suzumoku×平野愛智が語る、震災4年目の表現「自分の曲が、聴いた人の変化のきっかけになれば」

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平野愛智 (左)とsuzumoku(右)。

【 リアルサウンドより】  suzumokuが、2月4日に2ndフルアルバム『Tomorrow Comes』をリリースした。同作はsuzumokuがアコースティックギターをエレキギターに持ち替え、バンド編成をとった初のオリジナルアルバムである。本作には歌詞、サウンドともに、彼自身の心情の変化をダイレクトに反映したような、ストレートな表現が並ぶ。今回リアルサウンドでは、アルバムのリード曲であり、東北大震災についての思いを綴った楽曲「明日が来るぜ」のMVを撮影したカメラマン・平野愛智との対談を実施。かねてより親交があり、被災地である宮城県へ同MVの収録のために2人旅を行ったという彼ら。震災が起こったときに感じたものや、復興が進む現地を訪れて考えたこと、それぞれの表現論などについて、大いに語り合ってもらった。

Tomorrow Comes(明日[あす]が来るぜ)/ Song by suzumoku

「アルバムを作るにあたっては、やはり東日本大震災の経験は大きかった」(suzumoku)

――まずは平野さんが撮影したMV曲「明日が来るぜ」について話をうかがいます。二人で宮城県に赴き、さまざまな場所をめぐった内容ですね。 suzumoku:今回のアルバムを作るにあたっては、やはり東日本大震災の経験は大きかったんです。震災が起こったその時、僕はちょうど初めて仙台にライブをしに行っていたので、楽器もフル装備してるのに、何もできない、そんな自分にもどかしさを感じていました。ただ、そういう状況で、みんなが炊き出しをしたり、自衛隊の人が来たり、何の見返りもなく助け合う人たちの姿を生まれて初めて見て、そこから自分の発する音楽の方向性が変わりました。その時の経験から想いを込めて作った曲の一つが「明日が来るぜ」で、この曲からアルバムのコンセプトが生まれました。とにかく大勢の人に届けたかった、音楽にあまり興味ない方も含めて、そんな気持ちは今までで初めてです。 ――この曲では、「くよくよしていても明日はやってきてしまう」というメッセージが出てきますね。 suzumoku:ぱっと聴いて、ポジティブな言葉に捉える方が多いと思いますが、決してそれだけではないメッセージです。僕は震災が起こってから、南三陸の景色を直に見てはいなかった、ちょっと怖かったのかもしれませんが、この曲を表に出すんだったらちゃんと責任持ちたいと思い、きちんと現場に行ったわけです。始めは、ギターとカメラだけを持って一人で行こうと考えていたんですが、どうも心細くて(笑)、もう一方誘ってしまいました。その方が「蛹」のMVを通して知り合った平野さんです。平野さんも震災直後にいろいろと活動されていたのを伺っていましたので。そして、2014年の12月21日に二人で宮城に行ったんです。 平野愛智(以下、平野):suzumokuさんは、「蛹」でお仕事をご一緒する前から興味があって、ストレートに物事を言うアーティストだなって思っていました。今回の話をもらったときも「じつはまだ津波の現場に行ってない」ということだったので、僕が知っている範囲で、可能な限りいろんな体験をしてもらいたいなと思って撮影に臨みました。 ――平野さんは、震災地の日常を現地の方のカメラを通して伝えた「ROLLS TOHOKU」の活動で注目を集めました。あれから4年近く経ち、改めて震災をモチーフとして撮影したことについてどう思われましたか。 平野:「ROLLS TOHOKU」は、震災直後にしか成立しなかった作業なので、僕が撮るというより、みなさんに撮ってもらうという意味合いが強い活動でした。今回も“僕がやった作品”というふうにはあまり考えていません。みんなが色々なことを忘れてゆくなかで今回の撮影があって、自分を見直すきっかけにもなりました。 suzumoku:初日は石巻の日和山に行って「ここからよくニュースで流れている動画が撮影されたのか」と考えたりしました。一応、撮影という名目だったんですが、実際は震災後から続く自分の中のモヤモヤをひとつひとつ解くための旅だったのかもしれませんね。 ――モヤモヤが解消してゆくなかで、特に印象に残ったのはどういう出来事でしたか。 suzumoku:震災から約4年という月日が流れていることもあって、瓦礫がほとんどなくて、一面ススキだらけになっていました。わずかに道も残っていて、ススキの生え方で「ここに街があったんだな」と。震災前を振り返るというよりは、被災地の現状を見ることができたのが大きかったですね。いままで受けとる一方だった情報を自分の目で見る事ができたので、ひとつずつ確かめられました。 ――最初はどういう風に身構えていたのでしょうか。 suzumoku:最初は、そこにがれきが無くても「津波が確かに来たんだ」と頭で考えていて、地元の人に会っても、どういう表情をしていいか分かりませんでした。でも、「雄勝石(おかついし)」という硯を作っている職人さんが、震災のことについてすごく熱く語ってくれたりして、そこで初めて、良い意味で震災の被害があったのを忘れさせてもらったんです。 ――平野さんは今回の旅に際して、現場のどういう空気を閉じ込めたいと思って撮影しましたか。 平野:初めに決めていたのは、イントロの絵面だけです。あとは何も考えていなくて、ただひたすら現場を体験して回ったり、地元の人に会って話を聞いたりという旅にしようと思っていました。仕事として行っているので、本当はPVを撮らなきゃいけないんですけど、わりとそっちのけでしたね(笑)。suzumokuさんに地元のことを説明したり、彼にいろんな人を引き合わせたりという作業に熱心でした。 ――平野さんはどのくらいぶりに被災地を訪れたんですか? 平野:半年くらいぶりですね。当時に比べると、かなり片付いたな、というのが率直な感想です。ただ、震災2年目くらいで、今回くらいの状況に持ってこれたんじゃないかなと。正直、もう少し早い段階でこうなっても良かったなとは思います。原因はいろいろあると思うのですが、これから若い人が街を作っていかなきゃいけないのに、若者の意見があまり反映されないこともあると思います。計画も二転三転して、せっかく震災後に街に来た人が出て行ったり、調査に来る人も、会うたびに違う人になっていたりで、復興がなかなか進まないんです。 suzumoku:土地をかさ上げするとか、高台を支えるとか、街を再生するために物理的にやるべきことはたくさんあるのに、人の心のソフトな面のぶつかり合いがあって、復興が遅れてるんです。「ああじゃない、こうじゃない」って。 ――そうした現実に対して、クリエイターとしてどう向き合うかということですよね。 平野:僕にはジャーナリズムはどう頑張ってもできないので、だからこそ「ROLLS TOHOKU」のようなリアリズム的な視点での試みをしました。これに関しては、人々に寄り添うというより、情報共有を早くするという意味合いが強かったかもしれません。ただ、表現の受け取り方は本当に人それぞれですよね。サイトの写真を見て、「なんで笑っている人がいるの?」という意見もあったし。大事なのは、僕のサイトでみんなに撮ってもらった写真を見た人が、それぞれに感じるものがあって、実際に何か行動を起こすことなのかなと思います。 suzumoku:「ROLLS TOHOKU」もそうなんですけど、作品自体に力はないんですよ。誰かが表現をして、それを見た人が行動に移すことで世の中が変わっていくのかなと。たとえば、何かのフェスで、「このフェスが日本を変える!」みたいな謳い文句をよく見かけるけど、フェスをやること自体では何も変わらないのかもしれない。来てくれた人が感動して、「こうしたらいいんだ」と思って、持ち帰ることで初めて何かが変わるような気がします。僕自身の創作スタンスも、今までは自分の身に起こったセンセーショナルなことを発信していましたが、「自分の作った曲が、聴いた人の変化のきっかけになればいい」という姿勢になりました。 平野:僕は、あのプロジェクトに対して「情報共有」という感覚が強かったので、こういうふうに受け取ってくれた人がいるのは嬉しいです。歌を歌ってメッセージを伝えられる人が、こうやって受け取って、それをまた別の誰かがキャッチして、実際の行動に繋がっていったら良いですね。 suzumoku:たとえば、僕の1曲がどれだけ日本中を駆けずり回っても、それを聞いた人が動かないと何も変わらないんです。だから、こっちもそういう姿勢で作って届けないといけない。 平野:今回の震災で、自分一人で動いても、やれることは限られると痛感しましたね。よそ者が1人で被災地にのこのこ出向いて、写真を撮ってもいいとは思えなかったし、同じ民族が苦しんでいるのにレンズを向けることにも抵抗があった。なので、よりメッセージ性が高いという意味では、あの方法で良かったのかなと思います。 suzumoku:今回の旅は、何か物事が起こって、それがきっかけになっていろんなことが繋がっていくということを噛み締めることが多かったんですが、それ以上に良い出会いがあって、影響もたくさん受けました。地元の人と会っていろんな話をするうちに、「作って届ける」という意味では、名産品も音楽も写真も全部一緒だなと。南三陸町の阿部民子さんという方(東日本大震災の被災支援基金で立ち上げられた海産物通販サイト『たみこの海パック』の代表)にいろいろとお話を伺う事が出来たんですが、当時の様子を写真も交えて詳しく教えて頂きました。どのニュースにも動画にもなかったリアルな話をご本人に目の前で語って頂いたのは、貴重でした。 平野:民子さんは、当時の写真のファイルを作って、何百人という人達に震災の話をしています。きっと、自分の口で当時の話を伝えることの大切さを実感されているんでしょうね。
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「4日目に同じ場所で撮影したときには、初日と全然違うものが出てきた」(平野)

――今回、撮影を進めていくなかで、平野さんから見たsuzumokuさんの変化というのはありましたか? 平野:歌のシーンは南浜町のススキの生えているところで初日から撮っていたのですが、実際にMVに使われているのは4日目の素材です。初日は何も注文をしないで一発撮りしましたが、suzumokuさんのカメラとの距離感や、メッセージを伝えるうえでの力が少し弱いなという印象を受けたんです。ただ、2日目、3日目とやっていくなかで、緊張がとけ、自分が抱えていた気持ちと現場での体験がちゃんと消化できてきたのか、曲のエネルギーが歌に乗ってきた。4日目に同じ場所で撮影したときには、初日と全然違うものが出てきたんです。メッセージを伝えるには、このくらいの表情の強さや目力がないとやっぱりダメだなと思いましたね。 suzumoku:最初は、全然レンズを見てなかったと思う。どこを見たらいいか分からなかったんです。カメラのレンズを見ればいいのに、なんだかしっくりこなくて。でも、いろんな人と会って経験を重ねていくうちに分かってきた。たとえば、ここでちょっとだけ撮ろうかというときに、いま寄ってきた場所に、視線をがっと向けてみたり。どこ見たらいいのか、視線がだんだん定まっていったというのはありますね。 平野:これは聞けてよかったですね(笑) suzumoku:民子さんのところに行った後に、近くの堤防に寄ったんですけど、そこで民子さんの作業場が見えたから、オレの声が聞こえるんじゃないかなと思って、ずっと作業場に向かって歌ってたんです。「明日が来るぜ」という曲を、その時々でどこに向けて飛ばすべきなのかというのがようやく分かってきたのかなと。 平野:その日の午前中も撮りながら「もう少し表情に出ればいいな」とは思っていました。suzumokuさんは、地元の人達の手伝いも恐縮してやっているように見えたんですよ。向こうの人たちって話してみればすごく良い人たちなんですけど、無口でぐいぐいやる人が多くて(笑)。でも、午後に民子さんのところに行った後、堤防の辺りからsuzumokuさんが良い顔になってきた。変化したポイントはそこらへんかもしれないですね。民子さんに震災の話を直接聞いてから、いろいろ消化できたのかなと思います。 suzumoku:震災の具体的な被害を語ってもらったのは、民子さんのところが最初だった気がします。それまでも色々な人と出会って話を聞いていたけど、あの日に民子さんの話を聞いて、「みんな大変だったんだ」とこれまでの話がつながった。 ――撮影を通して、改めてこの曲に対して生まれた思いはありますか? suzumoku:みんな、なるべく他人に迷惑を掛けずに生きたいけど、それは不可能だと思うんです。明日はどうなるかはわからない、また自然災害が突然来るかもしれない。それは誰にも恨めない。だったら、やるべきことをやる。どうなるかわからない明日のために、なるべく今日という日をベターに進めていく。そういう意味で、ちゃんと明日になる、明るい日になるという思いを込めました。どれだけ数字的には景気がよくなっても、人の心がバラバラだったら、景気が良いとかハッピーとは思えない。いま、世の中がそういうことを考える時期に来てるんじゃないかなと思います。
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「身を持って知ったからこそ、言えることもある」(平野)

――そういった思いを表現するためにも、バンドサウンドや強いギターの音が必要だったと? suzumoku:そうですね。じつは、バンド編成の時に、エレキギターを持つようになって、自分の出せる声の限界値が高くなったんです。今まで、自分の鳴らすギターの音にすごく感化されてきたんだなと思って。アコースティックギターって、どうしても思いっきり鳴らすのがマックスですよね。でも、エレキギターはそこから音をひずませたり、音量をがっと上げたりできる。こっちのほうが、純粋に自分の声を伝ようという意志が強くなる気がしたんです。そういうことも含めて、今回の「明日が来るぜ」にはバンドサウンドが必要でした。 ――PVを撮るにあたって、音楽の在り方や音の持っている力、リズム感といったものはすごく大事だったと思うんです。 suzumoku:うーん…。作り手としては、ここのフレーズはこういうコードで、イントロはこういうかんじで、といろいろ意図してやっているので、じつは自分では、だんだんとよくわからなくなっていくんですよね(笑) 平野:今までは、震災を絡めることで、ストレートに強い言葉があって対象がしっかりしていたというか、むしろキツいくらいだった。そのうえで「明日が来るぜ」の歌詞を歌ったらすごく良くなるんだろうなと思っていました。もともと良い曲なんですけど、本人が体験していないから、すごくもったいないと思ったんです。体験せずに歌うと「ろくに知らないのに」ってなってしまうので。今回の企画に対しても、身を持って知ったからこそ、言えることもあるし、伝えるためのパワーがより強くなるだろうと思っていました。 ――いろんな解釈ができる歌詞ですよね。たとえば、東京で暮らしている人の歌ともとれるし。 suzumoku:曲自体は、宮城に行くまでに出来上がっていたものなので、そう捉えるのも間違いではないですね。ただ、現地に赴いたことで、歌っているときにいろいろな映像を浮かべることができるので、曲を聴いてくれる人に対して、メッセージとしてかなり強くなったのかなと。
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――今回のアルバムでsuzumokuさんに起こった音楽面の変化は、ポップミュージックの歴史でいうと、フォークシンガーだったボブ・ディランがある時期からエレキに持ち替えたとか、フォークグループだったRCサクセションが70年代後半からバンド編成になってローリング・ストーンズのようになってゆくとか、そういった変化を彷彿とさせます。 suzumoku:決定的な変化のきっかけは、それこそ震災だったと思うんですけど、ステージ上での具体的な変化は、震災後に沖縄に行って弾き語りでレコーディングしようと思ったときですね。スタジオに、良いエレキギターが何本もあったんです。なんとなくそれで弾き語りしてたら、スタッフと「これ、合うね」という話になったので、アルバム自体もエレキの弾き語りアルバムになっちゃったんです(笑)。そこから自分専用のエレキを買って、バンドとしてステージに立ったら、今までにないくらい吹っ切れた声が自然と出たんです。アコギで歌っていて「ちょっと恥ずかしいな」と思ったワ―ドでも、この勢いならズドンと自信を持って出せるという心境の変化もありました。 ――以前は、シャープで研ぎすまされた世界という印象がありましたが、バンドで歌うことによっていい意味で無防備というか、開かれた印象を感じました。 suzumoku:いままでは、刀の鞘を「抜くぞ、抜くぞ」と言ってるだけだったのが、今回はちゃんと抜いて持っているというか。「いざ!」という気持ちにやっとなってきたんでしょうね(笑)。 平野:そうですね。一歩前に出てきたという印象があるかも。これまでは曲を聞くと、立ち位置というか、自分が居る場所を連想させられていたんですけど、今回はもっと広いところに出てきたように感じますね。 suzumoku:周りには「自分だけ分かっていればいいや」というふうに見えるんじゃないかと、ふと思って、これじゃダメだなと考えました。自分のなかで相手に「こうなって欲しい」ってどれだけ思っていても、それじゃ変わらないと思ったんです。やっと自分の部屋から出てきたというか…出るまでに時間が掛かりましたけど(笑)。
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「部屋から出っ放しだと、自分のルーツに戻れなくなってしまう」(suzumoku)

――でも、時間が掛かった分、迫力がありますよね。 suzumoku :部屋から出っ放しだと、自分のルーツに戻れなくなってしまうでしょうから、またときどき「蛹」になるかもしれません(笑)。でも、もしなったとしても、出てくるのが蛾じゃなくて、蝶であるくらいの蛹でいたいですね(笑)。今まで、どうしても自分で作ったものを振り返る癖がついてたんです。たとえば、「蛹」みたいな曲をまた書きたいなとか。でも、それじゃダメだなと。あくまで「蛹」は「蛹」であって、同じような感覚で書こうと思ったら、今新しく感じてることを入れて前進させなきゃいけないなと。『Tomorrow Comes』はそういう意味で、やっと軸がブレずに自分のやりたいことができたのかなと思います。宮城にはこれから定期的に行きたいですね。逆に元気をもらったので、その分はちゃんとお返ししたい。 平野:本当に、suzumokuさんが言うように、僕も毎回元気をもらうというか、人間らしさに触れて色々なものをもらって帰ってきます。最初に宮城に行って東京に戻ってきたときは「この平和ボケした人達はなんなんだ」と思って、ヘンに卑屈になったりしていたんですけど、向こうに行って地元の人たちとやりとりしていると、純粋に何かしたいと思えるんです。言葉ひとつとっても、そういう気持ちが出てくるとういうか。自分のなかでは、この4年間がそういう体験の積み重ねだったので、suzumokuさんも同じように感じてくれて嬉しいなと思います。 suzumoku:いろんな人に対して、自分の目でちゃんと真実を見て欲しいという気持ちにはなりましたね。今までテレビとかネットとか、いろんな情報のフィルターを通してしかわからなかったことが、ちゃんと自分の目で見て、触れて、話して、アクションして、ようやくそこで知識になるんだなと感じました。 平野:見るまではただの情報でしかないんだよね。でも、体験すると、そこで初めて自信を持って「僕はこう思ってる」と言い切ることができる。今後必要なのはまさにそれだと思います。宮城は、まだ何も整っていないとは言いましたけど、もともと景色がきれいなところですし、ただ行くだけでもフレッシュな気持ちにさせられるから、いま持っている潜在意識は取っ払って、「ゴールデンウィークにでも遊びに行こうかな」って、本当に行っちゃったほうが早いです。 suzumoku:不謹慎だからってためらう人もいるかもしれないけど、そういう気持ちを取っ払ったっていいはずなんです。僕も最初は、真面目な気持ちで行かなきゃと思ってたんです。実際に行ってみて、「この海が牙を剥いたのか」と思う気持ちもたしかにある。でも、それ以上に、素晴らしい景色だし、海の幸もすごく美味しいんですよ。だから、意識はしてしまうかもしれないけど、実際に行ってみる、会ってみる、話してみるってすごく大事なんだなと改めて思いました。

A Footprint (足跡)/ song by suzumoku(スズモク)

――ほかにも、「足跡」のMVも今回の旅で撮影したんですよね。 suzumoku:このMVの撮影場所は『さんさん館』という宿泊施設で、震災以前に廃校となった小学校の校庭なんですけど、偶然にも撮影日に雪がまんべんなく降り積もったんです。平野さんの閃きで撮って頂きました。 平野:久しぶりに、校長先生が立つ朝礼台に乗りました(笑)。ほぼ1対1の撮影でしたね。日が差し込む前、朝7時前くらいに撮ったんです。 suzumoku:「明日が来るぜ」と同じ格好じゃということで、なんとなく持ってきた服をそれだけ羽織って出てみたら寒くて(笑)。それ以上に風もすごくて。この「足跡」という曲には、1人でやってくんじゃなくて、自分が歩んできた道のりと大事な人の歩んできた道をお互いに見つめ合いながらやっていこうという意味を込めています。今回、1人で行っていたらできなかったことが、愛智さんと一緒に行って、地元の人に会って話をすることで、いろんなものを得ることができたんで、最初は1人でも、どんどん繋がってできた縁は大切にしていきたいですね。 (取材・文=編集部/写真=竹内洋平)
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suzumoku『Tomorrow Comes』(WORLD APART)

■リリース情報 『Tomorrow Comes』 発売:2015年2月4日(水) 価格:¥2,800(tax out) ※限定紙ジャケット仕様 <収録内容> 01.ロックの性能 feat.MONSTER大陸 02.臨界ジェネレーション feat.航 03.明日が来るぜ 04.カタパルト 05.零ドライブ 06.サヨナラ日常 07.泥雲 08.メイデイメディック 09.悔しさのスリーカウント 10.グライダー 11.足跡 12. 月影のラヴソング feat.MONSTER大陸 iTunes store にてアルバム配信中 ■ライブ情報 『suzumoku album release ONE-MAN live “daybreak”-SOLO STYLE- (引き語りワンマン)』 2月14日(土)大阪:digmeout ART & DINER 2月27日(金)岡山:CAFE QINEMA 2月28日(土)静岡:LIVE HOUSE UHU 『“daybreak”-BAND STYLE- (バンドスタイルワンマン)』 4月14日(火)東京:Star lounge 4月22日(水)名古屋:APOLLO BASE 4月23日(木)大阪:南堀江knave 詳細はオフィシャルHPまで

シェネルの歌は人を幸せにする? “ラブソング・プリンセス”が支持を広げる理由

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【リアルサウンドより】  実力派R&Bシンガーとして幅広い支持を集めるシェネルが、自身5枚目となるオリジナルアルバムをリリースする。タイトルはズバリ『シェネル・ワールド』。ドラマ『ディア・シスター』の主題歌として話題になり、60万ダウンロードを突破した「Happiness」のほか、Crystal Kayや青山テルマをゲストに迎えた「All My Ladies」といったバラエティ豊かな楽曲が全13曲収録されている。  シェネルというアーティストについて語る際、外せないのがラブソング。それは彼女の歌う楽曲のほとんどがラブソングで占められていることももちろん、その曲たちに多くの女性が共感し、涙し、また励まされているという事実があるから。「ベイビー・アイラブユー」の英語ヴァージョンや「ビリーヴ」は、今や結婚式の定番ソングとなっているし、カラオケの勝負曲にしているとの声も多い。そういった背景から、しばしば彼女は“恋する女性に最も支持されている女性アーティスト”や“ラブソング・プリンセス”といった異名で語られる。  ではなぜ、彼女の歌うラブソングがこれほどまでに支持されるのか。  シェネルのデビューは2007年。シングル『ラブ・ウィズ・DJ』でいきなりの世界デビューだった。中国人の父とインド/オランダのハーフの母と、家族構成も実に多国籍。一昨年に結婚後、現在はロサンゼルスと日本を往復しながら活動を続けている。そんな彼女が本格的にJ-POP界に進出したのは、前述の「ベイビー・アイラブユー」に代表されるカバー・アルバム『ラブ・ソングス』をリリースしてから。久保田利伸からホイットニー・ヒューストンまでを歌いこなすその表現力は、音楽業界をはじめ各所で話題となった。  ハスキーで力強い独特の歌声は、彼女の一番の武器。その声で歌われる古今東西のラブソングの名曲は、原曲とはまた違った輝きを見せ、聴く者を魅了する。しかし、それでもなお彼女の本領が発揮されるのはオリジナル楽曲だとあえて言いたい。  本コラムを書くにあたり、改めて彼女の楽曲を聞き直していて気付いたことがひとつある。それは、失恋の曲の少なさ。J-POP(特にバラード曲)では、切なさを醸し出そうとするあまり、どうしても歌詞の面で別れや過去の幸せだった日々に焦点をあてがちになる。しかし彼女はそうしない。≪世界中で一番 キミのことが 大切なの 大好きすぎて 上手く言えないけど キミがいる それだけでいい≫(「Happiness」)≪アイシテル、アイシテル、アイシテル Forever アイシテル、アイシテル、君のことを どれだけ時がたっても≫(「アイシテル」)など、とにかく驚くほど失恋や悲恋の曲が少ないのだ。  そこには彼女の「歌いたいものを歌う」という信念がある。外国人である彼女にとって、日本語はとても厄介な言語だ。それでもなお、楽曲に合わない日本語詞は直感で感じとり、気が済むまで直すのだという。しかし、そうやって生まれた楽曲だからこそ、込められたメッセージは何倍もの力を持つ。身の内から湧き出る愛しい気持ち、または愛するパートナーとの希望あふれる未来。そういったものに目を向けた前向きなパワーは自然に聴き手の心をも多幸感で満たしてくれる。聴き手を幸せにする歌。それこそが、シェネルの歌の最大の魅力だと言えよう。  新作アルバムの『シェネル・ワールド』というタイトルには「アーティストとして自分が大好きな音楽の世界をみんなと共有したい」という想いが込められているという。自身が今持てるものを全て詰め込み、決意も新たに挑んだ本作。きっとこれまで以上に多くの人の心に触れるものとなるはずだ。 (文=板橋不死子)
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シェネル『シェネル・ワールド(通常盤)』(ユニバーサル ミュージック)

■リリース情報 『シェネル・ワールド』 発売:2月11日(水) ・通常盤:UICV-1046 スペシャル・プライス ¥1,980(税抜) ・初回限定盤【2CD】:UICV-9097/7 スペシャル・プライス ¥2,980(税抜) ※シェネルの人気曲ばかりを収録したノンストップ・ミックスCD付 〈収録曲〉 01 Happiness *フジテレビ系ドラマ「ディア・シスター」主題歌 02 Forever Friends 03 君に贈る歌 ~Song For You 04 Eternal Love 05 Life Is Good feat. SWEEP 06 Change Your World 07 Love Is Louder 08 All My Ladies feat. Crystal Kay & Thelma Aoyama 09 Fierce 10 Die For You 11 Can't Be Without You 12 Happiness feat. 松下奈緒 *松下奈緒をピアニストに迎えたスペシャル・ヴァージョン 13 Always Love U *大阪城3Dマッピング スーパーイルミネーションCMソング
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シェネル『シェネル・ワールド(初回限定盤)』(ユニバーサル ミュージック)

初回限定盤のみに付くDISC-2(ノンストップ・ミックスCD)の内容 01 Fall In Love 02 I Will 03 Burning Love 04 Happening Again 05 Story 06 Happiness 07 アイシテル 08 Baby I Love U 09 ずっと 10 Touch (Close To You) 11シャナナ☆ 12 Sunshine On U 13 Believe ■「Happiness feat. 松下奈緒」 https://www.youtube.com/watch?v=WhIpT_g64RE ■公式HP http://www.universal-music.co.jp/chenelle

back numberはなぜ失恋を歌い続けるのか 情景描写を駆使した詞世界を読む

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左から、Ba.Cho.小島 和也、Vo.Gu.清水 依与吏、Dr.栗原 寿。

【リアルサウンドより】 〈雪が綺麗と笑うのは君がいい/でも寒いねって嬉しそうなのも/転びそうになって掴んだ手のその先で〉  女優・広瀬すずが白銀のゲレンデで、恋の予感がする甘酸っぱい青春の一コマを演じる「JR SKISKI」のCMに、ハッとするような美しいメロディと、シンプルながら印象深い歌詞で彩りを添えるのが、back numberの新曲「ヒロイン」だ。  2人の男友達を同時に意識してしまった広瀬すずの「運命の赤い糸が2本あったら、どうすればいいんだろう?」というナレーションに対し、back numberの歌詞は男性目線での心象風景を歌っていて、登場人物たちの心が交差する様を鮮やかに描き出している。同CMのシチュエーションや、その瑞々しい言葉に心惹かれるリスナーは少なくないだろう。  本稿では、現在人気急上昇中のback numberの“歌詞”に注目し、なぜ彼らが人々に支持されるのかを探ってみたい。

“片思い”楽曲における、具体的な場面設定

 back numberの曲の多くは“恋愛”をテーマとしていて、その心象風景をおもに一人称で丁寧に描いているのが特徴だ。また、多くの場合は恋の楽しさや喜びを歌うのではなく、片思いや失恋など、叶わぬ思いを等身大の歌詞で綴っている楽曲が多い。  たとえば、片思いを描いた前出の「ヒロイン」では、以下のようなフレーズが耳に残る。 〈君の毎日に僕は似合わないかな/白い空から雪が落ちた/ 別にいいさと吐き出したため息が/少し残って寂しそうに消えた〉  思いを寄せる相手への素直な感情を、冬の情景とともに描くことで、より切なさを際立たせているのが印象的だ。また、同じく片思いを描いた「高嶺の花子さん」という楽曲では、そうした切なさをユーモアとともに描くことに成功している。 〈君の恋人になる人は/モデルみたいな人なんだろう/ そいつはきっと君よりも年上で/焼けた肌がよく似合う/洋楽好きな人だ〉  「高嶺の花子さん」は「ヒロイン」とは対照的に、夏の片思いを描いている作品で、ユニークな表現が際立っている。一方、「恋」という楽曲では、次の一節がback numberの歌詞の特徴を端的に表しているといえそうだ。 〈ぼんやりと君を眺めていたんだ/校舎の窓から/やっぱりかわいいなって/ 友達と笑い合う君の姿に/見とれる事ももうできなくなっちゃうな〉  上記は楽曲の冒頭の一節で、ここを読むだけで学生生活の終わりが間近で、ずっと片思いをしてきた相手のことを歌っているということが聞き手に伝わる。back numberの歌詞は、上記の3曲からもわかるように、一曲ごとの場面設定がしっかりとしていて、歌詞を追うと背景のストーリーが立ち上がってくるような作りになっているのだ。  2000年代以降の日本のロックシーンでは、ご存知のように、一人称で心象風景を描くバンドが主流となってきた。back numberもまた、そうした流れを受け継ぐバンドだといえるだろう。ただし、多くのバンドが歌詞において、抽象的な言葉を重ねることでリスナーに行間の意味を想像させる手法をとるのに対し、back numberはより具体性の高い情景描写を行い、まるで映画や短編小説のように、映像的に一つの世界を描いているのが特徴的だ。  こうした情景描写を追求した歌詞は、阿久悠から松本隆にいたる1980年代以前の歌謡曲やニューミュージックの詞世界に通じるものがある。また、その登場人物がときに情けなかったり、かっこ悪かったりするのも独特で、そうした部分も素直に、しかし執拗にならない程度の絶妙なさじ加減で描いているからこそ、多くの人々の共感を呼んでいるのではないだろうか。

失恋を描いた楽曲群に見られる繊細な心理描写

 back numberにとって“片思い”と同じくらい重要なモチーフが“失恋”だ。興味深いのが「幸せ」という楽曲で、女性の視点から描いた歌詞となっている。 〈私が聞きたかったのは/終電の時間でも好きな人の悪口でもなくて/ せめて今日のために切った髪に気付いて/似合ってるよって言ってほしかった〉  思いを寄せる相手に恋人がいることがわかっていながら、それでもなお恋心を抱いてしまう女性の繊細な心に寄り添った歌詞で、こうした機微を描けるのはボーカル・清水依与吏の強みと言えるだろう。また、たとえ失恋を歌っていても、それをただ悲しいだけの出来事として捉えるのではなく、肯定的に描いているのも特徴だ。「思い出せなくなるその日まで」では、次のような一節にそれが表れているといえよう。 〈たとえばあなたといた日々を/記憶のすべてを消し去る事ができたとして/ もうそれは私ではないと思う/幸せひとつを分け合っていたのだから〉  失恋の悲しみもまた、大切な感情として受け止めているのがわかる歌詞で、そこにはback numberの楽曲すべてに通底している美意識が感じられるだろう。「チェックのワンピース」では、失恋を経てなお前向きであろうとする姿勢が、より具体的な言葉で綴られている。 〈これからチェックのワンピースを/どこかで見つける度に/あぁ君を思い出すのかな/嫌だな 嫌だな/それでもいつかまた出会えたら/僕ならもう大丈夫だと言えるように/君のいない明日を光らせよう〉  こうしてback numberの失恋ソングを読むと、情景の描写などにとどめて余韻をもたらす歌詞というより、具体的な心理描写にまで踏み込んでいて、曲中で描かれるストーリーを完結させるような歌詞となっていることもわかる。また、楽曲そのものもドラマチックな展開となっていて、昨今のバンドでは珍しいほどストーリー性を持った作りとなっている。そうした曲の展開に合わせた歌詞は、ともすればエモーショナルになりすぎる傾向もあるが、back numberの場合はメロディラインの秀逸さで、それを自然なポップスとして聴かせることができている。そのバランス感覚も、優れた一面といえそうだ。  恋にまつわる切なさや悲しみを、等身大の言葉で具体的に綴り、人々の共感を呼ぶ作品を生み出し続けているback number。そのストーリー性が高い歌詞世界は、抽象的な表現がスタンダードとなっている昨今のJ-POPシーンだからこそ、人々に支持されているのかもしれない。 (文=編集部) ■リリース情報 『ヒロイン』 発売:2015 年1 月21 日(水) 初回限定盤(CD+DVD):¥1,500(税抜) DVD「ヒロイン」MV、love stories tour 2014~横浜ラブストーリー2~ダイジェストを収録 通常盤(CD):¥1,000(税抜) 2015年春のライブハウスツアー「アーバンライブツアー2015」チケット先行シリアルナンバー封入 〈収録曲〉 1. ヒロイン 2.アーバンライフ 3.アップルパイ +各曲のinstrumental 収録 back number公式サイト

ななみが貫こうとする“自分らしさ”とは?「『こういう系』って思われたくない」

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【リアルサウンドより】  ポップなメロディと、聴く者の気持ちをポジティヴに後押ししてくれる歌が魅力の曲である。昨年秋、愛情に対しての奥深い感情を綴ったバラードの『愛が叫んでる』で鮮烈なデビューを飾ったななみの2枚目のシングル『I’ll wake up』。今回は一転してロックなアレンジをまとったアップテンポのナンバーで、ギタリストのakkin(ONE OK ROCK、阿部真央といったアーティストのアレンジャーとしても活躍)によるサウンド・プロデュースが大きな効果を上げている。その音に乗って、ななみは、迷いや不安を吹っ切るように唄っているのだ。  今回は彼女の現在形に迫るために、この新曲のことに加え、メジャーデビューから数ヵ月が経過した今の状況をどう捉えているかを中心に話を聞いた。ななみは物腰の柔らかい女の子で、こちらが投げかける質問に対してもニュートラルに、自然体で応えてくれる。ただ、その内面ではさまざまな思いやパッションがつねに渦を巻いているようで、言葉のひとつひとつにも強い意志や決して浅くない思考が潜んでいる。「I’ll wake up」も、単なる応援ソングなんかではなく、苦悩や挫折といったギリギリの淵からの叫びなのだ。

「ひとりで世界を変えるんじゃないんだな」

――去年の10月にデビューして、それまでに思ってたことと、実際にデビューしてみて感じたことを比較してみてもらいたいんですけど。いかがですか? ななみ:いやぁ~……この話、マイナスになるかもしれないんですけど、私、デビューしたら世界が変わると思ってたんですよ。ほんとに「デビューしたら世界を変えてやる!」と思ってたんです。自分的には「メジャーデビューすればいろんなことができる」と思ってたので……。でも実際にデビューしたあとも、何も変わらないというか。もちろん取り巻く環境とかは変わりますけど、でも音楽をするっていうことは、14歳で始めた時と何ひとつ変わらないんだなということに気付いたんです。 ――そういう実感を得たんですね。補足しておくと、ななみさんの言う「世界を変える」は、自分の歌によって、聴いてくれる人たちそれぞれの生きている世界の見え方や生き方を変えていく、ということなんですよね。 ななみ:そうですね。それは形じゃないんだ、って思いました。でもデビュー前と何かひとつ違うことがあると言ったら、ひとりじゃないっていうことですね。それは自分にとって今、すごく強いものですね。 ――その、ひとりじゃないと感じるのは、どんなことでですか? ななみ:ファンだったり、あとはスタッフの方々だったり、やっぱり普通のななみちゃんとして生きていってたら絶対出会えなかった人たちに音楽を通して出会えているので。だから(そういう人たちとの関係は)もうホームのような感じがしたりするし(笑)。それほど音楽での家族がどんどん増えていってるような気がします。それが14歳の頃とは大きく違うなと思って。ひとりで世界を変えるんじゃないんだな、ということに気づきました。 ――そうですか。ただ、10月の東京でのワンマンライヴでは感極まってましたよね? 「デビューにあたって不安な気持ちもあった」と言って。 ななみ:それは……ただ単に不安だったんですね。べつに何が不安とかいうわけでもなくて、たぶん、全然乗り越えられるような不安だと思いますし、だからたぶん、ああやって言ったんだと思います。ただ単に、目に見えないものが押し寄せてくる不安だったりとか……。 ――将来的なものとか? ななみ:そうですね。でも「音楽をやっていけるか」とか、そんな不安はまったくなくて。別にデビューしなくても、音楽は絶対に一生やっていこうと思っていたので、それは変わらないんですけど。ただ、「自分を忘れないか」とか、世に言う「大人に揉まれて」とか「世の中に揉まれて」「大人の事情で」とか、そういうことに自分が負けないか、不安でしたね。 ――そういう不安感なんですね。でも今はひとりじゃないと思えていると? ななみ:うん。いま思うと「全然、不安に思うようなことじゃないよ」っていう感じなんですけど。今でもやっぱり、どんどん進めば進むほど次の悩みが出てくるけど、あの頃の自分が思ってた悩みは、今思うと、すごくかわいいもんだったなと思う。 ――ファンや聴いてくれた人の反応で、とくに心に残ってるものはどんなものがありますか? ななみ:ツイッターのダイレクトメッセージを飛ばしてくれた子がいたんですよ。あたかも、そのメッセージを送るためにアカウントを作ってくれたのがわかるぐらいの。で、すごいストレートに「ななみさんの歌のおかげで不登校を抜け出せました。ありがとうございました」って来たんです。それって自分がやりたかったことの、すごく目に見える結果じゃないですか? だから「ああ、うれしいな」と思って。「私の歌で悩んでる気持ちにちょっと寄り添えたらな」とか「その子の心のクッションになれたらいいな」と思ってたものの、その子がそこをほんとに抜け出せるようなきっかけになって、そんな力を与えられたのが、うれしくて……。それが一番残ってますね、私は。 ――それは心に残りますね、たしかに。 ななみ:で、その子、メッセージを送ってきたら、もうそのアカウント消しちゃったんですよ。それがただ伝えたかったんだろうなと思って、うれしかったです。全部(の反響が)うれしいですけど、一番うれしかった。昔の自分みたいで。私は不登校を抜け出せなかったけど(笑)。あの頃自分が抜け出せられなかったことが、今こうして音楽をしてることによって、同じキズを抱えた人が前に進めたのは、世界を変えれてる気がして、うれしいですね。

「今度は誰かに(愛を)あげれるようになった自分の成長を見てほしかった」

――では曲について訊きます。「I’ll wake up」は一昨年、ヤマハの全国大会でグランプリを獲ったあとの曲作り中にできたそうですが、その頃はどんな気持ちで曲を作っていたんですか? ななみ:その頃はグランプリを獲って、地元の大分でも「わー、すごーい!」「もうデビューまっしぐらやー!」って持ち上げられてたんですよ。でも1ヵ月2ヵ月すると、シーン……もう時代は去った、みたいな感じになって。音楽で結果を残したのもワーッてお祝いされるのも人生で初めてだったので、人が去っていくのも初めて見ちゃったんですよ。でも「いやいや、絶対音楽をしていきたいし!」という気持ちはずーっと昔からあったので、1ヵ月に何10曲もバーッと録って……今の事務所にがむしゃらに、とにかく曲を作っている、イコール、やる気がある、っていうのを伝えたくて、もう、ひたすら送ってました。「良くない」と言われて、泣いたりもしてたんですけど。 ――その頃どんなふうに曲を作ってました? たとえば「バラードを作ってみよう」とか「ポップなものを」とか考えながらでした? ななみ:いや、テーマはないです。「できた曲がポップだったら歌詞もポップにしようか」とか、音を主役に、そこから見える言葉に色を着けていくので。メロディが自分の中で一番大切ですね。たとえば悲しかったり、恋してルンルンだったり、そういう時にできると思うんですけど。この「I’ll wake up」の時は、ほんとにそのまま、もう前に進みたいっていう気持ちがすごくあったんだろうなと思います。もう「しゅらしんけん」というか……あ、大分弁で「一生懸命」ってことなんですけど(笑)、一生懸命やってたんです。 ――この曲は書いた当時と変わってます? ななみ:歌詞は何回か作り変えてますね。最初、サビの頭とかは<I’ll wake now>っていう歌詞だったんですよ。でもやっぱり「もうちょっと前に進むような言葉にしようか」と思って。「リズムがある曲なので、意味も含めて、できるだけ耳に残る歌詞にしよう」というのはありましたね。 ――たしかに、前に進みたいという心境がすごく表れてますね。 ななみ:うん、そうですね。自分、すごい不器用なんですよ。不器用だから、「愛が叫んでる」の時は、もうただ単に<愛が欲しい>って自分が求めてる状態だった。だけど今度は誰かにあげれるようになった自分の成長を見てほしかった。それに「愛が叫んでる」で私が救うことができた人がいるのなら、その人たちがまた誰かに何かを返していくようになってほしいというか。そのストーリーを、聴く人にも、唄う私も付けたかったんですね。なのでこの曲は、すごい不器用だけど、とりあえず力加減なしで背中をドン!と押したいな、と思って作りました。 ――それだからこそだと思うんですが、この曲では弱い自分もさらけ出してますね。現実から逃げてしまう姿や、夢を失いそうになる描写がされていて。 ななみ:うん、そうですね。やっぱり過去があって今がある、みたいな感じの曲が私には多いので。イヤな部分も……白と黒をしっかり出すというのは意識しています。「愛が叫んでる」もそうですけど。 ――このあたりの表現は、いつ頃の自分を指してるんですか? ななみ:いや、常にじゃないですかね。今はもちろんみなさんが応援してくれてるかぎり、逃げることも隠れることもしないんですけど。でもやっぱり人間だから、迷うことはあるので。それは常に、ですね。逆に、悩みがなくなったら、たぶん前に進めなくなっちゃうので、これからも積極的に悩みたいなと思います(笑)。 ――なるほどね。ただ、2年前に書いた時には、先ほどの話だと、自分を高めていかないといけないという焦りがあったようですね。 ななみ:そうですね。私、14歳の頃からオーディションで「14歳のななみです、よろしくお願いします」と挨拶してたんですよ。それが「15歳です」「16歳です」とずっと言い続けてたので、だんだん自分が歳をとっていくのが、すごくイヤで。「わっ、14歳!?」だったのが、「ああ、18? それぐらいね」みたいな感じに言われるようになっちゃったりしたので、それに負けない自分を見つけることに焦ってたのはありましたね。でも音楽は絶対にやめれないというか……私自身が音楽!みたいな人間なので、やめるとしたら死ぬ時ぐらいだな、とは思ってました。焦るというよりは、音楽でご飯が食べれるか食べれないか、それだけでしたね。ただ、もうハタチになる、仕事に就くか?とかいう時期で、そのMusic Revolutionがもう最後と思って受けたオーディションだったので、やっとグランプリ獲れたから、これはちゃんとやっていかないとな、って思ってましたね。

「ギター女子にはなりたくないですね(笑)」

――ななみさんの音楽の下地は中学時代の引きこもり期間中にYouTube検索で養われたそうですね。その時期、それだけのめり込んで音楽関係の動画を観てたんですか? ななみ:そうですね、やることがなかったので、一日一日が(笑)。ほんとネットの中で友達を見つけたり、Youtubeでいろいろ見たり。学校に行ってるより、断然楽しかったです。ひとりでも。 ――オフィシャルの動画番組の「きつねとななみ」ではカバー曲を唄ってますが、選曲が面白いですよね。ああいう音楽もさっきの時期に接したものなのかな?と思ったんですけど。 ななみ:ああー、そうですね。「天城越え」(石川さゆり)とか、あんまりこの世代では、ね? でも演歌だからとか関係なく、「いい曲だな」っていうのがあったので。「勝手にしやがれ」(沢田研二)とか、ほんといい曲だなと思うし、「そういう時代はどんな作り方してるんだろう?」とか、今でも勉強のために振り返る時はあるし。「きつねとななみ」ではほんとに好きなものをやってるっていう感じですね。「ラブ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲)とか。 ――ほかに「残酷な天使のテーゼ」や「となりのトトロ」などのアニソンや、初音ミクの「ワールドイズマイン」も唄ってますけど、さっきのような70~80年代のヒット曲が多いのが興味深く感じたんですよ。 ななみ:へえー! 昔の曲のほうがいい曲ですから(笑)。今って、歴史に残るような曲って、そんなにないじゃないですか? あったにしても、たぶん昔の曲たちに勝てないと思うんですよ。私たちの世代は次から次へと新しいものが流行るから、どんなにいい曲でも、次から次へとポイしちゃうんですよね。でも私たちのお母さんお父さんの世代は1曲に対してすごい愛を持ってたと思うから、CDをちゃんと買ってたと思う。だからこんなに受け継がれてるんだろうなと思いますよね。 ――そうですね、今のあなたぐらいの年齢はダウンロードが当たり前になってた世代だから、容量がいっぱいになるとその曲を消しちゃってたわけですよね。 ななみ:そうですね。ただ、私たちはそれが当たり前だから、それを非常識と言われても、わからない。だけど「自分はそのどちらにもちゃんと折り合いをつけて曲を作らないとな」というのもあります。CDを買うのは、心構えが全然違うと思うんですよね。真剣に音楽と向き合うことになるというか。私もほんとに自分がファンの方のCDは買ってましたけど、それが店頭に並ぶことはこんなにうれしいことなんだと、大切な宝物なんだなと思いました。 ――そうですか。では違う観点からの質問ですけど、デビューしてから「期待の新人」とか「ギター女子」という言われ方をされることはどう感じてます? ななみ:いや~、ギター女子にはなりたくないですね(笑)。私はたまたまギターで曲を作ってるだけだし、たまたま弾き語りでひとりで全国廻ったりしてたからで……今でも大っ嫌いです、ギター。歌に集中したい気持ちがあるし。でも大っ嫌いすぎて、もうすごい相棒になってる。ギターから教えてもらったことはすごくいっぱいあったし、何やかんや、こいつがないと曲作れないんですね。それに「ギター女子」っていう、その時代になっちゃったら、もう歴史になっちゃうじゃないですか。古くもなるし、新しくもなる。でも自分はそうなりたくないので、一緒にしないでほしいというのはありますね。だけど出会う方みんな「ギター女子じゃないよね」「あなたは違うよね」って言ってくれるから、うれしいですね。 ――そうですね。ななみさんは、さっきのオーディション後にギターで弾き語りをするようになった人だから、もともとを思うと、ちょっと違うんですよね。 ななみ:そうですね。でも「私の人生、他人とかぶることはないだろうな」と思ってるので……経験してきたことが違うから。そこは人間ひとりひとり違うので、自信持ってますけどね。 ――じゃあ最後に「こんなアーティストでありたい」「こんな曲を作っていきたい」とかは、何かありますか? ななみ:うーん……「愛が叫んでる」が出た時に<バラード系女子なのかな>みたいに言われたことがあったんですよ。でも今回の2ndシングルは全然違うアップテンポの曲なので、<ななみってこういう歌を唄うんだ?>とツイートで書きこまれたりしたんです。自分はどんな曲でも、何でも書きたいんですよ。アイドルじゃないけどアイドルっぽい曲も書きたいし、アニソンも書きたいし、演歌だって書きたいし……やりたいことがいっぱいあるので「こういう系」って思われたくないです。だから<これはこうだから>ということにあまりとらわれず、その時(自分から)出たことをやっていきたいと思うし。でも誰かのきっかけになれたらいいなとも思うし、「世界を変えたい」という夢もあるので、そこはブレずにやっていきたいですね。ウソつかず、自分らしく、自分のままで唄っていこうと思ってます。 (取材・文=青木 優)
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ななみ『I’ll wake up』(e-stretch RECORDS/日本クラウン)

■リリース情報 『I’ll wake up』 発売:2月4日(水) 価格:¥1,111(税抜) CRCP-10340 (e-stretch RECORDS/日本クラウン) M-1:I’ll wake up M-2:恋桜 M-3:偽愛 M-4:I’ll wake up ~instrumental ver.~ ■ライブ情報 2月11日(水) 大阪:南堀江knave 2月13日(金) 京都:ROOTER×2 ■インストアライブ情報 2月7日(土) 東京:タワーレコード池袋店 6Fイベントスペース 14:00~ 2月7日(土) 東京:タワ-レコ-ド渋谷店 3F店内イベントスペース 17:00~ 2月7日(土) 愛知:タワーレコード名古屋パルコ店 店内イベントスペース 13:00~ 2月14日(土) 愛知:タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 店内イベントスペース 17:00~ 2月21日(土) 京都:タワ-レコ-ド京都店 イベントスペース 17:00~ 2月28日(土) 埼玉:イオンモール北戸田1Fセントラルコート 13:00~、15:00~ 3月7日(土) 福岡:キャナルシティ博多B1サンプラザステージ 12:00~ 3月7日(土) 福岡:リバーウォーク北九州ミスティックコート 16:00~ 3月8日(日) 大分:タワーレコード大分店 FORUS入口前 特設会場 15:00~ 3月8日(日) 大分:パークプレイス大分 センターステージ 18:00~ …and more ■オフィシャルHP  http://73music.jp/

きゃりー、新曲でセカオワ・Fukaseとの恋愛報道に言及!? “炎上問題”への反論も

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【リアルサウンドより】  きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「もんだいガール」が、1月15日よりスタートしている木10ドラマ『問題のあるレストラン』(フジテレビ)の主題歌として流され、その歌詞が彼女のいまの心情を赤裸々に表現しているのではないかと、ファンの間で話題となっている。  同曲は、これまで男性の横暴さに振り回されてきた女性たちがレストランを立ち上げ、自らの人生を切り開いていくというストーリーに寄り添った応援ソングとなっているが、その歌詞の内容を読むと、きゃりーの芸能活動や私生活に重ねて読める部分がいくつもあるのだ。  きゃりーの楽曲はご存知の通り、音楽プロデューサーとしても活躍するCAPSULEの中田ヤスタカが手がけているが、その歌詞にはきゃりー自身の考え方や人生が色濃く反映されることもあった。たとえば「ふりそでーしょん」は、2013年の1月29日にきゃりーが20歳となることを記念して作られた作品で、〈ありがとう/みんなに会えて/いろいろなステキな体験をしたよ/今年もそして来年も/このわくわくをわすれないよ〉という歌詞は、彼女の素直な心情を表したものだろう。きゃりーの自由な発想を題材にしたという「ファッションモンスター」では、〈鉄の首飾りをはずして/ただ自由にいきたいだけ〉という一節に、彼女のスタイルが象徴されているといえそうだ。  新曲「もんだいガール」は、さらに彼女自身の悩みや葛藤と向き合い、その心情を吐露したような作品だ。たとえば次のような一節は、ときにTwitterなどで非難の対象になったこともある彼女が、過剰な揚げ足取りが横行するネット社会に対して本音をぶつけているように見える。 〈だれかを責めるときには「みんなとちがう」というけど/毎回「みんな」にあてはまる/そんなやつなんているのかよ〉  さらに、交際を噂されているSEKAI NO OWARI・Fukaseとの関係を歌ったと思われる歌詞も見られる。 〈ただ恋をしてるだけなの/機械みたいに生きてるわけじゃない〉 〈キライなことで笑うより/ステキなことで泣きたいわ/この世が壊れてしまうとき/一緒にいられる人がいる〉  自身のリアルな人生を肯定するような内容で、そこにはきゃりーらしいファンタジックなユーモアとともに、強い意志も感じられる。また、SEKAI NO OWARIの楽曲「炎と森のカーニバル」は、Fukaseがきゃりーを題材にして作ったと公言している楽曲なので、「もんだいガール」はそのアンサーソングといえるかもしれない。  きゃりーは2014年の11月、東京・代々木第一体育館で行った初アリーナツアーの最終公演で、私生活をたびたび報道されたことに言及し、「最近、嫌なことが続き、芸能界は汚い世界だな。辞めたいなと思ったりもしました」と涙ながらに引退を考えたことを告白したが、約1万人の大声援に「これからも夢あるファンタジーを作り続けていきたい」と、前向きな姿勢を見せていた。そうした思いが作品として結実したのが、この「もんだいガール」なのだろう。実際、制作の際はきゃりーが中田ヤスタカにいまの思いをぶつけて、彼女の楽曲としては初めて歌詞先行になったという。 〈あたし もんだいガール/退屈したくないわいわ/キミも もんだいがある/普通になんてなれないでしょ〉  ポップ・スターの宿命として、多くの人気を集めながらも、同時に好奇の目にも晒されてきたきゃりーが、自らの意思をユニークな言葉で表明したともいえる「もんだいガール」。その前向きで挑戦的な歌詞は、いま問題を抱えて悩む人々の背中を明るく押してくれそうだ。 (文=松下博夫)

SPECIAL OTHERS ACOUSTICがライブで見せた、実験的でオーガニックな世界

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【リアルサウンドより】  2014年10月に1stフルアルバム『LIGHT』でデビューしたSPECIAL OTHERS ACOUSTICが、アコースティック8都市ツアー2014-2015の東京公演を2015年1月31日、東京キネマ倶楽部にて開催した。SPECIAL OTHERS ACOUSTIC(通称:S.O.A)はその名の通り、インストバンドSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)のアコースティックプロジェクト。これまでに5枚のフルアルバムをリリースし、2013年には初の武道館公演をソールドアウトのうちに成功させたスペアザだが、S.O.Aは全くの新人バンドとしてのスタート。この日の公演もチケットはもちろんソールドアウトし、スペアザとはまた違ったアコースティカルで心地よいバンドサウンドにオーディエンスは酔いしれた。
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 ステージ上にはメンバーが“第5のメンバー”と呼ぶ大きなサボテンやランプ、植物やウッドのポールハンガーなどが並び、なんだかとてもアットホームな雰囲気。ふらっとメンバーの4人が現れ、穏やかなアコギの音色で始まった1曲目は「Marvin」。続く「Mambo No.5」ではアップテンポなセッションで、観客は気持ち良さそうに体を揺らしていく。S.O.Aは宮原良太がパーカッション・ギター、又吉優也がマンドリン・ギター、柳下武史がギター・ベース、芹沢優馬がグロッケン・メロディオン(鍵盤ハーモニカ)という編成だが、ステージに登場する楽器はさらに多岐に渡る。「LINE」では芹沢がサーフドラム(波のような音を出せる楽器)を鳴らして感傷的なメロディーを引き立てたり、「BEN」では又吉がトライアングルを鳴らしたりと、実験的にさまざまな音を絡ませていくのが面白い。スペアザのライブでは時に激しく、熱のこもったセッションで観客のボルテージを上げていく彼らだが、S.O.Aのサウンドはただ音楽に体を任せれば幸福感で溢れてしまうような、どこまでもオーガニックな世界。「LIGHT」では最初しばらくジャムセッションが続き、曲に入ってステージが明るく照らし出され自然に4人の演奏が熱を帯びていく。観客たちもS.O.Aが作り出すナチュラルな空気に呼応して、会場からは一曲一曲に対し温かい拍手が贈られた。
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 その後本編唯一のMCでは“SPECIAL OTHERS ACOUSTICを何と略すか問題”について4人のゆるーいトークが続く。宮原は「“S.O.A”(という略称)を広めたいからしつこく言い続けていく」ということだが、場内からは「スペアコ~」という声もあがり、メンバーも「スペアコでいいんじゃね?」という空気に。今回のアコースティックバンドとしての活動についても「一発だけの企画じゃない」「継続的に出していく」といい、「スペアザと平行して活動していこうと思っています、よろしくお願いします」と宮原が力強く宣言すると、場内からは大きな歓声が上がった。そして「Wait for the sun」で、温かい空気に包まれたまま本編は終了。アンコールでは「ツアーがもうすぐ終わってしまうのが寂しい、一年間くらい廻りたい(宮原)」「全県ツアーとかやりたいね(柳下)」とバンドの意欲的なテンションを覗かせ、シンガーソングライターのLeyonaに楽曲提供した「ROSEN」をセルフカバーして披露。大団円でこの日のステージは幕を閉じた。  ステージ上で記念写真を撮り「楽しかったです、ありがとうございました」と語りかけるメンバーの姿が印象的だった。スペアザとS.O.Aという2つのスタイルを行き来しながら、音楽を楽しみ尽くす勢いの4人。今年も音楽ファンを大いに楽しませてくれるに違いない。
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(撮影=KAZUHARU IGARASHI/取材・文=岡野里衣子)

4人のアイドル論客が語る『アイドル楽曲大賞』の始まりと現在地「真の楽曲派は現場に多い」

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【リアルサウンドより】  2014年12月29日、阿佐ヶ谷ロフトAで『第3回アイドル楽曲大賞 結果発表イベント』が行われた。同イベントは、リアルサウンドでも筆者として活躍するピロスエ氏が主宰し、有志によるインターネット投票でアイドル楽曲の順位付けをする企画サイト『アイドル楽曲大賞』の2014年度集計結果についてのものであり、この日のコメンテーターにアイドル専門ライターの岡島紳士氏と、音楽評論家の宗像明将氏に加え、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏が参加。アイドル楽曲についての熱いトークを繰り広げた。今回リアルサウンドでは、年が明けたタイミングで改めて4氏に集結してもらい、同サイト・イベントについての座談会を実施。前編では同企画の始まりや、それぞれが2014年のアイドル楽曲・シーンについて思うことを存分に語ってもらった。

「地方の若いヲタはだいたいAKB48が入り口」(ガリバー)

――まずはこの企画が生まれたきっかけを教えてください。 ピロスエ:『アイドル楽曲大賞』を始める前に、まず母体として『ハロプロ楽曲大賞』というものが2002年からスタートしています。たしか第1回は200人くらいが投票して、僕が手動で集計して結果発表ページをHTMLで書いて、曲ごとに投票コメントを公開していました。これが毎年恒例の企画になったんです。2010年と2011年はハロプロ楽曲大賞内の1部門としてアイドル楽曲大賞をやってみて、そのときはももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」や東京女子流「鼓動の秘密」が1位になっていましたね。外野からは「その頃は『ハロヲタが選ぶアイドル楽曲』というランキングで独自性があったけれど、独立してからランキングの並びが駄目になった」という声もありますが、僕はそれは違うと思っていて。みなさんはどう思いますか?(笑) ガリバー:ピロスエさんに同意です。2010、2011年のランキングの面白さは、そのときのDD(誰でも大好き)的なヲタの関心をそのまま表していることだと思います。なおかつ、当時のDDのヲタはだいたいが元ハロヲタだった。だから投票の内容とハロプロ楽曲大賞がある、ということ自体は何となくリンクしている状況で、ランキングにはリアリティがあったと思います。ただ、2012年以降は、AKB48から入ってきた人がすごく増えて、ハロプロを知らない、ハードルが高いと思って通っていない層が形成されてきた。地方に行くとそれが如実で、地方の若いヲタはだいたいAKB48が入り口なんです。 宗像:たしかにそれはわかります。BiSのヲタでも古参でハロプロを通ってない人はいなかった。若い層が「AKB48から流れてきた」と知ってすごくびっくりしました。 ガリバー:ハロプロは当時、地方にコンサート以外であまり行かないのに対して、AKB48は初期の頃から参加ハードルの低い握手会等で全国7大都市を回っていたので、若い子はAKB48の方が馴染みがあったりするんです。 ピロスエ:逆に言えば、2000年あたりでハロプロを通っていないのにアイドルファンというのはかなりのマイノリティなんじゃないでしょうか(笑)。80年代で言うと「アイドルが好き」と言いながらおニャン子クラブを気にかけないのに近いですからね。 宗像:その時代は一般社会の共通言語でしたね。僕も会社の人とモーニング娘。を観に行ってました。 ガリバー:2010、2011年もアイドル界はシンプルだったと思います。ももいろクローバーを通ってPASSPO☆に行ってという風に、大半のヲタが似た動きをしていました。だからこそ、ヲタの動きが複雑化してきた段階の良いタイミングで、アイドル楽曲大賞を別企画として切り離せた、と僕は思っています。 岡島:ピロスエさんは昔からやっていることだから普通になっているかもしれないですけど、この企画のために2700曲くらいを全て1人でデータ入力するんですよ。「やってればいつか終わる」とか言って(笑)。 ピロスエ:なぜネット上でそんな手間の掛かることをやるかというと、いくつか原体験があるんです。僕がインターネットをやり始めたのは99年くらいですけど、その頃に閲覧していたサイトのなかに『小心者の杖日記』というものがあって……。 宗像:ん? どこかで聞いたことありますね。 ピロスエ:宗像さんの個人ホームページです(笑)。その中にあった「地下水道」というリンク集が、量と質に優れていたんです。他にも、個人ニュースサイトの「俺ニュース」や、ばるぼらさんが作った『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史ヽ(´ー`)人(´ー`)ノ』など色々ありますが、質・量の凄さで圧倒するというネットコンテンツにカッコ良さや美しさを見出していて、影響を受けてますね。その最初期の原体験が「地下水道」なんです。ムーンライダーズの曲名から取ったであろうページ名も琴線に触れました(笑)。 岡島:異常なヲタがクローズアップされることも多いですが、その中でもピロスエさんは異常性が高いということに、早くみんなに気付いてほしい(笑)。しかも好きなのはハロプロや膨大なデータだけであって、アイドル楽曲大賞にはそんなに執着していないというところにも恐ろしさを覚えます(笑)。 ガリバー:毎年「僕はハロプロ以外一切興味ありません」って言っていますけど、それでもそつなくやれているという時点で異常ですよね(笑)。

「アイドル楽曲が好きな約2000人の投票で順位を決めるというデータ自体に価値がある」(岡島)

ピロスエ:でも、ノミネートリストを一人で作っていて、載ってないアイドルがあると「ピロスエが恣意的に選別しているんじゃないか」という誤解も生じていて。そうではなく、アイドル楽曲大賞という企画をやる際に、基本的に世の中にあるアイドル楽曲すべてをノミネートさせるのが筋というか、原理的にそれは当然のことですよね。まあ100%は無理だけど、「無理だから最初からやらない」ではなく、それに出来るだけ近づけたい、と考えてます。現段階でも、世の中のアイドル楽曲の80%くらいはリストに入れられていると思いますが、それを99.9999……%まで上げたい。「100%にする」こと自体が目標ではなく、「100%を目指す姿勢を維持する」ことが目標というか。毎年、ノミネートリストの暫定発表の後に楽曲追加のリクエスト期間も設けているので、「アレが入ってない」じゃなくて、抜けてたらリクエストをしてほしいですね(笑)。そこまでやって初めて、この企画が成立するんだろうと思います。じゃあそこまでするモチベーションは何か?と言うと、「俺たちは単にもっとイイ曲を知りたいだけだ。もっとイイキョクを教えてくれ!」というところに行き着きますね(笑)。 岡島:アイドル楽曲好きが約2000人集まって、その人達の投票で順位を決めるというデータ自体がすごく価値があって面白いですよね。 ピロスエ:こういう格付けみたいなものを評論家やライターのみで行うという形式が、昔から雑誌メディアなどでは定番になっていますが、普通のファンが選ぶところに面白さがあるのかなと。また原体験の話をさせてもらうと、僕が中学生の時に『PATiPATi ROCK'N'ROLL』という雑誌を読んでいて、90年ごろにLÄ-PPISCHの曲について、読者が投票して順位を決める、という企画があったんです。そのときに1位だった曲は、当時の最新シングルの「Magic Blue Case」で、これは2015年の今から見てもバンドの代表曲と言える、納得の1位。そして2位になった曲は、1stアルバムに入っていた「LAULA」という曲で、ファンの間で人気はあったけど僕は知らないものだった。それをきっかけにして新しい曲を知った時に、こういう企画の面白さを感じて、その体験が楽曲大賞に繋がっているところもありますね。 岡島:思ってもみない曲が上位になる意外さはすごく面白いですよね。今年だと、Dorothy Little Happyの「恋は走りだした」(メジャー部門1位)やアイドルネッサンスの「17才」(インディーズ部門1位)は、僕の中では1位ではないんですけど、それが投票の結果、上位にきているのが興味深かったです。 宗像:アイドルネッサンスがインディーズ部門1位という発表の時に、僕は思わず「ん?」となりましたよ。カバーだからということじゃなくて、ソニーの過去の名曲を利用してオリジナルを一切持たないというラディカルなスタイルに対して、「この狙いにみんな素直に乗っているけどいいの?」という思いです。でも見ていると「いいよなー」と思って(笑)。 ガリバー:組織票とかではなく、アイドルネッサンスヲタって「ガチ勢」が多いんです。この半年は僕もまさにその葛藤があって、一番没頭している現場なんですけど、正直ステージや運営にオリジナルをゼロから捻り出すような産みの苦しみはあんまり感じない。全く新しい機軸なんです。だけどやっぱり良い現場で。でもまさか本当に1位とは思いませんでした。 宗像:ライムベリーの「IDOL ILLMATIC」がインディーズ部門で1位を逃したのは、いわゆる“物語厨”的な視点から見たら一大事だと思いました。あれだけの「復活劇」があったのに。 岡島:嶺脇(育夫。タワーレコード株式会社 代表取締役社長)さんと「ハロプロ楽曲大賞」で会ったときには、「今年の1位だと思ってたんだけど……」と言ってましたね。 ガリバー:「17才」が1位だったことには2つの側面があると思います。ひとつは、30代、40代、50代というように年齢層を区切って、それぞれの年代の人達に馴染みがあるカバー曲の選曲で着実にファンを増やしてきたということ。もうひとつは、現場にいる人達が試行錯誤するアイドルに飽きてきたのかな、ということです。 BELLRING少女ハートや、皮茶パパ、アイドルラップ的なものは、もちろんそれが悪いわけじゃないけど、そういうものに疲れて「普通にいい」アイドルを求めている人達が増えたのかもしれません。 岡島:そもそも楽曲大賞の1位には、王道系の楽曲が選ばれる傾向がありますよね。今年はメジャーの1位がDorothy Little Happyで、去年はAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」ですし。アイドルネッサンスの「17才」の1位にもやっとする人もいる反面、彼女たちにはそれを押しのける力もあったと思います。CD自体、現場かSMA(Sony Music Artists)のサイトでしか買えませんから。 ガリバー:しかもそのCD、楽曲大賞発表イベント日の当日(結果発表前)に売り切れてるんです。今回の1位について、批判的な声が多いのかなと思ったら、ツイッターでも6:4か7:3くらいの割合でポジティブな反応が多かったです。現場での接触は基本的に生写真とお見送り会だけなんですけど、逆にそういう距離感も含めて現場は好きなんですよね。CDを沢山売るという感じでもなく、単独自主企画イベントは約1ヶ月に1回で、満員にはならないくらい。それは3500円と少し高いですけど、商売気はないですよ。

「推しメンは推しメンで、楽曲部門は自分が良いと感じた曲に入れる、というモラルが働いている」(ピロスエ)

宗像:「17才」が1位だったことが静かに波紋を呼び続けているのと対照的に、メジャー部門の1位がDorothy Little Happyと発表されたときには「大正義」というコールが巻き起こりました。でんぱ組.inc(メジャー部門4位:「サクラあっぱれーしょん」)、清竜人25(メジャー部門3位「Will♡You♡Marry♡Me?」)、BABYMETAL(メジャー部門2位:「ギミチョコ!!」)と世の中的にも売れているメジャーなところがきたところで、最後にDorothy Little Happyが1位になったときの歓声が印象に残っています。 ガリバー:現場やフェスによく行っている人はヲタじゃなくても体感した事がある人が多いと思いますし、「nerve」に続くアンセムがない中で、それに一番近づいた新曲がこの曲だったということでしょう。 岡島:楽曲派のガチ勢って在宅派だと思われがちなんですが、実は現場派なんですよね。現場に行かなきゃ買えないCDがあるし、YouTubeだと音質が悪いから、真の楽曲派は現場に多い。ハロプロ楽曲大賞でもそうでしたけど、「卒業する子の最後になる曲だから」というような、変にストイックで物語性のある曲が1位になったりはしないんですよね。そういうことではない本気感があるのが良いと思います。 ピロスエ:2位から4位がトイズファクトリーというのも面白いですね。 宗像:これだけトイズファクトリーが並んだのは本当にすごいですし、今年リリースしたものの中ではやはり清竜人25が象徴的ですね。清竜人25は批評的なことを言い出すとキリがなくなって、批評性の自家中毒になって滑稽なことになる、というグループなんですが、BABYMETALやでんぱ組があったお陰でこの企画が通ったと思うと、2014年のアイドルという感じですよね。これが00年代だったら企画も通らないと思います。 岡島:いろいろなことがすごくよくできていますよね。現場でしか聴けない曲がまだまだたくさんあって、現場で清竜人を見たくない人はステージ上の女の子だけ視界にいれておけばいい、ということもできる。でも清竜人とチェキを撮れたりして。そのあたりもしっかり作っていますよね。 宗像:BABYMETALに関しては、「Give me chocolate!」って敗戦後の日本で子どもたちが占領軍に言っていた言葉ですからね。海外のフェスの動画で、その言葉を外国人がこの3人の子どもたちに言っているのを見ると「戦後が終わったな」という気がします。 岡島:でんぱ組.incも同じように狙って作りこんでいて、今年はBABYMETALとでんぱ組.incがグッと動員数を上げた感じがしますね。BABYMETALは「坂本九以来の成功」とも言われていますし。 宗像:あとは、トップ10にNegiccoが2曲が入ってるんですね。 ガリバー:いつも思うんですけど、NegiccoとEspeciaは、入れている人が同じなんじゃないですか? ピロスエ:だから票が割れて、上位には入りにくいのかも。 宗像: Especiaに関しては、あれだけ票が分散してもベスト10や20に入ってきます。一方、推し箱部門の1位だった東京女子流はベスト20に1曲も入っていません。 ピロスエ:「ずっと 忘れない。」の21位が最高です。女子流もけっこうキャリアが長いんですが……。 岡島:「女子流は好きで期待しているけれど、今年は飛びぬけて良かった曲は無い」という評価が如実に表れているのではと。 宗像:その勢いの違いは不思議だ……。 ピロスエ:ハロプロ楽曲大賞にも推しメン部門があるので同じことが言えるんですけど、推しメン部門で上位のメンバーがいるグループが、楽曲部門の方でも上位に入っていたら、それは要するに人気投票になっていると解釈できる。でも、必ずしもそうはならなくて、推しメンは推しメンで入れるけれど楽曲部門は自分が良いと感じた曲に入れる、というモラルのようなものが働いているから面白い結果になっているんだと思います。今のところハロプロ楽曲大賞にもアイドル楽曲大賞にもそれが機能しているのかな、と。それが今後票数が増えることによってどうなっていくのか、という危惧も少しあります。 ガリバー:ゆるめるモ!のインストアに行こうと渋谷のタワレコに行ったら入れなかったんです。驚きましたが、そういう意味で去年リキッドルームのワンマンライブがソールドアウトしたのはすごい事件だったんだな、と思います。ところが今回の大賞では24位に1曲入っていただけでした。そういうところが反映されるためにも、投票数が増えたほうが良いと僕は思うんです。 岡島:でも、どこを境に単なる人気投票になるか、ということもありますよね。 ピロスエ:ジャニーズ楽曲大賞というのをジャニーズファンの人がやっていて、数年前に1位になったグループのメンバーがそれについてラジオで言及した、ということがありました。そのことによってその後の投票バランスがどうなったのか、くわしくは知らないんですが、場合によっては「彼を喜ばせるために投票しよう」と言い出す層が増えて人気投票化してモラルが失われる可能性もあるわけです。そのあたりのジレンマが難しいところだと思いますし、ジャニーズにかぎらずアイドルでもそれは十分に起こりうることだから、投票の母数を増やしたいとは考えてますが、単純な問題ではないんですよね。 ガリバー:ただ、投票に参加していない界隈がまだまだいると思うんですよ。例えば、元日に見たPASSPO☆の、まこっちゃん(奥仲麻琴)卒業ライブでは、TOKYO DOME CITY HALLが埋まっていたりするわけで。極端な接触現場は別ですけれど、愛乙女★DOLL等のアークジュエル系やprediaのように、楽曲も良いしお客さんも入っているグループが楽曲大賞で上位に来ないということは、彼女たちを好きな層が参加していないということでしょう。 岡島:ある程度の規模のアイドルにとっては、ここで上位になることにさほど価値がない、ということもあってファンも頑張れないのかもしれません。

「BiSの解散ライブは、本当に『お前らどこから来たんだ?』と思った」(宗像)

――順位のなかで疑問に思ったものはありますか? 宗像:僕はBiSの『FiNAL DANCE』がメジャー部門6位に入っていることですね。現場でも言いましたけど、この曲はBiSがこれまでにリリースしてきたなかでも良い曲の部類には入らないと思うんですよ。 岡島:コラム(【ももクロ、モー娘。から、リリスク、ベルハーまで…動員力から考察するアイドル界の現在】)に書いたんですけど、DD層の中でも「式典厨」のような人たちがいますよね? 誰かの卒業とか記念になるようなワンマンは行く、という。そういう人たちからのご祝儀的なものですね(笑)。 宗像:そういう人たちがいないと成り立たないとは思うんですが、古参からするとそういうのがウザいというか、「今さらかよ!」とも思ってしまいます。BiSの解散ライブも8000人くらい入って、本当に「お前らどこから来たんだ?」と思いましたからね(笑)。 岡島:今回のランキングだと、元BiSの中では寺嶋由芙(インディーズ部門4位「#ゆーふらいと」)とプラニメ(メジャー部門18位「Plastic 2 Mercy」)が上位にいます。ゆっふぃー(寺嶋由芙)はなぜ曲がいいんでしょう? 宗像:Number Girlや、Base Ball Bearを送り出した加茂啓太郎氏による緻密なディレクションが大きいでしょう。最新曲「猫になりたい!」でも「2回聴いて覚えられるサビでなければ駄目」と言っていたそうです。「#ゆーふらいと」がインディーズ部門4位になったのは、ねむきゅん(でんぱ組.incの夢眠ねむ)が作詞したことも大きかったのかな。それから彼女の立ち姿と重なる、物語的な部分もありましたね。ちなみにシングルの表題曲は、rionosさんという由芙ちゃんと同い年の女の子が作っています。またこの子が可愛いんですよ(笑)。 岡島:あと、注目ポイントとしてはTPD(東京パフォーマンスドール)のオリジナル曲が上位に入ってること。彼女たちは今のところ初代TPDのカバー曲の方が多いんですが、オリジナル曲も良質なものなんです。 宗像:「ダイヤモンドは傷つかない」を聴くと脳内物質が出るし、「BRAND NEW STORY」も、過去のTPDテイストを大きく変えずに近年の流行を取り入れていて、非常によくできていると思います。 ガリバー:こうしてランキングを見渡しても、最初にドンと明るく弾ける曲って意外と多くない。そのなかでは「Brand NEW STORY」が王道でありつつも異質ですね。 ーー上位に入りやすい楽曲の傾向などはあるのでしょうか。 ピロスエ:いわゆる「楽曲派」と呼ばれたり、あるいは自称するような人たちの好きな音楽ジャンルが、ザックリ言うとファンク/ソウル/ディスコといった黒人音楽で、その要素が入っていると評価される、というバイアスはありますね。 岡島:ブラスセクションが入っていたりファンク調だと、「良い」と言われる、というようなことですね。たしかにそれはあります。 宗像:あと、今年のアイドル楽曲大賞は、踊れる曲が多い、というイメージがありましたね。ただ、いわゆる黒めの曲や変わった展開の楽曲が評価される中で、Dorothyが最後に拳を突き上げて「オッ オー オッ オー」と叫ばせるストレートなロックで締める、というのは予想外の展開でした(笑)。 (後編【4人の論客が予測する、2015年のアイドル楽曲とシーン「作り手にはまだまだ頑張ってほしい」】へ続く) (構成=中村拓海) 『アイドル楽曲大賞』 『ハロプロ楽曲大賞』 ピロスエ氏の記事はこちら 岡島紳士氏の記事はこちら 宗像明将氏の記事はこちら

2015年はw-inds.とLeadが熱いーー10年選手ならではの実力に刮目せよ!

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w-inds.『FANTASY(初回盤A)(DVD付) 』(ポニーキャニオン)

【リアルサウンドより】  男性ダンス&ボーカルグループと聞いて、皆さんどんなアーティストを思い浮かべるだろうか。SMAPや嵐を筆頭としたジャニーズ事務所グループ、あるいはEXILEや三代目J SOUL BROTHERS、GENERATIONSなどを輩出したEXILE TRIBEといったところが代表的なアーティストと言えるだろう。実際こういったグループはみな、ヒットチャートでもそれなりの結果を毎回残しているし、ライブを行えば動員もかなりの数字なのはご存知の通り。しかし、何か忘れてはいないだろうか。そう、まだEXILEがシーンに登場する前から10数年にわたり、第一線で活躍し続ける男性ダンス&ボーカルグループが2組いる。それが今回紹介するw-inds.とLeadだ。

有無を言わさぬ本格派サウンドで攻めるw-inds.

 今年で結成15周年を迎えるw-inds.は先日、通算34枚目の最新シングル『FANTASY』をリリースしたばかり。2000年の2ndシングル『Feel The Fate』から33作連続トップ10入りを続ける彼らも、2003年の10thシングル『Long Road』以降1位を獲得していないが、実はこれだけの記録を樹立しているし、全10作のオリジナルアルバムもすべてチャートのトップ10入りを達成。もちろんこういった数字の面だけはなく、音楽的にも常に進化をし続けているから興味深い。近年はEDMを取り入れたサウンドで人気を博したが、昨年は最新アルバム『Timeless』で聴ける、より“レトロモダン”なサウンドへと接近している。RHYMESTERの宇多丸は自身のラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)にて、2014年J-POP No.1楽曲としてw-inds.のアルバム『Timeless』収録曲の『Make you mine』を選出。その理由として「ジャスティン・ティンバーレイクの世界最良のフォロワーっていう言い方は失礼にあたってしまう。いや、そんなことはないです。むしろ本家を超えているぐらいじゃないか?っていうぐらいの素晴らしさだと思います」とコメントを寄せているのだ。  1月21日にリリースされたシングル『FANTASY』でも、w-inds.はその“レトロモダン”サウンドをより深化させている。表題曲はシンプルなコード進行、そして昨今のダンスミュージックと比較すると少ないトラック数が印象的な、じっくり聴かせるミディアムテンポのファンクチューン。例えばバックトラック(シングル収録のインストバージョン)を何も言わずに聴かせたら、誰も2015年の最新サウンドだと気付かないかもしれない。そんな普遍的な魅力を持った、スルメ的ナンバーだ。ここに今年で全員30代に突入するメンバー3人が、絶妙なボーカル&コーラスワークを乗せていく。ここ数年はKEITA名義でソロ活動も続けている橘慶太も、ディープな歌声でこの曲をより魅力的なものへと進化&深化させている。

結成13周年を経てもなお右肩上がりのLead

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Lead『My One (初回限定盤A)(DVD付) 』(ポニーキャニオン)

 そのw-inds.と同じ事務所に所属し、2年遅れの2002年にメジャーデビューを果たしたのがLeadだ。デビュー当初は4人で活動していたが、2013年4月からは現在の谷内伸也、古屋敬多、鍵本輝という3人編成で再始動。ソウルやダンスミュージックを軸にしたサウンドを信条としたw-inds.と異なり、Leadはよりポップで雑多な音楽性で、人によっては「w-inds.よりもアイドル色が強い」と感じるかもしれない。実際、その“悪い意味で軸がない”音楽性が災いしてか、2000年代後半はチャート的にも苦戦を強いられたり、シングルを年に1枚しかリリースできないという時期もあった。  しかし、結成10周年を迎えた2012年頃から状況は好転。メンバーの卒業という結成以来最大のピンチもあったものの、現在まで人気&セールスは右肩上がりを続けている。また先ほどの“悪い意味で軸がない”音楽性を逆手に取って、シングルのたびに作風の異なる楽曲にチャレンジし、昨年9月発売の24thシングル『想い出ブレイカー』では表題曲で歌謡曲テイストのGS調ポップス、カップリング曲ではメンバーそれぞれが作詞作曲、トラックメイキングなどを手がけるなど、アーティストとしても急成長を遂げている。ファン以外には知られていない事実かもしれないが、鍵本のDTMオタクぶりはかなりのもので、昨年インタビューした際にも「一度パソコンの前に座ったら平気で5時間くらい作業していて、気付いたら朝になってる」と告白している。  Leadも3月4日に2015年第1弾作品となる25thシングル『My One』の発売を控えている。メンバーの谷内は現在、テレビ朝日系ドラマ「木曜ミステリー『出入禁止の女~事件記者クロガネ~』」で若手刑事役を熱演しており、新作リリースに向けてグループとしての活動の幅を広げている最中だ。w-inds.もLeadも、デビュー間もない頃のイメージで接すると、その成熟加減にビックリするはず。実際、両グループとも初期に応援していた女性ファンが家庭を持って生活環境が落ち着いた最近になって、再びライブ会場やイベントに戻っているという話も耳にする。2組ともだてに10年以上にわたってこのJ-POPシーンをサバイブしてきたわけではない。まずは偏見を捨てて、そのエンタテインメント性豊かなパフォーマンスと音楽性にじっくり目を、耳を傾けてみてはどうだろう。 ■西廣智一(にしびろともかず) Twitter 音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

己龍、アルルカン、Jin-Machine……2015年のV系シーンをライブ動員数から考察

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【リアルサウンドより】  2015年のV系シーンの展望…といっても、2013年夏に書いたこちら【金爆ヒットに続くのは? 2010年代のV系シーン見取り図】と、2014年始に書いたこちら【2014年V系シーンの展望――ジャンルの壁の打破、そしてジャンル自体の底上げを】から(大局という意味では)状況は特に変わって変わっていない…というのが正直なところ。  「ジャンルの壁(この言葉も手垢がつきすぎて、もはやバズワードと化しているのだが…)」というのもそれなりに存在しているだろうし、往年の人気バンドは復活してはその都度ファンにもバンドにもドラマを生み出しているし、ゴールデンボンバーは昨年3度めの紅白出場を果たしている。インディーズシーンに目を向けると活況とはいいがたいものの、1000キャパ以上の会場でワンマンライブのできるバンドも定期的に出てきているし(図は一例)、傍から見ていても壊滅的というわけでもない。  今のシーンはキラキラしてスタイリッシュなサウンドとルックスのバンドもいるし、血糊まみれのバンドが大きな会場でやったりする、お笑い系だって元気だ。

Blu-BiLLioNはV系では珍しい6人編成のバンド。JPOP寄りのサウンドは間口が広いと思われる。

Jin-Machineは今年12ヶ月連続ワンマンツアー「おげれつ戦国ハナクソ相撲」で全国をまわる。わあひどいツアー名!

 たとえば結成して2年弱の間ワンマン公演はすべてソールドアウトを記録しているアルルカンの渋谷公会堂公演は今年の注目トピックの一つだし、冬将軍氏のコラム【TRANSTIC NERVE、シド、NoGoD……独自の音楽的進化を遂げたV系バンド7選】でも紹介されているNOCTURNAL BLOODLUST(ノクターナルブラッドラスト)の躍進も興味深い。つまり個人的な主観になってしまうが、今のシーンは「これといった王道」が存在しないぶん、どこを見ていてもおもしろいのだ。

アルルカンの渋谷公会堂発表の煽りVまであるのがさすがである。

NOCTURNAL BLOODLUSTは出自やテクニックが話題になることが多いが、個人的に最も抜きん出てるのは「野心」を感じさせてくれるところだと思う。

R指定(同名のラッパーがいますがこちらはV系バンドです)が2月11日にリリースする「サドマゾ」のMV。

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己龍『暁歌水月〜二〇一四年九月七日東京ドームシティーホール〜(初回限定盤)』(B.P.RECORDS)

 とはいえ、「2015年のV系シーン」というと、今最もホットなトピックは「己龍の武道館公演」だろう。  以前【金爆ヒットに続くのは? 2010年代のV系シーン見取り図】にて「いま最も武道館に近いと目されているV系バンドが己龍」と書いたが、その彼らが今年1月の中野サンプラザ公演でついに武道館を発表した。  インディーズながらシングルはオリコンメジャーチャート10位内に何度もランクインし、YouTubeの動画再生回数も他のV系バンドと比較してもかなり高い。ライブのセットもインディーズの規模を超えた趣向を凝らした物が多く、楽曲の世界をヴィジュアルでも表現しようとする気概を感じるのだ。さすが"ヴィジュアル"系。

己龍「悦ト鬱」は再生回数100万を越えている

 そして中野サンプラザ公演で、己龍の"唯のヴォーカル(※正式表記)"黒崎眞弥(読み方・くろさき まひろ)はMCでこう宣言した。 「ヴィジュアル系はキモくてナンボだろう!」  ある意味自虐捉えられかねない発言は満員の会場中のファンから拍手喝采で迎えられた。そう、ヴィジュアル系は気持ち悪いのだ、"気持ち悪くてナンボ"なのだ。  いまでこそセカオワの代名詞になっている「中二病」だが、そもそも非日常な世界観だったり、ナルシスティックな言動だったりと、いわゆる「中二」的な感覚を全力で突き詰めた結果がヴィジュアル系なんだから、開き直ってしまえばいいのだ。  2015年のヴィジュアル系はセカオワから「中二病」を奪還する勢いで邁進してほしいと思います! ■藤谷千明 ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter

スチャダラパーが語る“味”ありきのヒップホップ論「カッコよくするだけだったら誰でもできる」

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【リアルサウンドより】  2015年にデビュー25周年を迎えるスチャダラパーのニューアルバム『1212』が、スチャダラパーとSPACE SHOWER MUSICによる新レーベル「ZENRYO RECORDS」から1月28日にリリースされる。同作は、2009年リリースの『11』以来、約6年ぶりとなるオリジナルアルバム。新曲群に加え、チャットモンチーとのユニット“スチャットモンチー”による「M4EVER」や、清水ミチコとの共作曲「Off The Wall」、ロボ宙とかせきさいだぁを迎えた「ワープトンネル」など、インディーズ活動の中で自主制作盤として発売した楽曲からピックアップしたものが収録されている。今回リアルサウンドでは、スチャダラパーにインタビューを実施。聞き手には、10年ぶりのスチャダラパー取材という音楽評論家の小野島大氏を迎え、インディーズ活動を通して味わった体験やスチャ流ヒップホップのあり方、今後の展開などを語ってもらった。

「僕らはクール・Jみたいな正統派じゃない。お笑い芸人の次、スペースシャワー的な(笑)」(Bose)

Bose:お久しぶりです(笑)。 ANI:ご無沙汰してます(笑)。 ーー(笑)ご無沙汰してます。取材という形でお会いするのは『The 9th Sense』(2004)の時以来だから、10年ぶりですよ(取材日は2014年12月29日)。 Bose:お互いまだやってるのが間違ってるよね(笑)。お互いやめてないっていう怖さ(笑)。だってライター歴何年なんですか? ーースチャの活動歴と同じぐらいですよ。 Bose:ですよね。25,6年ってことですよね。怖くないそれ?(笑) 絶対そんな風に(それだけ長いこと続けるとは)思ってなかったじゃないですか。 ーーお互いね(笑)。 Bose:(そんなに)やってるはずないって思ったもん。 ーーねえ。まあ私は日々食っていくので精一杯ですけど(笑)。 Bose:それはお互い様ですよ(笑)。 ANI:同じく!ですよ(笑) Bose:ラッパーだってさ、始まったあとどういうフィニッシュがあるのかわからないじゃん。 ーーロールモデルがないもんね。 Bose:ないもん。 ANI:豪邸? Bose:いやいや。LL・クール・Jとかは司会やってるじゃんね。 ーーああ、グラミー賞とかね。 ANI:すっげえうまい。 Bose:上手だよね、ちょっとウィットに富んだことを言いつつ…。 ANI:「最高だぜ!」みたいにうまく持ち上げて。 ーーでもBoseも司会の道を着々と歩んでるじゃないですか(フジテレビ系『ムチャブリ!スタンパー』)。 Bose:いませんよっ!それに僕らはクール・Jみたいな正統派じゃないからね。お笑い芸人の次というか。スペースシャワー的な(笑)。 ANI:よくお似合いっていう(笑)(注:スチャダラパーの新作のレーベルはスペースシャワーネットワーク)。 Bose:CSだとのびのびできるっていう(笑)。 ーーでもスチャは結成以来27年、全然スタンスを変えないでやってるでしょう。それはすごいと思いますけど。 Bose:いやあ…(浮かない顔)。 ANI:本人たち的にはスタンス変えていきたいと思ってるんですけどねえ。 ーーあ、思ってるんですか。 ANI:思ってますよ。 ーーどういう風に? SHINCO:昼の帯でラジオ。 ANI:くくくく(笑)。 Bose:それ、あんまりスタンス変わってないから(笑)。 ANI:もうちょいなんか…。 Bose:売れる売れない的な? ANI:うん。 Bose:たとえばさ、ライヴ年間100本やるミュージシャンになる、みたいな。そういう道にいってもよかったんだけど、なんかそっちにならなかったですねえ。

「『マジでスチャ好きなんすよ』みたいな奴に限って、聴いてねえし見てもいねえ(笑)」(Bose)

ーー確かにね。今回も6年ぶりのアルバムでしょう。なぜそんなに時間がかかったのか…。 Bose:まとめてちゃんとアルバムにしないと、世間からは何もやってないと思われるっていう。ずっと音源は作ってて、自分達なりのやり方でリリースはしてたんですよ。 ーーライヴ会場とかでね。 Bose:だけどそれは世の中的にはカウントされないっていうのに4年ぐらいたって気づいて(笑)。TVの仕事とかするとさ、「音楽のほうは最近どうしてらっしゃるんですか?」とかマジで聞かれるから(笑)。けっこう「マジでスチャ好きなんすよ」みたいな奴に限って(笑)。ほんとかよ?っていう。聴いてねえし見てもいねえみたいな(笑)。そこで反省するわけですよ。結局アルバム出してこうやって取材受けたり、雑誌に載ったりしないとカウントされないんだと思って。 ーー逆にいうとアルバムを作る必然性みたいなものは、それ以外に感じてなかったってことですか。 Bose:前のレコード会社と契約が終わったあとに、こういう形態が面白いんじゃないかと考えたんですよ。自分らのライヴで(ライヴ物販用に作った)ミニ・アルバムみたいなのがTシャツとかと同じように売ってて、来てくれた人の多くが買ってくれる、という。そういうやり方の方が、レコード会社と契約して活動するよりも、作り方としても自由にできるし、お金の面でもむしろいいぐらいだったりする。レコード会社と契約してるメリットも、僕らはあんまりないから。広いスタジオとかも必要無いし、僕らとしては今の形でやって続けていければ、それでいいなと思ってたんですよ。 ーーインディペンデントでやったほうが。 Bose:完全にインディだし…レコード会社の目が入ると、曲を作って、そんなに直接的に怒られるようなことは書いてないけど、なんか難癖つけられたりすることはあるもんね。 ANI:なんでもないことでもね。 Bose:歌詞もそうだし曲でも。「この部分ちょっと…一応確認します」みたいな。鼻歌のようになんかの曲の一部を歌ってるのでもダメだったり。メジャーだと普通にあるからね。僕らが作るものって、そういうのが自然に入ってくるからさ。ANIが勝手に沢田研二の歌詞を引用したりとか(笑)。平気でやるからね。 SHINCO:やや問題になったけどね。 Bose:問題になったねえ。 ーーでもラップはそういう文化だから。 Bose:そう。もちろん許可とらなきゃいけないのはあるけどさ。ラップってそもそも人のやつを替え歌したりするのが面白いから。そういうのが好きなんだよ。ほんのちょっとした引用の範囲内なのに、それを「カバー申請しなきゃ」とかそこまでなってくると、もういいや、ってことになる。 ーー90年代の頭ぐらいと比べるとずいぶんうるさくなってるよね。 Bose:すごいあると思うよ。まあ昔のディレクターがユルすぎただけなのかもしれないけどさ(笑)。そういうのもあって、レコード会社を通さずにやってたわけ。だから僕らがちゃんとライヴ・ツアーをいっぱいやって、レコード会社とやるのを上回るぐらいの売り上げがあれば、それがいちばん良かったと思う。レコード会社とやるよりもCD売れてるじゃんって! SHINCO:マドンナも既存のレコード会社じゃなくツアー制作会社と契約してるじゃないですか(ライヴ・ネーションとの包括契約)。それに近い。 ANI:近くないけど(笑)。全然スケール小さいけど(笑)。 Bose:主流でほんとに売れてる人がやれば、絶対こっちのほうがうまくいくんだけど。だから僕らのノウハウで売れてるやつがやれ!っていう(笑)。だから…これでいいと思ってたんですよ。これで成功すれば勝ち!みたいな。でも僕らだと(売り上げの)マルが一桁少なくて話題にならない、みたいな(笑)。 ーー今作はそうしてこれまでライヴ等で販売していた曲を集めたってことですよね。 Bose:そう。こうして自分らがインディーズで作ってライヴで売ってた音源をまとめてアルバムにする、っていうのはいいモデルだよね。6年だとちょっと長すぎるけど(笑)。2~3年ぐらいのスパンでまとめられれば。制作に関しても、僕らとロボ宙ぐらいしか必要ないからね。 ANI:あとエンジニアとね。 Bose:超節約型でいけるし。 ーー録音はホームスタジオ? Bose:うちと、あとはいつも使ってる歌入れの小さなスタジオ。 ーー結局レコーディングもヴォーカルのブースだけあればいいってことだよね、スチャの場合。 Bose:そうなんですよ。ちょっと楽器…ベースや鍵盤が入るぐらいだから。それも全部ラインで録れるから。部屋で鳴らすことはほぼないし。

「もうSHINCOがラップするぐらいじゃないと驚いてもらえない」(Bose)

ーーつまりアルバムとして出す必要性も感じていなかったし、レコード会社とやるのも制約が多いからやる気もなかったけど、アルバムという形で出さないと世間の認知みたいなものがなかなか…。 Bose:なかなかね…自分らとしてはそれまで出してたミニ・アルバムみたいなものでいいし、なにも変わらないんだけど、でも「出てることになってない」みたいな感じだもんね。 ーーライブ会場とスチャのホームページのみの販売だと、ライヴに通う熱心なファン以外にはなかなか広がっていかないですよね。 Bose:それもあるね。(一般には)売ってないしね。それも問題なんだよね。地方にいくと「普通にレコード屋で売ってるCD出してください」って言われるし。ライヴで売ってると言ってもフェスやイベントは出演は多いけど、ワンマンは東京や大阪みたいな大都市中心だからね。 ーーなるほどね。となると、今作はこの6年のスチャの活動の抜粋・報告というか、ベストみたいな感じ。 Bose:そうだね。ベスト・プラス新曲4曲。 ーーまとめるにあたって考えたことは? Bose:特にこれと言ってないよね。最近ライヴでよくやってるような定番曲、自分たちで気に入っている曲を並びがいいように選んだという。 ANI:12曲にしようというのはあった。 Bose:タイトルが『1212』だしね。 SHINCO:前のアルバムが『11』だったから。 Bose:よく言ってるしね。「ワンツー・ワンツー」って。のちに気づいたのは、ANIの結婚記念日が12月12日で、こないだ12回目だったんだっけ? そういうのがぴたっと…。 ーーじゃあ12月12日に出さなきゃ(笑)。 Bose:そうなんですよ!(笑)。そこが詰めの甘いところで…(笑)。 SHINCO:12月12日にマスタリングしてた(笑)。それでスタッフが「ANIさんケツがありますんで」「何?」「結婚記念日なんで(奥さんと)メシがあるんです」(笑)。 Bose:なのでマスタリングの最後にいなかったっていう(笑)。そういうユルさが…。 ーースチャですねえ(笑)。新曲はどれなんですか? Bose:タイアップ絡みの曲がそうですね。「ゲームボーイズ2」(『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』CF曲)「中庸平凡パンチ」(テレビ東京系ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』主題歌)「恋のペネトレイト」(WOWOW NBAイメージソング)ですね。 ーーなるほど。つまり強いアルバム・コンセプトがあったわけではない、と。でも統一性なんか考えてなくても、ちゃんとスチャダラパーらしい作品になってますね。 Bose:まあねえ。例えば「哀しみturn it up」って曲があって、ライヴ用にシングルで出したんですけど、全然(それまでのスチャと)違うものにしようと思ったんですよ。ANIの歌もので昔のエレクトロ風、っていう時点でギャグとしてレベル高いなと思ったんですけど、やってみたらスッと収まっちゃったという(笑)。そんな想定外じゃないというか、こんなの前もなかったっけ、みたいな感じになっちゃった。 ーースチャって今までも制約なくいろんなことを自由にやってきたから、何をやっても驚かれないっていうか、すんなり受け止められちゃうのかもしれませんね。 Bose:そう。だからそうやっていつも外してるつもりでも…。 SHINCO:やりそう、って言われる。 Bose:前にやってそう、って。やってなくて、けっこう挑戦したつもりだったのに(笑)。チャットモンチーとやってるやつも(スチャットモンチー「M4EVER」)我ながらヘンだなーと思うんだけど、やってみたら「前にやってなかったっけ?」って言われる(笑)。清水ミチコさんと(「Off The Wall」)だって、やったことないんだから…。 ーーあれ、やってなかったっけ? Bose:ないですよ!(怒) ーーそれは失礼しました(笑)。自分たちとしては常に新しいことをやって切り拓いてるつもりでも、みんなスチャはなんでもアリだと思ってるから、何をやっても新しいとは思ってくれないと。 Bose:あるかもしれないですねえ。25年もやってると。 ーーANIの歌でも驚かれないから…。 Bose:もうSHINCOがラップするぐらいじゃないと驚いてもらえないかも(笑)。 SHINCO:アカペラで…。 Bose:ハモリの…。 一同:(乾いた笑い) ーーそこまでいくともうラップじゃない(笑)。 Bose:でもまあ、自分たちとしては毎回、ちょっとずつはみ出していってる感じはあるんですけどね。 ANI:でも自分たちが思うほどはみ出してないのかも。 Bose:ああ、もっともっといかないとね。 ANI:あとまあ、好みみたいなのが決まってきてますからねえ。今の新しいヒップホップの感じとかあるじゃないですか。 Bose:それに挑戦!みたいなのはないもんなあ。すごい速い曲をやったり、オートチューン使ったり…。

「最近はバンドでやり直すってことも考える」(SHINCO)

ーー6年前のアルバムと比べることにどれだけ意味があるかわかりませんが、トラックはよりシンプルになってきた気がします。 SHINCO:ああ、そうですかねえ。 ーーシンプルなトラックでちゃんとリリックを聴かせる。王道、と言っていいのかわからないけど。 Bose:ああ、そこはもう基本的な好みが変わらないからなあ。 SHINCO:最近はバンドでやり直すってことも考えるんですよ。バンドでもできるといいなあ、と思いながら作ってる。 Bose:ここ1~2年バンドを入れるライヴをよくやってるんですけど、ターンテーブルでビートを出してバンドが乗っかるとか、完全にバンドでやるとか、そういうのが面白くて。ヒップホップ的な、ターンテーブルだけで制約がある状態と、少し自由なのが混ざってるぐらいのバランスがちょうどよくて。音源を作りながらも、これをバンドでやるときはどうするか想像しながら作る、という部分は変わってきたかも。 ーーああ、そういうバッファを残して作ると。 Bose:うん、だからシンプルになってるのはそういうのもあるかも。ベースとか入る隙を考えながら作ったりね。 ーーなるほどね。スチャの前ってバンドやってた経験とかあるんでしたっけ? Bose:全然ないですね。僕ら楽器が演奏できないから、もともと。持ったことないし。 ANI:レコードしか聴いてないっていう。 ーーレコードしか聴いてない奴ができる音楽がラップだった。 Bose:ですねえ。ターンテーブルやサンプラーは楽器だといえば楽器なんですけど…SHINCOとか、いいキーボード一杯持ってるけど、直には弾けないからね。指一本ずつでこう… ーー単なる入力装置であると。 Bose:そうなんですよ。 SHINCO:始める前にドラムマシーンだけは持ってましたけどね。 Bose:ドラムマシーンも楽器といえば楽器だけど…。 SHINCO:LL・クール・Jのファーストみたいに、ドラムマシーンだけでできるんじゃね?と思ったから。 Bose:そこから楽器を始めたっていいのにやらなかったっていうのが、いわゆるミュージシャンとはどうも違いますよね。 ANI:(ほかのミュージシャンと)会う機会があっても、全然共通の話題がない…(笑)。だから音楽の話とかしないようにしてる(笑)。 Bose:いや、合うところもあるよ。聴く部分とかさ(笑) ANI:聴く部分は合うけどさ、聴き方も違うじゃん。「あそこブレイクやばいでしょ!」「は?ブレイク?」(笑) Bose:たぶんギターに興味を持った人とか、違いますよね。たとえば木暮(晋也)さんとか一緒にいると、いまだにギターのことをずっと考えてるもんね。エフェクターのこととか、鳴りがどうとか。その聴き方は(自分たちに)ないもんね。 ANI:鳴りとか、大きければいいじゃんて。 Bose:究極的には(弾かなくても)サンプリングすればいいじゃん、って発想になる。 ANI:サンプリングでよくね?って(笑) ーーでもそこは最近バンドでやるようになって変わってきたわけでしょ。 Bose:逆に自分たちのバンドの人たちは僕らのヒップホップ的な感覚もわかって演奏してくれてる。特に笹沼(位吉)さんとか松田(浩二)さんとか、すごいループ的なこともわかりつつやってくれるから。 ANI:話が早いすね。 Bose:サンプリングで作って演奏はしにくい曲とかあるじゃないですか。こんなところでベースは弾きにくい、というのを逆に楽しんでやってくれたりするから。そういう人だと話はできるけど。だからこれが、よそのバンドと一緒にラップやらなきゃいけない時は、やっぱり難しいですよ。バンドの感覚で演奏している人にどう説明したらいいのか。だから…ラップしてて邪魔なんだよ楽器って(笑)。いやほんとマジな話すると。ドラムだけでいいよって言いたくなるんだけど(笑)。でも演奏は必要だから。それがわかってるベースや鍵盤はなかなかいないですよ。そういう意味でいまやってるバンドの人はいいんですよ、すごく。余計なことしなくて(笑)。 ーーだったらLL・クール・Jみたくドラムマシーンだけでいいじゃん、とはならないの? Bose:なんですけど、やっぱりより自由な部分が必要なんですよ。僕ら、もともとターンテーブルでやってるほうが気持ちよかったんだけど、でもギター・ソロとかもやっぱりかっこいいし、ギター・ソロのあとにラップに戻ると盛り上がったりするんですよ。あとバンドでやってるほうが人数も増えて見所も増えるし、ライヴはラクで(笑)。 ANI:持つよね。 Bose:持つ持つ。ターンテーブルだけで2時間以上やってるとやっぱ限界があるんだよね、場を持たせるのに。だからMCとしてはすごくラクで。それを楽しめるようなゆとりが出てきたから。

「遅くするとかっこいいと思って遅くしてたけど、今はぴったり(笑)」(Bose)

ーー最近バンドと一緒にラップやる人が多いじゃないですか、環ROYくんとか。 Bose:たぶん同じような発想じゃないかな。ターンテーブルとラップだけってさ、これ2時間やるもんじゃねえなって(笑)。 ーー今さらそんなこと言うかね(笑)。 Bose:だってラップのライヴで2時間ターンテーブルだけでやる人なんてあんまりいないもんね。だいたい1時間なのは必然性があるんだよ(笑)。自分らはそれをなんとか面白がってやろうと思ってやってるけど、工夫して持たせてるとこあるもんね。そりゃバンドになったらより見やすいライヴにはなると思う。ただラップ2時間続けるのもしんどいし。 ーーなるほどね。 Bose:でも、バンドと一緒にやるのもバランスが重要なんだよね。スチャがやってる感じなんだけどバンドでできてる、という感じにするのがなかなか難しくて。 ーーチャットモンチーとやってるやつはどうだったんですか。 Bose:アッコちゃん(福岡晃子)がドラム叩いてそれをループして…って作っていきましたね。チャットも2人になってループとかを使ってやり出した時だったから、ちょうどタイミングがよかったですね。 ーーほかにキーになるような曲というと。 ANI:「ザ・ベスト」とか。すげーいい曲できたと思った。 ーー今のスチャダラパーの心境が素直に出てる歌詞ですね。 Bose:そう。歳をとってきてね。周りもみんなこういう歳になってきて。曲ももの悲しい感じがいいよね。 ーー今作はそういう年齢なりの実感を感じさせるような曲と、スチャっぽい皮肉な、ウイットに富んだ寸鉄人を刺す感じの言葉がうまく併存してますね。 Bose:ねえ。もう寅さんの年齢超えてきたでしょ?(『男はつらいよ』の主人公・車寅次郎は、映画第一作公開の時点で38歳の設定) ANI:山田洋次が『幸せの黄色いハンカチ』を作ったのが42歳ぐらいらしい。(正確には46歳) Bose:ほら、超えてきちゃったから。そりゃ哀愁も出ますよねえ。 ーー全員40代後半? Bose:うん、45,6,7… ーーへたしたら次のアルバム出す時は全員50代かも。 ANI:やばいねえ…。 Bose:やばいねえ…。 ーー高齢化社会に向けて、リリックの内容も、これから減っていくばかりの若者層に向けるよりは…。 ANI:(笑)高齢者に向けた方が。 Bose:マーケット的には正解だよ(笑)。 ーーそうか、スチャの曲のテンポが遅いのはそういう理由か(笑)。年齢的に速いのができない(笑)。 Bose:前はさ、遅くするとかっこいいと思って遅くしてたけど、今はぴったり(笑)。ほっといても93(BPM)ぐらいになるからさ(笑)。

「ヒップホップって、音だけに魅せられたんじゃない」(Bose)

ーーヒップホップも新しいものがどんどん出てきて日々更新してますが、スチャの考えるヒップホップらしさって何ですか。 Bose:いろいろあるけどなあ…味が出てないといやですよね。全てのアートに言えるんだけど、シュッとするだけだったら誰でもできるだろう、みたいな。 ANI:そうねえ、このご時世でね、デジタルで。 Bose:カッコよくするだけだったら誰でもできる。その人なりの面白み…ダサ美っていうか。味…としか言えないけどね。 SHINCO:形跡っていうか筆圧っつーか。 ーーそういうヒップホップぽさみたいなものにはこだわりたい。 ANI:こだわりたい…というよりは出ちゃうんじゃないですか。これキレイすぎるからレコード・ノイズ入れておこうか、みたいな。 Bose:なんか…若い人とやってると、こっちはすげえ頑張って若い人のテンポにあわせてシャキシャキやってるつもりなんだけど、「スチャさんとやるとユルくていいすよねえ」って言われたりして(笑)。ほんとよく言われる。どこでもそうなんだよ! だからその「味」が出ちゃってるんだろうね。こっちは隠そうと思ってるんだけどさ。なるべくシャキシャキやってるつもりなんだけど。 ーー生まれついてのものだ。 Bose:そうなってしまったし、みんなもそれを期待してる、みたいな。ちょっとずれてる感っていうか、このダサい感じがなんでかっこいいんだろう、みたいな。ヒップホップって、音だけに魅せられたんじゃないんですよ。そういう全体の美学がヒップホップだと思ってるから。なんかその…かっこいいのをかっこよくやってどうすんだよ!みたいな。 ANI:(笑)あはははは! Bose:つい思っちゃう、なんでも。そのままやってどうすんだよ!っていう。 ANI:かっこよくないじゃん!みたいな。 Bose:そうそう。いちばんかっこよくないじゃん、っていう。 ーー早川義夫ですね。「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」 ANI:そうそう。 SHINCO:ちょっとスキがあったほうがいいのかもしれない。 Bose:ANIなんかもさ、なんでもかっこよくやろうと思えばできちゃうんだけど、ファッションとかも。 SHINCO:(笑)わはははは! Bose:だけどあえてグレーっぽく(笑)。 ANI:うううう(笑)。 ーー一度かっこいいファッションでばっちり決めてくださいよ。 Bose:やろうと思えばいつでもできるよね、シュッとしたやつね。 SHINCO:そこをわざとこぼしてシミを作ったりして(笑)。 ANI:…んなことないすよ!もっとシュッと『LEON』みたいなオヤジになりたいですよ!(笑) Bose:なりたいんだ? あはははは!(笑) ANI:全然なりたい。そうしないといい女が寄ってこない(笑)。 ーー女をはべらかすのがラッパーの基本ってことですか(笑)。 Bose:なりたいんだ? ANI:ちょっとなりたい(笑)。 Bose:「ちょっと」ね。でもああいう人って「すげーなりたい」んだよ。「ちょっとなりたい」じゃなくて「すげーなりたい」じゃなきゃダメなんだよ。 ーー欲望が足りてないわけだ(笑)。 ANI:そうかあ…。 Bose:もっとハングリーにならなきゃ。 ANI:生活はだいぶハングリーですよ (笑)。 ーーANIは今作のトレーラーで「今回のアルバムはミリオン売れるのを期待する」みたいなこと言ってたじゃないですか。 ANI:いっつも思ってますよ、そんなの(笑)。 Bose:思ってても見込みが甘いっていうのがあるよね(笑)。 ANI:いや、まだわかんないよ。世の中いつ間違いが起きるかわからないから(笑)。 Bose:それはそう。売れるもんにセオリーがあるわけじゃないからね。 ーースチャのやってることに突然世の中がシンクロするかもしれない。 Bose:そうそうそう。バシッ!ヤバい!見られた!みたいな感じで。 ANI:見つかった!みたいな。 Bose:坂上忍みたいに急に脚光を浴びることもあるからさ(笑) ーー今作も世の中へのスチャの存在アピールみたいなものだから。 Bose:そうそう。それでどういう反応が来るかがまだ見えてないですからね。 ANI:「たまにはどうですか、CD? CDもいいもんですよ!」って。 (取材・文=小野島大)
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スチャダラパー『1212』(初回限定盤)

■リリース情報 『1212』(読み方:ワンツウワンツウ) 発売:2015年1月28日(水) 価格:<初回限定盤>(CD+DVD) 価格:¥3,241+税    <通常盤>(CDのみ) 価格:¥2,315+税 <CD収録内容> 1. イントロダクションワンツー 2. スチャダラメモ 3. ゲームボーイズ2 4. ワープトンネル feat.ロボ宙&かせきさいだぁ 5. M4EVER 6. ザ・ベスト 7. 哀しみturn it up 8. 中庸平凡パンチ 9. A.K.A ETC 10. Off The Wall feat.清水ミチコ 11. 恋のペネトレイト 12. Boo-Wee Dance <DVD収録内容> 2013年開催スチャダラパーワンマンライブ『23』 ※23曲+MC入り123分 ※初回限定版のみ 1. ザ・コストパフォーマンス登場 2. オープニング 3. アーバン文法 4. Under the Sun 5. ライツカメラアクション 6. From 喜怒哀楽 7. MC1 8. ヒマの過ごし方 9. Boo-Wee Dance 10. アフター ドゥービー ヌーン 11. MC2 12. 23ch FUNK 13. GET UP AND DANCE 14. FUN-KEY4-1 15. MORE FUN-KEY-WORD 16. LET IT FLOW AGAIN 17. 何処か… どっちか… 18. MC3 19. スチャダラメモ 20. MC4 21. コロコロなるまま 22. ヨゴレタヒデヲ 23. 今夜はブギー・バック 24. MC5 25. Shadows Of The Empire 26. ジャカジャ~ン 27. Good Old Future 28. ザ・ベスト 29. エンドロール 30. サマージャム2013 31. 彼方からの手紙