ニューロティカあっちゃん、メイク下の素顔とは? ドキュメンタリー映画が描く、愛と笑いのバンド人生

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【リアルサウンドより】  2014年に結成30周年を迎えたパンクロックバンド・ニューロティカのフロントマンであり唯一のオリジナルメンバー、あっちゃんことイノウエアツシ(ボーカル/50歳)が主演を務めるドキュメンタリー映画『あっちゃん』が遂に完成した。どこにでもある町のお菓子屋さんに生まれた男の、どこにもない生き方。筆者は、この映画の完成を心待ちにしていた。  30年前から現在まで変わらず活動を続けているニューロティカのすべてが詰まっていると言っても過言ではないこの映画は、ドキュメンタリーとしても秀逸であり、ファンならずともあっちゃんの人間性の魅力に引き込まれて行くだろう。  ニューロティカを知る人間が、いつもの楽しいあっちゃんの面白く笑える映画なのだろうと油断していると、涙を流すことになるかもしれない。事実、筆者もまた、冒頭早朝から寝起きの顔を腫らしながらも明るくふるまい、日常であるお菓子屋の仕入れに行く姿を見て、不覚にも涙腺が緩んだ。そこには、ピエロの姿で観客を盛り上げて楽しませる、ステージ上のあっちゃんの知られざる姿が映し出されていて、この映画が間違いなく素晴らしいものだという確信を抱かせる。
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 映画前半では旧ニューロティカのメンバーである修豚、JACKie、SHON、アキオによる回顧とともに、貴重なライブ映像や日常のお菓子屋のあっちゃんの姿を交えて進んで行く。映画全編で映し出されている、家業であるお菓子屋「ふじや」の若旦那であるあっちゃんへのご近所の印象や、お菓子屋での仕事の付き合いの人々、そして家族である母親とのシーンなどもふんだんに盛り込まれ、素のあっちゃんが感じられるところもこの映画の魅力だ。  インディーズ時代からメンバー5人のキャラが非常に個性的であったニューロティカは、コロムビアレコードとの契約を経てメジャーデビュー。当時のバンドブームの波にも乗り人気を博していく。中学時代からの親友である修豚との仲の良さがにじみ出ているシーンや、いつもふざけているJACKieが真剣に語る姿、旧ニューロティカの縁の下の力持ち的な役割でもであったSHONとアキオの話に、当時の記憶が鮮明に蘇る人も多いだろう。  修豚、SHON、アキオ脱退時の話や、その後、現在まで活動をともにするカタル、ナボが新たにメンバーとして加入するまでのいきさつを追うシーンでは、JACKie脱退時の貴重なラストライブの映像も収められている。JACKie脱退ライブを観た石坂マサヨ(ロリータ18号)の言葉は、当時のファンの気持ちをしっかりと代弁していて、ニューロティカの変換期の空気感が映像とともにリアルに伝わってくる。  JACKie脱退により、ボーカルのあっちゃんだけがオリジナルメンバーとして唯一残り、新たにギターにシズヲを迎え、カタル、ナボの4人で活動を続けるに至ったこの変換期は、ニューロティカの30年史を語る上で欠かすことの出来ない重要なポイントである。いつもピエロの姿で観客を楽しませるあっちゃんの陰に隠れた苦悩とともに、映画の完成記者会見でカタルの言った「何をおいてもメンバーのことを一番に考えてくれる」という、あっちゃんの人間性がしみじみと伝わって来る。
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 そんなあっちゃんの人間性を慕う人間は多く、バンドが様々な問題を抱えているときでも必ず仲間が側に寄り添い、ニューロティカは活動を続けてきた。「仲の悪い2バンドがあったとしたら、その間にあっちゃんがいて、結局その3バンドでライブをやってしまったりする不思議な人」と、記者会見でナボが語ったエピソードは、一度でも関わった人間を惹き付けてしまうあっちゃんの魅力をよく表しているといえよう。  もちろん、映画ではニューロティカの音楽性についても触れている。2000年5月にアルバム『絶体絶命のピンチ!! 』を発売したTV-FREAK RECORDの代表であり、POTSHOTの中心人物であるRYOJIが「元祖メロコア、速いメロディアスなパンクっていうのは、実はニューロティカが日本でもうやっていたんだというのを、みんなに伝えたかった」というように、その音楽の新鮮さに惹かれた人間は当然のように多い。本作品の中でも、カタルが手がけたニューロティカの楽曲の映画音楽バージョンが使われていて、鑑賞中に「おっ! これニューロティカだ!」と気付かされることもしばしば。様々なアーティストにより作られた今回の作品のための楽曲などもあり、作品中に使用されている音楽もこの映画の楽しみのひとつとなっている。
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 完成記者会見でナリオ監督は「ニューロティカの映画ではなく、あっちゃんという1人の人間の映画であるため、あっちゃんの人となりや誰からも愛されるキャラクターをクローズアップして追っていった」と語り、同じく記者会見でナボは「スーパーマンがピンチの時には新聞記者から変身して助けに行く姿が、あっちゃんにオーバーラップして、映画を通してあっちゃんを世の人に広めたいという気持ちがすごくあった」と語った。どこにでもいるお菓子屋のおっちゃんが、実はすごい人間なんだ、という驚きと感動が、映画全編を通して本当に良く伝わってくる。  出演する各著名人のあっちゃんに対するコメントでは「正にそれ!」と手を打つものや、爆笑しながらも唸らせるものもあり、あっちゃんという人間が誰に対しても等身大の自分自身で、誠実に向き合っていることがわかる。作中で綾小路翔(氣志團)が話すあっちゃんに対するコメントは、とくに印象深くそれもまた重要な見どころのひとつである。ニューロティカやあっちゃんを知る人も知らない人も、いや、どんな人であろうともこの映画を観れば、この言葉の説得力というものが理解できるはずだ。  今までメンバーにも彼女にも、誰にも話したことの無いあっちゃんの心の奥底に秘められていた思いを、初めて明かしたドキュメンタリー映画『あっちゃん』。公開初日の4月18日(土)東京渋谷HUMAXシネマでは、メンバーによる舞台挨拶もあるので、是非映画館の大きなスクリーンであっちゃんという人間を感じてほしい。 映画『あっちゃん』オフィシャルサイト 参考:ニューロティカ・あっちゃんが語る、バンド活動30年「文化祭の延長みたいな感じでやってきた」 ■ISHIYA アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。 FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

WHITE ASHはロックミュージックをどう再定義した? 新アルバムのモダンな音楽性を分析

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WHITE ASH『THE DARK BLACK GROOVE』(バップ)

【リアルサウンドより】  先日テレビ番組でWHITE ASHのメンバーにインタビューをした際、現場の収録スタッフと面白いやり取りがあった。「アルバムリード曲の『Orpheus』のミュージックビデオはご覧になりました?」「はい」「オンエアではあれのフルバージョンが流れますので」「え? あれがフルバージョンですよね?」「え?」「いや、ホントに」。

WHITE ASH / Orpheus 【Music Video】

 まるでクイーン「We Will Rock You」のようなシンプルかつヘヴィなリズムトラックが印象的なアルバムの1曲目「Orpheus」。その全尺は2分8秒。というか、このアルバム、全11曲中、2分台の曲が6曲。で、残りの5曲もすべて3分台という圧倒的な潔さを信条としている作品なのだ。フェスで踊るためのロックだとか感情移入できる歌詞だとか、ロックが「何かの機能のため」に鳴らされがちな昨今のロックシーンにあって、ただ単にカッコいいだけのロックを鳴らせてみせた『THE DARK BLACK GROOVE』。そのアルバムタイトルからは、ただ明るいだけで(≠DARK)、黒人音楽からの影響など微塵も感じさせない(≠BLACK)、単調なビートに支配された(≠GROOVE)、現在のロックシーンへのカウンター意識を感じずにはいられない。  もっとも、のび太(ボーカル&ギター)を筆頭とするメンバーたちには別にそのような裏の意図はなく、単に自分たちがカッコいいと思うロックを追求していった結果、辿り着いたのが今回の作品なのだという。4人で「せーの」で録っていったこれまでの作品とは違って、コンマ何秒単位の意図的なズレまで神経を研ぎ澄ませてパートごとにレコーディングしていったという今作。実はドラムのトラック一つとっても、打ち込みの音に生の音を何重にも重ねていくという念の入れよう。とことんシンプルでソリッドなサウンドを追求していく過程で、実は複雑で手間のかかる手法をとっているというのが興味深い。  ちなみに、のび太が本作レコーディング時によく聴いていたのは、アークティック・モンキーズ『AM』、カサビアン『48:13』、ダフト・パンク『Random Access Memories』、エド・シーラン『×』、ファレル・ウィリアムズ『Girl』、サム・スミス『In The Lonely Hour』といった作品だという。既に出ている各レビューなどでは、タイトルの「BLACK」や「GROOVE」という言葉に引っぱられてか、「R&Bやヒップホップからの影響」みたいな文言が散見されるが、必ずしも本作は広義のブラックミュージックの影響をダイレクトに受けた作品ではないだろう。WHITE ASHが本作で鳴らしているのは、先ほど並べた作品をはじめとする同時代の優れたロック/ポップミュージック/ダンスミュージックを当たり前のように吸収した極めてモダンな音楽であり、「ロックって、そもそもそういう音楽だったんじゃないの?」という問題提起だ。  たとえば、60年代にボブ・ディランらの影響から日本でもフォークミュージックが盛んになったが、いつしか海の向こうで意味するところの「フォークミュージック」と日本で意味するところの「フォークミュージック」はまったく別のものになっていった。ロックにおいても長年にわたってそれとまったく同じことが日本で起こっているのは、改めて指摘するまでもないだろう。音楽のジャンルのそうしたローカライズを必ずしも否定するわけではないが、誰かがそこで再定義をしてみることには大きな意味がある。メロディではなくあくまでもリフが主体のギター、うねりまくるベース、まるでジョン・ボーナムのようなタメのあるドラムをバックに《just give me the rock’n’roll music》とのび太が歌い上げる『THE DARK BLACK GROOVE』とは、そういう作品だ。

WHITE ASH / Teenage Riot 【Music Video】

■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter ■リリース情報 『THE DARK BLACK GROOVE』 発売:3月4日(水) 価格:¥2,800+税 ※初回生産分:三方背ケース付き 収録曲 1. Orpheus  2. Just Give Me The Rock ‘N’ Roll Music 3. King With The Bass 4. Teenage Riot 5. Walking In A Cloudy 6. Night Song 7. Quandata 8. Speed It Up 9. Zero 10. Hopes Bright <※学校法人・専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)テレビCMソング> 11. Gifted ■ライブ情報 『WHITE ASH One Man Tour 2015 "DARK EXHIBITION"』 4月4日(土) 札幌PENNY LANE24 Open 17:00 / Start 18:00 4月10日(金) なんばHatch Open 18:00 / Start 19:00 4月17日(金) 新木場STUDIO COAST Open 17:30 / Start 18:30 ■イベント情報 3月10日(火) ツタロックフェス2015 @TSUTAYA O-EAST、O-WEST、O-nest、O-Crest (4会場同時開催) ※対象商品の購入者対象の完全招待制イベント。 3月11日(水) タワーレコード梅田NU茶屋町店 インストアライブ&サイン会 19:00〜

ザ・なつやすみバンド、“生きるための逃避”を語る 「バンドをやること自体が永遠の夏休み」

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【リアルサウンドより】  なつやすみがまたやってくる。毎年恒例のこのヴァカンスは、日々の忙しさから遊離した夢の時間でありながら、昨年、やり残したことと、今年こそやりたいことに取り組む挑戦の場でもあるだろう。――〝ザ・なつやすみバンド〟。そんな、緩いのか勇ましいのか分からない不思議な名前を掲げたバンドの新作『パラード』は、前作に漂っていた、わくわくしたり、せつなくなったりする純粋な感覚はそのままに、少しだけ、ただし、確実に成長を感じられる、実にセカンド・アルバムらしいセカンド・アルバムとなった。まるで、前の夏以来に会った友人とすぐに意気投合するのだけど、何処か大人びても感じられるような。メンバー4人の内の2人――メイン・ソングライターでヴォーカルの中川理沙と、片想いのメンバー、ceroのサポーターも務め、いわゆる〝東京インディ〟における重要人物として知られるマルチプレイヤーのMC.sirafuに、2回目のなつやすみについて話を訊いた。(磯部涼)

「TNBを「面白い」と言われるところまで持っていけるヴィジョンというか、確信があった」(MC.sirafu)

――Real Sound初登場ということで、まずはバンドのバイオグラフィーについて聞かせて下さい。08年に結成されたザ・なつやすみバンド(以下、TNB)にとっての重要な転機が、11年、MC.sirafu(以下、sirafu)さんが加入したことだと思うのですが、当時、TNBはまだ正式なリリースをしていないですよね? 中川:そうですね。『なつやすみの誘惑』(10年7月)というCD-Rを1枚、出しただけでした。私は、その前は大学のサークルのカヴァー・バンドで歌っていて、「オリジナルをやりたいな」って軽い気持ちで始めたのがTNBだったんで、アルバムをつくるとか将来の見通しみたいなものはまったくなかったんです。 ――では、sirafuさんはそんなTNBをどのようにして〝発見〟したのでしょうか? sirafu:TNBのことは結構前から名前を知っていたんです。というのも、片想いやceroで一緒にやっているあだち(麗三郎)君が「なつやすみバンド、良いよ」とよく言っていて。だから、気になっていたものの、なかなかライヴを観る機会がなかったんですね。そうしたら、あだち君が四谷区民センターで主催したイベント(09年10月28日、「風のうたが聴こえるかい??vol.10+」)で、彼のライヴのサポート・メンバーとして中川と一緒になって。ただ、その後、またしばらく空いてしまって、ようやくライヴを観ることが出来たのが、新宿LOFTでやまのいゆずるが主催したオールナイト・イベント(「ホホエミロックフェスティバル5」、10年5月21日)。僕はVIDEOTAPEMUSICのサポートだったんですけど、神さまとかディスパニ(THIS IS PANIC)とか変なバンドばかりが出ていた面白いイベントで、TNBのライヴも凄く良くて。それで、酔っぱらっていたのもあって、思わず「僕がサポートやるよ」って言ったんです。 ――いきなり、固有名詞がたくさん出てきて戸惑うひともいるかもしれませんけど、その頃、sirafuさんはたくさんのインディ・アーティストのサポートをやっていましたよね。 sirafu:何と言うか、当時は輪が広がっていく感じが面白かったんですよね。片想いを結成したのは03年ですけど、ひたすら孤立している時代が長くて(笑)。それが、ceroのサポートをやり出した09年頃から、一気に色んな人と繋がり出した。あの頃はそれがその時代の新しいシーンの在り方だって意識がありましたし、とにかく、良いバンドだと思ったら加わって、そこからまた広げていくということを繰り返していましたね。あと、まだ普通に昼間の仕事をしていたので、それとバランスを取ろうとしていたようなところもあったのかもしれない。 ――普通、仕事と音楽活動とのバランスを取るというと、音楽活動は程々になってしまうものですが……。 sirafu:バランスというのは、意識のバランスのことですね。昼間の仕事も好きだったからこそ、音楽にも同じくらいの熱量で打ち込んで、どれだけ続けられるかっていう気持ちだけでもってがむしゃらにやっていました。あの頃は年間180本くらいライブを入れていたんじゃないかな。 中川:180本?! sirafu:ただ、限界までやったせいで、結局、仕事を辞めざるを得なくなっちゃったんですけど(笑)。だから、最初、サポートでTNBに参加したことに関しても、そこまで何か意図があったというよりも、当時の、人と繋がっていく、輪を広げていく過程のひとつっていう感じですね。 ――一方、中川さんはsirafuさんにサポートを申し出られた時、どんな風に思われたんでしょうか? 中川:シラちゃん(sirafu)のことを最初に認識したのは、タワーレコード新宿店であだちさんがやったインストア(2009年7月5日)で、サポートをやっているのを観て、「凄いひとがいる」って思ったんです。その後、ceroのライヴも観たけど、やっぱり、凄いなと。というのも、入れてくるフレーズが絶妙で素晴らしいんですよ。だから、TNBもいつか一緒にやってもらえたら良いなって思ってましたし、「やるよ」って言われた時は嬉しかったですね。 ――そして、5回ほどサポートを務めた後、sirafuさんはTNBに正式に加入することになるわけですが、たくさんのサポートをしていた一方で、加入にまで至ったバンドは他にないですよね。 sirafu:確かに、加入した時、周りは「え、なんで?」みたいなリアクションでしたね。でも、僕にはTNBを「面白い」と言われるところまで持っていけるヴィジョンというか、確信があったので。実際、その後、ファースト・アルバム(『TNB!』、12年6月)を出して評価が変わりましたし。簡単に経緯を説明すると、僕がサポートに入り始めたタイミングで、オリジナル・メンバーだったギターの子が抜けることになってしまったんですね。結果、TNBの中で「バンド、どうしよう」っていう雰囲気になり、そのままだと解散しちゃいそうで、それはもったいないなと。ただ、脱退を肯定的に捉えると、ギターレスになったことによって音楽的に隙間が出来るわけで、そこで、後ろに引っ込んでいた歌の部分を全面に出せば、このバンドはもっと良くなると考えたんです。その点、僕のスティールパンだったら歌を引き立てられるし、それまでのいわゆるギター・ロックと違うストレンジな感じも出せると思って、「入るよ」って自分から言いました。
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「技量よりも、人柄とかプラス・アルファの部分のほうが大事」(sirafu)

――僕が初めてTNBを観たのは、まだ、sirafuさんがサポート・メンバーだった頃だと思いますが、中川さんはソロ・シンガーとしてもやっていけるんじゃないかって思ったんです。もちろん、並行してソロもやっていたわけですけど、歌とピアノだけで確固たる世界観をつくり出せるひとがあえてバンド・サウンドに乗せて歌っているという印象があった。 中川:昔は周りによくそう言われましたね。でも、ソロはそこまでやりたいわけではなくて、あくまでもバンドがやりたいんです。 ――語弊があるかもしれないですけど、TNBのリズム隊(ベース=高木潤、ドラムス=村野瑞希)はいわゆる〝上手い〟プレイヤーとは違うと思うんですよ。 sirafu:ここ数年で開花してきましたね。僕は、自分がやるバンドに関してはあまり技量を重視していないんです。人柄とかプラス・アルファの部分のほうが大事だと思っているので。実際、潤は音のチョイスが変わっていますし、瑞希ちゃんもあまり普通じゃなくて、それが面白いなって。 中川:うん。なんか変なんですよ。 ――そう、僕もファースト・アルバムを聴いた時に、あの二人のドタバタとしたリズムだからこそ、中川さんの歌にある少年っぽさが引き出されるのかもしれないって思ったんです。中川さんとsirafuさんがデュオでやっている<うつくしきひかり>がマジック・リアリズムだとしたら、TNBはジュヴナイルというか。 sirafu:最近、中川とよく話すんですが、TNBの〝なつやすみ感〟って潤と瑞希ちゃんなんですよ。僕たちだけでやると<うつくしきひかり>みたいに、もうちょっと内に向かう感じになる。対して、TNBの絶妙な感じを出してるのがあの2人で。 ――〝ザ・なつやすみバンド〟って名前だけを聞くと、面白おかしい、あるいは、可愛いらしいイメージを持たれがちだと思うんです。結成時に名前を付けた時、〝なつやすみ〟という言葉にはどんな意味を込めたんでしょうか? 中川:現実逃避、ですかね。バンドを組もうっていう話をしていた時、誰かが「夏休みに戻りたいよ」みたいなことを呟いて、「あ、それ良いね」って付けました。バンドをやること自体が永遠の夏休みというか。メンバーも現実から逃げたいと思っているようなタイプの人達が集まったので、ほんの一瞬でもそういう場所がつくれればと思って。それで、〝ザ・なつやすみバンド〟がぴったりくるかなと。 ――sirafuさんはバンドに関わる際、その名前からインスパイアされたりしました? sirafu:いや、最初はあまりいい名前だと思わなくて。ダサいなって(笑)。だけど、3、4年やってきて、最近は凄く良い名前だと思っています。時代にリンクしてきたというか、今、〝逃避感〟みたいなものが必要とされているんじゃないかって漠然と感じていて。本当に現実から逃避しようとするとクスリにハマったりとかになっちゃうけど、そういうことではなくて、Twitterを見ていても、それぞれが自分なりの逃避の仕方っていうものを持ちながら生活しているなと。皆、仕事のストレスを、例えばTNBのライヴで発散してくれていたりする。今の時代、そうでもしないとやっていけないんでしょうね。だから、生きるための逃避というか。今回のアルバムの「S.S.W(スーパー・サマー・ウィークエンダー)」っていう曲ではまさにそのことを歌っています。 ――〝ウィークエンダー〟というのは、sirafuさんが敬愛するDJ、MOODMANのファースト・オフィシャル・MIX CD(『WEEKENDER』、02年12月)のタイトルでもありますよね。彼はその言葉について「平日は様々な仕事をしている人たちが、週末のダンス・フロアで生まれ変わり、混ざり合う姿」といったような解説をしていました。 sirafu:宇川(直宏/MOODMANの盟友であるクリエイター)さんに至ってはDOMMUNEを始める時、「週末だけじゃなくて、平日も遊ぼう」みたいなことを言っていましたけどね(笑)。 ――確かに、DOMMUNEは仕事帰りの電車の中でも遊べるように、平日の夜、DJミックスを生配信しているわけですよね。平日のライヴ・ハウスにも仕事帰りの人がたくさんいますし、sirafuさんはそういう光景をステージから眺めながら感じたことがあって、「S.S.W」をつくったと。 sirafu:そうですね。僕は今、普通の仕事をしていないですし、そういうバランス感覚についてはお客さんを見ていて学ぶことが多いですね。だから、「S.S.W」は別に応援歌ではなくて、現代の逃避の在り方を歌っているっていうか。その点、〝なつやすみ〟って言葉から読み取れる意味も、結成当初や前作に比べて大分変わったのかもしれません。

「潤と瑞希ちゃんは〝伸びしろ〟そのものなんです」(MC.sirafu)

――また、TNBの〝なつやすみ〟と並ぶ重要なテーマに、〝ポップ〟というものがあると思うんですが。 中川:はい。ポップなものをつくろうということは意識しています。 ――でも、中川さん自身は全然、ポップな人じゃないですよね……。 中川:そうなんです……。 ――前に、訊いてもいないのに「私、友達がいないんです」と呟いていました(笑)。 中川:そうしたら、「じゃあ、友達になりましょう」と言ってくれましたよね。ありがとうございます(笑)。 ――イメージとしては、アトモスフェリックな<うつくしきひかり>の方が中川さんの素に近いように思うんですが、ポップなTNBではキャラを演じているような感じなんですか? 中川:いえ、どちらが素とかどちらが演じているということではなくて、その場の雰囲気に応じて変わるんです。<うつくしきひかり>の時はシラちゃんが私と同じように結構暗いし、TNBの時は潤と瑞希ちゃんっていうバカな2人とワイワイするので「楽しいな」ってなるし。それで、歌い方も自然と変わる。 ――つまり、TNBの〝ポップ〟さにはリズム隊の2人の存在が欠かせないということですね。 中川:かなり重要ですね。 sirafu:僕はバンドに関して、〝伸びしろ〟をずっと持っていたくて。それは、技術的な部分だったり、方向性の部分だったり。伸びしろがあるっていうことは、大人にならないというか、「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ…」(「S.S.W」の最後に出てくるセリフ/コーラス)という感覚に近いものを感じていて。僕の中では潤と瑞希ちゃんは〝伸びしろ〟そのものなんです。今回は2人で初めて作曲(「ユリイカ」)もしていますし。 ――ファーストの『TNB!』は本当にファーストらしいファーストというか瑞々しいアルバムでしたけど、今回のセカンド『パラード』はまさに伸びしろを生かしたアルバムになっていますよね。 中川:今のバンドの雰囲気をそのままレコーディングしただけなんですけどね。前より鮮やかにしたいというのはありましたが。 sirafu:ちょっとだけ背が伸びた感じだよね。 ――「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ…」と言いつつも、永遠にループしているわけではなく、実は夏休みを経る毎に成長していると。 sirafu:ただ、ファーストは下手さも含めて完成しているというか、あの時にしか出せない〝なつやすみ感〟みたいなものがあって、それを評価されたので、セカンドをつくる上では悩みましたけどね。単に上手くなってもしょうがないし。セカンドが出て、「ああ……上手くなっちゃったか」みたいなパターンってあるじゃないですか。その辺に関しては良いバランスで出来たかなとは思います。 ――数ヶ月前、今作でエンジニアを務めた得能直也くんとお酒を飲んでいて、ミックスが終わった段階のものを聴かせてもらったんですね。その時は、まるで、アルバムを通して1曲が展開しているみたいに感じたんです。「えっ、どこまでで1曲なの?」って。酔っぱらっていたのもあるんでしょうが(笑)。『TNB!』がいわゆるバンド・サウンドで、初期のベスト・アルバムみたいなものだとしたら、『パラード』はアレンジが多様だし、まるで、DJミックスのようなつくりだなと。 中川:その感想、面白い。でも、そうかも。 sirafu:実は曲順を全部決めてからスタジオに入ったんですよ。レコーディングも全曲同時進行で、1曲1曲、仕上げて行くという感じではなく、段々と上塗りするようにつくっていったんで、そう聴こえるのかもしれませんね。コンセプチュアルにするつもりはなかったんですけど、何となく曲順を通して、季節感のようなものは想定していて。春から始まって、夏になって、それが暮れていって。だから、通して聴けるアルバムをつくろうということは第一に考えていましたね。 ――なるほど。では、最後に。『パラード』はビクター・エンターテイメント内の<スピードスター・レコーズ>からのリリースですが、メジャー・デビューするということについては、何か思うところはありますか? 中川:うーん、潤は化粧品を買いまくってますけどね。「メジャーだから綺麗にしなきゃ」みたいな感じで(笑)。 ――sirafuさんに関しては、ある意味で、TNBに関わり出した頃のインディペンデントにこだわっていた時期とは違う方向に進んでいるとも言えますよね。 sirafu:この時代、そんなにメジャーってものに期待していいのかみたいなところもありますけど。でも、最近、周りも世代が変わって若いバンドが増えて。そういう中で、前みたいに繋がりを広げるよりは、自分のバンドに本腰を入れようっていう感じになってきたんですよ。あと、バンドを良い状態で続けるためには、それぞれのバンドでやるべきことが全然違って。 ――確かに片想いは他の仕事をしていたり家庭を持っていたりするメンバーも多くて、もはやスケジュールを摺り合わせること自体がコンセプチュアル・アートみたいになっていますよね(笑)。一方、TNBの〝なつやすみ感〟や〝ポップ〟さには、メジャーという舞台が合っているのかもしれない。 sirafu:そうそう。だから、面白い方に作用したらいいなぁって思いますね。 (取材・文=磯部涼)
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ザ・なつやすみバンド『パラード』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『パラード』 発売:2015年3月4日 価格:¥2,300(税込) VICL-64297 ■ライブ情報 タワーレコード渋谷店【スペシャル・アコースティック・ギグ&サイン会】 3月28日(土) タワーレコード渋谷店1Fイベントスペース タワーレコード梅田NU茶屋町店【ミニライブ&サイン会】 4月5日(日) タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース タワーレコード新宿店【ミニライブ&サイン会】 4月10日(金) タワーレコード新宿店7Fイベントスペース タワーレコード名古屋パルコ店【ミニライブ&サイン会】 4月12日(日) 名古屋パルコ西館1Fイベントスペース ザ・なつやすみバンド 2nd album 「パラード」リリース記念ワンマンライブツアー 春篇 supported by HOPKEN 5月9日(土) 大阪Shangri-La ザ・なつやすみバンド 2nd album 「パラード」リリース記念ワンマンライブツアー 春篇 supported by jellyfish 5月16日(土) 名古屋 得三 ザ・なつやすみバンド 2nd album 「パラード」リリース記念ワンマンライブツアー 春篇 5月24日(日) shibuya duo MUSIC EXCHANGE http://natsuyasumi.hiyamugi.com/

SKE48のドキュメンタリーが映す「涙」の意味とは? 現役メンバーと卒業メンバーが描いた物語

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グループへの熱い思いを語る松井玲奈。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

【リアルサウンドより】  2015年はAKB48グループにとって、ドキュメンタリー映画の年である。SKE48、NMB48、HKT48の各姉妹グループおよび乃木坂46それぞれを追ったドキュメンタリー映画が、今年いっぱいを使って順次公開される。その第一弾が2月27日から公開されているSKE48のドキュメンタリー『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』だ。AKB48に関しては、すでにドキュメンタリー映画がグループを語る上での重要なコンテンツのひとつになっている。西武ドーム公演の失態や選抜総選挙の様子から浮かび上がる過酷さや理不尽さを映して、ファン以外にまで広い議論を呼んだ2012年の『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』に象徴されるように、グループの一定期間の活動を切り取り、そこにドラマを見出して肉薄していく手法は定着したものと言っていい。各姉妹グループもまた全国区のスターを擁してキャリアを重ねてきたことで、それぞれの映画作品を製作・上映するだけの厚みと認知度を獲得してきたということでもあるだろう。  とはいえ先週公開された『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』は、AKB48が続けてきたドキュメンタリー映画とは、多少の手触りの違いがある。それはAKB48の各作品がグループの活動全体のうち、映画公開直前の一年程度の期間にスポットを当てるのに対し、本作はSKE48結成の2008年から現在に至る、グループ全体の活動記録になっている点である。それゆえに、近過去の細かなエピソードに焦点を当てることよりも、SKE48の歴史を今日からたどることに重点が置かれている。6年を超えるグループの歩みを振り返るべくまずクローズアップされるのは、ダンスを売りとするSKE48の特徴を築いてきた最初の一歩、初期チームSのダンスレッスン風景である。
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デビュー前のレッスン風景。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

 映画前半の主役のひとりでもある振付師・牧野アンナの叱咤のもと、公演までの少ない時間の中で半ば素人だったメンバーたちを練り上げていく光景。それは断片的な映像やエピソードレベルではすでにファンの間に知られたものであれ、映像素材をある程度の分数ノーカットで見せ、当時を回顧する本人たちの言葉で意味づけることによって、強烈なインパクトを残す。まだ今日のようなプロフェッショナル然とした面構えになる以前のメンバーと、牧野が無理を承知でプロとして要求するストイックさとの対峙はドキュメンタリーとしてはきわめてシンプルでありながらも強い訴求力を持っている。そう、映し出される「先生」と「生徒」の姿は、パフォーマンスグループのレッスンを記録した風景としては非常にシンプルで、スタンダードともいえる一コマなのだ。「アイドルの涙」という、殊更に観る者の感情を煽ることを予告するようなタイトルでありつつも、この映画が映す「涙」の多くは、パフォーマーの日々としては自然なものでもあり、露悪を感じさせる局面は少ない。「涙」を幾度も映しながら、本作には激情を促すよりも落ち着きを常に心がけているような意思さえ感じる。
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目を赤くし涙をこらえながらインタビューに答える高柳明音。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

 ただしもちろん、本作を観てこのような印象を受けるのは、普段こちらがいかに48グループのドキュメンタリーが忍ばせる劇薬に慣れきっているかということの現れでもある。本作が強調する「涙」の内には、48グループ特有の恣意的で大掛かりな波乱の中で生じているものも当然含まれている。メンバーたちを揺さぶり翻弄する仕掛けを、ファンもまたどれほど当たり前に受け入れてしまっているか、ダンスレッスンの「ドキュメンタリー」風景がごくシンプルな訴求力を持っていることで気付かされる。
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透き通る青空から夕日に変わる景色を見つめる松井珠理奈。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

 もうひとつ、6年超の活動の振り返りというスタイルの中で重要なのは、卒業メンバーの立ち位置である。初期からの活動を振り返る際には、必然的にオリジナルメンバーのインタビューが収録されることになる。この時、現在もSKE48所属のアイドルとして全国的な知名度を獲得しキャリアを歩むメンバーのインタビューとまったく並列に、すでに卒業したメンバーへのインタビューカットも挿入される。たとえば平田璃香子、桑原みずきといった元メンバーは本人の卒業やその後よりもまず、活動初期のグループを語るひとつひとつのピースとして本作に登場してくる。つまりそこでは、現役メンバーか卒業者かということによる扱いの区別が行なわれていないのだ。
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2013年の『変わらないこと。ずっと仲間なこと』公演で「それを青春と呼ぶ日」を歌う当時の卒業メンバー9人。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

 活動初期の礎をもとに現在もトップを走る松井珠理奈、松井玲奈とそうした卒業生たちとでは、当時を語ることの意味合いは当然違う。また、SKE48というグループが、必ずしも釈然としない「卒業」を少なからず生んできたことはファンには周知のことであり、作り手も明確にそのことを自覚している。それでもなお、彼女たちそれぞれに同等の重みで歴史を語らせるこのバランスは、彼女たちの現在を現在として肯定するものであるように感じられた。
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AKB48への移籍に対する気持ちを話す木﨑ゆりあ。(C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会

 かつての主要メンバーの中には、出演に応じることのなかった者もいるだろう。また、ある元メンバーについては、卒業に強く焦点を当て、彼女が活動継続を選ばなかったということの方を印象づける扱いをしてもいる。しかし、それらを含めて本作全体が強く滲ませているのは、SKE48として活動を継続している者も、SKE48を離れて芸能活動をする者も、芸能活動から離れ「一般」の人として生きる者も、等しく一人前の道程を歩んでいることの尊さである。ファンが「もっと活躍できたはずの元メンバー」の姿を未練がましく追い求めてしまうのは道理である。しかしまた、そもそも芸能を志すことそれ自体、どれほど未来を嘱望されようともきわめてギャンブル性の高い道なのだ。若い時期の試行錯誤の一環でもあり、人生を賭ける一大ギャンブルでもあるアイドル活動をどこまで続けるか、あるいは別の視野へとシフトするのか、それを決めるのは、責任を持ってその人生を背負い続ける彼女たち自身でしかありえない。  48グループの中でも、波紋を呼ぶ「卒業」が多く生まれてきたSKE48にとって、卒業メンバーを現役メンバーと同等の人生として映そうとしたこのドキュメンタリーは、ひとつの優しさと相対的な視野とを与えてくれるもののように思える。未完成だったグループがある完成度へ向けて凝集していく一瞬はこんなにも尊いし、そんな瞬間をかつて見せてくれた人たちが、そこから繋がった現在の人生を歩んでくれていることは、こんなにも嬉しいことなのだ。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。
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『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』ポスター。

■映画情報 タイトル:『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』 企画:秋元 康 監督:石原 真 出演:SKE48     (C)2015「DOCUMENTARY of SKE48」製作委員会   公式サイトURL:www.2015-ske48.jp

チャットモンチーが明かす、デビュー10周年の現在地「やりたいことが進化しているのはすごく幸せ」

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【リアルサウンドより】  チャットモンチーが、3月4日にニューシングル『ときめき/隣の女』をリリースした。メンバーの橋本絵莉子(Gu,Vo)、福岡晃子(Ba,Vo,Cho)に、世武裕子(Piano, Synthesizer)、北野愛子(Dr. / DQS, nelca / ex. your gold, my pink)という2名をサポートに迎えた、全員女性の通称「乙女団」という編成でレコーディングされた本作は、ピアノを軸とする艶かしい演奏はもちろん、どこか毒気を感じさせる歌詞もまた魅力的だ。「いつだって恋がしたいよ/あなた以外と」と歌う「ときめき」は、どんな着想から生まれたのか。また、前作『こころとあたま/いたちごっこ』に続きサポートメンバーと作品を作り上げることによって生まれた、バンドサウンドの新局面とは。デビュー10周年を迎えた二人にじっくりと話を聞いた。

「みんなが日常だと思っているものも、いろんな選択肢の中から選ばれてそこにある」(福岡)

――今作『ときめき/隣の女』は、前作の恒岡章さん(Dr. / Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)、下村亮介さん(Key. & Cho. / the chef cooks me)をサポートメンバーとして迎えた『こころとあたま/いたちごっと』の疾走感のあるロックサウンドともまた違って、生々しい重さ、張り詰めた空気を楽曲から感じました。「ときめき」は恋愛がひとつのテーマとなっている曲ですが、どんな経緯で生まれたのでしょうか。 福岡晃子(以下、福岡):昨年の夏くらいに歌詞から作っていった曲で、まず、恋愛の歌詞をしばらく書いていなかったので久しぶりに書こうと思ったんです。今、チャットモンチーで恋愛の曲を書いたらどうなるかなと思って。一番の歌詞が最初にできていて、昨年の夏に、徳島にえっちゃんと一緒に帰ったときに見せたら、「めっちゃいい」って言ってくれて、5分くらいで曲をつけてくれて。 橋本絵莉子(以下、橋本):歌詞がすごく素直でストレートで、ちゃんと重みもあって、すごく良いなって思って曲がすぐに浮かんだんです。歌詞が一番まであったのでそれにまず曲をつけて。そこまでは徳島で作って、あとは東京で作りました。 ――ここで歌われる恋愛の風景というのは、ある種の倦怠も含んでいて、長く付き合ったカップルが特に感じるところじゃないかと思います。でも、音楽で表現するのは難しい感情かもしれません。 福岡:今、自分が、恋愛というよりは愛をテーマにした曲を書くとして、どういうことを書きたいだろうと考えた時に、まずサビのフレーズが浮かびました。入り口があのサビだと、「どんな曲?」ってなるじゃないですか、きっと。 ――「いつだって恋がしたいよ/あなた以外と」というフレーズは確かに衝撃的です。 福岡:恋愛の曲に取ってもらっても良いという気持ちもあるんです。でも、書いている時の心理としては、みんなが日常だと思っているもの、普通だとしているものも、いろんな選択肢の中から選ばれてそこにあるんですよ、ということを恋愛の曲として書きたいと思っていました。あとは、やっぱり私が好きで書きたいことってどうしてもモテない恋愛の曲というか(笑)。あんまり、モテそうにない素の気持ちを書きたいなと思ったんです。えっちゃんは、この歌詞を見て「女からの警告だ」って言っていましたけど、まさにそういう感じで(笑)。「気をつけろ!」って感じの。 橋本:(笑)。 ――相手への「気をつけろ」というメッセージでもあり、一方で「思うばかり/逃げられないのに」とも歌われているように、自分自身が相手を選んだことの重み、あなた以外の選択肢はなかったという思いの表現でもある。深い曲です、これは。 福岡:自分はあまり年齢を意識したことがなかったんですけど、こういうことを書けるようになったし、えっちゃんにも歌ってもらえるようになったっていう。いろんな準備が整って、それを女だけでやるという感じがすごく良いなと思いました。 ――絵莉子さんはここで描かれている感情についてどう思いますか。愛情は溢れているけど、もちろん不満もあって、でもこれを選び取った、という。 橋本:もしかすると男の人にない感情なのかもしれないですよね、この気持ちって。だから乙女団(橋本絵莉子、福岡晃子に女性サポートの世武裕子(Piano, Synthesizer)、北野愛子(Dr. / DQS, nelca / ex. your gold, my pink)を加えた新編成の名称)でやれたのは本当に嬉しいです。
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「3人の時のチャットでは考えられないアレンジですね」(橋本)

――乙女団でのレコーディングは、前回の男性メンバーを加えた男陣とくらべてどうでしたか。 福岡:全然違いましたね。でもツネさん(恒岡章)やシモリョーくん(下村亮介)との男陣を経て、私たちも迎える準備、サポートの方と何かを作ることの準備もすごくできていたのもあって、いろいろスムーズでした。それに加えて、女性ならではの決断の早さが。 ――早いですか。 福岡:めちゃくちゃ早いです(笑)! 「そうそうわかるわかる、じゃぁこれでオッケー」みたいな流れで、トントントンといきましたね。性格的にも4人が合っていて、言葉にしなくてもわかるというような感じでした。男性2人との時は、もっと何かできる、もっと良くできるんじゃないかと、本当にギリギリまで探求していく作業で。両方のメンバーと制作してみて、すごく違いがありましたね。 ――そういう現場も含めて独特のグルーヴができていて、サウンド的にもピアノが軸になっていて新鮮です。 橋本:昔の、3人の時のチャットでは考えられないアレンジですね。こんなにもピアノがずっといて、曲に自然に溶け込んでいる曲は今までないし。それは今だからというのがあると思います。2人のチャットをやってから、というのもあるし、全部がちょうど良く集まった感じです。 ――なるほど。演奏面の艶やかな印象とも相まって、歌詞の毒というか、鋭さが引き立っているようにも思います。 福岡:これはたぶん歌だからできることですよね。会話としては出ないワードだし。だから、曲だからできるということを活用しています。人が普通に思っていることを言うと、毒になるんですよね。それを歌にするからなんとか成立しているけど、それが割とやりやすい歳になりました(笑)。昔は怖くてできなかったんです。そう思っていたとしても、アカンかなーとか伝わらんかなーとか自分で制限していて。自分としては本当に思っていることでも、自分だけが思っているんだけじゃないか、みたいな感情があるじゃないですか。だから最近はそういうのも、作品として、その時の形として残していきたいと思うようになって、出していけるようになりました。 橋本:やっぱり音楽だから言えるとか、隠していない本音みたいなものを曲でドンと歌っているから、歌っている本人たち、私たちがスカッとするところはあります。 ――チャットモンチーの初期の頃って、恋愛のキラキラ感や思いの純度がパワーになっていた部分もあったと思うのですが、この曲はまた違う地点に着地していますよね。キャリアを重ねるうちに、複雑で深い感情を表現するようになってきたのでは。 福岡:どうですか? 振り返ると。 橋本:振り返ると……その時々のリアルなことを歌っている時もあるし、一回寝かせているパターンもあります。でもきっと常に、今を追い越してはいなくて。本当に曲とともに時間を過ごしていっている感じがします。 ――ちょっと戻ってみたり、というのも? 橋本:あります、前の曲を掘り下げることはもちろん。 福岡:確かに、今の自分たちを追い越したことはないかもね。無理なことは言ってない。世の中的にもいろんな出来事があって、今それを思った自分に対して、形にしたいと思うこともあれば、すごく思うことがあるのにどうしても歌にできないという時もある。……でも前に二人で話していたのは、ずっと一緒に過ごしていて、上京もほぼ一緒にしたし、実家の家族よりも長く一緒に過ごしていると、アンテナが一緒になってきて、書く歌詞のテーマがたまたま一緒になった時もありました。そういうのもあって、それがいつの気持ちかはお互い絶対に知らないけれど、なんとなく言わんとしていることはわかる、というのはあります。(互いに)何言っているかわかんないと思うことはあんまりないですね。感じることが似てくるんだろうなと思います。

「「こわい」って思われるくらい面白いのを書きたい」(福岡)

――2曲目の「隣の女」は鋭い人間観察から生まれた曲という感じで、これも毒があって新鮮でした。 福岡:これは、単純に人間関係に悩んでいる時に書いた曲で、すごく怒っていました(笑)。もう昨年のことなので忘れたんですが、その時はすごくいろいろ思うことがあって、友達にも「こういうことがあって」と相談したら、その子が「曲にすればいいやん」って言ったんですよ。結局、歌詞って自分が何を言いたかったかってことをまとめられないと作品にできないから、結局自分は何を言いたかったのかと考えていくんです。すると、やっぱり自分の感情も入っていく。だから、誰かに向けてというよりは、結局、そういう自分にも成り得るということで。だから……遠からず自分も、みたいなところですね。 ――自分批評でもあるということですね。 橋本:みんな結局、そういう感じなんじゃないかなって。やっぱり女の人って気になるじゃないですか、女の人のこと。友達は友達でいいけど、ちょっとライバル視してみるとか、絶対あると思うんですよね。だからそういう思いをした人は「あっ」って思っていただけると思います。 福岡:「ときめき」が男性に対する警告だったらこっちは女性に対する警告、というところもある。でも私は「こわい」って思われるくらい面白いのを書きたいというのがあるので、わりと面白い歌詞というイメージで書きました。 ――コミカルなイメージもありますよね。曲を付ける時にはどのようなイメージが? 橋本:いつも作る時にイメージというのはあまりなくて、歌詞だけが頼りで作るので、歌詞にあることを歌う!っていう感じで作りました。 ――この2曲のアレンジは4人で? 福岡:そうですね、ざっくりしたのを2人で作って、そこから4人で一緒にスタジオに入って詰めていくという感じでした。世武ちゃんに関しては、毎回弾くことが違うんで、このキメっていうフレーズ以外は歌詞に寄り添うものをお任せで、弾いてもらいました。それから、とにかく引き出しが多くてすごいんです。だからそこは世武ちゃんに完全にお任せしてやっています。ドラムに関しては、私が2人体制のときに叩いていたのもあって「こういうのが良い」とはお願いするけど、やっぱり、ぜんぜん違って何倍も良いものが返ってくるから、ほとんどのプレイはお任せになります。こういう風にしてほしいみたいなのはほぼなくて、音だけ、ドラムのチューニングとか音づくりを一緒にやっています。 橋本:ギターに関しては2人体制になってから買ったフェンダーのシンラインがものすごく当たりで。すっごい良い音がするから大好きでずっと使っていて、プリプロの時にもシンラインを使って曲作りをしていました。シンラインは弾いている時に、弾いている以上に鳴っている気がするんですよ。でも単純にパワーがすごいというわけではなくて、鳴りがすごい、という感じがするんです。で、テレキャスは弾いたらパンッとすぐに出て行ってくれる、立ち上がりが早いイメージがあって、だから「隣の女」みたいなけっこうテンポの良い時に使っている感じです。シンラインは響いてくれるから、大きい曲にすごく合ってくれます。 ――今回のように世武さん、北野さんが入り、2人が持っている音楽性と混じることでまた見えてくるものもあるのではないでしょうか。自分たちの持っている特徴とかクセ、指向性などで気づくことはありますか。 福岡:ありますね。男陣とやっていると、シンコペする・しないの箇所がぜんぜん違うんですよ。バンド世代はしないシンコペをチャットの曲ではする。ここで食うだろというところを食わずに、ここくるの!?みたいなところだったりして(笑)。それはなぜかなと思った時に、やっぱり歌詞が先にできるから、歌詞に沿って動くんですよね。「シャングリラ」のテンポが多いのも歌詞が先だったからだし。私たちは歌ありきで覚えているのであんまり違和感がなかったけど、指摘されたら確かに、一番でここ食ってないのに二番で食ってる、みたいなのは結構あります。だから乙女団でも世武ちゃんから「音がぶつかっているけどいいの?」と言われて、「いいんちゃう? 気づかんし」「あっそうなんや」みたいな(笑)。 橋本:ベースとギターだから気づかなかっただけで、鍵盤の人が入ると「私、どこ入ればいいの?ぶつかってるけど?」って迷わせるんですよね。だから世武ちゃんとシモリョーくんにはすごく感謝していて(笑)。「こういう和音いいの?」っていう。「でも、そこ弾いちゃうと、音ぶつかってるから変えよか~」みたいな、そういって初めて変えてみたりとか。だから鍵盤ってすごいんやなと思いました。 ――世武さんたちのアドバイスで変えることもあったんですね。 福岡:そうですね。でも気にならないって押し切る時もあるし。気になるポイントがみんな違うから、やっぱり面白いですよね。 ――音がぶつかることが魅力になっている面もあるかもしれないですね。 橋本:それが魅力になっていると、シモちゃんが言っていました。ナチュラルに、おしゃれな感じのコードになってたりとか(笑)。知らず知らずにそうなっているのを発見してくれるから、なんかちょっとうれしい。やっぱり? おしゃれだったかーって(笑)。「親知らず」とか「世界が終わる夜に」はそうだって言われましたね。

「言葉は歳を経て成長する」(橋本)

――そういう視点で以前の曲を聴き直すと楽しそうですね。さて2枚のシングルが揃ったことで、チャットモンチーが新しい世界にいくのかなという期待感を持っているのですが、アルバムの制作は進んでますか。 福岡:はい、進めてます。今度のアルバムは欲しい服をどんどん買っていくんじゃなくて、この人にこれが似合うってのを決めていくみたいな感じで。この曲は男陣が似合って、この曲は乙女団が似合って、という。次のアルバムはけっこう一曲一曲を考えながら、ぴったり作ったよね。 橋本:ムダなく。 ――このシングルがすごく濃い曲なので、アルバムも一曲一曲が濃そうな感じがします。 福岡:ヒッピーもいればボンテージの人もいる、アイドルもいればラッパーもいる、みたいな。すごく濃いと思います。チャットモンチーではやったことのないことをやっているので、かなり新しいです。まだむしろ、シングルがチャットらしい。 橋本:うん、らしい。 福岡:アルバムはもっと好き勝手にやっています。 ――楽しみですね。先ほど伺ったことにも繋がるんですが、チャットモンチーにはキラキラした素晴らしい曲もたくさんあるから、そのバリエーションを増やすというのも選択肢としてあったと思うんです。でもチャットモンチーのすごいところは、どんどん進化する。キャリアを重ねて吸収されてきたものを新しいものとして出していっていますよね。 福岡:やりたいことが進化しているのはすごく幸せなことだと思います。同じこと、できないんですよね。ね? 橋本:できないねぇ。 福岡:いろいろ言われます、「もっとノリ良いやつを」とか(笑)。 橋本:でもやっぱ、詞先というのが大きいよねぇ。チャットは曲から作れないので。曲だけで作るのと歌詞があって作るのとではぜんぜん違う気がする。言葉は歳を経て成長するから、良いんだと思います。 ――最後に2015年は10周年イヤーでもありますが、今年はどのような活動を考えていますか。 福岡:10周年はやっぱり徳島に恩返ししたいと思っています。徳島でフェスもやるんですけど、それが10周年のゴールみたいにもなっていて。武道館を久しぶりにやるのもメインですけど、最終ゴールは、そういう私たちを徳島の人にもう一度見てもらって、徳島でお祭りをして、皆で楽しんでもらうというのが、いちおうチャットモンチー商店の目標です(笑)。 (取材=神谷弘一)
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チャットモンチー『ときめき / 隣の女』(KRE)

■リリース情報 『ときめき / 隣の女』 発売:2015年3月4日 価格:初回生産限定盤 ¥1,800+税    通常盤 ¥1,165+税 <CD収録内容> 1. ときめき 2. 隣の女 3. Last Love Letter (Koji Nakamura Remix) <DVD収録内容>※初回限定盤のみ 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014 at 国営ひたち海浜公園 (2014.08.09) 』 1. Opening~ハテナ 2. シャングリラ 『9周年記念ライブ“9愛” at Zepp DiverCity (Tokyo) (2014.11.21)』 3. こころとあたま 4. Yes or No or Love 5. 変身 (GLIDER MIX) group_inou feat.チャットモンチー 6. 満月に吠えろ 7. 乙女団 レコーディングドキュメンタリー ■ツアー情報 全国対バンツアー「チャットモンチーの求愛 ツアー♡2015」 6月4日(木) 広島CLUB QUATTRO <出演者> チャットモンチー、柳沢慎吾 6月5日(金) Zepp Fukuoka <出演者> チャットモンチー、ハナレグミ 6月10日(水) Zepp Namba (OSAKA) <出演者> チャットモンチー、Ken Yokoyama 6月11日(木) Zepp Nagoya <出演者> チャットモンチー、GRAPEVINE 6月20日(土) 仙台Rensa <出演者> チャットモンチー、YOUR SONG IS GOOD 6月26日(金) Zepp Sapporo <出演者> チャットモンチー、スチャダラパー 7月1日(水) Zepp Tokyo <出演者> チャットモンチー、●●●●(※後日発表) 開場 18:00 / 開演 19:00 (※仙台公演のみ 開場17:00 / 開演18:00) チケット情報 オフィシャルHP先行予約 受付期間⇒3月3日(火)18:00~3月15日(日)23:59 受付URL⇒http://pia.jp/v/chatmonchy15hp/ ※お1人様1公演につき4枚まで チケット一般発売:4月25日(土) ※東京公演のみ6月20日(土)一般発売 ■ワンマンライブ「チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!」 2015年11月11日(水)日本武道館 http://www.chatmonchy.com/

SIONがデビュー30周年を迎えても立ち止まらない理由 福山雅治らがリスペクトする世界観とは?

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 2015年にデビューから30周年を迎え、記念すべき最新アルバム『俺の空は此処にある』を3月4日にリリースするSION。デビュー当時から、今も唯一無二の存在感を放つ彼は今も幅広い年代のファンだけでなくミュージシャンからも高い支持を受けている。  ロックバンド・ブームの最中1985年に自主制作盤『新宿の片隅で』で“世の中に姿を現した”。まだネットもスマホも無い時代、雑誌で偶然見かけたSIONの姿は失礼ながらまるで新宿に住むホームレスのようで、その存在感は個性的なロックアーティストが台頭していた中でも一際異彩を放っていた。  初めて動いているSIONを見たのと歌声を聴いたのは同時だった。1987年に開催された広島平和記念コンサートのテレビ中継でのことだ。椅子に腰かけ、首からハーモニカホルダーを下げて身をよじりながら歌う「コンクリートリバー」(1986年『SION』収録)。“生まれたその時から もう死に向かって走りつづけてるのかい”と絞り出すかすれ声は、お茶の間で見られる歌番組からは聴こえてこない歌声であり、昆虫のようなサングラスの下から観客を覗く目つきには何かいけないものを見た気さえしたものだ。  特徴的な歌声と誰にも似ていない独特のボキャブラリーを感じさせる歌詞の世界は多くのミュージシャンからも支持されている。特に有名なのが福山雅治との交流だろう。「SORRY BABY」「ノスタルジア」を福山がカバーしているのをはじめ、SIONのデビュー20周年記念シングル「たまには自分を褒めてやろう」「曇り空、ふたりで」ではそれぞれボーカルとギターで福山が参加、編曲も手掛けている。福山の主演によるNHK大河ドラマ『龍馬伝』に俳優としてSIONが出演したことも話題となった。  またデビュー当時からルースターズの花田裕之や池畑潤二がアルバムに参加したり「春夏秋冬」をカバーして泉谷しげるとも早くから交流が生まれていたが、自分の世界を確立していたSIONだからこそ彼らとも対等に渡り合えたのではないだろうか。1990年に発表した5枚目のアルバム『夜しか泳げない』ではさらに仲井戸麗市や下山淳、KYONといった辣腕ミュージシャンも参加。1994年の「sion 10+1」では10人のギタリストを迎えてレコーディングされるなど、それぞれがSIONの世界に足を踏み入れながら、曲に寄り添うようなプレイを聴かせている。  その呟くような歌い方にはやはり過剰な音圧の無いアコースティックなものが良く似合う。ニューヨーク、東京で録音された2つのサイドで構成され、マーク・リボーらが参加した意欲作『Strange But True』(1989年)の“Strange Side”で聴けるオルガンやアコーディオン、ヴァイオリンはSIONのボーカルの魅力をより際立たせており、初期における彼の音楽の一つの完成形といえるだろう。  1990年代後半以降、何度かのレコード会社の移籍を経つつも、立ち止まることなく歌い続けてきたSION。2008年からは宅録アルバム『Naked Tracks』シリーズを毎年欠かさず発表、日比谷野音ライブも恒例となる等、充実した活動を続けて今年ついに30周年を迎えた。  ますます渋さを増したしゃがれた歌声と近年の彼を支えるミュージシャンにより作られた新作『俺の空は此処にある』は、ディストーションを効かせたギターのが力強く飛び出してくる「ONBORO」から、ブズーキの音色がゆったりとした情景を描き出す「jabujabu」、続く軽快なカントリー「けちってる陽だまり」、アコーディオンとアコースティック・ギターに乗せてワーカホリックな自分を嗤う「休みたい」など、深夜に独り自問自答しているような前作『不揃いのステップ』とは対照的に太陽に照らされてリラックスしたSIONの姿が浮かぶ。 こうした曲たちを聴くと、今も新宿の片隅から聴こえてきそうな彼の歌声になぜかホッとさせられる。変わりゆく時代に翻弄される音楽シーンの中で、一見飄々とマイペースにかつシリアスに己の魂を音楽に捧げ続けてきたSION。かつて「歌いたいことがない」という若いミュージシャンに対して「俺だったら、“歌いたいことがない”と歌う」と答えたというスピリットが今も彼を支えているのかもしれない。 (文=岡本貴之)
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SION『俺の空は此処にある』

■リリース情報 『俺の空は此処にある』 発売:2015年3月4日(水) 価格:初回限定盤(CD+DVD) ¥4,630(税別)    通常盤(CD) ¥2,778(税別)※CDの収録内容は共通 <CD収録内容> 01 ONBORO 02 唄えよ讃えよ 03 jabujabu 04 けちってる陽だまり 05 水色のクレヨン 06 いつでもどこでも会いたい 07 休みたい 08 人様 09 俺の空は此処にある 10 諦めを覚える前の子供みたいに <DVD収録内容> 2014年8月16日に行われた日比谷野外大音楽堂ライブより8曲収録。 01.バラックな日々 02.休みたい 03.ウイスキーを1杯 04.通報されるくらいに 05.どけ、終わりの足音なら 06.新宿の片隅から 07.長い間 08.月が一番近づいた夜 (撮影監督:宮本敬文 / 編集監督:藤森圭太郎) ■ライブ情報 『SION-YAON 2015 with THE MOGAMI』 出演者:SION with THE MOGAMI (池畑 潤二 / 井上 富雄 / 細海 魚 / 藤井 一彦) 公演日:2015年6月14日(日) 会場:日比谷野外大音楽堂  開演:17:00 開場:18:00 チケット:前売 6,480円(税込)/当日 7.020円(税込) ※学割:高校生までは当日学生証提出で1,500円返金 プレイガイド 先行発売 2015年2月27日~3月6日 一般発売 2015年3月21日 チケットぴあ 0570-02-9999 ローソンチケット 0570-084-003 e+ http://eplus.jp/sys/main.jsp

新星ボーカルグループ・Little Glee Monsterの魅力は“生”にあり 洋楽・歌謡曲に通じる音楽性を読む

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【リアルサウンドより】

「歌うま」ブームの功罪

 「歌うま◯◯」なんて言葉をお茶の間でよく耳にするようになってから、どれくらい経っただろうか。7、8年前に『お笑い芸人歌がうまい王座決定戦』(フジテレビ系)という番組で歌のうまいタレントやお笑い芸人が注目を集めるようになり、ここからはつるの剛士やJOY、AMEMIYAなどがそれぞれCDデビューを果たしている。「音楽を主軸に活動していない人が、実は歌がうまかった」という意外性がウケたのかもしれないが(もっとも、つるのはそれ以前から地道な音楽活動を行っていたし、同時期には『クイズ!ヘキサゴンII』から派生したユニット・羞恥心としてCDデビューしているが)、ここ数年その「歌うま」が別の使われ方をされるようになっている。つまり、意外性からの「歌うま」ではなく、本来歌が上手なはずの歌手に向けての「歌うま」なのだ。  『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)や『THEカラオケバトル』(テレビ東京系)といった番組でからは、May J.や城南海といった女性シンガーたちが脚光を浴び(しかもMay J.はタイミングよく、映画『アナと雪の女王』の大ヒットも追い風となった)、さらに外国人がJ-POPを歌う『のどじまん ザ!ワールド』(日本テレビ系)からは紅白歌合戦への出場も果たしたクリス・ハートを輩出。デビュー後の歌手に対して「歌うま」と表現すること自体、「なんだかなあ……」と思わなくもないが、こういった状況はもしかしたら大きな転換期に入る1つのきっかけになるのかもしれない。そう思わせてくれたのが、今回紹介するLittle Glee Monsterという女子中高生6人組ユニットとの出会いだ。

デビュー前から話題の実力派JC&JKユニット

 Little Glee Monster、通称リトグリはソニー・ミュージックレコーズとワタナベエンターテインメントが世界に通用する女性ボーカリストグループを輩出することを目指し実施した「最強歌少女オーディション」を経て、2013年に結成。メンバーの中には数々の音楽コンテストで優勝した実力者も多く、芹奈とアサヒに関しては先の『関ジャニの仕分け∞』に“歌うまキッズ”として出演した経歴を持つ。昨年夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』といった大型フェスに登場したほか、アメリカのアカペラグループ・ペンタトニックスとイベントで共演するなどして、メジャーデビュー前からコアな音楽ファンからも注目を集めていた。そして同年10月にシングル『放課後ハイファイブ』でメジャーデビュー。作詞をいしわたり淳治が手がけ、作曲に福原美穂が携わった表題曲はオープニングから絶妙なハーモニーとパワフルなフェイクに圧倒され、「これ本当に15歳前後の女の子たちだけで歌ってるの?」と疑いたくなる人もいるかもしれないが、ぜひ生で彼女たちの実力を確かめてみてほしい。その機会がなかなかないという人には、YouTubeにアップされている同曲のMVや数々の映像を今すぐチェックことをお勧めする。

Little Glee Monster(リトグリ)/放課後ハイファイブ Music Video -short ver.-

本気で音楽と向き合う姿勢が生み出すニュースタンダード

 そんなリトグリが早くも2ndシングル『青春フォトグラフ / Girls be Free!』を3月4日にリリースする。デビュー曲「放課後ハイファイブ」と同じ布陣で制作された「青春フォトグラフ」はブルーグラスやモータウンのテイストを感じさせる、春にピッタリのポップチューン。2014年を代表するヒット曲となったファレル・ウィリアムス「ハッピー」の影響下にある「放課後ハイファイブ」、そして今回の「青春フォトグラフ」やファンク色を取り入れたアップチューン「Girls be Free!」にも共通して言えるのだが、リトグリの楽曲からはいわゆるJ-POPの枠を超えた世界観が感じられる。歌われている歌詞そのものは彼女たちの年代にピッタリな内容だが、その音楽性は(特にバックトラックに注目してもらえばわかりやすいかもしれないが)かなり洋楽チックなものばかりだ。それもかなりスタンダート色の強いもので、流行は取り入れつつも芯にあるのは60〜70年代のポップス黄金期を支えてきた名曲たちと共通するものが多い。彼女たちの実力を活かそうと、制作陣も本気で音楽と向き合っていることが伺えるのではないだろうか。

【リトグリ】青春フォトグラフ-short ver.- 【Little Glee Monster】

【リトグリ】生歌!生音!生Live! ! 「Girls be Free!」 Special Music Video in 渋谷【Little Glee Monster】

 その「古き良き時代の音楽を大切に」という精神は制作陣のみならず、昭和歌謡を愛好する15歳のアサヒや、ビートルズ好きを公言する14歳のmanakaといったようにリトグリの中にも根付いている。1stシングルではジャクソン5の代表曲「I Want You Back」を原曲に忠実に再現した彼女たちは、今作でも海外の名曲カバーに挑戦した。それが韓国出身のJ-POPシンガーKとのコラボ作「SEASONS OF LOVE」だ。この曲はミュージカルや映画で知られる作品『レント』で歌われる楽曲で、リトグリも以前からレパートリーとしてライブで披露してきている。実は昨年秋、リトグリとKはソニー・ミュージックレコーズのYouTubeプログラム『ソニレコ!暇つぶしTV』で同曲をコラボしており、これがきっかけとなり昨年11月のリトグリ単独ライブで再び共演が実現した。

乃木坂高山・深川&K、リトグリちゃんたちとカップソングで大盛り上がり!&1周年イベントをちょい出し!ソニレコ!暇つぶしTV 2014.9-4

 今回収録された音源はそのライブの際に録音されたテイクで、ライブならではの緊張感と同時に、Kが奏でるピアノをバックに気持ちいいハーモニーを聴かせるリトグリの楽しげな様子も感じられる好テイクとなっている。  現在彼女たちは本作のプロモーションとして、全国各地でミニライブイベントを敢行している。リトグリの魅力を理解するには、まずなによりも生でそのパフォーマンスを体験することが一番手っ取り早い。もしお住いの地区近隣に彼女たちがやってきたなら、迷わずイベントに足を運んでほしい。「歌うま」とかそういう修飾がどうでもなるくらい、「音楽って楽しいものなんだ!」というごく単純なことを思い出させてくれるはずだから。 ■西廣智一(にしびろともかず) Twitter 音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

17歳から主催イベントを続ける地下アイドル 姫乃たまがオーガナイザーとしての歩みを振り返る

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2015年2月22日に行われた姫乃たまの誕生日イベント『姫乃たまの22才がやって来る!ニャア!ニャア!ニャア!』の模様@阿佐ヶ谷ロフトA

【リアルサウンドより】  2015年2月22日、阿佐ヶ谷ロフトAにて、今年も自分で自分の誕生日イベントを開催しました。チケットはあろうことか前売り完売。当日券を求める問い合わせが、本番直前までやみませんでした。  本来であれば、地下アイドルとしての成長を喜ぶべき出来事であると思うのですが、不思議なほど何の感慨もなく、そのかわりにオーガナイザーとしての歩みを思って、少しだけ目頭が熱くなりました。  17才の誕生日に初めてイベントを主催してから、あっという間に22才の誕生日を迎えました。今回はいままであまりピックアップされることがなかった、オーガナイザーとしての姫乃たまの歩みを、基礎的な運営方法とともに失敗談なども交えつつ振り返ってみようと思います。……自分で。  そもそも自分の誕生日に主催イベントって、とても図々しいと思うのですが、地下アイドル文化では常識だったりするのです。そして、誕生日やリリース以外のなんでもない日でも、地下アイドルの主催は、数多く開催されています。  本当に地下アイドルが運営しているイベントもありますが、地下アイドル主催とは名ばかりで、実質の運営は事務所が行っている場合もあります。そういう時は、主催とされている地下アイドルがリストアップした共演したい人に、事務所からオファーをかけているのが大半ですが、事務所やライブハウスが、売り出したい演者をオファーしていて、主催者であるはずの地下アイドルが共演者と初対面なんてことも、しばしばあります。こういったイベントが開催される背景には、乱発されすぎて飽和状態になっている地下アイドルライブの中で、ただの事務所主催というだけでは観客への引きが弱いという現状があるようです。  個人的には、そんなに倍率の高い世界で戦いたくないため、誕生日とライブハウスから依頼があった際にしかイベントは主催しないようにしています。ただしフリーランスで活動していることもあり、年に数回だけ主催するイベントは、共演者のオファーからタイムテーブルの作成、ライブハウスとの交渉、宣伝、そして出演まで、イベントに関するすべてのことをひとりでこなしています。と、書くと聞こえはいいですが、結局は自分の誕生日に周囲の人間を大いに巻き込んでいるだけの、ジャイアンリサイタルのような状態です。  私がイベントの主催を始めたのは16才の頃でした。まだ駆け出しの地下アイドルで、サバイバル系のライブ(観客の投票で順位を争うような)に出演していた私は、優勝賞品として、ライブハウスの1日使用権をいただきました。当時の主催者から「誕生日も近いし、主催でもやってみたら?」と勧められたことがきっかけです。  こうして17才の誕生日は、地下アイドルを中心に、プライベートで仲が良かったバンドを混ぜた音楽イベントを主催しました。私も初めて30分という長尺の出演時間(地下アイドルの出演時間は10~20分が相場)を自分のために設けました。それまでコンビニバイトくらいしか社会経験のなかった私は、フライヤー制作のためにデザイナーさんと打ち合わせたり、事務所にオファーメールを出したりと、大人たちとのやりとりで精一杯だった記憶があります。  幸い周囲の人たちに恵まれ、開催まではスムーズに運びましたが、肝心のイベント開演後にスピーカーが壊れたのです。いきなり音が出ないライブハウスという異空間に放り出された私は、ない知恵を振り絞ってフリートークで場を繋ぎました。想定外の出来事に17歳の私は楽屋に戻ってから盛大に涙しましたが、その後、自分で司会進行をするようになったのは、この時のハプニングのおかげかもしれません。  それからは毎年、誕生日とライブハウスから依頼された時に、主催イベントを開催してきました。地下アイドル主催と偽る事務所ではありませんが、ただの主催ではつまらないので、高校卒業だのリリースだのと、何かと理由をつけていました。むしろ主催イベントにあわせて、学業や作品制作を頑張ってきた節すらあります。  ただし最初の頃は困難もありました。まず難しかったのは人の技術に値段をつけることです。チケットバック制でギャラの相場も決まっている同業の地下アイドルはまだ予想がつくのですが、他ジャンルのミュージシャンや、カメラマンなどの現場スタッフになるとまったく見当がつかないのでした。そのほかにも、会場との金銭的なやりとり、リハーサル時間の配分や、バンドの使用機材が理解できないと言った初歩的な問題もありました。  たった一度だけ、目を離している隙に、出演していたアイドルがPAさんに喧嘩を売ったことがありました(後に、自分のCDリリースイベントを遊びの約束でドタキャンするという、しょうもない不祥事で解雇されていた)。あれは困ったなあ。しかし、これはかなりイレギュラーな事件であり、基本的には周囲の協力のおかげで平和にことは運んでいました。  こうして数年、ライブハウスで音楽イベントを開催しているうちに、ライブ設備がないイベントスペースからも主催の依頼がくるようになり、その都度、コンセプトに趣向を凝らしたイベントを開催するようになりました。  会場のために始まった工夫が高じて、ここ数年は取り壊しが決まっているビルを貸し切った10時間耐久イベントや、ストリップのお姉さんを招いた泥レス、スカパンクバンド御用達のライブハウスにレンタルした流しそうめんの機材を設置するなど、風変わりなイベントばかり開催しています。もともと飽き性なのです。同じことを継続できないかわりに、何かに熱中することもないので、イベント中も客観的でいられるのかもしれません。  そして先日、22才の誕生日イベントを迎えました。ラッパー、昭和歌謡、ストリップ、小劇団など、例年以上にバラエティに富んだゲストさんでした。ここ数年ずっと指摘され続けてきたことでしたが、今年も問題点は私自身の出演時間にありました。コンセプトを重視するあまり、私のパフォーマンス時間が短くなっていたのです。  こうした状況を受けて辿り着いたのが「主催イベントは雑誌編集」という考え方でした。イベントは私が編集した一冊の雑誌です。一見、出演者もジャンルレスで脈絡がなく、私のパフォーマンス時間も短いですが、編集長は私であり、全ての演者に私の趣味嗜好と観客へ伝えたいことが詰まっています。  以前はワンマンライブをやったこともありましたが、自分ばかりパフォーマンスしていては広がりにも限界があります。そもそもライブイベントへは普段から多く出演しているので、気に入ったらそちらに来ていただければ、というわがままな気持ちもなくはないです。  ただし、「主催イベントは雑誌編集」という考えは、誰もがピンとくる発想ではないと思います。そして解釈の理解を観客に求めるのは、私の力量が足りない証拠でもあります。しかし、あの満員の会場には、理解できてしまう観客が多いのもまた事実です。ブレイクすることは、誤解を含めて多くの人に知られることだと言います。そういう意味で私はまったくブレイクする兆しがありませんが、ある意味いまが最もよい状況であるかもしれません。 ■姫乃たま(ひめの たま) 地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。 [ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな [はてな]地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ Twitter

CDはまだ売れる時代かーーSMAP×椎名林檎のシングル1位を受けて考えたこと

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「華麗なる逆襲」が主題歌となる『銭の戦争』の公式ホームページ

【リアルサウンドより】 参考:2015年2月16日~2015年2月22日のCDシングル週間ランキング(2015年3月2日付)  今週のチャート、不肖わたくし個人的には2位のApinkと3位のスパガがどっちも5万枚ということが持つ意味、そしてわりと大注目だった4位のデレマス4.6万枚など、ゆっくり考察したい部分が満載なわけですが、実際そんな攻防よりも世間一般としてはSMAPが1位を獲ったという事実のほうをずっと気にしているわけです。チャートとしては5万枚前後が一番面白いところではあると思っていますので、私としてはこうグッと涙をこらえるわけです。  しかし今回のSMAPのシングルは、これはこれで面白いものであります。両A面でして、そして最近のこのグループのパターン通りに初回限定盤2種および通常盤という3種構成での発売。ちなみに「華麗なる逆襲」のほうでプロデュースを担当したのは作曲・作詞ともに椎名林檎となっております。  椎名林檎と言えばなんと言っても昨年、自身のアルバムが発売された際に「CDはもうダメ」と発言し、実際4万枚という、かつての20分の1くらいの初回売り上げをあげることによって自らの発言を裏付けてみせたという剛毅なエピソードが思い出されるわけであります。と思ったら今回のSMAPのシングルでは16万枚という売り上げを獲得してまして、昨今のシングルにしては十分に立派な数字なわけで、CDはもうダメだったんじゃないんですか林檎さん、まだまだいけるじゃないですかと言いたくなるわけです。しかしかつてのミリオンセラーの時代とは隔世の感がありますし、またSMAPは一昨年くらいまでは4種以上のアイテムで新曲をリリースしていて、その時は30万枚を越えていたこともありましたから、そういう意味では林檎さんの言うようにダメなのかもしれません。まあそれでも10万枚も音楽が世に届けられているのだから、少なくともSMAPはまだダメでもないようにも感じさせます。  とはいえSMAPというのは売り上げ的には安定しないところもあり、それでもやっていけてしまうところも含めて、よくも悪くも大御所グループとしての余裕があるわけです。曲としても中居正広のたいへん個性的な歌い出しでリスナーの耳を掴む『世界に一つだけの花』パターンの曲でありまして、しかしそうした要素もちょっとした小ネタとして扱えてしまえるところに、大御所の大御所たる所以があります。非正規雇用が蔓延し、明日をも見通せないムードが日本を覆い尽くすきょうび、大御所であったとしてもこんな余裕のある振る舞いはなかなかできないもので、だからこそSMAPというのはやはりすごいわけです。曲としても洒脱さと気取りに満ちた大人っぽいナンバーで、本来なら歌唱力で引っ張っていくアレンジを堂々と展開している。しかしなんと、それを結局は歌い切れなくて、それなのに、PVの空気感も含めて背筋を伸ばしてやりきってしまう。そこに初めて真の大人らしさのようなものが漂っていると言うことができましょう。  ちなみに「中居が歌い出しを担当すると売れる」とか、メディアは書いたりしますが、今回の売り上げは昨今のSMAPとしては可もなく不可もないといったところで、まあ初回枚数が12万枚や13万枚だった前作および前々作に比べると健闘したという程度でしょうか。どっちかというと「4種展開のほうが売れる」という方が純然たる事実なわけで、読者の皆さんにはぜひ、特に根拠のないことを面白いからという理由だけで何でもジンクスのように語る人を信じないようにしていただきたいものだなあと思う次第であります。 ■さやわか ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter

Especia、メジャー1作目のウラ側とは? 冨永悠香と森絵莉加、Schtein & Longerが奔放トーク

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冨永悠香(左)と森絵莉加(右)。

【リアルサウンドより】  大阪・堀江の5人組ガールズ・グループEspeciaが、2015年2月18日にミニアルバム『Primera』でメジャーデビューを果たした。同作のリードトラック「We are Especia ~泣きながらダンシング~」で湘南乃風・若旦那がプロデュースを務めたというニュースも大きな話題を呼んだが、アルバム自体は若旦那のカラーを反映しつつ、Especiaのアーティスト性や楽曲イメージも見事にパッケージングされ、バランスのとれた仕上がりとなっている。今回のインタビューには、メンバーの冨永悠香と森絵莉加、そしてサウンド・プロデューサーを務めるSchtein & Longerの横山佑輝氏が登場。聞き手に音楽評論家の宗像明将氏を迎え、横山氏の奔放な発言を軸に、賑やかなトークを繰り広げた。(編集部)

「もともと若旦那さんがめっちゃ好きで、ライヴにも行ってた」(森)

――自己紹介をお願いします! 横山佑輝:横浜から来ました、身長175センチ、足が28センチ、体重が56キロぐらいの横山です。ゴミ拾いをしてます。やる気だけは誰にも負けません。よろしくお願いします! 冨永悠香:Especiaのリーダー、垂れ目系の冨永悠香です。 森絵莉加:ちょいワル系の森絵莉加です、よろしくお願いします。 ――ちょいワルなんですか? 横山:人殺し以外はだいたいやったよね? 森:前科はありません! 横山:バレなきゃ…。 ――……横山さんは舌が回ってないし、なぜここにいらっしゃるんですか? 横山:なんか呼ばれたんで。特に要件も伝えられず「13時にビクターに来てくれ」と言われたんで「ハイ」って。 ――ありがとうございます……。さて『Primera』でメジャー・デビューされるわけですが、なぜシングルではなくミニ・アルバムでのメジャー・デビューなんですか? 横山:上の判断です。僕みたいのは上に言われたことをやる末端の作業者じゃないですか。「やらさせていただく」という気持ちですね。 ――冨永さんと森さんはプロデューサーの横山さんがこの調子でいいんですか? 冨永・森:ついていくだけです! ――なんでそんなブラック企業ノリなんですか! さて、『Primera』のリード曲「We are Especia ~泣きながらダンシング~」は若旦那さんからの逆オファーがあったそうですが、どういう経緯だったんですか? 冨永・森:(横山を見る) 横山:(ふてくされたように)俺に聞かれてもわかんない。 スタッフ:逆オファーといいますか…きっかけはホンマくん(ホンマカズキ。Especiaのヴィデオ・クリップ監督やライヴのVJを担当)がMINMIさんのMVを手掛けていて、(MINMIさんの夫である)若旦那さんに「他に何やってるの?」と聞かれてEspeciaの話をしたら代官山UNITのライヴに来てくれたんです。そこで「なにか一緒にやりたいですね」と言ってくださって。そこから話がはじまって、今回書いていただけることになったと聞いてます。 ――なんで誰も当事者じゃないんですか。 冨永:初めて会ったときに「曲を書きたい」って言ってくださって「社交辞令かな?」と思ったんですけど、本当に書いてくださることになって。 森:私はもともと若旦那さんがめっちゃ好きで、ライヴにも行ってたので、事務所の大阪支社に来てくださったときにテンションが上がりました。若旦那さんに渡させていただいた音源も聴いてくださって、Twitterでも「Especiaの曲いい」って書いてくださったり、ライヴに足を運んでくださったりして、びっくりするぐらい気さくな方です。
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Schtein & Longerの横山佑輝氏。

「『We are Especia ~泣きながらダンシング~』には、若旦那さん歌唱ヴァージョンがある」(横山)

――歌詞はメンバーの皆さんが若旦那さんに書いた手紙が元になっているそうですが、横山さんは若旦那さんとのアレンジの共同作業はどのようにされたんですか?  横山:僕が手紙を書いて、メジャー・デビューへの想いとかを書きました。 ――それ、そのまま文字にしますからね。 横山:真面目に話すと、打ち合わせの場でどういう曲をやるかについて話し合って、若旦那さんから「振り幅を持たせたほうがいいよね」ということになって、実際に一緒に若旦那さんのスタジオに入りました。僕が鍵盤とパソコンをかついで行きまして。スタジオにこもって1日でざっくりしたものを作って、持ち帰って整えてラフ・アレンジを若旦那さんに送ったら「いいじゃん! 歌入れちゃおう!」って仮歌を入れてくれました。だから「We are Especia ~泣きながらダンシング~」には、若旦那さん歌唱ヴァージョンがあって、すごくいいんですよ、それが。僕はそれしか聴いてないです。 ――Especiaのヴァージョンは何回ぐらい聴きました? 横山:マスタリングのときに1回。 ――ミックスのときも聴きましょうよ! 笑ってる冨永さんと森さんは、こんな横山さんをどう思いますか? 冨永:6、7割ぐらい何言ってるかわからないです(笑)。 森:いやー、私はほとんどわかんないですけど、面白いなと思います(笑)。 横山:俺、駅のホームにいると鳩がすり寄ってくるんで、そういう星のもとに生まれてるとは思いますね。 ――「鳩がすり寄ってくる」ってメモる側の気持ちにもなってください……。「We are Especia ~泣きながらダンシング~」の3部構成は、若旦那さんと横山さんで考えたんですか? 横山:ほとんど若旦那さんです。 ――「We are Especia ~泣きながらダンシング~」は10分近い長さですが、誰も止めはしなかったんですか? 横山:俺は悪くない! 俺を責めないでくれ! 俺が決めたことじゃない! 俺のアイデアじゃないから! 森:若旦那さんが「俺が作った長い曲は売れるんだ」って言ってました。 ――若旦那さんがそう言うと説得力があって売れそうですね。 森:がんばります(笑)。 ――若旦那さんプロデュースにはファンから賛否両論の大きな反響がありましたが、予想してましたか? 横山:(途中で遮って)賛否両論ないよね、どこに否定があるんですか、みんな「いい」って言ってるよね!(メンバーに同意を強要する) 冨永・森:ないですね。 横山:ないでしょ! いいに決まってるじゃないですか! Especiaちゃんがやってるんだからいいに決まってるじゃないですか! 否定なんてありえないですよ! ないよ! みんな最高って言ってるよ! ――横山さんもういいですから! メンバーの皆さんは実際のところどうでしたか? 横山:「私たちに言うなよ」って感じでしょ? ――だから横山さんが代弁しなくていいですから! 冨永さんどうでしたか? 冨永:その日(メジャー・デビューがワンマンライヴで発表された2014年12月14日)の握手会では「メジャー・デビューおめでとう!」しか言われなくて、曲の話はまったく言われなかったんですけど、Twitterでエゴサーチしたらたくさん「We are Especia ~泣きながらダンシング~」について話してる人がいて。 森:握手会とかでは「すごいね」って含みのある感じで言われて、私は気にせずに「本当ですか、ありがとうございます!」って言ってたんですけど、Twitterを見たらすごいことがいっぱい書かれていて。こう感じる人がいることはわかってたんで、「言ってるな」と思いました。 横山:(ぼやくように)エゴサーチなんてしなきゃいいんだ……。 冨永:エゴサーチしますよ、Twitterにしか本音を書かないじゃないですか。 ――逆に若旦那さんのファンからの反応はありましたか? 森: Especiaのファンの人が若旦那さんを悪く言っていて、若旦那さんのファンの人が「若旦那のことを何も知らないのに何言ってるんだよ」って言い合いをしてました。「すごいことになってる」と焦りました。
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Schtein & Longerの横山佑輝氏

「メジャーは恐いじゃないですか、逃げ道がないし」(冨永)

――いろんな意見が出てくるのは、Especiaが本気の悪ふざけ、ユーモアの産物の側面もあったからだと思うんです。それはヴェイパーウェイヴ(80年代の楽曲やCM・スーパーマーケットの音楽などのローファイサウンドをサンプリング・コラージュするカルチャー)だったり。「We are Especia ~泣きながらダンシング~」のシリアスさはどう受け止めましたか? 横山:見るからにヴェイパーウェイヴじゃないですか!(再び冨永と森に同意を強要する) 冨永:見るからにヴェイパーウェイヴです。 森:ヴェイパーウェイヴです。
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森絵莉加。

――だからそのまま文字にしますよ! でも、こういうシリアスな曲を歌ってみて、今までにない感じはありましたか? 森:Especiaの曲は歌詞が遠回しなんですけど、若旦那さんの曲は直球ですごいなと思いました。 横山:譜割りも違いますよね。でも直球だったらね、それこそEspecia的なアーバン、アーバンだって言ったじゃないか……!(嗚咽して泣くふりを始める) ――(無視して)「We are Especia ~泣きながらダンシング~」の冒頭では、メジャー・デビューについて冨永さんが素直に喜べなかったことも率直に語られています。それはどんな不安ですか? 冨永:メジャーは恐いじゃないですか、逃げ道がないし。逃げるつもりもないんですけど。 横山:なに、インディーズなら逃げ道あったっての? 冨永:そういう意味じゃなくて!(笑)もちろん嬉しい気持ちもあったけど、大きい壁にぶつかりに行くような気持ちで、「できるかな」って不安もあって素直に喜べませんでした。 横山:でも何も変わらないでしょ、食事制限もないし。 冨永:そうですね、「EspeciaはEspeciaだな」って。今は「やってやるぞ」っていう気持ちですね。 ――「We are Especia ~泣きながらダンシング~」の終盤のコールとケチャは誰のアイデアですか? 横山:(冨永と森に)俺を見るな! 俺じゃないから! 「それはどうなんだSchtein & Longer」ってのは筋違い! 冨永・森:若旦那さんです! 冨永:聴いたとき最初から入ってました。「私は小さい頃から~」の語りの部分も説明文かと思っていたら「これも歌詞なんだ!?」って。 森:私が知ってた若旦那さんはそういう人じゃなかったんですけど(笑)、ケチャも私たちに関わってからめちゃハマりだされて、すごいチャレンジだなと思いました。 ――Especiaを語る上で重要な概念として「郊外」がありますよね。横山さんの出身地は横浜。「We are Especia ~泣きながらダンシング~」も感覚的には横浜ですか? 横山:ゴミの分別が厳しくて川崎に引っ越したいんですよね。 ――引っ越していいので話を進めてください。 横山:「郊外」っていうのは特定の地名じゃないんですよ。「昔々あるところに……」っていうのと同じ感覚です。国道沿いですよ! 焼き肉屋があり、イオンがあり、ゲオがあり、安楽亭があり、すかいらーくグループがあり……そういうチャリでイオンに行く人たちの原風景ですよ。彼女たちがそうなんですよ、大阪の中心部に住んでないんで。
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冨永悠香。

――横山さんが言い切ってますけど本当に原風景ですか? 冨永:ちかぶぅ(三ノ宮ちか)は焼肉屋のバイトをしてたんです。 横山:歌詞に出てくる通りで。歌詞は全部手紙からで、手紙を書いた本人がその歌詞を歌わないと意味がないから、本人が歌ってるんです。今までの作り方とは違いましたね。 ――「Interlude」を挟んでの「West Philly」は、Rillsoulさん作編曲による生楽器を使ったソウルフルな曲で、従来のEspeciaらしい路線ですよね。……横山さんなんで同意してくれないんですか? 横山:僕、Rillsoulじゃないんでわかんないんで。 ――こういうソウルやディスコの要素が強い路線がこれまでファンに強く支持されてきたわけですが、それはどうしてだと思いますか? 森:珍しい……浮いている……他とは違う……すごいお洒落サウンド。 冨永:親バカじゃないんですけど、自分でもEspeciaが一番だと思っているので、熱く支持する人がいて当然だなと思います。
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「基本的にめっちゃしゃべりに行っちゃうタイプなんで、仲良くなることが多い」(森)

――ヴォーカルのレコーディング・ディレクターは今回もRillsoulさんですが、ヴォーカル面での変化はありましたか? 冨永:コーラスをたくさん重ねました。10層ぐらい。 森:「Security Lucy」や「Sweet Tactics」とかは、サビを全員で歌わないで、コーラスが入っててひとりが歌う構成になってます。 横山:Especiaの作家陣はおのおので曲を作ってきて完成形で録りますんで、構成はメンバーのヴォーカルを録るときにはもうできてるんです。やれと言われたことはやる。俺もそうだし。 冨永:Especiaはサラリーマンっぽいんですかね? 横山:Especiaは「やらせていただく」という気持ち。皆さんのご尽力あってのCD発売ですからね、自分たちだけじゃできない。 森:やらさせていただきます! ――だからなんで意識の高いブラック企業ノリなんですか! Especiaと同じ方向性やクオリティのアイドルは思いつかないんですが、ライバルと思うアイドルはいますか? 横山:僕はアイドルのこと知らないんですよ。 ――BiSって知ってます? 横山:あ、BiSは知ってます、有名なんで。 ――「nerve」って曲、知ってます?(Schtein & LongerはBiSの代表曲『nerve』のアレンジャー) 横山:ああ、アイドルのお祭りでみんなで踊る曲。聴いたことはあります。僕、あんまりアイドルとか興味ないんで。 ――冨永さんと森さんからするとライバルっていますか? 冨永・森:いないですね。 横山:(冨永と森に小声で)この質問、トラップだから気を付けろ……。 冨永:好きになっちゃうんです。 森:仲良くなっちゃいます。 横山:パーフェクトな回答ですね、マネージャーの清水(大充)さんの教育のたまものですね。 冨永・森:本当です! 森:私は基本的にめっちゃしゃべりに行っちゃうタイプなんで、仲良くなることが多いんです。NegiccoさんもNaoちゃんと仲良くて、夜にめっちゃ電話かかってくるぐらい仲いいんですよ。プラニメの(ミズタ)マリちゃんとも仲がいいです。 ――2012年に活動を始めたときは10人だっけど、今は5人に半減しました。それでもメジャー・デビューまできた今の感慨はどんなものですか? 横山:初めは束モノアイドルユニットみたいだったよね。 冨永:楽屋でも恐がられてて、誰にも寄り付かれなかったですね。 横山:工業高校みたいだよね、卒業するまでに半分以下になってる。 ――横山さん、話の途中でちょっと面白いこと言わないでください。 横山:ぶっちゃけ感慨とかないでしょ? 冨永:「去る者追わず」できたんですけど、この5人は誰かが辞めたら泣きますね、もう辞めないと思うんですけど。今は「5人」というより「ひとつ」という感じなんです。 横山:良くないのは、うちの事務所、人が辞めるのに慣れすぎてるんですよ。よく人が出たり入ったりするんで、痛くも痒くもなくなっちゃってるんですよね。「辞める人ぐらいいるでしょ?」みたいな感じだよね。 冨永:でも、今はもう考えられないですね。 ――5人のEspeciaで、メジャーでどんな活動をしていきたいですか? 冨永:それは上の人が決めてくれるので……(笑)。 森:ついていくのみですね、大人の方達に。 ――その「大人」というのは誰ですか? 森 Especiaチームの皆さんです。信頼してるので。 ――なるほど。そろそろいい話にしないと、話がまとまらないのではないかという恐怖がわいてきたところなので安心しました。 横山:彼女たちの2年半のEspeciaでの活動の歴史もあったので、今ある姿を包み隠さず述べさせていただいた次第です。僕はいつでも真面目です。 ――横山さん、メジャーで勝つためにやっていきたいことはありますか? 横山:僕は別にストラテジック部門じゃないんで。僕は末端の作業者なので権限はないです。「やれ」と言われたことをやるだけです。サラリーマンなんで。俺は何も悪くない! 俺の責任じゃない! 冨永:誰も責めてない!(笑) ――そうですよ、責めてませんよ! 『Primera』はどんな層に届いてほしいですか? 横山:全世界中の老若男女の方々に愛聴される盤になればいいなと。 ――なぜビクター犬みたいに首を傾げながら言うんですか? 横山:犬になりたいですね、メジャーの犬になりたいです。 ――冨永さんと森さんはどんな層に届いてほしいですか? 冨永:特定の人のイメージはないんですけど、私は本当にEspeciaの曲が好きで、ずっと一番だと思ってるんです。売れていくためには上の人についていくだけなんですけど、与えられたことを精いっぱいやって、歌やダンスも成長していけば結果がついてくると思うんで、ひとりでも、10人でも、聴いてくれる人がどんどん増えていってたらいいなと思います。 森:今回、全国ツアーを回らせてもらったんですけど、ライヴの前にインストアライヴを毎回やらせてもらってて。北海道とか、初めて行く地域で通りかかった人が見てくれて、「こういうアイドルいるんだ」ってCDを買ってくれたんです。まだまだ私たちを知らない人もいるし、Especiaの曲は本当にいいので知らないほうが損するので、こういう音楽があるんだと知ってほしいです。たくさんの方に聴いてほしいです。 横山:まじめか! でもね、全世界中の老若男女の方々に愛聴される盤になればいいなと……。 ――横山さん、話がループしてますよ!! (取材・文=宗像明将/写真=竹内洋平)
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Especia『Primera [通常盤]』

■リリース情報 『Primera [通常盤]』 価格:¥1,852+税 01 We Are Especia ~泣きながらダンシング 02 Interlude 03 West Philly 04 Sweet Tactics 05 シークレット・ジャイヴ 06 Skit 07 さよならクルージン 08 Security Lucy 09 Outro 『Primera [初回限定盤](ボーナスディスク付き)』 価格:¥2,593+税
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Especia『Primera [初回限定盤] 』

(ボーナスディスク詳細 ) 01.シークレット・ジャイヴ(PellyColo M1 Fantasy Remix) 02.さよならクルージン(PellyColo Rainbow Steam Remix) 03.Security Lucy(Insecure Booty Mix) 04.Security Lucy(VINYL7 DUB) 05.West Philly(Instrumentl) 06.Sweet Tactics(Instrumental) 07.シークレット・ジャイヴ(instrumental) 08.さよならクルージン(Instrumental) 09.Security Lucy(Instrumental) Especia HP