かりゆし58・前川が語る、音楽観の変化とルーツへの思い「何のために音楽をやるのか考え直した」

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【リアルサウンドより】  大らかで豊かなメロディとともに「生命花咲いた」という普遍的なメッセージを持ったフレーズが広がっていくーー。  かりゆし58のニューシングル『かりゆしの風』は、来年の10周年に向けて、大きな意味を持つ楽曲だ。「音楽をやる意味を見つめ直しながら作りました」(前川真悟)というこの曲はTHE BOOMの「島唄」、BEGINの「島人ぬ宝」などと同じように、バンドの代表曲という立ち位置を越え、日本中の人々に長く愛される楽曲になっていきそうだ。  今回Real Soundでは前川に単独インタビューを実施。バンド名にも入っている“かりゆし”という言葉をタイトルにした「かりゆしの風」の制作、バンド活動、音楽に対する意識の変化について聞いた。(森朋之)

「いつからか『全国で活動できるバンドになる』みたいなことが目標になっていた」

ーー「かりゆしの風」は、かりゆし58にとっても大きな意味を持つ楽曲だと思います。どういうテーマで制作に入ったんですか? 前川:最初から「自分たちのバンド名の“かりゆし”をタイトルに入れる」ということを大前提に考えて作ったんです。“かりゆし”はビールや居酒屋の名前になってたり、沖縄を代表する言葉のひとつなんですよね。もともとは航海の無事を祈る言葉でーー俺らの祖先は海洋民族なのでーー“グッドラック”みたいな意味なんですが「この言葉は自分たちとってどんな意味があるのかな?」って改めて考えることが増えてきて。そのときに「いつの間にか意識が変わってたな」って気付いたんですよね。もともとは故郷に身を置かせてもらって、沖縄の先輩たちの音楽を染み込ませることでバンドを始めたはずなのに、いつからか「全国で活動できるバンドになる」みたいなことが目標になっていて。 ーー自分たちのルーツを再認識する時期だったのかもしれないですね。 前川:そうですね。あと「島の人たちにずっと愛される曲を作りたい」という思いもあったんですよね。喜納昌吉さんの「花」、THE BOOMの「島唄」、BEGINの「島人ぬ宝」を聴くと、沖縄の人はビックリするくらい大きな声で合唱するんですよ。その様子をステージから何度か見たことがあるんですけど、本当に素晴らしいんですよね。「そういう曲はどうあるべきか?」と自分なりに考えて作ったのが今回の「かりゆしの風」なんです。 ーーそういう普遍的な楽曲を作りたいという思いは、以前からあったんですか? 前川:どこかにあったとは思うけど、自分自身が気づいてなかったんじゃないですかね。それよりも「自分の気持ちを伝えたい」とか、コード進行にこだわったりしながら曲を書いてきたというか…。「大事なのはそこじゃない」って気付くきっかけがあったんですよ。BEGINの比嘉栄昇さん、芸人の津波信一さんと家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、今年の3月に沖縄で集まったんですね。津波さん、栄昇さんの息子さんはどちらも15歳で、すごく仲がいいんですけど、栄昇さんが石垣島に戻ることになって、この春から離れ離れになったんですよ。そのお別れ会も兼ねてたんですけど、ふたりはバンドをやっていて、歌を歌ってくれて。それが本当に素晴らしかったんですよ。お父さんの影響かもしれないけど、日々の暮らしの歌だったり、自分たちで作った“第二の校歌”だったり。しかも「目の前にいる人たちを喜ばせよう」という気持ちが込められた歌ばかりだったんです。「何のために音楽をやってるのか、もう一度考え直さないといけない」って思って、それも大きなきっかけになってますね。 ーーその経験は「かりゆしの風」の制作方法にも影響したんですか? 前川:作詞作曲に関しては、楽器を一切使わないで歌いながら作ってみたんです。そのときも沖縄にいたんですけど、朝早く起きて、近所の海で2時間くらいボーッとして、家に帰って作業して、夕方になるとまた海に行って。東京にいるとそういう時間の過ごし方が出来ないんですよね、怖くて。でも、沖縄にいると不思議と恐怖はなくて、気持ちよく過ごせるんです。ドライブしてたら地元のコミュニティFMでBEGIN特集をやっていて、それもすごく良かったり…。「こういう曲を作ってみたい」と思ったら、自然と歌い始めてたんですよね。 ーー沖縄という土地が持つパワーもあるんでしょうね。先日HYに取材したときも「沖縄に拠点を移したのは、のんびりしたペースでやりたいからではなくて、自分たちの感性をいちばん自由に活かせる場所だからなんです」と言っていて。実際、彼らの活動のペースはむしろ上がってるんですよね。 前川:とてもわかります。音楽を作ることが作業ではなくて、ライフワークに変わってくるというか。東京で時間に追われながらやるよりも、さらに良いペースでやれるような気がするんですよね、沖縄は。あと、歌や踊りが好きな人も多いから「こういう歌を作ったら、あの人が喜んでくれるかな」って思う機会も多いし。
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「ひとりの担い手として(沖縄の音楽を)継承していけたら」

ーーなるほど。実際に歌いながら作ったとき、歌詞も同時に出てきたんですか? 前川:そのときに浮かんだものと、後から書いたものが半々ですね。「さあウージが鳴いた鳴いた」のところは最初からありました。必ずしも戦争のことに向けた歌ではないし、“悲観”でも“傷跡を忘れるな”ということでもないんですけど、ちょうどこの曲を作っていた時期に「慰霊の日」があったりもして。自分がとてもいい気持ちで音楽をやらせてもらっていること、ありがたい場所にいられることを改めて実感できたんですよね。自分の家族もいっしょだったんですけど、2歳の息子にとっても「慰霊の日」に平和記念公園にいるっていうのは良いことなんじゃないかなって思って。俺が初めて平和記念公園に行ったのは幼稚園の遠足で、最初の印象は「すごく気持ちいい場所」っていう感じだったんです。自分の子供にも「沖縄の歴史を知らないといけない」みたいなテンションではなく、「お父さん、お母さんとドライブしたな。楽しかったな」という思い出になってくれたらいなって。 ーーそういう沖縄の思い出、風景のなかでたくさんの歌が生まれてきたわけですからね。もちろん「かりゆしの風」もそのひとつだし。 前川:うん、そう思いました。他のバンドと自分たちを比べて「勝った」とか「負けた」みたいなことを気にしてると、音楽が狭く、安くなっていくと思うんです。そういうことではなくて、ひとりの担い手として(沖縄の音楽を)継承していけたらなって。それはモンパチ、HY、ORANGE RANGEも同じだと思うんですよね。先輩にはBEGINがいてくれて、その上の世代には沖縄の島唄を長く歌ってる方たちがいらっしゃるんですけど、その一角に自分たちもいるんだな、と。そのことに気付いたら、ヘンな欲や打算がスッと抜けたんですよ。あと、BEGINの25周年のライブも大きいきっかけでしたね。会場は石垣島だったんですけど、現地のエイサーとかフラ(ダンス)を踊ってる人、吹奏楽部なんかが次々とステージに登場して、BEGINとセッションするんです。それを見て、若い人からジイちゃん、バアちゃんまでが歌ったり踊ったりしていて。そのときに知名定男さん(1950年代から活動している沖縄民謡の歌手)と話をする機会もあって、「音楽は作るものでなくて、もともとあるものを蘇生させるんだよ」って教えてもらったりとか。音楽について考え直す機会が多いタイミングだったんですよね、ホントに。 ーー沖縄の音楽を継承しているという認識は、バンドを始めた頃はなかったですよね…? 前川:そうですね。「先輩はすごい」「若者は稚拙」というだけで、つながりは感じていなかったので。それよりも「県外で活動しないと生活はできない」とか「他のバンドに負けられない」ということがモチベーションにもなっていたし、同時にコンプレックスにもなっていて。フェスですごいバンドを見ると落ち込んだりもしたし、「こういう部分をマネしたら、売れるかもしれない」と思ったり…。 ーーかりゆし58って、他のバンドのマネをしている印象はまったくないですけどね。 前川:それはたぶん、不器用だからですよ。マネが上手くできなくて、それが結果的にオリジナリティに見えてたというか。「おまえらは“上手くいかなかった”と思ってるかもしれないけど、そこにオリジナリティがあるんだ」って教えてくれた先輩もいたんですよね。 ーー「かりゆしの風」にもしっかりと独創性が反映されてますよね。もちろん沖縄の雰囲気はあるんだけど、それだけじゃなくて、バンドのオリジナリティも強く感じられて。 前川:アレンジは「電照菊」「ナナ」などにも関わってくれた関淳二郎さんにお願いしたんですけど、「沖縄の風景が見えるような音にする必要はないと思うんです」って言ったんですよね。沖縄らしさみたいなものが、聴く人にとっての壁になるのがいちばん良くないなと思って。“沖縄の音楽”という言い方も好きではないんですけど、そういうイメージで捉えられるのも良くないですからね。 ーー曲を作ってる時点から“沖縄らしさ”は意識してなかった? 前川:うん、そうですね。これは僕が勝手に感じてることですけど、沖縄の景色、空気のなかでメロディを口ずさむと、自然とああいう雰囲気になると思うんですよ。車を運転して、風を受けながら歌ってると「先人たちもこんな感じで沖縄音階と言われるものを作り上げたんだろうな」って思ったり。 ーーまさに土地が生み出す音楽ですよね。この先もずっと歌って、「かりゆしの風」を育てないといけないですね。 前川:そのつもりでいます。そのことをいちばん実感したのは、「島ぜんぶでおーきな祭(第8回沖縄国際映画祭)」のフィナーレを任せてもらったときなんですよね。SPEEDのhiroちゃん(島袋寛子)やイトキンにも参加してもらったんですけど、「ハイサイおじさん」とスカアレンジでやった「花」がとにかく盛り上がって、お客さんがみんな踊ってくれて。そのときに会社のスタッフの方から「生まれ育った場所の歌がこんなにも楽しく受け入れられて、盛り上がる街は他にないよ」って言われたんですよね。そのときに「やっぱり、そういうことなんだな」と改めて思って。そうやって自分のテンションが変わると、周りの反応も違ってきたんですよね。 ーーどういうことですか? 前川:僕らはずっとアウェイを感じていたというか、どこにいても孤独感みたいなものがあったんです。ロックフェスに出たときは「そこまでガッツリとロックをやっているわけではないしな…」って感じだったし、レゲエ系のイベントに呼ばれても「ちゃんとレゲエを知ってるわけではないから」という気持ちがあって、混じり切れなかったり。でも、それはこっちのカンチガイだったんですよね。最近も湘南乃風の若旦那さんが呼んでくれたり、難波章浩さんといっしょにやったときもMCで俺らのことを話してくれたりして。こっちが自分の内側に閉じこもってなければ、活動の幅はどんどん広がるんだなって。
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「バンドを続けていくカタチが決まった」

ーー「かりゆしの風」の制作を通していろんな気付き、いろんな広がりがあったと。そういう大事なシングルに「Fire Chicken」(MASTEN-LOW)が入ってるのも、かりゆし58らしさかも。これは前川さん以外のメンバーがライブで披露している別バンドの曲なんですよね。 前川:そうです(笑)。こうやって好きなことをやるのも、ホントにいいことだと思うんです。あいつらは取材とかで「音楽をやっている意味は?」とか「音楽を通して何を伝えたいと思っていますか?」と聞かれても、言葉に詰まるんですよ(笑)。それくらいピュアなところで音楽をやってるのもあいつらの魅力だと思うし、そのおかげで身の丈を忘れずに活動が続けられてるんじゃないかなって。「Fire Chicken」も「好きな曲を自分たちなりに体現したい」っていうだけですからね。日本語の歌詞がめんどうだからって、途中から英語になってるし。しかも文法がめちゃくちゃで(笑) ーー自由ですね(笑)。 前川:(笑)。1行だけ、文法的にも成り立ってる歌詞があるんですけど、それが「時代遅れの奴らの雄叫び」みたいな意味なんです。そういう偶然もいい感じだなって思いますね。 ーーメンバー4人が揃ったときの雰囲気も10年前とぜんぜん変わらないですよね。 前川:幼なじみ同士でやってるのも大きいと思いますけどね。沖縄のバンドって、みなさん変わらないですよ。HYもORANGE RANGEもモンパチもBIGENのみなさんも、ぜんぜん訛りが抜けないし(笑)。ちょっと丸くなったりはするけど、雰囲気がガラッと変わる人っていないですよね。 ーーかりゆし58の場合、リラックスして音楽に臨めるようになったのは大きな変化じゃないですか? デビューからしばらくは、レコーディングのたびにストレスを溜めまくっていた印象もあるし。 前川:取材がグチを吐く場所みたいになってましたからね(笑)。「自分たちはこうなりたい」「こういうふうに表現したい」という気持ちが強かったんですけど、当然、足りないものがたくさんあって。それを自分のせいにしたり、仲間のせいにしたり…。正論で問い詰めたこともあったんですよ、俺が。「趣味でバンドをやってるんならいいけど、レコーディングのためのスタジオにもお金がかかってるし、CDを聴いてくれる人もお金と時間を使ってる。だったら、ひとつでも良い音を増やすために努力しないとダメなんじゃないか」って。 ーー反論しようがないですね、それは。 前川:そうなんですよね。27、28歳くらいのときに「人を正論で追いつめるのは良くないな」って気付いたんですけど、その後、のんびりしすぎてただの烏合の衆みたいになった時期もあったし。いろいろありましたね、ホントに。 ーーこの先、バンドにとって一番の時期を迎えられそうですね。 前川:と思ってます。いまは良いバランスだし、バンドを続けていくカタチが決まった感じがしてるので。 (取材・文=森朋之) ■リリース情報 『かりゆしの風』 発売:8月5日(水) 価格:¥1,200+税 ※DVD付き <CD収録内容> 1.かりゆしの風 2.夜行列車~復刻盤~ 3.Fire Chicken[MATEN-LOW] <特典DVD> 「かりゆし58 ハイサイロード 〜大金星〜2014-15」 2015年2月20日ツアーファイナル渋谷公会堂ライブ映像 ●タワーレコード特典収録曲 1.E.D.O Dance 2.RRC 3.会いたくて ●TSUTAYA特典収録曲 1.ウージの唄 2.生きてれば良い事あるみたいよ 3.電照菊 ●HMVローソン特典収録曲 1.Oh!Today 2.きっと雨はふらないでしょう 3.さよなら <タワーレコードオンライン> PC モバイル <HMVオンライン> PC・スマートフォン モバイル <TSUTAYAオンライン> PC スマートフォン モバイル 『かりゆしの風』特設ページ ■イベント出演情報 7月25日(土)[秋田]OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL 8月1日(土)[東京]幕張ビーチ花火フェスタスペシャルLIVE 8月4日(火)[東京]RYUKYU NATION 8月16日(日)[東京]お台場夢大陸 めざましライブ 8月23日(日)[沖縄]第30回国頭村まつり 8月29日(土)[淡路島]FREEDOM aozora 2015 8月30日(日)[兵庫]きらめく兵庫フェスタ in KAKOGAWA 9月12日(土)[福岡]World Heritage Munakata 10月24日(土)[岡山]岡山商科大学 商大祭2015 かりゆし58オフィシャルホームページ

ファン参加型のMVはなぜ増えた? キュウソ、androp、忘れらんねえよらの作品から考えてみた

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キュウソネコカミ『チェンジ ザ ワールド(初回限定盤)』(ビクターエンタテインメント)

【リアルサウンドより】  新曲のリリース前後に公開されるMVには、有名映画監督が手掛けたストーリー仕立ての作品や、海外でのロケ撮影を行なった作品、アニメーションやCGを駆使した作品など、様々な工夫が凝らされたものがある。そんな中、SEKAI NO OWARIをはじめとする近年ブレイクしたバンドの多くは、ファンからエキストラを募ってMVを制作し、YouTubeなどに公開していることが少なくない。  たとえば、先日『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演を果たしたキュウソネコカミは、これまで数々のMVでファンをエキストラとして招いている。「ファントムバイブレーション」「ビビった」「OS」のMVでは、主にライブシーンの撮影にファンが出演し、彼らの演奏を盛り上げた。MV中でライブシーンを再現するのは、そのアーティストのパフォーマンスの雰囲気が最も伝わりやすく、結果としてライブの集客にも繋がるだろう。MVが公開される際、出演したファンがSNSツールなどで自ら告知することは、そのままMVの拡散にもなる。

キュウソネコカミ - ビビった MUSIC VIDEO

 また、こうしたMVによってファンが新曲を“予習”できるのも、大きなメリットだ。曲中の振り付けや曲の楽しみ方を前もって知ることで、ファンはライブ会場で盛り上がりやすくなる。

androp「Yeah! Yeah! Yeah!」music video(三ツ矢サイダーCMソング)

 andropの三ツ矢サイダーのCM曲として使用されている「Yeah!Yeah!Yeah!」のMVでは、エキストラを一般から募集。完成されたMVのエンドロールには参加者の名前がクレジットされていた。同MVでは、ファン同士の交流が描かれており、バンドが“リスナー間の繋がり”を大切にしていることがわかる作品に仕上がっている。また、ファンの笑顔は、そのアーティストの魅力を伝えるうえで大きな説得力を持つだろう。

忘れらんねえよ『バンドやろうぜ』

 忘れらんねえよの「バンドやろうぜ」では、エキストラ出演としてファンを登場させているのではなく、テーマに合わせた動画を一般人から募集してひとつのMVを作り上げている。バンド結成のきっかけとなったチャットモンチーも同映像に出演しており、彼らを支えてきた人々に対する感謝の気持ちが伺える作品となっている。

tricot『Break』MV

 tricotの「Break」も同じような構成で作られているが、多国籍の人々が出演しているという点が印象的だ。この作品からは、tricotが数々の海外フェス出演を経て、多様な国の人から支持されているアーティストであることが伝わるのではないだろうか。  現在、多くのリスナーが新しいアーティストを知るきっかけのひとつとなっているYouTube。インターネットの発達やライブ市場の活況によって、アーティストとリスナーの距離が近づいている昨今、ファンとともに作り上げていくMVは、フレンドリーかつ効果的なプロモーション方法として、さらに増えていくのかもしれない。 (文=大和田茉椰)

RHYMESTERが語る、日本語ラップが恵まれている理由 宇多丸「自らを問いなおす機会があることはありがたい」

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【リアルサウンドより】  RHYMESTERが、通算10枚目のアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』を7月29日に発売した。<美しく生きること>をテーマに掲げた同作には、フィーチャリングアーティストとしてPSGのPUNPEEを迎えたほか、KREVAやSWING-O、BACHLOGICといった面々がプロデュースした楽曲も収録され、いまのRHYMESTERのアティテュードが浮かび上がる新鮮な仕上がりとなっている。2015年、ビクターエンタテインメントへ移籍し、主催レーベル「starplayers Records」を設立したほか、5月10日には初のフェス<人間交差点>を開催するなど、結成26年目を迎えてますます精力的に活動する彼らにとって、同アルバムにはどんな意味合いがあるのか。音楽ライターの磯部涼が切り込む。(編集部)

「〝新しい表現〟を模索した結果、ピアノがメインになっていった」(DJ JIN)

ーーRHYMESTERのディスコグラフィーの中でもかなりコンセプチュアルなアルバムだと感じました。 Mummy-D:うん、今まででいちばんって言っていいんじゃないかな。 ーーそのコンセプトをひと言で表すと、アルバム・タイトルや、アルバムのムードを決定付けているピアノをフィーチャーしたイントロ/インタールードのタイトル等で繰り返し使われている、〝ビューティフル〟という単語があてはまると思うのですが、そのようなコンセプトに至るまでにはどんな経緯があったのでしょうか? Mummy-D:そうだな……結局、制作にトータルで2年半ぐらいかかっちゃったわけだけど、最初にメンバーで集まってこのアルバムについてのミーティングをした時に、まず、「最近、どんなことを考えてる?」っていうところから話を始めたのね。そうしたら、ちょうど、ヘイト・スピーチが問題になっていた頃で、「あれは嫌だよな!」ってことで意見が一致して。そこから、「みんな、ちょっとした価値観の違いを受け入れられなくなってきている感じがする」「そういうのは窮屈で嫌だよなぁ」って話になって。でも、一方で、何が正しいかってことも言いにくい時代だとも思うんだよね。そもそも、ヘイト・スピーチだって〝正しさ〟を笠に着ているわけであってさ。それに対して、こちらから〝正しさ〟をぶつけても、問題が解決しないんじゃないかと。で、「じゃあ、どうしたらいいんだろう?」って考えた末に、「やっぱり、醜いのはダメだよな」「美しくあろうとすることは大事」「そのぐらいは言ってもいいんじゃない?」っていう結論に何となく辿り着いて。そこから、〝ビューティフル〟って単語が出てきたのかな。 ーー〝ビューティフル〟というコンセプトは、前作『ダーティーサイエンス』(13年)と対になっているとも言えますよね。 Mummy-D:いや、逆の概念ではないんだよ。 宇多丸:〝ビューティフル〟には〝ダーティ〟も包括されてるから。「汚いとされるものへの不寛容に対抗する」っていう意味にも取れる。アルバム・タイトルにもある通り、酸いも甘いも、そして、汚いも含めて美しい、みたいな。 Mummy-D:確かにサウンドとしては逆に行ったようなところもあって、前回があえてノイジーなものだったり、音楽的にあえて間違ったものを狙ったとしたら、今回はメロウネスを中心に据えて、音楽的にも間違ってないものを目指した。グッドミュージック感というか。 宇多丸:あるいは、アダルトな感じというかね。 ーーミーティングをする中で、メッセージは〝ビューティフル〟、サウンドは〝アダルト〟という方向性が決まっていった? 宇多丸:結果的にそっちに完全に行ったよね。移籍が決まったこともあって、途中、迷ったりもしたんだけど。「移籍第一弾がそんなイレギュラーなタマで良いのか?」とか。 ーーイレギュラーというのは? 宇多丸:やっぱり、リスナーが期待するだろう〝RHYMESTERっぽさ〟ってあるじゃない。今回のアルバムの収録曲で言うと「マイクロフォン」とかさ。 ーー前回のインタビュー(RHYMESTERは今のスタイルをどう掴みとったか?「やっぱり、オレらはライヴ・バンドなんだ」)で話した、〝エモい〟表現みたいなことでしょうか? 宇多丸:そうだね。『人間交差点/Still Changing』はそれに準ずるようなところもあって、あのシングルが結構好評だったことでカムバックのイメージは打ち出せたので、アルバムは振り切っても大丈夫だろうと。 ーーただ、「人間交差点」も「Still Changing」もアルバムの流れで聴くとまた印象が違いました。 宇多丸:だから、あの2曲が〝RHYMESTERっぽさ〟と今回の〝イレギュラーさ〟の橋渡し役になっているのかな。 ーーちなみに、サウンドに関しては先程も言ったようにピアノが印象的ですけど、Dさんは『ダーティサイエンス』収録曲「It’s A New Day」に関して、リリース当時、「新しいアプローチ」「あんなキレイなピアノ使ってる曲なんかやったことなかった」「『黒っぽくない』というか。俺らはやっぱ、どこかでファンク臭とかソウル臭がしちゃうんだけど……その当時、『白い』モノに興味があったんだよね」( http://amebreak.ameba.jp/interview/2014/09/005191.html )と語っていました。 Mummy-D:今回、「ピアノ中心で行こう」みたいなことは意識していなかったものの、改めて考えてみたら、確かに多いね。「フットステップス・イン・ザ・ダーク」もそうだし、「The X-Day」でも使ってるか。  昔、RHYMESTERには、曲にキーボードが全然入ってない時期があってさ。ホーンとギターばっかりっていう。でも、ヒップホップの表現の幅も広がってきて、ラップもエモーションみたいなものを開放していこうっていう流れになって。で、そういうことをやろうとした時にピアノっていうのは、やっぱり、ぴったりなんだよね。下手に使うと危ないんだけど、勇気を持ってピアノだけをバックにしたこともあったし。 ーー『ダーティサイエンス』と本作の間にリリースされたベスト・アルバム『The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014』(14年)には、「It’s A New Day」と「ちょうどいい」のピアノ・バージョンが収録されていましたよね。ホーンが勇ましい〝アツさ〟を表現するのに適しているとしたら、ピアノはそれとは対照的に繊細な〝エモさ〟を表現するのに適しているといったところでしょうか。 Mummy-D:そうだね。ホーンもエモーショナルな楽器ではあるんだけど、ピアノとは感情の種類が違う。 宇多丸:ピアノは流麗さを表現するのにも適してるよね。 ーー「人間交差点」がホーンとオルガンをメインにしているのも、宇多さんの「(同曲が)〝RHYMESTERっぽさ〟と今回の〝イレギュラーさ〟の橋渡し役になっている」という説明を裏付けているような。 DJ JIN:アルバムをつくる上で、〝RHEYMESTERならではの表現〟とか〝他のアーティストがやってない表現〟とか、あるいは、〝新しい表現〟みたいなことを模索した結果、ピアノがメインになっていったってことなのかな。要はフレッシュというか。いわゆるミュージシャン・シップみたいなものを取り入れてトラックをつくるっていう試みはこれまでもやってきたけど、今回はそれをまたさらに違う方向でやれたと思うし。 ーー身近にSWING-Oというアーティストがいたからこそ、というのもあるんじゃないですか? DJ JIN:もちろん、それもあるね。SWING-Oっていうキーボーディストは、ピアノでリッチかつ情感豊かに演奏出来る人で、彼とのセッションから膨らんでいった部分も大きい。 ーー〝リッチ〟って表現、いいですね。今回のアルバムのイメージを言い表す言葉として、〝ビューティフル〟もそうだし、〝エモーショナル〟もそうだけど、〝リッチ〟もしっくりくる。 宇多丸:オレ、最近、〝豊か〟って表現、超便利だなと思って評論とかでよく使っちゃうの。いろんなものが包摂されてるでしょう。『Bitter, Sweet & Beautiful』っていうタイトルにしても、並んでいる3つの単語をひと言でまとめるとしたら、それは、〝リッチ〟ってことになるのかもしれない。

「今回は表現の幅を広げるアルバムにしたかった」(Mummy-D)

ーーリッチ・ギャングじゃないですけど、〝リッチ〟って単語にはヒップホップ感もありますしね。そして、『Bitter, Sweet & Beautiful』の音楽性に関して、当然、目を引くのがPUNPEEのクレジットです。5曲でプロデュースを手掛け、その内、2曲ではラッパー/ヴォーカリストとしても参加していますが、最初の段階から彼にはこのように全面的に関わってもらおうと考えていたのでしょうか? Mummy-D:PUNPEEは、最初にトラックを集め始めた時に5曲入りのやつをくれたんだけど、それがどれも凄く良くて。 宇多丸 うん、突出してフレッシュだった。 ーーああ、RHYMESTERはアルバムをつくる上で、トラックのオーディションみたいなことをやるんですね? Mummy-D:最近はそうなってるね。まず、オレが200から300ぐらいは聴いてるんじゃないかな。その中から選んだものを皆にも聴いてもらうんだけど、とにかく、PUNPEEが気合入っててさ。あと、彼はオケをつくると同時にフックも頭の中で鳴っちゃうタイプらしくて、デモの段階でそれを仮歌で入れてきてて。だから、トラックを採用すると同時に、ヤツの声も採用せざるを得なくなるっていう。それで、PUNPEEだらけのアルバムになっちゃったんだけど(笑)。 宇多丸:でも、あのフックの感じとか、オレらからは絶対出てこないものだから面白くて、「これ、そのまま使ってもいいかもね」っていう。 ーー以前、宇多さんは『ウィークエンドシャッフル』(TBSラジオ)でPUNPEEを上手いラッパーの代表に挙げていましたよね。 宇多丸:そうそう。一緒に曲をつくり出すちょっと前ぐらいかな。ヴォーカリストって武器を1個でも持ってりゃ良くて、2個持ってるのは上手いひと、3個持ってるのは天才だと思うんだけど、あいつは3つ以上持ってる気がするな。しかも、その3つ以上のバランスの調整が見事というか、トータルで確実にクリティカルヒットしてくる。 ーー結果として、PUNPEEがアルバムの要となりました。 Mummy-D:PUNPEEという毒を食らっていいものをつくろうみたいなところはあったね。前回は(illicit)tsuboiくんにその役をやってもらったわけだけど、今回は彼に。 ーーアルバムのコンセプトにも通じる話なんですが、今回のリリックには、下の世代へのメッセージも多く含まれていますよね。「Kids In The Park」はそのものズバリですけど、「ガラパゴス」も若いラッパーに向けたラインがあります。だからこそ、PUNPEEが大々的に起用されたのかなとも思ったのですが? 宇多丸:それは、ひとつに、DとJINに子供がいるっていうのもあるんじゃない? ただ、PUNPEEに関しては「若手をフックアップ」的な意識はないね。 Mummy-D:うん。彼はもはや中堅どころの実力派みたいな位置にいると思うし。今回はヤツの才能を借りて新しさを導入したっていうより、むしろ、表現の幅を広げてもらったっていう感じかな。音楽的な許容度が高いじゃん、PUNPEEは。今回はまさにそういうアルバムにしたかったから。 ーーなるほど。では、フレッシュさではなく、SWING-Oのピアノと同じようにアルバムにおける〝リッチさ〟を担ってもらったと。 宇多丸:あとは、あいつを入れることで、風通しが良くなるっていうかね。オレらは意味意味意味、コンセプトコンセプトコンセプトでがっちりとした建築をつくっちゃいがちなんだけど、PUNPEEのヴァースで「お前、何言ってんの?!」みたいなところがあると、そこににちゃんと襖がつく。 ーー後程、詳しく訊きますけど、「SOMINSAI」のラップとか、笑わせ方を分かっているというか、結構、ロジカルなタイプなんだなって思いましたよ。 宇多丸:ベースには彼なりのロジックががっちりあったりするんだろうけどね。でも、その表出の仕方がさ、「〝加奈子〟(「SOMINSAI」のPUNPEEのパートで「忘れちゃえ 穴兄弟 過去の事 加奈子の事」というラインがある)って誰だよ? 昔、付き合ったことあるの?」「いや、ないっす」みたいな感じで(笑)。やっぱり、オレらにはない、いい意味でのルーズさがあるっていうか。あいつのヴァースが上がってきた時に、すごく感心したもん。「ラップってこれぐらい力が抜けてるほうがカッコいいってのもあるよな」「難しく考え過ぎなんだよな、オレは」みたいな。 Mummy-D:一方で、「ここはこの小節で終わってくれ」とか「この言葉は使わないでくれ」とか。そういう細かい注文も多いんだけどね。それで、喧嘩までは行かないけど、結構なやり取りをして。 ーーRHYMESTERに対してラップのディレクションをするんですか! Mummy-D:うん。ヴァースの言葉を変えてくれとか、サイズを変えてくれって言われたのは初めてだったね。 宇多丸:最初、「Kids In The Park」の3番は16小節書いたんだけど、「8小節で終わってください」って言われて、「あ、はーい」っていう。 ーー音楽的に考えた時に、それが、彼にとってはビューティフルだと。 宇多丸:そうそう。PUNPEEなりに響く在り方っていうものがあるみたい。

「ひとはどうしてもシラフじゃ生きていけない」(宇多丸)

ーーでは、続いて、アルバムの収録曲で特に気になったものについて順に伺っていきたいと思います。まずは5曲目の「ペインキラー」。フックに〝ドラッグディーラ―〟という、アメリカのラップ・ミュージックでは頻出するものの、これまで、RHYMESTERには縁遠かった単語が使われています。ただ、当然というか、ドラッグそのものではなく、音楽をドラッグに例えて歌っている。 宇多丸:音楽だけでなく、そもそも、エンターテインメントは気晴らしっていうか、もしくは、ある種の毒っていうか、わざわざ、身体に入れなくてもいいものなのに、それなしで生きているひとはまずいないっていう。もちろん、ドラッグを推奨しているわけじゃないんだけど、そういうものを非難するひとも、音楽とか聴いてる時点で同じだよっていう。 ーー誰もが何かしらにアディクトしてるということでしょうか? 宇多丸:そうそう。ひとはどうしてもシラフじゃ生きていけないんですよ。みんな、何かに逃げ込んでいる。これはアルバムの中でいちばん古い曲で。今回の裏テーマとも言えるんじゃないかなって思うんだけど。 ーーアメリカとは違って、今、日本のメジャーで狭義のドラッグについて歌うことは出来ないですよね。だから、「ペインキラー」は、やはり後程、詳しく訊こうと思っている「ガラパゴス」と同じように、日本のラップ・ミュージックのガラパゴス性を表現したとも言えると思いますし、あるいは、宇多さんが仰ったように音楽を含む広義のドラッグにでも逃げ込まないとやっていけないこの国のキツい状況を表現したとも言える、RHYMESTERらしい批評的な曲だと感じました。 宇多丸:いま思い出したけど、この曲をつくる時に、デジタル・アンダーグラウンドの『セックス・パケッツ』(90年)のこともちょっと頭にあったかも。 ーーセックスの代替薬を巡る物語を描いたコンセプチュアル・アルバムですよね。 宇多丸:あれもドラッグのメタファーでしょう。 ーー続いて、シリアスなアルバムの中でいちばん浮いているのが、先程も話に出た7曲目の「SOMINSAI」。元ネタになっているのは日本三大奇祭に数えられる岩手県奥州市の黒石寺蘇民祭ですよね。知らない方は、是非、画像検索してみて下さい。 宇多丸:検索して出てくる画像は完全にアウトだからね! 本当に全裸。ここ数年、流石にふんどしはするようになってきたみたいなんだけど、長老だけは相変わらずしてないっていう。 Mummy-D:出してる人のほうが偉いんだね(笑)。 宇多丸:日本の奇祭っていうと他にも川崎市のかなまら祭とかあって、それも西洋的価値観から見たらアウト中のアウトなんだけど、やっぱり、我々みたいな土着の人間が感じる〝豊かさ〟みたいなものに、そういう、裸とか性とかっていうものが含まれてるんだと思うんだよ。 ーー蘇民祭もかなまら祭も〝ビューティフル〟だし、〝リッチ〟なものだと。 宇多丸:凄くドメスティックで、それこそガラパゴスな価値観なんだけど、一方でその〝豊かさ〟みたいなものは形を変えながら世界中の何処にでもあるはずで。 ーー極めてローカルだけれど、同時にグローバルでもあると。それにしても、「SOMINSAI」っていうタイトルは直球ですね。 宇多丸:これはねぇ……迂闊そのもの。 Mummy-D:もともとは「蘇民祭〝的〟なことを歌おう」って言ってたのに、PUNPEEが自分のヴァースで〝ソミンサイ、ソミンサイ〟ってそのまんま連呼してて(笑)。「じゃあ、しょうがねぇ。ローマ字表記にするか」って。それで、「SOMINSAI」。 宇多丸:ただ、〝蘇民祭〟って言葉自体は一般名詞だから。 ーー曲中に〝黒石寺権蔵〟ってキャラクターも出しちゃってますけどね。 Mummy-D:言い訳不能(笑)。 ーーあのキャラクターを演じてるのはPUNPEEですよね? Mummy-D:そうそう。オルター・エゴらしい。 宇多丸:あんなの頼んでないよ! あいつが勝手にやってるんだよ(笑)。 ーーKICK THE CAN CREWとやった「神輿ロッカーズ」(02年)なんかは祭囃子をラップに取り込むというか、それこそ、ガラパゴスなラップ・ミュージックをあえてつくろうという試みだったわけですけど、「SOMINSAI」はガラパゴスとも言えない何がなんだかよく分からないものになっていますよね。 Mummy-D:途中で入ってくるバイオリンの音とかアイリッシュっぽかったりして、全然、日本の祭じゃないもんね。 ーー声ネタもちょっと中東っぽく聴こえたり。タイトルに反して土着的ではなくて、むしろ、人工的なサウンドですよね。 宇多丸:〝SOMINSAI〟っていうタイトルだからって、蘇民祭の音をそのまま使っても面白くないじゃん。 ーーただ、蘇民祭はRHYMESTERにとってはひとつの理想郷であると。 Mummy-D:全然、違うよ!(笑) 宇多丸:でも、まぁ、褒められたものではないかもしれないけど、ああいう、〝豊かさ〟もちゃんと認めていきたいよねっていうのはあるかな。 ーー〝褒められたものではないかもしれない〟……というのは、8曲目の「モノンクル」にも繋がる話です。 宇多丸:そうそう。全体を通してそれを言ってるから。 ーー「モノンクル」は〝おじさん〟がテーマで、前回のインタビューの時、Dさんが自分のことをやたらと〝おっさん〟と言っていたのが気になったんですけど、ここで言う〝おじさん〟は〝おっさん〟とは違う。 Mummy-D:うん、違う〝おじさん〟だね。 ーー要するに〝伯父さん〟ですよね。文化における〝伯父さん〟って伝統的な立ち位置だと思うんですけど。 宇多丸:その通りです。 ーー父親よりも気軽で、友達よりも身内な、文化のことだったり、あるいは人生のことだったり、色々な知識を教えてくれる歳上のひとっていう。その知識が〝褒められたものではないかもしれない〟わけですが。ちなみに、タイトルはジャック・タチ『ぼくの伯父さん』の原題〝Mon Oncle〟の引用ですか? 宇多丸:それを〝モノンクル〟ってカタカナ5文字の表記にすると、伊丹十三の出してた雑誌(朝日出版社/81年~)のタイトルでもあって。おそらく、伊丹十三も文化における〝伯父さん〟的なスタンスを打ち出そうとしたと思うんだけど。「モノンクル」って表記にしたのはそれに対するオマージュ。 ーー宇多さんもラジオで自分よりは歳下のリスナーの子たちを相手に文化について語っているわけですけど、やはり、〝伯父さん〟でいたい? 宇多丸:RHYMESTERそのものが、この界隈の音楽業界では〝伯父さん〟的な立ち位置だろうしね。あと、オレの場合は、DやJINの子供とか、小島慶子さんのうちの2人の子供のためにビデオを選んだりしてて。「宇多丸おじさんが、今度はどんな面白い映画を観せてくれるかな?」みたいな立場が凄い愉しくてさ。「さぁ~、君らの年齢でいえば、そろそろ、この辺りがいいんじゃないか~?」って。 ーー今はどのくらいまで行ったんですか? 宇多丸:小島さん家の子供は『スター・ウォーズ』が凄い好きで、「オレは高級なライト・セイバー持ってんだぞ! FXライト・セイバー」って自慢したら、「おかーさーん! FXライト・セイバー買ってー!」って大騒ぎになっちゃって、「ヤバい、まずいこと教えてしまった……」っていう(笑)。まぁ、そういうふうに、「〝伯父さん〟って立ち位置は良いよね」って考えは、子供たちと直に触れて楽しかったことから来ているものでもある。 ーーうちの弟はオタクなんですけど、従兄弟の子たちが小さい頃は戦隊ものの知識とかを披露して尊敬されていたのが、その子たちももはや中学生とか高校生なので「何だこのひと?」みたいな扱いになってます。 宇多丸:北杜夫の『ぼくのおじさん』っていう小説にはそういう感じもあって。伯父さんが家でずっとごろごろしてて、「ダメなひとだなぁ」って思うんだけど、後に振り返ってみるとそのダメさが自分には重要だったのかもみたいな話。あれは好きで何度も読んだけどね。 ーー先程、今回のアルバムには下の世代へのメッセージが込められているのではないかっていう話をしましたけど、〝伯父さん〟っていう距離感は絶妙ですよね。完全な上から目線ではない。 宇多丸:そうそう。〝ガハハおじさん〟みたいなのは嫌なんだよね。セクハラするようなおっさんのことをイメージされちゃ困るっていうか。 ーー最近、ラッパーの漢が出した『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/15年)に「日本のラップ・シーンはいわゆる日本的なタテ社会とアメリカ的なヨコ社会の中間の、ナナメ社会だ」みたいなことが書いてあって、それにも通じる話だとも思いました。 宇多丸:へぇ! あの本も面白いよね。すげぇ怖いけど。「信じられない、こんな人が同じシーンにいるのか!」って思った(笑)。

「『オレたちがやっていることは何なんだ?』っていうことを問いなおす機会が度々あることは、ありがたいことなのかもしれない」(宇多丸)

ーーそして、気になるのが9曲目の「ガラパゴス」。この曲はやはり例の為末ツイート(元・陸上選手の為末大による「悲しいかな、どんなに頑張っても日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある」という文章で始まる一連のツイートのこと)が発端になっているわけですよね? Mummy-D:直接的な要因としてはそうだね。 ーーただ、これまでも、RHYMESTERはヒップホップに対する誤解を解いたり、魅力を説明する曲をたくさんつくってきたわけですが、この曲では「まだこんなことを言わなきゃいけないのか」みたいな苛立ちが表現されています。 Mummy-D:『ウワサの真相』(01年)の頃と言ってること変わってねーや、みたいな。 宇多丸:でも、為末さんはすごいよね。実際にヒップホップのグループに曲をつくらしちゃったんだもん。ありがとうございます。 ーー宇多さんはあのツイートをラジオでも取り上げていましたね。 宇多丸:まぁ、悪気はないのは百も承知なんだけど。逆説的に言えば日本のヒップホップ肯定論としてもとれると思ったし。 ーー「ガラパゴス」が面白いと思ったのは、「「日本のヒップホップにおけるオリジナリティとは何か?」みたいなこれまで散々繰り返されてきた質問に答えるよりも、その質問自体が愚問であり、設問自体がある種の罠だと言っているわけですよね。 宇多丸:そもそも、「オリジナルって何?」っていう。例えば、〝仏教〟って言葉は使ってないけど、お経っぽくラップして「チーン!」って言ってるところなんかは、「仏教だってモロ輸入文化やないか!」って意味を込めてて。しかも、仏教って輸入してくる時に土着のひとと揉めてるんだよ。「この外国被れが!」みたいな。 ーー今は伝統になっているものも、かつてはモダンなものだったのかもしれない。 宇多丸:そう。要はアメリカのイケてる流行をそのまま直輸入するような話だったんだから。 ーーそして、同じようなことが世界中で起こっているし、むしろ、それこそが文化の本質であると。 宇多丸:あと、日本語ラップで言うと、「本場もんの完コピ」でも「本番もんとは別もん」でも、結局両方、貶されるんだもん。 ーー完コピは猿真似、別もんはガラパゴスだって言われるわけですよね。 宇多丸:しかも、それを同じ口で言ったりするから。まさにダブルスタンダード。本質はその中間にあるのに。 ーー〝猿真似〟〝ガラパゴス〟みたいな分かりやすいレッテルに引っ張られてしまう。 宇多丸:だから、「日本のヒップホップにおけるオリジナリティとは何か?」みたいな質問自体が愚問なんです。で、スタジオで「最後の1行どうしよっかなー」って考えてたら、Dが「もうこんな話はしたくないよね」って言って、「それだ!」って(笑)。 ーーこの曲が最終的な結論になるんですかね。 宇多丸:どうだろね? まぁ、こんなことを言わなきゃいけないうちが華なのかなとも思うんですよ。 ーー確かに、今のロックなんかにはそういう設問自体がないし。 宇多丸:やっぱり、「オレたちがやっていることは何なんだ?」っていうことを問いなおす機会が度々あることは、ありがたいことなのかもしれないし。それを問わなくなった時に堕落するのかもしれない。 ーー日本語ロック論争みたいなものが、ラップにおいてはもう30年ぐらい続いているわけですからね。 宇多丸:日本語ラップのトレンドも、振れてるじゃない。バイリンな時期があったり、日本語エモがあったり。面白いよなぁ、ジャンルとして全然生きてるよなぁと思って。 ーー実は「日本のヒップホップにおけるオリジナリティとは何か?」みたいな、永遠に解けない質問に立ち向かい続けていることで、オリジナリティが生まれている。 宇多丸:ロックのひとからすると、羨ましいとすら思えるのかもしれないね。 ーーちなみに、「ガラパゴス」のDさんの3ヴァース目はTwitterディス? Mummy-D:Twitterディスじゃない(笑)。 ーー「また ピーチク パーチク うっせー小鳥のさえずりに/また ピーチク パーチク うっせー小鳥のさえずり返し」ってラインはそうとしかとれないですけどね。他にもこのアルバム、結構、ネット・ディスが多いなと思いました。 Mummy-D:あ、そうかね。ネット・ディスもしてないよ。 ーーいや、してますよ。 Mummy-D:ははは! 宇多丸:まぁ、SNSとかを、ちょこっとチクチク言ったりしてね。 ーーそうそう。宇多さんの「「つながり」を切望し だがそのたび絶望し」(「Beautiful」)とか「しばらく「つながり」中毒離れてソリチュード」(「サイレント・ナイト」)とかも、Twitterディスですよね。 Mummy-D:でも、それはTwitterディスではないでしょ。すぐ〝つながり〟たがる傾向をディスしてるんであって。だって、Twitterディスって、メール・ディスみたいなもんじゃん。電話ディスとか。 ーーあぁ、もはやインフラになってるものをディスっても仕方がないっていう? Mummy-D:だから、Twitterディスっていうより、Twitterの使い方を間違えてるバカに対するディスだね。 宇多丸:過度のSNS依存とかさ。 Mummy-D:みんなが感じてることだよ。 宇多丸:SNS上で誰もが言ってることっていうか。この程度のことは。 ーーDさんが「マイクロフォン」で、「だから 震わせてくれよリアルな空気を リアルな言葉(ワード)でリアルな世界(ワールド)を/もうアバター・トゥ・アバターの虚ろな会話じゃ裸の俺たちは満たせやしないんだ」と歌っているのは、ネットよりもリアル志向っていうことですよね。 Mummy-D:そうだねぇ。 ーーまさに〝おじさん〟的なメッセージだと思いましたけど。 Mummy-D:ネットで拾える情報をネットで回して、それに対して何だかんだ言ったりだとか。そんなんだったら、1回、ライブを観に来てくれたら速いのに、みたいなことは考えたね。 ーーネットを眺めながら色々と思うことはあるんですね。 Mummy-D:ネットはもはやデフォルトだから、それは避けて通れない。だから、その使い方だとか、そこでのコミュニケーションだとかを話題にしてるんだろうね。あるいは、ふと感じた、ちょっとした虚しさだとか。 ーー前回のインタビューで〝現場〟について訊いた際、今のRHYMESTERは曲をつくる時にクラブのことはあまり想定しないけれど、フェスだったりネットだったりは念頭に置く、というようなことを言っていたのが印象的だったのですが。 宇多丸:ネットもひとつの現場だよね。でも、Dも言ったように、ネットはもはや特別なものではなく、生活の一部だからさ。 ーーそうですよね。今、〝ポスト・インターネット〟って言葉がありますが、それは、もはやオフ・ラインとオン・ラインに区別はないっていう状況を指しているわけで。 宇多丸:だから、日々の暮らしについて何か意見を言おうとした時に、ネットで起こるある種の現象も視野に入れざるを得ないってだけのことで。オレは、本当に自由に、フラットに意見を言い合えるスタイル・ウォーズなら、全然、良いと思う。コピペして意見を言った気になるとか、そういうものがイラっとくるだけで。 ーー「ガラパゴス」の歌詞にもあるように、「「ひとこと言ったった!」気にはなれる」みたいな。 宇多丸:そうそう。「言えてねぇよ、お前これ!」っていう。まぁ、おじさんとしては文句のひとつでも言いたくなるってだけで、もちろん、それも含めてのネットだと思いますけどね。リテラシーもどんどん変わってるしね。 ーーJINさんはTwitterやってますけど、宇多さんはやってないですよね。Dさんは? Mummy-D:やってないよ。 ーーネット・リテラシーの低いグループ……。 宇多丸:でも見てるよ、全然! ーーははは。それは、一応、警告しておかないと。 Mummy-D:警告(笑)。 宇多丸:ほんとだよ。「言っとくけど、お前の発言、これ簡単に見れっからね!」っていう。あまりにそれを意識してないと思われる、迂闊なひとが多くて。 ーー本当に呟きだと思っちゃって。 宇多丸:フォロワーしか見てないと思ってるかもしれないけど、「いや、丸見えだから!」みたいな。お前のその中学生日記が未来永劫残る可能性だってあるわけでね。オレの若い頃にこんなものがあったとして、恥ずかしい妄言の数々が世界にさらされると考えたら……(頭を抱える)「わー!」。 Mummy-D:今は忘れられる権利がないよね。 後編【RHYMESTERが示す、プロテストとしての音楽表現 DJ JIN「美しくあろうという気持ちが大切」】に続く (取材・文=磯部涼)
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RHYMESTER『Bitter, Sweet & Beautiful』

■リリース情報 『Bitter, Sweet & Beautiful』 価格:初回限定盤A (CD+BD) ¥3,800(税抜)    初回限定盤B (CD+DVD) ¥3,500(税抜)    通常盤 (CD) ¥3,000(税抜) <収録曲> 1. Beautiful – Intro [DJ JIN and SWING-O Produce] 2. フットステップス・イン・ザ・ダーク [PUNPEE (PSG) Produce] 3. Still Changing [BACHLOGIC Produce] 4. Kids In The Park feat. PUNPEE [PUNPEE (PSG) Produce] 5. ペインキラー [KREVA Produce] 6. Beautiful – Ineterlude [DJ JIN and SWING-O Produce] 7. SOMINSAI feat. PUNPEE [PUNPEE (PSG) Produce] 8. モノンクル [PUNPEE (PSG) Produce] 9. ガラパゴス [BACHLOGIC Produce] 10. The X-Day [Mr. Drunk (Mummy-D) Produce] 11. Beautiful [DJ JIN and SWING-O Produce] 12. 人間交差点 [DJ JIN Produce] 13. サイレント・ナイト[PUNPEE (PSG) Produce] 14. マイクロフォン [BACHLOGIC Produce] <初回限定盤特典収録映像> ・ “6 minutes of #nkfes” 全アーティスト収録・主催フェス「人間交差点 2015」スペシャルダイジェスト映像 ・「SOMINSAI feat. PUNPEE」(人間交差点 2015)ライブ映像  ・「Still Changing」MV ・「人間交差点」MV 副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー ■ライブ情報 KING OF STAGE VOL. 12 Bitter, Sweet & Beautiful Release Tour 2015 公開リハーサル 公演日:2015年9月24日(木) 会場:川崎 CLUB CITTA’ 時間:18:00 Open / 19:00 Start 料金:オールスタンディング ¥3,000(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2015年9月27日(日) 会場:大阪 Zepp Namba(Osaka) 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:1F 指定席、2F 指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:夢番地大阪 06-6341-3525 公演日:2015年10月4日(日) 会場:高知 X-pt.(クロスポイント) 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:祝初!高知ライブ・特別価格 オールスタンディング    ¥4,000(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:デューク高知 088-822-4488 公演日:2015年10月9日(金) 会場:東京 Zepp DiverCity(Tokyo) 時間:18:00 Open / 19:00 Start 料金:1F スタンディング ¥5,000(税込)ドリンク代別    2F 指定席 ¥5,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2015年10月12日(月・祝) 会場: 名古屋 Zepp Nagoya 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:1F 前方指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別    1F 後方スタンディング ¥4,800(税込)ドリンク代別    2F 指定席 ¥5,000(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:サンデーフォーク 052-320-9100 公演日:2015年10月18日(日) 会場:青森 SUNSHINE 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2015年10月20日(火) 会場:仙台 Space Zero 時間:18:00 Open / 19:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2015年10月25日(日) 会場:福岡 DRUM LOGOS 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:BEA 092-712-4221 公演日:2015年11月1日(日) 会場:静岡 SOUND SHOWER ark 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:BOOM BOOM-BASH 054-264-6713 公演日:2015年11月3日(火・祝) 会場:水戸 VOICE 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2015年11月8日(日) 会場:沖縄 桜坂セントラル 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:PM AGENCY 098-898-1331 公演日:2015年11月10日(火) 会場:鹿児島 SR HALL 時間:18:00 Open / 19:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:BEA 092-712-4221 公演日:2014年11月15日(日) 会場:岡山 YEBISU YA PRO 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:夢番地(岡山)086-231-3531 公演日:2014年11月22日(日) 会場:富山 MAIRO 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:CITTA'WORKS 044-276-8841 公演日:2014年11月29日(日)  会場:札幌 PENNYLANE24 時間:17:00 Open / 18:00 Start 料金:オールスタンディング ¥4,500(税込)ドリンク代別 お問い合わせ:ウエス 011-614-9999 ・ チケットは一人で、4枚までのお申し込みが可能。 ・ 取材、作品用の撮影カメラが入る場合あり。 ・ 6歳未満無料(座席が必要な場合は要チケット) ・ スタンディングで参加のお子様連れのお客様は充分に注意。 お問い合わせ総合:チッタワークス・044-276-8841(平日12:00~19:00) http://www.rhymester.jp/

lyrical schoolがZeppワンマンで見せた“幸せな予兆” 過去最大キャパでのライブを徹底レポ

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【リアルサウンドより】  ヒップホップアイドルユニットとして「アイドルラップ」というジャンルを切り拓き、その先頭を走ってきたlyrical schoolが7月25日、Zepp DiverCity TOKYOのワンマンライブで初の全国ツアーを締めくくった。5月31日の沖縄公演から始まった“date spot”ツアーのファイナルであると同時に、昨年11月の恵比寿リキッドルームライブからさらにグループとしての大きさとファンからの支持を獲得してきた、そのひとつの集大成がこの、グループのワンマン史上最大の会場でのライブである。
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 「アイドルラップ」の矜持を謳う昨年10月リリースの「PRIDE」からその直後のリキッドルームライブ、今年に入って発表されたアルバム『SPOT』、そして全国ツアーと軌を一にしてリリースされた「ワンダーグラウンド」へと、lyrical schoolは昨年終盤以降、リリース音源の充実とライブの規模拡大の両輪を理想的なペースで積み重ねてきた。開催発表当初はグループとしての体力的に不安もあったはずの昨年のリキッドルームライブを気づけばごく自然にクリアしていたlyrical schoolは、今回のZepp DiverCity TOKYOというさらなる高みもまた、気負いなく自分たちのものにしていた。
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 アルバム『SPOT』同様に、この日のワンマンもアイドルラップのハードコアサイドを強調する「I.D.O.L.R.A.P」「PRIDE」からスタートした。これらはキャリアを積み上げてきた現在の彼女たちだからこその力強さを感じる楽曲群だが、もちろんそれはグループ全体が強面の方向へと舵を切るものではなく、彼女たちがナチュラルに身につけてきた幅広さのほんの一側面である。MCを挟んでのパートでは「レインボーディスコ」に始まり、グループ最初期曲「ルービックキューブ」のFragment remix、泉水マサチェリーが手がけた名曲「Maybe Love」へと、オリジナルメンバー時代の楽曲も織り込んで5年目に入るキャリアの奥行きを見せていく。これらの楽曲に象徴されるように、この日のワンマンはファンがそれぞれにlyrical schoolとの歩みを振り返ることのできる局面がいくつもある。「S.T.A.G.E」やアンコールで披露した「tengal6」などの楽曲は、現行メンバー6人によってリニューアルされた最新形の姿とかつてのオリジナルバージョンの記憶とが交錯して展開されていくし、「photograph」はライブ終盤の定番曲として何年も揺るぎない強さを持ちつつ、スキルを著しく向上させた現在の彼女たちの2015年現在の代表曲としても楽しめる。
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 そうしたグループの歩みはステージングからも感じ取ることができる。振り返ればこの数年でlyrical schoolは、よく「動く」グループになっている。それぞれがラップの技術を上げ、ラッパーとしての個々のキャラクターを強くさせていきつつ、グループ総体としてはダンスで魅せるパフォーマンスが彼女たちの華やかさを下支えしている。いつもより大きなストライドでフォーメーションを変えながら、しかしいつも通りにゆるやかな雰囲気は保ったまま、Zepp DiverCity TOKYOという大きなステージを良い意味で大きく見せないステージングを当たり前にこなしていた。メンバー全員にまだケーブルのないマイクが用意されておらず物理的にフォーメーションの移動さえ難しかった頃の初期楽曲が、今やこの広さのステージをいっぱいに使ったダンスとともに披露される。それはアイドルシーンを独特のコースで歩いてきたこのグループの道程をあらためて感じさせるものだ。そうでなくとも、この会場でのワンマンに到達したことで可能になったステージングは数多い。通常は平面でのフォーメーションが基本になるが、この日はZepp DiverCity TOKYOの奥行きのある舞台の上で後方を一段高くとり、メンバーを立体的に見せる配置を随所に取り入れていた。このセットは動きの激しい曲よりもむしろ、ライブ中盤のメロウな楽曲群で特に際立つ。「ひとりぼっちのラビリンス」では上段と階段を用いた配置が、メンバーそれぞれのストーリーを曲と同時に視覚的に引き立てた。このように、会場の大きさに翻弄されることなく、適切な演出が施されていたことも印象に強い。一見、どこまでも変わらないやわらかな雰囲気をキープしながら、大きくなっていく会場にしっかりフィットさせていく実力を身につけていっているのが、今のlyrical schoolである。
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 もちろん、キャリアの振り返りやひとつの集大成としてこの日のライブを語ることはいくらでも可能だし、またここまでその面を記述してきた。けれども実際のところ、そこに重きを置くことはあまり正しくないのかもしれない。というのも、この日のライブが示したのはこの全国ツアーファイナルが何かの締めくくりではなく、彼女たちが現在、絶好調の機運のなか、走り続けている真っ最中だということだからだ。このライブを境に足を休めるわけでもなく、相変わらずリリース音源とライブパフォーマンス双方の充実期はそのまま継続していく。シングル曲をちりばめたライブ終盤の展開、そしてアンコールを終えた会場は、「祭りのあと」の寂しさをあまり漂わせることなく、翌日以降も繰り返していくようなlyrical schoolのいつもの温度、いつもの楽しさを保ったままだった。気負いなく、大げさな節目にすることなくZeppライブを完成させたこと、グループの順調ぶりを占うとき、そのことがもっとも幸せな予兆なのかもしれない。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

井上陽水のカバーアルバムが放つ強烈なセンス 傑出したシンガーソングライターとしての足跡を追う

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【リアルサウンドより】  2001年に発表され、80万枚を超える大ヒットを記録した井上陽水のカバー・アルバム『UNITED COVER』。昨今のカバー・ブームの火付け役であり金字塔といわれているが、その第二弾である『UNITED COVER 2』が発表された。陽水の偉業は多々数えられるが、記録ということでいうと、1973年に発表したアルバム『氷の世界』が日本の音楽史上初のミリオンセラーのアルバムになったことだろう。そしてなんと、最新作は40年ぶりに当時のレーベルであるポリドールに復帰。往年の昭和歌謡から宇多田ヒカルにいたるまで世代を超えた選曲が11曲、そして自身の新曲が2曲という構成になっている。楽曲のセレクトもなかなかユニークで、いろんな切り口で語りたくなる内容だ。  まず最初の印象は、稀代のシンガーとしての味わいの深さ。それは、前作での「コーヒー・ルンバ」に代表されるように、昭和歌謡の名曲から顕著に感じ取れる。例えば、ギターのシンプルな演奏をバックにさらっと歌いこなす「黄昏のビギン」や、オルガンジャズのようなブルージーなバッキングでスウィングする「有楽町で逢いましょう」などからは、表現力の素晴らしさはもちろんのこと、憂いや色気が濃厚に匂い立つ。フォークシンガーとして出発した陽水が、実は優れた歌謡曲の歌い手であることに気付かされるのだ。  また、サウンド面で特筆すべき面は、日本を代表するサルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスとのコラボレーションだ。自身の新曲2曲に加え、「SAKURAドロップス」やビートルズの「I WILL」において軽快なラテン・ビートでサポートしている。この躍動感はそのままアルバム全体のトーンに反映され、新たな陽水の魅力を引き出している。両者を引き合わせたのはタモリだそうだが、その功績は非常に大きいといえるだろう。  加えて、本作には同時代を一緒に作ってきた盟友ともいうべきアーティストの作品をいくつも取り上げている。冒頭は大橋純子の歌唱で知られる「シルエット・ロマンス」だし、ユーミンの「リフレインが叫んでる」や加藤和彦と北山修による「あの素晴らしい愛をもう一度」もそうだ。なかでも秀逸なのが、よしだたくろう(吉田拓郎)の隠れた名曲「リンゴ」。拓郎は、ご存じのとおり、70年代の一大フォーク・ブームで、陽水と人気を二分した永遠の好敵手でもある。だからこそ、この曲のセレクトには深い意味があるに違いない。ボサノヴァ・ビートに導かれた当時のライバルの作品は、原曲が純愛物語のような印象だったのに対し、陽水の声で歌われるとどこかニュアンスが違ってくるのが面白い。そういえば、同じ“リンゴ”が登場する楽曲「氷の世界」もセルフ・カバーしているが、対になっている様に感じさせるのは、彼なりの計算であり遊び心であり、そしてあの時代の盟友へのリスペクトなのではないだろうか。  さらに付け加えるなら、井上陽水のソングライターとしての最大の魅力といいたいのが、「氷の世界」に代表される独特の言葉遊びのようなシュールな歌詞の世界観である。本作には含まれていないが、「リバーサイドホテル」や「とまどうペリカン」、はたまた「アジアの純真」といった過去の代表作を思い起こしてみればわかるだろう。しっかりとメジャー・シーンで活躍しているのに、ここまで奇妙な言葉を並べて聴く者を煙に撒くような存在は他にいないかもしれない。そういった強烈なセンスを持っているからこそ、「リンゴ」のような他人の楽曲を歌っても、あたかもオリジナル曲のように魔力を乗り移らせ、不思議な世界へと導いてくれるのだ。それは、石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」や坂本スミ子の「夢であいましょう」のような昭和歌謡のスタンダードでも同様。陽水特有のフィルターを通して、聴き慣れた楽曲を続々と違うニュアンスへと組み替えていく。そんな面白さがこの『UNITED COVER 2』には詰め込まれている。 (文=栗本 斉)
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井上陽水『UNITED COVER 2』(ユニバーサル ミュージック)

■リリース情報 『UNITED COVER 2』 発売:7月29日 価格:¥3,000(税抜) 【収録曲】:( )内は 原曲歌唱者 原曲発売年 01. シルエット・ロマンス(大橋純子 1981年) 02. 黄昏のビギン(水原弘 1959年) 03. リフレインが叫んでる(松任谷由実 1988年) 04. リンゴ (吉田拓郎 1972年) 05. 有楽町で逢いましょう(フランク永井 1957年) 06. 夜霧よ今夜も有難う(石原裕次郎 1967年) 07. 女神(新曲) 08. 瞬き(新曲) 09. あの素晴しい愛をもう一度(加藤和彦と北山修 1971年) 10. I WILL(The Beatles 1968年) 11. 夢で逢いましょう(坂本スミ子 1961年) 12. SAKURAドロップス(宇多田ヒカル 2002年) 13. 氷の世界(セルフ・カバー 1973年) 【アナログ盤】 発売:9月16日 価格:¥4,860(税込) <収録曲> 01:シルエット・ロマンス 02:黄昏のビギン 03:リンゴ 04:リフレインが叫んでる 05:有楽町で逢いましょう 06:夜霧よ今夜も有難う 07:女神 / bonus track 08:瞬き / bonus track 09:あの素晴しい愛をもう一度 10: I WILL 11:夢であいましょう 12: SAKURAドロップス 13:氷の世界 14:瞬き Solo ver. (Extra track) 【ハイレゾ配信】 発売:9月16日 価格:¥4,600(税込) ※9月16日より下記配信サイトにて購入可能。 mora http://mora.jp/index_hires e-onkyo music http://www.e-onkyo.com/music/ HQM http://www01.hqm-store.com/index.php VICTOR STUDIO HD-Sound. http://hd-music.info/ <収録曲> 01:シルエット・ロマンス 02:黄昏のビギン 03:リンゴ 04:リフレインが叫んでる 05:有楽町で逢いましょう 06:夜霧よ今夜も有難う 07:女神 / bonus track 08:瞬き / bonus track 09:あの素晴しい愛をもう一度 10: I WILL 11:夢であいましょう 12: SAKURAドロップス 13:氷の世界 ■ライブ情報 『井上陽水 コンサート2015「UNITED COVER 2」』 9月17日(木) 埼玉 大宮ソニックシティ 9月21日(月) 佐賀 唐津市民会館 9月23日(水) 熊本 牛深総合センター 9月26日(土) 岩手 久慈市文化会館 アンバーホール 9月27日(日) 岩手 宮古市民文化会館 10月4日(日) 愛媛 松山市民会館 大ホール 10月6日(火) 滋賀 守山市民ホール 10月7日(水) 奈良 奈良県文化会館 国際ホール 10月10日(土) 千葉 市川市文化会館 10月16日(金) 福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール 10月18日(日) 大阪 フェスティバルホール 10月19日(月) 大阪 フェスティバルホール 10月22日(木) 宮城 仙台サンプラザホール 10月29日(木) 静岡 伊東市観光会館 10月31日(土) 山梨 コラニー文化ホール (山梨県立県民文化ホール) 11月9日(月) 北海道 小樽市民会館 11月11日(水) 北海道 だて歴史の杜カルチャーセンター(洞爺湖 近隣) 11月13日(金) 東京 オリンパスホール八王子 11月24日(火) 神奈川 鎌倉芸術館 12月4日(金) 東京 東京国際フォーラム ホールA 12月5日(土) 東京 東京国際フォーラム ホールA http://yosui.jp/

嵐、三代目JSB、セカオワ…海外作家とのコラボはなぜ増えている?

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嵐。(C)タナカケンイチ

【リアルサウンドより】  J-POPシーンではここ数年、海外の音楽作家が人気アーティストに楽曲提供するケースが増えている。  特に多いのがスウェーデンの音楽作家だ。同国は米国、英国に次いで世界第3位の“音楽輸出国”へと成長しており(参照英国The Independence紙の記事)、テイラー・スウィフトなどを手掛けたマックス・マーティンや、アリアナ・グランデにマルーン5のクレジットに携わっているヨハン・カール・シュスターをはじめ、多数の作曲家が世界のアーティストへ楽曲提供を行っている。  同国の音楽作家は嵐や三代目 J Soul Brothersなどの男性グループ、少女時代やKARAなどのK-POP勢の楽曲にクレジットされることが多い。ジャニーズ事務所もスウェーデンの音楽出版社に投資をするほどで、今では各グループの音楽的特徴を生み出すほど両者の関係は密となっている。(参考:嵐とAKB48、音楽的アプローチの違いは? チャート上位2曲を洋楽の視点で読み解く)。とくに嵐はスウェーデン人作家を登用する機会が年々増えており、彼らのシングル売上枚数ランキングを見ても、2位の「Calling」(作曲:Andreas Johansson/youwhich)、8位「ワイルド アット ハート」(作曲:Chris Janey/Junior Jokinen)、9位「迷宮ラブソング」(作曲:iiiSAK/Dyce Taylor)、10位「Love Rainbow」(作曲:iiiSAK/Dyce Taylor)と、10枚中4枚の表題曲をスウェーデンの作家陣が手掛けているのだ。  なぜスウェーデンの音楽作家は日本の音楽業界で重宝されるのだろうか。まず挙げられるのは、スウェーデン人作家が各国の音楽マーケットに対して適応力があり、J-POP向けの楽曲を書くことに長けていることだ。  作詞家・zopp氏は「2003年にリリースされたKinKi Kidsの『薄荷キャンディー』は、曲をスウェーデンの作家陣が書いて、歌詞は松本隆さんが手がけており、このあたりから海外作家とのコライトやプロデュースが始まった」と振り返った上で、当初スウェーデンの作家たちは「Aメロ、Aメロ、サビという楽曲構成」を書くことが多かったが、日本の編曲家たちがBメロを加えて曲を仕上げていくのを見て、J-POPの楽曲構造を学習して「自発的にBメロを作るようになってきた」と解説している。(参照:リアルサウンド連載『作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」』  また、J-POPのマーケットが、動画サイトなどの登場やインターネットの普及で、以前よりも早く海外の時流を取り入れようとしているのもポイントだ。たとえばSEKAI NO OWARIはアメリカのダン・ジ・オートメイタ―をプロデューサーに迎えた「ANTI-HERO」で本格的な世界進出を予感させ、三代目 J Soul Brothersは、オランダのEDMプロデューサー・アフロジャックが手掛けた最新曲『Summer Madness』でさらなるブレイクを視野に入れている。  今後、日本のポップミュージックを媒介にして、例えばマックス・マーティンのようなスター作家が現れるのか、それとも国内の作家勢が巻き返しを図るのか。作家同士の競争によるクオリティの底上げに期待したい。 (文=向原康太)

アイドルと性をめぐる3つの論点とは? 香月孝史がタブーに切り込む

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AKB48『【特典生写真無し】ヘビーローテーション<Type-A>』

【リアルサウンドより】  前回の記事【アイドルの「恋愛禁止」は守り続けるべきものなのか?】で、女性アイドルシーンが抱える「恋愛禁止」という風潮が守られ続けることへの疑念を示した。懸念したのは、あくまで「風潮」だったものが次第にルールとして当たり前に内面化されていくことで、社会一般の倫理観とのズレが進行してしまうことだった。実際、その社会とのズレの臨界点を超えたものとして、前回触れた峯岸みなみの「事件」などはあったように思う。当時、その「事件」直後の反応として印象的だったのは、AKB48ないしは女性アイドルというジャンルを、きわめて反社会的な性格の組織や分野として語る言説だった。あらためて振り返ればそれらの言説の中には、「事件」の衝撃的なビジュアルから導き出されたごく表面的な連想による語り口のものもあった。また、前回書いたように「恋愛禁止」の内実も、単に明確なルールであるという前提で語れるほど単純なものではない。当時噴出した批判の中には、アイドルというジャンルの性質を過度に単純化したうえでの糾弾もあったのかもしれない。しかしそれでも、「世間」との温度差を認識する機会は、アイドルというジャンルのもつあやうさを省みるタイミングになる。ズレに気づかなくなること、反社会的なものとして認知されることは、ジャンルが順調に継続していくうえでもリスクになる。  そもそもアイドルというジャンルはいろいろな局面で、世間との温度差をはらむものではある。もっとも象徴的なもののひとつには、「AKB商法」という言葉で定着した音楽ソフトの複数購入を促す販売方法があるだろう。この論点に関しては、すでに俯瞰的な分析や相対化も行われているし、ヒットチャートというもの自体が複眼的な指標をもつものとして整備されつつある。ただし、ひとくちに世間との温度差といっても、「恋愛禁止」の場合やや性質が異なる。というのも、その規制がジャンルの実践者自身であるアイドル当人への「抑圧」として受け止められるからだ。さらにいえば、その抑圧が齟齬をきたした結果がすでにいくたびも生じているのが現在でもある。  アイドルに関して何らかの「抑圧」が働いているというイメージはしばしば議論の的になるが、その「抑圧」はまたいくつかの水準に分けられる。アイドルに関連して「抑圧」という言葉が指し示すうち、もっとも意味の大きいものに、アイドルに対する「性的な視線」のありようにまつわるものがある。「恋愛禁止」という習慣を是とする声の中には、その理由にアイドルというジャンルが「疑似恋愛」を中心とした「性的」な魅力を論拠にするものが多い。とはいえ、そもそもアイドルというジャンルに限らず、芸能において「性的魅力」と「そうでないもの」とは混在することが常だし、その両者を明確に分けることはほとんど不可能だ。その人物の上演する内容が意図的にセックスアピールを表現するものもあれば、意図しない性的魅力が看取されることもある。また、いわゆる疑似恋愛的な視線が向けられるのだとして、それもアイドルというジャンルに限ったことではない。「恋愛禁止」が謳われていようがいまいが、芸能人に性的な魅力が見て取られることも、疑似恋愛的な感情が抱かれることもいくらでもある。芸能としてセックスアピールを行なうこともそこに性的魅力を見出すことも、それ自体は否定されるべきものではない。ある芸能者が見せる上演内容がセックスアピール「だけ」で成り立つことなどありえないし、また主体的なセックスアピール自体を否定することもまた抑圧ではあるだろう。  また、そうした表現物が「性」にまつわる観点からどのように評価を受けるかも一様ではない。AKB48の代表曲の一つ「ヘビーローテーション」は、蜷川実花によるアートディレクションが“男性の視線”から離れてランジェリーをファッショナブルに着こなすものとして“女性同士”の視点で肯定的に表象される(米澤泉『「女子」の誕生』: 勁草書房)一方、秋元康にインタビューしたCNNのTV番組『Talk Asia』(2012年1月)では、「ヘビーローテーション」の同一のビジュアルが「性的搾取」という文脈で俎上に載せられた。もっとも、この時CNNが問題にしていたのは、それを上演する主体が未成年であることだった。つまり、「未成年に性的な記号をまとわせること」のリスクという、また別の水準のデリケートな論点がここでは問題となる。芸能における未成年の性的なリスクもまた、「アイドル」というジャンルにのみ限ることではないが、アイドルの場合、小学生や中学生段階から活動が始まることも多いため、そうしたリスクは近いところにあるだろう。  先に示した芸能者のアウトプットに伴われる「性的な視線」全般と、次に示した年齢的に性的な記号をまとわせることが適切かという論点とは、アイドルというジャンルの中で重なりあいながらも水準が異なり、その問題性の有無にはそれぞれ個別の議論も必要になる。そしてまた、これら二者とはもうひとつ違う水準に「恋愛禁止」という「抑圧」は存在している。いま便宜的に三つの水準に分けたが、これらのうちで「恋愛禁止」だけは、アイドルというジャンル内のみに限定された、いわばローカルルール的なものである。さらにいえば、他の二つに比べて「抑圧」を取りのぞく操作――恋愛禁止の解除――が理屈の上ではもっとも容易なものでもある。  「恋愛禁止」が必要だとする声がしばしばその理由とするのは、アイドルが「疑似恋愛」「性を商品化しているもの」だから、という“事実”による説明だった。たとえば、「恋愛禁止」を解くことについて、「ではアイドルが恋人との親密な関係を公言してはばからない場合、そのアイドルをファンは支持するのか」といったような反論は、一見、ある説得力をもっている。けれども、そこには飛躍がある。「恋愛禁止」とは“恋愛をしない”ことの強制だが、「恋愛禁止」を解くことは“恋愛すること”の強制でもなければ、まして「自身の恋愛を公言すること」の強制でもない。アイドルが「恋愛」に対するスタンスをどのように見せ(あるいは隠し)、アイドルとしてのアイデンティティをどのように位置づけるか、その戦略的な判断を個々人に帰するということにすぎない。それぞれのセルフプロデュースやパーソナリティの発露がアイドルシーンの重要な争点になって久しい今日、そのような個々の戦略には相応のグラデーションが生じるはずだ。さらにいえば、前回の稿でも触れたが、「恋愛禁止」という以前からの風潮に一方で身を委ねながら、他方ではその風潮に杓子定規に従うことなく内側から段階的に骨抜きにしつつ、それでもなお支持を保ってきたのがAKB48という存在ではなかったか。その歩みもまた周到なものではないし、指原莉乃や峯岸みなみら「スキャンダル」に見舞われたメンバーたちの、事後的な立ち回りの巧さによって偶発的にもたらされた結果ではあっただろう。けれども、その歩みが明らかにしたのは、アイドルがパーソナルな場での恋愛をにおわせることが、即座にファンから支持されない理由にはならないという今日の環境だ。そうであるならば、「性の商品化」や「疑似恋愛」にアイドルというジャンルを局限させる必要はない。  「恋愛禁止」という「代償」をもってでなければアイドルというエンターテインメントの魅力が保たれないという発想は、ある意味でこのジャンルの可能性を低く見積もってしまうことでもある。もちろん、恋愛を禁じるという「風潮」が定着してから、AKB48が(なかば偶発的に)その風潮を一部骨抜きにするまでにも相応の時間はかかっている。すぐに結論を出すことを求めたいわけではない。けれども、あやうさについて考えるのをやめないことは、将来的により気兼ねなくこのジャンルの面白さを享受するための準備でもある。社会からの拒否反応があらわになる瞬間は、その視点を省みるための貴重な契機だ。 ■香月孝史(Twitter) ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

JUJU、『PLAYBACK』ヒットの理由とは? 積極的なメディア展開から分析

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【リアルサウンドより】  昨年、デビュー10周年を迎え、さらなる飛躍のときを迎えたJUJU。先日リリースされた29枚目のシングル『PLAYBACK』が7月20日付けのBillboard JAPAN Hot 100のCHART Insightで4位となり、好調なセールスを記録している。  JUJUといえば、これまで王道の切ない系バラードを得意としてきた女性シンガー。しかし昨今ではロックモード全開の『Hot Stuff』や大人の歌謡曲とも言うべき『ラストシーン』など、リリースごとに新境地を見せるかのような攻めの姿勢が印象的だ。今作『PLAYBACK』は、夏の開放的な気分にふさわしいアッパーなダンスチューン。テイラー・スイフトやアリアナ・グランデらの楽曲を思わせるEDM的アプローチも新鮮で、リリース前には「この曲、誰が歌ってるの?」と問い合わせが殺到し、有線6月度お問合せランキング1位を記録したほど。現在も音楽検索サイト「SHAZAM」日本トップ100ランキングで堂々の3位につけており、引き続き感度の高い層からの注目の高さをうかがわせる。  とはいえ本作は、近頃の彼女には珍しくノンタイアップでリリースとなった楽曲。強力な後押しのない中、ここまでのヒットが実現した背景には、どんな理由があるのだろうか。  まずひとつ挙げられるのが積極的なTV出演。リリース前後は朝の情報番組から音楽特番までさまざまなシーンでこの『PLAYBACK』を披露した。するとその度、曲名がTwitterでトレンドワード入り。7月15日に日本テレビ系「スッキリ!!」に出演した際には、有名人ランキングで見事1位に輝いた。コーラス隊のセクシーなダンスもツイートが拡散する要因となったようで、ネット上で彼女の真似をした振りをアップしている動画が数多く見受けられる。  また、若者を中心に人気のアプリ「Instagram」に目配せしたMVも評判だ。こちらでは、「ハッシュタグ にときめく。完璧な"思い出"の撮り方」と題し、インスタで映える写真の撮影方法を楽曲に合わせて紹介。JUJU本人は登場しない代わりに、“Instagram界の王様”としてバラエティ番組に引っ張りだこのGENKINGをフィーチャーした。これにより、JUJUのメインターゲットである20代〜30代のみならず、10代へも訴求。新たなファン層拡大にも繋がったほか、YouTubeでは再生回数が130万回を超える人気動画となっている。  動画による施策はこれにとどまらず、東京ガールズコレクション(TGC)とコラボした「#TGC_PLAYBACK」を利用した動画募集に始まり(9月27日のTGC当日のJUJUライブの背景映像に使用するほか、素材を使ってオリジナルMVも制作)、新感覚ファッションマガジンとして話題の「C Channel」に専用チャンネルを開設し、振り付け動画の投稿を募ったりと幅広く展開。カラオケの「DAM」とコラボして、「カラオケにときめく。完璧な思い出の“撮り方”」と題してカラオケユーザーの盛り上がり映像を募集するなど、アーティストからの一方通行ではなく、ファンやリスナーひとりひとりが広告塔となる効果を狙った。       昨今、ネットやSNSの発達で、音楽プロモーション自体も大きな転換期に来ている。熱心なファンをもれなくすくい取り、かつ新たな層に波及させようとしたら、これまでのようなTVや雑誌の露出だけでは追いつかない。新たなメディアや方法をいかに使うかがカギだ。今回、JUJUが『PLAYBACK』のプロモーションで行った施策には、観て終わり/聴いて終わりにならないための仕掛けが二重三重に用意されている。これが、SNSを使いこなし、流行に敏感かつ口コミ好きな女性層をうまく捕らえたのだ。  しかし、企画の目新しさだけでヒットが生み出せるはずもない。つまりは、JUJU自身の類まれなアーティストパワーと楽曲そのものの完成度の高さがあってこそ。さらなる支持獲得となるか、その答えは歌詞のとおり、“太陽に味方され”るかどうかにかかっている。 (文=板橋不死子)
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JUJU『PLAYBACK』(SMAR)

■リリース情報 『PLAYBACK』 発売:7月8日 初回生産限定盤:¥1,852(税抜) CD+DVD「10th Anniversary Act#01 JUJU HALL TOUR 2014 ~DOOR~」ダイジェスト DISC 1 1. PLAYBACK 2. Eternally 3. Can't Take My Eyes Off Of You 4. PLAYBACK -Instrumental- DISC 2 「10th Anniversary Act#01 JUJU HALL TOUR 2014 〜DOOR〜」ダイジェスト映像 ただいま 守ってあげたい sign Heart Beat やさしさで溢れるように 通常盤:¥1,165(税抜) DISC 1 1. PLAYBACK 2. Eternally 3. Can't Take My Eyes Off Of You 4. PLAYBACK -Instrumental- http://www.jujunyc.net/

Drop’s・中野ミホが語る、バンドの“今”とこれから 「いい意味で新しいスタートが切れる」

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【リアルサウンドより】  60〜70年代のロック、ブルースなどをルーツにしたバンドサウンド、繊細に揺れる感情を映し出す歌によって注目を集めるDrop’sが、3rdフルアルバム『WINDOW』を完成させた。前作『HELLO』以降にリリースされた2枚のEP(『さらば青春』『未来』)の表題曲を収録、「楽曲の表情がそれぞれに違っていて、変わっていく窓の景色みたいだなって」(中野ミホ/V&G)という本作は、古き良きロックを愛し、それを現代の音楽として体現し続ける彼女たちの“いま”が色彩豊かに表現された作品となった。(森朋之)

「いま自分たちが好きなことをそのままやった」

ーー前作『HELLO』は70年代の日本の歌謡曲のテイストを取り入れるなど、歌を強調した作品でしたが、今回の『WINDOW』はDrop’sのルーツを色濃く感じさせるアルバムですね。 中野ミホ(以下、中野):そうですね。いま自分たちが好きなことをそのままやった、という感じがしています。『HELLO』は自分たちなりのポップというか、外に向いたものを作ったので、次はもうちょっとディープなことをやってみようかなって。もちろん歌も大切なんですけど、そればかり考えていてもつまらないし……。最初から意識していたわけではなくて、曲を作っていくうちに、そういう感じになっていたんですけどね。 ーー「さらば青春」「未来」など既にリリースされていた楽曲も含まれていますが、アルバムの収録曲は『HELLO』以降にできたものが多い? 中野:いろいろですね。「ホテル・カウントダウン」は、前のアルバムを作っていた時期には原型っぽいものがあったし、「ビート」のリフも3rd EP『未来』の頃にはあったと思うので。歌詞はぜんぶ今年に入ってから詰めていったものが多いです。いままでは100%自分の経験をもとにしていたんですが、物語性があるものというか、フィクションみたいに書いたりもしましたね。 ーー作風を広げたかった? 中野:それもあるし、一時期に(集中して)歌詞を書いたから、そんなにたくさん歌いたいこともなくて(笑)。「ホテル・カウントダウン」もひとつの物語を音に当てはめていった感じなんです。情景を思い浮かべながら書くというか。「三月のブルー」もそうですね。 ーー「三月のブルー」のアレンジは、ギターではなく、ピアノが中心ですね。 中野:ピアノで作った曲なんですよ。キャロル・キングみたいな感じでやってみたいなと思って、適当にピアノを弾きながら、自分で“気持ちいい”と思うところを探っていって。好きなように転調しているので、途中からコードネームとかもわからないんですけどね(笑)。いままではほとんどギターで作曲してたから、すごく新鮮でした。
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中野ミホ(Vo、Gu)

ーー確かに70年代のアメリカのポップスの匂いがしますよね、この曲。「ローリン・バンドワゴン」の作曲はギターの荒谷朋美さんとの共作、「moderato」はキーボードの石橋わか乃さんが作曲に参加。中野さん以外のメンバーも曲作りに関わっているのも、ひとつの変化ですよね。 中野:最近少しずつ、他のメンバーが曲を持ってきてくれるようになってるんです。ベースラインとかギターのリフだったりするんですけど、それをもとにして、みんなで構成やアレンジを考えて。私がせっぱつまってると、“こんなのもあるよ”って曲の原型を聴かせてくれたりするんですよね。 ーータイミングを見計らって? 中野:そうかもしれないです(笑)。「moderato」は石橋が歌詞のアイデアも伝えくれたんです。“彼氏とケンカした背の高い女の人が旅に出る”っていう、けっこう具体的なイメージだったんですけど、そういう作り方も楽しかったですね。
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「5人で“いま”の音をうまく形にできた」

ーー「ビート」の「明日 なにを見つめているだろう/絶え間なく 消えて また 生まれる」という歌詞も印象に残りました。 中野:「未来」と同じくらいの時期に書いた歌詞ですね。夜、ひとりで歩いているときにイメージが生まれたんですけど——その頃、インディーズ時代からいっしょにレコーディングしていたエンジニアの方が亡くなったんです。そのことはすごくショックだったし、歌詞の内容も変わったんですよね。
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荒谷朋美(Gu)

ーーそうだったんですね…。いま中野さんは、バンドや自分の“明日”、つまり将来像をどんなふうに描いていますか? 中野:たとえば「未来」で歌っていることはかなり漠然としていて、“10年後、こうなっていたい”という具体的なことというよりも、ふと“未来はどうなんだろうな”って思ってる感じなんですよ。もちろん、良くなっていてほしいなという願いはありますけど…。“ここからが未来です”って線引きがあるわけではなくて、毎日が続いていって、気が付いたら年を取っていたという感じなのかなって(笑)。もちろん音楽はやり続けたいですけどね。歌を歌うのは好きだし、楽しいから。興味があることはいっぱいあるけど、音楽を離れることはないだろうなって。…まあ、わからないですけどね(笑)。ずっと変わっていくんだろうなとも思うので。 ーー好きな音楽も変わらないでしょ? 中野:そうですね。誰かに“いいよ”って教えてもらったり、気になったものも聴くようにしてるから、ちょっとずつ幅は広がってると思うんですけど、1回好きになるとずっと同じものを聴いちゃうんですよ。“夜だったらコレ”みたいに何となく決まってたり。 ーーちなみに最近、夜はどんな音楽を聴いてるんですか? 中野:トム・ウェイツとか。あとはニール・ヤングとか、ボブ・ディランの新しいアルバムもよく聴いてますね。『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』というタイトルなんですけど、ずっとオフビートな感じで、夜に聴くとすごくいいんですよ。 ーー相変わらず渋いリスナーですね〜。そういう音楽からの影響をDrop'sの作品として表現するためのスキルもさらに向上してるんじゃないですか? 中野:古い音楽は好きですけど、真似しても同じにはならないし、“いま”の感じで鳴らしたほうがいいですからね。プロデューサーやギターテックの方、エンジニアの方もやっぱり古い音楽が好きだし、そういう音に近づくこともあるんですけど、ときどきこちらから“ギターはもう少し新しい感じの音でお願いします”みたいなこと言うこともあるんですよ。私もぜんぜん詳しくないから、偉そうなことは言えないんですけどね。でも、今回のアルバムは5人で“いま”の音をうまく形にできたんじゃないかなって。 ーーライブに対するスタンスについてはどうですか? 中野:少しずつ楽しめるようになってきたかもしれないですね。お客さんといっしょにシンガロングできるような曲とかも作って、コール&レスポンスする場面もあったり。
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小田満美子(Ba)

ーー今回のアルバムでいうと1曲目の「NANANA FLAG」がそうですね。 中野:そうですね。いっしょに歌えたりするとお客さんも楽しそうだし、そうするとこっちも上がるし。あんまり煽ったりはしないんですけどね、私は。 ーーあえて煽らないんですか? 中野:苦手っていうのもありますね。やれば盛り上がるんだろうけど、そういうことをやる気にならない(笑)。まずは自分らが好き勝手に楽しんで、それを見て楽しんでもらえるのがいちばんいいかなって。もちろん、メンバー各々“魅せる演奏”というのも考えているんですけど、淡々と演奏するだけっていうのもカッコいいかなって。

「基本的には自分たちがいちばん楽しんでる」

ーーDrop'sにはそういうスタイルが似合うかもしれないですね。アルバムの最後に収録されている「ベリーグッドモーニング」についても聞かせてください。すごく開放的なバイブレーションを感じさせる曲ですよね。 中野:鼻歌のメロディから作った曲なんですけど、最初から能天気というか、明るい雰囲気があったんですよね。これをバンドでやったら、カラッと風通しがいい、気持ちいい曲になるだろうなって。歌詞は、散歩したり、車で走ってるときに見える景色だったり、1日が始まる感じを想像しながら書きました。
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石橋わか乃(Key)

ーー「輝く東京」というフレーズもありますが、東京という街に対してはどんな印象を持ってるんですか? 中野:すごい好きですね。降りる駅によってぜんぜん印象が違うし、そこにいる人も違うじゃないですか。昼と夜で表情が違ったりもするし、ぜんぜん飽きないです。まだまだ知らない景色が詰まってるんだろうなって。 ーー特に好きな街は? 中野:古い喫茶店が好きだから、神保町とか。この前、初めてひとりで銀座に行ったんですけど、感動しましたね。 ーー昔ながらの喫茶店が残ってますからね。 中野:そうなんですよね。パイプ吸ってるおじさんとかがいて、“こういう街があるんだな”って。 ーー音楽もそうですけど、“古き良きもの”に興味があるんでしょうね。 中野:うん、そういうものには惹かれますね。古着も好きだし、レコードも好きだし。そういうところはずっと変わらないですね。
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奥山レイカ(Dr)

ーー最後にこの後の展望について。アルバムを3枚作ったことで、ひと区切りついた感じもあると思うのですが、次の作品のビジョンは持ってますか? 中野:いや、あんまりないですね。これまでも“こういう作品を作ろう”と思って作り始めたことはないし、それは今回の『WINDOW』も同じなんですよ。自然にできた曲を集めて、アルバムにして……というのが続いていくんじゃないかなって。ただ、ひと区切り感は確かにあるんですよ。『WINDOW』を作ったことで、とりあえず出し尽くしたところもあるし、いい意味で新しいスタートが切れるんじゃないかなって。アコギを使ったり、フォークっぽい曲もやってみたいし。“こういう曲をやってみたいんだけど”ってメンバーに話して、それをみんなで形にして“いいじゃん!”って言って。そういうことが楽しんですよね、やっぱり。 ーー純粋に音楽とバンドが好きなんですね、ホントに。 中野:そうですね。基本的には自分たちがいちばん楽しんでるというか(笑)。これからも無理せず——まあ、少しは無理したほうがいいのかもしれないけど——続けていきたいと思います。 (取材・文=森朋之)
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Drop's『WINDOW』(STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS)

■リリース情報 『WINDOW』 発売:7月22日 『WINDOW』CD & アナログLP盤同時発売 《CD+DVD》 ¥2,963(税抜) 〈CD〉「未来」「さらば青春」含む 全11曲収録   〈DVD〉MUSIC VIDEO「未来」「さらば青春」 + 2015年3月27日に東京キネマ倶楽部で行われたライブ映像 《数量限定アナログLP盤》 ¥4,167(税抜) 〈LP〉「未来」「さらば青春」含む 全11曲収録 ※見開きダブルジャケット仕様 アナログLP 180g重量盤 ※アナログLP盤にはMUSIC VIDEO等は同梱なし。 ※キングレコードの通販サイトKING e-SHOP内「Drop's GOODS SHOP」のみの限定販売。 ■ライブ情報 『3rd FULL ALBUM「WINDOW」発売記念インストアライブツアー』 中野ミホ(Vo.&Gt.)によるインストアライブ&サイン会を実施 【札幌】7月21日(火)18:30~ タワーレコード札幌ピヴォ店  【仙台】7月25日(土)13:00~ タワーレコード仙台パルコ店  【東京】7月25日(土)20:00~ タワーレコード渋谷店     【東京】7月26日(日)21:30~ ディスクユニオン下北沢店   【名古屋】7月29日(水)19:00~ タワーレコード名古屋パルコ店  【福岡】8月22日(土)14:00~ タワーレコード福岡パルコ店  【大阪】8月23日(日)14:00~ タワーレコード梅田NU茶屋町店 ※すべての公演、中野ミホ(Vo.&Gt.)のみの出演。 『Drop's ONEMAN TOUR 2015「View from WINDOW 」』 9月20日(日) 名古屋CLUB UPSET 9月22日(火・祝) 渋谷CLUB QUATTRO 9月26日(土) 札幌BESSIE HALL http://drops-official.com/

GLIM SPANKYが見据える、世界進出の見取り図「『こういう音もメジャーになれる』ということを証明したい」

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【リアルサウンドより】  GLIM SPANKYが、7月22日に1stフルアルバム『SUNRISE JOURNEY』をリリースする。これまでヘビーなロックサウンドとパワフルな歌声で突き進んできたGLIM SPANKYにとって転換点となる、「褒めろよ」や「リアル鬼ごっこ」「サンライズジャーニー」といった間口の広い楽曲をはじめ、バラエティに富んだロックナンバーが多数収録されている一作といえる。今回のインタビューには、松尾レミと亀本寛貴の2人が登場。GLIM SPANKYのルーツや制作手法、松尾のボーカリストとしての歩みや亀本がレコーディングで得たもの、そして活動の先に見据える大きな野望について、大いに語った。

「日本語で世界のロックに挑戦して、ワールドワイドでメジャーなものになっていきたい」(松尾)

――GLIM SPANKYが『閃光ライオット』に出演した際は、4人組のバンドでしたよね。どのように形を変えて今の2人になったのでしょうか? 松尾レミ(以下、松尾):元々4人で結成したのは、高校に入学してすぐ、文化祭でコピーバンドをするためでした。なので、文化祭が終わった段階でギターとベースのメンバーが抜けたのですが、また同じパートをやっている亀本を含む先輩2人が加入して。この時の4人で『閃光ライオット』に出演しました。そこからメンバー脱退を経て、亀本が残り今の形になりました。 ――その頃からずっと松尾さんがソングライティングを手掛けていたそうですが、2人はそれぞれどんな音楽に影響を受けたのでしょうか。 松尾:私は父がアートの個展を開いたりするような人で、家では常に音楽が流れていました。小さい頃はミュージシャンの方や詩を書いている人に会わせてもらうなど、幅広いカルチャーに触れていくなかで、音楽に興味を持ちました。音楽も海外のスタンダードなロックのほかに、フランス音楽やアフリカン・ロック、60年代アングラフォークに渋谷系など、分け隔てなく流れるような自宅だったんです。そのなかでも特に好きだったのがビートルズで。中学生の時から私はガサついた声だったので、合唱曲で高い声を歌えないことをコンプレックスに思っていたのですが、ビートルズの「Help!」を聴いたとき、ジョン・レノンの声がガサついているのにカッコよかったことに衝撃を受け、声の使い方や「自分の声はこういうジャンルで発揮できるかも」と気付けたんです。 亀本寛貴(以下、亀本):僕が最初に楽器を持ったきっかけは、小学校低学年くらいの時に母が録画していたドラマの主題歌にGLAYが起用されていたことです。その後も中学校・高校と気持ちが続くのですが、高校生の時にバンドをやりたいと思い、TSUTAYAで片っ端から洋楽のCDを借りました。ニルヴァーナ、ガンズ・アンド・ローゼズ、オアシスと、時代で区切らないようにしながら音楽を聴いていると、次第にジミ・ヘンドリックスやクリームのCDを貸してくれる友人もできて。実際に60年代や70年代のロックを聴いて、練習したり、大学のサークルで演奏するようになってから、今の音楽的なアプローチに近づいてきました。 ――亀本さんは、松尾さんと組むにあたって、彼女の音楽性に寄せられた部分もあった? 亀本:最初はレミさんが聴く音楽に対して「そういうの興味ない」ってずっと言ってたんですけど…。高校生の頃には「ビートルズも聴け、歴史を辿れ!」と電話で口論になったこともありました(笑)。幸いにもアーカイブはレミさんの家に資料館レベルであったので、その後はしっかりと活用させてもらいました。ただ、リアルタイムで更新されているものは、自分でアンテナを張っていないと逃してしまうので、その感覚も重要視しています。大学生になってからは、海外のインディーミュージシャンが配信している演奏動画を観たりしていました。 松尾:そんな彼と常に一緒にバンド活動をしているので、新しい音楽を見つけたら、逐一情報共有していたんです。だからどちらかがどちらかに寄せられた、影響されたというよりは、“互いに成長していった”というほうが正しいのかもしれません。アートやファッションも感覚的に常に共有することによって、音にも「この曲は何色でこういうイメージ」と言ってもポンと返してくれるコミュニケーションができるので重要だと思っていますし、だからこそ色んな物を共有しています。 ――亀本さんは松尾さんの世界観をどういうふうに汲みとっていますか。 亀本:レミさんが「こんな感じの世界観だから、こうしてくれ」と指示して動くだけなら、もっとうまい人はたくさんいると思います。だからこそ、曲の雰囲気や世界観を自分がどう感じるかを自分なりに表現するし、色んなものを共有しつつ、一人の別の感覚を持った人間として、プラスアルファのエッセンスを出せるように心掛けています。 ――洋楽をルーツに持っている2人が、なぜあえて日本語ロックをやろうと思ったのでしょうか? 松尾:「日本人なので日本語で表現したい」という思いと、自分たちの音楽を世界に発信するにあたって、洋楽が好きだからってそっち寄りにしてしまったとき、私なら「じゃあ元々向こうで出てきている海外アーティストを聴くよ」って思うんです。だから海外の人に出来ないこと、つまり日本のエッセンスを打ち出していかなければいけないし、そのうえで、世界に通用するロックサウンドやワールドワイドなリズム、今の日本で流行しているものと関係ない文脈を合体させるようにはしています。 ――では将来的には世界へ進出することも視野に入れている? 松尾:一番大きいことを掲げると、日本語で世界のロックに挑戦して、ワールドワイドでメジャーなものになっていきたいです。たとえば欧州では日本のビジュアル系が流行ったり、クールジャパン的なものが盛り上がっていますが、それは局地的なものだったりするわけで。もちろんそれはいいことなのですが、本当の意味で世界的なブレイクをしたい。でも、それを成し遂げるためには、まず日本を制することが先だと思うので、今のポップシーンにはないヘビーなサウンドで、「こういう音もメジャーになれるんだぜ」ということを証明したいです。

「ブルースやブラックミュージックのリズムが『ノレる』ものだと思っていました」(亀本)

――あえてヘビーなサウンドにしているということですが、曲作りの際に、決まっている制作手法は? 松尾:私が歌詞と短い弾き語りデモを作って、亀本と一緒にブラッシュアップしていきます。あとはギターコードだけ、たとえば「#D、#A、#C」というコードを出して、私は勝手に曲を作り、亀本はリフを考えて、お互いに出来たところで合体させるという方法もありますね。 ――その二つの手法はどう使い分けているのでしょうか。 亀本:メジャーに入ってからは、後者の方が多くなったかもしれません。時間制限のあるなかで同時進行していって、歌がある程度形になってきたら、自分の中で「こんな歌なんだろうな」と想像で作っていたものと照らし合わせて、色付けをしていくんです。そこから何度かやり取りしながらオケを構築し、次の曲を作り始めて…という流れが出来上がっていますね。歌詞も後でどんどん変わっていく場合があります。 ――デビューミニアルバムの表題曲「焦燥」は、松尾さんが高校生の時に書いた楽曲ですが、改めてアルバムに収録されるにあたって、この曲をどう見つめ直したのですか? 松尾:この曲を作ったとき、私は美術系の大学を志望していました。でも、地元がとても田舎だったので、そんなことを言う人はいなくて。たまたま生徒会をやっていたので、街の役員さんや地元企業の社長さんと交流する機会があって、そこで自分の夢を語ることになりました。美術の話もしない田舎で「音楽で食べていく」とは言えなかったので「美術の大学に入って…」と伝えたのですが、ドッ、と笑いが起きて。その中には子供を育てる側の人間――会社のお偉いさんや小学校の先生、図書館の司書さんもいたのに、そんな人たちが若者の夢を笑うなんて、許せないと思いました。世の中には絵や音楽でご飯を食べている人が当たり前にいるのに、なんて失礼なことだと。だから「こういう心を閉ざした大人たちに届く曲を書かなければ」という気持ちで書いたのが「焦燥」で、そのメッセージ性の根幹は当時とは変わらないです。ただ、サウンドやアレンジ面はどうしても高校生の書いたものなので、今発表するにあたって、大幅に変えました。だから一度弾き語りベースのところまで壊して、プロデューサーのいしわたり淳治さんと一緒にリアレンジしました。 亀本:デビューミニアルバムの中で、淳治さんには「MIDNIGHT CIRCUS」と「焦燥」をプロデュースしていただいたのですが、「こんな風になっちゃうんだ」とか「バンドのアレンジってこういうことができるのか」と勉強させていただく機会がたくさんありました。しかも、淳治さんは無理矢理引っ張って行くタイプでもなく、僕らから何かが出てくるまでずっと付きっ切りで一緒にいてくれるので、部活の居残り練習みたいな感じで大変でしたが、その分良いものは生み出せたと思います。 ――それ以外にも、亀田誠治さんや、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)さん、BOBOさんなど、一流の手練たちを迎えて制作を行いましたが、彼らとのセッションで得たものは? 松尾:亀田さんと一緒にやって思ったのは、「あれだけ活躍されている有名人が、自分たちよりもロックキッズなんだ」ということ。だから変に細かくアレンジして元のものを壊したりせず、ピンポイントで少しキャッチーにしてくれるんです。それを見ていて「ここを変えればキャッチーになるんだ」というポイントを学べましたし、いつまで経ってもそういう人でいたいなと思えるようになりました。 亀本:あと、いくら雑誌に「○○さんは上手い」って書いてあっても、なかなか人間って体感しないとわかりませんよね。その技術や基準を体感値で経験できたのは、自分の成長にすごく繋がったと思います。 ――アルバムにはインディーズ時代からのロックナンバーのほかに、ポップな楽曲も多く収録されています。GLIM SPANKYという枠組みのなかで、“ロックさ”“ポップさ”をどう見せていこうとしているのでしょうか。 松尾:全て“ロック”という枠組みの中で、ポップスやフォーク、カントリーをやっている感覚ですね。インディーズの頃はずっと、重い曲をズドーンと表現したかったので、ノレる曲にまったく興味はありませんでした。でも、世間に自分たちの楽曲を出していくなかで、テンポの早いほうが人の心を掴める部分があるのかなと思ったり、「褒めろよ」でドラマの主題歌を書き下ろすにあたって、題材の『太鼓持ちの達人』が面白いものだったので、今までの自分の重くて暗い引き出し以外のところで楽曲を作りたいと思いました。 亀本:以前から「ノレる曲があるといいよね」ということはよく言われていたのですが、僕個人としてはブルースやブラックミュージックのリズムが「ノレる」ものだと思っていましたし、ジミ・ヘンドリックスの「ブードゥー・チャイルド」をノレる曲として捉えていたので、インディー時代の曲に対しても「この曲がダメなの?」と疑問に思っていました。でも、メジャーの舞台で色んなイベントに参加して、イケてるバンドたちの演奏と観客の反応を見て「あ、これが“ノる”ということか、これぐらい張り切る感じか」と実感しました。 ――松尾さんはメジャーデビュー以降、アナログフィッシュのゲストボーカルや、CMソングへの起用など、ボーカリストとしてGLIM SPANKY以外でも活躍していますね。これらの経験は自分たちの音楽観に影響を及ぼしましたか? 松尾:ボーカリストとしての変化は、ただ思ったように歌っているだけなので、特に無いかもしれません。ただ、人の曲を歌うのは初めての経験だったので、もちろん感覚的には違う部分はありましたが。自分の曲としてカッコイイ歌を歌うことと、人の曲をカッコよく歌うという感覚は同じなので、思うがままに歌っています。 ――では、アルバム自体も歌が前に出ているように感じたのですが、あえてディレクションしたというよりは、松尾さんの歌が強いからこうなったということなのでしょうか。 松尾:もちろん歌を伝えたいので、歌詞が届くものにしたいという気持ちで作っているからだと思うのですが、亀本も「焦燥」や「踊りに行こうぜ」、「MIDNIGHT CIRCUS」では、歌の後ろでガンガンギターリフを弾いているんです。でも、私も「どんな音が入ってこようと、私の歌は潰れてたまるか」と思って歌っているので(笑)、たぶんきっとそのせいなのでしょうね。 亀本:純粋に声に存在感があるのかなと感じています。だから思いっきり弾いても大丈夫ということですね。

「良い意味で“そんなに変わらない”という部分をちゃんと持っていたい」(亀本)

――たとえば、タイアップなどの楽曲にはテーマがあるわけですが、2人があらかじめ主題が決まっているものを書くというのはメジャーに足を踏み入れてからのことだと思います。アウトプットする引き出しも違うと思いますが、どういう感覚でしょうか? 松尾:普通に曲を書く時は、日常的に思っていた怒りや幸せをそのまま書いていますが、逆に決められた中でどれだけ自分のオリジナリティを出せるか、という勝負も楽しくて。だからあまり大変とか窮屈に思うことはなく、素直に自分が思ったことを出せているという感覚です。 亀本:僕は制約の付いたもののほうがやりやすい。自分で作る時も、結果的に制約を決めて基準を定めるようにしているので、そのラインを自分で作るか、もしくは元からあるかという違いだけですね。自分たちが踏み出せなかった音楽性の幅を拡張させてくれたのは、「褒めろよ」「リアル鬼ごっこ」のおかげですし、もっと形の決まったものにも挑戦してみたいと思っています。 松尾:そうですね、この2曲を通して、2人がより成長したという実感はあります。 ――タイトルトラックの「サンライズジャーニー」は、GLIM SPANKYのなかでも突出してポップな曲であり、強いメッセージの込められているものに感じました。 松尾:曲を書いたのは2014年の4月くらいで、メジャーデビュー前に『焦燥』や『大人になったら』をレコーディングしていたときでした。今までずっと、ライブハウスでお客さん一人二人の中でやり続けていた時は、自分の目の前をバスが通り過ぎていった感覚で。バスというのは大人や事務所の人の比喩なのですが、友達のバンドがどんどんデビューしていき、バスが通り過ぎていったけど、自分の乗るべきバスは来なかった。そしてやっと来た自分たちのためのバスが、今までにないくらい最高にかっこよくて、広くて、人数を詰め込められる車で。だからこのバスに乗って、お客さんやすべての人を乗せて一緒に旅に出ようという思いを込めた曲です。いまのGLIM SPANKYを表現するにはうってつけの曲だし、だからこそこの曲をアルバムのタイトルにしました。 ――気負いとワクワク感が同居している素晴らしい曲ですね。亀本さんから見て、松尾さんはここ数年でどのように変化しましたか。 亀本:歌詞にしろメロディにしろ、昔は抽象的な表現が多かった。でも、最近はメッセージや感情が次第に研ぎ澄まされたものになっていますし、景色を描写したものでも、伝わり方の速度が全く違うものになっていると感じていました。 松尾:「焦燥」を書いた時は、伝えたいことはわかっていても、どこから伝えていいか、どこに焦点を当てていいのかが分からなかったのかもしれません。でも、今は同じ感情を持っていても、どこに焦点を当てて書くべきか、ということが明確になっていったから、風景も細かい描写を書けるようになったし、もっとシンプルに伝わりやすいものが出来上がっているのかなと思います。 亀本:レミさんの曲で昔から一貫して良いなと思うのは、歌詞とメロディっていうものが同時に出来上がっていて、一心同体なところ。この言葉を伝えるにはこのメロディがベストという必然性を感じるんです。 松尾:歌詞とメロディが、一緒に頭の中から降りてくるので、そういう風に聴こえるんでしょうね。あとで見返して、「わかりづらいな」と思う部分は後で違う言葉に書き直しますが、基本的には歌詞もメロディも無いと作れないです。 ――これから2人は音楽シーンの中で、GLIM SPANKYらしさを持ちながら活動していくわけですが、この後はどう変化し、リスナーにどういった影響を与えていきたいですか。 亀本:今までワンマンライブを2回やって、次の場所も決まっていてと、爆発的なブレイクではないですが、緩やかな右肩上がりで進んでいる実感があります。だから今後の活動も順調に行けばいいなと思っていますし、アルバムを出しても次のアルバムに向けて一歩一歩やっていくというだけ。良い意味で“そんなに変わらない”という部分をちゃんと持っていたいですね。 (取材・文=中村拓海) ■リリース情報 『SUNRISE JOURNEY』 発売:7月22日(水) 価格:¥2,500+税 <収録曲> 1.焦燥(メジャーデビュー曲) 2.サンライズジャーニー(テレビ東京系『Crossroad』エンディングテーマ) 3.褒めろよ(1st シングル表題曲)(テレビ東京系深夜ドラマ『太鼓持ちの達人 ~正しい××のほめ方~』主題歌) 4.MIDNIGHT CIRCUS 5.踊りに行こうぜ 6.夜が明けたら 7.さよなら僕の町 8.WONDER ALONE(TVアニメ『秘密結社 鷹の爪 DO(ドゥー)』エンディングテーマ) 9.ロルカ 10.大人になったら(アルバム先行配信シングル)  11.リアル鬼ごっこ(映画『リアル鬼ごっこ』イメージソング(7月11日公開)) (iTunes他バンドル盤一斉配信、ハイレゾ配信は7月29日予定) ■ライブ情報 『SUNRISE JOURNEY TOUR 2015』 日程:9月18日 場所:仙台LIVE HOUSE enn 2nd 日程:9月21日 場所:札幌COLONY 日程:9月23日 場所:京都磔磔 日程:9月24日 場所:高松TOONICE 日程:9月26日 場所:広島CAVE-BE 日程:9月27日 場所:福岡graf 日程:10月4日 場所:梅田シャングリラ(ワンマン) 日程:10月11日 場所:名古屋CLUB UPSET(ワンマン) 日程:10月17日 場所:赤坂BLITZ(ワンマン) ■関連リンク GLIM SPANKYオフィシャルHP ユニバーサルミュージック オフィシャルHP GLIM SPANKY twitter GLIM SPANKY 松尾レミ twitter GLIM SPANKY 亀本寛貴 twitter