NMB48渡辺美優紀、自身の今後について言及 「さや姉と同時卒業かな…」

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渡辺美優紀『やさしくするよりキスをして(初回限定盤)(DVD付) 』(キングレコード)

【リアルサウンドより】  AKB48グループのメンバーによるトークドキュメンタリー『AKB48旅少女』(日本テレビ系)。6月7日放送回では、渡辺美優紀(NMB48)、太田奈緒(AKB48)、岡部麟(AKB48)、佐藤栞(AKB48)による「渡辺美優紀とチーム8の初体験の旅」がオンエアされた。  同番組は、AKB48のメンバーが毎回異なる括りの数人で旅に出るトークドキュメンタリー。アイドルとして日々奮闘するメンバーが、まるで本当のオフのように仲間との時間を楽しむ旅をするという企画だ。冒頭、この日が初対面だという渡辺とチーム8の3人(太田・岡部・佐藤)が挨拶をし、フェリーへと搭乗。3人全員が同じCanonのカメラを使用していることで盛り上がり(東と梅本はX7、高柳はX5)、番組がスタート。船内では渡辺が後輩3人に「悔しいことは?」と質問すると、岡部は「先日初めて10人選抜が出来て…」と語り、3人ともその選抜に入っていないことを告白すると、渡辺は「私も選抜から落ちたから大丈夫」と励ますが、選抜落ちの理由が理由だけに、後輩たちもリアクションに困っていた。  続いて握手会についてのトークでは、佐藤「決められたことしか言えない」渡辺「私も最初はがむしゃらやったけど、人と一緒が嫌で。“釣り師”って呼ばれてるけど、みんなと違う握手をしようと思ってるだけやから、3人にもオリジナリティなものを作ってほしい」とエールを送り、太田相手に疑似握手会を実施。太田は見事に「次握ってもらいたい」と釣られてしまったようだ。その後、対岸に到着した4人は、釣具店で買い出しを実行。エサ用の生きたアオイソを嫌がるチーム8の3人を相手に、渡辺は「ほら!」と虫を差出し、ドSぶりを見せつけた。地元の漁業組合協力の元、岸での釣りを開始した4人だったが、30分経ってもアタリは来ず。その間、4人は「なぜアイドルになったのか?」について話を展開。岡部は「インターネットで募集を見つけて、〆切1時間前にちゃちゃっと写真撮って送ったら合格した」と明かすと、佐藤は「友達に『心細いから一緒に受けて』といわれてここまで来た」と告白、渡辺は「高校の勉強が難しくて赤点ばかり取ってたら、先生からアイドルを勧められた」と、三者三様の入り口について語った。  続いて、渡辺は3人に「誰に負けたくない? やっぱり中野郁海ちゃんとか坂口渚沙ちゃんとか?」と質問。しかし岡部は「心から応援できる2人なので悔しいとかは無い」と返し、これを受けた渡辺は「さや姉(山本彩)といつもペアで撮影させられて、負けたくないというプレッシャーは3年間くらいあった。でも将来何をしたいか考えた時に、AKB48がゴールじゃないと気付いて、比べることは無くなった」と明かし、太田から「山本さんのことはどう思ってるんですか?」とさらなる追求を受けた渡辺は「学校にいたらあまり仲良くなって無いやろうし、プライベートでもあまり連絡取り合わないから友達みたいな感じではないけど、将来のことや卒業するタイミングを話したりする」と2人の関係性について語った。また、渡辺は「始めの頃はライバルに見せるように大人に仕掛けられてきたけど、グループをこうしていきたいとか、自分たちがどういう風に卒業するのがNMBのためとか考えてると仲良くなった。戦友って感じ」と、山本との信頼関係が構築されたことを明かした。  その後、4人はフェリーで海上へ出発し、海釣りを開始。太田以外は全員魚を釣り上げ、その後釣ったアジを調理してもらうことに。出された魚料理に舌鼓を打つなか、太田が「今までの活動で一番楽しかったことと辛かったことは?」と質問。渡辺は「鮮明に残ってる嬉しい瞬間は、じゃんけん大会で優勝したこと、辛かったことはいっぱいあったけど、振り返ってみると大変なことも乗り越えて少しは成長できたかな」と悟りを開いたかのような表情で語ってみせた。  番組の最後には、渡辺が自身の卒業に言及。卒業のタイミングについて「自分だけの問題じゃないし、さや姉と『どっちかが卒業したら残った方がつらいよな』って話してて、だから同時卒業かなって…。あとは、楽しく卒業できるタイミングで。NMBもまだいい子が沢山出てきてるから楽しみ」と締め、番組が終了した。  後輩との対話を通じて、渡辺の精神的な成長がはっきりとわかった今回の放送。次回は小嶋真子(AKB48)岡田奈々(AKB48)、西野未姫(AKB48)、北川綾巴(SKE48/AKB48)渋谷凪咲(NMB48/AKB48)田島芽瑠(HKT48)朝長美桜(HKT48/AKB48)による「今こそ見たい! てんとうむChu!の旅」がオンエアされる予定だ。 (文=向原康太)

怒髪天はなぜいつも“想像の斜め上”を行くのか? 主催&出演イベントから独自スタンスを考察

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【リアルサウンドより】  今の日本の音楽シーンにおいて、怒髪天ほど異彩を放っているバンドはいないのではないだろうか。“JAPANESE R&E(リズム&演歌)”を称する音楽のみならず、発言もやることも他のバンドとは一味違う。想像の斜め上を行っているのである。そんなつかみどころのない存在を象徴するイベントが2週続けてあった。初夏にふさわしく汗ばむ陽気の5月の日曜日、暑苦しくもゆるいおっさんたちのお祭りである。

2015年5月17日〈大怒髪展 2015 “歌の歓楽街”〉

 昨年春、タワーレコード渋谷店で行われた展示会は続編として今回、渋谷TSUTAYA O-EAST&TSUTAYA O-WESTでの2会場を使い、“ライブ+α”のイベントへと規模が拡大された。さまざまな趣向が盛り込まれた、なんでもありの内容は元より、オフィシャルサイトにて事前にアップされたchan-saka(坂詰克彦)直筆のタイムテーブル。手作り感満載の香りにイヤな予感しかしない… もちろん、期待を込めた良い意味でだ。
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 会場には〈大怒髪展〉ののぼりと大きな垂れ幕。よく見ると、去年使用したものに、先頃リリースされたコンピレーションアルバム『怒髪天 酒唄傑作選 ~オヤジだョ! 全員酒豪~』ポスターが文字を隠すように貼られているだけような… 。O-EAST 2Fには写真展『石井麻木の怒髪展』、過去から現在に至るまでの貴重な写真が飾られている。本来なら「あの頃は〜」なんて、いろいろと思い出すものだが、今とほとんど変わってないその姿に、ブレない一途なバンドの生き様を感じる。
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 O-EASTのサブステージ“煎茶ステージ”に揃いのオーバーオール姿で登場した“怒髪天アコースティックサービス”でイベントはスタート。3年B組宿六先生、水戸黄門、北島三郎…、小ネタとモノマネをしっかり挟み込んでくるのはさすがとしか言いようがない。どこかアクの強さが目立つバンドではあるが、個々の演奏技術とアンサンブル、音楽的な引き出しの多さを実感。祭囃子からランバダまで、笑いを誘いながらも、聴かせる要素はしっかりと。ごまかしの効かないアコースティック編成だからこそ知ることの多い、バンドとしてのレベルの高さである。  その後、休む暇なくフル稼働のメンバー。増子直純はO-EASTのGEEEN BAR“花林糖広場”で名古屋の名店・ユウゼンの名物「あんかけスパゲティ」の実演販売を。O-WESTの“マカロンステージ”ではアコースティックな弾き語りを主体としたライブ。清水泰次は、松原浩三(MILK&WATER)とのユニット“グリーンハイツ”で休日昼下がりの公園を思わせるゆったりまったりの歌を聴かせる。上原子友康は、上田建司とのユニット“MOIL&POLOSSA”、NAOKI(SA)と佐藤タイジ(THEATRE BROOK)とともに“フォークソング部”として出演。そして坂詰克彦は、菅波栄純(THE BACK HORN)を聞き手に迎え、コヤマシュウ(SCOOBIE DO)曰く、“甘噛み”な、答えになっていない人生相談を。かと思えば、EAST 2Fフロア、日も傾く夕暮れをバックにギターで熱唱。客側からは逆光でほとんど見えなかったのは、演出だったのか予想外だったのか…。どちらにせよ、いろいろ“持ってる”人である。弾き語りは申し分なく、中年男の歌としてグっとくるものがあった。メンバー各自がやりたいことをやりたいようにやる、これぞ怒髪天らしい、なんでもありのゆるい内容だ。
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 メインステージのO-EAST“大福ステージ”では、増子曰く「後にやりたくないバンド、2TOP」という、SAとSCOOBIE DOが熱いステージを繰り広げる。タイトなビートのパンクロックと、うねるグルーヴを響かせるファンクロック。硬派な両バンドは怒髪天の方向性とは異なるが、「“仲間のような”じゃねえ、仲間だよ」と増子に言われたことを明かすシュウ(SCOOBIE DO)のMCに、バンドの横のつながり、人望の厚さを垣間みる、このイベントの意味を感じる一幕でもあった。
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 そして、怒髪天に欠かせないもの、酒である。O-WEST入り口には“振る舞い酒”がある。ステージ進行の被りはほぼないのだが、隙間のないタイトなタイムテーブルのため、すべて観ようとするのは大変だ。だが、酒を片手に自由きままに、まったりと2会場を行き来する幅広い来場者に、このゆるいイベントらしい光景を見た。
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 最後を飾るのはもちろん、怒髪天のステージだ。「酒燃料爆進曲」「押忍讃歌」と序盤から盛り上げ、「トーキョー・ロンリー・サムライマン」での女王・八代亜紀の登場に会場全体が沸く。まさに〈昭和のメロディー道連れに 平成の風を肩で斬る〉ような八代&増子のデュエットは、声の相性ともに意外?にもバッチリである。カトウタロウ(Gt.)と奥野真哉(Key.)をサポートに迎え、会場一体のフリつき大合唱の『雨の慕情』。「八代さんとの共演はボーカリストとして苦行ですよ」「無粋な者は引っ込みます」といいながらも、イントロに合わせて「歌は世につれ世は歌につれ、昭和が生んだ演歌の女王・八代亜紀さんが今宵、大怒髪展のために歌います、曲は『雨の慕情』」と浜村淳風の曲紹介ナレーションをしっかり務めてからはけていく。さすが増子である。 増子「子どもの頃から聞いてます!」 八代「子どもの頃?!」 増子「大人になってから聞きました!(汗) 最近ですもんね!!」  誰もが知る名曲「舟歌」で演歌の神髄を見せ、再び増子とのデュエット「Fly Me to the Moon」。「いやぁ、今年も終わった、いい年だったねー、来年もよろしくねー」演歌の女王降臨による壮大な年末感で大団円を迎え、バラクーダのカバー「日本全国酒飲み音頭」、バカ騒ぎの〈酒が飲める 酒が飲める 酒が飲めるぞ!〉大合唱でイベントは幕を閉じた。  余談だが、この日同じく渋谷のクラブクアトロでは交友の深い、ザ・コレクターズのワンマンライブが行われていた。あちらは17時スタート。怒髪天のステージは19時10分〜だった。終演後にクアトロからO-EASTへ来た来場者がどれほどいたのか解らないが、この被らせない細かい配慮に、加藤ひさしも「増子は良いヤツだよ」と自身のポッドキャスト番組で語っていた。
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5月24日〈ハロー西荻〉

「普通はこういう仕事してるとどこ住んでるとか言わないのに、“西荻住んで25年”とか言っちゃってるからね」(増子)  ファンにとっては、“聖地”としてお馴染の街、西荻窪。この日は地元のお祭りイベント〈ハロー西荻〉への出演、高井戸第四小学校校庭でのアコースティックライブだ。サッカーゴールポスト前に設置されたステージ、校長先生が立つ朝礼を思い出すような光景である。電源が安定しないため、増子が持ち前の巧みな話術でその場をつないでいく。「荻窪と吉祥寺は家賃が高かった」「若者が少ない」「普段何してんだろっていうおじさんが昼間から“戎(西荻の名物やきとり店)”で飲んでて、すげぇ街だなと思ったけど、今やその1人になってます」「オレの声聴いて美しい声だなぁと思ったら耳悪いんで、山口耳鼻科行って下さい、いい先生だから。内科もあります」流暢に語る西荻地元ネタは、初めて怒髪天を観るであろう家族連れや地元の人たちにも好評だ。
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 “シャレオツ”な感じの「オトナのススメ」、NHKアニメでお馴染みの「団地でDAN ! RAN !」、ディスコ〜ランバダの「己ダンス」。いつもと違う環境とお客さんを前に、炸裂する怒髪節。決して耳馴染みがよいとも、ポップとも言いがたい歌だが、なぜか親しみを覚えてしまうのが、不思議な魅力である。  通常ロックバンドのアコースティック編成といえば、バラード調であったりと、ゆったりしたアレンジをしっとり聴かせる場合が多いのだが、怒髪天のアコースティックは実に騒々しく、にぎやかである。出番前にチンドン芸能社が「日本全国酒飲み音頭」で校庭をぐるりと回り盛り上げたが、まさに“ちんどん屋”に通ずる、お祭り騒ぎなのである。  「もうちょっとやりたいけどダメなんだって。怒られるんだって。来年50歳になるからあんまり怒られたくない(笑)」  〈西荻に日が昇る~〉と老若男女が盛り上がった「ニッポンワッショイ」でライブは終了した。
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 渋谷と西荻窪、両極端ともいえるこの街を、カッコつけることも媚びることもなく、どちらも自分たちのペースで、自分たちの色に染めた。こんなおっさんたちが、楽しそうにライブやって酒呑んでバカ騒ぎしてるのだ。日本のロックシーンに怒髪天がいることを誇りに思えた二日間であった。 ■冬将軍 音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ

AKB48の「ミュージカル路線」はここまで進化した 舞台『マジすか学園』が示したAKB歌劇団の最新系

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舞台「マジすか学園 」~京都・血風修学旅行~HP

【リアルサウンドより】  TVドラマ『マジすか学園』シリーズを舞台化した『「マジすか学園」~京都・血風修学旅行~』(渋谷・AiiA Theater Tokyo)が5月19日に公演を終えた。ドラマ版の『マジすか学園』、特にシリーズ初期の作品はAKB48の新たなファン開拓の入口にもなった人気作だが、それは同作に現実の48グループが描く人間関係のダイナミズムを踏襲した設定が織り込まれていたことが要因だった。宇野常寛氏がかつて整理したように、ファンの間に浸透していたAKB48の各メンバーのキャラクターをオリジナルとして、「秋元康を中心としたプロデュースチームはその二次創作として公式製作のテレビドラマを送り出し、アイドルの身体はその二次創作的キャラクターを演じる」(宇野常寛『リトル・ピープルの時代』:幻冬舎)という構造が『マジすか学園』にはあった。今回の舞台化は、その公式による二次創作的フィクションである『マジすか学園』を舞台演劇の場で再度、アイドル自身のライブの身体的パフォーマンスとして作り直す試みということになる。  現実(実際の48グループ)→現実を踏まえつつ構成されたフィクション→そのフィクションをオリジナルのアイドル自身によって舞台化という、複数のジャンルのコンテンツにまたがって再解釈を加え虚実を交錯させる方法は、昨年9月および今年3月に上演された舞台『AKB49』にも共通したものだ。特に際立ったキャラクターを複数生み出した『マジすか学園』についていえば、映像メディアで生み出したそのキャラクターが、舞台というアイドル自身のパーソナリティが強く滲みやすいライブの場でどのように再構築されるのかが注目された。今回の舞台で最もフィーチャーされたのは、松井玲奈演じるゲキカラである。ドラマ全シリーズを通じて屈指の人気と完成度の高さを誇るゲキカラを演じた松井は、編集のきかない舞台の場でもそのイメージを壊すことなく、ゲキカラの破綻的な性格や独特の佇まいをキープし、ポテンシャルの高さをうかがわせた。フィナーレではキャストが劇中人物かつ48グループのメンバーとしてマイクを握るが、ここでの松井は一挙手一投足に「ゲキカラ」と「松井玲奈」を二重に映すような際立った振る舞いを見せ、演者としての懐の深さを見せつけた。また、フィナーレで歌われた楽曲はAKB48「前しか向かねえ」だったが、2014年の大島優子卒業に際して制作されたこの楽曲がチョイスされることで、TVドラマにおいて大島が演じた「優子」へのゲキカラの思慕とも重なり合い、虚実を絡ませて再解釈を重ねていくような、48グループのフィクション作品の効果がここにもあらわれていた。  いま、「前しか向かねえ」について言及したが、48グループの手がける演劇は、グループがこれまで発表してきた楽曲を随所で活用するミュージカルとしての側面を持つ。いうまでもなくAKB48グループは、各グループのシングル曲とカップリング曲、それに劇場公演曲と、膨大な楽曲アーカイブを持ち、なおかつその総数は毎年定期的にシングルがリリースされることで、ハイスピードで増えていく。舞台『マジすか学園』『AKB49』は、それら48楽曲を駆使して制作されている。大きなヒットを記録してきたシングル曲にせよ、今回の『マジすか学園』でいえば「おしべとめしべと夜の蝶々」のように継承されてきた公演曲、あるいは現在の新進メンバーによって勢いと不穏さが表現されたアルバム曲「Birth」にせよ、舞台の物語に合わせて適用されることで新たな解釈を施され、また楽曲に合わせてシーンがつくられることで既存曲のイメージも豊かなものになる(とりわけ「Birth」は、小嶋真子と同曲歌唱メンバーでもある大和田南那のアクションシーンに用いられ、潜在能力の高い若手の不敵さを象徴する効果をあげていた)。48グループの積み上げてきた楽曲群の表現を広げる手段としても、ミュージカル公演は有効なものになっている。  このところ、『AKB49』『マジすか学園』もしくは『指原莉乃座長公演』と、48グループが手がける演劇企画が相次いだが、AKB48の楽曲をミュージカルに活かすという発想は、早いところでは2009年のAKB歌劇団『∞・Infinity』で具現化していた。同作の構成・台本・演出を手がけた広井王子は当時、AKB48楽曲を集めて物語を立ち上げるに際して、AᗺBAの楽曲群を使いながら物語を構成したミュージカル『マンマ・ミーア!』を着想のヒントとして挙げている。『∞・Infinity』は『マンマ・ミーア!』のようにAKBの既存曲を多数用いながらオリジナルの物語として構成し、AKBミュージカルの端緒となった。『マジすか学園』等のミュージカル公演は、かつて定期的な活動が嘱望されながらも長期プロジェクトには至らなかった、AKB歌劇団の系譜を継承する最新系でもある。  AKB歌劇団の演出を引き受けた折に、広井がAKB48に宝塚歌劇団や松竹歌劇団を重ね合わせていたように、「歌劇」はAKB48を立ち上げる段階から秋元康の構想の中にあったものだ。常設劇場を持つことで公演スタイルとしてのそれは早くに実現していたが、ここにきて48グループは手持ちの楽曲アーカイブを活かしながら、演劇としての「歌劇」の実践にも積極的になってきたように感じられる。かつてのAKB歌劇団は秋元才加、宮澤佐江という二人の優れた男役を生んだ。秋元は現在、AKB48グループの卒業メンバーのうちで最も優れた舞台女優に成長し、また宮澤も大きな舞台の経験を積みつつ『AKB49』では主演を務めるなど、AKB歌劇団の蒔いた種は時を経て各日に成果をあげている。AKB48グループのミュージカル路線が活発化することは、メンバーたちの将来的な選択肢やポテンシャルを広げるうえでも大きなものになるに違いない。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

ベッド・インが明かす、キャラクターを演じ切る覚悟「ちゃんと芯があれば、もっと自由でいい」

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【リアルサウンドより】  地下セクシーアイドルユニットのベッド・インが、6月3日に2ndシングル『♂×♀×ポーカーゲーム/消えちゃうパープルバタフライ』をリリースする。益子寺かおり(妖精達)と中尊寺まい(例のK)が“日本に再びバブルを起こす”ために結成した同ユニットは、主にライブハウスを主戦場とし、徐々にその過激なパフォーマンスと独特のコンセプトで人気を拡大している。今回の作品には、制作に日本のトップサウンドクリエーター集団「アゲハスプリングス」が全面監修で参加。バブル時代のヒット曲をイメージした、「踊れる歌謡ロック」を見事に完成させている。今回リアルサウンドでは、メンバー2人にインタビューを行い、結成のいきさつや彼女たちのロック観、キャラクターを演じ切る覚悟について語ってもらった。

「自分たちが面白いと思うものを、面白がってもらえることが一番大事」(中尊寺)

――2人はそれぞれ「例のK」と「妖精達」という2つのバンドのメンバーとして出会ったんですよね。 益子寺かおり(以下:益子寺):私は「妖精達」という、女5人の情念系の歌謡ロックバンドで10年以上ボーカルをやっているのですが、バンドがライブ活動を本格化した2010年頃にライブハウスで対バンするキッカケで、相方のまいと出会ったんです。 中尊寺まい(以下:中尊寺):正確には「例のK」ではなく、その前にジャパニーズ・ハードコアバンドのギターボーカルをやっていて、その時に出会ったんです。ややこしいので「例のK」って言ってますが(笑)。「例のK」では、反逆のハード歌謡みたいなものをやっていたんです。「ブラック・サバス」と演歌を足したような皮肉にキャッチーなロックを。 益子寺:当時のまいは、マイクをストラップにガムテープでくっ付けて、ギターを激しく弾き倒しながら歌うという斬新なスタイルで。彼女のプレイを見て「あのお嬢ちゃん、ただ者じゃないワ…HOTなパッションをビンビン物語に感じるわね…」と(笑)。その後、終演後のバーカウンターで「バブル顔って言われない?」という話で意気投合して……。 中尊寺:そこからはもう一人のバンド仲間を含めて“バブル顔3強”と称して頻繁に飲んでました。それが1~2年続いたころに、知人の誕生日企画に呼ばれて、SHOW-YAさんのコピーバンドをすることになり、今の形態に近いライブをしたんです。そうしたらみんな「うちの誕生日にも!」「うちの企画にも!」ってやまだかつてない程の欲しがる声をいただいて!(笑)。 ――たった一度限りの企画ユニットで終わるはずだったベッド・インを、本格的に始動させたきっかけとは。 益子寺:ライブが予想以上に好評だったこともありますし、飲んでいる時にふと「死ぬまでに写真集を作ってみたくない!?」という話題になって。C.C.ガールズさん、ギリギリガールズさんなど、バブル時代に一世を風靡した「セクシーアイドル」のようなイキフンで作りたいねって大盛り上がり。当時の写真集を参考に、自分たちでロケ地や衣装、構成やデザインのイメージを考えて、バンド仲間たちにも協力してもらい“真剣なお遊び”を一つの形にした、というか…。老後、孫に自慢できるような作品を作ろう!と、自腹を切って1年かけて作りました(笑)。 中尊寺:昔から当時の写真集を集めていることもあって紙媒体で背表紙のあるものに憧れがあったんです。で、そんななか、ライブのお誘いも多数いただくようになってきたので、「じゃあ、音源作らなきゃ」と打ち合わせをしました。活動するのに何が足りないかっていうのを、ちょっとずつ、後から足していったという感じですかね。 益子寺:ただ、写真集を最初に作ろうって思ったのも、ある程度お互いの考えが一致したからで。今って清純なロリロリアイドルが蔓延していて、やたら処女性が崇拝される世の中じゃないですか。ロンモチで彼女たちに全く罪はないのですが、流行に便乗する形で、みんなお揃いでロリロリ路線に興味と下半身のベクトルを向けちゃうのは不思議な話よねぇ~と。もともと、こういう便乗型の流行の風潮に対してアンチテーゼを掲げて活動してきた2人だったので「ロリっ娘もEけど、ケバっ娘もモアベターだよ?」って気概でケンカの安売りをおっ始めた感じです。 中尊寺:それと、やっぱり女の子がバンドやっているっていうだけで、嫌な言い方をすると、舐められることが多かったんですよね。私は着ている服装や見た目だけで「スタッフはそこでやって」とか「どこのメンバーの彼女?」というふうに言われたりしましたし、だからこそ前のバンドでは、出来る限り露出をしないようにしていました。女であることに甘えず、逃げないパフォーマンスや技術がないといけないんだと。そういう鬱屈とした感情を持ちながら、一方で「じゃあ、自分の中にある女という性を全面に出したらどうなるんだろう」ということも考えていて、その反動がこういう形になって表れたのかもしれません。 ――鬱屈した感情が溜まっていたぶん、その反動がかなり大きかったということですね。 中尊寺:「じゃあ、もうとことんやってやろう」という気持ちになりました。 益子寺:確かに、その“なめ猫精神”は、お互い持ち合わせていたものなのかも。私も「妖精達」は女5人のバンドだから、似た葛藤が過去にあって。「ガールズバンド」というだけで、音楽ではなくルックスのみで判断されるという風潮に遭遇したり。そういったある種の男尊女卑には疑問を感じていたし、だからこそ舐められないように「楽曲、演奏力など音楽に対してはとことん真摯に、パフォーマンスは男勝りに」という所は常に意識してきました。しっかり勝負の土台を作った上で、女の官能的な要素も取り入れるっていう。 中尊寺:そういう気持ちがないと、この歳になるまでに女の子ってバンド辞めちゃうんですよね。学校を卒業して、就職を機に辞めちゃうとか、結婚とか妊娠とかでどんどん辞めていっちゃう。 益子寺:DA~YO~NE~♪ あ、でも男の人はDAISUKI!なんですよ。 中尊寺:そうそう、そこは誤解しないで欲しいんですけど、処女信仰的なものに疑問があるだけですし、やりたいことに関してはナメられたくないというだけなんです。 益子寺:そこは2人とも共通してずっと持ってる部分ですね。周りから「吹っ切れたパフォーマンスをしている」と言って頂けるコトがあるのは、そういう気持ちでずっとやってきたからで、意識してというよりも自然に滲み出ちゃう部分なんだと思います。 ――なるほど。2人のこのトリッキーなパフォーマンスも、実はロック精神のある音楽性がしっかり根底にあるから出来ることなのだと感じました。 中尊寺:きゃ~の! そう言っていただけるとマンモスうれPです♪ 要は自分たちが面白いと思っているものを、面白がってもらえることが一番大事マンっていうか。喜んでいただけたら私たちの下半身のポケベルもリンリンに鳴っちゃいますね(はぁと) 益子寺:ホント、ナニからナニまでGスポットを探すみたいにE気持ちになれるコトを追及して、自分たちの意思で好き勝手にヤッちゃってますからね(笑)。そういう姿を見た性徒諸クン(=ファン)から「ベッド・インを見ると何だか元気が出る!」「悩みがどうでもよくなった(笑)」とか「もっと自由に生きていいんだって思った」と言って頂けることもあって。 中尊寺:ちゃんと芯があれば、もっと自由でいいんじゃないかと思いますね。その熱量がバブル時代の面白いところだとも思っているので。 益子寺:それこそ、例えばテレビ番組とかも当時と違って、どんどん規制が掛かる今の世の中…チンカチンカにおカタイよね~。だって真昼間から「スーパーJOCKEY」とか放送してたんですよ!?「もっとみんな、自由にケーハクに生きちゃえばいいのに♪」って思いますネ!女にも性欲あるし。 中尊寺:100%So! かもね! 一人でも二人でも三人でもにこにこにゃんにゃんヤッてみちゃえばいいと思います!!! ――でもそれをシリアスにすると社会活動になるのを、敢えてユーモアでもって提示していると。現場には若いファンの方も多いですよね。影響を受けてバブル風の出で立ちで来る20代女性を何度か見かけました。 中尊寺:「よくわかんないけど、ギラギラしていて面白い」って言われました。あと「ナニ言ってるかわかんないけどウケる」とか(笑)ちょっとゆるキャラ的なところがあるのかも知れないですね…ま、ウチらは締めすぎちゃう締めキャラなんですけど(笑)。それに、「こんなボディラインが出た服とか着たことない~!」って言いながらライブにボディコンを着てきてくれると、一歩踏み込んでくれたと感じて嬉しくなりますね。 ――それこそ、まいさんのように、世の中でグッと抑圧されている子たちにとって跳ね返りの場になるのかもしれませんね。 益子寺:そうですね。もっと自分を解放してE気持ちになりまショ?ベッド・インのおギグに、目を閉じておいでよ…♪
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「これぞ「ボディコン・ロック」だと(笑)」(益子寺)

――トリッキーな見た目とは裏腹に、楽曲はムーディーな歌謡曲とディスコサウンドが組み合わさったクオリティの高いものですが、2人の音楽的な原点はどこにありますか? 中尊寺:私はもともと昭和歌謡が好きで、高校生くらいからすごく聴いています。わかりやすいところで(山口)百恵ちゃんとか、(工藤)静香とか、(中森)明菜ちゃんだとか、本田美奈子さんとか、畑中葉子さん…あとは阿木燿子さんの詩の世界観や宇崎竜童さんの歌謡曲でもしっかりリフのあるロック観だったりが好きで。「バブル顔だね!」って言われるようになった大学生頃からは、意識的にそこから一歩踏み入れたものまで聴くようになって、セクシーアイドルまで幅広く聴くようになりました。特に安全地帯やバービーボーイズには影響を受けて。当時から切なくてキャッチーなものが好きなのかも知れません。 ――先ほどバンド時代の音楽を「ブラック・サバス」的なものと言っていましたが、そのあたりはどこから影響を受けたのでしょう。 中尊寺:難しいですけど、初期のXかな…いや、一番最初は筋肉少女帯ですかね…そこから人間椅子や有頂天、ザ・スターリン、頭脳警察、あぶらだこなど掘り下げる形で日本のパンクを聴きました。あとは、三上寛、友川かずき、山崎ハコと佐井好子。「例のK」の前身バンド「中学生棺桶」にもかなり影響を受けました。昭和歌謡は母親の影響があると思うんですけど、すごく響くし覚えやすい。やっぱり日本人なので、日本語じゃないとグッと来ないというか…昭和歌謡は人生のなかでずっと聴き続けるんだろうなと思います。 益子寺:私が音楽に目覚めたのは、幼少期に親の影響で聴いた松任谷由実さんがきっかけだったと思います。色んな作品を聴いてましたが、小学生の頃、特に「この世界観、たまらない!」と衝撃を受けて狂ったように繰り返し聴いた記憶があるのは「真夏の世の夢」でしたね。あの官能的で妖艶な雰囲気。あとはシャカタクがお気に入りで踊っている映像が残ってたり…(笑)なのでおチビちゃんの頃からアーバンな雰囲気は好きだったのかなと。  歌うことも好きだったんですけど、実は小学生の時に音痴コンプレックスを持ってしまい、人前で歌うことが極端に怖くなってしまって。それでも音楽は好きだったので、高校生の時にギター担当でバンドを組みました。で、途中で「デス声なら音程関係ないから、人前でも歌える!」ということに気付き(笑)。PANTERAやTHE MAD CAPSULE MARKETS、YELLOW MACHINEGUN、S.O.D.とかをコピーして、メタル、ハードコアにどっぷりでしたね。そこから、今でも好きなTOOL、Meshuggah、Opethとかプログレ要素の強い音楽も聴いたり。一方、カラオケでは山口百恵さん、中森明菜さん、大黒摩季さんなど女性の歌謡曲・J-POPを密かに練習して。大学で環境が変わったタイミングで「妖精達」のメンバーと出会ってバンドを組み、人前で歌う決心がついて今に至りますね。 ――プレイヤー・パフォーマーとして影響を受けた方もいるのでしょうか。 中尊寺:ザ・ランナウェイズのリタ・フォードは、体型的に似ているので意識してます(笑)。あと、人間椅子の和嶋慎治さんを見てSGを買いました。学生時代からライブ活動をしているので周りのハードコアなおじ様やお姐さま方には無意識に影響受けていると思います。 益子寺:音楽じゃないんですけど、私、プロレスが本当に好きで。ライブやパフォーマンスのスタイルに関しては、プロレスに出会わなければ今の自分の姿は存在しないというくらい、プロレスから与えられた影響は大きいです。例えばヒールの選手って、入場からマイクパフォーマンス、試合のスタイル、人によっては試合以外の場でもヒールをやり切るじゃないですか。 ――エンターテインメントを演じきる、という感じですか? 益子寺:そうですね。入場の演出から、アングル、ブックに至っても、パフォーマンスのヒントがたくさん転がっていて。試合を観戦したり昔のVHSを集めたり。あとは、プロレスラーの皆さんが体を張ってリングに立っていらっしゃる姿や生き様にもロマンと刹那的なものを感じ、純粋にかっこよくて憧れているんです。私もステージに立つ時は死ぬ気で挑むぞ!って、いつも刺激と闘魂を頂いてます。 ――話を聞いていると、2人とも昭和歌謡っぽい歌詞を意識している部分もあるのかなと思いました。新曲はそれぞれが1曲ずつ作詞を手掛けていますが、「♂×♀×ポーカーゲーム」はかおりさんが担当していますね。どういう詞を意識して書きましたか。 益子寺:曲を最初に聞いたときに、強くてタカビーだけど、どこか憂いを帯びているようなナオン像のイメージが浮かんで。火遊びとして誘惑した相手を転がしているつもりが、いつの間にか自分がのめり込んでいた…という葛藤を描きました。踊れる曲ということもあり舞台はディスコのダンスホール。その駆け引きを80~90年代ならではのカタカナ英語を多用して描こうと思い、言葉を選びました。サビの「女体標識~イルミネーション~」や「イミテーション」から、あまり意味のない「Burning,Shake do it 」みたいなものまで(笑)。 中尊寺:私、この歌詞を最初に見て「絶対売れる!」って爆笑しました(笑) 益子寺:ストーリー性や心情を描きつつ、遊び心も取り入れて。「妖精達」のときは女の情念的な部分を、しっかり自分の内側にある感情・言葉を引き出して綴っているんですが、今回のベッド・インの曲ではひたすら歌いながら書きました。突然<スペードのキングは貴方~♪>なんて歌い出してはメモってを繰り返しました(笑)。 ――普段から歌に乗せて書いていくのでしょうか? 益子寺:いえ、普段はもともと書き溜めておいた歌詞や散文を曲に合わせて選んで、膨らませていくんですが、この曲は言葉の聞こえや語呂などを重視して考えたほうがいいなと思ったので、カラオケにこもって歌いながら考えていました。とにかく、聴いてくれた人が歌って踊れるように、わかりやすくキャッチーな感じにしたかったんです。 ――<大磯シーサイド>みたいにワンワードでバブル感が出るものもありますね(笑)。一方、まいさんが作詞を担当した「消えちゃうパープルバタフライ」は、少しアーバンで、大人しめなダンストラックです。 中尊寺:最初に聴いたときは、WinkやBabeや長山洋子さんのような“洋楽を日本風にリメイクしている雰囲気”を感じたんです。ずっとビートは鳴り続けていて、踊れるけど切ない感じですよね。私の一番好きな感情であるその「せつなさ」をわかりやすく出せたらと自分の実体験である不倫話をベースにしました。昭和歌謡といえば、叶わぬ恋!届かぬ想い!一度書いてみたかったんです、そういうの(笑)。 ――「♂×♀×ポーカーゲーム」と比べて、湿っぽい歌詞なのはそういう理由なんですね。 中尊寺:湿ってるのは歌詞だけじゃないんですけどね…セキメ~ン///あと、タイトルの「バタフライ」は、百恵ちゃんが「愛の嵐」という曲を夜ヒットで歌った時、首元に紫色のバタフライのタトゥーを入れていて、それが元ネタです。彼女はそれを隠しながら歌うんですけど、それってキスマークの暗喩で、ジェラシーを表現しているように見えたので“熱っぽい気持ちと冷静な気持ちをどっちも持っている女の人”という歌詞の登場人物と共通する部分があるなと。それから、紫色って赤と青を混ぜた色じゃないですか、ふたつの気持ちが入り混じっているという意味でも「パープル」という単語は入れたかったんです。でも、あまり昭和歌謡により過ぎないように、時代背景とかも気にしつつ<テレホンカード>や<レンタルビデオ>というフレーズも盛り込んでいます。 ――あとは、今回アゲハスプリングスの監修が入ったことで、2人の持っているロックテイストは残しつつ、かなりパキッとした音質になりました。実際に曲を受け取った時にどう感じましたか。 中尊寺:今までは自分たちや自分たちのバンド周りのメンバーと曲を作っていたので、こういったダンス・サウンドはなかなか生まれず……。 益子寺:今回の2曲がダンスナンバーになったのは、そういう理由もあって。ベッド・インは80年末~90年初頭やバブルをテーマにしているので、ユーロビートやディスコっぽい、お立ち台でジュリ扇を振れるような曲も作りたかったんですけど、自分たちはバンド畑でずっと育ってきたから、どうしてもバンドサウンドになっちゃう。アナログ人間だから打ち込みとかもわからない(笑)。なので、そういう曲を作るには、“マル金パパたち”の手をお借りしないと難しいなと思っていました。最初こそ多少の不安はありましたが、実際に曲を聴いたときに、バンド・サウンドと歌謡曲、ダンスビートがすごくきれいに融合されているものだと感じたので、これぞ「ボディコン・ロック」だと(笑)。 中尊寺:自分たちもやっぱり、ちょっとでもロック・サウンドがないと落ち着かないというか、気持ちが追いつかないところがあるんですけど、これはすごくうまくハマりました。 ――「ボディコン・ロック」。いいですね。2人の真骨頂であるライブでは、ロック調の楽曲がメインになってくると思うのですが、そこでどのように今回の2曲を機能させたいですか? 益子寺:今回はナニより「♂×♀×ポーカーゲーム」で相方のまいがギターを弾いているのが大きな違いなので、ようやくウチらのロック姐ちゃんの本領発揮!って感じでドヤ顔できる感じですネ。2曲とも色が違いますし、さらにバンド形式とユニット形式ではステージングも全然ちがった形になると思うので、違いを楽しんで貰えたらマンモスうれPです♪ ダンスの振付けは今回、二丁ハロのミキティ本物さんにお願いしたのですが、相当面白いダンスになっているので期待してて下さい…!

ベンツよりもBMWよりも「ハケ水車」に乗りたい(中尊寺)

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――今後の楽曲については、どういった方向に舵を切っていきたいですか。 益子寺:ロックテイストは残しておきたいですが、常に遊び心も大事にしたいので、それこそEAST END×YURIみたいな、ラップ調の曲なんかもやってみたいですね。 中尊寺:「てん・ぱい・ぽん・ちん体操」みたいなのも良いかもしれないですね!ちびっこの性の目覚めになりたいですし(笑)面白そうなことは全部やりたいんですけど、でも、根がロックなのでそこは大切にしたいです。それが無くなると、ただの面白おばさんになっちゃう! ゲロゲロ~!(笑)。 ――今作に付属している特典のDVDは、過激なイメージ映像が盛り込まれていますが、活動の原点である写真集やこの動画のようなヴィジュアル面ではどのように展開していくつもりでしょう。 中尊寺:あの映像に関しては、ふーみん(細川ふみえ)さんや杉本彩さんのVHSを参考にしています。ボサノバが後ろで流れていて、椅子に座ってくねくねしたり、海辺走ったり(笑)。 益子寺:写真集の次の夢としてリゾート地でイメージ映像という目標があったんですけど、それをまさかこんなに早く叶えられるなんて…下半身がハートカクテル状態…! 中尊寺:とにかく、ぶっとびぃ~! な内容ですので。18禁にならないのが不思議な位。 益子寺:ロンモチで音楽が一番大事MANだからそれは軸としてありつつ、写真集や今回のイメージ映像のようなちょっぴり刺激がツイキ~なスタイルも含め、色んな形でアウトプットし続けたいですね。自分たちがカッコ良くて面白いと思うコトは何でもヤリたいですね。夢がMORI MORIで、まいっちんぐ! ――ちょっとその夢、教えてもらってもいいですか。 益子寺:この前も、まさか叶うとは思ってなかったんですけど、映画の主演(『101回目のベッド・イン』)をさせていただいて。何にでもチャレンジしたいという精神はお互いにありつつも、自分で自分を殺してまで無理して何かをやるとか、自分のポリシーに反することはしないようにしたいなと。じゃないと、今までの主張が全部嘘っぱちになっちゃうので。 ――欲しがりだけど、それはあくまで自分たちの枠内で、ということですね。ほかにはどんな夢がありますか。 中尊寺:私はトレンディ・ドラマが大好きなので、自分の脚本で撮ってみたいです、というより実際いま書き溜めていて使いどころがないっていう…それを実現させて、2人が主演のドラマを撮りたい。あと結成時から言い続けてるんですけどベンツよりもBMWよりも「ハケ水車」に乗りたいです!!(笑)。 益子寺:この前、簡易的なものには乗れたんですけど、もうちょっと大きめのやつにね(笑)。あとは、深夜枠でラジオ番組を持てたらマンモスうれPで~す♪ マル金パパからのモーション、おマンちしてま~す! ――ピッタリだと思います(笑)。 (取材・文=中村拓海)
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ベッド・イン『♂×♀×ポーカーゲーム/消えちゃうパープルバタフライ』

■リリース情報 『♂×♀×ポーカーゲーム/消えちゃうパープルバタフライ』 発売:6月3日(水) 価格:1500円(税抜) <CD収録内容> M1.♂×♀×ポーカーゲーム M2.消えちゃうパープルバタフライ M3.♂×♀×ポーカーゲーム(カラオケ) M4.消えちゃうパープルバタフライ(カラオケ) <DVD収録内容> ・本人たちのインタビュー映像 ・楽しそうなイメージ映像 ・ライブ映像 「ワケありDANCEたてついて」 「POISON~プワゾン~」

H ZETTRIOが考える“音質”と“楽しさ”の関係「良い音を出し、そこからはみ出す意識も持つ」

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左から、H ZETT M、H ZETT KOU、H ZETT NIRE。

【リアルサウンドより】  ステージを縦横無尽に駆け回るトリックスターの青鼻ピアニスト・H ZETT Mが、銀鼻ドラマー・H ZETT KOUとと赤鼻ウッドベーシスト・H ZETT NIREを引き連れ結成したピアノ・トリオ、H ZETTRIO。彼らは4月に配信限定で「Trio,Trio,Trio!!!」「Beautiful Flight」「Smile」の3曲をリリースし、そのいずれにもACOUSTIC REVIVE社からレコーディングや楽器演奏に特化した新ブランドとして誕生した「NAKED BY ACOUSTIC REVIVE」の新製品『NAKED DIGI CABLE』」を使用したことで話題を呼んでいる。今回リアルサウンドでは、3人にインタビューを行い、トリオの音楽的コンセプトや配信楽曲の制作秘話、そして6月25日にミューザ川崎シンフォニーホールで開催する超高音質公開レコーディングライブ『H ZETTRIO LIVE LUXURY ~素晴らしきアンサンブルの夕べ~』について、じっくり話を訊いた。
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H ZETT NIRE。

「NAKEDのケーブルを使わない状態だと、醤油をかけていない冷奴みたい」(H ZETT NIRE)

――まずは、3人がそれぞれH ZETTRIOで出そうとしているものや、別人だとは思うものの敢えて聞かせて頂きますが(笑)、2015年末で解散してしまうPE'Zで演奏しているときとの変化について聞かせてください。 H ZETT M:PE'Zというバンドはかなり硬派ですよね。”自分達はこうであるべき”と貫きオーディエンスに聴いてもらう。なんとなくそのバンドは前から良く知ってるのですが…(笑)。それに比べてH ZETTRIOは楽しさを前面に押し出す、”オーディエンスありきの音楽”であって、「演じる側も聴いて頂く側にも同じ気持ちになれって!(笑)」ことを意識的にやってる気がします。ちなみにソロワークも同様で、“ピアノを弾く”ことに没頭しながら空間全体を包み込みたいイメージですね。 H ZETT KOU:PE’Zの航は “侍ジャズ”を演ずるに値する男気あるプレイで、H ZETT KOUは楽しさやユーモアさ、「みんなといっしょに遊びたいな」という気持ちを前面に出しています。もしかしたらこっちの方が素なのかもしれません。 ――あとはプレイスタイルもH ZETTRIOだとスタンディングに変わりますよね。これはドラムプレイにおいてどういう影響を及ぼしていますか。 H ZETT KOU:まず、フィルやリズムパターンが全然違ってくるし、立って演っている方が打ち下ろす感じというか、重量に任せられるのでパワーが増します。あと、気持ちの面ですけど、お客さんを目の前にして座っているのが失礼だと思えるようになってくるというか…(笑)。座って演っているドラムを同じ楽器に見られなくなってきますね。 ――「座っているのが失礼」ってドラマーの常識を覆すような発言ですね(笑)。NIREさんはどうでしょうか。 H ZETT NIRE:基本的には年齢的な問題なのか「面白おかしく」をより強調させていく音楽をやりたいと思っていて、その上での手段として「音楽の会話が増える」ことに重きを置いています。「お前がこうだったら、じゃあ俺はこうする」という意思疎通を突き詰めたいし、それがお客さんにも伝わるようして、巻き込んだ上での音楽の会話を追求できたらなと。 ――「お客さんを巻き込んだ瞬間」というのは、どういう時に感じるんでしょうか? H ZETT NIRE:3人が出した、突拍子もない音やパフォーマンスに反応してくれたときですね。メンバー内でも誰かが仕掛けたものを「はいはい」とスルーせずに、精いっぱい広げて面白くしていく。でも、たまには「なにやってるんですか!」とシャットアウトするのも面白い。そうやって普段の会話のような空気感にすることで、お客さんもこちらも笑えるし、雰囲気が良くなる。 ――ありがとうございます。今回の配信三部作や直近のライブでは、電源ケーブルをNAKED社のものに変えたことで音に大きな変化があったようですね。そこまでに至った経緯を教えてください。 H ZETT M:NAKED社の親会社である、ACOUSTIC REVIVE社の石黒さんが、たまたまH ZETTRIOの演奏を動画サイトでご覧になって、興味を持ってくれたのがきっかけです。そこからモーション・ブルー・ヨコハマでのライブに来ていただいたり、モントルー・ジャズ・フェスティバルでも協力してもらいました。それ以後、レコーディングにもライブにもNAKED社のケーブルを使わせてもらっています。 H ZETT NIRE:聴いた感じもすごく違うなと思うんですけど、一番変わったのは、自分のいい音に関する意識。こんな世界もあるんだな、というのをどんどん知るきっかけになりました。あと、弾き方も変わっちゃいましたね。ケーブルは今まで何回も変えているんですけど、初めて「丁寧に弾かなきゃいけない場所は、より丁寧に。思いきり行く場所はより勢いよく」という意識になりましたし、その違いがハッキリ音として出るようになった。 ――プレイしている側としても、一聴すればはっきりわかる変わり方ですか。 H ZETT NIRE:とにかくベースは全然違いますね。楽器があって、ケーブルを使ってアンプとか、PAにつなぐわけで、ケーブルは楽器の一部みたいなものなんですよ。スタッフに話をしたんですけど、もはやNAKEDのケーブルを使わない状態だと、醤油をかけていない冷奴みたいな。味がよくわからない(笑)。 (一同笑) H ZETT M:私は冷奴に醤油かけないですけどね。 H ZETT KOU:私はネギをかけます。 H ZETT NIRE:まぁ好みは人それぞれですが(笑)、違うものとして認識したということです。 H ZETT KOU:あと、石黒さんは少年のような良い瞳をしていまして(笑)。その出会い以降、ライブのリハーサルでも「こうするともっといいのかな、これはどういう音なのかな」とコミュニケーションを取ってくれたり、良い音にすごく一生懸命だと感じるんです。そういう意味でも、気持ちの面でサポートされてますね。 H ZETT M:僕は小さいころからピアノを習っているんですけど、先生に言われていたのは「良い音を意識するのがまず大事」ということ。でもそれって、生楽器で聴く人・弾く人に対して有効な話なんですよ。その価値観が、良いケーブルや良い電源タップが出来たことによって、録音環境にも活かされるようになってきた。それって面白い状況ですよね。
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H ZETT KOU。

「もう20年近くやっているような感覚で『ガンダム』でいうところの“ニュータイプ”に近い(笑)」(H ZETT KOU)

――今回配信でリリースした「Trio,Trio,Trio!!!」「Beautiful Flight」「Smile」の3曲について訊かせてください。まず「Trio,Trio,Trio!!!」は、自己紹介的なラップを繰り広げる楽曲で、インストゥメンタルだと思い込んでいたので不意を突かれました。 H ZETT M:「一人が一人を紹介していくラップみたいな曲があれば面白いのにな」と思って作りました。3人編成はフットワークが軽いですし、やりたいと思ったらすぐ行動に移せるんです。まずは自己紹介的な曲を作ろう…そんな想いがあって生まれた楽曲です。 H ZETT KOU:H ZETTRIOって、結成してからまだ数年なんですけど、もう20年近くやっているような感覚で、『機動戦士ガンダム』でいうところの“ニュータイプ”に近い(笑)。第六感的に伝わってくるのを感じます。 H ZETT NIRE:KOUさんが『ガンダム』の例え(笑)。そういう引き出しも持ってたんですね。 (一同笑) H ZETT NIRE:最初こそラップに対して「大変だろうし、精神的な負担が意外と高いのかも」と思っていたんですけど、いざやってみたら「自由になっちゃってもいいのかな」と感じました。3人でやっていくうえで「これはちょっと無理だよね、これはダメだよね」みたいなのは無い方がいいと思っていて、「この3人だったら、やっちゃって楽しいことなら、何でもやっちゃえばいいよ」って感じですね。 ――それがさっき話していた「楽しい」に繋がってくるんでしょうね。レコーディングは観客が前に居ない分、どうやって楽しさを表現していますか? H ZETT M:レコーディングでの「楽しい」は、笑うとかじゃなく、血がドクドクする、興奮するような感覚ですね。アドレナリンが出るというか。プレイヤーとしてワクワクすることで楽しさを表現できているんだと思います。 ――続いて「Beautiful Flight」は、今回配信リリースした3曲の中でも、一番ポップで突き抜けている楽曲ですね。間奏や終盤にプログレッシブなフレーズ入れ込みつつ、抜けの良いサビが印象的でした。 H ZETT M:結果的にタイトルを含めて“飛んでる感じ”になったんですけど、音の楽しさと音の強さ、我々も聴き手もこの曲を体感したら雄大な景色が見れる。 3人で出来ることを突き詰めたら、ここまで強度のある曲が出来ました。 H ZETT KOU:僕の鼻ってシルバーなんですけど、この曲はシルバーバック(ゴリラの一種)…というより『スター・ウォーズ』のチューバッカ的なプレイングを意識しました(笑)。野性的な、本能で叩いたというか。 H ZETT NIRE:チューバッカは賢いキャラクターですよね(笑)。僕は結構音数が多いんですけど、計算しないで小さく収まらないようにと思って演奏しました。楽曲自体はパワフルさと繊細さの両方を持ち合わせているので、その両方を活かすことを心がけつつ、抜けのあるサビ部分では、本当に“飛んでいるような感じ”を表現するように意識しました。 ――3曲目、高速シャッフルビートが楽しさを演出する『Smile』はどうでしょうか。 H ZETT M:お祭り気分といいますか、どんな時でも前向きになろう。という思いが表れた曲ですね。さっきのKOUさんじゃないですけど、野性的な面を忘れたら小さくまとまってしまうので、ちょっとはみ出すぐらいの勢いを意識して取り組みました。 H ZETT KOU:これは韓国の『ソウル・ジャズ・フェスティバル』でも演奏したんですけど、一体感と温かい雰囲気がしっかり生まれて、お客さんがH ZETTRIO4人目のメンバーとして反応してくれたように思えました。 H ZETT NIRE:みんな手拍子で応えてくれて、良い空気感になりましたね。 ――いまライブでの反応について語ってもらいましたが、他2曲はライブでどういう反応を受けたのでしょうか? H ZETT NIRE:「Trio,Trio,Trio!!!」を初めて演奏したのは、全国ツアーの仙台公演だったんですけど、爆発的な反応がありまして(笑)。曲の最初に「トリオ、トリオ、トリオー!」って言うところで、バカ受けしました(笑)。 H ZETT KOU:その時はまだ発売されていなかったから。さっき言ってくれたことじゃないですけど、今までの曲のなかでも一番言葉が入ってるので、不意を突かれた部分もあるんでしょうね。良い歳した大人が(笑)。 H ZETT NIRE:こちらとしては嬉しいというか「してやったり!」という気持ちでした。 H ZETT M:そうですね。やっぱり曲っていうのは、人前で演奏して初めて完成するんだなと改めて思わされました。やればやるだけ曲が成長していきますし、馴染むことによって「ここが良いんだな」とわかる。 ――ちなみに『ソウル・ジャズ・フェスティバル』での手ごたえはどうでしたか。(参考:H ZETTRIOが韓国ジャズフェスに登場 笑って踊れるステージングで会場を沸かせる) H ZETT KOU:アツかったですね。仁川空港からソウルに行ったとき、北海道に緯度が近いから寒いのかなと思ったんですけど、すごく暑くて。でも、夜はシベリアの寒気が入ってきて、結構寒い。 H ZETT NIRE:気温の話ですか(笑)。お客さんはみんな曲を聴いてちゃんと知ってくれているし、熱狂的な反応でした。僕はヤキモキしながら、ハングルでMCするか、英語でMCするか迷ったあげく、英語でMCしたんですけど、客席から「カッコイイー!」って声掛けられて「日本語わかるじゃん!」ってツッコんだりしましたね(笑)。
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「基本的に良い音を出すという意識と、あとちょっとはみ出す意識」(H ZETT M)

――『ソウル・ジャズ・フェスティバル』の余韻を引きずりつつ、6月25日にはミューザ川崎シンフォニーホールで超高音質公開レコーディングライブ『H ZETTRIO LIVE LUXURY ~素晴らしきアンサンブルの夕べ~』が行われます。この会場を選んだ理由は何でしょうか。 H ZETT M:じつはスイスの『モントルー・ジャズ・フェスティバル』がキッカケなんです。『モントルー・ジャズ・フェスティバルin川崎』というイベントをやるくらい、川崎市と非常に関係がありまして。川崎市の関係者が現地で我々のステージを観てて、そこからお話を頂きました。KOUさんがモントルーの往復飛行機で隣の席になった方が川崎市のお偉い方だったらしく。その方も推薦してくれてたようです。 H ZETT NIRE:下見に行った時にも、KOUさんだけ「お待ちしていました!」みたいな感じになって。KOUさんの乗っていた車だけ遅れていたんですけど、「ドラムの方まだですか」って向こうの人が(笑)。 H ZETT KOU:30秒ぐらい抱き合ったままでしたね(笑)。 H ZETT M:ホールの方も、普段クラシックやジャズで大人に主な会場なので若い人達にも観て頂くキッカケになってほしいという気持ちがあったようです。こちらとしても広い世代に受け入れて頂きたい音楽をやりたいと思ってたので「ぜひ!」ということで。 ――ミューザ川崎シンフォニーホールは普段、クラシックの演奏を主に実施しているホールですが、下見で実際に音出しはしてみましたか? H ZETT M:しました。ピアノだと、マイクを立てなくてもポンッと押すだけで、一番後ろの席までフッ、と届くんです。 H ZETT KOU:音の通りもそうなんですけど、会場の客席の作りも、一番後ろでも遠すぎないっていうか。うまく計算されてそれぞれに届くように出来ている印象を受けました。「ワーッ」というより、「ダッ」と響くというか…。しっかり鳴ってくれる感じですね。 ――ほぼすべての客席に均等に届く感じというか。 H ZETT NIRE:はい。ホールって場所によってはモワモワしたりするんですけどね。あとはビジュアルとサウンドがすごく一致しているというか。きっといい音がするんだろうなってイメージした音がちゃんと出てくるというか。ちゃんと計算して作ってあるんだなと思って。 H ZETT KOU:当日はドラムの音だって、たぶん地音でそのまま行くと思う。ベースもだよね? H ZETT NIRE:そうですね、アンプの地音でいける。 ――ライブに関しては、クラウドファンディングで支援を募り、ライブ音源のプレゼントも行う予定ですね。 H ZETT M:ケーブルもホールも良いのはすでにわかっていますから、あとは我々の演奏にかかっているわけで…(笑)。 H ZETT KOU:今回はレコーディングでもお世話になっているエンジニアの三浦(瑞生)さんにもお願いしていますし、音質に関しては間違いないですね。僕はドラムがちょっとうるさいので、他の人のかぶりを計算しなくちゃいけません。 ――音が響きやすいところだと、冒頭に話していた「繊細にやる」ことがより重要になってきそうですね。ライブハウス、ホール、フェス、それぞれどういう風に違いをつけていくのでしょうか。 H ZETT M:基本的に良い音を出すという意識と、あとちょっとはみ出す意識を持っておくというのは、共通していて一緒だと思います。でも、場所によってネクタイを強く締めたり、緩めたりみたいな、その場に溶け込む何かっていうのは必要でしょうね。「ライブハウスではこういう音を出して~」というよりも、基本的には一緒で、その場の空気を感じて、表現することが大事になりそうです。 ――空気とセッションするような感覚でしょうか。 H ZETT KOU:そうですね。ドラムプレイにおいては、ブレイクをどう感じさせるか。あとはどれだけ動きや唸り声もそうだし、叩いた時に出るスペースも、ライブハウスとホールだとまた違うので、そのなかでどう見せていくかですね。 H ZETT NIRE:自分で演奏していて感じるのは、2人は地の利を活かしているなと。KOUさんは前が空いていたら出てきて床を叩いたりするし、H ZETT Mさんは、ショルダーキーボードで自由に動き回るし。僕はそれを見習いたいなと思っているんですけど、なかなか動くのは難しいんですよね。あと、「ここはこうだから、こう」と、やる前に考えることはないですね。今日はホールだから、ライブだから、フェスだからと意識することはないし、なにか考えていたとしても、出て行ったら絶対に印象は変わる。 ――川崎のライブ後も、活動はずっと続いていきますね。現在も新作の制作をしているということですが、どういった作品にしていきたいですか。 H ZETT M:今後も血が沸騰するようなものを基本として、やっていきたいですね。もうハッキリとは見えているんですけど、すごいものじゃなかったら出さないという気持ちです。 H ZETT NIRE:でも、川崎でのライブでは、その曲をライブで演奏できるかも。あとは「夏」というキーワードも関連してくるかも…。 ――夏で「楽しい」となるとサンバ調などでしょうか? H ZETT NIRE:いいですね、それ、頂きます(笑)。さっき「Smile」で訊かれたときに答えましたが、感情のシンクロをメンバー間だけじゃなくてお客さんとも取れるような曲をもっと作りたい。そしてその曲をもっとライブでやっていきたいですね。 H ZETT KOU:僕も、基本的に楽しく、ハッピーな感じで行ければいいなと思っています。色んな所で活動できればいいなと思っていますし、ジャンルも得意なものを個々で持ちつつ、「どんなところでもできます! なんでも来い!」という構えで。 H ZETT NIRE:そうですね。韓国に行ったばかりですけど、海外のお客さんに向けて演奏するのは自分たちの原点というか、「話している言葉も違うのに、音楽で分かり合えちゃうんじゃないか」と思わせてくれるし、ワクワクする。だからもっと海外で演奏してみたいですね。 (取材・文=中村拓海/写真=斎藤 大嗣) ■ライブ情報 <超高音質公開レコーディングを実施!> 『H ZETTRIO LIVE LUXURY 〜 素晴らしきアンサンブルの夕べ〜』 日時:6月25日(木) OPEN 18:30/START 19:30 場所:ミューザ川崎シンフォニーホール 料金:全席自由 ¥3,500(税込) ※未就学児入場不可 INFO:ミューザ川崎シンフォニーホール 044-520-0200 『SAPPORO CITY JAZZ Ezo Groove2015(chazz/H ZETTRIO)』 日時:7月18日(土) 昼公演(chazz)OPEN 12:30/START 14:00 夜公演(H ZETTRIO)OPEN 17:30/START 19:00 会場:SAPPORO MUSIC TENT INFO:サッポロ・シティ・ジャズ実行委員会 011-592-4125 『境港妖怪ジャズフェスティバル』 日時: 7月25日(土) OPEN 15:30/START 16:30 会場:JR境港駅前駐車場特設ステージ(鳥取県境港市大正町) INFO みなと祭前夜祭企画実施本部事務局 0859-47-1068
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『DYNAMIC! Tour 2015」Billboard Live 2015』

■リリース情報 H ZETTRIO Amazon限定『DYNAMIC! Tour 2015」Billboard Live 2015』 発売中 価格:¥2,800(tax in) <収録内容> 1. PARTY TIME 2. Something Special 3. Kids song 4. 黄昏ウィークエンド 5. Get Happy! 6. Trio,Trio,Trio!!! 7. パノラマビュー 8. 炎のランニング 9. みんなのチカラ 10. Beautiful Flight 11. 新しいチカラ(Bonus Track)
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「Trio,Trio,Trio」

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「Beautiful Flight」

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「Smile」

より生の音を体感できる、超ハイレゾリューション録音3連続配信 「Trio,Trio,Trio」 「Beautiful Flight」 「Smile」 絶賛配信中

ORIGINAL LOVE田島貴男が見出した“今やるべきポップス”とは?「Negiccoの仕事はいい経験だった」

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【リアルサウンドより】  ORIGINAL LOVEが、6月10日に約2年ぶりの新作『ラヴァーマン』をリリースする。1994年に発売した『風の歌を聴け』と同じく佐野康夫(ドラム)と小松秀行(ベース)を迎えて制作された本作は、ジャズやファンクのテイストを漂わせつつ、Negiccoへ提供した「サンシャイン日本海」をセルフ・カヴァーしたり、ボーナストラックに『サントリー角ハイボール』のCMソングである「ウイスキーが、お好きでしょ」を収録するなど、エンターテインメント性に溢れた作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、聞き手に音楽評論家・宗像明将氏を迎え、田島貴男にインタビュー。アルバム制作時のエピソードや田島の近況から、今なお成長を続けるORIGINAL LOVEの音楽性を紐解いた。

「去年より今年のほうが歌手としては成長している」

――2年ぶりの新作で、1994年の「風の歌を聴け」のリズムセクションである佐野康夫さん、小松秀行さんを迎えたのはなぜでしょう? 田島貴男(以下:田島):このアルバムは数年前に作った「ラヴァーマン」から制作が始まってるんですけど、この曲は手応えを感じていた曲でした。でも最近作ったアルバムには合わなくて温存していたんです。最近ソウル・ミュージックを若い人達が聴く機会が多くなってきたこともあって、タイミングが来たと思ってレコーディングしました。前作の「エレクトリックセクシー」(2013年)を作り終えた後、「風の歌を聴け」の頃のようなORIGINAL LOVEらしいサウンドを聴きたい」という声を聞いて、たまたま「ラヴァーマン」は佐野、小松でレコーディングしたいと思っていたので、なおさら今だなと思いました。「RAINBOW RACE」のツアー(1995年)以来3人で集まってなかったけど、同じエンジニアも呼んで、レコーディングスタジオに集まったんです。あの頃と同じ音が出てきて感動しました。このグルーヴだったよな、と。 ――「いわゆる一般的なORIGINAL LOVEらしいサウンド」を求められることに反感はなかったですか? 田島:30歳の頃だと感じていたかもしれません(笑)。でも、「風の歌〜」から20年も経って、最近はなんとも思わなくなりましたね。バンドを再結成するようなつもりで楽しもうと。今回のアルバムは、「風の歌を聴け」を彷彿させるところが確かにありますが、やはり似て非なるサウンドだと思います。ORIGINAL LOVEはこの20年の間に音楽の旅をたくさんしてきました。そこで得た蓄積がこのアルバムには集約されています。加えて、ここ3、4年間、弾き語りをやりながら勉強したスライドギター、ジャズギターのテクニックが散りばめられています。以前よりも更に雑食性に富んだ本格的なソウルミュージックになっていると思います。 ――「ラヴァーマン」にしろ、南部っぽい「ビッグサンキュー」にしろ、ソウルとしての深みは「風の歌を聴け」より増していると感じました。 田島:歳もとりましたから成熟せざるをえない(笑)。サウンドの成熟度も上がってますけど、あとは歌の変化かもしれませんね。歌は技芸なんです。技芸というのは、一週間練習して自分のものになるものじゃないんですよ。何年もかかって少しずつ自分のものになってゆくのが技芸なんです。歌えば歌うほど歌の面白さに気づかされます。去年より今年のほうが歌手としては成長している気がします。 ――歌の技芸が磨かれているからこそ、「水曜歌謡祭」に出演したときの反響も大きかったんでしょうね。 田島:以前の自分の歌だったら、あんなに反響は得られなかったでしょうね。最近になってわかった歌い方が「ウイスキーが、お好きでしょ」のときにあって。そのときにCM制作会社の人が言ってくれたディレクションが勉強になりました。自分の個性をどうやってアピールしたらいいのかわかってきましたね。NHKの「The Covers」など最近はテレビの歌番組の仕事が毎回反響も大きくて楽しいです。今回のアルバムはサウンドもこだわっているけれど、ヴォーカル・アルバムでもあると思います。歌だけで3ヶ月かけてレコーディングしました。すごく疲れました(笑)。歌い方はわかったけど、それをどうやってレコーディングするかが難しかったです。やれるところまでやりましたね。 ――難しいなかで、外部のプロデューサーを付けることは考えなかったのでしょうか? 田島:プロデューサーをつけたいなと思っていた時期もありましたけど、この歳まで一人でやってきたので「どっちでもいいや」と。セルフ・プロデュースはすごく大変ですね。でも「プロデューサーを付けるのが似合わない」と言われて、このスタイルになりました(笑)。Negiccoの現場では、いいプロデューサーが何人もいて羨ましいと思いました。僕はひとりで格闘していて、「自分がもうひとりいたら楽かな」とよく思います。でも、その分個性が強い作品にはなっているのかなと。 ――Negiccoの「サンシャイン日本海」(2014年のシングル)を今回セルフ・カヴァーされていますが、アイドルのプロデュースを経験してみていかがでしたか? 田島:すごく楽しかったし、いい経験でしたね。今のアイドルの知識は全くありませんでしたが、connieさん(Negiccoのプロデューサー)の話を聞きつつ僕なりにがんばって作りました。すごく気に入ってます。そして、今のポップ・ミュージックとの接点が見つかりました。「光のシュプール」(2014年のNegiccoのシングル。田島貴男がアレンジ)では、connieさんに「昔のORIGINAL LOVEを思いっきりやってください」と言われて全力でやってみて、それが評価されて、「今のポップスとして通用するんだ」と自信になりましたね。だからなおさら「ORIGINAL LOVEをやってやろう」という気持ちになりました。Negiccoをきっかけにネオ渋谷系と言われる人たちの音楽を聴いて刺激を受けました。ORIGINAL LOVEは、渋谷系であって渋谷系ではないですけど(笑)。渋谷系の人がアイドルに楽曲を提供できるのは、楽曲主義の人が多かったからだと思うんです。アーティスト性よりも、曲の構造を極めていく人が多かったんです。ポップスというのは、歌詞や作品性、物語の世界をとっぱらっても構造が美しい。それに気づいてるのが渋谷系で、バート・バカラックは構造としてもレベルが高かったんです。

「渋谷系はスリー・コードでやらないでしょ?」

――田島さんが「ORIGINAL LOVEは渋谷系ではない」と言ってきたのはなぜでしょうか? 田島:僕はスリー・コードでも良かったんですよ。アーティスト性や物語性もポップスには重要だと思っています。渋谷系はスリー・コードでやらないでしょ? でも僕はチャック・ベリーが好きで、戦前ブルースも大好きです。楽曲の構造は単純でも歌い手が素晴らしいなにものかを表現していればいいんです。僕には楽曲主義的な考え方とアーティスト主義的な考え方の両方がある。だからヴォーカリストとしてもお仕事をいただけるようになった。両方をがんばってやってきて出来上がったのが「ラヴァーマン」というアルバムなんです。個性的なアルバムだから、パッと聴いてわからないかもしれない。でも楽曲も歌もポップです。今は「いいね!」の時代で、SNSがあるから即効性がないと置いていかれる。価値観が拡散性にシフトしていて、そこへのアンチテーゼなのかもしれないですね。作品性にあえて重きを置いたのが「ラヴァーマン」ですね。作ってるときはわからなかったけど(笑)。 ――「今夜はおやすみ」ではブラジルのトロピカリア、「きりきり舞いのジャズ」ではカエターノ・ヴェローゾを聴いているような感覚になりました。 田島:でも、「今夜はおやすみ」も「きりきり舞いのジャズ」もブラジルは全く意識せずに作りました。そう聴こえるかもしれないけど、最近はそういう風には音楽は作ってないです。ブラジルよりライ・クーダーに近いかもしれない。昔なら「きりきり舞いのジャズ」をカエターノ・ヴェローゾを意識して作るような作り方をしていたかもしれないけど、今はジャズの理論を勉強しながら、自分の曲に学んだことを当てはめるような作り方をしています。 ――「きりきり舞いのジャズ」の「ジャズ」も、一般的なジャズのイメージとは異なりますね。 田島:ジャズ的なスケールやコードを使っているけれども、ジャズじゃないんです。でも、ジャズを勉強してそれを意識しながら曲を作っているところが「風の歌を聴け」の頃との違いかもしれない。ジャズを勉強したことでアメリカン・ミュージックの懐の深さがよりわかってきたんです。ライ・クーダーやマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーにもジャズの要素が入っていることが分かって、また新鮮に聴けるようになった。「今夜はおやすみ」もジャズのコードを所々に使ってます。そこにハワイアンっぽいスライド・ギターを入れました。エキゾティックなポップ・ミュージックに仕上がったと思います。 ――「きりきり舞いのジャズ」がひとりで演奏されていることにも驚きました。田島貴男名義で、ギターとハーモニカ、ループマシーンを使った弾き語りツアーをされた経験が反映されている部分はありますか? 田島:4年前から「ひとりソウルショウ」や弾き語りをやって芸の幅が広がったんです。バンド芸とひとり芸は芸としてまったく違うジャンルなんです。だからギターの演奏や歌をもう一回見つけ直さないといけなかった。ひとりソウルショウのコンセプトは「ひとりでダンス・ミュージックをやる」。YouTubeを見たら、ブルース・マンがひとりでダンス・ミュージックをやっていたんですよ。ブルースはロックンロールの原型で、ダンス・ミュージックで、ギターを叩いたりして独創的なことをしてるわけです。デルタブルースのギタースタイルは、ひとりで歌いながらギターを弾くために考え抜かれていて、一時期そればかり聴いてました。ハワイアンのスライド・ギターにも興味をもって少し勉強しました。 ――「フランケンシュタイン」の複雑なリズムにも変化球を感じます。 田島:今思えば、あの曲でやりたかったのはカーティス・メイフィールドだったのかとしれない。カーティスは大好きですけれど、彼の影響を受けて作ったような曲はあまり書いてこなかったんですよね。だからここでカーティスをガツンとやってみました。 ――ボーナス・トラックとして「ウイスキーが、お好きでしょ」が収録されています。これを入れたのは、新しい歌い方が見つかったからでしょうか? 田島:「ウイスキーが、お好きでしょ」の仕事が、今回のアルバムの前哨戦みたいになって巡り巡ってフィットしていて、まったく違和感がないんです。全部つながったんですよ。いろんな歌い方でたくさん歌わされて、完成テイクがあれになって、時間が経ってからあの歌のテイクのチョイスが正しかったとわかったんですよ。「こんなに良くなるんだ」って教えていただいた気がして。だからアルバムにピッタリとハマったんです。 ――ORIGINAL LOVEは前身のThe Red Curtainから数えると結成30年です。振り返っていかがですか? 田島:ポップ・ミュージックは常に「今」なんですよ。いかに自分のキャリアを背負わずに、今の音楽としてゼロから始めるか。その連続でしたね。ポップスはしんどいんですよ。 ――そのキャリアの中で、新作の位置付けはどんなものでしょうか? 田島:ORIGINAL LOVEとして今やるべき一番正しいポップスを作ることができたんじゃないかな。ジャケットも今までと違うぞ、と。前作や「ひとりソウルショウ」、「ウイスキーが、お好きでしょ」やNegiccoの仕事を経て今回のアルバムがある。聴いてすぐわかる作品じゃないかもしれない。この間、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』という映画を見てすごく共感したんですよ。SNSの即効的な価値観もあるけど、本当の感動は情報の手がおよばない人間の丸裸の「おバカさん」な部分なんです。その悲しみや喜びの深さを芸術作品が描いて残していくのは大事なことです。  ポップスも、スタンダードとして残るのは、曲の裏に謎があるものなんですよね。「ダサい」「カッコイイ」を超えた魅力がある。それが作品の強さなんですよね。たとえば、松任谷由実さんや桑田佳祐さんが作られてきたポップスもそうなんじゃないかな。「接吻」(1993年のシングル)もそういう要素が含まれていたと思います。そういう意味で「接吻」は渋谷系の曲ではないと思うんです。だって、渋谷系はひたすらかっこいいだけの音楽でしたから。それと、流行り言葉で消費されるのは嫌だったから、「渋谷系とは違う」と言ったりもしました。僕も小西さん(小西康陽。田島貴男が1990年まで在籍したピチカート・ファイヴのメンバー)もスタンダードを作りたかったんです。ピチカートも渋谷系と言われるけど、小西さんだって実は昔から真っ当なポップスを作りたかったんだと思うんです。ピチカートで、僕と小西さんと敬太郎さん(高浪敬太郎。ピチカート・ファイヴのメンバー、現在の表記は高浪慶太郎)はスタンダードはどうやって書くことができるのか、過去の音楽をいっぱい聴いて学んでいたんです。
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ORIGINAL LOVE『ラヴァーマン』(WONDERFUL WORLD RECORDS)

■リリース情報 『ラヴァーマン』 発売:2015年6月10日(水) 価格:¥3,240(税込) <収録内容> 1.ラヴァーマン 2.ビッグサンキュー 3.サンシャイン日本海  4.今夜はおやすみ 5.フランケンシュタイン 6.クレイジアバウチュ  7.きりきり舞いのジャズ 8.四季と歌 9.99粒の涙 10.希望のバネ BONUS TRACK ウイスキーが、お好きでしょ/田島貴男 (田島貴男 サントリー角ハイボール CMソング)

ORIGINAL LOVE田島貴男が見出した“今やるべきポップス”とは?「Negiccoの仕事はいい経験だった」

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【リアルサウンドより】  ORIGINAL LOVEが、6月10日に約2年ぶりの新作『ラヴァーマン』をリリースする。1994年に発売した『風の歌を聴け』と同じく佐野康夫(ドラム)と小松秀行(ベース)を迎えて制作された本作は、ジャズやファンクのテイストを漂わせつつ、Negiccoへ提供した「サンシャイン日本海」をセルフ・カヴァーしたり、ボーナストラックに『サントリー角ハイボール』のCMソングである「ウイスキーが、お好きでしょ」を収録するなど、エンターテインメント性に溢れた作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、聞き手に音楽評論家・宗像明将氏を迎え、田島貴男にインタビュー。アルバム制作時のエピソードや田島の近況から、今なお成長を続けるORIGINAL LOVEの音楽性を紐解いた。

「去年より今年のほうが歌手としては成長している」

――2年ぶりの新作で、1994年の「風の歌を聴け」のリズムセクションである佐野康夫さん、小松秀行さんを迎えたのはなぜでしょう? 田島貴男(以下:田島):このアルバムは数年前に作った「ラヴァーマン」から制作が始まってるんですけど、この曲は手応えを感じていた曲でした。でも最近作ったアルバムには合わなくて温存していたんです。最近ソウル・ミュージックを若い人達が聴く機会が多くなってきたこともあって、タイミングが来たと思ってレコーディングしました。前作の「エレクトリックセクシー」(2013年)を作り終えた後、「風の歌を聴け」の頃のようなORIGINAL LOVEらしいサウンドを聴きたい」という声を聞いて、たまたま「ラヴァーマン」は佐野、小松でレコーディングしたいと思っていたので、なおさら今だなと思いました。「RAINBOW RACE」のツアー(1995年)以来3人で集まってなかったけど、同じエンジニアも呼んで、レコーディングスタジオに集まったんです。あの頃と同じ音が出てきて感動しました。このグルーヴだったよな、と。 ――「いわゆる一般的なORIGINAL LOVEらしいサウンド」を求められることに反感はなかったですか? 田島:30歳の頃だと感じていたかもしれません(笑)。でも、「風の歌〜」から20年も経って、最近はなんとも思わなくなりましたね。バンドを再結成するようなつもりで楽しもうと。今回のアルバムは、「風の歌を聴け」を彷彿させるところが確かにありますが、やはり似て非なるサウンドだと思います。ORIGINAL LOVEはこの20年の間に音楽の旅をたくさんしてきました。そこで得た蓄積がこのアルバムには集約されています。加えて、ここ3、4年間、弾き語りをやりながら勉強したスライドギター、ジャズギターのテクニックが散りばめられています。以前よりも更に雑食性に富んだ本格的なソウルミュージックになっていると思います。 ――「ラヴァーマン」にしろ、南部っぽい「ビッグサンキュー」にしろ、ソウルとしての深みは「風の歌を聴け」より増していると感じました。 田島:歳もとりましたから成熟せざるをえない(笑)。サウンドの成熟度も上がってますけど、あとは歌の変化かもしれませんね。歌は技芸なんです。技芸というのは、一週間練習して自分のものになるものじゃないんですよ。何年もかかって少しずつ自分のものになってゆくのが技芸なんです。歌えば歌うほど歌の面白さに気づかされます。去年より今年のほうが歌手としては成長している気がします。 ――歌の技芸が磨かれているからこそ、「水曜歌謡祭」に出演したときの反響も大きかったんでしょうね。 田島:以前の自分の歌だったら、あんなに反響は得られなかったでしょうね。最近になってわかった歌い方が「ウイスキーが、お好きでしょ」のときにあって。そのときにCM制作会社の人が言ってくれたディレクションが勉強になりました。自分の個性をどうやってアピールしたらいいのかわかってきましたね。NHKの「The Covers」など最近はテレビの歌番組の仕事が毎回反響も大きくて楽しいです。今回のアルバムはサウンドもこだわっているけれど、ヴォーカル・アルバムでもあると思います。歌だけで3ヶ月かけてレコーディングしました。すごく疲れました(笑)。歌い方はわかったけど、それをどうやってレコーディングするかが難しかったです。やれるところまでやりましたね。 ――難しいなかで、外部のプロデューサーを付けることは考えなかったのでしょうか? 田島:プロデューサーをつけたいなと思っていた時期もありましたけど、この歳まで一人でやってきたので「どっちでもいいや」と。セルフ・プロデュースはすごく大変ですね。でも「プロデューサーを付けるのが似合わない」と言われて、このスタイルになりました(笑)。Negiccoの現場では、いいプロデューサーが何人もいて羨ましいと思いました。僕はひとりで格闘していて、「自分がもうひとりいたら楽かな」とよく思います。でも、その分個性が強い作品にはなっているのかなと。 ――Negiccoの「サンシャイン日本海」(2014年のシングル)を今回セルフ・カヴァーされていますが、アイドルのプロデュースを経験してみていかがでしたか? 田島:すごく楽しかったし、いい経験でしたね。今のアイドルの知識は全くありませんでしたが、connieさん(Negiccoのプロデューサー)の話を聞きつつ僕なりにがんばって作りました。すごく気に入ってます。そして、今のポップ・ミュージックとの接点が見つかりました。「光のシュプール」(2014年のNegiccoのシングル。田島貴男がアレンジ)では、connieさんに「昔のORIGINAL LOVEを思いっきりやってください」と言われて全力でやってみて、それが評価されて、「今のポップスとして通用するんだ」と自信になりましたね。だからなおさら「ORIGINAL LOVEをやってやろう」という気持ちになりました。Negiccoをきっかけにネオ渋谷系と言われる人たちの音楽を聴いて刺激を受けました。ORIGINAL LOVEは、渋谷系であって渋谷系ではないですけど(笑)。渋谷系の人がアイドルに楽曲を提供できるのは、楽曲主義の人が多かったからだと思うんです。アーティスト性よりも、曲の構造を極めていく人が多かったんです。ポップスというのは、歌詞や作品性、物語の世界をとっぱらっても構造が美しい。それに気づいてるのが渋谷系で、バート・バカラックは構造としてもレベルが高かったんです。

「渋谷系はスリー・コードでやらないでしょ?」

――田島さんが「ORIGINAL LOVEは渋谷系ではない」と言ってきたのはなぜでしょうか? 田島:僕はスリー・コードでも良かったんですよ。アーティスト性や物語性もポップスには重要だと思っています。渋谷系はスリー・コードでやらないでしょ? でも僕はチャック・ベリーが好きで、戦前ブルースも大好きです。楽曲の構造は単純でも歌い手が素晴らしいなにものかを表現していればいいんです。僕には楽曲主義的な考え方とアーティスト主義的な考え方の両方がある。だからヴォーカリストとしてもお仕事をいただけるようになった。両方をがんばってやってきて出来上がったのが「ラヴァーマン」というアルバムなんです。個性的なアルバムだから、パッと聴いてわからないかもしれない。でも楽曲も歌もポップです。今は「いいね!」の時代で、SNSがあるから即効性がないと置いていかれる。価値観が拡散性にシフトしていて、そこへのアンチテーゼなのかもしれないですね。作品性にあえて重きを置いたのが「ラヴァーマン」ですね。作ってるときはわからなかったけど(笑)。 ――「今夜はおやすみ」ではブラジルのトロピカリア、「きりきり舞いのジャズ」ではカエターノ・ヴェローゾを聴いているような感覚になりました。 田島:でも、「今夜はおやすみ」も「きりきり舞いのジャズ」もブラジルは全く意識せずに作りました。そう聴こえるかもしれないけど、最近はそういう風には音楽は作ってないです。ブラジルよりライ・クーダーに近いかもしれない。昔なら「きりきり舞いのジャズ」をカエターノ・ヴェローゾを意識して作るような作り方をしていたかもしれないけど、今はジャズの理論を勉強しながら、自分の曲に学んだことを当てはめるような作り方をしています。 ――「きりきり舞いのジャズ」の「ジャズ」も、一般的なジャズのイメージとは異なりますね。 田島:ジャズ的なスケールやコードを使っているけれども、ジャズじゃないんです。でも、ジャズを勉強してそれを意識しながら曲を作っているところが「風の歌を聴け」の頃との違いかもしれない。ジャズを勉強したことでアメリカン・ミュージックの懐の深さがよりわかってきたんです。ライ・クーダーやマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーにもジャズの要素が入っていることが分かって、また新鮮に聴けるようになった。「今夜はおやすみ」もジャズのコードを所々に使ってます。そこにハワイアンっぽいスライド・ギターを入れました。エキゾティックなポップ・ミュージックに仕上がったと思います。 ――「きりきり舞いのジャズ」がひとりで演奏されていることにも驚きました。田島貴男名義で、ギターとハーモニカ、ループマシーンを使った弾き語りツアーをされた経験が反映されている部分はありますか? 田島:4年前から「ひとりソウルショウ」や弾き語りをやって芸の幅が広がったんです。バンド芸とひとり芸は芸としてまったく違うジャンルなんです。だからギターの演奏や歌をもう一回見つけ直さないといけなかった。ひとりソウルショウのコンセプトは「ひとりでダンス・ミュージックをやる」。YouTubeを見たら、ブルース・マンがひとりでダンス・ミュージックをやっていたんですよ。ブルースはロックンロールの原型で、ダンス・ミュージックで、ギターを叩いたりして独創的なことをしてるわけです。デルタブルースのギタースタイルは、ひとりで歌いながらギターを弾くために考え抜かれていて、一時期そればかり聴いてました。ハワイアンのスライド・ギターにも興味をもって少し勉強しました。 ――「フランケンシュタイン」の複雑なリズムにも変化球を感じます。 田島:今思えば、あの曲でやりたかったのはカーティス・メイフィールドだったのかとしれない。カーティスは大好きですけれど、彼の影響を受けて作ったような曲はあまり書いてこなかったんですよね。だからここでカーティスをガツンとやってみました。 ――ボーナス・トラックとして「ウイスキーが、お好きでしょ」が収録されています。これを入れたのは、新しい歌い方が見つかったからでしょうか? 田島:「ウイスキーが、お好きでしょ」の仕事が、今回のアルバムの前哨戦みたいになって巡り巡ってフィットしていて、まったく違和感がないんです。全部つながったんですよ。いろんな歌い方でたくさん歌わされて、完成テイクがあれになって、時間が経ってからあの歌のテイクのチョイスが正しかったとわかったんですよ。「こんなに良くなるんだ」って教えていただいた気がして。だからアルバムにピッタリとハマったんです。 ――ORIGINAL LOVEは前身のThe Red Curtainから数えると結成30年です。振り返っていかがですか? 田島:ポップ・ミュージックは常に「今」なんですよ。いかに自分のキャリアを背負わずに、今の音楽としてゼロから始めるか。その連続でしたね。ポップスはしんどいんですよ。 ――そのキャリアの中で、新作の位置付けはどんなものでしょうか? 田島:ORIGINAL LOVEとして今やるべき一番正しいポップスを作ることができたんじゃないかな。ジャケットも今までと違うぞ、と。前作や「ひとりソウルショウ」、「ウイスキーが、お好きでしょ」やNegiccoの仕事を経て今回のアルバムがある。聴いてすぐわかる作品じゃないかもしれない。この間、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』という映画を見てすごく共感したんですよ。SNSの即効的な価値観もあるけど、本当の感動は情報の手がおよばない人間の丸裸の「おバカさん」な部分なんです。その悲しみや喜びの深さを芸術作品が描いて残していくのは大事なことです。  ポップスも、スタンダードとして残るのは、曲の裏に謎があるものなんですよね。「ダサい」「カッコイイ」を超えた魅力がある。それが作品の強さなんですよね。たとえば、松任谷由実さんや桑田佳祐さんが作られてきたポップスもそうなんじゃないかな。「接吻」(1993年のシングル)もそういう要素が含まれていたと思います。そういう意味で「接吻」は渋谷系の曲ではないと思うんです。だって、渋谷系はひたすらかっこいいだけの音楽でしたから。それと、流行り言葉で消費されるのは嫌だったから、「渋谷系とは違う」と言ったりもしました。僕も小西さん(小西康陽。田島貴男が1990年まで在籍したピチカート・ファイヴのメンバー)もスタンダードを作りたかったんです。ピチカートも渋谷系と言われるけど、小西さんだって実は昔から真っ当なポップスを作りたかったんだと思うんです。ピチカートで、僕と小西さんと敬太郎さん(高浪敬太郎。ピチカート・ファイヴのメンバー、現在の表記は高浪慶太郎)はスタンダードはどうやって書くことができるのか、過去の音楽をいっぱい聴いて学んでいたんです。
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ORIGINAL LOVE『ラヴァーマン』(WONDERFUL WORLD RECORDS)

■リリース情報 『ラヴァーマン』 発売:2015年6月10日(水) 価格:¥3,240(税込) <収録内容> 1.ラヴァーマン 2.ビッグサンキュー 3.サンシャイン日本海  4.今夜はおやすみ 5.フランケンシュタイン 6.クレイジアバウチュ  7.きりきり舞いのジャズ 8.四季と歌 9.99粒の涙 10.希望のバネ BONUS TRACK ウイスキーが、お好きでしょ/田島貴男 (田島貴男 サントリー角ハイボール CMソング)

『CHEERZ』&『@JAM』両プロデューサーが語る、アイドルシーン拡大策 「K-POPがアジア中を席巻したような現象を起こしたい」

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【リアルサウンドより】  5月11日、アイドルの写真に特化したスマートフォン専用SNSアプリ『CHEERZ』(チアーズ)を運営するフォッグ株式会社が、フェス型ライブイベントシリーズ『@JAM(アットジャム)』(株式会社Zeppライブ運営)と、アイドル市場拡大を目的とした包括的業務提携契約を締結したと発表した。2社は今後、8月29日に横浜アリーナで開催される日本最大級のアイドルフェス『@JAM EXPO 2015』を皮切りに、相互のコンテンツ提供と共同プロモーションを実施していくという。そこで今回、リアルサウンドでは、『CHEERZ』のプロデューサーである高澤紳悟氏と、『@JAM』総合プロデューサーの橋元恵一氏による対談を実施。アイドル業界をともに盛り上げる2社が考えるそれぞれの戦略やサービスの成り立ち、業界への思いについて、大いに語ってもらった。

「当時は同じヲタカルチャーでも、アイドルとアニソンを安易に混ぜちゃいけなかった」(橋元)

――まずは『CHEERZ』と『@JAM』という二つのサービスがスタートしたきっかけを教えてください。 橋元:そもそも『@JAM』は、2010年にソニーミュージックに新たに設立された「ライブ事業部門」へ僕が人事異動で移り、初めて実施した企画『ヲタJAM』(2010年11月開催)が原型なんです。このイベントは、アニメ、アイドル、ボーカロイド、コスプレなど、日本のカルチャーをまとめて紹介するカタチで行ったのですが、関わるうちにこの世界の奥深さを知り、その後、イベント名を『@JAM』に変え、次第にアイドルとアニソンに特化するようになりました。今回『CHEERZ』とご一緒する『@JAM EXPO』は、『@JAM』シリーズの中でも最大規模のイベントだけど、本丸はZepp DiverCityで毎年2日間行っている『@JAM 2015』なんです。今では、おかげさまで毎回SOLD OUTとなるイベントに成長しましたが、当初はとにかくボロボロで、正直大赤字の連続でした(汗)。 ――今みると錚々たる面子ですけどね…。なぜその段階でお客さんが入らなかったと分析しますか? 橋元:今でこそ『ニコニコ超会議』といった壁を壊すイベントがあるけど、あの当時は同じヲタカルチャーでも、アイドルとアニソンを安易に混ぜちゃいけなかったんだと思います。何より、僕自身がお客さんの気持ちを理解してなかったのだと思います。 ――ではそんな『@JAM』が軌道に乗り始めたのは? 橋元:『@JAM the Field』という、アイドルに特化したイベントを始めてからですね。第二回となる2012年10月のタイミングではすでにSOLD OUTしました。その後、2013年から『@JAM』は2day開催とし、一日はアイドル、一日はアニソンと、日毎に分けるようになり、そこから好調を維持しています。でも、近い将来としては、そろそろジャンルを混ぜても大丈夫なんじゃないか、と思ったりすることはありますね。 高澤:両方成熟してきたというか、アニメの成熟・定着具合とアイドルが親和性を持つようになってきたのは『ニコニコ超会議』でも分かりますもんね。『CHEERZ』を開発・運営している弊社には元々音楽、芸能業界で仕事をしていたスタッフが数名おり、そのスタッフ達は常々アイドル市場の持つ可能性と熱量に注目していました。そして、ITとアイドルで何面白い取り組みが出来ないかと模索していた時にたまたまアイドルと触れる機会があり、自分も何度も足を運んで、詳しい人に教えてもらってるうちに、ドップリ現場にハマって(笑)。いまは土日だと2、3現場足を運ぶのですが、見れば見るほど奥が深くて面白いと思っています。元々そんなに知らない人でもこれだけハマれるアイドル業界のすごさを感じつつ、運営・ファンと話しているうちに、TwitterなどのSNSで流れる写真を使えばもっと盛り上げられるのではないかと考えたんです。 ――写真を使うというのは? 高澤:例えば、Twitterに可愛い写真が上がっていても、大抵はフォロワーだけが観て終わってしまうし、そのまま流れていってしまう。それはもったいないと思い、その価値を上げることはできないかと思いまして。知らない人への訴求手段として、ルックスって非常に分かりやすいものですし、それがまとめられているアプリがあれば、見たことない人に見てもらえるきっかけにもなる。そこから、現場にハマる人がもっともっと生まれて、業界自体が盛り上がっていけばいいなという気持ちがスタートのきっかけです。そのためにお金払わなくても楽しめるような気軽に始めやすい仕組みにもしています。 ――今回2社が手を組んだわけですが、初めてお会いしたのは2014年の夏だと伺いました。そこからこのプロジェクトまで、どのように意気投合していったのでしょうか。 高澤:最初は僕らの方からアプローチしました。『CHEERZ』は2014年12月にリリースしましたが、プロジェクト自体は大体5、6月ぐらいからビジョンはあって、あとはアプリを作っていくという状況だったんですけど、先にいろいろな運営の方にはご相談しに行っていたんです。ただ、アイドル業界で実績も前例も無いなかで、アプリもまだ完成していないので説得力が弱いなと感じていました。そんなとき、知人に橋元さんを紹介していただいて、「僕ら、こういうものをやろうと思ってるんです、アイドルの裾野や業界をもっと広げたいんです」と熱意だけで相談しに行って(笑)。そうしたら橋元さんが一方的なお願いにも関わらず「応援しますよ」って言ってくれた。いまだにすごいことだと思うんですが、正直、怪しくなかったですか(笑)? 橋元:高澤さんたちが熱く語ってくれたことって、僕が『@JAM』をやっている理念に近かった。「自分たちが儲かったらそれでいいや」ということではなく、各々が「アイドルシーンを俺が支えるぞ」という使命感を持っていて、言葉にしてくれたので、だったら一緒にやれるなと思い、二つ返事で「やりましょう」と言いました。 高澤:5年も大切に育ててきたイベントを背負わせて応援してくれるって、よっぽどのことだと思うんです。でもその場でOKと言っていただけて、そして今の言葉を聞いて泣きそうです…。だから僕らも恩返しをしたいと思い、2014年の『@JAM EXPO』では裏方スタッフとして入らせていただきました。そこで僕らがやっていたのは、バックステージで出演者の写真を撮影して、Twitterにアップすることで、そこにスタートすることも知らされていない#CHEERZというタグ付けさせていただいたり、参加したアイドルの運営さんともお話をさせてもらえました。 橋元:タオルも配ってたよね。みんな、何のことだかわからないけど使ってたのを覚えてる(笑)。 高澤:『CHEERZ』と書いてあるマフラータオルを「お疲れ様です!」って出番終わりのアイドルに配ってましたね。でも、あれがないと今の『CHEERZ』は無かったと思えるくらい、『@JAM EXPO』での活動を通じて運営側に広く認知してもらえたし、最初から多くのアイドルたちに参加してもらうことができました。そこから12月にアプリをリリースし、2月には『Tokyo Girls’Update』を運営しているオールブルー社と業務提携し、海外にもリーチを拡大したので、今なら一緒に何かできるだろうと思い、橋元さんの下へ具体的な話をしに伺いました。 ――「今なら」という言葉が出ましたが、そう思った理由を聞かせてください。 高澤:『CHEERZ』にはライブという現場がないけど、アイドルの最大の魅力ってやっぱりそこだと思っていて。アプリだけじゃ片手落ちすぎるだろうと考えていましたし、『@JAM』側もWebやソーシャル領域でのプロモーションを必要としていることを伺ったので、「それは僕らの得意技です」と。
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「物語を縦軸と横軸で作っている感覚は常に持っています」(橋元)

――なるほど。そしてこのタイミングでタッグを組むことになるわけですが、橋元さんが『CHEERZ』に感じるサービス的な魅力とは? 橋元:アイドルの『運営』といわれるマネジメントの人たちが、告知ツールとして使用するなかで一番手っ取り早くて簡単なものとしてTwitterやFacebook、InstagramといったSNSを使うことが多い。その流れでプラスアルファとして使用していけるサービスが『CHEERZ』だなと思いますし、コンテンツの作り込み具合も、アイドルが喜んで使えるくらいお洒落で洗練されたものになっている。ただ写真を載せるだけじゃなくて、ファッション誌のような感覚で見たり上げたりできるのが魅力ですね。 高澤:そこはかなり意識しているところなので、嬉しいです。お洒落感があることで入りやすくなっていって欲しいと思っていますし。 橋元:『@JAM』は「ダサかわいい」をテーマに始めたから、そういう意味では羨ましさがあるんですよ(笑)。 高澤:今回の提携プロジェクトには、『@JAM EXPO』の特設サイトを一緒に作ることも入っているので、精いっぱいお洒落な味付けができればと思っています。 ――高澤さんが『@JAM』を魅力的だと感じるポイントはどこでしょうか。 高澤:アイドル・アニソンというジャンル縛りがありながらも、コアな人も初心者の人も楽しめる、間口の広さが最大の魅力かと思ってます。知り合いでアイドルに興味を持った人がいたら、まずは『@JAM』を見せたいと思いますね。だからこそ、『CHEERZ』できっかけを持って、『@JAM』でハマっていくという流れがすごく綺麗だなと思いました。 橋元:イベントの作り方については、J-POPのフェスを作る発想に近いのかもしれない。「いつ来ても絶対的に面白い」ようにしたいし、その日ごと、回ごとでテーマや特色が違うのを楽しみつつ、結局は楽しめる王道の人たちがちゃんと出演し、満足のいく内容のイベントにしたいと思っているので。だからいつも豪華といって戴けているのかも知れません。 高澤:今の話をお聞きして、すごく納得がいきました。業界内だけではなく、もっと広い間口で考えてるというか。 橋元:逆にあんまり冒険しないとも言えるかも(笑)。タイムテーブルは僕が考えているんですけど、それぞれの出演者とこれまでの『@JAM』との流れを考えたり、「ここでこういうふうに沸くかな?」と想像したり。 高澤:そういう部分にストーリーを感じるお客さんやアイドルも多いと思うんです。 橋元:そうですね。「この日に出演する10組」というよりは、その出演者たちがどういう経緯で『@JAM』に出演してきて、今日この日を迎えているのかを重視する。物語を縦軸と横軸で作っている感覚は常に持っています。 高澤:『@JAM NEXT』を通って『@JAM the Field』に立って、というのもストーリーの一部ですもんね。 橋元:出演者のパワーを借りてやっているイベントなので、そこぐらいは考えないと、という気持ちです。例えば『@JAM2014』だと、同年の9月にZepp DiverCityワンマンを発表したDorothy Little Happyに、弾みをつけるために大トリとして出てもらって。で、彼女たちは「『デモサヨナラ』をここに置いて行きます」と言ってストーリーが出来た。彼女たちのストーリーに携われたのは嬉しいことだし、こういうときにやりがいを感じます。 高澤:多分そんな風に一緒にひとつのものを作っている感覚が、アイドルにも運営にも好かれる秘訣なんだろうなぁと思います。バックステージで拝見してても、アイドル本人も和気あいあいと、すごく楽しそうなんですよね。他のアイドル達と一緒にいる時間も長いし、ケータリングで一緒になったり。文化祭みたいな、みんなで一緒に作っている感をすごく感じました。@JAMが、そういう貴重な交流の機会になっているんだなぁと。僕らも仕組みを提供するだけではなく、物語や機会を一緒に作っていく側でありたいです。
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「プレイヤーとユーザーの伸びが比例していないように感じています」(高澤)

――今回タッグを組むうえで、自分たちのサービスが受ける最大のメリットはどこだと考えますか? 高澤:僕らとしては、アプリの中だけで完結させたいわけではなく、現場に向かわせたいという思いはあったのですが、ライブを作るという点に関しては完全に素人。なので長く続けているイベントであり、さらに深みにハマれる催しである『@JAM』の力を借りられたことは大きいと思っています。 橋元:うちはさっき高澤さんが言ったように、SNSなどの告知部分に弱さを感じているので、そういった点で協力してもらえるとありがたい。それに、ウェブサイトって予算の関係上どうしても蔑ろになりがちで、最初のころから補強はしているものの、建て増しの長屋状態でとても満足いくものとはいえない。なので、今回の協業をきっかけにリニューアルも一緒にできればとは思ってます。 高澤:僕らとしてもそこは得意技なのでぜひ(笑)。 ――アイドルシーンの物語性を後押ししている『@JAM』と、写真における課題解決をしている『CHEERZ』ですが、2人が考える業界の課題とは? 橋元:個人的には、「アイドルブーム」と言われる瞬間最大風速は過ぎ去ったと思うのですが、シーンとしてちゃんと残ったと思うんです。なので、僕らはそのシーンをしっかり守っていかなくてはいけないし、1つの音楽のジャンルとして、きっちりと形作っていきたい。自分や『@JAM』というイベントがその一端の何%を担っているかわかりませんが、せめて自分の守備範囲はしっかり守りながら、貢献できるよう頑張っていきたいですね。 高澤:いまこの瞬間も、面白い人たちがどんどん増えているのですが、プレイヤーとユーザーの伸びが比例していないように感じています。だからこそ間口を広くして、敷居を下げてファンを増やしていきたいですし、J-POPのようにそこにあって当たり前のものになるといいなと考えています。現段階では、新しいアイドルを知るのって、自分が見に行ったイベントでの共演相手としてだと思うので、そのイベントに連れて行くための手段でありたいと思うし、そうすることで業界も拡大していくのではないでしょうか。 ――『CHEERZ』は、現段階でも地方のご当地アイドルが数組登録されています。「ファンを現場に連れてくる」だけではなく「地方のアイドルを東京に連れてくる」という側面も持ち合わせているのではないかと思うのですがいかがでしょうか。 高澤:「距離を越えられる」のがアプリの良いところですよね。アイドル市場に限らず、興行に関しては人口の数もあり、東京に偏りがちなのは仕方ないと思いますし、四国や北海道や九州のアイドルが毎回東京に遠征にくるのは相当な負担です。でも、日本全国にそれぞれの活動で面白いことをしている人たちは沢山いて、ネットの力を使って距離を越えることはできるし、アプリを通じて地方から東京にリーチして、行く前からファンを増やすことだって可能です。それは日本のアイドルが海外へ遠征するときも同様のことが言えます。国内のライブよりも当然お金も労力も掛かってしまうし、目撃した海外のお客さんたちも、イベント前後では盛りあがるけど、帰ってしまったあとはその熱量を継続しづらいんです。そこで『CHEERZ』を使って近況を把握しつつ、また来るのを楽しみにしてもらえるといいし、また来たときにさらに盛り上がるみたいな、いつでも繋がっていられる仕組みを提供できると嬉しいです。 橋元:それこそDMMさんが始める『DMM.yell』と単に比べて「あっちは誰が参加するからどうだ」みたいな話が出がちなんですけど、それって僕らで言うところの『@JAM』と『TOKYO IDOL FESTIVAL』に誰が出るかみたいなレベルの話であって。僕らはそれぞれが自分たちの理念を持って、やりたいことをしっかりとやるだけのような気がしています。その上で、そこを理解し、協力してくれる人たちを大事にしたい。それがなんかこう「どっちが勝った負けた」みたいになってる風潮に乗っかりたくはないですね。 高澤:僕たちも市場の独占をしたいと考えていないし、まずは業界全体が盛り上がること・拡大すること・ファンの人がもっと楽しくなることが大事で、アイドルの方々もそのうえで満足して夢を見てもらいたいだけ。アイドル系のアプリが『CHEERZ』だけしか存在しちゃいけない、という訳ではないですし、同様に『TIF』と『@JAM』がどちらかしか存在してはいけないという理由なんて全然ないと思うんです。 橋元:そうそう、そういうこと。結果として自分たちのところに残ってくれる、もしくは自分たちとしっかりタッグを組んでやれるマネジメントやアーティスト・アイドルとしっかりやっていくことが大事なんですよ。本質を忘れちゃいけない。 高澤:僕らは得意な分野があって、それを活用してアイドル業界に貢献していくだけですし、向いている方向が一緒だったら一緒に歩けばいい。橋元さんとのお話に関しても、向いている方向が近いからご一緒させていただけたという部分もあるので。それよりも目を凝らして見なきゃいけないところって、アイドルの子たちがどうなっていくか、それを応援しているファンの方がどう感じるか、互いの気持ちが綺麗に通じ合っているか、という部分だと思うんですけどね。
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「僕らの技術力でアイドルシーンの課題を解決していきたい」(高澤)

――アイドルファンは、そこに敏感な方が多いイメージです。運営の顔がちゃんと見えているか、アイドルと自分たちの方を向いてサービスをやっているかといった感覚で。 橋元:『CHEERZ』や『SHOWROOM』のようなシステムって、“課金によるもの”というイメージがまとわりつくし、サービス内でゲーム性を持たせるために競わせなきゃいけないこともある。そのときにアイドルを応援する人たちが「義務的に課金しなくちゃいけない」と思ってしまうから「お金をむしり取るサービス」と揶揄されたりする。ライブもそれは同じで、最低限商売としてやっている以上、ある程度マネジメントやアーティストにお返しするっていう部分も含めて、商売として成立させなければいけない。その上でどこまで楽しんでもらうかを真剣に考えるし、みんなでアイドルを支える、ユーザーと運営と本人たちがWin-Winの関係性になるのが一番。素晴らしいコンテンツを精一杯作るから、みんなで経済回していきましょう! という感じで楽しくやっていきたいです。 高澤:そうですね。僕らはやっていることで示していくしかない。だからこそ、ずっと発展性が無いところでやっていても仕方ないので、普通じゃ出られないようなステージを頑張って僕らが用意して、そこに出て行けるようにしてあげたい。その分僕らも当然お金を使うし、現状では入ってきてる以上に出ていくほうがずっと多いんですけど、それでいいと思っています。アイドルの方たちも「応援してね!」「応援してもらって良かった!」「こんなとこに出ることができた! ありがとう!」ってファンに気持ちを返して、ファンも「応援してよかったな」と思ってもらえる循環を大事にしたい。僕らはそういうふうに言ってもらえるステージを常に用意し続けたいし、色々な新機能も開発しています。お金を使わせる仕組みではなく、より楽しんでもらうための。そういう風に、僕らの技術力でアイドルシーンの課題を解決していきたいです。
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――今年の『@JAM EXPO』を含め、様々な展開が予想されるこのタッグですが、短期・長期での目標を教えてください。 橋元:まずは準備段階として、イベント当日までの盛り上げに『CHEERZ』を活用したい。7月~8月までの期間で、出演者の方々にはアプリを使用して盛り上げていって欲しいと思っています。当日は、様々な企画を現在進行形で考えているところ。参加してくれる方々た楽しんでもらえることを行いたいです。 高澤:そうですね。まずは初めてライブイベントと絡める『@JAM EXPO 2015』をどう盛り上げていくか。イベントが終わったあとに「『CHEERZ』があったから盛り上がったよね」って言っていただかないと意味がないので、そこまで満足してもらいたい。 橋元:長期の目標に関しては、『@JAM』のホームページ改修もだし、みんながスマホやPCを触ったときに、『@JAM』の分身として『CHEERZ』があるという関係性になればいいと考えています。 高澤:僕らは、「ライブ」と「Web広報」という、苦手としている部分やできないところを助け合いつつ、海外展開していきたいです。 橋元:『@JAM』は2013年から香港と台湾で2回ずつ公演を行っていて、6月には初めて上海に行くんです。定期公演として1月と6月に毎回行えるようになってきているので、海外展開でもしっかりタッグを組みたい。 高澤:『CHEERZ』としては、タイの『Connect Japan』やフランスの『JAPAN EXPO』、インドネシアの『J-POP SUMMIT』へブース出展が決定しているので、そこで『@JAM』の宣伝もしてきます。そこでちゃんと市場が出来れば、『@JAM』進出の手助けも出来るでしょうし。アプリも英語やフランス語、繁体字への対応も完了しています。 橋元:Zepp(ライブハウス)の海外展開もこれから進んで行くでしょうし、そこを踏まえてプランニングしていきたいですね。それに、いまは海外でアイドルが盛り上がっているといったって、今の段階ではコアな“日本のアイドル好き”にしかハマっていない。その壁を、『CHEERZ』や僕らがプロモーションを行うことで、K-POPがアジア中を席巻したような現象を、日本のアイドルでも起こしたい。その一端を『CHEERZ』が担ってもらえるのであれば、僕のこの大それた野望(笑)が、少しでも近づくんじゃないかなと思っています。 (取材・文=中村拓海/写真=竹内洋平) ■イベント概要 『@JAM EXPO 2015』 日時:2015年8月29日(土) 会場:横浜アリーナ 開場/開演・9:00/10:00 価格・券種: スタンダードチケット ・CD 付きスタンディングチケット 7,000 円(税込) ・CD 付き指定チケット 8,000 円(税込) スペシャル VIP チケット(数量限定) 35,000 円(税込) ※小学生以下無料 (保護者同伴に限る) ※男女ともに無料。但し、保護者同伴に限る<対象:4~12 歳(小学生)まで> ※3歳以下は入場不可。 チケット詳細はオフィシャルサイトにて <出演> アイドルネッサンス、アイドルカレッジ、アップアップガールズ(仮)、からっと☆、吉川友、callme、青 SHUN 学園、Cheeky Parade、つりビット、DIANNA☆SWEET、でんぱ組.inc、9nine、nanoCUNE、ハコイリムスメ、ベイビーレイズ JAPAN、妄想キャリブレーション、山口活性学園アイドル部、夢みるアドレセンス、RYUTist、lyrical school…and more!! 一般発売日:7月25日(土) 主催:Zepp ライブ 企画:@JAM EXPO 2015 実行委員会 制作:Zepp ライブ/ソニー・ミュージックコミュニケーションズ 協力:ローソン HMV エンタテイメント、SHOWROOM、Pigoo、MTV81、DISK GARAGE ■関連リンク @JAM EXPO 2015: http://at-jam.jp/expo2015/ @JAM 総合サイト:http://at-jam.jp/
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『CHEERZ BOOK vol.2』

■リリース情報 『CHEERZ BOOK vol.2』 発売日:4月30日(木) 価格:1,000円(税抜き) 発行元:フォッグ株式会社 販売元:ファミマ・ドット・コム 購入はこちら:http://goo.gl/wBwhRO

ceroは日本のポップミュージックをどう変える? 「2015年の街の景色を音楽にすることができた」

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【リアルサウンドより】  2010年にカクバリズムよりデビューして以来、2枚のアルバムでインディーシーンに大きな影響を与えてきたceroが、5月27日に3rdアルバム『Obscure Ride』をリリースした。同作は、街の情景を旅行記のような形でドリーミーに描いてみせた2ndアルバム『My Lost City』の華やかさから一転、ヒップホップや現行のジャズシーンと親和性のある強靭なビートを備えた作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、髙城晶平、荒内佑、橋本翼のメンバー3人にインタビューを実施。聴き手には音楽ジャーナリストの宇野維正氏を迎え、前作からここまで音楽性が変化した理由や、楽曲の構造、彼らが考える“街の音楽”について、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「日本のポップミュージックを長年担ってきた人ができなかったことが、もしかしたらできちゃったんじゃないか」(荒内)

――今回のアルバム『Obscure Ride』は、自分がここ15年間くらい日常的に最も頻繁に聴いているタイプの音楽と、あまりにも体感温度の近いところで鳴っていて、まずそのことに驚きました。今、こんな音楽をやっているバンドは日本では他にいないし、これまでのceroの作品の延長上にありながらも、ここで明らかに違うモードに入ったような感覚があって。 髙城晶平(以下、髙城):あぁ、はい、そうかもしれないですね。 ――最初に訊いてスッキリしておきたいんですけど(笑)、1曲目の「C.E.R.O.」をレコーディングしたのは、昨年末にリリースされたディアンジェロの『ブラック・メサイア』を聴いた後ですか? 髙城:今年に入ってから作った曲なんで、そうですね、あのアルバムはその前に聴いてます。ただ、結果『ブラック・メサイア』っぽくなっちゃってますけど(笑)、あれがきっかけというわけではなく、その前から、ネオソウルと呼ばれていたような、90年代以降のR&Bの乾いた感じのサウンドに日本語をどうやって乗っければいいのかってことにずっと興味があって。 ――そうですね。それは昨年のシングル『Orphans/夜去』からも濃厚に感じられました。 髙城:そう。で、今回のアルバムの1曲目では、そこにわかりやす過ぎるくらいフォーカスしたものを持ってきたかったんですね。決意表明的な意味でも、新たな自己紹介的な意味でも、カマシ的な意味でも。 荒内佑(以下、荒内):最初に聴いた時から「キター!」って感じでしたし、完成した時はかなりアガりました(笑)。いきなり話が飛ぶんですけど、細野晴臣さんのインタビューを読んでいると、『トロピカル・ダンディー』(1975年)の時も、最近だと『FLYING SAUCER 1947』(2007年)の時も、「ファンクをやろうとしたんですけど挫折したんです」みたいなことを言ってるんですよ。きっと細野さんの念頭にはスライ・ストーンがあったんだと思うんですけど、細野さんの声や言葉と、きっとどうやっても相性が合わなかったんだろうなって。つまり、日本のポップミュージックを長年担ってきた人ができなかったことが、もしかしたら俺たちできちゃったんじゃないのって(笑)。 ――おぉ、いきなりデカくぶち上げましたね(笑)。 荒内:まぁ、それは言い過ぎかもしれませんけど、その兆しがあの曲で見えた感じがありました。 橋本翼(以下、橋本):ずっとやりたかったものに、ようやく近づいてきた感じがありますね。髙城くんから曲がメールで送られてきた時点で、この「C.E.R.O.」をアルバムの1曲目にしたいって書いてあったんですけど、そこで今回のアルバムの全体像が見えました。これまでの2枚のアルバムとはまったく違う、次の段階に入ろうとしているんだなって。 ――もちろんこれまでのレコーディング作業やライブ活動を通して、サポートメンバーを含めた個々のプレイヤビリティの向上もあったでしょうし、バンドとして音を鳴らした時のグルーヴ感の熟成もあったと思うんですけど、ここで音楽的に一線を踏み越えることができたのは、バンドへの支持が広がっている今だったらお客さんもついてきてくれるんじゃないかという思いがあったのでしょうか? 髙城:今言っていただいたこと、全部ですね。 ――上手くもなったし、機も熟したと? 髙城:はい。事務所の社長には「まだ早い」みたいなことも言われますけど(笑)、最近はライブをやっていても、なんかついてきてくれそうなお客さんだなって実感があって。それと、ceroというバンドはレコーディングにおいてもライブにおいてもサポートメンバーの力を大いに借りているバンドなわけですけど、今の7人でやるようになったのが2013年末にリリースした『Yellow Magus』のあたりからで、その頃は自分たちが目指している音楽的な方向、音楽的な構造をまだ咀嚼しきれてない感じがあったんですよ。で、そこからはレコーディングもライブもとにかく実践の連続で、いつの間にかやりたいことをやれる力がバンドに備わってきていたというのもあります。特にアルバムのレコーディングの最後の方にやった2、3曲くらい、「C.E.R.O.」もそのうちの1曲ですけど、その段階では演奏も歌も思い通りにできるようになってきていて。今だったら、「それっぽい」だけじゃなくて「モロ」な感じのことをやってもおもしろいんじゃないかなって思えるようになったんですよね。 ――そうそう、さっき荒内さんも「声」について言ってましたけど、今回のアルバムの大きな飛躍の一つは、髙城さんの歌声にあると思うんですよね。いわゆるソウルフルというのとは違うけど、今のバンドの新しいグルーヴを完全に乗りこなしている。 髙城:ありがとうございます。僕の場合は、単純にバンドみんなの成長に自分が追いつかなくなってきていたんですよね。歌って、やっぱり音楽にとって重要なファクターですから。そこで歌を歌っている人間として、演奏はこんなにカッコよくなっているのに、歌だけはこれまで通りみたいな、「ちょっと少年性を引きずっている歌声」みたいなのはカッコつかないよなってことで、色々と研究はしました。 ――音楽に詳しいミュージシャンって、特に最近のバンドは頭でっかちになりがちですけど、ちゃんとそのでっかくなった頭に相応しいフィジカルを手に入れるために鍛えているっていう。 髙城:これは今後の作品もそうするかはわからないですけど、今回の作品に関しては、あまりポストプロダクションで音をいじらないようにしたんです。いい録れ音で録った素材をきちんと並べるってことを丁寧にやろうと思って。それにはまず、演奏や歌を良くするしかなくて。曲作りにも時間をかけましたけど、それ以上に、ちゃんとその曲を自分たちのものにするために時間をかけた作品ですね。 荒内:レコーディングではドラムテック(ドラムのチューニング専門の技術者)の人にスタジオに来てもらって、ドラムキットも複数持ってきてもらって、事前に「この作品の何曲目」ってメモをつけて参考音源として渡してあったので、その理想となるサウンドに近づけていくという作業をしていきましたね。 橋本:逆に、ミックスの時間はこれまでで最短だった(笑)。 ――なるほど。いや、本当にちゃんとやるべきことをやった結果がこのサウンドなんですね。 荒内:やってることはオーソドックスなことばかりなんですよ。ただ、今のオーソドックスではなく、90年代までのオーソドックス。ブラックミュージックに近づくというのは、そうやってちゃんと時間とお金をかけてやるしかない領域があるので。インディーズにしては、かなりお金がかかった作品だと思います。 髙城:まぁ、今だったらやろうと思えばミックスの段階で音を寄せていったりできる部分も多いんだろうけど、やっぱりそうではなくて、最初に出した音の時点でちゃんと寄っているというのが大事だって。そういう考え方で作った作品ですね。
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「『Eclectic』というすごく冷たい質感をもったエロティックで孤独なアルバムを、人の世に下ろしてあげたかった」(髙城)

――その結果、これまでのceroの作品と比べても、わかりやすく元ネタをたどりやすい作品になっていると思うんですね。それは、冒頭に挙げたようにディアンジェロしかり、そことも当時人脈が繋がっていたア・トライブ・コールド・クエストしかり、あるいは2000年代に入ってからの小沢健二しかり。ただ、そういう作品の在り方って、今の日本のメインストリームの音楽においてはかなり希少なものとなったし、そういう意味でも非常に反動的かつ冒険的な作品になっていると思うんです。 髙城:そこに関しても、今回はちょっと考え方を変えてみたんですよね。いわゆるサンプリング的なことで言うと、これまではフレーズをサンプリングしていくという意識が強かったんです。たとえば、「雨」についての曲だったら、別の「雨」について歌ってる曲のフレーズを入れ込んでみたり。そういうやり方であっちこっちからいろんなフレーズを持ってきて、自分たちの音楽を解読させるような仕掛けをしていた。でも、今回何を意識の中でサンプリングしてるかっていうと、フレーズじゃなくて音の構造なんです。指摘されたように「ticktack」ではア・トライブ・コールド・クエストの「Electric Relaxation」の3小節ループを参照していますけど、コードも違うし、当然リリックの内容も全然違うし。そうやって全然違う日本語を乗っけてみた時に、「それでもブラックミュージック的なフレイバーというのは残るのか?」っていう、そういう実験的な意味合いが強くて。 ――なるほど。これ、改めて確認したいんですけど、皆さんはここで話題に出てきたような90年代の音楽をリアルタイムで聴いていたわけではないですよね? いくら音楽的な環境で育ったりとか、あるいは早熟だったとしても、当時は10歳前後とかだったわけで。 髙城:いや、基本的に後追いですよ(笑)。00年代前半頃は、その頃にバーッと出てきてたUSインディーのバンドやシンガーソングライター、彼らの中には音楽的におもしろいアイデアをたくさんもっていた人が多くて、そっちの方を夢中に聴いていて。そういうものと、自分たちの親の世代が聴いてきたはっぴいえんどに代表される日本の音楽、そこにある共通性みたいなものを鳴らしたいと思って、その間にいるのが自分たちだってことを証明したいと躍起になっていて。でも、その作業は一段落したなと思っていた頃から、エリカ・バドゥとかディアンジェロのような90年代後半から00年代にかけてのブラックミュージックに引き寄せられていって。次に自分たちが着手すべきところはそこなんじゃないかって。それで、後からそのあたりのミュージシャンの作品を集中的に聴くようになっていったんですよね。 ――実はブラックミュージックの尖ったところにいる人たちと、ロックの尖ったところにいる人たちって、日本の一般的な音楽ファンが思っている以上に歴史的にも要所要所でクロスしているし、お互いに影響を与え合っているんですよね。最近でも、ケンドリック・ラマーは新作でレディオヘッドをサンプリングしていたりーー。 荒内:あのアルバムでケンドリック・ラマーはスフィアン・スティーブンスもサンプリングしてましたよね。 ――そうそう。だから、ざっくりとUSインディーからはっぴいえんどを経由してのブラックミュージックにどっぷりって流れは、実は全然突飛なことではない。今の日本では誰もいない場所かもしれないけど、その場所にはある種の正当性があると思うんですよ。 髙城:そうですね。「誰もいない場所」というのは意識していました。海の向こうではロバート・グラスパーだったり、ホセ・ジェイムスだったり、フライング・ロータスだったり、そういう音楽的な盛り上がりがここ数年続いていて。単に90年代や00年代のブラックミュージックを後追いしているだけじゃなくて、そういうリアルタイムの音楽にも自分たちはすごく興奮していて。 ――今作に僕が入れ込んでしまう理由もまさにそこにあって。単にブラックミュージックの要素をネタとして放り込んでいるんじゃなくて、音楽的には現在のブラックミュージックの側に思いっきり足を踏み込んだ上で、日本人のミュージシャンにしかできないメロディや言葉をそこで立ち上がらせているところなんですよね。それは、当時ディアンジェロの『Voodoo』からの影響を日本のミュージシャンで唯一ダイレクトに鳴らしていた、ニューヨークに渡ってからの小沢健二の音楽に通じるところがあって。ceroは昨年末の『Orphans/夜去』で『Eclectic』の「1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)」をカバーしていましたけど、そういう表面的な事象を超えたもっと深いところで繋がっている気がしていて。 髙城:いや、『Eclectic』はすごいですよね。 ――リアルタイムで聴いてました? あれは2002年の作品だから、当時はまだ高校生ですよね。 髙城:『Eclectic』はリリースされたタイミングで吉祥寺のタワーレコードで買った記憶があります。でも、本当のすごさに気づいたのはちょっと時間が経ってからでしたね。 ――当時もそこそこ売れはしましたけど、ほとんどの批評家やリスナーがついてこれなかったんですよね、彼があの作品で本当にやろうとしていたことに。彼自身も、その後のライブであのアルバムの曲は「麝香」しかやってなくて、今ではあの作品をどう自己評価しているのかわからないところもあって。 髙城:「1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)」をカバーしたのは、あの『Eclectic』というすごく冷たい質感をもったエロティックで孤独なアルバムを、人の世に下ろしてあげたいなっていう、ちょっと勝手な思い込みがあって(笑)。僕らみたいな普通の兄ちゃんたちが気さくに演奏してみたら、ちょっとはあのアルバムに違う方向から光を当てることができるんじゃないかなって。もともとは今回のアルバムの曲作りの合宿をやった時に、あくまでも習作としてセッションでやってみたものなんですよ。でも、あの曲を実際にやってみたことで、今回のアルバムの方向性がクリアになってきたところがあって。そういう意味でも、結果的に自分たちにとっても大きな意味を持つカバーになりましたね。 ――『Eclectic』はリリース当時多くの人に突然変異のように受け止められていましたけど、実はその前に重要な伏線があって。小沢健二は1999年にモータウンから出たマーヴィン・ゲイのトリビュート盤で「Got To Give It Up」の日本語カバーをしていましたけど、そこで彼はブラックミュージックにとって主要テーマである性愛を、いかにニュアンスそのままに日本語にのせることができるかという実験をしていて。本当に今聴いても笑っちゃうほどエロい日本語詞なんですけど、それをさらに深く探求していったのが『Eclectic』だったと思うんですよ。 髙城:あぁ、なるほど。

「街の昼と夜の風景、表通りと裏通りの風景というのをアルバム全体で描けた」(橋本)

――なので、ここは敢えて訊きたいんですけど、ceroにとってエロティシズムを歌詞のテーマの中心に持ってくるというのは、まだ躊躇してしまうところなのでしょうか? 髙城:いや、そこは課題なんですよ。もしかしたら、そこが次のステップかもしれない(笑)。実はメンバーともその話はよくしていて。 ――あ、そうなんですか? 髙城:例えば日本でもオリジナル・ラブの田島貴男さんなんかはそこをすごくスマートにやってきた方だと思うし、僕たちの友達でもある藤井洋平っていうシンガーソングライターもそこにちゃんと向き合っていて。でも、ceroがこれまで作ってきた作品の流れで、ここでそういう性的なものを突然入れ込むっていうのは、なかなか苦戦したところで(笑)。同じ欲望でも、食の描写とかではこれまでやったことのないところまでやってみたんですけどね。 ――確かに、歌詞の生々しさ、「raw」な感じっていうのは、これまでになく出ていると思いました。 髙城:あぁ、そうかも。 荒内:ただ、さっきも「音の構造をサンプリングする」って話をしていましたけど、この作品ではやっぱりそこをやりたかったんです。ブラックミュージックといえばブラザー&シスターであり、性でありっていう、そこはひとまず置いておいて、とりあえず「構造を取り出す」ということに主眼があって。あくまでもやっている人間のパーソナルは変わらないわけだから、歌の内容に関しては地続きであっていいんじゃないかなって。 ――なるほど。ただ、もはや今回の『Obscure Ride』を、これまでceroの音楽についてさんざん言われてきたような「シティポップ」なんて言葉で呼ぶのは、ものすごく乱暴だよなぁと思いますね。 髙城:あぁ(笑)。最初はやっぱり、「シティポップ」と呼ばれることにものすごく違和感があったんですよ。僕の思うシティポップって、山下達郎さんとか吉田美奈子さんとかの音楽だったので。でも、そのうち「あぁ、街のことを歌ってる音楽ってことなんだ」って、そういう広い意味で今は使われていることを理解してからは、「まぁ、確かに街のことを歌ってはいるよな」と(笑)。だったらもうちょっと自覚的に、街の猥雑さだったり、うらぶれた部分だったり、ゲスな部分だったり、そういう70年代80年代の煌びやかなシティポップが歌ってこなかったところも引っくるめて2015年の街の景色を音楽にすることができたらなって。そして、そういうものがもしまだ「シティポップ」って呼ばれるんだったら、それはむしろ愉快だなって、今はそう思っていて。その音楽的な受け皿になるのが、今回のようなドライな質感のソウルミュージックで。ただ、今回のアルバムはそれ一辺倒ってわけじゃなくて。 ――そうですね。はい。 髙城:橋本くんの書いた曲には、街の持つ煌びやかで華やかな側面も含まれていると思うし。 橋本:確かに、僕の曲はそうかもしれないですね。それも含めて、街の昼と夜の風景、表通りと裏通りの風景というのをアルバム全体で描けたかなって。 髙城:うんうん。そっちの方が東京のリアルと言えばリアルだから。あんまり行き切っちゃうよりね。 荒内:作品がより立体的になったかなって。僕らは30代ですけど、30歳の音楽好きが普通に聴けるような作品を作ったつもりなんですよ。もちろん10代の人にも20代の人にも聴いてほしいですけど、30代、40代、そういう大人な人たちにも僕ら全然対応できますよって(笑)。 髙城:ステージから見ていて、最近は僕らの演奏に合わせて、お客さんのノリがちょっと変わってきているのが面白いんですよね。 ――でも本当に、日本の音楽シーンにおいてこの『Obscure Ride』は後の時代から振り返った時に、相当重要な作品になっていくと思いますよ。 荒内:今回、ライターの方でそういうことを言ってくれる人が多いんですよ。これは日本の音楽シーンにとってメルクマールになる作品だって。でも、そこには「売れるかなぁ」みたいな本音も隠れていそうで(笑)。 ――いや、これまでceroを聴いてこなかった人も振り向かせるような作品だと思うし、売れるんじゃない? というか、売れてシーンの景色を変えてほしいです(笑)。 荒内:そうやって「売れてほしい」と思ってくれている人がたくさんいるということは、きっと売れますね! ……だといいなぁ(笑)。 (取材・文=宇野維正)
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cero『Obscure Ride』(カクバリズム)

■リリース情報 『Obscure Ride』 発売:2015年5月27日(水) 価格:初回限定盤(CD+DVD) 3148円+税    通常盤(CDのみ)2685円+税 <CD収録内容> 01.C.E.R.O 02.Yellow Magus (Obscure) 03.Elephant Ghost 04.Summer Soul 05.Rewind Interlude 06.ticktack 07.Orphans 08.Roji 09.DRIFTIN’ 10.夜去 11.Wayang Park Banquet 12.Narcolepsy Driver 13.FALLIN’ <DVD収録内容> 『Wayang Paradise』 01. ワールドレコード 02. わたしのすがた 03. exotic penguin night 04. マイ・ロスト・シティー 05. Contemporary Tokyo Cruise 06. roof 07. Birdcall 08. outdoors 09. cloud nine 10. マクベス 11. (I Found it)Back Beard 12. あとがきにかえて ■ライブ情報 『“Obscure Ride”Release TOUR』 札幌:6月7日(日) PENNYLANE Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)SMASH EAST:011-261-5569 盛岡:6 月 9日(火) Change WAVE Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)ノースロードミュージック:022-256-1000 仙台:6月10日(水) Darwin Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)ノースロードミュージック:022-256-1000 松本:6月13日(土) 松本Sound Hall a.C Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)FOB新潟:025-229-5000 金沢:6月14日(日) AZ Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)FOB金沢・076-232-2424 神戸:6月18日(木) VARIT Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)SMASH WEST:06-6535-5569 京都:6月20日(土) KYOTO MUSE Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)スマッシュ・ウエスト:06-6535-5569 高松:6月21日(日) DIME Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)DUKE: 087-822-2520 熊本:6月23日(火) Django Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)BEA:092-712-4221 鹿児島:6月24日(水) SR HALL Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問) BEA:092-712-4221 長崎:6月26日(金) Studio Do! Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問) BEA:092-712-4221 福岡:6月27日(土) BEAT STATION Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問) BEA:092-712-4221 広島:6月28日(日) CLUB QUATTRO Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)夢番地広島:082-249-3571 岡山:6月30日(火) YEBISU YA PRO Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別) 問)夢番地岡山 : 086-231-3531 名古屋:7月4日(土) Diamond HALL Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別) 問)JAILHOUSE : 052-936-6041 大阪:7月5日(日) BIG CAT Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別) 問)SMASH WEST : 06-6535-5569 東京:7月12日(日) ZEPP TOKYO Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別) 問)SMASH : 03-3444-6751 HOT STUFF PROMOTION: 03-5720-9999 <TICKET INFO> チケット一般発売日:4/18(土) 札幌公演:ぴあ(P:260-854)・ローソン(L:14005)・e+・TOWER RECORD札幌PIVOT店 盛岡公演:ぴあ(P:260-776)・ローソン(L:22692)・e+ 仙台公演:ぴあ(P:260-777)・ローソン(L:22693)・e+ 松本公演:ぴあ(P:260-790)・ローソン(L:75992)・e+、店頭 金沢公演:ぴあ(P:260-791)・ローソン(L:53403)・e+、店頭 神戸公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+ 京都公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+ 高松公演:ぴあ(P:261-014)・ローソン(L:67956)・e+ 熊本公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L:84942)・e+ 鹿児島公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L:84943)・e+ 長崎公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L: 84944)・e+・ 福岡公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L: 84945)・e+ 広島公演:ぴあ(P:260-440)・ローソン(L:67877)・e+ 岡山公演:ぴあ(P:260-441)・ローソン(L:67878)・e+ 名古屋公演:ぴあ(P:260-735)・ローソン(L:46899)・e+ 大阪公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+ 東京公演:ぴあ(P:260-709)・ローソン(L:75846)・e+ 企画制作:カクバリズム / SMASH お問合せ:03-3444-6751(SMASH)

映画『ソレダケ/that’s it』サントラ盤が伝える、ブッチャーズ・吉村秀樹の不屈の闘志

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【リアルサウンドより】  「“泣き”って言われるたびに、なんなのそれって思ってた」  1999年のアルバム『未完成』のときの、吉村秀樹のインタビュー発言を思い出す。あぁ、そうか、そうだったと今になって膝を打ちたい気分だ。  USのオルタナティヴ・ブームに呼応するよう、日本でもオルタナ/ポスト・ハードコアがようやく注目され始めた90年代後半。96年発表の4th『kocorono』は最高傑作との評価を受け、早くから行っていたUSツアーが実を結んだこともあり、「日本のバンドならブッチャーズが好きだ」と公言する洋楽アーティストが増えていく。翌年にはCHARAに提供した「タイムマシーン」が世間でもヒットし、バンドのみならず、作曲家/メロディメイカーとしての吉村が“泣き”という言葉で多くの音楽ファンに知られるようになった。それまでアンダーグラウンドなポジションに甘んじていたブッチャーズにとっては、なんとも喜ばしい時期だったはずである。  しかし作られたのは『未完成』。タイトルどおりサウンドは混沌としまくっており、吉村はまったく満足していなかった。むしろ満身創痍、もはやこれまでかという覚悟をもって音と言葉を放っている感すらある。相変わらずメロディは優しい(子供にも歌える素朴な旋律、そして子供のように調子っぱずれで、無防備ゆえに切なさを感じる。人によっては“泣き”と呼ぶであろうムードなのだ)が、本人はまったくそう思っていなかったという事実。なんといっても先行シングルになった「ファウスト」の歌詞はこうである。 〈疲れ切って腹を空かしても/絶え間なく人を傷つける〉 〈努力も息も絶え/残された勘だけで放つ〉  ここを石井監督は切り取った、のではない。これが吉村秀樹の本質、どうしたって変わらない核というか魂であったと、『ソレダケ/that’s it』を観て確信した。「“泣き”って、なんなのそれ?」。主役の染谷将太が真顔で言っても不思議ではない台詞を、吉村秀樹は15年前すでに口にしていた。そして“泣き”に逃げない者が取る行動はただひとつ……。  吉村と監督のあいだに、どんな共通認識があったのか、どんな会話があったのかはわからない。ただ、ブッチャーズ最後の作品となった『youth(青春)』の制作時から、二人は水面下でコラボ企画を推めていた。当時の計画や映画内容は今とまったく違ったらしいが、吉村がなんとなく録音しておいた効果音(ギターのハウリング音、演奏前のサウンドチェックらしきもの、低音のドローンなど)は多数残っていた。映画はそれらをふんだんに使用しているため、このサントラは21曲中11曲が効果音。オリジナル曲は10曲のみである。  だから、全編ブッチャーズ音源=ブッチャーズ入門編という感覚で本作を聴いても理解はしづらい。サントラだけでブッチャーズを語ることは不可能だし、映画がブッチャーズの軌跡を語るわけでももちろんない。『ソレダケ/that’s it』は、バンドの音にインスパイアされて作られた、まったく新たな物語。CDにパッケージされた音の数々は、このロック映画の源であり、何か明確な表現になる前の「衝動」として捉えるべきだろう。  楽曲というカタチを取らない効果音は、言葉がないぶんよけいに感覚的だ。ゆらゆら、ぶわわわ、ぐぉーん、どわあぁ、という感じのそれらは、荒ぶる本能のカタマリのよう。決して鎮火せず、癒やされて消えることもない、不気味な衝動のうねり。そこにしいて名前をつけるなら「不屈」という感情になるだろうか。ある種の人々に対する、または社会に対する、というふうに整然と説明できるものではない。とにかくいろんなものに畜生、みたいな、ものすごく原始的な不屈の闘志である。  そこがいつだって根幹だった。メロディは優しくポップだったブッチャーズが、それでも凄まじい轟音にこだわり続けた理由。「鳴らす」というより「炸裂させる」に近いエレキギターと、「歌う」を超えてほとんど「吠える」だった唱法。もっと丁寧にできないのかと言われれば身も蓋もないが、ブッチャーズが決してヴォリュームを下げようとしなかった理由が、今ならわかる気がする。彼らの「不屈」を、石井監督が鮮やかに作品化してくれた今。  映画のストーリーはかなり乱暴だが、それ以上に乱暴なブッチャーズの爆音と合わさることにより、結末に至る破壊力はとんでもないことになっている。さすが石井岳龍と言えばいいのか、おそるべし吉村秀樹と言えばいいのか。どれだけ作品を聴き込んで何度ライヴに足を運んだか、そういうファンの経験値はまったく意味を成さない。どのアルバムから聴けばオススメだという話すら小賢しい。ブッチャーズが鳴らしていたのは、ソレダケ。というか、ロックとは、これだけ。そんな乱暴な言い方だって本作の鑑賞後には可能になってしまうだろう。恐ろしいことに。 (文= 石井恵梨子)
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『ソレダケ / that's it サウンドトラック盤 / bloodthirsty butchers』(キングレコード)

■リリース情報 『ソレダケ / that's it サウンドトラック盤 / bloodthirsty butchers』 発売:2015年5月27日 KICS-3184 / ¥2,500(税抜) 【曲目】(予定) 01.guitar shock* 02.10月/october(「kocorono完全盤」より) 03.toki no owari* 04.燃える、想い(「yamane」より) 05.ROOM(シングル「ROOM」より) 06.ファウスト(「未完成」より) 07.cloudy heart* 08.empty sky* 09.3月/march(「kocorono完全盤」より) 10.knife air* 11.hard attack* 12.Techno! chidoriashi(「youth(青春)」より) 13.12月/december(「kocorono完全盤」より) 14.アンニュイ(「youth(青春)」より) 15.イッポ(「ギタリストを殺さないで」より) 16.senjyu room* 17.iron bell* 18.senjyu room2* 19.last low ambience* 20.襟がゆれてる。(「「△」」より) 21.the end* ※「*」のトラックはすべて映画本編からの「音」です。 ※本作にブッチャーズの新たな楽曲はありません。  すべて既発売の作品からの楽曲となります。 http://soredake.jp/