パスピエはなぜ変化し続けるのか? 成田「既存のものにプラスアルファの違和感を乗せていきたい」

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【リアルサウンドより】  6月18日にセカンドフルアルバム『幕の内ISM』をリリースする若手ポップロックバンド・パスピエ。昨年リリースした『演出家出演』が若いリスナーを中心に高い評価を獲得し、一気に頭角を現したバンドだ。さらに今夏に全世界で同時公開される映画『APPLESEED ALPHA』の挿入歌として「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」の英語バージョンが抜擢されるなど、世界的なブレイクも視野に入っており、若手バンドのなかでも今一番勢いがあるという声も少なくない。今回リアルサウンドでは、バンドの中心人物であり、作曲を手掛けているキーボードの成田ハネダと、パスピエの特徴の一つであるアートワークや歌詞を手がけるボーカルの大胡田なつきにインタビューを実施。前編では2人の視点から見た現代のライブシーンや、バンドを取り巻く環境、そして彼らの今後を見据えた戦略について大いに語ってもらった。

「色んな人を常にいい意味で“裏切りたい”」(成田)

――昨年は『演出家出演』のリリースとワンマンツアーの成功があり、大きく飛躍した1年だと思います。今作『幕の内ISM』はテンポの速い楽曲もありつつ、しっとり聴かせる楽曲があり、パスピエの全体像がはっきりと見えるバラエティに富んだアルバムになっています。現在のシーンではライブに力を入れるバンドが多いなかで、パスピエは音源にも力を入れている印象ですが、ご自身ではバンドの立ち位置をどう捉えていますか? 大胡田:そうですね……どっちとも言いづらいところがありますけど。同世代のライブ寄りなバンドのなかで、カルチャー寄りバンドなのではないかなと思ってます。 ――前作はそのカルチャー寄りの立場から、意図的にバンドシーンにぶつけるアルバムを作ったわけですよね? 客層も大きく変わりましたし。 成田:自分たちの物差しとして、ライブに来てくれるお客さんを直で見ることでしか測れないのですが、そこに来てくれる人たちの層は大きく変わった気はしますね。意図的に肉体的なアルバムを作ったことに関しては…音楽って様々なものがあって自由でいいはずなんですけど、バンドっていう括りで出ていくときに、「そういう限られた場所で戦っていかないといけないんだな」って感じていて。「だったらそのシーンに対抗出来る音楽をやらないと」と思ったんですよね。 ――近年だとそのシーンから“抜け出す”という表現も多くなってきていますね。 成田:僕の場合は、シーンに入るどうこうよりも、流れの中で作ったという感じですね。これまでのアルバムとしてライブに向けたものであったり、音楽の密度に向けたアルバムがあって、今回は自分たちが持っているものを多く見せることができるバランスの良いアルバムとして、『幕の内ISM』が完成しました。お客さんから見て、第一印象が大事だというのも分かるし、そのためにフックの強い曲が重要だっていうのも理解できるんですけど、対人関係にも例えられるように、その時々によって会った相手の印象って変わるじゃないですか。僕はバンドとしてそうあった方が楽しいなって思うんです。だから、自分の方でスイッチを変えるということよりも、自分たちが「ライブに向けて音楽を作りたい」という欲求だったからそう作った。今回はこういう欲求だったから『幕の内ISM』が出来たっていう、流れの中のことではあるんですけどね。 ――その流れの中で今後こうなっていきたいという理想などはあるのでしょうか? 大胡田:音楽だけではなく、私が絵を描いているからというのもあるのかもしれないですけど、絵とか映像とか、いろんな面から見てもらえるようなバンドになりたいかもしれないです。カルチャーの内の一つとして「パスピエ」というジャンルがあるみたいな。 成田:僕は自由にやったことがこれからも認めてもらえればいいなって。今までも自由に作っていて、結果的にこうして少しずつお客さんが増えたり、知ってくれる人が増えたりしているので。  あと、色んな人を常にいい意味で“裏切りたい”って考えていて。今って何でもカテゴライズされやすい状況だと思うんですが、僕はそれが決して悪いことじゃないと考えています。情報がありすぎるが故に、カテゴライズしないと吸収できないんじゃないかと思うので。パスピエがこれまでやってきたことって、何かにカテゴライズされたときに「じゃあその逆を行こう」っていうスタンスでいつも進んできたんです。『ONOMIMONO』の段階で「こういう知的なバンドなのかな」と見て頂いた方が多かったので、「じゃあフィジカルの方に向けてみよう」と思って『演出家出演』を作ったりとか。そうするとライブもだんだんフィジカルなお客さんが増えてきたので、「じゃあまた改めて知的に見せてみようか」と、常に逆に展開しているんです。  物をカテゴライズするのは、情報を吸収するうえですごく有効な手段だと思うんですけど、同時にやっぱり先入観も植え付けてしまうものだと感じるので。それはやっぱり、自分たちが音楽を発信し続けていく上で、どんどん出口が狭くなってしまうことですから…。5年後、10年後にも自由にやっていく布石を打っているというか。そういう風にやっていくのが音楽をする上で一番健康的かなという意識で活動しています。 ――自由とはいえ、前作の逆を行くという制約を付けたことで苦労したことはありますか? 成田:微調整というか、「ここはこうだったらな~」という風にブラッシュアップしたことはありますけど、作るのが苦しかったらやってないと思うんですよね(笑)。でも、歌入れをしていて大胡田のボーカルが映えなかったり、「パスピエらしくないな」と思ったらバッサリ切り捨てていきますね。 ――多面的な中にもある程度の基準があるわけですね。ではお二人が「これはパスピエらしくない」と思う瞬間を教えてください。 成田:僕の場合は、メンバーが演奏している画が見えないときですかね。過去にカバーさせてもらってる楽曲も含めて「パスピエのやってる音楽」と想像できるか否かが基準です。 大胡田:私は…よくわかんないなあ(笑)。5人で何かしていればすべてパスピエだとゆるーく思っているので。 ――逆に成田さんは「パスピエらしさ」って何だと思われますか? 成田:「既存の持っているイメージに付加価値として違和感が付いたもの」がパスピエかなと。僕らが作っている音楽や絵って、全く見たことがない景色ではないと思っているんですよ。みんな、何かしらからインスパイアを受けたものを出しているわけだし。これまで見たり聞いたりした要素ですけど、僕らがやることによって、既存のものにプラスアルファの違和感が乗っているという感覚がパスピエなのではないかと思います。 ――違和感といえば、昨年からライブでの共演相手が大胡田さんの言う「カルチャー寄り」ではないバンドになっていることが増えてると思うんですが、そのライブパフォーマンスに影響を受けて、パスピエのライブで変化したことなどはありますか? 成田:少しずつ「このバンドのこういう部分は出来るかもね」っていうのは、話が上がったらやってみようと思うんですけど…。ただ、やっぱりそのアクションはそのバンドがパフォーマンスしてるからカッコいいというのはあるので。でも、色んなバンドマンと話して感じたのは、あくまでも「このバンドのライブの感じってこうだよな」っていうのは、リスナー側が思っていることなのだと。お客さんに対して「こういうアクションをしてほしい」という意味ではなく、演者側が見ようとしている景色って、どういうジャンルでも意外とみんな一緒なのかなと感じました。それをお客さんが「こういうバンドだ」って認識付けをして自分なりの楽しみ方をするのが健全なのかもしれないですね。

「みんな、ニュースを出し続けたり、音楽を演奏するだけではない工夫をしている」(大胡田)

――ワンマンツアーを行って、多くのファンから反応があったと思うのですが、その反応は、お二人にとって予想の範疇内でしたか? 成田:僕はステージの上から見ていて壮観でしたね。多くの人が見てくれればくれるほど、その人の数だけ感情があると思うんですよ。それがちゃんとエネルギーになってステージに返ってきている構図というか。それを見ていて期待以上のものがあったと感じました。 大胡田:私は、こういう関係性っていうのがあるんだなと思って。人と人、私と彼ら(観客)みたいな。お友達でも家族でも親戚でもないんですけど、パスピエっていう音楽で確かにつながっているって感じて……嬉しかったですね。みんながこっちを見て、歌ってくれてて。昔DVDで色んなアーティストのライブを見ていて「一緒に歌ってもらうのとかいいな!」って思っていたので(笑)。 ――今のライブシーンは、観客とアーティストの繋がりを重視しているような感じですよね。 成田:リスナー・お客さんの発信欲求が高いなって感じていて。例えば僕らが出した音楽に対して「こういうアクションを起こしたい」っていうのが伝わってくる。僕らは、お客さんが曲に合わせてハンドクラップをしてくれていて、そこに対して煽ることはあるんですけど、こっちから「ここはハンドクラップをやろうぜ!」っていう提示は一切してなくて。でも、お客さん一人一人の中で答えを出してアクションになっているというか。そこに凄くエネルギーがあるなって感じていて。「自分も一緒にライブを作っている感覚」があるのかなって考えています。ただ、発信源となっているのは僕らなので、もっと色々なアクションを起こさせる音楽をこれからしていこうかなって。今回の『幕の内ISM』にもそういう仕掛けは取り入れているつもりです。 ――極端に言えば、前作からパスピエを知ったリスナーが、初めて聴いてどうリアクションを取っていいかわからないような? 成田:そうですね。例えば1曲目の「YES/NO」とか。四つ打ちなんですけどサビでテンポをガッと落としたりしているので。僕らもリスナーや来てくれるお客さんの反応を見て、次の作品への欲求に繋がったりしているので、今回こういう提示をして、見せてくれた反応が次のことにもつながっていくと思っています。ほんと、日本のお客さんの知能指数ってすごく高いと思うんですよね。だからこそ変拍子のバンドにも余裕で付いてくるし。  そこに対して、お客さんが今まで感じたことのないような音楽や体験を、僕らや他のバンドが見せていけたら面白いのかなと思うんですけど。ただ、スタンスとしては乗っかってしまうのはいけないなと。自分たちのやりたいことが見つかって、そこに定住してしまうのが一番怖いなと思うので、常に新鮮さを求めていきたいなというのはありますね。 ――では、「スタンスとして乗っかってはいけない」と成田さんが考える現在のシーンは? 成田:僕は音楽に限らず、ここ5年くらいは「言ったもの勝ち感」があると思うんですよね。なんか結局それが認められれば正解というか、勝ったもの勝ちというか。情報を受ける側の人たちも発信欲求が強いし、発信をしたうえで同じ目的を持つ人同士で固まるイメージを僕は持っていて。物事を細分化して、大きくなっていったものが正解みたいな。  フェスとかもまさにそうだと思っているんですけど、主催のイベンターやバンドが、「こういうバンドと共演したい」と考えて規模を大きくしていく場合もあれば、規模を拡大せずに、同じコミュニティでずっとやっていく場合もあるので。だから、何を音楽で投下したとしても、驚きにならないのかもしれないなって今のシーンに関しては思いますね。  変な話、ノイズミュージックを主体とした若手バンドがメインのシーンに出てきたとしても、ジャンルだけで引き寄せられることはないと思うんですよ。「何々と何々が融合した音楽」とかも同じように。リスナーは自分のコミュニティの中に引っかかるものであれば聴こうとするし、そうじゃなかったら反応しないのかなと。かつ、その人にとって「好きで聴いている音楽」と「ライブ」っていう観点のコミュニティがそれぞれ別にあると思っているんです。「CDは聴かなくてもフェスでよく見るし好き」っていう人は多いでしょうし…。その中において、最初にそのコミュニティの中で発信したものや、規模が拡大していって勝ったものが「正解」の指標になりつつある気がするので、そういった意味でも言ったもの勝ちかなと。 ――パスピエとしてはその中で、「自分たちのコミュニティ」を作って勝っていきたい? それとも多面性を見せながら、色んなコミュニティにアプローチを仕掛けていきたい? 成田:その両方かもしれません。音楽をやっている以上は色んな人と繋がってみたいというのはあるので、パスピエらしさは保ちつつ、それこそライブシーンに向けてアクションを取ってみたり、今回のアルバムを作ってみたりするわけです。でも、パスピエのことを好きでいてくれる人は絶対裏切らないような作品やライブにするつもりです。 大胡田:私は、みんな工夫して常に進んでいるなって思いますね。今、フェスもたくさんあるし、「この人もこの人もいいな」ってなるわけじゃないですか。だから、飽きられないために、というかずっと好きでいてもらうために、歌うだけではなくて、「色々なことをしますよ」ってニュースを出し続けるとか。音楽を演奏するだけではない工夫をしているのかなって。「一歩踏み出したら、ずっと進んで行かなきゃいけないんだな」って思っています。 (後編に続く) (取材・文=中村拓海)
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パスピエ『幕の内ISM』(ワーナーミュージック・ジャパン)

■リリース情報 『幕の内ISM』 発売:2014年6月18日(水) 価格:初回限定盤(CD+DVD) ¥2,778(本体)+税    通常盤(CDのみ) ¥2,300(本体)+税 ※初回限定盤は特殊パッケージ仕様 <収録内容> 幕の内盤(DISC1) 01. YES/NO 02. トーキョーシティ・アンダーグラウンド 03. 七色の少年 04. あの青と青と青 05. ノルマンディー 06. 世紀末ガール 07. とおりゃんせ 08. MATATABISTEP 09. アジアン 10. 誰? 11. わすれもの 12. 瞑想 幕の外盤(DISC2)※初回限定盤特典 DVD 『パスピエ TOUR 2013 ”印象・日の出外伝”at AKASAKA BLITZ (2013.12.21)』 1. OPENING ~ S.S 2. デモクラシークレット 3. トロイメライ 4. 名前のない鳥 5. とおりゃんせ 6. フィーバー

高い歌唱力を誇るカリスマグラドル 篠崎愛のソロ歌手活動を夢想する

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AeLL.『4/4 YON BUN NO YON DVD付き限定盤 [CD+DVD, Limited Edition]』(shiningwill)

【リアルサウンドより】  篠崎愛(22)は、グループアイドルブーム全盛の中、数少ない雑誌の表紙を飾れるグラドルの1人だ。確固たるポジションを築き上げており、彼女がブレイクして以降、巨乳でややポチャ体型の新人グラドルのほとんどには「ポスト篠崎愛」なるコピーが付されて来た。が、いまだ誰1人として彼女を超えるものも並ぶものも現れていない。深田恭子似といわれるキュートな顔立ちと、Gカップ87cmの特大バスト、ギリギリ「グラマラス」側に寄っているムチムチなボディ…そのどれもが絶妙な組み合わせとバランスで、他の追随を許さない、いかんともしがたい魅力を放っている。  篠崎はアイドルグループ・AeLL.のメンバーでもある。先日、グループとしては今年9月に活動休止しソロ活動にそれぞれが専念することが発表されたが、篠崎自身はグループ結成以前にソロ歌手としてデビュー済みだ。バラエティ番組などでも発揮されている通り、その歌唱力は折り紙つき。「歌の上手いグラドル」というキャラクターが世間的にも浸透しつつある。

ジュニアアイドルとしてデビュー、制コレ準グランプリ獲得

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『YOUR Ai’s ONLY [DVD]』(shiningwill)

 彼女のデビューは2006年、14歳の中学3年生の時だった。7月には1st写真集『START DUSH!!』(彩文館出版)を、8月には1stイメージDVD『篠崎愛』(同)をリリースしている。その後は中学生限定グラビア誌『Chu→Boh』などで水着系のジュニアアイドルとして活動を続け、07年6月には集英社のアイドルオーディション企画『週刊ヤングジャンプ』の『制コレGP』にて準グランプリを獲得。いわゆる「ロリ巨乳」の筆頭の立場で、グラドルとしての実績を重ねて来た。  しかし、前述の1stDVDの発売記念イベントでアカペラで歌を披露したりと、「歌」に対する気持ちは常に持っていたようだった(※ちなみに余談だが、このDVDにBGMとして収録されている歌ものの曲のデキが良いと、アイドル楽曲好きの間で話題となったことがある。おそらく篠崎による歌唱ではないが)。

イメージDVDにソロ曲を収録、AeLL.の活動休止

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『DVD 篠崎愛1st DVD 』(彩文館出版)

 そして08年3月には、ついにプリンセスプリンセスのカバー曲『M』(c/wはJUDY AND MARY『ドキドキ』のカバー)でソロデビュー。結局CDはこのシングル1枚しかリリースされなかったものの、ファンの間での歌唱力の評価は依然高く、09年11月発売のイメージDVD『約束 ~北海道遠距離恋愛~』(イーネット・フロンティア)にはバラード調のソロ曲『その日まで』が収録されている。  引き続きグラドルとしての知名度を上げつつ、11年1月には4人組アイドルグループ・AeLL.としての活動を開始。マラソン、開墾、登山と謎の活動をしつつも、地道にライブアイドルとしての実力をつけて来た。楽曲、パフォ-マンスともに決して低くはない評価を受けていただけに、今回の活動休止は残念でならない。

AeLL. 2ndアルバム「YON BUN NO YON 」PR YOUTUBE

 とはいえ、グラドル・篠崎愛の人気は依然高い。これはあくまで推測だが、グループの活動が休止した後は、おそらくソロでの歌手活動を行うのではないだろうか。オリジナリティ溢れる恵まれたルックスに、高い歌唱力。それらを武器に、歌うアイドルといえばグループアイドルである今の時代に、篠崎愛がソロ歌手として立ち向かって行く…そんな未来を勝手に妄想している。あと彼女が何かを食べてる画像を見てるととても和むので、何か食べてるだけのイメージビデオを作って欲しい。 ■篠崎愛(しのざき・あい) 1992年2月26日、東京都生まれ。2006年、中2の時にジュニアアイドルとしてデビュー。2011年よりアイドルユニット・AeLL.のメンバーとしても活動開始。現在までに40本近いイメージDVDをリリースしている。シャイニングウィル所属。 オフィシャルブログ ■岡島紳士(おかじま・しんし)(@ok_jm) 1980年生まれ。アイドル専門ライター。著書、共著に『グループアイドル進化論』、『AKB48最強考察』、『アイドル10年史』『アイドル楽曲ディスクガイド』など。埼玉県主催「メディア/アイドルミュージアム」のアドバイザーと、会期中に行われた全9回の番組&イベントMCを担当。DVDマガジン『IDOL NEWSING vol.1』を手掛けている。 オフィシャルサイト

アヴィーチー、サム・スミス、ケツメイシ……サッカー日本代表が聴いている音楽は?

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アヴィーチー『トゥルー(初回限定盤)』(ユニバーサル ミュージック)

【リアルサウンドより】  4年に一度のサッカーの祭典、『2014 FIFAワールドカップ』がいよいよ開幕し、関連ニュースも連日報じられている。大会への注目度もここまで高まると、選手たちのプレイそのものはもちろんのこと、プライベートや人柄までも知りたくなってくるのが人の性というもの。とりわけ音楽ファンならば、日本代表たちがどんな音楽を聴いているかは気になるところだろう。  6月9日(月)から始まったTOKYO FMのスペシャル企画「サッカー日本代表のCheer up SONGS」(http://www.tfm.co.jp/blog/info/index.php?itemid=81110)では、選手16人に取材し、「試合前に聴く曲」や「心の支えとしている曲」をオンエアしている。曲のリストを見ると、それぞれの個性が垣間見える選曲でなかなかに楽しい。  例えば、プレミアリーグ・サウサンプトンFC所属の吉田麻也選手。いつぞやは仲良しの内田篤人選手とイヤホンをわけあって音楽を聴く姿も話題になった彼が挙げたのは、アヴィーチーの「Wake Me Up」だ。クラブシーンを席巻しているEDM界の人気者を挙げるあたり、流行に敏感な性格が伺える。それもそのはず、吉田選手は、自らを“DJ吉田”と呼ぶほど音楽には並々ならぬこだわりがあり、試合前にスタジアムへ向かう時の曲、トレーニング中の曲とそれぞれ気分に合わせて選曲をしているそう。ある番組では好きなアーティストに、テイラー・スウィフト、中島美嘉、マルーン5に、まさかのボカロP・亜沙を挙げるなど、そのジャンルは驚くほど幅広い。彼曰く音楽は「試合で勝つための必須アイテム」。代表選手の中でも随一の音楽ファンと言えるだろう。

Avicii『Wake Me Up』

 続いて日本代表の守護神・川島永嗣選手。選手たちを叱咤する厳しい顔がおなじみの彼は、サム・スミスの「Money on my mind」を挙げている。ピッチでの彼の姿と、イギリスの気鋭シンガーソングライターが紡いだ切な系ダンスミュージックの組み合わせを少々意外に思う人も多いのではないだろうか。しかし、ゴールキーパーというポジションはいつ何時も戦況を見極める冷静さがあってこそ。試合前に心を落ち着かせる音楽という意味でこの楽曲はぴったりかもしれない。かつては自身のブログで就寝前に坂本龍一を聴くとも綴っていた川島選手。7ヶ国語をマスターするという努力家でもある彼の繊細な一面が垣間見える選曲である。

Sam Smith『Money on my mind』

 巧みなテクニックで知られる日本代表のゲームメーカー、遠藤保仁選手はケツメイシの「仲間」をチョイス。とはいうものの、「音楽は好きなので、色々なものをDLして沢山持っていきたい。J-POPもK-POPも洋楽も好き」とコメントしており、ミッドフィルダーらしい幅広いカバー力を感じさせている。ミュージシャンの知り合いも多く、以前番組で対談した森山直太朗やナオト・インティライミらと親交があるそう。W杯最多出場試合を誇り、多くのプレイヤーと仕事をしてきた男は、こと音楽においてもさまざまな出会いをマイペースに楽しんでいるようだ。

ケツメイシ『仲間』

 また、遠藤選手に限らず、日本代表の中でケツメイシは人気が高く、ほかに森重真人、岡崎慎司もその名を挙げている。ケツメイシのメンバーらも「ケツメイシFC」なるフットサルチームを作るくらい根っからのサッカー好きとあって、両者は相思相愛の関係とも言える。日本代表のサポーティングカンパニーを務めるみずほFGや、サッカークラブ育成ゲーム『バーコードフットボーラー』のCMソングにも起用されているため、”サッカーにまつわる曲=ケツメイシ”の構図は、選手たちの間にも浸透しているようだ。  世界の大舞台に挑む日本代表たちを支える音楽。彼らが素晴らしい活躍を見せてくれることに期待しながら、これらの音楽に耳を傾けてみるのはいかがだろう。 (文=板橋不死子)

キスマイ宮田、結婚式直前で花嫁にセクハラ!? 無粋なキスシーンに一般女性ドン引き

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体当たり企画でブレイク中のKis-My-Ft2。

【リアルサウンドより】  Kis-My-Ft2の冠番組『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ)の6月12日放送回に、鈴木奈々がゲスト出演。メンバーがそれぞれ「結婚式直前に新婦をキュンとさせる誓いの言葉」を披露した。  同番組は、Kis-My-Ft2のメンバーが“自分のカッコ良さが最も出る瞬間”をテーマに、各メンバーが本気で“かっこいい”と思うシーンを考え、自らが主演した映像を制作。そのセルフプロデュースした映像を、キスマイのことをよく知らない女性100人に審査してもらい、1位(=チョーカッコイイ)から7位(=BUSAIKU)まで順位付けされるという、ジャニーズらしからぬ体当たりな企画が売りだ。  今回は、今年1月に結婚した鈴木奈々がこれから式を挙げるということで、結婚式直前に新婦と二人きりのシチュエーションで、彼女に対しいかにカッコ良い言葉をかけるかを競い合った。  まず最初に映像が発表されたのは、第3位にランクインした北山宏光。北山は、新婦役のマイコの花嫁姿に「似合っているね」と自然に声をかけた後、緊張をほぐすために二人で背中を叩きあう。その後「これからどんなことがあっても二人で乗り越えていこう。マイコのその笑顔、ずっと守るから。俺、今すごい幸せです」と語ると、一般女性からは「『自分の幸せ』がステキ」「友達みたいな夫婦になれそう」「笑顔でヴァージンロード歩けそう」といった声が並んだ。  続いて第2位には、普段は下位を争っている二階堂高嗣がランクイン。二階堂は「マイコが選んだヤツがかわいいね」と、そのセンスを褒めた後、素直に「不安? 俺も不安」と、心情を共有する。そして「これから俺たち二人が幸せになりすぎるのが不安」と、実は惚気だったことを明かすと、一般女性からは「そっちかぁ」「キャーーー」と黄色いテロップが流れる。「付き合ってきて喧嘩とかもあったけど、今までも二人だったら乗り越えてきたし、これから先も何があっても乗り越えていけると思う。俺はもちろんこれから先もマイコを幸せにし続ける。絶対後悔させない」との決め台詞には、会場の鈴木からも「はじめてカッコイイと思いました!」と絶賛だった。  4位には、横尾渉がランクイン。横尾は新婦の姿を見るなり「マイコ、めっちゃきれい! 本当お姫様みたい」と大げさに言うが、テロップには早くも「ウソくさい!」との指摘が。「いつもいつも支えてもらって本当に感謝している。これからは俺がマイコの夫として支えて、いっぱいいっぱい愛も与えて、素敵な家庭を築きたいと思う」との台詞にも、「カタコト?」「ちょっと頼りない」「緊張しすぎだろ」と、不自然な口調に対するダメ出しが並んだ。  5位は玉森裕太。玉森は「これからは夫婦としていろんな壁にぶつかったりもすると思うけど、今まで通り二人で乗り越えて、マイコと幸せな家庭を築けていけたらいいなと思う」と声をかけるが「ありきたりな言葉」「うすっぺらい」との言葉が並ぶ。そして最後に半笑いで「離婚しないように頑張ろうね」と言い放つと「禁句でしょ」「縁起でもない」「このタイミングでいう?」と非難される結果となった。  第6位では、千賀健永が登場。千賀は冒頭、「マイコ、すごい奇麗だね」と言い、「不安? でもその不安を二人で乗り越えていくのが結婚だから」と続けるが、ポケットに手を突っ込んだまま話す姿に「態度悪すぎ」との指摘が。またその態度のままで「一生ついてきて下さい」との決め台詞には「無理!」「不安が倍増した」「不安な未来しか見えなくなった」と、辛辣な言葉が並んだ。  最下位の7位は、いつものように宮田俊哉がランクイン。宮田は「どうしたの? 緊張している」と新婦に声をかけ、その手を握ると「本当だ、震えている」と続ける。すると新婦は「トシくんだって震えているじゃん」と、宮田自身が設定したあだ名で返答する。その設定にスタジオからは「キモい!」などの罵声が飛ぶ。そして「この扉を越えたら夫婦になるってことじゃん。でも今はまだ……」といって、いきなり接吻をする宮田。この常識はずれな振る舞いには「ここでキスはない」「色々乱れるからさわらないで!」「式場の人見てるから」と、当然ながら非難の声が集中する。「これから先は夫婦ということで、じゃまた!」との台詞にも「完全に自己満足」「あなたとの最後のキスにしたい」「さようならトシくん」と、すべてを否定する声しかなかった。  見事1位となったのは、前回に続き藤ヶ谷太輔。藤ヶ谷はさわやかな笑顔とともに「こうして今、マイコと一緒にいられることが幸せなんだ」と語り、「俺はどんなマイコのそばにでもいるから安心してほしい。(中略)マイコとだったら大丈夫だなって信じられるんだよね。改めて俺についてきて欲しい」と決め台詞を言う。その流れるような言い回しに、「ステキな台詞のシャワー」「愛されている感ハンパない」「あなたに一生ささげます」と、絶賛の声が並んだ。  キスマイが体当たりの企画に挑戦することにより、女性ファンが萌えるだけではなく、男性にとっても学びの多い内容となっている同番組。次回はSMAPの中居正広がスタジオに登場、波乱の展開となる予定だ。 (文=編集部)

カラオケ上半期ランキング2位 ボカロ発「千本桜」がスタンダードになった理由とは?

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初音ミク、他-『1周年記念アルバム ALL THAT 千本桜! !』(dmARTS)

【リアルサウンドより】  JOYSOUNDのカラオケランキング『2014年JOYSOUND上半期ランキング カラオケ総合ランキング部門』で、WhiteFlame feat.初音ミクの「千本桜」が2位にランクインした。  激情的なピアノのメロディと疾走感のあるサウンドが特徴である同楽曲は、黒うさPの手により2011年9月17日にアップロードされると、瞬く間に再生数が上昇。2014年6月12日現在で7,715,807回再生を記録し、ボーカロイドシーンを代表する楽曲の一つとして支持を受けている。2013年には音楽ミュージカル『千本桜』にAKB48の石田晴香、市川美織が出演して、同曲を歌唱。自動車メーカーのTOYOTAは『AQUA』のCMソングとして、ピアニストのまらしぃが演奏する同曲を起用した。さらに、2013年末の『ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE』では、小林幸子が同曲を演歌風にアレンジしてカバーするなど、様々なユーザー・シーンに浸透しつつあることが伺える。  なぜ「千本桜」はこれほど人気になったのか。音楽ライターの柴那典氏は、同曲があらゆるシーンに普及していることについて次のように語る。 「『千本桜』という曲は、ボーカロイドシーンから生まれたものですが、今や“ネット発”という枠組みに収まらない楽曲になっています。同ランキングのTOP10には、他にボカロ曲は無いですし、『VOCALOID』カテゴリの2位・3位には、れるりり feat.初音ミク、GUMIの『脳漿炸裂ガール』、164 feat.GUMIの『天ノ弱』という曲がランクインしているのですが、この2曲は『千本桜』に比べてそれほど外に向かって広がっているわけではありません。『千本桜』は、公開から3年をかけて一人歩きして広がった稀有な例ですね」  このように「千本桜」が際立った広まりを見せた背景には、二次創作・三次創作を楽しむ文化があるという。 「ボーカロイドシーンにおいてN次創作は一般的ですが、まらしぃや和楽器バンド、小林幸子がカバーしていることなどからも分かるように、この曲には『歌ってみた』『演奏してみた』といった、プロによる創作の派生が非常に多いんです。商業的な展開も多い。曲が公開されたのは3年前ですが、昨年だけでも小説化やミュージカル化がされるなどしており、現在になっても徐々にファンを増やしつつある要因となっているようです」  さらに、楽曲面でも多くの日本人に親しみやすい特徴があると同氏は続ける。 「『千本桜』のメロディには演歌に近いものを感じます。マイナーペンタトニックスケールのメロディを効果的に活用し、聴き手に和のテイストを感じさせる楽曲に仕上がっているんですね。そのうえアップテンポかつキャッチーで覚えやすいので、多くの日本人にとって親しみを感じやすいのではないでしょうか。小林幸子や和楽器バンドによるカバーがハマっていると感じられるのもそこが大きいですね」  シーンの垣根を越えて様々なリスナーの間でブレイクしている「千本桜」。今後、同曲が文化としてどのような広がりを見せるのか、楽しみにしたい。 (文=編集部)

『HARE NOVA Vol.02』ライブレポート 「音楽の新しい時代を作るのはやっぱり人間」

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【リアルサウンドより】  会社設立40周年を迎えるソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)が、4月から7月にかけて展開するライブオーディションシリーズ『HARE NOVA』(ハレノヴァ)。その第2回目『HARE NOVA Vol.02』が5月21日、渋谷clubasiaで開催された。SMAは奥田民生氣志團YUKI木村カエラ西野カナ等、100組以上のミュージシャン、俳優、タレント、芸人、文化人などが在籍するマネジメントオフィス。この『HARE NOVA』は、合計4回の各回から選ばれたアーティストが8月に行われる渋谷TSUTAYA O-EASTのファイナルステージに出演し、そこで選出された2組が9月に行われるSMA主催の日比谷野外音楽堂2daysにオープニングアクトとして出演できるというもの。  「HARE NOVA」のオフィシャルHPでも記されているように、このイベントは勝ち抜きオーディションではなく、「出会いの場」であることをコンセプトに掲げている。将来的にはメジャーデビューへのきっかけになるかもしれないが、このイベントで、より多くの音楽ファンにこれからの音楽シーンを担うアーティストと繋がったり、バンド同士が仲良くなったりできる機会を作れればと開催されている。また、様々なレコード会社、レーベルのスペシャリストが「ゲストウォッチャー」として参加し、ライブを終えたそれぞれのアーティストにアドバイスするなど、若いアーティストがプロの評価を得る貴重な機会があることもこのイベントの特徴だ。今回リアルサウンドでは、イベントにゲストウォッチャーとしても参加した音楽ジャーナリストの宇野維正氏によるライブレポートを掲載する。(リアルサウンド編集部) ・出演アーティスト FREE SQUARE 絶景クジラ Omoinotake vivid undress さしすせそズ 黒猫チェルシー(ゲストアクト) ・ゲストウォッチャー 原田公一(ソニー・ミュージックアーティスツ) 伊藤裕美(ソニー・ミュージックアーティスツ) 横田 衛(ソニー・ミュージックアーティスツ) 石川 大(ソニー・ミュージックレーベルズ) 宇野維正(音楽ジャーナリスト)

FREE SQUARE

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 最初に登場したのは、高校卒業と同時に福岡から上京、現在は下北沢や渋谷のライブハウスを中心に活動している4ピース歌ものギターロックバンド、FREE SQUARE。本日の最年少バンド(平均年齢19歳)である。下北沢あたりで活動している若いギターロックバンドというと、数年前まで演奏がまだ心もとなくステージ上でも俯きがちなバンドが多かったが、FREE SQUAREはドラム以外のフロント3人がサウンドも立ち位置も前へ前へとグイグイ押し出してくる、その「熱さ」と(いい意味での)「暑苦しさ」が特徴。そんな剥き出しのライブパフォーマンスだけでなく、ボーカルの藤森が恋人への感傷をストレートに綴った「お姫様のワガママ」を筆頭に、詞作面においても若さと青さがほとばしっていた。 ■ゲストウォッチャーコメント 原田公一「僕は初めてのバンドを見る時、目を瞑って、ボーカリストの声がどれだけ心に迫ってくるかに耳を澄ますんですね。藤森さんは、とてもいい声をしてる」 伊藤裕美「まだ未整理の部分があるので、演奏力やアレンジ力を磨いて、もっと歌が前面に出てくるようになるとよくなると思います」

絶景クジラ

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 2番目のバンドは、大阪を拠点に活動中の平均年齢21歳のガールズバンド、絶景クジラ。なんと昨年末2013年に始動、今年の1月7日が初ライヴだったという生まれたてのバンド。にもかかわらず、早くもYouTubeなどで話題を集めている(と自称)。確かに、そのパフォーマンスは一度観たら絶対に忘れられないインパクト。スカートがめくれるのも気にせずステージ上で暴れるボーカルのナツコ・ポラリスは、終盤になるとオーディエンスのいるフロアにまで下りてきて会場全体を強引に巻き込んでいった。四つ打ちのパーティーロック、ダブ的なリズム処理が施されたミディアムチューン、そして緩急に満ちたメロディアスなポップスまで、楽曲のバラエティも多彩。その大器ぶりの片鱗を見せつけてくれた。 ■ゲストウォッチャーコメント 横田 衛「結成してまだ半年とはとても思えないほど演奏が巧いし、かわいい(笑)。すごく可能性のあるバンドだと思います」 石川 大「かっこよかった。大好きです。こういうバンドが元気に活動できる日本の音楽シーンを作りたい。3曲目の『春紫苑』みたいな曲をもっと聴いてみたい」

Omoinotake

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 3番目にステージに上がったのは、島根県出身、70年代風の長髪が印象的なピアノ&ボーカル藤井怜央を中心とするスリーピースバンド、Omoinotake。そのルックスからフォークっぽいサウンドを聞かせるのかと思いきや、和ものっぽい叙情的なメロディ、軽くオートチューンが入ったボーカル、骨太なリズムと、音の組み合わせの意外性とその完成度は相当なもの。楽曲を引っぱっていくのはピアノの旋律だが、メロディのリフレインのさせ方がダンスミュージック的で、不思議な高揚感に満ちている。ステージの最後を締めたのはオフコース往年の名曲「Yes-No」の大胆な解釈によるカバー。こういう場でカバーソングを披露するというのは、歌唱力と演奏力とアレンジ力によほどの自信がある証拠だろう。 ■ゲストウォッチャーコメント 宇野維正「はっぴいえんど周辺のバンドに影響を受けた若いバンドというのは珍しくないですが、同じ70年代リスペクトでもOmoinotakeの『踊れるオフコース』というコンセプトは斬新。サカナクションtofubeatsあたりを聴いてるリスナーが気に入りそう」

vivid undress

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 4番目に登場した男女混合5人組バンドのvivid undressは、ステージに立ったそのたたずまいの自体で、他の出演バンドとは異質のプロフェッショナルな洗練をまとっていた。フロアの前方には、早くも固定ファンの姿もチラホラ。演奏が始まった瞬間、まずその出音の分厚さとアレンジの巧みさに驚愕。そして、何よりも衝撃的だったのはボーカルkiilaの歌声。天空まで突き抜けるような高音から、ちょっと椎名林檎を思わせるような低音まで、そのあまりにも吸引力の強い声の力にゲストコメンテーターたちの間にもどよめきが。バンドメンバーも個性派揃いで、オネエキャラ(?)の鍵盤担当rioによるMCと演奏中のダンスに会場全体が沸いていた。あらゆる意味で、破格のスケールのバンドだった。 ■ゲストウォッチャーコメント 石川 大「最近はバンドがメジャーのレーベルと契約する理由が見つからない気がしていたんですが、このバンドを見て、その理由が見つかりました」 宇野維正「上手いとか下手とか好きとか嫌いとかの価値基準を超えて、kiilaさんの歌声がとにかく気持ちがいい。すっかり気持ち良くなってしまいました」

さしすせそズ

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 最後に登場したのは関西出身、今回のイベントのために初めて東京に来たという「キャッチー&センチメンタル」が売りの4人組バンド、さしすせそズ。ブー・ラドリーズの「ウェイク・アップ・ブー」にのってメンバーが一人ずつステージ上に元気に現れた瞬間から、「このバンドはライブを主戦場とするバンドなんだな」ということがビンビンに伝わってくる。音楽性の基本はメロウなフォークロック。そこに、ボーカルさしすせそ松下の人間味溢れた歌声と、彼らが生活している京阪沿線の生活臭のある歌詞が加わって、これまでありそうでなかったバンドの個性となっている。MCではちょっと空回りしている感もあったが、それも含めて「愛すべきバンド」としての魅力を早くも放っていた。 ■ゲストウォッチャーコメント 横田 衛「音楽的には大好きなタイプのバンドなんですけど、アレンジ面でまだまだ詰められるところがあると思った。4人で最大限のことをやってるようには聴こえない」 原田公一「ブルースっぽいところもあるんだけど、それが表面的で、あまりブルースが感じられなかった。衝動で突っ走るのもいいけど、バンドを長くやることを考えたら、昔の音楽をたくさん聴いて勉強していくことも大切だと思うのでがんばって下さい」
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 5バンドの演奏を終えて、すっかり温まった会場をさらにヒートアップさせたのはゲストアクトの黒猫チェルシー。持ち前のガレージロックの荒々しさに、ヘヴィロック的な凄味を増した最新型の黒猫チェルシーの本領を存分に叩き付けてくれた。「このHARE NOVAってイベントのいいところは、誰がグランプリを獲るとかじゃなくて、これを機会にして、すべてのバンドがここからいろんな繋がりを持てるってところだと思う」とMCで若いバンドたちにエールを送る渡辺大知。しかし、彼らのステージを食い入るように見つめていた出演バンドたちは、そのパフォーマンスの迫力に圧倒されたに違いない。 こうして2回目の開催を終えたHARE NOVA。もしかしたら数年後に日本の音楽シーンを塗り替えてくれるかもしれない有望なバンドの数々の登場に、ゲストウォッチャーの面々は終演後も興奮さめやらない様子だった。「今日は関西の勢いを感じましたね(vivid undressのボーカルkiilaも関西出身)。僕が好きだったのは絶景クジラ。SMAはレーベルではないので、やっぱりパフォーマンスを一番重要視するんだけど、一番パフォーマンス力を感じました」(原田公一)。「音楽は人間がやるもので、音楽の新しい時代を作るのはやっぱり人間なんだなって、とても希望を感じることができました」(石川 大)。「今日はみんな本当にクオリティが高かった。やっぱりバンドを見つけるのは、出会いと運がすべてだから、こういうイベントや、ライブハウスに通い続けることの重要さが身に沁みました」(横田 衛)。次回は6月18日。ゲストアクトはオワリカラ。はたして、大豊作だった今回を超える新鋭バンドは現れるか? (取材・文=宇野維正) ■HARENOVA Vol.02 ライヴムーヴィーが公開中 http://sma40th.com/harenova/livemovie/livemovie02.html#container ■原田公一:1977年より南佳孝のマネジメントを担当。その後、UNICORNPUFFYほか多くのアーティストに携わる。現・ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役会長。 UNICORN オフィシャルHP:http://www.unicorn.jp/ PUFFY オフィシャルHP:http://www.puffy.jp/ ■伊藤裕美:国生さゆり渡辺満里奈ほか、多くのアイドル、女優をマネジメント。音楽系アーティストでは、現在、土岐麻子を手がける。 土岐麻子 オフィシャルHP:http://www.tokiasako.com/index.php ■横田 衛:UNICORNのローディーとしてキャリアをスタート。マネージャー、ディレクターとして多くの新人を世に送り出す。現在は、ART-SCHOOL、黒猫チェルシーのマネジメントチーフ。 ART-SCHOOL オフィシャルHP:http://www.art-school.net/index2.html 黒猫チェルシー オフィシャルHP:http://www.kuronekochelsea.jp/ ■石川 大:ディレクターとして、JUDY AND MARYを皮切りに、YUKI、スネオヘアーなど多くのアーティストを手がける。現在は、tacica、ClariSを担当。 tacica オフィシャルHP:http://www.tacica.jp/ ClariS オフィシャルHP:http://www.clarismusic.jp/ ■宇野維正:音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

アメリカ育ちのBENIは、J-POPにどうアプローチしたか?「日本の曲は洋楽に比べてポエティック」

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【リアルサウンドより】  BENIが6月11日、これまでにリリースしたすべてのオリジナルシングルに加え、累計100万枚に迫る大ヒットとなった『COVERS』シリーズからの人気カバー曲を収録した『BEST All Singles & Covers Hits』をリリースする。  インタビュー前編では、デビューから10周年の節目を迎えたBENIにこれまでの軌跡を振り返ってもらうとともに、日本とアメリカを共にルーツに持つ彼女の音楽観や、J-POPをカバーすることで見出した日本語詞の特徴などについて語ってもらった。

「歌いたいことが溜まりに溜まっていた」

――オリジナル曲とカバー曲を収録したベストアルバム『BEST All Singles & Covers Hits』が6月11日にリリースされますが、今年はデビュー10周年の節目の年でもありますね。 BENI:いつも次の制作やライブに向かっていて、制作したものを振り返る機会があまりないので、ある意味で自分にとっても、自分の歌と向き合える作品になりました。改めてBENIとしての道のりを辿ると「あの頃はこういうサウンドでこういう気持ちをを伝えたかったんだな」とかわかりやすくて、自分でも「こういう風に成長してきたんだな」っていうことがわかる作品になりました。この間リリースしたシングルでさえ「うわ、懐かしい!」「この頃はボーカリストとしてまだまだだったな」と思うことがあって、それを言ったら5年前の曲なんてもう、聴くのが照れくさいところもあります。でもそれは、自分が一番自分に厳しく歌に向き合っていたからなのかなと思いますね。その頃にしか歌えなかった歌もあると思いますし、音楽ってそういうところがあると思うので、照れくさい反面「この流れがBENIを作ったんだな」って知らせてくれるアルバムです。 ――その意味では「もう二度と…」「Kiss Kiss Kiss」など、2009年前後の曲を聴くと、ご自身でも初々しさのようなものを感じますか。 BENI:そうですねー。すごくフレッシュですね。あの頃はBENIとして活動し始めた頃だったので、気持ち的にもフレッシュで、自分のサウンドをいろいろ探していた時期でした。「Kiss Kiss Kiss」は特に私らしいというか、R&Bの、のれるアーバンなトラックと、女心をそのまま歌詞にしている歌のミックスで、それがBENIらしさにつながったかなと思います。この曲がある意味でそのスタートでした。 ――たしかに、洗練されたサウンドと、リアリティのある歌詞の組み合わせがBENIさんの特徴であるように思います。当時を振り返ってみて、制作はスムーズに進みましたか? BENI:けっこうスムーズでした。やりたいことや、伝えたいこと、歌いたいことがはっきりと見えていましたから。だからこそ頻繁なペースでリリースできたのかな、と思います。当時はとにかくいろんな思い…恋愛だけじゃなくて自分に対してのことも、溜まりに溜まっていた時期だったんです。だから、ただのラブソングではない、1人の女性としての心境がそのままリアルに出てて。ラブソングだったら、今聴くと若く感じるなぁ。「好きなのに伝えられない」とか。今だったら全然はっきり言いますけどね(笑)。そういう女の子らしい部分も詰まっていますし、逆にガツガツと「もっとみんなにわかってほしい!」みたいな強い意思もあります。そういう風に、この時期はとにかくいろいろな思いが溜まっていたので、それをスムーズに出していったんだと、いろいろな曲を通して感じました。

「日本とアメリカのカルチャーをミックスしたハイブリッドなものを、私の音楽を通して作りたい」

――今年は、BENIさんにとってデビュー10周年です。これまでの音楽活動の中でターニングポイントとなった出来事はいくつかあったと思いますが、一つ挙げるとするならば? BENI:童子-Tさんとコラボしたことは大きかったです。初めてコラボしたのは「もう一度… feat.BENI」の一年くらい前に、彼のアルバムに1曲参加した時でした。そのきっかけもミラクルで、彼の子どもが、私が歌っていたディズニー・アニメの主題歌を聴いて、「すごくいい声だ」って私のことを調べてくれたんです。だから今までのヒストリーが全くないまま、素直に声を気に入ってくれたことでスタートしました。運命的な出会いでしたね。私は元々R&BやHIPHOPが大好きなので、フィーチャリングものを当たり前のように聴いてきたんですけど、日本って、「デュエット」はあっても「フィーチャリング」はそんなになかったじゃないですか?「フィーチャリング」はHIPHOP的なスタイルだと思うので、やっと日本でもブームになって、単純に嬉しかったですね。 ――特にアメリカでヒップホップの流れを汲んだR&Bが盛り上がった90年代から00年代にかけて、BENIさんはそれらを現地で聴いて育ったわけですよね。そうした音楽体験を持ちつつ、日本のシーンの中でどうやっていくのか。葛藤もあったのでは? BENI:小学校の頃からTLCジャネット・ジャクソンメアリー・J.ブライジ、アリーヤとかを聴いてきました。日本の小学生が聴くには大人っぽいかもしれませんけど、アメリカではそれが普通にラジオで流れていたから。日本でやる以上、もちろん言葉も違うし、全然違うカルチャーなだけにみんなが求めているサウンドも違います。日本に帰ってきてJ-POPに初めて触れて、その良さを感じました。私の中では両方のカルチャーがフィフティー・フィフティーにあるからこそ、それをミックスしたハイブリッドなものを私の音楽を通して作れたらな、とずっと思っていました。それはカバーをやったときにも全く同じで、「どうせカバーをやるんだったら自分らしいスタイルでカラーを取り入れてやりたい」と思いました。やっぱりバイカルチャーの融合っていうか。 ――カルチャーの融合という意味で言うと、アメリカでも生活をしていたBENIさんから見て、J-POPの良さはどんなところでしょうか。 BENI:メロディですね。J-POPは日本語の歌詞を理解できない外国人が聴いても、切ない曲は切なく聞こえると思うんですよ。メロディで気持ちを動かす独特なものを持っていると思います。だからこそ、それを『COVERS』の制作の時に感じました。実際に英語で歌ってもやっぱりいい曲なんだな、と思うのは、メロディにソウルがあるというか、メロディアスなんですよね。ただ、ゆるくフロウするんじゃなくて。そこが一番の魅力だと思います。英語ってすごくフロウな感じがするんですけど、J-POPはいい意味で波があって、エモーショナルですよね。

「日本語の歌詞には聴き手が好きに解釈する文化がある」

――ボーカリストとしては、歌詞の言語によって符割りや歌うスタイルが変化しますよね。英語の歌は単語数も多いですしリズミカルですが、日本語の歌詞にするとどうしても制限があります。日本語と英語で、歌うときの特性の違いは意識しましたか? BENI:そこは大きいですね。本当に歌詞が少ないんですよ、日本の曲って。逆に言うと、深い意味や背景をこれだけの短い言葉で表現できる素晴らしさでもあります。でもそれを英語にするときには絶対的に言葉が増えるので、自然と付け加えなきゃいけない部分や、自分なりの解釈で「盛る」部分があります。それは実際やってみて気付かされましたね。だからこそ言葉を大切に使っています。  日本の曲は洋楽に比べて、カジュアルな曲よりもポエティックな曲が多いと思います。だから日本語だと自然に聞こえるのに、英語にするとすごくクサいというか、大げさというか、そういう風に聞こえちゃうと感じました。それをどういう風に自然に表現するか、ということが大切でしたね。日本語だと、オブラートに包んで、あまりリアルな言葉にはしませんけど、英語だと「I love you. I love you. I love you.」みたいな感じになる時もある。英語の「I love you.」には「愛してる」以外にもたくさん意味があって、むしろ直接「愛してる」って言うことは少ないんですけど、それを英語にすると「I love you 以外にないかもなぁ」って思ったり。英語っていうのは本当にストレートにできている言語です。逆に日本語、特に歌詞では遠回しな表現が好まれ、それを聴き手が好きに解釈する文化があるんですよね。 ――日本語の歌詞を書くときは、表現を遠回しにしたりポエティックにしたりという努力があったんですか。 BENI:そのスイッチは自然に入ります。もちろん、喋っていてたまに、「あ、これ和製英語だった!」とか、逆に「この言葉をそのままカタカナにしても通じないな」とかごっちゃになる瞬間はあります。スイッチが自然に入るようになったのは最近で、昔は英語の方がメインだったから、そこに関してすごく苦戦してました。まず英語で書いて、それを日本語にして、それが変かどうか、伝わるかどうかまわりに確認したりしていました。 ――先程初期の歌詞について、恋愛観に関して「初々しい」と仰っていました。たしかに作品の歴史を辿っていくと、段々と大人っぽい、一言で表現しづらいような人間関係の深みを歌ったりするようになっていると感じました。こうしたものはご自身の人間関係や人生経験が反映していますか? BENI:そうですね。やっぱりリアルな気持ちから書くことがほとんどなので、それがそのまま曲に出ます。いろんな意味で大人になっていくっていうか、成長が出ている気がします。 ―― 一貫して歌詞には意思の強さを感じますが、ご自身ではどう思われますか? BENI:強いですね(笑)。 ――弱い部分も見せられる強さ、と言えるかもしれません。 BENI:まさにそうですね。自分のカッコ悪い部分でも、恥ずかしがらずに素直に表現できるようになりました。 ――それはファンからの反応など、世間とのコミュニケーションを取る中でできあがったスタンスですか? BENI:それももちろんあります。聴いてくれる人を思い浮かべながら制作するスタイルは、ライブをし始めてからより強くなりました。エゴで書くんじゃなくて、その人の気持ちを歌で動かせるか、背中を押せるか、とか、そういう気持ちで作ることが増えましたね。

「私は自分を『R&B歌手』とは思ってはいない」

――ボーカリストとしては、技術面や表現力など、歌のどのような部分を意識して歌ってきたのでしょうか? BENI:磨けば磨くほど、もっと形にはまらない歌い方をしていこう、と思うようになりました。スキルがついたとしても、だからといってパーフェクトに歌うのが良いかというとそうじゃないし、カラオケの採点できれいにピッチが合っているようなものよりも、ちょっと崩れているくらいの曲の方が聴いていても伝わります。実際に何度もそういう曲に泣かされました。あんまり考え過ぎない、テクニカルになり過ぎない、という意識は大事にしています。 ――そのためには何が重要でしょうか? BENI:曲を自分のものにして、入り込むことですね。スタジオも雰囲気を重視して、めっちゃムーディにしてみたり(笑)。歌詞が読めないんじゃないかっていうくらい暗めにしてキャンドルを灯したりしましたね。 ――パーフェクトに歌うだけでは良しとしないのはどうしてでしょうか? BENI:一時期はパーフェクトに歌うことばっかり考えてました。あるときにハッと「そこじゃないじゃん!」って気付かされて。「100回くらい歌い直してパーフェクトな歌が録れたとして、たぶん満足するのはBENIだけだよ」っていうような発見があったんです。だからこそ、慣れないことをたくさんすることも、自分の中の意識です。新しいことにチャレンジするために、今までの慣れた環境から一度出る必要があると思っています。そういった意味では『COVERS』も、「どうしようこの曲?」みたいな、自分の曲ではない緊張感や発見がありましたね。 ――「粉雪」は印象的ですよね。オールジャンルなので最初は途方にくれることもありましたか? BENI:もちろんありました。ロック、J-POPからラップまで幅広くやっていたので。でも、ゼロから作るオリジナルと違って、答えがある中で、どうやってそこにいくか考えながらやるのが、すごく新鮮で楽しかったです。 ――今回エルトン・ジョンの『Your Song』のカバーが初収録されています。 BENI:この曲は元々好きで、ずっと聴いてきた曲なので歌いやすいというか体が覚えている曲で、スムーズにレコーディングできました。彼の曲は歌詞もそうですけど、本当にいい曲がたくさんあります。中でもほっこりするラブソングが大好きですね。アーティストとして名曲がたくさんありますし、今でも若い人とコラボしたり、そういうチャレンジもするところはリスペクトしています。 ――そんなカバーシリーズに取り組んだことで得たものとは? BENI:さっき言ったことにもつながるんですけど、本当にオープンマインドで曲と向き合うことです。私はワードとして「ジャンル」っていうのも元々好きじゃなくて。私は「R&B歌手」とは思ってはいないので、アーティストとして、歌詞の世界観だったりサウンドだったり、より多くのチャレンジをしたいです。そういうことを試すのは全然ありだなって、よりジャンルを超えた音楽の楽しみ方をしたいと思えた作品でしたね。 (後編に続く) (取材=神谷弘一/構成=高木智史) ■リリース情報
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BENI『BEST All Singles & Covers Hits』【初回プレス限定盤・豪華盤】(ユニバーサルミュージック)

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BENI『BEST All Singles & Covers Hits』【通常盤】(ユニバーサルミュージック)

『BEST All Singles & Covers Hits』 発売:2014年6月11日 価格:初回プレス限定盤・豪華盤(2CD+1DVD) ¥5,184(税込)    アーティスト写真フォトブック、歌詞ブック封入    豪華版限定特典:全オリジナルシングルのミュージックビデオ集(DVD)、完全撮り下ろしフォトブック    通常盤(2CD) ¥3,780(税込) ※初回プレス限定・スペシャルプライス ¥2,980 アーティスト写真フォトブック、歌詞ブック封入 〈収録内容〉 【CD. DISC 1】 1. もう二度と…   2. Kiss Kiss Kiss  3. 恋焦がれて 4. ずっと二人で 5. KIRA☆KIRA☆ 6. サイン 7. bye bye 8. ユラユラ 9. ギミギミ♥ 10. Heaven’s Door 11. 2FACE 12. 好きだから。 13. 声を聞かせて 14. crazy girl 15. Darlin 【CD. DISC 2】 1. 永遠  2. さつきあめ  3. OUR SKY  4. Ti Amo 5. LA・LA・LA LOVE SONG  6. 瞳をとじて  7. 桜坂  8. いとしのエリー  9. 奏(かなで)  10. 歌うたいのバラッド  11. Lovers Again  12. 粉雪 13. 愛唄  14. YOUR SONG (初収録) 15. もう二度と… Rebirth (初収録) 【DVD DISC 3】 ※VIDEO CLIPS集  1. もう二度と… 2. Kiss Kiss Kiss  3. 恋焦がれて 4. ずっと二人で 5. KIRA☆KIRA☆   6. サイン   7. bye bye   8. ユラユラ   9. ギミギミ♥ 10. Heaven’s Door 11. 2FACE 12. 好きだから。 13. 声を聞かせて 14. crazy girl 15. Darlin’ 16. 永遠 17. さつきあめ 18. OUR SKY 19. ずっと二人で unplugged version 20. もう二度と… Rebirth ■BENIオフィシャルWEB:http://www.benibenibeni.com/

AKB48・大島優子、最後の劇場公演が終了「普通の女の子が大きな夢を持っても良いんですよね」

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AKB48-『ラブラドール・レトリバー Type-A(通常盤)(多売特典生写真なし) 』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  6月9日の『HEY!HEY!HEY!特別篇 さよなら大島優子AKB48ラストステージ生中継SP』(フジテレビ系)で、AKB48グループとダウンタウンによるトークの模様(収録分)が放送されたほか、東京・秋葉原にあるAKB48劇場での大島優子による最後の劇場公演の模様が生中継でオンエアされた。  前半のスタジオ収録分では、AKBグループのメンバーが総勢100人駆けつけ、大島の卒業を祝った。  冒頭、大島が「もう歌うことは無くなるので…」と、卒業後は歌手としての活動を行わないことを語ると、ダウンタウンの松本人志が「カラオケも行かへんの?」と返し、スタジオの笑いを誘った。その後、大島が最後にセンターを務めたシングル曲「前しか向かねえ」を披露。  また、特別企画として「AKBグル―プ100人に聞きました! 最後に大島優子に聞いておきたいことBest3」が発表され、3位には9名のメンバーからの「オッパイを大きくするにはどうしたらいいですか?」という質問がランクイン。質問者を代表して、梅田彩佳が「優子の胸は豊満なので」と語ると、これに対し大島は「チーズが大好きなので…それかも」と回答。これを受けた梅田は「そんなにチーズ食べてないです。今日買って帰ります…」と低いトーンで語り、スタジオを爆笑させた。  2位にランクインしたのは、10人から寄せられた「いつ結婚したいですか?」という質問。質問者を代表して高橋みなみが「やっぱり(卒業したら)恋愛解禁なので。大島さんはすぐゴールテープ切るんじゃないか」と語ると、松本が「AKB48って恋愛は禁止やけど、結婚はアリなん?」と疑問をぶつけた。これに対し、高橋が「秋元(康)さんは結婚なら(OK)」と言っていることを明かした。大島は「リアルに言うと、27歳(来年)には結婚したい。子供は30歳までに2人産んで、30代で3人産みたい」と語り、メンバーを驚愕させた。  1位に輝いたのは、メンバー20人からの「1番辛かった仕事は?」という質問。質問者を代表して指原莉乃が「(大島の方が)先輩で芸歴も長いので、一番辛かったことを聞きたい」と語ると、大島は「指原よりは辛くない気がする」と応える。すると指原は「カメラを隠した状態で渋谷の真ん中に行って、ゴム手袋を鼻で割ったんです。辛くて親に心配されました」と自らの辛いエピソードを披露し、大島は「海老カツサンドを食べてイカ釣りに行ったら、リバースしてしまって、その後にイカが釣れた」と珍回答。浜田雅功から「どこが辛いねん!」、松本から「聞いてるこっちが辛いわ」とツッコまれた。  番組中盤では、大島の活動を卒業メンバーのコメントと共にVTRで振り返るコーナーも。「大島優子と初めて会った時の印象は?」という質問に対し、前田敦子が「チームA(前田含む1期生)が出来たあと、すぐにチームK(大島含む2期生)が出来て。お互いライバル意識した状態で始まって。その時に秋元才加が『チームAにはハッキリ言って負けないくらい頑張ります』と言われた」と語ると、秋元は「(大島)優子は子役だったので、(芸能活動の経歴が)何もなかった私たちと比べて、AKB48にかける思いは人一倍強かった」と語った。  また、番組には大島の父親から、本人には内緒で手紙が届いた。「学校が終わってからすぐ秋葉原に行き、終電での帰りを駅まで迎えに行っていたことが昨日のように感じます。(中略)チビ父のせいで、優子もチビになっちゃってごめんね」といった内容を読み上げ、大島優子が参加しない新生AKB48のメンバーで「ラブラドール・レトリバー」を披露し、前半は終了した。  後半は6月8日に行われた味の素スタジアムでの卒業公演後から、大島に密着したVTRが放送された。大勢の前で歌うのは最後となった同公演について「忘れたくないなって思いました。7万人の人が集まったところで自分の卒業コンサートをやるとは思ってなかったので。(最後の劇場公演について)劇場公演からすべてAKB48の人生が始まったから、劇場にありがとうって言いたいですね」と帰りの車内で語った模様が放送された。  劇場からの生中継では、会場のファンから「優子!」コールが響き渡るなか、大島をセンターに据えた選抜メンバーが登場。「ギンガムチェック」、「Everyday、カチューシャ」を続けて披露した。その後、大島の卒業曲である「今日までのメロディー」に関して、大島が「秋元さんが私のことを思って書いてくれた曲です。この曲には実は歌詞が2つあって、『優子の8年間を振り返ったら1曲じゃ収まらなくて』と言われたので、そのなかから1つを選びました」と語り、同曲を歌い上げた。  その後、これまで共に活動してきたメンバーが、大島に対して一言ずつコメントを捧げる場面が放送された。  同期メンバーとして歩んできた宮澤は、大島との関係性について「死んでも続く関係」と語ったり、梅田は「優子が私の道しるべでした」と、大島の存在感の大きさを語るなか、小嶋陽菜は「優子が『居るだけで和む』って言ってくれたから、頑張れないけどあとしばらくは居ようと思います」と、気心の知れた相手ならではのコメントを披露した。  また、後輩メンバーとして、同じ太田プロに所属する指原が「私、今まで言ったことないんですけど、今までも、これからも尊敬している先輩は優子ちゃんです」と語ると、柏木由紀は「ずっと優子ちゃんの背中を見てきました」と、憧れの存在として居続けた彼女について語った。続けて松井珠理奈が「優子さんのマネをしても敵いません。これからも私たち後輩に、かっこいい背中を見せてください」と語ると、6月7日の選抜総選挙で1位を獲得した渡辺麻友が「これからのAKB48のことは任せてください」と、グループを背負っていく覚悟を語った。  最後に1期メンバーである高橋から「二人の思い出って一つしかなくて。(前田)敦子が卒業を決めたときに、二人でご飯に行ったことでした。その時に初めて深く喋って、『あ、同じこと考えてたんだね』って、ちょっとした答え合わせみたいに色んな話をしました。卒業したら、戦友じゃなくて親友になってください」と提案を受けた大島は「嫌です」と即答し、シリアスなムードに包まれていた劇場が一気に笑いに変わった。続けて大島が「私はこれからもAKB48のことは応援していくし、AKB48のことは誰よりもわかるから。だからこれからも戦友です」と高橋に語りかけるという、二人の関係を如実に表したシーンが放送された。  そして、大島本人が卒業についてのスピーチを披露。「私たちAKB48は、このドンキホーテ(秋葉原店)の8階にある狭い劇場から始まりました。アキバ系アイドルとして始まった私たちが、昨日味の素スタジアムという7万人の会場を埋め尽くして。今日は250人の前で歌っていて、狭く感じるけど、この場所が私の原点です。ここから出発出来てよかったなって思います。応援してくれる皆さんの力があって、AKB48はここまでこれました。普通の女の子だった私たちを見つけて、応援してくれて本当にありがとうございました。普通の女の子が大きな夢を持っても良いんですよね。その勇気を与えてくれてありがとうございました」と語り「草原の奇跡」を歌い上げた。  その後、高橋が「一番優子らしい曲」と語り、大島も「ファンのみなさんが私にプレゼントしてくれた曲です」と、大島がセンターとしてブレイクした楽曲「ヘビーローテーション」を笑顔で披露し、AKB48の大島優子としての最後の公演が幕を閉じた。  その後、大島は劇場の外にいるファンに向けて、拡声器を使って卒業公演の成功を報告。「明日からは自分の夢を叶えるために歩いていきたいと思います」と大勢のファンに語りかけ、番組は終了した。  AKB48グル―プの中心メンバーとして、8年半に渡って活躍し続けた大島の最後を華やかに締めくくった今回の放送。これからは残ったメンバーがどうグループを守っていくのか、また、女優・大島優子として彼女はどう活躍するのか。両者の新たなステージに期待したい。 (文=向原康太)

まゆゆ総選挙1位でAKB48は原点回帰へ? 評論家2氏がグループの今後を予測

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AKB48-『ラブラドール・レトリバー Type-K(通常盤)(多売特典生写真なし) 』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  AKB48の37thシングルの参加メンバー80名を決める『AKB4837thシングル選抜総選挙夢の現在地~ライバルはどこだ?~』の開票イベントが本日6月7日に東京・味の素スタジアムで開催され、渡辺麻友が初の1位になった。  5月21に発表された速報結果では、指原莉乃が渡辺麻友に1万2000票ほど差をつけてトップだったため、逆転勝利となった今回の総選挙。また、乃木坂46から交換留学中の生駒里奈が14位にランクインして選抜入りしたほか、SKE48のW松井こと松井珠理奈と松井玲奈が、それぞれ4位と5位にランクイン、HKT48の宮脇咲良が11位にランクインするなど、AKB48本体以外のメンバーの躍進も目立った。  今回の総選挙結果は、AKB48グループの今後にどのような影響を与えるのか。同グループに詳しい放送作家のエドボル氏は次のように語る。 「AKB48の総選挙は、単なる人気投票ではなく、今後のグループの方向性をファンの意を汲んで決めるという意味合いもあります。そういう風に考えると、今回、『アイドルオブアイドル』というべき渡辺麻友が1位となったのは、ファンがAKB48に対し『予測不能のAKB48』ではなく『思い描いたAKB48』、つまりは正統派アイドルグループとしての方向性を求めたということではないでしょうか。また、個人的には昨年と比べて、順位に対する得票数に大きな変化がなかったことに驚きました。大島優子が出ていない分、全体の総数が落ちるのかとも思っていましたが、彼女への票はほかのメンバーに動いたようです。ポスト大島優子ともいわれる武藤十夢が、昨年より大幅に順位をあげて24位となったのは、その効果かもしれません」  同じくAKB48グループに詳しい物語評論家・ライターのさやわか氏は、渡辺麻友の1位について「原点回帰的な意味合いが読み取れる」とするとともに、地方グループの躍進にも目を向ける。 「渡辺麻友は2月に行われた『大組閣祭り』にて、チームAからもともと所属していたチームBへと戻っています。『大組閣祭り』には、さまざまなチームに戦力を分散させて、AKB48グループ全体でペナントレース的な形を作り、全体を盛り上げていこうという意図があったと思います。同時に、原点回帰的な動きも見られ、渡辺麻友のチームB回帰はそれを象徴するものでした。つまり、今回の総選挙の結果には、原点回帰することによって、アイドルグループとしての地盤を固めてほしいという、ファンたちの願いがあったのではないでしょうか。実際、渡辺麻友は『こんなときだからこそグループ一丸となり、絆を深め、ファンの皆さんとともに力強く進んでいきたいと思います』と、ファンに求められているであろう的確なコメントを発表しており、今後の同グループがファンとよりコミットした盤石な体制に進むことを予感させます。一方で、地方のグループ、特にHKT48メンバーの躍進が目立ったことからは、『大組閣祭り』などで目指していたグループ全体のペナントレース化が、うまく機能したことを伺わせます。その背景には昨年、指原莉乃がAKB48のパブリックイメージを牽引し、HKT48の存在感を増したことが要因の一つとして上げられるでしょう。指原莉乃は2位という結果を悔しがっていましたが、そういった意味では今後のAKB48に大きく貢献したのではないでしょうか」  また、5月25日に起こった握手会での傷害事件で、被害者となった川栄李奈と入山杏奈が大きく順位を上げたことについて、さやわか氏は次のように指摘する。 「川栄李奈と入山杏奈が20位以内にランクインしたことにより、握手会によるマイナスイメージは多少は払拭できたかもしれません。しかし、それで安心するのではなく、今後も同グループを継続させていくためには様々な面での努力が必要かと思います。そういった意味で、チームの中で保護者的なポジションにある小嶋陽菜が『私、小嶋陽菜はここで卒業発表しようとしましたが…しませーん!』と、冗談を交えながらAKB48を続けることを宣言したのは、ファンにとっても後輩世代にとっても非常に心強かったのではないでしょうか」  大島優子の卒業発表や大組閣といった人事に加え、握手会襲撃事件も起こり、激動の半年だったAKB48グループ。アイドル性の高い渡辺麻友がグループを象徴するポジションに付くことによって、ファンとの結束をより強固にすることが期待できそうだ。 (文=編集部)

市川哲史が語るリスナー視点のポップ史「シーンを作るのはいつも、愛すべきリスナーの熱狂と暴走」

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市川哲史『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック)

【リアルサウンドより】  1980年代から活動を続ける音楽評論家であり、現在、甲南女子大学でメディア表現についての講義も行っている市川哲史氏が、リスナーの立場から見たポップ・ミュージックの変遷を追った書籍『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』を、4月19日に上梓した。日本のポップミュージック全般について執筆活動を展開しつつ、特にV系シーンを独自の解釈で読み解いてきた同氏は、最近の音楽シーンをどのように捉えているのか。インタビュー前半では、氏が大学の講義の中で見出した音楽リスナーのあり方の変化から、リスナーが作り出すコミュニティの意義、さらにはV系シーンの現状まで、痛快な語り口で論じた。聞き手は藤谷千明氏。(編集部)

市川哲史が女子大の講師になった理由

ーー『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』はリスナーの立場から見た、ポップ・ミュージックの変遷を追った本でもありますが、ご自身が講師をやっていらっしゃる大学の講義がきっかけで誕生したと。 市川:実際の講義のレジュメに沿ってはいるけど、実は書き下ろし部分も多かったりします(苦笑)。たまたま3年前に旧知の大学教授から「授業やります?」って話がきたので、アーティスト論や作品批評といった従来のスタンスとはまったく違うやり方――これまでの音楽をいまの若者の立場から一緒に考察してみようという形で試しに初めたというところですかね。文学部メディア表現学科の授業なので、「メディア」ってところにひっかかっていれば自由にやってよかったので。 ーー年齢の離れた女子大生を相手に授業をするのはどうでしたか。カルチャーショックやジェネレーションギャップもあったと思いますが。 市川:今自分が53歳なので、「こんな若い女子たち相手に音楽の話するにはどうしたらいいのか!?」ってところからのスタートですよ。まずアンケートをとってみたら、「CDを買って聴いてる」と答えたのは全体の半分以下。おそるおそる「好きなアーティストがいる・いない」や「一旦好きになったらどのくらいの期間好きか」という項目も入れてたんですけど、「1年以上好き」という回答が本当に少なくて……1クールや半年単位で好きなアーティストが変わっちゃうわけよ! そりゃ好きなアーティストだからインタビューを読みたい的な欲求なんか、当然生まれてきませんわねぇ。まさに音楽誌死亡遊戯。 ーー月刊誌のサイクルだともう追いつかないですよね。 市川:もう音楽に「アーティスト」を求めてないですよねぇ。そんな無惨な状況下でも音楽はパッケージメディアでちゃんと聴いてくれる、昔ながらのいわゆる音楽ファンが棲息しているのはやはりジャニーズかヴィジュアル系(以下、V系)。100人いたら10人くらいV系ファンがいたりして予想を覆されました、まだこんなに生き残ってたのかと(失笑)。しかも全盛期を目撃したことないはずのX JAPANが人気だったり。。ジャニーズのファンはJr.を中心にいまだに増え続けてるし――KPOPは最近は減少傾向だなぁ。飽きられたのかしら。意外に支持者が多かったAKBも今年はほぼ全滅、女子大生はAKB48を見限りましたな(愉笑)。その分ももクロファンが増殖してるんだけど、意外なのはモー娘。ファンが根強くて、低迷期も見捨てず現在のプロフェッショナル・モー娘。まで見届けている学生が、毎年10人くらいいたりします。こうした子たちが対象だから、彼女たちが興味のある素材をテーマに据えるのが妥当でしょ? ただ、この本に書いてあることっておそらく、生粋のジャニーズファンやKPOPファンからみたら「今更言われなくても、こんなこと知ってるよ」ってことばかりだとも思うんです。でもマニアじゃない門外漢からしたら知らないことも多いし、視点が違うからやたら面白がれるわけです。そういう意味では、基礎知識をきわめて恣意的(苦笑)に与えてあげることが重要だと考えました。これは学生に限らず、一般の音楽ファンにも通ずる理屈なわけで、この本を読んで「様々な音楽に詳しくなった」と勘違いする人が出てきたら最高です。わははは。 ーー亀田誠治さんやマキタスポーツさんらが「J-POP」をテーマにした著作を出版していますし、今って「J-POPを語ろう」みたいな雰囲気もあると思うんですよ。 市川:ですね。ただ社会学的な分析って昔からあるじゃないですか、V系とジェンダーを関連づけたりとか。ああいう無理矢理学問化するパターンって、人の無限の妄想力やその産物が権威づけられることで逆に矮小化されるだけなんじゃないかと。どう聴こうがどう解釈しようがリスナーの自由なんですから、本書では作品の内容は論じてない。あくまでもそのムーヴメントやスタイルを面白がって解釈してるだけです。V系や多人数アイドルブーム以外に、過去のビーイング&小室哲哉によるCDバブルやバンドブームにまで触れてますけど、そういう意味では<大学の教科書>という表テーマを設定したことで、単なる想い出本にはならずにすんだかな、と。 ーーリスナーが作り出したコミュニティの話も愛おしいですよね。 市川:いつの時代も日本の音楽シーンを形成してきたのは愛すべきリスナーの熱狂と暴走なだけに、音楽が消耗品に過ぎない現状には「ヤバい!」と焦りますよね。だからジャニーズのファンの子たちを見てると微笑ましいんです。『PATiPATi』やら音専誌を読み、ライヴに足繁く通い、仲間同士でやたら盛り上がってたようなあのバンド少女たちはどこに行ってしまったんだろうかと。いまどきのV系バンドのファンの子たちなんか、徹底的に上から目線だもんね(失笑)。そういう意味では、最後の砦はジャニオタたちかもしれないという。年間100本近くジャニーズのコンサートに行ってる学生がいるんですけど、その子に訊けばジャニーズの誰が今いちばん人気があるのかすぐわかる。昔はダフ屋に聞いてましたけどね、人気のあるバンドを。あれと一緒(笑)。

なぜV系はロックフェスに出る機会が少ないのか

ーー色々論じられる中でやはりヴィジュアル系は外せませんよね。ギャル文化と重ねているのも面白かったです。 市川:読者モデルとV系は似ているんですよ、両者共日本固有のヤンキー文化の産物ということ以外でも。ほとんどの読モが本職のモデルやタレントになれないように、V系の枠を超えて市民権を得るようなバンドにはなれないという。というかこれだけロックフェス文化が定着してるのに、なんでV系バンドってフェスに呼ばれないんだろうねぇ? 10年前と較べたら女子アイドルまで出演するほどハードル低くなったのに。今年のサマソニにはTOKIOも出るんでしょ?(愉笑)。 ーー今年は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にゴールデンボンバーやPlasticTreeが出ますし、SUMMER SONICにはthe Gazetteが過去二度出演してますね。でもまあ割合は低いですね。 市川:まあその被差別感が、逆にアナクロで気持ちよかったりするんだけども。くくくく。かつてのキリト事件(=マリリンマンソンのフェスに出たPIERROTのキリトがMCで「あなた達の大嫌いなヴィジュアル系バンドです!」と洋楽ファンを挑発した事件)が逆にロック的で痛快だったように、そもそも「一般の人」に聴いてもらうことが良いことなのかって話なんですけどね。大学の講義でももちろんV系は取り扱ってますけど、「V系? 嫌です!」みたいな未体験学生が当然多いわけ。でも実際にライヴ映像を見せると、皆やたら面白がるわけです。決して熱心なファンになることはないけれども、愉しめる感性はあるわけじゃない? V系に限らず様々な流行音楽を独自の視点で面白がれるような、そんなセンスを持ってもらいたいと思って教えてるし、本書を書きました。はい。リスナー冥利のプレゼンというか。(後編に続く) (取材・文=藤谷千明)