
セクシー女優でありながら、幅広く音楽活動も展開している並木優。
【リアルサウンドより】
オリコンチャートを席巻した恵比寿マスカッツや、名曲「夢花火」をリリースしたつぼみなど、10年代に入っていわゆる「セクシー女優」による音楽活動は認知度、そしてその質においても驚くべき進化を遂げている。
古くは1980年代に天才クリエイター中村D児氏による「We are the world」へのアンサーソングや、孤高のドキュメンタリスト平野勝之監督とのコラボで数々の傑作生み出した故・林由美香嬢のカセットシングル曲など、アダルト業界は黎明期より音楽への興味深いアプローチを重ねてきたが、そのほとんどは彼女達をシンガーとして起用した作品だった。
しかし、人気セクシー女優として活躍する並木優は、シンガーとしてだけではなく、自らDAW(音楽制作用のPCソフト)を駆使し、トラックメイクまで手がけている「DTMer」である。アダルトビデオの歴史30年近くを見渡しても、そんな女優は彼女の他に思い当たらない。
そこで今回は、日本最大のシンセサイザーメーカー(株)KORGのショールームにて、2014年より音楽活動を活発化させている彼女にインタビューを行った。
「なるべく人と関わらないで音楽がやりたかった」

KORGのショールームはいたく気に入ったようで「ここに住みたい!」とのこと。
——並木さんの音楽体験は何歳ぐらいから始まったのでしょうか。
並木:4~5歳ぐらいの時からピアノを習い始めたのが最初ですね。幼馴染が習って弾いているのを見たりして、ものすごく羨ましくて「ワタシもやるー!」って自分から親におねだりしました。やり始めるとおもしろいし、弾けるようになると褒められるのもうれしくて、どんどんハマりました。
——演奏するのが楽しいだけではなく、承認欲求も満たされたと。最初に買ったCDとかは覚えてますか?
並木:覚えてます! TVでやってたアニメで『ママレード・ボーイ』っていうのがあったんですが、そのオープニングテーマの「笑顔に会いたい」です。二枚目もアニメの曲で『魔法騎士レイアース』の「ゆずれない願い」という曲でした。
——ここに並木さんの「ココロのベスト10」を記した資料があるんですけど、『マクロスF』の「ダイアモンド・クレパス」や「星間飛行」など、アニソンが多いですね。昔からアニソンが好きでしたか?
並木:そうですね。ずっとアニソンが好きで、アニメ作品自体を観ていなくても好きな曲もあります。曲で興味を持ってアニメを観るようになることも多いですね。ネットでDJの方とかがアニソンのミックスをアップしているのも、片っ端から聴いて常にチェックしています。
ーーそんなに音楽好きなら、中高生時代にバンドを組んでみようと思ったことはなかったんですか。
並木:そうですね、組んでみたいとは思っていたんですけど、実はあまりコミュニケーション能力がなくて……。学生時代って女子同士の派閥があって、誘われるがままに「ファッション大好き!」みたいな、いかにも女の子らしいグループに所属していたんですけど、同時にアニメイトに毎日行ってるようなヲタ系グループにもこっそり所属していて。で、ヲタ系の子たちとアニソンの話をしてる時の方が楽しかったんですよね。明るくてイケイケのグループにいる時より。でバンドも密かにやりたいなぁ…とは思っても、実際は生身の人ととやりとりとか怖くてそんなことは全然できなかったですね。でも、そんな高校生だった時に初めてDTMに出会うんです。インターネットでたまたまフリーのソフトを見つけて、「へぇー、こういうのだと一人でもバンドみたいなことできるのかな?」みたいな感じで興味を持ちました。

ヘッドホンはAudio-Technicaで、特注でスワロフスキーをデコレーションしたもの。
ーーなるべく人と関わらない方向で音楽がやりたかったと。
並木:はい(笑)、それでその頃から作曲を始めるようになりました。最初はDTMじゃなくて、当時所有していたカセットテープに、自分の声で唄メロとピアノの伴奏を吹き込むみたいなスタイルで。
ーーますます音楽仲間を見つけるというより個人的な方向へ……。
並木:でもこれが始めるととにかく楽しいんですよ。「 あれ? 私の作るメロディーって案外良いかも」って(笑)。で、その少し後くらいからシンセサイザーも始めるんです。ピアノを習いに行ってたスクールの、シンセのコースがものすごく羨ましくて「わたしもピアノ以外の音を鳴らしてみたい!」って。
ーー幼い頃からの並木さんの「欲しがり癖」がまた(笑)。
並木:でオールインワン型のROLAND PHANTOM(ラッパーのKREVA氏もトラックメイクに愛用していたシンセ)を貰うんです。
ーーいきなり名機ですね!
並木:オールインワンなので、ドラムやベースの音源も入っているんですよね。そこからトラックメイクも始めました。
ーー念願の「バンド体験」が! 一人バンドですけど(笑)。
並木:(笑)で、ちょっと自信がついたりしてネットでバンドのメンバー募集サイトを見るようになったんですね。それでいくつか募集してる方々にアプローチして会ったりしたんですが、何故かその後連絡が無かったりして、結局バンド活動はできずじまいっていう……何が悪かったんでしょうね(笑)?
ーーコミュ力がまだ足りなかったのかもしれませんね(笑)。
並木:でもその後、今のお仕事を始めるようになって、お休みの時なんかにDTM熱が再燃しはじめて、DAWソフトのCUBASEを購入したんですよね。それで、だんだんのめりこむようになりました。
「アジア諸国ではセクシー女優のライブやイベントに対する需要が増えている」

タンテに針を落とす並木優。機材は名機と名高いスタントンのもの。
ーーその後、自ら作曲した『トキメキ☆インストール』をリリースや、セクシー女優による本格音楽レーベル『Milky Pop Generation』での活動に繋がっていくわけですね。さらにおもしろいのは、並木さんは最近DJとしての活動も活発です。
並木:そうですね。実はDJを開始したのには理由があって、去年ぐらいから台湾とかを含めてアジア各国から、色々なオファーがくるようになったんですよ。今、とにかくアジア諸国では日本のセクシー女優への関心が高くて、音楽イベントなどの需要も増えているみたいなんです。
ーーCOOL&SEXY JAPANの女神がやってきたー!的な?
並木:実際に現地のファンの皆さんに会いに行くと、熱量がすごいんですね。で、そういう方々が口々におっしゃるのは、セクシー女優としてだけではなく、並木優としての活動をもっといろいろやって欲しい、ということなんです。それはCDなどのリリースも含めてのことだと思うんですけど、パッケージされたコンテンツ以外にも、ライブやイベントを行ってほしいということみたいです。
ーーなるほど。今、日本のアイドルグループがさかんにアジア各国でイベントやライブをやっていますけど、その流れですかね。
並木:それで、とにかく「自分の好きなことをやっていい」と言われているので、それなら大好きな音楽でいろいろやってみようと。
ーー並木さんのクリエイター魂に火が!
並木:ビデオのお仕事ももちろん楽しいし、そこを洗練させていくのもやりがいがあるけれど、やっぱり求められる事の幅は限られてくるじゃないですか。自由度が低いというか。
ーー今のアダルト業界は、営業&制作含めて大勢の企画会議で内容を決めて、そこからいかにはみださないようにするか、という作り方になっている面はありますね。
並木:でも、アジア系のオファーだと自分で一から考えて活動できる。それがめんどくさいっていう人もいるかもしれませんが、わたしはすごく楽しいですね。今はDJで大好きなアニソンをかけまくっているんですけど、今後は自分の曲をフロアー向けにリミックスしてかけたいと思っています。
ーーああ、中田ヤスタカ氏みたいなトラックメイカーDJ的に?
並木:「クラブでの鳴り方」を意識して音作りをするのに、今はハマっている感じですね。

クラブに行くと「ずっとスピーカーの前にいる」という彼女。
ーーどうりで最近、並木さんのTweetにクラブミュージック制作に関するつぶやきが多いと思いました。セクシー女優さんのTweetで「サイドチェインコンプ」っていうフレーズ、初めて見ましたよ(笑)。クラブを意識するようになって制作のスタイルは変わりましたか?
並木:今までは唄メロから作曲することが多かったんですけど、DJをやるようになってからトラックから作る事が増えました。自分なりにミキシングとかも追求しています。
ーーそんなセクシー女優さん、世界中見渡しても並木さんだけですよ! でも並木さんが作ったそういうフロアー向けのトラックって、アジアのクラブでしか聴けないわけですよね。Sound Cloudとかでアップしないんですか?
並木:あっそうか! 実は、VOCALOIDを使ったボカロ曲もいっぱい作っているんですよ。
ーー完全にボカロP状態じゃないですか! それサンクラも含めてニコ動とかになんでアップしないんですか
並木:(マネージャーを見て)やってもいいですかね?
マネージャー:おまかせします(笑)。
ーー是非やってください! それ聴きたい人いっぱいいると思います。では最後に、今後の音楽活動についてはどんな方向性を目指していますか。
並木:実はわたし、音楽に関しては裏方的な立ち位置が一番楽しいんです。歌うことに関してはコンプレックスがあって。
ーーえ!? ボーカリストとしての並木さんも最高じゃないですか?
並木:もともと地声が低いので高音がなかなか出ないんですよね。中高校生の頃は浜崎あゆみさんが全盛期だったんですが、キーが高すぎて歌えなかった。だからこそというか、自分が作る曲は音域をあえて広くして、ファルセットで歌うようなハイトーンを含んだメロディを作ってしまうんです。ファルセットで頑張って高いキーを使うというか。高音が出る人がうらやましくて。ほしのあすかサンに提供させてもらった「カシオペア」でも自分の曲でもその理想に近づこうとすると自然にそういうメロディーになるんですよね、コンプレックスの裏返しで。
ーーリベンジ的な意味合いでのあのメロディーだと(笑)。
並木:あぁ……確かに! 今でも初音ミクちゃんみたいな声になりたいって、日々思っています(笑)。でも、そうはなれないので、ボカロとかで曲を作るのが楽しいんですよね。音楽に関しては自分の理想があって、そこへたどり着くにはどうすれば良いのかを考えるのが好きだし、その作業をしてるのは楽しいんです。いつも音楽のおかげで頑張れるっていう感覚がありますね。

昨年DAFT PUNKが Random Access Memoriesでオマージュを捧げた70〜80年代のヴィンテージディスコ期の名曲に「Last Night a D.J. Saved My Life」という楽曲がある。音楽はもちろん一瞬の享楽を与えてくれて自分自身を忘れさせてくれる「娯楽」でもあるが、同時にその音と言葉で聴く者を「救って」くれるものでもある。
ビデオ作品上での「セクシーでイケてるお姉様」といったキャラクターとは全く異なり、慎重に言葉を選びながら、音楽に対しての深い愛情を語ってくれた彼女。その姿はミューズとエロスがクロスオーバーした、新しいセクシー女優のあり方を体現しているように思えてならない。
(取材・写真・文=ターボ向後)
『並木優のヒミツ日記』
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