乃木坂46が急速に支持を拡大した背景 ラジオ・モデル活動など"外向き施策”を読む

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乃木坂46『命は美しい(初回生産限定盤B)』

【リアルサウンドより】  乃木坂46は、5月2日にパシフィコ横浜で行われた11thシングル全国握手会にて、『真夏の全国ツアー2015』の開催を発表した。今年行われるこのツアーの特徴は、仙台、名古屋、広島、福岡、大阪、東京の各会場すべてで、それぞれ2日間の公演が予定されていることだ。特にファイナルとなる東京公演は、明治神宮野球場で2日連続の開催となる。昨年8月30日に3万人を動員したこの大会場で今年2回のライブが行なわれることは、乃木坂46が昨年からの勢いをさらに増して、ファン層を広げてきたことのあらわれといえる。  ファンの増大は、この全国ツアーが発表された2日の全国握手会にもうかがえた。握手会に先立って上演されるミニライブの観覧エリアは昨年、一昨年にも増して広くとられ、年を追って来場者層が拡大しているように見受けられる。全国握手会イベントは、シングルCDに封入の参加券のみで乃木坂46のライブを観ることができる貴重な場だが、そうした比較的気軽に参加可能な恒例イベントであるだけに、その規模の推移はグループの勢いの上下を推し量るものにもなる。乃木坂46は引き続き、右肩上がりの勢いを保っているようだ。  こうした乃木坂46の飛躍について、以前その独自路線の確立の点から考察したが、この記事ではそうした独自路線の近々の動向を具体的にいくつか確認しつつ、既存ファンの外に支持層を拡大するためのグループの動きを追ってみたい。(参考:乃木坂46が迎えた飛躍の時 「AKB48の公式ライバル」はなぜ独自路線に成功したか?)  今年の乃木坂46の外向きの動きとして目立つのは、ファッション雑誌に次々と専属モデルを送り込んでいることだろう。あらためて確認すれば、齋藤飛鳥が『CUTiE』専属になったのをはじめとして、橋本奈々未と松村沙友理が『CanCam』に、そして西野七瀬が『non-no』にそれぞれ起用されることになった一連の流れは、最近の乃木坂46に関わるトピックの中でも大きなものだった。必ずしも乃木坂46やアイドルのファンではない層に向けてのアピールとして、ファッション誌への露出はこのグループのひとつの特色となっていきそうだ。もちろん、一気にファッション誌に攻勢をかけることにはリスクも伴う。人気グループというだけで媒体の顔として重用されているとみなされれば、グループも雑誌自体もともに支持を失いかねない。近年、たとえばE-girlsの藤井萩花、藤井夏恋姉妹の『JJ』専属、佐藤晴美の『Ray』専属、楓の『CanCam』専属など、雑誌のカラーと人選をすり合わせつつ、長期間をかけて専属モデルとしてのイメージをなじませていく例がみられるが、そうしたプロセスは乃木坂46の場合、白石麻衣が該当するだろう。白石を中心にして、スタイリッシュなグループのイメージを導くことができたために、今年の専属モデルラッシュに踏み切ることができたともいえそうだ。  その乃木坂46のスタイリッシュなイメージを補強した要因のひとつに、白石が2012年からモデルを務める『LARME』 と同じ徳間書店から刊行されている『OVERTURE』の存在がある。「アイドル×ファッション」をコンセプトにした同誌は昨年10月刊行の創刊号で乃木坂46を大きくフィーチャーして話題となったが、今年3月刊行の第2号でも再び乃木坂46を中心に据えた構成をとっている。創刊号では『LARME』以降乃木坂46のファッション面をリードしてきた白石が表紙だったが、第2号ではこの一年でグループのアイコンに成長し、『non-no』専属モデルになった西野が表紙を務め、橋渡しが行なわれた。さらに『OVERTURE』は季刊として定期刊行されることも発表され、乃木坂46を大々的に起用し続ける同誌が、「アイドル×ファッション」というコンセプトで成功を収めたこともうかがわせた。この成功はグループアイドルシーンが充実し、アイドルが文化として広く受容されるようになったことのあらわれでもある。同誌によって、そのトップランナーとして乃木坂46がイメージ付けられたことは、グループのユニークさを築く上でも重要だった。ファッション誌という、アイドル文化に馴染んだ人々以外も多くアクセスするジャンルに、アイドルシーン代表としての位置を築きつつあることは、この半年余りの動向として特筆すべきことだろう。  その流れは4月14日放送の『NOGIBINGO!4』の企画でファッション雑誌への乃木坂46メンバー起用が次々決まったことや、かねてよりモデルを志向する川後陽菜が『Popteen』で専属モデルを目指して同誌モデルの前田希美と対決するといった直近の企画にまで波及している。ファッションを活路に世間に浸透する機運を作ったこのグループならではの動きだが、同時に企画性が強くなることはファン以外の層からの反発を招きやすくなることにもつながる。チャンスの機会が多いことそのものはプラスに違いない。やや企画色の強い直近のこれらの動きに際して、メンバーや運営がいかに真摯さをみせられるかが、受け入れられるかどうかのポイントになる。その舵取りの如何は今後を占うことになりそうだ。  いち早くファッション方面では独自の強みを見出し、ファン層の拡大に向けた外向きの施策を切り拓いた乃木坂46だが、この春からはまた異なるジャンルを開拓しようとする動きもみえる。4月からは新内眞衣、衛藤美彩、中元日芽香、橋本奈々未と、メンバーが相次いでラジオのパーソナリティやアシスタントとして起用されている。あるいは、音楽専門チャンネル「100%ヒッツ!スペースシャワーTVプラス」でマンスリーレギュラー番組になった『Tokyo Girls' Update』のMCを桜井玲香が務め、48系のグループが関わるイメージの薄い音楽専門チャンネルに地歩を固める第一歩を踏み出した。いずれもまだ始まったばかりの段階で、今後どのようにグループの武器にしていけるのかは未知数ではある。とはいえ、既存ファン以外の目に各メンバーが触れるための道筋を引き続き用意する姿勢が垣間見える。  乃木坂46はもともと、AKB48の企画に積極的に関わることよりも、独自の得意分野を模索することで現在の躍進を導いてきた。そうした成果が、今年の全国ツアーの開催規模拡大につながっていることを考えれば、見てきたような最近のグループの動きも納得の行くものといえる。この春には生駒里奈と松井玲奈の交換留学も解除になり、乃木坂46はさらに独自路線を疾走することになりそうだ。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

きのこ帝国・佐藤が明かす、音楽家としての” 根っこ”「誰かと出会いたい一心で音楽をやっている」

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【リアルサウンドより】  きのこ帝国が4月29日にメジャー1stシングル『桜が咲く前に』をリリースした。今回、ボーカル/ギターの佐藤千亜妃に行なったインタビューによると、叙情的で美しいメロディを持つ表題曲は、前シングル『東京』で描いた風景から10年前にさかのぼり、バンドの初心に帰るような気持ちで書かれた曲であるという。さらに佐藤は、バンドの「根っこの部分」と「変化してきた部分」を、自身の音楽観を交えて語ってくれた。

「『桜が咲く前に』みたいな曲を出すのは自分としては攻めの姿勢」

——「桜が咲く前に」はノスタルジックなミディアム・ナンバーで驚きました。一方でサウンドは、うなるギターにしてもきのこ帝国らしいです。この曲をメジャー・デビュー・シングルに選んだ理由は? 佐藤千亜妃(以下、佐藤):「選んだ」と言われると難しいんですけど、去年リリースした「東京」から10年前にさかのぼって、バンドが初心に帰る気持ちで書いた曲ですね。10年前に上京したときの気持ちと、今のレーベルを移籍する気持ちが不思議とリンクしました。 ——「桜が咲く前に」を書かれたのはいつ頃なんですか? 佐藤:今年の年明けで、去年の年末にあった曲の欠片をブラッシュアップしていきました。 ——それはメジャー・デビューが決まった頃でしょうか? 佐藤:メジャーの話は実はなんとなく以前からあったりして、1年ぐらい前から「どうしようか」と話し合いを始めました。「桜が咲く前に」を書いたときにはメジャー移籍は決定していましたね。 ——10年前に立ち返ってみたのは、メジャー・デビューというタイミングがあったからでしょうか? 佐藤:そういうのもありますし、自分が上京して10年で、このタイミングでこの曲を出しておくと表現的にも根っこの部分が表現できるかなと思って「今しかない」と思い、書きました。 ——「根っこの部分」というのはきのこ帝国の根っこの部分でしょうか? 佐藤:きのこ帝国というよりは、自分が音楽をやるうえで、どんな気持ちで上京したのかが純粋に残っている部分ですね。 ——「桜が咲く前に」のレコーディングでは、インディーとは違う意識で取り組んだ面もありました? 佐藤:もっとメジャーらしさを求められるかと思ってました。派手だったり、キャッチーだったり。むしろきのこ帝国らしい硬い曲で、今までの延長線上の中で出てきている音楽なので、長く残る曲になるといいなと。常に挑戦的なことをしていきたいし、「桜が咲く前に」みたいな曲を出すのは自分としては攻めの姿勢だと思ってます。 ——今までシューゲイザーやポストロック、あるいはオルタナティヴと言われてきたきのこ帝国ですが、そうした肩書きを一旦捨てる覚悟さえ感じました。 佐藤:最初からシューゲイザーだと思ってリリースしたことは一度もないんです。歌モノであり、景色や感情を表現するためのツールとして音楽を機能させているだけであって、シューゲイザーやオルタナという音楽ジャンルとしての目的を果たすために音楽をしているわけではないので、ピンとこないんです。何か琴線に触れるものがないといけないと思うんです。きのこ帝国はそういう音楽を作り続けていると思うので、ジャンルのことを言いたい人もわかるんですけど、勘違いしてほしくないのはきのこ帝国は「ジャンルにこだわっているグループではない」ということですね。 ——では今「きのこ帝国ってどんな音楽をしているグループですか」と聞かれてなんと答えていますか? 佐藤:うーん、出すたびに変わっちゃうので、自分たちから触れないことが多いです。「大学時代に組んだバンドです」って。自分ではJ-POP、J-ROCKって言われて差し支えないかなと思ってます。 ——佐藤さんの中でメインストリームのJ-POPとはなんですか? 佐藤:イメージだと、サザンオールスターズ、Mr.Children、エレファントカシマシ、ウルフルズ、JUDY AND MARY、川本真琴さん、あと広瀬香美さんとか。 ——佐藤さんが好きなJ-POPだと? 佐藤:宇多田ヒカルさん、鬼束ちひろさん、とかよく昔聴いていましたね。 ——そういうアーティストから影響は受けていますか? 佐藤:最近ライヴでご一緒させていただいたスピッツさんには、感じる部分がありました。ライヴの仕方とか、リリースしていく姿勢とか、立ち振る舞いとか。「きのこ帝国がこういうバンドになっていくといいんじゃないかな」と思いましたね。

「聴いた人の人生に残るようなアーティストがいないと音楽シーンは縮んでいく」

——昨日UK Project時代の全作品を聴き直しました。実は一番感じたのは佐藤さんのヴォーカリストとしての変化です。「渦になる」(2012年)の頃なら「桜が咲く前に」は歌えないと感じました。 佐藤:内面の変化はすごくあるし、歌に出てくると思いますね。「東京」を書いて以降は、より「楽曲至上主義」になりたいなと思ったので、その曲ごとにベストな歌い方を心がけています。今までは、ライヴハウスでの活動を念頭に入れて曲作りをしてたんです、ライヴから逆算して。でもCDになったとき、いい部分と悪い部分があったので、ライヴはライヴ、CDはCD、という分け方で制作に向かうようになってきた感じですね。 ——今のバンドがフェス向けに曲を作るという話はよく聞きますし、そういう意味ではメインストリームから離れる方法にも見えますが……。 佐藤:メインストリームの流れは、5年、10年すれば変わると思うし、きのこ帝国は「音楽はこうあるべきだ」という思想を変えないでやっていきたいなと思います。 ——その思想とはどういうものでしょうか? 佐藤:聴いた人の人生に残るようなアーティストがいないと音楽シーンは縮んでいくと思うんです。 ——「きのこ帝国は変わっちゃった」と思う人もいるかもしれませんよね。 佐藤:でもいつかまた出会えると思います。その人もいつか歩き出さないといけないし、その先で自分たちが待っていられたらな、と思います。「背中を押す」という傲慢なことを言うつもりはなくて、自分たちの歩幅で歩いていると離れてしまう人もいるかもしれないけど、また何かの巡り合わせで、ふっと聴いて「いい」と思える日が来るかもしれないじゃないですか。そのために偽らずにやっていきたいんです。自分たちの成長を無視して立ち止まることは不義理だと思ったんです、それはパフォーマンスになっちゃうから。音楽はパフォーマンスじゃないと自分は思っているので。 ——佐藤さんは、きのこ帝国としての誠実さを追求されてますね。 佐藤:誠実さだけがとりえというか、それ以外のことが器用にできる人たちじゃないので。だから「自分たちが成長することでいっぱいいっぱい」と言ったほうが正しいのかもしれません。誰かと出会いたいという一心で今はやっている感じです。 ——その「誰か」というのは新しいリスナーですか? 佐藤:昔好きだった人とか、昔の友達とか、親とか、そういうのでいいんです。そういう人たちに胸を張って聴かせられる曲を作りたいんです。社会とのつながりは音楽しかないと思うので、そこで自分という人間をどうやって認めてもらうか。「わかりあう」というのは不可能だと思うので、「わかちあう」ことが可能だったら嬉しいです。

「光の強さを知ってるからこそ闇が描ける」

——カップリングの「Donuts」はサウンドもオルタナ的で、楽曲のアウトロも3分以上の演奏です。ここで「メジャー・デビューしてもきのこ帝国の本質は変わっていない」と宣言されたようにも感じました。 佐藤:単純にきれいなものが並んでいても飽きるんで、ブッ飛んだのを入れたいなという意識はあります。 ——ここのアウトロはどう作ったんですか? 佐藤:スタジオでホワイトボードに「無限」って書いて「こんな感じでよろしく」って。無限じゃないんですけどね、実際は3分で(笑)。きのこ帝国は轟音で盛り上がるのは好きなんで、そこだけはライヴを意識した感じがあっても面白いかなって。 ——サウンドの方向性はメンバーと話し合われたりしますか? 佐藤:話し合いはしないですね。昔の方が私の意向が強くて、「渦になる」「eureka」(2013年)「ロンググッドバイ」(2013年)を出したあたりは、ワンマンな感じで作ってて。「フェイクワールドワンダーランド」(2014年)以降はいい曲を書けたという自信があったから、アレンジはみんなのプレイのニュアンスを活かして。今回も、デモを聴いた段階で雰囲気を読んでくれたので、それぞれプレイをブラッシュアップしてもらって、あまり私は口出しはしませんでした。初期はプレイが未熟だった面もありますし、自分の中でも音楽像が決まってたんで、フレーズとかも結構みんなに言ってましたね。特にドラムが大変だったと思います。リズムセクションにこだわりがあって、ドラムという楽器が大好きだったんで、「そのハイハットは邪魔だ」「ここでバスドラを入れてほしい」とか色々言ってたんです。 ——でもきのこ帝国はリズムセクションが巧いですね。赤坂BLITZ(2015年1月21日)のライヴを見ていて感じました。 佐藤:みんなのプレイが良くなって、引き出しが増えて、口出しすることが減りましたね。 ——カップリングの「スピカ」はとてもポップです。シングル1枚が現在のきのこ帝国の音楽のショーケースになっている気がしました。 佐藤:高校3年生、18歳ぐらいのときに書いた曲です。カップリングで何を入れようか悩んでて、「桜が咲く前に」は従来のサウンド面を踏襲しつつも一皮剥けてる感じがあるから、「ついでではない曲」を入れたいと思ったんです。私の中では、昔書いたすごく恥ずかしい曲ではあるんですけど、「桜が咲く前に」とリンクしてる部分があるし、今このタイミングで出さないとお蔵入りだという意識もあったので入れました。メンバーのゴリ押しもありました、「いい曲じゃん!」って。 ——佐藤さんにとって恥ずかしいポイントとはどこなのでしょうか? 佐藤:曲を書き出した頃の曲なんで、歌詞の表現にしろ、メロディーにしろ「ストレートでベタだなー」というのが恥ずかしいんですよ。ベタさが恥ずかしい。今はベタのその先を意識したいと思っていて、ベタだから頭に残るんじゃなくて、「なんだこのメロディー!?」と聴いているとベタに感じてくるメロディーを書きたいです。 ——「桜が咲く前に」にしろ「東京」にしろ、人の胸にすごく刺さる楽曲を佐藤さんは狙って作れている感じなのでしょうか? 佐藤:思い入れがありすぎて、いつの間にかそういう曲になっちゃうというのはあるんですけどね。 ——2007年に結成して、メジャー・デビューまで8年をかけた感慨はいかかがでしょう? 佐藤:すぐ結成10年が来ちゃうなと思いますね(笑)。でもイベントとかできたら面白いですよね、若いバンドをフックアップする企画とか。 ——今、ふだん佐藤さんが聴かれている音楽は昔と変わらない感じですか? 佐藤:中学ぐらいに聴いていたメジャーなものに戻ってきてます。高校、大学あたりは国内のインストを聴いたり、オルタナ、ポストロック、シューゲイザーと呼ばれるものを聴いたり、ライヴハウスに行ったりしてたけど。シガー・ロスがすごく好きで来日公演も行ってます。「渦になる」の「足首」はシガー・ロスを意識してみんなに注文してましたね。「渦になる」は音楽的趣味を盛り込んでました。 ——今はそこまで「趣味」を押し出していない感じですか? 佐藤:そうですね、誰かの音楽をトレースするより、自分たちの新しい音楽を切り開く方が楽しいです。 ——それはバンドのレベルが上がったり、佐藤さんのソングライティングが上がったからでしょうね。 佐藤:でもバンドの底力や、ソングライティングの力はやりだしてから終わるまで変わらないと思いますよ。きのこ帝国も闇の側面を語られることが多かったけど、光の強さを知ってるからこそ闇が描ける部分もあって、表裏一体の二面性だと思っていて。きのこ帝国の核の部分が最近見えてきただけだと思いますね。

「自分たちの心が震えるものを常に出したい」

——今後メジャーで自分たちのどういう側面が出ていくと思いますか? 佐藤:自分たちの心が震えるものを常に出したい。それがどういうものかは、メンバーで共通してるんですよ、不思議ですね。なぜかシンクロするんです。今後は結成10年を目標にやりたいなと思います。 ——若いメンバーのバンドなのに8年続いていることがまずすごいですね。 佐藤:ハングリーですから。田舎から出てきた身としては、一旗揚げないと帰れないという意識があるから、そこが違うところですね。 ——「一旗揚げたい」とは具体的にどういうことなのでしょう。 佐藤:たとえば美空ひばりさんって、歌い手として憧れの対象なんです。人生を感じるというか。そういう表現者になっていきたいなと思うし、それを多くの人に「いいよね」と言われたらすごく幸せなことじゃないですか。「自分は何者なんだ」と人それぞれ悩むと思うんですけど、自分が満たされる瞬間は、自分の作った音楽が「いい」と言われた瞬間しかないんで、「日本征服」みたいな感じですね。 ———美空ひばりのどこがそんなに好きですか? 佐藤:天才と言われて出てきて、それで終わらずに素晴らしい歌い手として後世まで聴かれたじゃないですか。あの人が何を考えて歌っていたかは全然わからないんですけど、歌う様に圧倒される感覚はあって、「世の中がこう求めてるからこう歌う」とか一切ないんじゃないかと思っていて。自分が歩んできた人生から言葉を紡いできたアーティストって貴重だし、尊ぶべきだと思います。 ——きのこ帝国から美空ひばりの話を聞くという展開が意外でした。佐藤さん自身から見た、ヴォーカリストとしての佐藤さんはどう見えるんですか? 「東京」から大きく変わったと思います。 佐藤:自分の声や歌が、心情を表現するにあたって、いい器になるように努力したいと思いますね。ただうまく歌うことが目標になったらダメだと思います。 (取材・文=宗像明将)

今年はGEMの年になるーーアイストカーニバルが予感させたこと

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GEM『Star Shine Story(CD+Blu-ray)』(iDOL Street)

【リアルサウンドより】  今年はGEMの年になる。そう強く予感させられるアイストカーニバルだった。  4月29日、avexのアイドル専用レーベル「iDOL Street」のユニットが集結する「iDOL Street Carnival 2015 〜GOLDEN PARADE!!!!!〜」が東京・渋谷のNHKホールで開催された。  この日のステージでは、SUPER☆GiRLS、Cheeky Parade、GEM、この日がお披露目となるわーすた、そして研修生にあたるストリート生選抜まで、総勢58人のアイドルがステージに立ち、各グループのパフォーマンスだけでなく、当日の限定ユニットやメンバー総出演のステージなど、およそ4時間、中身の詰まったライブが繰り広げられた。が、しかし、その中でも圧倒的な存在感を示したのがGEMのパフォーマンスだった。  およそ2年前、日本武道館で行われたアイストカーニバルで正式メンバーが決定したGEMは、avexの保守本流ともいえるダンスアンドボーカルスタイルのグループで、幼少期からダンスやタレント活動を始めているメンバーが多く、そのパフォーマンスはアイドルの枠の中ではすでに突出した存在となりつつある。  とくに最近は、ライブのパフォーマンスや楽曲の方向性も「かわいい」から「かっこいい」の方向にはっきりとシフトしており、同世代の女の子たちに見つかれば、E-girls的な憧れの対象とも成り得るだろうし、またそうしたダンスパフォーマンスを見せながら、アイドルらしいお客さんを巻き込んだライブもできるのは、GEMだけの強みだろう。  アイストのユニットとしては、昨年は、年少組のメンバー3人が加入したSUPER☆GiRLS、ニューヨーク公演を行ったCheeky Paradeが目立った年だったが、今年はGEMの年になる、とそんな予感を強く感じさせられた。  もう一組、今回のアイストカーニバルの目玉と言えるのが、この日ライブデビューとなった第四弾ユニットのわーすただろう。わーすたは坂元葉月、廣川奈々聖、松田美里、小玉梨々華、三品瑠香の5人組。アイドルストリートは、アイドルの王道=ハロー!プロジェクトの影響を色濃く受けているのが特徴で、第一弾ユニットのSUPER☆GiRLSは全盛期のモーニング娘。を念頭に置いた12人編成でスタートしたし、その後のユニットもチキパが9人、GEMが10人と中規模編成のユニットが続いた。  だが、2010年以降の「アイドル戦国時代」と呼ばれるグループアイドルの盛り上がりの中で、グループの人数構成は、AKB48のような圧倒的な多人数型か、ももいろクローバーZ、でんぱ組.incのような個のキャラが立った少人数型か、どちらかの体制が優勢で、モー娘。型の中規模編成アイドルは苦戦を強いられている。  わーすたはアイストが初めて挑戦するももクロ・でんぱ型の個のキャラクターを前面に押し出すタイプのユニット構成になっている。選ばれた5人は、アイストの研修生にあたるストリート生からの選りすぐりメンバーで、個性とグループとしてのバランスが両立できるようなメンバーが揃った。今回はお披露目ということで、カントリー調、ディスコ調、ラテン調のオリジナル曲3曲を披露、2週間で仕上げたとは思えないパフォーマンスの完成度で、今後への期待も高まる。  一つ懸念点を指摘するなら、アイストのユニットは基本的にコンセプト重視で、何が見せたいのかはっきりしている一方で、どうしても型にはまりがちな印象がある。これから個を生かすユニットを育てていくのであれば、メンバー自身やファンの反応を反映しながら、当初の想定からは外れる部分も含めて、おもしろい方向に転がしていくような、柔軟さを持った運営が求められていくことになるだろう。それはレーベルとしても新たな挑戦になるだろうし、まずは何より彼女たちに、より多くの実践の経験を積む場が与えられることを期待したい。 ■岡田康宏 編集者、ライター、カメラマン、評論家、コラムニスト、WEBプロデューサ。得意分野はサッカーとアイドル。著書・共著に『アイドルのいる暮らし』『サッカー馬鹿につける薬』『グループアイドル進化論』など。Twitter:@supportista

ミュージシャンらが振り返る、忌野清志郎の音楽 曽我部恵一「もう守るものが何もない、全部投げ出してる歌」

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『SONGS』公式HP。

【リアルサウンドより】  5月2日放送の『SONGS』(NHK総合)は、この日が命日にあたる忌野清志郎を特集。同日に開催されたイベントに出演したアーティストとともに、彼のパフォーマンスを振り返った。  “大人の心を震わせる音楽番組”をコンセプトに掲げ、様々な形でアーティストの歴史を振り返る同番組。今回は、5月2日に渋谷公会堂で開催されたイベント『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー』に出演したアーティストがライブ終了後に寄せたコメントや、2008年に放送した『SONGS~忌野清志郎~』をはじめとしたNHKアーカイブスより、清志郎の珠玉のパフォーマンスを紹介した。  冒頭ではイベント会場より、ライブを終えたばかりの模様を放送。箭内道彦と武内陶子アナウンサーがMCを担当し、ゲストにはライブに出演した奥田民生・曽我部恵一・Char・TOSHI-LOW(BRAHMAN)・トータス松本(ウルフルズ)・浜崎貴司が参加した。トークの前には奥田民生の「スローバラード」、トータス松本の「ラプソディー」、Charによる「S.F.」、曽我部恵一が歌った「九月になる前に」、TOSHI-LOWの「明日なき世界」、浜崎貴司の「いい事ばかりはありゃしない」、そして全員が熱唱した「雨上がりの夜空に」と、忌野清志郎の名曲群カバーがダイジェスト映像でオンエアされた。  VTR後、Charは清志郎の功績について「日本語でロックをわかりやすくやった最初のアーティスト。RCサクセションは当初フォークをやっていたけど、ロックバンドになったときに見に行って『これから日本のロックはこうなるんじゃないかな』って思った」と語ると、奥田は「歌い方が独特だけど上手。外れてるように聴こえがちなんだけど、ピッチが完璧なんです」と、ミュージシャン目線から彼の歌唱力を分析した。  その後、番組では清志郎の魅力を振り返るVTRを紹介。フォークから始まったRCサクセションの音楽が次第にロックに移行していく過程や、「雨上がりの夜空に」がヒットした前後のライブ、反原発・反核を歌った『COVERS』が発売中止になった騒動、忌野がライブで観客に「愛し合ってるかい?」と問いかける映像がオンエアされた。VTRを見た箭内は「一方的な愛があふれる世の中で、早くから愛し合うことの必要性を説いてくれた」と、清志郎がファンに伝えたメッセージを読み解くと、Charは「向こうで『LOVE&PEACE』って言いだしたことを受けて『それが必要なんだ、Charも付き合ってくれ』と電話で相談された」と、名言の裏に隠されたエピソードを明かした。  トータスは、最初に清志郎を見た際の印象について「あの衣装は誰も着こなせない。仮面ライダーなどのヒーローものと変わらないインパクトを受けた」と語ると、浜崎は「社会的や愛のメッセージも歌うけど、どこかで必ずふざける。留守電に『ロックのカリスマ 忌野です』って残されたこともある」と、彼のユーモラスな一面を明かした。また、曽我部は「もう守るものが何もない、全部投げ出してる歌」と歌に込められた精神について語ると、TOSHI-LOWは「リアルタイムでぐっと来たのは『COVERS』で、メジャーで反骨精神を出してしっかり発言していることに感銘を受けた。彼にロックやパンクの源流のようなものを見ていた」と、また違った視点から清志郎の音楽を読み解いた。  番組中盤では、喉頭がんによる闘病生活から復帰し、最後のテレビ出演となった『SONGS~忌野清志郎~』(2008年)の映像と「スローバラード」歌唱の模様を放送。その後、Charは“清志郎に貰ったもの”として「その時代、時代で作家として思ったことを楽曲にするけど、ストレートじゃなくてちょっとヒネるからロックなんだろうな。今いたら何やってたのかなって思うし、『清志郎だったらどうするかな』って考えちゃう」と、現在も影響を受け続けていることを語ると、トータスは「シリアスな歌を歌ううえで、ユーモアは絶対必要」と忌野清志郎の絶妙なバランス感覚について述べた。  番組の最後には、Charが同イベントについて「亡くなった清志郎を弔う感じだけど、彼が持っていた明るさが人を繋いで、こういうことが出来ている」と語り、『SONGS~忌野清志郎~』から「雨上がりの夜空に」の映像をオンエア。懐かしのVTRとともに番組が終了した。  忌野清志郎を敬愛するミュージシャンたちが、その功績や偉大さを改めて語った今回の放送。今回のイベントなどを通じて、彼の音楽は若い世代にも受け継がれていくはずだ。 (文=向原康太)

篠崎こころ・滝口ひかり・中根礎子×田口まき対談 アイドルと被写体、そして自撮りの今後とは?

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左から、滝口ひかり(drop)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、中根礎子(STARMARIE)、田口まき。

【リアルサウンドより】  2014年12月にリリースされたアイドルによる写真投稿アプリ『CHEERZ』。同アプリは、アイドルが投稿した写真に対し、ユーザーが“CHEER=応援”することでアプリ内のランキングが決定し、上位アイドルには雑誌掲載や街頭ビジョン出演など、様々な特典が与えられるというもの。公開から約半年が過ぎようとしている現在、参加アイドルはどんどん増え、アプリのユーザー数や「CHEER数」もそれに合わせて増加している(4月1日現在で約5000万CHEER)。今回リアルサウンドには、3月に行われた『リアルサウンド対談出演イベント』を勝ち上がった篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、滝口ひかり(drop)、中根礎子(STARMARIE)の3人が出演。対談相手には4月30日に発売した『CHEERZ BOOK vol.2』の撮影・アートディレクション・デザインを務めているフォトグラファー・田口まきを招き、それぞれが今の仕事を行うことになったきっかけや、アイドルとモデルの関係性、それぞれの自撮り論や今後の目標について、存分に語り合ってもらった。

「『人生一回しかないから、一度はアイドルをやってみたい』という気持ちになった」(滝口)

――篠崎さん、中根さん、滝口さんがそれぞれアイドル活動に足を踏み入れた経緯を教えてください。 篠崎こころ(以下 篠崎):私、こんな容姿なんですけど、最初はAKB48さんにすごく憧れてたんです(笑)。で、オーディションを受けたけど落ちてしまって、ならせめてAKB48劇場が見えるところで働きたいと思い、と秋葉原のメイドカフェでバイトを始めました。その中から選抜ユニットとして現在のグループが生まれ、今に至ります。アイドルとしての方向性は、活動をしていくなかで、BiSさんを見て「こんなアイドルの仕方もあるんだ!」と気付いてから、やりたいことをやるようにしています。 滝口ひかり(以下 滝口):大学生までは特にアイドルに関わることは無かったんですけど、友達から某ファッション雑誌のスナップに誘われて、小さく掲載されたんです。それを見た日本ツインテール協会の古谷(完)会長がツイッターでフォローしてくれて、DMで「ツインテールの写真集に出てくれないか」と誘われました。そこからモデルとして活動していくなかで、完さんから急に「アイドルをやらないか」と提案されたことがきっかけです。踊って歌うことに関しては興味があったし憧れてたんですけど、「アイドル=ブリッ子する」というイメージがあって、正直抵抗はありました(笑)。でも、「人生一回しかないから、一度はアイドルをやってみたい」という気持ちになり、決心がついたんです。 中根礎子(以下 中根):私は高校生の時、先輩に誘われてこの世界に入りました。元々中学生の時から芸能界には憧れていたんですけど、なかなか行動に移せなくて。アイドル活動をしていたその先輩が所属している事務所に誘われて、やりたかったモデルの仕事をしていくなかで、彼女がアイドルとしてライブしているところを見たんです。私もひかりちゃんと同じで、アイドルには「ブリッ子」というイメージが強くて嫌だったんですが、実際に目にしたらその世界観に圧倒されて、次第に「私もアイドルになりたい」と思うようになりました。そして実際先輩が活動していて、私自身も影響を受けたユニットであるSTARMARIEに加入し、アイドルとして奮闘しています。 ――田口さんがフォトグラファーを目指したきっかけは? 田口:私が写真を撮り始めたのは高校生くらいの時で、当時はファッション誌と可愛い子が好きな女の子でした。知り合いをメイクして写真を撮ってあげたら「私ちょっとイケてない?」って喜んでくれて、そういうのがもっと見たくて、次第に他校の生徒や他の地域の可愛い子にも同じことをするようになり、それがきっかけでフォトグラファーを目指すようになったんです。その後は学校で写真技術を学んで、プロのアシスタントをしたことで、映画女優さんやミュージシャンの方に直接お話しを聞いて写真を撮るようになって。ポートレートというか、女の子に直接寄り添っているような写真を撮りたいと思うようになり、プロのフォトグラファーになりました。 ――篠崎さん、滝口さん、中根さんはそれぞれ被写体としてどういう印象ですか? 田口:タッキー(滝口)は今日で会うのは3回目、他の2人はそれぞれ撮影で1回会っただけなので、最初の印象でしかないですけど…。こころちゃんは熱い部分とそれを引いて見る冷静な自分とが同居しているように思えるし、「自分にしかできないことをやりたい」と思っていることが言葉や気持ちから伝わってくるので、それを写真に収めることが出来ればと。もにゃちゃん(中根)は、柔らかい印象があって、良い意味で等身大。女の子のなかでも、アイドルを目指している子は特に情熱を持った激しい子が多い気がするんですけど、それ以外にもモデルをやりたい子や、普通の女子大生だけどで可愛くいたい、という子もたくさんいます。もにゃちゃんは後者のような人をアイドルの道に引きずり込めそうな魅力、アイドル好き以外にも受ける要素があるなと思いました。あと、被写体としては写真を撮るとクールな感じの表情も見せてくれるのもいいですね。タッキーはホントに真面目な子なんですけど、突然アイドルの世界に飛び込める大胆さも持っていて。だからウソの企画とかでとんでもないことをやらせてみたいです(笑)。 篠崎:卒業式で先生からもらう訓示みたいで恥ずかしい(笑)。外から見た自分と中から見た自分って違うことのほうが多いと思うんですけど、田口さんは1回しか会ってないのに自分が表現したかった二面性を見抜いてくれてすごく嬉しいです。 中根:本当に1回だけなのに、自分のいろんなところを見ててくれてたんだなと思いますね。実際に「撮ってて楽しい」ってよく言われるので! 滝口:私は「素直で真面目って見られてるんだなぁ」って思いました(笑)。あんまり嘘はつけないタイプなので、それが早くもバレちゃってるのも面白いです。
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「モデルは洋服やスタイルを、アイドルは本人を前に出す」(田口)

――田口さんは幅広く女性を撮影されていますが、アイドルにしかない魅力って何でしょう? 田口:ファッションモデルとアイドルを比較したとして、前者はファッション雑誌においてメインである「ファッション」、つまり洋服やスタイルをどう伝えるかが重要ですよね。後者はどちらかというとその洋服を着ている人自身を前に出す感じ。例えばこころちゃんだったら、金髪でキャップを被っていて、アーティストやバンドマンみたいな見た目だけど、本人はAKB48が好きで純粋にアイドルになりたいという存在で。それがハッキリと表現できるのはアイドルならではだと思いますよ。 中根:確かに、モデルのお仕事は服装をいろいろ考えてやってましたけど、アイドルの撮影は自分を「これでもか!」というくらい出すつもりで臨んでます。 滝口:私も、モデルとして駆け出しのころは、言われたとおりにやって「ただ撮られている」という感覚でした。アイドルを始めてからは、「自分に酔う」というか、カメラを向けられた瞬間に、そのシチュエーションにあった自分を見せる、役を作ることを学びました。
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滝口ひかり。

――設定の上に自分を置くような感覚ですか? 滝口:そうですね。それでどれだけ自分を出せるか、というようなところがあります。 ――そういう意味では『CHEERZ』には、自撮り(or他撮り)で「設定の上に置いた自分をどう見せるか」という側面があり、それが上手い3人がランキング上位の常連だということも頷けますね。アプリを使っていくうえで編み出した創意工夫・自撮りテクニックのようなものはありますか? 滝口:少女漫画や恋愛話がすごく好きで、よくシチュエーションを妄想するので、自分が考える「キュンとする瞬間」をメンバーに撮ってもらったりしています。 篠崎:私は金髪なんですけど、やっぱり金髪だけだとお客さんはお腹いっぱいになっちゃうじゃないですか(笑)? だから、茶髪や黒髪のウィッグを使ったりして変化を付けています。そうすることで、今までもにゃちゃんやひかりちゃんのような正統派が好きな方も取り込めるかも、という計算のもとでやっている部分はあります。あと、『CHEERZ』ってタイムラインが縦なので、写真の横幅を切って縦長にすると、他の写真を押しのける形で画面を埋めれるんです! 自己中心的かもしれませんが、「それが勝ち残る秘訣!」みたいな(笑)。 田口:それすごいね。ちょっと下にスクロールしてもずっとこころちゃんがいるじゃん。みんながどんどん細長くしていったら面白い(笑)。 中根:この3人しかやらないかもしれない(笑)。「あの3人なんかあったのか?」って思われますね(笑)。
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縦長と通常サイズの比較。

篠崎:あとは、生活の一部として『CHEERZ』があったりして、ツイッターと連携していたりもするので、お昼ご飯に食べたうどんの写真を『CHEERZ』に上げたりするとファンの方から「うどんだけじゃCHEERできない!」って言われたりしています! でも、タイムラインに「女の子→女の子→うどん」と続いたら「何これ?」って見るじゃないですか(笑)? ――システムの穴を見事に突いていて素晴らしいし、うどんにまで戦略が(笑)。 中根:私は同じような角度で同じような写真ばっかりになるのを避けるために、部屋でもコロコロ場所を変えたりします。あと、男の子っぽい顔立ちなので、前髪がないバージョンのイケメン風な表情や、外を歩いていて髪がいい感じにふわっとなった瞬間とか、いろんなシチュエーションで撮ってます。最近やったのは、超アップにして目元しか写らない写真。なぜかファンの方から好評でした(笑)。あとメンバーとよくやるのは、ドリンクを鼻ストローしてる写真とか。 田口:アイドルがそんなことして大丈夫なの!? 中根:(遠近法で)鼻にストローを突っ込んでいるように見えるように撮るんです。 田口:びっくりしたー(笑)。
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篠崎こころ(左)と中根礎子(右)。

「アプリをきっかけにライブに来てくれるのが一番嬉しい」(中根)

――三者三様の戦略があるんですね。ファンの方からの反響はどうですか? 篠崎:さっきのうどん写真の話ですけど、皆さん文句も言いついっぱい応援してくれる人がいたりして面白いです(笑)。あとは、どの角度が一番ウケるのか、「CHEER」の数でわかりますね。「私を応援してくれるお客さんは、黒髪もそこそこ好きだけど、やっぱり金髪が好きなんだな」とか、統計を取りながらやってます。 ――もはやマーケティングの域ですね(笑)。 中根:反応で言うと、沢山の人がCHEERしてくれることも良いんですけど、アプリをきっかけにライブに来てくれるのが一番嬉しいですね。そこでSTARMARIEの世界観にハマってガチになってくれた人もいます。私たちの曲は、物語の中で人が死んでいくものが多くて、曲中にお客さんの方をけっこう睨んだりするんですが、そういう世界観に衝撃を受けてファンになってくれる方が最近多くて楽しいです。 ――最近はセルカ棒が流行するなど、「自撮り」という文化はますます拡大しています。フォトグラファーの田口さんの目には、この現象がどう映りますか。 田口:沢山撮ってる子は、自分の可愛いところを一番わかってるし、良いタイミング、良い場所も知ってる。だから最近のアイドルって、みんな光のことに詳しい(笑)。純粋にすごいなと思いますね。それに、この文化ってまだまだ発展の余地があるんじゃないかな。現状は好きな時に好きな写真を上げているのが主流だけど、テーマを作っていってよりアーティスティックなものにできると思う。 篠崎:この間CASIOさんとコラボして「一眼レフで自撮り風に撮る」という企画をやったんですけど、すごく面白かったです。そういうのも流行ったら楽しいですね。 田口:それいいよね! プリクラ機のライティングって特徴を覚えればかなり綺麗に取れるんだけど、その一眼レフバージョンみたいなのも出来そうだし、より鮮明になりそう。
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中根礎子。

――せっかくの機会なので、3人が田口さんに訊きたいことはありますか? 中根:仕事をしていて、「これだけは譲れない」という大切なことはありますか? 田口:譲れない、とは少し違うかもしれないけど、撮影している時が一番楽しい。カメラマンにもいろいろなタイプがいるけど、私は撮り終わったら正直「後は良い感じに仕上がればいいな」と思う人で。撮影したあとの編集作業でこだわって完璧な絵を作る、というのもひとつのやり方だと思うけど、私は撮影現場の楽しかったり真面目な空気感が好き。なので、今日どんな空気や時間をモデルの子と過ごせるのか、ということを大事にしています。 篠崎:最近『CHEERZ』で本当にネタ切れなんですけど(笑)、田口さんが考える、「女の子がこう自撮りしたら面白い、可愛くなる」というアイディアはありますか? 田口:ウィッグ変えたりうどん出したりする子にそれ言われるのは難しいなあ(笑)。一周回って普通に可愛い写真撮るとか? ちょっとこの後一緒に考えよう。 滝口:私、実は自撮りできないんですけどどうすればいいですか? 田口:え、タッキー何言ってるの(笑)? 滝口:私の写真って、自撮りしてなくて、妹やメンバーに撮ってもらってるんです。だから手を伸ばしてるけど角度的におかしいものがあったり(笑)。やっぱり質問変えます、どういう子が「もう一回この子と一緒に仕事したいな」と思いますか? 田口:個人的には「自分で何かをもっとやってみたい」と思っている子に感動するんです。それが例えば「もっときれいになりたい」とか「もっとオシャレになりたい」でもいいし、音楽でもアイドルでもモデルでも、そういう気概みたいなものを感じると「じゃあすごく良い写真を撮らなきゃ!」と気合いが入りますし、一緒にこれからもお仕事したいなって思います。
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滝口ひかり(左)と篠崎こころ(右)。

「アイドルシーンを駆け抜けて、綺麗に終わるところまで考えてる」(篠崎)

――三人は現在活動しているグループや個々の仕事で個性的な活躍をしていますが、音楽やグループの立ち位置も含めて、今後はどういう風に成長していきたいですか。 篠崎:自分が目指すアイドル像を特定のグループに決めてしまうとそこが終着点になっちゃうと思うんです。なので、私にしかできないことをプティパでやりたい。入っている事務所も個人事務所のような感じで、好きなことを自由にやらせてくれるので、活動が終わるまでは必死に走り抜けていきたいし、目が話せないような感じのことを提示していきたいですね。その疾走感みたいなところは、BiSさんを見て「すごいな」と思ったところなので。 滝口:私はももクロさんが好きなんですが、こころちゃんと同じでそれを目指してはいけないと思っています。グループ全体としては、dropの話が出た時に誰もが「名前くらいは知ってる」と言ってもらいたいし、他のアイドルが曲を出したときに「この曲dropみたいだね」と例えられるような存在になりたい。私個人としては、グループのなかでMCは得意ではないし、前に出るのも苦手なんですが、個人のお仕事はおかげさまで沢山頂けてるので、dropを知らない方に知ってもらうための入り口として活躍したい。グループを好きになってもらったあとは、私を推してくれても他のメンバーを推してくれてもいいので。 中根:STARMARIEは「アイドルで勝ち残るには」「音楽業界で勝ち残るには」ということをスタッフさんともメンバーともすごく話し合っています。今後も「ダークファンタジー」という独特な世界観で勝負していきたいし、ジャンルの枠を壊していきたいですね。アイドルの数は増えているけれど、そこまで現場に行くお客さんの数は増えていないと思うから、それを考えた上で海外での活動も積極的に行いますし、アイドル好きじゃない方にもハマっていって欲しい。今行ってる単独アジアツアーも無事に成功させたいです。 篠崎:いま、アイドルって地下活動している人たちを含めたらとんでもない数がいるんです。その中で埋もれたくないし、生き残っていくためには自分を発信していくしかない。プティパは個人活動OKなので、どんどんオーディションを受けて、自分がやりたいこと、できることは何でもやっていきたいですね。だからDJやモデルもやるし、アイドルだけで終わらない存在になりたくて、その活動が今のグループに還元されればいいと思っています。あと、プティパはワンマンライブをやらないって決めているんですけど、解散するときに初めてのワンマンを武道館でしたいという夢があって…アイドルシーンを駆け抜けて、綺麗に終わるところまで考えてるんですよ(笑)。 田口:確かに、今のアイドルって何でもありというか、いろんな自由・チャンスがあるよね。 篠崎:今回の対談を通して、まきさんとこうやって話せたことも大きいし、dropさんと関わらせていただいたことで、日本ツインテール協会ともお仕事できるかもしれない。そうやって色んなチャンスを掴みたいです。
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篠崎こころ。

――篠崎さんの考え方って、どちらかというと運営側のような…。アイドルとしてそう考えて自覚的に動けるってすごく面白いです。 篠崎:本当ですか? 「自我が強くてうぜえ」ってよく言われます…。 田口:それがいいんじゃない! そう言われるくらいが面白いよ。今は日本中にアイドルがたくさんいるけど、それって応援してくれる人がその分いるってことじゃない? だからみんな創意工夫して一生懸命戦ってるんだろうし、そのなかで勝ち上がった子が色々な自由を手に出来ると思うから。 篠崎:今のアイドル業界って、可愛い子ならいくらでもいるじゃないですか? 金髪にするだけじゃ目立たないし。私はよく「お前よりは私のほうが可愛い」ってツイートされたりするんですが、それってその通りだと思うんです。でも、いかに自分を良く見せるかという点において、私の方が上手いからここに居ることができるだけなんじゃないかな。 田口:もちろんそれだけではないと思うけど、要素として大きな部分は担ってるだろうね。そしてこころちゃんのファンは、それをわかったうえで応援してくれる人なんだよね。いいファンに恵まれてるじゃない。 篠崎:バックアップしてくれる人たちも含め、自由にやれる環境を作ってもらっているので、すごく楽しいですね。 ――田口さんは今後どういった形で活動していきたいですか? 田口:ちょうどいまフォトブック(『CHEERZ BOOK』)を作り始めていて、『CHEERZ』の運営側とも話し合っています。まだ立ち上げたばかりの企画なので、こちらで準備して、アイドルに来てもらって撮影するという方法で進めていますが、コンビニでも発売しているし、全国の書店でもアマゾンでも買える本なので、一般の方にも広く見てもらいたい。だから、さっきのこころちゃんが提案した「細長い写真」みたいに、誌面に出ることについても、もっとアイディアが出せるはず。ファッション雑誌だと大金で1ページを売り買いしているようなものを、自由にできるチャンスって滅多にないから、どんどんやりたいことを教えて欲しいなと思いますし、そういう子たちと一緒にフォトブックを作り上げていきたいです。個人的には、これから何かやりたいと思っている若い世代に常に興味があるので、そういう人たちと仕事を続けて、もっと面白いことをやれたらいいなと。被写体がいないと写真は撮れないので、「どういう被写体が今面白いのか」ということにいつも興味を持っています。 (取材・文=中村拓海/写真=竹内洋平)
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『CHEERZ BOOK vol.2』

■リリース情報 『CHEERZ BOOK vol.2』 発売日:4月30日(木) 価格:1,000円(税抜き) 発行元:フォッグ株式会社 販売元:ファミマ・ドット・コム 購入はこちら:http://goo.gl/wBwhRO

「映画音楽家」としてのくるり・岸田 繁 その手腕に寄せる期待

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【リアルサウンドより】  現在発売中『MUSICA』5月号で『岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集』のディスクレビューを担当したのだが、国外の映画音楽の趨勢に絡めて本作を論じようとしたその原稿が(短い枠だったということもあって)あまりにも言葉足らずだったので、ここで改めて本作が持つ意味と、未来の「映画音楽家」岸田 繁に寄せる期待について書いてみたい。  コンテンポラリーなアメリカ映画をそれなりに熱心に追っている人ならば誰もが気づいているように、アメリカの映画音楽界(もちろん主題歌や挿入歌のことではなくスコア=劇伴のことだ)の見取り図はこの10年でガラリとその様相が変った。最も顕著なのは、ポピュラーミュージック出身の映画音楽家の台頭である。特にロックバンド出身のミュージシャンの活躍には目覚ましいものがあって、ざっと挙げていくと、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー(『ゴーン・ガール』ほかデヴィッド・フィンチャー監督作品の近作すべて)、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド(『インヒアレント・ヴァイス』ほかポール・トーマス・アンダーソン監督作品の近作すべて、『少年は残酷な弓を射る』など)、元レッド・ホット・チリペッパーズのクリフ・マルティネス(『ドライヴ』ほかニコラス・ウィンディング・レフン監督作品の近作すべて、『コンテイジョン』ほかスティーブン・ソダーバーグ監督作品多数、『スプリング・ブレイカーズ』など)、フェイス・ノー・モアのマイク・パットン(『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』)、シガー・ロスのヨンシー(『幸せのキセキ』)などなど。また、ダンスミュージック/エレクトロニカ系ミュージシャンでは、デヴィッド・ホルムス (『エージェント・マロリー』ほかスティーブン・ソダーバーグ監督作品多数、『ハンガー』など)、ジャンキーXL(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など)、M83(『オブリビオン』など)らが継続的に大作映画のスコアを手がけている。ちなみに、ここまでカッコ内に作品名を挙げているのは秀作ばかり。あまりうまくいかなかった例、ダフト・パンク(『トロン:レガシー』)やケミカル・ブラザーズ(『ハンナ』)のように試しに1作だけやってみた例まで挙げていけばキリがない。  もちろん60〜70年代まで遡れば、ミシェル・ルグラン、ラロ・シフリン、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコックといったジャズ界出身のミュージシャンが映画音楽の世界で多くの名スコアを残しているが、基本的にインストゥルメンタル・ミュージックでオーケストラとの親和性も高いジャズとロック/ダンスミュージックではその意味合いも音楽的飛距離も異なる。一番大きな要因としてはやはり70年代生まれ以降の監督が大きな作品を任されるようになってきたことにあると思うが、作品のスコアをポピュラーミュージック系のミュージシャンが手がけるというのはもはや特別なトピックではなく、完全に常態化してきたと言っていいだろう。個人的にも、スコアが良かったという理由だけでその作品を好きになるようなことはないものの、思い入れの強い作品に限ってそのスコアをやっているのが実は昔から馴染みのあるミュージシャンだった、という経験は近年何度も繰り返してきたことだ。  もちろん、日本でも過去に多くのポピュラーミュージック出身の音楽家が映画音楽の世界に参入してきた。冨田勲や坂本龍一はその音楽的なバックグラウンドも功績も別格として、有名なところでは細野晴臣、鈴木慶一、宇崎竜童、佐久間正英、大友良英、中田ヤスタカなどなど。しかし、日本のロックバンド出身で、なおかつ継続的に映画音楽を手がけてきたミュージシャンとなると途端に前例が少なくなる。  本作『岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集』は、2011年4月に公開された『まほろ駅前多田便利軒』と2014年10月に公開されたその続編『まほろ駅前狂騒曲』のために岸田 繁が手がけた全57曲に及ぶ楽曲を収録した作品。岸田 繁にとって個人名義での映画音楽の仕事はこれが初めてとなるが、くるりとして2003年に『ジョゼと虎と魚たち』、『リアリズムの宿』、2011年に『奇跡』のスコアも手がけているので、これで(主題歌のみを提供したものを除いて)5作品の映画音楽に関わったことになる。  大半が1分以下の小品であるその楽曲群は、鳴っている音からしてギター一本、ピアノ一本、バンドサウンド、生の管楽器や弦楽器、アナログシンセ、打ち込みと多岐にわたっていて、音楽性もフォーク/ロック/クラシック/エスニックを自由自在に横断するもの。尺自体はどれもミニマルではあるが、さすがあの名作『ワルツを踊れ』をものにした男、時折ハッとするほどシンフォニックな管弦楽曲が飛び出してくるなど、映画音楽家としてのポテンシャルの底知れなさを伺わせる作品となっている。「くるりの音楽を構成しているパーツをバラバラにしたらこんな作品になる」と言えばわかりやすいかもしれないが、実際のところはこれまでくるりの音楽には使われてこなかったようなパーツもゴロゴロ転がっていて、何よりもそこに興奮を覚える(ご存知の方も多いだろうが、『まほろ』シリーズはテレビドラマ版も製作されていて、そちらの作品では坂本慎太郎がスコアを手がけている。当然のようにまったく音楽的趣向が異なるので、聴き比べてみるのも一興だろう)。  自分が本作を聴いて思い出したのは、まだジョニー・グリーンウッドの映画音楽家としての才能を発見する前にポール・トーマス・アンダーソンがタッグを組んでいたジョン・オブライオンの作品、特に『まほろ』シリーズ同様にオフビートなコメディ作品である『パンチドランク・ラブ』のスコアだ。ちなみにジョン・オブライオンは80年代後半に人気を博したバンド、ティル・チューズデイの元ギタリスト。その後もエイミー・マン、ルーファス・ウェインライト、フィオナ・アップルなどの作品のプロデューサーとして活躍し、現在もコンスタントに映画音楽を手がけている。昨年のリアルサウンドでのインタビュー(くるりの傑作『THE PIER』はいかにして誕生したか?「曲そのものが自分たちを引っ張っていってくれる」)でもポール・トーマス・アンダーソン作品への愛着を語っていた岸田 繁だが、もしかしたら本作の音楽を制作する際にも、その念頭にはジョン・オブライオンの仕事があったのかもしれない。  これはあくまでも平均値の話だが、自分は常々、アメリカ映画(≒ハリウッド映画)のクオリティと日本映画、いや、日本映画に限らずアメリカ以外の国で製作された映画のクオリティを分かつ最重要課題の一つに、スコアのクオリティの違いがあると思っている。特に21世紀に入ってから、機材や音楽関連ソフトの発達とともにそれなりのオーケストラ・サウンドが誰にでも作れるようになったことでスコアの平準化が進んだことと、劇場のドルビーデジタル化によって飛躍的にダイナミックレンジが広がったことで、映画においてスコアが果たす役割は大きく変わってきた。映画界からの「よりユニークなものを」「より重低音の効いたものを」という要請が、先に述べたようなロック/ダンスミュージック出身ミュージシャンを呼び込む要因の一つにもなっているに違いない(それらの新しいスタンダードは、80年代から第一線で活躍していた専業映画音楽家の作風の変化にも如実に表れている)。本作『岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集』は、少なくとも(本編の作品世界を壊さない範囲で)「よりユニークなものを」という21世紀映画界における要請に、決して奇をてらうことなく真っ当に応える作品となっている。もちろん、現在の岸田 繁にとってくるりの活動が本筋であるのは承知しているが、10年後、20年後の日本映画界を見据えた上で、岸田 繁の映画音楽仕事にはこれからも熱心に耳を傾けていきたい。(宇野維正)

パスピエが語るポップミュージックの最適解 「キャッチーと奇をてらう、どちらかに寄りすぎてもダメ」

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【リアルサウンドより】  パスピエが4月29日にシングル『トキノワ』をリリースする。同作は年末に初の武道館公演が決定したパスピエが、2015年に起こす快進撃への号砲というべき作品であり、表題曲は高橋留美子原作のアニメ『境界のRINNE』のエンディングテーマに起用。楽曲もバンドキャリアにおいて最もポップと言えるものに仕上がり、アニメーションとの良いシナジーを生んでいる。今回リアルサウンドでは、バンドの中心人物であり、作曲を手掛けているキーボードの成田ハネダと、パスピエの特徴の一つであるアートワークや歌詞を手がけるボーカルの大胡田なつきにインタビューを実施。前作からの変化や、2人が考えるポップの定義、自主企画イベントと武道館公演への意気込みや海外展開について、大いに語ってもらった。

「パスピエのチャイナ風衣装は完全に『らんま1/2』の影響」(大胡田)

――まずは大胡田さんが手掛けた『トキノワ』のアートワークについて質問です。前回のインタビュー(参考:パスピエが語る、新作の壮大なるコンセプト「民族性にフィーチャーした作品を作りたかった」)では、『幕の内ISM』のジャケットで初めて目を描いて、今後はどうなるかという話をしたのですが、今作ではまた目がなくなりました。
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『トキノワ』ジャケット展開写真。

大胡田なつき(以下、大胡田):目を描かなかったというよりは、表題曲のテーマでもある“輪”を効果的に使いたかったんです。それでちょうど、今まで入れていたモザイクのような目線の部分や、身体でもボーダー柄っぽく輪が表現できるなと思って。あとは「輪っか=まわる」にちなんで万華鏡っぽい配色やデザインにしてみました。 ――これまでパスピエのジャケットは、白からパステルカラーへと配色が変わってきていますが、このタイミングであえて黒にした理由は? 大胡田:万華鏡の「覗き見る」感じが効果的に出る色が黒だったんです。ただ、初めての試みだったので勇気を出しました。少しだけ和のテイストを入れつつという感じだったのですが、思っていたよりスタイリッシュな方向になって(笑)。 ――もっと違うものを想像されていたんですか。 大胡田:曲的にも、もうちょっと和っぽいほうが良いかなと思っていたんですけど。でも、万華鏡も入れられましたし、出来上がったものを見ると、しっかり纏まったものになったなと。 ――個人的には、曲がポップだったので、アートワークで締めたんだと思っていました。 大胡田:それはちょっと考えていなかったですね。でも、いろいろな捉え方をしていただきたいです。 ――表題曲「トキノワ」は、アニメ『境界のRINNE』の主題歌としてすでにオンエアされていますが、漫画好きの大胡田さんが「高橋留美子作品にタイアップが決まった」という報を聞いてどう反応したのか気になります。 大胡田:これ以上ない幸せでしたね。私個人としては、高橋留美子さんのアニメに影響されて育ってきたので…。『うる星やつら』とか『らんま1/2』も好きですし、特にパスピエで着ているようなオリエンタル・チャイナ風の衣装は完全に『らんま1/2』の影響です(笑)。 成田ハネダ(以下、成田):『うる星やつら』に影響受けた衣装だったらすごいバンドになってたね(笑)。 ――(笑)。確かに、パスピエと『らんま1/2』にみるアジアンテイストは近いものがありますね。歌詞はどういったイメージで『境界のRINNE』に宛てましたか? 大胡田:原作を読ませていただいていて、作中にも出てくるし、タイトルにもなっている「RINNE」という言葉に焦点をあてて、「輪廻の輪」を表現しようとしました。<巡り会い巡れば巡る>という歌詞だったり。MVもパスピエとしては新しい、回ってる感じの表現で(笑)。 成田:MVに関してはメンバーが口を揃えて、「メジャーっぽい!」って言ってました。一応、メジャー3年目なんですけどね(笑)。 ――楽曲のほうも、いわゆる「メジャーっぽい」という部分と繋がるかもしれませんが、『幕の内ISM』の「七色の少年」や、配信リリースの「贅沢ないいわけ」に近いポップソングになっています。 成田:過去の作品だと「最終電車」や「名前のない鳥」もその系譜上にあると思うんですけど、これらの曲はリードとして収録したり、シングルの表題曲にした訳ではないので…。さっき挙げてもらった3曲はポップスという括りの中で直球勝負できるものだと思うんです。だからこそ、今回はみなさんの後押しもいただきつつ、投げ込めればと思って。 ――その豪速球を投げるのに絶好のタイミングだったんですね。 成田:そうですね。今まではパスピエのディスコグラフィーの中で「こういう曲はどうだ!」という風に勝負してきたんですけど、それって決まったゴールのないなかでずっと模索し続けるようなものなので。今回は違った視点から僕らのことを見てくれる、知ってくれる方がいるので、まさにこのタイミングでストレートなポップスをやるのが一番じゃないかと判断しました。 ――先の3曲はこれまでの楽曲と違い、三澤勝洸さんのギターが前面に出ている印象を受けました。これまでは成田さんの鍵盤と同じフレーズを弾いたりすることが多かったと思うのですが、この変化はどういう状況が作りだしたのでしょうか。 成田:やっぱり僕らのなかでも、年々モードは変わっていて。新しいお客さんも増えていくなかで、古くから知ってもらっているリスナーの方も増えているっていう意識もあるにはありますが、だからといってその人たちに合わせていこうとしているわけではないです。ただ、このタイミングでは、バンドが今回のような音作りに対して意識的だったのは確かです。
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「1回聴いて『これ良いね、満足』という反応だけで終わるものにしたくない」(成田)

――前回のインタビューでも「パスピエの中でいろいろなタームがある」ということを言っていましたね。そのなかでパスピエの音楽の軸は何だと考えていますか? 成田:あまり軸のようなものは持たないようにしていて、常に心変わりするなかで、アルバムを出したときに「今年の軸はこうだったな」と振り返る感じですね。新しいものを作り出していく側としては、やっぱり軸からなるべく離れていきたいというか、今までないことをしたいという欲があります。それがパスピエの軸なのかもしれませんね。ただ、その欲をただアウトプットするだけだと整合性がつかないので、僕のなかでは一年ごとに区切りをつけて総括し、次の作品に向けて考えていくようにしています。 ――カップリングの「Love is Gold」はバナナマンさんの単独ライブ『bananaman live Love is Gold』に起用されていましたが、この曲を作るにあたってどういう取り組み方をしたのでしょう。 成田:まずはタイトルとして『Love is Gold』ありきだったんですけど、この言葉自体がパスピエにあまりない単語の使い方だったので、そこをピックアップして、尺も意識しながらよりポップにしつつ、キャッチーに聴かせる部分はキャッチーに聴かせる感じで。短い時間でいかに気にかけてもらえるかという風に作りました。 大胡田:歌詞については、やっぱりバナナマンさんがいて、『Love is Gold』というライブがあって、そこで流れるっていうことがわかっていたので、その“Gold”の位置を「黄金色の果実」に置いているんですけども、お金ですとか、日々のうちにある輝かしいものなどをイメージして書きました。 ――今回の2曲はタイアップ的な制約がありながらの楽曲ということなのですが、そこで苦労することはありましたか? 大胡田:私は、今まで書いてきた歌は自分のなかにある世界のことを書いてきたので、自分が作った世界じゃないものについて書くっていうのは、ちょっと立ち向かうみたいな気持ちがありますね。 ――立ち向かう、ですか? 大胡田:ええ。そこにある世界を、私たちは曲とか歌詞とかで表現して引き立てる側だと思うんですけど、飲まれないようにするというか。そこでも、自分たちのやりたいことっていうのを確かに出していきたいなと思うので、ちょっと立ち向かっている感があります。 ――負けないように、なおかつ、自分たちの色もちゃんと出せるようにというバランス感ですかね。 大胡田:そうですね。バランスという言葉がしっくりくるかも。 成田:曲の部分だと、たくさん音楽は流れるなかで1回聴いて「これ良いね、満足」という反応だけで終わるものにしたくないので、アニメ尺の1分半だったり、CM尺の数十秒があるなかで聴かせて、「フルサイズはどうなるんだろう」と思ってもらえるような音楽的な仕掛けをしていきたい。今回のようにCM尺、アニメOP尺と、色々な形で段階的に見せれることに、僕自身は難しさよりも嬉しさを感じていますね。逆に何回もチャンスがあるという捉え方ができるし、複雑に聴こえるような小技も散りばめられるわけですから。 ――その小技はサビの作り方や、転調箇所といった感じですか? 成田:ワンコーラスなりツーコーラスなり聴いたうえでの感覚と、全体で聴いたうえでの世界観にはある程度違いをつけないといけないと思ったので、落ちサビ前に壮大な展開を用意したり、ヘッドフォンで聴いたときに初めてわかるような細かい動きを入れたりしています。2回、3回聴いても、ここはこうなっているんだ、もう1回聴きたいなって思ってもらえるアイディアは絞ったつもりですよ。ギターフレーズが多いっていう話をさっきしていましたけど、たとえばイントロ部分では、ギターの上にキーボードが重なっていたりするんです。 ――あまりキャッチーに作りすぎると、サラッと流して聴けてしまうポップスになるし、奇をてらったフレーズばかりだと重くなってしまう。成田さんのなかで、キャッチーであるものと中毒性のあるものに対する線引きはどこにあるんでしょうか。 成田:僕はやっぱりサビの立ち位置だと思うんです。たとえば、料理のコースとか舞台とかでもそうですけど、何か1点を引き立てるためには、何かが後ろに下がる必要があるし、一気に全部が前に出てきてはいけない。いろいろなものが順番に組み合わさって、サビの段階で一番おいしい部分をいかにバンと聴かせるかが大事かなと。いわゆる、何度も聴きたくなる、「スルメ」と言われている音楽というのは、その辺が上手く作られているように思っていて、キャッチーと奇をてらう、どっちかに寄りすぎてもダメだし、フィフティ・フィフティだとするとどっちつかずの作品になりますからね。 ――「緊張と緩和」みたいなものを上手く曲の中で演出する感じですね。バンド全体でやるということについてはどう意識します? 成田:僕は作家としてパスピエをやっているわけではなくて、バンドとしてパスピエをやっているので、ポップに意識が行き過ぎるのはどうなのか…という、葛藤はあります。これに関しては、今もまだ答えが見つかっているわけではないんですけど、これからは匙加減をいろいろと変えながら、やっていくんじゃないかなあと思いますね。
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「武道館は両手放しでわーいとは喜べない感じ」(大胡田)

――大胡田さんは作詞の段階で、ポップなものになるようにどう手心を加えますか。 大胡田:中毒性については、私はあまり考えたことがないですけど…。似たようなフレーズでも、始まる音の高さが違ったり、繰り返したりするんですね。そういうところを見つけたら、そこへ似た音や同じ詞を付けて、言葉を繰り返して印象付ける歌詞にしています。大体繰り返しで使った言葉はテーマになるものが多いです。 ――歌いまわしなどでの工夫は? 大胡田:曲によりますけれど、繰り返しの箇所ってサビに来ることが多いので、そこを強烈な歌い方で変えてしまうと、逆に言葉の力みたいなのが薄まってしまいます。なので、やりすぎない感じ、加減みたいなことは考えていて、「トキノワ」みたいにポップな曲でしたら、あまりクセのないような歌い方で。サビとかはボーカルを重ねるでしょうから、強烈すぎない、聴きやすい、何度聴いても大丈夫な歌い方にする感じです。 ――3曲目に収録しているCORNELIUSのカバー「NEW MUSIC MACHINE」は、これまでシングルで行ってきたカバーシリーズの最新版ですね。選曲の意図を教えてください。 成田:いろいろな周りのアーティスト、バンドが先人の楽曲をカバーするなかで、触れられていない曲をと思いました。それに「パスピエ、次はそうきたか!」と言ってほしいというのも動機として存在します。この曲は『FANTASMA』のなかでも、大胡田が歌っているイメージができたのと、歌詞に未来の年として「2001年」と「2010年」というワードが出てくるんですけど、僕らはもうその年を越してしまったわけで、今、それを歌うことが面白いなと思って。「2020年」とかにするべきなのか迷ったんですけど(笑)。 大胡田:この曲はもう素直にそのまま、というか。今までは割と自分でニュアンスをつけて、自分のなかで一回解釈して外に出すみたいな気持ちでいたんですけど、今回、この『NEW MUSIC MACHINE』は聴いて感じたまま、本当に流れに任せて歌えたっていう感じです。 成田:あと、渋谷系のムーブメントはパスピエのスタンスに繋がる部分は多いと思っていて。 ――「渋谷系」や「シティ・ポップ」というキーワードはここ1~2年で頻発していて、書き手も受け手も色々と解釈しているわけですが、成田さんはそこに進んで入っていく感じですか。 成田:いま、渋谷系やシティ・ポップのような音楽がもう一度若手バンドによってリバイバルされてるのって、J−POPというものへのカウンターであり、「もっとこうだったらいいのに」という問題提起なのかもしれないと思っていて。僕は80年代のシティ・ポップと現在の若手バンドがやってるものは違っていて、80年代は当時最先端だった音楽的技術を駆使して色々なエフェクトを使ったりという、未来への憧れのようなものがあったと解釈しています。今はものすごくいろいろなことが満たされているなかで、あえて音像をそちらに近づけているので、スタンスとしてはパンクに近いんじゃないかと思ったり(笑)。だからバンドとしてはニュー・ウェーブという括りの音楽をやっているなかで、今後このジャンルがどうなっていくのかはすごく考えますね。 ――冠で「ニュー」って付いているけど全然新しくはないという話になってくるわけですよね(笑)。 成田:ただ、新たにそこにムーブメントが起きて、新たな名前だったり冠がつくっていうことだとしたら、それはそれで面白いとは思うんですけど。「ポスト」自体も、昔からついている冠ではあるので、たとえば「リバイバル・ウェーブ」とか(笑)。 ――2015年第1弾となるこの作品はパスピエにとって重要作となるわけですが、現段階で「こうしたい!」という音楽的に明確な指針はあるのでしょうか。 成田:年末の武道館ですね。照準を合わせてそこに向かっていくこと自体、今までなかったことなので。去年に関しては『幕の内ISM』の世界観を引っ張ってツアーを行ったりした印象が大きかったんですけど、今年は一つ一つ山を越えていかないといけないと思っています。 ――武道館公演については、まだ先の話ではありますが、決まった直後としての意気込みを聞かせてください。 成田:本当に噛み締めているという感じですね。実際に興奮するのはステージに立ってからだと思うので、まずはいろいろなハードルを超えるための準備を始めていかなきゃなとは思っています。 大胡田:私は「今年に来たか」という感じ。いつかはきっとすると思っていたんですけど、それが今年だったということで…。武道館という場所を使ってパスピエをどういうふうに表現しようか考えていかないといけない。両手放しでわーいとは喜べない感じというか(笑)。 ――お二人とも、一度スーッと息を吐いてグッと構える感じですね(笑)。演出面でやってみたいことはありますか。 大胡田:ちょっと長めの映像を入れたいと思っています。そのときに出している作品と絡めたりして、まだはっきりしていないんですけど、絵を含めて視覚効果的に何かをやりたいですね。 成田:具体的じゃないんですけど、パスピエが武道館でやる理由っていうのを示せたらいいなと思います。ビジュアル、イラストは大胡田に託しているので、僕は演奏面で他に武道館でライブを行うアーティストたちと違うことができればと思います。
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「北欧で僕らの音楽がただのポップスなのか、インテリジェンスなものなのかを確かめたい」(成田)

――そして6月にはホームと呼ぶべき自主企画イベント『印象D』も行われます。それぞれのゲストを招いた理由について聞かせてください。 成田:名古屋公演のゲストであるYOUR SONG IS GOODは、僕がバンドを始めた理由となったアーティストです。フジファブリックや東京事変など、ロックフェスでキーボードのあるバンドに目を惹かれたことがきっかけなので。大阪公演に出てくれるBase Ball Bearは、僕らが一番最初に出たライブハウスである『下北沢 GARAGE』を根城にしていた先輩みたいなもので。あと、東京公演ではレキシが果たして何分ライブをやるのかという点にも注目していただきたいです(笑)。 ――DJ UPPERCUTやtofubeats、PARKGOLFといったDJ陣のブッキングについてはいかがでしょうか? 成田:僕らはバンドなので、やはりバンド同士の繋がりが多いんですが、やってみたいけど実現する場がないアーティストたちもいて、彼らがまさにそう。こういう機会に共演できて嬉しいです。 ――ちなみに、tofubeatsはパスピエのレーベルメイトですが、彼の音楽についてはどう解釈していますか。 成田:全部わかったうえで、ちゃんとアウトローのところを狙える部分は「策士だなあ」と思いますよ。あと、tofubeatsくんの音楽って、常に笑いを感じるし、良い意味でスカしてる。あれだけビッグネームと共演したら普通はブレていくはずなのに、それさえも飲みこんでるのはすごいし、表に出ている所以外の部分でしっかり考えているんだと感じます。 ――6月には海外展開として、コンセプト盤『OZASHIKI MUSIQUE』と『幕の内ISM』のLP盤『MAKUNOUCHI-ISM』をリリースしますが、自分たちの音楽を世界に届けるにあたって、二人の心境は? 大胡田:海外の方が、日本の文化に関心を示しているなかで、パスピエの音楽に出会ってほしいと思いますし、興味の対象になれたらいいなと。そこに収録されている曲だけでは伝わらないものもあるとは思うんですけど。 成田:本当にゼロからの発信ということで、自分といても初心に帰るという意味で楽しみです。それに、音楽の歴史がどんどん積み重なって、日本のフェスにも海外バンドを招聘するようになっているなかで、僕ら自身ももっとグローバルに動いていきたいし、どの国だからどうこう、ということではない世界を見てみたいと思います。 ――今回はイギリスでライブを行うわけですが、今後行ってみたい国はありますか。 大胡田:私は…あ、それってパスピエで行ってライブをするってことですよね? ――もちろんです。旅行してみたいとかじゃなくて(笑)。 大胡田:(笑)。やっぱりフランスですかね。まず、バンド名がフランス語なので。あと、フランスってクール・ジャパン的な盛り上がりがすごいと聞きますが、実際どんなものなのかは日本にいると分かりませんし、見てみたいという気持ちがあります。 成田:僕はイギリスから地続きということでいうと、ノルウェーやスウェーデンなど、北欧に行ってみたいですね。自分のルーツでもありますし、土地柄なのかどうかわからないですが、シティ・ポップと繋がる部分もあるのかなと思うんですけど、音楽的なインテリ感があるように思えるんです。そこで僕らの音楽がただのポップスなのか、インテリジェンスなものとして受け入れてくれるのかを確かめたい。あと、個人的にはやはり色々なものがある国だという意味では、アメリカにも行ってみたいですね。 (取材・文=中村拓海)
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パスピエ『トキノワ(初回限定盤)』

■リリース情報 『トキノワ』 発売:2015年4月29日(水) 価格:初回限定盤 ¥1,200(税抜:¥1,111)    通常盤:¥1,080(税抜:¥1,000) ※初回限定盤は初回限定特殊パッケージ仕様 <収録楽曲> 1. トキノワ 2. Love is Gold  3. NEW MUSIC MACHINE ■ライブ情報 『パスピエ presents「印象D」』 ・東京公演 日時:2015年6月24日(水) 開場/18:00 開演/19:00 場所:東京・新木場STUDIO COAST <出演者> パスピエ/レキシ DJ:DJ UPPERCUT 問い合わせ先: SOGO TOKYO 03-3405-9999 http://www.sogotokyo.com プレイガイド: チケットぴあ0570-02-9999 Pコード:252-863 ローソンチケット0570-084-003 Lコード:77990 イープラス http://eplus.jp SOGO TOKYO オンラインチケット http://www.sogotokyo.com (PC・mobile) ・大阪公演 日時:2015年6月26日(金) 開場/18:00 開演/19:00 場所:大阪・なんばHatch <出演者> パスピエ/Base Ball Bear DJ:tofubeats 問い合わせ先: GREENS 06-6882-1224 http://www.greens-corp.co.jp 主催: GREENS 後援:FM802 プレイガイド: チケットぴあ0570-02-9999 Pコード:253-355 ローソンチケット0570-084-005 Lコード:53334 イープラス http://eplus.jp モバイルサイトGREENS!チケット http://greens-corp.co.jp/ ・名古屋公演 日時:2015年6月28日(日) 開場/17:00 開演/18:00 場所:名古屋・DIAMONDHALL <出演者> パスピエ/YOUR SONG IS GOOD DJ:PARKGOLF 問い合わせ先: サンデーフォークプロモーション052-320-9100 http://www.sundayfolk.com 主催: サンデーフォークプロモーション プレイガイド: チケットぴあ0570-02-9999 Pコード:253-589 ローソンチケット 0570-084-004 Lコード:45455 イープラス http://eplus.jp ダイレクトセンター052-320-9000 TANK! the WEB http://www.sundayfolk.com チケット料金:オールスタンディング ¥3,800(消費税込) 整理番号付 ドリンク代別(入場時別途500円) ※未就学児童入場不可 6月26日大阪公演のみ 2階指定席 ¥4,300(消費税込)ドリンク代別(入場時別途500円) ※小学生以上チケット必要 【日本武道館単独公演】 出演:パスピエ 日程:12月22日(火) 会場:日本武道館 時間:開場 17:30/開演 18:30 チケット料金:全席指定 ¥4,800(消費税込)※3歳以上チケット必要 一般発売日:9月26日(土) <プレイガイド> チケットぴあ 0570-02-9999 ローソンチケット0570-084-003 イープラス http://eplus.jp SOGO TOKYO オンラインチケット http://www.sogotokyo.com (PC・mobile)

アイドルとアーティストの境界はどこに? 地下アイドル・姫乃たまが考える

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地下アイドルでありながらライターとしても活躍する姫乃たま

【リアルサウンドより】  数年前に、地下アイドルのポートレイトを集めた『インディーズ・アイドル名鑑』という写真集の出版に携わりました。知名度や活動内容に関わらず、ひとりにつき1頁、同じ背景で平等に200名以上の地下アイドルを写しました。  タイトルで、地下アイドルが「インディーズ・アイドル」と表記されているのは、発売する段階になって、「タイトルに地下アイドルという単語を入れるなら写真は掲載させない」という意見が相次いだためです。その後、写真集に被写体として参加していただいた方々を招き、出版を記念したトークショーを開催したのですが、そこでも自らを「地下アイドル」と称する人はいませんでした。それどころか自身をアイドルであると言った出演者のほうが、少なかったのです。  彼女たち(あるいはその事務所)は、地下アイドルを撮影する趣旨の写真集であると理解して依頼を受けたはずなのに、どうしてこのようなことが起きたのでしょうか。  みんな同じアイドルじゃん、というお茶の間からの声が、鼓膜のそばまで迫ってきている気配を感じていますが、聞き入れません。なぜなら、そんなことを言えば爆発しそうなほど、この問題は根が深くややこしいからです。  たとえば、地下アイドルとしてオファーを受けた出演者が集まるライブで、主催者が帰り際に「今度は女性アーティストだけを集めたイベントをやるから、よかったら出てよ」と言います。出演者の女の子はその誘いに笑いかけ、会場を出てから「何言ってんのよ、私たちだってアーティストじゃんね」と、顔をしかめてみせる。そういうことです。  アイドルと同じくらい、世間的な定義が曖昧な「アーティスト」ですが、ある時には、「あの子、アーティストぶって調子に乗ってるよね」という、ニュアンスばかりで細かい原因がはっきりしない悪口にまで使用されます。私は、アイドルソングをカバーしている共演者を、「私、アイドルとかじゃなくて、アーティストだから!」と、激昂させてしまったことがあり、唖然としながら、もうこの「アイドル、アーティストどっちなの問題」に封をしたのです。  この問題は、お茶の間でアイドルグループ視されているグループ間でも、繰り広げられています。  EXILEの妹分であるE-girlsは、自らを「ガールズパフォーマンスグループ」と称しており、9nineは「パフォーマンスガールズユニット」、そして脱アイドルを宣言が記憶に新しい東京女子流は、「ガールズダンスアンドボーカルグループ」になりました。  肩書きが異なっても「歌って踊る女の子たち」であることに変わりはないのですが、東京女子流は脱アイドルのために、アイドル専門誌やアイドルフェスへの露出、そして握手会の開催をやめました。一見、活動の場が減少しているようですが、ファンと直接接触する機会などを減少させることで、手の届かない存在という印象が強まり、近年のアイドルブームの特徴から抜け出すことに成功しています。また「TV Bros.」で「あたしアイドルじゃねぇし!」を連載しているきゃりーぱみゅぱみゅも、肩書きは「アーティスト/モデル」です。  自分の知識にないものや、異なっているものと遭遇した時に、否定したり怒ってみせたりする人がいますが、そういった層の方々が「どこがアイドルと違うんだ」と意見します。論点はだいたい、自分で楽曲を作っていないというところです。  アイドルを褒め称える時、不思議と「アイドルとは思えない実力」という、アイドルを否定するかのような文章が出てきます。アイドルは高度な技術を持っていないという風潮があるのでしょう。  周囲に自分をどう見られたいかというのは、多くの人が意識するのを止めてしまっているほど、誰にとっても重要な問題です。ここまでに登場した人物はすべて「歌う女の子」ですが、その肩書きは、本人や事務所の自意識に基づいて決定されています。どう見られたいかの理想像は個々の価値観によるので、どのような肩書きが正しいとか、偉いとか、そういうことはないと思われます。  しかし、非アイドルを掲げる人たちの一方で、作詞作曲や演奏、振り付けを自分でこなしていても、アイドルを自称する人もいます。この自意識は、個人の感情だけでなく、ビジネスとも繋がっているのです。たとえば、「アーティストとして活動したいけど、稼げなくなるからアイドル関連の仕事がやめられない」という悩みは、時々耳にします。  複数買いという慣習や、アイドル専門の雑誌、ライブ、番組など、アイドルでいれば稼げる場があるにも関わらず、そこから飛び出す恐怖が伴うのです。こうして冒頭のような、地下アイドルが集まる場で活動しながら、自らをアーティストであるとする人たちが存在しています。  私は高跳びよりリンボーダンスの方が得意なので、地下アイドルを自称して、細々と仕事をもらう方向を選択しました。これもまた間違いではないということでひとつ……。 ■姫乃たま(ひめの たま) 地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。 [HP] http://himeeeno.wix.com/tama [ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな http://ameblo.jp/love-himeno/ Twitter https://twitter.com/Himeeeno

cinema staff、勝負作『blueprint』をどう広めるか? 斬新なプロモーション展開を読む

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cinema staff『blueprint』(ポニーキャニオン)

【リアルサウンドより】  cinema staffのニューアルバム『blueprint』と、同作に対するプロモーション展開が非常に面白いことになっている。  アニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマに採用されスマッシュヒットを記録した『great escape』、それに続くアルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』と、それまでのリスナー層からより幅広い音楽ファンに向けてポップを追求したバンドサウンドを聴かせてくれたcinema staff。前作から1年ぶりとなる新作『blueprint』ではそのポップさをより進化&深化させ、なおかつ聴き手の体に入って行きやすい言葉(=歌詞)が印象的な、バンドにとってターニングポイントとなりそうな1枚に仕上がっている。この自信作を、前作『Drums,Bass,2(to) Guitars』で届けきることができなかった層にまでどうやって伝えていくか……そのためにcinema staffが仕掛けたプロモーション展開が、今回は今まで以上に力の入ったものになっており、非常に興味深い。  近年CDがなかなか売れないとアーティスト / レーベル側が嘆くような現状が続いているが、この現実を打破しようといろんな展開を仕掛けるアーティストも少なくない。テレビや新聞、雑誌など昔ながらの大々的なものからネットメディアを最大限に活用するケースまで、その内容はさまざま。「テレビや雑誌はもう古い」などと言いながらも、露出した分だけ結果を残すアーティストも少なくなく、逆にネットメディアでも無料 / 有料含め無数の展開が存在するが、そのすべてがうまくいっているとは言い難い。アーティストとの親和性も大きいだろうが、今回のcinema staffのケースは長期にわたるもので、「今度はどんなコンテンツが?」と公開されるたびに次の展開が楽しみになるようなものが多かった。  まず彼らの場合、アルバム発売日の約2カ月前にあたる、2月25日より展開を開始。アルバム発売情報&アートワークの解禁と同時に、同作のオープニングトラック「陸にある海」をSoundCloudにて先行フル公開したのだ。しかもこの曲がピアノを軸にしたインストナンバーということで、ファンの間で物議を醸し出した。まずはファンの間でざわつかせることに成功した彼らは、続いて3月1日に「#シネマのブルプリ」Twitterキャンペーンを開始。アルバム『blueprint』に対する期待や想像、メンバーに対するメッセージなどをハッシュタグ「#シネマのブルプリ」を付けてツイートするというもので、投稿者には抽選でcinema staffスペシャルグッズ“飯田賞”、“辻賞”、“三島賞”、“久野賞”が各1名ずつにプレゼントされる。ファンのツイートを通して、cinema staffに疎い人たちの目にも「#シネマのブルプリ」というハッシュタグは目に止まることになるだろうし、結果としてはこれもTwitterを使った宣伝と言えるだろう。  さらにcinema staffはその3日後の3月4日、アルバム『blueprint』収録曲の全歌詞を「歌ネット」にて先行公開。三島想平(B)が書く短編小説のような歌詞、そして異色のインスト曲「陸にある海」を耳に目にすることでイマジネーションが掻き立てられたファンは、自分の想像や妄想をTwitter上に吐露していく。リリースまで2カ月近くあるのにすべての楽曲の情報(インスト曲のみ歌詞がないためフル試聴というのも納得がいく話だ)……そう、ここまで中身について情報発信していくのは異例の事態ではないだろうか。こういった情報が揃ったあと、ライブやラジオなどでアルバム収録曲がついに演奏&オンエアされる。歌詞のみで楽曲のイメージを妄想していたファンは、自分の想像に近いものだったか、それともまったく違ったものだったかをここで答え合わせすることになるのだから、思わずニヤリとしてしまうに違いない。  ここまではあくまでcinema staffのファンを対象としたプロモーション展開だが、彼らの場合はこれだけでは終わらなかった。アルバム発売1カ月前の3月25日には、『blueprint』特設サイトがオープン。このサイトにはメンバー三島による全曲解説コメントや、メンバーと縁のあるアーティスト&スタッフによる「シネマのブルプリ 100人コメント」などが随時公開されており、特に「シネマのブルプリ 100人コメント」では片平里菜や山田義孝(吉田山田)といったレーベルメイトをはじめ、後輩ミュージシャンや同年代のバンドマン、cinema staffがリスペクトする先輩アーティストまでバラエティに富んだ面々からの、愛あるコメントを楽しむことができる。また4月8日からは新コンテンツとしてインタビューも毎週公開。第1弾として三島とLiSAの対談、第2弾には久野洋平(Dr)とKEYTALKの八木優樹(Dr)、第3弾には辻友貴(G)とAV女優の福咲れんとの対談がアップされ、どちらも大きな反響を呼んだ。「メンバー4人それぞれ、今一番会いたい人に会いにいく」というテーマを持つこの対談企画は今後も飯田瑞規(Vo, G)の対談が掲載される予定だ。  こういったコンテンツを通じて、それまでcinema staffに興味のなかった音楽ファンも「自分の好きな◯◯がオススメするなら聴いてみようかな?」「こんな人と仲良しなんだ! どんなバンドなんだろう?」と多少は興味を持つかもしれない。そういった際に、同じ特設サイト内ではアルバム収録曲「シャドウ」のMVを視聴することができるし、三島のアルバム全曲解説コメントも読むことができるし、「歌ネット」の全歌詞へのリンクも用意されている。さらにスマホ版のみ、「great escape」の360°パノラマライブ映像も視聴可能だ。cinema staffというバンドに少しでも興味を持った人への導線としては文句なしだろう。  今回のアルバム『blueprint』はcinema staffにとってターニングポイントになる1枚であり、聴き手に対して“開かれた”楽曲の数々はより多くの人のもとに届いてほしいと思うものばかりだ。そのために企てられたこのプロモーションからはアーティストやレーベルサイドの本気が感じられる。アルバムへとつなげようとするこの展開が成功したかどうか、その結果はすぐには出ないかもしれない。しかしバンドが現在の音楽シーンで“長生き”していくために、この展開は後々重要なものになるのではないか……そういう意味でも今後の指針の1つになるはずだ。 ■西廣智一(にしびろともかず) Twitter 音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

Drop’s・中野ミホ、敬愛する4人のボーカリストを語る「キャロル・キングの持つ包容力が出せたら」

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【リアルサウンドより】  札幌発・女子5人組ロックンロールバンドのDrop'sが、4月22日に3nd EP『未来』をリリースした。今作は、ふとした瞬間に未来を思う切なさを歌ったミディアム調のロックンロール曲 「未来」の他、全4 曲を収録。4曲目にはキャロル・キングの「You’ve Got A Friend」のカバーが収録されている。今回のインタビューでは、中野ミホ(Vo&Gt)のボーカル観を探るべく、キャロル・キングを含めた4人のボーカリストを挙げてもらった。そこから見えた中野ミホが考える歌詞と歌の関係とは?

「未来に『ここから』という区切りはなくて、ちょっとずつ毎日変わっていくもの」

——4月22日にリリースとなる3rd EP『未来』の表題曲「未来」は、「春」の情景を通して未来というテーマを歌った楽曲ですね。このテーマは以前から温めていたものなのでしょうか。 中野ミホ(以下、中野):以前から未来というテーマで曲を作りたいと思っていました。でも、10年後とかの未来ではなく、いつかはわからないけど漠然とした未来という。そういう未来をふとした瞬間に思うということを書きたいなと思っていました。 ——たしかに今回の曲は「瞬間」を歌った印象がありました。未来というと、キラキラしたイメージを伴うことが一般的ですが、中野さんが描く未来は、切なさも強く感じられますよね。 中野:未来といっても未来に「ここから」という区切りはなくて、ちょっとずつ毎日変わっていくものだと思っています。自分も相手も、人の気持ちはちょっとずつ変わっていくし、必然でもあるけど、それが切ないなと思ったりもして。 ——たとえば、高校生くらいに感じていた未来の感覚と今とでは、感じ方に変化はありますか? 中野:学生のときは、毎日学校に行くのが当たり前で、先のこともあまり考えてなかった。でも学校を卒業してからは、自分で何でもやっていかないと前に進まなくなったので、そういう意味では「これからどうなるのかな」って自分を俯瞰で見るときはありますね。 ——歌詞では「ふたりしか知らない歌」というフレーズが印象的でした。 中野:最初は雲にのっている場面がありました。ふわふわと何もいらない、楽しい時間があって、それが理想とか夢だとしたら、現実は踏切が開かない。その向こう側の理想と現実の間でずっと待っているとか、そういう淡い色のなかでのイメージはありましたね。理想と現実の間にあることがリアルだと思うので、この場面も書きました。相手が恋人とじゃなくても、誰にも思い出の歌とかあるでしょう? そのふわふわした感じがリアルだと思うんですよね。 ——楽曲としては、三拍子のリズムを採用したり、いろいろな音楽的なチャレンジの多い楽曲でもあります。 中野:コードは私が結構前から作っていました。バンドで合わせた時、はじめは四拍子でやってたんですけど、「なんか違うな」ってことで、三拍子になっていきました。その時ももっと突っ込むような速い三拍子だったんですけど、それも違うなって、最終的にはゆれるような三拍子になっていきました。歌詞をもうちょっとキリキリした切迫感があるものにしようと思っていたんですけど、三拍子にして淡い切ないものが見えてきたので、そっちがいいかなと思ったんですよね。 ——「切なさ」というのは、中野さんの声が生み出している面も大きいですよね。どんな気持ちで歌いましたか。 中野:「未来」には言葉を詰めているし、三拍子のリズム、そして歌自体がけっこう難しく感じたので、なるべくスッと歌いましたね。あんまりガチガチに感情を込めて歌うよりは、そっちのほうがいいかなと思って。歌っている側が気持ち良くても、CDになってリスナーが聞いたときに、さらっと歌ったほうが心に入ってくることが私はあるので、今回は抑制したほうがいいかなと思ったんですよね。

Drop's 「未来」MV

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荒谷朋美(Gt)

「もう一段階、いろんな人に聞いて欲しい」

——2曲目の「恋は春色」は昭和の歌謡ポップスというか、オールディーズの日本語カバーのような雰囲気がありますね。 中野:オールディーズっぽい曲をやりたいというのはずっとありました。コードを作ったときにキャンディーズとか太田裕美さんのような昭和のアイドルのような可愛らしさも欲しいな、楽しそうだなと思って。けっこうコテコテの歌詞も楽しんで書きましたね。 ——たしかに、楽しんで書いていることが伝わってきました。オールディーズ的な曲はコードも含めて、ある種のお約束がありますよね。この曲でいうと、「ディン・ドン・ダン」とか。メンバーはこの曲についてなんと言っていました? 中野:意外と違和感なく受け入れていました。それぞれのソロもこうしてほしいと私が伝えて思い通りになったので、私としてはそれも楽しかったです。 ——3曲目の「Purple My Ghost」になると、ブルージーでバンドの特徴もよく出た曲に感じられました。 中野:ギターの荒谷が前から作ってあったリフをバンドに持ってきて、去年の冬くらいにできた曲ですね。荒谷が持ってきたリフがすごくハードだったので、そこからイメージして言葉を集めてきて、自分の言いたいことも含めて書けたかなと思います。楽曲としては、荒谷はハードロックが好きなので、そういうところが曲に出てると思います。 ——4曲目には、キャロル・キングの「You’ve Got A Friend」をカバー。原曲のアーシーでせつない、70年代のウエストコーストの雰囲気をバンドでうまく再現していて、キャロル・キングへのリスペクトを感じました。この曲を選んだ理由は? 中野:私はキャロル・キングがすごく好きで、弾き語りのライブでほかの曲をカバーしていたんですけど、今回バンドでやるにあたって、みんなが知っている曲がいいかなと思って、この曲を選びました。キャロル・キングのナチュラルで暖かくて女性らしいところが素敵だと思っていて、彼女の持つ包容力というか、そういう部分が出せたらいいなと思って歌いました。 ——ボーカルとして、あるいはDrop’sとして目指すものと、キャロル・キングの音楽は重なるところはありますか? 中野:飾らないところというか、何かを狙っているんじゃなくて、自然体のままでやっている感じですね。そうなれたらいいなと思います。キャロル・キングの作品では『Tapestry』(つづれおり)が好きで中でも「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」が好きですね。 ——キャロル・キングはたくさんのアーティストがカバーしているのですが、あの生っぽい雰囲気を出すのは難しいようなイメージがあるのですが。 中野:コードとかもけっこう難しくて、メンバーはだいぶ苦労してたみたいです。ただ、ギターソロは入れたんですけど、「ああしてこうして」というよりは、Drop’sでそのまま演奏したという感じですね。原曲はピアノがメインのようなところがあるので、ギターは荒谷の色を出してもらったほうがいいなと思って。 ——今のDrop’sのスタンスが見える今作でしたが、今後、バンドとしてはどのように進んでいきたいですか? 中野:新曲もどんどん作ってますし、もう一段階、いろんな人に聞いて欲しいという気持ちはありますね。ライブでは今年も変わらず自分たちがカッコいいと思うことをやって、見ている人を夢中にさせるライブをやって行きたいと思います。
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奥山レイカ(Dr)

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中野ミホ(Vo&Gt)

「まず声があってそこからどう表現していくか」

——今回は、ボーカリストとしての中野さんについても聞いていきたいと思います。作品を作っていくうちに「こんな歌を歌いたい」「こんなボーカリストになりたい」という思いが生まれているのではと思いますが、今、ボーカリストとして、どのようなところを目指しているのでしょうか。 中野:やっぱりいろんな歌が歌えるようになりたいし、私だけど私じゃないというようなところがあっても面白いと思います。でも、ブレない軸はちゃんとあって、その上でいろんな曲や表情がある歌い手になりたいです。自分の声についても聞かれることが多いですけど、自分の声は好きですし、まず声があってそこからどう表現していくかを考えたいですね。 ——ボーカリストとして、今後、何を目指すのかを伺う意味でも、今回中野さんの好きなボーカリストを挙げていただきました。それはTHE BACK HORNの山田将司さん、エレファントカシマシの宮本浩次さん、山口百恵さんですが、3人とも世代も方向性も違っているけど、唯一無二の個性を持つ方たちですよね。まず、THE BACK HORNの山田さんを挙げた理由を教えてください。 中野:私が中学生のときに、初めてTHE BACK HORNを聞いて、すごく救われたというか心の支えになって。山田さんの歌はCDももちろんですけど、ライブで聞くと、本当に心にすっと歌が入ってくるというか。だけど、曲によって表情が違っていて、すごく色気があるし、背中を押してくれる歌もあって、素晴らしいなと思ってすごく好きです。 ——実際にライブも何回か観てますか? 中野:はい。ファンクラブに入っていたので(笑)。 ——特に好きなアルバムや楽曲は何ですか? 中野:それこそ「未来」という曲は、歌いだしが好きですね。初めてギターで弾き語りをしたのもTHE BACK HORNの「冬のミルク」という曲です。別に誰に聞かせたわけでもないんですけど。 ——では、次にエレファントカシマシの宮本さん。いつ歌を聞いたのでしょうか? 中野:たぶん、エレカシも中学生のときですね。最初にベストアルバムを聞いて、「悲しみの果て」がすごくいいなと思って。そこからですね。 ——宮本さんは、日本の音楽シーンの中において、まさに孤高のボーカリストだと思います。けっして真似できる人ではないというか。彼の歌の魅力はなんだと思いますか? 中野:人間がそのまま出ている感じがすごくカッコいいし、ステージもハチャメチャだけどクッとくるじゃないですか。「本当にそういう人なんだな」という感じがして、観ていて元気になれるし、本当に涙が出るぐらいに歌がストレートに入ってくる。あの感じがすごく好きですね。 ——「悲しみの果て」を挙げてもらいましたが、特に好きなアルバムは。 中野:『STARTING OVER』はいつも聴いていますね。 ――〈ふたり並んで腰かけていた井の頭公園で…‥〉というフレーズが頭に浮かびます。 中野:そうですね、「リッスントゥザミュージック」も入ってます。札幌でのライブもよく行っていました。歌詞に街の風景がいつも出てきて、散歩してる感じとか、すごくわかるなと勝手に思ってます。 ——そして、山口百恵さんは、また違ったジャンルの偉大なシンガーですが、どのような理由で挙げていただいたのでしょうか? 中野:声が低いけど、すごく色気があるし、ずっと色あせない美しさがあるなと思って。日本語がすごくきれいに聞こえるというか、細かいことなんですけど、「が」などの濁音の発音がすごく好きで真似したくなります。けっこうロックっぽい曲もあるけど、それもそのままのテイストで歌ってる感じがカッコいいなと思うんです。 ——「さよならの向こう側」などのバラードっぽい曲もあれば、ロックっぽい曲もありますよね。好きでくり返し聴いているのは、どのような曲でしょうか? 中野:「横須賀ストーリー」とか、「ロックンロール・ウィドゥ」は歌ったりもしましたし、カッコいいなと思います。 ——彼女は若くして引退しているから、実は全盛期の山口さんと今の中野さんは同世代ですよね。 中野:それがもう信じられないですよね。 ——映像で観てもすごく大人っぽいですよね。中野さんにも独自のスタイルがありますが、挙げてもらったボーカリストから学ぶこと、参考にすることはありますか。 中野:私は、自然と好きなものがしみ込んでいるというのがあると思いますし、ステージ上での細かいふるまいとか、「これ、カッコいいな」と思ったらやりたくなるときはありますね。例えば山田さんだったら、モニターに足をかけたりとか(笑)。時々やっちゃいますね。山田さんも言葉がしっかりはっきり聞こえてくるのがすごいし、それが魅力だなと思います。
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小田満美子(Ba)

「自分たちのロックンロールは大事に作っています」

——今回のDrop'sの作品に話を戻すと、歌詞の言葉をほとんど一発で聞き取れるんですよね。中野さんご自身も、言葉を明瞭に伝えるというのは意識していることですか? 中野:そうですね。やっぱり言葉はちゃんと聞こえないと嫌だなと思うので、そこは気をつけています。 ——中野さんはボーカリストであり、ある意味、詩人でもあると思うのですが、今後、書き手として「こういう風景を描いていきたい」「こんな歌を届けたい」というのはありますか? 中野:特に今、私たちは曲の幅が広くなってきているし、いろんな内容の歌があっていいと思うんですけど、聞く人が風景が思い浮かべたり、生活のなかで聞いて、ふといい気分になれたり、一行でも「あ、これわかるな」とか「いま見ている風景に合ってるな」とか、そういうことを感じてもらえたらなと。あとは、自分が全然違う世界を見ることができたら、それを提示できる詞を書きたいと思います。今も札幌に住んでいるんですけど、東京は全然違いますし、でも面白いと思うことはたくさんあるし、それも含めて見たものとか、気持ちをこまかく記録して、歌詞にして残したいなと思いますね。
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石橋わか乃(Key)

——今回お話を聞いていて、中野さんにとって歌詞と歌は非常に切り離せないところがあるのかなと思いました。今、曲はどんどん書いている状態ですか? 中野:はい。今アルバムを作っているので、レコーディングしたり、曲も書いてますね。歌詞もあとちょっとですね。 ——今作のEP『未来』はある意味アルバムのヒントになると言っていいのでしょうか? 中野:うーん。あんまりヒントにならないかもしれないです(笑)。楽曲も結構幅広くて、だけど自分たちのロックンロールは大事に作っていますね。 (取材=神谷弘一/構成=高木智史)
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Drop's『未来』(STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS)

■リリース情報 『未来』 発売:2015年4月22日 KICM-1589 ¥1,018(税抜) STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS 《収録曲》 M1「未来」・M2「恋は春⾊色」・M3「Purple My Ghost」・M4「Youʼve Got A Friend」 全4曲収録 ※2015年 夏、メジャー3作目となるフルアルバムのリリースが決定 Dropʼs OFFICIAL SITE:http://drops-official.com Dropʼs Channel:https://www.youtube.com/user/dropschannel