WHITE ASH、渋谷クアトロで見せたディープな音楽世界 福島への想いを強烈なサウンドに

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ライブ当日、渋谷クアトロは超満員に。

【リアルサウンドより】  WHITE ASHがチャリティワンマンライブ『WHITE ASH One Man Live "Cycle"』を、同バンドにとって初となる渋谷クアトロで11月3日に行った。同チャリティライブは、ギターの山さんが発起人となり、地元・福島のことを知ってもらいたいという想いから開催。福島と東京の2公演で、11月1日にはいわき club SONICにて開催された。  ステージに登場したWHITE ASHは、まずは叙情的なギターアルペジオで幕を開ける「Casablanca」を披露。2ndアルバム『Ciao,Fake Kings』の1曲目に収録された楽曲で、彼ららしいキレと重量感の同居するアンサンブルに、リスナーからは早くも歓声が上がる。そして、ボーカル・ギターののび太が「初めまして、WHITE ASHです!」と叫ぶと、そのまま2曲目「Number Ninety Nine」へ。息をのむようなスリリングな掛け合いと、疾走感のあるビートに、会場のテンションが上がっていく。ダンサブルで骨太なロックナンバーはその後も続き、「Mosquite」「Thundeorus」「Kiddie」「Paranoia」と連続で披露。途中、のび太がギターを下ろし、こぶしを突き上げるパフォーマンスでリスナーを煽っていたのが印象的だった。
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紅一点の彩。

 その後のMCで、のび太は「今までやっていた曲までが大体、対バンとかフェスとかでやる曲です。僕らのワンマンの醍醐味というか、楽しむところはここから。(中略)自由に楽しんでください」と宣言。グッとテンポを落とし、重厚なサウンドで聴かせる「Zodiac Syndrome」や、アブストラクトやトリップホップの流れを汲んだアプローチの「Killing Time」、メランコリックなサビが印象的な「Giant Skip」と、挑戦的なナンバーを続ける。60年~70年代の英国系ブルースロックの系譜を受け継ぎつつ、パンクのエッジ感も加味し、さらに現代的なポップさ、親しみやすさを身に付けたサウンドは、今のバンドシーンでは明らかに異彩を放っているといえる。畳み掛けるように演奏した後、のび太は「良いことも悪いこともこれから先、たくさんあると思うけど、人生一回しかないから楽しめたらいいなって思いながら作った曲を、みなさんにお届けします」と語った後、前向きで優しいメッセージソング「After All, Life Is Picnic」を、表現力豊かに歌い上げた。  会場が温かな雰囲気に包まれた後は、メンバー紹介へ。ベースであり紅一点の彩、ドラムの剛、ギターの山さん、のび太の順に自己紹介し、その後、のび太の口から、WHITE ASH初となるミュージックビデオ集を12月10日にリリースすることが発表された。そして、同作に収録される新曲「Xmas Party Rock Anthem」を初披露。テクニカルな掛け合いがありながらも、多幸感のあるハーモニーが耳に残る、WHITE ASHらしいクリスマスソングだ。
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イベント名「Cycle」には、「発信して、感じて、行動する」というサイクルが続くように、という想いが込められているとのこと。

 「ここからが後半戦です!」のび太がそう宣言すると、雰囲気をがらりと変えて「Faster」「Queen Of Boogie-Woogie」「Crowds」「Jails」と、アッパーで踊れるロックチューンを続けて披露。のび太が「みんなでお祭り騒ぎしましょう!」と、リスナーたちに呼びかけた後に披露した「Pretty Killer Tune」の曲中では、フィンガー5「学園天国」のコール&レスポンスを「Hey!」から「Yeah!」に変えて歌い、会場は大合唱に包まれた。そして本編最後の楽曲として、日本語の歌詞が胸に刺さる「Hopes Bright」を歌い上げ、メンバーはステージを去った。
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今回のチャリティライブの発起人である山さん。

 アンコールを受けて再びメンバーが登場すると、今回のイベントの発起人である山さんが、「僕は福島出身で、地元のためになにかしたいっていう思いがすごくあります。いま、福島にはいろんな問題があるけれど、子どもたちが放射能で外で遊べないという問題もあります。そこで、実家が保育園で個人的に子どもが大好きというのもあり、CHANNEL SQUARE福島インドアパークプロジェクトという、屋内で遊べる施設の建設に協力しようと思っています」と、チャリティライブの意図を明かした。その後、先ほどとは別のクリスマスソング「Xmas Present For My Sweetheart」、“みんなの歌”をテーマにした「(Y)our Song」を披露。最後にはWHITE ASHらしいクールなロックナンバー「Stranger」で盛り上がり、ライブは幕を閉じた。  2010年にミニアルバム『On The Other Hand, The Russia Is…』でデビューして以降、実力派のロックバンドとして着実にファンを増やしてきたWHITE ASH。その確かな腕前と温かなパーソナリティーで、より大きなステージへと進むことを期待したい。 (文=松田広宣/写真=柴田恵理)
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WHITE ASH『The Best Nightmare For Xmas』(VAP)

■リリース情報 『The Best Nightmare For Xmas』(DVD+CD) 発売:12月10日 価格:¥3,600+TAX 【DVD収録内容】 Music Video(新曲含む全11曲) Stranger、Thunderous、Paranoia、Kiddie、Jails、Would You Be My Valentine?、Velocity、Crowds、Casablanca、Hopes Bright、Xmas Party Rock Anthem(新曲) Live Movie 2014.03.15 WHITE ASH One Man Tour “Lilium” Final at SHIBUYA-AXより 「Xmas Present For My Sweetheart」 【Xmas Special CD】 M-1 Xmas Present For My Sweetheart (From Album「Ciao, Fake Kings」) M-2 Xmas Party Rock Anthem (New Song !) トレイラー映像はこちら。

30歳で本格デビュー、浜端ヨウヘイが音楽を通して目指すことは?「みんなで歌っている瞬間が好き」

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【リアルサウンドより】  山崎まさよしやスキマスイッチ、秦基博、さかいゆうなど、優れたアーティストを数多く輩出してきたオフィスオーガスタが、新レーベル『Augument Records』を設立。その第一弾アーティストとして、京都出身のシンガーソングライター・浜端ヨウヘイがシングル『結-yui-』で11月5日にデビューする。同レーベルにとって5年ぶりの新人アーティストとなる浜端は、2013年10月より『山崎まさよしLIVE"SEED FOLKS"』のオープニングアクトとして全国を帯同し、そのパフォーマンスが評判に。2014年2月にオフィスオーガスタ所属となり、今回のデビューへと繋がった。今回リアルサウンドでは、浜端へインタビューを実施。身長192センチの体躯を活かしたダイナミックな歌声と、温かい人間味を感じさせる歌詞の世界はどのようにして生まれたのか。彼の音楽原体験から、師と仰ぐ山崎まさよしとの交流、さらにはシンガーとして目指すあり方についてまで語ってもらった。

「山さんには背中で全て教えてもらった」

――「Augument Records」からのデビュー・シングル『結-yui-』が完成しました。浜端さんの特徴である芯の太いボーカル力がとてもよく表れた作品だと思いますが、まずはデビューに至った今の気持ちは? 浜端ヨウヘイ(以下 浜端):今まで自主制作などでリリースしたことは何度もありますが、こういう形で世に出せるということは、非常に感慨深いですね。僕は山さん(山崎まさよし)のギターをコピーすることからギターを始めた人間なので、そういう意味でもオーガスタに所属してデビューできるのは感慨深いですし、1年間の前座を経てCDを出せる、という意味においても達成感があります。もちろん、こんなところで達成感を感じている場合ではないので(笑)。ここから始まるんだな、という気持ちを忘れないようにやっていきたいですね。 ――そもそも音楽をやり始めたのは何歳くらいのときですか。 浜端:何段階かありますけど、3歳からピアノを習い、10歳くらいでギターを弾き始めました。小学校の5~6年生頃って、男の子がピアノをやっていることが恥ずかしい時期で、親父のギターを発見してしまって「こっちの方がかっこいい」とギターに傾倒していき、18歳まではピアノを習いながらギターも弾いていたんです。そのときに山さんのコピーをしていたんですが、大学に入ったのをきっかけに柔道にのめり込み、柔道を辞めるタイミングでまたギターを持って、高知県の大学(高知大学)を出たあとに沖縄に移住しました。沖縄では歌を作ったり、いろいろな人と出会ったりするなかでたくさんの曲ができ、音楽を職業にして生きていけたら、という思いが大きくなっていきました。 ――沖縄へはどういう理由で移住したのでしょうか。 浜端:その土地が好きで、ゲストハウスで働きながら滞在していました。月給4万円でしたけど、何となく沖縄が好きで暮らしていたのですが、その頃にマネージメント業に携わっている方たちが遊びに来て、「関西で何かやろう」という話になったんです。そのオファーをきっかけに、23歳の頃京都に帰り、初めて本格的にスタジオに入って、CDを1枚作り、本格的に音楽生活が始まりました(笑)。当時は、「暮らしをきちんとしないと何もできない」と考え、いったん就職をしたんです。当時は平日に仕事を頑張って、土日にライブをするという形で音楽活動をしていました。会社から給料を頂いていたので、最初は音楽でお金を稼げるほどではなかったですが、働いている分、制作にお金を掛けることもできました。 ――後半になってくるとライブ活動も軌道に乗ってきましたか。 浜端:はい。音楽の方でも収入が得られるようになってきたので、仕事で得た収入はできるだけ音楽活動には使わず、音楽収入だけで活動が成り立つようにしたいと思いました。 ――そこから音楽一本になったきっかけは? 浜端:音楽だけで食べていく生活を「今やらなかったらもう一生できないだろう」と思って、後悔しないために仕事も辞めました。それが去年の3月です。その月末には今のマネージャーに会い、夏が来るまでは日本中1人でドサ回りしていました。あの決断がなかったら何も引き寄せられなかったと思います。僕は二の手・三の手は持っていたい、という慎重なところがあるんですが、「その自分が全部を一気に手放すのか」と驚きました。 ――山崎まさよしさんや、今作の共同プロデューサーである江川ゲンタさんと出会った経緯とは。 浜端:ゲンタさんと出会ったのが先でした。関西時代の事務所の方がブッキングしてくれて、2年ほど前に東京でライブしたときに2、3回パーカッションで入っていただきました。初めてご一緒させてもらったときに、楽屋で山さんの「6月の手紙」を弾いていたんですが、そのときにゲンタさんが「俺、その歌知ってるぜ」と話しかけてくれて。自分がライブで叩いてるんだからもちろん知っているはずですよね(笑)。本番が終わると「この後時間あるか?行くところあるからついて来い」と言われて、着いたのが山さんの家だったんです。山さんベロベロに酔っ払ってましたけど(笑)。 ――その夜は3人でどんな会話があったのでしょうか。 浜端:そのときは「どんな歌やってんの?」みたいな、初めましてのちょっとした会話でしたね。その後、ゲンタさんが『美ぎ島ミュージックコンベンションin宮古島』というフェスに誘ってくださったんです。そして、去年の3月末にはオリックス劇場で山崎まさよしさんの公演を拝見させていただいて、今のマネージャーとも知り合いました。そうして(去年の)8月に「10月から山崎まさよしのオープニングアクトをしてもらいたい」と言っていただきました。そこからは丸1年間、前座としてステージに立つことができました。 ――その間に山崎さんとの交流も深まりましたか? 浜端:はい、基本的に全公演行くので、最初から打ち上げまで一緒です。年越しも山さんのお宅にお邪魔していました。山さんのチームは、約20年の間に打ち上げの解散が段々早くなっていったらしいんですけど、山さんはもっと飲みたいらしいです(笑)。そこに若手の僕が現れたので、山さんにはだいたい部屋に引っ張られていきます。長崎のライブのときは、打ち上げの後バラバラに解散したんですけど、先に帰った山さんがロビーで「氷結」を飲んで待ってるんですよ(笑)。みんなでいるときはわりと真面目な音楽の話をしますけど、二人で飲む展開の時の山さんは酔っているので、たいした話はしません(笑)。 ――デビューにあたって何かアドバイスをもらったり、学んだことはありましたか。 浜端:直接アドバイスらしいものをもらったわけではありませんが、「SEED FOLKS」というツアーを全て見せてもらって、背中で全て教えてもらったような気がします。それを経た自分のライブも変化が出てきていると実感するので、それが何よりのアドバイスですね。例えば雰囲気や間の取り方。僕は無言が怖くて、曲間にちょっと喋っちゃったりするんですけど、黙っててもかっこいいのが山さんで。曲が始まる前にポロポロと弾くギターも含めて、まだまだ盗めるものはあります。ツアーは11月半ばで終わってしまうんですけれど、後3~4回あるので、盗めるだけ盗もうと思っています。
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「恥ずかしがり屋なところがあるので、ラブソングを歌うと気恥ずかしくなる」

――さて、今回のシングルに収められている4曲は、それぞれいつ頃作った曲ですか? 浜端:「東京」は今年書いた曲で、「むかしのはなし」と「ハレルヤ」は3年くらい前に作りました。アイディア自体は昔からあった「結 -yui-」は、最初はバラード調だったんですが、掘り返して作り直したらあまりしっくり来なくて、テンポを上げてあっさりしたものにすれば、もう少し違った意味の、人に対してだけではない、広い意味でのラブソングになるんじゃないかと考えて、今の形になりました。この曲は沖縄の北の方にある今帰仁村という村に泊まりに行った時のことがモチーフになっていて、「結び屋」というゲストハウスの結さんという女将さんに「曲書いたるわ」と作ったのが原型です。 ――なるほど、沖縄時代にルーツのある曲なのですね。これはストレートなラブソングで、主人公の心情をてらいなく表現している印象を受けました。 浜端:けっこう恥ずかしがり屋なところがあるので、ラブソングを歌うと気恥ずかしくなるんですけど、これだけ開き直っていると、もう恥ずかしくなくなりますね。1曲目はとにかく、「豪快な奴が歌っとんねやぞ」というイメージがサウンドとしてわかるような歌い方や演奏にしよう、と話し合って作ったトラックです。 ――歌い手としての個性を一番前に出そうと? 浜端:はい。そういう意味では、これだけ開き直って歌えたら、その役目はきっちり果たせたかな、と思います。基本的に歌詞は自分の話ばっかりなんです。応援歌にしても、自分が落ち込んで自分を励ますために作ることがほとんどで。もちろん今は自分の内面を素直に吐き出したいと思って作っていますけれど、ゆくゆくは山さんやスキマスイッチさんのように、作品的な曲作りをしていけるようになりたいと思います。 ――歌詞にはセンチメンタルな要素も結構あるのですが、豪快な歌声のせいもあって、楽曲全体の印象はカラっとしていて開放的ですね。そのあたりはどう意識されていますか。 浜端:僕は自分の声がすごく好きではありませんでした。本当はもっとハスキーだったりすごく高い声を出したかったり…。でも「お客さんのレスポンスを疑ったらあかん」と考えるようになり、自分にお客さんがついてくれるようになって「すごく良い声でした」と言ってもらえるときに、「いやいや、俺そんなええ声ちゃうし」と思ってしまったら、その人のことを否定してしまうことになります(笑)。僕の歌が好きで聴きに来てくれる人の声は素直に信じよう、と思ったあたりから、少しずつ自分の声が好きになってきました。だから、後半2曲は昔からある歌なのに、違う歌のように聞こえます。そういう意味では今までと違う歌い方をしているんだと思います。 ――ファンク/ブルースの要素の入った『むかしのはなし』はライブで盛り上がりそうな曲ですが、実際によく演奏しますか。 浜端:必ずやりますね。間奏が長いんです(笑)。間奏の間にコールアンドレスポンスしてみたり、1人しかいないのにメンバー紹介したりしています。 ――京都の風景が歌われているので、関西のリスナーはより楽しめそうですね。 浜端:地名は出したいですね。1人の期間も含めていろいろと旅してきたので、行った先々のことやそこで感じたことが、曲のどこかに入っていてほしいです。『東京』は、僕の家から見える景色ですけれど、実際住んでいるのは神奈川です(笑)。この曲は「東京に行く」という言葉が持っている、単なる移動だけでない意味を歌に込められたら、それから上京した人にとって、というだけじゃなく「友達が上京してしまった人」、つまり残された人の歌にもなったらいいなと思います。だから東京らしい風景は歌詞の中にないんです。僕ら関西人は、先に東京に行ってしまう友達もたくさんいて、僕は行けなかった側、見送る側で寂しい思いもしました。そんな立場から東京を歌った曲ですね。

「楽器さえ持っていれば無敵なんです(笑)」

――社会人としてのキャリアがあって、30歳で本格的にソロデビューするという浜端さんの経歴は異色ですが、今後音楽シーンでどのようなアプローチをしていこうと考えていますか。 浜端:京都にいた頃から、バンドシーンの人たちとの方が気持ちよく付き合えます。そういうバンドと共演が多かっただけかもしれないですけど、バンドシーンは少し暑苦しい部活ノリがあって、それが好きだしそこで可愛がられてきました。だから、バンドの中で僕だけ弾き語り、というブッキングが一番得意なんです。バンド形態で出演して、最後にピアノの弾き語りを1曲やって帰る、みたいなのもしてみたいですね。 ――今は音楽のジャンルが細分化する中で、誰もが口ずさめるようなヒット曲は少なくなっています。浜端さんの歌は耳にすんなり入ってくるので、そうした“みんなの曲”を生み出すポテンシャルがあるのではと感じるのですが、そのあたりはご自身でも考えますか。 浜端:僕にとっては、沖縄でみんなで歌ったことが真剣に音楽をやるようになったきっかけなんです。ライブの最後にみんなでシング・アウトできるような曲もあるし、ライブではそういう楽しさをもっとみんなに知ってもらいたいですね。そのためのCDであったらいいですし、「CDを聴いてライブに来るお客さん」と「ライブに来てCDを買うお客さん」を分けなくていいようになることが一番だと思います。 ――曲のストックはどのくらいありますか? 浜端:書いただけであれば200曲くらいありますけれど、その中でマネージャー(兼ディレクター)が「OK」と言っているのは30~40曲くらいだと思います。環境が変わるとたくさんできるみたいで、上京してからもたくさん作っています。今までと視点が変わって、今まで見ていたものが少し違う見え方をするからか、引っ越しするとよく曲ができます(笑)。でも、いつかは1曲入魂で「極上の1曲」が出せるようになりたいですね。 ――会社員をやりながらライブを積極的にやるなど、地道な活動を重ねた上でのデビューだと思いますが、浜端さんを音楽に向かわせる強いモチベーションは何でしょうか。 浜端:「好き」というだけでやっている感覚が一番強いですね。単純に、楽器を鳴らしてみんなで歌っている瞬間が好きなだけだと思います。だから家でひとりで弾いているのはあんまり好きじゃありません(笑)。それから、楽器を持っていると飾らない自分でいられる、というところはあります。「楽器を弾いていたい」「歌を歌っていたい」「音楽をしていたい」という単純なモチベーションです。僕は女性の前で結構照れてしまうのですが、楽器さえ持っていれば無敵なんです(笑)。 ――今後、シンガーソングライターとしてどんなあり方を目指しますか。 浜端:僕が山さんの曲をコピーし始めた頃はアコースティックデュオの全盛期でした。みんな友達と二人組を組んで、駅前でハモっていました。僕は友達も少なかったので誰かと一緒にやる機会もあまりなかったし、やってみてもうまくいきませんでしたが、そんな中で山さんに出会い「この人のギター難しいけど、一人でも弾けるわ」と思ってコピーしました。僕はそれによって救われたというか、自分のやりたいことに向き合えたんです。将来的に、若手が僕を見て夢や希望を持ってくれるようになりたいですね。今の環境だとペーペーで可愛がられてばかりだから、僕もそういう風に後輩を可愛がれる人間になりたい(笑)。 ――ご自身としても今後さらに大きなステージを目指すと? 浜端:もちろん、そうですね。柔道で行けなかったので、日本武道館に行きたいです。そんなことを言いたいな、と思っていたら、昨年末の武道館ライブでスキマスイッチのシンタさん(常田真太郎)が同じ話をしていて、「先に言うてはる!」て思いましたけど(笑)。より多くの人に音楽を届けたい、みんなで歌いたい、という気持ちはずっと持ってますね。 (取材・文=神谷弘一) 公式ウェブサイト
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浜端ヨウヘイ『結 -yui- (CD+DVD) (初回生産限定盤) 』(Augument Records)

■リリース情報 『結 -yui-』 発売:11月5日(水) 価格:通常盤(CDのみ)¥1,000(税込)    初回生産限定盤(SINGLE+DVD) ¥1,500(税込) <CD収録内容> 1.結-yui- 2.東京 3.むかしのはなし 4.ハレルヤ <DVD収録内容> Augusta Camp 2014 浜端ヨウヘイパート(ノーカットで収録) 『結-yui-』 レコーディングドキュメンタリー ■ライブ情報 『Calling You!! Show Case ~After Augusta Camp~』 出演:浜端ヨウヘイ/杏窪彌(アンアミン)/NakamuraEmi/村上紗由里/松室政哉 日程:2014年11月10日(月) 会場:TSUTAYA O-nest(旧 Shibuya O-nest) 開場/開演:18:30/19:00 『浜端ヨウヘイDebut Anniversary Live「結-yui-」』 ・東京公演 日程:2014年12月9日(火)会場:代官山UNIT 開場/開演:18:00/19:00 ・大阪公演 日程:2014年12月16日(火)会場:Shangri-La 開場/開演:18:30/19:00 ・名古屋公演 日程:2014年12月17日(水)会場:名古屋APOLLO BASE 開場/開演:18:30/19:00 詳細

lyrical schoolがリキッドワンマンで見せた努力の累積 アイドルラップの開拓者は次のステージへ

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【リアルサウンドより】  2010年10月11日という結成日を挙げた後の「今は胸を張ってこう言える」とのMCに続いたのは、「ラップをするのは楽しいです」という「FRESH!!!」の冒頭のセリフだった。結成から約4年、2014年11月2日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されたlyrical schoolのワンマンライヴ「lyrical school oneman live 2014 @ LIQUIDROOM」は、これまでの総決算であると同時に、今後へのメンバーの決意を鮮やかに示すものだった。  lyrical schoolは6人組の「アイドルラップ」グループ。結成当初は「tengal6」を名乗り、2012年8月1日にタワーレコード傘下のT-Palette Recordsに所属してからは「lyrical school」と改名したグループだ。そして結成以来最大キャパシティのワンマンライヴが今夜のLIQUIDROOMだった。  会場にはヘッズ(lyrical schoolのファンの総称)や関係者から贈られた花がズラリと並び、その中にはKEMURIやTHE REDEMPTIONで活動する津田紀昭からの花も。会場に入ると、LinQの深瀬智聖がときおり九州訛りで話しながら、オープニングDJとして日本語ラップを流していた。会場内は、後ろまで人が詰まった満員状態。深瀬智聖のDJが終わると、ステージ上の準備が完了するまで、lyrical schoolに楽曲を提供してきたtofubeatsの「20140803」と「BIG SHOUT IT OUT」が流されていた。彼への感謝のように。  そして、ステージのスクリーンにlyrical schoolの映像が映し出される。オープニングムービーかと思いきや、バックステージで円陣を組む姿は生中継だったのかもしれない。マネージャーにしてステージではDJも務める岩渕竜也がDJブースに入り、アカペラで始まった「brand new day」とともにlyrical schoolが登場してライヴはスタートした。この時点で、ファンの大合唱がLIQUIDROOMに響く状態だ。
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 2曲目は「tengal6」。lyrical schoolは過去2度のメンバーチェンジを経験している。それゆえにメンバーの自己紹介を織り込んで初期から歌われてきた「tengal6」は、歌詞を変更して2度レコーディングし直され、すでに「take3」だ。そして、lyrical schoolの「プチャヘンザ!」という声に呼応して約1000本もの手が上がる光景は、2011年5月21日から彼女たちを見てきた私も目にしたことがないものだった。  7曲目の「ルービックキューブ~fragmentremix~」では、当初どういうグループなのか今ひとつつかめなかったtengal6が、2011年2月に公開された「ルービックキューブ」のヴィデオ・クリップによって初めて具体的にスタイルを示したことも思い出した。プロデューサーであるキムヤスヒロによって監督された「ルービックキューブ」は、武蔵野美術大学(キムヤスヒロもメンバーのyumiも結成当時在学していた)を拠点としたチームが、圧倒的にソリッドなセンスを映像で見せつけたものだった。  そして「ルービックキューブ」をはじめ、ファースト・アルバム『まちがう』の全曲(「ルービックキューブ」はリミックス版のみ)が今夜披露されたことも、VJを担当したホンマカズキと終演後に話しているときに気づいた。秀逸にして愛のこもった映像を流し続けたホンマカズキとは、2011年8月27日に自由ヶ丘ACID PANDA CAFE(現在は渋谷に移転)で開催された「SEX CITY」にtengal6が出演したときのことも話した。あの日、狭い店内は満員で、6人のメンバーをすぐ間近で見たものだ。どのぐらい近かったかというと、iPhoneでまともに撮影できなかったほどだ。あの日、ほんの数十人の前にいたtengal6は、約3年後の今夜、lyrical schoolとして約1000人の前にいた。
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 実は冒頭の「brand new day」が始まった時点で涙腺が緩みそうになっていたのだが、懐かしい楽曲が次々と歌われるために、かつてヘッズだった友人たちのことを思い出して、すっかり感傷的になってしまった。ある者は東京での仕事を辞めて地元に帰り、ある者は婚約者を幸せにするためにアイドル現場を去り、ある者は当人がアイドルになった。しかしそんな感傷も、lyrical schoolは最終的に見事に吹き飛ばしていくことになる。  最初のセクションは8曲連続という長さだったが、MCは最小限のみで、休む間もなく7曲続く次のセクションへと流れ込んだ。そこは「fallin'night」から始まるメロウな楽曲のゾーンだった。  冒頭に記した結成日についての発言は、2度目のMCでのものだ。すぐに「FRESH!!!」が始まり、そのパーティーチューンに会場は火がついたような盛りあがりに。「PARADE」ではDJブースの岩渕竜也のプレイも冴えわたり、爆殺音を挿入したり、一瞬バックトラックの音を下げたりしていた。
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 そして、tofubeatsが提供した最高傑作のひとつ「プチャヘンザ!」へ。2011年12月22日に、tofubeatsが所属するネットレーベル・Maltine Recordsが主催して「プチャヘンザ!」と題されたイベントを六本木SuperDeluxeで開催したことがあった。そこでtengal6が「プチャヘンザ!」を歌ったとき、フロアが暴発したかのような熱気に包まれたことを思い出す。ステージも低く、演者もヘッズも汗まみれになったあの日の熱気が、約3年後のLIQUIDROOMで1000人規模で再現されていることに胸を揺さぶられずにはいられなかった。今夜の「プチャヘンザ!」後半ではヘッズのリフトも次々と起こっていた。  「プチャヘンザ!」にはさまざまなヒップホップのアンセムからの引用が見られるが、lyrical schoolの楽曲を今夜33曲(!)もまとめて聴いたとき、これまでの音楽性の試行錯誤も実感した。たとえば「決戦はフライデー」のリズムセクションだけ聴くと80年代シティポップスのようだし、「perfect☆キラリ」にはアイドル歌謡感もある。初期のtengal6は、70年代と80年代の歌謡曲を大胆にサンプリングした2曲をレパートリーとしていたのだが、そうした時期を抜けてオリジナリティの獲得にこの4年を費やした結果、最新シングルにして本編ラストで披露された「PRIDE」の「lyrical school 胸を張っていたい」という歌詞へとたどり着いたのだろう。  lyrical schoolが「アイドルラップ」と形容されるとき、「ヒップホップ」という言葉はラップという形式だけではなく、バックグラウンドの文化自体をも指すので、なかなかアイドルには使いづらいのだろうかと感じることもある(私の思い込みに過ぎないかもしれないが)。しかし、今夜のライヴを見たとき、lyrical schoolもなかなかのワイルドサイドを歩んできたグループであることも再確認した。そもそも結成当初、彼女たちのようにラップに特化したアイドルグループは他に存在しなかったのだ(ライムベリーの登場は約1年後だ)。しかも過去2度のメンバー脱退は、低い声質のメンバーがいなくなることで大きな声質の変化をもたらしたが、結成当初からのメンバーであるami、ayaka、mei、yumiは、スキルを磨きながらそれを乗り越えてきた。途中から加入したhinaとminanは、スキルの向上はもちろんのこと、それ以上にこのグループに加わった度胸をまず讃えたい。メンバーの努力の累積こそが今夜のLIQUIDROOMへと結実したのだ。  アンコールでは「そりゃ夏だ!」で再びヘッズのリフトが発生し、「S.T.A.G.E」には深瀬智聖も参加した。そして、アンコールのMCでやっと長く話すlyrical schoolは、やはり何も肩肘を張るところがない女の子たちだ。それは私が初めてtengal6を見た日から、『PRIDE』がオリコンデイリーシングルランキング3位を獲得した現在まで、何も変わらない。lyrical schoolがなかったらヒップホップとは何の縁もなかったかもしれない、と思わせるところも彼女たちの魅力である。
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 「6本のマイク」で、ホンマカズキは歌詞をスクリーンに映した。「ちょっと振り返ってる/でもねdon't stop次が待ってる/扉開け向かう新たなステージへ/まだまだこれから」。LIQUIDROOMが終着点ではなく通過点であることを明示した選曲だ。泣き出したminanの頭をmeiが撫でた。アコースティック・ギターを中心にした「tengal6」のアコースティック・ヴァージョンでライヴが終わった後は、来春のニュー・アルバムのリリースが発表されてヘッズを沸かせた。全員がマイクを置き、生の声で「ありがとうございました!」と挨拶したlyrical school。「photograph」でヘッズが一斉に点灯させたメンバーカラーの6色のサイリウムの輝きとともに、彼女たちは次のステージに向かうはずだ。 ■宗像明将 1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

ピクシブ発アイドル、虹のコンキスタドールが目指すものは? 永田P×もふくちゃんが対談

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虹のコンキスタドールのメンバーたち。

【リアルサウンドより】  イラストSNS「pixiv」を運営するピクシブ株式会社が、プロジェクトの中心となって次世代クリエイターアイドルを育成する「つくドル!プロジェクト」。そこから生まれた第1期生ユニット・虹のコンキスタドールが、初のシングルCD『にじいろフィロソフィー』をリリースすることが決定したほか、初ワンマンライブを2015年1月11日に開催。新メンバーとして鶴見 萌(つるみ もえ)が加入し、総勢11名になるなど、8月のお披露目以降、活発な動きが続いている。  SNS運営企業がなぜ、アイドルグループを手がけることになったのか。ピクシブ副社長で、プロデューサーを務める永田寛哲氏と、今回サウンドプロデュースを主に手がけるもふくちゃんこと福嶋麻衣子氏に、虹のコンキスタドールの狙いやコンセプトについて語ってもらった。聞き手は、『アイドル楽曲ディスクガイド』の編者で、アイドルカルチャーに詳しい編集者・ライターのピロスエ氏。(編集部)  

永田「pixivとして動かせるコンテンツのひとつとして、アイドルもアリじゃないか、と」

――イラストSNSであるpixivが、なぜアイドルの運営を手掛けることになったのか、その経緯から教えて下さい。 永田:pixivというサイトはおかげさまで順調に発展してきましたが、次のステップとして単純に会員を増やしていくというだけではなくそれ以外で何をすべきか考えたときに、やりたかった方向性がふたつありました。ひとつは海外のユーザーをもっと増やしていきたくて、そのためには自社で何かしらのコンテンツを持ちたいなと。というのも、pixivとはコミュニティであり場なので、例えば海外のイベントに呼ばれても「これがpixivです」と持っていけるコンテンツが無い。なので、pixivとして動かせるコンテンツを作りたいという流れが社内でまずあった。現在オリジナルマンガを配信したりと、いろいろコンテンツを作るという試みを開拓しているところで、その中のひとつとして、ちょっと飛び道具ではあるけど、アイドルというコンテンツもアリじゃないか、と。 ――なるほど。もうひとつは? 永田:絵が描ける人や絵に興味がある人だけを相手にしていると、会員数は徐々に頭打ちになっていきます。そこで、絵を描きたいって思う人たちをどんどん増やしていかないといけない。たとえば、小学校で休み時間にマンガを描いてるような子というのが今クラスに5人いるとしたら、それを10人に増やしたい。そうすれば、その増えた5人にもpixivを使ってもらえます。あと、ピクシブはイラストだけじゃなくて、小説やコスプレのサービスも提供しているし、最近では音楽のイベントも立ち上げました。創作するということに関するあらゆるモノ、クリエイター、ジャンルを問わずpixivにどんどん集まってきてもらいたいなっていうのがあって。集まってもらうには、やっぱり創作するという行為が面白い、楽しいと思ってもらったり、創作している人に憧れを持ってもらいたい。そこで「つくドル」(クリエイター+アイドル)のコンセプトを思いつきました。アイドルとしての活動を軸にしつつ、そこから先でクリエイターを目指していくという道筋が提示できれば、またちょっと違う切り口で魅力が示せるだろうと。だいたい、このふたつの土台を元に、最終的には僕がアイドルをやりたいという(笑)情熱というか想いがあって、それが組み合わさって誕生しました。 ――アイドルをやってみたいという想いは昔からあったんですか? 永田:僕がアイドルにドハマリしたきっかけは、モーニング娘。を中心とするハロー!プロジェクトなんですが、その盛り上がりが個人的に若干トーンダウンしてしまった時期があって、ちょうどその頃にpixivが立ち上がったのもあって、しばらくは仕事に専念していた。それがつい最近、HKT48にハマってしまい、またアイドルシーン全体への興味が戻ってきたんですが、やっぱりアイドルはコンテンツとして最高に面白いな、としみじみ実感した。なので、僕の中でアイドルと言えば、ハロプロと48グループ、このふたつが軸なんです。これまでも、インディーズ規模のアイドルをプロデュースしないかというお話をいただいたことはありましたが、そこに目線を置いちゃうと、自己満足で終わってしまうのが嫌でやりませんでした。やるからには、自分が影響を受けてきたアイドルに迫るものを目指したいと。でもそれって、目標としては非現実的な夢物語ですよね。宝くじ当たったらいいな、みたいな妄想レベル。それが、いろいろな出会いや偶然もあったりする中で、本格的なアイドルをプロデュースできるかも、という土壌がちょっとずつできてきた。もふくちゃんを始め強力なメンバーも集まってきて、これなら夢物語を現実性のあるところまで持ってこれるんじゃないかというのが、ようやく見えてきて。だったら、本気でやってみようじゃないかと。

もふく「永田さんとの作業の中で一番重要な仕事は『夢マップ』を作ること」

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左、永田寛哲氏。右、もふくちゃんこと福嶋麻衣子氏。

――その夢を実現させるために、戦法やコンセプトもいろいろ考えているとは思うんですが……。 永田:そもそも「つくドル」という、クリエイター+アイドルっていうコンセプトが、僕らが他のアイドルと戦える可能性が唯一ある部分だと思ってます。それに、pixivはアイドルに関係ないサイトですが、何かきっかけがあれば応援してもらえる可能性がある母体ですし、そこに1300万人の会員がいる。メンバーである彼女たちには、もちろんアイドルとして大成してもらいたいですけど、プラス、クリエイターとしての活動も、伸ばしていかなきゃいけなくて。そこのバランスというか、どういう順番でどういう方向性に持っていくのかっていうところが、一番重要だと思っています。 ――そして「サウンドプロデューサー」という肩書きで、もふくちゃんもこのプロジェクトに参加しています。 永田:サウンド面に関しては、かなりの部分もふくちゃんにお願いしています。僕は「こういう曲をやりたい!」みたいなことしか言えないので、そこから先を技術的に落とし込んでもらうというところで、クリエイターの選定からレコーディングでのディレクションまでやってもらっています。その他にも、アイドル運営の実体験から、いろいろ具体的な意見やアドバイスをもらっています。 ――例えばどういうアドバイスがありました? もふく:年間スケジュールを作るとか(笑)?だいたい1年間ぐらいのロードマップみたいなものを作って。内容に関しては永田さんと話し合いながらですけど、何月にこういうことをして、これぐらいのファンを増やして、1年後にはこれぐらいの箱で、っていう、まあ「夢マップ」みたいな……。最初にこのプロジェクトを本格的にお手伝いしようってなった時に、最初に作ろうと思ったのがそれです。それが見えていると、逆算して「あ、この時期にこの人数のお客さんを入れなきゃいけないんだったら、この間に何枚はCDを出さないといけないね」とか「こういう曲が欲しいね」とか、逆算で見えてくるので、それは永田さんとの作業の中で一番重要な仕事かなと思っている部分です。 ――サウンドプロデュースに関しては? もふく:永田さんが「こういう曲をやりたい」とラフなアイデアをくださるので、そのアイデアだったらこういう風にふくらませたらいいんじゃないか?とか、歌詞はこの人で作曲はこの人でアレンジはこの人にしようとか、楽器は今回は生楽器を入れましょうとか、あとスタジオの予約とかまでしています(笑)。マスタリング現場とかTD現場も全部見てます。

永田「定期公演の1回目は、実現させるだけでいっぱいいっぱい」

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ピクシブ株式会社の副社長も務める永田寛哲氏。

――TIFで8月にお披露目されてから約3ヵ月ぐらい活動してきましたけど、年間スケジュールの目標はどのぐらいまで達成できましたか? もふく:……3割(笑)。結成から10月までの2ヵ月は、pixivのスタッフさんも初めてのアイドルプロデュースというのもあったし、たぶんみんなまだ、ドライブに出る前のエンジンふかしてるような感じだったんで、メンバーも含めて、まずは慣れよう、みたいな(笑)。環境を整えようという2ヵ月だったんで、10月からスタートしたなっていうイメージですね。 永田:9月から定期公演をAKIBAカルチャーズ劇場でやっているんですけど、少なくともそれの1回目は、もう本当に、公演を実現させるだけでいっぱいいっぱい。運営としても、メンバーが全員ステージに立って歌いきれるかっていうレベルでの綱渡りな感じでやってました。それが徐々に形になってきて、10月以降でようやく本格的に始まったかなと、やってる側としてはそういう実感がありますね。 ――9月の定期公演ライブは僕も観させていただきましたが、その時に「通信簿システム」というのが発表されて、面白そうな試みだなと思いました。 もふく:会議の中で、どうゆう形で女の子たちを評価していこう?という話になって、でも従来の総選挙システムは虹コンには合わないんじゃないかなという部分もある。その中で出てきたアイデアでした。通信簿にしよう、虹コンは美術系の女子校というコンセプトだし、みたいな。 ――あと、正規メンバーの他に予科生という扱いのサブメンバーもいますよね。どんどんメンバーを増やして規模を大きくしていくのが虹コンの方向性なのかな、と。 永田:そうですね、最近発表されましたが(※インタビュー収録は発表前)、予科生の鶴見萌がメンバーに昇格して、続いてつくドル!2期生オーディションも開始します。僕らとしては、もっと規模を大きくしたいし、長期的に継続できるプロジェクトにしていくつもりです。 もふく:まだ虹コンが活動を始めて数ヶ月なのに、2期生オーディション?って思われるかもしれないけど、それぐらいのスピード感でメンバーを増やしていきたいなと。永田さんも最初は「まだオーディション早くない?」みたいなモードだったんですけど(笑)、やっぱりアイドルってメンバーが命だと思うんで、1人でもスターが入ってくればそれだけで人気がグッと上がると思うし、それも年内にやっちゃいたいと思って。 ――モーニング娘。も、2期メンバーが入るのわりと早かったですもんね。 もふく:そういうワクワク感みたいな、メンバーが増えていく途中の感じって一番ドキドキするじゃないですか。2期生では、クリエイティブ要素の強い子が入ってきてくれると嬉しいなと思ってます。イラストを描くことに興味があるとか、イラストが既に描けるよっていう子が欲しいですね。

もふく「つくドルとしては、自分たちで叩けるとか、弾けるとか、そういう装置がある曲を作りたい」

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でんぱ組.incなどのプロデュースでも知られるもふくちゃん。

――虹コンはアイドルシーンの中に斬り込んでいってる真っ最中なわけですけども、運営の二人から見て、最近のシーンの中で気になる存在や、シンパシーを覚える存在っていたりしますか? もふく:私は今、アイドルといえば清 竜人25に夢中ですね。立ち位置も何も全然違うんですけど、アプローチとして、アイドルとして面白いことをやっているのがいいな、と。楽曲の良さもありますし。これだけ数多アイドルさんがいる中で、「あれは何だ?」って、誰が見ても驚く世界観、プラス本当にパフォーマンス力があって。ちょっと負けている部分があるなってすごく感じます。アイドルカルチャーを彩っている一組としてはすごくいいなと思っています。一緒に観に行ったんだよね? 永田:そうですね、僕もその点に関しては同意見。まあ僕の中での定義付けとしては、あれはアイドルではないんじゃないか?と正直思っているんですけど(笑)、楽曲だったりパフォーマンスだったりのクオリティは本物で、そこに関しては、観に行った時に純粋に嫉妬しました。今後の展開も注目したいし、良い目標っていうか、ライバル関係というか、そういうものになれればいいなとは思っています。こちらからの熱烈なラブコールで、11月11日に開催される「清 竜人ハーレムフェスタ2014 Vol.2」ではさっそく共演することになりました。 ――楽曲の方向性では、どういう楽曲をやっていきたいとか青写真はありますか? もふく:清 竜人25さんはダンス☆マンさんに編曲やってもらっている曲があったりして、そこもハロヲタとしては嫉妬、みたいな(笑)。え?それうちらがやりたかったんだけど(笑)。 永田:やっぱり、アイドルソングとしての僕らのルーツはハロプロなんで、そこはリスペクトしてすごく参考にしてます。楽曲を作るときに「ホニャララみたいな曲」として具体的に名前が上がってくるのは、ほとんどハロプロ楽曲ですし。とはいえ、それを回顧して模倣しているだけでも当然しょうもないので、良さはいろいろ取り入れつつ、今は意識的にいろんな方向性の音楽をやっていこうとしています。月例公演では毎月2曲ずつ新曲を増やしているんですけど、決まった方向性なく、いろんなジャンルの音楽をいろんなクリエイターさんに作ってもらっていて。その中でどれがカチッとくるかなっていうところを、手探りしながらやってる感じですね。僕の信念としてもあるんですけど、とにかく楽曲が良くなければアイドルは絶対に大きくなれないと思っているので、そこは妥協しないで作ってます。 ――9月の定期公演では、メンバーがラップに挑戦したり、ギター演奏をやる子もいたりと、様々な個性が見え隠れしていたので、そういう要素を取り入れた楽曲をやっていくっていうのも面白いかもしれませんね。 もふく:前に言っていたのは、ギター弾ける子がいるから、曲の途中でギターソロが入る曲を作ろうとか。あいつそういえばトランペット吹けるって言ってたよなあ?とかも(笑)。最近ではアイドルネッサンスさんも曲の途中でトランペットを吹いていたので(東京スカパラダイスオーケストラ「太陽と心臓」カバー)、つくドルとしては、自分たちで叩けるとか、弾けるとか、アイドルだからパフォーマンスとして面白くすれば許されるところなので、そういう装置がある曲を作りたいなとは思っています。わかりやすいギターソロが入っていて、そこだけピンスポットが当たったりとか、全然吹けないけどそこだけトランペット入るみたいな、下手でもオッケーなように曲を構成しておくとか、そういうのをやりたいなって。あとは15分ぐらいある曲が作りたいです、個人的に(笑)。 ――すごい、プログレですね(笑)。 もふく:そうそう、プログレずっと作りたかったんです。アイドルって持ち時間が15分ぐらいの現場がすごく多いんで、それなら1曲で済むから、便利だなと(笑)。もうMCとか下手だから、曲の中でMCやらせちゃおうみたいな。15分の曲の中盤ぐらいに「MCタ~イム」みたいな感じで入ってきて、最後は一大オペラで終わる、みたいな。 永田:クラシックみたいな(笑)。第1楽章、第2楽章で全然違う曲だけど、全部でひとつの曲です、みたいなね。僕はやりたい曲のアイデアはまだまだたくさんあって。来年使いたいサマーソングを今からストックしてますよ。基本的には「かわいい子がホニャララを歌ったら最高だよね」という発想で考えてます。例えば「愛だけ叫んで」という曲は、コードネームが「氣志團」でした。あとはやっぱりハロプロですよね。「ドキドキ乙女の通信簿」という曲は、往年のタンポポみたいな胸キュンソングを目指して作ったり。

永田「アイドルとして活躍できた子が、次のステップとしてクリエイターも目指す」

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対談は個性的な内装が印象的なピクシブ株式会社にて行われた。

――虹コンのメンバーの中で、この子の個性が面白いみたいなところってあったりします? もふく:イラストでは、根本凪ちゃんが「いらこん」というフジテレビの番組に出てます。「芸能人イラスト予備校」という、芸能人の中でイラストが描ける人たちが、虹コンにも携わっていただいてる岸田メルさんにイラストを教えてもらうという内容なんですけど。あと最近面白いなって思ったのが、みんなまだ若いから、可能性がいろいろあるかもしれないっていうことでとりあえず絵を描かせてみたら、イラストレーター希望の子じゃないんだけど、すごく上手い子がひとりいて、え?みたいな。君ちょっとイラストレーターの方がいいんじゃないの、みたいな話があって、やっぱり若い子ってまだそういう意味では……すごく言い方が難しいんですけど、サブカルの子たちって一回こじらせてるじゃないですか。けど、こじらせる前の、まだ「私イラストが好き」とか、「私芸術が好き」って芽生えの前の子たちを集めているので、その芽生える瞬間に立ち会えるのがすごく面白いなと思ってます。既にクリエイター希望だったり、クリエイターとして活動している子をアイドルにするっていうんじゃなくて、これからクリエイターになりそうな子たちの芽を育てる、みたいな(笑)。 永田:声優志望の子は声優レッスンをやらせていますし、イラストレーター志望の子も美大出身の方に教えてもらっています。本当に育てるところからやっているので、実際にクリエイターとして作品が出せるようになってくるのはまだ先だと思いますが、元々そういうコンセプトなんですよ。クリエイターのアイドルではなくて、アイドルとして活躍できた子が、次のステップとしてクリエイターも目指していこうね、という。 もふく:こじらせてないんですよ。それがすごく大事なんです(笑)。18歳以下のアイドルと触れ合うっていうのは、私にとってもあまりない経験で、すごく新鮮ですね。大人の子たちのいいところと、子供の子たちの面白いところって、全然アイドルとして面白さがまったく違うので。どっちも見れるのはすごい楽しいなと思います。 ――なるほど。発掘していく感じが面白いですね。 もふく:そうですね、今からこじらせていくんだろうなあって(笑)、遠い目をしながら見ていますけど。女の子のそういう、ここからどういう興味を持っていくのかなっていうのをウォッチするっていうのもすごく楽しいですね。 (取材・文=ピロスエ/写真=竹内洋平)

赤い公園・佐藤千明が語る、"ポップな存在”への道「曲も人間も開けてきている」

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【リアルサウンドより】  9月に2ndアルバム『猛烈リトミック』を発表した赤い公園が、10月24日の福岡Drum Be-1公演を皮切りに、『赤い公園マンマンツアー2014~お風呂にする?ご飯にする?それとも、リトミックにする?~』をスタートさせた。亀田誠治や蔦谷好位置といったプロデューサー陣を迎え、プロフェッショナルな姿勢で楽曲と向き合ったアルバム制作を経て、さらにバンドとして研ぎ澄まされた姿を見せるツアーとなることは間違いないだろう。今回はボーカルの佐藤千明を迎え、ツアーの展望と共に、「ポップな存在になりたい」という彼女たちの理念について、改めて話を訊いた。

「プロフェッショナルな部分を、ちゃんとツアーでも形にしたいと思っています」

――10月24日からツアーが始まっていますが、これまでのライブと比較して、セカンドアルバムの制作を経た今、どのようなライブになっているのでしょうか? 佐藤千明(以下、佐藤):今まで私たちのライブが評価されてたのって、曲の鋭さというよりは、アグレッシブなパフォーマンスとか、飛び道具的な音の使い方、あとは感情が爆発しているところとかだったんですね。「野蛮」って言われることも多かったり(笑)。それはそれで嬉しかったし、自分たちでも感情が先行した表現の仕方がありだと思ってやってたんですけど、『猛烈リトミック』に関しては、感情が先行した演奏とか歌は一切なくて、プロフェッショナルな意識を持って、「私の音はどこでどんな風に鳴ればいいんだろう」っていうことをみんなが考えて、そこを突き詰めることができたアルバムなんです。なので、そのプロフェッショナルな部分を、ちゃんとツアーでも形にしたいと思っています。 ――ご自身の「歌」ということに関しては、どんな面においてプロフェッショナルな部分を見せたいですか? 佐藤:『猛烈リトミック』に対して、すごく言っていただけたのが、「歌詞がとてもいい」ってことだったんですね。でも、今までのライブで歌詞が届いてるって思ったことはあんまりなくて、それは楽器との音量のバランスもあるし、自分の歌い方とか発音もすごく関係してると思うんですけど、今回はちゃんと歌詞を届けられたらいいなっていうのが、具体的な目標としてはあります。より発音がはっきり聴こえるマイクに変えてみたり、今いろいろチャレンジしてます。 ――歌い方の部分に関しては、どんなチャレンジをしていますか? 佐藤:例えば、「NOW ON AIR」とかって、CDだと普段の歌い方と結構変えてるんですけど、喉を使う歌い方なので、ライブだとあんまり飛ばないというか、開いた声に聴こえない歌い方なんです。なので、ライブ用に声をいろいろ考えてるんですけど、でもCDとライブで歌い方が全然違っちゃうのも嫌なので、口の形はレコーディングと同じにしつつ、お腹を意識したり、いろいろ試行錯誤して、今はCDとライブでそんなに離れてない歌い方ができてきたと思います。 ――他のメンバーはそれぞれどんなことを意識しているんでしょう? 佐藤:赤い公園の曲って、静と動がすごく激しいんですけど、それを今までライブで表現し切れてなかったと思うんですね。それはエフェクターとか、細かい部分の話なんですけど、ベースが一番その調節が難しくて、そこを今すごく意識して、リハで詰めてます。中音(※)のバランスを考えて、音量を今までの半分くらいに落としてやったりとか、それは今までだったら考えられないことなので、ツアーに向けての意気込みを感じます。 ※ステージ上で演奏者に聞こえる音。外音は観客者に聞こえる音 ――佐藤さん、FUGAZIってわかりますか? 佐藤:フガジ? わかんないです。麩菓子なら知ってます(笑)。 ――(笑)。FUGAZIっていうアメリカの伝説的なハードコアバンドが来日したときにPAをやった人の話によると、彼らは中音めちゃめちゃ小っちゃくて、その代わり、外音はものすごく音を出していると聞きました。 佐藤:中音で絞れたら、外いくらでも出せますよね? 今アンプの音でバーンって出してる状態だから、そりゃあ静と動出ないだろって話で、今PAさんとより連携を強化して、すごくいい感じになってきてます。FUGAZIの話もしてみます(笑)。 ――赤い公園はアンサンブルがすごい緻密なので、それをプロフェッショナルに再現するっていう意味でも、中音を絞って、ちゃんと細かい部分も聴こえるようにした方がいいんだと思います。 佐藤:そうですね。今中音が絞れてきて、「ここでドラムがこんなことやってるんだ」とか、「ここのギターはこうなんだ」っていうのがすごいよくわかるようになって、それをわかった上で歌うと、リズムとかも全然違って聴こえて、気持ちいいんですよね。特に、歌川(ドラム)は前からリズムをすごく意識してて、彼女はライブが終わるごとに、「今日リズムどうだった?」って聞いてくるんです。「自分はぶれない」っていう精神性が、ドラムにもすごく出ていて、いつも後ろを振り返ると安心します。 ――佐藤さんも以前自分の課題としてリズムを挙げてましたよね? 佐藤:はい、私はとにかくリズムが苦手で、リズムの取り方がワンパターンなんです。KREVAさんと「TOKYO HARBOR」をご一緒したときに、KREVAさんはいろんなのり方をされるんですよね。そのとき津野が、「いろんなのり方ができれば、歌の聴こえ方も変わってくると思う」って言ってて、私、後でのるとか前でのるとかもわかってなかったんですけど、最近は意識するようにしてます。あと赤い公園のリズム隊って、ドラムがちょっと走ってて、ベースがちょっともたってるんですね。津野も私もそれが気持ちよくて好きなんですけど、でも曲によっては個性を消して、かっちり合わせることができればより強いから、そこも意識するようになりました。 ――津野さんに関してはどうですか? 佐藤:自分では言わないんですけど、人一倍練習してると思うんです。「ギター鬼じゃん」っていう、難しい曲があって、「これ絶対できない」ってリハで言ってても、次のリハまでに絶対できるようにしてくるんですよ。しかも、わざと「できるようになった」って軽く言って、「できるようになってる! 私たちも頑張らないと」って、促してるんですよね。「頑張れ」とは言わずに、背中で語る系。今までもそういう人だったけど、その部分が最近より濃く出てて、いいリーダーだなあって思います(笑)。

「音楽的に、赤い公園が理解されるには、結構長くかかると思ってる」

――では、佐藤さんがフロントマンとしてステージに立つという面では、何か意識していることはありますか? 佐藤:私はお客さんの目を見て歌うと、その人に近づけた感じがするので、より多くの人の目を見て歌うようにしてます。その瞬間にすごく気持ちを込めることができて、優しくもなれるというか、「今ここに来てくれた人たちにしか歌えない歌を歌えてる」っていう実感が湧くので、目を見るのはすごく大事にしてます。 ――でも、意地悪で言うわけじゃないけど、夏フェスとか、大きなイベントだとなかなかそういうわけにもいかないと思うんですね。実際、今年の夏ってたくさんのフェスやイベントに出たと思うんですけど、そういう中で思ったことはどんなことでしたか? 佐藤:私、これまで「みんなで同じ気持ちを共有して楽しむ」っていうことをやってこなかったんです。だから、見られ方によってはすごく独りよがりな煽り方になってたと思うし、実際に自分で自分たちの映像を見返しても、お客さんを突き放しちゃってるんじゃないかって思うときがあって。それで「どうしたらいいんだろう?」って考えたときに、もうちょっと素直に、感謝の気持ちを述べてみようと思って、ライブが終わるときに、「ありがとうございました」って言うだけでも、全然違うんですよ。それをやってると、どんどん楽になって、ちゃんと開けて歌えるようになってきたんです。きれいごとだとも思うんですけど、私にはその部分がすごく大事なんですよね。 ――そういうメンタルの部分も絶対大事だと思います。 佐藤:あとは、フェスとか大きいところでやらせてもらうときは、ライブだって思わないというか、より異常な空間だっていうのを頭の中で意識して、歌うようにしてます。そうすると、より曲の世界に入り込めるんです。 ――「ここはディズニーランドだ」みたいな?(笑) 佐藤:「ふやける」でそう思ったら大変なことになりそうですけど(笑)、でも、そういうちょっと異常な空間だって思うとハマる曲もあるので、お客さんも「全部地蔵だ」とか思うと(笑)、自分も違うものになれる感じがするんですよね。なおかつ、その差がちゃんと目に見えてわかるぐらいじゃないと意味がないと思うので、そこも今回のツアーで極めたいところですね。 ――そうやって曲ごとにアプローチを変えるっていうのはすごく納得で、赤い公園って、さっき静と動って話があったように、曲調もアレンジの幅も広くて、つまりは表現する感情のレンジもすごく広いですよね。でも今のフェスって、「盛り上がる」っていうひとつの価値観が強くなり過ぎて、フェス疲れしちゃってるバンドも多いと思ってて。 佐藤:バンド内でもそういう話は出て、「どうしたらいいんだろう?」っていうのはありました。フェスにもよると思うんですけど、やっぱり「みんなで楽しもう!」っていうお客さんが多いのかなって思って、だからといって、「そっちに寄せる」っていうのもどうかと思う。ただ、やっぱり今の自分たちの立ち位置を考えたときに、まずはいろんな人に知ってもらいたくて、若い人の心にもちゃんと届いてほしいから、割り切らないといけないところもあると思ってて。 ――うん、変に頑なになるのも、それはそれで違うと思うしね。 佐藤:もちろん、自分たちとしてはフェスでやりたい曲がいっぱいあって、「交信」とか「きっかけ」みたいな聴かせる曲もやりたいんですけど、盛り上がりたくて来てるお客さんに対して、そういう曲をやって自分たちになびいてくれるのかっていう葛藤はあって。そう考えると、自分たちがやりたいことを貫き通すっていうのは、まだもうちょっと先かなって思うんですよね。音楽的に、赤い公園が理解されるには、結構長くかかると思ってるので、今は頭を柔らかくして、盛り上がりたい人たちの前では、私たちもその人たちと一緒に盛り上がって、楽しむっていう、それが一番いいかなって。 ――うん、だからフェスはフェスで考えつつ、ワンマンでより濃密な自分たちの世界観っていうのを提示していくことが大事になると思うんだけど、ここからは完全な僕の妄想というか願望で、赤い公園は近い将来ホールでやるようになってほしいなって思ってて。 佐藤:あー、それ嬉しいです。 ――もちろん、場所とか相性もあるけど、基本的にはライブハウスよりもホールの方が音がいいから、最初に話したプロフェッショナルな部分とか、歌詞の聴き取りやすさとかも、より伝わりやすいと思うし、あと「交信」とか「きっかけ」とか「風が知ってる」みたいなタイプの曲って、ホールの方がその魅力がより伝わると思います。 佐藤:「早くホールでできるようになりたいね」っていうのは、メンバーとも話してます。たぶん、音楽的にもホール寄りなんじゃないかなって。やりたいですねー、ホール。 ――ちなみに、今のアイドルって、日本武道館が共通の目標になってるじゃないですか? 赤い公園にも、そういう目標ってあるんですか? 佐藤:「武道館でやりたいね」っていうのは言ってます。あと中野サンプラザもやりたくて、アップアップガールズ(仮)とかaikoさんを見たことがあるんですけど、音の感じもよかったし、照明ひとつで感情がすごい動くんですよね。あとは……見やすい(笑)。 ――(笑)。でも、中野サンプラザ改修に入っちゃうかもしれないんだよね。 佐藤:そうなんですよ! 今オリンピックに向けて、どんどん会場がなくなってるじゃないですか? 何とかその前にやるか、もしくは改修後のこけら落としを(笑)。 ――もしくは、オリンピックの開会式で演奏するとか? 佐藤:それ、すごい! 2020年……あと6年か……よし、頑張ろう!

「深みのある人間が深みを一切見せない美学みたいなのが私は好きで、そういう赤い公園を見てみたい」

――じゃあ、東京オリンピックを目指して(笑)、今後の赤い公園についてもお伺いしたいのですが、僕は2年前の『ランドリーで漂白を』が出たときに取材をしてて、そのとき「存在としてポップになりたい」っていうことを話してくれてましたけど、それは今も変わらず? 佐藤:ああ、それは変わってないですね。 ――ちなみに、そのとき目指すべきポップな存在の例として、2人の名前を挙げてくれましたけど、覚えていらっしゃいますか? 佐藤:aikoさん? ――いえ、歌手じゃないです(笑)。 佐藤:歌手じゃない?(笑) えーと……ユースケ・サンタマリアさん? ――その感じが近いですね。 佐藤:武井壮さん! ――惜しい! 「た」で始まる人ですね。 佐藤:超当てたい……た……たむらけんじさん……あ、タカミー! ――お笑い出身で、今はそれこそ謎のポップな存在なんだけど、本業は役者の方。 佐藤:大泉洋さんしか浮かばない(笑)。誰ですか? ――正解は、竹中直人さん。 佐藤:あー、そうか! ――あともう一人が、阿部サダヲさん。 佐藤:阿部サダヲさんはポップだなあ。竹中さんは竹中さんが作り上げたあの雰囲気っていうのがあって、あの感じっていうのは、今の赤い公園でも時間をかければもしかしたら近付けるかもって思うんですけど、阿部さんにはまだ行けないんですよね。そこが『猛烈リトミック』でやったことと似てる(笑)。 ――どういうことですか? 佐藤:ポップな曲を作って、ポップな歌を歌おうとすることの方が、公園にとっては難しいんです。だから、よりポップな人……今だったら、高田純次さんを挙げると思います。でも、これってすごくいいことですよね。高田純次さんって、一見、ひょうきんなことばっかり仰ってて深みを見せないじゃないですか? 津野もすごく深みのある人で、それが曲に表れてると思うんですけど、そういう人間が深みを一切見せない美学みたいなのが私は好きで、そういう赤い公園を見てみたい。まあ、津野が「私はそれは嫌」って言ったら、終わりですけど(笑)。 ――でも、津野さんもそこに行きたい人のような気がする。 佐藤:たぶん、そういう美学は彼女も持ってると思います。 ――それこそ、2年前はまだ露出もそんなに多くなくて、ポップな存在になりたくても、それを見せる機会がなかったわけじゃないですか? でも、今はラジオのレギュラーがあったり、自分たちを見せる場が増えましたよね。そういうメディアへの出方に関して、意識してることはありますか? 佐藤:絶対面白くしたいなっていうのは思いますね。赤い公園はみんな笑うことが好きだし、たぶんもともとは暗い人間なので、笑いでどれだけ救われるかをすごくわかってて、そういう意味でも、ポップになりたいんじゃないかと思います。テレビとかラジオに出て、お茶の間で普通に「赤い公園面白いね」って言われるようになれたら、それが理想ですね。まあ、暗いところもあるけど、もともとふざけた人間なんじゃないかっていうのも最近は思ってて(笑)、なので、まずは自分たちがこういう人間なんだっていうのを見てもらって、自分たちが楽になりたいっていうのもあるし、それで結果的に自分たちのなりたいポップな方向に行けるのかなって。今日2年前の話を聞いて、実際あの頃より少し近づけたなって思えたので、すごくよかったです。 ――じゃあ、次の取材も2年後に(笑)。 佐藤:えー(笑)。でもホントに、最近ラジオとかテレビとかに出ると、モノマネやったりとか、ふざけ過ぎちゃうから、「本職何だよ?」って言われることもあるし、自分でもちょっとふざけ過ぎかなって思うことが多かったんですね。でも、2年前から自分たちのやりたいようにやってきて、曲も人間も開けてきて、感謝の気持ちも述べられるようになったし、どんどん4人でポップな方向に行けてるんだって確認できたので、今日で悩んでたことが解決しました。よかったー、いい時間になったなあ(笑)。 (取材・文=金子厚武)
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赤い公園『猛烈リトミック』(ユニバーサル ミュージック)

■リリース情報 『猛烈リトミック』 発売:2014年9月24日 初回限定盤(CD+DVD) ¥3,500(税抜) TYCT-69023 通常盤(CD) ¥2,800(税抜) TYCT-60045 〈収録曲〉 01 NOW ON AIR 02 絶対的な関係 (4th single) 03 108 04 いちご 05 誰かが言ってた 06 私 07 ドライフラワー 08 TOKYO HARBOR 09 ひつじ屋さん (3rd single) 10 サイダー 11 楽しい 12 牢屋 13 お留守番 14 風が知ってる (3rd single) 15 木 特典DVD(初回限定盤のみ) 初回限定盤特典その① DVD 収録 ひつじ屋さんミュージックビデオ NOW ON AIRミュージックビデオ オフショット・ドキュメンタリー「情熱公園」 初回限定盤特典その② メンバー手書き「猛烈な手紙」封入 ■ライブ情報 「赤い公園 マンマンツアー 2014 ~お風呂にする?ご飯にする?それとも、リトミックにする?~」 11月3日(月・祝) 大阪AKASO 11月23日(日) 六本木EXシアター

大森靖子の世界観はどう映画化された? 橋本愛&蒼波純主演『ワンダフルワールドエンド』を観る

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左、橋本愛。右、蒼波純。

【リアルサウンドより】  10月23日。渋谷シネクイントにて、『ワンダフルワールドエンド』がワールドプレミア先行上映された。  本作は、大森靖子の『ミッドナイト清純異性交遊』と『君と映画』のPVを元に、彼女の世界観を映画化したもの。主演は橋本愛、蒼波純、稲葉友。監督はPVと同じく松居大悟が担当している。  17歳の詩織(橋本愛)は売れないモデル。恋人の浩平(稲葉友)と半同棲生活を送りながら、ブログを書いたり、ツイキャスで配信をして、何とかファンを増やそうとしていた。そんなある日、詩織は撮影会でゴスロリ服を着た13歳の亜弓(蒼波純)と出会う……。  先行配信されたPVでは、詩織と浩平のデートに亜弓が動向する姿や、家の中で詩織が浩平をボコボコにする場面が大森靖子の楽曲にのせて描かれたが、完成した映画版はリアルな手触りを残しながらもファンタジックな、ガール・ミーツ・ガールの物語に仕上がっている。 

大森靖子『ミッドナイト清純異性交遊』Music Video

大森靖子『君と映画』Music Video

 上映終了後は大森靖子、松居大悟、稲葉友が登場。撮影の裏話を披露した。  松居によると、本作はPVの時点で映画化が決まっており、映画を10だとするとPVは4〜6について描いたものらしい。  本作は大森の語ったアイデアや実体験を、松居が作品に落とし込むという形で制作されている。そのため「映画を撮ったという実感は薄く、人のBLOGを代筆したような感じだった」と松居が語っていたのが印象深かった。  松居はクリープハイプの歌詞の世界を原案とした映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の監督も務めている。この作品も短編群像劇のようなPVをつなぎ合わせることでクリープハイプの世界観を表現した音楽映画となっていた。  いわゆる、漫画やアニメでは定番となっているメディアミックス的な手法だが、本作でも、大森靖子の世界観を、物語の形を借りて描き出すことに成功している。

『ワンダフルワールドエンド』予告編

 もちろん主演の二人が魅力的なのは言うまでもない。  橋本愛は、中島哲也監督の『告白』で注目されて以降、数々の映画で圧倒的な存在感を見せてきた。そして、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)でアイドルに憧れる田舎の女子高生・足立ユイを演じたことで演技の幅を大きく広げ、本作では大森靖子が乗り移ったかのような激しい演技も披露している。また、東京で売れないモデルをやっているという詩織の設定は、「もしも、ユイちゃんが東京に来ていたらどうなっていたのか?」という物語のようにも見える。  新人の蒼波純も、橋本愛にリードされる形で素晴らしい演技を見せている。蒼波純は講談社が主催する「ミスiD2014」のグランプリを受賞したアイドル。ネット上では、毎日のようにツイッターから投稿される彼女の写真爆撃に注目が集まっていた。  とは言え、“凄く新しい何か”が彼女にあると思いつつも、どのように彼女を使えばいいのかと戸惑っていたクリエイターも多かったのではないかと思う。そんな中、本作は、「蒼波純の女優としての可能性」を理想的な形で引き出している。台詞は決して多くはないが、憂いのある表情が実に素晴らしく、表情を見ているだけで胸がいっぱいになる。  本作と『世界の終わりのいずこねこ』が上映された後は、蒼波純を撮りたいというオファーが殺到することだろう。  大森靖子の世界を忠実に映像化し、橋本愛と蒼波純が魅力的に撮れているだけでも、超えるべきハードルは完璧に超えた映像作品だと言える。  もちろん魅力はそれだけではない。  作中では売れないモデルの撮影会や、ツイキャスやLINEといったネットを通じて10代の少女が自分の動画を配信したり、コメントをくれたファンと簡単に出会えてしまう姿が、当たり前のものとして描かれている。これはネットやアイドルに馴染みがない人から見たら、不可解な世界に映るかもしれない。  しかし、かつてはネットで知り合った人と恋人になるなんて理解できないという風潮だったが、今では、普通のこととなっている。  「ミッドナイト清純異性交遊」に「アンダーグラウンドから君の指まで遠くはないのさ」という歌詞があるが、この歌は、人と人がSNSや動画配信でつながってしまう情報環境を、その危なっかしさも含めて祝福している曲だと思う。詩織と亜弓がスマホでお互いを撮影する場面の美しさは、それをもっとも表現している。  また、「さよなら、男ども。」というキャッチコピーも強烈である。  大森靖子は、アイドルについて饒舌に語るのだが、それはかわいい女の子が大好きだからだというのはもちろんだが、アイドルの向こう側に見える若い女の子たちを乱暴に消費して使い捨てにする社会に対して彼女が自覚的だからだろう。  これは女だけの問題ではない。本当は男も同じ問題を抱えている。しかし、女と較べて社会制度に守られている男たちは、消費されていることに対し、あまりにも無頓着である。そんな“男ども”が、どのように描かれているのかも注目だ。  劇場公開は来年1月17日と、しばらく間が空くが、彼女たちのワールドエンドを見届けてほしい。 (文=成馬零一) ■映画情報 『ワンダフルワールドエンド』 1月17日より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。 前売鑑賞券では、特製ステッカー(数量限定)付。 (C)2014 avex music creative inc.

オープンなももクロ&しゃちほこに、ハイタテキなエビ中!? “スタダ三姉妹”の棲み分けを解説

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『ハイタテキ! (初回生産限定盤A)(DVD付)』

【リアルサウンドより】  私立恵比寿中学が11月3日に横浜アリーナ、8日には神戸ワールド記念ホールにて『私立恵比寿中学 東西大学芸会2014「エビ中のおもちゃビッグガレージ」』を開催する。また、11月5日には新シングル『ハイタテキ! 』をリリース、勢いを感じさせる活動が続いている。姉妹グループであるももいろクローバーZ、チームしゃちほこもそれぞれに活躍中。ももクロは笑福亭鶴瓶とともに出演する新レギュラー番組『桃色つるべ~お次の方どうぞ~』(関西テレビ)が来年1月よりスタートすることが決定、TVでの活躍も目立つ。一方、チームしゃちほこは11月から初のホールツアーを行うなど、ライブの規模を拡大中だ。いま、勢いに乗っている彼女たちはスターダストの芸能3部に所属し、通称“スタダ三姉妹”とも呼ばれているが、その棲み分けはどのように行われているのか。アイドルカルチャーに詳しい編集者・ライターの岡田康宏が解説する。(編集部)  現在のアイドルブームを指す言葉として「アイドル戦国時代」という言葉が定着して久しい。僕は2011年1月に 『「アイドル戦国時代」がやってきた!』というサブタイトルの新書『グループアイドル進化論』を岡島紳士氏との共著で出しているのだが、その本を書いているころは「いまのブームはアイドルブームではなくAKBブームだ」とか、「『アイドル戦国時代』なんて言葉は1年もすれば忘れられるだろう」とよく言われたものだ。  おそらくこの「アイドル戦国時代」という時代に、もっとも上手く乗ったのがスターダストの芸能3部だろう。女優・モデル事務所としては一流ながらアイドルには実績のなかったスターダストは、この数年でスタジアムクラスを満員にするももいろクローバーZを筆頭に、私立恵比寿中学、チームしゃちほこと武道館クラスを完売させるグループ3組を要するアイドル界の一大勢力へと成長した。スターダストのアイドルグループの特徴は、少人数でメンバー個々のキャラクターを生かしたスタイルや、特定のプロデューサーを置かない方針など、現在の最大勢力であるAKB48系のグループに対するカウンター的な意味合いも強いが、同時に同じ事務所内での、3グループの棲み分けもまた絶妙だ。  長女にあたるももいろクローバーZは、すでに大ブレイクしていたAKBに対して、AKB劇場すぐ裏のUDXシアターでの連続公演を開催するなどゲリラ戦的な活動から入り、個々のキャラクターを生かした、尖ったパフォーマンスで芸能人やクリエイターのファンを増やし、積極的なコラボ策でファン層を広げていった。この長女の性格を色濃く受け継いいでいるのが三女にあたるチームしゃちほこだ。名古屋城での路上ライブから活動をスタートさせたチームしゃちほこは、メンバーの人数やイメージカラーなど無印時代のももクロのものをそのまま受け継いでおり、SKE48によってアイドルファンの土壌が温められていた名古屋を拠点に急成長。CDデビューから、およそ2年で日本武道館公演を完売させるところまで辿り着いた。  一直線に上を目指す長女、三女に挟まれて正反対の性格付けをされているのが私立恵比寿中学だ。現在のメンバーは8人で最も多かったときは13人、リーダーもセンターも置かず、オリジナルのメンバーで残っているのは真山りか一人だけ。メンバーもファンも「永遠に中学生」という設定で、個々のキャラよりもモラトリアム的な空間での群像劇で見せていく。最新シングル「ハイタテキ!」はそこにかけたわけではないだろうが、オープンな性格の長女、三女に比べると内向的で人見知り、ガツガツと新規のファンを獲りに行くよりも、オープンスペースでのリリースイベントや握手会など、距離感の近いイベントを残しつつ、既存のファンコミュニティ、ファミリーを大切にした運営が特徴でもある。今春、メジャーデビュー後初めてメンバー3人が転校し、小林歌穂、中山莉子の2人が加入。メンバー的にもパフォーマンス的にもリセットされたことで、11月3日の横浜アリーナ公演はさすがに即完売とはならなかったが、持久戦型のグループだけに。ここからまたじわじわと、しかし確実に人気を上げてくることだろう。  すでに武道館クラスまで成長した三姉妹に加え、大阪にはまだインディーズながら日本青年館ライブを完売させているたこやきレインボーが控えており、次は九州方面で新たなグループを準備しているという話もある。スターダスト芸能3部のアイドルグループは、個々のグループももちろん魅力的だが、同時にコンセプトの共有と差異化、ノウハウの蓄積とグループごとの棲み分け、そのバランスが絶妙に組み合わされることで、ファミリーとしての魅力をより一層強固なものにしている。 ■岡田康宏 編集者、ライター、カメラマン、評論家、コラムニスト、WEBプロデューサ。得意分野はサッカーとアイドル。著書・共著に『アイドルのいる暮らし』『サッカー馬鹿につける薬』『グループアイドル進化論』など。Twitter:@supportista

lyrical schoolが新作で示した「アイドルラップ」の可能性 再録曲に表れたグループの成長を読む

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lyrical school『PRIDE(通常盤)』(T-Palette Records)

【リアルサウンドより】  清純派ヒップホップアイドルグループ・lyrical schoolは、2010年にtengal6として結成され、2012年に現在の名前へと改名。タワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」へと移籍し、以降その勢いを着実に伸ばし続けているグループだ。今回は結成4周年を迎え、新作『PRIDE』をリリースした彼女たちについて、ライターの香月孝史が分析した。(編集部)  lyrical schoolの新曲「PRIDE」は、彼女たちのイメージからすれば一見新鮮でもあるような、ハードさやタイトさを打ち出したナンバーになっている。しかしそれは彼女たちにとって、変化球やあえてのイメージチェンジのような位置づけのものではない。ライブで見せつけてきたパフォーマンス力、彼女たちの今を象徴する力強さからごく自然に導かれた、現在のlyrical schoolを代表する「誇り」に満ちた楽曲である。  そんな彼女たちの姿を刻みつけるのは、表題曲「PRIDE」だけでなく、各メンバーの名前が冠された6種類の初回盤に収録された、初期曲のリテイクである。グループとして年数を重ね、様々なライブ、イベントで軽やかに爪痕を残してきた彼女たちは、それらの初期曲をライブの定番曲として進化させ、あるいは折にふれて久々の披露をしてみたりしながら、欠かせないレパートリーとして育ててきた。しかし、観たばかりのライブの記憶をたどろうとしても、ファンがアクセスできるレコーディング音源はごく初期のもの、言ってしまえば今よりはるかに未熟な段階のものしかなかった。今回、「photograph」や「プチャヘンザ!」などの初期曲が新録されたことで、ようやく音源が現場に追いついてくれたとも言える。リテイクされた現在形の初期曲群と、まだメンバーそれぞれのフロウにもさほど違いがなかったかつての音源とを聴き比べると、スキルの差を実感するのはもちろんだが、その差はまた、彼女たちが歩んできたユニークな歴史の証明にもなっている。  tengal6というグループ名で活動をスタートしたlyrical schoolだが、その立ち位置は当初から独特のものだった。アイドルグループでありつつも、アイドル中心のイベントに出演する割合はさほど高くなく、ヒップホップ畑の出演者たちやバンド編成のグループなどの中に混じって、結成間もない「ヒップホップアイドル」はたびたびライブを行なっていた。かといって、ヒップホップシーンに完全にコミットしようとするわけでもない特有のスタンスは、メンバーやスタッフの試行錯誤と唯一無二の面白さとを同時に垣間見せるものだった。アイドルとして頭角を現したグループが他ジャンルのイベントに出演してインパクトを残すことは今や珍しい光景ではないが、lyrical schoolの場合、初期のライブ活動と方向性の模索の中で、他ジャンルとの融合が自然と多くなっていたのだ。  その頃から一貫して印象的なのは、そうした独特なスタンスが、決して奇をてらった結果ではないということだ。自らのベストポジションを探りながらも、その活動には過剰な気負いは感じられなかったし、もちろん「アイドル」というジャンルから距離を置こうとするものでもなかった。アイドルという立場でラップを選択し活動する彼女たちに対して、当初ネガティブなリアクションが少なからずあったことも事実だ。にもかかわらず、不思議なほど彼女たちに悲壮感は見えず、また身の丈に合わないハードさを気取ることもなかった。方向性もモチベーションも、現在のようには定まっていなかったに違いない。それでも、今と変わらないテンポ感のステージングで、ラップを揺るぎない武器にしながら、まぎれもないアイドルグループとして歩みを進めていた。
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lyrical school『PRIDE(初回限定盤 ayaka盤)』(T-Palette Records)

 2012年のT-Palette Records所属をきっかけにグループ名をlyrical schoolに改めて以降、アイドル中心のイベントに出演する割合もぐっと増え、グループアイドルシーンの中での存在感も加速度的に上昇していく。停滞しかねない危機でもあった、初期のボーカルを支えたmarikoや初代リーダーerikaの卒業も、新加入のhina、minanが継承し独自の色を添えることで昇華されていった。hina、minanはいつしかオリジナルメンバーのami、ayaka、mei、yumiと遜色ない存在の強さを獲得し、それぞれが競うようにフロウに独自のキャラクターを滲ませて、ますます楽曲に奥行きが増していった。今回リテイクされた初期曲は、ここまでの道のりを伴走してきた作品群であり、あるいはかつてと今との居場所の差を確かめるための作品群である。そして、彼女たちの歴史と現在を物語るのが、新たな代表曲になるはずの表題曲「PRIDE」だ。  lyrical schoolはしばしば、「アイドルラップ」という言葉をシンボル的に用いる。女性アイドルがラップという歌唱法を効果的に使うことは、今ではごく自然なものになっているが、アイドルがラップを当たり前に武器にすることができる、そんな環境を舗装してきた開拓者としてlyrical schoolの名は刻まれるべきだろう。「アイドルラップ」とは、このグループの特徴を示すだけのフレーズではなく、開拓者としてなお進み続ける彼女たちの“PRIDE”を謳った言葉でもある。  lyrical schoolの持ち味は、こうした自身の来歴や矜持を殊更に強調しないところにある。あからさまなセルフボーストや目配せによって己を誇示することよりも、常にその場にいる観衆と楽しさを共有することに専心してきたように見えるし、それが彼女たちの歴史になってきた。かつてとは比べものにならないほどにスキルを向上させながら、その清々しい立ち居振る舞いは何年経っても変わることがない。そんな彼女たちによって歌われる「PRIDE」は、だからこそ攻めの姿勢と誇りの表明が鮮烈で意義深いものになっているし、この曲を世に向けて放つ最適のタイミングを迎えてもいる。lyrical school自身が踏み固めてきた足場の上に立ち、ストレートに己の“PRIDE”をラップする姿に、見ているこちらまで誇らしい気分に溢れてくる。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

身長192㎝の超大型新人登場! 浜端ヨウヘイの「ボーカル力」を音楽ライター2氏が分析

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【リアルサウンドより】  山崎まさよしやスキマスイッチ、秦基博、さかいゆうなど、多くの優れたアーティストを輩出してきたオフィスオーガスタから、5年ぶりの新人アーティストとなる浜端ヨウヘイがシングル『結-yui-』で11月5日にデビューする。  浜端ヨウヘイは京都出身のシンガーソングライター。以前は「ヨウヘイ」を名乗り、自ら全国各地のライブハウスをブッキングし、月平均15本のライブをこなす“旅するシンガーソングライター”として活動していた。彼の転機となったのは、2013年10月より『山崎まさよしLIVE"SEED FOLKS"』のオープニングアクトとして全国を帯同したこと。そのパフォーマンスが評判を呼び、2014年2月にオフィスオーガスタ所属となったのを機に、名前を本名の苗字を加えた「浜端ヨウヘイ」とした。

浜端ヨウヘイ / 結-yui- MUSIC VIDEO [前編]

 身長192cmという大きな体躯から生み出させる歌声は、確かに新人離れしたスケールを感じさせる。音楽ジャーナリストの柴那典氏は、浜端ヨウヘイのシンガーとしての魅力について、次のように語る。 「歌の上手いシンガーには、声に透明感がある人や伸びのある人、ファルセットが綺麗な人など、いろいろありますが、彼の場合は地声に力があるタイプですね。芯の強い地声やセクシーなフェイク・ボーカルを特徴としていて、そこには師匠的な立ち位置にいる山崎まさよしと共通する部分も感じられます。体格を活かした声という意味では、パワフルでのびやかな歌声を持つコブクロの黒田俊介さんを彷彿とさせます。また、関西出身という出自やソウルフルな歌い方、特にコブシを回すようなところはウルフルズのトータス松本さんに近いともいえますね」  また、サウンドについては「歌声と合っている」と話した上で、これからもどんどん変化していくだろうと続ける。 「浜端は大学卒業後、沖縄のゲストハウスに居住していた時に歌を始めたといいます。それが影響してなのか、サウンドはフォークやブルースを元にしながら、基本的には内省的ではなく開放的。人懐っこくて地に足のついたタイプの音楽性なんです。同じように旅をしながら歌ってきたという経歴を活かしているところは、ナオト・インティライミに近いともいえるかもしれません。浜端は自分の音楽性にこだわりがあるタイプというより、今回のデビューシングルで江川ゲンタのプロデュースを受けて大きく変化したように、色々なタイプの楽曲を歌おうとするタイプ。バラードやノリのいいジャズも似合うと思います。どんなサウンドに変化していくのか楽しみですね」  オフィスオーガスタ所属アーティストの取材を数多く手がけてきた、音楽ライターの森朋之氏は、彼の歌詞と歌声について“大人の共感”が得られるのではと話す。 「“29歳のときに仕事を辞め、音楽に専念”というエピソードからも、ミュージシャンとしては決して順風満帆ではなかったことが伺えますし、そのなかで体験した出来事、葛藤や悩み、“それでも夢を諦められない”という感情はそのまま歌詞に反映されています。生き方と歌がしっかり結びついているので、説得力があり、30歳でのデビューは明らかに遅いが、大人の共感を得られるシンガーになるのではないでしょうか。たとえば馬場俊英のように、特に30~40代あたりの“このままでいいのか”という思いを抱える男性に支持されると思います。もっとも、ガムシャラに言葉を伝えるタイプのシンガーではなく、どちらかというと包容力のある声質である点もいいですね。ソウルミュージック、R&B、70年代アメリカのポップスなども似合いそうで、たとえば平井堅のファンなどにもアピールするのではないでしょうか」  さらに森氏は、オフィスオーガスタの系譜を踏まえ、今後の可能性をこう語った。 「メロディと歌詞をしっかり聴かせる、オーソドックスでアコースティックなアレンジは、まさにオーガスタ・クオリティ。奇を衒ったり、表面的なインパクトに頼らず、ずっと歌い続けられる曲が書けています。もしかしたら“いきなりブレイク”というわけにはいかないかもしれないが、これまでのオーガスタのアーティスト同様、息の長い活動が期待できそうです」  開放的なサウンドと人懐っこいキャラクター、そして大人の共感が得られる歌詞をダイナミックに歌い上げる浜端ヨウヘイ。J-POPシーンに現れた新たな“旅人”は、今後どんな風景を描いていくのだろうか。 (文=編集部)

浜端ヨウヘイ / 結-yui- MUSIC VIDEO [後編]

公式ウェブサイト ■ライブ情報 『Calling You!! Show Case ~After Augusta Camp~』 出演:浜端ヨウヘイ/杏窪彌(アンアミン)/NakamuraEmi/村上紗由里/松室政哉 日程:2014年11月10日(月) 会場:TSUTAYA O-nest(旧 Shibuya O-nest) 開場/開演:18:30/19:00 『浜端ヨウヘイDebut Anniversary Live「結-yui-」』 ・東京公演 日程:2014年12月9日(火)会場:代官山UNIT 開場/開演:18:00/19:00 ・大阪公演 日程:2014年12月16日(火)会場:Shangri-La 開場/開演:18:30/19:00 ・名古屋公演 日程:2014年12月17日(水)会場:名古屋APOLLO BASE 開場/開演:18:30/19:00 詳細

電気グルーヴの歌詞はなぜ気持ちいい? コトバが生み出すグルーヴを考察

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電気グルーヴ『25(完全生産限定盤)』(KRE)

【リアルサウンドより】  電気グルーヴの作品を、いつも歌詞カードを熟読しながら聴いてしまう。  「あぁ、面白いよねぇ。バカで最高!」という同意の声、あるいは「え、そんなの真面目に読んでるあんたが馬鹿じゃないの」と鼻白む声が聞こえてきそうだが、今回のテーマは電気グルーヴの歌詞の、面白さ、ではなく、響きの素晴らしさについてである。  電気といえば、「富士山」や「誰だ!」などのオモシロ系、たまに飛び出す「N.O.」や「虹」などのナイーヴ名曲、あとは当然「Shangri-La」が代表曲。そんな認識は間違っていないと思う。実際、楽曲のベクトルはいくつかに分かれるが、作詞家としての石野卓球&ピエール瀧は、常に一貫した手法を取っている。「深い意味がないってことでしょ?」と先に回答されてしまいそうだが、ちょっと違う。彼らは、聴けば意味の通じる「訓読み」のコトバではなく、前後があって初めて意味を成す「音読み」の歌詞を書く。大事なのは音の響き(おとのひびき)ではなく、音(オン)の響(キョウ)なのだろう。  音読みでオンとだけ言っても「音」か「恩」か「怨」か判別不能。だがオンキョウといえば「音響」→「音の響き」のことだと意味が通じる。小学校に戻っていうと、これが音読みと訓読みの基本的な違いだ。そして電気グルーヴの歌詞は、ワンセンテンスだけ取り出してもまったく意味がわからない。だがコトバを重ねていくことで「いい雰囲気」が成立する。意味や真意という明確なメッセージはないだろうが、その曲のムードや作り手のニュアンスは確かに感じられるだろう。新曲「Baby’s on Fire」はたとえばこんな感じ。  〈もう相当何かが足りません たまりません 至りません   Baby’s on Fire Baby’s on Fire では済みません〉  ただ韻を踏んでいるのではない。造語ではないし、ナンセンスな言葉遊びというわけでもない。恋人たちの情熱的な世界に対する批評性、シュールなツッコミがきちんとあって、最後にはオチらしきものもある。さらには〈足りません/たまりません/至りません〉と実際口に出してみたときの、言葉が舌の上で気持よく転がっていく快感が見事なこと! このレベルの歌詞が書けるアーティストは、おそらく井上陽水くらいではないかと思う。  これはPUFFYから聞いた話だが、井上陽水から届く歌詞はいつだって「目で読むと意味わかんない。でも歌ってみるとすんごく気持ちいい!」という。〈北京 ベルリン ダブリン リベリア〉の歌い出しが強烈だったデビュー曲「アジアの純真」もそうだが、単語自体に意味はない。だが無意味な単語を重ねていくと確かに快感が生まれていく。素人が歌っても決して噛まないコトバ。発声してみると想像以上に気持ちよく流れていくコトバ。それを「歌詞自体がグルーヴになる」という言葉で説明したのは岡村靖幸だ。  「たとえば『氷の世界』。あれはフォークかロックかダンスミュージックかわからないですけど、ものすごくグルーヴィな曲だと思うんです。踊れるし、詞の合わせ方もすごく上手。突出してグルーヴィーな名曲だと思いますね」(2012年、「SPA!」ロングインタビューより)  自分の想いを込めた歌詞ではなく、それ自体がグルーヴになる歌詞を。おそらく井上陽水も電気グルーヴも、そういう曲の作り方をしているのだと思う。無意味、シュール、おバカと片付けられてしまう彼らの歌詞だが、文学的に見れば、ではなくて、音楽的に見れば、それは日本語に対してすこぶる自覚的な人間のものだとわかる。ただ言いたいことを垂れ流しても鬱陶しいだけだし、本音をぶちまければ誰もが感動するとは限らない。音楽である以上、コトバを音に乗せるときにはどれだけの注意とセンスが必要か。その事実を電気グルーヴは本質的に理解している。だからこその「音読み」であり「音響」なのだ。  なんか絶賛してますけどぉ、とツッコミが入りそうだ。井上陽水には「少年時代」や「心もよう」みたいな名曲があるじゃないか。電気グルーヴにそんな泣かせる曲が、本当に情景的な歌詞があるのかと。確かに、25周年記念のミニアルバム『25』にそれはない。むしろ記念だからと積極的におバカ路線を邁進する曲もあり、やっぱこの人たち面白いわと笑うのが正解だろう。だが、前作『動物と人間』に収録された名曲「Slow Motion」は、たとえばこんな感じ。  〈夏が過ぎて焦らすように いつの間にかスローモーション   懐かしさ連れ去るように 殺伐の景色スローモーション〉  曲とのマッチングは完璧。メロディは途方もなく綺麗で、意味はよくわからないがグッとくる情景もたっぷりである。普段はそんな素振りを見せない電気グルーヴが、ふとした瞬間に見せるナイーヴな文学性。それを味わいたくて、私は彼らの歌詞カードをいつも熟読してしまうのだ。 ■石井恵梨子 1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。