Sugar’s Campaign、Shiggy Jr.、ORESAMA…“ブギーファンク”な次世代J-POP5選

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【リアルサウンドより】  どうやらJ-POPの若手クリエイターたちの潮流の一つに、ブギーファンクのセンスがあるようだ。フェスやライヴに最適化したパンキッシュな縦ノリとは違う、かと言ってむせかえる汗の匂いがするソウルフルな70sディスコのこってりしたグルーヴ感とも違う。パトリース・ラッシェンの「Forgot Me Not」に代表されるような、80s初頭のキラキラしたディスコ/ブギー(エレクトロ・ファンク)の楽曲たち。そこにあったセンスをポスト・インターネット的な感性でアップデートしたようなテイストのポップソングが次々と生まれている。  もともとはLAのトラックメイカーDâm-Funk(デイム・ファンク)を中心に、80sエレクトロ・ファンクの再解釈として広まった「ブギーファンク」。ダフト・パンクやファレル・ウィリアムスなどのディスコ・リバイバルの動きとリンクして、去年あたりから徐々に日本でもそういうテイストを持った楽曲が目立ち始めていたが、tofubeats のブレイクから「ディスコの神様 feat.藤井隆」で一気に流れが表面化。ここにきて、2015年のJ-POPシーンを担う有望なニューカマーが続々と登場してきている。この記事ではそんなグループを紹介していきたい。

Sugar's Campaign

Sugar's Campaign 『ネトカノ』 (Official Video)

 まず、現在勃興しているシーンの筆頭格に挙げられるのが、SPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューすることも決定したSugar's Campaignだろう。CDとしてパッケージリリースされた「ネトカノ」に続き、11月26日にリリースされた配信シングル「ホリデイ」も好評。シンセベースがうねるカラフルな派手でカラフルなダンス・チューンは、まさにディスコ/ブギーのテイストだ。  「Avec Avec」ことTakuma Hosokawaと「seiho」ことSeiho Hayakawaの2人によるユニットの彼ら。プロフィールでも、岡村靖幸や久保田利伸からの影響を明かしている。つまり、彼らは「ファンクやブラックミュージックの持つポップネスをJ-POP化する」ことに確信的に取り組んでいる二人組。先鋭的なトラックを作る力量も兼ね備えているゆえ、そのポテンシャルはかなりのものだ。

Shiggy Jr.

Shiggy Jr. / LISTEN TO THE MUSIC

 今年メキメキと頭角を現してきた4人組ポップ・バンドShiggy Jr.も注目株だ。「ポップでポップなバンド」というキャッチコピーで、池田智子のヴォーカルのキュートな表現力とメロディのキャッチーな甘さが魅力の源泉。多彩な方向性を持つグループだが、アルバム『LISTEN TO THE MUSIC』では80'sディスコのテイストを吸収。バナナラマやカイリー・ミノーグのような往年のディスコヒットと、ジェシー・Jのような同時代のポップスを等距離で解釈していることが、他のグループにない独特のポップネスにつながっている。

vivid undress

vivid undress『パラレルワ』LIVE

 タワーレコード渋谷店独占販売の1stミニアルバム「ゼロ」が異例のロングセラーを続けているという5人組バンドvivid undressも面白い存在だ。紅一点のヴォーカリストkiilaを中心に集まり「下北沢発ガールズ・シティ・ポップ」というキャッチを掲げて活動を繰り広げている。バンドシーンで活動するゆえに邦楽ロックの雰囲気も色濃いが、ベースラインやメロディセンスにはアーバンなディスコ/ブギーのセンスを感じる。

Especia

Especia 「No1 Sweeper」 MV

 一方、アイドルシーンにおいて、このディスコ/ブギーのリバイバルの潮流を体現しているのが、大阪発の5人組(MV時は6人組)Especiaだ。キャッチコピーは「アーバンブギーファンクサウンド・大阪発堀江系ガールズグループ」。楽曲も80s初期の本格派ディスコチューンが揃う。

ORESAMA

ORESAMA - オオカミハート (F.O.ver.)

 そして、こうした動きの中でも多方面への広がりが生まれそうなグループが、渋谷を中心に活動中の2人組ユニット、ORESAMAだ。12月6日にアニメ『オオカミ少女と黒王子』のEDテーマソング「オオカミハート」でメジャーデビュー。かなりノリのいい、一度聴いたら耳に馴染むタイプのポップソングになっている。  ディスコ/ブギーの世界的なリバイバル・ムーブメントのきっかけとなったブルーノ・マーズの「トレジャーズ」(2013)を聴けばわかるとおり、この手の楽曲のポイントはファンキーにうねるベースライン。そしていい意味で「軽薄さ」に満ちた曲調だ。

Bruno Mars - Treasure [Official Music Video]

 このベースラインのファンキーなテイストをエディットされたシンセ・エレクトロで体現したのがブギーファンク。その感触を、あくまでJ-POPのフィルターを通して表現しているのがORESAMAの音楽的な方向性だ。  さらに、ORESAMAは現在生まれているそういったシーンの潮流のハブとなる可能性も持っている。12月6日に2.5Dで開催されるリリースパーティー「YASHIBU」には、Sugar's CampaignのSeihoや、ORLAND、give me wallets feat.仮谷せいらやPARKGOLFなどが出演。バンド、トラックメイカー、シンガーという枠組みを超えて2010年代の渋谷から新しいディスコポップが次々と登場しているムーブメントを体感できるようなイベントとなっている。  これらの面々に共通するのは、「楽しく、軽く、柔軟で、でもちゃんと音楽愛のあるグループ」ということ。そういうセンスを持ったミュージシャン達が2015年のJ-POPのシーンを彩っていく予感がする。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

大森靖子が語る、新作をメジャーで出した意味 「人がぐちゃぐちゃに表現できる場所を増やしたい」

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【リアルサウンドより】  大森靖子がメジャーデビューアルバム『洗脳』を発表した。弾き語りによる「うた」をベースにした過去作より大きく変化し、90年代J-POPから近年のアイドルポップまで様々なサウンド的意匠を大胆に取り入れた本作は、メジャーシーンに過激に介入するコンセプチュアルな一枚といえるだろう。インディー時代から変わらぬ感情表現の強度を保ちつつ、これまでのJ-POPでは歌われなかった“言葉”や“場所”をきらびやかなサウンドで表現した本作を、彼女自身はどんな思いで作り上げたのか。インタビューに応じてくれた大森靖子は、きわめて雄弁に新作のコンセプトと自身の目指すものについて語った。

「何をやっても自分というものは出ちゃうということに、最近すごく気付いた」

--前作の『絶対少女』は直枝政広さんプロデュースによる、大森さんの歌を軸に据えた作品でした。メジャー第一弾の今作では、コンセプトの面でもサウンドの面でもポップな仕掛けが随所にありますね。まず、制作に当たってどんなことを考えましたか。 大森:ライブ用に作っていないことが大きいですね。今回のアルバムには、ライブ用に作った曲は1曲も入っていなくて、レーベルから「メジャーのための曲を30曲くらい下さい」って言われて、去年1ヵ月で20曲くらいパッと作って送ったものなんです。弾き語りのライブって、いいメロディであればあるほど眠いじゃないですか?  --(笑)まあ、そういう時もあるかも。 大森:弾き語りは音量も一定なので、どうしてもそうなっちゃう。それを回避するために私が武器にしていたのが言葉や歌い回しだったんですけど、音源にするときにはライブほどそれを大げさにする必要はないので、結構余白を作れるんですよ。音源の場合は、基本的にBGMにもならないとダメじゃないですか。だから、これまでの判断だと破壊力が弱いから使わなかった言葉でも、言いたいこととか、面白くて音的に遊べるものとかを結構自由に使えたので、むしろ制限なくできた感じです。 --今回は“強い言葉”以外の言葉も使ったと。それは、曲を書く中でも意識したことですか? 大森:基本的には私が歌っていて声があって、メロディがあればそれでいいと思っていて。でもそれじゃ弱い部分をギターの演奏とか強い言葉で補っていたんですけど、音源にすることでそうする必然性が減ったんです。だから、めちゃくちゃ自由で楽しかった。私は大体いつもネットで炎上しているから、アルバムを作る作業だけが楽しくて(笑)。直枝(政広)さんが出してくるトラックを聞いたりとか、ぜんぜん違う楽曲をどううまくつないでいこうかとか、どのくらいの温度でつなごうかとか、そういう純度の高いことをずっとやっていたので、本当に楽しかったですね。 --なるほど。ただ、結果的にこのアルバムは言葉の強度が衰えてないどころか、むしろすごい強度になっていると思うんです。〈ここが君の本現場です いちばん汚いとこみせてね〉と歌う「ノスタルジックJ-pop」とか。 大森:何をやっても自分というものは出ちゃうということに、最近すごく気付いたんです。「自分ってなんだろう?」なんて考えたこともなかったけど、オリジナリティっていうのはこんなに勝手に出るものなんだなって思いました。だから、何をやっても大丈夫だなって、自信が付きました。だって、サウンドに関してはもはや私の知らないところで、みんなが好き勝手にハチャメチャやっているだけなのに、最終的にはちゃんと私の曲になっている。 --直枝さんやデワヨシアキさん、奥野真哉さんなどのプロデューサー陣も、大森さんのコアな部分を捉えたうえで音作りをしている印象です。 大森:みんな、デモの声質に合わせて作ってくるのも面白かったです。デモだから軽い感じで歌うんですけど、結局、音を入れるときも軽い感じに仕上がったりして。制作は、基本的にはデモをそのまんま渡して自由に仕上げてもらった感じです。もっと頭打ちを増やして「バーンバーン!」みたいな、馬鹿でも分かるぜ!みたいな感じにしてほしいとか、音楽的に頭脳派みたいなことはやんないでください、とかはすごく言いましたけど(笑)。

「J-POPの定番の形式は全部使ってしまおうという感じ」

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--前のアルバムは「女の子を肯定する」というテーマがありましたけど、今回の作品のテーマとは? 大森:コンセプトとしては、収録曲にもなっている「ノスタルジックJ-pop」というのがまずありました。最初はそれをタイトルにしようとも思ったんですけど、やっぱり言葉的に弱くって、タイトルはもっと強い方がいいと思ったんですよね。私と直枝さんはよく会話の中で「アルバムの最強のタイトルを探そう」というのをやっていて、今までで最強だったのが『臨月』なんですよ。でも、私だと『臨月』は絶対NG出るじゃないですか? 意味分かんないし、「これじゃあ売れねぇよ」って言われるに決まっている(笑)。それで、漢字二文字にしようということをまず決めて、「ノスタルジックJ-pop」とほぼ同じ意味だったのが『洗脳』なんですよ。 --そこにはどういう共通点が? 大森:J-popって、結局のところジャンルとかじゃなくて、何回聴いたかが重要だったりするじゃないですか? そういう特性をちゃんと利用しなきゃいけないと思っていて。私のこと好きでも嫌いでも、言葉にどんなに嫌悪感を抱いても、絶対に頭に残るメロディを作ろうと思ったんですね。そのためのトリックはいっぱい使っていて、売れているJ-popを50位くらいまで解析すると、そのうちの30曲は使っているような定番の形式があるので、それは全部使ってしまおうという感じ。たとえば「きすみぃきるみぃ」のメロディは、野球の応援歌を下敷きにしているんですよ。そしたら偶然にも野球のホームランを打つ音がサンプリングされていて、「直枝さん、すげぇ」って思いました(笑)。単純に直枝さんは、野球でホームラン打ちそうなイメージの曲だから入れたって言ってましたけど。 --J-popの定番の形式を刷り込み的に取り入れていると。では「ノスタルジー」という言葉に関しては? 大森:私にとってのJ-POPは、90年代で小室哲哉さんと、つんく♂さんなので。 --大森さんが小中学生くらいの頃ですね。あの時代のJ-POPを莫大な数のリスナーを引きつける魔力のようなものがありましたが、あれは何だったと思いますか? 大森:なんですかね。なんであんなにハマってたんだろう? なんか、ものすごく歌いたかったんですよね。当時は小学生だったんですけど、沖縄と東京の人しかデビューできないと思い込んでいて、田舎の自分は違うんだみたいな感じで、圧倒的な格差を見せつけられるような感覚でした。でも、SPEEDとかを見て、こんなに踊ってすごいなとか、歌うのが楽しそうだなっていう憧れはありました。 --J-POPがみんなの生活に染み込んでいた時代ですよね。 大森:今はそういう曲、絶対にみんなが知ってる曲ってないですよね。 --今回のアルバム、そうしたかつてのJ-POPのような存在を目指す部分もあるのでは? 大森:そういう存在になりたいですね。BGMと思って車で聴いていたらいつのまにか聴き込んじゃって、なんかスピード出し過ぎちゃった、みたいなのがやりたいんですよ(笑)。メジャーでやりたいことは、「まだこのくらいのことをメジャーでやってもいいんだ」って思わせることですね。それをアリにするために、聴きやすくするための音が欲しかった。だからJ-POPを利用しようと思って、それがコンセプトになったんです。私はJ-POPを利用したいだけで、超スターになって憧れられたいっていうわけではなくて。  私はこれまで、自分の中身とか、自分の脳みそとかをさらけ出すようなライブばかりをやってきて、そしたら結構みんなが「じゃあ、俺の中身はこれ」って見せてくれたんですね。それが嬉しかったし、健全だなって思った。最近は、自分の音楽で制圧してるような現場が多いんですけど、そういうのは別にやりたくないと思っていて。私は自分のライブの空間が一番好きで、そこに来たお客さんの顔を見るのが好きなんです。みんなそれぞれぐちゃぐちゃなんですよ。それぞれの人生観を出してくれているっていうか。そうやって人が表現できる場所を増やしたいっていうのはありますね。ネットが普及してから、リスクを考えて面白いクリエーターも自分を制約するようになっていて、みんなどんどん小賢くなっている今の状況はつまらないと思うんです。私自身、本当はぜんぜん好き放題やっているわけじゃないんですけど、少なくとも好き放題やって何にも考えてなさそうには見せたいです。

「みんなが思っているけど、ここは言えてないよね、みたいなところをずっと探してる」

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--歌詞でいうと「今日はきみのダメダメなとこみせてほしい」(「デートはやめよう」)などが特に印象に残っているんですけど、そういう感覚ってあまり口しないだけで、多くの人が経験している恋愛の大切な部分ですよね。大森さんはそういうところを言葉で表現している。 大森:そうだといいですね。私の持論に「メンヘラじゃない彼女はセフレ」というのがあって、これは声を大にして提唱したいんですけど、メンヘラにもなれない関係ってクソじゃないですか? 私は感情的な人が好きなんですけど、自分がそうなんじゃなくて、そうなっている人が好きなんですよ。だからそういう曲をいっぱい書くのかな。喧嘩している人とか見るの好きだし、健全な同級生とかと歩いていると「見ちゃダメだよ」とか言われるんですけど、そんなの見たいに決まってるじゃないですか? そういう世の中が好き。多くの人は、感情を思いっきり出すのが下手だからダメなわけで、美しく器用に出せたら、それほどダメなことではないと思うんですよね。感情をうまく美しく見せたいな、見本になりたいなと思います。 --ライブでは、女の人たちが食い入るように大森さんを見てますよね。あれは普段表現されない何かが、大森さんの歌の中にあると直感して見入ってるんだと思うんですね。そのあたり、ポップミュージックではあまり取り上げない言葉やムードを歌っていこうという意識はありますか。 大森:みんな、あらゆる表現はやりつくされた論を展開しがちですけど、だったらなんで自分が共感できる音楽がなかったんだろうって不思議に思ってたんですよね。あってもすごいマイノリティだったり、ぜんぜん売れてなかったりする。だから、本当は穴だらけで、新しい表現なんていっぱいあるんです。そういうのを作るときは楽しい気持ちですね。これ、早くみんなに言いたい!みたいな。大学の授業はそれとは逆の感じで、「美術の技法はこんなにあって、これを勉強するだけでいいぞ」って4年間ずっと言われていた感じだったんですけど、全くそんなことないんですよ。 --大森さんは、加地等さんや豊田道倫さんといったシンガーソングライターを敬愛していると公言していますが、彼らから受け継いだものとは? 大森:ふたりとも大好きなんですけど、彼らがやっているのは太宰治的なロマンで、加地さんは死までいっちゃったので、そのロマンが完結しちゃった感じがします。太宰だって本当は死のうと思ってなかったのが、ちょっと間違って死んじゃったというか、女の感情に引きずられて死んじゃったんじゃないかと思うんですよ。加地さんだってわざと三畳の部屋に住んで、わざとそういう歌を書いていたでしょう。アル中になったのも、絶対にわざとなんですよ。そういう人の本質って、たぶん“気持ちいい”だと思うんです。だから、彼らは自分ひとりで気持ちいいものを作って、そこから出てこない。でも、私はそういう人こそ本当に面白いし、みんなに知って欲しい。彼らみたいな人がちゃんと世に出るようになれば、もっと世の中は面白くなるって考えています。そして、そのためには一回、わかりやすくメジャーでそういう表現を提示しないと道ができないとも思っています。だから、私がやらなきゃいけないんだ、と。 −−高円寺や新宿のライブハウスにあるような純度の高い空間というか、そういうライブの空気感を多くの人に伝えるために、いろいろと方法は考えましたか。 大森:めちゃくちゃ考えましたね。そして、大切なのは遠慮して過激さを抑えるんじゃなくて、余白を増やせばいいだけだということに気付いたんです。しかも、それは弾き語りでは絶対にできないことなんですね。直枝さんとバンドをやると、彼は気持ちよくなっちゃって、長い間奏を続けるんです(笑)。最初は止めてくれって言ってたんですけど、「ここの余白がないと意外と聴けなかったりするよ」って言われて、「あ、そうなんだ!」って気付いてびっくりしました。今はそのバランスっていうか、余白を面白がることをできているから、制作はめちゃくちゃ楽しい。 −−アルバムの中では、余白的なポジションはどのあたりに? 大森:曲単位でもあるし、一曲の中にもあります。『きゅるきゅる』とかのサビは全部そうですね。最初にそれをやってみたかった。 −−いい意味でのナンセンスというか、空っぽの言葉をいれてみたり。 大森:空っぽなんだけど、きゅるきゅるで全部言えちゃう感はすごく楽しかった。これで意味分かるんだから、愛しているなんて言わないでよって。そういう遊びはいっぱいやっています。……それとアルバム通してやりたかったのは、(聴き手の)ミラーになりたかったというか、その人がその人と向き合ってくれるものが作りたかったんですよ。自分にはそれが一番大きいですね。意外にこっちの手の内を見せたら、相手もそれに応えてくれるじゃないですか? 自分の秘密を教えたら、相手も教えてくれるというか。そういう感覚と、あとはとにかく言語化されてないこと。新しいことや、怖いことを言ってるつもりはまったくなくて、みんなが思っているけど、ここは言えてないよね、みたいなところをずっと探してるんです。その作業は楽しい。 −−“ここは言えてないよね”という情景が歌われている点では、「焼き肉デート」から「デートはやめよう」の流れは最高ですね。 大森:家でダラダラしていたい女の人も多いはずなのに、女の人はいつもデートをしたがってることになっていて、それはなんでだろうってすごく思ってた。男の人の方がそういう(ダラダラしようという)歌って多いじゃないですか? でも、私の周りだけかも知れないけど「なんでディズニーランド行かなきゃなんないんだろう?」とか思っている子もいっぱいいるわけだし。私も、そっちの方がいいなって思います。
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−−歌詞には具体的な描写も多くて、情報量が多いですね。 大森:抽象的な表現で幅を持たせているミュージシャンは多くて、それは聴き手が想像して補うものとして成立していて良いんですけど、でも私はもっと絶対的なことを言いたいし、もっと輪郭を持たせたいし、でも間口は狭めたくないって考えたら、情報量を増やすしかなかった。結果、歌詞が毎回多くなる。自分で見ても多くて、「覚えるの、めんどくせぇ」みたいな(笑)。 −−抽象的な内容にして、自由に想像してくださいというのはJ-POPのひとつの手法ですよね。 大森:それはみんなやってるし、それだと私のやりたいことができないんですよ。一曲の中でずっと同じこと言わなきゃいけないのがきつくて。一日中、同じ気分でいることなんてないのに、曲は矛盾しちゃいけないのは何でなんだろうってずっと疑問でした。今日嫌いなやつが明日好きかもしれないし、気分なんかどんどん変わるのにって。だから、機嫌が悪かったのに急によくなったりとか、そういうのを秒単位で表現したいんです。

「ロックスターの役割みたいなものが自分に回ってきている感がある」

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--「ロックンロールパラダイス」という曲では、〈30分だけスターになりたい〉と歌っていますね。 大森:これはスターというよりロックスターで、自意識過剰なんですけど、ロックスターの役割みたいなものが自分に回ってきている感があって。それってババ抜きみたいなもんじゃないですか? 他が引いてくれないからずっと私のところにある、みたいな感覚があって、なんで私なんだろうとか思うんですけど、まぁ、回ってきたんだからやんなきゃなって思っています。だいたい私の(ライブの)持ち時間って30分なんですよ。その時しかちゃんとやってないというか、その後は「お腹空いた」とか、「眠いな」くらいしか考えてないんですよね。曲のこと考えてるときはめっちゃワクワクしてるんですけど、基本的には体力ゼロで、いかに消耗せずに生きていくかばっかり考えています。だから30分だけで良いんですよ。 --以前のインタビューではロックスターになるつもりはないと仰ってましたが、お鉢がまわってきている感覚はあって、そこは引き受けると? 大森:ロックってよくわかなんないですけど、社会のアンチテーゼみたいなものじゃないですか? そうやって考えると、人が生きやすいように考えられてきたルール自体が、実はめちゃくちゃ人を生きにくくしていたよね、とか思って。とりあえずそこを一回壊さなきゃいけないとか、自由にしなきゃいけないってことはすごく考えてる。仕事として、そうしなきゃと思っています。 --ご自身でも、ルールの不自由さを感じることはありますか。 大森:ありますね、あるある。創作の現場で主に感じています。若いときは、それは自分が悪いからだという感覚がありました。社会が正しくて私が悪だから、私が消えなきゃいけないって思ってた。でも、本当はどっちも正しいじゃないですか? 普通に生まれてきて普通に育ってきた私が普通になれないなら、世の中の方がおかしいんじゃないか、じゃあ世の中を正せば良いと思って。最近は、それが「人が仕事をする」ってことなんじゃないかと考えています。 --大森さんなりに世の中に風穴を開けていくってことですね。 大森:過去の自分か、人のためですね。今の自分のためではまったくなくて。10代の私はかわいそうだった(笑)。自分がかわいそうと思って生きてはなかったけど、よくよく考えたら、何でこれをやるのを迷っていたんだろうって思うことがたくさんあって、その時間がすごいムダだったなって思う。 --過去の大森さんを苦しめていたルールとは、たとえばどんなことでしょうか。 大森:TVが正義だと信じていて、自分は歌う人にはなれないと思っていたのが、一番間違っていましたね。銀杏BOYZが好きなことはずっと言ってなかったんですけど、峯田さんにメールを送り続けていたのをばらされちゃって。でも峯田さんは「こういうやつこそ歌えばいいのに」って言ってくれていたんです。友達が「峯田さんが大森さんのことを話してたよ」って教えてくれて。峯田さんはちゃんとロックスターとしての役割を果たしていたんですよね。こんなにめちゃくちゃでいいんだから、こんなに下手でいいんだからって教えてくれた。あのわざとらしいくらいに下手なギターの弾き方で、私でも音楽をちゃんとやれるんだよっていうのを示してくれたから、私もそれは絶対にやりたい。それを見て音楽やろうと思ったわけじゃないけど、「やっていいんだ」っていう風には思えたし、そもそも、みんな最初から演奏なんてできるわけないんだから。 --現在の自分ではなく、過去の自分や、他の人のためにやるというのは、自己犠牲的なものも感じます。 大森:今の自分だけ気持ちよくなりたいならメジャーなんてすぐに止めたいですね。最近、無人島で絵を描きたいって気持ちにすごくなるんですよ。そっちの方が楽しいに決まっている。けど、やらなきゃいけないことがあるから。
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--この作品を世に出した先のことは、どうイメージしてますか。 大森:武道館くらいの規模が、一対一の表現ができる限界なんですよ。だから武道館くらいまではやりたいなと思っていますが、その後は面白いやつをプロデュースしたいです。金渡して好きなことやらして、それを拡散して私が金を稼ぐみたいな。そっちの方がやりたいですね。 --黒幕プロデューサーですね(笑)。ただ、当面は武道館が目標。 大森:そうですね。やって限界が見えたら、誰か探してという。 --その限界はまだ先でしょうか。 大森:まだまだ先ですね。直枝さんの限界が見えないので(笑)。直枝さんをずっと引きずり込もうと思っています。最後の曲(「おまけ♥~スーパーフリーポップ~」)のアウトロなんて、7分くらいのものを作ってきたんですよ。「長いです」って送り返して、半分くらいにしてもらった。新しい機材を買ったから作りたくなったんでしょうけど、まったく別の曲じゃねえかって(笑)。「おまけにしたら長すぎるじゃん、本編より長いっすよ」って言ったら、半分にしてくれたんですけど、そのやり取りの感じとかもすごく好き。かわいいですよね。機材買ったことにあれだけ興奮できる、音楽少年みたいな感覚がまだ残っているんだって。直枝さんはこんなことを30年もやり続けてるのかと思うと、見ていてワクワクする。……まわりには、私と同世代は全然いないんですよ。下はどんどん出てきていて、上もいるんですけど、ちょうど自分の世代は全部失っていたのかなって思います。全部失っていて、全部あった。全部あって、それを組み合わせて作っているような感覚。デコレーションケータイが流行っていて、そういう文化の中で育った世代。下の世代はもっと器用なんですよ。でも私たちって、中学生のときにiモードが普及してきたくらいで、いろんなことが変わる時期だった。本当は、この世代の面白さってめちゃくちゃあるんですけど、それを共有できる人が周りにいないのは寂しいですね。だから、同世代にはどんどん出てきてほしいし、私もやれることはやろうと思ってます。 (取材=神谷弘一/写真=金子山)
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大森靖子『洗脳(type▲)』
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■リリース情報 『洗脳』
 type■洗脳CD+DVD(ピントカライブ) AVCD-93072/B ¥5,184(税込) type★洗脳CD+DVD(モリステ特大号) AVCD-93073/B ¥4,104(税込) type▲洗脳CD AVCD-93074 ¥3,024(税込) CD収録曲(※全タイプ共通) 1. 絶対絶望絶好調 2. イミテーションガール 3. きゅるきゅる 4. ノスタルジックJ-POP 5. ナナちゃんの再生講座 6. 子供じゃないもん17 7. 呪いは水色 8. ロックンロールパラダイス 9. 私は面白い絶対面白いたぶん 10. きすみぃきるみぃ 11. 焼肉デート 12. デートはやめよう 13. おまけ♡~スーパーフリーポップ~ ピントカライブDVD(※type■のみ) 2014.10.3大森靖子&THEピンクトカレフ「2日間で超楽しい地獄をつくる方法」東京キネマ倶楽部ライブ映像ver.(約60分収録予定) モリステ特大号DVD(※type★のみ) 絶対絶望絶好調(Video Clip) ノスタルジックJ-POP(Video Clip) スタッフクソキノコによる大森靖子メジャーデビュードキュメンタリー「一生無双モードって言ったじゃん!せいこはつらいよ'14」ver.(約60分収録予定) ※「type■」の初回盤には写真家・佐内正史によるニューヨーク撮り下ろしの80ページのフォトブック付き 大森靖子公式サイト

ユリカ/花たん、魔法少女アニメの名曲をカバー「この作品から、過去の名作に興味を持ってもらえたら」

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ユリカ/花たん『魔法少女28』(サブカライズレコード)

【リアルサウンドより】  ニコニコ動画出身の実力派シンガー、ユリカ/花たんが、魔法少女系アニメの名曲を集めたカバーアルバムをリリースした。キャッチーでかわいらしいテーマ曲から、知る人ぞ知る舞台版の名曲まで、どんな楽曲でも歌いこなす歌唱力とともに、意外なボサノバ風アレンジなど、アニメファンならずとも楽しめる1枚になったと評判の本作。彼女がアルバムに込めた思いとともに、“魔法少女アニメ歴”や2015年に向けた抱負も語ってもらった。

「定番曲より、こんなにいい曲があるんだ、と伝えたい」

――前回のアルバムから間を置かず、新作が届きました。魔法少女系アニメの名曲を収録したカバーアルバムですが、この企画はどんなところから始まったのでしょうか? 花たん:前作でカバー曲を収録させていただいて、オリジナルを歌うのとはまた違う楽しさを感じたんです。それで、どうせなら1枚すべてカバー曲のアルバムを作りたい、ということで、今回もサウンドプロデュースをお願いしたOSTER projectさんと、そのマネージャーのうさぎさんという方に相談して。  うさぎさんが魔法少女系のアニメが大好きで、私も世代的に思い入れがあるので、名曲を集めてみようということになりました。まだ前作のレコーディング中だったんですけど、『美少女戦士セーラームーン』の20周年で、魔法少女アニメのリバイバルブームが盛り上がっている今年しかない!って(笑)。 ――『セーラームーン』なら「ムーンライト伝説」、『魔法少女まどか☆マギカ』なら「コネクト」など、多くの人が知る定番曲が収録されておらず、“通好み”の選曲になっていることが印象的でした。これはニコ動での選曲と通じるところかもしれませんね。 花たん:そうですね。これまでたくさんカバーされているものは避けて、「こんなに素晴らしい曲があるんだよ」ということを伝えられる曲を中心に選びました。特に、2曲目に収録した「“らしく"いきましょ」は、私が大好きなちびうさちゃんというキャラクターが活躍する『美少女戦士セーラームーンSS』の曲で、絶対に入れたかったんです。 ――今回のアレンジには、ピアニスト/編曲家の有木竜郎さんがクレジットされています。魔法少女アニメらしいかわいらしさがよく出ている曲もありますが、全体としては、カフェで流れていても違和感がないようなおしゃれな印象もありました。 花たん:アレンジに関してはほとんどおまかせでした。有木さんはジャズやクラシックが得意な方で、インパクトがありますよね。歌詞がユニークで可愛らしく、少しおちゃらけたイメージの「おジャ魔女はココにいる」(『おジャ魔女どれみ♯』より)がボサノバ風にアレンジされていて、最初はびっくりしましたけど、新鮮で楽しかったです。有木さんのアレンジは音数が少なく、一つひとつの音をしっかりと捉えているので、とても歌いやすかったですね。もちろん、OSTER projectさんの豪華な音も大好きなんですけど、コーラスが多くて大変だったりします(笑)。

「オリジナルとかけ離れてしまうと、楽曲の魅力が出てこない」

――ひと言に「魔法少女アニメ」と言っても、テーマ曲の音楽性は幅広いですね。1曲目の「Catch You Catch Me」(『カードキャプターさくら』より)のように軽快でかわいらしい曲もあれば、9曲目に収録された「永遠という場所」(『コレクター・ユイ』より)のように歌い上げる曲もあって。歌入れでは、特にどんなことを考えましたか? 花たん:普段は初音ミクちゃんの楽曲を歌うことが多いので、自由に歌っているんですけど、今回はカバーアルバムでオリジナルを歌っている方がいるので、その歌い方を意識した部分が大きかったです。語尾のはね方とか、息の抜き方とか、そういう部分がオリジナルとあまりにかけ離れてしまうと、楽曲の魅力がきちんと出てこないんですよね。  ただ、自分が歌詞を解釈して歌ったときに、抑揚や強弱がオリジナルと変わってきた部分もけっこうあります。そういう違いの部分も楽しんでいただけたらうれしいですね。 ――曲順もよく考えられていると思いました。3曲目の「夢みるハート」(『魔法のプリンセス ミンキーモモ』より)までかわいらしい楽曲が続き、4曲目の「時を越えて」( 『怪盗セイント・テール』より)から大人なアレンジに。8曲目の「デリケートに好きして」(『魔法の天使クリィミーマミ』より)でブレイクして、そこから終盤に向けて一気に盛り上がっていきます。 花たん:そうですね。最後の2曲に『まどか☆マギカ』から「Magia」と「カラフル」が入っているのも大きなポイントで。まどマギの世界では、かつての魔法少女たちが悪い魔女になってしまいます。そんな彼女たちが魔女になる前に救済する、という話でもあって。ほかのアニメの主人公たちも、この世界では敵役になってしまうのかもしれないし、ある意味で魔法少女アニメの集大成なんですよね。そして、ここからまた新しい物語が始まっていく…そういう意味も込めて、最終曲に劇場版新編の主題歌を入れました。 ――『セーラームーン』のミュージカルでおなじみの「ラ・ソウルジャー」、オリジナルが山崎まさよし&杏子というタッグの「永遠という場所」という選曲も印象的でした。 花たん:「ラ・ソウルジャー」はずっと前にミュージカルで聴いて、あまりにもカッコよくてすぐにCDを買った曲です。一般的にはあまり有名じゃないかもしれないので、ぜひみなさんに知ってもらいたいな、と思って。ファンにとって思い入れが深い曲なので、賛否両論あると思いますが、一人でもこれをきっかけにミュージカルを観に行こうと思っていただけたら万々歳ですね。  「永遠という場所」は、当時『コレクター・ユイ』(1999~2000年)を観ていて、オープニングが渋い!と思っていたんです。一番、原曲に近い歌い方をさせていただいて、新しい挑戦ができました。

「このアルバムから、過去の名作に興味を持ってもらえたら最高です」

――あらためて、花たんさんの“魔法少女アニメ歴”を振り返ってもらえますか。 花たん:本当に小さいころは、『ひみつのアッコちゃん』や『魔法使いサリー』を観ていて、コンパクトを買って“テクマクマヤコン”ってやっていました(笑)。『セーラームーン』になると思春期なので、純粋にストーリーを楽しんでいましたね。魔法少女マンガとして初めて意識して読んだのは、たぶん『カードキャプターさくら』。このアルバムにも2曲入っていますが、魔法少女の王道、というイメージで大好きな作品です。 ――そうした作品をいま振り返ると、また違った魅力を発見することもありそうですね。例えば、『セーラームーン』は主人公たちが孤独と向き合っていたり。 花たん:そうなんです。子どものころはそんなに深く考えていなかったんですけど、いま劇場版を観ると泣けるシーンがたくさんあったり。みんなで「こんなエピソードがあったよね!」なんて話しながら、レコーディングしました。ただかわいいだけじゃない、魔法少女たちの魅力が少しでも伝わったらうれしいですね。 ――あらためて、この作品をどんな人に、どんな風に聴いてもらいたいですか? 花たん:一番に聴いてほしいのは、やっぱり同年代の女性ですね。いまは魔法少女ブームが再燃しているし、こういう解釈のしかたもあるんだと思って楽しんでもらいたいです。またもっと若い人たちにも、このアルバムをきっかけに少し前の作品に興味を持ってもらえたら幸せですね。ストーリーの構成も絵柄も、いまのアニメとは違うけれど、観てみたら絶対に楽しめると思うんです。大好きな作品のテーマ曲ばかりなので、その入り口になれたら、こんなに素晴らしいことはないなって思います。 ――今年はレコーディングで大忙しの1年だったと思います。最後に、2014年の振り返りと、来年に向けての抱負をお願いします。 花たん:これまではアルバム制作をしていても、時間に余裕がある日がけっこうあったんです。でも、今年は本当に毎日が忙しくて、充実していましたね。「もうイヤだ!」「ニコ動観たい!」なんて思ったこともありましたけど(笑)、いま考えると本当にありがたいことだなって。  来年もこうしてアルバムを出せたらいいと思いますし、毎年言っていることではあるんですけど、ライブができたらいいなと考えています。これまでは人前で歌うのは得意じゃなかったけれど、「生で歌を聴きたい!」と言ってくれる人たちがいて、それを聞くとうれしくなるし、期待に応えたいという気持ちが強くなっていて。小さなライブハウスでいいので、全国の色んなところを回れたらいいですね。 (取材・文=橋川良寛) ■リリース情報 『魔法少女28』 発売:2014年11月26日 発売元:サブカライズレコード 価格:¥2,000(税抜) 〈収録曲〉 01.Catch You Catch Me「カードキャプターさくら」より 02.“らしく”いきましょ「美少女戦士セーラームーンSS」より 03.夢みるハート「魔法のプリンセス ミンキーモモ」より 04.時を越えて「怪盗セイント・テール」より 05.恋をするたび傷つきやすく…「ナースエンジェルりりかSOS」より 06.おジャ魔女はココにいる「おジャ魔女どれみ♯」より 07.この空にちかって「ヤダモン」より 08.デリケートに好きして「魔法の天使クリィミーマミ」より 09.永遠という場所「コレクターユイ」より 10.プラチナ「カードキャプターさくら」より 11.ラ・ソウルジャー「美少女戦士セーラームーン ミュージカル」より 12.Magia「魔法少女まどか☆マギカ」より 13.カラフル「劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」より ■特設サイト http://www.subcul-rise.jp/mahousyojo/

大森靖子はこうして“変態”を遂げた 3年間撮り続けた写真家が語る、彼女の素顔

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【リアルサウンドより】  シンガーソングライター・大森靖子の写真集『大森靖子写真集 変態少女』が12月26日(金)にスペースシャワーネットワークより発売される。  同書は、彼女が高円寺のライブハウスなどで演奏していた2011年から、メジャーデビューを果たす2014年までの軌跡を追った完全密着ドキュメンタリーで、まるでさなぎから蝶へと“変態”を遂げる大森靖子の姿を克明に捉えた一冊となっている。
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 約3年に渡って彼女を撮り続けた写真家・金子山氏は、彼女を被写体にしたきっかけと、当時の印象について、次のように語る。 「シンガーソングライターの豊田道倫さんが『面白い子がいるから』といって、僕に紹介してくれたのが、彼女との初対面です。そのまま3人で飲みにいって、生い立ちなどを聞いたのですが、そのハードなエピソードの数々とは裏腹に、すごくあっけらかんとしているのが印象的でした。地方から出てきたばかりの女の子といった風情で、素朴な可愛らしさがありながら、内にはブルースを秘めているというギャップに惹かれて、その日のうちに何枚か写真を撮らせてもらいました。写真集には、そのときのカットも掲載しています」  その後、氏は彼女がライブを行っていた高円寺のライブハウス「無力無善寺」で、彼女の演奏を聴くことになる。
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「当時の彼女は、まさに高円寺のシンガーソングライターといった感じで、がなるように歌っていました。いまのように洗練されてはいなかったものの、『PINK』などの楽曲ではパワーを感じました。その後、いくつかライブを観ていたのですが、彼女が慕っていたシンガーソングライターの加地等さんが亡くなって、震災が起こったしばらく後くらいから、彼女の中でなにかスイッチが入ったのを感じました。バイトを辞めて、音楽一本で食べていくと宣言していたのもこの頃だと思います。ライブの本数が月に20本を越えるようになって、女性としてはもちろん、ひとりの表現者としても魅力を増していき、ソリッドに磨かれていくのを実感しながらシャッターを切っていました」
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 そして氏は、彼女の評価を大きく高めた1ndアルバム『魔法が使えないなら死にたい』のジャケット写真を担当することになる。 「ジャケットのイメージを決める際、彼女にデモ音源を聴かせてもらったのですが、打ち込みでポップな曲調の2曲目『音楽を捨てよ、そして音楽へ』を聴いた瞬間、“この子は本気で売れるミュージシャンを目指しているんだ”と、その気迫を感じました。実際、彼女はある種のオーラのようなものを纏い始めていて、当時の写真の表情にもそれが出ていたと思います。その様子は、ひとりの人間が覚悟を決めることによって、ここまで変わるものかと驚くほどで、まさに“変態”していったという表現がぴったりかと。その様子を克明に捉えていった写真集としては、申し分のない仕上がりになっているかと思いますし、気持ちの強さひとつで人はここまで変われるという事実は、多くの人々ーー特に同世代の女性に大きな勇気を与えるのではないかと。出会った頃の素朴な彼女が、才気あふれるアーティストへと変わっていく過程を見てほしいですね」
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 なお、金子山氏は、12月3日に発売される大森靖子のメジャー1stアルバム『洗脳』のジャケット写真と、初回限定盤の付録となるフォトブックの写真を撮影した写真家・佐内正史氏の元アシスタントでもある。アルバムと合わせて購入すると、写真家の“師弟対決”も楽しめそうだ。  また、写真集購入者は、録りおろし音源「東京地下一階」「音楽を捨てよ、そして音楽へ」「ミッドナイト清純異性交遊」「お茶碗」の4曲より、1曲をダウンロードできるおまけ付きとなっている。 (文=松田広宣)
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金子山『大森靖子写真集 変態少女』(スペースシャワーネットワーク)

■書籍情報 『大森靖子写真集 変態少女』 著者:金子山 発売:12 月 26 日 体裁:B5 変型判/並製ビニールカバー/ 184 頁 価格:本体 3000 円+税 ISBN:978-4-907435-41-7 発行:スペースシャワーネットワーク

Sexy Zoneがミスチルを抜いたCDシングルランキングをどう考える? さやわかが歴史的視点から提言

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Sexy Zone公式サイトより。

【リアルサウンドより】  Sexy Zoneの新シングル『君にHITOMEBORE』(11月19日発売)が初週で約33.6万枚を売り上げ、同日に発売されたMr.Childrenの新シングル『足音~Be Strong』の売り上げ11.4万枚を上回り、12月1日付けのオリコン週間CDシングルランキング1位に初登場したことが、一部で波紋を呼んだ。(参考:2014年12月01日付オリコン週間CDシングルランキング)  Sexy Zoneが初回限定盤4種に加え、通常盤と限定流通商品の〈Sexy Zone Shop盤〉など、セット販売を含めて計33形態で販売する、いわゆる“複数販売形式”を展開したことに対し、Mr.ChildrenはCD1種類のみという対照的な販売方法だったため、そのランキングに疑問を抱く声が多く挙った形だ。ネットでは、Mr.Childrenのオリコン31作連続初登場1位という記録が途絶えることもあり、「あんなに特典を付けて1位をとるとかやっぱ納得いかない」「オリコンはもう終わった」といった、ネガティブな意見も目立つ。  しかし、『AKB商法とは何だったのか』の著者であり、音楽産業に詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は、そうした見方に疑問符を投げる。 「Mr.Childrenは90年代、数多くのCM曲やドラマ主題歌などのタイアップを獲得してきたことで、知名度を高めて人気を集めてきたバンドです。もちろん、バンドの実力や曲の良さもありますが、プロモーションにも力を入れてきたことは事実で、“売れること”をしっかり意識してきたバンドでもあります。90年代の音楽業界は、80年代に人気だった『ザ・ベストテン』などの音楽番組が減少していったことから、タイアップの重要性が認識された時代で、そういった意味でMr.Childrenは時代に即したプロモーションを展開し、成功したバンドとも言えるのです。多くの人に音楽を届けるのに、しっかりとしたプロモーションをするのは当然ですし、そうして一時代を築いた彼らは、その戦略も含めて評価されて良いと思います。今回のシングルは2位でしたが、やはり過去からやり続けてきた大型タイアップを付けて、積極的な売り上げ促進を図っています。彼らが純粋に音楽の質だけで売れたと考えるのは、いささか偏った見方なのではないでしょうか」  また、Sexy Zoneの販売手法も決して非難するようなものではないと、同氏は指摘する。 「今回、Sexy Zoneが行った特典付きの複数販売形式は、いまやアイドルに限らずさまざまなアーティストが行っている販売戦略で、CDに新たな付加価値を与えて成功するという手法です。そもそもオリコンチャートは、音楽の“質”を担保するものではなく、純粋に“売り上げ枚数”で順位が決まるもの。そこには当然、プロモーションの成否も反映されます。それゆえ、今回のチャートでSexy Zoneが1位となり、ミスチルが2位だったことの意味をあえて考えるならば、今の時代においてはタイアップよりも複数販売形式が有効な戦略であるということが改めて確認できたということでしょうし、いずれにしても両者の音楽的な評価を決定付けるものではありません。さらにいえば、オリコンチャートに多くの人がこだわるのは、単純に売れることそのものに価値がなお見いだされているからだし、それを踏まえた上で、売れるためにタイアップで人気を獲得してきたMr.Childrenも、複数販売形式で枚数を重ねたSexy Zoneも、間違ったことをしているわけではないと思います。また、そういう視点でならオリコンチャートはしっかり機能し、今なおひとつの指標にはなっていると言えるでしょう」  音楽の“質”だけでなく、各アーティストの販売戦略の成否が反映されてきたのがオリコンチャート、というのがさやわか氏の見方だ。そうした視点でチャートアクションを追うと、新たに見えてくるものもあるのではないか。 (文=松下博夫)

大森靖子が提示する、J-POPの新たなスタンダードとは? メジャー初アルバム『洗脳』を分析

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【リアルサウンドより】  大森靖子の『洗脳』を初めて聴いたとき、「ここまでポップになるのか」と愕然としてしまった。そんな反応も、きっと大森靖子の狙い通りなのだ。J-POPのメインストリームに飛び込んで、そこから聴く者の意識を確実に侵食していく。大森靖子のメジャー・デビュー・アルバム『洗脳』はそんなアルバムだ。  『洗脳』には、私がCD化を切望していた「ノスタルジックJ-pop」という楽曲が収録されている。<ここは多機能トイレです>。これが「ノスタルジックJ-pop」の歌い出しだ。メロディーに対して言葉がよどみなく湧き出すかのように歌われていく歌詞は、「多機能トイレ」をはじめ「本現場」「スーサイド」「消化器」「笑笑」など、一般的なJ-POPでは聴かないような単語が数多く登場する。J-POPの枠外へ出ようとしているかのような歌詞で、それはJ-POPに対する批評性としても機能している。「新曲いいね 踊れないけど」というフレーズも出てくるが、この楽曲もまた踊れる楽曲ではないし、かといってカラオケで歌うには少々難しい。ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉がサウンド・プロデュースを担当し、繊細に柔らかに重ねられた音もまた最近のJ-POPの主流とは大きく異なるものだ。そして、パラグラフがめまぐるしく変わるかのように、あっという間に歌詞は次の展開へと進行していくのだが、聴き手を置き去りにするかのようなスピード感でありながらも、心をえぐるようなフレーズが罠のようにいくつも仕込まれている。「ここは君の本現場です / いちばん汚いとこみせてね」。これは、かつてあるファンの本現場(メインで行く現場)が「大森靖子なのかBiSなのか」とTwitter上で話題になった後に、大森靖子がYouTube番組「モリ!ステ」で公開した楽曲だ。ここは君の本現場です、と。大森靖子とファンの関係性は突然作品に昇華されてしまった。この歌詞はその一瞬の記録でもある。  サウンド・プロデュースを担当しているのは、カーネーションの直枝政広(4曲)、デビュー・シングル「きゅるきゅる」も手掛けたデワヨシアキ(3曲)をはじめ、前述の奥野真哉、「きゅるきゅる」のカップリング「私は面白い絶対面白いたぶん」を手掛けたKonnie Aoki、大久保薫、内山孝洋、Taichi Master、そして大森靖子。総勢8人ものプロデューサーが立てられ、さらに多数のミュージシャンが参加している。贅沢なアルバムだ。  大森靖子は「自己表現」や「表現欲求」のような言葉で語られるのをよく目にするが、『洗脳』には「他者性」も強く感じる。たとえば「イミテーションガール」は、『洗脳』でももっともキャッチーなメロディーで、サウンド・プロデュースはハロー!プロジェクト関連の楽曲で知られる大久保薫が担当。さらに、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2014』でのミスiDのステージのために書き下ろされた楽曲なので、「Team ミスiD」として蒼波純、玉城ティナ、寺嶋由芙、レイチェルといったアイドルたちも参加している。ところが、この楽曲の一人称は「ぼく」で、歌詞の主人公はアイドルを応援する側のオタクなのだ。それを描く大森靖子の視点は優しく、そして表現は残酷なほどソリッドだ。  直枝政広がサウンド・プロデュースする「子供じゃないもん17」で、モータウンビートに乗って歌われるのは、17歳の面倒な女の子と教師の恋。大森靖子の声質の低い部分も効果的に使うメロディーも練られたものだ。  こうした自己表現というよりソングライターとしての職人的な部分は、実は2012年のアルバム『PINK』収録の「パーティードレス」で「きたないオヤジとやらないと 幸せがわからない」と歌ったときから実は変わらない。ただ、『洗脳』ではその手腕にさらに磨きがかかっているのだ。  内山孝洋がサウンド・プロデュースした「ナナちゃんの再生講座」は、ミュージカル風の優雅なサウンドに乗せて「隠語ばっかの世界史ね / 淫乱ばっかでせかい死ね」と大森靖子が歌う。あまい地獄だ。ライヴではエディット・ピアフの「愛の讃歌」を連想するほど歌いあげていた「呪いは水色」も、直枝政広のサウンド・プロデュースで適度に軽やかになり、それが逆に「私達はいつか死ぬのよ」という歌詞をより鮮やかに浮かびあがらせる。ストリングスは、星野源の編曲で知られる岡村美央によるものだ。「ロックンロールパラダイス」は、ヒップホップ畑のTaichi Masterによるサウンド・プロデュースで、プログラミングをベースにしたチャーミングなトラックに。直枝政広サウンド・プロデュースの「きすみぃきるみぃ」は、鮮やかに展開していくメロディーの美しさがソングライターとしての大森靖子の真価を実感させる。この楽曲では演奏が不意にフリー・ジャズのようになる瞬間があるのだが、やはり直枝政広プロデュースによる最後の楽曲「おまけ(ハートマーク)~スーパーフリーポップ~」でも終盤はインプロビゼーションへと突入していく。冒頭はセカンドラインのようなリズムとスライド奏法のエレキ・ギターが響いているが、中盤からテクノ化し、最後はこうなるのだ。突然のことで呆気にとられている私を残してアルバムは終わった。  バンド・サウンドやプログラミングが並ぶ点で、『洗脳』はこれまでのアルバムと大きく質感が異なる。その中で1曲だけサウンドが大きく異なるのは、大森靖子自身のプロデュースによる「デートはやめよう」だ。これのみがアコースティック・ギターによる弾き語り。『洗脳』が従来のファンに波紋をもたらすとしたら、この点であろう。弾き語りをもっと聴きたい、という声も当然出てくるだろうし、それは大森靖子が一番理解しているはずだ。  「デートはやめよう」を聴きながら、ふとひとりの女友達のことを思い出した。彼女は大森靖子のライヴになるとずっと泣いてしまうのだという。しかも終演後に大森靖子に「泣いてたね」と言われたので、気軽にライヴにも行けなくなったのだという。その女の子が『洗脳』を聴いたらどう感じるのだろう、とぼんやり考えた。  大森靖子は『洗脳』でまた大胆に自身を更新してしまった。2013年のアルバム『魔法が使えないなら死にたい』のリリース後にインタビューした際、彼女がすでに次のアルバムの構想を語っていたことを思い出す。大森靖子は常に変化を志向する。「ギタ女」だの「サブカル」だのという世間からの馬鹿らしい形容も、痛快なスピードでさっさと置き去りにしてしまう。  その一方で、彼女のライヴスケジュールには「弾語り」という文字が並ぶ。それは『洗脳』のリリース後も続いており、『洗脳』はライヴの場で彼女自身の手で解体されていくのだろう。前作『絶対少女』に収録されていたポップな「ミッドナイト清純異性交遊」が、弾き語りになるとまるで別の曲のようにメランコリックな表情を見せるように。  『洗脳』は、無謀なほど全方位的な挑戦が、結果的に大森靖子の強度をさらに高めているアルバムだ。「自我」というものが近代の生み出した幻想なら良かったのだが、残念ながら私たちはそれを抱えながら生きている。そして『洗脳』にアクセスすることによって、それは容易に操作されうる。それは「ノスタルジックJ-pop」で「そんな歌くらいでお天気くらいで 優しくなったり悲しくなったりしないでよ」と歌われている通りの作用が、大森靖子の『洗脳』でも発生するということだ。そして『洗脳』がノスタルジックなものになるまで時間がかかりそうな予感がするのは、J-POPの新たなスタンダードを提示することに成功しているように感じられるからなのだ。 ■宗像明将 1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter
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大森靖子『洗脳』
(avex trax)

■リリース情報 『洗脳』
 発売:2014年12月3日(水)
 価格:¥2,800(税抜き)

 iTunes「洗脳」プレオーダー

片平里菜、ななみ、名倉七海……“ギター女子”のネクストブレイク候補7選

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エアギター世界大会で見事優勝を果たし、一躍注目を集めた名倉七海。

【リアルサウンドより】  映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で主演を果たした大原櫻子が「MUSH.CO」名義で歌手デビューして注目を集めたことをはじめ、ギターを抱えた女性シンガーソングライター、“ギター女子”に陽が当たった2014年。音楽番組『MUSIC STATION』で特集を組まれるなど、シーンの中で大きな盛り上がりを見せ、「new guitar girls fes.」、「guitar girls recommend」といった、ギター女子にスポットを当てたイベントも多く開催。すべてが軒並み満員など、流れはさらなる勢いを増した様相だ。そんな中、ネクストブレイクが期待されるギター女子を紹介していきたい。

片平里菜

片平里菜「amazing sky」Music Video

 2011年「閃光ライオット」審査員特別賞の受賞で注目を浴び、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのギター・山田貴弘全面バックアップのもと、2013年にメジャーデビューを果たした片平。凛とした佇まいと共に、不器用さと共にふと見せる弱さや、彼女が敬愛してやまないアラニス・モリセットにもひけをとらないダイナミズムが持ち味。渋谷の女子高生が“ツギにクル”ミュージシャンを決めるサイト「kurukore」4月度1位を「Oh Jane」で獲得、代表曲「女の子は泣かない」がCanCamのCM曲として使われたり、同曲PVが「MTV VMAJ 2014最優秀新人アーティストビデオ部門」にノミネートされるなど注目はまさに上り調子。今年8月に発売された1stアルバム『amazing sky』も好評と、若手女性シンガーソングライターの中心人物の一人として、最も次が期待される一人だ。

ななみ

【きつねとななみ #10】 「愛が叫んでる」(フル)弾き語り

 2013年、ヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」で力強い歌声を響かせグランプリを受賞したななみ。今年10月に発売されたデビューシングル『愛が叫んでいる』は、「暗黒時代」と称した自身の学生自体の葛藤を一切オブラートで包むことなく、裸の言葉で歌った一曲。一方で自身のオフィシャルYouTubeチャンネルにアップしている番組『きつねとななみ』では、昭和歌謡からボカロ曲、アニメソングと幅広い楽曲をバラエティ豊かに歌い上げており「音楽に救われた」という彼女の歌への愛が全身からにじみ出ている。

名倉七海

名倉七海 / こうき心(吉田拓郎カヴァー)【PV Short ver.】

 2012年にエアギターアイドルグループ・テレパシーのメンバーとしてデビュー。グループ解散後、今年8月にエアギター世界チャンピオンまで上り詰めた名倉七海が、さらなる表現を目指し、今月26日に本当のギターを片手にデビューする。(参考:エアギター世界一の名倉七海、凱旋ライブで決意表明「エアギター世界大会の連覇目指す」)本格的なギター歴は今年からとまだまだビギナーではあるが、伝統あるフォークソングのレーベル・フォーライフミュージックからリリースすることもあり、注目度は高い。しかも吉田拓郎『こうき心』のカヴァー曲を携えてのデビューであり、彼女への大きな期待が伺える。駆け出しの彼女だからこそ描ける不器用なまでの熱さと、瑞々しい歌声がエモーショナルな感情をかき立てる。

藤原さくら

藤原さくら「Ellie」

 10歳の頃からギターを始め、ビートルズと共にYUIに慣れ親しんできた藤原さくらはYUIと同郷の福岡から飛び出してきた18歳。2013年からインディーズで2枚のミニアルバムをリリース。今夏、アミューズ所属のアーティストが一堂に会したフェス「BBQ in つま恋」では大観衆を目の前にして物おじせず堂々たる声を響かせた。「和製ノラ・ジョーンズ」と形容される声はブルージー。今年3月に発売された1stフルアルバム『full broom』はアシッドフォーク調の全英詩曲「Ellie」など、メロディメイカーとしても非凡な才を感じさせる1枚に仕上がっている。最近ではベルメゾン「寒さなんてホットコット」のCMに出演を果たし、その可憐なルックスにも熱視線が注がれている。

小園美樹

n・g・g・f ~new guitar girls fes.~ 小園美樹

 現役中学生にして作詞作曲の全てをこなす才媛。中学1年の頃から地元静岡のライブハウスで弾き語り活動を開始し、2013年10月、わずか14歳で初のミニアルバム『Dear』を発売。今年6月には2ndミニアルバム『Song for』を発売し、勢いを感じさせる。眩いばかりのピュアネスが全面から漂う声と歌詞が、何よりの魅力となっている彼女。『Song for』収録の「You are my hero」が「kurukore」にて9月度2位を獲得するなど、片平同様、次の女性の声の代弁者として期待を集めている。

沖ちづる

沖ちづる 呼吸

 秋の「guitar girls recommend」で山崎あおい、新山詩織ら先輩たちを前に堂々たる歌を披露して、注目を浴びることに。1995年生まれ、現在19歳の沖はチェンバー・ポップと歌謡曲が融合を果たしたかのような洗練された音を紡ぐ。その音が早耳の人間から注目を浴び、今年9月に発売されたミニアルバム『はなれてごらん』がライブ会場限定発売ながら話題を呼んだ。来月には初恋の嵐企画にも出演が決定し、百々和宏(MO'SOME TONEBENDER)、曽我部恵一ら名うてのミュージシャンとステージを共にするところからも、期待値の高さがうかがい知れる。

ももちひろこ

ももちひろこ 「もしもの話」 【Official Music Video (Short Ver.)】

 2009年開催の「ユニバーサルミュージック×新星堂 新人発掘オーディションCHANCE! 09」にて最優秀賞を獲得。2011年のデビューシングル『明日、キミと手をつなぐよ』が映画「洋菓子店コアンドル」の主題歌にも抜擢された福岡を拠点に活動するギター女子界の“ももち”は、現在26歳と上記に挙げたシンガーと比べたら少しお姉さん。だからこそ、どこか漂うフンワリしながらも落ち着いた歌声は、聞いているとふと笑みがこぼれそうな優しさに溢れている。今月12日に発売されたばかりの4thシングル『もしもの話』も全編を通してホッコリとした印象だ。  ここ数年のEDMブームの反動か、若い世代を中心に改めて注目を集めている女性シンガーソングライターたちによる弾き語り。才能ある若手が続々とデビューしている昨今、来年はさらなるシーンの盛り上がりが期待できそうだ。 (文=田口俊輔)

高速ロックシーンの源流=ヒトリエが提示する、次の一手とは?「今ある武器を全部出した」

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【リアルサウンドより】  4人組ロックバンド、ヒトリエが1stフルアルバム『WONDER and WONDER』をリリースした。  フックの強いメロディと刺激的なフレーズの応酬が速いスピードで繰り広げられる曲調は、彼らのユニークなセンスを大きく反映させたもの。特にここ最近の邦楽ロックシーンでは高速のテンポでオーディエンスを煽り興奮に繋げるタイプのバンドが多く登場しているが、実は彼らはその“源流”の一つと言っていい存在だ。もともとボーカロイドを用いて楽曲を発表していたwowakaを中心に、ネットや同人シーンで活躍していた腕自慢のプレイヤーが集まった4人組。彼がボーカロイド時代に発表してきた楽曲にその要素が色濃く現れていた。     今年1月にメジャーデビューを果たした彼ら。紆余曲折の末に完成したというアルバムには、そこからのバンドとしての成長が刻み込まれた作品でもある。一体何があったのか。そして今年バンドシーンの一大トレンドとなった「高速四つ打ちダンスロック」に対して彼ら自身はどう思うのか? 語ってもらった。

「顔が見える音楽をやろうと思った」(wowaka)

――まず改めて、wowakaさんはどういう動機でバンドをスタートさせたんでしょうか。 wowaka:最初にあったのは、自分で歌いたいということですね。2009年からボーカロイドを使って曲を作りはじめて、2011年にそれをまとめたアルバムを出して。そこで一つ落ち着いちゃったような感じがあった。同じことを続けるより、自分が演奏して、歌って、ライヴをする。そういう活動をちゃんとやりたいと思った。顔が見える音楽をやろうと思ったんです。そもそも自分が好きだったのがそういうバンドだったんですね。メンバーそれぞれの人間性も含めて音にパッケージされてるような感じが好きだったんで。「バンドをやりたい」というのが素直にありました。 ――皆さんは、ヒトリエっていうバンドにどういう可能性を感じたんでしょうか。 イガラシ:僕が思ったのは、日本の今のバンドの中で自分が一番好きな音が鳴らせるバンドになれるっていうことですね。彼が発表していた「アンハッピーリフレイン」とか、自分も好きで聴いてきた曲だったし。「バンドやろう」って言われる前から「これは俺が弾くべきだ」と勝手に思ってたというか(笑)。 ゆーまお:僕の視点で言うと、そもそも僕自身がボーカロイドのファンで。ただ、同人音楽にしてもボーカロイドにしても、ドラムは打ち込みのものが多いんです。それはそれで良いんですけれど、何か手伝えることがあるんじゃないかなと思ったんですよね。自分が演奏することで可能性が広がるんじゃないかと思った。それがそもそもの始まりです。で、ヒトリエが始まった頃は僕も自分のバンドを含めていろんなバンドを掛け持ちでやっていて。でも、一番バンドを世に広めていきたいという意志を発信していた男があの人だった。というのもあって、ヒトリエを選んで今に至る感じです。 ――シノダさんは後から誘われて参加したんですよね。 シノダ:当時から「なんか変な曲を作る変な存在感がある人がいるなぁ」と思ったんですよ。で、ライブを始めたときも楽しそうだから俺も混ぜてくれねぇかなぁって思っていて。誘われて嬉しかったですね。このバンドだったらもっとムチャクチャできるだろうなって思ったという。 ――ヒトリエの曲はすごくテクニカルですよね。手数も多いし、曲構成も複雑で。プレイヤーとしてはみなさんどう感じているんでしょう? シノダ:ここ2~3年はずっと「難しい」しか言ってないですね(笑)。「この曲は難しいな、この曲も難しいな」って。なんとか乗りこなしたいとは思ってますけど。 イガラシ:ただ、ベーシストとしてはすごくシンプルなんですよ。ドラムもギター2本も細かく構築されてるから、真ん中でどっしりしてた方がちゃんと曲になる。ベースっていう楽器の機能を考えるようになりましたね。 ゆーまお:僕自身は、みんなで速いキメをキメたり速いリズムを取ったりすること自体は特別難しいと思ってないんですよ。そういう攻め方をする演奏スタイルだということで。速かったり忙しかったりするのは、さして難しいことではないと思ってます。

「どうにかwowakaっていう人間を発射するような作業だった」(イガラシ)

――ヒトリエというバンドは、始まった時点ではwowakaさんが曲を作って、3人がそれを演奏する形で進んでいたんですよね。 wowaka:そうですね。 ――今回のアルバムもそういうイメージで作り始めた。 シノダ:当初イメージしていたものはそうですね。wowakaの頭の中で構築されきったもの、派手でインパクトがあって音数も詰め込んだようなもの。そのくらいの時期に生まれてきたのが「NONSENSE」でした。 wowaka:「NONSENSE」と「ボートマン」が今年の春くらい、最初に作った2曲なんです。MOSAIC.WAVとか、アニソンとか、そのリミックス集とかをたくさん聴いていたんですよね。でんぱ組.incにもハマってたし。そういう着想からのイメージもあったんですけれど、作っていたら結局ヒトリエの音楽になった。どんどん自分自身の意識が変わっていって。 ――どう変わっていったんでしょうか? wowaka:最初はそれまで自分がやっていた活動と地続きで、「このフレーズをここに置いて、それに対応して面白いことをドラムにやってもらって」みたいに、構築するような感じで曲を作ってたんですね。でもそこから、ライヴの現場をいっぱい体験して、僕の身体が変わってきたような感じがあった。自分で歌うこと、それをお客さんの前で引き受けること、そういう実感が身体に積み上がってきた。もうちょっと肉体よりの発想になったんですよね。そうしたら、それまでの方法論で曲が作れなくなった。 ――当初やろうとしていたことが行き詰まりになった? wowaka:停滞しましたね。良いものができるのか、自分自身を全然信用できなくなった。でも、それを拾い上げてくれたのがメンバーだった。「そんな状態ならこういうのはどう?」っていう、深いところでツボを突く感じのアイディアを提示してきてくれたんですよ。そういう状態にバンドがなってきたというのはすごく嬉しかったですね。 ゆーまお:本当はwowakaが引っ張っていくと彼も周りも思っていたんですよ。でも、なかなかそうもいかなくなっていって。 イガラシ:みんなで、どうにかwowakaっていう人間を発射するような作業だった。塞ぎこんでいてたのを、みんなが自分の持ってる技術とか知識とかで「どうやってこいつを遠くまで飛ばすか」みたいな感じというか。バンド全体で鳴らした時に格好いいこと、ヒトリエがやるべきことを、作曲する上でもみんな等しく考えるようになっていきましたね。 ――メンバー1人1人のアイディアがより採用されるようになっていった。 シノダ:僕個人のことで言うと、発言権が得られてきたという感じはありますね。前はギターのフレーズを提案してもかなりの確率でボツをくらってきたんですけど、最近は打率が上がってきた。今回のアルバムに関してはアレンジや曲展開も提案するようになって。採用率が上がってきてますね。 ――今回のアルバムの中で、みなさんそれぞれに手応えや思い入れのある楽曲はどれですか? wowaka:一番好きなのは「5カウントハロー」っていう曲ですね。もともと「変拍子だから面白いじゃん」みたいな発想の曲はすごく苦手なんですけど、この曲はまさにそういう曲で。「こういうアプローチどう?」ってメンバーのみんなから出たアイディアをもとに自分の引き出しにあるものをやってみたら、すっと当てはまった。ポップでキャッチーだし、自分が納得できるな曲が作れた。そういう手応えがありましたね。 シノダ:僕は「インパーフェクション」と「癖」。この曲は僕のアイディアの採用率が高いんですよ。「インパーフェクション」はリフの時点で特別な曲になりそうだと思って、全フレーズ作りきりたいと思ったし。そういう曲が思い入れ強いですね。自分のことしか考えてないのかもしれない(笑)。 イガラシ:思い入れは全部の曲にありますけど、中でも「なぜなぜ」と「我楽多遊び」の2曲は大きいですね。バンド全体で曲を作るようになって、同時進行でwowakaも並行して家でデモを作るようにしていたんです。昼12時から夕方6時くらいまでリハやって、その後に帰って家でデモを作るというような毎日で。そこで家まで着いていって、後ろから見張ってたんです。見張るっていうと言い方悪いですけど、作業が止まると「いや、今の良かったよ」とか言ったり、構成を入れ替えたりして。そういう風に、宅録だけど一緒にデモを作っていたのがこの2曲なんです。 ゆーまお:僕は「終着点」ですね。今回のアルバムはバンドメンバー同士が向き合って作っていったんで、当然笑って過ごせることばかりではないのは事実なんですよ。いろいろ思うことはあったし、自分は結構ものを言うほうなんで。でも、そういう感情は置いておいて、無心にドラムを叩くことに専念した。そしたらすごくいい感じだったんです。

「楽器や演奏やパフォーマンスにちゃんと主張のある人が集まった」(wowaka)

――では、結果としてこの『WONDER and WONDER』というアルバムは、どういうアルバムになった実感がありますか? イガラシ:自分としては、とりあえず、今ある武器を全部出したアルバムって感じですね。ジャムでできる曲もあるし、狙って作った曲もあるし、「センスレス・ワンダー」みたいな元々の武器が活かされている曲もある。今は何でもできるようになっているんですよね。 wowaka:今まではたぶん、なんだかんだ言って、僕のよくない意味でのエゴみたいなものもあったと思うんです。それは今だから言えることですけどね。でも、もっと純粋な意味で、ヒトリエのこのメンバー4人でしかできない、唯一無二の格好よさを持ったバンドになった。もともとそういうことをやりたかったんですよ。だから、ちゃんとバンドとして、ヒリヒリした緊張感がある格好よさを持ってるアルバムじゃないかなと思います。実際、作る過程もかなり切羽詰ってましたけど(笑)。 ――そして、もう一つ訊きたいと思っていることがあるんです。今の邦楽のロックシーンを中心に、高速BPMの楽曲がウケる流れが生まれている。ボーカロイドにおいても、速いテンポでいろんな要素を詰め込んだ楽曲が出てきている。僕はwowakaさんが作っていた曲が、その源流みたいなところだと思っていて。そういう当人として、今の状況はどういう風に見ていますか? wowaka:僕は、もともとの自分の考え方として、物事を俯瞰的に見るところがあって。なので、そういうシーンや周囲の盛り上がりは意識してますね。自分でも把握している。で、一概には言えないけれど、柴さんが言ったように、僕とかハチくんがそのきっかけになったという自覚もある。で、そういうことを経た上で、今のそういうバンドがやってることに関しては、逆に「もう昔やっちゃったしな」っていう感じなんですよね、ある意味(笑)。 ――そこはもう通り過ぎた場所だと。 wowaka:今はただ単に「今自分がやるならこれだ」ってことをやってるつもりです。もともと、そういう盛り上がりが生まれる前から僕はそういう曲を作ってたし、それは別にシーンを意識したわけじゃなくて、単に面白いと思ったことがそれだったからだし。活動を始めた2009年から。その時点で自分が持っている引き出しでできることしかやってないんですよね。もちろん無意識的にシーンも踏まえているのかもしれないけれど、この先もそういう感覚でずっと作り続けていきたい、というのがいつも思うことですね。 ――イガラシさんはどうでしょう? イガラシ:このアルバムを作ってる時に考えてたのは「騙したい」ということだったんです。というのも、ちょうど柴さんが最近書いてた「四つ打ち」の記事を読んだんですけど(「フェスシーンの一大潮流「四つ打ちダンスロック」はどこから来て、どこに行くのか?」)、あそこに書いてあったように、みんなが四つ打ちって言ってるのは実はハットの裏打ちなんだってことを僕も思っていて。だから「インパーフェクション」とかは8ビートだけどハットの裏打ちがあったりする曲で。逆に、キックをイーヴンで踏んでる「5カウントハロー」が5拍子だったりする。そういう、今邦楽ロックのシーンでフォーカスされてる部分に、ちょっと意地悪というか、皮肉をぶつけるような気持ちもあって。 ――ある意味一石を投じる、みたいな。 イガラシ:そうですね。別にそれをそのままぶつけても俺らは問題ないなと思ってたし。「センスレス・ワンダー」にしても、高速四つ打ちギターロックのフォーマットに則ってるけど、全然踊れないし(笑)。だから、俺らとしては、もともとあまり関係ないんだなと思ってて。そういうことを考えてました。 ――シーンの中で独自の道を行こうとする意志があった。 イガラシ:そうですね。特にフェスに出ていて全体的に思うのが、すごく親切すぎるってことなんですよね。バンドもそうだし、お客さんも親切なものを求めてる。ただ、やっぱりその中でも強いと思うバンドはたくさんいるんですよ。フォーマットに則っていなくてもお客さんが気付かないうちにノッているようなバンドもいる。だから、俺らはお客さんに迎合するべきじゃないと思いましたね。そうしなくても格好いいバンドになろうという。 ――ゆーまおさんはいかがでしょう? ゆーまお:正直に言うと、「速い」っていうワードに関しては流行もあると思うし、僕らもそれに乗っかってるところはあるんだと思います。ただ、上っ面だけで時代の流れに乗っていたくはないですね。他のみんなも必死だとは思うけれど、演奏者として言わせてもらえば、まだまだ軽いです。 ――まだまだ軽い。 ゆーまお:もちろん速いから肉体的には苦しいし要求も増えてくるわけじゃないですか。でも、惰性で速くしても、薄っぺらなものになっていくんですよ。そういうものにはしたくないし、そうならないようにしなきゃダメだと思ってますね。今は速いのが流行りだと言われても仕方ないし、ヒトリエもそうだろうって言われてもしょうがない。でも、俺の視点から言えば、速いだけで終わらせたくないんです。もっと深いものに繋がっていかないといけない。勢いで終わらせたくない。音にちゃんと深みがないと俺がドラムを叩く意味がないと思います。 ――なるほど。それを踏まえた上で、ヒトリエの音楽にはヒトリエでしか出せないオリジナリティ、ユニークさが僕はあると思っているんですけれども。当人としては、どういうところにそれが出ていると思いますか? シノダ:まずユニークな人間が4人が集まっているということですよね。それでそれぞれがひねり出すアイデアがあるし、wowakaという人間の作るメロディと歌詞が、個性の塊のようなものである。それ自体だと思いますね。だから他と比べて特別なことをあえてやっているっていう感じがあまりなくて。僕に関して言えば、思いついたことしかやってないんです。それを最終的にジャッジするのはwowakaですし、彼の存在はデカいと思いますね。 ――wowakaさんはどう思いますか? wowaka:そもそも僕自身も、バンドのメンバーを誘う時に主張のある人を選んだんですよね。音楽を作る者として、楽器や演奏やパフォーマンスにちゃんと主張のある人が集まった。実は、そういうタイプのバンドってあんまりいないと思うんです。でも、ヒトリエはちゃんと音楽がそういう形の主張をしている。そこが強いと思いますね。 (取材・文=柴那典)
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ヒトリエ『WONDER and WONDER』(非日常レコーズ)

■リリース情報 『WONDER and WONDER』 発売:2014年11月26日 初回生産限定盤(CD+DVD) AICL 2785-6 ¥3,400(税抜) 通常盤(CD) AICL 2787 ¥2,800(税抜) 〈CD収録曲〉 1. 終着点 2. インパーフェクション 3. N/A 4. 5カウントハロー 5. ピューパ・シネマ 6. 癖 7. NONSENSE 8. ボートマン 9. なぜなぜ 10.我楽多遊び 11.ゴーストロール 12.センスレス・ワンダー 〈DVD(初回生産限定盤のみ) LIVE at LIQUIDROOM 20140418〉 1. ワールズエンド・ダンスホール 2. (W)HERE 3. センスレス・ワンダー 4. 踊るマネキン、唄う阿呆 5. ローリンガール ■ライブ情報 『ヒトリエ 全国ワンマンツアー2014/15『WONDER and WANDER』』 12月5日(金) 栃木 HEAVEN’S ROCK宇都宮 12月7日(日) 香川 高松DIME 12月10日(水) 京都 京都磔磔 12月13日(土) 広島 広島Cave-be 12月14日(日) 兵庫 神戸VARIT 12月18日(木) 新潟 新潟RIVERST 12月19日(金) 宮城 仙台MACANA 12月22日(月) 北海道 札幌ベッシーホール 〈2015年〉 1月10日(土) 福岡 福岡DRUM Be-1 1月12日(月・祝) 愛知 名古屋E.L.L 1月14日(水) 大阪 大阪BIG CAT 1月17日(土) 東京 赤坂BLITZ ■Official WEB http://www.hitorie.jp ■Official Twitter https://twitter.com/hitorieJP ■Official Facebook https://www.facebook.com/hitorie.jp

℃-uteらアイドル勢にアニソン系歌手、ギター女子も……今年の“冬フェス”の傾向と対策

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「COUNTDOWN JAPAN 14/15」公式サイト。

【リアルサウンドより】  千葉・幕張メッセで12月28〜31日に開催されるロックフェス「COUNTDOWN JAPAN 14/15」のタイムテーブルが発表されたほか、FM802が主催し、12月27〜28日に大阪・インテックス大阪にて開催されるロックフェス「RADIO CRAZY」や、名古屋・ポートメッセなごやにて12月21日に初開催される「MERRY ROCK PARADE」でも続々と出演陣が発表され、いよいよ冬フェスのムードが盛り上がってきている。  多くの音楽ファンにとって、年越しの定番イベントにもなりつつある冬フェス。今年はどんな傾向があるのだろうか。フェス文化に詳しい音楽ジャーナリストの柴 那典氏は、「リスナーにとって選択肢が広がってきている」と、昨今の状況を説明する。 「かつて、冬フェスといえば『COUNTDOWN JAPAN』一択という印象が強かったですが、昨今では大阪の『RADIO CRAZY』が定番化したほか、名古屋では『MERRY ROCK PARADE』が開催されるなど、地域的にもさまざまな選択肢が生まれてきました。また、年末だけではなく、1月4日に大型のEDMフェス『electrox』が開催されるなど、期間的にも拡張されてきている印象です。ジャンルにおいても、『COUNTDOWN JAPAN』にはロック系以外のさまざまなミュージシャンが出演するほか、『MERRY ROCK PARADE』ではラウド系のミュージシャンが、『electrox』には世界のトップDJが集まるなど、リスナーが好みに合わせてイベントを選択できる状況が整いつつあるのではないかと思います」  また、ジャンルの垣根を越えた出演陣が特徴となってきている『COUNTDOWN JAPAN』では、次のような傾向が見られるという。 「でんぱ組.incやチームしゃちほこなどのアイドル勢がロックフェスに出演するのは、すっかり定着した印象で、多くのリスナーが好意的に受け入れているのではないかと思います。中でも注目株は、ハロー!プロジェクトの℃-uteで、実力派として知られる彼女たちだけに、そのパフォーマンスにも期待したいところです。また、今年の傾向として顕著なのは、KalafinaやLiSA、坂本真綾といった、いわゆるアニソン系の歌手が増えたこと。彼女たちはアニソン界でも特にハイクオリティなステージングで知られているので、フェスを通してアニメファン以外のリスナーにも訴求するのではないでしょうか。さらに、片平里奈や住岡梨奈、山崎あおいといった、“ギター女子”が多く出演するのもポイントかと。今年は才能のある女性シンガーソングライターが多くデビューした“当たり年”だっただけに、楽しみにしているリスナーも多いかと思います」  ロックに限らず、あらゆる音楽が楽しめるようになってきている今年の冬フェス。未成年のアイドルは早めの時間に出演するほか、ギター女子は「ASTRO SPECIAL」のコーナーにまとめて出演するなど、ジャンルによって出演時間が固まっていたりするので、タイムスケジュールを確認のうえ、目当てのアーティストを見逃さないように備えたい。 (文=松下博夫)

清竜人25がアイドルシーンに持ち込む、「虚構」のエンターテインメント

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【リアルサウンドより】  シンガーソングライター清竜人と六人の「夫人」からなるアイドルグループ、清竜人25がアイドルシーンに旋風を呼んでいる。グループの活動開始についての情報がリリースされた段階では、「一夫多妻制」というトリッキーな設定にどうしても注目が集まっていたが、デビューシングル『Will♡You♡Marry♡Me?』をはじめとする楽曲やMVが発表され、ライブやイベントが重ねられるにつれ、その小賢しくも見えるようなコンセプトにまつわる言葉よりも、圧倒的な楽しさの方へと重心が一気に移っていったように見える。とはいえ、清竜人25の見せる壮観な景色に「一夫多妻制」というコンセプトが大きく関わっていることは間違いない。また、このグループがアイドルシーンに存在することですぐに想起されるのは、アイドルというジャンルが長々と抱え込んでいる、擬似恋愛という厄介なテーマに対する批評性だ。けれども、おそらく「一夫多妻制」というコンセプトを掲げた清竜人25が痛快なのは、擬似恋愛に対する批評それ自体によるものではない。より根源にあるのはきっと、今日アイドルが抱えているリアリティの水準に、新鮮な光を差し込ませたということの方だろう。  現在のアイドルシーンの大きな特徴のひとつは、ステージ上のパフォーマンスとアイドル個々の人生とが地続きになった、ある種のドキュメンタリー性である。円堂都司昭氏が『ソーシャル化する音楽』(青土社)の中でAKB48に関して、「ライヴというよりライフが売りものになっている」局面があることを指摘しているように、アイドル個人のパーソナリティへの接近すなわち「ライフの実況中継」は、今日のアイドルというジャンルと不可分のものだ。それはAKB48の映画『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズなどに端的に象徴されるだろう。また、「現場」が主戦場になり、アイドル自身によるSNSを通じたアウトプットが必須になった昨今ではそうした潮流はさらに顕著になるし、それは同時にアイドル自身にも幅の広い自己表現の場をもたらしている。他方で、ファンがアイドル個人の実人生の断片に触れる機会も多くなり、アイドルのパーソナリティへの没入度合いをも高まりやすくなる。そんなパーソナリティへの近接の先に、いわゆる「ガチ恋」という単語の浸透もある。  清竜人25の各「夫人」たちもまた、公式のブログや各自のTwitterのアカウントで自身の言葉を発信しているし、それらの中にはプライベートの時間の過ごし方やグループ加入前の活動など、夫人という「設定」を降りた個々のパーソナリティが綴られたものも多い。その点に関して言えば、彼女たちの人格、私生活にまつわる情報へのアクセスは、他の多くのアイドルと同じように開かれている。そもそも「一夫多妻制」が嘘の設定であることは、受け手は百も承知である。だから、「一夫多妻」のコンセプトそれのみをもって「擬似恋愛」が無効になるわけではないし、メンバー個々のパーソナリティへのアクセスを拒んでもいない。アイドル活動を行なう彼女たちの、生のパーソナリティをステージ上と地続きのものとして追いかけることなど、本当はいくらでもできてしまうはずなのだ。  それでもなお、清竜人25のパフォーマンスに触れる時、アイドルというジャンルにしばしば感じるような、アイドル個々人の実人生のシリアスさや、痛みと背中合わせの生々しさを一旦忘れて身をゆだねることができる。それは清竜人25というグループのもたらす楽しさが、あくまで七人のつくり上げる明らかな“嘘”の世界の内で成り立っているからだ。別の表現をすればそれは、演劇的と言ってもいい。ファンタジーの世界として作られた清竜人とその夫人たちのパーティーを描いたミュージカルに、受け手を気持ちよく陶酔させ踊らせている。そこでは六人の夫人たちは「夫人」という役柄を演技している存在だし、清竜人もまたその中央に立ちながら「6人の夫人たちの夫」という役柄、つまり夫人たちと同等に嘘の世界の、「理想化された夫としての清竜人」役を演技している。そんなエンターテインメントを、たとえば演劇というフォーマットではなくアイドルという、「ライフの実況中継」がスタンダードになったジャンルにはめ込んだことで、特有の虚実の水準を実現させた。  印象的な場面が、11月11日に渋谷・TSUTAYA O-EASTで開催された『ハーレムフェスタ2014 Vol.2』の終盤にあった。ひと通りのライブパフォーマンスを終えたのち、メンバーのうち清竜人と第6夫人・清可恩の二人がステージ中央に残り、清可恩の口からCDリリースの告知が行なわれた。この時清竜人は彼女の首に背後から腕を絡ませ、睦言を囁くようにして彼女が話すべき告知事項を耳打ちしてみせた。それは明らかに、カップルの親密さをあらわすやりとりである。けれども同時にそれは、アイドル当人の生っぽいセクシャルさを表現するようなものからはほど遠かった。これは清竜人25のパフォーマンスが、いわゆる「ガチ恋」という言葉につながるようなリアリティとは明らかに異なった水準にあるからだ。アイドルが男性との仲睦まじいセクシャルな関係を見せつけているのではなく、「夫人役が夫役と仲睦まじい関係を演じている」のだ。そして、あらかじめその虚構の関係性が前提になったステージに我々観客は熱狂している。さらに言えば、清竜人25が体現するエンターテインメントは、ほぼその虚構の内側で行なわれている。  つまり清竜人25は、「一夫多妻制」や「婚姻」という設定それのみによってアイドルと受け手との関わり方を革新したわけではない。ステージ上にアイドルのむき出しのパーソナリティを求めずにファンタジーの水準で陶酔できるパフォーマンスを、こちらがそうと気付かないうちに今日のアイドルシーンに忍び込ませた。それがこのグループの爽快さである。一対一の関係ではなく「一夫多妻制」という明らかな虚構が設定されていることは、何より嘘の世界を嘘の世界として皆で楽しむことにこそ貢献しているのかもしれない。  ひとつ重要なのは、清竜人25は大胆な批評性をもってアイドルシーンに現れたが、他方でこの独特なグループはその成り立ちゆえに、現在のアイドルシーンに100%コミットする必要のない立ち位置にいるということだ。だからこそ、アイドルというジャンルが抱える「恋愛」にまつわるいびつさを、軽やかに批評することもできる(逆に言えば、仮にこの先アイドルシーンに強くコミットした活動に向かったならば、現在のバランスは持続しないのかもしれない)。それはたとえば、アイドルというジャンルがはらむいびつさに翻弄されたのちに、ジャンルのど真ん中からその息苦しさを相対化してみせたHKT48の指原莉乃のような批評性とは性格が大きく違うだろう。  アイドルの多様なあり方が前提になっている現在、アイドルファンはアイドルシーンに向けて登場した種々のグループを、「アイドル」というジャンルの内部に取り込んで受け止めることに慣れている。それゆえに、清竜人25もアイドルシーンの内側にある存在として自然に受容されるし、その環境を最大限に活かしながら、同時に鋭い批評性も生み出している。このグループが憎いのは優れた批評性を持ちながら、その批評性を意識することがすぐさま野暮ったく感じられるほどに、虚構のエンターテインメントの楽しさが批評を凌駕していくことだ。だからこそ、何も考えずに虚構の世界のミュージカルに踊りたいし、野暮ったく考え込みながらその批評性に唸っていたい。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。
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清竜人25『Will♡You♡Marry♡Me?』(トイズファクトリー)

■リリース情報 『Will♡You♡Marry♡Me?』 発売:2014年11月12日(水) 価格:完全限定生産盤(CD+DVD)¥1,500+税 <CD収録内容> 1.Will♡You♡Marry♡Me? 2.ラブ♡ボクシング 3.Will♡You♡Marry♡Me?(Instrumental) 4.ラブ♡ボクシング(Instrumental) <DVD収録内容> ・「 Will♡You♡Marry♡Me?」Music Video ・「 Will♡You♡Marry♡Me?」Music Video メイキング映像 ・ 京都平安神宮ライブ映像 ・ ハーレム♡フェスタ2014 ライブ映像