海外におけるミュージシャン/セレブのセキュリティ問題 トラブルの事例と回避方法は?

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ビヨンセ『BEYONCÉ』(SMJ)

【リアルサウンドより】  岩手県滝沢市で行われたアイドルグループAKB48の握手会で、メンバーの川栄李奈と入山杏奈、そして男性スタッフ1人がのこぎりのような刃物を持った男に襲われた事件の波紋が広がっている。今回の事件では犯人が「AKBには興味がなかった」という旨の供述していると伝えられており、アイドルとファンのトラブルというよりも、有名人をめぐるセキュリティ管理の問題と捉えたほうが適切であろう。実際、アーティストを取り巻くトラブルはいま世界的な問題となりつつある。本稿では海外で発生した事例に目を向けながら、トラブルの回避方法について探っていく。  いま海外のミュージシャンを悩ませる問題のひとつに「コンサートにおける観客のマナーの悪さ」がある。近年では会場を有効活用しパフォーマーと観客の距離が近いアリーナ席を設けるのがトレンドだが、一部の観客が設置された柵を乗り越えミュージシャンを「触る」「掴む」「引っ張る」等の行為に及ぶことが問題視されている。歌手のビヨンセは昨年セルビアで行われたコンサートで髪を引っ張られたり額を叩かれるといった被害に遭遇。またデンマークで行われたコンサートでは男性客のひとりが彼女のおしりを触るという行為に及んだため、ビヨンセはパフォーマンスを中断するなりその男を指さし一言「アンタをここから退場させるからね。分かる?」。会場は一時騒然となったという。  同様の被害に見舞われたのは同じく歌姫のリアーナ。昨年イギリスのバーミンガムで行われたコンサートで、興奮した観客に衣装や腕を掴まれた彼女は、持っていたマイクで相手をゴツン。思い切り殴りつけた後も怒りは収まらなかったそうだ。少女時代のテヨンに至っては公演中に乱入した男性客に連れ去られそうになり、警備員にかろうじて助けられたこともある。このようなトラブルが後を絶たないため、現在では警備を強化したり花道と客席の間に距離を取るようにしているミュージシャンも多いようだ。  また有名人ならではのトラブルにストーカー被害がある。韓国の人気グループJYJは記者会見で「ファンが僕たちの身分証を盗用して通話履歴を流出させ、車に位置を追跡するGPSをこっそり取り付け、追いかけてきた。頻繁に無断侵入して私物を撮影し、寝ている僕に近づきキスしようとしてきたこともある」と打ち明け、デビュー以来10年近くもストーカー被害に悩まされてきたことを吐露した。また女優のアシュレイ・ティスデイルは配達員を装っては自宅に侵入し、執拗にツイートしてくるストーカーに悩まされていた。「僕以外の男と交際するようなら君を撃つよ。君は僕だけのもの」といったアシュレイへの異常な執着が感じられるツイートの数は、驚くことに1万8千以上にも上ったという。また俳優アレック・ボールドウィンをストーカーした女は「愛しているの」「赤ちゃんが産みたい」「お金が必要なの」などとアレックにメールを送りつけ、時に自宅まで押しかけることもあったという。このようなストーカー行為は海外では厳罰によって処されるため、アシュレイのストーカー男は罰金と接近禁止命令、アレックのストーカー女には禁固刑が下されている。  また最近増えているのがインターネット上におけるサイバー犯罪。カナダのシンガーソングライター、カーリー・レイ・ジェプセンはハッキングにより複数のヌード写真が不正入手され、それらを高額でメディアに売りつけようとしていた男が逮捕された。またアメリカでは歌手で女優のスカーレット・ヨハンソンやクリスティーナ・アギレラ、ミラ・クニスら50人以上にのぼるセレブたちのメールアカウントを不正入手した男が逮捕された。ハッキングによってスカーレットのヌード写真を流出させたこの男には懲役10年の禁固刑が下されている。  このように知名度が高いぶんだけトラブルに巻き込まれる可能性の高いミュージシャンやセレブたち。警察による事後対応は進み厳罰化が進んでいるものの、事前の対策についてはイタチごっこが続いているのが現状だ。日本でも、警備の強化など改めてトラブル回避に向けての議論を深めていく必要がありそうだ。 (文=北濱信哉)

AKB48メンバー襲撃事件をどう考えるか 岡島紳士が語る“接触系”アイドルの課題と今後

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AKB48-『ラブラドール・レトリバー Type-K(通常盤)(多売特典生写真なし)』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  AKB48が5月25日に岩手県で行った握手会で、メンバーの川栄李奈と入山杏奈、スタッフの男性1名が無職の男に刃物で襲われ、負傷するという事件が発生した。3人の命に別条はなく、5月26日の夕方には退院。容疑者も殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。  アイドル界だけでなく社会全体に衝撃を与えたこの襲撃事件について、アイドル専門ライターの岡島紳士氏は次のように語る。 「3人の容態がまず何よりも心配ですね。また、事件に関しては捜査の推移を見守る必要はありますが、現時点では容疑者はAKB48のファンではないようで『相手は誰でも良かった』と供述しています。このことから、今回の事件はアイドルとファンの間に固有の事件というよりも、有名人すべてが持っている危険性を改めて知らしめた事件であるといえそうです」  AKB48の握手会について、ネット上では「もう開催不可能なのではないか」との声もある。同氏はこの点に関して、今回は「セキュリティ強化という対応策を打ち出すのではないか」と語る。 「握手会や劇場公演に関しては、厳重な警備をした上で、徐々に復活させていくのではないでしょうか。今のライブアイドルシーンは“接触”が基盤になっているので、それを無くしてしまったら、途端にビジネスとして回らなくなっていくと思います。しかし、同様の事件が続いてしまうと、運営側も責任を逃れられないので、カバンの中のチェックだけではなく、ボディチェックや金属探査など、警備が厳しくなるのは間違いないし、必要な措置といえるでしょう」  また、今回の事件は他のアイドルにどのような影響を与えるだろうか。同氏はこう続けた。 「アイドルシーンが握手会をベースにしたビジネスである以上、今すぐ他のアイドルがそれをやめることは考えにくいですね。AKB48などの大手資本のところは厳重な警備を行うという形になるでしょうが、他の小資本のアイドルはそこまでの余裕がないので、まずは様子見という形になるのでは。幸いなことに地下アイドルなどでは、ファンやスタッフが顔見知りとなっているケースが多いため、知らない顔がいると『あいつ誰?』となり自浄作用が働く面もあります」  最後に、岡島氏は“接触型のビジネス”については今後も続いていくと前置きしたうえで、今回の事件についてこう意見を述べた。 「接触型のアイドルビジネスにはタレントを消耗させる側面がありますが、彼女たちはそれを踏まえた上で有名になりたいという意思があって頑張っているのが、アイドルシーンの現状だと思います。今回はそのリスクが顕在化した形ではないでしょうか。現在は小規模の現場であればあるほど、そういった事件が起こりにくい環境にはなっていますが、“接触型のビジネス”も継続しつつ、長期的には、非接触型のアイドルのあり方も平行して模索する必要があるのかもしれません。そもそも女の子自身がアイドルというものに『なりたい』と思える環境でなければ、アイドルシーン自体が成り立たないものなので」  現時点では、AKB48グループからの公式見解として「メンバーのケアを最優先に行う」との発表がなされている。負傷したメンバーや、現場を目撃し心に傷を負ったメンバーの早期回復を祈るとともに、今後の経過を見守りたい。 (文=編集部)

「もっと恐ろしいものを表現したい」坂本慎太郎が追い求める“一線を越えた”音楽とは?

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【リアルサウンドより】  2ndアルバム『ナマで踊ろう』を5月28日にリリースする坂本慎太郎のインタビュー後編。「人類滅亡後の音楽」をテーマとした新作について語った前編に続き、後編では音楽における歌詞の役割から、作者と作品の関係、さらには表現のリミットをどう認識するかまで、聞き手の小野島大氏と大いに議論してもらった。(編集部)

「時間がたつことの恐怖のようなものも入れたかった」

ーー「人類滅亡後の地球に流れる常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽」というコンセプトは、歌詞がなくても成り立ちますよね。 坂本:うん、成り立ちますね。 ーー実際、前作もそうでしたが今作もインストのCDが同梱されるわけですよね。にもかかわらず歌詞をつけたというのは、音だけでは伝えきれない思いがあるということなんでしょうか。 坂本:いや、そうではなくて…日本語の歌詞にこだわって音楽をやるのが自分のテーマで。日本語の歌詞がちゃんとのってる良い曲を作るというのが、自分のやることだって、どこかで思ってるところがあるんですね。インストの音楽とか…聴きますけど、自分がやらなくても誰かほかの人がやるだろうって思いがあったりします。曲を作るって行為は、日本語の歌詞がついてる曲を作る、ってことになってますね。 ーー歌詞があるとそこには意味が出てきますし、聴き手はそこからなんらかのメッセージを読み取ろうとするわけですが、そこも含めて歌詞を書きたい、と。 坂本:そうです。言葉の意味とサウンドの組み合わせから生じる表現ということですね。歌詞で何かを言いたいというのではなくて、この言葉とサウンドが一緒になった時に出てくるもので、何かを伝えるということをずっとやってるつもりなんです。今回はこういうサウンドに、こういうストレートな歌詞が乗った時に出てくるムードがおもしろいと思ったってことですね。 ーー今回の歌詞はかなり強いですよね。裏読みの余地がないぐらいストレート、という話もありましたが、これが、ある種のどかな音楽と組み合わされた時の違和感がすごく強烈ですね。 坂本:ほんとの意味で恐怖感を与えるような音楽をやりたいっていうのがありましたね。 ーー全体を象徴するのは一種の終末思想的な。 坂本:ありますね。あとは…すごく時間がたつことの恐怖というか。そういうのも入れたかったですね。 ーーそれは「死」ということですか。 坂本:もちろん「死」も含まれるんですけど、個人的な死とかじゃなくて、もっとスケールの大きい…ただ時間が流れることへの恐怖っていうか。身近なことでいうと、昔のマイナーなソウルのコンピレーションとか買うと、当時のレコーディング風景の写真が載っていて、みんな20歳ぐらいですごく楽しそうに録音してる。昔は何も思わなかったんだけど、最近見るとすごく怖くなったりするんです。この人たちはもういないんだけど、その念だけがレコードに閉じ込められている。当時のムードなり空気なりが時空を超えて自分の部屋にやってくるわけで。で、プレイするとそのムードが立ちあがってくる。そのへんに音楽の重要な要素もある気がしますね。それってミュージシャンが目の前で演奏してるのとまったく違う感覚じゃないですか。もう死んだ人の声が生々しく聞こえる。かければ当時の雰囲気がそのまま自分の部屋で再現されるっていうのも、考えるとちょっと怖い…それは死が関係してるんですけど。道を歩いてると、この道も江戸時代はちょんまげ結った人が歩いてたんだなと思うと(笑)。すごい不思議なのと同時に怖くなる。そういう感じを全体的に入れたかったんですよ。 ーーなるほど。 坂本:あと自分が死んでーー自分が死ぬのはもはやどうでもいいんですけどーー死んだあともそのまま何万年も時が流れていく感じ。そういう途方もない感じというか。 ーー普通の人だったら、死んだらそれでオシマイですけど、クリエイターの人は死んでも作品が残りますよね。それは意識することはあります? 坂本:意識することはないですね。自分が死んだら終わりだと思ってるんですけど、今言ったことは作品を作る原動力にはなるっていうか。 ーーそういうことを想像することが。 坂本:そうですね。 ーーある音楽家がね、10年後20年後に自分という存在が忘れられても、自分の曲なり作品なりが残ってくれればいいと言っていたんですが、その気持ちはわかりますか。 坂本:う~~~~~~ん………そうですねえ……わかるとこもありますけど…うーん…わかんないとこもありますねえ。 ーー自分が死んだらあとはどうでもいいっていう感覚。 坂本:うん、その感じもすごくありますねえ。自分を出すんじゃなくて作品だけ世に出て、自分は消えたいとか、そういう思いもあるんで、半分わかるとこもあるんですけど。
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「自分が聞きたいレコードを作りたいってことだけ」

ーー作品だけあって自分は消えたいっていうのは、自分をアピールするために作品を作ってるんじゃないってことですよね。自分の存在証明のためとか、そういう意識ではない。 坂本:うーん…まあそれもねえ…掘り下げていくとどんどん矛盾が生じてくるんですけど(笑)。作品を出して、もちろんそれは評価されたいんですけど…当然ですが、いわゆるロックスターとか芸能人になりたいとか、そういうのはないってことですかね。 ーーゆらゆらをやめてからの坂本さんは、なるべく自分の存在も音楽も透明なものにしたいというような意志があるように感じるんですが、透明だからこそ伝わってくる強烈な個性や念の強さのようなものが…今作はすごくわかりやすく出てますね。そういうある種の矛盾というか葛藤が坂本慎太郎なのではないかと。 坂本:ああ、それは狙ってやってる部分と、無意識にやってる部分があると思うんです。僕の音楽を作る原動力って、完全に自分が聞きたいレコードを作りたいってことだけで。そうした時に、自分が好きな(ほかの人の)レコードと並べて聞けて、同等かできればそれ以上のものを作りたいと、それだけを考えてやってるんですね。そうすると、たいがいはもう死んだ人の音楽だったりして(笑)。そういうのも関係してるのかなって思うんですけど。 ーーほとんど表に出なくなっちゃったじゃないですか。ライヴもやらない、メディアにも滅多に出てこない。となると純粋に作品だけの評価になるわけですが、それはご自分の望むところなわけですか。 坂本:ええと、今の時点ではそうですね。あと、とくに今回のアルバムの曲はライヴをやらないから作れるようなところもあるんですよね。ていうのは、すごいストレートな歌詞だけど、自分が発してるんじゃない、どこか違う所から来ているように響かせる、ということが狙いなんですね。それは出来てる気がするんですけど、ライヴで自分の口で目の前で歌っちゃうと、どう考えても僕のメッセージになるし。そうするとこのアルバムでやりたかった一番重要な部分が台無しになっちゃう。ものすごい恐ろしい世界を作ったんだけど、最後に種明かしするみたいになりそうで。緞帳が開いて、キャストが全員出てきて、挨拶するみたいな。聞く人に安心感を与えることになりそうな気がするんですよね。なんかね、得体のしれない感じを出せたと思ってるんですよ今回。ちょっと気持ち悪いっていうか不安になるというか。 ーーありますね、すごく。 坂本:それはすごくうまく出来たと思うんで、これをライヴでやっちゃうと、みんな安心しちゃいますよね。 ーーひとつの普通の歌として受け入れるでしょうね。 坂本:ええ。だったら、作った人がいるのかどうかも怪しい、っていうほうが、音楽の価値はあがるんじゃないか、とは思いますけどねえ。 ーーすごく仰りたいことはわかりますが、でもそれでも、ここから坂本慎太郎というアーティストの個性や存在が透けて見えるのが面白いところですね。 坂本:うん…うん。そうかもしれないですね。 ーーこういう作品を作っていて、昔のゆらゆら帝国のころのように、爆音でギターをかき鳴らしたいとか、そういうロック的な愉悦みたいなものに対する思いみたいなものは、残ってないわけですか。 坂本:ああ、爆音でギターというのはまったくないですね。 ーーあ、まったくない? 坂本:ええ。全然ないです。今回レコーディングのために久しぶりにスタジオに入って、3人で演奏してたら、演奏したり歌ったりするのは楽しいんですよ。でもいざライヴをやるとなったら、その場が自分が思ってるものと違うものになるのは目に見えてるので、その途端にやる気がなくなるっていう。たとえば誰も知らない世界で3人で演奏して、みんなが踊ったり酒飲んだりしてたら、それは素晴らしいと思いますけどね。 ーーある種の記名性が邪魔になる。 坂本:それはありますねえ。ちょっと自意識過剰かもしれないですけど(笑)。 ーーライヴではレコードとは違う期待をするでしょうからね。お客さんも。 坂本:たぶんライヴで、「期待されて期待に応える」みたいな過程の中に、自分が音楽に求めている要素が、もう、ないんだと思うんですよね。

「この世界で一番あってはいけないことは、例えば観葉植物が話しかけてくること」

ーー私がゆらゆらの取材をやらせてもらったのは、ゆらゆらがメジャーに行ってすごくポップになった時期だったんですけど、その時話していただいた、ポップになった理由もすごく納得のいくものだったんで、そのあたりのことは解決されているのかと思ってました。 坂本:ああ、どうなんでしょうね。やってる時は解決してたのかもしれないけど。後期はまたちょっと違ってきたと思うし。すごく簡単にいうと、初期のお通夜みたいなライヴがあって(笑)、メジャーで出したら、普通にわーっと騒いだり暴れたりする人がライヴに来るようになって、それが当初はすごく面白かったんですよ。それがしばらくするとまた初期のお通夜に戻っていったんです。巨大な(客の人数の多い)お通夜(笑)。全員がすごい集中力で一挙手一投足を見逃さないようにしてる。一緒に歌う人がいると怒られちゃう、みたいな。踊ったりすると、静かにしろ、ぐらいの雰囲気があったり。それは、それだけ真剣に聴いてくれているということでもあるんですけど、、、、そういう感じがあったと思うんですよね。 ーーそれに違和感を感じはじめた。 坂本:それはあります。でもそれって全部自分のせいなんですけど。もちろんバンドを辞めたのは、それだけが理由じゃないですけど。 ーーとすると、坂本さんってもともとロックに向いてなかったんじゃ…(笑)。 坂本:(真顔で)それはあるんですよね…。 ーーええっ、いやいや冗談ですけど(笑) 坂本:だから…なんでしょうね…個人に向かう音楽が好きなんですよね、たぶん。みんなで一体感を求めるようなヒッピーっぽい感じとか、ハンド・イン・ハンド的な。絆とか。そういうのが昔からほんとに苦手で。でもロックでも個人に向けた音楽もいろいろあると思うんですよね。 ーーそれは今のライヴ事情だとなかなか実現しにくいかもしれませんね。みんながライヴやフェスで受けるような音楽を目指しているみたいな状況もあります。 坂本:うん…でもね、ライヴやらなきゃいけないって法律でもできたら、僕はそういう音楽やりますよ(爆笑)。今回のアルバムの曲をライヴでやっても意味がないって思ってるだけで。だからもしライヴをやらなきゃいけないんだったら、ダンスバンドとか盛り上がるような音楽をやりますよ。それはそれで嫌いじゃないですから。 ーーでも法律がなきゃやらないんでしょ(笑)。 坂本:うん、まあそうですね(笑)。 ーーライヴもやらなくなったし、音楽的にもゆらゆら時代とは変わってしまったかもしれないけど、もともと坂本さんの音楽にあった強烈な違和感や一種の気持ち悪さのようなものは、今の音楽にもちゃんと残ってますね。 坂本:うーん、そこのみかもしれないですね、こだわってるのは。激しくないから毒がないとか、鋭くないとは思わないし、自分の音楽に限らず。社会の仕組みとか法律とか、その枠の中の危険なことじゃなくて、もっと恐ろしいものを表現したいというのがあるんですよね。それはさっき言ったような、時間の流れであったり。死もそうですけど。昔読んだ本ですごく印象に残ってるんですけど、この世界で一番あってはいけない、許されないことは、殺人とかではなく、例えば観葉植物が話しかけてくることだっていうんですよ。法律よりももっとベーシックな世の中の決まり事があるじゃないですか。植物は話しかけてこない、イカは喋らない。その一線を越えてくるのは、あってはならないことだと。自分の音楽でそういう恐怖心を与えられるとすごいなと思ってるんです。大前提の約束事があって、それはふだん意識もしないしあえて見ないようにもしてるけど、そのへんを目の前に突きつけられると、やっぱり怖いし、気分悪いですよね。楽しくないかもしれないけど…。 ーー楽しくもないし、安易なカタルシスがあるわけでもない。なんとなくもやもやとした気持ちの悪さ、割り切れなさを抱えて聞くような。そんなアルバムですね。 坂本:うん、音楽の感動って、その要素はちょっと入ってると思うんですよ。 ーー割り切れない部分があるからこそ、何度も聞き返すし、繰り返しの鑑賞にも耐えうる。 坂本:そうですよね。あと、今回は特にロック好きでもなんでもない普通の小学生とか中学生に聞いてもらって「これ面白い」とか言ってもらえるほうがいいな、と思いましたね。「およげたいやきくん」みたいに普通に歌っちゃうんだけど、大人になって初めて、あれはこういう意味だったんだ、怖い曲だったんだと気づくような。そういうアルバムになってくれるといいなと思います。 (取材・文=小野島 大/撮影=金子山)
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坂本慎太郎『ナマで踊ろう(通常盤)』(zelone records)

■リリース情報 『ナマで踊ろう』 発売:5月28日 価格:初回限定盤 ¥2,600+税(紙ジャケ仕様/2枚組/BONUS CD付)    通常盤 ¥2,600+税(2枚組/BONUS CD付) <収録内容> 01. 未来の子守唄 (Future Lullaby) 02. スーパーカルト誕生 (Birth of The Super Cult) 03. めちゃくちゃ悪い男 (Extremely Bad Man) 04. ナマで踊ろう (Let's Dance Raw) 05. 義務のように (Like An Obligation) 06. もうやめた (Gently Disappear) 07. あなたもロボットになれる (You Can Be A Robot, Too) 08. やめられないなぜか (Why Can't I Stop?) 09. 好きではないけど懐かしい (Never Liked You, But Still Nostalgic) 10. この世はもっと素敵なはず (This World Should Be More Wonderful)

稲葉浩志がタモリとジョギング談義 10年ぶりにソロで『Mステ』出演果たす

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『ミュージックステーション』公式ホームページ。

【リアルサウンドより】  『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)の5月23日放送回に、稲葉浩志AKB48、KANA-BOON、TOKIO西野カナflumpoolが出演した。  1番目に登場したflumpoolは、メジャーデビューから5周年ということもあり、ボーカルの山村隆太が演奏前に「5年間応援してくれた全ての人たちに感謝して歌いたいと思います」と語ったあと、デビュー曲の「花になれ」を、弦楽器隊も加えた特別編成で披露した。  2番手の西野カナは、自身の趣味について「深夜に帽子を被ってマスクをして、ジョギングをよくするんです」と語ると、同じ趣味を持つタモリは「よく深夜なんかに走るね…。僕は早朝なんですよ」と”ジョギング談義”に花を咲かせた。続いて3番手で登場したTOKIOには、視聴者から「TOKIOのみなさんの本職は何なんですか?」との質問が寄せられ、城島茂が「アイドルです!」と答えると、スタジオが笑いに包まれた。また、デビューから20周年を迎えたことについて、タモリから「デビューした時ってどんな感じだったの?」と尋ねられた彼ら。松岡昌宏がデビュー当時のメンバーについて「一番安心してたのは山口(達也)君ですね」と語ると、山口は「デビューが決まった瞬間『安定!』って言いました。バイトを辞められるし家賃も払えるなって思って。当時、家に冷蔵庫がなくて、ボウルにジュースを刺してたんです」と、デビュー前の貧乏エピソードを明かした。その後、西野カナはドラマ主題歌に起用されている「We Don't Stop」を、TOKIOはCMソングとして話題の「LOVE, HOLIDAY.」をそれぞれ披露した。  4番手に登場したのは、番組内のVTRで”繰り返される歌詞が面白いバンド”と紹介された、若手ロックバンドのKANA-BOON。5月21日にリリースされたシングル『フルドライブ』から表題曲を披露し、タイトル通りの疾走感たっぷりな楽曲を勢いよく歌い上げた。  5番手のAKB48は、先日発表された”選抜総選挙”の速報結果を振り返りながら、トークを繰り広げた。2位の渡辺麻友は現在の順位について「ここから一つ上に上がって、さっしー(指原莉乃)を追い抜けるように頑張りたいと思います」と語ると、1位の指原は「全体的に票数が上がっていてよかったと思ってます。このまま行きたいんですけど、事務所の先輩の土田(晃之)さんに『お前はこのまま92位に落ちる』と言われてるんで…」と、太田プロの先輩からイジられていることを明かし、5月21日にリリースしたシングル『ラブラドール・レトリバー』から表題曲を披露した。  最後に登場した稲葉浩志は、10年ぶりのソロ出演と番組から紹介され、「そんな感じしないですけどね」と驚いた表情で語った。また、タモリから最近の趣味について訪ねられた稲葉は「ないですね、散歩をしてるくらいですね」と語るが、タモリに「走ってないの?」と尋ねられると「タモリさんほどじゃないけど走っていますね」と、西野に続いてジョギング愛好者であることを明かす。さらにタモリに「やっぱり朝はいいよね。運動は午前中に全部済ませると良いらしいよ」とアドバイスされると、「そうなってきちゃいますけどね(笑)」と、だんだんと朝型の生活に変わってきたことをほのめかせた。その後、ステージに移動した稲葉は、テレビ初披露の新曲「oh my love」をバックバンドを率いて情感豊かに歌い上げた。  アイドルから新進気鋭のロックバンドまで、現在の音楽シーンを網羅するようなラインナップが登場した今回の放送。次回はゲストに嵐、AKB48、コブクロ、aiko、椎名林檎を迎える予定だ。 (文=向原康太)

坂本慎太郎はなぜ“人類滅亡後の音楽”を構想したか「全体主義的なものに対する抵抗がある」

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【リアルサウンドより】  2010年3月に惜しまれつつ解散したゆらゆら帝国のフロントマンであり、2011年よりソロ活動を展開している坂本慎太郎。5月28日にリリースするソロ2ndアルバム『ナマで踊ろう』は、「人類滅亡後に流れている常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽」というテーマで制作されたという。ベースを軸とした浮遊感のある楽曲に、アイロニカルで寓話的な歌詞が乗り、終末的でありながらも、どこか明るい雰囲気を生み出している。今回のインタビューでは聞き手に音楽評論家の小野島大氏を迎え、本作の制作プロセスから楽曲に込めたイメージ、さらにはライブを行わずに独自のペースで活動を続ける理由について、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「曲がほとんどベースで決まるんだなっていうのが改めてわかった」

ーー2年半ぶりの新作です。構想2年ということなんですが、どういう形で今作の制作は始まったんでしょうか。 坂本:1曲ずつ作っていって…特にアルバムの制作期間だから曲を作り始めるとか、そういうのではなく、日常的にギターで曲を作っていった中で、ちょっと面白いなと思えるのが出来て、それが2曲目の「スーパーカルト誕生」って曲なんですけどね。そこからアルバム全体に繋がるイメージみたいなものが浮かんできて。それを時間をかけて、妄想を熟成させて…って感じですかね。 ーー最初に浮かんだアルバムのイメージというのは、「人類滅亡後の地球で鳴り響く音楽」という歌詞のテーマも込みで? 坂本:いえいえ、歌詞は最後のほうに作るんで。最初に曲だけ作っていって、レコーディングする時点で(歌詞は)あるって感じですね。 ーー前作のあとで反省点とか、次はこうしよう、というようなものはあったんですか。 坂本:それはないんですけど、前作では自分でベースを弾き始めて、ベースラインからアレンジするっていうのを初めてやって。それがすごく面白かったんですけど、そのあとのシングルとかで、その手法はだいたい見えてきたところがあって。次やるならベースは人に頼んで、バンド形式で録ろうと思ったんです。それぐらいですかね。 ーーふたつお聞きしたい点があるんですが、ひとつは、ベースで曲を作ることで何が変わってきたかという点。もうひとつは、前回はほとんどおひとりで作られていたと思うんですが、今回はきっちりとメンバーを決めてリハーサルも積んでレコーディングに臨まれたんですよね。なぜそうしようと思ったのか。 坂本:バンド(ゆらゆら帝国)の時はギターで曲を作って、それをスタジオに持っていってドラムとベースが合わせて、っていう作り方で。基本的にはパートを任せるという感じですね。でもベースで曲を作り始めると…曲がほとんどベースで決まるんだなっていうのが改めてわかったんです。たとえば…抜くタイミングとか。コードに沿って弾かないで、歌メロと、もうひとつ対になるようなベースラインが縫うように来る、っていうアレンジの仕方をやるようになって。あとは、コードがあって、コードの中の一番低いルートの音をベースが弾くっていうのが普通なんですけど、違う音から入って、ギターもコードを弾かないで、鳴ってないんだけど変なコード感が出るとか。ベースだけ聴くと違うコード進行に聴こえるんだけど、歌と、ギターの単音と、3つがあわさってコードになるとか。そういう出来上がりをイメージして、ここはギターが入るからベースを抜いておこうとか。そういう作り方ができるようになったってことですかね。 ーー作り方の自由度が増したということと、鳴らさなくても想像させる、というような考え方ができるようになった。 坂本:そうですね。あとは…曲の完成形が頭にあって、それに向かってどうすればいいか、いろんな方向から、自分の思い通りに考えられるようになったっていうか。 ーーバンドだと自分の思い描いていたものとは違う方向にいくことがあって。それがバンドの醍醐味でもあると思うんですけど…。 坂本:はい、そうですね。その通りですね。一人でやるとそういう細かいところまで自分で考えられる。それって、面白さと同時に仕上がりも見えすぎるところがあって。で、今回ベースは違う人にお願いしようと。バンドでやったのは、スタジオで一緒に練習することで出てくる人間のノリみたいなやつを記録したかったというのがあります。 ーーこういう風に弾いてくれ、という指示は全部坂本さんが出されるわけですよね。 坂本:今回もデモテープを自分で作って、そこには基本的なドラムのパターンと、べースラインは入っていて。それをもとにスタジオに入るんで、全然違うものにはならないんですけど、タイム感が違うので、自分でベースを弾くものとはやはり違ってきますね。 ーー自分の構想した通りのものができるんだけど、最終的な演奏の段階を人に委ねることで、違うニュアンスもそこに加わってくる。 坂本:ああ、そうですね。自分以外の要素をちょっと増やしたかったというか。1枚目はあまりにも「隅々まで自分」だったんで。それをちょっと薄めたい、というのもありました。
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「人類が滅亡した地上で、ハトヤのCMがただ流れている、みたいなイメージ」

ーー1枚目に関しては、長年バンドでやってこられたから、「全部自分の世界」というのをやってみたかったんだろうな、というのは感じました。 坂本:あ、そうですね。そうですそうです。一回やったんで気が済んだってところもありますね(笑)。 ーーじゃあ今回のアルバムは「バンドもの」だと思っていいんですか。 坂本:あのう…そこで…いわゆるロック・バンドの感じにはしたくなくて。それはメンバーにも言ったんですけど、ステージに立ってロック・コンサートで演奏しているようなロック・バンドのテンションじゃなくて、もっと寂れたホテルのラウンジとかフィリピンパブのハコバンとか…。 ーーああ、わかります。ビヤガーデンで演奏してるみたいな。 坂本:そうそう。そういうバンドのテンションと空気感の演奏にしたい、と説明して。その感じは出てるかな、と思ってるんですけど。 ーーなぜそんなことをやろうと思ったんですか。 坂本:ええと…それはコンセプトの話に戻るんですけど。2曲目(「スーパーカルト誕生」)が出来た時に考えたイメージっていうのが、昔の常磐ハワイアンセンターとか、ハトヤ温泉とか、ファミリーランドみたいな遊園地でもいいんですけど、そういう人工的な楽園みたいなものを作ろうと思った人達…その人達はもう死んじゃってるんだけど、その人たちの意志や志みたいなものだけが、まだふわふわとこのへんに漂っているような、そんなイメージなんです。人類が滅亡してもその気持ちや魂だけが残って、誰もいない宇宙に漂っているっていうのが、すごいかっこいいと思ったんですね。もっと具体的にいうと、人類が滅亡した地上で、ハトヤのCMがただ流れている、みたいな。 ーー星新一っぽいイメージですね。 坂本:ああ、そうですね。子供のころ読んでたSFマンガやSF小説にも通じるような、そういう世界観をイメージしたんですけど。そこに出てくるバンドってことなんですけどね。それはロックじゃなくて…。 ーー滅亡したあとに流れているのはゆらゆら帝国のような音楽じゃなくて。 坂本:もっとムード音楽みたいな…いろんなロックがありますけど、今の規模の大きいロック・コンサートの、一致団結・連帯、みたいな、ああいうのと真逆の感じがやりたかった。 ーーものすごくわかります(笑)。ゆらゆら帝国でも、特に後期はそういう路線でしたよね。共感とか一体化した熱狂を拒否するような方向。 坂本:僕はずっと、そういう「連帯」とか、「ひとつになる」っていうのがいやで、こういうバンド始めたはずなんですけど、気が付くといつのまにか巨大なステージの中心にいたりして。ふと、こんなはずじゃなかっていうのがよぎったり。 ーーそういうことを感じつつ、どこかで開き直ったのかと思ってましたけど、そうではなかったんですか。 坂本:うーん、今となってはもう覚えてないですねえ。でも…ロック・コンサートの宗教的なノリっていうのは、逃げたい要素ではありますよね。 ーーソロになってからライヴをされてないですよね。それはそういう理由もあるんですか。 坂本:それもありますね。 ーーゆらゆらの『空洞です』の当時のインタビューで、ライヴで盛り上がらない曲ばかりなんでライヴをどうしようか悩んでる、みたいなことをおっしゃってたのが印象的でした。 坂本:曲作りの方向性とかはその当時から変わってないと思うんですけど、一番大きな違いはライヴやってるかやってないかで。レコーディングしたあとにライヴ用にアレンジし直したりするし、やっぱり大きな会場で演奏すると演奏自体も変わってくるから。そうすると意味が変わってきたりとか、ありますよね。同じ曲でも。

「さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって」

ーー今回はバンドとしてちゃんと練られたものとは言っても、ライヴを前提としては考えてないってことですか。 坂本:そうですね。ただあるとしたら、さっき言ったみたいな、ホテルのラウンジとかビアガーデンとか。お客さんがいて、いい感じの音楽が流れていて、音楽をみんなで共有はしてるんですけど、それぞれ全然別の方向を向いて喋ってたり、あるいは音楽を聴いてのったり踊ったりしてる人もいて、という。いろんな人がバラバラに共存してるところに、バンドの音楽がいい感じで流れている、というイメージなんです。そんな感じでライヴができるなら、ライヴもアリなんですけど(笑)、絶対無理なんで(笑)。 ーー人類滅亡後に流れている常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽、というテーマなんですが、音楽は言ってみれば楽園的な--幻想上の楽園かもしれないけど--のどかなものだけど、歌詞は逆にディストピア的なダークなものになってますね。 坂本:人類が滅亡したあとに、かって人類が目指そうとした楽園を作ろうとした人たちの、意志だけがあるって妄想した時に、なんでかわかんないけど、自然とこうなりましたけどね。ストーリーを作ってそれに沿って作詞したんじゃなくて。 ーーそこには文明批判的なニュアンスはあるんですか。 坂本:文明批判というよりは、今現在生きてて感じているような…さっき言ったような、巨大なロック・コンサートの宗教的なノリもそうですけど、なんかこう、全体主義的なものに対する抵抗とか…それが一番大きいですね。あとは、宗教的な陶酔とか熱狂とか、そういうものに対する恐怖もありますし。 ーーそういう宗教的な同化指向とか全体主義的な同調圧力とか、日々暮らしていて感じることが多いわけですか。 坂本:そうですね。 ーー坂本さんはもともと、そういう皮膚感覚というか、社会的な事象に対しての自分の感じ方や考え方を作品に反映させていきたいと考えるほうなんですか。 坂本:いや、考えない方です。 ーーですよね。 坂本:政治的な発言もしないですし、社会的なメッセージみたいなものも--もちろん普通に生きているんで、ありますけど--それを音楽で表現しようとは思わない。思わないんですけど、今回は作品をSF的な設定にしたことによって歌詞を--深読みできないぐらいストレートだと思うんですけど--ストレートに言っちゃったほうが、単純に面白い、というのと、あと…意外と生々しくないっていうのを発見して。僕個人の叫びに聞こえないっていうか。歌詞を単純化することによって、CMのコピーとか標語みたいな感じになる気がしたんですよね。それは強烈だし、なんか面白いなと。今まで自分がとってきたスタンスと矛盾するとは思わなかったし。 ーーなるほど。 坂本:あと、さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって、ちょっと思いますね。 ーーあ、思いますか。 坂本:はい。歌詞で言うとか言わないとかじゃなくて。なんでしょうねえ…ただ楽しければいいとか、おしゃれだからいいとか…そういうのを今作ろうとは思わないですね。 (後編へ続く) (取材・文=小野島 大/撮影=金子山)
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坂本慎太郎『ナマで踊ろう(初回盤)』(zelone records)

■リリース情報 『ナマで踊ろう』 発売:5月28日 価格:初回限定盤 ¥2,600+税(紙ジャケ仕様/2枚組/BONUS CD付)    通常盤 ¥2,600+税(2枚組/BONUS CD付) <収録内容> 01. 未来の子守唄 (Future Lullaby) 02. スーパーカルト誕生 (Birth of The Super Cult) 03. めちゃくちゃ悪い男 (Extremely Bad Man) 04. ナマで踊ろう (Let's Dance Raw) 05. 義務のように (Like An Obligation) 06. もうやめた (Gently Disappear) 07. あなたもロボットになれる (You Can Be A Robot, Too) 08. やめられないなぜか (Why Can't I Stop?) 09. 好きではないけど懐かしい (Never Liked You, But Still Nostalgic) 10. この世はもっと素敵なはず (This World Should Be More Wonderful)

AKB48が出演番組の“問題点”を討論 島田晴香「若手メンバーばかり推すのをやめるべき」

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AKB48『AKB48 リクエストアワーセットリストベスト200 2014 (200~101ver.) スペシャルBlu-ray BOX (Blu-ray Disc5枚組)』(AKS)

【リアルサウンドより】  『AKBINGO!』の5月21日放送回にて、AKB48のメンバーが同番組の改善案を考える企画「AKBINGO!総点検プロジェクト」が放送された。  6年半の歴史を持つ同番組を良くするための改善案を各メンバーが提出し、その案について反対派と賛成派に分かれて討論し合うという今回の企画。  1つ目に読み上げられたのは島田晴香の「『AKBINGO!』は若手メンバーばかり推すのをやめるべきである」というもの。この案に対して”賛成”の意を表明したのは、MCのバッドボーイズ清人と島田、北原里英と内田眞由美の4人。残りの11人は全て”反対”に移動してしまった。これについて島田が「毎週『AKBINGO!』を録画予約してたんですが、若手メンバーが推されすぎてて、録画予約を止めました。30分の番組で、岡田奈々ちゃんの”真面目企画”を3週分、つまり1時間半ですよ! 西野未姫の”泣き虫キャラ企画”は2週分......。取り過ぎでしょ! 尺!」と”三銃士”など、12期以降のメンバーが多く取り上げられていることに対し、怒りを露わにした。この怒りに対し、バッドボーイズ佐田が「でも面白かったもん」と若手メンバーへのフォローを入れると、すかさず島田が「面白くなかったな~」と返し、これには若手メンバー一同も苦笑いするしかなかった。  その後、島田への反論として、岡田が「キャラ作りはAKB48にいるうちは大事だと思うので......」と、自身のキャラクターをアピールするために必要な時間だったことを説くと、西野が「島田さんは”ごっつい”キャラが付いてるからもう出なくてもいい」と島田に攻撃を加える。内田が「何年もやって来て(キャラを)付けられた。早くからキャラを欲しがるのは欲張りなんじゃないか」と、ベテランならではの意見を述べると、北原が「キャラ付け企画は分かるけど、三銃士のゴルフ企画は何?」と語り、2013年7月23日に放送された映像を再度確認。室内用のパターゴルフで遊ぶ3人が淡々と放送されただけの映像に対し「地上波とは思えない」と辛口コメントを述べた。この問題について、担当ディレクターが「何の目的があるとおっしゃいますけど、画が持つんですよね。オチなんかいらないんですよ」と語ると、北原「いつの間にそんな甘くなったんだ『AKBINGO!』は!」と 番組に喝を入れた。  また、”画が持たない”側の島田は「私、ネット上で小嶋に顔が似てるって言われてるんですよ」と、突然語りだし、実際に画像を検証。誰の目から見ても似ていない画像に対し、込山が「似てたら島田さんはもうちょっと人気あると思う」と、毒舌を吐いた。  そして、特別ゲストとして番組を見学していた”大人AKB”の塚本まり子が登場。これまでの意見に関して「私は37歳なんですが、AKB48の中では若手になるんでしょうか?」と質問。「芸人と同じで年齢関係無く、入った順番で先輩後輩になる」というルールの為、”若手”になることを告げられた塚本は「そうですね......。あれ、どんな議論でしたっけ?」と、天然ぶりを見せつけ、番組の空気をリセットした。  この議題に対して、総監督である高橋みなみは「時代の流れですから。若手達が目立って行かないと、AKB48の今後に繋がらない。中堅や先輩は、出たいなら自分で来ること」と総括し、この案は不採用になった。  2つ目の意見として読み上げられたのは、岡田の「バラエティー班じゃないメンバーにモノボケをやらせるのはやめるべきである」というもの。岡田、西野、内田、清人と、またも賛成派が4人という事態になるが、岡田はこのことに対し、「モノボケが苦手で、その回をお母さんと見ながら『面白くないね』って言われて心が折れて......。私はバラエティー班ではないので」と語ると、佐田が「そもそも”バラエティー班”って何なん?」と質問。これに対し岡田は「バラエティーを中心に活躍されている先輩方で、島田さんや北原さんなどです」と答えると、”女優志望”の北原は「私バラエティー班なんだ......」とショックを隠しきれない様子を見せた。  同じ若手メンバーからの意見として、田野が「真面目にやってる子がモノボケで頑張ってる姿を見るのが、ファンは嬉しい」と語り、他メンバーから感心されると、込山が「西野さんは罰ゲームのゲテモノを食べない」と暴露。これに対し高橋は「これは難しい。食べて面白いやつと食べない方が面白いやつがいるから。西野は食べなくて泣いてるのが面白いんだけど、この番組はチャレンジできる場所だから、ちゃんとやっていった方がいい」と金言を授けた。  また、大阪で修業を積んだ横山が「早い段階から”バラエティー班”とかそうでないとか決め過ぎ。私はNMB48との兼任で殻が破けた。他の番組やったらもっとシビアにカットされるし」と、”笑いの本場”大阪で知ったバラエティーの厳しさを語った。最後に、この日の司会を務めた菅谷大介アナから「AKB48にとってバラエティーとは?」と聞かれた高橋は「可能性です」と答えた。彼女の言葉に心を動かされた4人は”不採用”の札を挙げ、満場一致で”モノボケを頑張っていく”という結論になり、番組は終了した。  AKB48内での番組への取り組み方がはっきりと見えた今回の放送。次回5月28日の放送では『総点検プロジェクト』の後半を放送する予定だ。 (文=向原康太

菊池桃子、シティポップの担い手としての魅力とは ラ・ムーの“早すぎたサウンド”も検証

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80年代のアイドル界に旋風を巻き起こした菊池桃子。

【リアルサウンドより】  今年デビュー30周年を迎えた菊池桃子が、音楽活動を精力的に展開している。4月30日には『Miroir -鏡の向こう側に-』以来23年ぶりに新作アルバム『青春ラブレター ~30th Celebration Best~』を発売、最新オリコンアルバムチャートで初登場20位にランクインした。同アルバムには菊池桃子が16~18歳までにリリースした全シングル9曲に加え、ファンからの人気も高い1stアルバム『OCEAN SIDE』より「OCEAN SIDE」を収録。これら10曲は、新たなアレンジを施し再録音されたものだ。さらに作詞を鈴木おさむ、作曲をつんく♂が担当した新曲「青春ラブレター」も収録されている。  また、アルバム発売にともない、27年ぶりに単独ソロコンサートの開催も決定。鈴木おさむが演出を担当するこのコンサートは、5月24日(土)、25日(日)の両日夜の公演はすでにチケットが完売、ファンからの要望による追加公演が決定している。  80年代を代表するアイドルのひとりとして、小泉今日子や中森明菜らに匹敵する存在感を放っていた菊池桃子。その音楽面の評価はいかなるものだったのか。80年代アイドルカルチャーに造詣の深い評論家の栗原裕一郎氏は、その活躍について次のように語る。 「菊池桃子はアイドル雑誌『Momoco』のイメージガールとしてデビューし、ビジュアル的にもアイドル性が高かったためか、爆発的にヒットしていたものの、当時は音楽性を前面に打ち出しているという印象は少なかったように思います。歌唱力もなかったですし(笑)。しかし、彼女の楽曲はずっと林哲司が作曲していて、サウンドの志向性は、彼が同時期に手掛けていた杉山清貴&オメガトライブと同一線上にある、良質なシティポップでした。彼女のシングルだけを聴いているとちょっと気付きにくくて普通のアイドル歌謡に思ってしまいがちですけど、アルバムを聴くと、林さんが音楽的に高いところを目指していたのが良くわかりますね。林哲司は、79年に松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」や竹内まりや「September」などをヒットさせた、職業作曲家として歌謡曲にシティポップの文脈を組み込んでいった立役者の一人で、80年代に入って杉山清貴&オメガトライブや杏里などを大ヒットさせます。菊池桃子の楽曲もその延長線上に位置付けられるものだと思います。同時期には、尾崎亜美カラーの強い金井夕子~岩崎良美の流れなどもあり、まあ、他にも同時多発的に動きが起こっていたんですが、その辺りにシティポップ歌謡の源流の一端があると言えますので、今あらためて系譜立てて聴いてみると面白いと思います」  また、菊池桃子がアイドル活動の後に結成したバンド「ラ・ムー」はしばしば”失敗したプロジェクト”として取り上げられるが、栗原氏は「音楽的に再評価できる」と指摘する。 「アイドルとしての人気が落ち着いてきた頃に、大胆な脱アイドル路線として結成されたのがラ・ムーです。フュージョンバンドであるプリズムのサポートメンバーを務めていた松浦義和がリーダーで、今ならブラコンあるいはエレクトロファンクと呼ばれるような音楽性が斬新でした。でも、当時はまだブラコンは普及前夜くらいで、菊池桃子や松浦義和自身も、その音楽性を「ロックだ」と主張していた。おまけに、サウンドは変わっても、乗ってるのはアイドル時代と変わらぬウィスパーボイスだし、結局あまり理解されず――ネタにはされましたが(笑)――、セールス的には振るいませんでした。しかし、今聴くと、菊池桃子の歌唱とバンドのサウンドが絶妙なミスマッチ感を生んでいて、実にユニークで面白いです。1作目の「愛は心の仕事です」ではラップにも挑戦していたり野心的な試みだったと思うんですけど、まあ、早すぎたということでしょうね」

ラ・ムー「少年は天使を殺す」

 さらに同氏は、最近のアイドルグループからも、菊池桃子に通じる音楽性を発見できるという。 「現在、活躍しているアイドルグループでいうと、Especiaなんか菊池桃子ポップスと親和性が高い気がしますね。5月28日に発売されるアルバム『GUSTO』より先行公開されている「No1 Sweeper」などは完全にシティポップなので、聴き比べると面白いと思います。それから、AeLL.のリーダーである西恵利香が昨年、Erika.名義で『unJour』というシティポップのカバーアルバムをリリースしています。松原みきなどのカバーも収められているので、こちらもチェックしてみるといいんじゃないでしょうか」

Especia「No1 Sweeper」

 当時の楽曲にリアレンジが施された菊池桃子のアルバム『青春ラブレター ~30th Celebration Best~』のアレンジャーには、同時代に活躍した杉山清貴も名を連ねている。アイドル楽曲に多様性が生まれている昨今、改めて菊池桃子の作品をポップミュージック史の中に位置づけながら聴くと、新たな魅力が見いだせるのではないだろうか。 (文=松田広宣) 菊池桃子・特設ホームページ
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菊池桃子『青春ラブレター ~30th Celebration Best~』(ERJ)

■リリース情報 『青春ラブレター ~30th Celebration Best~』 発売:2014年4月30日 【初回生産限定盤】¥3,900(税込) 【通常盤】¥3,240(税込) 【音源収録内容】 ★全11曲収録(曲順不同) ・1984年4月21日リリース シングル 「青春のいじわる」 作詞:秋元 康 作曲:林 哲司 編曲:杉山清貴 ・1984年7月10日リリース シングル 「SUMMER EYES」 作詞:秋元 康 作曲:林 哲司 編曲:鳥山雄司  ・1984年11月1日リリース シングル 「雪にかいたLOVE LETTER」 作詞:秋元 康 作曲:林 哲司 編曲:西川 進 ・1985年2月27日リリース シングル 「卒業-GRADUATION-」 作詞:秋元 康 作曲:林 哲司 編曲:杉山清貴 ・1985年5月15日リリース シングル 「BOYのテーマ」 作詞:秋元 康 作曲:林 哲司 編曲:鳥山雄司 ・1985年9月26日リリース シングル 「もう逢えないかもしれない」 作詞:康珍化 作曲:林 哲司 編曲:杉山清貴 ・1986年2月13日リリース シングル 「Broken Sunset」 作詞:有川正沙子 作曲:林 哲司 編曲:小倉博和 ・1986年5月14日リリース シングル 「夏色片想い」 作詞:有川正沙子 作曲:林 哲司 編曲:宅見将典 ・1986年9月3日リリース シングル 「Say Yes!」 作詞:売野雅勇 作曲:林 哲司 編曲:西川 進 <オリジナル・アルバムより収録> ・1984年9月10日リリース アルバム「OCEAN SIDE」より 「OCEAN SIDE」 作詞:青木久美子 作曲:林 哲司 編曲:小倉博和 <新曲収録>  「青春ラブレター」 作詞:鈴木おさむ 作曲:つんく 編曲:平田祥一郎 ※「青春のいじわる」のアンサーソングとして書き下ろし ★初回生産限定盤の豪華3大特典★ <“Momoco+BOMB”Mini Book付き> イメージガールを務めた学研「Momoco」や学研「BOMB」表紙・中面に掲載された写真、別冊「Momoco」表紙など、当時の紙面を組んで構成した豪華ミニブックレット付き <スペシャルBOX仕様> 豪華外箱付きのパッケージ <ボーナストラック“Momoko’sスペシャルトーク”収録> ■イベント情報 『30th Anniversary Concert「青春ラブレター」』 日程:2014年5月24日(土)・25日(日) 会場:ステラボール 開場/開演:5月24日開場 18:00/開演 19:00 (完売)       5月25日開場 12:00/開演 13:00 ※追加公演 (発売中、残りわずか)       5月25日開場 17:00/開演 18:00 (追加席決定) チケット:10,000円(税別、プレミアムグッズつき)      ※全席指定 ※未就学児童入場不可 一般発売日:5月25日(日)18:00開演の公演の追加席は5月17日(土)10:00より各種プレイガイドで発売開始 5月25日(日)13:00開演の追加公演は発売中 5月24日(土)19:00開演の公演は完売

逆輸入版きゃりーが見せた「100%の本気」 音圧もスピードもアップした”日本公演”レポート

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5月17日、18日にZepp Tokyoで『KPP NANDA COLLECTION WORLD TOUR 2014』の東京公演を行ったきゃりーぱみゅぱみゅ。

【リアルサウンドより】  2月13日にシアトルで幕を開け、6月28日のバンコクでフィナーレを迎えるきゃりーぱみゅぱみゅ2回目のワールドツアー、NANDA COLLECTION WORLD TOUR 2014。各都市で2.000〜3.000人規模のライブハウスをソールドアウト、シドニー公演では急遽さらに大きな会場に変更になるなど、世界中でファンを熱狂させているきゃりーが、5月17日と18日にZepp Tokyoで「日本公演」を行った。このワールドツアーの一環としての「日本公演」、昨年行われた初のワールドツアーでは日本の各都市もツアーに組み込まれていたが、おそらくは多忙を極めるスケジュールのためだろう、今年は東京公演のみというプレミアム性の高いものに。2000人規模のスタンディングのライブハウスできゃりーのライブをフルセット見られる機会は現段階でも貴重だし、今後はさらに貴重なものとなっていくだろう。
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 今年の1月に行われた横浜アリーナ公演については、以前本サイトの記事【きゃりーが見せた未来型エンターテインメントーー横浜アリーナ公演の画期性とは?】にも書いたように、新しいエンターテインメントの在り方を提示した画期的なものだったが、今回のワールドツアーのステージはきゃりー自身もMCで「100%本気のライブです!」と言っていたように、必要最小限のセット(と言っても、普通のアーティストのライブよりも豪華だが)の中、全22曲、歌とダンスで真っ向勝負のストロングスタイル。ちびっ子きゃりーファンもたくさん集っていたせいか音量が控え目だったアリーナ公演との最大の違いは、その低音の重さと太さ。所属事務所ASOBISYSTEM主催のクラブイベントなどに今でも頻繁に参加しているきゃりーだが、この日のサウンドはまさにクラブ仕様。また、「ふりそでーしょん」「もったいないとらんど」などの曲は、明らかにいつもよりもBPMが速い! 逆輸入版のきゃりーは重低音&高速きゃりーなのだった。
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 中盤のMCで、今回のワールドツアーでの各都市での出来事を日本のファンに報告をするきゃりー。移動と時差と過密スケジュール(ライブに訪れた各国で、プロモーション取材も受けまくっているのだ)で「気が狂いそうになった」とつい本音を漏らすきゃりー。また、ライブ中に発表された今秋の日本全国アリーナツアーについては、現在そのコンセプトを練っている最中としながらも、「死をテーマにしようと考えてます」と意味深な発言も。  しかし、そもそもきゃりーがアートディレクターの増田セバスチャンらスタッフと共にこれまで作り上げてきた世界の独創的なイメージ&ビジュアルは、常に「狂気」や「死」と隣り合わせのものだった。今回のステージで披露された新曲「きらきらキラー」も、「きらきら」してるものを「殺す」というテーマが込められた、近作シングル曲にはなかった攻撃的な歌詞とサウンドとダンスが印象的だった。7月9日にはサードアルバム『ピカピカふぁんたじん』のリリースも決定。ワールドツアーで世界中を駆け回った2014年上半期に続いて、2014年下半期には再び日本中できゃりー旋風が巻き起こることだろう。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

AKB48、ももクロも出演 「氣志團万博」はなぜ規模拡大を続けるのか?

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『氣志團万博2014 ~房総大パニック!超激突!!~ Presented by シミズオクト』各出演者の日割りは5月21日12:00にオフィシャルサイトにて発表。

【リアルサウンドより】  9月13~15日に千葉・袖ケ浦海浜公園で開催される氣志團主催の野外フェス『氣志團万博2014 ~房総大パニック!超激突!!~ Presented by シミズオクト』。その出演アーティスト第一弾が先日発表された。  今年から3日間の開催となった『氣志團万博』。第一弾アーティストとして発表されたのは、AKB48岡村靖幸、the GazettE、華原朋美氣志團きゃりーぱみゅぱみゅGRANRODEO、黒夢、ゴールデンボンバーシド私立恵比寿中学仙台貨物、チームしゃちほこ、10-FEET東京スカパラダイスオーケストラニューロティカ、味噌汁's、ももいろクローバーZ森高千里森山直太朗RIP SLYMEという21組だ。  世代もジャンルもフィールドも超えた「ありえない」メンツが集うフェスとして注目を集めてきた『氣志團万博』だが、今回もかなり豪華なラインナップとなっている。特に今年はAKB48、ももいろクローバーZという2大アイドルグループが並び、ワールドツアーを終えたきゃりーぱみゅぱみゅも出演と、大きな注目を集めることは間違いないだろう。他にも華原朋美や森高千里など90年代から活躍する歌姫、シドやthe GazettEやゴールデンボンバーなどのV系、10-FEETや東京スカパラダイスオーケストラなどロックフェス常連のバンド勢が集い、さながら「J-POP博覧会」とも言える一大イベントとなっている。一昨年、昨年に続き大きな成功を果たすことは間違いなさそうだ。  ただし、これはこの連載「ロックフェス文化論」で繰り返し語っていくテーマでもあるのだが、フェスは必ずしも「人気者を集めれば成功する」ものではない。もちろんラインナップの豪華さは話題を呼び動員を増すための重要なファクターだが、フェスを継続的な成功に導く鍵は、むしろ立地やブッキングや環境整備にそのフェスならではの「文脈」や「メッセージ性」が感じられるかどうかにある。主催者の掲げるコンセプトがオーディエンスにきっちりと伝わるか、それが適切な規模で共有されるかどうかにある。そのことは、そのことは、「大人の夏フェス」をテーマにKISSやジェフ・ベックを招聘するも集客が振るわず2006年一度きりの開催に終わった『UDO MUSIC FESTIVAL』や、「ヒットチャートの主役が集まるフェス」をコンセプトにPerfumeやFUNKY MONKEYBABYSが出演するも、やはり集客が振るわず2012年を最後に翌年以降開催されていない『GO!FES』の例が証明している。  また、「フジロック」を主催するスマッシュ代表・日高正博氏や、『ROCK IN JAPAN FES.』『ROCKS TOKYO』など数々の邦楽フェスの立ち上げに関わり、現在は『VIVA LA ROCK』を主催する鹿野 淳氏など、オーガナイザーが顔の見える存在になっていることも、ここ10数年で日本に根付いてきたフェス文化の大きな特徴だ。その背景には、前述した通り「誰がどんな思いでやっているか」ということが、フェスにおいて重要視されることが理由にある。  そう考えていくと、『氣志團万博』は、単に「豪華なラインナップが集まるJ-POPフェス」というだけではない、非常に明確、かつ他にない魅力を持ったフェスであることがわかってくる。  まず、その名の通りホスト役をつとめるのは氣志團だ。コンセプトは「ありえないを形にする」。もともと一昨年から、浜崎あゆみ、ゴールデンボンバー、小泉今日子やサプライズ出演を果たした近藤真彦など、それまでのロックフェスの常識を覆すラインナップが実現し、大きな話題を集めた。当初はバンド結成15周年を記念した一回限りのお祭りとなるかと思われたが、昨年にはhideや乃木坂46マキシマム ザ ホルモンも出演し、二年連続の成功という実績を作った。  その背景には、綾小路翔が持つ「既存のロックフェスにないものを形にしたい」という発想があった。彼はフェスを主催するにあたってのインタヴューで「日本のロックフェスがルーチン化してきた」ということを語っている。つまり、邦楽を主体としたフェスが各地方に根付いたことはいいが、その反面ラインナップがパッケージ化し、出演者にとっても夏の営業のようになってしまっているという2010年代以降の現状を指摘している。そこに風穴を開ける発想でスタートしたのが、「氣志團万博」なのである。  そして、実際にこのブッキングの実現に寄与しているのが綾小路翔が持っている幅広い人脈であることは間違いない。氣志團は2011年から「極東ロックンロール・ハイスクール」と題した対バンスタイルのライヴを行い、そこでベテラン、V系、アイドルなど様々なアーティストとステージを共にしてきた。また、昨年には彼直々に秋元康を口説き落として乃木坂46の出演を実現させ、それが今年のAKB48の出演に繋がっているはずだ。DJ OZMAや矢島美容室としての活動も経ている彼は、いわば近いようで遠い「芸能界」と「音楽シーン」をつなぐ貴重な存在となっている。  千葉県・袖ヶ浦海浜公園という会場のロケーションも『氣志團万博』の大きな要素だ。前述の鹿野 淳氏は「フェスは場所とスケジュールが50%以上の重要さを占めるもの」だと語っているが(参照:VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、ロックフェスの「物語」と「メディア性」)、氣志團にとっての地元・木更津も、デビュー以来常にレペゼンし、大事にしてきた場所。2003年に初めて開催し4万人を集めた『氣志團万博』(こちらはGLAYをゲストにワンマンライブのスタイルで行った)も、やはり木更津にて行われている。『氣志團万博』は、彼らにとって「故郷に錦を飾る」という意味を持つイベントでもあるはずだ。  ニューロティカや仙台貨物などのエンタメ精神溢れるバンド、声優・谷山紀章が歌うロックユニットGRANRODEO、RADWIMPSの“盟友” 味噌汁'sなど、他にも曲者揃いのメンツが実現した今回の『氣志團万博』。今年も「ありえない奇跡」が起きそうだ。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter ■イベント情報 『氣志團万博2014 ~房総大パニック!超激突!!~ Presented by シミズオクト』 日時:2014年9月13日(土)、14日(日)、15日(月・祝) 9:00 開場/11:00 開演 (20:00 終演予定) 会場:千葉県・袖ケ浦海浜公園 料金(税込):1日券 12,000円、2日通し券 21,000円、3日通し券 30,000円、臨時駐車場券 3,000円 一般発売:8月23日(土) ※未就学児、入場不可。12歳以下、保護者同伴かつ要チケット。 ※各出演者の日割りは5月21日12:00にオフィシャルサイトにて発表。

初音ミクはどう世界を変えたのか? 柴那典+円堂都司昭+宇野維正が徹底討論

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柴 那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)

【リアルサウンドより】  音楽ジャーナリストの柴那典氏による初の単著『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』が5月15日よりAmazon Kindle版も発売され、各方面で話題を呼んでいる。60年代に世界中で一大ムーブメントを築いた「サマー・オブ・ラブ」を軸に、初音ミクをポップミュージックの歴史に位置付けた本著は、初音ミクファンのみならず、音楽ファンにとっても興味深い内容だった。今回、リアルサウンドでは筆者である柴那典氏と、文芸・音楽評論家の円堂都司昭氏、音楽・映画ジャーナリストの宇野維正氏を招き、本著についてじっくりと語ってもらうとともに、初音ミクが音楽シーンに与えた影響や可能性について考察してもらった。

「ボカロカルチャーに10代特有の熱を感じた」(柴)

ーーまずは、柴さんが本を書くことになったきっかけから訊いてみたいと思います。 柴:僕が運営している「日々の音色とことば:」という個人ブログに初音ミクの話を書いたら、それを読んだ太田出版の林和弘さんから連絡があって、これで一冊書きましょうよと。書いた当初は本にしようという気は全然なかったけれど、ブログには単純にその時興味を持ったいろんなネタを載せておいて、それをきっかけにいろんな繋がりができたらな、とは思っていました。 宇野:ブログから始まったという意味でもネット的な本だよね。 円堂:僕も柴さんのブログは面白くて読んでいたし、本としてまとまるのをすごく楽しみにしていました。ただ、本の中でJPOPや洋楽についても触れられてはいるけれど、ここまで初音ミクに特化した内容になるとは思わなかった。こういう形は意外でしたね。 ーー円堂さんの著書『ソーシャル化する音楽』(2013年。青土社)でも初音ミクについて触れられていますが、取材をベースとした柴さんの著書とは異なる、文化批評的なアプローチですね。 円堂:僕は『ソーシャル化する音楽』を書く10年前に『YMOコンプレックス』(2003年。平凡社)という本を出しています。その時にビートルズのレコーディング風景にまで遡り、テクノロジーと音楽の関係を軸にした文化論を考えました。その本の進化版として、『ソーシャル化する音楽』を書きました。僕の場合は文芸・音楽評論家を名乗っていて、文芸評論的なアプローチというか、文献にあたることを軸とするスタイルです。また、本では音楽史を語ることもしていますが、それ以上に近年の音楽と周辺文化の関係性、たとえば音楽とインターネット、あるいはカラオケ、ゲーム、ケータイ・スマホなどとの関係性を、網目状に浮かび上がらせることに力点をおきました。 ーーそれに対して柴さんの本は、取材を通して事実を掘り起こしていくというスタイルで書かれている。 柴:初音ミクに関しては本にも書いている通り、僕自身がムーブメントに乗り遅れていて、ミクが誕生した2007年に居合わせていないんですよね。そういう意味で圧倒的な情報量の足りなさがあるので、執筆の際はクリプトン社の伊藤博之社長や、開発担当者の佐々木渉氏に証言を取りに行くというスタイルになりました。また、僕は2010年に入ってからボカロの音楽を聴いたり、クリエイターに話を聞いたりするようになったのですが、その時に初期の「みくみくにしてあげる」みたいな、いわばキャラクター文化的な初音ミクとは明らかに違う受け取り方をしている層がいることに気付いたんです。きっかけは米津玄師さんだったと思うんですけど、そこに10代特有の熱をーーいわば僕が00年代にロックバンドを通して感じていた熱と似たものを感じたんですね。今回、この本を書いた後に、まだ10代だった2008年からボカロを聴いていた女の子が「『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』って本があって『変えてねぇよ』って思っていたけど違った。私を変えてくれていた」って言っていたのが印象的で。それって主語は初音ミクだけど、それをロックミュージックに置き換えることもできるのかと。「ロックンロールは世界を変える」みたいな話って、実際、サンボマスターなどのロックミュージシャンもよくそういった発言をするわけで。その意味で同じ構造があったということも、この本で主張したかったところです。

「セカンド・サマー・オブ・ラブは極めて局地的なムーブメントだった」(宇野)

ーー今回の本では初音ミクを発端とするムーブメントを、1960年代末のサマー・オブ・ラブ、1980年代末のセカンド・サマー・オブ・ラブに続く、サード・サマー・ラブ・ラブと位置づけているところに特徴があります。 円堂:サマー・オブ・ラブに着眼して整理するというやり方は、面白かったと思う。いまだに最初のサマー・オブ・ラブの世代は頑張っていて、去年はローリング・ストーンズポール・マッカートニーが来日して、今年はポールが再来日だし。彼らの時代から現在までの音楽史を見渡そうとした時、サマー・オブ・ラブはわかりやすいとっかかりになる。 ——宇野さんはセカンド・サマー・オブ・ラブの現役世代ですが。 宇野:現役世代というか、ギリギリ間に合った世代。学生の頃、90年、91年、92年とかに毎年イギリスのクラブやフェスに行ったりして、現場の空気と、それがダメになっていく過程を一応は体感できた。郊外での非合法レイブとか、そういうのは当時ハードルが高すぎて行けなかったけど(笑)。そういう世代だから、柴くんから最初の案の「初音ミクとサード・サマー・オブ・ラブの時代」ってタイトルを聞いた時は、腑に落ちるところと、そうではないところがあった。ファースト・サマー・オブ・ラブはみんななんとなく知ってると思うけど、セカンドのあり方というのが世間的にはいまいち理解されていない気がするんですね。実際、この本で触れられている実証例も少ないと思う。実はセカンドって最初はイビサを経由してのUKドメスティックなもので、極めて局地的なものだったんですよね。レイヴカルチャー自体は、ベルギーとかドイツとかのテクノ系のレーベルとも連動してヨーロッパには広がってはいたけど、それでも当時は、電子音楽先進国といえるような国々にある程度限られていたムーブメントだった。 円堂:1960年代末のサマー・オブ・ラブは、当時のベトナム戦争への反対運動や学生運動などと地続きの現象でした。だから、その世界に浸っていない人でも、社会への反抗といったイメージで外からとらえやすかった。それに比べるとセカンド・サマー・オブ・ラブは、政治性、社会性の希薄な快楽主義で、踊らない人、ムーブメントの外にいる人にとってはいまひとつ、つかみどころがないものだったと思う。 宇野:で、改めて考えると、今のEDMって当時はダンスミュージックの後進国だったスウェーデンとかオランダとかのDJがその中心にいて。それがダンスミュージックの後進国中の後進国であるアメリカの全土にまで広がっていった。つまり、20年以上前にセカンド・サマー・オブ・ラブで蒔かれた種が、当時の子どもたちのDNAに刻まれて、それがこの時代に世界中で爆発しているのがEDM現象だっていう見方もできる。そういう意味で言うと、柴くんが初音ミクをサード・サマー・オブ・ラブと位置付けたとき、恐らく多くの人は「とはいっても日本での話でしょ」って違和感を感じたと思うんだけど、セカンドだって最初は局地的なものだったんだよっていう。それが20年以上経って、より大衆化、風俗化することによって現在の音楽界を覆っているという現状を考えると、もしかしたら20年後には台湾や韓国といった日本の周辺国によってボカロが主流化することだってあり得るかもしれない。そんな想像をかき立てるという点で、あのタイトルは個人的にすごく腑に落ちたんですよね。 ーーセカンド・サマー・オブ・ラブは、円堂さんが指摘したように政治性や社会性、いわばラブ&ピースといった理念性はあまりなくて、さらに言えばセックスやドラッグの快楽を追求するという面が大きかったのでは? 宇野:そう。そこが腑に落ちなかったところ(笑)。僕らが生まれる前のファーストだってそうだっただろうし、セカンドなんて当時の現在進行形のムーブメントでいうならその90%くらいがドラッグカルチャーで、音楽的な部分は10パーセントくらいだった。それゆえに、日本ではあまりリアリティを持って語られなかったんですよね。そう考えると、初音ミクをサードと位置づけたときに、ドラッグに相当するものはなんだろう、という疑問が湧きます。 柴:DOMMUNEの宇川直宏さんの見方を借りると、ファーストはドラッグを意識改革に使っていて、セカンドは快楽のために使っていた。で、ヒッピーカルチャーの中心的人物のひとりで、60年代にドラッグによる意識改革を研究したティモシー・リアリーという心理学者がいるのですが、彼は晩年になるとコンピューターをLSDに見立てて研究しているんですね。つまり、インターネットが意識や感覚を拡張したっていう見方ができる。 宇野:なるほど、そこには意識の改革もあるし、快楽もあると。そう考えると、一応筋は通ってくるね(笑)。 柴:ヒッピーカルチャーが、インターネットの誕生とリンクしていたことを発見したとき、サマー・オブ・ラブを軸とした見立てに確信めいたものを感じましたね。

「JPOPが高速化するのと並行して、グダグダを楽しむ文化も広まってる」(円堂)

ーー先ほど円堂さんは、ある時期における音楽と周辺文化の関係性を網目状に記述したと仰ってましたが、柴さんはいわば縦軸、歴史性の導入の方に興味があった。 柴:言ってしまえば、単純にロックとつなぎたかったんです。僕はロッキング・オン出身で、そのキャリアが活かせるブルーオーシャンは他にないと思いました。 ーー柴さんがつなぎたかった“ロック”という文化は、どういったものを指している? 柴:日本のロックシーン自体が、2003年にTHEEMICHELLEGUNELEPHANTが解散したあたりから、思春期的でエモーショナルなロック・バンドが主流に切り替わってきたように感じています。ロックには、いわゆるスタイリッシュなかっこよさ、遡って行くとそれこそザ・フーやローリング・ストーンズといった、ロック・レジェンドから脈々と続くバンドのかっこよさもある。しかし00年代以降の日本のロックは言ってみれば「中二病」的な部分も魅力になっているのかと。僕自身は、それをポジティブに捉えていて、そういう文脈でも初音ミクとつなぎたかったんですよね。 円堂:それはよくわかりますが、キャラクターではない楽器としての初音ミクについて、もう少し読ませてほしかったという感想も持ちました。僕の場合、『ソーシャル化する音楽』の中で、キャラクターとしてのミクに至るまでを追っていて、その後に関しては、あまり追求していなかった。その先は、柴さんがやってくれるだろうと思っていたので(笑)。あと、最近の音楽について、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』の「浮世絵化するJポップとボーカロイド」の章では、楽曲のBPMが高速化して密度が濃くなっている、という指摘をしていますが、それって単純に体力が続かないと思ったんですね。たとえば、ももいろクローバーZのライブなどを観ると、3曲くらい続けて歌い踊った後、ゼイゼイしてグダグダなMCが始まったりするじゃないですか。ファンは、そんなグダグダも愛している。だから、高速化する一方で、グダグダもセットになっているのではないかと。そんな議論もしてみたいですね。 宇野:PerfumeのMCが長いのも、ある意味同じですよね。特にワンマンになると異様に長い(笑)。 円堂:曲の間はテキパキ踊っていても、そうしないともたないわけだし。あんまり間をおかずガンガン演奏するバンドだったら、1時間ちょっとでおしまいとか。2時間も3時間も高速でノンストップなんてできないでしょうし。結局、JPOPが高速化するのと並行して、グダグダを楽しむ文化も広まってる気がします。 柴:ニコ動などはそういう文化ですしね。それはあるかもしれません。 宇野:日本のロックバンドのBPMが速くなったきっかけって、凛として時雨とか、9mm Parabellum Bulletとか、X JAPANマインドがDNAに刻まれている世代のバンドが台頭してからだから、もう随分経つよね。最近はダンスロック系のバンドにしても、そうじゃないバンドにしても、また違ったフェーズに入りつつあるようにも思うんだけど。 柴:それはあるかもしれない。僕は、今の20代のバンドって、90年代とかに比べて遥かに演奏能力が上がっていると思っていて。 宇野:上がっている、上がっている。みんな上手くてビックリする! 柴:sasakure.UKっていうボカロPがプロデュースする有形ランペイジっていう日本のバンドがいて、2011年に「人間では演奏不可能なボカロ曲を演奏する」っていうコンセプトでデビューしたんですよね。で、「千本桜」っていう曲などを演奏していたのですが、今となっては「千本桜」はけっこうみんな演奏するんですよ。高速化を多くのバンドが乗りこなしつつある。この演奏能力の向上には、僕なりに思い浮かぶ理由がある。初音ミクを好きな子ってゲームから入っているケースが多いんですよね。実は初音ミク最大のヒット作は『初音ミク-ProjectDIVA-』というリズムゲームのシリーズで、曲に合わせてタイミングよくボタンを押すというものなんです。こういった音楽リズムゲームはずっと定番で、90年代からあるものなんですけど、最近の若いミュージシャンはあのアーキテクチャに適応している人が多くなってるんじゃないかと。リズムゲームで良い点数を取るには、0.01秒とかの単位でタイミング良くボタンを押さなければいけないので、正確に細かくリズムを刻むことができる才能が育まれたのではないかと思うんです。

「ボカロには開発者側の前提を無視した冒険がもっとあってもいい」(円堂)

宇野:僕がわからないのは、YMO世代には電子音楽に対する強烈なフェティシズムがあったじゃない。彼らは電子音楽の歴史や、そのルールのようなものに強いプライドや排他性を持っていた。だけどボカロ世代のフェティシズムのあり方がいまいちわからない。自分は、音楽って結局のところフェティシズムだと思うんですよ。今でも、海外の若いバンドはそれを音圧に込めたり、音色のテクスチャーに込めたりするじゃない。なんかその音圧やテクスチャーが希薄な感じがしちゃうんだよね。 柴:たしかにボカロ界は複雑なところはあって、僕が本の中で評価したり紹介しているクリエイターって、基本的にはそれを使って自分の表現をしたいクリエイターで、あくまでボカロをツールとして使っている人たちなんですが、でも一方で、ニコニコ超会議とかにいくと、初音ミクと添い寝や握手をできるっていうコーナーに長蛇の列がある。フェティシズムはそこにあるんですね。つまり、いるかいないかわからない、2次元のものだけど自分がそこに愛情を注ぐことができるっていう。そこはもう音楽的なフェティシズムとは違うのだけど、そこがボカロカルチャーを初期から支えている要素には間違いない。だからそこにひとつのネジレがありますね。 宇野:自分がハマるかハマらないかは別として、そっちのフェティシズムの方にむしろ突破力を感じるな(笑)。 円堂:ボカロがキャラか楽器かって議論をした時に、楽器として使っていると言っても、結局は歌声として使っている。言葉を歌わせるソフトとして開発されたんだから、当然なんだけど。で、過去のことを考えると、僕がシンセサイザーという楽器を意識するようになったのは、逆説的ですが、クイーンがきっかけなんです。彼らの1970年代のアルバムは「ノー・シンセサイザー」を売りにするところがあった。そこでシンセっぽい音を出していたのは、ブライアン・メイのギターと、コーラスなんですよ。コーラスで一番高い声を出しているのはドラムのロジャー・テイラーなんだけど、金属的なキンキンした音色なのね。それでメンバーの声を多重録音して加工して、キーボードや効果音のように使った。声を楽器として使うというと、僕はそういう領域の表現を想像してしまう。初音ミクに関しては、実験的なことをやっている人はいても、やっぱり詞のある歌が主流。でも、開発者側の前提を無視した冒険がもっとあってもいいんじゃないか。登場した時には珍しかったメロディを歌わないヒップホップ、歌がなくて反復ばかりのハウスやテクノだって、大衆音楽になったんだから。 柴:たしかに実験的なことをやっているクリエイターもたくさんいるけれど、再生数は伸びていなくて、実際にフックアップされるのは、内面的な葛藤や物語を歌詞に託すタイプのクリエイターです。僕はポップスが好きなので、ランキング1位になるような人たちを取り上げていったのですが、結果として当時の思春期の人たちに刺さるような音楽性のものが多く、そういった意味で00年代のロックシーンと相似点があったのかもしれません。そういった論点も含めて、この本をきっかけにいろいろな人が初音ミクの可能性について議論を深めていければ嬉しいですね。 (取材・構成=編集部) ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter ■円堂都司昭 文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter
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