ジョニー・デップ主演『ブラック・スキャンダル』への期待 犯罪者の人生をどう描く?

【リアルサウンドより】  9月2日(現地時間)より、イタリアはヴェネチアの地で始まった、第72回ヴェネチア国際映画祭。『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞を獲得したエディ・レッドメインが、歴史上初の性転換者と言われているデンマーク人男性を演じた『The Danish Girl(原題)』など、今回のヴェネチアで初披露となる作品の評判が続々と入ってくるなか、とりわけ惜しみない賛辞が聞こえてくるのは、ジョニー・デップ主演の映画『ブラック・スキャンダル』である。  薄毛のオールバックにサングラス、そして革ジャンという、パッと見、ジョニー・デップとは分からないビジュアルが先行した『ブラック・スキャンダル』。この映画で彼が演じているのは、FBI史上最高額の懸賞金が掛けられた、実在する裏社会の首領、ジェイムズ・“ホワイティ”・バルジャーだ。1970年代のボストン、FBIとの密約によって強靭な権力を得た彼は、やがて冷酷無比な犯罪者となり、当局から指名手配される……。  マフィアのもとに潜入したFBI捜査官を演じた『フェイク』(1997年)、1970年代に暗躍した伝説のドラッグ・ディーラーを演じた『ブロウ』(2001年)、そして大恐慌時代の大犯罪者、ジョン・デリンジャーを演じた『パブリック・エネミーズ』(2009年)など、これまでも周期的に実在の人物を演じてきたジョニー・デップ。しかし、早くも来年のアカデミー賞主演男優候補のひとりと目されている本作のジョニー・デップは、さらに一味違うようだ。そこには、彼の脇を固める共演者たち――ホワイティの弟であり州上院議員でもある人物を演じるベネディクト・カンバーバッチ、ホワイティの腹心を演じるケビン・ベーコン、そして彼に密約を持ちかけるFBI捜査官を演じるジョエル・エドガートンの存在もあるのだろう。  しかし、そんなジョニー・デップの演技への期待もさることながら、ここで注目したいのは、この映画の監督が、アメリカの俊英、スコット・クーパーであるということだ。初の長編監督作『クレージー・ハート』(2009年)で、見事ジェフ・ブリッジスにアカデミー賞主演男優賞をもたらせ、『ファーナス/訣別の朝』(2013年)では、クリスチャン・ベールの新たな一面を引き出してみせたスコット・クーパー。1970年生まれの45歳――監督としては、まだまだ若手の部類でありながら、人生を背負った“いぶし銀の男たち”が繰り広げる、重厚な人間ドラマを詩的に描くことに卓越した手腕をみせる彼は、実在の犯罪者の人生を、どのように描き出してゆくのだろうか。  さらに、もうひとつ言っておきたいのは、これまで日本における彼の映画の扱いは、必ずしも良いものではなかったということだ。アカデミー賞受賞作でありながら、主人公がカントリー・ミュージシャンであるということで、ほとんど注目されることのなかった『クレージー・ハート』。そして、驚くほど小さな上映規模で、ひっそりと公開された『ファーナス/訣別の朝』。そんな彼の映画をめぐるもどかしい日本の現状は、日本でも人気の大スター、ジョニー・デップを擁する本作で、果たして覆るのだろうか。ヴェネチア国際映画祭における賞の行方はもちろん、スコット・クーパーによる男たちの秀逸な人間ドラマを日本で観ることのできる日が、今から楽しみでしょうがない。  『ブラック・スキャンダル』は、2016年1月30日より全国ロードショー。 (文=編集部)

マキタスポーツ、“エロのインフレ”が起きていた『みんな! エスパーだよ!』の現場を振り返る

【リアルサウンドより】  先週末公開された『映画 みんな! エスパーだよ!』。リアルサウンド映画部では、先日公開した園子温監督へのインタビューに続いて、本作における「極めつけの変態」永野輝光役を演じたマキタスポーツにも単独取材を敢行した。(参考:園子温が語る、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に負けない日本映画の戦い方)  マキタスポーツが永野役を演じるのは、テレビシリーズ以来2年ぶり。その間にも、園子温監督作品では『ラブ&ピース』にも出演。今や日本映画に欠かせないバイプレイヤーとしての地位を固めつつあるマキタスポーツだが、そんな本格的な役者としてのキャリアの原点には、2年前に初めて園子温の撮影現場で受けた洗礼があったという。今回の取材では、園子温監督への共感、園子温作品と(言うまでもなくマキタスポーツにとって芸人としての師匠でもある)北野武作品との違いについて、そして、近いうちに実現したいと本気で考えている監督業への野心まで、本音だけを大いに語ってくれた。(宇野維正)

「園子温作品はホームに戻ってきたような感じ」

——ドラマ版に続いて、今回の『映画 みんな!エスパーだよ!』でも永野輝光という、かなりバカとエロに振り切ったキャラクターを演じられていて。最近はシリアスな役を演じられることも増えていますが、久々にあの作品の世界に戻ってみて、いかがでしたか? マキタスポーツ:それ以前もちょこちょこやってはいましたけど、2年前のドラマ『みんな!エスパーだよ!』は役者としてのキャリアが本格的に始まったばかりのタイミングの作品で、非常に衝撃的な体験だったんですね。鈍器で頭をぶん殴られたような。あの作品で高地トレーニングを積んでいるので、他のどんな現場に行っても、どんな役がこようが、平気というか(笑)。ちょっとおかしなオジサンみたいな役はいろいろやってきましたけど、あの役は前代未聞の変態ぶりなんで。ちょっと、ホームに戻ってきたような感じがありますよね。 ——2年のブランクも、ものともせず? マキタスポーツ:それが2年の間に自分もちょっと真人間になったみたいで、どうしても最初はリミッターがかかってるような感じがあったんですよ。だから「いけない! いけない!」と。あの役は完全にリミッターを外して、ボケきらないとダメだから。 ——これは自分もマキタさんと同世代だから思うんですけど、年齢的に性欲のカタマリってキャラクターを演じるのはキツくなってきてませんか?(笑) マキタスポーツ:そう。年相応に枯れてきてるんでね。でも、「それを取り戻すためにも!」ってものでもなくて、ちょっと歌舞伎の型みたいな感じになってきてますね。早くも自己模倣の段階に入ってきている。性欲に関して言うなら、もう1年1年、実にリアルになくなってきてますから(笑)。いつだってギンギンだぜとか、嘘ですから(笑)。もともと僕は、この輝光って役をもっとダンディに演じるつもりだったんですよ。でも、テレビドラマの時、園さんに「もっと動物みたいに、もっとケダモノみたいにやってくれ」って言われて。それってもう、精神的に犯されたみたいなもので(笑)。でも、それが園さんの演出方法で、女優さんに対してもそうなんでしょうけど、僕も男ですが園さんに精神的に犯されたような気持ちでした。きっとそこから、あの園さんの作品独特のエロスが生まれるんでしょうね。 ——くだらない質問で恐縮ですけど、現場にあれだけ水着の女の子や下着の女の子がいて、普通にムラムラしたりはしないんですか? マキタスポーツ:それが、まったくしないんですよ。きっとそれは歳とかとは関係なく、あの作品の現場ではエロのインフレが起きているんですよ。 ——エロのインフレ(笑)。 マキタスポーツ:麻痺しちゃって、どんどん無になっていく。水着の女の子がゲシュタルト崩壊していくような感じ(笑)。園さんの現場は日常を引きずって入っていったらダメなんですよね。そこで、ちゃんとスイッチを入れたり切ったりする必要がある。 ——園子温作品には、『みんな!エスパーだよ!』のドラマと今回の映画の間に、『ラブ&ピース』にも出演していますよね。お二人とも40代になってからブレイクをしたというところに、つい共通点を見出してしまうのですが。 マキタスポーツ:園さんは、よく挫けずにやってきた人なんだなぁって思いますね。ずっと我を通してきて、それをちゃんと通しきったって。きっとご本人はまだ「通しきった」なんて思ってなくて、そういう点でもすごく見習いたいと思うんですよ。僕も、いろんなところからお仕事をもらうようになって、だんだん自信を得ていったり、人からも信用を得ていくことへの喜びもあったりするんですけど、根本的なところでは変わってないぞって思っていて。だから、自分のやりたいことを通し続けているという点で、すごく共感を覚えますね。 ——なるほど。 マキタスポーツ:僕は(北野)武さんのことが大好きで、武さんの影響をものすごく受けていて、武さんの映画も大好きで、今は武さんの事務所にいるわけですけど、園さんのおもしろいところは、武さんの影響下に全然いないところなんですね。映画の作り方も全然違う、独自の文法を持っていて。武さんの表現って、ホモソーシャルなところがあるじゃないですか? ——そうですね、まさに。 マキタスポーツ:でも、園さんは女の人を綺麗に、エロく見せるところにすごくこだわりがあって。あと、武さんって、今はまた少しずつ変わってきてるようにも思うんですけど、基本、役者に期待していないじゃないですか。でも、園さんは役者に期待をしていて。それに、いい意味でいまだにアングラ臭をもっている。園さんと一緒に仕事をしていて思うのは、自分がもともと好きだったものを、ずっと抱え続けていてもいいんだってことですね。役者の仕事をしていく中で、園さんの現場で初めて「撮影っておもしろいな」って思ったんですよ。園さんって、ものすごくライブ感をもって現場を回していく方で。みんな現場では園さんの感覚、情緒に合わせて、そのライブ感についていく感じなんですね。すごくセッション的な場というか。音楽もやっている人間としては、「あ、そういうことでもいいんだ」って思えて。だから、役者の仕事だけじゃなくて、音楽の仕事でレコーディングやライブをやる時にも、園さんの現場のあの感覚というのは、ものすごく役に立ってますね。

「一番おもしろいのは監督だろうなって、現場でいつも痛感する」

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——マキタさんは、日本の音楽シーン、主にいわゆるJポップに対して、これまで非常に批評的なスタンスでご自身のネタにしてきたし、本も書かれてきました。そんなマキタさんにとって、日本映画の世界というのがどのように見えているのかってことにすごく興味があるんですけど。 マキタスポーツ:うーん、日本映画に関しては、もはや自分はその外部からというより、出ている立場からしか言えないんですけど。やっぱり映画って興行じゃないですか。今、シネコンに映画を観にきてくれるお客さんのリテラシーを踏まえて語らないと、あまり意味がないかなって思うんですよね。もちろん、そうじゃない芸術性の高い作品もあっていいし、そういう作品の場所がだんだん狭くなっていることの問題というのもあるんですけど。ただ、まずは興行なので、「売れないとしょうがないな」という思いは、その内部にいる一人の実感としてありますね。ショッピングモールのシネコンで映画を観て、観終わった後にそこのフードコートでその映画について若い子たちがワイワイ喋り合う。そういう子たちにどう響くかってことが、やっぱり重要なんだなって。そういうゾーンにある作品に関わっていたいし、そういう作品をちょっとでもおもしろいものにしたいっていうのが、今の気分ですね。 ——山下敦弘監督の『苦役列車』(2012年)で新人賞を複数受賞するなどした後、きっと方向性としては、渋い役を選んでやっていく方向性もあったと勝手に思っていたんですけど、今の話を聞いて納得しました。 マキタスポーツ:うん。やっぱり映画に対しては、Jポップを構造分析したりするっていうのとは、自分の感じ方、関わり方が全然違っていたので。もっと純粋なファン目線だったっていうか。正直、数年前まで、まさかこんなに役者の仕事をすることになるなんて思っていなかったから。なんとなく、ヌルヌルとその世界に入っていって、それなりに評価もいただいて、気がついたら映画を作る側の視点で周りを見渡すようにもなっていて。映画を撮影している現場だけじゃなくて、こうして宣伝部が動いて取材を受けたりすることも含めて、作品がお客さんに届いていく流れを体験しながらおもしろいなって思うんですよね。今の自分の映画に対するスタンスとしては、作品を選ぶとかではなくて、「縁」で動いているところがあって。映画ってものすごく「縁」で成り立っている世界だから、その中に入って、いろいろ吸収していきたいって思ってますね。信用されて、お願いされたら、それに100%で応えますっていう。世の中的には「またベタなことをやって」って誹りもあるかもしれないですけど、そんなの本当にごく一部のことですから。それよりも「いっぱいお客さんが入る映画ってどういうものなんだろう?」ってことを、内側から見ていくことの方がおもしろいし、そういう作品を少しでもよりおもしろいものにできたらってことを考えてます。 ——音楽では、今や実演家としてバンドを組んでフェスに出たりもしているわけですが、いつか映画もご自身で撮ってみたいという思いは? マキタスポーツ:あります。完全にそのつもりでいろいろ考えてます。 ——あぁ、やっぱりそうなんですね。 マキタスポーツ:やっぱり役者って映画の中の一部でしかないですから。映画は監督のものだって、僕は認識してますから。だったら、一番おもしろいのは監督だろうなって。それは現場に入っていつも痛感することだし。監督って、作品を作ってる時は全然寝てなかったりするのに、それでも目は輝いてますから。それって、よっぽどおもしろいってことじゃないですか。そういう姿を目の当たりにすると、いつか自分も監督をやってみたいなって思いますよね。 ——その場合、シリアスの方向、コメディの方向、どっちなんでしょう? マキタスポーツ:両方やってみたいですけど、どっちがおっかないかって言ったらコメディですよね。自分の本職でもあるし、コメディ映画でお客さんを集めるのって本当に大変だと思うから。コメディだけじゃなくて、他にいろいろオプションがないと。 ——『みんな!エスパーだよ!』でいうなら、原作とドラマの知名度、園監督のネームバリュー、活きのいい役者陣、エロ、といったところですよね。 マキタスポーツ:そうそう。いきなりそんなものを作るっていうのは、実績もなにもない自分には難しいから。自分の撮りたいものを撮るというところから始めるしかないと思ってますけど、将来的にはいろんな夢がありますよ。もしちゃんと実績を積んでいくことができたら、それこそ武さんが『座頭市』でやったように、いつか古典と言われるものに自分のやり方で挑んでみたくて。 ——古典ですか! へぇー! マキタスポーツ:最近、これはどんなジャンルでも思うんですけど、自分はよく自作自演の限界について考えていて。音楽にカバーがあるように、映画にももっとカバーがあっていいんじゃないかって。カバーって解釈じゃないですか。芸って、その解釈のところに出ると思うんですよね。僕は芸が好きなので。自作自演で、全部オリジナルでやることって、本来は誰もが許されているようなことじゃないのに、今の世の中には自分を表現できるようなツールが溢れていて、表現に対する欲求ばかりが高まっていて、結局みんなそれをどう表現していいかわからないみたいなことになっていると思うんですよ。そういう、自己表現の垂れ流しみたいなものに対してすごく危機感があって。バンドをやるようになって、本当によく思うんですよ。ライブハウスに出ているバンドが、「次の曲がラストです」とかもったいつけて言うから、どんな曲をやるのかと思って見てると、誰も知らないよくわからない曲をやってる(笑)。それだったら、カバーでもいいからビートルズが聴きたいよって。だから、落語の考え方に近いかもしれませんね。古典落語に新しい世代の落語家がチャレンジするような。そっちの方が健全なような気がしていて。

「今でも『若い時に売れておきたかったな』って思う」

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——なるほどねぇ。改めて思うんですけど、今、マキタさんはものすごく充実したキャリアを送っていて。もし20代や30代でブレイクしていたら、きっと今のマキタさんとは全然違った場所にいたと思うんですね。 マキタスポーツ:そうでしょうね。 ——その、「40過ぎてからのブレイクすること」の長所と短所について、最後にお訊きしておきたいんですけど。 マキタスポーツ:でも、僕は若い時に売れることに越したことはないと思うんですよ。若い時に売れていれば、それだけ失敗する機会も多かっただろうし、その失敗から学んでもう一回、もう二回とトライすることもできる。僕が40過ぎてからこうして仕事に恵まれだしたというのは、これは自分にとっての必然だったとは思うんですけど、今でも「若い時に売れておきたかったな」って思うし、今売れて良かったなっていうより、そっちの気持ちの方が大きいですね。 ——あぁ、そういうものですか。 マキタスポーツ:結局、自分は憧れていたイメージ像にはなれないんですよ。これは誰にでも言えることで、ミュージシャンの人も、自分が憧れていたミュージシャンには絶対になれない。むしろ、憧れなかった人の方に、自分にとって大切な気づきのようなものがある。僕はずっと憧れていた自身のイメージになろうっていう、そういう理念、観念に縛られていて、それにはなれないということに気づくまでにすごく時間がかかったんですね。それははっきりと「悔い」として今もありますね。 ——先ほど言っていた「自分にとっての必然」というのは、そういうことなんですね。 マキタスポーツ:そうです。あとは、本当につまんないことを言うようですけどーー。 ——はい(笑)。 マキタスポーツ:今はもう、体力勝負です。自分のアイデアがいくらあったとしても、それに肉体が追いついていかないっていう、それが一番嫌だから。やっぱり自分の原点は「誰からも期待されていない」ってことなんですよ。誰からも期待されてないし、誰からも仕事を発注されてないのに、自分がやりたいからやるっていう。そういう時代があまりにも長かったから、その頃の「ただやりたい」というエネルギー、童貞感のようなものがなくなっていくことがすごく怖くて。ただ、「そもそも俺は何がしたいんだ?」っていう欲の部分、それはまだ自分の中に確かにあるので、あとは体力ですね。魂は肉体があってこそなので、身体のことは気にかけてますね。 ——じゃあ、人知れず、身体を鍛えられていたり? マキタスポーツ:いや、特に何もやってないです(笑)。 (取材・文=宇野維 正)
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■公開情報 『映画 みんな!エスパーだよ!』 公開中 原作:若杉公徳「みんな!エスパーだよ!」(講談社『ヤンマガKCスペシャル』所載) 監督:園子温『ヒミズ』『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』 出演:染谷将太 池田エライザ 真野恵里菜 マキタスポーツ 高橋メアリージュン 安田顕 配給:ギャガ 公式サイトURL:esper-movie.gaga.ne.jp (C)若杉公徳/講談社 ©2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会

BIGMAMA金井政人が語る、音楽とエンターテイメントの未来「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」

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【リアルサウンドより】  BIGMAMAが“ご当地シングル”『MUTOPIA』を、全国のタワーレコード限定でリリースした。北海道、東北、関東、中部北陸信越、近畿、中国四国、九州沖縄という7つのエリアごとに異なるパッケージとなる本作。表題曲とカップリング「SKYFALL」の他に、それぞれの地方の特徴を歌詞におりこんだ「MUTOPIA」のご当地バージョンを書き下ろし、収録している。  跳ねるダンスビートと高揚感あるバイオリンのフレーズが印象的なこの曲は「音楽の楽園」をテーマにしたもの。彼らのライブでも間違いなくピークタイムの一つとなるだろうナンバーだ。それをこういう形でシングルとしてリリースしたバンドの意図は果たしてどこにあったのか? バンドを率いる金井政人(Vo/G)へのインタビュー。話は楽曲の生まれた背景から、音楽とエンターテイメントの未来を見据えたビジョンまで、大きく広がっていった。(柴 那典)

「音楽でいろんな場所を楽園に変えてしまおう」

ーー『MUTOPIA』はご当地シングルという形でリリースされたわけですが、これはどういうところからアイディアが生まれたんですか? 金井:話のきっかけは二つあるんです。まず、単純に曲ができたこと。それからもう一つは全国ツアーをまわるタイミングだったこと。その中で、この曲をもっと楽しんでもらうアイディアとして、それぞれの場所で歌詞を変えてリリースしようということになったんですね。 ーー曲ができたのはいつ頃のことだったんですか? 金井:今年の新年一発目にスタジオに集まって、その時になんとなく歌ったメロディーをもとにバンドでセッションが始まって、バイオリンのキーとなるリフが出てきて、そうやって仕上がっていきましたね。 ーーどういうモチーフから曲ができていったんでしょう。 金井:まず、生身の編成の中に適度な違和感としてEDMの要素が入っているようなサウンドをきちんとバンドでやりたいと思っていたんですね。もう一つは「ミュージック×ユートピア」で「MUTOPIA」、つまり、音楽でいろんな場所を楽園に変えてしまおうというアイディアがあった。それが結びついて、「MUTOPIA構想」みたいなものがふくらんでいったんです。そして、これが下北沢のUKプロジェクトというインディーズレーベルのいいところなんですけれど、「いい曲ができた」となったら「よし! レコーディングをしよう」となってくれるんですね。なので、実はツアーが始まる前の3月にレコーディングをしたんです。 ーーその段階でもう曲が完成していたんですね。 金井:そして全国ツアーが始まって、そこでもやるようになって。ツアーに来てくれるお客さんにとって、ライブハウスでしか聴けない新曲があるということが楽しみの一つになってほしいと思ったんですね。そうしているうちに、もともとあった「MUTOPIA構想」から、それぞれの場所でそれぞれの楽園があると思うようになった。各地にフェスがあるのもそうだし、地方それぞれに人間性もあるし、好きなものもたくさんある。いろんな場所のことを歌詞に書けそうだと思ったんです。そして、タワーレコードさんの協力もあって、全国で違う限定盤を出せることになった。そこで、一番格好いい曲の完成形だと僕が思うものは1トラック目で成し遂げているので、カップリング曲とはまた別に、その場所ごとに愛情を持って歌詞を書いて歌ったものを3トラック目に収録することにした。それをすることによって、BIGMAMAのCDを買いたいと思ってくれる人とのいいコミュニケーションになると思ったんです。これが、ざっくりこの「MUTOPIA」っていう曲ができて、こういう形でシングルにした一連の流れです。 ーーまずは、曲があったからこそ、そういう構想が広がってきたわけですよね。この曲が持ってるエネルギーが「MUTOPIA」構想になって、そこからそれぞれの土地に合わせて歌詞を書くというアイディアにつながった。 金井:曲単独でもそうだし、それが2時間のライブのセットリストの中でどう響くかという、総合的なところもありますね。今、僕がライブの中で心掛けていることって「いかに一晩だけの関係にならないか」ということなんです。人生の中で長く付き合えるような、添い遂げられるようなバンドでいたい。そう考えた時に、僕らのライブの中で「MUTOPIA」という曲が起爆剤になってほしい。いかに生身のバンドで非日常を体現できるかということを考えたときの、自分の中での答えの一つとしてこの曲が生まれたんですね。なので、それが「MUTOPIA」を人に喜んでもらうための題材にする一つのきっかけになった要素ではあったと思います。
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「これまでやってきたことと新しいチャレンジを上手く繋げるストーリーを描きたい」

ーーさきほどEDMとバンドサウンドをBIGMAMAなりのやり方で融合させるということを言っていましたが、そういう発想はどこから生まれてきたんでしょう? 金井:ざっくりと、自分の中では「AVICII以降」という感じなんですね。もともとEDMシーンは自分にとって遠いものだと思ってたんですよ。DJがやってるものだって。でも、AVICIIを聴いた時に、アコースティックな楽器が鳴ってるのも印象的だったし、「あ、こんな解釈も全然あっていいんだ」って思った。あとは、サマソニでZEDDも観ましたけれど、EDMの代表的なアーティストが何万人のオーディエンスを盛り上げる光景を見て、それに対して単純に何を思うかって、ロックバンドとしてのジェラシーなんですよ。 ーー嫉妬を感じた。 金井:でも、ジェラシーだけで終わらないためにやれることもたくさんあって。それこそサマソニでClean Banditも出てましたけれど、彼らはデジタルな音像とバイオリンの旋律を同居させていて。僕らも最近のライブではドラムのリアド(偉武)が生ドラムとエレドラの二刀流になっているんです。そういうところから、新しいチャレンジに対する欲求が強くあった。「ロックバンドとして、しかも日本人的な解釈でやってみたい」と思ったんですね。もともと自分達は速いビートでライブハウスを盛り上げてきたバンドだし、そこに自信も自負もあるけれど、これまでやってきたことと新しいチャレンジを上手く繋げるストーリーを描きたいと思ってたんです。それに、作った時にはもうライブで演奏しているときの無敵感も予想できていたし、10年後も自分が誇っていられると思った。そういうジャッジができていたんで、こういう曲になったんですね。 ーーたしかにここ数年の海外の音楽シーンを見てると、特にAVICIIとMumford & Sonsは象徴的ですよね。一方はEDMで、一方はカントリーの出自で、それがどっちもスタジアム・ロックとして機能している。日本でも当然そういう動きに刺激を受けるミュージシャンはいるだろう、という気がします。 金井:でもそこで、まだ誰も抜きんでていないと思うんです。だからチャレンジしがいがある。今は洋楽と邦楽のタイムラグがあるような状況でもないですからね。そういうことをちゃんと頭の片隅に置きつつ、自分たちがロックバンドとして作ってきた文脈に要素としてどう加えるかというだけの話なんです。そこには自分なりのバランス感覚みたいなものがあって、それは言葉にするのは難しいんですけど。
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ーーこの曲のビートスタイルっていうのはどういう風に組んでいるんですか? 単純な四つ打ちではないですよね? 金井:ドラムのリアドが単純な四つ打ちを嫌うんですよね。彼はドラマーとしてのこだわりもあるし、飽きさせないドラミングを意識しているんで。仮にキックを四つ打ちで踏んでようと、そう聴こえさせないテクニックを使っていたりする。ビートって、僕は建築の土台だと思うんです。その上に何が乗ってて、曲を聴いた時に何が記憶に残るかが重要。この曲では、バイオリンのリフが、こういうサウンドメイキングの中でいい意味での違和感として残ればいいなっていうのが最初にあって。そこに自分がメロディーと言葉をいい形で想起させることを考えていた。だから、リズムに関してはリアドに任せきってるところがありますね。 ーー実際、この曲はバイオリンの高揚感があるフレーズが一つのキーポイントになっていますよね。これが生まれた時にも手応えはありました? 金井:スタジオでメンバー全員盛り上がりました。たとえば料理だったら、強い火力でパーッと調理したら美味しいものになったりするじゃないですか。この曲ではそれと同じ現象が起きたと思っていて。ほんの数時間のスタジオで、それぞれがそれぞれの気持ちいいものを追求した。みんなで「ここの音符がこうなってて」という会話を作りながらするときもあるんですけれど、この時は全くしてなくて。自然と曲の向かう方向がそうなっていったんです。 ーーその時の感覚として、ライブでも一つのアンセムとして響くはずだという直感があった? 金井:ありました。今までで一番強い曲を書けたと自分の中では思ってます。 ーーそういう曲ができて、歌詞もそれにハマるものが書けたからこそ、バリエーションを変えてもOKっていう発想になった? 金井:そうですね。1曲目の歌詞を変えて出すという形だったら抵抗があったと思います。この曲のあるべき姿、自分が思う一番格好いいものは1曲目で歌ってるものなんです。僕の中では<傷なんて舐め合えば 朝には消えるだろう>っていう一言が言いたくて。ただ、ツアーで歌う中で、場所ごとによって地名を変えたくなったんですよね。それって、自分が好きなバンドのライブを観て嬉しかったことの思い出の中にちゃんとあるものだし。 ーーたしかに、ツアーだとその土地の名前を歌に盛り込んだりしますもんね。それをレコーディングされたパッケージでもやってみよう、と。 金井:ただ、計7回レコーディングして、コーラスを入れるというのは千本ノックのようなレコーディングでした(笑)。ジャケットも7パターンをスタッフと一緒に作ってチェックして、作業は思ったより大変でしたね。 ーーでも、これはやった甲斐はあったと? 金井:思います。手応えはありますね。
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「長く続くバンドって、圧倒的に唯一無二」

ーー最近、地方ごとのバンドシーンの特色が少しずつ明らかになってきていると思うんです。特にここ数年は大阪から出てくるバンドに勢いがあったり、各地で違うバンド文化が形成されている。そのあたりはどう感じます? 金井:そのことについては、僕の中で、逆説的に思うことがありますね。東京は常に多数決が行われているような気がするんです。 ーー常に多数決が行われている? 金井:たくさんの人がいいって言ったものが主流になっていく。でも、その多数決は作られた流行かもしれない。「みんな好きでしょ?」ってところに平均化されて納まりがちだと思うんです。比べると、地方のほうがブレーキがないというか、最適化される以前の目立ちたい、尖りたいという欲求が勝ってる気がします。 ーーなるほど。 金井:場所ごとに流行ってる音楽が違うとは思わないんですよ。それぞれの場所でロックが好きな人がいるし、レゲエが好きな人がいるし、クラブミュージックが好きな人がいる。何が元気かは、そこから出てきたアーティストがいるかどうかにつきると思います。人気のあるアーティストが出てきたら、そのバンドを筆頭にしたピラミッドができるんです。 ーーその土地その土地で、先輩後輩の関係が生まれる。 金井:そうですね。そのバンドに憧れたバンドが出てきて、ちゃんと下の世代に繋がっていくと思うんです。各地方ごとに地元を大切にするいいバンドが出てきて、そういう関係が生まれているんだと思いますね。 ーー地方の音楽シーンということでいえば、今は各地のフェスやイベントも増えてきたし、根付いてきていると思います。そのあたりに関してはどういうことを思いますか? 金井:今、日本中のいろんなフェスやイベントに呼んでいただくようになって、そこで思うのは「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」ということなんです。 ーー独立遊軍? 金井:さっき話したピラミッドの構造みたいに、各地で素晴らしいバンドが出てくると、それに憧れるたくさんのバンドが出てくるわけですよね。でも、僕らとしては、誰かとの比較対象になってはダメだなと思ってるんです。やっぱり、長く続くバンドって、圧倒的に唯一無二だと思うんです。僕としても、主観的にも客観的にも唯一無二に見える音楽を鳴らせてないと格好よく思えなくなってきていて。それを自分たちにも強く言い聞かせるようになったのが『Roclassick』を作り始めた時期だったんですね。で、今は2時間のショーを作る時も、イベントに呼んでもらって30〜40分でダイジェストにするときも、ロックバンドとして奇をてらわずに気持ちのいい違和感を作ることを意識して実践できている。だから、サマソニに出た時にも、洋楽のバンドと邦楽のバンドがいる中で、ちゃんと孤立できてる実感があったんですよね。
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ーー今、俯瞰で見ても、BIGMAMAというバンドはたしかに独自なことをやっている感じはありますね。 金井:最近、感動ってどうやったら生まれるのかを研究しているんです。どうやったら感情を動かすことができるのか。それをメンバー5人で、誰にも真似できないやり方で音楽にしていくことがBIGMAMAのやることだと思っていて。そうやってアルバムを作って、ツアーをまわって、その中で足りなかったピースとして「MUTOPIA」を作った。自分の中ではBIGMAMAというバンドが完成してきている感じがあるんです。 ーー完成してきているというと? 金井:いろんな道を歩んできて肝が据わったというか、自分たちのバンドとしての欲求がどこに向かってるかわかったという。何万人が押し寄せてもおかしくない音楽を鳴らしていると思うけれど、人を集めるために音楽を作っているというより、いかに純粋な気持ちを突き詰められるか。そこに没頭していることが単純にミュージシャンとして一番楽しいんですよね。 ーーそのための大切な一曲として今回のシングルをリリースしたわけですね。 金井:そうですね。それと同時に、このシングルはいかに今の自分たちがCDで遊べるか、面白いことができるかという試みでもあって。というのも、それこそ、CDに対していまだに期待をしている反面、悲観もあるんです。 ーー悲観もある? 金井:僕は昔レンタルビデオのショップで働いていたことがあったんですけど、当時はひたすらVHSをDVDに変えていく作業をしてたんですよ。ビデオテープがなくなって、同じ作品のDVDが入荷するところに立ち会ってたんですね。今はCDもそうなのかなと思うんです。 ーー定額制のストリーミング配信が普及してきましたからね。 金井:でも、それって、もともと音楽に価値があって、単にプラスチックのケースと円盤というガワが古くなってきただけの話なのかなと思っていて。そう思ったら、「今は今できることを楽しもう」という考え方に切り替わったんですよ。今ならまだ、作品ごとにジャケットを作って、それを全国各地で限定盤として出すということを楽しめる。ひょっとしたらそれは今しかできないかもしれない。そう思ったら、自分でもOKのスイッチが入った、期待もしてるけど、悲観もしてるっていうのはそういう意味なんです。 ーーここからは未来の話をしたいと思うんですが、まず、音楽を巡る環境はどんどん変わっていくと思うんですけれど、そこに対しては金井さんはどう思いますか? 金井:たぶん自分の生きているうちに音楽のあり方は何度か変わると思っていて。でも、スマートフォンやPCで聴くときに、どんなにいい音質でレコーディングしたとしても、どうしてもよさが伝わりきらない瞬間はあって。そういうときに、いかにアナログと向き合っていくかも、アーティストのこれからのバランス感覚としてすごく必要なんじゃないかと思います。デジタルなものが増えてきたら、アナログなものに欲求が戻る瞬間がある。 ーーそうですね。アナログの価値は見直されていくと思います。 金井:楽器を手で触って、実際に音が鳴るということにも体験の価値がありますからね。あと、体験ということで言えば、やっぱりディズニーランドってすごいですよ。僕らが出るフェスって何万人集まったというのがニュースになるわけだけれど、それを毎日やっている。 ーーそうですよね。 金井:何かを体験するっていうことにはすごい価値があるんですよね。僕らも、僕らなりにちゃんとバンドで、音楽でそれを用意したい。そもそも、お金を使って、休みを作って何かを楽しむってことに関しては全部のエンターテイメントがライバルだと思うんです。だから、そういうディズニーランドみたいなものも、自分と関係ない世界の話だと思ってたらダメだなと思いますね。 ーーそこでできることは、まだバンドにもたくさんある。 金井:自分は今の現状に満足していることは一度もないんですけど、少なくとも、どんな未来が待っていようと怖くはないですね。緊張感もあるけど、ちゃんとワクワクとドキドキを用意できてる実感が自分の中にある。僕だけじゃなくて、BIGMAMAの5人でそれをできているんだと思います。 (取材・文=柴那典/撮影=下屋敷和文)
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『MUTOPIA』北海道盤

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『MUTOPIA』東北盤

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『MUTOPIA』関東盤

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『MUTOPIA』中部北陸信越盤

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『MUTOPIA』近畿盤

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『MUTOPIA』中国四国盤

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『MUTOPIA』九州沖縄盤

■リリース情報 『MUTOPIA』 発売:2015年9月2日 価格:¥1,200(税抜) 「MUSIC」と「UTOPIA」をかけあわせた造語の「MUTOPIA」と命名されたシングル『MUTOPIA』は北海道、東北、関東、中部北陸信越、近畿、中国四国、九州沖縄という7つのエリアごとに異なるバージョンで販売、ジャケットのデザインも7つのエリアごとにそれぞれ違うバージョンとなっている。 『MUTOPIA』北海道盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Hokkaido 『MUTOPIA』東北盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Tohoku 『MUTOPIA』関東盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA for Party People 『MUTOPIA』中部北陸信越盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Chubu 『MUTOPIA』近畿盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Kansai 『MUTOPIA』中国四国盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Chugoku-Shikoku 『MUTOPIA』九州沖縄盤 <収録曲> 1.MUTOPIA 2.SKYFALL 3.MUTOPIA in Kyushu BIGMAMA オフィシャルWEBサイト

いよいよ始まった「Netflix」実際の使用感は? 海外ドラマ専門家に聞いた

【リアルサウンドより】  世界50カ国以上で6500万人を超える会員を抱えるインターネット映像配信ネットワーク「Netflix」の日本サービスが、9月2日より開始した。  1日に1億時間を超えるTVドラマや映画を月額定額制(見放題)で配信する同サービスは、HDや4Kといったハイクオリティな映像でも視聴できるほか、独自に製作したオリジナルシリーズやドキュメンタリーも充実。さらに日本のユーザーに向けたコンテンツとして『テラスハウス』新シーズンや、桐谷美玲主演のドラマ『アンダーウェア』、芥川賞を受賞した又吉直樹の小説『火花』の映像化作品なども放送されることが決定しており、大きな注目を集めていた。  同サービスの実際の使用感は、果たしてどんなものなのか。映画・海外ドラマライターの今祥枝氏に話を聞いた。 「まず驚いたのは、その使いやすさです。インターフェイスがよく設計されていてわかりやすく、検索もストレスなくできますし、動画の再生中に字幕から吹き替えに切り替えたりすることも簡単にできます。新しい作品でも吹き替えがちゃんと用意されていたのも、海外ドラマ好きとしては嬉しい限りです。また、連続ドラマなどでは、ひとつのエピソード のエンドクレジットが出ると、次のエピソードへのカウントダウンが始まり、自動的に始まるようになっていて、つい一気に観てしまうように設計されていることはアメリカでも話題になったスタイルでしたが、実際に体験してみると、なるほどこれはハマるなと。たとえばDVDのBOXで連続ドラマを観る場合、2〜3話観たら、次のディスクに変えなければいけないという煩わしさがありましたが、Netflixはそういう手間も必要ないので、強い意思を持たないと何時間でも観てしまいます(笑)。高画質映像は、PCで確認してもわかるくらいクオリティが高いので『これは最速新しいテレビを買わなければ!』と思いました」  また、コンテンツの面でもNetflixは充実していると、同氏は続ける。 「たとえば2001年にアメリカで公開されてヒットした、ポール・ラッドやブラッドリー・クーパーらが共演する『ウェット・ホット・アメリカン・サマー』というコメディ映画があったのですが、日本とアメリカでは笑いのツボも異なるためか、日本では観ることができませんでした。しかし、Netflixには同作はもちろん、そのアナザーストーリーとなる同社オリジナル・シリーズの30分番組『ウェット・ホット・アメリカン・サマー:キャンプ1日目』も配信されています。日本では海外のコメディ映画の多くが未公開となり、エッジの効いた通好みの作品はなかなか観られない状況が続いていたのですが、Netflixの登場でそのハードルはかなり低くなったといえるかもしれません。『デアデビル』や『センス8』などオリジナル・シリーズのクオリティの高さに加えて、観るひとを選ぶようなハイブロウな作品もちゃんと押さえてあるので、かなり掘り下げ甲斐があると思います。このラインナップは、本当に海外ドラマや洋画が好きなマニアックなファンにとって、嬉しい限りに違いありません」  一方、日本向けのコンテンツについてはどうか。 「現在、日本向けのオリジナルコンテンツとしては、『テラスハウス』などの話題性の高いタイトルが放送されていますが、こうした作品が果たしてどれくらい一般層に訴求するのかは、大きなポイントといえそうです。先述したように、海外ドラマ好きにとってはすでに素晴らしいサービスとなっているので、あとはどれくらい一般層にリーチするかが、同サービスの広がりを決定づけるのではないでしょうか。それと、個人的には、作風が玄人好みでテレビでは視聴率が取れないけれども、エッジの効いた作品を生み出しているクリエイターにとって、新しい表現の場になってほしいと考えています。たとえば、すでにWOWOWのドラマWでテレビシリーズを手掛けた黒沢清監督や青山真治監督がNetflixでオリジナルドラマを作ったら、どんなものになるのか、ぜひ観てみたいですね。新しいクリエイターの起用から、ヒット作、話題作が生まれることにも期待したいです」  音楽のストリーミングサービスに続き、いよいよ始まった映像の定額見放題サービス競争。Netflixは今後、どんなサービスを展開し、日本の視聴環境や映像作品をどのように変えていくのだろうか。 (文=編集部) ■Netflix 公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/c/NetflixJP 公式ツイッター(@NetflixJP): https://twitter.com/NetflixJP 公式フェイスブック:https://www.facebook.com/netflixjp

姫乃たま、初の単著出版決定! 「アイドルをよく知らないという方にも読んでいただきたいです」

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(C)Kunio Hirayama

【リアルサウンドより】  地下アイドル兼ライターとして活躍する姫乃たまが、9月22日に初の単著『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』を刊行する。  姫乃たまは、8月には“僕とジョルジュ”名義で、カメラ=万年筆の佐藤優介や金子麻友美、スカートの澤部渡らが参加した音楽アルバム『僕とジョルジュ』をリリースするなど、アーティスト活動を行うかたわら、当サイトでも連載【地下からのアイドル観察記】を持ち、ほかにも『おたぽる』や『日刊大衆』『週刊アスキー』『コミックビーム』など、数多くの雑誌で連載を続け、評論家・中森明夫らの支持も厚い期待の新人だ。  同書は、現役の地下アイドルとして約7年のキャリアを持つ姫乃たまが、シーンにおける“ブラックな実態”から“愛おしい魅力”までを、シャープでありながらも優しい眼差しで切り取り、瑞々しい文体で書き綴った一冊に仕上がっている。『RealSound』や『おたぽる』に掲載した選りすぐりの“地下エピソード”に加え、大学在籍時に“地下アイドルの持つ可能性”について考察し書かれた『地下アイドルステップアップ論』改訂版のほか、寺嶋由芙や獄本野ばらといった豪華ゲストとの対談や、地下アイドルシーンの黎明期を知るFICEといちご姫との「地下アイドル座談会」も収録している。企画・編集は、リアルサウンド編集部が手がけている。  さらに、豪華撮りおろしグラビアも掲載。自身と縁の深い下北沢で撮影したアイドルらしい表情のほか、元AV女優でカメラマンの大塚咲氏が撮り下ろしたセクシーショットも多数収められている。  また、表紙カバーは帯部分を折り込んだ特別仕様であり、上下の帯を展開すると“すき間”に潜んだ姫乃たまのグラビアが現れる仕組みとなっている。

姫乃たまコメント

 高校生で地下アイドルになって、同い年の子達が自分ってなんなのかを考えるのと同じように、地下アイドルについて考えてきました。私が置かれている地下アイドルという業界とは、そこにいる大人や女の子達やファンはどんな人だったか、そして自分のアイデンティティになっている地下アイドルってなんなのか。  私は歌があまりうまくないので、その代わりにいままで書いてきた文章や、新たに書き下ろした文章を一冊にまとめてみました。アイドルファンはもちろん、アイドルをよく知らないという方にも読んでいただきたいです。それよりなにより、凝った本の装丁が好きな方には絶対に手に取っていただきたい一冊です! これは写真だとわかりませんので、現物でぜひ確認してください。  あ、あと恥ずかしながらグラビアも収録しております……。よろしくお願いします。
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『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』(C)blueprint

■出版概要 『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』 著者:姫乃たま 版元:サイゾー 発売日:9月22日 価格:1400円(税抜) ■イベント情報 姫乃たま『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』出版記念イベント開催決定! 開催:9月27日 ※詳細は近日発表。

杏と長谷川博己の“おかしな関係”が織り成す世界ーードラマ『デート』スペシャル版に寄せる期待

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『デート~恋とはどんなものかしら~』公式サイト

【リアルサウンドより】  今年1月から3月にかけて、フジテレビの「月9」枠で放送されたドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』。そのスペシャル版が、9月28日(月)、夜9時から放送されることが発表された。その情報を目にしたとき、思わず「わっ!」と声を上げてしまった。だって、あれほど毎週観るのが楽しみだったドラマなんて、ホント久しぶりのことだったから。  他人の感情を察したり、空気を読むことができず、何事も論理的で理路整然としていなければ納得のいかない超理系女子、藪下依子(杏)。そして、自らを“高等遊民”と称し、働きもせずに母とふたりで実家で暮らしながら、自室で文学、映画、漫画、アニメなど、趣味の世界に浸ることを最大の喜びとするオタク男子、谷口巧(長谷川博己)。親を安心させるため、そろそろ結婚を考え始めるものの、恋愛どころか他人とのコミュニケーションすらおぼつかない、欠陥だらけのアラサー男女が出会い、互いに惹かれ合う――どころか、水と油のごとく反発し合い、毎回「デート」をするたびに、激しい口喧嘩を繰り広げるという「あらすじ」を書いてみたところで、まったくラブストーリーとは思えないこのドラマ。  しかし、口喧嘩をするたびに、そこに居合わせた人々を置き去りにして、ふたりの世界に入ってしまうほど互いにヒートアップしてしまうこの関係って、一体何なのか。えっ、これが恋ってやつなのか? とまあ、近年の日本では珍しいほど痛快な、いわゆる「ラブコメ」ドラマだったのだ。杏と長谷川博己という、パッと見は確かにおかしな感じだけれど(あくまでも役柄の話です)、よくよく見ればどこか可愛らしさのある主演ふたりの魅力もさることながら、ふたりを取り囲む人々――依子の父親(松重豊)と母(和久井映見)、依子に恋心を抱く好青年・鷲尾君(中島裕翔/Hey! Say! JUMP)、そして巧の母(風雪ジュン)と巧の幼馴染の兄妹である宗太郎(松尾諭)と佳織(国仲涼子)が、いずれもちょっとおかしいけど、どうにも愛おしくてたまらいのだ。特に、主人公ふたりに密かな恋心を寄せる、鷲尾君と佳織の切ないこと!  毎週観るのが楽しみだったのは、物語の続きが、ふたりの恋の行方が気になったから――だけではない。むしろ、依子と巧を中心に、上記の人々が織りなす、“『デート』の世界”そのものに触れることが、とにかく楽しかったのだ。そんなドラマって、結構珍しい。だけど、数年前の「最高の離婚」同様に、こうして特に高視聴率だったわけでもないのに「続き」が作られるドラマは、そういうものなのかもしれない。あの世界に、また触れたい。とはいえ、その「作り」の部分――膨大な台詞が書き込まれた脚本と、おかしみのなかに巧みな仕掛けを毎回用意している演出も、とにかく見事だった。  毎週、何らかの形でふたりが「デート」をするという構成。しかも、その時系列を組み替えながら、毎回きっちり物語として成立させるなど、小ネタやパロディの数々に溢れた台詞の妙味はもちろん、その細部に至るまで、実にうまく設計された物語。同じく「月9」枠で現在放送中の『恋仲』が、直球勝負の胸キュン青春恋愛ドラマだとするならば、『デート』はそれこそムチャクチャな変化球でありながら、毎回確実にストライクに入っているような、そんなドラマだったのだ。それにしても、あの最終回の伏線の回収の仕方は、本当に見事だったな。  さて、嬉しいことに、上記キャストが再び勢ぞろいしているという今回のスペシャル版では、依子と巧のその後――最終回でめでたく正式に(?)付き合い始めた、ふたりの日々が描かれているようだ。依子の住む官舎で「半同棲」生活を送りながら、結婚の準備を進めていたふたりの前に、ある日、和服姿の美女(芦名星)が現れる。まさしく理想のタイプ(オードリー・ヘプバーン、原節子、峰不二子、メーテルを足して4で割った女性だっけ?)である彼女の登場に、心を激しく揺さぶられる巧。そんな彼の姿を横目に、これまであり得ないと思っていた「浮気」という文字が、依子の頭に浮かび上がり……再びふたりの大喧嘩が始まってしまう。しかし、「恋愛不適合者たちの痴情のもつれ」とは、これいかに?  それにしても、『デート~恋とはどんなものかしら~2015夏 秘湯』という、どこか『北の国から’95秘密』(宮沢りえが出ていた回だ)を彷彿とさせるような、させないような、このタイトルは何を意味しているのだろう? 一応、「あらすじ」を読むと、今回のクライマックスの舞台となる伊豆は修善寺の「秘湯」を意味しているようだけど……『デート』の副題である「~恋とはどんなものかしら~」が、実はモーツァルトの『フィガロの結婚』のアリア「恋とはどんなものかしら」から来ていたように(最終回で、ひっそりと流れていた)、今回もまた、その細部に至るまで徹頭徹尾練り込まれた物語が展開されることを激しく期待したい。残念ながら連続ドラマの放送時に見逃してしまったという人も大丈夫。全10話の物語は、DVD、Blu-ray、あるいはオンデマンドで有料視聴可能である。今からでも遅くない。この愛すべき登場人物たちが繰り広げる、おかしくも、ときにホロリと来てしまう『デート』の世界に浸りながら、今回のスペシャル版を待ちましょう。 (文=麦倉正樹) ■番組情報 『デート~恋とはどんなものかしら~2015夏 秘湯』 放送日時:9月28日(月)夜9時〜 フジテレビ 公式サイト

細田守とミスチル桜井、創作について語り合う 細田「価値観をひっくり返すことに醍醐味がある」

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『NEWS ZERO』公式FACEBOOKページより

 公開中の『バケモノの子』監督・細田守と、同映画の主題歌を担当したMr.Childrenの桜井和寿の対談が、19日放送の『NEWS ZERO』(日本テレビ)で放送された。たがいに制作スタイルや作品づくりの苦悩、自分の子どもとの親子関係について語り合い、「七転八倒ですよね」(細田)、「いいものが作れなくなることへの怖さはすごくある」(桜井)などの本音も飛び出した。  2人はこの日が初対面で、まずは細田が作品づくりについて「どのように作っていって、どういうところが苦しいのか」と質問。桜井は「できるだけ作るということから遠いところに自分の意識を置くほうがよくて。自転車乗っているときとかお風呂に入っているとき、まったく何も余計なことを考えていないときに、ふとメロディーが流れ出すんですよね」と制作スタイルを語った。また、「夢占いってあるじゃないですか。見た夢が人間の潜在意識のなかでどういう意味を持つのかがわかる占い。あれとすごく似ているかもしれないです」と自己分析した。歌詞は最初の1行から順番に書き始め、「2番ではこんなことを言って、最後のサビではこんなことを言い切る、とかは考えずにやっている」とのこと。  細田は「いやあ、それはすごいですね」と感心した様子を見せ、話題はアニメーションづくりの苦悩へ。『バケモノの子』の絵コンテは、細田が1人で約9ヶ月かけて仕上げたものだ。「自分の志に対して、なかなか自分の実際の作業が追いつかないことが多くて、それでもう七転八倒ですよね。毎回、あまりにも何も出てこない自分に嫌気がさすくらい」と語り、"何でもないときにパッと思いつく"という桜井に対して「いいなぁって......」と、羨ましさを覚えたことを明かし、桜井を笑わせた。  桜井は、細田アニメの"景色"について質問。「細田さんの映画は、日本特有の田舎の景色とかをすごく大事にしていらっしゃるなのかなと。あと、日常や生活っていうものを」と感想を述べ、そうしたイメージがどこから生まれるのかを問う。すると細田は「若いころは自分が好きな映画監督の作品や、本、美術作品、歴史上の名作などから、すごく大きな刺激を受けていたと思うんですよ」と答えるが、しかし、現在2歳半になる息子が生まれてからは、もっと身近なものに影響を受けるようになったという。『バケモノの子』が生まれたことも、息子の存在がきっかけだったそうだ。  一方の桜井は、親子関係について「あまり決まりごとは決めないようにしている。(父親として)こうあるべき、とか。できれば子どもの成長と共に、自分の価値観もグラグラ変わりながら、一緒に変わっていきたいなと思う」との意見。また、たとえば子どもが通う幼稚園にてキャンプが開催されると、子どもが緊張してイライラすることがあるといい、「些細な出来事で心は変わっていくから、(その変化を)見逃さないように」しているという心がけを述べた。  ここでキャスターが桜井に「作品を作るときに大切にしていること」を問いかける。桜井の理想は「まず日常があること。リスナーの人たちの身近であること」が第一で、その上で「既成概念みたいなものを、どこかで変えられる力を持った視点を探してはいます」と明かした。細田も「表現というのは、価値観を鮮やかにひっくり返すことに醍醐味がありますよね」と同意。「それがうまくいったら痛快だろうけど、なかなかそういうふうにならない」と苦笑しつつも、「1曲を聴いたあとや、映画を観たあとに、ぜんぜん世界が違って見えるみたいになると、いいんですけどね」と、クリエイターとしての志を述べた。  また桜井にとって、ものづくりに対するプレッシャーは「ヒットし続けなくてはならない」ということではなく、「いいものが作れなることへの怖さ」だという。世の中が求めるものから自分がズレているかもしれない、という危機感を常に抱えていると語り、細田も頷いた。  アニメーション/音楽とジャンルは違うが、ともに高い人気を誇る2人。大きな影響力を持つクリエイターとしての"産みの苦しみ"がうかがえる対談だった。 (文=岩倉マコ)

宮藤官九郎監督『TOO YOUNG TO DIE!』は新たな代表作となり得るか? "隙のない"キャスティングを読む

【リアルサウンドより】  2016年2月6日に公開される宮藤官九郎監督の最新作『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の第一弾ビジュアルが公式サイトで公開された。  同作は、宮藤官九郎の完全オリジナル作品で、"地獄"に落ちた高校生・大助が、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)を率いる赤鬼・キラーKの"鬼特訓"のもと、生き返りを賭けた地獄巡りを行なうという物語。  赤鬼・キラーKを演じるのは、7年ぶりの映画主演となる長瀬智也。17歳という若さで地獄に落ち、片思い中のクラスメイトに会いたい一心でキラーKと生き返りを目指す高校生・大助を演じるのは神木隆之介。さらに、尾野真千子、森川葵、桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、皆川猿時、古田新太らが出演している。  今回、公開されたビジュアルでは、長瀬は『さくらん』『モテキ』の伊賀大介が手掛けた衣装に身を包み、「手はジミヘンとカート・コバーン、下半身はマイケル・ジャクソン、声は忌野清志郎」という、ロックと和のテイストが融合した鬼姿を披露。長瀬自身、「パッと見るだけでは、僕だと分からない」と語る特殊メイクは、撮影の度に90分がかりで施されたとのこと。  一方、神木演じる大助は、キスもしたことがないまま地獄に落ちた一見ウブで可哀相な高校生だが、「なんかこいつ地獄に落ちそうって、観る人をイラつかせるキャラクター」という、これまでの神木には無かった"ウザキャラ"を演じているという。  宮藤官九郎作品に詳しいドラマ評論家の成馬零一氏は、今回のキャスティングについて、次のように語っている。 「長瀬智也はこれまで、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000/TBS)や『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS)、映画『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)といったクドカン作品で主演を務めてきた、いわば常連の俳優で、しかも長瀬が出演する作品は宮藤官九郎のキャリアにとっても重要な位置付けのものが多いですね。宮藤官九郎はロックやパンクといった音楽が大好きで、自らグループ魂というバンドをやっていますが、作品の撮り方も音楽的で独自のグルーヴ感があります。そんな、クドカン作品が持つグルーヴと、もっとも相性が良い俳優が長瀬なのだと思います。そう考えると、今回の長瀬の役柄はこれまでの延長線上にあるもので、安定感のある良い演技が期待できそうです。また、神木隆之介もクドカン作品の中で秀作といえるドラマ『11人もいる!』(2011年/テレビ朝日)で主演を務めた実績があるので、こちらも期待できるでしょう。脇を固める尾野真千子や森川葵、桐谷健太といった俳優陣も含めて、隙のないキャスティングではないでしょうか」  また、男子高校生が主人公となるストーリーもまた、宮藤官九郎の得意とするところだと、同氏は指摘する。 「冴えない若い男の子が主人公となるという点では、今作は映画『中学生円山』(2013年)の系譜に連なる作品といえるでしょう。『中学生円山』が発表された当時、宮藤官九郎はドラマ『あまちゃん』(2013年/NHK)が大ヒットしたため、そちらに注目が集まりましたが、『中学生円山』もまた優れた作品でした。宮藤官九郎の映画はかつて、舞台やドラマの撮り方に近く、勢いやテンションで物語を押し進めているようなところがありましたが、近作は構成も凝っていて、『中学生円山』では14歳の少年の暗い青春物語を鮮やかに描き出していました。そうした表現が今作ではどう結実するのか、楽しみですね」  万全ともいえるキャスティングと、得意とする物語設定を持つ『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は、宮藤官九郎の新たな代表作となり得るか。その製作状況については、追って報じていく予定だ。 (文=松田広宣) ■公開情報 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』 公開:2016年2月6日 監督・脚本:宮藤官九郎 出演:長瀬智也 神木隆之介 /尾野真千子 森川葵/桐谷健太 清野菜名 古舘寛治 皆川猿時/古田新太 製作:アスミック・エース 東宝 ジェイ・ストーム パルコ アミューズ 大人計画 KDDI GYAO 制作プロダクション:アスミック・エース 配給:東宝=アスミック・エース © 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation ■公式サイト:TooYoungToDie.jp ■公式twitter : @TYTDmovie ■公式FB : https://www.facebook.com/TYTDmovie

怪獣映画と恐怖映画のハイブリッドーー『進撃の巨人』襲撃シーンの新しさとは?

【リアルサウンドより】  映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が公開から14日の時点で、動員138万人、興収18.4億円のヒットを記録している。同作は、『ガメラ 大怪獣空中決戦』など平成ガメラシリーズの特撮で脚光を浴び、このたび新しく東宝で制作される『ゴジラ』でも特技監督を務めるという樋口真嗣監督がメガホンを取り、脚本は映画評論家の町山智浩と、実写映画版『GANTZ』を手がけた渡辺雄介が共同で制作。4D版(MX4D、4DX)、D-BOX、IMAXといった規格で上映され、リアルでショッキングな描写も話題となる一方で、原作とは異なる設定やストーリーに賛否両論が飛び交っている。  映画評論家の小野寺系氏は、「人間ドラマの演出には納得出来ない点もある」と前置きしつつ、怪獣映画として特異な作品であると同作を位置付ける。 「原作者の諫山創さんは、1966年に東宝と米国のベネディクト・プロが製作した特撮映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』から、巨人の着想を得たと話していますが、その影響は映画版でも充分に感じることができます。樋口真嗣監督もまた、東宝の怪獣映画に大きな影響を受けているのは間違いのないところで、特殊メイクを施した人型の怪獣が、人間を掴んで頭から捕食するシーンは『サンダ対ガイラ』そのものです。また、樋口監督の短編『巨神兵東京に現わる 劇場版』の迫力ある特撮シーンで、CGを全く使わずミニチュアやセットを使用したように、巨人が暴れるシーンを、おそらくほぼCGを排し、従来の日本の特撮を進化させた技術によって描くことに挑戦したことで、独特のリアリティを生み出しています」  冒頭で、巨人たちが外界と街を隔てる"壁"の内側に侵入し、手前に迫ってくるシーンは秀逸だったと同氏は続ける。 「だんだんと巨人が迫ってくる様子を、正面から長回しでじっくりと撮っていて、根源的な恐怖を感じさせる悪夢的なシーンです。部分的には、豪快な怪獣映画というより、むしろ恐怖映画の雰囲気に近いと思います。もともと『サンダ対ガイラ』は、西洋の恐怖映画にとって重要な題材である"フランケンシュタイン"を、怪獣映画に用いた作品で、いわば怪獣映画と恐怖映画のハイブリッド的な作品でした。同じように、『進撃の巨人』にも恐怖映画のエッセンスを感じますし、しかもそれはジャパニーズ・ホラー特有の薄気味悪さに近い。様々な作品の要素を組み合わせ、日本の土壌でしか作り出せないオリジナリティを獲得したことで、今作の映像表現は評価できるものになっているのではないでしょうか。」  とはいえ、前出したように人間ドラマの描き方については、同氏は否定的に見ている。より恐怖を際立たせるためにも「もっとひとびとの生活を描くべきでは」と、指摘している。 「本作で描かれる人間ドラマは原作とは異なり、女性キャラクターが扇情的に描かれているところに、強い違和感を覚えました。原作では男女が対等に扱われていて、女性キャラクターであっても男性と同等の戦闘力があり、そこが魅力でもあったからこそ、映画での描かれ方は残念です。また、世界観の説明も不足していました。たとえば同じように巨人が人類に破壊をもたらす作品として『風の谷のナウシカ』が挙げられますが、同作では"風の谷"で暮らす人々の生活をしっかりと描いていて、だからこそ彼らに深く感情移入することができました。『進撃の巨人』では、その辺りの描写が足りないから、人が食べられても、単にショッキングな映像を見せられたという印象が強く、あまり同情ができなかったように思います。ただ、巨人が来たことに対して「想定外」という言葉が飛び出すなど、作品の中に政治性を感じさせたり、ミルトンの『失楽園』やダンテの『新曲』といったキリスト教的な物語を彷彿とさせるエピソードがあったりと、特撮以外にも、様々な興味深い要素が盛り込んであったので、それがうまく利用されれば面白い作品になるかもしれません。いまの日本でつくり手が「進撃」という題材でどのようなメッセージを観客に伝えることができるのか。前後編を合わせた作品の成功は、そこにかかっていると思います」  9月19日に公開される後編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』では、超大型巨人によって破壊された外壁の修復作戦に出発したエレンたち調査兵団のその後が描かれるが、"怪獣映画"と"恐怖映画"の要素を併せ持った作品として、納得のいく結末を見せてくれるのだろうか。 (文=編集部) ■公開情報 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』 全国東宝系にて公開中 公式サイト ・画像クレジット (C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会  (C)諫山創/講談社

Hey! Say! JUMP・中島裕翔が役者トーク 堺雅人や大泉洋、杏らとのエピソード語る

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(C)タナカケンイチ

 Hey! Say! JUMP・中島裕翔が16日、『おしゃれイズム』(日本テレビ)に出演し、過去にドラマで共演した杏や大泉洋とのエピソードを語った。  中島は10歳からジャニーズ事務所に所属し、2007年にHey! Say! JUMPのメンバーとしてデビューした。俳優としては『半沢直樹』(2013年)にて半沢の部下役を演じたことで注目度が高まり、2015年には月9ドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』に出演。2016年にはNEWS・加藤シゲアキの小説を映画化した『ピンクとグレー』で主演を務めることが決定している。 そんな中島は今年で22歳。司会のくりいむしちゅー・上田晋也は「いつの間にそんな大きくなったの」と驚きつつ、「ドラマとか映画とかでお忙しそうだけど、反響が大きかったのは?」と訊ねたことで、『半沢直樹』についてのトークが始まった。  堺雅人との共演は、「2回目だったんですよ。10歳くらいのときでしたね」。10年以上経過し、中島がすっかり成長していたため、顔を合わせた初日は気づいてもらえなかったという。しかし、翌日の撮影では「中島くーん! 久しぶりじゃん!」とにこやかに話しかけられたそうだ。中島が堺の顔マネをしながら当時の様子を再現すると、上田は「似ているね! 堺雅人さんの笑顔に!」と褒めた。  水川あさみ主演の『シェアハウスの恋人』で共演した大泉洋とも仲がよく、水川を含めたメンバーで談笑した際は、大泉からプライベートな悩みを打ち明けられたこともあったようだ。LINEでのメッセージ交換も行っており、街中のポスターや雑誌でお互いの写真や名前を発見したら、"パンチするポーズを決めて写真撮影して送付し合う"という遊びをしているという。以前には大泉から、HeySayJUMPの楽屋前に掲げられた中島の名前と一緒に映り込んだ写真が送られてきたことも。上田は「えっ? 楽屋ってことは中に君がいたんじゃないの?」とツッコむと、中島もハッと気づいたような表情を浮かべ「話しかけてほしかったですよね!」と笑った。 『デート〜恋とはどんなものかしら〜』で共演した杏とは個人的にやりとりをすることはないものの、撮影現場ではお笑いコンビ・バンビーノのリズムネタ「ダンソン」を一緒に練習していたそうだ。事の始まりは、杏が撮影の合間に突然「ダンソン!」と踊りはじめたこと。中島はネタを知らず「なんだそれ!?」と驚いていたが、元ネタとなる動画を見せられ「中島くん、マスターしようよ。踊れるからキビキビできるんじゃない? 一緒にやろうよ」と誘われたという。ここでMCの森泉が「見たい!」と言い出し、スタジオで披露することに。このネタは「ダンソン」と歌いながらステップを踏み、そのリズムに惑わされた動物を狩るというもので、中島はオチまでキレのある動きを見せた。  Hey! Say! JUMPの話題になると、同年代のメンバーと仲が良く、「カラオケに行って自分たちの曲を歌うこともある」と若者らしく遊んでいることを明かす。元男闘呼組の岡本健一を父に持つ岡本圭人は、男闘呼組の曲のみ、採点機能で高得点を出せるという。  また、山田涼介から届いた中島についてのコメントも紹介された。一見クールに見えるが、一発ギャグで場を盛り上げてくれる――という内容。スタジオで披露されたのは「アイドル誌の撮影における、テンションが以上に高いカメラマンのモノマネ」で、中島はその場で立ち上がり、ほとんど奇声に近い甲高い声をあげながら、全身を使って撮影の様子を再現し、スタジオは爆笑に包まれた。森が「口癖が変な人っているよね。撮りながら『キラキラキラキラキラ~!』とか。ウザい」と暴露するなど"カメラマンあるある"トークで盛り上がった。  番組の中盤では、中島の自宅で撮影したジーンズやカメラのコレクションを紹介するコーナーに。中学2年ごろから始めたドラムも自宅にあり、8ビート・2ビード・ジャズなどを演奏した。カメラのレンズの種類を細かく紹介するなど多趣味ぶりがうかがえたが、放送では解説トークが容赦なく早送りされ、ワイプに映った本人が「(この部分)大事大事!」と残念がるという一幕もあった。そのこだわりぶりに、「絶対平成生まれじゃないでしょ」と言われることもあるそうだ。  終盤では「モテ期」を振り返るトークに。小学校5年生のころ、上級生の女子に「壁ドン」で迫られ、先生に助けてもらったという思い出を明かした。上田が「それ告白されたの? 絡まれただけじゃないの?」と指摘すると、目を見開いて「絡まれただけかもしれないですね」と認めた。また、好きな女性として「しっかりした女性がいい」と中島。上田から「尻に敷かれたい?」と訊かれると「亭主関白じゃやってけないですよね」と返答し、「達観してるね! 大人だね!」と上田を感心させた。  俳優としても評価が高まりつつあるが、トークでも豊かなリアクションを見せた中島。Hey! Say! JUMPは22日~23日、『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)のメインパーソナリティをV6と共同で務めるという大役を控えている。 (文=近藤雅人)