Chapter lineが目指す、四つ打ちロックの新たな段階「ノレるけど、歌詞が刺さるバンドでありたい」

20140203-chapterline-02th_.jpg

左から、藤教順(B・Cho)、小浦和樹(Vo・G)、宮内沙弥(Dr・Cho)

【リアルサウンドより】  初の全国流通音源となる1stミニアルバム『夜が終わり』を完成させたスリーピースのロックバンド、Chapter line。荒々しく前のめりなバンドサウンドに乗せ、エモーショナルなメロディを力強く歌い上げる3人組だ。 小浦和樹(Vo・G)、藤教順(B・Cho)、宮内沙弥(Dr・Cho)という女性ドラマーを擁する編成で、歌詞には上手くいかない日常やコミュニケーションの葛藤、そこから未来を見据える意志が描かれている。激しいライブパフォーマンスも身上だ。ゼロ年代から今に至るギターロックの系譜を受け継ぐ彼ら。初登場となる今回は、バンドと成り立ちと目指す先を小浦に語ってもらった。(柴 那典)

「アコギを弾いて歌うっていうことが当たり前に刷り込まれていた」

——Chapter lineというバンドはどういう風に始まったんですか? 小浦:このバンドが始まって2年弱くらいになるんですけど、僕はそれまでほとんどの音楽人生を弾き語りのソロ活動としてやってきたんです。で、たまたま出演したイベントの後に、別のバンドのサポートで出演していたドラムの宮内から連絡をもらって。「一緒にスタジオ入ってみませんか」と言われて、そこから始まったバンドです。 ——このメンバーが揃ったのは? 小浦:最初は僕と宮内だけがメンバーで、ベースはサポートでした。で、宮内が前から知り合いだった藤を誘って、この3人になった。スタジオで音を合わせた瞬間に宮内と顔を合わせて「もう間違いないね」ってアイコンタクトをしたのは覚えています。 ——女性ドラマーが主導権を握って、いろんな人に声をかけて結成するって珍しい形ですね。 小浦:彼女としても「このボーカルとやりたい」っていうのを見つけるまでバンドをやりたくなかったみたいです。なのでずっとサポートでドラマーをやっていた。僕との出会いがあって、その思いが爆発したんじゃないかなと思います。僕もいいタイミングでバンドサウンドにも興味があったし、挑戦したいなっていう思いはありました。 ——小浦さんはずっと弾き語りをやっていたわけですよね。ということは、ルーツとしてはフォークが大きかった? 小浦:オヤジが、僕が生まれるまでずっとフォークデュオをやっていたんです。家ではオヤジの曲もよくかかってたし、休みの日にアコギを弾いていたりした。そういう日常で育ったので、僕もアコギを弾いて歌うっていうことが当たり前に刷り込まれていたと思います。オヤジはメジャーデビューとか目立った活動はしてなかったと思うんですけれど、ラジオに出たとか、そういう話は聞かされてました。車の中でもいつも「どうだ!」って感じで自分の曲ばっか聞かされてたので(笑)。 ——思春期に自分の憧れだったのは? 小浦:高校時代に軽音楽部に入って、そこではバンプ・オブ・チキンとかアジカンのコピーもいろいろやってました。でも卒業と共にバンドはやめてしまって。バンドメンバーを集めるよりも弾き語りをやろうと思って、そこからずっとソロで音楽活動をやってきたんです。 ——バンドメンバーと人間関係を構築するのは苦手なほうだった? 小浦:苦手だとは思いますね。でも、Chapter lineに関してはすぐに打ち解けたし、何より好きと言ってもらえて組んだバンドなので信頼し合っていたというところで続けられている。 ——この3人、小浦さんと宮原さんと藤さんで通じ合うところはどういうところだと思います? 小浦:後ろ向きな前向きというか。僕の歌詞もそうですけど、単純に頑張ろうとか前を向こうとか言っているわけじゃなくて、暗闇の中の一点の光みたいなところを歌っているのが多いと思うんです。そういう言葉に共感してもらえるというか。曲を持って来た時も「わかるわ」みたいな反応があるので。自分と普段感じているものが同じなのかなっていう感じですね。 ——性格が明るいか暗いかでいえば、暗い方である。 小浦:普段はそうですね。ライブでははっちゃけていますけど、普段はインドアな方です。 ——たとえば「虚無感」や「不完全」という曲があったり、自分の中の葛藤やネガティブな感情に焦点が当たるというのは? 小浦:これは性格的なものかもしれないんですけど、楽しいものを作品にしたくなくて。前向きな応援歌は正直好みではないんです。「楽しい」とか「嬉しい」は、そのまま「よかった」ってなるじゃないですか。でも「辛い」とか「悲しい」は、そのまま「よかった」「まぁいいや」にはならない。そこをどうしようかと考えているんですよね。僕の場合はそれが作品になっている。そこに救いを作るということが、曲を作るっていうことだった。

「前向きな応援歌は正直好みではないんです」

Chapter line「大言壮語の逆襲」(Full Ver.)

——例えば「大言壮語の逆襲」なんかは、いわゆる速いテンポの四つ打ちダンスロックの曲です。こういう曲調になったのは? 小浦:曲作りの中でライブを意識して作ったところもあるので、単純にノレる、踊れるっていうのはコンセプトになりました。ベース藤が加入してから結構バンドがガラッと変わって、前までは聴かせるライブというか、弾き語りの名残が残っているバンドだったんですけど、藤が加入してからは「そろそろ攻め攻めのライブをしていきたいね」となって。どんどん速い曲、テンポのいい曲が出て来て、その中で突き詰めて「もっとノレる曲」となって「大言壮語の逆襲」ができたんです。 ——ノレる曲、踊れる曲っていうのはライブの場でお客さんを意識して生まれたもの? 小浦:そうですね。ライブなので僕らも楽しんでほしいというのがあったし、もちろん周りも意識します。だからと言ってずっとワーワーやっているだけのバンドにはなりたくないんで、それだけにはならないようにしてます。 ——だって、踊れる曲って、ダフト・パンクは「ゲット・ラッキー」だしファレル・ウィリアムスは「ハッピー」なんですよね。でもChapter lineの曲名で「ハッピー」っていう曲はありえない。あったとしてもその裏側の意味になりそう。 小浦:そこも自分たちらしさなのかなとは思います。 ——そういう、辛い時に救いになるようなものを作るっていうのは、どういう心づもりなんでしょう。 小浦:自分に対して、もう一人の自分が呼びかけているような意識ですね。自分だけのことじゃなくて、歌っていることが他人のことになるような意識もあります。自己満足にならないようにしている。やっぱり人に聴いてもらって曲が完成すると思っているので。 ——お父さんがフォークデュオをやっていた、そのオリジナル曲は内向的なものでした? 小浦:親父のは、ハッピーでしたね(笑)。 ——じゃあその影響ではない。 小浦:絶対にそれではない(笑)。 ——なぜ自分にそういうメンタリティが生まれたんでしょうか? 小浦:単純に映画だったり小説だったり、そういう作品が単純に好きなんですよね。たとえば、小説だと伊坂幸太郎が一番好きで、すごくリアルだと思う。

「今のシーンを担うバンドになっていきたい」

Chapter line 「夜が終わり」全曲試聴トレイラー映像

——ミニアルバムの表題曲「夜が終わり」は、どういう感情がモチーフになったんでしょうか。 小浦:僕はほとんどの曲で、物事の終わりについて書いているんです。終わりがあるってことを大事に思いたい。だから「今を生きる」という曲になっていると思います。 ——「大言壮語の逆襲」にもそういうテーマは通じ合っている? 小浦:「大言壮語の逆襲」に関しても、結局は「今」のことを歌っていると思います。自分の口にしたことが大言壮語だったとしても、それによって自分が強くなることができる。そういう意味では今を歌った歌になっているんじゃないかなって。 ——こういう歌詞って、いつ、どういう時に書きますか? 小浦:時間帯で言うと寝る前か起きた後すぐが多いです。頭がぼーっとしている時に書いていることが多いですね。なので基本的にはノートにペンで書いています。 ——たとえば「微かな光」とか「虚無感」とか、そういう夜の情景は多いですね。 小浦:そうですね。「微かな光」はまさに〈明け方の空をぶち壊したくて〉とか言っているんで。夜中に書いていて朝になっちゃって、「ああー!」って思ってカーテンをバンって閉めたようなタイミングだったと思います。 ——小浦さんとしては、どういう風に自分の書いた歌詞や音楽が届いていくという意識を持っていますか? 小浦:歌詞に関しては自分がつまづいたものに対する救いを求めていたりする曲が多いので。この曲を聴いて「わかる」と感じるなら、「あなたは一人じゃないんだよ」って言える作品になっていると思います。その上で、僕らはライブバンドなので、ステージは楽しんでほしいっていうのがある。 ——Chapter lineとしてこの作品はスタート地点なわけですが、今後はどういう風に変わっていきたいと思いますか? 小浦:まず、作品がいろんな人の耳に触れるというところ、知ってもらえるというところは嬉しいです。ただ、僕らはギターロックをやっているライブバンドなので、今のシーンを担うバンドになっていきたいという思いはあります。ノレるけど、歌詞がグッと刺さってくるみたいなバンドでありたい。「Chapter lineじゃなきゃダメなんだ」って言わせるような曲を作っていきたい。 (取材・文=柴 那典)
20140203-chapterline-01th_.jpg

Chapter line『夜が終わり』(redrec / sputniklab inc.)

■リリース情報 『夜が終わり』 定価:¥2,000(本体+税) 〈収録曲〉 M-1: 夜が終わり M-2:微かな光  M-3:大言壮語の逆襲  M-4:ミライチガイ  M-5:虚無感  M-6:easy  M-7:不完全  M-8:BELIEVE ■ライブ情報 『Chapter line 1st Mini Album「夜が終わり」発売記念ワンマンLIVE』 発売:4月15日(水) 場所:下北沢SHELTER 出演:Chapter line 19:00 OPEN 19:30 START 前売り:¥2,300(+ドリンク代) 前売り一般発売日:3月15日(日) (問)AND STATE 050-3532-5600(平日12:00-17:00) オフィシャルWeb2次先行予約 (2015年2月4日(水)11:00~2015年2月22日(日)23:59) OTHER LIVE 3/1(日)FAD YOKOHAMA w/ ザ・キャプテンズ / 月光グリーン / THE TOKYO / HISTGRAM 3/10(火)代官山LOOP w/ Made in Asia / BACK-ON / bye-bye circus / オズ 3/12(木)大阪 阿倍野ROCKTOWN w/ reading note / ホロ / Applicat Spectra 3/26(木)新代田FEVER w/ Mrs. GREEN APPLE / ARCHAIC RAG STORE 小浦和樹弾き語りLIVE 3/8(日)JAMMIN'茅ヶ崎店 "Chapter line 小浦和樹 地元茅ヶ崎凱旋LIVE 1st Mini Album「夜が終わり」発売記念" 小浦和樹(Chapter line)※小浦弾き語りミニライブ。 start 13:00  無料 INFO: AND STATE 050-3532-5600(平日12:00-17:00) 詳しくはChapter line オフィシャルWebにて

凄腕エンタメガールズバンドが行く! Gacharic Spinが考える「個性的であること」

20150226-gacha5.jpg

【リアルサウンドより】  昨年10月にインディーズ時代の曲をまとめたベストアルバム『ガチャっとBEST<2010-2014>』でメジャーデビューを果たした6人組ガールズバンド、Gacharic Spin(ガチャリックスピン)。彼女たちがメジャー1stシングル『赤裸ライアー / 溶けないCANDY』をリリースする。今作はGacharic Spinによる「赤裸ライアー」と、パフォーマーの1号 まい&2号 ありさからなるガチャガチャダンサーズが歌う「溶けないCANDY」で構成された両A面シングル。それぞれカラーの異なる楽曲で、グループ内ガチバトルを繰り広げる。今回のインタビューではそれぞれの楽曲の聴きどころに加え、そのユニークなバンド編成が誕生したきっかけや、Gacharic Spinならではの個性について話を聞いた。(西廣智一)

“ガチャガチャ”した個性を混ぜた音楽

──Gacharic SpinはKOGAさんとはなさんが中心になって結成したんですよね。最初はどんなバンドにしようと考えてましたか? FチョッパーKOGA(以下、KOGA):最初はガールズバンドにしようとは考えてなくて、むしろボーカルが男性で楽器チームが全員女性でもカッコイイよねと思ってたくらいで。たまたま最終的に集まったメンバーが全員女性だっただけなんです。で、これまでに波乱万丈ありまして、専任ボーカルが抜けてこの4人(KOGA、はな、TOMO-ZO、オレオレオナ)が残って、はなとオレオがGacharic Spinの前にボーカリストとして活動していたことがあったので、2人が歌う形もいいよねってことになって。でも4人とも楽器で手が塞がってるのでどうする?ってことで、そこに新しい血を入れようという話になって、せっかくだからバンドの枠からどんどんはみ出していこうってことでニューハーフの方やマジシャンの方に声をかけたりして。最終的にはパフォーマーを入れようってことに落ち着いて、今の6人になりました。 ──音楽性については、最初どのように考えてましたか? はな: Gacharic Spinというバンド名は“ガチャガチャ”した個性を混ぜた音楽をやろうっていう意思のもとに付けているんで、当初から個性炸裂のガチャガチャ音楽を作っていこうっていうのはありました。演奏陣のガチャガチャ=テクニカルな演奏、プラス、キャッチーな歌みたいな。 ──それは特にジャンルを限定せずに? はな:はい。ロックとかパンクとかそういうのは決めてなかったけど、デジタルサウンドは取り入れようとは最初から考えてました。

実際に観てもらうチャンスを作るのが大きな課題

──ガチャガチャダンサーズの2人はまずサポートメンバーとしてバンドに加わったわけですが、最初にGacharic Spinを観たときはどう思いましたか? まい:実は以前から Gacharic Spinのライブを観に行かせてもらってたんですよ。私のお父さんもロックが好きでたまにライブを観につれていってもらってたんですけど、Gacharic Spinはそこで観たバンドさんとはイメージが違うというか「バンドってこうだったっけ?」って感じで(笑)。 ──まあそう思いますよね(笑)。 まい:そこから2012年7月に一度、ゲスト参加させてもらうことになったんです。もともとダンスはやってたんですけど、発表会でやるダンスとバンドの中でやるダンスって全然違っていて。そのときに自分の新しい一面が知れたっていうか、Gacharic Spinのステージに立つのがやみつきになるくらい楽しかったんです。 ありさ:私はこの世界に入るまでバンドという存在を知ることもなく人生を送ってたから、ライブハウスにも行ったことがなくて。 KOGA:そうだね。初めてモッシュやダイブを見て喧嘩してると思ってたくらいだし。「客席で喧嘩してる! 止めなくていいんですか?」って(笑)。 ありさ:ヘドバンも「なんで首振ってるの? なんで髪の毛を振ることがそんなにすごいの?」みたいな(笑)。でも今では首を大きく振ることがカッコイイってことがわかって、ヘドバンが自分の特技になってます(笑)。 KOGA:2人は中学3年のときにバンドに加わったんですけど、パフォーマーと楽器チームの融合を面白くするために、みんなで話し合いながら今の形を作り上げていきました。しかもただ踊るだけのダンサーではなくて、曲によってはカツラを被ってるだけとか(笑)、光るアイテムを持ってるだけとか、ローディーみたいに機材を片付けるだけとか、そういうマルチで動くパフォーマーであって。Gacharic Spinって何か1つだけできればいいっていうバンドじゃないんです。 はな:1人何役もこなすから、情報量が多すぎるっていう(笑)。 ──そういう意味では、初めてライブを観た人の中にはキョトンとしてる人もいるんでしょうか? KOGA:確かにいますね。あと「俺は絶対にメタルしか聴かねえし」みたいな人が、次のライブでは踊ってたりもするし(笑)。最近では「名前は聞いたことがあるけど生で観たことない」って声もよく聞くので、名前は浸透してるんだなってうれしいんだけど、そこから1つ上に行くのがすごく大変だなと。ライブを実際に観てもらう1回のチャンスを作るのが大きな課題だと思ってます。
20150226-gacha3.jpg

FチョッパーKOGA(左)とはな(右)。

ドラムセットも組んだりバラせたりしますから

──Gacharic Spinは海外でも積極的にライブを行ってますよね。去年も『JAPAN EXPO』に出演してましたし。 はな:最初は本当に偶然で(笑)。ほかのアーティストを観に来たイベンターさんがうちらのライブを観て驚いて、声をかけてくれたんです。 KOGA:バンドをやってたら海外で活動したいって気持ちは少なからずあると思うんですけど、最初はそんなことできるなんて考えてもみなかったのでビックリしました。でも海外に行く機会が増えるについれて、バンドとしてもどんどん強くなっていった気がします。だってめっちゃヘヴィな経験ですし。 まい:普通に生活してたら行かないようなところに自分たちだけで行ったり、全部自分たちだけでやらなくちゃいけないし。確かにとても鍛えられました。しかも驚いたのは、みんなビニール袋1つ分くらいの荷物で行くんですよ、海外に!(笑) 初めてのときは普通にスーツケースで行ったんですけど、「それ、6人分入っちゃうから」って言われたのが衝撃的すぎました。 KOGA:国内でも荷物が多いと機材車がパンパンになっちゃうんで。ものすごく厳しいです、そのへんは。 まい:海外に行くときは「オーバーチャージがかかっちゃうから!」って言われるし(笑)。でも今では荷物をまとめるのも上手になりました。 はな:だって、楽器のセッティングも普通にできるしね。 まい:はい。ドラムセットも組んだりバラせたりしますから(笑)。
20150226-gacha4.jpg

オレオレオナ(左)とTOMO-ZO(右)。

チーム対決でライバル意識を強めるのも面白い

──いよいよメジャー1stシングル『赤裸ライアー / 溶けないCANDY』がリリースされます。しかもその内容が、楽器チームがメインの「赤裸ライアー」とガチャガチャダンサーズによる「溶けないCANDY」からなる両A面。このアイデアはどこから? KOGA:Gacharic Spinでは新しいことをするとき常に何か仕掛けてるんですけど、今回のシングルでも「2チームに分かれて、それぞれが中心になる曲を作ったらどうか」という話になって。そうすればガチャガチャダンサーズとしても新たなスタートを切ることができるし、グループ内でもライバル意識を強めていくのも面白いし、だったら2チームで対決しようということになったんです。今回は楽器チームがメインのジャケットとガチャガチャダンサーズがメインのジャケットを用意したんですけども、どっちのほうが売れるかっていう部分での勝負もあって。もしダンサーズのほうが勝ったら、次はこの2人単体でシングルを出すことになるんです。だから楽器チームとしては何が何でも勝ちたいし、楽器チーム以外のジャケットのシングルは一切買わないで!と思ってます(笑)。 ──いいですね、そのバチバチした感じ。 KOGA:例えばアイドルだったら派生ユニットとかあるじゃないですか。でもバンドでこういう遊びができるのってほかにはあまりないと思うので、これがGacharic Spinならではの個性なんでしょうね。 ──ガチャガチャダンサーズの2人は最初にこの話を知ったとき、どう思いました? まい:いつかやりたいっていう夢があったんですよ。なのでうれしいんですけど、その反面不安な気持ちも大きくて。例えば今までは2人だけでMCをしたこともなかったし、本当にパフォーマーとしてバンド内で踊ったりいろいろしてただけなので……不安でしたね。 ──かなり不安そうな顔をしてますが。 まい:……(強がった表情&言い方で)全然大丈夫でーす! 全員:あはははは!(笑) KOGA:なんでムキになるの?(笑) はな:喧嘩腰? まい:これは勝負なので。こちらは負ける気はしないんで! ──頼もしいですね(笑)。こういうガチャガチャダンサーズの2人を見て、楽器チームの皆さんはどう思いますか? KOGA:うん、成長したなって思います。 はな:そうだね。やっぱりこれをやりたいと思ってやってるからでしょうけど、成長が早いというか。だからこっちも負けてらんないなっていうのは常に思ってます。でもうちらはうちらでずっと活動を続けて重ねてきたものがあるので、負けないですけどね! TOMO-ZO:譲らないね(笑)。 KOGA:でもガチャガチャダンサーズが2人だけでいろいろ経験したことを、今度はGacharic Spinにも生かしていけると思うんです。そうすることでより6人のステージが濃くなると思うので、今回の展開はGacharic Spinにとって大きなプラスになるはずです。2人にとっても成長につながるし、楽器チームにとっても大きな刺激になるしね。
20150226-gacha2.jpg

パッと聴いて耳に残る曲を選びたいし作りたい

20150226-gacha7.jpg

Gacharic Spin『赤裸ライアー/溶けないCANDY(Type-A)』(ビクターエンタテインメント)

──楽曲についてですが、楽器チームによる「赤裸ライアー」はめちゃめちゃカッコイイ攻めのロックチューンで、個々の楽器の見せ場が本当に多いアレンジですね。ドラムなんて中盤になると、どこのヘヴィメタルバンドかっていうくらいにツインペダルを踏みまくってますし。 はな:はい、いつもよりちょっと多めに入れてみました(笑)。 ──そして「溶けないCANDY」はEDMの色合いを取り入れた、かわいらしいテイストのダンスチューンです。両曲に共通してるのはデジタル要素を取り入れつつも、非常にポップでメロディアスということ。だからどんなに激しい演奏やアレンジでも、聴いたときにしっかりメロディが耳に残るんですよね。 全員:うれしい! ──今回のシングルにおいて曲を選ぶ際、何か基準のようなものはあったんですか? はな:Gacharic Spinは楽器チームみんなが曲を書いて提出しあって、そこから全員で選ぶんです。単純に「いいな」と思うものを選ぶんですけど、その選ぶものがキャッチーなメロディの曲が多いんですよ。やっぱりいろんな人に聴いてもらいたいから、パッと聴いて耳に残るような曲を選びたいし、作りたいと思ってます。 ──しかもメロディと同時に、楽器隊のインパクトある演奏も耳に残りますしね。皆さんこの2曲のレコーディングではどういうポイントを意識しましたか? はな:あ、実は「溶けないCANDY」のほうは演奏してないんです。 ──あれ、そうなんですね? はな:Gacharic Spinによく似たMETALLIC SPINっていう、北欧のほうから来たであろうバンドが演奏していて。見た目は似てるんですけど、私たちではないという。 KOGA:……という設定がありまして(笑)。 ──あ、なるほど(笑)。納得しました。では「赤裸ライアー」の演奏について、注目してほしいポイントを教えてください。 TOMO-ZO:この曲はいつにも増してギターサウンドが前に出まくってるので、そういう熱い部分に注目してほしいです。あと、楽器隊それぞれに見せ場があって、私も負けないように間奏で速弾きをしまくってるので、そこもじっくり聴いてほしいです。 オレオレオナ(以下、オレオ):オレオは最後のソロのピュルルルっていうところを、私も意外に弾けちゃうんだぞっていう気持ちで弾きました♡ TOMO-ZO:それ感想だし(笑)。 はな:だから?(笑) オレオ:だから……聴いて、そこを!(笑) はな:私は……楽曲のアレンジは基本的に私がやってるんですけど、今回は結構面白いギミックを入れられたし、メンバーの見せ場もちゃんと作れたし、全体の構成も面白くできたと思ってるので、そういう面を意識して聴いてもらえたらうれしいです。 KOGA:本当にメジャー第1弾シングルにふさわしい自己紹介的な、「Gacharic Spinとはなんぞや?」ってことがよくわかる1曲を作ることができたので、まずはこれを聴いて、ミュージックビデオも観ていただいて、Gacharic Spinのことを知ってもらえたらいいなと思います。ベーシストとしては……実は意外とチョッパー(=スラップ)から始まる曲ってそんなに多くなくて、そういう意味では貴重な楽曲なので冒頭から注目して聴いてもらえたらうれしいです。

世間が考えるバンドの枠をはみ出ていきたい

20150226-gacha8.jpg

Gacharic Spin『赤裸ライアー/溶けないCANDY(Type-B)』(ビクターエンタテインメント)

──そしてガチャガチャダンサーズが歌う「溶けないCANDY」の聴きどころについても。 まい:「溶けないCANDY」はこれぞアイドルというような、かわいらしくてポップな内容になっています。今回の振り付けはみんなで踊ることを意識してオレオさんが考えてくれたんです。この曲はアニメ「テンカイナイト」のエンディングテーマにもなっていて、実際にアニメのエンディングでもロボットがこの振りで踊ってるので、それを観たりしてファンの人たちにも覚えてもらえたらうれしいです。 ありさ:そうですね。まずはサビの振り付けを覚えてもらって、みんなで一緒に踊りたいです!でも 今回はガチャピンとの勝負なので、CDを買うときはガチャダン(Type-B)のほうでお願いします!(笑) KOGA:演奏チーム(Type-A)のほうもお願いします! ──このシングルで幕を開ける2015年、どういう1年にしていきたいですか? KOGA:やっぱり進化したいです! Gacharic Spinを見るたびに「こんなことやってんの?」って驚いてしまうような、いい意味で「それやっちゃうの?」ってことを常に仕掛けていきたいと思います。 はな:バンドではあるんですけども、世間が考えるバンドの枠をはみ出ていきたいなって。 KOGA:曲によってはオレオが踊り狂ってるだけの曲もあるし。 オレオ:でんぐり返ししてるだけとかね(笑)。 KOGA:もちろんバンドとしての基盤がちゃんとしてないとバカなことばかりやってもダメなので、演奏や楽曲をしっかりさせた上でいろんなことを考えていきたいです。 はな:まだまだやれることはあるはずですしね。 KOGA:今年は目を離さずに、進化する姿を逐一見ていてほしいです。 (取材・文=西廣智一)
150131_gs_j_tsujo.jpg

Gacharic Spin『赤裸ライアー/溶けないCANDY(通常盤)』(ビクターエンタテインメント)

Type-A 【CD+DVD】 VIZL-774 ¥1,667(税抜) 〈収録曲〉 M-1 赤裸ライアー / Gacharic Spin M-2 溶けないCANDY / ガチャガチャダンサーズ M-3 赤裸ライアー(Inst.) 【DVD収録内容】  Gacharic Spin「赤裸ライアー」ミュージックビデオ&メイキング Type-B 【CD+DVD】 VIZL-775 ¥1,667(税抜) 〈収録曲〉 M-1 溶けないCANDY / ガチャガチャダンサーズ M-2 赤裸ライアー / Gacharic Spin M-3 溶けないCANDY(Inst.) 【DVD収録内容】  ガチャガチャダンサーズ「溶けないCANDY」ミュージックビデオ&メイキング Type-C 【CD】 VICL-37013 ¥926(税抜) 〈収録曲〉 M-1 溶けないCANDY / ガチャガチャダンサーズ M-2 赤裸ライアー / Gacharic Spin ☆TX系アニメ「テンカイナイト」のアニメジャケット仕様 通常盤 【CD】 VICL-37014 ¥1,296(税抜) 〈収録曲〉 M-1 赤裸ライアー / Gacharic Spin M-2 溶けないCANDY / ガチャガチャダンサーズ M-3 ヌーディリズム(LIVE VERSION 2014) / Gacharic Spin ※CD封入応募特典は下記OFFICIAL WEB SITEへ ■ライブ情報 「赤裸ライアー」ツアー 3月1日(日) 埼玉・西川口LIVE HOUSE Hearts 3月7日(土) 新潟・CLUB RIVERST 3月15日(日) 山口・周南TIKI-TA 3月21日(土・祝) 長野・LIVE HOUSE J 3月22日(日) 石川・LIVE HOUSE vanvanV4 3月29日(日) 宮城・HooK SENDAI 4月4日(土) 北海道・Sound Lab mole 4月9日(木) 柏・PALOOZA 4月11日(土) 福岡・FUKUOKA BEAT STATION 4月12日(日) 広島・ナミキジャンクション 4月17日(金) 大阪・umeda AKASO 4月19日(日) 愛知・名古屋Electric Lady Land 4月24日(金) 神奈川・Thunder Snake ATSUGI 「赤裸ライアー」ツアーファイナル 5月3日(日) 東京・渋谷公会堂 ■OFFICIAL WEB SITE http://gacharicspin.com/

浜端ヨウヘイが語る、渾身のバラードが生まれた場所「“死にたい”とは“生きたい”という意味だと」

20150225-hamabata.jpg

【リアルサウンドより】  山崎まさよしやスキマスイッチ、秦 基博、さかいゆうなど、多くの優れたアーティストを輩出してきたオフィスオーガスタから、2014年11月にデビューした浜端ヨウヘイが、新シングル『無責任』を2月25日にリリースする。 同作の表題曲はこれまでライブでも何度も披露され、CD化が熱望されていたバラード。心情を赤裸々につづった歌詞と、ピアノに向かって切ないメロディを歌い上げる浜端の姿が印象的だ。今回のインタビューでは、浜端が同曲をピアノで歌い上げた理由や、作曲時の起こった出来事、そして今後の展望について、大いに語ってもらった。 ――前回のデビューシングル『結−yui-』は歌のダイナミズムを重視した作品でしたが、今回はまた少し雰囲気が変わっていますね。歌詞のディープな面が軸になっていて、浜端さんの内面性が表現されていると感じました。 浜端:そうですね。前のシングルとは明確に違うと思います。 ――ピアノとストリングスが入り、重厚なサウンドとなった点も特徴ですが、この曲はそもそもいつ出来たのでしょう? 浜端:ちょうど二年前くらいの曲ですね。音楽に専念するために一念発起し、前の会社を退職した時期に作りました。僕の周りには当時たくさん音楽仲間がいて、そういう人達は音楽しかやっていないんです。だから自分でツアーを組んで、毎日旅をして……という活動、生活のようなものに憧れがありました。そして、そこに踏み切った時期ではあったんですが、「ついにそういう暮らしになったぜ」という気持ちの反面、「俺、ほんまに大丈夫なのかな」という気持ちも同じくらいあったんですね。 ――希望と不安が半ばする時期だったと。 浜端:がむしゃらにやるしかないと思っていたので、今考えても無茶なスケジュールやなと思うような数のライブをしていました。ライブがない時は少しさぼっているような気持ちになるくらい、ひたすらライブの毎日でしたね。その中で、周りの人やお客さんにも沢山「ヨウヘイなら大丈夫」というような言葉をもらって救われたし、ありがたかったんですが、根拠のない言葉にも思えて、どこか不安になり、疑り深くなったりもしました。当時は大丈夫という言葉がとても無責任な言葉と思ったんです。 ――タイトルの由来はそこにあるんですね。 浜端:そうですね。ただ、無責任だと思いながらも、当時の僕は絶対に「大丈夫」って言われたかったと思うんですよ。周りの人もその言葉しか掛けようがなかったんだろうなって。きっと“頑張って”って言われても傷つくだけなので。“大丈夫”という応援の言葉って、根拠はないけど、もしかしたらその時に必要で、唯一かけてもらえる言葉なのかなって。そんなところから生まれた曲ですね。 ――なるほど。無責任と捉えることもできる言葉だけど、ご自身にとっては大切な言葉だったと。そうした視点に立つことで、言葉に二重の意味が生まれていて、曲に深みをもたらしているように思います。 浜端:この言葉しかないんじゃないか。そんな気持ちになったんですよね。 ――ちなみに、当時はライブを月に何本くらいやってましたか。 浜端:20本くらいですね。不安をかき消すように忙しくしていましたね。ライブ中にそういうのは感じずにいられましたから。 ――最終的にこの曲は「乗り越える」ことをテーマとしていると思うんですが、ご自身で振り返ってみて、不安をふりきって音楽を続けていこうと思えたのはなぜだと思いますか。 浜端:それまでの僕はわりと慎重なところがあって、“これしかない”という状態になったことがなかったんですね。29歳になって背水の陣で音楽を始めるということは、絶対しんどいとわかった状態なので、不思議と辞める気持ちにはならなかったですね。

浜端ヨウヘイ / 無責任

――浜端さん自身が、リミッターを外して冒険をした時期だったんですね。そうしたハードな時期に生まれた曲が、ピアノで歌い上げる曲になった理由は? 浜端:僕の思いをストレートに書いた曲は、ピアノでやりたいんです。というのも、グランドピアノで弾いていると、譜面立てがあって自分の顔が映る。それが自分と話している気分になるんですよね。過去の応援歌のようなものは、自分に向けて書いたところがあるので、自分に向かって話せないとだめだなっていうのはあります。 ――これは作曲段階からピアノで書いた曲ですか? 浜端:はい。松山かどこかにツアー中だったと思います。メロディを思いついて会場入りして、リハーサル前にピアノを弾いたら、もう頭から最後までできていて、その日のうちにライブで歌いました。 ――そうやって完成した曲は、確かに自分自身に語りかけている面はありつつ、リスナーに向けて歌っている印象もあります。 浜端:書き始めの頃は、自分に対してしか歌っていなかったんですが、環境や情報が変化していく中で、少しずつ聴いてくれている人に向かっている、というのは実感しましたね。特に山さん(山崎まさよし)の前座をさせてもらったときに、僕向きだった曲が別の方向性を持ち始めたなっていうのはありました。ただ、一番初めに自分に向かっているというのはぶれないようにしていきたいですね。 ――なるほど。歌い初めのフレーズ「死にたい」というのはなかなか衝撃的だと思いますがーー。 浜端:確かに、“死にたい”って思うぐらいのことって、そんなにないですよね。僕はもともとポジティブというか、暗い方に全然考えない人間なんです。でも、消えたいっていうくらいの落ち込む時期はこの期間だけありました。そんな中で〈「死にたい」って書いて「生きたい」と読んだ〉ってフレーズができたんですよ。「死にたい」っていうのはうまく生きられないから死ぬのであって、本当はうまく生きたいんですよね。だから、「死にたい」というのは「生きたい」という意味だなぁと思って書きました。そういう歌をバラードかつ応援歌で……という曲のアイデアになりました。 ――「無責任」が生まれた2013年といえば、音楽産業の低迷が何度もニュースになって、音楽を始めるのに不透明感があった時期ですが……。 浜端:当時、ライブでやっていく自信は出てきていたんです。各地方で回るエリアやルートができて、なんとかやっていけるという確信があったから、仕事も辞めてっていうとこまで踏み出せたんですよね。近くにいた先輩、たとえば花*花さんのように、ライブで日本中をまわるやり方が自分には合ってると思ったんです。直接お客さんの顔を見てっていう。結局は花*花のいずみさんがケツたたいてくれて、本格的に動いたんですけどね。
20150224-hamabata4.jpg

――なるほど。実際全国を回って、お客さんと交流する中で自信がついたんですね。今はテンポよくCDを出していますが、ライブ活動がベースにあってそこにCDが加わってくる感覚ですか? 浜端:そうですね。僕自身がライブしかやってこなかったというのもありますけれど、できるだけライブにCDのパッケージを近づけていきたい。やっぱりライブでの表現が主軸であるべきだとも思っているんです。その中で作品としてもこだわり、ライブとは違うところをみせないといけないですよね。 ――今回の2曲目「Drivin’on the K」は50年代風のロックナンバーで、特にライブ感が出ていると思うし、3曲目「サヨナララバイ」は生っぽい歌で、ホームレコーディングのようにも聴こえます。 浜端:「サヨナララバイ」の音はそのように録りたくて工夫しました。普通にアコースティックギターとボーカルを別々に録ると、僕の声が大き過ぎるために、ギターの方のマイクが全部ひろってしまう(笑)。今回は4曲ともギター弾きながら歌ったんですけど、この曲はギターのマイクだけで録ったバージョンですね。 ――すごい声量ですね(笑)。4曲目「タイトル未定」は、これが正式タイトルなんですね。この曲もキャッチーな仕上がりで、浜端さんは曲の中に自然とフックができるタイプなのかなと感じました。 浜端:これは最近ツアー中に書いた曲です。島根県に前乗りしてホテルに泊まったとき、朝からリハーサル入りするまでの間でしたね。僕、旅先でほとんど曲は書くので。そういうときに五線譜がないと、いつもメロディの音階をカタカナで書いて作るんですけど、それをそのまま歌ってみました。 ――「ソラシドレミファレソーミ」というフレーズ、いいですね。シンガーソングライターの中にはどうキャッチーに曲を作るか悩む方も多いんですが、浜端さんはごく自然にみんなが歌いたくなるような曲を作っているように見えます。 浜端:僕が音楽をやりたいなと思った原点として、沖縄に住んだとき、みんなの中で歌ってみんなで歌ってた、というのがあるんですよ。それは根本的な部分で、ギターもって何度も沖縄に行ったし、結局移住しちゃった。そうした経験があるから、みんなで歌っているのを常にイメージしているんだと思います。
20150224-hamabata5.jpg

――ちなみに、今どれくらいストックがあるんですか。 浜端:僕の中では200曲ぐらいはありますけど、ディレクターの判断では60曲ぐらい(笑)。できたそばから聞いてもらったりしてます。長くツアーしているときほど曲作りが進みますね。そして、その曲を聞いてもらうために長くツアーをしてっていう繰り返しです。今までは、思ったことをそのまま吐き出す歌でしたけど、それを聞いている人がすぐにイメージできるようなメッセージ以外の部分をどう書いていくか。これからトライしていきたいですね。 ――その分類でいうと、今回の曲「無責任」はどちらでしょうか。 浜端:自分の話を書くつもりで書き始めたと思うんですよ。でも、周囲には迷い立ち止まっている人もいるし、ぶれない人もいるし、嘘ついている人もいるし、回り道ばっかりしている人もいる。そういう人たちと知り合い、聞いてもらう2年間で、僕だけの歌じゃなくなったような気がします。 ――わかりました。今作は失恋や失意体験などセンチメンタルな部分が出ていますが、今後はどんな歌を作っていきますか。 浜端:これまでの僕の歌には、基本的に「君」がいないんです。だから次は「君」が横にいるような曲を作りたいですね。あとはやっぱり、行間に思いを込めるような歌詞を書きたい。日本の古い和歌とかも「友が川を下っていく」というのを読んでなんて切ないんだろうとね。まぁ、その友は戦争に行って帰ってこないから切ないんであって、何も詳細が書いてなくて、「友が川を下っていく」っていうだけの一文に哀愁のようなものを感じるのは、日本語だからだと思うんです。そこに今後チャレンジしていきたい。今の僕は全部言ってしまっているのでね(笑)。言葉で言わずとも、聞き手が推し量ってくれるような曲作りができたらなと思います。 ――浜端さんの歌声には、ポップスとして広く聞かれるポテンシャルがあるようにも思います。先程みんなで歌う曲を書きたいとおっしゃっていましたが、それがライブだけでなく、放送メディアを通してヒットすることも期待したいですね。 浜端:僕は自分の声があまり好きじゃなかったんですよ。普通だし、好きでもないし、高いわけでも低いわけでもない。特徴がないと思ってました。だから、ライブをして「良い声ですね」って言われる言葉に否定的でした。でも、続けていくほど「良い」と言ってくれる人が増えていって、もしかしたらこれは良い声なのかもしれないと思い始めました。今も「俺、良い声だな」と思いながら歌っているわけではないですが、「良い声だ」と言ってくれる人がいるのは素直にありがたいと思います。 ――例えば具体的に1年後、こうなっていたいという目標はありますか。 浜端:「シンガーソングライターといえば?」という話になったときに、名前が思い浮かべてもらえるくらいの存在にはなりたいです。数年前はあまり自覚がなかったのですが、今は「職業=シンガーソングライター」と書けますね。 ――そういうのは、2年前とは変化した部分でもありますね。 浜端:音楽に専念するために仕事を辞めた時に、フェイスブックのプロフィールでシンガーソングライターに転職しましたって書いたら、たくさん「いいね」がきたのですが、次の日あたりに見直したら恥ずかしくなって消しました。ただ、その消しちゃえるくらいの気持ちだったのかなって。今だったら消さないですからね(笑)。 ――今後の予定としては? 浜端:3月からアルバム制作に入ります。ストックに頼らず、新しい曲をどんどん書いていきたいです。そこで生まれるのが今の僕の言葉、歌、メロディだと思うので。 (取材・文=神谷弘一/写真=杉田 真)
20150130-hamabata3.jpg

浜端ヨウヘイ『無責任(初回生産限定盤)』

■リリース情報 『無責任』 発売:2月25日(水) 価格:通常盤(CDのみ)¥1,000(税込)    初回生産限定盤(SINGLE+DVD) ¥1,500(税込) <CD収録内容> 1.無責任 2.Drivin' on the K 3.サヨナララバイ 4.タイトル未定 ■関連リンク 浜端ヨウヘイ オフィシャルウェブサイト オフィシャルFacebook

中田ヤスタカの最新形ここにあり CAPSULE新作が海外でチャート好調の理由とは?

20141128-capsule.jpg

【リアルサウンドより】  中田ヤスタカとこしじまとしこによるユニット・CAPSULEの15枚目となる最新アルバム『WAVE RUNNER』(2015年2月18日発売)が好調だ。結成18年目とは思えないフレッシュさ溢れる謎めいた存在感も気になるところだが、先日ニコ生初降臨となった「『WAVE RUNNER』完成記念打ち上げ~屋形船から生中継 “ナカタブネ”スペシャル~」での二人は、ゆるさ溢れるトークで15万人のオーディエンスを魅了していたことが忘れられない。  最新アルバム『WAVE RUNNER』は、国内オリコン・ウィークリーチャートTOP5にランクインはもちろん、世界各国のiTunes(R)Store ダンスチャートを席巻していることで話題だ。総合チャートでも2位を記録した日本を始め、香港で1位、エストニアで1位、アメリカで3位、フランスで4位、台湾で4位という快挙となっている。  ワーナーへの移籍第一弾となった前作アルバム『CAPS LOCK』(2013年10月23日発売)が、コンセプチュアルでミニマルなリスニング・アルバムであったことから一変、最新作『WAVE RUNNER』はド直球に踊れるダンサブルな楽曲集に仕上がっている。しかも、ダンスミュージックながら分数が4分前後に押さえられたポップス・フォーマットなのも気になるポイントだ。EDMといった世界的なトレンドとのリンクにこだわることなく、それら理由を前作と比べ、“作品性の違いではなく音楽の機能性の違い”と語っているところが、中田ヤスタカらしさだ。本人が語っていた逸話だが、CAPSULEのアルバム作品は、例えば漫画作品としてとらえた方が理解しやすいかもしれない。絶対作品主義。アーティストとして讃えられることよりも、純粋に作品としての評価を望んでいるのだろう。ゆえに、メディアにはほとんど登場しないが、会いたいと思えばクラブ・イベントで、普通にグラス片手にメンバーは呑んでいたりするのだ。  筆者は12年前、2003年から中田ヤスタカにインタビューをしてきた。その経験から得たCAPSULEのクリエイティヴの本質とは“中田ヤスタカ自身が一番作りたい音を具現化するステージ”というのが答えだ。途中、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅでの大ブレイクがありながらも、CAPSULEでの活動ではストイックなまでにやりたいことを貫き通してきた。軸となるキーワードは、中田ヤスタカの嗜好性である未来感でありSF的なテイスト。中田ヤスタカはCAPSULEでの制作においてデモ音源を一切作らない。楽曲キープもない。作りたいイメージを〆切ギリギリまでひとりでいじり倒して構築しているこだわりに着目したい。中田ヤスタカの頭で鳴り響く最旬な音の成果がCAPSULEなのだ。  スピード感ある制作スタイルということもあり、CAPSULEの場合、これまでプロモーション・ツールとしてMV制作が追いつかないことが多かった。しかし、最新作『WAVE RUNNER』ではPerfumeやサカナクション、OK Goなどでお馴染みの関和亮監督を迎えて制作したMV「Another World」の存在が興味深い。映像テーマは、近未来である2020年、エクストリーム・スポーツとしてドローン・レースが日常で一般化した様を描いている。“CAPSULE=近未来のライフスタイルを音楽として表現する”というコンセプトのあらわれだ。映画『AKIRA』や『攻殻機動隊』など海外での成功によって、日本文化は、近未来ライフスタイルの映像的なヴィジョンを求められている。中田ヤスタカは自らの嗜好性と相まって、これらSF的な期待に『WAVE RUNNER』で図らずも答えたことが、海外からのコメントが多数寄せられているように、海外でも好調なチャートアクションを裏付けているのだと思う。

CAPSULE - "Another World" Music Video

 最新作『WAVE RUNNER』でまず注目すべきは、MVでもフィーチュアされた「Another World」、歌メロがポップに魔法がかった「Feel Again」、完全フロア仕様にポップな「Dreamin'Boy」、映画的ドラマティックな世界観をつむぎだすハードな「White As Snow」だ。中田ヤスタカ節とも言えるせつなさ満載の絶妙に裏へ裏へ伸びていくメロディ、心に響きわたるこしじまとしこによる歌声のインパクトが気持ちをアップリフティングしてくれる。ダンサブルなCAPSULEサウンドとなると、世間ではEDMカルチャーと結び付けたくなるだろうが、安易なEDMムーヴメントとの融合を中田ヤスタカは良しとしていない。EDMが盛り上がる以前からCAPSULEはそれこそ“エレクトロニック・ダンス・ミュージック”だったのだ。一時的なブームではなく“ポップスとして、カルチャーとしてのダンスミュージックとしての在り方”。そんなこだわりを感じるサウンド・プロダクションに耳を、身体を素直に委ねて欲しい。  ここ数年、CAPSULEはライブではロックフェスへ出演し、若きロックファンへ向けてダンスミュージックの楽しさを訴求し続けてきた。いわゆるワンマン公演ではないが故に、常にアウェーな形で大きな盛り上がりを生み出してきた。そんななか、中田ヤスタカのDJスタイルにも近いサウンドを鳴らす最新作『WAVE RUNNER』は、ロックフェスのダイナミズムや、クラブでのDJ経験から受けた、オーディエンスが生み出す“リターンのエネルギー”の影響を強く感じたのだ。  そしてこの春、ついにCAPSULE初のワンマンライブ・ツアーが開催される。CAPSULEファンが集結する完全なるホーム環境でのライブに期待をしたい。作品として単独で完結しながらも、オーディエンスとのコミュニケーション=ダンスミュージックの本質をとらえた最新作『WAVE RUNNER』が、ライブにおいて機能性をもって至福なサウンド空間を生み出すことに注目したいと思う。 ■ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)(Twitter) 1976年東京生まれ。happy dragon.LLP代表。Yahoo!ニュース、ミュージック・マガジン、音楽主義などに寄稿。J-WAVE、MTV81、2.5D、ニコ生などでも活躍。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)
20141128-capsule2.JPG

CAPSULE『WAVE RUNNER』

■リリース情報 『WAVE RUNNER』 発売:2015月2月18日(水) 価格:初回限定盤(2CD) ¥3,000(税抜)    通常盤(1CD)  ¥2,500(税抜) <CD収録内容> ・disc1 01 Wave Runner 02 Another World 03 Dreamin' Boy 04 Hero 05 Dancing Planet 06 Depth(vocal dub mix) 07 Feel Again 08 Unrequited Love 09 White As Snow 10 Beyond The Sky ・disc2 ※初回限定盤のみ 01 Another World(extended mix) 02 Hero(extended mix) 03 Feel Again(extended mix) 04 White As Snow(extended mix)

Berryz工房が紡いできた音楽のグラデーション 全楽曲をジャンル分類で振り返る(前編)

20140222-PKCP-5288th_.jpg

全シングルや未発表曲を収録したベストアルバム『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』(PICCOLO TOWN)

【リアルサウンドより】  来月3日、つまり2015年3月3日の日本武道館公演をもって無期限活動停止するBerryz工房。2004年3月3日のCDデビューから数えて11年の活動期間中、発表された総楽曲数はシングル曲46+カップリング曲35+アルバム曲79で、ちょうど160曲となる。  楽曲ほぼ全ての作詞作曲およびプロデュースを務めたのは、言うまでもなくつんく♂である。そのソングライティングには誰も真似できない独自の個性が貫かれているが、それと同時に様々な音楽要素によるバリエーションの広がりも見てとれるのが、Berryz工房楽曲(およびハロプロ楽曲)の面白さだろう。基本的にはアイドルポップスだが、そこにはロックやファンクをはじめとした多彩な音楽の遺伝子が組み込まれ交錯しており、その作成過程ではつんく♂のみならず編曲家の手腕に拠るところも大きい。そして実演するBerryz工房のメンバーたちによって、いろんな形の音楽の実が成り収穫されてきたのがこの11年間である。  本稿では、Berryz工房の全楽曲をそこに含まれた音楽ジャンル要素に従って分類し、その傾向や聴きどころを振り返っていく。そうすることが彼女たちのこれまでの活動に対する餞(はなむけ)のひとつになると考えた。

楽曲の数え方——正規楽曲と準楽曲

 実際の分類に移る前に、楽曲の実数についてはっきりさせておこう。  まず、本稿ではあくまで「Berryz工房」名義の楽曲のみを取り扱っていく。2004年3月3日のCDデビュー日以前にも、メンバーはハロー!プロジェクトキッズやZYX、あぁ!といったユニットでの活動経験があり楽曲もリリースされているが、それらは今回含めない。  デビュー日以降の活動期間中、メンバー全員が参加した楽曲なども存在するが(ハロー!プロジェクト モベキマス「ブスにならない哲学」、Berryz工房×℃-ute「甘酸っぱい春にサクラサク」等)、それらも含めない。ただし、「甘酸っぱい〜」のカップリング曲「単純すぎなの私…」はBerryz工房名義なので含める。  このようにして数えた総計が、前述の160曲である。ただ、そこではバージョン違い等の「準楽曲」も一緒に数えている。「正規楽曲」の前に、まずはこちらを先に見ていこう。 ※以下、曲名の末尾にリリース年表記。シングル曲とカップリング曲はその旨も併記。無表記の場合はアルバム曲。収録盤名は長くなるので省略したが、気になるものがあったら各自調べてください。

<リミックス>

・あなたなしでは生きてゆけない (FUNKY remix) [2004] ・ピリリと行こう! (MOREピリリRemix) [2004] ・スッペシャル ジェネレ〜ション (エキセントリックスRemix) [2008] ・ジンギスカン タルタルミックス / ジンギスカン×Berryz工房 [2008] ※シングル ・ジンギスカン ピストン西沢 Two Turntable Remix / ジンギスカン×Berryz工房 [2008] ・ももち! 許してにゃん♡体操 (許さにゃいRemix) / ももち (嗣永桃子 feat. Berryz工房) [2013]  アイドルポップスである原曲を、クラブミュージック寄りのダンスサウンドに変化させた、いわゆる「リミックス」曲。

<ハロプロ楽曲カバー>

・Hello! のテーマ (Berryz工房Version) [2004] ・Yeah! めっちゃホリディ / 菅谷梨沙子 [2006] ・チュッ! 夏パ〜ティ / 徳永千奈美・夏焼雅・熊井友理奈 [2006] ・ハレーション サマー / 清水佐紀・嗣永桃子・須藤茉麻 [2006]  それぞれHello! Project、松浦亜弥、三人祭、ココナッツ娘のカバーで、バックトラックはリアレンジされている。

<ハロプロ楽曲カバー(未発表)>

・丸い太陽 (Unreleased Cover Ver.) / 清水佐紀・夏焼雅・熊井友理奈・菅谷梨沙子 [2015] ・GET UP! ラッパー (Unreleased Cover Ver.) / 嗣永桃子・徳永千奈美・須藤茉麻 [2015] ・ぴったりしたいX'mas! (Unreleased Cover Ver.) [2015]  それぞれ太陽とシスコムーン、SALT5、プッチモニのカバーで、バックトラックは原曲と同一。録音自体は2006年頃と推察されるが、先日リリースされた『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』で初めて陽の目を見た。

<舞台用楽曲>

・やっと会えたね (New Recording) [2015] ・サンクユーベリーベリー (New Recording) [2015] ・我らジャンヌ (New Recording) [2015]  それぞれ『江戸から着信!? 〜タイムスリップto圏外!〜』[2007]、『サンク ユー ベリー ベリー』[2009]、『我らジャンヌ 〜少女聖戦歌劇〜』[2014]といった演劇/ミュージカル用に作られた楽曲。『完熟Berryz工房』のために新録音された。

<バージョン違い(小異)>

・マジカルフューチャー! (ジ・オーガ ENDテーマVer.) [2010] ・ヒロインになろうか! (Early Ver.) [2015]  「マジカルフューチャー!」はニンテンドーDS用ゲーム『イナズマイレブン3 世界への挑戦!! ジ・オーガ』EDテーマのタイアップソング。ノーマルバージョンに比べ、こちらのバージョンは間奏が長くなっている。「ヒロインになろうか! (Early Ver.)」はシングルリリース前にライブ披露されていた時のバージョンで、大サビが転調しない等の違いがある。

<バージョン違い(大異)>

・雄叫びボーイ WAO! (スパークVer.) [2010] ※カップリング ・あなたなしでは生きてゆけない (2013 Ver.) [2013] ・あなたなしでは生きてゆけない (04-13-15完熟Completion Ver.) [2015]  「雄叫びボーイ WAO!」を生演奏によるバンドサウンドで衣替えしたのがスパークVer.。「あなたなしでは〜」はデビュー曲だが、10年後にボーカル新録音したのが「2013 Ver.」。トラックにストリングス追加など一部手を加え、2015年のボーカル新録音も加えたのが「04-13-15完熟Completion Ver.」である。

<インストゥルメンタル>

・スッペシャルOP [2005] ・スッペシャルED [2005]  2ndアルバム『第②成長記』の最初と最後に収録されたインスト曲。「OP」はファンファーレ風、「ED」はメンバーの「修学旅行の布団の中での会話」風なおまけ的トラック。  以上23曲は、本稿では「準楽曲」という扱いで考える。それでは残り137曲の正規楽曲を見ていきたい。  実際に分類を行ってみると、5系統33個のカテゴリに分けることができた。ただし最初に断っておきたいのは、以下に書かれているカテゴリのジャンル名が絶対ではないということ。その楽曲を表すジャンルが1個だけというのは稀で、たいていは複数個の音楽ジャンル要素が混在していることが多い。その中で特に要素の濃いものを暫定的に選び分類したので、読み進めていくうちに異論反論も感じるとは思うが、そこも含めて楽しんでいただけると幸いである。

ロック系

<パンク・ロック>

・友情 純情 oh 青春 [2004] ※カップリング ・ダーリン I LOVE YOU (Berryz工房 ver.) [2008] ※カップリング ・本気ボンバー!! [2010] ※シングル ・ヒーロー現る! [2011] ※カップリング ・一丁目ロック! [2011] ・かっちょ良い歌 (フィーチャリング Berryz工房) [2011] ※カップリング ・世の中薔薇色 [2012]  まずはロック系。ここで言う「パンク・ロック」は、DIYや反体制といった精神性ではなく、あくまでサウンド面での特徴だと思っていただきたい。どの曲にも共通しているのは、8ビートのスピード感あふれるロックンロールだということ。「友情 純情 oh 青春」は曲終盤で観客がタオルを頭上に放り投げるのがお約束、「一丁目ロック!」は観客がサビメロを追いかけで一緒にコーラスするのがお約束となっている、どちらもライブでの定番ナンバー。その他の曲も、どれもライブ現場で盛り上がるものばかりだ。

<ポップ・ロック>

・ファイティングポーズはダテじゃない! [2004] ※シングル ・恋はひっぱりだこ [2004] ・安心感 [2004] ・Berryz工房行進曲 [2005] ・CLAP! / 夏焼雅・徳永千奈美・熊井友理奈 [2008] ・ライバル [2009] ※シングル ・ヤキモチをください! / 清水佐紀・徳永千奈美・菅谷梨沙子 [2010] ・Be 元気 <成せば成るっ!> [2012] ※シングル ・永久の歌 [2014] ※シングル  「ポップ・ロック」とはかなり曖昧な言い方だが、ここでは「メジャー・コードの明るくキャッチーな、ポップ性の強いロック」程度の意味で使っている。「Berryz工房行進曲」はカントリー調、「CLAP!」はフォーク調、「ヤキモチをください!」はミディアムテンポと、他の曲と少し毛色が違うものもいくつか含んでいる。「ライバル」はファン企画である「ハロプロ楽曲大賞」2009年度の1位を獲得したナンバーで、個人的にもBerryz楽曲中、十指に入る一曲である。

「ライバル」

<スカ>

・素肌ピチピチ [2006] ※カップリング ・思い立ったら 吉でっせ! / 徳永千奈美・須藤茉麻・熊井友理奈 [2007] ・付き合ってるのに片思い [2007] ※シングル  音楽ジャンルの「スカ」と言った場合、60年代のいわゆる「オーセンティック・スカ」と、80年代にイギリスでパンクと結びついた「2トーン・スカ」の2種類があるが、ここでは後者の意味で使っている。とはいってもスカ要素が全面にみなぎっているのは「素肌ピチピチ」で、他2曲は曲の一部分に、スカの音楽的特徴である裏拍打ちのバックビートが見られる程度。「付き合ってるのに片思い」はスカの軽快なビートや華やかなブラスなどにより構成された、アイドルポップスの王道的サウンド。この路線においてはBerryz楽曲中でも一、二を争う高い完成度ではないだろうか。個人的にも十指に入る。

「付き合ってるのに片思い」

<レゲエ>

・小遣いUP大作戦 [2004]  スカの隣接ジャンルといえばレゲエ。「小遣いUP大作戦」は、お小遣いの少ない女の子の憂鬱をダウナーなレゲエサウンドで表現したとんでもない一曲。

<HR/HM>

・胸さわぎスカーレット [2006] ※シングル ・サヨナラ 激しき恋 [2007] ・バカにしないで / 清水佐紀・夏焼雅・熊井友理奈・菅谷梨沙子 [2008] ・男の子 [2009] ・愛には 愛でしょ / 嗣永桃子・夏焼雅 [2010] ・愛の弾丸 [2011] ※シングル ・ROCKエロティック [2013] ※シングル  「HR/HM」は「ハードロック/ヘヴィメタル」の略。とはいっても、この中で一番HR/HMに近いのは「男の子」(特にBメロ以降の展開)で、その他は比較的ハードなギターサウンドが見られる、ぐらいのものを分類した。「胸さわぎスカーレット」はファンキーなニュアンスが強く、「ROCKエロティック」はEDM以降のサウンド要素が強い一曲。しかし男装衣装の華やかさ含め、Berryzロック路線の最高峰は「ROCKエロティック」だろう。

<(広義の)ロック>

・雄叫びボーイ WAO! [2010] ※シングル ・マジカルフューチャー! [2011] ・大人にはなりたくない 早く大人になりたい [2011] ※カップリング ・WANT! [2012] ※シングル ・男前 / 嗣永桃子・熊井友理奈 [2013]  他のロックカテゴリにはいまいち当てはまらないが、強いて言えばロック、という曲を集めたのがここ。ギターがあまり重視されてないもの、という言い方もできる。「雄叫びボーイ WAO!」などは、ジャンル特定にかなり苦労する一曲ではないだろうか。「WANT!」は、つんく♂公式サイト掲載のライナーノーツによれば、「デジタルロックというか、ローリングストーンズの「MISS YOU」のようなかっこいいロックをJ-POP風にデジロック化するとどうなるか、というテーマで頭の中で変換し、少々ダンサブルというかDiscoな要素も取り入れ仕上げております」とのことで、ジャンル混淆がかなり深まっている。わかりやすいポップさをさほど気にしてないようなところもあり、非常に面白い一曲だと感じた。

R&B系

<コンテンポラリーR&B>

・あなたなしでは生きてゆけない [2004] ※シングル ・私がすることない程 全部してくれる彼 / 嗣永桃子・菅谷梨沙子 [2007] ・REAL LOVE / 菅谷梨沙子 [2008] ・Ah Merry-go-round / 清水佐紀・嗣永桃子 [2008] ・Shy boy [2012] ・恋愛模様 / 徳永千奈美・須藤茉麻・熊井友理奈・菅谷梨沙子 [2012] ・新しい日々 / 清水佐紀・嗣永桃子・夏焼雅 [2012] ・恋 いとしき季節 / 清水佐紀・夏焼雅・菅谷梨沙子 [2013] ・女の子にしかわかんない丁度があるの [2014]  R&B=リズム・アンド・ブルースは1940年代から続くジャンルだが、ここでは現代音楽チャートの主流である米国産現行R&Bという意味で使っている。中でも「あなたなしでは生きてゆけない」「REAL LOVE」「Shy boy」「女の子にしかわかんない丁度があるの」といったAKIRA編曲担当曲の先鋭さに注目したい。特にデビュー曲でもある「あななし」は、ネプチューンズ・サウンドを援用したかのようなバックトラックと、デビューしたての小・中学生少女たちの歌声が同居。演奏と歌のギャップに面白さを見出すのがアイドルポップスの本質のひとつだとするなら、このデビュー曲の狙いも明確に見えてくる。さらに10年後には、成長した歌声で同曲を聴くことができるという物語性まで加わり、「あななし」はBerryzにとっての最重要曲となった。個人的にも十指に入る。

「あなたなしでは生きてゆけない」

<ヒップホップ>

・お昼の休憩時間。 [2005] ・図書室待機 [2006] ※カップリング ・友達は友達なんだ! [2010] ※シングル ・ちょっとさみしいな [2010] ※カップリング ・女のプライド [2011]  ヒップホップと言っても、ラップなどのわかりやすく戯画化された曲調のものではなく、ジャンル語源である「弾ける・躍動する」にもとづいた、跳ねたビートを持つ曲、ぐらいの意味でまとめた。「ちょっとさみしいな」「女のプライド」はヒップホップとのつながりも深いゴスペル色が強い楽曲。このカテゴリでの最優秀曲は「友達は友達なんだ!」だろう。個人的にも十指に入る。

「友達は友達なんだ!」

<ソウル>

・秘密のウ・タ・ヒ・メ [2005] ※カップリング ・マジ グッドチャンス サマー [2008] ※カップリング ・この指とまれ! / 嗣永桃子・徳永千奈美・須藤茉麻 [2008] ・単純すぎなの私… [2011] ※カップリング ・Mythology 〜愛のアルバム〜 [2012] ・もう、子供じゃない私なのに… [2012] ※カップリング  iTunesのチャートカテゴリでは「R&B/SOUL」と、ひとまとまりにされるほど隣接ジャンルのソウル・ミュージック。本稿では、他の同種曲に比べ「よりエモーショナルな」ぐらいの感覚でまとめた。「イイキョク」と言い換えてもいい。どれも平均点以上。「Mythology 〜愛のアルバム〜」は松井寛編曲による流麗なサルソウル・サウンド。

<ファンク>

・スッペシャル ジェネレ〜ション [2005] ※シングル ・21時までのシンデレラ [2005] ※シングル ・我ら! Berryz仮面 / Berryz仮面 [2007] ※カップリング ・HAPPY! Stand Up [2008]  「ファンク」も定義が難しい。ファンキー度の強い曲を集めたらこの4曲になってしまった。「我ら! Berryz仮面」は特撮ソングのパロディであり、パーカッションの目立ち具合から『アクマイザー3』OP「勝利だ! アクマイザー3」あたりを連想した。「スッペシャル ジェネレ〜ション」は、つんく♂ライナーノーツによれば「日本人が親しみあるリズムをバックトラックに、情熱的に仕上げる」がコンセプトだとあるが、ファンキーな特撮ソングの影響も案外あるのではないだろうか。あるいは輸入ポップスだった時代の日本の歌謡曲テイストか。同曲は「ハロプロ楽曲大賞」2005年度の1位曲で、冒頭のタイトルコールを観客も一緒に行うのがお約束になっているのを含め、Berryzの代表曲のひとつである。

<ディスコ>

・愛のスキスキ指数 上昇中 [2007] ・ジンギスカン [2008] ※シングル ・行け 行け モンキーダンス [2008] ※シングル ・抱きしめて 抱きしめて [2009] ※シングル ・青春バスガイド [2009] ※シングル ・流星ボーイ [2009] ※シングル ・シャイニング パワー [2010] ※シングル ・Because happiness [2012] ・勇気をください! [2012] ※カップリング  「LOVEマシーン」のヒットからこっち、ディスコサウンドはハロプロ楽曲の基幹のひとつとなっている。Berryzでもディスコ濃度の高い曲は多いが、活動のターニングポイントでもあったのが、ディスコクラシックス「ジンギスカン」のカバーだろう。このすぐ次のシングルが「行け 行け モンキーダンス」だった(つんく♂ライナーノーツによれば「LOVEマシーン」と「行けモン」は、どちらもシャ乱Q「ラーメン大好き小池さんの唄」のオマージュシリーズとのこと)。このあたりの文脈が、後の「cha cha SING」、そしてBerryzのポリシーとしてよく言われる「真面目にふざける」精神へとつながっていったのではないだろうか。なお、「流星ボーイ」は「LOVEマシーン」と同じくダンス☆マン編曲による一曲。

<ドゥーワップ>

・笑っちゃおうよ BOYFRIEND [2006] ※シングル ・BOMB BOMB JUMP [2011]  リズミカルなスキャットによる「ドゥーワップ」、この要素が見られるのは以上の2曲。特に「笑っちゃおうよ BOYFRIEND」はポニーテールやスタンドマイクといったビジュアル面にも50sの意匠が施されている。

<モータウン>

・パッション E-CHA E-CHA [2004] ※カップリング ・ありがとう! おともだち。 [2005] ・ガールズタイムス [2011] ・なんだかんだで良い感じ! / 徳永千奈美・須藤茉麻 [2013] ・ロマンスを語って [2014] ※シングル  「モータウン」は元々はレーベル名だが、転じてジャンル名になった。その音楽性の元にはフィル・スペクターが作り上げた「ウォール・オブ・サウンド」がある。また、「ダッダッダーッ、ダッダッダダー」という、いわゆる「モータウン・ビート」も有名。これらの要素が色濃いBerryz楽曲がこの5曲だ。「ありがとう! おともだち。」「ロマンスを語って」のウィンター感ある2曲は続けて聴いて、9年の成長を感じ取りたい。(後編につづく) ■ピロスエ 編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主宰。Twitter

クマムシ「あったかいんだからぁ♪」だけじゃない? “芸人と音楽”の新たな可能性

20150219-kumamushi.jpg

クマムシ『あったかいんだからぁ♪』

【リアルサウンドより】  お笑いコンビ・クマムシの持ちネタであり、現在若者を中心に流行している「あったかいんだからぁ♪」。同ネタはまさかのフル尺で2月4日に『あったかいんだからぁ♪』としてCDリリースされ、しかもそれが良曲だと話題を呼んでいる。  実際に彼らが出演したドラマ仕立てのMV(ショートバージョン)は600万回再生をあっという間に突破し、レコチョクではシングル週刊ランキングで4週連続1位に。YouTubeでは満を持してMVのフルバージョンも公開された。「あったかいんだからぁ♪」は、基本的にはネタに沿ったフレーズで、同じメロディを転調しながらループし、間奏のブラス調になる部分以外は、AメロもBメロも存在せず、サビのみという稀有な楽曲に仕上がっている。  これまで芸人と音楽の関わりについて、過去の記事【『芸人マジ歌選手権』で再注目――ドリフターズからマキタスポーツに至る“芸人と音楽”の歴史】では、ザ・ドリフターズやクレイジーキャッツ、とんねるずといった大物が『申し開き感』を出してリリースしていた時代から、小室哲哉プロデュースによるダウンタウンの浜田雅功のユニット「H Jungle with t」でギミックなしのJ-POPを堂々とやれる時流へ変化、Re:Japanの『明日があるさ』でその流れを確固たるものになったことを紹介した。  その流れは現在、テレビ東京系で放送中の『ゴッドタン』内で放送されているコーナー「芸人マジ歌選手権」でも続いていることは同記事の中でも触れているが、クマムシの楽曲と最近の“芸人と音楽”事情を見返したとき、ほかにもいくつかの流れが見えてくる。  例えば、テツandトモとどぶろっく。彼らは同じ“歌ネタ”で一世を風靡した2組で、CDリリースもすでに行い、アーティストとしての一面を提示している。そして両コンビは、最近『AKBINGO!』(日本テレビ系)内の「コイウタ選手権」というコーナーで、メンバーが考えた歌詞にピッタリの楽曲をつけるというコンセプトで普遍的な楽曲を量産し、多作で良質なメロディメイカーとしての才能を発揮している。  また、藤井隆は音楽レーベル『SLENDERIE RECORD(スレンダリー・レコード)』を立ち上げ、藤井、椿鬼奴、レイザーラモンRGによる音楽ユニットLike a record round! round! round!が、今田耕司のTOWA TEIプロデュースによるプロジェクト『KOJI1200』として1995年に発表した「ナウ・ロマンティック」をカバー。第2弾として『kappo!』をリリースするなど、3人の音楽通芸人が如何なく力を発揮し、本格的な音楽活動を行っていることも興味深い。  彼らの後に続こうとしている“歌ネタ”芸人も後を絶たない。ほぼ同時といえるタイミングで若者からの評価を集めた8.6秒バズーカーは、また制作してから半年も経っていないというネタ「ラッスンゴレライ」で大ブレイク。現段階ではCDリリースに一番近い存在ではないだろうか。また、日常生活で起こった疑問を歌謡曲風に歌い上げるタブレット純は、一時期スチールギター奏者の和田弘をリーダーとするマヒナスターズにも在籍していたという異色の経歴を持つ。また、小島よしおやかもめんたるとともにWAGEとして活動していた手賀沼ジュンは、回文ネタを昭和歌謡風やJ-POP風に歌い上げ、『歌ネタ王決定戦2014』で優勝した実力の持ち主だ。  そして、音楽活動…とは少し違うかもしれないが、エレキコミック・やついいちろうはラジオパーソナリティとして、これまでいくつかの音楽番組を担当。最近では『やついフェス』を開催するなど、オーガナイザーとしての活動を行っている。また、当サイトでもおなじみダイノジ・大谷ノブ彦は、自身がオーガナイザー&DJを務める『ジャイアンナイト』の規模を着実に拡大し、ラジオDJとしての活動も、月曜日から木曜日の13:00~16:00で帯番組を持つ(ニッポン放送『大谷ノブ彦 キキマス!』)など、その勢いは止まる所を知らない。  もちろん、『ゴッドタン』も負けていない。1月3日に放送された「第12回マジ歌選手権」では、東京03・角田晃広が事務所を去るマネージャーに曲を贈ったり、ダイノジがコンビ揃ってパフォーマンスを披露。劇団ひとりによる鹿賀丈史風ロボットがミュージカル調の楽曲で歌い踊るなど、ユーモアに富んだ楽曲の数々で長きにわたって視聴者を楽しませている。  歌や踊り、レーベル運営、DJにオーガナイザーなど、多岐にわたる芸人の音楽活動。いずれも芸事としてとらえ昇華できる芸人だからこそ、意外性のある「音楽の楽しみ方」を提示してくれるのかもしれない。 (文=編集部)

工藤静香『MY TREASURE BEST』が教えてくれる、80年代アイドルブーム終焉の真実

20150209-kudou.jpg

工藤静香『My Treasure Best-中島みゆき×後藤次利コレクション』(ポニーキャニオン)

【リアルサウンドより】  2月18日にリリースされた工藤静香のベストアルバム『MY TREASURE BEST ー中島みゆき×後藤次利コレクションー』は、この国のポップス史を振り返る上でとても重要な作品だ。1987年8月31日、その2年半前に始まるやいなやこの国のティーン男子カルチャーを席巻し尽くした(自分もスタジオ収録の観覧に何度も行って、とんねるずに煽られて大騒ぎしていたものだった)『夕やけニャンニャン』の最終回放送日、まさにその当日にソロデビューを果たした工藤静香。以来、彼女はコンスタントに作品をリリースしていた90年代後半まで約10年近くにわたってトップシンガーとして君臨し続けることとなった。中でも凄まじかったのは1988年から1990年にかけてで、この時期のシングルは8作連続でチャートの1位、特に1989年は年間ベスト10にリリースした3曲すべてがランクインするという、まさに現在の嵐やAKB48のような状態だった。もちろん、過去にそんな工藤静香のヒット曲を網羅したベストアルバムは何作かあったが、今回の『MY TREASURE BEST ー中島みゆき×後藤次利コレクションー』は、タイトルにも明記されているように、作詞家×作曲家のコンビを限定しているというのが重要なポイントだ。  中島みゆき×後藤次利のコンビによって工藤静香に初めて提供された楽曲は、本作でも<DISC-1>の冒頭を飾っている1988年の「FU-JI-TSU」。これは8作連続1位の起点となって工藤静香の黄金時代到来を告げた曲だが、さらに言うなら、時代の転換点となった曲でもある。昨今のアイドル史観においては、「おニャン子クラブ現象によって80年代アイドルブームは終わった」ということが定説のように語られることが多い。しかし、より正確を期するなら「後期おニャン子クラブのエースだった工藤静香の“アーティスト”化によって80年代アイドルブームは終わった」と言うべきだろう。『夕やけニャンニャン』放送時、次から次へとデビューし、軒並みチャートで初登場1位を獲得してきたおニャン子クラブの人気メンバーへの支持は、番組の放送が終わる(=工藤静香がソロデビューする)と同時に、一気に退潮することとなった。そしてそんな中、工藤静香はアイドルとしてではなく、シンガーとして、アーティストとして絶大な支持を得るようになっていく。  この80年代末に起こった「アイドルのアーティスト化現象」。先日、インタビューの席で工藤静香本人に訊いたところ、「ある日突然、“アーティスト”という言葉をみんなが使うようになった。当時は流行語みたいなものだと思っていたのに、こんなに一般的な言葉になるなんて想像もしてなかった」と興味深いことを言っていた。実際にそれは、先行する松田聖子、中森明菜、小泉今日子らメガアイドルの「アーティスト化」、そして工藤静香とほぼ同時代の本田美奈子、中山美穂、森高千里らの作品内容の変化などとも連動していたわけだが、「元アイドルにもかかわらず同性からの圧倒的な支持」を獲得したという点において、やはり工藤静香が突出した存在であったことは間違いない。  そこで鍵となったのは中島みゆきの起用である。当時から都市伝説のように語られてきたエピソードをご存知だろうか? 工藤静香がソロデビューするにあたって、当時ポニーキャニオンのディレクターであった渡辺有三氏はまだ高校2年生だった彼女に「松任谷由実と竹内まりやと中島みゆきの3人の中で、誰が一番好き?」と質問した。そこで工藤静香が一瞬の迷いもなく「中島みゆきさんです」と答えたところから、その後の輝かしいソロキャリアが始まったとされるわけだが、工藤静香本人に確認したところ、このエピソードは完全にそのまんま実話とのこと。松田聖子の作品のクオリティ面における大充実をきっかけに、ニューミュージック勢がこぞってアイドルに楽曲を提供するようになった80年代末の日本のポップスシーンの景気の良さを象徴している話である。  『MY TREASURE BEST ー中島みゆき×後藤次利コレクションー』をリリースすることになった理由について、工藤静香は「(中島)みゆきさんファンに対して、みゆきさんの作品を廃盤のままにしておくのは申し訳ないと思った」と語っていた。新曲「単・純・愛 vs 本当の嘘」を含めて、実に18曲もの「中島みゆき×後藤次利」楽曲が収録されている本作(ちなみに、そのコンセプトにしたがって、中島みゆきが作詞作曲両方を手がけている楽曲は収録されていない)。そこには、近年あまり日の目を見なかったアルバム収録曲やシングルのBサイド曲(当時はカップリングという言葉なんてなかった)の数々も収められている。つまり「歴史を残す」という意味において、本作は実は「ベスト」というよりも「アーカイブ」的な意味合いが強い作品なのだ。そして、それは昨年亡くなった、日本ポップス史に残る名ディレクターであり、工藤静香の「生みの親」的な存在でもある渡辺有三氏への「トリビュート」でもある。  自分が常々思ってきたのは、日本のポップスの歴史を振り返るにあたって、あまりにも「はっぴいえんど史観」が幅を利かせすぎてはいないかということだ。確かに、はっぴいえんどとその人脈(もちろんそこには山下達郎も松任谷由実も竹内まりやも含まれる)が80年代以降の日本のポップス界に残してきた作品群はあまりにも偉大である。それ故に、そこには系統立てた論考も数多く存在するし、編集盤的な存在も数多く編まれてきた。後年の音楽ファンは、そこから日本のポップスの歴史の豊潤さを再発見してきたわけだが、再発見すべき対象は他にも実にたくさんあるのだということを、今作『MY TREASURE BEST ー中島みゆき×後藤次利コレクションー』は教えてくれる。と、ここまで書いてきて、中島みゆきの往年の名作を支えていたギタリストは鈴木茂だったこと、後藤次利の存在が広く知られるきっかけとなったのは高橋幸宏に誘われて解散直前のサディスティック・ミカ・バンドにベーシストとして参加したことなどを思い出してしまったのだけど……。やっぱり、はっぴいえんどってすごいや(すみません、こんなオチで)。 ■宇野維正:音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

ONE OK ROCK、新アルバムが16万枚突破 好セールスから見える若者の音楽需要の動向とは?

20141217-oor3th_.jpg

ONE OK ROCK『35xxxv(初回限定盤)』(A-Sketch)

【リアルサウンドより】 参考:2015年2月9日~2015年2月15日のCDアルバム週間ランキング(2015年2月23日付)(ORICON STYLE)  初登場1位に始まり2位→3位→2位とセールスを伸ばし続けてきたSEKAI NO OWARIが今週5位。50万枚突破もいよいよ間近であり、うーん、と認識を改めざるを得なくなった。バンドの人気のことではない。「若者はもはやCDを買わない」という論調のことである。  ダウンロードで聴くのが普通。一曲単位で聴くからアルバムパッケージが不要。YouTubeのタダ聴きも基本。そもそも音楽に対価を払う理由がない。そんなふうに若者たちのリスニング環境を決めつけて「そりゃCDも売れないわ」「あれだけいい作品が売れないとは残念だ」などと自嘲気味に話していた音楽関係者(私も含む!)は、ちょっと猛省すべきではないか。  若者たちは音楽を欲している。切実にアルバムを買い求めている。AKBとジャニーズとEXILEが圧倒的セールスを誇るのは相変わらずだが、テレビを華やかに彩るアイドルグループが強いのはいつの時代も同じこと。「そういう世界」にはなかった価値観を見つけ「自分(たち)だけのサウンドトラック」を欲している音楽ファンは、ちゃんと今もいるのだという事実。セカオワに続いてそれを証明しているのが今週トップのONE OK ROCKである。  ワンオクにとって7枚目となる『35xxxv』は、アメリカに長期滞在しながら制作され、サウンドも歌も完全に世界対応型のロック・アルバムとなっている。クオリティが高いのは当然だが、それはただ洗練されたという意味ではない。日本人特有の細やかな展開やドラスティックな起伏は切り捨て、骨太でシンプルなメロディをドーンと聴かせる作り。まさにメインストリームのアメリカン・ロックなのだが、それは日本人にとってのリアリズム(共感を呼ぶ歌詞だとか、なんとなくせつない郷愁だとか)から遠ざかる行為でもあるだろう。だが、ワンオクの勝負はちゃんと理解されている。164,640枚、今どきのバンドとしては破格のセールスで初登場1位に輝いているのだ。  「若者はもはやCDを買わない」はやっぱり間違いだ。「若者は洋楽を聴かない」は正しいのかもしれないが、「洋楽っぽいものを敬遠する」も間違いだろう。ワンオクとセカオワは、まったく違うかたちとはいえ、アメリカの主流サウンドと真正面からクロスすることで日本の音楽マーケットに新風を吹き込んでいるのだから。  セカオワが1位だった4週前の原稿で「バンド=リアルを歌うという風潮が変わるかも」と書いた。(参考:SEKAI NO OWARI、新アルバムが初週24万枚突破! 驚異的セールスの背景は?)今週のワンオク1位で、そのことが裏付けられたような気分になる。等身大の冴えない日々をギターに乗せて歌っていても、そりゃCDは売れないだろう。だが若者たちは音楽を欲している。壮大なファンタジーでも骨太なアメリカン・ロックでもいいが、ぼんやりした日常を打破するような音楽を、それを与えてくれる自分たち世代のスターを欲しているのだ。 ■石井恵梨子 1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

LOVE PSYCHEDELICOのビンテージサウンドはなぜ新鮮に響く? ベストアルバムに見る“ブレなさ”

150218_ld_a.jpg

【リアルサウンドより】  デビュー15周年を迎えたLOVE PSYCHEDELICOがベストアルバム『LOVE PSYCEDELICO THE BEST I・Ⅱ」を2枚同時に発表した。2005年にリリースされたベストアルバム『Early Times』は完全生産限定であったため、現在は入手困難。つまり、今回リリースされる「THE BEST Ⅰ」「THE BEST Ⅱ」はカタログとして残る初のベスト盤となる。  収録曲は各盤とも16曲。「THE BEST Ⅰ」には「Freedom」(’07年)「Your song」(’00年)「Beautiful World」(’12年)、「THE BEST Ⅱ」には「Everything needs somebody」(’04年)「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」(’00年)「Good times,bad times」(’14年)などを収録。初期の曲から最新曲までがランダムに収められているのだが、違和感はまったくなく、新しいオリジナルアルバムのような感覚で楽しむことができる。それはつまり、彼らの音楽のスタイル、精神性がデビュー当初からまったくブレていないことを示唆しているのだと思う。  LOVE PSYCHEDELICOのデビューは2000年。1STシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」が全国FM局などを中心に大きな注目を集め、1STアルバム『THE GREATEST HITS』(’01年)はヒットを記録。瞬く間に音楽シーンの頂点に立った。NAOKIの印象的なギターリフ、KUMIが手がける英語と日本語が共存するリリックなど、このバンドの基本的なスタイルは既に完全に出来上がっていたと言える。  当時の音楽シーンはまさにJ-POP全盛。「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)、「らいおんハート」(SMAP)、「桜坂」(福山雅治)、「ボーイフレンド」(aiko)などのヒット曲が次々と生まれ、ビッグセールスを叩きだしていた。歌謡曲の流れを汲むポップスが中心だったシーンにおいて、LOVE PSYCHEDELICOの音楽はかなり異質だった。60~70年代のロックミュージックをルーツに持つ彼らの楽曲が――まさに曲の魅力そのものによって――大衆に受け入れられたことは、ひとつの事件だったと断言したい。  彼らの音楽が大きなポピュラリティを獲得した要因のひとつは、現代的なセンスに裏打ちされたサウンド・プロダクトだろう。デビュー当初から「ルーツミュージックをそのままやるつもりはない。常に“時代の音”を意識している」という趣旨の発言を繰り返してきた彼らだが、そのスタンスは今回のベスト盤にも継承されている。まずはすべての曲のデータをアナログテープに落とし、それをマスタリングエンジニアのジョー・ガストワート(ジミ・ヘンドリクス、ビーチ・ボーイズ、グレイトフルデッドなどの作品に関わった伝説的マスタリングエンジニア)とともに「2015年のLOVE PSYCHEDELICOサウンド」を実現しているのだ。特に初期の楽曲はかなり聴こえ方が変わっていて、よりビンテージ感のあるロックンロール・サウンドへと進化している。オーセンティックなブラックミュージックへと回帰したダフト・パンクの「ランダム・アクセス・メモリーズ」の世界的なヒット、そして、生楽器とストリングスを中心とした音作りの「Morning Phase」が今年のグラミー賞でAlbum Of The Yearを獲得するなど、海外の音楽シーンはオーガニックなサウンドへと移行しつつある。「THE BEST Ⅰ」「THE BEST Ⅱ」のマスタリングの方向性も、現在の音楽シーンの流れとリンクしているのかもしれない。普遍的なソングライティングと現代的なサウンド・メイクの絶妙なバランス感覚もまた、彼らの大きな魅力なのだと思う。  もうひとつLOVE PSYCHEDELICOの歌についても記しておきたい。楽曲のスタイルと同様、歌詞の内容、そこに含まれるメッセージ性も完全に一貫している。それは“LOVE&PEACE”というワードに集約されるのだが、デビュー当初はそのアプローチが懐古主義的な捉えられることも多かったように思う。しかし9・11以降、メッセージの響き方は明らかに変わった。そう、変貌したのは彼らの楽曲ではなく、社会の在り方とこちら側の意識なのだ。  今回のベストアルバムのリリースに際してKUMIは「時の流れは直線上にはなく、出会った感動が積み重なってゆくものだと思います。みなさんの人生のどこかで、また曲と共に出会えたらと願っています」という言葉を寄せている。ルーツに根差し、時代や流行に流されることのない楽曲、そして、常に進化を続けるサウンド。LOVE PSYCHEDELICOの楽曲はこれからも新しい感動を生み出し続けていくことになるだろう。 (文=森朋之) ■LOVE PSYCHEDELICO THE BESTスペシャルサイト(PC、スマホ共通) http://jvcmusic.co.jp/delico
150206_love_j_1.jpg

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅰ』 発売:2月18日 価格:¥2,500(税抜) VICL-64273 〈収録曲〉 1. Freedom 2. Your Song 3. Beautiful World 4. Free World 5. Shining On 6. It's You 7. Standing Bird 8. all over love 9. This way 10. Help! 11. Happy birthday 12. My last fight 13. life goes on 14. Aha!(All We Want) 15. These days 16. 裸の王様
150206_love_j_2.jpg

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ』(ビクターエンタテインメント)

『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ』 発売:2月18日 価格:¥2,500(税抜) VICL-64274 〈収録曲〉 1. Everybody needs somebody 2. LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~ 3. Last Smile 4. Good times, bad times 5. Abbot Kinney 6. Shadow behind 7. Dry Town ~Theme of Zero~ 8. No Reason 9. fantastic world 10. Carnation 11. I will be with you 12. I saw you in the rainbow 13. waltz 14. Beautiful days 15. I am waiting for you 16. Happy Xmas 2枚同時購入特典 『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST SPECIAL BOX』(初回限定出荷) ¥5,000(税抜) VIZL-795 <収蔵内容> 「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅰ」 「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ」 「LOVE PSYCHEDELICO OFFICIAL GUIDE BOOK」 「REMASTER BOX」に収蔵されていたスペシャルBOOKが新たに追加編集され、全てのオリジナルアルバムの解説と今回のベストアルバムの全曲解説が掲載。また40ページに及ぶフルカラー写真を含む、全60ページ豪華ブックレット。 ○「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST LIVE SELECTION」 2013年6月14日に渋谷公会堂で行われた「IN THIS BEAUTIFUL WORLD TOUR」のファイナル公演よりセレクトされた全6曲収録されたライブ音源CD 1. Your Song 2. Free World 3. Abbot Kinney 4. It's Ok, I'm Alright 5. No Reason 6. LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~ ■iTunes IGTプレオーダーURL LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I https://itunes.apple.com/jp/album/love-psychedelico-the-best-i/id955727990 LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II https://itunes.apple.com/jp/album/love-psychedelico-the-best-ii/id955731234 ■ツアー情報 「LOVE PSYCHEDELICO 2015 -15th ANNIVERSARY TOUR-『THE BEST』」 5月23日(土) 富山 富山 MAIRO 18:00/19:00 FOB金沢 076-232-2424 5月24日(日) 新潟 新潟LOTS 18:00/19:00 FOB新潟 025-229-5000 5月27日(水) 静岡 浜松 窓枠 18:00/19:00 JAILHOUSE 052-936-6041 5月30日(土) 東京 昭和女子大学人見記念講堂 17:30/18:00 SOGO TOKYO 03-3405-9999 6月6日(土) 高知 高知キャラバンサライ 17:30/18:30 デューク高知 088-822-4488 6月7日(日) 香川 高松オリーブホール 17:30/18:30 デューク高松 087-822-2520 6月12日(金) 宮城 仙台 Rensa 18:00/19:00 ジー・アイ・ピー 022-222-9999 6月14日(日) 北海道 札幌 ペニーレーン24 17:30/18:00 ウエス 011-614-9999 6月19日(金) 大阪 サンケイホールブリーゼ 18:30/19:00 YUMEBANCHI 06-6341-3525 6月20日(土) 大阪 サンケイホールブリーゼ 17:30/18:00 YUMEBANCHI 06-6341-3525 6月26日(金) 愛知 Zepp Nagoya 18:00/19:00 JAILHOUSE 052-936-6041 6月27日(土) 広島 広島クラブクアトロ 18:00/19:00 夢番地(広島) 082-249-3571 7月2日(木) 宮崎 宮崎 WEATHER KING 18:30/19:00 BEA 092-712-4221 7月4日(土) 熊本 熊本B.9 V1 17:30/18:00 BEA 092-712-4221 7月5日(日) 福岡 DRUM LOGOS 17:00/18:00 BEA 092-712-4221 東京・大阪・名古屋2F :指定席¥6,800(税込、名古屋のみドリンク代別) その他の公演 :オールスタンディング¥6,000(税込、ドリンク代別) ■オフィシャルサイト http://lovepsychedelico.net

LOVE PSYCHEDELICOのビンテージサウンドはなぜ新鮮に響く? ベストアルバムに見る“ブレなさ”

150218_ld_a.jpg

【リアルサウンドより】  デビュー15周年を迎えたLOVE PSYCHEDELICOがベストアルバム『LOVE PSYCEDELICO THE BEST I・Ⅱ」を2枚同時に発表した。2005年にリリースされたベストアルバム『Early Times』は完全生産限定であったため、現在は入手困難。つまり、今回リリースされる「THE BEST Ⅰ」「THE BEST Ⅱ」はカタログとして残る初のベスト盤となる。  収録曲は各盤とも16曲。「THE BEST Ⅰ」には「Freedom」(’07年)「Your song」(’00年)「Beautiful World」(’12年)、「THE BEST Ⅱ」には「Everything needs somebody」(’04年)「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」(’00年)「Good times,bad times」(’14年)などを収録。初期の曲から最新曲までがランダムに収められているのだが、違和感はまったくなく、新しいオリジナルアルバムのような感覚で楽しむことができる。それはつまり、彼らの音楽のスタイル、精神性がデビュー当初からまったくブレていないことを示唆しているのだと思う。  LOVE PSYCHEDELICOのデビューは2000年。1STシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」が全国FM局などを中心に大きな注目を集め、1STアルバム『THE GREATEST HITS』(’01年)はヒットを記録。瞬く間に音楽シーンの頂点に立った。NAOKIの印象的なギターリフ、KUMIが手がける英語と日本語が共存するリリックなど、このバンドの基本的なスタイルは既に完全に出来上がっていたと言える。  当時の音楽シーンはまさにJ-POP全盛。「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)、「らいおんハート」(SMAP)、「桜坂」(福山雅治)、「ボーイフレンド」(aiko)などのヒット曲が次々と生まれ、ビッグセールスを叩きだしていた。歌謡曲の流れを汲むポップスが中心だったシーンにおいて、LOVE PSYCHEDELICOの音楽はかなり異質だった。60~70年代のロックミュージックをルーツに持つ彼らの楽曲が――まさに曲の魅力そのものによって――大衆に受け入れられたことは、ひとつの事件だったと断言したい。  彼らの音楽が大きなポピュラリティを獲得した要因のひとつは、現代的なセンスに裏打ちされたサウンド・プロダクトだろう。デビュー当初から「ルーツミュージックをそのままやるつもりはない。常に“時代の音”を意識している」という趣旨の発言を繰り返してきた彼らだが、そのスタンスは今回のベスト盤にも継承されている。まずはすべての曲のデータをアナログテープに落とし、それをマスタリングエンジニアのジョー・ガストワート(ジミ・ヘンドリクス、ビーチ・ボーイズ、グレイトフルデッドなどの作品に関わった伝説的マスタリングエンジニア)とともに「2015年のLOVE PSYCHEDELICOサウンド」を実現しているのだ。特に初期の楽曲はかなり聴こえ方が変わっていて、よりビンテージ感のあるロックンロール・サウンドへと進化している。オーセンティックなブラックミュージックへと回帰したダフト・パンクの「ランダム・アクセス・メモリーズ」の世界的なヒット、そして、生楽器とストリングスを中心とした音作りの「Morning Phase」が今年のグラミー賞でAlbum Of The Yearを獲得するなど、海外の音楽シーンはオーガニックなサウンドへと移行しつつある。「THE BEST Ⅰ」「THE BEST Ⅱ」のマスタリングの方向性も、現在の音楽シーンの流れとリンクしているのかもしれない。普遍的なソングライティングと現代的なサウンド・メイクの絶妙なバランス感覚もまた、彼らの大きな魅力なのだと思う。  もうひとつLOVE PSYCHEDELICOの歌についても記しておきたい。楽曲のスタイルと同様、歌詞の内容、そこに含まれるメッセージ性も完全に一貫している。それは“LOVE&PEACE”というワードに集約されるのだが、デビュー当初はそのアプローチが懐古主義的な捉えられることも多かったように思う。しかし9・11以降、メッセージの響き方は明らかに変わった。そう、変貌したのは彼らの楽曲ではなく、社会の在り方とこちら側の意識なのだ。  今回のベストアルバムのリリースに際してKUMIは「時の流れは直線上にはなく、出会った感動が積み重なってゆくものだと思います。みなさんの人生のどこかで、また曲と共に出会えたらと願っています」という言葉を寄せている。ルーツに根差し、時代や流行に流されることのない楽曲、そして、常に進化を続けるサウンド。LOVE PSYCHEDELICOの楽曲はこれからも新しい感動を生み出し続けていくことになるだろう。 (文=森朋之) ■LOVE PSYCHEDELICO THE BESTスペシャルサイト(PC、スマホ共通) http://jvcmusic.co.jp/delico
150206_love_j_1.jpg

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅰ』 発売:2月18日 価格:¥2,500(税抜) VICL-64273 〈収録曲〉 1. Freedom 2. Your Song 3. Beautiful World 4. Free World 5. Shining On 6. It's You 7. Standing Bird 8. all over love 9. This way 10. Help! 11. Happy birthday 12. My last fight 13. life goes on 14. Aha!(All We Want) 15. These days 16. 裸の王様
150206_love_j_2.jpg

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ』(ビクターエンタテインメント)

『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ』 発売:2月18日 価格:¥2,500(税抜) VICL-64274 〈収録曲〉 1. Everybody needs somebody 2. LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~ 3. Last Smile 4. Good times, bad times 5. Abbot Kinney 6. Shadow behind 7. Dry Town ~Theme of Zero~ 8. No Reason 9. fantastic world 10. Carnation 11. I will be with you 12. I saw you in the rainbow 13. waltz 14. Beautiful days 15. I am waiting for you 16. Happy Xmas 2枚同時購入特典 『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST SPECIAL BOX』(初回限定出荷) ¥5,000(税抜) VIZL-795 <収蔵内容> 「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅰ」 「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ」 「LOVE PSYCHEDELICO OFFICIAL GUIDE BOOK」 「REMASTER BOX」に収蔵されていたスペシャルBOOKが新たに追加編集され、全てのオリジナルアルバムの解説と今回のベストアルバムの全曲解説が掲載。また40ページに及ぶフルカラー写真を含む、全60ページ豪華ブックレット。 ○「LOVE PSYCHEDELICO THE BEST LIVE SELECTION」 2013年6月14日に渋谷公会堂で行われた「IN THIS BEAUTIFUL WORLD TOUR」のファイナル公演よりセレクトされた全6曲収録されたライブ音源CD 1. Your Song 2. Free World 3. Abbot Kinney 4. It's Ok, I'm Alright 5. No Reason 6. LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~ ■iTunes IGTプレオーダーURL LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I https://itunes.apple.com/jp/album/love-psychedelico-the-best-i/id955727990 LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II https://itunes.apple.com/jp/album/love-psychedelico-the-best-ii/id955731234 ■ツアー情報 「LOVE PSYCHEDELICO 2015 -15th ANNIVERSARY TOUR-『THE BEST』」 5月23日(土) 富山 富山 MAIRO 18:00/19:00 FOB金沢 076-232-2424 5月24日(日) 新潟 新潟LOTS 18:00/19:00 FOB新潟 025-229-5000 5月27日(水) 静岡 浜松 窓枠 18:00/19:00 JAILHOUSE 052-936-6041 5月30日(土) 東京 昭和女子大学人見記念講堂 17:30/18:00 SOGO TOKYO 03-3405-9999 6月6日(土) 高知 高知キャラバンサライ 17:30/18:30 デューク高知 088-822-4488 6月7日(日) 香川 高松オリーブホール 17:30/18:30 デューク高松 087-822-2520 6月12日(金) 宮城 仙台 Rensa 18:00/19:00 ジー・アイ・ピー 022-222-9999 6月14日(日) 北海道 札幌 ペニーレーン24 17:30/18:00 ウエス 011-614-9999 6月19日(金) 大阪 サンケイホールブリーゼ 18:30/19:00 YUMEBANCHI 06-6341-3525 6月20日(土) 大阪 サンケイホールブリーゼ 17:30/18:00 YUMEBANCHI 06-6341-3525 6月26日(金) 愛知 Zepp Nagoya 18:00/19:00 JAILHOUSE 052-936-6041 6月27日(土) 広島 広島クラブクアトロ 18:00/19:00 夢番地(広島) 082-249-3571 7月2日(木) 宮崎 宮崎 WEATHER KING 18:30/19:00 BEA 092-712-4221 7月4日(土) 熊本 熊本B.9 V1 17:30/18:00 BEA 092-712-4221 7月5日(日) 福岡 DRUM LOGOS 17:00/18:00 BEA 092-712-4221 東京・大阪・名古屋2F :指定席¥6,800(税込、名古屋のみドリンク代別) その他の公演 :オールスタンディング¥6,000(税込、ドリンク代別) ■オフィシャルサイト http://lovepsychedelico.net