ゴールデンボンバー、ノーマルな販売手法でチャート1位 その快挙が示す音楽シーンの現状とは?

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ゴールデンボンバー『ノーミュージック・ノーウエポン』(Zany Zap)

【リアルサウンドより】 参考:2015年6月15日~2015年6月21日のCDアルバム週間ランキング(2015年6月29日付)(ORICON STYLE)  先々週はバンドとして今年最高の初週売上げを記録したMr.Children『REFLECTION』が1位、先週はソロアーティストとして今年最高の初週売上げを記録した安室奈美恵『-genic』が1位。そんな2015年上半期を象徴するビッグタイトルのリリースが通り過ぎた後の、いわば“凪”状態といえる今週のチャートを制したのはゴールデンボンバー2枚目のオリジナルアルバム『ノーミュージック・ノーウエポン』。えー、ゴールデンボンバーには何度か取材をしたこともあるし、ライブも要所要所で見てきたし、決して門外漢ではないという自覚を持ってはいたのですが、それでも「えっ? これまでオリジナルアルバムって1枚しか出してなかったっけ?」とちょっと驚きました。まぁ、今さら彼らの活動形態や表現方法がいかに独自なものであるかについて述べたところで「そんなの知ってるよ」って話だと思いますが、それにしてもキャリア11年目、アルバム12枚目にして、ようやくこれが2枚目のオリジナルアルバムという事実が、ゴールデンボンバーという「バンド」のユニークさを如実に表していると言えるでしょう。  ゴールデンボンバーといえば、本作にも収録されている昨年のシングル『ローラの傷だらけ』を通常盤のみ/購入特典一切なし/ジャケットのアートワークは真っ白でリリースし、複数のバージョンや特典によって消費されているCDマーケットの現状への問題提起をしたことも記憶に新しい。さらに、本作のリードシングル的なタイミングで今年5月末にリリースした『死 ん だ 妻 に 似 て い る』では、各メンバーがボーカルをとった4種類の作品を制作、それぞれのメンバーの体臭を採取し再現した「体臭カード」を封入して、CDではなく雑貨(フレグランス)として流通させることでチャートにランキングされないようにするという手法を選択しました(「歌唱者が完全に違う作品はランキングで合算集計されないので、CDとしてリリースするとそれぞれのメンバーの売り上げ枚数によって順位が出てしまう。それを避けるため」という理由)。  そんな彼らのやり方については、日本の音楽業界きってのトリックスターならではの話題作りと受け止める人も多いだろうし、まぁ実際にそういう側面も多々あるわけですが、自分としては圧倒的に「攻めてるなぁ」と感心してしまうわけですね。だって、真っ白のジャケといえばビートルズの『The Beatles』(通称『ホワイト・アルバム』)のことをまずは思い起こさずにはいられないし、ニュー・ウェーブ世代としては時代に対する強烈なアンチテーゼという意味で他のアーティストのレコードを傷つけるためにジャケットの表面をすべて紙ヤスリにしたドゥルティ・コラムの『The Return of The Durutti Column』を思い出したりもするわけです。また、大ヒット確実でありながら、敢えてチャートに集計されないようなリリース方法を選択したという意味では、新聞のオマケとしてCDを配ったプリンスの『Planet Earth』のこととか。あ、そういえばプリンスも自分の体臭をイメージしたフレグランスを販売してましたね。  さて、今作『ノーミュージック・ノーウエポン』で注目すべきは、そんな攻めに攻めてきたゴールデンボンバーでさえも、ここにきてその攻撃の手を休めているということ。『ノーミュージック・ノーウエポン』はCD+DVDとCDの2種リリース、初回限定盤や購入特典はなしという、極めてノーマルなリリース形態となっています。それについて鬼龍院翔は「去年から色々と売り方についてやってみましたが、エアーバンドとしてはこの2形態くらいに落ち着くのが一番かな、と思いました」と自らのブログに書いています。それに続いて「でもまた、ファンのみんなを困らせず楽しいこととか変なことが思いついたらやります」とも書いているので、この先もまたトリッキーな手法でのCDリリースはあるかもしれませんが、今回の件で自分が思ったのは「もうミュージシャンにとってCDの売上げチャートというのは本当の闘いの場ではないんだな」ということ。ここ数年いろんなところで、いろんな発言がされているように、(特にシングルの)チャート上位の大部分を占めているのはお馴染みの面々による複数商法や特典商法に支えられた作品。そして、もはやその良し悪しを語る段階を超えて、リスナーを取り巻くリスニング環境は特に今年に入ってからのサブスクリプション・サービスの活性化によって加速度的に変化してきています。そんな中、インディーズという比較的自由な立場で闘ってきたゴールデンボンバーは、ここで一端、刀を鞘に収めてみせた。その上で、オリジナルアルバムでちゃんと初の1位をとってみせたのだから、これは快挙と言ってもいいのではないでしょうか。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

ライブハウスにいちばん近いフェスーー『SATANIC CARNIVAL’15』が生み出したカルチャーと熱狂

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Ken Yokoyama/Photo by Teppei Kishida

 PIZZA OF DEATH RECORDSが主催する音楽フェスティバル『SATANIC CARNIVAL'15』は、世代を超えた盛り上がりを見せ“新しい音楽カルチャー”の誕生を予感させるものだった。快晴に恵まれた6月20日、昨年に引き続き幕張メッセ 国際展示場 9-11にて、およそ10時間以上にわたって行われ、約1万7000人を動員。出演陣には、PIZZA OF DEATH RECORDS主催とあってメロコア勢が目立つが、同レーベルを率いる横山健とかねてより交流のあるロックバンドや、広く“ラウド系”と称される注目バンドが集結し、バラエティに富みながらも統一感のあるラインナップとなった。今回出演したのは、以下の23組(出演順)。 【SATAN STAGE】 OVER ARM THROW、ROTTENGRAFFTY、KEMURI、coldrain、MONGOL800、Fear, and Loathing in Las Vegas、Ken Yokoyama、10-FEET、FACT 【EVIL STAGE】 SHIMA(オープニングアクト)、Crystal Lake、BACK LIFT、BUZZ THE BEARS、WANIMA、HAWAIIAN6、RADIOTS、G-FREAK FACTORY、locofrank、怒髪天、The BONEZ、04 Limited Sazabys、GOOD4NOTHING、SHANK  入場口からホールに降り立つと、向かって左側にメインとなる「SATAN STAGE」、右側に「EVIL STAGE」が配され、中央の空間にはバーカウンターや各スポンサーのアパレルブースのほか、東北復興支援ブースや写真展示、DJコーナー、さらにはスケートランプやボルダリングまで用意されている。奥には数多くのベンチが配置されており、ここでゆっくり休むことも可能だ。ラウドシーンと相性の良いカルチャーがぎゅっと濃縮されたその空間は、単に音楽だけを届けるのではなく、広い意味でのシーンをDIY精神で築いてきたPIZZA OF DEATH RECORDSならではのものだろう。
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WANIMA/Photo by yuji honda

 午後11時、EVIL STAGEのSHIMAからライブがスタート。ハイテンションなパフォーマンスで同イベントの幕開けを告げ、リスナーたちも次第に温まっていく。続くCrystal LakeやBACK LIFTも熱演を披露し、EVIL STAGEもまた見逃せないステージであることを実感させる。そしてこの日、いちばん始めにフロアを爆発させたのはWANIMAだ。PIZZA OF DEATH RECORDS所属で、次世代メロコアバンドの筆頭とも目される彼らのステージを一目観ようと、EVIL STAGEのフロアは後方まで満員に。代表曲のひとつ「1106」を披露すると会場は大合唱に包まれ、ボーカルの松本健太は「いろんなフェスがあるけれど、SATANIC CARNIVALがいちばん好きです!」と、ステージに立ったことへの喜びを語った。
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KEMURI /Photo by 瀧本”JON…”行秀

 一方、SATAN STAGEではすでにKEMURIが登場し、フロアを湧かせている。「Ato-ichinen」や「PMA(Positive Mental Attitude)」といった、90年代からのファンには懐かしい名曲も披露し、会場をポジティブなパワーで満たしていく。フロアには親子連れからティーンエイジャーまで幅広い年齢層のリスナーがいて、いまこのシーンが成熟期を迎えていることを感じさせる。
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Photo by Tetsuya Yamakawa[showcase]

 続くcoldrainは、WANIMAやKEMURIといったメロコア勢とは異なる、新感覚のラウド系バンドだ。ダンサブルで攻撃的なサウンドでフロアを熱狂させるスタイルは、特に若い世代のリスナーを惹き付けた。その後は、MONGOL800が登場。新鋭とベテランをうまく織り交ぜたステージ構成は見事というほかない。MONGOL800が代表曲「小さな恋のうた」を披露すると、先ほどまでcoldrainで激しく踊っていたリスナーも、後ろでゆっくりと鑑賞していた親子連れのリスナーも、揃って合唱している。ボーカルのキヨサクはオーディエンスの盛り上がりを観て「いちばんライブハウスに近いフェス」と称していたが、この年齢層の幅広さで、この一体感を生み出すフェスはたしかにほかには思い当たらない。そんな『SATANIC CARNIVAL』への敬意を込めて、MONGOL800は最後に、Hi-STANDARDの名曲「NEW LIFE」のカバーを演奏し、ステージを去った。
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G-FREAK FACTORY/Photo by 瀧本”JON…”行秀

 MONGOL800がSATAN STAGEを盛り上げる裏では、G-FREAK FACTORYもまた熱いパフォーマンスを繰り広げていた。「MONGOL800の裏だというのに、こんなに集まってくれてありがとう」といって、魂のこもったポエトリーリーディングを披露する茂木洋晃。その説得力のある言葉の数々に、オーディエンスが引き込まれているのがわかる素晴らしいステージだった。同じように貫禄のステージを披露したのは、怒髪天だ。「バンド名が漢字なのは俺たちだけだ」と笑わせつつ、「日本全国酒飲み音頭」などのユーモア溢れる選曲でオーディエンスを楽しませていた。
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怒髪天/Photo by 瀧本”JON…”行秀

 同イベントの開催前、リアルサウンドで行った鼎談【怒髪天・増子 × 10-FEET・TAKUMA × G-FREAK FACTORY・茂木、これからのフェス文化を語る】にて、怒髪天の増子は「俺はフェスとかイベントって、やっぱりお祭りだと思うんだよね。ちゃんと意図が分かるお祭り。そういうもんであってほしいんだよね」と語っていた。『SATANIC CARNIVAL'15』はたしかに、出演陣はもちろん、ステージ構成や出展ブースまで、主催者側のコンセプトがしっかりと反映されており、ここでしかできない“お祭り”になっていた。オーディエンスの盛り上がり方がライブハウス並みになっていたのは、このフェスがただの見本市ではなかったことの何よりの証明だろう。
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10-FEET/Photo by Tetsuya Yamakawa[showcase]

 バンド・Ken Yokoyamaとして出演した横山健は、「俺はこのフェスはほとんどタッチしていなくて、今回は一出演者として出ている」と自身のスタンスを表明し、同イベントがPIZZA OF DEATH RECORDSのスタッフが主導していることを告げたが、その根底にはかつてのAIR JAMのような音楽カルチャーとしてのフェスを生み出したいという意思があったはずだ。その意思を汲んでか、10-FEETのTAKUMAは「怪我はするなよ、でもその寸前まで行け!」とオーディエンスを煽る。ダイブもモッシュも禁止しないのが、『SATANIC CARNIVAL』のあり方だ。
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FACT/Photo by yuji honda

 そして最後には、15年いっぱいでの解散を発表しているFACTが登場。この日の大団円ともいえるライブに、フロアは満員状態だ。海外でも支持される圧倒的な迫力のサウンドと、ライブパフォーマンスと一体となった映像演出、派手なライティングで、この日最後のライブを大いに盛り上げた。イギリス人のメンバーであるAdamは「世界中を観ているけれど、日本のシーンがいちばんすごいよ!」と語るように、この光景、この熱狂はきっと『SATANIC CARNIVAL』でしか味わえないものに違いない。  今年で2回目の開催でありながら、その独自性を発揮し、人気フェスとして定着していくことを伺わせた『SATANIC CARNIVAL'15』。今後、同イベントがシーンを牽引していくことは間違いないだろう。 (文=松田広宣)

リズムという概念のない男ーー『やついフェス』の蛭子能収に衝撃を受けた

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蛭子能収『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(光文社)

【リアルサウンドより】  先日、生まれて初めての音楽体験をしたので、忘れないうちに書き記しておく。  いや、体験というより知識を得た、事実を知った、といった方が近いか。  どういう事実か。リズムという概念のない人間は存在する、という事実だ。  2015年6月21日日曜日、毎年この時期にDJやついいちろうが渋谷のライヴハウスとクラブ10会場にて、1日170以上の出演者を集めて行っている『YATSUI FESTIVAL』。今年から2デイズになって、その2日目。  もっとも大きな会場であるTSUTAYA O-EASTで、タイムテーブル上では18:30から(実際は30分押していたので19:00から)『エレキシヶ原の歌合戦』という催しが行われた。これは、やついいちろうチームとレキシ(池田貴史)チームに分かれ、『紅白歌合戦』ばりに1曲ずつ歌って勝負する、という、フェスの彩りとしてバラエティ番組的こともやりましょうみたいな企画。  バックバンドを務めるのはこの日CLUB ASIAのトップに出演したカルメラ。いつものようにグダグダと脱線して進行を妨げるレキシ池ちゃんにやついくんがつっこんだりしつつ、1曲目はレキシチーム=レキシ&いとうせいこう&MCいつか(Charsima.com)の3人で、“今夜はブギー・バック”。途中で曲がレキシの“狩りから稲作へ”に変わったりして、大いに盛り上がる。続いてはやついチーム=やつい、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、GONCHI(Charsima.com)の3人で“DA・YO・NE”を披露、途中で水曜のカンパネラの曲になったりしてさらに盛り上がる。  そして、やついチームの二番手として、ヘアスタイルからメイクから衣装まで全身TOSHIのコスプレ姿の片桐仁が登場。 “紅”を歌うも、キーが苦しいようでサビは客にマイクを預けっぱなし、それをやついくんにつっこまれたりしてフロアは大笑い。  ここまではよかった。異変が起きたのは、そのあとだ。  やついチーム、片桐仁のTOSHIに対抗するアクトとして登場したのは、蛭子能収。今このステージにいる人のうち、おそらくいとうせいこうしか知らないであろう蛭子さん、そのいとうせいこうに「俺は昔から蛭子さんのことを野良犬と呼んでいる。おい野良犬!」といじられたり、逆に池ちゃんに「具志堅さんですか?」とたずねて笑いをとったりしたのちに、「何を歌ってくれるんですか?」「美輪明宏さんの“ヨイトマケの唄”を」というわけで、拍手を浴びて歌い始めた。 その歌いっぷりに、我々オーディエンスは度肝を抜かれることになる。  蛭子さんの歌、リズムという概念がないのだ。リズム音痴とかリズムがずれるとかではなく、リズムという概念そのものを持っていないのである。だから、演奏に合わせて歌おうという意志がゼロ。歌には演奏がある、という前提を無視していると言ってもいい。  冒頭の「♪とうちゃんのためならエンヤーコーラー」のアカペラ部分が終わって、まず演奏と共に歌が始まるはずが、自分のタイミングで適当に歌い始める。1番が終わって2番に入る時も、バックの演奏が2番の頭にさしかかるのを待たずに歌に入る。だからコードが合わないのは当然、リズムも頭と裏がコロコロ入れ替わる。  驚愕しつつ手拍子を放棄する超満員のオーディエンス。「そうか、この人、そうなんだ」とうことを悟り、歌がずれるとそれに合わせて瞬時にリズムとコードを変えるカルメラ一同(すごいアドリブ力でした。心底感心しました)、でもまたすぐずれる蛭子さん、それに合わせてまた変えるカルメラ……と、歌と演奏の追いかけっこと化すステージ。そんなことには一切かまわず……というか「かまう」「かまわない」という意識すらなく、片手に歌詞カードをがっちり持ってそれを顔を近づけ、読み上げるように歌い続ける蛭子さん。両ソデで這いつくばって笑っているやついくん、レキシ池ちゃん、いとうせいこうなどの共演者一同。  しかも。音程も外れまくっているならまだわかるが、そうではないのだ。音程はちゃんと合っているし、声は美声とすら言ってもいいくらい。ちゃんと歌えている。なのに、リズムだけが合っていない。くり返すが、ずれているのではなく、ずれるとか合わせるとかいう意識そのものがない。  たとえばラップと日常会話の違いは色々あるが、もっとも異なるのは、ラップがリズムに乗って発されるが会話はそうではない、ということだ。あたりまえだ。今こいつがしゃべってるテンポ95BPMぐらいで、しゃべり終わりが2拍目だったから4拍目のとこで半拍食って(シンコペーションして)「でもさあ」って言おう、とかいうふうにはしゃべらないでしょ? 日常会話で。自分のペースで、自分の速さでしゃべるでしょ? どうやらそれと同じらしいのだ、蛭子さんにとっての歌というものは。  歌が終わり、蛭子さん、ひとしきりみんなにつっこまれまくったあと、次は「歌で戦うなんてやめろ!」と仲裁に入るという体で、忌野清志郎完全コスプレのワタナベイビー(ホフディラン)が登場、“雨あがりの夜空に”を歌う、という展開になったのだが、ここでまた彼の特異性が露わになる。  蛭子さん、ステージ後方で、他の出演者に合わせて手拍子をしたりサビで腕を左右に振ったりしているのだが、その手拍子の打ち方も、腕の左右の振り方も、本当に「なんとなく」やっているのだ。何にも合わせていない。何の規則性もない。まるでかゆいところをかく時のように、頭に手をやる癖のある人のように、手拍子を打ったり腕を左右に振ったりしているのである。  たとえばスピッツの草野マサムネは、ステージでギターを弾きながら歌う時に腰を左右に揺らすくせがあるが、その揺れ、いつも曲のテンポとは違う。違うが、一定の規則性を持って左右に揺れていることが見てとれるので、きっと本人の中に何かあるんだろうな、と観る側は納得できる。しかし、蛭子さんは、それですらないのである。  彼が歌い始めてからステージから去るまでの間、共演者たちも超満員のオーディエンスも終始爆笑していたが(中にはコムアイのように「感動しちゃいました」と泣いていた人もいたが。蛭子さんが女性誌で連載している人生相談の愛読者だったりして元々ファンだったから、みたいなことをおっしゃっていました)、僕はただただ心底驚いていた。  蛭子能収モンスター説というのは、古くは浅草キッドが著書などで、最近では伊集院光がTBSラジオ『深夜の馬鹿力』などでネタにしてきたことなので、サブカル系オヤジ&青年&少年の間で広く知られた事実だ。僕にしても、80年代にガロや宝島で蛭子さんの漫画を読んでいた頃はそんなこと知るよしもなかったが、ここ数年、キッド&伊集院の薫陶を受けてきたおかげで(伊集院からはいまだに受けている。6月22日の『深夜の馬鹿力』でも、その2日前に放送された蛭子さん出演の『路線バスの旅』の話をしていたし)、そのモンスターっぷりは把握しているつもりだった。昨年8月に角川の新書から出た蛭子さんの著書『ひとりぼっちを笑うな』も、すぐ買って読んだし。  しかし。歌までモンスターだとは知らなかった。しかもこんな、我々の常識や既成概念を根本から覆すレベルの。  僕は10歳で初めて自分の意志でレコードを買って、13歳から洋楽を聴くようになって、15歳からアマチュアバンドを始めて、22歳で株式会社ロッキング・オンに入って、音楽雑誌を作って売ることが仕事になって……つまり、それなりに音楽に密接な人生を送ってきたつもりだった。しかし。リズムという概念を持たない人がすることは知らなかった。自分の人生、何か、根本的な大きな見落としをしたままで、ここまできてしまったのではないか。という衝撃に、今、新たに打ち震えています。  ただ、一晩寝て起きて、ひとつ思い出した。  どの作品だったか忘れてしまったが、西原理恵子の漫画を読んでいたら「自分のお祖母さんは音楽というものがあること自体を知らなかった」と書かれていて、びっくりしたことがある。が、もしかしたら昔の日本って、けっこうそういうものだったのかもしれない。  まあそれは極端な例としても、ラジオが普及する前、庶民が日常的に音楽に接するのって、それこそお祭りや盆踊りの時ぐらいだっただろうし。それらの歌に「リズムの裏表」とか「リズムキープ」という西洋音楽的な概念があったとは思えないし。たとえば盆踊りも、リズムに乗って身体を動かしていくというよりも、「同じ動きを順番にやる」に近い気もするし。  僕が知らなかっただけで、蛭子さんのようなリズムという概念のない人たちは、一定以上の年齢層で、日常的に音楽に接さずに生きてきた人の中には多いのかもしれない。  そういえば、僕の父親は現在78歳、母親は72歳なのだが、歌を歌っているのを聴いたことも、音楽に合わせて手拍子をしているのを見たことも、一度もない。もしかしたら……。 ■兵庫慎司 1968年生まれ。1991年株式会社ロッキング・オンに入社、音楽雑誌の編集やライティング、書籍の編集などを仕事とする。2015年4月にロッキング・オンを退社、フリーライターになる。現在の寄稿メディアはリアルサウンド、ロッキング・オン・ジャパン、RO69、週刊SPA!、CREA、kaminogeなど。 ブログ http://shinjihyogo.hateblo.jp/ Twitter https://twitter.com/shinjihyogo

浜端ヨウヘイの“大きな音楽”はどこから来て、どこに向かうのか? 音楽ジャーナリスト2氏が1stアルバムを紐解く

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【リアルサウンドより】  期待のシンガーソングライター・浜端ヨウヘイが、1stアルバム『BIG MUSIC』を6月10日にリリースし、そのダイナミックな歌唱とサウンドで評判を集めている。  山崎まさよしやスキマスイッチ、秦 基博、さかいゆうなど、多くの優れたアーティストを輩出してきたオフィスオーガスタから、2014年11月にデビューした浜端は、これまで『結-Yui-』『無責任』という2枚のシングルをリリース。今回のアルバム『BIG MUSIC』は、“大きな男の大きな音楽”をコンセプトに、200曲以上といわれるオリジナルレパートリーの中から厳選した楽曲群に書き下ろしの新曲を加えた全12曲を収録している。宮古島のライブハウス『ズビズバー』でライブセッションをしながら録った「BELONG-BELONG」や「スーパーマン」をはじめ、京都での在住経験を反映させたラブソング「鴨川」や、浜端の自己紹介ソングというべき「大男のブルース」、2015年3月に訪れたボルネオ島で書き下ろした「Starting over」など、バラエティに富んだ楽曲が並んでいる。  ゲスト陣には山崎まさよし(「結-yui-」「大男のブルース」)やBLACK BOTTOM BRASS BAND(「MUSIC!!」)、金原千恵子(「ラブソングみたいに」)といった豪華アーティストを迎え、プロデューサーとして1stシングルから引き続き江川ゲンタを起用している今回の作品。はたして浜端はデビューからの約半年間でどこまで成長したのだろうか。元『リズム&ドラム・マガジン』編集長の大久保徹氏はアルバムにおける浜端の変化について、バックミュージシャン陣の功績が大きいと語る。 「『BIG MUSIC』は一部を除いて、ドラムに江川ゲンタ、ベースにカナミネケイタロウ、ギターに西慎嗣という頼れるプレーヤー陣を迎えて制作されており、この起用がアルバムに盤石のバンドアンサンブルを生んでいます。この3人のなかでは若手であるカナミネは堅実なプレイをしていますが、西と江川はバックでときたま遊び心のある演奏をしながらも、歌をしっかりと引き立てるような振る舞いも見せており、隠れたアルバムの核といえるでしょう」  続けて同氏は、プロデューサーを務める江川ゲンタの仕事ぶりも絶妙であると評する。 「宮古島で録音した『BELONG-BELONG』や『スーパーマン』は、ライブレコーディングならではのラフさを残しつつ、丁寧にパッケージングされた楽曲だと感じました。それに、こういった形で録音したことにより、浜端の誠実さや繊細さが伝わってきたことは、アルバムにおいて見せた新たな一面だと思います。また、そんなバンドサウンドにおいても、弾き語りを出自とする浜端の歌はしっかりと前に出ています。これは彼の歌唱力が如何なく発揮されていることの表れであり、楽器の伸びを活かしつつ、浜端が歌う言葉数の多い歌との交通整理も綺麗にディレクションした、江川さんのプロデュース力の賜物ですね」

浜端ヨウヘイ / MUSIC!!

 また、音楽ジャーナリストの柴那典氏は、アルバムで浜端が表現した内容には、デビュー当時からの変化もみられると語る。 「浜端は当初四畳半的なフォークで活動をしていましたが、沖縄のシェアハウスに住んだことで音楽性もおおらかなものへと変化したそうで、アルバムにはその二面性がくっきりと表れているように感じました。また、デビュー以降は山崎まさよしさんのツアーに帯同したり、多くのお客さんに出会ったこともあり、歌う歌詞の内容も次第に大きな対象へと変わっています。リードトラックの『MUSIC!!』には顕著にそれが表れており、<それは世界中を笑顔に変えるようなメロディ>といったスケールの広い詞と、シングアロングできるようなメロディ、体躯を活かした包み込むような声がマッチし、これまでにないダイナミックさを生んでいる。彼は見た目の割に繊細な部分があるのですが、そんな浜端が大きな表現を引き受けた一作でもありますね」  最後に同氏は、浜端の今後に期待しつつ、こう述べた。 「『Starting over』は2015年3月に訪れたボルネオ島で書き下ろした楽曲ですが、以前に彼はインタビューで『もっと色んな国に行ってみたい』と言っていました。曲にもしっかり海外での体験を踏まえた懐の広い部分が表れていますし、個人的には中南米や北欧あたりのルーツミュージックを吸収して、土着的な文化とお酒とそこにある音楽を鳴らせるようになれば、さらに開放感のある歌が生まれ、大きなステージへと向かえそうです」  インディー時代からデビュー後までの時間が一度結実したというべき今回の作品。浜端はこのアルバムを通じて、次のステージである世界の音楽へと足を踏み入れていくのだろうか。今後もしっかりと見守っていきたい。 (文=編集部)
hamabata_BIGMUSIC_shokaiJKth_.jpg浜端ヨウヘイ

『BIG MUSIC(初回盤)』

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浜端ヨウヘイ『BIG MUSIC(通常盤)』

■リリース情報 『BIG MUSIC』 発売:6月10日 初回生産限定盤(CD+DVD):¥3,500 通常盤(CD):¥3,000 ≪収録楽曲≫ 1.Starting over 2.結-yui- 3.ノラリクラリ 4.限りなく空 5.大男のブルース 6.鴨川 7.群青ホライズン 8.ラブソングみたいに 9.BELONG-BELONG 10.スーパーマン 11.無責任 12.MUSIC!! [初回限定生産盤DVD内容] ≪Music Video≫ ・結-yui- ・無責任 ≪Live at ZUBIZUBAR in MIYAKOisl.≫ ・ノラリクラリ ・限りなく空 ・BELONG-BELONG ・Traveler

MANNISH BOYSにおける、斉藤和義と中村達也の絶妙な関係性とは? 新作『曲がれない』から分析

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【リアルサウンドより】  MANNISH BOYSは、かなり特異な成り立ちのバンドだ。ニューシングル『曲がれない』は、そんな彼らの特質がよくあらわれている。  斉藤和義と中村達也が飲み屋で話すうち意気投合してバンド結成、というエピソードはよくあるストーリーだが、斉藤と中村の関係はボーカリストとドラマー、あるいは歌い手とそれを伴奏するミュージシャン、というような平坦で一方的なものではない。むしろ斉藤が中村の才能のみならずキャラクターまでも面白がり、自分は一歩引いてでも彼の個性を前に出して引き立たせようという意思が感じられるのが面白いところなのだ。これは斉藤と中村の共作曲が多いとか、中村がドラムだけでなくギターやベースも弾き、時にはリード・ボーカルもとる、といった役割分担だけのことではない。中村のパワフルでエネルギッシュなプレイが斉藤の音楽世界をバックアップとするというより、そのキャラクターやライフスタイルまでもが斉藤の表現世界と一体化することで、このバンドならではの新境地を開拓しているのである。実際、MANNISH BOYSにおける中村達也は、ほかのどのバンドやユニットにおける彼よりも、「らしい」と思える。ある意味で中村のリーダー・バンドであるロザリオスよりも、達也という人間が感じられるのだ。ミュージシャンの人格や人生と、音楽表現(作品)を過剰に重ね合わせることは愚かだし、ある意味で危険でもあるが、確かにそこで聴ける中村達也は、ぼく(たち)のよく知る達也という人間そのものなのである。と同時に、彼にはこんな面もあったのかと気づかされる。それは斉藤という懐が広く多彩な表現方法をもつ優れた音楽家と一緒だからこそ表現可能だったのだ。  中村は、単なるリズム・キープ以上に彼のキャラクターを前面に出した自由奔放で野性的でエモーショナルなプレイが特徴だ。中村のプレイがエモーショナルなのは単に手数が多いとか音量がデカいというだけではない。彼はただリズムを刻んでいるだけでなく、時に「歌って」いるのである。ブランキー・ジェット・シティで浅井健一が、スターリンやタッチ・ミーで遠藤ミチロウが、ゴールデン・ウエット・フィンガーズでチバユウスケが歌うバックで叩きながら、中村も一緒に歌っている。そのロマンティックとも言える歌心が彼のプレイの最大の魅力なのだ。もちろんその饒舌さを邪魔に思うボーカリストもいるだろう。だが斉藤はそれを面白がり、なら思う存分歌わせてしまえばいいと考えた。さすがに鋭いし懐が拾い。  もちろん斉藤にとっても、中村のエネルギッシュでパワフルなプレイ、天真爛漫で自由奔放なキャラクターによって触発され、後押しされ、彼単独では、あるいはほかのミュージシャンとでは出せない、あるいは出しにくい、彼の荒々しくやんちゃでユーモアたっぷりの面が見事に引き出されているのは見逃せない(2011年のソロ・アルバム『45 STONES』は中村との出会いも作品作りの契機になっていると思える)。つまりお互いが自分を表現するために理想的なパートナー関係となっている。真摯で生真面目で批判精神に富んだシンガー・ソングライター、あるいは緻密でこだわりの強い完全主義的な音楽家としての斉藤しか知らない人には当初戸惑いもあったかもしれないが、お互いの音楽遍歴や人生観、生活感が素直に反映されたMANNISH BOYSの近作や、「曲がれない」を聴くと、バンドとしていい意味でバランスがとれてきた印象だ。  最初はまさかここまでMANNISH BOYSでの活動に本腰を入れることになるとは思わなかったが、この二人ならではの良さはちゃんと残っている。彼らのように周りの思惑など関係なくやりたいことをやりたいようにやり、しかもそれが自己満足に陥らずポップ・ミュージックとしての楽しさが聴き手に伝わるようなバンドは少ないだけに、無理のない範囲で活動を続けてほしいと願っている。 (文=小野島大)
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MANNISH BOYS『曲がれない』

■リリース情報 『曲がれない』 発売:2015年6月24日 価格:¥1,800(税抜) タワーレコード限定シングル(CD+曲がれないバッグ) 1.曲がれない 2.レモネード 3.ユー・メイ・ドリーム ■ライブ情報 「MANNISH BOYS 2015 TOUR」 6月25日(木) Live House 浜松 窓枠 6月26日(金) 京都 磔磔 6月28日(日) 横浜 BAY HALL 7月2日(木) 宮古 KLUB COUNTER ACTION 7月4日(土) 青森 Quarter 7月5日(日) 秋田 club SWINDLE 7月11日(土) 長崎 DRUM Be-7 7月12日(日) 熊本 B.9 V1 7月14日(火) 高松 MONSTER 7月20日(月) 長野 CLUB JUNK BOX 7月22日(水) Zepp Namba 7月27日(月) Zepp Nagoya 7月28日(火) Zepp DiverCity http://www.jvcmusic.co.jp/mannishboys/

DJ KAORIがZEDDを直撃インタビュー「もっと寿司を食べられれば、さらにがんばれると思うよ!」

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ZEDD/DJ KAORI

【リアルサウンドより】  先日、新作『True Colors』をリリースしたばかりのDJ/プロデューサーのゼッド(ZEDD)が再度来日を果たした。RealSoundでは、かねてよりゼッドの音楽性に惹かれていたDJ KAORIにインタビュアーを務めてもらおうという企画を実行。彼女の鋭いインタビューから見えた新作の内容と、ゼッドの本心に迫る。 DJ KAORI(以下、KAORI):昨晩のショウ、見に行きましたよ! ZEDD:面白かった? KAORI:とても素晴らしかった! みんながジャンプしてて、地震が起きたみたいでしたよ(笑) ZEDD:僕もとても楽しんだよ。今までプレイしてきた中でも、最もエネルギーがあるお客さんばかりだったね。本当に日本は大好きだよ。 KAORI:ステージのビジュアルもすごい凝っていますよね。どんなこだわりを持っているんですか? ZEDD:DJってPCの前に座って、1日中新しい音楽を探してるだろう? 僕は新しい音楽を探すことより、自分のクリエイティブチームと過ごす時間のほうが多いんだけど、彼らと一緒に面白いライティングを考えたり、もっと面白いショウにするためにはどうしたらいいかアイディアを出し合っているんだ。 KAORI:ネクストレベルのショウ、という感覚でした。ネクストレベルと言えば、新作『True Colors』も次のレベルに達していましたよね。ダンスミュージックだけでなく、ポップな要素も積極的に取り込んでいて、もっと多くの人たちの共感を得られる作品と感じました。どんなコンセプトで制作に入ったんですか?

Zedd - I Want You To Know ft. Selena Gomez

ZEDD:僕はいつもタイムレスな音楽を作りたいっていつも思っているんだ。これから50年後、みんながどんな音楽を聴いてるか想像もつかないけど、僕の音楽もビートルズやクイーンの音楽のように、ずっと聴き続けられる作品であってほしいと思ってる。だから、『True Colors』は、すべての曲がそれぞれ際立つようにしたんだ。それでいて、すべての曲がつながっている感じでね。    コンセプトは、それぞれの曲に“色”を与えたんだ。オレンジのサウンド、赤のサウンド……といった感じでね。僕はただDJというだけじゃなく、多彩な楽曲を作るミュージシャンだってことをわかってもらいたかったんだよ。
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KAORI:これまでどんな音楽を聴いて育ってきたのですか? ZEDD:クイーン、キング・クリムゾン、ディープ・パープル、レインボー、ジェネシスとかのロックを聴いて育ったね。小さい頃はエレクトロニック・ミュージックはまったく聴いてなかったんだ。強いて言うならダフト・パンクくらいかな。それからしばらくして、ジャスティスを聴いた。僕の音楽が他のクリエイターと違って聴こえるのは、僕はエレクトロニック・ミュージックを作るのが好きだけど、聴かずに育ったところが大きな要因じゃないかな。 KAORI:だから独自のポップ感があるんですね。 ZEDD:ルールに縛られないからね。アルバムの表題曲「True Colors」は、全然エレクトロニック・ミュージックじゃないだろう? BPMはダンスミュージックだけど、それ以外はまったく別物だと言っても過言ではないね。 KAORI:確かにいわゆる“エレクトロニック・ダンスミュージック”とは違う到達点に来ていると感じました。ところで、今回の来日はもう何度目ですか? ZEDD:プロモーションで1回、DJプレイで4回だから、今回で5回目になるね。

Zedd - Beautiful Now ft. Jon Bellion

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KAORI:お気に入りの場所は? 好きな食べ物とかできました? ZEDD:日本食は大好きだよ。僕が住んでるLAは日本食が人気だしね。特に寿司が大好きだよ。 KAORI:ゼッドを見に来る人の数は、どんどん増えているんじゃないですか? ZEDD:そうであったらうれしいね。一番最初の来日プレイのときは、ジャンプする人もまばらだったし、僕の曲もそれほど浸透していなかったし、立ってこっちを見てるだけだったけど(笑)、昨日の夜は、みんなジャンプして曲も歌ってくれていたからね。 KAORI:多忙な毎日を過ごしていると思いますけど、どのように時間をやりくりしているの? ZEDD:アルバムを完成させるために一生懸命働いて、アルバムが完成した後は、インタビューをたくさんして、プロモーションで世界中に行く。それから『True Colors』を引っ提げて世界中でツアーをする予定だけど……確かに忙しくはしているけど、もっと寿司を食べられれば、さらにがんばれると思うよ!(笑) 20150622-dz6.jpg KAORI:次の目標は? ZEDD:まだまだ一緒にやりたいアーティストがたくさんいる。だから、音楽を続けて、アルバムもたくさん作りたい。そして、『True Colors』を多くの人のためにプレイしたいと思ってるよ。

DJ KAORI'S BEST POP HITS

KAORI:最後に読者にメッセージをお願いします。 ZEDD:何度も来日しているけど、僕のことを飽きずにサポートしてほしいな。まだまだ見せたいものがたくさんあるからね。いつもサポートしてくれてありがとう! (取材・文=松田敦子 撮影=cherry chill will) ■リリース情報 ゼッド 『True Colors』 発売日:5月2日 価格:2,376円(税込) DJ KAORI 『DJ KAORI'S BEST POP HITS』 発売日:4月29日 価格:2,484円(税込)

BiSHの現場が動物化!? 熱狂と波乱のギュウゾウ主催フェスを徹底レポート

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エレクトリックリボン。

【リアルサウンドより】  一時期からBiSの熱狂的な研究員(BiSファンの総称)になり、周囲から心配されるほどだった電撃ネットワークのギュウゾウ。すっかりアイドルに目覚めてしまった彼が主催しているアイドルイベントが『ギュウ農フェス』だ。2015年6月14日に、第2回目である『ギュウ農フェス vol.2 羽田空港アイドルフライトだっぺ!』が開催された。  そう、タイトルにもあるように、なぜか会場は羽田空港の一角にあるTIAT SKY HALL。国際旅客ターミナルを通過して会場に向かうのだが、うっかり出国してしまったヲタが数人いても不思議ではない空間だ。  イベントは、ギュウゾウの前説からスタート。「下の階から怒られるので、とにかくジャプだけはしないでほしい」と伝えられて本編がスタートした。  トップバッターのエレクトリックリボンは、すべての楽曲のソングライターでありトラックメイカーであるasCaを中心とした5人組テクノポップグループ。前回の『ギュウ農フェス』(2015年2月27日)では、5人体制のお披露目も行った。  しかし、登場してみるとなぜかひとりだけビキニの水着のメンバーがいた。そのericaは「指原莉乃がAKB48総選挙で1位になったら自分も水着でライブをする」という公約を掲げていたため、それを実行することになったのだが、その公約を知らない観客は「メンバーのひとりがビキニ姿で缶ビールを飲んでいる」という不可解な光景を目にすることになった。  「steal me」からキックの音がいきなりフロアの熱気を上げ、夏の楽曲である「波音チューニング」では、たわわに揺れる胸(のような気がした)で踊るericaの姿も印象的だった。最後の「クリームソーダ」は、asCaのポップセンスが発揮されたキャッチーな配信シングルだ。
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ガールズq/b。

 二番手のガールズq/bは、栃木県の4人組グループ。巫女のような衣装である。1曲目の「JUMP!!」では、まずイントロの音を下げて自己紹介をして、それから音量を上げて歌に入るという珍しい展開をしていた。「JUMP!!」はロックだったが、2曲目の「ナイトエクスプレス」でエレクトロなダンスチューンに急に変わったのにも驚いた。  3組目のアイドルネッサンスは、過去の名曲を歌う7人組で、登場とともに熱い歓声が湧きおこった。ユニコーンの「PTA~光のネットワーク」のカバーでは、原曲がTM NETWORKのパロディーであったことを忘れるほど、ダンスのキレやヴォーカルの安定ぶりに魅了された。木村カエラのカバーである「BANZAI」でのダンスパフォーマンスも見事。煽りをしなくても、自然発火的にフロアが盛りあがってしまうのだ。以前見たときよりも一段とブラッシュアップされた印象だ。フジファブリックのカバー「夜明けのBEAT」での、縦一列になって描いた円を一気に崩すような動きや、THEイナズマ戦隊のカバー「手を打ち鳴らせ!!」でのフォーメーションの美しさも特筆したい。UNISON SQUARE GARDENのカバー「ガリレオのショーケース」はロックだが、激しい動きでもメンバーのパフォーマンスはブレることがなかった。そして、これまでのシングル表題曲をセットリストに入れなくても、1セットを構成できてしまう現在のアイドルネッサンスの実力を見せつけたステージだった。  4番目に登場したのは、BiSの最初期の制作チームが「BiSをもう一度始める」と宣言してスタートさせた4人組、BiSH。1曲目の「MONSTERS」から激しいリフトやジャンプ、クラウドサーフが起き、現場は動物化。「スパーク」を聴きながら、「パフォーマンスの方向性がまだ明確になっていないし、かといってジャンクな方向にも振りきれておらず、楽曲の良さに依存している面は否めない」などと真面目に考えていたところ、靴を投げる清掃員(BiSHファンの総称)を目撃。靴を投げるなよ、ジャンプでもう禁止事項を破ってんだから! しかし、そうした清掃員ばかりではなく、消臭剤を噴出させまくって、結果的にスモーク効果のような演出を生み出している清掃員には妙に感心させられた。パフォーマンスという点では、「ぴらぴろ」の振りきれた路線が今のBiSHに一番ふさわしいだろう。  また、このあたりからは清掃員がジャンプしなくても、暴動のような盛りあがりで床が揺れ続け、「下の階からの苦情待ったなし」の状況となった。「サラバかな」ではリフトの嵐となったが、とにかくサイリウムを投げるな! 「TOUMIN SHOJO」では、ヲタをステージ上に引っ張り上げて踊らせるという恒例の行事が行われた。  転換中に登場したギュウゾウは「苦情来てまーす!」とMC。「このイベントは最後まで続行できるのだろうか」と不安さえ抱く状況になった。  5番目はおやすみホログラム。サウンドにUSインディーやオルタナの影響が濃い2人組だ。また、元研究員が多数流入したグループとしても知られている。  おやすみホログラムの現場については、自嘲を込めて羊(おやすみホログラムファンの総称)も「きったねぇ現場」と呼ぶが、実際のおやすみホログラムのステージとフロアはむしろ美しい。ギターの一音が鳴りだした瞬間に、あらゆるものが崩れだす。脈絡なくリフトやクラウドサーフが続き、ときにメンバーがフロアにダイブしていく。そこには何の予定調和もなく、混沌の美だけがある。  1曲目の「machine song」では、望月かなみに余裕すら感じた。そう、この日は元研究員つながりでBiSHとおやすみホログラムの対決が注目されていたが、当のおやすみホログラムの八月ちゃんと望月かなみは、そんなことをまったく意識していないかのように飄々とステージを展開していた。  おやすみホログラムは、Have a Nice Day!とのコラボレーションによる「エメラルド」という楽曲をリリースしており、それは東京のアンダーグランドの傑作にして金字塔だ。そのHave a Nice Day!のカバー「forever young」では、完全に会場がダンスフロアと化し、おやすみホログラムのふたりがハモりはじめると、その熱はさらに増していった。「drifter」で男性ヲタ同士が抱き合い、キスをしていたのは何だったのだろうか。最後の名曲「note」では、メロディーの美しさに比例するかのようにフロアは荒れ狂っていく。おやすみホログラムは、アコースティック編成やバンド編成でのライブも行っているが、この日は通常の編成で肩肘張るところもなく演者としての実力で爪跡を残していった。  BiSHとおやすみホログラムによって、もはやぺんぺん草も生えない焼け野原となったTIAT SKY HALL。そこに、セルジオ越後やSKE48の福士奈央などからの応援ビデオメッセージが上映される光景はシュールでもあった。  6番目はT!P。栃木県の4人組グループだ。突然正統派というか普通のアイドルが健気なステージを見せる光景には、それまでとの落差が大きすぎて内心でやや戸惑った。  終盤の2組は、赤坂BLITZでのワンマンライブを成功させているグループだ。
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 7番目はゆるめるモ!。本来は6人組だが、現在ライブに登場しているのは、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あのの4人だ。ビースティ・ボーイズへのオマージュである「Majiwaranai Cats」では、最近のヴォイストレーニングの成果を感じさせる。「虎よ」ではしふぉんが煽り、あのはフロアへとダイヴ。MCでは、けちょんが栃木県出身であることがカミングアウトされた。なお、あのはアフリカ大陸出身ともパプアニューギニア出身とも言っていたが、わりと距離が離れている気がしなくもない。  「たびのしたく」は、ポップ・グループとアニマル・コレクティヴを混ぜたというスケールの大きなサウンドだ。一時期は8人がステージにいたゆるめるモ!だが、4人でもこのスケールを表現できたことには少なからず驚いた。この日のライブで、4人がそれぞれの力を出しきっていたのは間違いない。  「なつ おん ぶるー」ではゆるヲタ(ゆるめるモ!ファンの総称)が激しいジャンプをしはじめた。さまざまなメンバー変遷を経てきたゆるめるモ!が、「なつ おん ぶるー」のような陽性の楽曲を歌う姿には、赤坂BLITZでのワンマンライブ(2015年5月2日)でも感動したものだ。この日は、プロデューサーの田家大知がビニールボートを持ちこむと、それにメンバーが乗船してフロアを航行。クラウドサーフしながらそれに群がるヲタたちは、さながら餓鬼道に落ちた餓鬼のようで、まさに天国と地獄が同居するかのような光景であった。最後の「逃げろ!!」は、ゆるめるモ!というグループの思想的な根幹を体現する楽曲であり、それを4人で歌いきる姿に再び感動した。落ちサビを歌ったしふぉんは、そのままフロアにダイヴして、ファンに支えられながら歌い続けていた。  大トリである8番目に登場したのは妄想キャリブレーション。でんぱ組.incも輩出した秋葉原ディアステージから生まれた6人組だ。「いつだって世界にファイティングポーズ」では、この日もっとも激しいMIXが会場に響いた。ヲタが一斉にジャンプする瞬間も圧巻で、ジャンプは禁止事項だった気がするが、もうここまで来たらどうでもいい。「たとえもう一人の私を見ても…」では、ジャンプがもはや「ドゴッ」という感触で響いていた。さらに「人生はいじわるなの…かな?」では、フロアの前方で豪快なサークルモッシュが展開され、逆回転までしていた。その光景を見た瞬間、同じ会場で6月28日に開催される予定の『ギュウ農フェスvol.3 羽田空港アイドルフライトだっぺ!』の中止すら覚悟したものだ。  この日も、妄想キャリブレーションのライブを常に見ているサウンド・プロデューサーの利根川貴之の姿があった。彼によって対バンライブに必要な楽曲が隙なく用意されおり、妄想キャリブレーションは大トリにふさわしいステージを見せた。  最後の挨拶に登場したギュウゾウは「次回ここでできるか怪しい状況」と言っていたが、終演後に話を聞いたところ、本当にギュウゾウとスタッフはたんまり怒られたそうで、憔悴を隠せないスタッフすらいた。  東京のライブアイドルシーンで動員力のあるグループだけではなく、栃木県のグループも迎えた『ギュウ農フェス vol.2 羽田空港アイドルフライトだっぺ!』は、なんとか中断に追い込まれることなく無事終了した。ライブ自体はほんの4時間程度だったが、非常に疲れたのは見応えのあるグループが多くて休む暇がなかったからだ。  6月28日に開催される『ギュウ農フェスvol.3 羽田空港アイドルフライトだっぺ!』では、GO-BANG'Sや元ホワイトベリーの前田由紀も出演し、アイドルたちと共演する。また、栃木県産コシヒカリ米一俵を賭けたアイドル腕相撲大会も開催される。東京と栃木を結ぶこのイベントが、一体どこへ向かうのか、ぜひ注目してほしい。  さらに、2015年7月12日には新宿スタジオアルタで『ギュウ農フェスvol.4&5 ~笑っていいかも! ~増刊号』が開催され、NegiccoやPASSPO☆も登場するなど、もはや引くに引けない状況になっている『ギュウ農フェス』。内心でハラハラしつ見守っていきたい。 ■宗像明将 1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

UNCHAINが楽曲リメイクで追求した、本場のグルーヴ『人を踊らすためには「音を抜いてナンボ」』

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【左から】谷浩彰(Ba./Cho.)、吉田昇吾(Drums)、谷川正憲(Vo./Gt.)、佐藤将文(Gt./Cho.)

【リアルサウンドより】  カバー・アルバムの連続ヒットで、新たなファン層を開拓しつつあるUNCHAINから届いた、デビュー10周年記念アルバム。『10fold』は、ロサンゼルス録音、代表曲の再アレンジ、新曲も2曲収録、グラミー賞受賞プロデューサーを迎えた最新型ダンス・グルーヴの追求……と、野心的な試みをたっぷりと詰め込んだ初の“リメイク”ベストだ。日本はもちろん世界中の人を踊らせたいという強力なモチベーションが生んだ、“ほぼ洋楽”な意欲作について、メンバー全員がアツく語ってくれた。

“今のUNCHAIN”でレコーディングしたら、絶対にいいグルーヴが出せるという確信

--近年はカバーでもすっかりおなじみのUNCHAINですが。あれ、いいシリーズですね。評判もすごく良くて。 谷川正憲(以下、谷川):ありがとうございます。最初は配信だけで、その次のオリジナルアルバムまでのつなぎのつもりだったんですけど。カバーのほうが話題になっちゃって、あれよあれよという間にもうアルバム3枚(笑)。3年連続3枚出して、カバーバンドになっちゃったねとか言われて。 谷浩彰(以下、谷):でも、そのぶん、オリジナルアルバムも出してるんですよ。 谷川:そう。3年連続、オリジナルとカバーアルバムを出しているので。今回のやつを合わせたら、3年で7枚。たぶん、そんなに頑張ってるバンドはいないんじゃないか?と書いておいてください(笑)。 佐藤将文(以下、佐藤):「頑張ってるバンド」とは書いてほしくないけど(笑)。 谷:つい最近まで、カバーだけのツアーをやってたんですけど……。 --どうですか、お客さんの雰囲気は。 谷:それが全然違うんですよ。普段ライブハウスに来ない感じの人が大半を占めていて。 谷川:カバーをやってるUNCHAINしか知らない人も、たぶんいるんでしょうね。 吉田昇吾(以下、吉田):カバーを3枚出して、ツアーをできるぐらいの曲数があって。そんなバンド、なかなかいないと思うので、うちらの強みになったと思うし、勉強することも多かったし。1年でカバーとオリジナルを出し続けるのは、正直キツかったんですけど、やって良かったなと思います。これでまた、オリジナルがガッと売れてくれれば。 --新作の『10fold』は、初のリメイク・ベスト。これは、そもそも、デビュー10周年の作品を出そうというところから始まってるんですか。 谷川:そうです。10周年だからベストを出したいけど、普通のベストじゃなくて……UNCHAINは10年間でいろんなことをやってきたし、それを今のUNCHAINでレコーディングしたら、絶対にいいグルーヴが出せるという確信があったので。それと同時期ぐらいに「Sadaharu Yagiさんという人がいるんだけど」という話を持って来ていただいて、Yagiさんがロスに住んでるので、じゃあロスでやりましょうと。だったら日本だけじゃなくて、どこの国でも通用するようなものをちゃんとやりたいという、最初からそういうコンセプトがあって、リメイクもそういう方向のアレンジに持っていきました。歌詞も全部英語にしましたし。 --すべてのピースが、いいタイミングで揃ったと。 谷川:そうですね。プロデューサーのYagiさんは去年グラミー賞を取って、次のプロジェクトとして「日本人のバンドをやりたい」と言っていて。いくつか日本のバンドを聴いていたみたいなんですけど、その中になぜかUNCHAINも入っていて(笑)。 谷:つなげてくれた人も、たまたまYagiさんに会って、たまたまUNCHAINを出したら、気に入ってくれたという。本当にそんな感じなんですよ。 谷川:最初にお話しした時に、「UNCHAINはこうしたらいいんじゃないか」という方向性について話してくれたんですけど。それが、メンバーの次に行きたい方向性に一致してたんですよ。「僕たちもそういうことがやりたいです」ということになって、晴れてロスに行くことになりました。

「踊れるか踊れないか」ということを、今まで以上に追求した

--1曲目の新曲「Kiss Kiss Kiss」を聴いた瞬間から、え、これUNCHAIN?というぐらい、すごいインパクトありましたよ。完全洋楽志向のダンス・グルーヴになっていて。 谷川:考え方というか、今までのバンド感が変わったかなという感じがしてます。UNCHAINには、ツインギターのロックバンドというイメージがあったと思うんですけど、それとは違うものになっているんじゃないかな?と思っていて。 --というと? 谷川:ツインギターというと、ギターロックというイメージが浮かびますよね、普通は。でも今回は、「踊れるか踊れないか」ということを、今まで以上にすごく追求したんですね。その結果、「ギターって、そんなに入るもんじゃねぇな」と。 --ああ。なるほど。 谷川:人を踊らすためには、「音を抜いてナンボ」というところがあって、たまにギターが出てくることによって立体感を出すという、そういうグルーヴを出すことが、今回挑戦した部分の一つです。ディスコ・ソウル、ファンクとか、ダンス・グルーヴものを聴くと、「そもそもギター、あんまり入ってなくね?」って思うじゃないですか。やっぱりそれが正しいんですよ、踊らすということだけで言うと。それで今回は、リメイクも新曲も、音数の少なさにすごくこだわって、ベースとドラムでグルーヴをしっかり出してます。 佐藤:バンドの方向性として、前作の『N.E.W.S.』とか、カバーアルバムの数曲もそうですけど、音数を減らす方向には向いていて。でも作っている途中で「ここはやっぱり、ギターほしくね?」とか言って、細かく入れていったものもあったんですけど。今回は思い切って「入れない!」という。 谷川:大好きなジャミロクワイとか、最近で言うとダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」とか、ファレルの「ハッピー」とかも、めちゃくちゃ音数が少ないんですよ。こんなんでいいの?というぐらい、スカスカなんですよ。それで完全に成り立たせてる。そこに今回は挑戦したという部分があります。音数が少ないメリットとして、一個一個の音が太く出せるという利点もありますし。ギターも、ずーっと入ってるよりも、たまに出てくるほうが目立つんですよ。 --確かに。 谷川:それで立体感が出るし、踊れるし。その感覚をつかんでくると、どんどん楽しくなってくる。そういうグルーヴの出し方をしてます。 --新曲「Kiss Kiss Kiss」の気持ち良さは、そこが肝だと思います。さっき「ゲット・ラッキー」の話が出ましたけど、この曲のベースライン、CHICの「おしゃれフリーク」っぽいし。 谷:もろですね(笑)。「Kiss Kiss Kiss」のベースはほぼループで、ただノリやすさを追求してます。 谷川:途中でフレーズを変えちゃうと、ノリが崩れちゃう。自分たちがそうなので、お客さんもたぶん一緒で、ずーっと同じことをやってても、それが気持ちよければ聴けちゃう。実際、ロスでも一回ライブをやってきたんですよ。レコーディング終わったあとに。そこで早速新曲「Kiss Kiss Kiss」をやったら、その曲でお客さんが一番踊ってくれた。 --おお~。そうなんだ。 谷川:それはバンドの自信にもなったし。ロスに行った意味がすごくあったんじゃないかと思います。レコーディング・スタジオと同じ、ハウス・オブ・ブルースという名前のバーでやったんですけど、PAさんが最初「ふーん、日本人か」みたいな感じで、たぶんナメてかかってたと思うんですよ(笑)。それが音を出した瞬間に態度が180度変わって、「GREAT! GREAT!」ってハイタッチを求めてきたりして。 吉田:モヒカンで刺青入りまくりで、俺らみたいなバンドは全然好きじゃなさそうな感じなんですけど(笑)。それが僕らで一番踊ってくれました。 谷川:そういう、いろいろ楽しい経験をしてきました。

UNCHAIN「Come Back To Me」

--もう一つの新曲、「Come Back To Me」については? 谷川:これも「Kiss Kiss Kiss」と同じで、ほぼ同じことしかやってないですけど。たぶん一小節に音が二発か三発しかない(笑)。 谷:ベースに関しては、その時のテンションでフレーズを録ったんですけど、今ライブの練習をしてると、またノリが変わって来て。ちょっと違うフレージングになったり、そういうのが面白いなと思って。 谷川:遊びができるんですよ。音数が少ないぶん、足すことがすぐにできちゃう。 谷:今までと真逆ですね。今まではレコーディングで音を入れすぎて、ライブで抜くみたいな作業だったんですけど。 佐藤:どの曲もそうですけど、レコーディングは意外とざっくりしてるんですよ。今までやってきた緻密なグルーヴじゃなくて、もっと大きなグルーヴを意識して演奏したので、気持ち良くレコーディングできました。 谷川:Yagiさん、本当にざっくりしてて。テンションが上がると、コントロール・ルームでめちゃ踊ってて、あんまり細かいところを聴いてないというか(笑)。聴いてるんだけど、OKかOKじゃないかの判断のものさしがちょっと違うんですよ。今の演奏で踊れるかどうか、それだけで判断してる。 --なるほど。 谷川:だから、すごいスピーディーなんですよ。3回ぐらい演奏したら、もうOK。それがだんだんわかってきて、「チャンスは3回しかない」ということが(笑)。それで集中できたと思いますし、ライブ感がすごくありました。 佐藤:それがすごく、自分らの自信になりました。確実に、これからのUNCHAINの音の作り方は、変わっていくんだろうなと思います。 --これはもう、普通に洋楽です。 谷川:ありがとうございます(笑)。10年前に、「CD屋さんの洋楽コーナーにUNCHAINのCDが並ぶことが夢」とか、語ってたことがあるんですけど。まさに今、このアルバムで、それに近いようなことが起きてるんじゃないかと思います。英語の発音も、日本にいる間もアメリカ人のネイティブの人にレッスンしてもらって、むこうに行っても、リセルという、J-WAVEでナビゲーターもやってた人にずっと横についてもらって。今回は発音も、洋楽だと言ってしまってもいいぐらいのクオリティらしいです(笑)。

代表曲のタイトルを変えるほどの覚悟でリメイク

UNCHAIN『10fold』全曲試聴トレーラー映像

--新曲以外で、リメイクした曲の中から、それぞれの推し曲というと? 谷川:3曲目の「Get Ready」は、「Show Me Your Height」のリメイクなんですけど。たぶんUNCHAINで一番有名だと言ってもいいこの曲を、タイトルまで変えちゃうというぐらいの覚悟でやりました。そもそもこの曲をYagiさんが聴いてくれて、「UNCHAINとやりたい」と言ってくれた曲なので、この曲の力を今回あらためて感じました。 佐藤:この前、地元のお祭りみたいなイベントで演奏したんですよ。京丹波の、“黒豆ロック”というフェスで。そこに見に来た近所のおっちゃんおばちゃんとか、絶対にこの曲知らないんだけど、どのカバー曲よりもこの曲の反応が良かったので。「この曲、マジ強い!」と思いました。 谷:僕は「Super Collider」。リメイクのリード曲を、「Get Ready」か「Super Collider」で迷ったぐらい、気に入ってます。この曲はベースラインでギリギリまで迷って、2小節のワンパターンのフレーズをずっとやるんですけど、一部だけ変えようか、いや変えないほうがいい、みたいなやりとりが何度もあって。Yagiさんが「ノリやすいほうでいいよ」と言ってくれて、こういう感じになりました。踊れる感じになりましたね。 谷川:原曲には同期のテーマが入ってて、さらに16分音符のギターのバッキングがあって。リメイクでは同期をなくして、ギターも交互に弾いて、音数が少ない中でグルーヴが出ることを考えました。 谷:聴き比べたらわかるんですけど、元バージョンはイントロが長いんですよ。そこもごっそり削って、まさに削ぎ落とした感じ。 --佐藤くんの推し曲は? 佐藤:「The Sun And Iris」です。日本語の歌詞を英語にしたのが、ものすごくしっくり来ました。そもそもこの曲のデモを初めて聴いた時、つーっと涙がこぼれてきたぐらい、いい曲だと思ってたんですよ。その感じを思い出しました。英語になったおかげで、メロディラインがよりグルーヴィーに聴こえる気がしました。ダンスミュージックではないけれど、こういう曲でも踊れるんだということが、また新しい発見でしたね。より優しく、強くなったと思います。 吉田:僕は「Movin'My Soul」ですね。今回は全曲、せーので録ってるんですけど、これは本当にほとんど直してないと思う。それが本来あるべき姿だと思うし、今の姿がぎゅっと詰まってる感じがします。そこを聴いてほしいです。

いろいろできちゃうからこそ、「媚びないでいこう」

--そしてアルバムタイトルが『10fold』。 谷川:“fold”は倍という意味で、つまり10倍。10周年で、いろんなことが10倍なんでしょうね。たぶん。……そんなに深い意味はないです(笑)。 --最後に聞きたいことが一つあって。UNCHAINは結成から考えると10年どころじゃなくて、20年近いわけじゃないですか。 谷川:19年ですね。 --時代の流れを横目で見ながら、いろいろ変化しながら、本当にタフに活動してここまで来たと思うんですけど。どうですか、今のバンドの現在位置とか、これから先に見えているビジョンとかは。 谷川:そうですね……今思うと10年前には、the band apartの周りにいるバンド、みたいな位置づけにUNCHAINはいて。ほかにもいっぱいバンドがいたんですけど、最近はもうみんな解散しちゃったりバラけちゃったりして、ずっと同じメンバーでやってるのは、UNCHAINとあと1~2個ぐらいしかいないんですよ。当時あったシーンも枝分かれして、それぞれがそれぞれの道を進んで……UNCHAINも独自の道を見つけて進んできたと思うんですけど。昔もそうだったんですけど、群れたくないんですよ。シーンはあってもいいと思うんですけど、馴れ合うのは好きじゃなくて。日本の音楽シーンは、いっぱい人がいるところにみんな行きたいみたいな傾向が強くて、フェスもたぶんそうだと思うんですけど。UNCHAINはそういうものとは関係なく、自分たちの道を進むのがいいのかなと思ってます。今回あらためて感じたことがあって、ロスでライブをした時に、初めてステージに立った時の気分になったんですよ。ここからまだスタートできるんだなって思ったし、まだ伸びしろはあると思ってます。 --そう思います。 谷川:いつまで伸びしろがあんねんっていう話なんですけど(笑)。今回の新曲もそうですけど、これからも、今あまり日本にないようなもので勝負していけたらいいんじゃないかと思ってます。 谷:こういう感じを続けていけたら、自然に広がると思うんですよ。僕らはいろいろできちゃうというか、カバーもできるし、アコースティックもできる。さっき言った“黒豆ロック”の時も、いつもと客層と全然違うから、「カバーを増やす?」という話をしたんですよ。スピッツをやろうとか、久保田利伸をやろうとか。でも結局こいつ(谷川)が、「媚びないでいこう」と言って、そういうことだなと思ったんで。いろいろできちゃうから、今まではそれが逆に余計だったのかな?という感じもするので。今の感じで続けていけたら、それでいいんじゃないかと思います。 (取材・文=宮本英夫)
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UNCHAIN『10fold』通常盤ジャケット

■リリース情報 『10fold』 発売:6月17日(水) 価格:通常盤(CD)¥2,778+税    初回盤(CD+DVD)¥3,426+税    (UNCHAIN “N.E.W.S.”Release One Man Tourの模様を収録したDVD付!/スリーブケース) <DISC1(CD)【Type-A、B共通】> 01.Kiss Kiss Kiss 02.Super Collider 03.Get Ready (ex. Show Me Your Height) 04.Tonight's The Night 05.My Bicycle 06.Come Back To Me 07.Movin' My Soul 08.Give Me Life (ex. Inspire of life) 09.Life Is A Wonder (ex. Life Is Wonder) 10.The Sun And Iris (ex. 太陽とイーリス) <DISC2(DVD)【Type-Aのみ】> UNCHAIN “N.E.W.S.”Release One Man Tour 2014.11.13 at LIQUIDROOM 1.Spin My Head 2."NORTH" 3.bb... 4.Make it glow 5.Lite The Truth 6.少女ジレンマ 7.Don't Need Your Love 8.The Grounds Of Heaven 9.Easy Come, Easy Go 10."WEST" 11.Number-One 特典映像 『Making of 10fold』In Los Angeles ■インストアライブ情報 UNCHAIN 「10fold」 発売記念イベント 6月21日(日)15:00〜@タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース 6月27日(土)17:00〜@タワーレコード横浜ビブレ店 イベントスペース 6月28日(日)12:00〜@タワーレコード新宿店 7F イベントスペース 7月4日(土)15:00〜@たまプラーザテラス ゲートプラザ1Fフェスティバルコート ※各イベント詳細はこちら:http://www.crownrecord.co.jp/artist/unchain/whats.html ■ツアー情報 「UNCHAIN Love&Groove Delivery Tour 2015」 10月23日(金)仙台・enn 2nd OPEN 19:00 / START 19:30 問) LIVE HOUSE enn 022-212-2678 10月27日(火)福岡・CB OPEN 19:00 / START 19:30 問)プロジェクトファミリー 092-406-0855 10月28日(水)広島・Cave-Be OPEN 19:00 / START 19:30 問)夢番地 086-231-3531 10月31日(土)東京・LIQUIDROOM OPEN 17:00 / START 18:00 問)ディスクガレージ 03-5447-8277 11月6日(金)名古屋・CLUB QUATTRO OPEN 19:00 / START 19:30 問)ジェイルハウス 052-936-6041 11月13日(金)大阪・BIG CAT OPEN 18:30 / START 19:30 問)夢番地大阪 06-6341-3530 チケット料金:3,800円(税込) オフィシャルHP先行受付:6月13日(土)12:00 ~ 6月28日(日)23:00まで 一般発売日:7月25日(土) http://starlinemusic.jp/unchain/

ゲスの極み乙女。とindigo la Endの「音楽至上主義」とは? 同時リリースの最新シングルから分析 

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ゲスの極み乙女。

【リアルサウンドより】  6月17日にゲスの極み乙女。のシングル『ロマンスがありあまる』と、indigo la Endのシングル『悲しくなる前に』が同時リリースされた。川谷絵音が所属するこの2バンドの作品が同時に発売されるのは、昨年4月のメジャーデビュー以来。あれからまだ一年と少ししか経っていないにもかかわらず、両バンドを巡る状況は大きく変化している。それでは、2枚のシングルから両バンドの現在地を探ってみよう。

"先鋭的であることこそがポップ"ゲスの極み乙女。

 ゲスの極み乙女。はこの一年で、「国民的バンド」へと片足を踏み入れたと言っていいだろう。昨年10月に発表されたファーストアルバム『魅力がすごいよ』はオリコンチャート初登場4位を記録し、楽曲はドラマやCMなど数多くのタイアップに起用され、「ロマンスがありあまる」も、話題の映画『ストレイヤーズ・クロニクル』の主題歌である。また、先日はまさに”国民的バラエティ番組”である『しゃべくり007』へも出演し、その知名度はさらに上昇。放送後の5月31日に日比谷野外音楽堂で開催されたワンマンライブでは、早速番組内で使われたネタを披露して、オーディエンスから大きな歓声が上がっていたのも記憶に新しい。  しかし、彼らはこうした状況に決して満足することなく、音楽的には4月に発表したシングル『私以外私じゃないの』から、新しいフェイズに突入。シンプルなビートや構成の曲で盛り上がるロックシーンの現状に対する、ある種の皮肉が込められた「キラーボール」がストレートに受け止められてしまったことなどもあり、ライブのあり方と向き合ったメジャー一年目を経て、2015年はよりプログレッシブなフュージョン路線へと進み、そのアンサンブルはますます研ぎ澄まされている。ファットなベースとカッティングによるファンキーな曲調に、クラシカルで耽美なフレーズを乗せ、間奏にはオペラチックなコーラスも配した「私以外私じゃないの」は新章の幕開けを告げる文句なしの名曲だったし、「ロマンスがありあまる」ではBPM170前後の疾走感のある曲調に乗せ、ギターとピアノ、さらには2台のピアノが複雑な絡みを聴かせるのが非常に印象的だ。  もちろん、彼らはマニアックな方向に突っ走っているわけではなく、メロディーはあくまでキャッチーで、曲タイトルをサビで印象的に響かせる手法にもブレはない。 "先鋭的であることこそがポップである"と言わんばかりに、あくまで大衆に響く名曲を生み出さんと邁進している。その証拠に、Zeppを中心とした春のツアーを経て、6月20日と21日にはバンドにとって過去最大のキャパとなる幕張メッセでのワンマンを敢行。さらには、すでに秋のアリーナツアーの開催も決定するなど、今後も大きな会場をメインに活動を続けていく。
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indigo la End

“メロディーの抜け具合が抜群”indigo la End

 indigo la Endはこの一年で着実にバンドの規模を拡大させていったが、何より大きいのはメンバーが固まったということだろう。まずはメジャーデビュー後にそれまでサポートだったベーシストの後鳥亮介が正式加入。彼の高いプレイヤビリティがバンドのダイナミズムに大きく貢献したことは間違いなく、ポップス的な方向性を強めながらも、一方ではこれまで以上に強固なファンクネスやハードコア的な側面も垣間見せたアルバム『幸せが溢れたら』(オリコンチャート初登場7位)は、彼の存在感が大きい作品だった。  そして、2015年現在の方向性に大きく寄与しているのが、昨年末に脱退したオオタユウスケに代わって、3月に行われた中野サンプラザでのライブで正式加入が発表されたドラマー・佐藤栄太郎の存在だ。「悲しくなる前に」では非常にアグレッシブなプレイを披露していて、後鳥のベースに比肩する両翼が揃ったような印象。一時期は長田カーティスの伸びやかなギターこそがバンドの特徴だったが、この曲では彼は装飾的なプレイでリズムと歌をより際立たせる役割を担い、アレンジの幅がより広がったことを感じさせる。メロディーの抜け具合も抜群で、彼らの新たな代表曲だと言っていいだろう。また、佐藤は16分を意識したファンキーなプレイも持ち味であり、その点で注目したいのが3曲目に収録された「夏夜のマジック」。ピアノと女性コーラスをフィーチャーしたソフトなAOR路線ながら、音像も含めて打ち込みっぽい変則的なリズムは、クロスオーバーが進む現代のジャズともリンクするような、非常にユニークなアプローチになっている。  7月からはホールを中心としたツアーを開始し、3月の中野サンプラザに続いて、東京公演はNHKホールと渋谷公会堂が決定。あくまでロックバンドとしてのエッジを保ちつつ、ホールの環境でメロディーやアンサンブルをじっくり楽しんでもらいたいという姿勢は、やはり信頼できる。9月にはバンド名の由来であるスピッツの新木場サンセット、同じく影響を公言しているくるりの京都音楽博覧会という、音楽ファンの信頼が厚い両バンドの主催イベントへの参加が決定しているのも、彼らのこうした姿勢が支持されていることの表れなのかもしれない。  ここまで書いてみて改めて思うのは、両バンドがこの一年間で示してきたことは、彼らが「音楽至上主義」であるということだ。「ゲスの極み乙女。」というバンド名を選んだことなど、感覚的に動く部分も多々あるため、誤解を招くこともあるのだろうが、最終的に彼らは根っからの音楽ファンなのであり、音楽のクオリティこそがすべて。だからこそ、僕は彼らを愛さずにはいられないし、さらなる飛躍を期待せずにはいられないのだ。 (文=金子厚武) ■リリース情報 indigo la End 3rd シングル『悲しくなる前に』 発売日:2015年6月17日(水) 価格:¥1,200(税抜) 初回プレスのみ封入特典:indigo la Endオリジナルロゴステッカー <収録曲> M1、悲しくなる前に M2、渇き M3、夏夜のマジック ゲスの極み乙女。 3rdシングル『ロマンスがありあまる』 発売:2015年6月17日(水) 価格:初回限定ゲスなトランプ盤(CD+GOODS) ¥1,600(税抜)    通常盤 ¥1,200(税抜) <収録曲> M1、ロマンスがありあまる (映画「ストレイヤーズ・クロニクル」主題歌) M2、サイデンティティ (映画「ストレイヤーズ・クロニクル」挿入歌) M3、Ink ■特典情報 indigo la End『悲しくなる前に』/ゲスの極み乙女。『ロマンスがありあまる』W購入特典 SPECIAL LIVE DVD <収録曲> indigo la End「billion billion」LIVE from ワンマンツアー『幸せが溢れたら』at 中野サンプラザ 2015.3.17 ゲスの極み乙女。「デジタルモグラ」LIVE from ワンマンツアー『ゲスでいこか vol.3』~東京編~ at 新木場STUDIO COAST 2015.2.15 ※詳細はHPにて ■ライブ情報 indigo la End ワンマンツアー「ナツヨのマジック」 7月01日(水)東京・NHKホール 7月10日(金)札幌・ファクトリーホール 7月15日(水)愛知・名古屋市公会堂 7月17日(金)大阪・オリックス劇場 7月18日(土)福岡・Zepp Fukuoka 7月31日(金)東京・渋谷公会堂 ゲスの極み乙女。「ゲス乙女集会 vol.4 〜幕張編〜」 日時:6月20日(土) 開場:17:00 /開演:18:00    6月21日(日) 開場:16:30 /開演:17:30 場所:幕張メッセ イベントホール ゲスの極み乙女。ワンマンツアー「ゲスチック乙女 ~アリーナ編~」 9月17日(木) 大阪城ホール 9月23日(水・祝) 札幌・北海きたえーる 10月14日(水) 横浜アリーナ indigo la End HP http://indigolaend.com/top ゲスの極み乙女。HP http://gesuotome.com/

総選挙、メンバー卒業…市川哲史が論じる、“人間模様エンタテインメント”としてのAKB48

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市川哲史『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

【リアルサウンドより】  今年もAKB48グループの総選挙が終わった。  第7回目にして総投票数がおよそ329万票、昨年比60万票増なのにはちょっと驚いた。それだけの経済効果が得られるのなら、そりゃ止められないわ総選挙。  ちなみに投票資格が、FCやらモバイルやら何やら11団体もの各種関係会員の投票権とシングル封入投票シリアルナンバーということで、相変わらずネットオークションでは100票10数万で売買されていた。速報前には投票代行まで請け負う出品者もいたりして、感心しきりの私だ。数十人がかりでCDの開封とシリアルナンバーの打ち込みといった投票作業を分担する<選対>が多数立つのも、毎年の風物詩らしい。とにかく組織票は人気投票の華だから、「借金上等」の覚悟で来年以降も盛り上げてほしいと切に願う。  そんなこんなで、「指原莉乃、史上最高得票数の19万票超えで2年ぶりに1位返り咲き、でもその2割は中国票」とか、「80位以内に26人も送り込んだSKE48が、23人の本家・AKB48を抑え第1党に躍進」などなど、開票後もネタは尽きないようだ。  ちなみに私が最もぐっときたのは、開票日と翌日の感謝祭@ヤフオクドームの6月6・7日両日、福岡市内はおろか福岡県内のホテルが満室だったことか。「出演者とスタッフだけで埋まってしまったのではないか」という旅行社筋のコメントは、素晴らしい。  たしかによく考えれば感謝祭のヤフオクドームは、観客28000人に対して出演するアイドルの総数が286名……おいおい客の1%を超えてるよ。  などといろいろ愉しませてもらって「また来年♡」、のはずが今年はもうひとクライマックス用意されていた。2位柏木由紀、自爆――すごいオチだ。  『週刊文春』が浴衣抱擁写真(爆苦笑)を掲載したのが、開票日から5日後発売の号。元・雑誌編集長としては、膨らむ妄想を止められない。  おそらく総選挙直前に入手したスクープではなかろうから、文春側がこのタイミングを待って寝かせてたはずだ。そして総選挙前の掲載は、さすがに武士の情けで遠慮したのではないか。あるいは、大人のコミュニケーションが功を奏したのかもしれない。  となると最強のインパクトを期待して文春側は、ゆきりんが1位を獲るのを世界でいちばん願ってたろうし、もしかしたら運営サイドは恣意的な集計をして……いやいや、そんな邪推はいけません(愉笑)。  けれども第三者が開票作業をするわけじゃなし、いまやAKB48とは壮大なる<人間模様エンタテインメント>なんだから、主催者特権でびしびし操作して面白くしちゃえばいいと思うのだ。プロレスのアングルみたく。  なんて私風情の危惧などなんのその、天は彼女たちをまだまだ見放したりしない。  見よ、孝行娘・松井玲奈が彗星のごとく現われ、卒業ネタでゆきりんの粗相をなんとかカバーしてくれているではないか。神風自由自在かAKB。  AKB48グループ絡みの私の情報源は、もっぱら『日刊スポーツ』だ。  あくまでも私の目的は野球やらサッカーやらテニスやら格闘技やらの的確な分析記事なのだが、つい芸能面を覗くと必ず誰かの記事が載っている。『月刊AKB48新聞』なるタブロイド紙まで別立てで発行しているくせに、その手を緩めない。総選挙なんて1ヶ月ぐらい前から、立候補者272名全員をキスマーク付きで毎日毎日紹介していた。選挙公報と思えばいいのだろうが、<住民票を移してないから選挙権なしで手持ちぶさたな単身赴任のおっさん>の気分か。  たとえばちょっと前の話になるが2月のある日、芸能欄の隅っこに《SKE48小林亜実が卒業》との見出しを発見した。  記事によると、「2010年に4期生として加入し、チームEの結成メンバーとしてデビュー」した、「スイーツなどの料理が得意」で「“こあみ”の愛称で親しまれて」いて、「選抜総選挙では一昨年47位、昨年77位と2年連続ランクイン中」の子だそうだ。ちなみにSKEからの卒業者は、今年だけでも彼女が既に7人目だったらしい。ブラック企業か。  言うまでもなく私はマニアではないので、この小林さんが誰なのか当然わからない。「ふーん」という感じ。こんな経験、ほぼ日常的に起きている。 というかいまやAKB48グループを最も端的に表す一言が、この「ふーん」だ。 「ふーん、名古屋支社の総務の子がまた退社するのか、逢ったことないけど」 「ふーん、飛ばされた先のジャカルタからやっと帰国したか」 「ふーん、独立採算のフランチャイズ制のはずなのに兼任ってどうなのよ」 「ふーん、新潟に支社作るって、大丈夫かウチの会社」  そう。こんな記事が掲載される度に、もはや<どっかの企業の社内報の人事往来の欄>を、他人事のように眺めてるだけの気分だったりする。そして「よりにもよって新潟支社新設に向けて大切な準備期間に、実質副支社長の色恋沙汰発覚」のような裏情報は、ネットで閲覧。なるほどね。  だから契約を満了した非正規雇用アイドル《バイトAKB》の元メンツが、新設支社での本採用を目指してオーディションに臨むなんて話、とても芸能界で起きてる出来事とは思えない。47都道府県から1名ずつ集めた《チーム8》だって、トヨタからの派遣社員みたいなもんでしょ? アイドル・スキームとは思えぬ、単なる<社会の縮図>そのものではないか。  逆にAKB48グループの各チームが、オーディションを勝ち抜き握手会や劇場公演前座に出演している候補生たちから新メンバーを指名する《ドラフト会議》の方が、スポーツ紙の前の部外者にはまったくピンとこない。  要するに、<会いに行ける多人数アイドル>がゆえの圧倒的なリアリティーの前では、下手に企画されたバーチャリティーなど取るに足らないのだ。  だからこそAKBは、ただ存在しているだけで圧倒的な<人間模様エンタテインメント>を見せてくれる。本当にこのエンタテインメント・デザインはよくできている、とつくづく思う。申し訳ないが、彼女たちの楽曲よりもはるかに面白い。  うわ、「投票券や握手券を買ったら、オマケでCDがついてきちゃうんだよなあ」とぼやいてる連中と一緒か私?  そんな本末転倒が余裕で成立してしまうほど、この枠組みは痛い。エグい。素晴らしい。  そういえば私が教える女子大にもNMB48がいる、らしい。奴らアイドルはこうして知らぬ間に我々の生活領域を侵食しているのだから、まったく油断も隙もあったもんじゃない。  しかもそのNMBは当初シングルにも選抜されてたものの、あんぽんたんを繰り返したあげく、半年前に既に「卒業」したと聞いた。それはそれで見事なマッチポンプぶりではないか――と感心してどうする。  こうなってくると、いよいよ魑魅魍魎化すらしてきたデザイン《AKB48グループ》に対抗し得る楽曲そのものを、秋元康Pは作ることができるのだろうか。ま、<エアソング>でまったく問題ないアイドルなので、全然いいんですけどね。わはは。 ■市川哲史(音楽評論家) 1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)