嵐が描いてきたゼロ年代の情景とは? ドラマ作品における軌跡をたどる(前編)

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『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

【リアルサウンドより】  嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日から17日にかけて、全国書店やネット書店で発売される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。  書籍の発売に先がけ、掲載記事の一部を紹介してきた同シリーズ。今回は、嵐がドラマ作品を通じてゼロ年代の情景をどのように描いてきたかを、ドラマ評論家の成馬零一氏が読み解いたコラムをお届けする。(編集部) 参考1:【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】 参考2:【嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う】 参考3:【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(前篇)】 参考4:【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(後篇)】

「嵐」以前、ジャニーズアイドルの90年代

 嵐を筆頭に、今ではテレビドラマにジャニーズアイドルが出演することは当たり前のことになっている。新クールのドラマが出揃うと「ジャニーズアイドル主演のドラマが何本あるのか?」がマスコミで話題となるのは、もはや慣例行事だが、こんなことが話題になるのはジャニーズアイドルくらいのものだろう。  古くは、『3年B組金八先生 第1シーズン』(79~80年・TBS)にたのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)が出演したり、トレンディドラマの『抱きしめたい!』(88年・フジテレビ)に本木雅弘が出演したりといったことはあったがこれらは、あくまで例外的存在で主演作も決して多くない。アイドルと俳優という仕事がまだ住み分けられており、ジャニーズアイドルが本格的に俳優活動をする場合は、アイドル活動を卒業して、次のステップとして俳優業に向かっていくということが、ほとんどだったからだ。  テレビドラマはアイドルにとっては主戦場ではなく、テレビドラマもまた、アイドルを戦力と見ていなかった。あくまで当時のアイドルたちの活動は、『ザ・ベストテン』(78~89年・TBS)などの歌番組が中心だったのだ。  しかし90年代に入り歌番組が減っていくと、それにともない、アイドルたちは活動の拠点を歌番組の外に求めざるをえなくなっていく。そんな時代に、全方位的な活動が要求されることになった最初のジャニーズアイドルがSMAPである。  彼らは生き残るためにアイドルでありながら、歌番組だけでなく、バラエティ、スポーツ、報道、そして映画やテレビドラマといった俳優業へとアイドルとして進出していき、それぞれの分野で独自の地位を勝ち取っていった。  SMAPの活躍により、人気はあるが専門的な技術は劣る半人前の存在の象徴であったアイドルが、何でもこなすマルチな存在へと意味が変わっていったのだ。  その結果、当時のドラマの中心だった月9(フジテレビ系月曜9時枠)を中心としたフジテレビ系のポスト・トレンディドラマの主演を、木村拓哉を筆頭とするSMAPが占めるようになっていく。  一方、今までとは違うフロンティアを俳優として開拓していったのが、KinKi Kidsの堂本剛である。彼が主演したTBS金曜ドラマで放送された『人間・失格~たとえばぼくが死んだら~』(94年)という野島伸司・脚本の文芸色の強い青春ドラマと、土9(日本テレビ土曜9時枠)の『金田一少年の事件簿』(95年)を筆頭とする漫画原作のジュブナイルドラマ。これらの作品はトレンディドラマで若返ったドラマファンの年齢層をさらに若返らせ、10代の中高生にも訴求するテレビドラマの流れを作りだした。  なかでも土9は、今日のジャニーズドラマを考えるうえで、もっとも重要なドラマ枠。少年マガジンの原作漫画×演出家の堤幸彦らによる実験的な映像×若手ジャニーズアイドルという組み合わせから、数々の傑作が生まれた。ここでの実験は、漫画原作の映像化した“キャラクタードラマ”という形で、00年代に入ると様々な形で開花していく。  ここにうまくハマったのが、TOKIO、V6といったポストSMAPとしてのジャニーズアイドルたちだ。彼らもまた、SMAPと同じようにオールジャンルへと進出していった。  一方、土9で頭角を現した映像作家の堤幸彦はやがて、舞台をTBSに移し、カルト刑事ドラマ『ケイゾク』(99年)を発表。土9時代の10代向けジュブナイルドラマという枷から解放された堤演出の映像美と複雑怪奇な先が読めない展開は、各方面から高い評価を受け、テレビドラマの流れを大きく変えた。  その後、堤は00年には長瀬智也主演の『池袋ウエストゲートパーク』(00年・TBS)を手掛ける。その時に大抜擢されたのが脚本家の宮藤官九郎で、その後の『木更津キャッツアイ』(02年・TBS)等のクドカンドラマへとつながっていき、ジャニーズアイドル×クドカンドラマという盤石の組み合わせが席巻することになる。

嵐とゼロ年代

 このようにジャニーズアイドルたちがテレビドラマの中で居場所を獲得していくなか、いよいよ嵐が99年にデビューする。  それ以前にも松本潤と相葉雅紀が、KinKi Kids主演の『僕らの勇気 未満都市』(97年・日本テレビ)に脇役で出演することはあったものの、嵐のメンバーがテレビドラマで主演クラスの活躍をするようになるのは、00年代に入ってからである。  10代後半から20代後半にかけてという男性アイドルにとって、もっとも旬の時期を00年代に過ごしたこともあってか、嵐のドラマには、00年代を生きた少年が青年になっていく過程が刻まれている。同時にそれは00年代に生きた若者たちの記録だったと言っても差し支えないだろう。  00年代のドラマシーンは、90年代までは勢いがあった恋愛ドラマが失速していく時代だった。トレンディドラマの総決算と言える『やまとなでしこ』(00年・フジテレビ)以降は、視聴率が低下し、『ビューティフルライフ』(00年・TBS)や『世界の中心で愛をさけぶ』(04年・TBS)といった難病モノの形でしか成立しなくなっていた。

松本潤とイケメンドラマ

 恋愛ドラマの人気が落ちていく中、入れ替わる形でドラマシーンを席巻したのは、若手男性俳優を見せることに特化したイケメンドラマである。  これは『テニスの王子様』のミュージカル(テニミュ)や、『仮面ライダー』シリーズ(平成ライダー)にしても同様で、あらゆるジャンルが汎イケメン化していったのが00年代の大きな特徴だった。  そんなイケメン戦国時代の渦中で揉まれながら、頭角を現したのが松本潤である。  たとえば『ごくせん』(02年・日本テレビ)は、ヤンクミこと山口久美子(仲間由紀恵)がヤクザの娘であることを隠しながら女教師をしているというドラマだが、今、男子生徒役を振り返ったときに、松本を筆頭に小栗旬、成宮寛貴、松山ケンイチ、ウエンツ瑛士、上地雄輔、パート2では亀梨和也、赤西仁、速水もこみち、小池徹平、水嶋ヒロ、三浦涼介といったそうそうたるメンバーがいたことに驚かされる。  『ごくせん』でおこなわれたイケメン俳優の展覧会という試みは、その後、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07年・フジテレビ)や『メイちゃんの執事』(09年・フジテレビ)などの少女漫画のドラマ化によって、より徹底されたものとなっていく。  そんな、イケメンドラマの金字塔となったのが、『花より男子』(05年・TBS)であることは言うまでもない。  『花より男子』は、原作こそ日本の人気少女漫画だが、台湾でドラマ化されて大ヒットしたことから逆輸入的に日本でドラマ化されたドラマだ。  物語はセレブの子どもたちが通う英徳学園で庶民の出の少女・牧野つくし(井上真央)が奮闘するラブコメディで、松本潤はつくしの前に立ちはだかるセレブグループの頂点に立つF4のリーダー・道明寺司を好演した。オラオラ系男子だが、ヒロインのつくしにはベタ惚れという二面性が受けて、マツジュン=王子様というイメージを完全に定着。後に続編や映画版も作られる00年代を代表するメガヒット作品となった。  一方、イケメンドラマや男性アイドルが求められる時代背景を、かつてのトレンディドラマの構造を使うことで描き出した隠れた名作が『きみはペット』(03年・TBS)だ。  新聞社に勤める巌谷スミレ(小雪)は、エリートであるが故に何でも完璧であらねばならないと思うあまりに仕事と恋愛のストレスを抱え込んでいたが、マンションの前で段ボールに入って倒れていた謎の美少年・モモ(松本潤)といっしょに暮らすことで少しずつ癒されていく。美少年をOLがペットとして飼うという不思議な作品だが、松本の天真爛漫な演技もあって、おかしな味わいのラブコディに仕上がっていた。モモとすみれの関係は男女の恋愛には規定できない不可思議なものだが、今考えるとこれは男性アイドルやイケメン俳優を女性視聴者がどのように希求していたのかを描いたメタ・アイドルドラマだったのかもしれない。

櫻井翔とクドカンドラマ

 また、イケメンドラマの構造を最大限に活用――つまりジャニーズアイドルさえ出ていれば何をやってもOKという枠組みを利用――して自分たちの作りたいドラマを作り続けたのが脚本家・宮藤官九郎とプロデューサーの磯山晶がチームを組んで制作した『池袋ウエストゲートパーク』や『うぬぼれ刑事』(10年)といったTBSで放送されたクドカンドラマである。  90年代小劇場文化のもっとも暗くて深い場所にいた松尾スズキが主催する劇団・大人計画に所属していた宮藤が、ジャニーズアイドルの出演するドラマの脚本を執筆するというのは、当時は驚かされたものだが、ジャニーズサイドとしては有名クリエイターの作品に出演することで箔をつけることができ、クリエイターサイドはジャニーズアイドル主演ということで商業面(テレビドラマでは視聴率やDVD-BOXのセールスにおいて)での保険をかけることができるという、双方の利益がかなった幸福な結婚だった。  なかでも櫻井翔が出演する『木更津キャッツアイ』は、クドカンドラマのブランドを決定づけた、00年代ドラマの金字塔である。  本作は余命半年の青年・ぶっさん(岡田准一)を中心とした男の子たちのグループが昼は草野球チームの木更津キャッツ、夜は怪盗団・木更津キャッツアイとして活躍する青春コメディだ。櫻井はグループの中で、一人だけ大学生で童貞のバンビを演じた。  まだ演技経験が少なく決してうまいとは言えないぎこちない演技だったが、そのぎこちなさが初々しさにつながり、生真面目すぎてめんどくさいがみんなから愛されているバンビにぴったりとハマっていた。  それにしても女性に夢を売る男性アイドルが、童貞役を演じ、男子校的なノリを「これでもか」と展開する『木更津キャッツアイ』が放送され女性視聴者に受け入れられたのは、テレビドラマとしてはもちろんのこと、アイドルドラマとしても快挙だったと言える。  本作以降、若手男性アイドルを多数登場させることで新人俳優の登竜門となるイケメンドラマは多数制作されるが、『木更津キャッツアイ』を筆頭とするクドカンドラマが果たした役割は大きい。  アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95~96年)の内向的な主人公・碇シンジや、97年に酒鬼薔薇聖斗の名前で猟奇殺人事件を起こした14歳の少年が象徴的だが、思えば90年代は男の子を少年犯罪のようなネガティブな形でしか描くことがむずかしい時代だった。  ふつうの少年たちはスポットライトを浴びることはなく、隅っこに追いやられ、男の子たちの男子校的な共同体を幸福な形で描くことはとても困難だった。  テンポの速い会話劇や、東京ではなく木更津という郊外を舞台にしたことなど、00年代において様々なイノベーションを起こした宮藤官九郎のドラマだが、なにより最大の功績は、ふつうの男の子たちの幸福な共同体を00年代に描ききったことだろう。この流れは二宮和也が主演を務めた童貞高校生グループの青春を描いた『Stand Up!!』(03年・TBS)や嵐の5人が出演した映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけどHAPPY』(02年)へとつながっていく。(後編に続く) ■成馬零一 76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
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リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

■書籍情報 『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』 リアルサウンド編集部・篇 価格:¥ 1,500(+税) 予約はこちらから 内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』

嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(後篇)

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『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

【リアルサウンドより】  嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日から17日にかけて、全国書店やネット書店で発売される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。  書籍の発売に先がけ、先日公開した【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】【嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う】【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(前篇)】に続き、嵐の各メンバーがジャニーズの後輩たちに与えた影響を、人気ライターの佐藤結衣氏が読み解いたコラムの後篇をお届けする。(編集部)

一生懸命さが実を結んだ相葉雅紀

 いつでも体当たりで天真爛漫。狙っていないのに周囲に笑顔を呼び起こす、純朴で素直な人。相葉を象徴するのは、そうした言葉ではないだろうか。肩肘をはることなく、目の前にあることに対して常にポジティブに取り組むのが相葉という人間だ。例年、京セラドーム公演のさい、共演するバンドメンバーやスタッフや後輩のJr.たちに、たこ焼きを焼いて振る舞っていたなどというエピソードが多いのも、相葉らしいところ。何歳になっても少年の心を忘れない相葉の行動は、芸能界だけではなく社会のなかでも珍しいだろう。  だが、その無邪気な姿は、アイドルというきらびやかな世界の中で、いつも素を見ているような安心感を与える貴重な存在だ。バラエティ番組『天才!志村動物園』でも、当初パネラーとしての出演のみだったにも関わらず、体当たりロケが好評で司会に抜擢された。動物と触れ合うための道具や小学生の自由研究のような実験を、いつでも前向きにトライしている姿は、バラエティ出演のよい例として後輩たちに映ったはずだ。  そして、現在『ヒルナンデス!』にレギュラー出演している有岡大貴(Hey!Say!JUMP)は、まるで相葉の若きころを見ているかのような感覚になる。ロケ先で店舗の撮影交渉に挑んだり、ほとんど経験のない食レポに勢いでチャレンジしたり。懸命にミッションをクリアしようと挑む姿が、好感を呼んでいる。  そして、誰よりも自分自身が楽しんでしまっているというのが、彼らの強み。どんなムチャぶりでも、誰かが喜んでくれるのならと一生懸命なのだ。  相葉ががんばればがんばるほど、そして徐々に成長して報われるところが見えると、視聴者もなぜか救われた気持ちになるのだ。それは、一見「ふだんの生活で見つけたイケメン」という身近な存在に思われがちなところに要因があるのではないか。「私の知っている人」、「私が見守ってあげなければ」という気持ちが芽生えるような気がする。  しかし、誰からも愛されるキャラクターのなかには、たしかにひとりの男性としての実力を持ち備えているのが、相葉のにくいところ。歌えば、技術ではないエネルギーや色気を感じるし、芝居をすれば「こういう人いる」と思わせるほど、自然と世界観に溶け込む。ストーリーにすんなりと入れる魅力的な演技をするのだ。  いつもまわりを笑顔にしたいという姿勢が、メンバーを、共演者を、そして見ているすべての人を巻き込んでいく力に変わる。相葉のアイドルという仕事に対する姿勢が、何歳になっても、そしてどんな状況であってもブレないのはそういう理由だろう。相葉の姿を見ていると、アイドルの基本とも言えるそのスタンスこそが最大の武器だといえる。おそらく相葉自身の成功は、純粋にトップアイドルを目指す後輩たちにとっても希望の光になっているに違いない。

独自の視点で世界のトビラを開けた二宮和也

 二宮は、その演技力でハリウッドのクリント・イーストウッド監督に「類まれなる才能」と評された実力者。映画「硫黄島からの手紙」で、ジャニーズ初の日本アカデミー賞候補に選ばれるなど、華々しい経歴を持つ。さらに、これまで数々の映画やドラマ、舞台に出演し、そのたびに監督やプロデューサーから絶賛されている。ところが、二宮自身は芝居に特化するつもりはないという。その理由を、監督や共演者とのパワーバランスを考えてのことだとか。アイドルでいることこそが、自分が芝居をしていく上でとても大切なのだというのを俯瞰しているのだ。このバランス感覚こそが二宮の大きな魅力だ。  二宮は、つねに独特な感性で人との距離感を正確に把握しているように思える。ゲストを迎えるトーク番組では空気を敏感に察知してツッコミを入れたり、ときには大御所のゲストにタメ口をきいたりする。一見、自由気ままに振舞っているようだが、それは相手の微妙な変化に気がつけるからこそできること。気づけば彼の作り出す空気に周りが寄っていくというスタンスは、どこか玉森裕太(Kis-My-Ft2)や橋本良亮(A.B.C-Z)につながっているように思える。  また、二宮はリーダーの大野との親密な関係が「大宮」コンビとしてよく話題になる。コンサートでは二宮が大野のおしりを触ったり、キスをしたりと、とにかく仲の良さを感じさせる行動が満載なのだ。雑誌のインタビューでもお互いを思い合うようなコメントも多くあり、コンビとしての相思相愛感がファンにはたまらない。そんなふたりがくっつくたびに、ファンからは大きな歓声がわくことから、メンバー同士のボディタッチはファンに喜ばれるという文化がジャニーズの中に根づいたように思える。そこからHey!Say!JUMPの「SUPER DELICATE」での山田涼介と中島裕翔、Sexy Zoneの「King&Queen&Joker」での佐藤勝利と中島健人が濃厚にに絡み合う振りつけが導入されたのも、少なからず彼らの影響があるのではないだろうか。  そんなファンが心躍らせるような絡みを見せる一方で、趣味のゲームに没頭して休日が1日つぶれるなど、私生活がアイドルらしからぬ点を披露するのも、バランス感覚に優れた二宮ならでは。一説には、ゲームに集中していると思いきや、周りの会話はしっかりと聞けているという驚異的な能力も持っているとか。そんな器用な二宮はバック転や手品など特技をいくつも持っているのだ。多彩な趣味があるという意味では、中島裕翔(Hey!Say!JUMP)のドラムや中島健人(Sexy Zone)のピアノにも同じことが言える。コツコツと自分の興味を持った世界を追求し、気づけばプロ並みの腕前を習得。そして自己表現の一つとして活かしていくというスタイルだ。  二宮も、実に多くの楽器を弾きこなし、作詞作曲にも精力的に取り組んでいる。自分では、あまり後輩との関わりはないというが、薮宏太(Hey!Say!JUMP)や、ドラマ「流星の絆」で共演した錦戸亮(関ジャニ∞)とは個人的にご飯に行く仲だそうだ。彼らに共通するのも自ら歌を作れるということだ。自分たちが表現したいものを、イチから作っていくという感覚を、後輩グループたちに示した貴重な存在だといえるだろう。

王子と裏方の2つの顔を両立させた松本潤

 すっと通った鼻筋、長いまつげ、凛々しいマユ毛、嵐の中で最も美しいと評されるのは松本だ。その浮世離れした甘いルックスから『金田一少年の事件簿』や『ごくせん』、『バンビーノ!』など、マンガが原作となったドラマで大活躍。とくに、『花より男子』ではドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞するなど、まさに当たり役だった。女子なら誰もが夢見る王子様のようなキャラクターを演じることは、ジャニーズとして活躍するすべての後輩の憧れ。しかも、自分らしく個性豊かに演じる松本に、少しでも近づきたいと願う後輩も少なくない。松本と同じく『金田一〜』を主演した山田涼介(Hey!Say!JUMP)もそのひとりだ。  だが、松本の魅力は端正な顔立ちや抜群のスタイルをだけではない。その外見の美しさを持ちながらも、裏方に徹することができるのだ。嵐としてデビューした次の年からすでにコンサートの構成をプロデュース。全体を俯瞰で見られる能力がずば抜けているのだ。受け身ではなく、自ら発信していくスタイルは後輩たちにも大きな刺激になったはずだ。なかでも、佐藤勝利(Sexy Zone)に近い姿勢を感じる。佐藤も構成や演出を考えることが好きで、これまでもソロコーナーを中心に手がけてきた。グループの中では年下でありながらも、自分の見せたいものに対するこだわりや広い視野でのモノの考え方、先輩たちのステージから多くのアイデアを吸収するスタイルが松本と似ている。  また、日ごろから嵐としての立ち位置を一歩引いて見ることができるからこそ、相手に応じてギャップのある態度を見せることもできる。気の許せる仲間といるときはアゴが外れるほど大きな口を開けて笑うし、旧知の仲である生田斗真いわく「さみしがりやで、なかなか(飲みの場から)帰りたがらない」という話もテレビで暴露されてしまうのもいい例だ。  さらに、メンバーといるときは末っ子らしい甘えんぼうな一面も持ち合わせており、真面目で気を使いすぎた結果、少し天然なところもある。そんな完璧を想像させる外見とは裏腹に、甘えんぼうで人間味あふれる一面があるのが、ファンには嬉しいうれしいギャップなのだ。山田も松本同様、容姿端麗の美青年だが、メンバーから「カッコつけすぎ」、「やることが普通」などツッコまれるところがある。また休日にもメンバーと遊びに行くことも多く、さみしがりやなパーソナルな部分も通じるものがあり松本を目指しているというのもうなずけるところ。  ヒーロー役をこなす王道のイケメンでありながらも、裏方の仕事に徹したり、人間らしい部分を見せているところは、グループを背負って立つポジションの後輩たちにとって目標となっているのだ。

グループ愛という魅力を確立させた嵐

 嵐の5人はデビューからメンバーがひとりも脱退することなく、ともに成長してきたグループ。しかも、メディアへ露出する頻度や歌うパートなど仕事量に対する格差もない。全員が対等な立場で意見を言い合える自然な付き合いがジャニーズでは珍しい特徴だ。たとえば、5人の中からランダムに2人ずつの組み合わせをしても、それぞれの関係性が成立している。いざこざや不仲とは無縁だ。「ツアー先で一緒にお風呂に入ることも珍しくない」など、舞台裏でもメンバー間の仲睦まじさを感じさせるエピソードが豊富。さらに、どの時代を切り取ってもその絆が壊れたことがないので、ファンとともにその歴史を笑顔で振り返れるのだ。  嵐は、現在のような人気が出るまでデビューのあと少し時間がかかった。コンサート会場のセットが、後輩のNEWSやKAT-TUNに比べて、お金がかかってないと嘲笑された時期もあったのだ。そんな苦労した時代をメンバーで支え合いながらじっと耐え、コツコツと仕事に向き合ってきた。その姿勢は、関ジャニ∞の今の成功に通じるものがある。共通していえるのは、目の前の増えていくファンを大事に思い、それぞれの個性は活かしつつメンバー愛を持ってグループ活動を続けてきたことだ。  若くてフレッシュな少年の輝きが最善とされてきた芸能界に、メンバーとファンが愛情を積み重ね大器晩成型アイドルとして売れたのが嵐という革命だ。ジャニーズを応援するファンにとって、グループに注ぐ愛は自分自身もその中にいるような感覚に近い。コンサートで過ごした時間、雑誌やラジオで日々存在を感じながら季節が巡っていく。だからこそ、グループの雰囲気が良ければ、そのメンバーと過ごす楽しい時間がファンにとっても倍増するのだ。メンバー同士の仲が良いこと、グループとしての結束力が強いこと。それは、ファンにとっても繋がりを深く感じられる大切なバロメーターになる。そんなグループのあり方を後輩に示したのではないだろうか。  メンバーの成長、さらに深まるグループ愛という末永く見守っていく楽しみがあるからこそ、嵐は老若男女問わず多くのファンに、そして多くの後輩たちにも愛されているのだ。 (文=佐藤結衣)
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リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

■書籍情報 『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』 リアルサウンド編集部・篇 価格:¥ 1,500(+税) 予約はこちらから 内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。

AKB48川栄李奈の卒業に残る“やりきれなさ” ピーク期を前にグループを去る彼女はどこに向かう?

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AKB48『Green Flash Type-S【初回限定盤】(多売特典付き) 』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  3月26日のAKB48単独コンサート『AKB48春の単独コンサート~ジキソー未だ修行中!~』内で行われた人事異動発表で、川栄李奈の卒業が明かされた。この数年間、グループの時期中心メンバーを期待されるポジションに立っていた彼女の卒業は、メンバー間のパワーバランスだけで考えるならばいかにも尚早に見える。本来ならば今後、AKB48の代表的存在として大舞台に立つ未来もあったはずだ。そのような、巨大グループの一員としてのありえたはずのキャリアは、彼女個人の芸能人としての知名度を高める意味でも、AKB48自体のこの先数年間を見据える意味でも大きなものになったに違いない。  彼女が目に見えて頭角を現し始めたのは2012年、当時のAKB48チーム4に昇格(再組閣によってその年のうちにチームAに異動)し、5月発売の26thシングル『真夏のSounds good !』で初選抜入りを果たす。同年の指原莉乃withアンリレ名義の『意気地なしマスカレード』では、「指原莉乃主体の楽曲なのに指原自身がセンターにいない」というギミックの中でセンターポジションを託され、この頃より雑誌等での露出も目立つようになっていく。その流れの中で彼女の存在感は2013年に数段上に引き上げられ、4月放送の『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の期末テスト企画に端を発した「バカキャラ」の盛り上がり、そして選抜総選挙での25位獲得へと続いていく。川栄が頭角を現すのと時期を同じくして前田敦子、篠田麻里子、板野友美らグループ初期を支えたメンバーがグループを離れ、それを継いだ渡辺麻友ら中心メンバーのさらに次代をうかがう位置に彼女はいた。現在でも渡辺らが引き続きAKB48グループの核にいることを考えれば、昇格からの年数がさほど長いわけではない川栄のAKB48での最盛期はまだ先だったのだろう。  川栄の卒業という決断に大きく影響したのが、昨年の握手会襲撃事件であることは間違いない。ここではその詳細をあらためて振り返ることはしないが、この事件は握手会に限らず、あるいは「アイドル」というジャンルであるかどうかに限らず、「現場」というものが演者とオーディエンスとの信頼によって成り立っていること、そしてイベントの規模が大きくなり、介在する人々の数が多くなればなるほどそこに悪意が混入することも避けがたく、「現場」がある意味で非常に脆いものでもあることを露わにした。また、先月の卒業発表時の川栄のコメントからは、それでも握手会というイベントを全メンバーにとって必須のものと認識せざるを得ない、ファンを含めた48グループの力学としての難しさも垣間見えた。いずれにしても、彼女がごく当たり前に歩めたはずのAKB48メンバーとしてのキャリアが狂わされたことは残念でならない。  ただ、今考えたいのはむしろ、グループを卒業して一人の芸能人として地歩を固めていく彼女のことである。メンバーがまだグループ内での最盛期を迎える以前から、各人の卒業後のキャリアを後押しするための種をいくつも蒔くことができるのが、AKB48グループという巨大組織の重要な利点である。かねてより女優志望を公言している川栄は、すでに2014年初頭の『SHARK』(日本テレビ系)で、グループから離れた単独でのドラマ出演を果たし、事件による療養から復帰後の同年10~12月には宮藤官九郎脚本のドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)にも出演、AKB48の看板を外して活動するための準備を少しずつ整えている。もちろん、AKB48でより中心的な立場や高い知名度を経てから個人活動に移行した方が、一タレントとしては有利だっただろう。卒業への心境をつづったブログで川栄自身も「今私がテレビに出れているのはAKBだから」「AKBじゃなくなったら私をテレビで見かけることはなくなるでしょう」と、この先が必ずしも順調ではないとする認識を示している。しかし、グループ卒業後の活動の成功は、AKB48時代に頂点に立った者だけの特権ではない。川栄のようにまだキャリア半ばに見える段階で卒業したメンバーが、ソロとして順調に足場を築いていけるのならば、グループの今後にとってもポジティブなフィードバックになるはずである。また、グループのセンターやそれに近いポジションでパフォーマンスを続けてきたメンバーは、卒業後のキャリアとして「AKB48」のイメージをいかに外していくかが重要になる。昨年卒業した大島優子にとってそれは不可避の課題であるし、今年卒業へのカウントダウンに入る高橋みなみもまた同様だろう。川栄は人気メンバーではありつつも、まだキャリアのピークを迎える前に卒業することもあり、ファンの間での認知度はともかく、世間的にAKB48の看板を代表するアイコンになっていたわけではない。その身軽さは、彼女の今後の活動にとってむしろプラスになるのかもしれない。  イメージからの距離ということでいえば、先週4月4日に放送された『AKB48 旅少女』(日本テレビ系)もまた、AKB48所属ゆえの固定的なイメージを相対化するような役割を果たしていた。同じAKB48所属の木﨑ゆりあ、西野未姫とともに今後のAKB48や選抜総選挙の意義などを問い直すような会話をする中で川栄が吐露したのは、バラエティによってイメージ付けられた「バカキャラ」というある種の定型的なイメージへの静かな違和感や俯瞰的な視線だった。ともすればそのようなキャラ付けが先行する状況にあって、同番組が提示してみせた「キャラ」に対する距離感は、卒業を控える川栄を定型的なイメージからいくらか解放し、一人の芸能人としての奥行きを見せるような、良い効果をもたらしているように思えた。  川栄の卒業が他のメンバーの卒業にもまして、様々な感情を含みこまざるをえないことは確かである。けれど、川栄の言葉がすでに卒業後の活動を見据えたものであることは何より心強いし、ソロ活動の将来的な成功は、彼女自身およびAKB48という組織の強靭さを証明することになるはずだ。今回の卒業に関していまだ残るやりきれない感慨が、彼女自身のこれからの活動によってどんどん小さくなっていくならばこのうえなく喜ばしいし、そんな未来を願いたいと思う。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか

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『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

【リアルサウンドより】  嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日から17日にかけて、全国書店やネット書店で発売される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。  書籍の発売に先がけ、先日公開した【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】【嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う】に続き、嵐の各メンバーがジャニーズの後輩たちに与えた影響を、人気ライターの佐藤結衣氏が読み解いたコラムの前篇をお届けする。(編集部)

ジャニーズタレントは、先輩の背中を見て育つ

 ジャニーズ事務所といえば、後輩が先輩のバックダンサーとしてステージを経験し、デビューにふさわしい実力を身につけていくというのが慣例となっている。基本的にはダンスレッスン以外は、独学というスタンス。つまり、後輩たちは文字通り先輩の背中を見て育っていくのだ。生で見るライブパフォーマンスはもちろんのこと、テレビ越しに見るバラエティー番組での対応力、ドラマや舞台といった芝居の演技力なども、すべて先輩の活躍が最も身近なお手本となっている。つまり、国民的アイドルとなった嵐も、例外なく模範となる存在。嵐の5人が後輩に与えた影響とは。また、嵐というグループのあり方が後輩たちにどう働きかけたのかを検証してみよう。

ファンへの感謝と自由な発想を見せた大野智

 嵐の最年長であり、今でこそリーダーとして広く認知されている大野。だが、デビュー当初は事務所を辞める意思を伝えた直後だったというから驚きだ。というのも大野は、Jr.時代から人気を博していた他のメンバーに対して、ステージに登場したときの歓声の量が圧倒的に少なかったのだとか。「もっと他にふさわしい人がいたのでは?」という劣等感を抱えた中でのデビューだっただけに、ファンを大事にする姿勢は誰にも負けない。  インタビューなどでもつねにファンに対する感謝の言葉を述べ、コンサートなど直接会える場では全力のパフォーマンスで返しているように見える。そして、もともとの性格もあるのだろうが、メンバーの誰よりも謙虚である。大野が前へ前へと出ることは、ほとんどない。どちらかといえば、フワフワとつかみどころのないところが大野らしさともいえる。メンバーを引っ張っていくのではなく、大きく包み込む、そんなリーダー像を感じさせる。  しかし、大野のすごいところは、いざ歌うとその美声に誰もが圧倒されるし、踊ればキレキレのダンスに魅了されるということ。そのオンとオフが切り替わるスタイルは、これまでのジャニーズアイドルの中でも際立っているのだ。ほかを圧倒するダンスに関しては、数々の後輩が憧れを抱いていると語っている。  なかでも、大野に憧れてジャニーズに入ったという知念侑李(Hey!Say!JUMP)は、ファン用語でいうとかなりの「強火担(熱心なファンという意味)」。知念も、コンサートや歌番組などでグループといっしょにいるときは、ほかのメンバーが話しているのをニコニコと聞いているタイプだ。そして、いざ話を振られると周りの空気を気にせず、自分の思ったように発言。このスタンスはどこか大野に通じているように思える。だが、知念もいったん踊りだすとまったく別の顔を見せる。持ち前の身体能力の高さを活かして、キレのある振りつけから、優雅なコンテンポラリーまで多彩なタイプのダンスを披露するのだ。  また、大野がライブ中に行なうファンサービスの手厚さも、知念に受け継がれている重要な要素だ。ファンが徐々に増えていくのを、自分の名前が書かれたウチワで実感していたという大野。今でも手作りのウチワを励みにしているようで、コンサート会場の花道などを練り歩く際「(手でピストルのように)バーンして」、「(両手で)ハートを作って」、「じゃんけんして」など、リクエストされるポーズに次々と応えている。知念も、もともとは大野に憧れたのはコンサートを見に行ってのこと。自分がファンサービスされてうれしかったことが根底にあるので、大野と同じようにファンを大切にする姿勢が身についたのではないか。  また、大野といえば芸術面での才能も秀でていることで有名だ。絵画やフィギュアなど、デビュー以前より制作していたアート作品を収めた写真集「FREESTYLE」は、ジャニーズのファンだけではなく、漫画家やファッションデザイナーなど各界の大御所と呼ばれている人からも絶賛されている。アイドルという看板を別として、アート作品として高い評価を得ているのだ。さらに、ジャニーズ事務所初とも言える個展をセルフプロデュース。開催時には、プレミアチケットとなったほどだ。そして、24時間テレビのパーソナリティを務めた際にはチャリティーTシャツのデザインを担当した。  そんな大野のように絵心を仕事に活かしている後輩に、八乙女光(Hey!Say!JUMP)がいる。コンサートの演出のひとつとして、得意のイラストでメンバーにちなんだキャラクターを即興で描き、話題を呼んだ。また、安田章大(関ジャニ∞)や増田貴久(NEWS)も、衣装やコンサートグッズなどのデザインを手がけている。ディレクションされものだけではなく、自ら手を動かして作っていく面白さ、クリエイティブな活動を通じて表現する道を示した大野の影響を、少なからず受けているのではないだろうか。  こうした非凡な能力を持っていながらも、決して奢れることはなく、ファンに対する真摯な姿勢を持ち続ける大野。それぞれの分野において「スイッチが入る」という表現がピッタリだ。歌、ダンス、アート……アイドルという枠にとらわれず、自分の中から沸き上がるものを的確な形で発表する姿は、後輩たちにも自由な発想を与えたはずだ。

知的活動の幅を広げた櫻井翔

 櫻井といえば、まず最初に思い浮かぶのが名門・慶応大学を卒業した高学歴であること。幼稚舎から慶応に通い、アイドルの中でも異例のエリートと言えるだろう。多忙を極める中、真面目な性格で学業と仕事の両立を果たした彼の存在は、アイドルの魅力を多方面に広げた。  その姿を見た後輩たちは、続々と大学に進学&卒業を目指した。小山慶一郎(NEWS)と伊野尾慧(Hey!Say!JUMP)が共に明治大学、加藤シゲアキ(NEWS)が青山学院大学を卒業。現役でも、岡本圭人(Hey!Say!JUMP)が上智大学、中島健人(Sexy Zone)が明治学院大学に通っている。なかでも、最も影響を受けているのが菊池風磨(Sexy Zone)だ。そもそも櫻井に憧れてジャニーズに入ったという菊池。個性こそ真逆な印象だが、まっすぐな尊敬の念を貫き、櫻井と同じ慶応大学を受験。そして、現役で合格したのだ。難関と言われる大学に芸能活動をしながらも通うのは、櫻井が切り拓いた新たな可能性を見出しているからだろう。  それは、知性を活かしてニュース番組「ZERO」への出演という道を切り拓いたこと。番組の飾りではなく自ら意見を織り交ぜながらニュースを発信する、本格的なキャスターとしてのキャリアは櫻井の大きな偉業。もちろん、大学を卒業したというだけでは努められない大役である。毎日、複数の新聞に目を通しているなど、変わらぬ努力家な一面を感じさせるエピソードも耳に入ってくる。彼の誠実なコメント、そして対応力からオリンピック番組のメインキャスターを務めた。その道を追うように、小山も「every.」でニュースキャスターとしてのキャリアを歩み出している。さらに、亀梨和也(KAT-TUN)や手越祐也(NEWS)もスポーツキャスターとして活躍している。  こうしてみると、いわゆる優等生という出来すぎた印象の櫻井だが、一方で「なで肩」や「私服がダサい」、「手先が不器用」などという隙を感じさせるギャップもある。自身初の冠番組『櫻井有吉アブナイ夜会』では、メインMCでありながらも自分自身をいじらせるという絶妙な立ち位置を確立している。これは頭の回転の速さがなければ成り立たない。このスタイルは『月曜から夜ふかし』などでMCを務めている村上信五(関ジャニ∞)に受け継がれているように思える。また、デビュー前から弟のようにかわいがっているという千賀健永(Kis-My-Ft2)も、バラエティ色の強いユニット「舞祭組」として活動。スカイダイビングで神や表情が崩れた場面を晒すなど、アイドルとしては前代未聞な域に挑戦しているが、二枚目の部分もしっかりとキープされている。それは、櫻井がバラエティでうまく対応しているところを見て育ったからなのではないだろうか。  従来のキラキラしたアイドル像にとどまらず、クールで知的なデキる大人の男としての魅力を兼ね備えた存在にもなりうること。一方で、親しみやすいキャラクターと時にはイジられるくらいの器の大きさを示した櫻井が、後輩たちの活躍の場を広げていったことは間違いない。(後篇に続く) (文=佐藤結衣)
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リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

■書籍情報 『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』 リアルサウンド編集部・篇 価格:¥ 1,500(+税) 予約はこちらから 内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。

ポピュラー音楽界における「時間の流れ」は遅くなっている? 最新のALチャートから考察

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EXILE『19 -Road to AMAZING WORLD-』(rhythm zone)

【リアルサウンドより】 参考:2015年3月23日~2015年3月29日のCDアルバム週間ランキング(2015年4月6日付)  最近のアルバムチャートを眺めていてふと頭をよぎるのは、ポピュラーミュージックの世界における時間のスピード感の鈍化について。例えば、3年という時間の長さ。ビートルズなら『ア・ハード・デイズ・ナイト』『ビートルズ・フォー・セ—ル』『4人はアイドル』を立て続けにリリースして20世紀最大のアイドルとしての黄金時代を極め、『ラバー・ソウル』『リボルバー』、とどめに『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を完成させて20世紀最高のアーティストの座に君臨するまで。これすべて、たった3年弱の間に起こった出来事。ポピュラーミュージックにおいて60年代の3年間はその後の20年間くらいの価値があったということがよくわかるエピソードとも言えますが、70年代にスティーヴィー・ワンダーは3年間で『インナーヴィジョンズ』と『ファースト・フィナーレ』と『キー・オブ・ライフ』を作ってポピュラーミュージックの歴史を変えて、80年代にプリンスは3年間で『パープル・レイン』と『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』と『パレード』(とついでに2本の映画)を作ってまたしてもポピュラーミュージックの歴史を変えたわけで。確かな実感を込めて言えるのは、21世紀に入ったあたりから、日本の音楽シーンに限らず、世界的にも数年前のヒット曲がまるで先週流行っていた曲のように感じられるようになったこと。そう感じるのは、自分が歳をとったからだけではないはず。ポピュラーミュージックの世界において、「時間の流れ」は時代を追うごとに確実に遅くなってきています。  というわけで、今週1位のEXILEのアルバム『19 -Road to AMAZING WORLD-』について。オリジナルアルバムとしては前作『EXILE JAPAN』以来、3年3ヶ月ぶり。EXILE史観的には、その間に「第三章」と「第四章」の断絶があり、リーダーのパフォーマー引退、新メンバーの加入、別プロジェクトの本格的な大ブレイクなどなどいろいろあったわけですが、『19 -Road to AMAZING WORLD-』のアルバムとしての概要のみを記すと以下のようになります。全14曲中、4曲は過去のベストアルバムに収録済、7曲はそれ以降のシングル曲、残りの3曲が新曲。中でも、既にベストアルバムに収録されていた曲をオリジナルアルバムに再収録するというのは禁じ手と言えるもので、それは数字としても表れました。オリジナルアルバムとしては一応これで9作連続の1位を獲得したことになりますが、初週の売上げは前作の35万枚から4割以上減の20万枚強。ピーク期だった2009年の『愛すべき未来へ』から比べると約4分の1。今年リリースされたアルバム『PLANET SEVEN』が既に80万枚近いセールスを上げている三代目 J Soul Brothersとの世代交代が起こっていて、今回の結果はプロデューサーのHIROサイドとしても半ば意図的なものなのではないかという見方もされていますが、それにしても今回の初週20万枚というセールスは、この3年間、時間の流れが遅くなってきた現在の音楽シーンにおいてさえ、EXILE本体の進化がいかに停滞していたかを証明しています。  もちろん、EXILEの3年間に『ア・ハード・デイズ・ナイト』から『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』までの進化のようなものを期待するのは無理筋というものですが、今の時代においても意外に、音楽ファンは「時間の流れ」に照らし合わせて作品がいかに進化しているかをシビアにとらえているのかもしれません。サザンオールスターズの10年ぶりのアルバム。Mr.Childrenの2年半ぶりのアルバム。今年前半はこれからもビッグアーティストの「久しぶりのアルバム」のリリースが続きますが、そこでどんな結果が出たとしても「時代のせい」以外の理由を導き出す必要があると自分は考えます。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う

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『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

【リアルサウンドより】  嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日に刊行される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。  書籍の発売に先がけ、先日公開した【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】に続き、音楽ジャーナリストの柴 那典氏と評論家の矢野利裕氏が嵐の音楽性について語り合った対談を、一部抜粋してお届けする。(編集部)

柴「楽曲ごとにジャンルの違った多彩な仕掛けが組み込まれている」

ーー二人が嵐を聴くようになったきっかけを教えてください。 矢野:僕はそもそも嵐のメンバーと同世代の人間で、二宮くんとはぴったり同い歳です。彼らがデビューしたのは99年で、僕が16歳のとき。デビュー曲の『A・RA・SHI』がすごい勢いでヒットチャートに入ったので、ファンでなくとも、当たり前にそこにあるものとして聴いていました。その後、古い歌謡曲なども好んで聴くようになっていき、ジャニーズのことは「常に面白いことをしているな」と思ってチェックしていたんです。ジャニーズには戦後歌謡曲を覆うくらい長い歴史があります。そうした中で、嵐というグループはリスナーやファンにとってどのような存在なのだろう、というのは漠然と興味を持っていて、ジャニーズを調べるようになってから改めて深く聴くようになりました。だから、世代的にはずっと傍にあるものとして享受していて、あとから詳しく聴き直したという感じです。 柴:僕は、リアルサウンドという音楽メディアでヒットチャートを分析するコラムを書き出したことがきっかけです。毎回、1位を獲得した曲をちゃんと聴き込んで、どこに音楽的な魅力があるのかを紐解いていくんですが、嵐は新曲を出すたび1位をとっているので触れる機会が多くありました。当然これまでのヒット曲くらいは知っていたけれど、本当にちゃんと聴き出したのは連載がスタートしてからだから、ここ1年くらいでしょうか。そうして嵐が1位をとる1曲1曲がまた、とても面白いんですよね。楽曲ごとにジャンルの違った多彩な仕掛けが組み込まれている。そうして興味を持って、音源をどんどんさかのぼって聴いて、デビューからの楽曲の変遷も知っていったんです。アルバム1枚を通して聴いたのも『THE DIGITALIAN』が初めてだったので、まだまだ新規リスナーですよ。 矢野:チャートアクションを観察しているうちに、嵐の面白さに気づいたということですね。どんなところに面白みを感じますか? 柴:ここ数年では、スウェーデンのクリエイターが書いている曲に注目しています。たとえば「誰も知らない」や「Breathless」がそう。もともとの発想が違うのか音の作り方が違うのかわからないけど、一筋縄ではいかない構成になっていて面白いです。最近のシングル曲は、作曲家やプロデューサーがタッグを組む「コライト」という方法で作られた曲が多くなっていて、中でもそれらの楽曲はかなり上手く作られているなと思いました。 矢野:その辺りの楽曲も含まれるのですが、僕はベストアルバムの出た2009年以降、嵐はさらに面白くなったと思っています。特に『Popcorn』『LOVE』『THE DIGITALIAN』の3作がすごくいい。メディアでの露出が昔と比べて多くなったこともあり、「嵐」という器の中で、できることを思う存分にやっているんじゃないかな。さらに同時代的には、USヒットチャートもすごく多様になってきているんですよね。テイラー・スウィフトとカニエ・ウェストが一緒にチャートアクションしているのは、冷静に考えるとすごい。嵐も、先に述べた3つのアルバムにはそういったジャンルレスの面白さを上手く消化している。最初のデビュー曲から数曲はたしかにポップスとして良く出来ているんだけど、同時に王道のJ-POPへの気遣いも強く感じるので、正直物足りないと思っていました。でも、最近の曲は、めちゃくちゃ面白いと思いますね。 柴:たしかに、さかのぼって聴いたら「今聴いている嵐と全然違う!」とびっくりしたんです。初期の方向性って、まさにブラックコンテンポラリーですよね。ブラコンの中でも特にファンクを踏襲してる。たとえばデビューシングルの『A・RA・SHI』はファンクをどうJ-POP化するかを考えて作られた曲だと思うんです。同じようなことはSMAPもやっていますよね、それを嵐は後輩としてそのまま引き継いじゃった。最後がゴスペルみたいなコーラスになっているのも規定路線だし、こうしたファンキーかつポップな曲調ということで一旦グループの方向性は定まっていたんでしょう。 矢野:『A・RA・SHI』は、イントロがもろファンクだし、ジャニーズのど真ん中をやるんだという方向性を示している曲ですよね。ジャニーズが長らく紡いできたブラックミュージックの系譜を受け継ぐぞ、という覚悟が見える。それから、DA PUMPがブレイクした直後だという時代背景も大きいと思います。それまでのジャニーズ楽曲では飛び道具的に扱われていたラップを『A・RA・SHI』では思い切って全面に打ち出してきた。それは、櫻井くんがヒップホップをやりたかったということまで含め、ヒップホップが当時ポピュラリティを獲得していたということですよね。 柴:ああ、それはありました。僕は当時ロッキング・オンという会社にいたのですが、98年はZeebraが1stアルバムをリリースした時のインタビューで読者に向けて「韻とは何か」ということを基礎から説明していた時代でした。まだメディア側がヒップホップを取り扱いはじめたばかりで、リスナーは「韻を踏む」ということすら知らない状況。その中で嵐はラップの入った曲でデビューした。こうして積極的に新しいカルチャーを持ってくる試みをしていたのは、嵐が時代の最先端にいたという証拠ですよね。 矢野:嵐の活動は必ずしも音楽が中心ではありません。だからこそ、お茶の間と海の向こうの音楽を繋ぐ存在たりえます。それが、ある時にはヒップホップになり、ある時にはEDMになる。嵐が嵐として日本で活躍することで、海外のトレンドが自然と日本のマーケットに注入され、それが国内で独自の形になって進化を遂げる。音楽性は時代ごとに異なりますが、その姿勢はデビューから現在まで一貫していますよね。今後、お茶の間のような場所が維持されるかどうかは難しい問題ではありますが。

矢野「ジャニーズ的な伝統をヒップホップ流のサンプリングのかたちで示した」

ーー先ほど二人とも「初期は今と比べて音楽性が異なる」と言ってました。初期の作品で気になる曲はありますか? 柴:まず「台風ジェネレーション−Typhoon Generation−」です。僕は、この曲を聴くとケツメイシを思い起こすんですよ。J-POP界におけるケツメイシの功績というのは大きくて、それまで基本的にはラップ=洋物文化だったのが、ケツメイシはそれをJ-POPとして咀嚼するきっかけになった存在なんです。この「台風ジェネレーション−Typhoon Generation−」は、ヒップホップが歌謡曲化した流れを上手く汲んだ曲だと思います。 矢野:たしかに“桜舞い散る”ノリですね(笑)。ケツメイシはレゲエ出身のグループですが、RIP SLYMEやKICK THE CAN CREWに続いて、見事にラップをポップスとして提示しました。しかしこの曲、サックスが入ったりして、微妙にSMAP的なソウル路線を残しているのが興味深い。しかも、イントロはどことなく宇多田ヒカルの「Automatic」のようでもあります。 柴:同じくシンセのサインウェーブが特徴的ですもんね。 矢野:僕は「a Day in Our Life」が重要だと思いますね。スケボーキングのSHUNとSHUYAが作詞作曲を手がけた曲ですが、少年隊の「ABC」をサンプリングして作っています。ジャニーズは「組織をいかに再生産するか」ということをずっとやってきていて、Jr.を先輩の後ろで踊らせたり、コンサートで先輩の曲をカバーさせたりしていますよね。したがってこの曲は、そのようなジャニーズ的な伝統をヒップホップ流のサンプリングのかたちで示したのだと言えます。先人をリスペクトするとともに、サンプリングで現代的にアレンジしたわけですね。ジャニーズ史的にもヒップホップ史的にも、両方の理にかなった曲です。 柴:スケボーキングは前年に小田和正の「ラブストーリーは突然に」をサンプリングした「TOKIO LV」がヒットしているし、彼らの仕事としてもつながっていますよね。 矢野:当時、J-POPのアーティストがここまで全編ラップで通した曲は珍しいんじゃないかな。個人的にはJ-POPの磁場というものがあると思っていて、ほかがどんなに尖ったラップでも、サビになるとメロディ重視の歌モノになってしまうという傾向は強いんですよ。だけどこの曲は、シングルでありながら全編ラップで通してくれた。そこが良い。 柴:いわゆるJ-POPの曲にラップを取り入れるときには、ラップのパートと歌のパートが交互に出てくる形をとらざるを得なかった。けれど「a Day in Our Life」ではあえてサビで両者を重ね合わせたんですね。歌とラップの同時進行というのは革新的ですよ。映画『木更津キャッツアイ』の主題歌としても流行ってグループの名を広めましたし、ゼロ年代の嵐の象徴といえる曲だと思います。 矢野:今考えると、少年隊の80年代後半のサウンドをサンプリングしたこと自体、画期的なことかもしれませんね。当時、ヒップホップの参照元は70年代ファンクやレア・グルーヴを、という暗黙のルールのようなものがあった。スマップも基本的にはそういうDJ文化のマナーを意識していたはずです。でもこの曲は、NGとされていたことをサラリとやってしまった。この感覚は、tofubeatsなど現在の若いクリエイターにも見出すことができます。 柴:たしかにゼロ年代以降はJ-POPをアーカイブとして取り扱うことがアリになったと思います。以前はサンプリングするとしたら外資系CD店に置いてあるような海外のマイナーなネタ元を使うことが多かったけど、その流れが変わった。スケボーキングの『TOKYO LV』や、山下達郎をサンプリングしたKICK THE CAN CREWの『クリスマス・イブRap』がリリースされたのが01年のこと。『a Day in Our Life』は02年のリリースで、ちょうど「J-POPを再解釈してもいいんだ」という流れができはじめた時ですよね。

柴「吉岡たくという人が、嵐を導いたキーパーソンのひとりな気がする」

ーー嵐メンバーが出演する映画主題歌といえば「PIKA☆NCHI」もあります。この曲についてはどういった解釈をお持ちでしょうか? 柴:初期のなかでは、この曲だけ浮いているように感じます。ここまでミクスチャーロックの曲ってないんですよ。ラップメタルという意味ではリンプ・ビズキットあたりも思わせる。ブラックミュージックで始まった嵐にロックが浸食している。実にゼロ年代の中盤っぽい曲ですが、この流れはその後に続かなかった。 矢野:そうですよね。音楽的にはKAT-TUNに歌って欲しい気もする。ジャニーズのグループには必ず、最初に決めた路線から次の一手を探りだすタイミングがある。たとえばテイチクの関ジャニ∞は演歌路線から始まり、その後、ロックが多くなった。V6もユーロビートを手放す時期があった。この頃の嵐も、同じように次の一手を探っていたのかもしれませんね。 ーーそして、00年代の後半へと時代は進んでいきます。 柴:もう断トツで良いのが「COOL&SOUL」(アルバム『ARASHIC』収録)ですよ! クリーン・バンディットみたいなストリングスのサンプリングが超カッコイイ。「嵐isクール」「嵐isソウル」という姿勢がハッキリと表現されている。それまでの「ガムシャラさ」や「青春感」からの巻き返し的な、嵐はこれで行くんだという再出発点といえる曲だと思います。 矢野:「いつ大人になるか」とういのは、どのグループも抱える問題ですよね。どう乗り越えるかはそれぞれ違う。今だとHey! Say! JUMPやKis-My-Ft2が、どのように大人らしさを打ち出していくかを考えている時期かもしれません。音楽的に言うと、嵐は『ARASHIC』辺りがひとつの分岐点ということでしょうか。 柴:そうだと思います。あとちょっとした仕掛けもあって、「COOL&SOUL」の櫻井くんのラップに「4つ前のアルバムに話は遡るんだけどさ」という詞があるんですが、調べてみるとセカンドアルバム『HERE WE GO! 』のオープニング曲「Theme of ARASHI」に遡る、という意味なんですよね。そこで使われていた「太陽光」だったり「近づくスロー」という言葉を、約3年経った「COOL&SOUL」でも使っている。 矢野:なるほど。ヒップホップ的な遊び方ですね。自己言及しながら、自ら連続性を見せていく。 柴:「COOL & SOUL」から「Theme of ARASHI」に遡るというのは、つまりこの間をなかったことにしているっていうことでもあるかもしれない。ここで「幕開け第二章」だと言っているわけだし、俺らの自己紹介ソングはこの2つだと。 矢野:ヒップホップというのは、自分たちで歴史を作っていかないといけないジャンルです。だとすれば、この歌詞にも「自ら歴史を紡いで現在に繋げよう」という意思があってもおかしくありませんね。一方で、「上手く歌えるようになった!」というメッセージも感じます。初期の嵐って、いくらラップをやっていると言っても、全体的にはシンプルな楽曲構造だった。それが、ある時期からリズムに手を加えるようになって、ブラックミュージックのエグい部分を積極的に取り入れるようになりましたよね。『ARASHIC』の少しあとくらいかな。そういう実験的なステップに進んでも、嵐は歌えるグループだから、歌の上手さが際立ってくるんです。あと、「きっと大丈夫」は名曲! 柴:08年の『Dream "A" live』にも良い曲が多いんですよね。なかでも「Step and Go」は「COOL & SOUL」の直系、ブラックコンテンポラリーとダンスクラシックをベースにJ-POPへアレンジした曲です。僕はこの曲のアレンジを担当した吉岡たくという人が、嵐を導いたキーパーソンのひとりな気がする。この時期から彼やTakuya Haradaといったその後の嵐のヒットを支える作曲家と、スウェーデンチームが入ってくるんですよ。ジャニーズにはスウェーデンに投資していて、00年代中盤から関係が密になっているんですよね。単なる取引相手でなく人的なつながりが相当できたことがフィードバックされ始めたのも、このころだと思う。 矢野:僕は『Dream "A" live』の中だと「Flashback」が良かったですね。こういうゆっくりしたテンポでちゃんと歌を聴かせられるのは大事。あと「Life goes on」もわりと音数の少ないシンプルな曲ですが、ヴォーカルとのバランスが良い。渋いです。これらの曲は、ビートはシンプルでありながら、歌唱力で変化をつける作りになっています。僕らリスナーは、そこから彼らの歌の上手さやえぐみを感じる。だから、こういう曲を聴くと「歌が上手くなったね」と嬉しくなります(笑)。このアルバムは、全体を通して、そういった嵐の技量を感じさせる曲が多いですよね。 柴:この後にベストをリリースするから、『Dream "A" live』は嵐のひとつの到達点でもありますよね。そして『All the BEST! 1999-2009』がリリースされて、年間1位で天下をとった。 矢野:たとえば宇多田ヒカルが出てきた時に、みんな彼女の節回しに驚きました。でも、カラオケで歌いまくった若い世代には普通にできちゃうことです。嵐も、先代のSMAPとは違ってたと言っては悪いですが、そういう歌い方が普通にできる。それはダンスも同じで、大野くんは全体のビート感をキープしたままわざとハズして踊って、そのうえで歌も歌える。こういうパフォーマンスを見ると、嵐は次世代のグループとしてある種の頂点に行き着いた感があります。

矢野「櫻井くんのヒップホップ魂は日本語ラップシーンの興隆に支えられている」

ーーほかに気になる曲はありますか? 矢野:その『Dream "A" live』の限定版に収録されている、櫻井くんのソロ曲「Hip Pop Boogie」が最高ですね。歌詞が本当に素晴らしくて、マジで泣けます。「大卒のアイドルがタイトルを奪い取る」「温室の雑草がマイク持つRAP SONG」とあるのですが、官僚の父を持ち慶応義塾大学を卒業した櫻井くん自身がヒップホップをどう向き合っているかを表明しているようです。さっきも言ったとおり、彼らのデビューした99年はヒップホップがかなり盛り上がっている時代で、音楽に関心を持っている10代なら当然アンテナに引っかかっていた。当時の櫻井くんもきっとそうでしょう。そうした時代にデビューするとなったら、ヒップホップが好きであればあるほど、中途半端にはやりたなくないはずです。とは言え、「アイドルとしてラップをする」ことは避けられない――そうした葛藤の時期を経て、彼なりの答えとなったのがこの歌詞だと思います。俺はアイドルとして堂々とラップするのだ、と。「温室の雑草」は見事なフレーズです。「HIP HOP」ではなく「HIP POP」。櫻井くんなりのヒップホップの引き受けかたですよね。これは後続に勇気を与えますよ。 柴:なるほどね。 矢野:さらに言えば、櫻井くんのラップの特徴って、ラップの発声と歌の発声の間をとっていることなんです。ラップって、喉を絞ってキャラクターを作るように発声することが多いのですが、櫻井くんの場合、ラップをした直後でも歌に入らなきゃいけないので、喉を絞りきらない。常に半開きの状態にしておくんです。対照的なのは、同じくラップをしている元KAT-TUNの田中聖くんですよね。彼はアンダーグラウンドのラッパーにアイデンティファイしているのか、歌とラップを両立させるような歌い方はあまりしていませんでした。「Make U Wet」での発声の仕方が顕著ですね。アイドルとしてラップをする櫻井くんと、アイドルから逸脱するくらい自我の強い田中くん。両者の考えの違いは、発声の仕方にも表れているんです。もちろん僕としては、どちらもかっこよければオーケーです。 柴:「大卒のアイドルがタイトルを奪い取る」……考えれば考えるほどすごい歌詞ですよね。実はこれ、最初に出てきたものではなくて「COOL & SOUL」にも「アイドル タイトル奪い取る」というリリックがあります。それと「Theme of ARASHI」に共通する「太陽光」という詞もそうだけど、過去から引用するキーワードには、彼の表現したいことが詰まっているんでしょう。 矢野:もちろん、櫻井くんの持っているヒップホップ魂が日本語ラップシーンの隆盛に支えられていることは間違いありません。同時代には、Dragon Ashやスケボーキング、m-floやZEEBRAなどがいました。櫻井くん自身は、Shing02が好きだったとも言っています。ただ重要なのは、そうした中で自分がどの道を選ぶかです。オリジナリティを築き上げるにあたりどういうスタイルを選択するかが問われるんです。それは、メジャー/アングラに限りません。櫻井くんは、ボーカルの取り方も歌詞や曲作りの選択も、全てアンダーグラウンドとオーバーグラウンドのあいだをとってきた。その櫻井くんの個性を象徴している曲が「Hip Pop Boogie」だと思います。歌詞・発声・トラックなどすべてがメッセージを持っているようです。(続きは書籍で) (構成=北濱信哉)
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リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

■書籍情報 『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』 リアルサウンド編集部・篇 価格:¥ 1,500(+税) 予約はこちらから 内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。

KOHH、5lack、C.O.S.A.……次代を担う若手ラッパーを音楽ライター2氏がレコメンド

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KOHH『梔子』

【リアルサウンドより】  いま、新たな才能を持った若手ラッパーが続々と現れている。これまでにはなかった新鮮なフロウをあみ出したものや、前世代の伝説的ラッパーのスタイルをさらに進化させたものなど、その方向性は様々だ。そこで今回、日本語ラップ・ヒップホップシーンの最前線を取材し続けているライターの二木信氏と中矢俊一郎氏に、次代を担う若手ラッパーをレコメンドしてもらった。

KOHH

[English subtitles] KOHH - 貧乏なんて気にしない (I don't mind if I'm struggling) Official Video

「いま、若手の中で一番勢いのあるラッパーといえば、間違いなくKOHHでしょう。東京・王子の団地で育った母子家庭の不良というバックグラウンドは、先行世代のANARCHYなどとも共通していますが、彼の場合、それだけをウリにするのではなく、韻律の快楽原則に則って簡単な言葉でラップしているのが面白い。たとえば、『FUCK SWAG』(2014年)という曲の『またダッセー奴らがダッセー奴らとダッセー服着てカッケーモノでもダッセーモノに見せる/カッケー奴らはカッケー奴らとカッケーことしてダッセーモノでもカッケーモノに見せる』というラインなんかがそうですね。あるいは、『貧乏なんて気にしない』(14年)や『ビッチのカバンは重い』(15年)という曲などは、子どもにしばらく聴かせたら、意味もわからずにフックを歌い出す可能性もあるんじゃないかと(笑)。それくらい、わかりやすく、なおかつ発声したくなる言葉で表現しているのですが、そういうアプローチは実は簡単なように見えて、これまでの日本語ラップでなかなかなし得なかったことだと思います」(中矢俊一郎氏)

5lack

-HNGRI KILLIN!!- 5lack/Beats by KILLER-BONG

「ソロのほかPSGやSICK TEAMというユニットでも活動する5lackも、まだ20代なので改めて紹介したいところ。彼が頭角を現したのは、『My Space』『Whalabout?』(ともに2009年)の頃ですよね。当時、脱臼したようなビートの上で、東京という都市で生活する若者=自身の日常を切り取りながら『適当にいけよ』とユルく歌う彼の音楽は、日本語ラップのヘッズのみならず、ヒップホップを敬遠していたロック・リスナーや、就職活動で劣等感に苛まれている大学生、営業ノルマに追い詰められる若いサラリーマンなんかにも響いたのだと思います。ただ、5lackは、他ジャンルの要素に頼ることなく、あくまでラップとビートというラップ・ミュージックのフォーマットに沿って新奇かつポップなグルーヴを生み出した。その後、ハイペースでリリースを重ねる中で、だんだんモードが変化したようにも見えますが、本人的には13年の暮れに福岡に移住してからもその追求を続けているのはではないでしょうか。実際、新作『夢から覚め。』では、ミゴスとかエイサップ・ロッキーなど近年のUSヒップホップでよく聴かれる3連でラップする手法を取り入れたりしているのですが、さすがに巧い。先日、取材したところ、『(3連のラップを)真似するほかの日本人ラッパーはみんなヘタクソだなと(笑)。(中略)そういう人たちの仕事を奪っちゃうかも。俺、絶対にラップが巧くなってるんですよ』(参考:サイゾー2015年4月号より)と言っていました」(中矢俊一郎氏)

C.O.S.A.

「C.O.S.A.は愛知県知立(ちりゅう)市出身のラッパーで、最近ファースト・アルバム『Chiryu-Yonkers』を出しました。THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOと、2004年に亡くなったTOKONA-Xの才能を合わせ持つような、力強い存在感を放っています。ヒップホップの世界で“クラシック”とは歴史に残る名盤を意味しますが、彼の『Chiryu-Yonkers』はすでにそういうクラシックの風格さえ漂う作品です。10年後にも残る名盤でしょう。自主流通のため、まだあまり知られていませんが、ライヴも素晴らしく、これから確実に名前が広まっていきそうです。最近、特に愛聴していますね」(二木信氏)

MAKER

MAKER 1st album『Gravitic』[trailer]

「MAKERは岐阜県に拠点を置くラッパーで、2015年にMAB Logosというレーベルを立ち上げ、ファースト・アルバム『Gravitic』を出しました。初期の降神の志人や、元Mic Jack ProductionのSHUREN the FIREを彷彿とさせる、鬼気迫る鋭い言葉とフロウを持ったラッパーで、C.O.S.A.とともに群を抜く個性を持っていると思います。インターネットでディグすることが一般化する昨今にあって、珍しいほどインターネット上に情報が少ないのもミステリアスで興味が湧くところ。AK-69の曲にフィーチャリング・ラッパーとして参加したこともありハードコアな一面ものぞかせますが、実験的なスタイルが彼の本領ではないでしょうか。詩人としての才能も感じさせるラッパーです」(二木信氏)

RITTO

RITTO「1.2.1.2.」pro.by OLIVE OIL

「盛り上がっているといわれるローカル・シーンの一つが沖縄。とりわけ、本土の耳早い日本語ラップのヘッズからも関心を集めているラッパーがRITTOです。2012年に行われたフリースタイル・バトルの大会〈ULTIMATE MC BATTLE〉で沖縄代表に選ばれるほどラップのスキルは確かなもので、リリックでは、単なるリゾート地ではなく基地問題などを抱える沖縄という土地のリアルと向き合っています。2013年の1st『AKEBONO』ではまだ自身のスタイルを完全に確立できていない印象もありましたが、福岡在住のトラックメイカーであるOLIVE OILと共作した「1.2.1.2.」では彼のユニークなフロウが引き立っている。しかも、沖縄出身のミュージシャンがエキゾチシズムを演出するためにとかく取り入れがちな三線の音色とかウチナーグチとかに頼っていないのに、妙なトロピカル感もある。近年はLCCで沖縄に安く行くことができるからか、本土と沖縄の間で音楽家の行き来も活発化しているらしいので、そういった状況で大化けする可能性もあるラッパーだと思います」(中矢俊一郎氏)  ほかにも、GOMESSやFla$hBackS、SALUなど、さまざまなスタイルを持った若手ラッパーが続々と現れている現在のシーン。今回紹介したラッパーたちからさらに掘り下げていけば、また新たな才能にも出会えるはずだ。 (文=編集部)

嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場

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『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

【リアルサウンドより】  嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日に刊行される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。  今回は書籍の発売に先がけ、明治大学法学部にて嵐を題材にした講義を行っている関修氏、ジャニーズに詳しいライターの田幸和歌子氏、編集者の山本奈美江氏の3人が、“嵐のこれから”について語り合った特別鼎談を一部抜粋してお届けする。(編集部)

関「大野くんと蛭子さんが組んで、“大野さんぽ”的な番組を(笑)」

関:具体的にやってもらいたい番組でいうと、僕は相葉くんに“今週のニュース”みたいな番組を期待していて。池上(彰)さんが相葉くんにコメントを求めて、相葉くんがトンチンカンな返答をするっていう。それを周りの専門家に突っ込ませる、みたいな。櫻井くんと対照的な、トンチンカンなキャスター。嵐っていろんな意味で社会性があると思うんですよ。だから日常の社会生活を一緒に考えるような番組を嵐にやってもらうと面白いと思う。 田幸:世間的には櫻井さんがそういう仕事だとナンバーワンだと思うんですけど、櫻井さんの魅力って情けないところだと思うので、あんまりかっちりしたものじゃないものをやってほしいかな。 関:櫻井くんはどこか抜けてるところがいいんだよね。 山本:私も観てみたい番組があります。『Cの嵐』『Dの嵐』『Gの嵐』(日本テレビ系)を作っていたスタッフに、今もう一回、嵐の番組を作ってほしい。“チェスト櫻井”を見いだしたのもあそこですよね。ヘタレキャラができたのはあそこだから。 関:あと大野くんは芸術番組やったりとか。 田幸:大野さんのアート系の番組があっても、かっこ良く作りすぎる番組が多いんですよ。そうじゃなくて……。 関:大野さんと今売れっ子の蛭子(能収)さんが組んで“大野さんぽ”的な番組を! 一同:爆笑 田幸:絶対面白そう! やって欲しい(笑)。でも、松潤に関してはやっぱりドラマで輝いて欲しいな。あの圧倒的なオーラがあるのに、途中から変に私服のイジリとかでオチ担当になったのは、ちょっと違うと思っていて。 関:僕は松潤が司会の『おしゃれカンケイ』(日本テレビ)みたいな番組が見たいな。 山本:見てみたい。松潤が店を押さえてホストになるっていう。 関:ちょっと変な感じになるかもしれないけどね(笑)。松潤ってちょっととんがっているところがいいところなんで。 田幸:あと、それとは真逆になっちゃうけど、昔の田原俊彦がやっていた「NINJIN娘」みたいなのをやって欲しい。 一同:爆笑 山本:「マツジュンサンバ」とかやってましたもんね(笑)。 田幸:あとはやっぱり郷ひろみ路線をやって欲しいかな。コンサートでしかそういう路線は見せないですもんね。 山本:私この5年くらい、松潤のソロ曲にすごくハマっていて(笑)。それまで松潤のソロ曲って一番苦手だったんですけど、突然、自分の中で確変が起きて。多分、松潤が大人になることへの抵抗感がなくなったのかもしれないですけど、コンサートでのお色気路線も受け入れられるようになって。 田幸:それはかっこいいという感じでOKなんですか? それとも面白い感じで? 山本:はじめはちょっと面白い感じだったかもしれないです(笑)。それがだんだん「これが嵐の次の方向性なのかも?」とリアルに見えてきたので。 田幸:二宮さんの『ニノさん』(日本テレビ系)は面白いですよね。これまでってグループで番組をやるときって、櫻井さんなり誰かしらが進行して、二宮さんはガヤ芸だったんですけど、それが最近は積極的に回していますよね。進行上手だし。 山本:でも、彼にもやっぱりドラマで輝いてほしいかなあ。 関:そりゃあそうですよ。やっぱり彼は演技がいいから、映画とか舞台とかで頑張っていって欲しいですよね。 田幸:あと、二宮くんと岡田(准一)くんって仲いいじゃないですか。『フィルムフェスタ』で二宮・岡田・生田斗真くんの3人で喋ってるとき、ニノと岡田の掛け合いがすごく面白くって。正統派ドラマを二宮・岡田でやってほしいなあ。

山本「嵐は誰かのようになりたいと言ったことがない」

田幸:ジャニーズ内でのポジションでいうと、あまりにも嵐が絶対的なので、そろそろ下のグループが出てきてくれないと困りますね(笑)。私がすごく好きだった売れる前の嵐の空気感は、今のHey! Say! JUMPが持っていると言い続けているんですが、そろそろ彼らの時代が来るんじゃないかと思っています。 山本:同意です。あの時、嵐に味わっていたときめきを今、JUMPに感じている。 田幸:自分たちで考えてやっていることはまだまだしょぼかったりするんだけど、その手作り感が良いんですよね。あたたかくほのぼのしていて。 山本:メンバーも内弁慶ですよね。 田幸:そう、なんかぎゅっと固まっていてね。そこが温室グループって感じでかわいい。 山本:嵐が後輩に与えた影響でもっとも大きいのは、「仲良し売り」だと思います。彼ら以降の後輩グループはみんな仲良しをアピールしますよね。 田幸:ジャニーズだけでなく、他にも影響を与えていますよね。「オレがオレが」っていうタイプの人が出てこない。JUMPもそうですけど、圧倒的センターの山田くんでさえもソロを一回断ったりしていて。今はグループの意識が強いんですよね。 関:僕は嵐というのはジャニーズで異質なものだと思っているんですよ。本流ではないので、嵐を見習ってはいけないと思うんです。他のグループがお手本にするべきグループじゃないと思う。 田幸:ジャニーさんイズムじゃないですもんね。 関:嵐は成功したけれど、ジャニーズの中であれを普遍化するべきではないと思っていて。だから真似をするよりも、嵐と違うなにができるかを考えた方が良いんじゃないかな。 山本:嵐のメンバーの過去の発言を思い返してみると、「SMAPに憧れた」みたいなことを今まで言ったことがないと思うんです。TOKIOやV6の背中を追うっていう共通意識があったと思うし、彼らは一番になりたいとはずっと言っていたけれど、誰かのようになりたいとは言ったことがなかった。それがトップになれた理由だと思う。最近の若い子は“嵐になりたい”とか“キスマイになりたい”とか言うから、その時点で違うんじゃないかと思います。 関:ジャニーズは個人の魅力で売るというのがたしかなやり方だし、SMAPはそのやり方で成功したと思うんですけど、嵐は嵐がまずあって、というのがあるので。だから今の若手の人たちはSMAPのやり方を手本にするほうがいいのかなと。自分が個人として何をやりたいかということをちゃんとやるっていう。だから、嵐はどうして上手く行っているのか謎(笑)。 田幸:嵐がブレイクしたのは、やはりタイミングですかね。 山本:関さんも著書で書いていますけど、時代だと思います。 関:多くのアイドルがAKB48のように誰が一位で、という格付けを作っていく中で、嵐は同じように民主主義だけど、平等を貫いているでしょう。これまで誰もそのやり方をしなかったんだよね、どちらも私たちの日常の生活なのに。いつも競争だと疲れるじゃないですか。嵐はそれを拒否しているからこそ、求められたのかもしれない。 田幸:本来は誰が一番か、みたいなのが芸能界だったわけですよね。でもそんな中に、嵐がポコッと入ってきて。そして嵐の人気によって、いつの間にかそっちがメインになってきているっていう。 山本:でも、櫻井くんなんかは、もうその状況に気付いて危機感を持っていますよね。去年くらいのインタビューを読むと、「僕は『変わりたい』とはっきり思っている」「メンバーの誰かが『ガラッと路線を変えて、こうやりたい!』って言い出して、それにほかのメンバーも賛同するなら、全面的に5人で舵を切ります」(『日経エンタテインメント!/13年7月号』より)と言っていて。櫻井くんは要所でグループが今、何を考えているのかをちゃんと話してくれるんです。そこが信用できるというか、まだ付いていこうと思えるところですね。 関:彼は優秀なスポークスマンですよ。メンバーが何を思っているのかをまとめて発言するという彼の賢さね。 山本:それが嵐がただの仲良しグループじゃないところだと思います。ラップ詞もちゃんと書いているから、昔の櫻井くんの詞を読むと泣きそうになります。「この時代はこんなこと言ってたんだ」っていうのが、後からつながっていく。 関:若手で嵐みたいに、新しいスタイルを模索しているグループっているかな。 山本:Sexy Zoneが本当は5人だったらね。ジャニーズの超王道で見応えがあって良かったんですけど。でも逆に3人になったからこそチャンスがあるのかもしれない。それは切ないですよ、もちろん。グループのファンだった人たちはどんどん離れていってるし。やはりグループ内のメンバーの関係性にファンが付くから、そこの物語が途切れてしまうと心が離れてしまう。だけど、新しいチャレンジではあると思う。 田幸:バレーボールでのデビューはなくなったものの、今年新しいグループが誕生するので、そこにも注目したいですね。今まさにジャニーズJr.のメンバーで組んでいる最中だと思うのですが、目が離せないです。(続きは書籍で) (構成=岡野里衣子)
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リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

■書籍情報 『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』 リアルサウンド編集部・篇 価格:¥ 1,500(+税) 予約はこちらから 内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。

秦 基博から清 竜人まで……「ミュージシャンも惚れる美声」ガイド

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秦 基博『evergreen』(アリオラジャパン)

【リアルサウンドより】  作家にしろアーティストにしろスポーツ選手にしろ、第一線で活躍する人々には、もれなくある種の“才能”が備わっていると思う。ミュージシャンを例にとれば、それはソンングライティング能力かもしれないし、演奏力かもしれないし、人を惹きつけるスター性かもしれない。中でも美声はその最たるもの。そこで音楽ファンのみならず、同業者からもアツい支持を受ける “美声of美声”な男性シンガーたちを集めてみた。

秦 基博

 昨年、映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌としてリリースした『ひまわりの約束』がロングヒットを記録し、お茶の間にも広く浸透した感のある秦 基博。デビュー時のキャッチコピーは“鋼と硝子でできた声”とのことだが、伸びやかな歌声の中の絶妙な“かすれ”具合が魅力。JUJUをして「見た目はテディベアなのに歌うとセクシー。日本一ズルい声の持ち主」と言わしめたほど。ライブや音楽番組等では槇原敬之らほかのミュージシャンとのコラボもたびたび披露しており、大御所からの信頼も極めて厚い。

秦 基博 / ひまわりの約束(Short Ver.)

さかいゆう

 続いても秦と同じくオフィスオーガスタから。20代のころ単身アメリカに渡って身につけたというグルーヴィーなピアノ演奏や独特のポップセンスで人気のさかいゆうは、その歌声も素晴らしく、多くの業界人の熱視線が注がれているシンガーのひとり。Rhymesterの宇多丸にいたっては「早い話が、我らの時代の天才、ということです」と大絶賛。音楽プロデューサーの亀田誠治は「エルトン・ジョンみたいだ!」と評したそう。しばしば“珍獣”扱いされるルックスもいじりがいがありそうで、今後さらなるブレイクが期待される。

さかいゆう『薔薇とローズ』(Short Ver.)

ハナレグミ

 肩ひじ張らないユルさと温かみのある声で、老若男女問わず人気を集めるハナレグミ。一昨年にリリースしたカバーアルバム『だれそかれそ』では、その天性の歌声を、名曲のカバーというかたちでいかんなく発揮。どんな楽曲を歌っても自分の色に染めてしまう力はさすがだった。もはや「この声、世界遺産。」という他を圧倒するキャッチコピーも伊達ではない。スカパラやEGO-WRAPPIN'の中納良恵、SUPER BUTTER DOG時代からの盟友・レキシらからのコラボオファーに事欠かないことからも、アーティスト陣からのリスペクトの様子がうかがえる。

ハナレグミ - オリビアを聴きながら with 東京スカパラダイスオーケストラ

清 竜人

 異色アイドルグループ「清 竜人25」のプロデューサー兼メンバーとして、ある種イロモノぶりに拍車をかけている清 竜人。そんな彼だが、デビュー当初は真逆のアコースティックかつ歌モノ路線をまい進していた。切なく、時に悲痛なほどのハイトーンボイスが印象的な歌い手で、その声に魅了されたという音楽関係者は多い。特に椎名林檎は“人間国宝”とまで評しているほど。今ではその型破りなパフォーマンスが話題が集まりがちだが、自身のパートではきちんといい声ぶりをアピール。再び歌モノ界に戻ってくる日を心待ちにしているファンは多いはず。

清 竜人『痛いよ』

 声の良さは体格や声帯の使い方に依存する、天性のもの。加えて、いい声というのは人にリラックス効果を与えるものとされ、印象にも残りやすいのだそう。ここに挙げたシンガーたちも決して頻繁にテレビで見かける顔ぶれではないが、その分、ラジオや有線などではパワープレイを獲得したりと、強さを発揮してきた。聴くメディアでの波及効果が高いのも美声シンガーならでは。さらには声に敏感な同業者たちが太鼓判を押したとなれば、その力は証明されたようなものである。聴く者の心をつかむ美声には、ミュージシャンであっても抗えない魅力があるということだろうか。 (文=板橋不死子)

三戸なつめ、劇画版MV公開 カワイイよりオモロイを貫く"歌手デビュー"異例の戦略とは

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【リアルサウンドより】  三戸なつめが4月8日にリリースするデビューシングル『前髪切りすぎた』より、表題曲の新たなMVを公開した。三戸なつめは『mina』『mer』『SEDA』『Zipper』などの、いわゆる青文字系ファッション雑誌で活躍している人気読者モデルで、前髪を短く切り揃えた独自のヘアースタイルがトレードマーク。『前髪切りすぎた』は中田ヤスタカ(CAPSULE)プロデュースのもと、きゃりーぱみゅぱみゅらを擁するASOBISYSTEMからリリースされるとあって、現在大きな注目を集めている。  これまで同曲のMVは複数本公開されており、それぞれ気鋭の映像作家が手がけてきた。狐の面を被った白装束の集団の中、三戸なつめが赤装束を身にまといダルマのかぶり物をして密祭のようなものを繰り広げる『前髪切りすぎた-ダルマ篇-』は、異空間演出家のコタケマンが監督。VHSで撮影したようなローファイな映像とアシッドなエフェクトが視覚を狂わせる『前髪切りすぎた-幻聴篇-』は、スタイリストとして活躍しながらアーティスト活動を続けるめりんぬが、個性的なルックスの男女二人組が教育番組風に体操などを繰り広げ、大胆に白菜をフィーチャーした『前髪切りすぎた-白菜篇-』は、大阪のアーティスト・神田旭莉がそれぞれ手がけている。子ども番組の昔話を彷彿とさせるクレイアニメで、三戸のおでこの活躍を描いた『前髪切りすぎた-おでこちゃん篇-』は、小田文子と高野真(まこねはん)によるアニメーションプロダクション・moogaboogaによる作品だ。  今回、公開された『前髪切りすぎた-落書き篇-』は、赤城乳業『BLACK』『ガツン、とみかん』『ドルチェTime』、キンチョウ『サンポール』、サノヤス造船『造船番長シリーズ』などのCMを手がけ、カンヌ国際広告祭やACC賞、ギャラクシー賞など、 国内外の賞を受賞してきたアートディレクター・CMプランナーの藤井亮氏が制作したもので、白壁の部屋で白のタートルネックを着た三戸なつめが歌う姿に、上から漫画風の絵を描きこんだ作品に仕上がっている。藤井亮氏によると、「やっぱりみんな、三戸ちゃんの顔が観たいだろうな~と思って、本人の顔がずーっと出っぱなしのMVにしました。撮影したのは最初から最後まで三戸ちゃんの顔のみ! そこに、ほんのちょっとだけ、ひどい絵を書き足してますが……。今回は同じ曲で複数本あるので、他のMVを観た人も飽きずに観れるように、マンガ仕立てに」と今作の意図について明かしている。

三戸なつめ 『前髪切りすぎた-落書き篇-』

 注目したいのは、やはりシュールかつナンセンスな作風となったその漫画のストーリーだ。ある日、ちょっと内気な高校2年生、三戸なつめが通学中に憧れの先輩と出会い、一緒に登校するも、途中三人組の不良にからまれて前髪を短く切られてしまう。すると三戸のおでこが覚醒し、エイリアンの触手のような口で不良を退治。三戸はそのまま町の人々を次々と襲い続けるが、博士と仲間たち(伝説の猫殺し三戸八段、大横綱三戸の富士、三戸ライダー3号など)がやってきて、それを阻止しようとする。が、三戸はなんと巨大化し、一瞬で博士たちを殺すと、今度は世界中で暴れ回り、ついには地球が三戸に征服されてしまう。登場人物は全員三戸で、歌い続ける三戸の顔の上で勝手にストーリーが展開されていくという作品だ。  これまでの作品に負けずと振り切った内容となった今作だが、一連の作品に共通しているのは三戸を素材として周囲のクリエイターが徹底的に遊んでいるということだろう。その方向性は『つけまつける』で鮮烈なデビューを果たしたきゃりーぱみゅぱみゅにも通じるだろうが、きゃりーの世界観がユーモラスでありながらもメルヘンチックでファッショナブルだったのに対し、三戸の作品はよりお笑い色の強い作品に仕上がっているのが興味深いところだ。  ファッション誌『mer』5月号に掲載された中田ヤスタカ(CAPSULE)との対談で、三戸は「何よりも楽しくやっていけたらいいな。お茶の間がクスっと笑うようなアーティストになっていきたいです」と語っていることから、こうした方向性は本人にとっても望むところなのだろう。三戸なつめの“お笑い路線”は今後、中田ヤスタカを軸としたクリエイターチームによってどんな作品を生み出すのか。同曲の新MVはほかにも公開されるとのことなので、まずはその仕上がりを待ちたい。 (文=松下博夫)
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三戸なつめ『前髪切りすぎた』(SMAR)

■リリース情報 『前髪切りすぎた』 発売:2015年4月8日 価格:¥1,404(税込) 〈収録曲〉 1.前髪切りすぎた 2.コロニー 3.きゃべつのやつの歌 4.前髪切りすぎた -Instrumental - 5.コロニー -Instrumental - 6.きゃべつのやつのうた -Instrumental - ■『前髪切りすぎた』リリース記念イベント 4月7日(火) 19:00~ ヴィレッジヴァンガード下北沢店(イベントスペース) 【内容】トークショー&CD購入者対象:握手会 4月8日(水) 19:30~ タワーレコード渋谷店(B1F「CUTUP STUDIO」) 【内容】ミニライブ&トークショー 4月11日(土) 14:00~ ブルービートヴィレッジヴァンガード新宿ルミネエスト店 【内容】CD購入者対象:握手&特典お渡し会 4月11日(土) 18:00~ タワーレコード新宿店 【内容】ミニライブ&握手会 4月12日(日) 13:00~ ヴィレッジヴァンガード イオンモールナゴヤドーム前店 【内容】ミニライブ&CD購入者対象:握手会 4月12日(日) 17:00~ 名古屋パルコ西館1 階イベントスペース(タワーレコード名古屋パルコ店) 【内容】ミニライブ&握手会 4月19日(日) 15:00~ タワーレコード梅田NU 茶屋町店 【内容】ミニライブ&握手会 4月19日(日) 18:30~ ヴィレッジヴァンガード なんばパークス店 【内容】CD購入者対象:握手&特典お渡し会 4月26日(日) ヴィレッジヴァンガード イオンモール京都五条店 ■オフィシャルHP:http://mito.asobisystem.com ■Twiteer:https://twitter.com/mitonatsume ■Insterglam:http://instagram.com/mito_natsume ■Facebook: