分の中にあるそういうものをピックアップして机の上に並べて。「これとこれは組み合わせると、どうなるんだ」とか考えてる時期があって。 ――組み合わせを通して普遍的なものを探す、というのは面白いですね。そうした志向は歌詞を書いたりとか、曲を作ったりする際にも? 米津:そうですね。実際に作る中で見つけていくというか。……具体的に言葉にはできないですが、なんかこう、性善説じゃないですけど、人間はそもそも一つの球体を持って生まれてくると思うんですよね。それが年を取るうちに削れてくる。無くしていくと思うんですよね。で、何を無くすかというところが個性になる。欠けた部分が個性になる。 ――傷つくのも個性を作るためには必要な要素だと。 米津:はい。 ――タイトルの『YANKEE』については。 米津:そんなに深い意味は無くて。元々「ヤンキー」って言葉が好きだったんです。歌詞にも使ってましたし。で、ある時「ヤンキーってどんな意味なんだろう?」と。日本だと「不良の少年少女」に対して使われるものですが、語源は何なんだろうと思って調べてみたところ、「移民」って意味があるらしくて。自分も(音楽業界からすれば)インターネットの土壌からやってきた移民だということで、「これがちょうどいいや」と思って付けましたね。 ――ご自身が移動しているというか、動いていく感じですね。 米津:そうですね。

「小学生、中学生くらいの子たちに聴いてほしい」

――それにしても、今回の作品は本当にいろんな捉え方ができる一枚だと思います。ある意味で宗教的な作品である一方で、パーティーミュージックっていう面もある。 米津:だんだん変わってきてはいるんです。『diorama』と『YANKEE』の2つに絞って比べてみると、『diorama』は一つの作品という言葉が正しいと思うんですけど、『YANKEE』はプレゼントとか手紙、そういう存在だと思います。誰かに対して、誰かの顔が思い浮かびながら、誰かに対してあげるものという意味合いが強いかなと思います。 ――今はとにかくリスナーに何かを届けたいという思いが強かった? 米津:いろんな人に。主にこのアルバムで個人的に思ってたのは、子供に対して。小学生、中学生くらいの子たちに聴いてほしい。彼らが喜んでくれるかどうか、許してくれるかどうかというのを考えながら作りましたね。 ――彼らが最初に夢中になれるポップミュージック。 米津:そういう存在でありたいなって思います。 ――ただ、一方で大人にも届くような気もします。 米津:なんか、小中学生の子供に対するあこがれがありますよね。子供って頭もいいし感性も豊かだし。そういう子たちに受け入れてもらえるというのは、凄く幸せなものかなって。 ――ご自身も子供の部分を持っていると思いますか? 米津:持ってたいと……思うんですけどね(笑)。 (後編【「最近はネットコミュニティを俯瞰で見ている」米津玄師が振り返る、ネットと作り手の関わり方】に続く) (取材・文=神谷弘一)
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米津玄師『YANKEE (初回限定盤)(映像盤)』(ユニバーサル・シグマ)

■リリース情報 『YANKEE』 発売:4月23日(水) 価格:初回限定生産 画集盤(CD+画集) ¥4,000(税別)    初回限定生産 映像盤(CD+DVD) ¥3,300(税別)    通常盤(CD) ¥2,760(税別) <CD収録内容> 1. リビングデッド・ユース 2. MAD HEAD LOVE 3. WOODEN DOLL 4. アイネクライネ 5. メランコリーキッチン 6. サンタマリア (ALBUM VER.) 7. 花に嵐 8. 海と山椒魚 9. しとど晴天大迷惑 10. 眼福 11. ホラ吹き猫野郎 12. TOXIC BOY 13. 百鬼夜行 14. KARMA CITY 15. ドーナツホール (COVER) <DVD収録内容> 1. リビングデッド・ユース (Music Video) 2. アイネクライネ (Music Video) ※映像盤のみ <画集収録内容> ・本人書き下ろしによるイラスト・マンガを含むハードカバー画集104ページ ・スリーブ仕様 ※画集盤のみ

OSTER projectが語るボカロシーンの変化「今は視聴者も多様な曲を受け入れる体勢ができている」

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ボカロシーンの黎明期より活躍するOSTER project。

【リアルサウンドより】  2007年に初音ミクブームの火付け役の一端を担った楽曲「恋スルVOC@LOID」を手掛け、現在もボーカロイドシーンの先駆けとして活躍を続けるOSTER project。彼女が4月23日にリリースする『Attractive Museum』は、OSTER projectの特徴であるキュートな楽曲に加え、「Music Wizard of OZ」では20分という収録分数でミュージカル調の楽曲を繰り広げるなど、音楽的なチャレンジを盛り込んだアルバムとなっている。今回リアルサウンドでは、ボーカロイドシーンに黎明期から関わる彼女に、自身のルーツや初音ミクとの出会い、シーンの変化などについて語ってもらった。

「クリプトン社さんのページを巡回するのが趣味でした」

――音楽を作るようになったのはいつ頃からですか。 OSTER project(以下:OSTER):実際にパソコンを使って音楽を作り始めたのは13歳くらいからです。幼いころからクラシックピアノを習っていて、ショパンなどが好きだったんです。インターネット上でクラシックの曲を公開しているサイトを巡回していて、MIDIデータを聴いていました。その頃はmp3で公開できるような回線がなく、MIDIデータが主流の時代でしたから。聴いているうちに「このMIDIデータってどうやって作っているんだろう?」と興味が湧いて調べてみると、自分でもソフトを使えば作れることがわかったので、ソフトを購入しました。最初は既存の楽譜通りの音符を打ち込んでいたんですが、そのうち自分のオリジナル曲も少しずつ作り始めるようになったんです。 ――クラシックがベースになっているんですね。ゲームの音楽もお好きだということなんですが、当時のオリジナル曲にそうした趣向は反映されてましたか? OSTER:初めて「作り手」の存在を意識したのは、KONAMIの「BEMANI」シリーズです。様々なタイプのコンポーザーが参加しているので、幅広いジャンルを知ることが出来ました。私が色々なジャンルの音楽を作れるようになりたいと思ったきっかけも、このゲームに出会ったからです。彼らの存在を知ってからは「自分もいつかこういう職業に就きたいな」と具体的に思うようになりました。当時は彼らの音楽性に近いインストゥメンタル楽曲を夢中で作っていて、TOMOSUKEさんの作る音楽に一番影響を受けていました。 ――確かに、OSTER projectさんの作っている楽曲は彼の作るものに近い要素を感じます。別名義のZektbachに近い、叙情的でファンタジーな楽曲もあったり。 OSTER:中世ヨーロッパ的なテイストは元々好きだったので、「ドロッセルの剣」などの楽曲は、Zektbachさんの曲やTatshさんの「Xepher」にあるような中二的要素を意識して作った部分はあります。渋谷系に関しては、「GuitarFreaks&DrumMania」でCymbalsの「Show Business」を知ったのをきっかけにして、そこからいろんなアーティストを聴きました。昔のアーティストに関してはそういった形で知ることが多かったです。 ――当時世の中で流れていたJ-POPとはまた違う流れですね。そういうものは聴いていましたか? OSTER:小学生の頃はJ-POPが盛り上がっていたので、よく聴いていました。GLAYやMr.Children、安室奈美恵さんが流行っていた時代ですね。一方で、当時もアレンジ的に凝っていたり面白い進行の、曲に対して興味を持つことも多かったです。冨田ラボさんのアレンジがすごく好きで、自分の琴線に触れる曲のアレンジャーがほとんど冨田さんで。ああいう技巧的で玄人好みのアレンジは、言葉は悪いけど「バカ売れ路線」の曲には珍しいと思うんです。そういうスタイルを持ちながら、あれだけのヒット曲を書けるということに衝撃を受け、自分も技巧的でありながら多くの人に受け入れられるような曲を作りたい、と思うきっかけになりました。 ――そこからボーカロイドに出会うわけですね。OSTER projectさんの代表曲である「恋スルVOC@LOID」は、ボーカロイドのヒットナンバーの先駆けで、初音ミクが発売されて2週間ほどでリリースされました。ボーカロイドを見つけたきっかけは? OSTER:DTMオタクだったので、クリプトン社さんのページを巡回するのが趣味でした。巡回中に偶然、リリースされたばかりの初音ミクを見つけて、デモソングを聞いたらすごく良かったのですぐに買いました。これまで使ったことのなかったジャンルだったので冒険でしたけど、「かわいいしそんなに高くないからいいかな」みたいな感じもあって(笑)。音楽ソフトとしては安い部類でした。最初は周りから「お前あれ買ったの?」みたいな反応でしたが…… ――最初はみんな懐疑的だったんですね? OSTER:私は大学でコンピューター系の技術を学んでいて。クラスにもそういう方面に詳しい人は多かったので、みんな名前だけは知っていました。当時はまだ流行していなかったこともあり、俗物に近い扱いを受けていたようにも思えます。私はそんなつもりではなく、声を聞いて良かったから買ったんですけど、あまりそういう見方をしてくれる人はいなかったですね。
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『Attractive Museum』では、さまざまな音楽ジャンルに挑戦している。

「ボーカロイドという存在自体が、アーティストイメージに引っ張られることが少ない」

――萌えキャラ的な方向で見られていたということですね。それが一気にムーブメントになり、ある種のコミュニケーションのツールにもなっていきました。当事者としてはどう見ていましたか。 OSTER:意外でしたね。最初はこんな商業的に展開されるという予想も全然ありませんでしたし、着うたで配信されただけでも大騒ぎになっていた頃を経験しているので、よくこれほどまでになったな、と感慨深いです(笑)。 ――「声が良い」ということでしたが、ご自身で歌入れをすることは考えられなかったんでしょうか? OSTER:あったと言えばあったんですけど、聞くに耐えなかったです(笑)。それに当時はオーディオ系統の知識があまりないし、録音の仕方もよくわからなくて、MIDIで完結させてきたような感じでした。その中で、マイクなどの機材を使わずに、全部パソコンの中だけで完結させることができる、という新鮮さに惹かれたのも、ボーカロイドを買った理由の一つですし。生歌とボーカロイドを比べると、「やっぱり生いいな」とは思っちゃいますけど(笑)。 ――では、生歌ではなくボーカロイドだから出せる魅力とは? OSTER:ボーカロイドという存在自体が、アーティストイメージに引っ張られることが少ないことが一番大きな強みかもしれません。例えば辛辣な歌詞をアーティストに歌ってもらうと、どうしてもその人のアーティストイメージや意向が絡んできて、意図しない方向へ向かう場合があります。それに対してボーカロイドは、作り手の伝えたいメッセージを、ボーカリストのイメージを挟まずに直に発表できるツールだと思います。 ――今作『Attractive Museum』では、いろいろな形で活動してこられたキャリアを総括するような、様々なジャンルの楽曲が収録されています。この作品はご自身の中でどんな位置付けなのでしょうか? OSTER:かわいい系の曲がメインだった最初の頃に比べて、最近は曲のバリエーションを広げていこうと取り組んでいるんです。今回の『Attractive Museum』もタイトル通りの意味で、博物館の展示のように様々なジャンルの楽曲があって、制作スタイルの変化が見えてくるアルバムになりました。 ――「制作スタイルの変化」ということですが、具体的には初期のかわいい系からどのように変わってきたのでしょうか。 OSTER:変わってきたというより、インスト楽曲を作っていた頃に戻った感じです。ボーカロイドシーン自体が多様化してきて、かっこいい楽曲も最近では増えているので。初期の2007年頃は、かわいい系の楽曲で「私頑張って歌うよ」という、ボーカロイド自体をテーマにしたような曲が中心でしたよね。でも今は視聴者もいろいろな楽曲に対して受け入れ体勢ができたと思います。そういう流れの中で、自分も色々なことがやってみたくなったわけです。
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いずれは舞台音楽にも挑戦したいそう。

「最近はイベントに30-40代の主婦の方なんかも来てくれる」

――新曲をアップするたびに、視聴者の反応を感じ取っていると思いますが、どんな反応がありましたか? OSTER:やっぱり多くのリスナーにとっては、今までのかわいい楽曲のイメージが根付いていたので、一部から「Osterにこういうのは求めてない」という意見も正直に言うとありました(笑)。でもそれよりも「こういう路線もいけるんだ」という声があったことに手応えを感じました。 ――「Music Wizard of OZ」などは、20分という収録分数の中に、色々な側面が入ったミュージカルのような曲ですよね。 OSTER:かわいいだけで20分通すと、絶対に飽きちゃうと思ったので。三食パフェだと気持ち悪くなりますよね(笑)。この曲は「いろいろな楽曲を作っていこう」というポリシーの集大成として作ったものなんです。 ――OSTERさんの表現したい世界観の核の部分について伺います。何か一貫して変わらずに伝えたいものが頭の中にあって、それを表現していくタイプですか?それとも作っていく中で変化していくものに身を委ねるタイプですか? OSTER:音楽に関しては、自分で作っていく中で「次に何が来たら気持ち良いだろう」という風に考えながら作ります。私は音楽理論の勉強などをあまりしていないので、設計図や譜面は書かずに、頭のなかで思いついた音楽をマウスで打ち込んでいっています。それを繰り返していますね。それに、コンセプトを決めてから作り始める曲の方が多いです。頭の中でイメージや登場人物、それの向かう結末などを頭の中で固めて、それに沿って展開や歌詞に使う単語を考えると、歌詞も出来ていきます。 ――実際に、ユーザーとのコミュニケーションを含め、既に公開されている曲の手応えはいかがですか? OSTER:最近ニコニコ動画は人が減ってきているような印象があって、正直あんまりわからないんですけど、イベントなどではけっこういろいろな年代の方が来てくれています。30-40代の主婦の方なんかも来てくれていて話しかけてくれました。しかも内容が「いつも鮮やかな7th(コード)の使い方が素敵です」という(笑)。聴いてくれてる方はいるんだ、という実感はそういうところで感じます。 ――動画やアニメもそうですが、音楽以外の文脈もこの作品に流れ込んでいると思います。ご自身の音楽以外にバックグラウンドになっているものやカルチャーは? OSTER:私は本を読むのが苦手で、国語も全くわからないんですけど、昔から映画はわりと好きで、ミュージカルやアニメーション、ハリウッド映画が好きなんです。ジョン・ウィリアムズのような、誰が聴いても爽快感のある派手なオーケストラがすごく好みで。現在上映中の『アナと雪の女王』はミュージカル色が強くて、『美女と野獣』の頃のディズニーを思い出しました。あと、活字は嫌いですが、ハリー・ポッターは何回も読んでいます。 ――そういったミュージカルの劇伴のようなものを手がけることもいずれは視野に入れていますか? OSTER:やってみたいですね。ミュージカルは昔から憧れていたものなので、目標のひとつです。魔法的な世界観は好きなので、音楽の中で表現したいです。台詞の入った作品に関しては、ボーカロイドを使うことが難しいと思うので、実際の舞台音楽などを手掛ける機会があったらいいな、と思います。 ――ご自身が舞台演出からやってみるとか。 OSTER:演出となるとプロの方にお任せした方がいいと思います。音楽の分野でだったらもちろんやりたいです。いろいろなことを平行してやりつつですが、インストに力を入れたいですし、アーティストプロデュースもやってみたいし、ジャンルに縛られずいろいろチャレンジしたいです。いろいろですね、本当に(笑)。 (取材・文=編集部/写真=竹内洋平)

ファレル、全方位型スーパースターに 新作『ガール』ヒット&再ブレイクの理由

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ファレル・ウィリアムス『ガール』(SMJ)

【リアルサウンドより】  グラミー賞授賞式ではダフト・パンクやスティーヴィー・ワンダーと歴史的パフォーマンスを披露、アカデミー賞授賞式ではメリル・ストリープ、エイミー・アダムスらを踊らせて、アメリカの『徹子の部屋』=『Oprah Prime』ではオプラ・ウィンフリーの前で男泣き。アディダスやジースター・ロゥ(オランダのデニムブランド)では自身のコレクションを発売、コム デ ギャルソンと組んで香水を発表、現在はユニクロやレッド・ブルのコマーシャルでも大露出中。ちなみに日本ではすっかりヴィヴィアン・ウェストウッド=小保方晴子みたいなイメージがついちゃっているが、世界的にはファレルお気に入りのヴィヴィアンの帽子が大人気品切れ中。シングル『Happy』はビルボードのシングルチャート8週連続1位を記録中で、(リリースは昨年だけど)早くも「今年を代表する1曲」の座を確実なものに。先週世界中でネット中継されたコーチェラフェスでのパフォーマンスも大評判。4月23日にはハンス・ジマー、ジョニー・マーらと組んだ『アメイジング・スパイダーマン2』のサントラもリリース。とにかく音楽界、映画界、ファッション界、セレブ界、広告業界とすべてを巻き込んで、全方位的にファレル旋風が止まらないのである。  90年代後半から時代を牽引するプロデューサーとして活動していたファレル・ウィリアムスは、ブリトニー・スピアーズやグウェン・ステファニーらにヒットソングを提供する一方で、自らもバンド、N.E.R.D.のメンバーとして活躍してきた。そんな現在41歳のファレルがここにきてスーパースターとして君臨している現象を日本で言うなら(日本で言う必要があるのかというツッコミはひとまず置いておいて)、つんく♂がシングルチャートで8週連続1位をとっているようなものと言っていいだろう。世界的なファッションアイコンをつかまえて何を言ってるんだと思う人もいるかもしれないが、実際に昨年まで、具体的には2013年を代表する2大ヒット曲、ロビン・シック「ブラード・ラインズ」とダフト・パンク「ゲット・ラッキー」に参加するまでの数年間、ファレルの音楽シーンでの立ち位置はかなり微妙なものだったと言わざるを得ない。  4月30日に国内盤もリリースされる『ガール』は、10代後半で音楽業界に入ったファレルにとってその長いキャリアからすると意外にも思えるまだ2枚目のソロアルバム。2006年にリリースされたファーストアルバム『In My Mind』は、作品の内容はともかく、APEデザインのアートワークを今見るとなかなかの時代遅れ感がある。これはあまり指摘されてこなかったことだが、海外では別として、ここ日本では8年前のリリース時点でも「今さらAPE?」といったムードが確かにあったことを記しておきたい。ちなみに現在のファレルは『In My Mind』を振り返って「精彩を欠き、物事を前に推し進めるという意図も欠落していた」「初めてアルバムを作ったときは自己中心的過ぎた。あまり楽しめなかったし、ライヴでやるのが恥ずかしい曲もあったよ」と散々な言い草。いや、音楽的にはそこまでダメな作品じゃなかったんですけどね。  それまで勝ち続けてきたビリオネアボーイ(億万長者の少年)のファレルにとって、『In My Mind』での失望は大きなトラウマとなっていた。なにしろ昨年のダフト・パンク『ランダム・アクセス・メモリーズ』のレコーディングに参加した時点で、彼はソロアーティストとしての契約をどのレコード会社とも交わしていなかったのだ。実は今回のファレルのメガブレイクには、あの『ランダム・アクセス・メモリーズ』の膨大な制作費にGOサインを出したことでもその慧眼ぶりを発揮したコロンビアレコードのエグゼクティブ(具体的にファレルが名前を挙げているのはロブ・ストリンガーとアシュリー・ニュートン)による二つの決断が大きく寄与している。一つは、『ランダム・アクセス・メモリーズ』を最初に聴いた時点、つまりまだ「ゲット・ラッキー」が大ヒットする前の時点で、ファレルにソロアルバムの制作をオファーしたこと。もう一つは、グラミー賞授賞式、NBAオールスターズでのパフォーマンス、BRIT アワード授賞式(英国)、アカデミー賞授賞式と、2014年初頭の大きな舞台の出演が立て続けに決定した時点で、ファレルにアルバムの完成を急かしたことだ。ファレルのセカンドソロアルバム『ガール』が3月3日に(本国)リリースされることが突然発表されたのは今年の2月19日。それがレコード会社内部で決定したのは、なんとその10日前のことだったという。運をつかんで(Get Lucky)幸せ(Happy)になるのに一番大切なこと。それはタイミングなのだということを、現在のファレルの大躍進は教えてくれる。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

デビュー35周年で豪華共演 ヒットメーカー竹内まりやの「才能の源泉」を探る

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竹内まりやのデビュー35周年記念シングル『静かな伝説(レジェンド)』で、26年振りの共演を果たす山下達郎、サザンオールスターズの桑田佳祐 と原由子の4人。

【リアルサウンドより】  竹内まりやが7月23日にリリースする、デビュー35周年記念シングル『静かな伝説(レジェンド)』に、夫でありプロデューサーの山下達郎と、サザンオールスターズの桑田佳祐と原由子がコーラスで参加していることを明らかにした。  デビュー時期が近く、公私ともに親交が深い竹内、桑田、原の3人。今回のコラボレーションは竹内の発案で実現に至ったもので、4人が楽曲のレコーディングで揃うのは、1988年10月にリリースされた山下のアルバム『僕の中の少年』に収録されている「蒼氓」以来となる。  この26年振りの共演に話題が集まっているが、山下と竹内の音楽的な関係性に対し、当時の状況を知る音楽評論家の宗像明将氏は以下のように語った。. 「今回の『静かな伝説(レジェンド)』は35周年のアニバーサリーイヤーを飾る書き下ろし曲としてリリースされる予定なんですが、彼女は昨年の12月にやはりデビュー35周年企画として『Mariya's Songbook』という、彼女が他のアーティストに提供していた曲を集めたアルバムをリリースしています。広末涼子の『MajiでKoiする5秒前』を竹内本人が歌ったデモ音源が16 年の時を経て公開されたことも話題になりましたが、この提供曲を聴くことで、改めて彼女のソングライターとしての高い自己プロデュース能力を伺うことができました。”山下達郎があっての竹内まりや”という構図では必ずしもない、安定したヒットメーカーとしての彼女の実力は素晴らしいものだと思います」  また、この関係性を、今回共演する桑田と原の2人と比べた場合、立場は違うが共通した部分が見受けられると、宗像氏は続ける。  「桑田と原は同じバンドのメンバーとして活動していますが、山下と竹内の2人は、プロデューサーとアーティストという関係性なので、立場的には違うものであるといえます。しかし、山下と竹内も夫婦で”家内制手工業”的な制作をしていると考えれば、本質的にはバンドと同じようなものだと言えるのではないでしょうか。そして、今回の4人は、一般的なイメージとして”テレビから流れる良質な音楽を作る、安心・安定したアーティスト”だというイメージが強いと思います。ただ、山下はフリッパーズ・ギターが活躍していた1990年代初頭に、萩原健太さんの『ポップス・イン・ジャパン』という書籍で『ソフトサウンディングミュージックというのは日本のロックの中では異端で、過激なパッションを持っていなければ遂行できない』とフリッパーズ・ギターを批判するなど、エッジィな部分を持って現在のような音楽を作り続けているんです。そこは山下のみならず、竹内も含め、実は夫婦に共通した感覚なのだと思います」  最後に宗像氏は、今回の「静かな伝説(レジェンド)」における聴きどころとして、4人の個性的な声に注目して欲しいと続けた。 「前回の『蒼氓』では、4人の個性的な声がハッキリと入っており、互いにぶつかり合いながらも1曲の非常に美しいバラードとして成立していました。その部分が『静かな伝説(レジェンド)』で再現されるだろうとすごく楽しみにしています。山下は『ON THE STREET CORNER』という一人多重録音のアカペラのアルバムのシリーズを出したりするほど、コーラスを研究していたりしますし。桑田と原も、声の個性がそれぞれ強いですからね」  4人の強い個性が凝縮された作品になるであろう『静かな伝説(レジェンド)』。引き続き今作の情報を期待して待ちたい。 (文=編集部)

NMB48山本彩「日ハムの中田翔さんがタイプ」 筋肉フェチぶりを『恋愛総選挙』で明かす

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AKB48『AKB48 リクエストアワーセットリストベスト200 2014 (200~101ver.) スペシャルBlu-ray BOX (Blu-ray Disc5枚組)』(AKS)

【リアルサウンドより】  土田晃之とAKB48の指原莉乃がMCを務める番組『恋愛総選挙』(フジテレビ系)の4月17日放送分で、AKB48メンバーが男性に望む年収などが明かした。  同番組は、恋人のいない男女8人ずつが集まり、パーティーで恋人探しをする様子を見ながら恋愛観を語るバラエティ番組。ゲストのAKB48メンバーが、「恋愛禁止」とされる同グループの掟を破るかのような生々しい恋愛トークを行った。  冒頭、ゲストの高橋みなみ、柏木由紀、小嶋真子、NMB48と兼任の山本彩がパーティーに参加した男性陣についてトークを行った。柏木は男性の第一印象について「ストールやカーディガンを首元に巻く人は好きじゃない。プロデューサー巻きとかいうやつも」と、好みではない着こなしについて語った。また、番組史上最年少の16歳でゲスト出演した、次世代メンバー「三銃士」の一人である小嶋は、今回のパーティーに参加した男性陣の年齢層が高いことに触れ、「パパと同じくらい......」と、37歳である自身の父親と対して変わらないことを告げた。  番組は恋愛総選挙ラビットパーティー、通称「ラビパ」を見ながら進行。メンバーが男女の駆け引きに一喜一憂する中、番組から「何フェチかぶっちゃけて!」という質問が。これに対し山本が「私、筋肉が好きなんです。シャツを着た時に出る筋肉が好きで、タイプの人は北海道日本ハムファイターズの中田翔さん」と、完成された肉体を持つ野球選手の名前を挙げた。続けて小嶋は「スリムな人の首筋」と答え、土田から「年齢の割に渋いな!」と、少女らしくないフェチズムに対し、思わずツッコんだ。  続いてぶつけられた質問は「結婚相手に求める年収はいくら以上?」という生々しい質問。最初に高橋が「800万円」と答え、山本は「自分より上~1000万まで。1000万より上だと価値観が変わってくる」と続けるなど、それぞれが現実的な回答を見せる。指原は「自分より稼いでる人」と答えるが、その右上に「1000万」という表記も。これに対し土田が「指原より1000万稼ぐってことは......2億1000万は必要ってことかな」と、「指原年収2億説」を唱え、スタジオは爆笑に包まれた。  同番組の最後では、男性にすぐボディタッチをする女性に対し、高橋が「あーいうのダメだわー」と、”軽い女”に対して拒否反応を示す。そして大人しい男性社長とその女性のカップルが成立したことを受け、小嶋は「今すぐ別れた方が良いですよって伝えに行きたい」と、純粋な意見を述べて番組が終了した。  AKB48のベテランメンバーと次世代メンバーが、様々な恋愛観を語った今回の放送。次回は番組内で成立したカップルのデートに密着する予定だ。 (文=編集部)