木村カエラ、10周年記念ライブで歓喜の涙 ポップな演出で「節目」を祝う

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【リアルサウンドより】  木村カエラがデビュー10周年を記念するライブ公演「KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014 -10years anniversary-」を、10月25〜26日に横浜アリーナにて開催し、両日で約2万人を動員した。本稿では、26日公演の模様をレポートしたい。  会場に入りまず目を引いたのは、ステージの両脇に据えられたカエラのイメージシンボルであるおかっぱヘアの巨大なオブジェ。高さ8メートルを越えるそれらは、顔の部分にLEDで映像が映る仕掛けになっていて、会場到着時にはピエロの顔で目をつむり、眠っていた。遊園地を模した背景セットとともに、当日のテーマである“ポップ”な雰囲気を演出していて、早くも期待が高まる。ちなみに前日は“ロック”がテーマで、太陽をモチーフにした背景セットが設置されていたという。  おかっぱのピエロが目を覚ますと、同時にカエラたちがステージに登場。大きな拍手と歓声の中、一曲目から代表曲のひとつ「Butterfly」が披露される。この日のカエラの衣装は、カラフルなタイダイ柄のセットアップで、目元に散りばめられたラインストーン、色とりどりのウィッグも華やかだ。伸びやかな歌声で一曲目を歌い終えると、そのまま「リルラ リルハ」「Ring a Ding Dong」と、ファンに愛されてきた、ポップなナンバーを続ける。舞台奥の格子状になった巨大なスクリーンと、おかっぱオブジェには連動した映像が流れ、まさに遊園地のような楽しいステージングである。カエラ自身のMCによると、今回のライブの映像は、これまでカエラのMVを手がけてきた映像作家が結集し、10周年によせて新たに制作したものだという。7曲目「OLE! OH!」では炎の映像とともにチアガールがダンスを披露し、8曲目「Jasper」ではブラックライトと蛍光色による独特のカラーリング映像が流れるなど、これまでのMVの世界観を踏襲していることがわかる。
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 ライブ中盤では、カエラが「自分の中で一番胸キュンなんじゃないかっていう曲をチョイスした」として、「sweetie」「Snowdome」「キミニアイタイ」など、メランコリックでドラマチックなナンバーを続けて披露。「What ever are you looking for?」では、観客は手拍子を打ち、会場が温かな雰囲気に包まれた。
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 後半では一転、「ここからは元気いっぱい、暴れますか?」と観客を煽った後に「STARs」「マミレル」など、アップテンポの明るい楽曲を披露。「Make my day!」では、観客がいっせいにジャンプで応えたほか、「BANZAI」ではカラフルでルーズな衣装を着たユニークなダンサーが登場して会場を盛り上げ、本編最後の曲となる「Magic Music」では、カエラがステージの端から端まで駆け回り、ファンたちにその歌声を届けた。  アンコールでは、カットオフして裾を短くした「GO!GO!KAELAND 10years anniversary」Tシャツを着てステージに戻ったカエラ。「この曲を今作れてよかった」と話した新曲「TODAY IS A NEW DAY」を披露した後、12月17日に新アルバム『MIETA』をリリースすることを発表し、会場は大きな歓声に包まれた。そして、ソニーハイレゾ音源対応ウォークマン®とヘッドホンCMソングである「sonic manic」をライブ初披露。共に、初期からの魅力であるロックテイストをベースに、今のカエラらしい陰影に富んだメッセージ性を感じさせる楽曲である。10年という年月における彼女の“進化”を感じさせる場面でもあった。  さらに「Super girl」を続けて歌い、ステージを後にしたカエラ。鳴り止まないアンコールの中、再びステージに戻ると、「今回、10周年ライブを開くにあたり、いろんな人が関わってくれました。私がこうしたいな、ああしたいな、と思うことをみんなが叶えてくれて、みんなが寝ずに準備をしてくれて、昨日と今日を迎えています。(中略)みんなに支えられて、こうやって10年間続けられました。応援してくれたみんながいないと私はここにはいられないし、本当に感謝しています。どうもありがとうございます」と、ファンとスタッフに感謝の気持ちを述べた後、代表曲のひとつ「happiness!!!」を歌い上げた。最後の挨拶では、カエラが感極まって涙を流す一幕もあり、活動10周年ライブは祝福ムードの中で幕を閉じた。
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 本人の誕生日にあたる10月24日には、10周年企画の一環として、5年ぶりとなる全国17都市21公演ライブハウスツアーを行うことも発表した木村カエラ。アルバムのリリースも控える中、10周年という節目を経た彼女はどんな表現へと向かうのか。常に変化し続けてきたアーティストだけに、今後も様々なサプライズを用意してくれるはずだ。 (文=松田広宣) ■リリース情報 『MIETA』 発売:12月17日 ・初回限定盤:CD + DVD品番:VIZL-746 価格:¥3,500+tax ・通常盤:CD ONLY 品番:VICL-64242 価格:¥3,000+tax 収録予定曲など詳細未定 ■ライブ情報 10years anniversary第5弾発表! 5年ぶりとなる全国17都市21公演ライブハウスツアー! 2015年3月6日(金)東京都 赤坂BLITZ (問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 2015年3月8日(日)岐阜県 CLUB-G (問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 2015年3月15日(日)静岡県 Live House浜松窓枠 (問)サンデーフォークプロモーション静岡 054-284-9999 2015年3月20日(金)兵庫県 神戸チキンジョージ (問)清水音泉 06-6357-3666 2015年3月21日(土)京都府 KYOTO MUSE (問)清水音泉 06-6357-3666 2015年3月28日(土)福島県 郡山Hip Shot Japan (問)COOLMINE 022-292-1789 2015年3月29日(日)宮城県 仙台Rensa (問)COOLMINE 022-292-1789 2015年4月4日(土)熊本県 熊本B.9  (問)キョードー西日本 092-714-0159 2015年4月5日(日)鹿児島 CAPARVO HALL (問)キョードー西日本 092-714-0159 2015年4月11日(土)香川県 高松オリーブホール (問)DUKE高松 087-822-2520 2015年4月12日(日)広島県 CLUB QUATTRO (問)夢番地(広島) 082-249-3571 2015年4月28日(火)新潟県 新潟LOTS (問)キョードー北陸チケットセンター 025-245-5100 2015年4月29日(水)石川県 金沢EIGHT HALL (問)キョードー北陸チケットセンター 025-245-5100 2015年5月16日(土)福岡県 Zepp Fukuoka (問)キョードー西日本 092-714-0159 2015年5月23日(土)北海道 Zepp Sapporo (問)WESS 011-614-9999 2015年5月29日(金)愛知県 Zepp Nagoya (問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 2015年5月30日(土)愛知県 Zepp Nagoya (問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 2015年6月5日(金)大阪府 Zepp Namba(OSAKA) (問)清水音泉 06-6357-3666 2015年6月6日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA) (問)清水音泉 06-6357-3666 2015年6月12日(金)東京都 Zepp Tokyo (問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 2015年6月13日(土)東京都 Zepp Tokyo (問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 木村カエラオフィシャルファンクラブ【Circle】では、どこよりも早くライブチケットの先行予約を行うとのこと。11月4日までに入会したユーザーが対象。 詳細はhttp://www.kaela-circle.com/

アイドルはなぜ“恋愛禁止”を掲げるのか 姫乃たまが自身の体験から見いだした答えと不安

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地下アイドルとして活躍する姫乃たま。

【リアルサウンドより】  ファンが結婚ラッシュです。私のファンは30代後半から50代の方が中心なので、彼らの結婚はごく自然なことなのですが、それにしてもこの気持ちはなんでしょう。現実に引き戻されたような感覚になるのです。  私はアイドル現場にいるファンほど、恋人に適した人たちはいないと思っています。フットワークも軽く、ファン同士でコミュニケーションをとりあう社交性もあり、何より女の子のことをよくわかっているからです。「平日18時に会いに来て!週末は地方ね!移動は別々で!」そんな無茶にアイドルファンは応えるのです。同じことを言ったら多くの恋人は、何言ってるんだという顔をするに違いありません。  ただし、この話をすると、いつも猛烈に反論してくるのがファン本人たちなのです。反論の内容は様々ですが、最も多かったのが、私生活で接触するアイドル以外の女の子には、その力を発揮できないという意見でした。  私生活に別の顔を持っているのは、アイドルだけでなく、ファンも同じようです。ファンがアイドルに夢を見ているように、アイドルもまたファンに夢を見ているのです。たしかにヲタ芸とか掛け声とか、立派なパフォーマンスですよね。時々、客席の方が声大きいですもん(売れてないため、狭い会場でライブをするとよく起こる現象)。  ファンの人をこんな風に思えるのは、ずっとファンの人に恵まれているからでもあります。地下アイドルの活動をしていくうえで大事なことは、ほとんどファンの人から教わりました。彼らが身をもって教えてくれた中でも、最も基本で重要だと思うのは、アイドルとファンの間に必要なのは信頼だということです。  私は数年かけてその信頼の中に、恋愛禁止も含まれていると解釈しました。事務所に所属していないので、恋人を作って公にしても誰からも咎められません。でもそうしなかったのは、アイドルが恋愛してはいけない理由を自分なりに見つけたからです。  実際ファンの人はあまり私の恋愛に興味ないのですが、だからといって、公の場で恋愛をしていると言ってはいけません。それは私が恋愛をしないと言い張ること、ファンはそれを信じたふりをするうえに、私とファンの地下アイドルごっこが成り立っているからです。それはエンターテインメントを楽しむための、信頼です。  しかし、何をどうしてもファンとうまくいかない場合もあります。ファンの行動によって悩まされているアイドルさんもたくさん目にしてきました。そういう時に自分を傷つけたファンを裏切るという意味で、恋愛に走ることがあります。反対に、運営とうまくいかなくて、優しくしてくれるファンとつい恋愛関係に陥ってしまうということもあります。  そもそもアイドルのほとんどは若い女の子です。何も考えずに恋愛をしないでいる若い女の子というのも違和感があります。  夢を追いかけて恋愛を我慢する子も、ファンや関係者とバレないように付き合う子も、全く関係ない人と付き合ってアイドルなんか辞めろと言われる子も、若いうちに恋愛をしてはいけないという前提でファンと擬似恋愛をしていくという特殊な状況に身を置いているのは共通です。それはアイドルではない私生活の彼女たちに少なからず影響します。私も例外ではありません。  私の地下アイドル生活は充実したものです。売れてはいませんが。一方で21歳のひとりの女としてはかなり不安があるのです。誰かひとりが私だけを好きでいてくれると信じられないのです。  薄々気付いていたこの不安を、改めて自覚するのが怖くて考えないようにしてきました。16歳の時から多くの人に愛されるようにつとめてきて、多くの人が愛してくれて、ずっとそれでよかったからです。  しかし、就職だ、結婚だという年齢になっていよいよ自分の不安に気づいてしまいました。今までは地下アイドルだから真剣に恋愛できない、で大丈夫だった。しかしこれから先、いつまでそれを続けるんでしょうか。  ファンの結婚はこれ以上ないくらい嬉しいことです。しかし、ふと現実に引き戻された感覚になるのは、私生活の自分が不安だからです。 ■姫乃たま 1993年2月12日下北沢生まれの地下アイドル。2009年より都内でのライブ活動を中心に地下アイドル活動を開始、2011年よりライターとしても活動している。他に司会やDJ、イベンターなど活動は多岐にわたる。 [twitter] [地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ] [姫乃たまのあしたまにゃーな]

乃木坂46は今後どこに向かうのか? レイチェル×さやわか×香月孝史が徹底討論(前編)

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乃木坂46『何度目の青空か?(通常盤)』(ソニー・ミュージックレコーズ)

【リアルサウンドより】  10月8日に10枚目のシングル『何度目の青空か?』をリリースした乃木坂46。これまでセンターは生駒里奈、白石麻衣、堀未央奈、西野七瀬の4人が務め、同シングルでは生田絵梨花が初のセンターに抜擢された。リアルサウンドではこれまで乃木坂46について、様々な分析・考察記事を展開してきたが、今回は節目の10枚目を迎えたこと、そして未だリリースされていない1stアルバムが待望されるなか、彼女たちについての対談を実施。ライター・物語評論家のさやわか氏、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者で、AKB48グループや乃木坂46に詳しいライターの香月孝史氏、講談社主催の女性アイドルオーディション企画「ミスiD2014」の準グランプリであり、乃木坂46の熱烈なファンとして知られる、わたしがレイチェル氏を迎え、乃木坂46の魅力についてや、ライバルグループであるAKB48との比較、アイドルシーンにおける立ち位置などについて、存分に語り合ってもらった。

「近年の『ラクロス部的』な体育会系アイドルとはちょっと違う」(さやわか)

――乃木坂46がほかのアイドルグループと異なり、オリジナリティを発揮できている部分はどこだと思いますか。 わたしがレイチェル(以下、レイチェル):安心感…ですかね(笑)? 私は地下アイドルも好きなんですけど、それに比べるとすごく安心感があるんです。衣装も上品な感じで、お嬢様っぽい膝丈の白いソックスとか、そういうところにグッと来るし、見ていて和やかな気持ちになります。同じ雰囲気を醸し出すアイドルは他にもいるとは思うんですけど、メジャーシーンでその雰囲気を全面に出しているのは乃木坂46がメインだと思います。曲もミドルテンポなものが多くて。 さやわか:乃木坂46の公式ライバルであるAKB48をはじめ、近年のアイドルってマッチョな体育会系で、言ってみれば「ラクロス部的な感じ」なんですよね(笑)。見た目は華やかだけど意外とハードというか。そういう意味で乃木坂46は、AKB48と対になるものとして、女の子たちの穏やかな人間関係を見せる、癒しを提供するグループという印象を受けます。もちろんAKB48も、女の子同士の人間関係が面白いグループではあるんですが、また一風変わったものがあります。
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左から、わたしがレイチェル氏、さやわか氏、香月孝史氏。

香月孝史(以下、香月):そうですね。AKB48には、女の子同士の仲の良い感じを楽しませつつ、運営側が恣意的な物語を頻繁に放り込んでくるので、戦わざるをえない状況が勝手にできてきます。ファンもそれに慣れきっていたところで乃木坂46を見ると安心します。一方でAKB48と比べて、物語の速度が遅いという見方もあります。 さやわか:それもある意味、AKB48に対する逆張りかと思いますが、たしかに見方によってはコンサバティブにも見えますね。ただ、あそこまで保守的な感じでやると、かえってラディカルな面白さがあります。ほかのアイドルグループがガツガツした感じでやっている中でゆったりとしていると、それが特異なものとして浮かび上がってくる。だからだんだん時間をかけて認知されるようになってきたわけですよね。面白いものだと気付かれるのに少し時間がかかる。 香月:単にコンサバティブというだけじゃなくて、AKB48のスピード感にみんなが慣れたところであの感じが放り込まれたので、ラディカルに見えるということですよね。 さやわか:AKB48と対比すると、まさに漫画なんかに登場するライバルキャラのように逆の個性が重視されていて面白いと思います。
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「生駒さんは兼任を『外からプロの空気を引っ張る』という気概でやっている」(香月)

――一方で、乃木坂46が「ライバルとして機能していないんじゃないか」という議論もあります。特に、今年2月に行われたAKB48の『大組閣祭り』で、グループの1つとして組み込まれ、生駒里奈がAKB48と兼任になったり、松井玲奈がSKE48から兼任メンバーとして加入するなど、外側からの刺激によって、話に出たような「ゆったり感」が変わってきているかもしれません。 香月:乃木坂46は、これまで基本的にAKB48グループとは交わらずにきましたが、『大組閣』で交換留学があった。一定数のファンは「そろそろ来るかもな」という覚悟は持っていたものの、それなりに拒否反応も出ていたことを覚えています。そして、生駒さんの兼任についても、ファンから「生駒さんはただでさえ乃木坂46で大きいものを背負っているのに、さらに重荷を背負わせるのか」という意見がありましたが、生駒さん自身はそれをポジティブに捉えている。また、生駒さんの言動を見ていると、「まだ世間に打ち出していくにあたって、自分たちのパフォーマンスは高い水準のものではない」という感覚を持っているようで、だからこそ「自分が外からプロの空気を引っ張ってくる」という気概で兼任活動をしているようです。 さやわか:僕も「その個性が外に伝わらなければ意味がない」と思っています。しかし彼女たちが持つゆったり感は、「私たち、ゆったりやってるんです」と言って見せつけるような出し方じゃないんですよね。「ゆったりやってます」「清楚系です」と明示的に打ち出していくやり方のアイドルグループもあると思うんですけど、乃木坂46はそうではない。だからこそ、最初に出てきた時から、「こんな穏やかなグループがライバルと言えるの? ライバルってもっと頑とした対決姿勢があるもんじゃないの?」と思わせるところがあった。しかし、結局のところそういう意味での“ライバル”ではないわけですね。逆張り的なコンセプトを打つという意味でのライバルなわけだから、だから、何とかしてそのゆったり感を派手に見せつけることなく、お客さんに感じ取ってもらわないといけない。そこには難しさはあります。セールス的には徐々に伸びていますし、知名度も少しずつ広がっているのですが、やはり単純に「AKB48グループ」というカテゴリの中で捉える方もまだまだ多いですよね。 レイチェル:たしかに、一般の人から見たら同じようなものに見えるかもしれませんね。 さやわか:同じグループ内のものとして見られてしまうと、地味な印象を与えてしまいがちですよね。そこで、『大組閣』に組み込んだり、AKB48ファンが喜ぶような路線の楽曲を作ったりして迎合する姿勢を見せたりもするんですが、そうすると今度は、グループの個性が変わってしまうということを懸念する人も出て来るというジレンマがあります。 香月:「公式ライバル」というような言葉で見る場合、多少キャラは違ってもAKB48と同じベクトルを目指していれば分かりやすいのですが(笑)。例えば、AKB48に姉妹グループとしてSKE48が誕生したときは、競合するという意味でのライバルにいずれなっていく存在として捉えやすかったと思うんです。しかし乃木坂46は、ライバルと銘打ちながら、楽曲の方向性や、舞台へのアプローチなど、ベクトルを違う部分に向けることで存在感を見せてきました。 ――“AKB48っぽい楽曲”という話が出ましたが、逆に“乃木坂46っぽい楽曲”を説明するとどういう表現になるのでしょう。 香月:象徴的なのは『君の名は希望』なのかな。 レイチェル:まさにそうですね。この曲で乃木坂46を知った人も多いと思います。 さやわか:ミドルテンポで、鍵盤とストリングスを多用した曲で、サウンドも散らかっていない。しっかりしたポップスにしようとしたら2回転くらいして80年代から90年代初頭のアイドルのような王道路線に着地したような楽曲という感じでしょうか。 香月:「王道アイドルソング」というと、AKB48が今のスタンダードになるのだと思いますが、乃木坂46の曲は今のアイドルシーンの王道、という意味ではなく「王道ポップス」という捉え方が一番しっくりくるのかもしれないですね。 さやわか:『ぐるぐるカーテン』、『おいでシャンプー』といった初期のシングル曲はフィル・スペクター調あるいはモータウン調のようなことをやっていました。ソニーが手掛けるアイドルということで、まずコンセプトの一つとして、音楽に重きを置いていたがゆえと思うんですけど、いわゆる楽曲派アイドルとは少し違って、もっと単純に、「普遍的で良質なポップス」を打ち出したかったのだと思います。ジャンルの選び方としてはウォール・オブ・サウンドやフレンチポップスをオシャレにやっていて、最初は渋谷系の手法に似ていると思いました。でも、「あえて」という押し出し感はないので、楽曲派だけに届くという狭い間口にはなっていない。そこが乃木坂46の特徴であり、面白いところだと思います。『君の名は希望』は、そうした路線の象徴といえる曲でしょう。
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「アンダーメンバーもすごく良いライブをするが、新規の獲得にはつながりにくいかも」(レイチェル)

香月:今回の『何度目の青空か?』も、おそらくそういう代表作をまたひとつ作ろう、という意識で出した楽曲に思えます。AKB48グループ全体のファンだけれど乃木坂46だけ知らない、という人は一定数いるので、去年の『ガールズルール』や今年の『夏のFree&Easy』のような“AKB48っぽい曲”で、AKB48のファンにもついでに聴いてもらおう、という方向に寄せているのかもしれません。そこを入り口にしてもらわないと、本当に閉じてしまいますから。 さやわか:正直なところ『ガールズルール』あたりから「あれ?そういうことなの?」「結局、水着でみんなで踊る系?」とは思ってました(笑)。さじ加減の難しいところなんでしょうね。乃木坂46の場合は最初からオリコンで上位を取れたので、いいスタートを切れたぶん、単純に良質な楽曲にこだわるだけでなく、その売り上げを伸ばしていかなければいけない。そういう意味で『ガールズルール』や『夏のFree&Easy』のような楽曲もまた必要なんだと思います。 ――AKB48が『夏祭り』のような大規模イベントを行うのに対して、乃木坂46は「お茶会」「かるた会」のようなイベントを開いています。このシステムについてはどう思いますか。 香月:着座の落ち着いた感じのイベントですね。 レイチェル:例えば川村真洋さんなんかはファンとも顔見知りになっていて、みんなで被り物を事前に合わせて持ち込んで、『不思議の国のアリス』のお茶会みたいな雰囲気で楽しんだそうです。 さやわか:ヲタ同士が、メンバーも含めてつながったコミュニティになっていると。 レイチェル:はい。メンバーによるとは思うのですが、全体的にまったりとした感じで、入れるファンの数も限られています。 香月:AKB48の『夏祭り』は、グループ全体での催しですね。特にAKB48名義のシングルが出る場合、AKB48グループ全体の注目株を吸い上げるような選抜システムになっていることもあり、握手会の来場者数やメンバーの総数が多くなった結果、イベントの規模が大きくなっています。 ――「専用劇場の有無」も、両グループの違いとして真っ先に挙げられるものです。 香月:選抜メンバーがある程度、固定化してくるのはどのグループも仕方のないことかもしれませんが、AKB48は劇場があることで、「劇場で頑張っているから総選挙のときに票が集まった」というように、選抜メンバー以外にもしっかりしたアプローチの場が用意されています。そういった意味では乃木坂46の場合、選抜・アンダー・研究生の全員が出演する演劇公演『16人のプリンシパル』がアピールのための場として代表的なもので、年間スケジュールの中でもかなり大きなイベントになっています。演技力を高めたいという方向性が強いのは乃木坂46の特徴であり、運営委員会の委員長である今野義雄さんも、『OVERTURE』のインタビューで「“劇団”のような女優集団を目指したい」ということを仰っています。ただ、受け取るファンの側はあくまでアイドルというジャンル――AKB48系のフォーマットを前提にして受け取るので、どうしても「他のグループだともっと活躍できたかもしれない子が、劇場がないから目立つ場がない」という基準で見られるのは仕方のないところですね。 レイチェル:アンダーメンバーもすごく良いライブをするんですが、選抜のメンバー推しや乃木坂46自体には興味が無い人はなかなか行かないと思うので、新規のファン獲得にはつながりにくいかもしれないです。 香月:『アンダーライブ』『アンダーライブ セカンド・シーズン』のメイン会場になっている六本木ブルーシアターもそこまで広い場所ではないので、最初から行きたいと思っているアンダーメンバーのファンでもチケットの争奪戦になります。興味を持った新規が後からチケットを獲るのは難しいですね。 レイチェル:その分、会場はみんなファンなので、普段アピールの場がないメンバーが歓声を浴びて一際かっこよく見えますし、アンダー推しの人はそこで報われていると思います! さやわか:ただ、アンダーライブに力を入れると、今どきの他アイドルの形に近づいていってしまう部分もあるので難しいですね。最近は、ライブ以外の路線の模索としてアイドルがステージで演劇をしたり、メンバーが個別に女優業に力を入れていたり、ということも目立ちますが、注目度が高いぶん、その方向で一番うまくいっているのが乃木坂46かもしれません。だからこそ、この路線を貫いて、業界にオルタナティブな提案ができたら素晴らしいですよね。 香月:他のグループでも女優志向のメンバーに個別で演技の仕事を取ってくることはありますけれど、これだけ大人数のグループが全体としてそれを志向する、というのは珍しい形です。 さやわか:その演技がMVで見れるのも魅力的ですね。AKB48がイメージビデオに近いのに対して、乃木坂46はドキュメンタリータッチだったり凝ったドラマ仕立てで、演技もしっかりしています。 香月:ともすればドラマの後ろに曲が鳴っているような。 さやわか:『バレッタ』も最初は「こんな物語でいいの?」とびっくりしたけど(笑)、ちゃんと先が気になるような話ですね。そういう意味で、保守的に見えながら実は実験的で、今の本流ではないものをいろいろやっている面白いグループです。 香月:少なくとも今のスタンダードにならっていたら絶対にこの方向には行きません(笑)。 (後編へ続く) (構成=中村拓海)
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乃木坂46『何度目の青空か?(DVD付C)』(ソニー・ミュージックレコーズ)

■リリース情報 『何度目の青空か?』 発売:2014年10月8日(水) 価格:初回仕様限定(CD+DVD)盤 Type-A、Type-B、Type-C 1,650円(税込)    通常盤(CDのみ) 1,050円(税込) 乃木坂46 official website

乃木坂46、歴代センターの系譜を振り返る 彼女たちはなぜセンターに選ばれたのか?

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乃木坂46『何度目の青空か?(DVD付A)』(ソニー・ミュージックレコーズ)

【リアルサウンドより】  1年前の10月6日、乃木坂46に激震が走ったのを覚えているだろうか。未だに「同グループ史上最高のライブ」との呼び声も高い、国立代々木競技場第一体育館での『真夏の全国ツアー2013 FINAL!』にて、7thシングル選抜メンバーの発表が行われた。衛藤美彩や中元日芽香、川後陽菜といった初選抜組の名前が読み上げられて盛り上がるなか、終盤の発表で会場は二度どよめいた。それは、前作でセンターを務めた白石麻衣がセンターから外れることが確定したとき、そして当時まだ研究生だった、2期生の堀未央奈がセンターに大抜擢されたときだった。  メンバーは冠番組『乃木坂って、どこ?』(テレビ東京系)の収録ですでに結果を知っており、ステージ上では次に向かう姿勢を見せていたが、その日の晩に放送された同番組は、当時の衝撃とメンバーの困惑がよくわかるものだった。  あれから1年が経ち、センターは堀未央奈から西野七瀬、生田絵梨花と2度変わり、センター経験者は計5名となった。乃木坂46が節目の10thシングルを出した今、改めてこれまでのセンターの系譜を振り返っていく。 1stシングル『ぐるぐるカーテン』から5thシングル『君の名は希望』までセンターを務めたのは生駒里奈。結成当初から粒ぞろいだった乃木坂46だが、生駒はその中でもカメラ映えするという武器をもっていた。初期の頃、キャプテン・桜井玲香や橋本奈々未はメディア映えが良くないと悩んでいるが、生駒はカメラで撮られる際に困ったことはないというほどだ。デビューの際にファン以外の一般人が乃木坂46を目にするのはやはりテレビや紙面などのマスメディアを通すことが多く、彼女のその魅力は大きな武器になったのである。  5枚のシングルを経て、6thシングル『ガールズルール』でセンターは生駒里奈から白石麻衣へと移り変わる。結成当初からトップクラスの人気を誇っていた彼女だが、それ以前はずっと2列目を務めており、フロントに立つのも同作が初めてだった。白石のセンター抜擢とともに、同い年の橋本奈々未、松村沙友理もフロントメンバーとして起用され、表題曲も今までの5枚とは異なる王道のアイドルソングが採用された。  白石がセンターとして与えられた使命はシンプルで、「乃木坂46をより多くの人に知ってもらうこと」だった。彼女の端整な容姿は、普段アイドルに目を向けない層を立ち止まらせるだけの力を持っている。加えてモデル業もこなす彼女は、女性ファン層を大きく広げることにも貢献した。シングルの売上がジャンプアップしたのも、『真夏の全国ツアー2013』が3000人規模で終わることなく、最終的に国立代々木競技場第一体育館という大きな会場でファイナルを迎えることができたのも、彼女がセンターを務めた期間で必死に乃木坂46をアピールしたからに他ならない。  白石を乃木坂46のセンターとして強く認識している方は少なくないだろうが、彼女がセンターを務めたのはグループの歴史上、『ガールズルール』のリリースから約半年の期間だけである。全国ツアーや『ガールズルール』を携えたプロモーション期間が長かったため、印象は強く残っているものの、実際は1枚のシングルでしかセンターに立っていない。乃木坂46の知名度が上がるにつれ、「アイドル・白石麻衣」と「モデル・白石麻衣」の需要は高まり、その極度の忙しさ故、彼女がセンターを務めるのは難しいということもあるかもしれない。  そして話は冒頭にあった、1年前の10月7日に戻る。国立代々木競技場第一体育館での『真夏の全国ツアー2013 FINAL!』での選抜発表に関しては、『乃木坂って、どこ?』のスケジュール上、放送より先に会場で選抜メンバーがサプライズ発表されるであろうと多くのファンが予想していた。このときの選抜発表の注目点とされたのは、白石麻衣のセンターは継続されるのか、あるいは生駒里奈がセンターに復帰するのか、はたまた新たなセンターが生まれるのかという点であり、そんな中で堀の名前が呼ばれたのだ。堀は『乃木坂って、どこ?』への出演も2回のみで、研究生という立場から、ブログもリレー方式でしか回ってこなかったため、多くのファンは彼女のことをまだよく知らない段階だった。そんな堀が抜擢されたことによる賛否の声が多数挙がるなか、堀は “前作のセンター白石を拳銃で撃ちぬく”という衝撃のMVが話題になった「バレッタ」と、「そんなバカな…」の両方でセンターを務め、『乃木坂46 Merry X'mas Show 2013』ではセンターとして堂々のパフォーマンスを披露した。  堀を巡るこの出来事は、結果として、1期生が2期生に対して真剣に向き合うきっかけを与えた。その後、『16人のプリンシパル』やアンダーライブを通してお互いの距離は縮まっていったのも、この最初の一歩があったからだろう。結局、『乃木坂って、どこ?』の放送で読まれた運営からの手紙の通り、1期生は堀を人気メンバーへと育て上げ、研究生も1期生とともに活動することで成長を遂げている。  2014年1月には、同番組にて8thシングル『気づいたら片想い』の選抜メンバーが発表された。ファンの間で色々な予想が飛び交う中、センターに選ばれたのは西野七瀬だった。1stシングルから継続して選抜に選ばれているメンバーではあるが、運営期待の星、というよりは、むしろファンとともに後列から成り上がってきた存在だ。ただ、白石麻衣と握手会での人気を争うような存在になっていた当時でも、彼女がセンターに立つことに不安を覚えるファンは多かった。それは、西野が極度の人見知りで、番組などで涙することも多く、グループを引っ張っていくようなタイプではなかったからだろう。後列から成り上がった西野に期待する声とともに、センターの重圧に西野が耐えられるのかと心配する声も多かった。シングルの発売前にはAKB48グループの『大組閣祭り』が行われ、生駒里奈と松井玲奈の“交換留学”が発表されたことにより、話題的は若干の逆風が吹いていたものの、いざ発売されると初動45万枚を記録し、多くの人が共感できるその楽曲からファンを増やすことにも成功している。  西野の魅力は、守りたくなるようなか弱さと切なさを持ちながら、握手会やライブではファンを魅了するパフォーマンスを発揮していることだ。『Rの法則』(NHK Eテレ)での性格診断でも【典型的アイドルタイプ】と診断されるなど、普段から人にくっつく寂しがり屋であることが結果的に人に愛される術を身につけている理由なのかもしれない。  そして、10thシングル『何度目の青空か?』の選抜メンバー発表前には、前2作『気づいたら片想い』『夏のFree&Easy』で西野がセンターを務めたため、今年はそのまま西野でいくのか、あるいはAKB48との兼任で成長を続ける生駒里奈がセンターに返り咲くかなど、様々な意見が挙がった。この3年の間で多くのメンバーが成長を遂げたため、センター未経験者も含めて選択肢が広がり、予想も今までで一番難しかったと思われるが、結果的にセンターに選ばれたのは、9thシングル期間内での休業から戻ってきた生田絵梨花だった。  これまで4人のセンター経験者が作り上げてきたものは、ひとまず生田絵梨花に委ねられた。初代センターの生駒里奈は、先頭に立ち周りのメンバーを引き立てないといけないと考えているが、休業でグループを客観的に見直し、以前よりもグループ全体のことを考えるようになったという生田なら心配はいらないだろう。舞台『虹のプレリュード』で主演を努め、先日放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日)ではピアノの生演奏を披露するなど、新センターとしてその才覚を全国に知らしめている。ただ、他の4人がそうであったように、センターに立つことで成長していく部分も多くあるだろう。センター生田絵梨花の歩みはまだ始まったばかりなのだ。 ■ポップス 平成生まれ、音楽業界勤務。Nogizaka Journalにて『乃木坂をよむ!』を寄稿。

UFOキャッチャーの音も作っていた! DREAMS COME TRUE中村正人の知られざる“偉業”とは?

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【リアルサウンドより】  DREAMS COME TRUEのベース・中村正人の活躍が最近目立っている。自身がMCを務める番組『LIVE MONSTER』では、大物~若手アーティストの魅力を引き出す軽快なトークを行う一方、ときには同じアーティストとしてゲストの音楽性やパーソナルな部分に切り込むMC術を披露。また、ドリカムのニューアルバム『ATTACK25』では、ファンクやソウル・ミュージック、フュージョンの要素を巧みに取り入れた楽曲群の作曲・編曲を手掛け、プレイヤーとしても安定したベースラインを弾きこなしている。  コンポーザー・プレイヤー・MCとして多面的に活躍を続ける中村には、実はあまり知られていない“偉業”もある。1991年に今なお根強い人気を誇るゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(メガドライブ版)、その翌年には『ソニック・ザ・ヘッジホック2』(メガドライブ版)でサウンドトラックを手掛け、一連の仕事は今もゲームの専門家・ファンの間で語り継がれているのだ。  中村は同ゲームでBGMを手掛けたほか、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』では、最後までクリアしたプレイヤーのみ聴くことができるエンディングテーマに、ドリカムの「SWEET SWEET SWEET」を提供。1991年の全国ツアー『WONDER3』ではツアートラックに同ゲームのキャラクターが描かれたほか、同年発表の『ニューUFOキャッチャー』(セガ)には、同ゲームのBGMが起用された。ちなみに同機種は、開発から20年以上経った今も全国のゲームセンターで人気を集める超メジャー筐体。そのサウンドに耳馴染みのある方は、かなりの数に上るはずである。
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『ソニック・ザ・ヘッジホッグ1&2 サウンドトラック/中村正人 from DREAMS COME TRUE』(ユニバーサルミュージック)

 その反響は世界にも広がっている。同ゲームのサウンドトラックが、誕生から20周年となる2011年に『ソニック・ザ・ヘッジホッグ1&2 サウンドトラック/中村正人 from DREAMS COME TRUE』として初CD化されると、意外な人物が反応した。 2012年5月に米音楽メディア『Dummy』で、世界的な知名度を誇るベーシストであるサンダーキャットが、「The 11 best bass guitar anthems」のひとつとして、中村の作曲した同ゲームの「Spring Yard Zone」を挙げて「一生頭から離れない、美しいメロディー」と絶賛したのだ。(参考:【The 11 best bass guitar anthems, according to Thundercat】)   今をときめく音楽家のフライング・ロータスも、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の音楽に魅了されたひとり。現在、東京・渋谷で開催されている『Red Bull Music Academy』のプログラムの一環として制作された、日本のゲームミュージックの歴史と魅力を紐解くドキュメンタリーシリーズ『DIGGIN' IN THE CARTS』の「Episode 4: クール・キッズ」では、フライング・ロータスがノリノリで『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の楽曲を鼻歌で歌っている様子が収録されている。同ドキュメンタリーでは、他にもサンダーキャットが「Spring Yard Zone」について「全部歌えちゃうよ。超ファンキーで、多分あの曲が俺にとってファンク・ミュージックの初体験だった」と語り、週刊ファミ通の元編集者で、現在はライターとして活躍するローリング内沢氏が「ソニックのクールさとポップさを上手に音楽に落とし込んでいて、ゲームをしながらJ-POPを聴いている印象もあった」と振り返るなど、中村の手がけたサウンドがゲームミュージックの可能性を広げた作品として評価されていることがわかる。(参考:【『DIGGIN' IN THE CARTS Episode 4: クール・キッズ』】  J-POPのトップアーティストとして、王道的なキャリアを歩んできたドリカムであるが、今回紹介した中村のサイドワークのように、意外性のあるエッセンスが作品に深みをもたらしている。そうしたバックグラウンドを踏まえて『ATTACK25』を聴くと、新たな音楽的発見があるのではないだろうか。 (文=編集部) 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ 1&2 サウンドトラック」購入はこちら amazon DCTSTORE

吉澤嘉代子が語る、“妄想力”を爆発させる方法「自分が生きている世界とは別の世界がある」

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【リアルサウンドより】  個性派シンガーソングライター吉澤嘉代子が、メジャーデビュー作『変身少女』に次ぐミニアルバム『幻倶楽部』を10月22日にリリースした。『変身少女』では「吉澤嘉代子=ラブリーポップス」というイメージを打ち出した彼女だが、今作ではローティーンの心情や、大人の恋を描いた曲など、その作品世界は大きな広がりを見せている。『変身少女』と『幻倶楽部』を経て、吉澤嘉代子が今表現しようとしていること、楽曲を作ることで大切にしている思いについて探った。

「芸風のお部屋がいくつかあって、作品を出すごとに違うものを見せていきたい」

――前作『変身少女』は吉澤さんのいう“ラブリーポップス”にフォーカスした作品でしたが、2ndミニアルバムの『幻倶楽部』では、吉澤さんの妄想力が全開となっている印象です。前作を踏まえて、どんな作品を作ろうと考えましたか。 吉澤嘉代子(以下、吉澤):前作は、世の中に出す最初のアルバムとして、間口の広い作品にしたいと思っていました。ただ、私の中には芸風のお部屋がいくつかあって、作品を出すごとに違うものを見せていきたいという思いがあって。今作のイメージは、秋だし、ちょっとおどろおどろしさというか、夏には耐えられない濃ゆい感じにしたいな、と。『変身少女』を出してからは、シンガーソングライターはどうしても歌詞の主人公と結び付けられる部分が大きいのか、世の中のイメージは「吉澤嘉代子=ラブリーポップス」という感じだったような気がします。でも今作はさすがに私と歌詞の主人公を結びつけることは難しいかな、と思います。例えば今作に収録している「恋愛倶楽部」だったら、主人公はローティーンの学生で、物語として描いている、ということが以前よりわかりやすく出ていると思います。 ――曲を書く時は、物語に描かれている人のプロフィールや設定は細かく作りこむのでしょうか? 吉澤:後づけしちゃう部分もありますけど、基本的には「こういう年齢や性格で」と考えてから作るのが好きですね。 ――では具体的に楽曲についてお聞きしますが、「うそつき」は禁断の恋をする女子高生といった物語を連想させる一方、大人の恋も想像できる曲ですね。 吉澤:この曲はサウンドがけっこう歌謡曲な雰囲気ですね。最初は五輪真弓さんになりきって歌入れをしようと思ってたんですけど、だんだんと「五輪真弓さんでは女子高生の世界を表せない!」と思って(笑)、もう少し少女っぽい部分も入れました。 ――この楽曲は恋に悩んでいるシチュエーションが描かれていますが、少女の暴力性ともいうべき部分、発想が暴走していく感じが表現されていて印象的です。前作のようなラブリーな面も吉澤さんの要素だと思いますが、このようなヘヴィーな部分は、昔からご自身の中にあったものですか? 吉澤:今回は「がらんどう」や「うそつき」のように、濃くて重い情念のある曲が多いように思います。でもそういうのって、自分自身と切り離せるので作りやすい面はあります。妄想爆発できるので。

「「どうしてなんだろう?」という疑問を持つことが大事かな」

――なるほど。サウンドにおいては、今作は昭和歌謡曲というニュアンスが入りつつ、モダンな演奏を展開しています。そのイメージは最初からあったのでしょうか? 吉澤:はい。「ケケケ」は、最初はソウルっぽいフィーバーしたイメージでした。でも、「悲劇の戦士」という歌詞から、「戦士といえば戦隊モノかな」と思って、そういう音楽を聴いてディレクターやアレンジャーと相談しました。それから「ちょっとちょうだい」は山口百恵さんの『美・サイレント』にインスピレーションを受けた部分があります。歌詞を言わないのがすごく新しいと思って、言葉を用意してあった部分で、口に手を当てて歌ったりしました。 ――「ケケケ」は今作の中でも重要な楽曲だと言えますよね。先日公開されたMV(参考記事「吉澤嘉代子、新曲MVでケケケダンス披露 振付けは「ゲラゲラポーのうた」でも話題のラッキィ池田」)でも思い切ったダンスを披露しています。 吉澤:「ケケケ」を作った時期が2年半くらい前で、ちょうど、みんなが当たり前に思うことに対して疑問を持つことが自分の中でブームになっていたんです。その中のひとつとして「ムダ毛」というものをふと考えたことがあって、そこからできた曲ですね。どういうことにしても「どうしてなんだろう?」という疑問を持つことが大事かなと思うんです。もちろん教育されることの中でしか自分の考えを育めないんですけど、大人になったらそれにプラスして自分で吸収していかないと、と考えた時期に作った曲です。 ――物事に対して、ひとつのイメージだけではなく、いろいろなものを見せたいという気持ちがあると? 吉澤:ありますね。そういうことで「ブレてる」とか「芯がない」と言われることもありますけど、私がやりたいことは自分のイメージを固定して売っていくことじゃなくて、自分の言葉で曲の世界を表現して、聴いてくれている方にそれを疑似体験して楽しんでもらうことなんです。私と曲をつなぐ一番大切なものは言葉なので、それが納得のいくものであればどんなサウンドや表現になっていても、私には違和感はなくて、ひとつの引き出しだと思っています。 ――確かに吉澤さんの楽曲は、言葉が重要なポイントですよね。 吉澤:曲の中で、人からすればそれが悲しい結末だったとしても、自分の中で「どうハッピーエンドなのか」ということをよく考えます。ハッピーエンドは自分が決めるものだと思っているので、主人公にとって望むべき姿なら、それがハッピーエンドです。それでいてその主人公の成長を描いているつもりです。例えば「がらんどう」は、恋を手放す話ですけど、人の手によってではなくて、自分自身で自分を満たすという結末が主人公の女の子の自立につながると思っています。形としてはラブソングではありますけど、人生の成長の話でもあるんです。 ――「邪魔になるなら心ごと 壊してしまいたかった 思い出もぜんぶね」というハッとさせる歌詞や、「許されないのなら いっそ あなたの恋人に抱かれたいと思った」というような想像を掻き立てる歌詞は、激情を肯定するようなスタンスを感じさせます。 吉澤:肯定してますね。自分に嘘をつけなくなっていく、というところに向かっています。 ――続く「恋愛倶楽部」にはどんな思いを込めているのでしょうか? 吉澤:「倶楽部」という当て字の漢字が好きで、タイトルに使いたかったんです。「恋愛倶楽部」というタイトル自体は最初は嫌だったんですけど、それは自分が「恋」に拒否反応をしているからなんだろうな、と思って、学校非公認のクラブに入る女の子の物語にしました。「恋愛倶楽部」ですから、普通に恋愛する話にはしたくなかったので、「思春期にとっての恋愛ってなんだろう?」と自分の子供の頃の気持ちを思い出しながら考えて。その頃の恋愛って、もちろん成就に向かってグツグツ煮えるんですけど、実際に恋が叶ってしまうと相手のことが気持ち悪くなってしまったりすることもあって。この曲にはそういう残酷さを出したいと思いました。そういう気持ちって懐かしいものでもあるし、憧れでもあります。こんなクラブがあったら楽しかっただろうなと思いますね。

「私の曲を聴いて別の世界を感じてドキドキしたりワクワクしてくれたら」

――そのようにいろいろな主人公の曲を書かれていますが、作者である吉澤さんはそれに対してどのような位置にいますか? 吉澤:いろいろな書き方がありますけど、自分自身として書いてしまうことも何曲かあります。でも最近は自分とは切り離したものとして書くことが多いですね。なので自分の曲に自分で共感してないこともあって。例えば「恋愛倶楽部」の「みんなのアドバイス「男はエクレア」」とか、男はエクレアだと思ってるわけではないですし(笑)。その主人公の年齢や性格によって信じていることは違うと思うので、この時期は友達の意見が絶対で思い込みの激しい時期だし、例えば「がらんどう」は少しずついろんなことに気づいていく時期だし、「シーラカンス通り」はもっと悟った、私よりもずっと大人、というように書いています。 ――今のJ-POP界では歌詞は“共感”がひとつのキーワードでもあります。吉澤さんの曲はそれとは違うものを目指しているようにも感じますが、聴き手とのコミュニケーションについてはどう捉えていますか。 吉澤:私は子供の頃から小説を読んでいて、主人公に対して共感するというよりも、国籍も年齢も性別も性格も違う主人公になりきってドキドキしたりワクワクする感覚を強く持っていました。自分が生きている世界とは別の世界がある、という感覚は、逃げ道でもあるのかもしれませんけど、読みかけの本があるうちはそういう場所に守られている気がしていました。もちろん聴いてくれた方にはどんなふうに届いても嬉しいですし、曲と小説は違うものですけど、私の曲を聴いて別の世界を感じてドキドキしたりワクワクしてくれたらな、と思っています。 ――どんな小説が、今歌詞を書く上で吉澤さんの糧になってきましたか? 吉澤:一番好きなのはいしいしんじさんの小説です。梨木香歩さんや姫野カオルコさんも好きでした。少し前の時代の人は星新一さんくらいしか読んだことがなくて、大学に入ってから純文学を読むようになりました。短歌も好きなので、そういうものは言葉を書く上で糧になっていると思います。本を読むことは子供の頃は音楽以上に大事なものでしたね。 ――歌も含めた日本語による芸術には、短歌や俳句の歴史なども背景にありますから、追求すると奥が深いですね。 吉澤:もし小説を書こうしたら頭がパンクしたと思いますけれど、メロディに乗せることで自分のものになるようなところがあると思います。双方で補い合えるので、何の変哲もない言葉でもメロディで特別なものにできるんです。「歌詞を書いているとメロディが乗ってくる」と思えるときが一番相性のいいものができていて、今作で歌っていて気持ちいいのは「ちょっとちょうだい」ですね。タイトルから考えて、言葉を考えながらメロディが乗ってきたので、スッとできた曲です。メロディと言葉をバラバラに作っていたらこうはならなかった気がします。 ――メジャーデビューから今作で2枚のミニアルバムをリリースしましたが、今後のプランはどのようなものでしょうか? 吉澤:ひとつのテーマに沿って作品を作る上でミニアルバムは一番理想的なので、今後も作っていきたいですね。例えば映画をテーマにしたものとか。でも今作は「恋愛倶楽部」のような可愛らしい曲や、「ちょっとちょうだい」のような畳み掛ける曲から、「がらんどう」のような王道のものまで、それぞれ曲調がバラバラなので、どうやってまとめようか、と思っていたんです。そこから曲の主人公たちが入っている秘密クラブのようなイメージが湧いて、「幻倶楽部」というアルバムタイトルをつけて、「そこに潜入する探偵」というテーマでアルバム全体の主人公を作りました。ジャケット写真はそのイメージです。前作の『変身少女』と並べると前回の私と今回の私でだいぶ違いますね。 ――11月からは大阪の梅田シャングリラ、東京のTSUTAYA O-EAST、名古屋のTOKUZOと3ヶ所でのツアーがありますね。 吉澤:みんなが主人公になってくれるような気持ちで「妄想文化祭」というツアータイトルをつけました。3会場とも違う個性があるので、それを活かしたライブにできたら一番良いと思います。 (取材=神谷弘一/構成=高木智史)
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吉澤嘉代子『幻倶楽部』(日本クラウン)

■リリース情報 『幻倶楽部』 2014年10月22日 ¥1,667(税抜) 〈収録曲」 1.ケケケ 2.シーラカンス通り 3.うそつき 4.恋愛倶楽部 5.ちょっとちょうだい 6.がらんどう ■ツアー情報 「吉澤嘉代子ファーストツアー ~妄想文化祭~ 」 11月22日(土) 大阪・梅田シャングリラ OPEN17:00 / START18:00 11月27日(木) 東京・TSUTAYA O-EAST OPEN18:00 / START19:00 12月4日(木) 名古屋・TOKUZO  OPEN18:00 / START19:00 ■オフィシャルWEB:http://yoshizawakayoko.com/

ドラムとキーボードが歌い、ダンサーが盛り上げる Gacharic Spinの“エンタメ力”に迫る

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Gacharic Spin『ガチャっとBEST<2010-2014> 【Limited Edition】TYPE-G』(ビクターエンタテインメント)

【リアルサウンドより】  アイドル性、アニメ的アイコン、そしてガールズバンド……。分野をまたがる“女子”要素を兼ね備えている存在がいる。10月1日にメジャーデビューを果たした、Gacharic Spin(ガチャリックスピン、通称:ガチャピン)だ。しかしながら、“カワイイ”を売りにしているというわけではない。卓越した演奏力、スピード感、緊張感、そして攻撃性、どれをとってみても並のガールズバンドではない。アクの強さともいうべきキャラ立ちの個性とともに、聴く者、観る者を圧倒させる破壊力を持つ“全力エンターテイメントガールズバンド”の魅力に迫ってみたい。

Gacharic Spinとは?

Gacharic Spin/ガチャっとBEST<2010-2014>商品概要トレーラー映像

 ギター、ベース、ドラム、キーボード、センターボーカルがいない上にダンサー2人という、奇抜な編成。ハードなサウンドと派手な出で立ちは、まさにガチャガチャしたつかみどころのないバンドである。最初はインパクトの強さに戸惑いつつも、しっかり聴けば、目を見張る凄腕揃いの演奏陣と秀逸なアレンジ、キャッチーなメロディーなど、楽曲クオリティの高さに気が付くはずだ。  はなの力強い歌声と、歌いながらとは思えないパワフルなドラミング、F チョッパー KOGAの頭を振り乱しながらの超絶技巧スラップベース、TOMO-ZOの笑顔振りまきながらしれっと繰り出すギターテク、オレオレオナのセクシーキーボードプレイ、まい・ありさのキレキレのパフォーマンス。「ここまでやるか?」と思わずにはいられない予想の斜め上を行くネタ要素満載の発想と演出は、バンドの既成概念すら覆してしまう。観て、聴いて楽しむことのできる彼女たちの存在は圧巻としか言いようがないのだ。

凄腕プレイヤー集団

 元グラビアアイドル出身という異例の出自ながら、そのルックスからは想像のつかないパフォーマンスとテクニカルプレイで魅了するF チョッパー KOGAの存在は楽器経験者であるなら、機材誌などで目にしたことがあるかもしれない。(参考記事:三好春奈(HaKU)、Hisayo、かわいしのぶ……センスが光る女性ベーシスト6選 )  腕が立つのは彼女だけではない。ドラムのはな、ギターTOMO-ZO、それぞれが教則DVDをリリースしているほどの凄腕プレイヤー集団なのだ。 AKB48がバンド結成した『GIVE ME FIVE!』の演奏・パフォーマンス指導も彼女たちが担当している。 アメリカのハイエンドギターメーカー、ポール・リード・スミスが数少ない日本人プレイヤーとしてコラボしていることからも、その実力は折り紙付きである。  テクニカルプレイヤーとしても定評のある彼女たちではあるが、これみよがしな速弾きなどの個人プレイには走らない。楽曲と歌を前面に出し、プレイはあくまでアレンジの一環であり、適材適所に見せる飛び道具である。一丸となったバンドサウンドを第一に考える姿勢だ。

危機を乗り越えて進化を遂げた

 通常のバンドの枠に収まりきらない彼女たちのエンターテイメント性は、始めから備わっていたわけではなかった。メンバーチェンジなど、逆境に見舞われた末に進化を遂げたのが、今の姿である。  THE PINK☆PANDAを脱退したFチョッパーKOGAが、かつてのバンド仲間である、はなと共に組んだところからガチャピンは始まっている。当初はフロントマンとしてのボーカリストがいる普通のロックバンド編成だった。しかし、2012年にボーカル・Armmyの脱退というアクシデントに見舞われる。だが、リードボーカル不在という危機を、バンドと交友のある様々なボーカリストを迎えることで、ワンマンを含めたツアー、そして初の海外ツアーを成功させている。

「ドールズ・コレクション」Special Trailer/DOLL$BOXX

 この時期にガチャピンのサイドプロジェクトとして、サポートとして参加したLIGHT BRINGERのボーカリスト・Fukiを迎え入れた形のバンド、DOLL$BOXX(ドールズボックス)が始動する。ハードロック・ヘヴィメタルをベースとしたサウンドはガチャピンとは一味違った硬派なバンドとしての側面を垣間見ることが出来る。この経験がバンドとして更なる飛躍に繋がったことは言うまでもないだろう。

GacharicSpin / 『ヌーディリズム』スポット

 バンドとして最大の危機を迎えたガチャピンだが、新たなボーカリストを迎えることなく、ドラム・はなとキーボード・オレオレナによるツインボーカル体制で新たな姿を見せていくことになる。ボーカリストとして、ギタリストとしてもバンドデビュー経験のある、パワフルなはなの歌と、ピアノ弾き語りシンガーソングライターとして活動していたレオナのしなやかな歌。タイプの違う二人のボーカリストは楽曲の振り幅を広げ、二人とも楽器を演奏しながら歌い上げるという姿は、見え方においてもバンドの強烈な個性であり、武器となっていった。

最強・最狂の全力エンターテイメント

 年間100本にのぼるライブをこなす、生え抜きのライブバンドである彼女たちはパフォーマンスに徹底的なこだわりを見せる。ギターのTOMO-ZOが加入した際も楽曲を覚えることよりもまず、“ギター回し”を習得したという。ストラップが外れないように楽器をガムテープでぐるぐる巻きに固定するなどの工夫は、 何かと見た目にこだわる女性プレイヤーが多い中、なかなか出来ない発想だろう。  楽器を演奏しながら歌うという形態は、センターボーカリストのようなライブにおける煽りが出来ないというマイナス面がある。それを補うべく、バンドはパフォーマーを加入するという奇策に出る。1号 まいと2号 ありさは、ダンサーであると同時にあくまでパフォーマーであり、盛り上げ役である。今や、煽りと演出上の仕掛けとしてなくてはならない起爆剤となっている。バンドの顔、フロントマンの不在を逆手に取り、様々なアイデアとメンバー各々の見せ方を徹底することによって“全員が主役”ともいうべき、強烈な個性のぶつかり合いのバンドとして変貌していったのだ。

Gacharic Spin Never Say Never 7/16 Bass Magazine Presents The Power of Low-End

 一見、コミカルに見られがちなGacharic Spinだが、バンドと音楽に対する姿勢は生半可なものではない。確かな実力に裏付けされた徹底的な全力エンターテイメントは、原宿アストロホールに始まり、リキッドルーム、Zepp DiverCity、そして来年5月に決定している渋谷公会堂と、 実戦と口コミで着実に動員を伸ばしている。よもやガールズバンドという肩書きなど必要のないとさえ思える、アグレッシブでストイックな活動は今後もますます旋風を巻き起こしてくれるに違いないだろう。 ■冬将軍 音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

Coccoの歌声はなぜ“気迫”に満ちているのか 新作『プランC』と舞台活動から探る

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【リアルサウンドより】  Coccoが、通算8枚目のアルバム『プランC』をリリースした。  バレエ用語で「繋ぎ・間」を意味する言葉をタイトルに冠したミニアルバム『パ・ド・ブレ』を今年3月にリリースしたものの、フルアルバムとしては本作が約4年ぶりのリリースとなる。その間、Coccoは、エッセイ集や個展の開催、映画や舞台への出演と、その活動の幅を音楽だけでなくカルチャー全体に広げていた。その一方、ライブ活動はほとんど行わず、フェスへの出演やメディア露出などもかなり少なくなっていた。  それでも、ニューアルバムを聴けば、Coccoの歌が持つ生来の“気迫”のようなものがありありと伝わってくる。聴き応えこそポップな仕上がりだが、声に宿る無類の力強さと繊細さは変わっていない。そして新作は、ここ数年の活動がきちんと結実した一枚にもなっている。  そのキーポイントになっているのが、演技への挑戦だ。  今年1月には主演をつとめた舞台『ジルゼの事情』が公開され、9月には好評につき規模を拡大して再演も行われた。Coccoにとっては初の舞台出演となったが、沖縄芝居の第一人者として知られる真喜志康忠を祖父に持つ彼女にとって、舞台俳優としての道はずっとイメージしていたものでもあったはずだ。  そしてもう一つが、『ジルゼの事情』でも大きなモチーフとなっていた、バレエへの愛情だ。舞台の脚本と演出を担当したのは劇団鹿殺しの丸尾丸一郎だったが、古典バレエ『ジゼル』を原案にした舞台を行うというアイディア自体はCocco自身が持ちかけたものだったという。Coccoがバレリーナに憧れて育ってきたというのは、よく知られた話。歌手ではなくバレエのオーディションを受ける中でふと応募した音楽オーディションをきっかけにデビューして今に至るというキャリアの持ち主でもある。『ジルゼの事情』で彼女が演じた主役・汁是優子も、やはりバレリーナに憧れて少女時代を過ごした背景を持つキャラクター。クライマックスでは白いドレスをまとって劇中歌「ドロリーナ・ジルゼ」を朗々と歌い、そして舞台中央でバレエを舞っていた。今年2月、ここ数年では彼女の数少ないライブの機会となった「ビクターロック祭り」のステージでもこの「ドロリーナ・ジルゼ」は披露され、そこでもCoccoは軽やかなステップやスピンを見せていた。

Cocco - ドロリーナ・ジルゼ【Music Video (Short Ver.)】

 アルバムのリリースに至る背景にも、Coccoのバレエやダンスに対する情熱が大きな役割を果たしている。雑誌『papyrus』(2014年10月号)に掲載されたインタビューでは、Coccoはアルバムの制作のきっかけについて、こんな風に語っている。  「ダンスをやりたいんだけど、パートナーがいないとできないから、山川っていう幼なじみにパートナーをやってってお願いしたら、やだって言われて。願い事を1個叶えてあげるから、一緒に踊るっていう私の願いを叶えてほしい、それを交換条件にしようって言ったら、ネギ(根岸孝旨)とレコーディングした曲を聴きたいって言うから、オッケー、そんなのすぐだよって。それですぐにネギに電話をして、ダンスするからレコーディングしようって言ってできたのが、「たぶんチャチャチャ」っていう曲」  アルバムでは、デビュー以来の盟友でもあるその根岸孝旨が全13曲中10曲でサウンドアレンジを手掛けている。ラストの壮大なバラード「コスモロジー」はバンドSINGER SONGERでもステージを共にした堀江博久、そしてEDMテイストを導入した「パンダにバナナ」と「3D」は、西川貴教率いるabingdon boys schoolのメンバーでもある岸利至がサウンドアレンジを担当。軽快なダンスポップの「パンダにバナナ」はリード曲にもなり、このアルバムのキャッチーな新機軸を象徴している。

Cocco - パンダにバナナ 【MUSIC VIDEO】(short ver.)

 また、壮大なピアノバラードの「Snowing」は、11月8日から公開される柳楽優弥主演の映画『最後の命』の主題歌となることが決まっている。

「最後の命」 本予告編

 アルバムタイトルの『プランC』は、プランA(=第一希望)に対する第二希望、第三希望の意味合いがこめられているらしい。通らなかったプランAに固執するのではなく、プランCでも受け入れてやっていこうという思いがその背後にあるそうだ。ここからは深読みになるが、そもそもバレリーナになることが「プランA」だったCocco自身にとっても、自らの生き方や歩んできた道を肯定的にとらえた言葉になっているのではないだろうか?  前述の『papyrus』のインタビューでは「最後にちゃんとありがとうと伝えないといけないなって」「そろそろ表舞台はいいんじゃないかなと思ってる」と引退も仄めかしていたCocco。しかし、生命力の迸りを感じさせるその無類の歌声は、まだまだ沢山の人たちに強く求められているはずだ。  さらなる活躍を期待している。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter
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Cocco『プランC』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『プランC』 発売:2014年10月8日 ◆初回限定盤A CD+DVD+写真集 「BEAUTIFUL DAYS」、スペシャルパッケージ仕様 ¥5,500(税抜) ◆初回限定盤 BCD+DVD ¥3,500(税抜) ※特典DVDの内容は初回限定盤A,Bとも同じものになります ◆通常盤 CD ¥3,000(税抜) 〈収録曲〉 01. パンダにバナナ 02. ドロリーナ・ジルゼ 03. たぶんチャチャチャ 04. バスケット 05. ドレミ 06. BEAUTIFUL DAYS 07. 3D 08. 嘘八百六十九 09. Juliet 10. Snowing 11. スティンガーZ 12. ハミングバードと星の砂 13. コスモロジー 【初回限定盤DVD収録内容】 ※初回限定盤A、B共通 01.パンダにバナナ (MUSIC VIDEO)

バンドじゃないもん!みさこ×ゆるめるモ!あの対談 「つらくても『余裕です』って顔をしたい」

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【リアルサウンドより】  メンバーの半分が楽器を演奏し歌い踊るバンドじゃないもん!と、“ニューウェーヴアイドルグループ”のゆるめるモ!。アイドル界でも異端の2組が10月21日にツーマンライブ『月見ル10周年記念「あっぱれむむむ~ん!!!」』を開催する。バンドじゃないもん!は今春、甘夏ゆずとちゃんもも◎こと天照大桃子が加入して世間を驚かせ、ゆるめるモ!は先日リキッドルームでワンマンを開催し、会場を満員の観客で埋めるなど、ともに話題の絶えない2組だ。今回リアルサウンドではバンドじゃないもん!のリーダーであるみさこと、彼女の大ファンでもある、あのとの対談を実施。司会に音楽評論家の宗像明将氏を迎え、両者の親交や互いの印象、さらには活動を続けるなかでの悩みやライブへの意気込みなどを大いに語ってもらった。

「Twitterのアカウントもいくつか持ってたけど、全部フォロー返してくれた」(あの)

――10月21日にバンドじゃないもん!とゆるめるモ!のツーマンライヴ「月見ル10周年記念『あっぱれむむむ~ん!!!』」が開催されるわけですが、お互いのアイドルとしてのイメージってどんな印象ですか? みさこ:ゆるめるモ!は最初クラウドファンディング(ゆるめるモ!は以前CD制作のための資金を募っていた)で知ってて、あのちゃんが入るときにTwitterで「いつか対バンしたいです」って連絡くれて、みるみる間に一緒に出ることが増えて嬉しくて。ゆるめるモ!のクラウドファンディングでは「これは資金を送りたくなるな」と思ってました。それは、逆境を乗り越えるアイドルは応援したくなるけど、ゆるめるモ!は最初から何かに挫折してる女の子たちで、今までになかったアイドルだから、その時点で気になってて。 ――加入のときにあのちゃんがみさこさんに連絡してたんですね。 あの:全然覚えてない……。 ――そんな重大なこと忘れないでください! みさこ:普通に以前から応援してくれていて、私もフォローを返してたんで。 あの:ゆるめるモ!に入る前からみさこさんのことが好きで、Twitterのアカウントもいくつか持ってたんですけど、全部フォロー返してくれました。 ――あのちゃんの複数のアカウントをみさこさんがフォローしていた、と。 みさこ:それは今初めて知りました(笑)。 あの:神聖かまってちゃんのドラムも、みさこさんの存在自体もすごく好きでした。神聖かまってちゃんにみさこさんがいることで安心感がでるし、いるといないで全然違うと思う。「一番重要だな」って思ってました。女の子でちょっと変わってて面白くて、でもドラムを叩くとすごくパワフルだから好きでした。楽器かっこいいな、楽しそうだな、って。 ――そのふたりがやがて同じステージに立つことになったわけですね。ふたりとも、もともとアイドルをしてた人ではないことが共通してますよね。みさこさんはバンド、あのちゃんは引きこもり、って言うとアレですが……。 あの:いや、その通りです。 みさこ:気になってた、どうしてゆるめるモ!に入ったの? あの:すごいネットをやってたから応募の情報が回ってきて、学校も全然行ってなくて引きこもってるときに「このままだとダメだな」って思って。応募の項目に「音楽好きな人、逃げてる人」ってあって「楽勝じゃん!」って思って応募したんですけど、「面接に来てください」って連絡が来たら「やだな」って思っちゃって。自信がないし、外に出るの面倒くさいし、メールをシカトしてたんですけど、しつこく「ライヴだけでも見てください」って連絡が来て、面接とか何もしなかったんですけど「入ってほしい」と言われて。 みさこ:私も似たような気持ちで、歯医者の予約をよくすっぽかすんですけど(笑)。 あの:そのぐらい気持ちで応募したから。メール送るだけだし。 ――みさこさんはバンドじゃないもん!の初期、2011年ごろ、アイドルと対バンするたびによく号泣してましたよね。 みさこ:うらやましかった。今は完全に吹っ切れたけど、一番思ったのは東京女子流さんを見たとき。今でこそDIYじゃないとダメだと思うし、それでこそいいものができると思ってるから売りにしてるけど、当時はよりすぐった完璧なメンツが、完璧な振り付けで、完璧な演出で、完璧なパフォーマンスをしてる感じがすごくうらやましくて。悔しかったし、でも本当に良かったし、感動と悔しい気持ちが全部混ざって、感情が一定値を超えて涙になった感じでした。 ――あのちゃんはバンドじゃないもん!にどのぐらい興味持ってました? あの:「ショコラ・ラブ」はYouTubeで見たんですけど……変態? みさこ:変わり種みたいな曲しか作ってなかったから(笑)。 あの:でも変わってるの好きだから「面白いな」って思って見てました。「ショコラ・ラブ」と「パヒパヒ」。 ――ふたりは実際にアイドルをやってみてどうでした? みさこ:昔は可愛い子しかできないかなと思ってたけど、それじゃないものを求めてくれる人が多いんだな、ってすごく思います。頑張る姿を応援してくれるのかもしれないなと思うことがすごく多いです。 ――それに応えられてると思いますか? みさこ:自分から苦労してると言いたくないし、バンドじゃないもん!はそれを絶対やりたくない人たち(笑)。逆境を乗り越えることを言いたくない。それはゆるめるモ!も同じだと思うけど、よりポップにやりたいんです。「苦しんでる女の子」を出し過ぎても女の子が救われない感じがするし。 ――アイドルをやってみた感想が、ヲタについての感想とかではなくて、「自分が何を求められてるか」っていう視点なのは、バンドを経験してるエンターテイナーの発想だな、って感じます。あのちゃんはアイドルをしてみてどうでした? あの:アイドルとして求められるものがなかなかできない自分がいて。何年も経ってないことだからこれから乗り越えたいんですけど、あんまり枠にはまったりもしたくない。元から完成されてるものではなくて、頑張ってる姿も必要かなと思うので、頑張る、人に、なりたいと思います……(笑)。 みさこ:私は、つらいことがあってもまっすぐに生きてる人には共感できないんですよ(笑)。ゆるめるモ!の人たちは、絶対に曲がり道をしてるんだけど、上に向かっているところにキュンとします。そのぶん、ひねくれてるところも出てほしいけど、着実に上に進んでほしいなと思います。楽曲もストレートすぎず、ちょっとひねくれてるし。 あの:つらい面をあんまり出さないのとかも、すごく共感します。頑張ってるのも個人的には出し過ぎたくない、「余裕です」って顔をしたい。
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「アイドルが売るのは音楽『だけ』ではない」(みさこ)

――あのちゃんは現場で何をヲタから求められてると思いますか? あの:最初何もできない感じで、ダンスも歌もうまくないし、人一倍努力しなくちゃいけないし、でも「その姿がいい」って言ってくれる人もいて、「途中経過のもがいてる感じ」が求められてそう。 みさこ:あと圧倒的にかわいい! 可愛くて頑張ってる。可愛くていろいろできる子は腐るほどいるけど、成長過程って大事。私も遅咲きなんで、まだ成長過程なんです(笑)。 バンドと圧倒的に違うのは、アイドルが売るのは音楽「だけ」ではないこと。それ以外の付加価値がすごく大きい。あえて言うとアートだと思うし。 ――その「付加価値」の部分って、あのちゃんの人間としての感情の揺れがときどき見えることも含まれる気がします。 みさこ:常に素じゃないんだけと、ときどきポロッと見えるのがいい。この間のツイキャスをそっと見てたんだけど(笑)。 あの:まじか!(笑)。 みさこ:コメントはしないでそっと見ながら「頑張れ」って応援してました(笑)。なかには心ないことを言う人もいるから、私も一緒に受け止めてます。グサッて(笑)。 ――心ないことを言う人がいるとき、あのちゃんはどう感じてるんですか? あの:最初は傷ついたし、スルースキルがなくて。 みさこ:受け止めすぎそう(笑)。 あの そうなんです、倍傷ついちゃってると自覚してるんですよ。でも、最近慣れてきて、そんなに気にしなくなってるし、むしろ気にしてくれるのが嬉しい。 ――アイドルって発言が制約される部分ってあるじゃないですか。みさこさんは、バンドじゃないもん!の売り方について、ファンの意見に反論することもありましたよね。 みさこ:意見自体に怒ってたわけではなくて、私が読んでるとわかったほうがいいのか、良くないのか、どっちをみんなが求めてるのかわからなくて、意図的に反応するようにしてたんですよ。でも、神聖かまってちゃんのメンバーにも「ああいうのはやめたほうがいい」と言われて、「あ、私はしないほうがいいんだな」とわかったので、今はとことんスルーするか、ネガティヴすぎない意見にはポジティヴに返してる感じです。反論じゃないんだよって。私の意見を少しでも伝えたいと思ってます。 ――あのちゃんも反論したくなるときありませんか? あの:あります(笑)。 みさこ:嘘とか腹立つしね、「それは違う」って言いたいだけなんだけど。 あの:否定になっちゃうより自分の意見として発信したほうがいいと思ってて。心配されても「大丈夫」って返してます。 みさこ:あのちゃんは今本当にアイドルだから、「つらい、やめよう」とはならないだろうし、自分なりの方法を見つけるだろうと思うから心配はないです。ライヴもTwitterも、人に見られることをきちんと意識してるな、ってすごく思うから。 あの:そう、最初の頃は全然意識してなくて、Twitterの使い方も最近わかってきて。 ――前はいっぱいアカウント持ってたのに最近わかったんですか!? あの:そのときは一般人の感じだったから気にしなかったんですけど、その流れのまま来ちゃったから、こうやって時間が経って叩かれたりして、いろいろわかるようになってきました。
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「自分よりヲタさんが心配」(あの)

――あのちゃんは去年の9月にゆるめるモ!に加入したからやっと13ヶ月。感覚的には長いですか、短いですか? あの:短いですね。 ――ステージの先輩のみさこさんに聞いてみたいことはありませんか? あの:うん……。 みさこ:なさそう(笑)。 あの:でも、グループをふたつやってるじゃないですか、それは本当にすごいなって思ってて、「大丈夫かな」って心配になるときもある。バンドのときもそうだし、昔バンドじゃないもん!がふたりのときも、叩かれてるコメントを見ると、逆に一緒に傷ついてた。 みさこ:ありがたい。今は未来が明るいから気になんなくなってきた。上に行っていろんなものが返って来たら、何も言われなくなるだろうなと思うし。神聖かまってちゃんは好きで、バンドじゃないもん!は応援できない人もいるし、その人の気持ちは私もわかるから、一旦嫌われても仕方ないかなって思ってるし、最終的にバンドじゃないもん!が窓口になって、神聖かまってちゃんに還元できるレベルになればいいかな、って。 ――あのちゃんから見て、ふたつやっているみさこさんは特別な人に見えますか? あの:や、なんか、レベルが何万だろ、って思ってる(笑)。 みさこ:バンドなら掛け持ちしてる人けっこういるじゃん。 あの:アイドルだと極端に違う部分もあるから難しそうだな…って。 みさこ:難しい。やってみたら私より周りが気にするんだな、って。私としては「バンドをふたつ掛け持ちしてる人もいる」ぐらいの気分だったから。たとえばバンド解散後にまた似たような系統の音楽をするアーティストにあんまり好感を持てないし、「だったら解散しなきゃ良かったじゃん」って思うタイプだから、神聖かまってちゃんとバンドじゃないもん!でやりたいことは別物にしたかったし、だからこそふたつやる意味があると思うし。結果としてはすごく良かったんだけど、意外にネガティヴな意見をもらうこともあるんだな、ってやってみて感じました。 あの:それを比較する人も出てくるし……。 みさこ:出てくるし、バンドじゃないもん!を売るために神聖かまってちゃんをやってるって思ってる人もいるだろうし、神聖かまってちゃんを大事にしてないと思う人もいるだろうけれど、「それは全然違う」って言いたい。 ――こういうみさこさんは、あのちゃんから見るとパワフルに見えます? あの:すごくパワフルだし、栄養失調してないかなって。 みさこ:ビタミン剤は飲んでる(笑)。 あの:良かった、栄養を摂る時間あるのかなって思ってたので(笑)。 みさこ:でも、私からすると、あのちゃんは元からそんなに体が強くないのに、地方の後にまた関東でライヴとか、たくさんライヴしてるから、私よりもあのちゃんが大変そうに見える(笑)。 あの:体調を崩しやすいんですけど、体調を保つ秘訣って……? みさこ:私は休みの日にしか熱を出さないんで、握手会に参加できないときはあったけど、ライヴに穴を開けないんです。たぶん自律神経がすごくしっかりしていて、細胞がしっかりしてる。細胞に感謝してます(笑)。ゆるめるモ!のほうがめっちゃライヴしてるイメージ。 あの:めっちゃしてます。 みさこ:毎回現場に来てくれるヲタさんいる? あの:います。 みさこ:いるよね、ヲタさんどんな生活してるんだろう(笑)。どんな仕事してるだろうって聞いたら、夜勤とかで「本当に大変だ」って! あの:自分よりヲタさんが心配。 みさこ:うちらそれだけやってればいいからね。最終的に一番大変なのはヲタさん(笑)。 ――ファン同士の関係って気にします? みさこ:喧嘩はしてほしくない! 一緒にいること前提で、嫌なところを言い合う喧嘩だったらしていいと思うけど。 あの:けっこう前にそういうのがあったけど、やめてほしかったし……。 みさこ:でも言えないしね。 あの:メンバーが首つっこむとこじゃないし。でも、それで「現場に来ない」とかなっちゃうのが嫌で。お互いが意見の言い合いならいいんですけど、矛盾しながらヒートアップしてくのは嫌ですね。 ――Twitterは、バンドじゃないもん!はメンバーで使い方がバラバラだけど、ゆるめるモ!はけっこう早い段階でフォローは関係者のみにしてましたね。 あの:でも、つながりで倍賞金を払わなくていいじゃないですか。 ――危険球を投げてきましたね! あの:そういうの面倒というか、お互いにいいことがないから、安全のためならいいのかなって思いました。
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「考えた結果、『今はエゴサしなきゃダメだ』という結果になりました」(みさこ)

――ふたりともいるのはグループじゃないですか。その中での自分の立ち位置は気にしますか? みさこ:かっちゃんとふたりのときと今では変わってるし、ということは気にしてるのかも。 あの:そんな気にしてないですね。でも「歌も下手でダンスも気持ち悪い」とか言われるんで、グループにいいものを返せてるかな、って悩んでしまうときはある。ただいるだけじゃ意味がないから。 ――自分個人の気持ちと、グループ全体への気持ち、どっちが大きいですか? あの:グループとしてのバランス、すごく見ちゃうんですよ。個人的にグループとしてバランスがどうなってるか考えるんですけど、メンバーには言えなかったりするんで。秘密主義というか(笑)、言う勇気がない。 みさこ:私もあんまり言わないかもしれない。みんなの意見は聞いてなるべく叶えたいと思うけど。別に現状に不満もないし、「こういうことしてみよう」とは言うけど。バンドじゃないもん!関連だったらメンバーに後々「これつらかったわー」って言うかもしれない。 ――ネットの意見って見ます? みさこ:見なかったんですよ、エゴサ(エゴサーチ)も全然しなかったんですよ。@を付けてくれるものはなるべくは見るけど、いい意見が100あっても、1つの否定的な意見を気にする部分もあるし、だったら精神衛生上しないほうがいいのかなって。でも残りの100も大事だなって、今は見るようにしてます。自分たちを気にしてる人に現場に来てもらわないといけないと考えた結果、「今はエゴサしなきゃダメだ」という結果になりました。意識が変わってから、今ものすごいフォロワーが増えてます。 あの:3万。 ――あのちゃんはゆるめるモ!の中で一番フォロワーが多いですよね、数を気にすることはあります? あの:気にしないですね。最初は気にしてましたけど、今は自分の発言の見え方を気にしちゃいます。 みさこ:あのちゃんの発言は、あのちゃんのキャラに合ってるし面白い。私は硬い文章になりがちなんだけど、あのちゃんはきちんと情報がわかるけどフワッとした感じ。楽しみにしてる人も多いと思う。 ――バンドじゃないもん!はオリコン14位になったり、ゆるめるモ!はリキッドルームを満員にしたりしていますが、自分たちの勢いが恐くなるときはないですか? みさこ:それに見合うものはすごく考えてるけど、怖くはないかな。純粋に嬉しい限りです。 あの:「どうしよう」とかはあんまりない。疲れない感じでやりたいです。リキッド1000人埋めて、それだけで終わりたくないし、いいものをやっていくと期待もどんどん高くなるし、自分たちのグループの良さも残さないといけないから、良さが消えないように楽しめたらそれがいいものにつながるかな、って思う。 ――みさこさんはドラム、あのちゃんはギターとお互い楽器をやってますけど、いつか何か一緒にやりたいとは思いませんか? あの:やりたい! みさこ:ゆるめるモ!とバンドじゃないもん!でしかできないこと、超あると思うから、ツーマンではそれを遺憾なく発揮できたらなと思う。あのちゃん、しよ! スタジオから楽しいよ。 あの:やりたい、来てくれる人も絶対楽しいと思う。 ――最後にお互いにアドバイスをお願いします! みさこ:いろんなアイドルが増えてる中、あのちゃんらしく、ゆるめるモ!らしくいってくれたらなと思います! あの:あ、そうですね。自分らしくやりたいです。 ――あのちゃんからみさこさんには? みさこ:さあ来い! あの:アイドルはたくさんいるんですけど、好きなアイドルは特にいなくて、唯一みさこさんが好きで、考え方とかが好きだから、自分らしくこれからも頑張ってください! みさこ:頑張る! (取材・文=宗像明将/写真=竹内洋平) ■ライブ情報 「月見ル10周年記念『あっぱれむむむ~ん!!!』」 日時:2014年10月21日(火) 会場:青山 月見ル君想フ open 18:30/start 19 30 ※チケットSOLD OUT!

HKT48躍進を支える指原莉乃のプロデュース力 アイドルという“虚構”をハンドリングする才覚とは?

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『指原の乱 vol.2 DVD(2枚組)』(東宝)

【リアルサウンドより】  プロデューサー的な才覚を持つアイドルは古今を問わずたくさんいて、近年のグループアイドル流行りの中では、そうしたメンバーがグループの方向性をコントロールしたり、グループを象徴するような存在になることも珍しくはない。  AKB48グループでそうしたメンバーの代表格と言えば何と言っても「総監督」という肩書きを与えられている高橋みなみということになるだろう。長く努力を重ねて得たパフォーマンス力や気っ風の良さなどを含めて、いわゆるセンターとは違った意味でいかにもAKB48グループを代表する存在になっている。  しかし近年のAKB48グループを代表する存在として別に現れているのが指原莉乃である。彼女が世間一般に台頭していったのは2011年に放映されていたバラエティ番組『さしこのくせに 〜この番組はAKBとは全く関係ありません〜』(TBS系)あたりからで、これはタイトルからも分かるように指原莉乃の「非実力派」で「残念」な部分を強調するものになっているが、それは実は以前からAKB48がグループ全体として強く打ち出しているものでもあるのだ。つまり高橋みなみがAKB48グループの正調、真っ直ぐなコンセプトを牽引する存在であるとすれば、指原莉乃はその裏側、たどたどしくバラエティ的な側面を世間に強く印象づけ、その路線を他のメンバーにも共有させるべく台頭した。そう考えれば、この番組がAKB48メンバーとしては初の冠番組だったことも頷けるはずだ。指原莉乃には、その前段としてテレビドラマ『マジすか学園』で同居(ヤンキーものの物語+「学園祭の延長」と公言された演技力)させられていたAKB48グループのふたつの路線から、とりわけ後者を世に浸透させるような役割があったわけである。  それは、本来なら実力がともなっていないと思われがちなメンバーを前面に出していくというやり方なので、なかなか世には受け入れにくいところがある。簡単に言うとコメディリリーフはトップになるような存在とは思われないわけである。しかしAKB48グループは前述のような「非実力派」で「残念」な少女がほとんど不可能に近いような夢を追うことをコンセプトに含んでいるので、その要素は決して外すことができない。AKBは才能と努力に対して等比級数的に結果が付いてくるというだけのグループではないのである。だからこそ秋元康は彼女のフォトブックに「AKB48とは、指原莉乃の“奇跡”のことである」という帯文を寄せている。「奇跡」が望まれることは全くもって正しいのだ。  指原莉乃が、裏の意味でAKB48グループを象徴し、グループ全体のあり方を左右するような存在であるということは、彼女が2012年に起こした恋愛スキャンダル以降により明白になっていく。昨今でも、恋愛報道はアイドルにとって生命線を絶たれるようなものであり、タレントとしての人生がそれで終わってしまうことも珍しくはない。まして恋愛禁止を掲げていたAKB48グループならばなおさらである。指原莉乃がそのペナルティとしてHKT48へ移籍させられたことは「左遷」そのものだと思われただろう。ひょっとすると彼女自身もそう思ったかもしれない。ところが彼女は実質わずか1年ほどでHKT48を一人前のグループに育て上げたし、2年後のシングル選抜総選挙では兒玉遥と森保まどかを10位、11位にランクインさせた。HKT48メンバーが躍進していることは今や誰の目にも明らかになっているのだ。  後にHKT48劇場支配人となった指原莉乃の戦略は、本人がインタビューで語ったところに寄ると「覚えてもらうのがまずは重要」ということ。実際、彼女は自身の出演するテレビやラジオ、雑誌などのメディアでことあるごとにHKT48メンバーについてかなり具体的な言及を行っていることからも明らかである。彼女自身がバラエティ的なキャラクター性で世間の注目を集めたからこそ、パフォーマンス性はもちろんだが個人として認知されることを強く推奨していると見ることができるだろう。  そうした「キャラ」重視のやり方は、膨大な数がいる今のアイドルシーンにおいて実に妥当なものだし、AKB48に限らず他のグループでも意識されていることではある。指原莉乃がAKB48加入前から熱心なアイドルファンであったことはよく知られているが、今のアイドルのキャラ的な面白さを知っている彼女だからこそHKT48の戦略があると見ることもできるに違いない。  そして何より、彼女が優れているのはそのキャラを活かしながら恋愛スキャンダルを乗りこえたことにある。彼女はスキャンダル後の2013年にシングル選抜総選挙で1位となり、社会現象的にヒットしてAKB48を代表する楽曲のひとつとなったシングル『恋するフォーチュンクッキー』でセンターをつとめた。恋愛スキャンダルを経たメンバーが、名実共にAKB48のトップに立ったことは非常に重要で、恋愛スキャンダルにまつわるあまり意義深くもない報道合戦や卒業・脱退などに彼女は一石を投じている。この先も、アイドルの恋愛スキャンダルは決してなくならないだろう。ファンやメンバーが心を痛め困惑するような事件は続くに違いない。だがこの先に指原莉乃がさらに力を付ければ、そんな折にもベストな対処を行ってシーンを調停するネゴシエイター=プロデューサーとして立ち回ることもできるのではないかと思うし、今のアイドルに求められているのは、そのようにしてアイドルという虚構を虚構としてハンドリングできる名プロデューサーなのである。 ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』『一〇年代文化論』がある。Twitter