SCREEN modeが考える“今の時代の高音質”とは?「どのデバイスで聴いても感動が伝わるように」

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【リアルサウンド】  「音のいいCD」…太田雅友の発したこの言葉の意味については、インタビューを最後まで読んでもらえばわかるものとして。アニソンというステージの上で、様々な冒険を繰り返しながら進化し続けるSCREEN modeの本性がどんどん露になってきた、というのが、ニューシングル『アンビバレンス』を紹介するのに最もふさわしい言葉かもしれない。TVアニメ『黒子のバスケ』第3期第2クールED主題歌という大舞台の上で、二人は何を意図し、何を目指したのか。アニソン・ファンならずとも注目のインタビューだ。

「いい意味での重圧があって、嬉しさと責任を感じました」(雅友)

——まずは、2月28日、渋谷ミルキーウェイでの2ndワンマン・ライブの話から始めていいですか。どうでした? 勇-YOU-:熱かったですねぇ。お客さんも熱かったし、SCREEN modeのパフォーマンスとして、熱いものをお客さんが全部受け止めてくれて、一体感があるライブが出来たんじゃないかなと思っていて。6月の3rdワンマンに向けて、さらに高みを目指して行けるような、先につながるライブだったんじゃないかなと思います。 雅友:何かその、コンサート・ホールで5000人の壁とか、1万人の壁というのがあるらしいんですよ。「たまアリを超えると違う」とか、実際にライブをしたアーティストの方々からよく聞くんです、そういうことを。「最初にたまアリでやった時には、お客さんに圧倒されて、いいパフォーマンスが出来なかった」とか。 勇-YOU-:へええ~。 雅友:僕らはワンマン2回目で、前回の倍、お客さんがいたんですね。今の「たまアリ」の話からすると、果てしなく規模が小さいですけど(笑)。でもなんというか、人の気というか……想いみたいなものが、倍になると、見えない力に押されるような感じがありましたね。 勇-YOU-:うーん。確かに。 雅友:その、大きい会場でやってるアーティストの方々が言ったことの片鱗を、身をもって知ったというか。「あ、こういうことか」と思って。やっぱり現場にスタッフとして行っている時とは違うじゃないですか。 勇-YOU-:そうですよね。 雅友:お客さんの想いは、アーティスト本人に向くわけだから。僕はあの日、本人としてそこにいたので、「これか!」と思いました。フェスとはまた違うわけですよ。ランティス祭りとか、僕らを見に来てくれた人が250人以上いたかもしれないですけど、あの日は、あの場にいる人が全員僕たちを見に来ているという、見えない何かが……。 勇-YOU-:重圧ですか。 雅友:いい意味での重圧があって、嬉しさと責任を感じましたね。「この人たちを、ロックしていかなきゃいけないんだな」って。気持ちが高鳴りました。 勇-YOU-:でも確かに、1stライブよりもお客さんの気の大きさを感じましたね。だから6月になると、また規模が倍になるので、どういう気が待ってるか。非常に楽しみです。 ——言い方はアレですけど。やるたびにデータが取れるというか。 雅友:確かに。 勇-YOU-:積み重ねですからね。一気に1000人規模のワンマンをする方もいらっしゃいますけど。こういう積み重ねの中で、今やってるライブがたぶん2年後、3年後にも生きてくるのかなと思ってますね。 ——まさに。どんどん大きくなってしまう前に、これを読んでる方は、「今見とかないと」ですよ。そしてリリースも、快調ですね。どんどん出てくる。 雅友:それはもう、ひとえにみなさんのおかげです。

「(『黒子のバスケ』の)歴史の一端を任せてもらえてうれしかった」(勇-YOU-)

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——アニメの曲は、進行が早いのが通例ですけども。今回のTVアニメ『黒子のバスケ』第3期第2クールED主題歌になった新曲「アンビバレンス」については、いつ頃から制作を? 雅友:去年のうちにはもう、ありましたね。もちろん極秘で。いろんな人が関わってる、大きい作品ですからね。 ——当然曲を作る側も気合が入ると思いますけど。何か、お題みたいなものはもらったんですか。 雅友:お題は、あってないような感じで、「バラードっぽいもの」というのはあったんですけど、どバラードではなくてもいいみたいな、振り幅のある感じで。それぐらいでしたね。ランティスのプロデューサーからも「いい曲書けばいいんだよ」って言われて、発注はそれぐらい。 勇-YOU-:それが一番難しい(笑)。 雅友:まず最初に、原作のマンガをいただいて。それは僕らが担当する『黒子のバスケ』帝光編の部分だけだったんですけど、僕は勉強不足で、それまでのストーリーを知らなかったので、途中から読んでも全然わかんなくて(笑)。これはマズイぞと思って、バンダイチャンネルで全部見直しました。 勇-YOU-:課金してね(笑)。 雅友:そう、一話ずつ課金して(笑)。それで一気に全部見て、その直後から曲を作り始めたので、そういう意味では、いい感じで話に入って行けたかなと思いますね。 ——この曲、さっきのお話のように「バラードっぽい」イントロで始まるんですけど、実は全然バラードじゃなくて、後半どんどん激しくなって行く。すごい急展開ですよね。これ、どういう発想でこうなって行ったんですか。 雅友:まず原作を見て……僕は一気に見たからかもしれないですけど、『黒子のバスケ』帝光編の前半は、登場人物がみんな仲がいいと思ったんですよ。そこがいいなと思って……まぁ、途中で仲が悪くなっちゃうんですけど。中学校時代の話で、登場人物の関係性が変わって行くんですよ。そこに二面性があるというか、中学に入った頃に仲間との出会いがあって、一緒にバスケを始めて……というところから、最後は、極端に強い奴が出て来たりして、強すぎて孤立していく人が出て来たり、離れて行く人が出て来るみたいな、そういう二面性のあるお話だなと思ったんで。音楽も何か一色じゃなくて、いろんな色があるものにしたいなというのはありましたね。それで、まぁ一応「バラードっぽいもの」というのがあったんで、それを完全に無視するのもどうかなと思って(笑)。 勇-YOU-:入口でバラード感を見せておいて……裏切る、みたいな(笑)。 ——すごいなぁ(笑)。まさにそういう曲です。勇-YOU-さんは、原作のマンガやアニメ、見てました? 勇-YOU-:そうですね、僕は前から見ていて、ファンだったんですけど。その歴史の一端を任せてもらえてうれしかったですね。役もいただいたんですよ、今回。黒子にバスケットを教えたという親友役をやらせてもらうんですけど、雅友さんが言ったように、キセキの世代の仲間たちが離れ離れになってしまう淋しさだとか、でもバスケットを続けて行くという黒子の強さもあるし、そういう二面性がこの曲に全部詰め込まれた、そんな内容に仕上がったんじゃないかと思います。 ——演奏はほぼ、バンドサウンドですよね。シンプルでダイレクトな。 雅友:そうですね。通常はバラードだと、僕のアレンジメントだとストリングスが入ることが多いんですけど、今回はあえて使わず。『黒子のバスケ』自体は高校時代の話ですけど、この曲に関しては中学時代の話の中で流れるんで、ストリングスが入ってあまりに知的な感じで音楽を満たしてしまうと、中学生らしい、フレッシュな感じがなくなって、大人が手伝ったみたいな感じになっちゃうなと思って。今回はストリングスは無しで行くことにしたんですよね。 勇-YOU-:歌詞を作るのも、最初は、学生時代にやっていた部活に対するシンプルな情熱や、青さや、そういうところを歌詞に入れたらどうだろう?というところもあったんで。それと、雅友さんがシンプルなバンドサウンドに近いものにこだわったのも、『黒子のバスケ』という作品に対する意識があったからだと思うんですね。むき出し感というか。 ——すごく面白いです。中学生と高校生とではサウンド感が違う、という発想は。 雅友:感覚的なものなんですけどね。逆に僕の中では、一番の部分は耐えているというか。アレンジャーとしてはもう一歩踏み出したいんだけど、ギリギリの寸止めでいるみたいな。 勇-YOU-:あははは。 雅友:シモネタじゃないよ? 行きそうで行かない。だって、中学生だから(笑)。 勇-YOU-:くくくく。それがシモネタに聞こえる(笑)。 雅友:ちょっとずつ、音が増えて行くんですよ。二番に行くにつれて。結局、最後までストリングとかオルガンとか、壁になるような、長音符の音色は出て来ないんですけど、声が増えて行くんですよね。 ——そう。この曲はコーラスがめちゃカッコいいんです。 雅友:ストリングスを使わないというところから、逆に、声をどんどん出して行って。作品自体は、ちょっと悲しい感じなんですけど、音楽には少しぐらい希望があってもいいんじゃないかと。最後は声が集まって、ワーッと終わる。聴く人には、そういうところまで聴いてもらえば、楽しめるんじゃないですかね。 ——コーラスは、全部勇-YOU-さん? 勇-YOU-:そうですね。でもこの「アンビバレンス」に関しては、そんなにコーラス多くないですよね? 雅友:いや、けっこう入ってるよ。 勇-YOU-:3曲目に「Happiness!」という曲があるんですけど、その曲のコーラスがけっこう多かったんで、「アンビバレンス」には、あんまり多いという印象がなかったんだけど。先に録ったからかな。 雅友:後半だけ出て来るし、録ってる時間が短いから、そう感じたんじゃない? 量は多いよ。要は、3番までほとんど出て来ないから、コーラスが。 勇-YOU-:ああ、そうか。多かったみたいです(笑)。 雅友:音数が少ないアレンジで、ピークを作るために、最後まで我慢してるんですよ。最後の最後まで寸止めで、最後で全部出す。 ——ドラマチックな曲ですよ。後半のギターソロも、めちゃエモいし。これは、CDサイズで聴かないと本当の良さがわからない曲だなと。 雅友:そうなんですよね。 勇-YOU-:MV(ミュージックビデオ)もドラマ仕立てなので。音も映像も、最後まで見ないと、すべてがわからないかもしれない。

【SCREEN mode】TVアニメ『黒子のバスケ』第3期 第2クール 帝光編 ED主題歌「アンビバレンス」Music Video Short Ver.

「悲しみだけじゃなくて、希望に向かって行く思いと、両方ある」(勇-YOU-)

——そして勇-YOU-さん、歌詞について。「アンビバレンス」という言葉にどんな思いを込めたのか。 勇-YOU-:TVアニメ『黒子のバスケ』が題材で、帝光編はその中でもせつなく悲しい過去を描いた作品なので。そういう黒子の心情を、一つヒントにさせてもらったということもありますし。僕の役は黒子の親友なんですけど、とあるきっかけでバスケをやっていく事に挫折してしまうという、その心情とも重なるかもしれないし。そういうふうに、登場人物の心情に当てはめて聴いてもらう楽しみ方もあると思うんですけど、そこだけじゃなく、思春期の漠然とした不安にも似てるかもしれないし、恋愛の感情にも通じるかもしれないし。聴いてくれる人たちそれぞれに、聴き取り方が違うかな?という、そういう曲であったらいいなと思って歌詞を書いて行きましたね。 ——ミュージックビデオは、ラブストーリーっぽい展開ですし、いろんな表現の仕方があって。 勇-YOU-:あのドラマだと、今から恋が始まるかも、みたいな感じもするし。絶妙な感じですよね。 ——「アンビバレンス」という言葉は、歌詞には出て来ないですけど、これは? 勇-YOU-:最後まで書いて、どういうタイトルがいいかな?と思った時に、まさにアンビバレンス(=相反する感情)だなと思ったので。悲しみだけじゃなくて、希望に向かって行く思いと、両方あるんですよ。相反する感情を1曲の中で描いているので、「アンビバレンス」になりました。 ——歌もエモいです。これまでの曲とは、感情の入れ方が違うように聴こえたり。 勇-YOU-:最初の歌い出しがセリフ調なので、そこはけっこう力を入れましたね。歌ってる感覚ではなく、語りかけてる感覚というか。 ——ああ、そのせいか。いきなりぐっとつかまれる感じがあるのは。 勇-YOU-:やっぱり、出だしって大事なんですね。 雅友:大事です、出だしは。 勇-YOU-:成功したようです(笑)。 ——さぁそして、今回は収録3曲ともすごいんですよ。いろんなジャンルにぶっ飛んでますから。2曲目「marionette」は、ゲーム『BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA EXTEND』エンディング・テーマということで。 雅友:これはすごい前に作っていた曲で、去年の夏前にはレコーディングが終わってて。やっと来たな、という感じですね。最初に、「救いのない話だ」という情報だけもらっていて……。 勇-YOU-:すごいワードですね(笑)。 雅友:それでヘヴィな、重い感じを出そうと思って作りました。通常ギターのチューニングで、一番低い音はミなんですけど、シまで落とせるギターを用意してもらって、デロ~ンっていう音が入ってます。低い音が。マスタリングの時に、大きいスピーカーで聴くんですけど、すごい下の音まで入ってましたね。重かったです。 勇-YOU-:すごい大きいスピーカーだったからね。 雅友:でも自宅でも、ヘッドホンで大きめの音で聴いてもらえれば、感じてもらえると思うので。 勇-YOU-:今までにない曲ですよね。僕も最初から最後まで、救いのない歌詞を書きました(笑)。 ——そんな歌詞を書いてると、どよ~んとしたりして? 勇-YOU-:いや、そういう感じはなかったですね。どう考えても自分の人生の中に当てはめることが出来ないというか、物語の主人公がいて、その人が思っていること、という感じで書いて行ったので。 ——暗闇、虚像、無情、不条理、とか。ダークなワード、てんこ盛りで。 勇-YOU-:空想上の物語みたいな、これはこれで面白かったですね。 ——爆音と静寂が交互にやって来る、極端な曲調なので。それもインパクト大です。 勇-YOU-:あそこ、ライブで歌う時に絶対ズレないようにしないとね。 雅友:練習しましょう(笑)。 勇-YOU-:サビはいいんだけど、Bメロのところは、音とメロディが同時に出てくるから。あそこを外したらカッコ悪いだろうな~。 雅友:感じれば、入れる。 ——考えるな。感じろ(笑)。 勇-YOU-:ブルース・リーですね(笑)。 雅友:水になったように。感じてください。

「ちゃんと感動が表現出来てる」(雅友)

——名言が出たところで、3曲目、さっきちょっと話に出た「Happiness!」に行きましょう。これ、何て言えばいいんですかね。明るい広がりのあるソウル、祝祭感あふれるゴスペル……。 雅友:僕はジャズ、ブルース、ソウル、R&Bとかがすごく好きで、でもSCREEN modeに今までそういう要素はなかったので。シングルの3曲目にこっそり入れてみようと。1曲目と2曲目が、明るい曲ではないじゃないですか。だから3曲目は明るい曲がいいかなと思って、「ハッピーな何かにしよう」とか言ってたら……。 勇-YOU-:そしたら「Happiness!」になった(笑)。でも春に出すシングルだし、新しい生活や環境になじむのはけっこう大変だから、そういう人たちの背中を押せるような曲になればいいなと思ったので。歌詞は日常感というか、些細なところにも喜びが待っていて、小さなところからも喜びを感じられたら、ということですね。 雅友:この曲、全部生なんですよ。ブラス・セクションも生で録ってて、シングルの3曲目でここまでやらせてもらえるのは、なかなか珍しいと思っていて。ランティスさんには感謝してます。 ——サックスのソロ。最高に決まってます。 雅友:いいですよね。逆に僕のギターのレコーディングは、すぐ終わりました。音数が少ないんで。早く帰れたのが良かったですね(笑)。 勇-YOU-:そこか! でも歌って楽しいんですよ、この曲。遊んでる感じというか、そういうものが伝わればいいかなと。 雅友:イントロと、最後に、勇-YOU-のフェイクを入れてもらって。 勇-YOU-:そうそう。僕も最近、R&Bは歌ってなかったから、フェイクの引き出しがなくて、そこが一番時間がかかったんですけど。 雅友:「もう一回やらせてください!」って言って、同じフレーズを歌うという。「一緒じゃん!」って(笑)。 ——ウォウ、とかイェイ、とか。簡単そうに聴こえるフェイクに、逆に時間がかかってると。 勇-YOU-:メロディと違って、可能性が果てしないので。まだ出せるかな?って思っちゃうんですよ。 ——そしてこの曲の肝は、コーラスをふんだんに盛り込んでいるところ。 雅友:歌いたい人は一緒に歌って、ということですよね。ゴスペルじゃないですけど、ライブでもみんなで声を出して楽しめたらいいなと思いますね。曲の最後はコーラスで終わるんで、そこをみんなでバツッと決められたら、気持ちいいですよね。 勇-YOU-:想像すると、楽しいですね。 ——次の3rdワンマン、6月7日の代官山UNIT、そんなシーンを楽しみにしてます。 雅友:あとね、マスタリングの時に3曲通して聴いて、その時に僕が感じたのが、音のいいCDだなと思って。僕が考える音がいいというのは、今流行りのハイレゾとか、高い周波数まで入ってるとか、それだけじゃなくて、もちろんSCREEN modeの曲はオーディオ的には常に最高の音質で制作してますが、その先にあるものを大切にしてるんです。今の時代はiPhoneや、ノートPCのスピーカーとか、ラジカセ、テレビとかで様々な環境で音楽を聴く人が多いと思うんですがそういうデバイスで聴いても感動が伝わるように、ちゃんと作られている音楽が、今の時代の高音質だと思うんですよ。僕もmacbook airのスピーカーでよく聴くし。だけど、どんな装置で聴いても、「聴こえますか…聴こえますか」というフレーズが、ちゃんと聴く人の心に入って行く。それが、いい音だと思うんですよ。 ——あ! そうか、それで「アンビバレンス」の歌い出しが、「聴こえますか…聴こえますか」になっている……すごいですね、それ。 雅友:マスタリングの時、大きいスピーカーから小さいラジカセまで、いろんな機械で聴くんですよ。どれで聴いても、ちゃんと感動が表現出来てるなと感じたんで、それが少しでも聴いてる人に伝わるんじゃないかな?と思います。そういう意味で、音がいいCDだなと思ってます。良かったら、色々聴き比べてみてください。 勇-YOU-:深いなぁ~。 ——では、最後に、あらためて、3rdワンマンへの抱負で締めましょう。では、勇-YOU-さん。 勇-YOU-:シンプルに、2ndワンマンを超えたいですね。今度はまた規模が倍になって、よりお客さんの気を感じ取りながら、それを共鳴させて行くことは、未知の世界だったりするので。演奏も歌も構成も考えて、もっともっとお客さんの心に刺さるようなライブにして行きたいなと思いますね。 (取材・文=宮本英夫)
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SCREEN mode 『アンビバレンス(アーティスト盤)』(ランティス)

■リリース情報 『アンビバレンス』 発売:2015年4月8日 【アーティスト盤】LACM-14332 ¥1,800 (税抜) 【アニメ盤(期間限定)】LACM-34332 ¥1,300 (税抜) 発売元:株式会社ランティス 販売元:バンダイビジュアル株式会社 〈収録曲〉 1.アンビバレンス(TVアニメ「黒子のバスケ」第3期 第2クール 帝光編 ED主題歌) 作詞:勇-YOU- 作曲・編曲:太田雅友 02.marionette(2D対戦格闘ゲーム「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA EXTEND」ED主題歌) 作詞:勇-YOU- 作曲・編曲:太田雅友 03.Happiness! 作詞:勇-YOU- 作曲・編曲:太田雅友 TVアニメ『黒子のバスケ』Official Web Site http://www.kurobas.com/ ©藤巻忠俊/集英社・黒子のバスケ製作委員会 2D対戦格闘ゲーム『BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA EXTEND』Official Web Site http://www.blazblue.jp/cp/ ©ARC SYSTEM WORKS
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SCREEN mode 『アンビバレンス(アニメ盤(期間限定))』(ランティス)

■ライブ情報 「SCREEN mode 3rd ワンマンライブ」 6月7日(日) 代官山UNIT 「「アンビバレンス」発売記念イベント」 【仙台】 開催日:4月18日(土) 開場時間:12:30 開演時間:13:00 会場:アニメイト仙台店 イベント内容:ミニライブ&握手会 参加券配布店舗:アニメイト仙台店 【郡山】 開催日:4月18日(土) 開場時間:17:00 開演時間:17:30 会場:アニメイト郡山店 イベント内容:サイン会 参加券配布店舗:アニメイト郡山店、アニメイト福島店 【東京】 開催日:4月19日(日) 開場時間:14:30 開演時間:15:00 会場:アニメイト新宿 アニメイトホールSHINJUKU イベント内容:ミニライブ&握手会 参加券配布店舗:アニメイト新宿店、アニメイト池袋本店、アニメイト渋谷 【広島】 開催日:4月29日(水・祝) 開場時間:12:00 開演時間:12:30 会場:アニメイト広島 イベント内容:ミニライブ&握手会 参加券配布店舗:アニメイト広島店、アニメイト岡山店、アニメイト福山店、アニメイトフジグラン東広島店 【神戸】 開催日:4月29日(水・祝) 開場時間:17:30 開演時間:18:00 会場:アニメイト三宮店 イベント内容:サイン会 参加券配布店舗:アニメイト三宮店、アニメイト姫路店 【大阪】 開催日:5月6日(水・祝) 開場時間:12:30 開演時間:13:00 会場:アニメイト大阪日本橋店 イベント内容:ミニライブ&握手会 参加券配布店舗:アニメイト大阪日本橋店、アニメイト天王寺店、アニメイト梅田店 【名古屋】 開催日:5月6日(水・祝) 開場時間:17:30 開演時間:18:00 会場:名古屋某所 イベント内容:トーク&サイン会 参加券配布店舗:アニメイト名古屋店 ※参加方法など詳細はオフィシャルHPを参照 ■オフィシャルHP http://screenmode.net/index.html

サザン桑田佳祐が明かした「歌うたい」の決意 セルフライナーノーツ『葡萄白書』を読む

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【リアルサウンドより】  3月31日に発売されたサザンオールスターズの新アルバム『葡萄』の楽曲群を、完全生産限定盤に付属するオフィシャルブック『葡萄白書』掲載の桑田佳祐によるセルフライナーノーツを引用しつつ紹介する短期集中連載。最終回となる今回は、NHK放送90周年イメージソングに選ばれたバラード曲「平和の鐘が鳴る」、シンプルながらも強い印象を残すミディアム曲「道」の2曲を取り上げたい。 (第1回:サザン桑田佳祐が原由子への思いを歌った理由とは? 予約完売続出の新アルバム生産限定盤、セルフライナーノーツ『葡萄白書』から読み解く) (第2回:サザン桑田佳祐は歌謡曲をどう吸収してきたか セルフライナーノーツ『葡萄白書』でルーツ明かす

「平和の鐘が鳴る」

 アルバム中でも最も切ないメロディラインをもつバラード曲。金原千恵子ストリングスによる滑らかな弦の響きも印象的であるが、桑田自身は過去のサザンの名曲を引きながら、サウンド面の狙いを次のように綴っている。 「私にはこれまで実行してきたことがひとつある。それはサザンのアルバムの中に必ずハチロク(8分の6拍子)の曲を入れるという小さな計画だった。3連符のロッカバラードと言えばいいのか。『熱い胸さわぎ』なら「恋はお熱く」、『ステレオ太陽族』なら「栞(しおり)のテーマ」、『キラーストリート』なら「ひき潮〜Ebb Tide〜」がそうだった。今回もこの曲でそれが実現できて大変満足である。」 「栞のテーマ」「恋はお熱く」がそうであるように、これまでの同種のサザンナンバーといえば、シンプルなラブソングという印象が強かった。一方、本曲はタイトルが示唆するように、現代社会へのメッセージを歌った楽曲である。  ライナーノーツによると、桑田がたまたまNHKスペシャル『カラーでよみがえる東京〜不死鳥都市の100年〜』を観たことが曲を書くきっかけとなったという(なお、これはライナーノーツで初めて明かされた事実であり、NHK90周年イメージソングに選ばれたことは偶然の出来事だったようだ)。同番組では、昔の東京の街並みを写した白黒写真に色彩を施し、当時の雰囲気をできるだけ復元するという試みが紹介された。明治・大正期のモダンな街並み、東京駅の前を走る大八車、そして関東大震災……さまざまな歴史的場面の中でも、桑田は終戦直後の東京の街並みや人々の姿にインパクトを受けたという。 「番組では焼け野原から徐々に立ち直っていく人々の笑顔が映し出される場面があった。配給を待つ人々も、皆一様にニコニコしている。それを当時の米駐日大使が“ジャパニーズ・スマイル”と呼ぶ。私は彼らの笑顔に、日本人の品格を感じた。  日本人は様々な悲しい時代を必死に生きてきた。空襲、震災と、何度となく焼け野原を体験しては立ち上がってきた。正直、よくこれほどまでに立ち上がってこられたものだと思う。きっとあの青空に侘びや寂びを込め、笑顔を絶やさずに生きてきたのだろう。」  楽曲では平和への願いとともに、「この世に生かされて 悪いことも良いことも どんな時代だろうと 人間(ひと)が見る夢は同じさ」とも歌われている。こうした重いフレーズが、「栞のテーマ」にも通じる甘美な切なさを伴って歌われるところに、本作の得がたい魅力があるのではないだろうか。

「道」

 70年代のボブ・ディランやデヴィッド・ボウイの弾き語り曲を連想させる、硬質なギター伴奏と歌声を持つ「道」。パーソナルな心情を歌った楽曲の多い『葡萄』の中でも、“桑田佳祐の肉声”をひときわ感じさせる楽曲だ。  音作りにおいては、ブリティッシュ・ロックを念頭に置いたという。 「曽我(淳一)君がメロトロンやシンセ・チェロ、原さんがピアノや、間奏で鍵盤ハーモニカの音を、それぞれシンセで弾いている。またここでも原さんが、単音のみでカウンターメロディを作って、サビを美しく広げている。「ピースとハイライト」、「栄光の男」と同様、いつもの原坊マジックが炸裂しているのだ。スライドギターは私。昔から好きなアメリカン・スタイルのスライドではなく、ピンクフロイドみたいな方向性を意識して弾いてみた。」  どこか幻想的なサウンドで歌われるのは、ひとりの「歌うたい」の独白。桑田はここで、〈イケない恋に溺れたり 危ない相手口説いたり〉しながらも、〈愛したのはあなただけ〉とつぶやく“自虐的なシャンソン歌手”を演じ切っている。 「かつてイヴ・モンタンにセルジュ・ゲーンズブールや美輪明宏さんが歌ったような、一人称の自虐的な歌うたいの歌が出来上がった。  フェリーニの映画『道』ではないが、仮に人生を道と例えるならば、一見すると勝手気ままそうに見える男でも、その実、自分のこれまでがどこか腑に落ちず、矛盾を抱えたまま人生を歩んできたと感じている人は、決して少なくないのではなかろうか? 私自身、これまでの出会いで忘れられない人々がいる。そんな人生の道半ばにしての独白である。」  さらにライナーノーツでは、「歌うたい」というフレーズに寄せて、表現者としてのスタンスを率直に綴っている。 「「歌うたい」という言葉には、結局自分は生まれながらにして只の歌手で在りたいという、アイデンティティとロマンチシズムが含まれている。ちょっとカッコ良すぎるだろうか? それがたとえ辛くて悲しい気持ちであっても、歌で自分の気持ちを表明することが許されるのは、音楽人として何より幸せだ。いま私が憧れるのはただの「歌うたい」。ちょっとバランスが悪くて、辻褄が合わなくて、言い訳がましい、そんなひとりの「歌うたい」なのだ。」    誰もが口ずさめるポップミュージックでありつつ、現代社会や音楽文化、さらには人生についての洞察に満ちたアルバム『葡萄』。桑田佳祐の歌世界をより深く味わいたいという方は、ぜひ『葡萄白書』に収められたライナーノーツ全文を読んでいただきたい。 (文=神谷弘一)

アルカライダーが暴くアルカラの”悪行”とは? マニアックかつ破天荒なトラックを分析

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【リアルサウンドより】  地球から約6(ロック)万光年離れたアルカランドロス星雲からやってきた「ロック界の奇行師ヒーロー」、アルカライダー。その目的は、地球人になりすまして「ロック界の奇行師」と称し、奇術によって人々のハートを射止め続ける極悪音楽奇術集団「アルカラ」をこらしめること――だったのだが、ちゃっかりとシングル『怪盗ミラクル少年ボーイ』(アニメ「怪盗ジョーカー」主題歌)でメジャーデビューを果たした彼らが、またまた問題作をぶちかます。3月25日にアルカライダー監修による『アルカラボーナストラック大全集』だ。  アルカラはこれまでにリリースしたミニアルバム、E.P、アルバムのすべてにシークレットでボーナストラックを収録。約12年に渡ってため込んできた11曲のボーナストラックをアルカライダーが暴き出し、ひとつのアルバムとしてコンパイルしたのが本作だ。これまで伏せられてきた曲名、歌詞も初公開。さらにライブ音源として収録されていた「交差点」「偽り」は新たにレコーディングが行われた。特に「交差点」のスタジオ録音音源(自主制作盤)は既に廃盤になっているため、じつに約10年ぶりに新緑バージョンとして蘇る。つまり、『アルカラボーナストラック大全集』にはきわめてレアなトラックがぎっしりと詰まっているというわけだ。  シークレットトラックはその性格上、そのバンドのマニアックな部分が表出しやすい。「自分たちはおもしろいと思うし、熱心なファンは喜ぶだろうけど、アルバムに入れるのはどうだろうね?」みたいな。逆に言うと「あんまり表には出したくない」と判断した曲には、バンドのコアが込められている可能性が高い。そして『アルカラボーナストラック大全集』には、自ら「ロック界の奇行師」と名乗ってしまうアルカラというバンドの特性が色濃く反映されているのだ。  たとえば「今日からあなたは市長さん」(‘13年9月24日リリース/6thアルバム『むにむにの樹』)はかつてのスーパーファミコンソフトに使われているような歌だ。学校帰りに友達の家に言って、“おかん”に文句言われながら遊んだ思い出がロックオペラ風の楽曲に仕立て上げているのだが(エンディングでは“おかん”が登場して、“ちょっとお母さん、スーパーいってくる。台所にビルケットあるから”みたいな)、この原風景はまちがいなく、彼らのルーツのひとつ。最後の「8bitの音楽が 僕らの未来を変えたんだ」というフレーズが、そのことを強く示唆している。(ちなみにスーファミは16bitですが)  「偽り(New Recording Version)」(オリジナルのライブバージョンは‘06年11月リリースの3rdミニアルバム『20秒前』収録)はアルカラの破天荒なイメージを気持ちよく覆してくれる、オーセンティックなギターロックチューン。シリアスな響きを含んだメロディとともに稲村太祐(G&V)は「流されずにいたいだけさ/未知なる矛盾と希望の果てに」と力強く歌っている。真摯なメッセージ性、骨太のオルタナなサウンドがひとつになったこの名曲を2015年のアルカラの音で聴けることは、本作の大きな成果だと思う。  一発録り特有の揺れるグルーヴが印象的な「編集後記」(‘04年12月リリースの1stミニアルバム『阿呆の逆争』)は、しなやかなギターカッティングを軸にしたミディアムチューン。美しく洗練されたメロディ、ソウルミュージック的なテイストを含むバンドアンサンブル、そして、悲しいこと、つらいことが「全てが空へと 消えてしまわぬように」歌にするんだという意思を反映させた歌詞がひとつになったこの曲(まるでシュガーベイブみたいです、ホントに)が最初期のミニアルバムに収録されていたという事実は、このバンドの高いポテンシャルをはっきりと示している。  そしてアルバムの最後にはアルカライダーの1stシングル『怪盗ミラクル少年ボーイ』のライブ音源(2014年12月7日/Zepp Tokyo)を収録。音源ではコミカルなイメージが強かったナンバーだが、ライブ音源は驚くほどに攻撃的。メロコア、ラウドを自在に混ぜ合わせつつ、エキゾチックかつコミカルなメロディを挿入するという破天荒な世界観をダイレクトに体現している。この規格外の表現量は、アルカラにもぜんぜん負けていない。  アルカライダーのアルバムと見せかけて、じつはアルカラの隠れた悪行(シークレットトラック)を世に晒してしまった本作。この際、アルカラのヤバさをたっぷりと味わってほしいと思う。そして当然(?)このアルバム自体にも……(あとはご自分で確かめてください) (文=森朋之)
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アルカライダー『アルカライダー監修「アルカラボーナストラック大全集」』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『アルカライダー監修「アルカラボーナストラック大全集」』 発売:2015年3月25日 VICL-64326  ¥2,315(税抜) ・収録曲 くだけねこのうた<from 7th album「CAO」> 今日からあなたは市長さん<from 6th album「むにむにの樹」> ボーイスカウト8つのおきて<from 5th album 「ドラマ」> パパ泣いちゃった<from 1st E.P.「おかわりください」> こんにちわはおかあさん<from 4th album 「こっちを見ている」> 自然<from 3rd album「フィクションを科学する」> 交差点(New Recording Version)<Original Live Ver. is recorded in「BOY NEXT DOOR」> シンガスマイル<from 1st album「そうきたか」> 偽り(New Recording Version)<Original Live Ver. is recorded in「20秒前」> キューリープレイス<from 2nd mini album「サビヅメ」> 編集後記<from 1st mini album「阿呆の逆争」> 怪盗ミラクル少年ボーイ(LIVE Version@2014.12.07 Zepp Tokyo)
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アルカラ『20141207-ガイコツアー2014-(初回限定盤)』(ビクターエンタテインメント)

『20141207-ガイコツアー2014-』 発売:2015年3月25日 ・初回限定盤(DVD+CD) VIZL-802 ¥3,500(税抜) ・通常盤(DVD) VIBL-747 ¥3,500(税抜) ※初回限定特典CD:初回限定盤に「ガイコツアー追加公演ライブCD」付属 チケットが即SOLD OUTとなった渋谷・沖縄・台湾・名古屋・神戸のガイコツアー追加5公演の中から、メンバー自らが録音・選曲・制作を手掛けたスペシャルライブCDが付属。 <DVD> 20141207 ガイコツアー2014 at Zepp Tokyo 1.Aカップ巨乳 2.カラ騒ぎの彼女 3.アブノーマルが足りない 4.チクショー 5.キャッチーを科学する 6.嘘つきライアー 7.癇癪玉のお宮ちゃん 8.藤壷のキミ 9.愚痴ばっかりのローレロレロ 10.不完全なキミ 11.む・つ・ご・と 12.ガイコツマン 13.どうでもいいウタ 14.夢見る少女でいたい。 15.半径30cmの中を知らない 16.+.- 17.扉の前にて 18.振り返れば奴が蹴り上げる 19.ドナドナドーナツ 20.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト ENCORE 1.くだけねこのうた 2.ゆけ!アルカライダー ~アルカライダーのテーマ~ / アルカライダー 3.怪盗ミラクル少年ボーイ / アルカライダー ※特典映像:ツアーダイジェスト&ドキュメント
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アルカラ『20141207-ガイコツアー2014-(通常盤)』(ビクターエンタテインメント)

<初回限定盤特典CD> ガイコツアー2014 EXTRA 1.Aカップ巨乳~カラ騒ぎの彼女 (at 2014.12.25 神戸 ART HOUSE) 2.アブノーマルが足りない (at 2014.12.25 神戸 ART HOUSE) 3.涙腺 (at 2014.12.25 神戸 ART HOUSE) 4.カキツバタ832 (at 2014.12.25 神戸 ART HOUSE) 5.ウツリギ (at 2014.12.22 名古屋 Club Rock’n Roll) 6.ミックスジュース (at 2014.12.10 渋谷 TSUTAYA O-Crest) 7.デカダントタウン (at 2014.12.14 那覇 桜坂セントラル) 8.ガイコツマン (at 2014.12.12 台北 THE WALL)ン 9.MC (at 2014.12.12 台北 THE WALL) 10.キャッチーを科学する (at 2014.12.12 台北 THE WALL) 11.半径30cmの中を知らない (at 2014.12.12 台北 THE WALL) 12.偽偽り (at 2014.12.25 神戸 ART HOUSE) http://www.jvcmusic.co.jp/arukara/

サザン桑田佳祐は歌謡曲をどう吸収してきたか セルフライナーノーツ『葡萄白書』でルーツ明かす

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【リアルサウンドより】  3月31日にリリースされるサザンオールスターズの新アルバム『葡萄』の楽曲群を、完全生産限定盤に付属するオフィシャルブック『葡萄白書』掲載の桑田佳祐によるセルフライナーノーツを引用しつつ紹介する集中連載。第2回目の今回は、ドラマ『流星ワゴン』(TBS)の主題歌でもある「イヤな事だらけの世の中で」と、原由子がボーカルを務めるミディアムナンバー「ワイングラスに消えた恋」という、歌謡曲のエッセンスを感じさせる2曲を取り上げたい。 (第1回:サザン桑田佳祐が原由子への思いを歌った理由とは? 予約完売続出の新アルバム生産限定盤、セルフライナーノーツ『葡萄白書』から読み解く

「イヤな事だらけの世の中で」

「月はおぼろ 花麗し」という擬古文調の歌い出しが印象的なこの曲。アルバム『葡萄』には昭和期の歌謡曲のエッセンスを感じさせる楽曲がいくつか含まれているが、この曲はその代表例といえる。ムード歌謡的なコーラス、“泣き”のギターリフ。とはいえ、音の仕上がりはカラッとしている。桑田はセルフライナーノーツで「松田弘の叩くドラムのリム・ショットやゲートリバーブなど、80年代のポリスやアート・オブ・ノイズを彷彿とさせるサウンドに和風だしを効かせたことで、摩訶不思議なナンバーになった」と綴っている。  サウンド面だけでなく、歌詞においても、歌謡曲的な手法が見受けられる。 「やはり、おそらくルーツは歌謡曲や演歌といった邦楽の引き出しなのだろう。俗に「背中を押してくれる曲」とか「そっと寄り添ってくれるような曲」といった、綺麗な物の言い方を耳にする。だが自分の年齢のせいか、大変悲しいことだが、昨今の若者向けポップス(表現が古い!)からは共感やリアリティを感じることが出来ない。正直に言ってしまえば、60近いおっさんである我が身の背中を押してくれるような言葉など、現代の「流行歌」にはほとんどない。ならば自分で書かなければならない。」  歌の舞台は京都。鴨川、祇園といったご当地描写を入れつつ、「イヤな事だらけの世の中で ひとり生きるのは辛いけど この町はずれの夕焼けが 濡れた頬を朱で真っ赤に染める」といったフレーズが続く。こうした歌詞を飄々と歌いあげるあたりは実に桑田佳祐らしい。 「“イヤな事だらけ”とは、もしかしたら好きな人がいるとか、人生の中に生きがいみたいなものを見出しているからこそ言える言葉なんじゃないだろうか。自分の歌を自分で分析してりゃ世話ないが、そんな女性の姿や心持ちが浮かんでくる。さらに分析すれば「もうほんとに世の中イヤな事ばっかりで」と言えるのは、愚痴や嘆きを言える相手がいるという意味で、僅かだが救いのある状態なのではないだろうか。  日本人の生活には長屋の時代から「ああ、やだやだ」なんて口癖のように愚痴を吐いて、夫婦間でも「この宿六」とか言い合いながら発散してきた風情があった。どんなに貧乏でも、ピンチでも笑顔や幸せを見出す機能を、かつての庶民は各々に持っていた気がする。そこに演歌や歌謡曲に流れていた日本人のDNAの源流を感じるのは、私だけではないはずだ。」  『葡萄』の特徴のひとつは、ロック、ブルース、フォーク、歌謡曲と、多彩な音楽的ルーツの掘り下げている点にある。そんな中で「イヤな事だらけの世の中で」は、Jポップから歌謡曲、演歌にまで遡りつつ、日本語ポップスの系譜をサザンらしいやり方でたどった一曲といえそうだ。

「ワイングラスに消えた恋」

 サザンのアルバムの名物ともいえる原由子のボーカル曲。彼女は今回、管楽器・弦楽器を交えたビッグバンド的演奏と見事に呼吸を合わせ、ミステリアスな恋模様を歌い上げている。楽曲が生まれた背景について、桑田はライナーノーツで詳細に記している。 「やっぱりサザンのアルバムには原坊がヴォーカルを取る曲が絶対に欠かせない。いつもなら彼女は「鎌倉物語」や「私はピアノ」などを、キーボードを弾きながら歌うのだが、今回はもしライブで演奏するのなら、是非ともハンドマイクで歌ってもらうぐらいの、ちょっと大仕掛けのレビューみたいな世界観の曲を提供してみようと考えた。  ついつい歌謡曲の話題になってしまうが、かつては金井克子さんやいしだあゆみさん、欧陽菲菲さんといった歌謡曲の女性歌手が、壮大なビッグバンドを従えてテレビで歌っていた時代があった。そこには歌の文句だけではなく、ひとりの女性の人生模様が映し出されていた。」  桑田によると、この曲の主人公は「かつては全盛期にあった歌手」。その彼女が妖艶な大人の魅力を携えて第二幕を迎える場面をイメージしたといい、かつての弘田三枝子の復活劇にも言及している。原由子のイメージとは一見かけ離れているが、桑田は彼女の“楽曲に寄り添う”力に賞賛を惜しまない。 「原さんはキーボードプレイヤーとして広い守備範囲を誇る。ロック、ブルース、歌謡曲、ポップスと、どんなジャンルでも器用にこなせる多彩さの要因は、音楽的に恵まれた時代を生きてきたからこその豊富な経験と、それに裏打ちされた彼女特有の“歌心”に他ならない。そして、無論この歌心は歌唱そのものに対しても同様だ。彼女はヴォーカリストとしても、曲との“寄り添い方”が素晴らしい。アルバム中1曲のリードヴォーカルという、絶好のチャンスで回ってきた代打の1打席みたいな見せ場で、楽しく切なく歌ってもらいたかったのだ。」  かくして同曲は、紆余曲折を経てステージへと帰還した歌姫の“嘆きの歌”として、妖しい魅力を放っている。(続く) (文=神谷弘一)

水曜日のカンパネラ×ヴィーナス・カワムラユキ×りんご音楽祭主催者・古川陽介が語る「りんご音楽祭」のスピリット

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写真左より、古川陽介(スリーパー)、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、ヴィーナス・カワムラユキ

 長野県松本市で2009年から始まった、古川陽介氏(dj sleeper)主催の野外音楽フェス「りんご音楽祭」。これまで7度開催され、毎年150組を超えるアーティストが出演し、回を重ねるごとに盛り上がりを増している。その「りんご音楽祭2015」が9月26日、27日に開催される。(開催場所は現在調整中)  リアルサウンドでは今回、2013年の同フェスのオーディションイベント「RINGOOO A GO-GO」に出演した水曜日のカンパネラ・コムアイ、そしてりんご音楽祭の東京支部といっても過言ではないウォームアップアップバー「しぶや花魁」のプロデューサーであり、DJ、作詞家のヴィーナス・カワムラユキ、主催者の古川陽介氏による対談を掲載。「りんご音楽祭」や「RINGOOO A GO-GO」について語ってもらうと同時に、フェスのあり方や、このフェスとオーディションの特異な関連性について語ってもらった。(編集部)

「そういうのがいいよね、主催者が出過ぎちゃうっていう」(コムアイ)

ヴィーナス・カワムラユキ(以下、ヴィーナス):水曜日のカンパネラが「RINGOOO A GO-GO」に出たのは2013年なのだけど、応募のきっかけは? 水曜日のカンパネラ・コムアイ(以下、コムアイ):りんご飴マンかな。何かやろうっていって応募したのがきっかけかな? りんご音楽祭主催者・古川陽介(以下、スリーパー):りんご飴マンが知ってたの? コムアイ:いや、私たちもその年、主要なフェスにどれか一つでも出れたらいいなあって思って話し合っていて。それで「りんご音楽祭」出たいねって流れに。前に他のイベント出た時にりんご飴チームと知り合って、「りんご音楽祭」のことを詳しく教えてもらったりしました。 ヴィーナス:なんで「りんご音楽祭」がいいなって思ったの?どの辺が? コムアイ:名前かな。 ヴィーナス:逆にスリーパーはどの辺に魅力を感じたの?水曜日のカンパネラ。 スリーパー:何か、本物か偽物かどっちかだけど、どっちかな〜って思って。ライブが変わってて面白くて。 ヴィーナス:どこで見たの? コムアイ:渋谷のUNDER DEER LOUNGE スリーパー:で、今はコムアイがステージが高いと力を発揮するって事が最近わかってきたんだけど、たまたまUNDER DEER LOUNGEステージが超高くて、上から目線の煽りみたいのがすごいくるんだよ、若い女の子が、めちゃめちゃ上から目線で食い込んでくるっていう、で、うちのスタッフと話してて、これどっちだろうねーって。 コムアイ:あのライブの時、すごい笑い声がうるさくて、ライブ中は「うわっ何この人たち」って思ってた。 スリーパー:俺そんなに笑ってた? コムアイ:「やべー」みたいの聞こえて来て。たぶん…スリーパーの声だと思うけど。 スリーパー:声でかくてすいません。 コムアイ:すごい聞こえてきて、あー、あの人達が決めるんだーっと思って(笑) スリーパー:嫌な感じじゃん(笑)。気をつけよ。 コムアイ:でもそういうのがいいよね、主催者が出過ぎちゃうっていう。 ヴィーナス:どういうタイミングで決めるの? スリーパー:3つに分かれるかな。ダントツ良いのはその場で決定!って言いたいのはたまにいて、あと全然だめなのもすぐわかる。 でも、いいとこあるけど、足んない部分もあるな〜っていうのがそれが半分くらい。
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コムアイ:何が足んなくて、何がいいのかすごく聞きたい。 スリーパー:よくあるのが、曲はすごくいいんだけど、演奏も歌もヘタ。あとステージになれてないというパターン。 ヴィーナス:でも曲がいいって素晴らしいね。 スリーパー:若いバンドとか見て、すごい曲はいいけど、ボーカルがきっと自分で歌いたいんだけど、自分で歌いたいのか、この曲で何かを起こしたいのかっていうそれで大きく変わってくると思う。自分の作った曲で世界を変えたいと思って、冷静に判断して、ボーカリストとしては世界を変えられない、でも自分の曲は世界を変えれる。だったら本当は歌いたいけど、っていう考え方ができればいいけれど。 コムアイ:ん〜なかなかわかんないよ〜、どっちも自信が無いと思う。 ヴィーナス:その辺のアドバイスは? スリーパー:バンドに聞かれたら言うよ。「RINGOOO A GO-GO」とかだと向上心がある人だと聞いてくるから、そういう人には言うし、でも言われたくない人もいるじゃん?でも、光る物がある人は一応謙遜して言うようにはしてる。たまに言うのは、音楽を芸事として、ステージに登って、お金もらって人に見てもらいたいって言ってやってきたいのか、音楽がただ好きで演奏できればいいっていうのではえらい違いがあって、「RINGOOO A GO-GO」っていうものは、お客さんに見てもらいたいっていう人達にやっている事であって、でもやりたいようにやってる人もすごいいいと思うし理解してるんだけど、自分がどっちをやってるのかっていうのを理解するのはすごい大事だと思うんだよね、だからよく言ってる。いい音をいい音として伝える努力は必要だね。
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「音楽を芸事として、お客さんを魅了する」(ヴィーナス)

ヴィーナス:具体的にはどんな内容のアドバイスとかするの? スリーパー:例えば、俺「この曲ってが凄い深〜い感じで青い感じじゃん?!」→バンド「そうですそうです!」→俺「だったら照明に伝えておかないと!」とか。 コムアイ&ヴィーナス:アァーーーーー。めちゃ良いじゃん! ヴィーナス:音楽を芸事として、お客さんを魅了するって事を自分たちで考えられるようになると素晴らしいわね。 コムアイ:衣装とかもそうだよね。なんか思い出したんだけど、ライブやりたくないなって時期に、自分のライブの映像を見返して、お客さんとか関係者とかに言われる嫌なことは、自分のライブを変えれば全部解決するじゃんっ!ポジティブな感じで気づいて安心した。 ヴィーナス:うんうん。それで、2013年に水曜日のカンパネラが出て来て、りんご音楽祭としてはどんな滑走路を作ってあげられたと思いますか? コムアイ:全部やってくれたよね! スリーパー:そんなにやった? ヴィーナス:こないだ沖縄行ったけど、沖縄のタワレコ総合チャートで水曜日のカンパネラが1位を取ったんでしょ? スリーパー:それは俺もグッと来た、やっぱりきっかけは俺も関わってるから。沖縄へ最初に誘ったの俺だしね。そんな沖縄の地で今回の対談してるのとかも良いよね。 コムアイ:沖縄にon(古川が経営するDJバー)ができたのと、私が地方に行けるタイミングが重なったから。タイミングが良かったんだよ。 スリーパー:メジャーのそうそうたるメンツの中で総合チャート1位って本当に凄いよね。 ヴィーナス:そういう大衆音楽に個性で食い込んでいったわけだし、そういった中でも沖縄は何か特別なのかな? コムアイ:寛容だよね、個性に対して。 スリーパー:個性を愛する感じだね。 コムアイ:でも私、人生で一番最悪だったライブがonのライブだな〜。 スリーパー;ステージがないのホント苦手だよね〜 コムアイ:ライブにならないんだよね〜 ヴィーナス:じゃあこれを機にDJに(笑) コムアイ:DJ!? でもDJって果てしなくて怖い!DJが廻してるスピーカーの前で踊ってるだけで楽しいから、私がDJになる必要なくない?
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「りんご音楽祭は人の繋がりと気持ちでやってる」(スリーパー)

ヴィーナス:「RINGOOO A GO-GO」ってバンド以外も応募来るの? スリーパー:来るよ、ラップグループとか水曜日のカンパネラみたいにトラックで歌う人とか。弾き語りも来るし、何かね今度ダンサーが応募してもいいかっていうの来たよ。 コムアイ:へ〜、面白いね。 スリーパー:色々くるよ〜、アイドルとかも来るし。「りんご音楽祭」を全然知らない人も来るし。あと「RINGOOO A GO-GO」とかは、出てくれた人とは色々絡んでいきたいよね〜。 ヴィーナス:まぁ、オーディションは恋みたいなものだからね〜 コムアイ:それいいね、タイトルそれにしよう、オーディションは恋。 笑 ヴィーナス:そう、オーディションは恋で、契約は愛よ。 スリーパー:そう、オーディションの評価が全然全てじゃないからね。 ヴィーナス:「RINGOOO A GO-GO」はオーディションであり、ライブであるって事だよね、要はそこでお客さんをロックしてる姿とかも見たいしね。そして、そのオーディションに勝ち抜いたバンドと全国ツアーもしたでしょ? スリーパー:そう、年末にその年の「RINGOOO A GO-GO」に参加してくれたバンドで、僕がいいなって思うバンドに6組ぐらい集まってもらってゴーゴーアワードっていうのをやって、それでグランプリになった「夕暮れの動物園」ってバンドとツアーをしたんだけど、それがすごいよくて、そういう活動をやっていきたいなってすごい思った。 コムアイ:良ければどこまででも面倒見てくれるよね。 ヴィーナス:でもさ、恋は盲目だしさ、恋は唐突だしさ、恋は事件だから。そのテンションの高まりが、うまくステージにパッケージングできたり、他のイベンターさんへのご縁だとか、CDになったり、何がどうなるかわかんないけど、そういう発展の追い風を吹かせてくれるっていうのが「RINGOOO A GO-GO」なんじゃないかな。 スリーパー:まぁ、うちとかは資本も無いし、やれる事は限られてるけど、りんご音楽祭自体がそうであるように人の繋がりと気持ちでやってるから、そこはいっぱいみんなに繋げてあげたいいんだよね。 ヴィーナス:でも、そういう所にエントリーしていない限り、何かは起こらないじゃない? コムアイ:そうだよね〜、受からないと何も意味が無いって思い込んで出ても面白くないしね〜 ヴィーナス:そこが、メジャーのオーディションと違う特徴だよね、そういうのに共感したり、メジャーの音楽業界が今までのようにやることが難しい中で、あえて等身大の音楽エンターテイメントを提供していくかっていうのが「RINGOOO A GO-GO」なのかもしれないね。 コムアイ:でも間違いなく新しい時代の風は吹くよね「RINGOOO A GO-GO」がやってる間は。 スリーパー:うん。そういうとこに共感してくれる人が集まって来てる、自然と。
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「「RINGOOO A GO-GO」は出会いのパワースポットだ」(ヴィーナス)

ヴィーナス:若いバンドの志に近いよね、「りんご音楽祭」って」あと「RINGOOO A GO-GO」で出会ったバンドと一緒に育っていきたいって気持ちがあるよね。 コムアイ:そうだね、同期みたいな。 スリーパー:もうそれしかないよね、オーディションもそうだけど、「りんご音楽祭」は一緒に日本の音楽シーンを最高なものにしてこうぜっていう仲間でお祭りやってるだけだから、その意識がわかる人だとばっちりはまって、オーディション後もどんどん一緒にできてる感じだね。なんかオーディション後はりんご音楽祭が全部やってくれるんでしょ?っていう昔ながらのオーディションとはちょっと違うかな。一緒にお祭りできる人を集めてるから、一緒に遊べない人とは、一緒に出来るわけないからね。多分、そういう事が知りたいバンドは打ち上げあったら行きます!みたいな感じで、他のオーディションとの違いを感じてくれてるんだよね。 コムアイ:勘がいいんだね。 ヴィーナス:だからステージ以外の部分でもなんかトライしてみるといいんだね。 スリーパー:そうだね「RINGOOO A GO-GO」で知り合ったけど、りんご音楽祭以外の場所で発揮できるとこがあったらどんどん紹介するしね。 ヴィーナス:もしかしたら、りんご音楽祭周辺の音楽業界の人とか何か志してる人との出会いとかもあるかもしれないし、それも含めて「RINGOOO A GO-GO」に参加するのもいいかもね。 コムアイ:独特な雰囲気だよね。 スリーパー:オーディションってわかりやすいから、オーディションって言ってるけど、やっぱり一緒に祭りやる仲間探しだね。 ヴィーナス:そういえば、しぶや花魁スタッフの面接もオーディションって言うしね。笑 スリーパー:それに近いよね。一緒に働けるか、一緒に夢見れるかとかと同じで、善か悪かじゃなくて一緒に祭りできるか。 コムアイ:都会っぽいオーディションと全く違うよね、人間味があるっていうか。 スリーパー:そんなんでオーディションやってるのかよ?って思う人もいると思うけど、うちのやり方はそういう感じだね。でもさ、そこから生まれる物ってかけがえの無いものじゃん? コムアイ:すごい寒い(笑)。 スリーパー:え?そんな事ないよ。だってさ、オーディションから沖縄で集まるくらいの仲に発展するとかあまりなくない? ヴィーナス:とりあえずさ、一生の付き合いの始まりではあるよね。例えば、私とコムアイが今から10年ほど会わなくなっても、10年後にあった時にこの日の事を思い出すわけ。何があるかわからないけど、そういう人生の素敵な出会いがあるかもしれないよね。 スリーパー:なんか俺そういうポジションでいたい。何かここ繋がったら絶対面白いっていう間にいたい。自分の魅力に気づいてない人が多いから、君の魅力はもっとここにあるよ〜っていうやつ。 コムアイ:人生の友を探すつもりで来たらいいよね。 スリーパー:「りんご音楽祭」とか「RINGOOO A GO-GO」をきっかけに何かやりたいっていうのはいいけど、「りんご音楽祭」に出たいだけの人は何か違うかな。 コムアイ:結局出たとしても、出たな〜で終わっちゃう気がする。 スリーパー:むしろその後が特徴的だからね。 ヴィーナス:逆に言うとさ、やって帰りますみたいなフェスが多いからね。 スリーパー:俺たち、そういうのが嫌いで自分たちでやってるからね。フェスっていうのが商業的になりすぎて本来の祭りっていう部分を飛ばしすぎてる気がする。 ヴィーナス:シンプルな事なんだよね、音楽は音を楽しむですから、まず楽しんで欲しいよね。オーディションも楽しんで欲しいし、ライブも楽しんで欲しい、空間も楽しんで欲しい、人生も楽しんで欲しい、人生を豊かにするためにこうゆう事があるわけだしさ。そうゆうのに旗を振っていくことが「りんご音楽祭」のスピリットだったりするわけだしね。 コムアイ:たしかに。 ヴィーナス:色んな年代の人にオーディション来て欲しいよね。「RINGOOO A GO-GO」は出会いのパワースポットだ。 ■「りんご音楽祭2015」 開催日:2015年9月26日 (土)、27日(日) ※開催場所は現在調整中 りんご音楽祭HP http://ringofes.info ■オーディションライブ「RINGOOO A GO-GO 2015」 過去に「水曜日のカンパネラ」「CHAN-MIKA」「原田茶飯事」「箱庭の室内楽」「CICADA」「プププランド」などが発掘された、りんご音楽祭のオーディションライブ企画。 5月31日まで3ヶ月間をかけて開催し、北海道から沖縄、台湾を含む17都市全52回のオーディションライブから、20~25組が〝りんご音楽祭2015″へ選出予定 応募方法、開催日など詳細はこちら http://ringofes.info/ringo-a-go-go/ ■dj sleeper (りんご音楽祭) 瓦RECORD http://www.geocities.jp/kawara_record/ Record & Music Bar 「on」http://www.on-okinawa.info ・ライブ情報 3月20日(金)~4月3日(金) 美栄橋on1周年2週間パーティー@沖縄Record & Music Bar 「on」 4月4日(土) りんご音楽祭 × GOLD EXPERIENCE presents 『金のりんご -2015-』@名古屋CLUB MAGO・Live&Lounge Vio 4月7日(火) 新井孝弘 × U-zhaan インド古典ライブ@松本 瓦RECORD ■ヴィーナス・カワムラユキ(OIRAN MUSIC) 公式サイト http://vky.jp/ ブログ http://numero.jp/yukikawamura/ しぶや花魁 http://oiran.asia ・日本アニメーター見本市にて、作詞担当した今石洋之監督『Sex&VIOLENCE with MACHSPEED』が配信スタート http://animatorexpo.com/sexandviolencewithmachspeed/ ・ダンスミュージック専門インターネットラジオ block.fm・shibuya OIRAN warm up Radio 毎週金曜20時~21時O.A ・block.fm・shibuya OIRAN warm up Radio 毎週土曜28時~29時O.A・神戸Kiss FM・港神戸は午前4時 ■水曜日のカンパネラ HP http://www.wed-camp.com ・ライブ情報 3月29日(日) 水曜日のカンパネラ初ワンマンライブ「鬼ヶ島の逆襲」@恵比寿LIQUIDROOM (SOLD OUT) 5月6日(祝・水) 水曜日の視聴覚室 vol.3@渋谷WWW

地下アイドルは「就活」とどう向き合った? 姫乃たまが振り返る「学業」と「活動」の両立

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地下アイドルでありながらライターとしても活躍する姫乃たま

【リアルサウンドより】  習字の授業が苦手でした。  ずぼらなので道具の手入れを満足にできたためしがなく、ほつれた筆先を見るたびに憂鬱でしたし、半紙に現れた頼りない字は、明らかに筆のせいではないのでした。  特に書き初めの授業には、心底困りました。人様に発表するような目標もないのに、1か月ほど廊下に貼り出されてしまうのです。  何を書こうか悩んで周りを見渡すと、運動部の子が「文武両道」と書いていたりして、士気の高さに圧倒されました。しかも部活で優秀な子は、習字も上手かったりするのです。運動もできない帰宅部で、国語だけが取り柄なのに、習字がまったくできない私は、ただただ打ちひしがれたものです。  自分が何を書いたのか思い出そうとしたのですが、記憶に残っているのは、立派な「文武両道」ばかりで、廊下に貼りだされた私の半紙には靄がかかっているのでした。  高校に進学して、すぐ部活動に入部しましたが、夏が始まる前に退部しました。なぜ退部したのかさっぱり思い出せないのですが、それすら思い出せないのですから、よっぽど熱中できなかったのだと思います。私が部活動をしていたのは、人生の中でこの数か月のみです。  熱中しにくいうえに飽きっぽい私にとって、文武両道は無縁の世界でした。そのため、高校2年生になってすぐ始めた地下アイドルを、大学を卒業するまで続けているのなんて、人生の中でも類を見ない出来事なのです。  来月から新社会人になるいま、私の習字のように歪で頼りなかった文武(?)両道生活を思い返してみました。  高校は8:30に始業します。もうあまり正確に思い出せないのですが、多分終わりが15時過ぎくらいで、ライブのリハーサルがだいたい16時頃なので、放課後は物販と衣装が入ったキャリーバッグを転がして、すぐにライブハウスへ向かっていました。  ライブが終わって帰宅すると日付が変わりそうになっていて、それから翌日の課題をこなしたり、お弁当箱を洗ったりしていると、眠るときにはすっかり深夜になっていました。当時は月に15本前後のライブに出演していたので、日々の睡眠時間は4、5時間ほどだったと思います。  どちらかと言うと楽な生活ではなかったのですが、それでも活動を辞めなかったのはゴールを決めていたからかもしれません。高校卒業とともに活動は辞めようと、はなから決めていました。地下アイドルの魅力は年齢に関係なく人間性で勝負できるところだと思いますが、自分の人間性に魅力を見いだせなかったので、若いうちに辞めておくべきだろうと考えていたのです。  しかし、いま思えば卒業とともに引退するのでは遅く、卒業する前に余裕を持って辞めて、進路を考えるべきだったのです。  3年生に進級してずいぶん経っても、センター試験の受け方すら知らなかった私は、当然、受験勉強の波に乗り遅れていました。いまにも進学を諦めてしまいそうな私を立て直したのが恩師でした。出席率だけは異様に高く、成績も(数学と体育以外は)そこまで悪くなかったため、指定校推薦の枠を取ってくれたのです。特に志望校もなかったので、仕事の合間に1日だけ面接と小論文という得意分野のみをこなし、一般受験の子よりも先に大学進学を決めました。  残りの高校生活は、友人の受験勉強の邪魔にならないよう、ますます地下アイドル活動に打ち込みました。卒業式の前後もびっしりライブ予定が詰まっているというメリハリのなさで、すっかり辞め時を逃していたところ、あの大震災が日本を襲いました。  世間は就職どころではなくなり、大学に入学した当初は、就職難に直面する4年生を目の当たりにしました。はやくも就職難の恐怖を感じずにいられなかった私は、目の前にある仕事をありがたくこなすことに決め、活動に拍車をかけました。  そうして、大学の4年間は腰を据えて地下アイドルとして活動しようと覚悟したのです。  進学先は文学部でした。授業カリキュラムが変わっている大学で、文学部の中でメディアの勉強もできるようになっていました。  この大学と学部を選んでくれたのは、情報の授業を受け持ってくれていた高校時代の恩師です。在学時から、地下アイドルの活動を応援してくれていた彼女が、きっと仕事の役に立つだろうと教えてくれました。  高校を卒業する少し前から、出版社に出入りするようになっていた私は、編集者の仕事に興味があり、雑誌に関する講義を主に履修するようになりました。メディアを専攻する学生は、テレビの制作に携わりたい子が多いようで、編集者を志望している学生は数少なかったため、自然と少人数での講義になるのも魅力的でした。  しかし、現実は恩師のはからいとは反対に、大学で学んだことが活動に役立つことはほとんどなく、むしろ地下アイドルとして活動していたからこそ、大学の課題で高評価されることが増えてきました。  4年生になり、テレビの制作や編集をやりたくて入学してきた学生が、次々と事務職や保険の営業職に就くのを、じっと眺める日々が続きました。  大学の4年間で、地下アイドルの経験を活かして原稿を執筆する機会が増えていた私は、この原稿たちが就活で活きると信じて、執筆に打ち込んでいました。そして、気がついたら就活に乗り遅れていました。それでも卒業するギリギリまで、自分は正社員の編集者になるのだと信じて疑っていませんでした。なぜあそこまで純粋に信じていられたのか、数か月前の自分が甚だ疑問です。  しかし、私が志望していたのは、斜陽産業であるヌードグラビア誌(コミックではなく、写真のエロ本)の編集者だったため、卒業間近に休刊が相次ぎ、部署ごと潰してしまう出版社が続出しました。現役の編集者が冗談を聞いた時のように笑って「エロ本の編集者は、やめな」と言うようになり、私の就活は始まる前に終わりを迎えました。  いま思えば就職とともに活動を辞めるのでは遅く、卒業する前に余裕を持って辞めて、就活するべきだったのです。  留年して学費(と、学費の1/3ほどもある高額な施設維持費)を払うのが嫌で、大学はストレートで卒業し、腰を据えて地下アイドルという名のフリー(ライ)ターになる覚悟を決めたのです。  私はひょんなことから地下アイドルになって、無縁だと思っていた文武(?)両道ができました。ただ、最後の詰めがいつも甘かっただけです。私はこれからどうなるのでしょう。  数週間後にはフリーランスとして社会に放り出されてしまう漠然とした不安の中で思うのは、悪いことをして捕まったら、報道されるときに「自称アイドル」って書かれるのかなって、それだけです。 ■姫乃たま(ひめの たま) 1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルの活動を経て、ライター業も開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。そこそこなんでもやります。仕事、ください。

「千本桜」はなぜ国境を越えて愛されるのか? CTS feat.初音ミクの動画が英語圏で話題を集める背景

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【リアルサウンドより】  2011年9月にインターネット上に公開されてから約3年半。ボーカロイドのシーンから生まれた数々の楽曲の中でも、「千本桜」は今や世代や国境を超え、群を抜いた人気を誇っている。  黒うさPによって投稿されたオリジナル曲は、2014年3月23日現在で860万回以上の再生回数を記録。数々の「歌ってみた」動画も投稿され、JOYSOUNDのカラオケ年間ランキングでは2012年から2014年にかけて3年連続で第3位にランクインしている。まらしぃによるピアノカバーや和楽器バンドによる演奏など様々なジャンルのカバーも公開され、昨年には演歌歌手・小林幸子も日本武道館公演で“持ち歌”として熱唱した。  さらに、2015年3月には“覆面LEDユニット”CTSが、初音ミクとコラボした形でこの曲をダンスミュージックのスタイルでカバー。「CTS feat.初音ミク」名義で、3月18日にシングル、25日にEPという形で配信限定リリースした。

「千本桜」CTS feat. 初音ミク Teaser

 なぜ「千本桜」はシーンの垣根を超え、歌い継がれる名曲となったのだろうか。この記事では、改めてその理由を分析していきたい。  まず大きなポイントは、この曲が「ヨナ抜き音階」を駆使したメロディを持っていること。ところどころで外れるところはあるが、「千本桜」は基本的にはDmキーのヨナ抜き音階(ニロ抜き短音階)をベースにした旋律になっている。以前に音楽プロデューサーの亀田誠治がテレビ番組『亀田音楽専門学校』で説明したように(参照:http://realsound.jp/2013/10/post-136.html)、5音階からなる「ヨナ抜き音階」は明治時代に「唱歌」のメロディとして普及し、日本人にとって最も親しみやすいものだ。  また、「♪大胆不敵に ハイカラ革命」から始まる歌詞も、七五調にこそなっていないが、その変形をベースに日本語本来の語呂の良さを活かしたもの。つまり、日本人にフィットする、「和」を思い浮かべやすい要素を散りばめた曲調になっている。和楽器バンドや小林幸子がこの曲を歌い継ぐのは理に適ったことと言えるわけだ。

和楽器バンド / 千本桜

 ポピュラー音楽研究を専門とする音楽学者の輪島祐介は、著作『創られた「日本の心」神話』にて、現在の意味で用いられるような「演歌」というジャンルが1960年代後半に生まれたものであることを指摘している。「七五調の変形」「ヨナ抜き五音音階による旋律」という、昭和初期の歌謡曲のスタイルを持った当時の楽曲が当時に「演歌」の枠組みの中に位置づけられたとしている。また、「それが『日本的』ないし『伝統的』なものとして一般に定着するのは1970年代です」と言及している。  つまり「演歌=日本の心」という認識も比較的新しいものであるわけだ。その延長線上で想起すれば、いわば「千本桜」も21世紀の新しい「日本の心」となった、と言えることになる。  さらに面白いのは、この「千本桜」が去年から今年にかけて海外に広まっていることだ。  前述のCTS feat.初音ミクによる動画にも海外からと思われる英語のコメントが寄せられている。  代表曲「Yume Be The Light」に顕著なように、ティエストやアーミン・ヴァン・ブーレンなどトランスのルーツを咀嚼しJ-POPの枠組みの中でアウトプットしてきたユニットがCTSだ。

CTS - Yume Be The Light

 覆面ユニットでありつつCircle(Vo)のエモーショナルな歌声には記名性があり、すでに海外でもファンベースを築きつつある。CTS feat.初音ミク「千本桜」のMVも渋谷慶一郎「THE END」やBUMP OF CHICKEN「ray」を手がけた東市篤憲(A4A)が監督をつとめ、クリプトン・フューチャー・メディアが制作した3DCGモデル「14モデル」の初音ミクが起用されている。そういったところからも話題を集めた形だ。  また、「踊るヴァイオリニスト」としてアメリカやヨーロッパを拠点に活躍するリンジー・スターリングも、この「千本桜」をカバー。アルバム『踊る!ヴァイオリン』の日本盤ボーナス・トラックに収録されたこの曲はYouTubeにも動画が公開され、やはり海外の彼女のファンから多数の反応が集まっている。

リンジー・スターリング - 千本桜

 また、オランダのハードスタイルを代表するDJで、昨年の『DJ MAG』ランキングでも45位にランクインした実力派DJ Frontlinerも、この「千本桜」のリミックスを発表している。

初音ミク - 千本桜 | Hatsune Miku - Senbonzakura (Frontliner Remix)

 こうして「千本桜」は、いまや様々な形で国境を超えている。  たとえば、1980年代に世界を席巻したYMOの代表曲「ライディーン」もヨナ抜き音階を駆使した楽曲だ。中田ヤスタカの作曲によるきゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」やPerfume「レーザービーム」もそう。これらを敷衍して考えると、どうやら海外に日本のポップが進出する上で「テクノロジカルなイメージ+ヨナ抜き音階」が一つのキーになっているとも言えそうだ。  ここ数年、日本でも海外の音楽シーンにおいても、人気曲や定番曲のカバーはポップミュージックの手法として定着してきている。長く歌い継がれる耐久性を持った「千本桜」は、この先もジャンルを超えた様々な広がりを生み出していくのではないだろうか。 (文=柴那典)
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CTS『CTS feat.初音ミク - 千本桜』

■リリース情報 『CTS feat.初音ミク - 千本桜』 発売:2015年3月25日 全 7 曲 ¥700(digital only) <Track List> 01. 千本桜 by CTS feat.初音ミク 02. 千本桜 03. Let It Go(映画:アナと雪の女王 劇中歌カバー) 04. 遥か(GReeeeN / 映画:ROOKIES主題歌カバー) 05. 千本桜(Instremental) 06. Let It Go(Instremental) 07. 遥か(Instremental) illustration by 虎硬 © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net 「千本桜」iTunes: http://po.st/itctssakura http://itunes.apple.com/jp/album/id974573797?uo=4&at=10l3LI ■渋谷駅前スクランブル交差点街頭ビジョンにて生ライブ配信決定 3月27日(金)24:00〜渋谷PARCO内のソーシャルTV局/2.5Dより、生ライブを配信 ※生ライブ配信が行われるのは、渋谷スクランブル交差点街頭ビジョンの109メンズ館に面したグリコビジョンを予定。※当日2.5Dスタジオでの観覧は不可 ■CTS official HP : http://cts-official.com  ■CTS facebook : https://www.facebook.com/CircleTriangleSquare.jp  ■CTS twitter : https://twitter.com/CTS_staff ■ニコラジ:http://ch.nicovideo.jp/nicoradio 

女王蜂はポップ・ミュージックの真ん中へーー新作『奇麗』に込められた音楽への愛

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【リアルサウンドより】  女王蜂の新作『奇麗』が良い。とても良い。  豪快なバンド・サウンドであり、ぶっ飛んだダンスミュージックであり、最高に楽しいエンターテインメントである。そしてその奥には深い洞察がありカルマがあり、切ないほど正直に生きようとする人間の本音がある。本音はえげつない。しかし圧倒的に美しい。  これこそ女王蜂だと思っていたし、その魅力は以前も今も変わらないのだが、新作『奇麗』をさらに輝かせているのは楽曲とアレンジの豊かさだ。「アヴちゃんの曲って実はすごく緻密、精妙に作られてていつもびびる」とはドレスコーズの志磨遼平が先日ツイートしていた言葉だが、同業ミュージシャンでなくとも、今回はそのことを自分の耳で実感できるはず。轟音ディストーションを後退させた『奇麗』は、彼女たちが真正面からポップ・ミュージックに挑んだ作品。まさに緻密で精妙なプロフェッショナル仕事なのである。  ボーカル・アヴちゃん、ベース・やしちゃん、ドラム・ルリちゃん。そこに新加入したギタリストのひばりくんが、どれだけバンドの制作過程を変えたのかはわからない。ひばりくんが変えたというより、活動休止を経たことで3人の意識が変わったのかもしれないが、ともかく、4人は今回どこまでも真摯に音楽と向き合っている。誰よりド派手なお洋服を着れば勝ち!という思考はない。きめ細やかな模索と、熟考のうえの足し算と引き算。その判断すべてに愛を感じる。音楽への愛。また再び女王蜂ができることへの深い愛情を。  俎上に載せたいのはシングルになった「ヴィーナス」だ。4つ打ちのゴージャスなダンスナンバーは、かつて女王蜂の名前を一躍有名にした「デスコ」を彷彿とさせるが、狂騒的な楽しさで突っ走る「デスコ」に比べ「ヴィーナス」のアレンジはどこまでも奥が深い。  いかにもロックなギターで幕を開け、きらびやかなシンセが天空に虹を掛けるように伸びていく。ファンキーなベースが気分と視線をぐいぐい引っ張り上げ、一瞬のブレイクのあと、スポットライトのあたるステージがパーンと見えてくる。そこに立つのは無論アヴちゃんの歌なのだが、観客(リスナー)はヤケクソ気味に髪を振り乱している4人の姿に圧倒されるわけではない。追ってみれば複雑なのに難解な印象を与えない主旋律。Bメロに入ると鮮やかな転調があり、サビには電気グルーヴ「Shangri-La」に匹敵するほど美しいストリングスが施される。さらに転調。そのあとに来る二度目のAメロが最初よりだいぶキーを上げたものであることにも注目したい。地声もファルセットも区別がないアヴちゃんだからこそできる、転調に継ぐ転調。それを最大限に活かしているのが今の女王蜂の大きな魅力だろう。  最もゾクゾクするのは2分半を超えてからの展開だ。豪華絢爛だった音がふっと消え、クリーンなギター音とボーカルだけが残り、静かな歌声が幾重のハーモニーになって膨らんでいく。考えぬかれた和音構成。そしてギターソロを挟みいよいよ三度目のサビに至る瞬間、アヴちゃんの後ろにはバンド・サウンドではなくピアノが静かに鳴っている。しかし踊る体は止まらない。踊りながら無重力空間に投げ出されていくような快感は、もはやアンダーワールドに近いか。エグい不協和音や偽悪的ノイズはひとつもない世界。楽器が、音楽が、本来持っている自然な美しさを重視した音選び。それなのに終始鮮烈な驚きがあり、ビートが続く限り永遠に踊っていられるダンスミュージックとして機能しているのだ。  たった4分のダンスチューン「ヴィーナス」は、このように音楽的に語ろうと思えばどこまでも語れる曲であり、しかし、フロアで流れれば誰もが我を忘れて踊り狂えるアンセムにもなるだろう。これを名曲と言わずしてなんという。この完成度をポップ・ミュージックの強度と言わずしてなんといえばいい。

女王蜂 『ヴィーナス MUSIC VIDEO(FULL VERSION)』

 曲の幅もとにかく広い。照れながらも純愛に落ちていく「ワンダーキス」はPerfumeが歌ってもおかしくないスイートなポップスであり、アコギ一本でしみじみ歌われる「髪の毛」はイルカあたりが爪弾いていた気がする(くらい懐かしくて普遍的な)フォークの佳曲。過去の怨念が爆発する「折り鶴」はストーリーの激しさにまず圧倒されるが、押し寄せる激情が童謡「七つの子」のフレーズ絡めながらドラマティックに盛り上がり、原作の歌詞のスピンオフになってポトンと堕ちていくエンディングがあまりにも秀逸。ラストのパンキッシュな「緊急事態」の開放感といったら、転調を繰り返しながら喜びを歌い上げるアヴちゃんの姿に、もう神々しさしか感じないくらいである。    アヴちゃんのキャラクターは、すでに多くの人に浸透している。PARCOやTOYOTAのイメージモデルにも起用されたが、そのキャッチコピーが「常識に尻を向けろ」だったように、あくまでエキセントリックな存在、ジェンダーもコモンセンスも超越したスターとしての注目だったと思う。ファッションだけで「すげぇ」と騒がれるが、本人は超然と「これが私には自然なのよ」と微笑んでいる、いわばレディ・ガガのような存在。まぁ、そういう見方も間違いではないのだろうが。  ただ、ゴシップ誌が書かない事実として、ガガはファッションセンス以上に音楽的素養がとても良いのである。リズム主体で攻めるビヨンセに比べても旋律の良さを重視するクラシカルな保守派と言ってもいい。書くメロディは普遍的で、歌唱力は抜群で。ポップスとしての芯が強いからこそ、曲は耳に残るしガガの話題は終わらないのだ。アヴちゃんもきっと、いや必ずそういう音楽家になるだろうと、『奇麗』を聴いて確信した次第。  多くの人に浸透していても、まだ爆発的に売れているわけじゃない。何かのシーンの中心的存在でもない。ただ、「デスコ」のMVを面白がっていたけどそこから活動休止でよくわかんなくなっちゃった、などと思っている人がいるのなら、本当にもったいない話。インパクトではなく音楽を語ろう。女王蜂はこれから本気でポップ・ミュージックの真ん中を狙っていくのだから。 ■石井恵梨子 1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。
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女王蜂『奇麗』(SMAR)

■リリース情報 『奇麗』 発売:2015年3月25日 収録曲: 01. 一騎討ち 02. 泡姫様 03. もう一度欲しがって 04. ワンダーキス 05. ヴィーナス 06. 髪の毛 07. 折り鶴 08. 売春 09. 始発 10. 緊急事態 ・初回生産限定盤特典:完全オリジナル映像作品「残酷」(DVD/収録時間:45分) ・アヴちゃんオリジナル小説「残酷」 ・特殊パッケージ:紙ジャケット 初回盤(CD+DVD) AICL2851-2852 ¥3,889(税抜) 通常盤 (CD ONLY) AICL2853 ¥2,778(税抜) ■ライブ情報 アルバム『奇麗』リリースツアー 「女神たちの売春」 5月17 日(日) 札幌PENNY LANE24 5月20日(水) 名古屋 ElectricLadyLand 5月22日(金) 大阪 ・umeda AKASO 5月24日(日) 福岡 DRUM Be-1 5月31日(日) 広島 Cave-Be 6月5日(金) 仙台MACANA 6月27日(土) 東京 ・ 赤坂BLITZ 【チケットオフィシャル第二次先行受付】 ※抽選制 オフィシャル先行(先着) 【期間】3/25(水)12:00~4/2(木)18:00 【URL】 http://eplus.jp/zv15/ (PC・携帯・スマホ) ■女王蜂公式サイト:http://ziyoou-vachi.com

細野晴臣×坂本龍一のコラボレーションライブが映像化 稀代の音楽家が紡いだ「奇跡の一夜」とは?

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『細野晴臣×坂本龍一 at EX THEATER ROPPONGI 2013.12.21(DVD)』(ビクターエンタテインメント)

【リアルサウンドより】  細野晴臣が2013年12月21日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催した坂本龍一とのコラボレーションライブ「細野晴臣×坂本龍一」。高橋幸宏、伊藤ゴロー、青葉市子、小山田圭吾、U-zhaanといったゲストミュージシャンが出演し、細野と坂本がこれまでのキャリアのなかで発表してきた楽曲やカバーナンバーなどが演奏されたこの貴重なライブが、ついに映像化された。  イエロー・マジック・オーケストラで活動を共にしてきた細野と坂本(そして高橋)。彼らが作りだしてきた音楽が後続のミュージシャンに与えた影響は計り知れない。アンビニエント、エレクトロニカ、テクノポップ、フュージョン、現代音楽などの要素を内包したきわめて前衛的・先鋭的な音楽を志向しながら、80年代以降、幅広いポピュラリティを獲得してきたYMO。その影響を公言しているミュージシャンたち――槇原敬之、宇多丸、山口一郎、中田ヤスタカから新垣隆まで――の名前を挙げるだけでも、彼らの凄さが実感してもらえるはずだ。    コラボライブ「細野晴臣×坂本龍一」の最大の特徴は、シンセサイザーやプログラミング音源を使用しない、完全なアコースティック編成だったことだろう。ライブのオープニングは細野のアコースティックギター、坂本の生ピアノによる「恋は桃色」(’73年の細野のソロアルバム『HOSONO HOUSE』収録)。ふたりだけの演奏はこれが2度目ということで、細野は「一昨年の暮れにこういう感じでやりましたよね」「ふたりでやったのはそのときが初めてで。(坂本が)こんなピアノ上手いとは思わなかった」と穏やかな笑顔で話していたが、その洗練された演奏はまさに絶品。20世紀前半のアメリカンポップスを象徴する作曲家・アーヴィング・バーリンのカバー「The Song is Ended」、「僕にボサノヴァを歌わせた張本人」と紹介した伊藤ゴローを交えて披露された「Pra Machucar Meu Coracao」(スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルトの『ゲッツ/ジルベルト』収録)など豊かなルーツミュージックを感じさせる選曲も興味深い。

細野晴臣×坂本龍一 at EX THEATER ROPPONGI 2013.12.21 ダイジェスト

 中盤では、いまやYMO関連の活動において欠かすことのできない存在となった小山田圭吾をはじめ、シンガーソングライターの青葉市子、タブラ奏者のU-Zhaanといった若手アーティストとともに坂本、細野のソロ曲を次々と演奏。「Perspetcitve」(‘83年のYMOのアルバム『サーヴィス』収録)、細野、忌野清志郎によるユニット・HISの「日本の人」など、貴重なセルフカバーが披露された。特筆すべきは、坂本、細野からも絶賛されている青葉市子のボーカル。このライブのなかで“青葉市子 コーネリアス”名義の「外は線上だよ」(映画「攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whipers」)も演奏されたのだが、穏やかな手触りと豊潤な感情表現を併せ持った彼女の歌は、本作の大きな魅力だと思う。  本作のクライマックスはもちろん、高橋幸宏が加わり、「Tibetan Dance」(‘84年の坂本のソロアルバム『音楽図鑑』収録)、「Radio Activity」(’75年のクラフトワークのアルバム『放射能』収録)、そしてYMOの歴史的名曲「Rydeen」(‘80年のアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイアー』収録)を演奏する場面だ。細野、坂本、高橋がシンセサイザーを用いず、アコースティック楽器でYMOナンバーを演奏するのは、通称「どてらYMO」(2001年、NHK-BSで放送された「イエロー・マジック・ショー」内で実現した“どてら姿”でのパフォーマンス)以来。まさに超レアな映像と言えるだろう。  演奏自体も本当に素晴らしい。しっかりとミュートを効かせ、鋭利なビートを生み出す高橋のドラム、リズムを繊細に揺らしながら奥深いグルーヴへとつなげる細野のベース、クラシック、ジャズ、フォークロアを自由に行き来しながら美しい旋律を描く坂本のピアノ。70年代以降、常に革新的な音楽を提示してきた3人だが、彼らが一流のプレイヤーであることを改めて実感できる、きわめて貴重なシーンだと思う。細野「まだ叩けるんでしょ」坂本「結構うまいよ」高橋「まあ、そこそこで」というリラックスした会話も楽しい。  エンディングは「年の瀬だし、クリスマスも近いので、関係ない曲をやろう」という細野の言葉に導かれたチャールズ・チャップリンの「Smile」(全出演者によるシックな演奏にウットリしてしまう)。細野晴臣、坂本龍一という稀代の音楽家を中心にした奇跡の一夜をぜひ、丁寧に味わってほしいと思う。 (文=森朋之)
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『細野晴臣×坂本龍一 at EX THEATER ROPPONGI 2013.12.21(Blu-ray)』(ビクターエンタテインメント)

■リリース情報 『細野晴臣×坂本龍一 at EX THEATER ROPPONGI 2013.12.21』 発売:2015年3月18日(水) Blu-ray(6,500円+税) VIXL-138 DVD(6,000円+税) VIBL-738 1. 恋は桃色(細野晴臣、坂本龍一) 2. The Song is Ended(細野晴臣、坂本龍一) 3. Pra Machucar Meu Coração(細野晴臣、坂本龍一、伊藤ゴロー) 4. O Sapo(細野晴臣、坂本龍一、伊藤ゴロー) 5. O Grande Amor(坂本龍一、伊藤ゴロー) 6. Tango(坂本龍一) 7. 3びきのくま(坂本龍一、伊藤ゴロー、小山田圭吾、青葉市子、U-zhaan) 8. 美貌の青空(坂本龍一、伊藤ゴロー、青葉市子、U-zhaan) 9. Perspective(坂本龍一、伊藤ゴロー、青葉市子、U-zhaan) 10. 外は戦場だよ(青葉市子、小山田圭吾、U-zhaan) 11. 悲しみのラッキースター(細野晴臣、小山田圭吾、青葉市子、U-zhaan) 12. 日本の人(細野晴臣、坂本龍一、小山田圭吾、青葉市子、U-zhaan) 13. Tibetan Dance(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏、小山田圭吾、U-zhaan) 14. Radio Activity(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏、小山田圭吾、U-zhaan) 15. Rydeen(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏、小山田圭吾、U-zhaan) 16. Smile(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏、伊藤ゴロー、小山田圭吾、青葉市子、U-zhaan) ■ライブ情報 「細野晴臣コンサートツアー2015」 出演 細野晴臣(Vo,G), 高田漣(G), 伊賀航(B), 伊藤大地(Drs) 6月5日(金) 東京・LIQUIDROOM 6月7日(日) 鳥取・HUT SBALCO design 6月9日(火) 広島・クラブクアトロ 6月11日(木)、12日(金) 京都・磔磔 6月14日(日) 大阪・ユニバース 6月16日(火) 名古屋・クラブクアトロ 細野晴臣:http://hosonoharuomi.com/ 坂本龍一:http://www.skmtcommmons.com/

ビルボードジャパンが「複合チャート」を作る意味とは? 担当ディレクターに狙いを聞く

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Billboard JAPAN Music

【リアルサウンドより】  ビルボードジャパンでは現在、CDセールスだけでなく、CDのPCへの読み取り回数(=ルックアップ)、デジタルダウンロード、ラジオでのオンエア数(=エアプレイ)、ツイート数といった複数の指標を用いた複合ヒットチャート「Billboard Japan Hot 100」を発表している。音楽の視聴スタイルが多様化する中で、同チャートはどんな方法論に基づき、ユーザーにいかなる視座を与えようとするのか。ビルボードジャパンのチャート・ディレクターを務める阪神コンテンツリンクの礒崎誠二氏に、その狙いや設計思想について話を聞いた。聞き手はリアルサウンドでもチャート分析記事を多数手がけるさやわか氏。

「アメリカのチャートは、僕らの感覚では10年ぐらい進んでいる」

――ビルボードジャパンのチャートは、近年になってから作られるようになったものですね。どういう経緯があったのでしょうか? 礒崎:弊社(阪神コンテンツリンク)が2006年にビルボードのマスターライセンス契約をしまして、そこに紐付いた形でビルボードチャートのマーケティングをもう一度日本でもやっていきたいと思ったんです。 ――特徴としてはどういうチャートなのでしょうか。 礒崎:メインチャートはBillboard Japan Hot 100というものなんですけど、セールスのチャートではなく、ソングチャートになっています。つまりエアプレイとか、ダウンロード数などのデータを複合させることを最初から目論んだ形になっているんです。最初は私も知らなかったんですけど、ビルボードではHot 100の「Hot」という名前を付けるんだったら、複合チャートでなければならないというルールがあるんですよ。つまり、セールスチャートを作ることはある程度できるというふうには思っていたんですけれども、「Hot 100」であるためには、他のデータを合算しなければならない。しかも、もともとのアメリカのチャートはラジオでのエアプレイ数が入っていて、それも入れなければならないというルールだったんです。 ――なるほど。しかし、国内ではオリコンのやっている販売チャートが多くの人に信頼されていますよね。そうした中で、なぜ新しく複合チャートを立ち上げようと思ったのでしょうか? 礒崎:まあ、ビルボードをやっているんだから、やるべきであろうという発想でしたね(笑)。しかし個人的な立場で言うと、セールスランキングではない形での、オルタナティブな音楽チャートが1つできてもいいのではないかなと思っていたということもあります。いわば、複合チャートというのを作ってみたかった。昔の歌番組「ザ・ベストテン」のリクエストのランキングには、ラジオの数字とかが入っていましたよね、「Hey! Hey! Hey!」のパーフェクトランキングも。そういう、テレビ局の企画的な形での複合ランキングはあったんですが、メディアとは独立した形で、ウィークリーで出していこうという動きは、国内にはなかった。ならば僕らが作るべきなのではないだろうか、という発想です。 ――しかし、複合チャートだと単に販売数を記録するのとは違う指標が必要になりそうです。始められた当初から今まで、集計のやり方は変わっていってるんでしょうか? 礒崎:はい。国内の、どんどん変わるマーケットに応じた形での計算係数を作って、もろもろトライ・アンド・エラーを繰り返しています。特にビルボードUS側にいろんなノウハウがありますので、それをまず受け継いでいっています。アメリカのチャートは、僕らの感覚では10年ぐらい進んでいるんですよ。ビルボードとツイッターのリアルタイムチャートを作ってみたり、アルバムチャートにもCDとダウンロードだけでなくストリーミングを入れてみたりと、どんどん変化していく。そのノウハウをいろいろ教えてもらいながら、日本のチャートを作っていくという感じですね。たとえばいま我々は、全国主要エリア32局のAM、FMラジオの放送回数のデータをもらってます。そして1曲が5分として、一週間のうちでその5分間の曲と接触する確率を、視聴者数を加味しながら算出していきます。そしてさらに、そのラジオを聴いてCDを新規購入する確率を出しています。
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Billboard Japan Hot 100の5つの指標

――すごいですね。チャート好きにはたまらない数字だと思います(笑)。しかし、こういった数値というのは、どのくらい信憑性があるのかというふうに考える人もいると思うのですが。たとえばオリコンさんでも、複数枚購入だとか、ミュージックカードを合算してしまうことで、本当に人気があるかどうかわからなくなってしまうような問題が出てきて、セールスランキングがどこまで正しいのかという話になったりしますよね。 礒崎:我々は、公的な資料に基づいて計算公式を作らなければならないというルールがあるんですよ。僕ら自身も、マーケティングを進めていく上で、おそらくユーザーの方から「この指標を使ってやってるのは分かるけれども、それは結局ブラックボックスじゃないか」と言われる恐れはあると思ったんです。つまり、複数枚販売とかミュージックカードなどと同じ指摘は、遅かれ早かれされるだろうと思っているんです。だからこそ、指標としているデータをできるだけ開示して、納得性の高いものを作ろうとしています。この計算方式を作るためのデータはどれもネットで発表されているもので、それをどう計算するとこのチャートになるんだということを、米国側と相談して作っています。まあ、適当に数字を持ってきてもしょうがないので、合算する理由があるものを集めているわけですが。

「30年後に見て納得できるランキングを残していきたい」

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「Billboard JAPAN Music Awards2014」2014の結果

――ではそうした中で、たとえばインターネットのストリーミングなどは、ラジオなどに比肩するくらい、あるいはCD販売に比しても重要な意味を持つようになるとお考えでしょうか? 礒崎:はい。ストリーミングに限らず、CDを購入する以外の、音楽との接触を重視していますね。レンタルしてる人、ダウンロードしてる人、動画を見てる人が具体的にこれだけいるというデータがある。それだけ音楽に接触しているのが明らかであれば、これらのデータは混ぜていくべきではないだろうかという発想でランキングを作っています。 ――やはり昨今言われるように、CDを買っている人だけでは計れないけれども、しかし音楽に触れている人がずいぶんいっぱいいるということですね。 礒崎:そうですね。昨年のデータとして、僕らの毎年やってる年間ランキングと、オリコンの年間ランキング、レコチョク、iTunes、それからカラオケのJOYSOUND、DAM、歌詞表示サービスの歌ネット、TSUTAYAのレンタルなどのランキングを全部並べてみたんですよ。そして各ランキングで共通している曲を色分けしてみたいんですが、去年の曲よりも、むしろ一昨年にリリースされた2曲が共通して入っていたりするんです。AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』とSEKAI NO OWARI『RPG』は、2年前の曲なんですが、ずっとランキングに入り続けている。そして去年の曲で言えば、西野カナとか、アナ雪の『Let It Go』とかがちゃんと上に来ている。 ――面白いですね。そうして見ると、順位の上下がありながらも、わりと納得できる名前の並ぶランキングになっています。しかし、オリコンだけが如実に違うミュージシャン名が並ぶ形になっている(笑)。結局、AKBさんとか、EXILEさんとか、あとジャニーズ系とかもそうですけど、彼らがやってることというのは、いいか悪いかはともかくとして、とりわけオリコンのチャートで上位に行く方法なわけですから、その結果としてランキングに違いが出るのは、ある意味、納得できます。 礒崎:そうですね。さっき言ったとおり、日本の文化としては購買のチャートが重視されているわけですが、だからこそ我々が複合チャートを作りたいと思っているわけです。しかしもちろんパッケージセールスも反映させるべきなので、やっぱり嵐やAKBは結果としては上にくるようにはなっています。僕らがパッケージセールスをあえて除外して、iTunesやレコチョクの数字だけを重視したランキングを発表すれば、もしかすると、よりマーケティングとしては正確になるのかもしれないですけど、それはそれで公平性を欠くなと思うんですね。だから今のやり方では、オリコンさんの1位2位あたりと、僕らの1位2位は似たようなものになっています。それに、オリコンさんは販売のチャートについては非常に誠実なやり方をなさっているんです。だからオリコンさんの出す推定売上枚数というのも、各レコード会社に言わせれば、かなり近い数値なわけですよ。だから決して、オリコンさんのセールスランキングに信憑性がないわけではない。 ――では、たとえば先ほどおっしゃった「ザ・ベストテン」のリクエストのように、ハガキを一人でいっぱい送って上位を目指すような投票行動についてはどう思いますか? 最近はCDの複数枚購入などもセールスランキングに影響されるようになっていると思いますが。 礒崎:僕らのランキングでも、複数枚購入した結果は反映されてしまいます。それから僕らはTwitterでアーティスト名と楽曲名が含まれた投稿数を集計していますが、たとえばそこにはBOTが自動投稿したものも含まれています。しかし、こちらは計測するとそんなに大きい数値ではなかったんですよね。1万くらいにしかならないので、正直、無視してもいいんじゃないかという方針でやっています。しかし、ユーザーが意識してアーティスト名と楽曲名をさかんに投稿する場合もあるんですよ。リクエストのハガキと一緒ですね。しかしテレビやラジオ局にハガキを送るのと違うのは、Twitterの場合はその投稿が人目に触れることで一定のプロモーション効果があるんですよね。だからこれも僕たちが集計することで、その効果を実感して、さらにTwitterでのプロモーションが盛んになり、結果として、チャートが宣伝力を持つ時代に戻っていけたら面白いのかなあというように思います。 ――言い換えると、今のチャートはかつてほど宣伝力としては機能していない? 礒崎:今のセールスランキングだとシングルの購買数はあまり減っていませんが、アルバムのほうは減少傾向にあるんです。どういうことかというと、つまりシングルのヒット曲というのが、買っている人はいたとしても、世の中全体にはあまり共感されなくなってきたということだと思うんですよ。だから最終的には、そのシングルの収録されたアルバムを買う人が減っていく。そういう推測が成り立つと思います。シングルがマーケットの半数近くをカバーしていた時代だったらセールスランキングにも説得力があったと思いますし、それを反映させた「ザ・ベストテン」のランキングにもリスナーは共感したと思います。だけど、今はだんだん「これ、どんな曲だっけ?」みたいな作品が増えている。それは僕らが年をとったからではなくて、シングルのセールスランキングの説得力が落ちたからではないだろうか、と思うんです。だからこそ、共感性の高いチャートを作りたいと思うんです。 ――実際、ビルボードジャパンとしての手応えはいかがなものでしょうか? 礒崎:僕らが手応えとして感じたのが昨年の「Billboard JAPAN Music Awards2014」で、1位・西野カナという結果を発表したんです。嵐でもないしAKBでもないし、アナ雪でもないんだけど大丈夫かな、みたいな思いはありました。だけどユーザーの方々や、まあ業界の方々のリアクションを見ると「納得性が高い、なるほどと思いました」という声が多かったです。西野カナの好きな人だけでなく、たとえばジャニーズのファンの方にも「なるほど」と言ってもらえた。複合ランキングというのは、そういう、作って納得してもらえるものになる可能性が高いというふうに思います。たとえばレコード店のサイトでCDを買うと、そのショップ内のランキングでは当然上位になるんですけど、僕らがやりたいのはそういうものではない。ユーザーにとって分かりやすいヒット曲というのを残したいんです。たとえば1979年のオリコンランキングなんかを見ると、すごく納得がいくんですよ。今見ても、「たしかにこれがヒットしていた」と思える。ビルボードアメリカのランキングも、やっぱり70年代とか80年代はすごく楽しいわけです。そういう、30年後に見て納得できるランキングを残していきたいなと思いますね。

「動画閲覧数のデータを加えることも準備中」

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2014年の年間チャートは、各指標の詳細まで確認できる

――アメリカの場合だと、今はさらにCDが売れなくなっている状況がありますよね。だからストリーミングやダウンロードの数字をランキングに反映させる重要性はあると思うんです。しかし日本は、いいことなのかはわからないですけれども、とりあえずCDの販売数を維持している。そういう状況はもう変わってしまう、つまりCDのセールスランキングだけが信頼される時代ではなくなると思いますか? 礒崎:そうですね。アメリカのHot 100は、接触と所有、2つのデータをうまく混ぜながら1958年からやってきたんです。それだけ長いことやっているチャートが価値を持つと、レコード会社の人たちもそれを意識せざるを得なくなる。つまり、所有に結びつけるためには接触させる、という発想に簡単に行き着いていたんじゃないかな、っていうふうには思います。接触と所有をイコールで考えやすい。ところが日本は、所有の方に比重をかけたランキングが一般的である。とすると、接触の方に振れるような、ストリーミングなどのほうには、なかなか舵を切りにくい。最近はそういう事情もあるのかなと思っています。 ――まあでも、かなり長い目で見れば今後CDというものがなくなっていくのは当然なわけですよね。そしてデータ配信のほうが主流になっていく。そう考えると、今の段階からビルボードジャパンが接触を含めたランキングを提示しているというのは価値のあることですね。 礒崎:そう思ってやらせていただいています。複合データのコンバインに関してはノウハウが必要なんですよ。CDセールス数のかわりにダウンロード数を集計するのとは、少しわけが違いますよね。僕らもデータを合算するときにはアメリカに相談しながらトライ・アンド・エラーをずっとやってきている。それは僕らの強みではあると思います。あるいはラジオのパワープレイを取ると、たとえば購買数にどれだけ影響が跳ね返るかみたいなデータも、B2Bでは提供していきたいなと思っています。いま準備中なのは動画閲覧数のデータですね。これが20万回、200万回見られましたっていう数値が、セルやダウンロードにどれだけ跳ね返るかをお見せできれば、ストリーミングさせること、接触させることが、ちゃんと購買にもつながる、買ってもらえるじゃないかというデータが蓄積されるはずなんです。そうなれば、LINE MUSICとかSpotifyとか、いま準備が進んでいるストリーミング系のサービスに原盤を供給しようかなという道筋がもっともっとできるかもしれない。いろいろ積み上げていって、ようやくここまで来たという感じですね。 ――お話を伺っていると、販売チャートに対するオルタナティブという姿勢もありますが、最終的には販売も含めた、あらゆる音楽業界の状況をカバーした総合チャートを一手に引き受けるような思想を感じますね。 礒崎:僕らビルボードのデータはB2Bでもマーケティングデータとして使えるように作っているつもりです。しかし権威化するつもりはさらさらなくて、ユーザーの方に歩み寄って、ユーザーにとって共感性が高いものを作っていきたいなと思いますね。 ――より一般ユーザーに知らせていくため、この先どういう取り組みをされる予定ですか? 礒崎:先程お話しした「Billboard JAPAN Music Awards 2014」は、我々の開催意図として何よりもまずユーザーの方々に複合ランキングを経験してもらいたくて、複合ランキングをみんなで作ってみようという企画を試みました。ビルボードジャパンの年間チャート1位から100位の100曲をノミネート楽曲とし、ユーザーにそのなかから「今年の1曲」をツイッター投票してください、カラオケで歌ってみてくださいと参加を呼びかけました。その集計結果は、1位・西野カナになったんですが、惜しくもトップになれなかった曲についても、ユーザーが聴いてもらえるプラットホームになればいいなと思ったんです。ツイッターではそれぞれのアーティストのファンが、お互いの労をねぎらう感じで会話していて、面白かったですよ。すごくピースフルなネットイベントになっていた。 ――誰にとっても、頑張って応援したということがポジティブに捉えられるのはいいですね。 礒崎:そうやってユーザーを巻き込んでいきたいんですが、今度はチャートを各指標にしたがってソートしたり、期間を指定できるようなサービスも準備中です。つまり、ユーザーがチャートに直接触れるようになるんです。さらにYouTubeの動画が公式で上がっていれば、その場で見ることもできる。曲名をクリックすると、その曲が各週ごとにどう推移したのかも見られる。西野カナと家入レオを比較することなんかもできる。そうすることで、それぞれのアーティストが得意な指標がわかったり、この曲はエアプレイが伸びているとかセールスが伸びているとか、いわゆる大人の事情(笑)みたいな話ではない文脈で、楽曲自体を分析することができる。そういうチャートを一般ユーザーに見せたかったんです。 ――それは素晴らしいですね。つまり、楽曲の価値についていろんな点から比較検討できる。 礒崎:はい。ユーザーは楽曲を評価する前から、ノイズじゃないですけど、いろいろな情報を既に持っていますよね。しかし、そういう部分を差っ引いて作品を眺めることができるようなサービスを作れたらいいかなあと思うんです。かつて「ザ・ベストテン」とかアメリカのビルボードのランキングを頑張ってノートに付けてた人もいると思うんですけれども、それと似たような楽しみ方が、このサービスでできればいいなと思っています。 (取材・文=さやわか) Billboard JAPAN Music