女性客が牽引する秋の興行模様 絶好調『マイ・インターン』と、20億突破の『ヒロイン失格』

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【リアルサウンドより】  前回初登場1位の『図書館戦争 THE LAST MISSION』が、先週末の動員でも1位をキープ。しかし、土日2日間の動員13万351人、興収1億7381万9400円という数字は初週の約半分で、大きく勢いを落としている。同じく地上波テレビ局がガッツリと製作に関わっていて、客層が被りそうな作品として、今週末には三谷幸喜監督『ギャラクシー街道』の公開が控えていることもあり、このペースだと2年半前の前作『図書館戦争』を超えるのは難しそうな雲行きだ。  一方、2位の『マイ・インターン』は土日2日間で動員10万6352人、興収1億5190万6300円という結果に。ランキングも先週3位からアップして、動員前週比でも81%と好調が続いている。先週のコラムでも指摘したように、これは同系統の大人の女性向けの作品が同時期の公開作に少ないことが大きく影響しているはず。作品の評判も上々で、まだまだ数字を伸ばしそうだ。    公開5週目の『ヒロイン失格』は先週末も4位で、遂に累計興収20億円を突破。今年、同系統のティーン女子向け作品で20億を超えたのは、『ビリギャル』(累計興収28.3億)、『ストロボ・エッジ』(累計興収23.2億)に続いて3本目。他に今年の実写日本映画で20億を超えている作品が『HERO』、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(前篇)、『暗殺教室』、『アンフェア the end』、『寄生獣 前篇』の5本しかないことを考えると、いかにこのジャンルが現在の日本映画において大きなポジションを占めているかがわかる。  5位に初登場したのはキアヌ・リーブス主演のアクション作品『ジョン・ウィック』。169スクリーンという公開規模を踏まえれば仕方がないのかもしれないが、土日2日間で動員5万4639人、興収7855万9100円という数字は、アメリカ本国での大ヒットや作品の前評判の高さからすると少し物足りない。かつては、『マトリックス』シリーズや『スピード』シリーズによって数少ない「日本で確実に集客を見込めるハリウッド・スター」だったキアヌ・リーブスだが、女性ファンの減少が響いているのか、日本においては「完全復活!」とはいかなかった。  『マイ・インターン』や『ヒロイン失格』の好調ぶりを見るにつけ、世代を問わず、外国映画/日本映画を問わず、やはり日本の映画興行を引っぱっているのは女性客だということがわかる。女性の皆さん、『ジョン・ウィック』も、今週末公開の『ヴィジット』もとってもおもしろいので、是非劇場に! ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「ワールドサッカーダイジェスト」ほかで批評/コラム/対談を連載中。今冬、新潮新書より初の単著を上梓。Twitter ■公開情報 『マイ・インターン』 全国ロードショー中 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/myintern/

アトム・エゴヤン監督が『白い沈黙』で問いかけるものーー描かれない“空白の8年間”の意味とは

【リアルサウンドより】  映画において、観客の関心を引きつける役割を一手に担うという意味で、“ファーストカット”は非常に重要だ。カメラがパンする動作とともに真っ白な雪景色がゆっくりとスクリーンに映し出されるーー。アトム・エゴヤン監督の最新作『白い沈黙』は、そんなファーストカットで幕を開ける。そして、その真っ白な雪のイメージが示唆する“喪失感”や“空虚さ”、“不安感”が、映画を観終えたあとでも強烈に印象に残るのだった。
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 本作の舞台は、カナダのオンタリオ州に位置する街ナイアガラフォールズ。主人公マシューは、スケート選手を夢見る9歳の愛娘キャスを迎えに、スケート場まで車を走らせる。2人はその帰り道、チェリーパイを買うために行きつけのダイナーを訪れる。キャスを後部座席に残し、ひとりで店に入るマシュー。数分後、パイを手にしたマシューが車に戻ると、後部座席にいたキャスがいなくっている。周囲を探すがどこにもいない。何者かに拐われたと疑うマシューは、急いで警察に駆け込む。しかし、物的証拠がなく目撃者もいない上、過去に犯罪歴があることから、事件を担当するダンロップ刑事とコーンウォール刑事から、逆に容疑者として疑われてしまうマシュー。一瞬でも目を離したあなたが悪いと、妻のティナからも非難されてしまう。  そして、8年後。捜査は行き詰まり、キャスは結局見つからずに依然として行方不明のままだ。ティナと別居したマシューは、毎日車を走らせキャスを探し回っている。そんなある日、ティナの勤務先のホテルから、ヘアブラシやトロフィーなど、過去にキャスが所有していたものが次々と発見される。また、コーンウォール刑事はネット上でキャスに似た少女の画像を発見する。そして、マシューの元にもある異変が起こるのだった。
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 …と、ストーリーの全体像をまとめると上記のようになる。だが、時間軸がバラバラに組み替えられているので、そのまま流れを追っていると、その全体像を掴むのに少々戸惑う。雪景色のファーストカットの次のカット、つまり2カット目で犯人が登場してくるのだから驚きだ。そこから現在と過去の出来事をパズルのピースのように並び替えていくその構成は、サスペンス映画としての緊張感と、映画としての複雑性を我々に与える。そして、キャスが失踪してから現在に至るまでの“空白の8年間”が全く描かれないため、彼らがその間に何を考え、どのような行動原理で動いていたのか、我々にはわからない。犯人の動機やキャスの心情も明確にはわからない。映画としての構造の複雑さに加え、映画の中では描かれない事実や彼らの心情などを推測する必要があるため、観客にとっては非常に不親切な映画だと言える。しかし、1993年に実際に起きた「ウエスト・メンフィス3事件」を映画化した前作『デビルズ・ノット』でもそうだったように、“観客に対しての問題提起”というアトム・エゴヤン節が、これでもかというほどに炸裂した作品のように感じた。  “捕虜”や“人質”を意味する本作の原題『The Captive』。その原題が指すのは、誘拐された少女のことだと推測できるが、本作の登場人物は、それぞれが何かにとらわれて生きている。マシューは、自分の不注意でキャスが誘拐されてしまった過去にとらわれ、8年経ってもキャスの姿を追い続けている。同じくティナも、キャス喪失の過去にとらわれると同時に、それが原因で袖を分かつことになってしまったマシューとの関係にもとらわれている。また、ダンロップ刑事は、幼い頃に監禁事件に巻き込まれたという自身の過去にとらわれ、それが原因でさらなる事件に発展する。コーンウォール刑事も、元犯罪課で実績を誇ったという過去にとらわれているが故に、マシューに対して強固な姿勢で疑惑の目を持ち続ける。
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 本作では、監視カメラが象徴的な使われ方をしているが、これにも“とらえる側”と“とらわれる側”の関係性が生じる。エゴヤンが『The Captive』と原題に込めたその意味は、何かにとらわれて生きている我々に対しての問題提起なのかもしれない。そして、一見希望に満ちたかに思えるラストシーンも、映画の中では描かれない“空白の8年間”があるからこそ、ファーストカットの雪景色で覚えた“喪失感”“空虚さ”“不安感”が拭えないまま、ある意味不気味に脳内に焼きついて離れないのであった。 (文=宮川翔) ■公開情報 『白い沈黙』 TOHOシネマズシャンテほかにて公開中 原題:THE CAPTIVE 出演:ライアン・レイノルズ、スコット・スピードマン、ロザリオ・ドーソン、ミレイユ・イーノス 監督:アトム・エゴヤン 2014年/カナダ/112分/スコープサイズ/5.1ch/日本語字幕:佐藤恵子 配給:キノフィルムズ (c)Queen of the Night Films Inc. 公式サイト:shiroi-chinmoku.com

キスマイ玉森裕太、『青春探偵ハルヤ』のアクションに見るストイックな役者魂

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(C)タナカケンイチ

【リアルサウンドより】  若手ジャニーズタレントの中で、俳優としての飛躍がいま最も期待される人物のひとりが、Kis-My-Ft2の玉森裕太だろう。  Kis-My-Ft2は、設定されたお題に対し、各メンバーが自ら考えた脚本で、自分が最も“カッコイイ”と思うシチュエーションを演出し、彼らのファンではない一般女性100人にその評価をランキングしてもらうという深夜バラエティ『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ)で、人気に火が着き、いまや男女を問わず支持されているグループだ。そのジャニーズらしからぬ体当たりな企画は、ときに各メンバーの恥ずかしい一面さえも露わにしてしまうのだが、だからこそ視聴者は彼らの姿に笑いつつも、我が身を振り返って身悶え、共感し、心の中で密かに応援もしてきたのだ。  玉森裕太は、藤ヶ谷太輔や北山宏光とともに前列のイケメングループに属していて、『キスマイBUSAIKU!?』で披露する演技は比較的、高い評価を得てきた。イノセンスな性格ゆえか、あまり計算高い演出は得意ではないものの、とにかく女性の母性をくすぐるのが上手で、セクシーかつ紳士的に相手をリードする藤ヶ谷太輔と人気を二分する存在となっていった。しかしながら、少し天然なところもあるため、ときに理解しがたい不思議な演出を手がけて、一般女性から不評を買うこともしばしばあった。それはそれでチャーミングではあるのだが、各メンバーができるだけかっこよく100メートルを全力疾走するという企画では、非常にナヨナヨとした走りを披露し、一般女性から「前髪を気にして走る女子みたい」と評されるなど、苦笑を禁じ得ない部分もあった。  そんな玉森が、10月15日から放送開始したドラマ『青春探偵ハルヤ〜大人の悪を許さない!〜』(読売テレビ)で、主役の浅木晴也を演じている。同作は、キャンパス内ではアイドル的な存在ではあるものの、貧乏でいつもアルバイトに明け暮れている大学生・浅木晴也が、バイト感覚で危険な探偵まがいの仕事を引き受けるという青春ミステリだ。これまで玉森は、『美男ですね』や『信長のシェフ』などで、そのイケメンぶりを発揮してきたが、本作もまた、彼のイケメンぶりを堪能できる作品といって良いだろう。普段はクールだが実は正義感に厚く、年の離れた妹を大事にする優しい性格の持ち主というキャラクターは、まさに女子の理想を絵に描いたようである。  しかしながら、本作にはほかの出演作と比較して大きく異なる部分がある。玉森のアクションシーン、とりわけ“玉森ダッシュ”が、実に頻繁に確認できるのだ。そう、あの「前髪を気にして走る女子みたい」と評された走りだ。本人も『キスマイBUSAIKU!?』で、「よくドラマの撮影で『もっとかっこよく走ってください』って言われるんですよね」と、ネタにしていた部分である。ところが本作では、その走りはアクションスターのようにかっこいいとは言い難いものの、決して笑うほどのものではない。少なくとも、『キスマイBUSAIKU!?』のときよりは、ずっとたくましい印象だ。格闘シーンの身のさばきが、さすがはジャニーズと称えたくなる軽やかさのため、より運動神経が良く見えるのかもしれない。  思えば玉森は、舞台『DREAM BOYS』に2004年から出演し続け、2013年からは座長として主演を務めるほどになった役者だ。滝沢秀明や亀梨和也といった先輩たちの背中を追い、ジャニー喜多川が描いたその物語を、厳しい稽古によって自らのものにしてきた。『DREAM BOYS 2014』では、ソリッドに鍛え上げた肉体を披露し、同じグループでダンスの名手として知られる千賀健永と、手に汗握るボクシングシーンを繰り広げた。そう、玉森はかわいいだけの役者では決してない。その涼しげな表情の裏にある、熱いストイズムこそが、彼の色気であり、真価ではないか。 「将来的には、どんな役でもこなせる人になりたいけど……でもそれってたぶん、計り知れない程の努力が必要だと思う。それこそ、天才じゃないオレは一生努力しないといけない」(『QLAP!』10月号より)  11月21日に公開される『レインツリーの国』では、念願の映画初出演を果たす玉森裕太。甘くも切ない恋愛映画である同作が披露されるまで、まずは『青春探偵ハルヤ~大人の悪を許さない!~』で努力の人・玉森の磨きのかかったアクションシーンを堪能し、役者としての幅の広がりに期待しようではないか。 (文=松下 博夫)

森川葵、玉城ティナ、池田エライザ……秋ドラで注目したい5人の若手モデル女優たち

【リアルサウンドより】  最近、ファッション誌モデルから女優へ転身を果たすケースが目立っている。次々と放送開始している秋クールのドラマでも、そうしたキャリアを持つ女優は多い。そこで今回は、話題作に出演している『テディ・ゴー!』の森川葵、『JKは雪女』の玉城ティナと池田エライザ、『サムライせんせい』の石田ニコル、そして『いつかティファニーで朝食を』のトリンドル玲奈という5人にスポットを当て、彼女たちの魅力を探ってみたい。

森川葵

 クマのぬいぐるみを購入したら、相川翔演じる熱血刑事の魂が宿っていて、何故か奇妙なコンビを組むことになるというドタバタコメディー『テディ・ゴー!』で、連続ドラマでは初となる主演に抜擢された森川葵は、ネクストブレイク候補との呼び声も高い女優だ。2010年、若干15歳でファッション雑誌『seventeen』専属モデルとなった森川の魅力は、“似合いすぎている”と噂になったショートヘア。現在は同誌を卒業しているが、ファン層はやはり10代前後の男女が多い。しかし、映画『チョコリエッタ』では、その可憐なイメージとは裏腹に、役に合わせてヘアスタイルを坊主にするなど、体を張って演技に挑み、”大物”と評価された。髪型を一新してブレイクする女優は少なくないが、作品のためにトレードマークだったヘアーをばっさり切ってしまう度胸と、その演技の実力という面では、すでに他の若手女優を一歩リードしていると言えるだろう。

玉城ティナ

 『JKは雪女』で主人公の姉・雪女を演じるのは、1997年10月8日生まれの18歳、沖縄県出身の玉城ティナだ。2012年からファッション雑誌『ViVi』の専属モデルに起用され、人形のような愛らしい顔立ちでティーンの憧れの的になり、14年には史上最年少で同誌の表紙を飾っている。また、Twitterでは現在、フォロワー数が45万を超えるなど、10代~20代前後の女性から圧倒的な人気を誇っている。演技においては、セリフが棒読みすぎるとの評もあるが、その現実離れした存在感は一見の価値あり。まだまだ若手のため、今後の伸びしろに期待したい女優だ。

池田エライザ

 玉城ティナと同じく『JKは雪女』に出演。今作がドラマデビュー作となった池田エライザは、福岡県出身の19歳。2009年にファッション雑誌「ニコラ」の専属モデルとなり、表紙を飾ったことも。誌面では年齢が分からなくなるほど妖艶な色気を醸し出し、女性読者の憧れとなっており、映画『みんなエスパーだよ』では過激なセクシーシーンにも挑戦した。扇情的な“エライザポーズ”で一躍人気に火が着き、バラエティなどでも活躍の場を拡げている。醸し出す等身大のエロスによって、男性人気も急上昇中だ。

石田ニコル

 『サムライせんせい』で、元不良のシングルマザーという難しい役柄に挑戦しているのは、山口県出身の25歳、石田ニコルだ。2010年に開催されたファッションショー「神戸コレクション」でグランプリを受賞し、『sweet』『Gina』『BAIRA』など多くのファッション誌で引っ張りだこの人気モデルとなっている。グラマラスなバストと圧巻のスタイルで、20代~30代の女性から羨望を集めている存在だ。ドラマ2作目と演技の経験は浅いが、初出演の『ファースト・クラス』では、その美貌で人々を惑わす悪女を演じて評判となった。今作でも類稀なる存在感で、物語に奥行きをもたらすことを期待したい。

トリンドル玲奈

 『いつかティファニーで朝食を』で、彼氏と別れたのを機においしい朝食を求める主役・佐藤麻里子を務めるのは、いまやドラマ、映画、バラエティ番組と各方面で活躍しているトリンドル玲奈。現在23歳、オーストラリア出身のハーフ女優で、昨今のハーフ・モデル人気を牽引する存在のひとり。広告モデルに起用された後、『JJ』『ViVi』の専属モデルになった。3か国語が話せる才女でありながら、天然な性格のベビーフェイスというギャップで、女性のみならず、20代~30代の男性をも魅了している。今回、ドラマは初主演となるが、今年7月に公開した映画『リアル鬼ごっこ』でも主演を務めたばかりで、バラエティ番組から映画・ドラマへと主戦場をシフトしていることが伺える。現場スタッフからは“努力家”と評判がよく、実際にその演技力に磨きがかかってきているのが、今作で確認できるはずだ。  演技力においては未知数な部分が多いものの、すでに多くのファンを持ち、なにより独自の存在感を放っているモデル出身の女優たち。彼女たちに注目すると、昨今のトレンドが透けて見え、ドラマの楽しみ方がより一層拡がるのではないだろうか。 (文=鈴木聡美)

『オトナ女子』で教師役に挑む千葉雄大 “年下男子”ポジションの行方は?

【リアルサウンドより】
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『オトナ女子』公式サイトより

 10月15日(木)よりスタートするフジテレビ『オトナ女子』で、俳優の千葉雄大が初めての教師役に挑む。本作はいつまでも女子でいたい40歳の独身女性3人が、ダメ男に振り回されながらも幸せを手に入れるために奮闘するというストーリー。篠原涼子が約2年ぶりにドラマの主演を務めることでも話題になっている。  3人の息子を持つシングルマザーを演じる鈴木砂羽と惹かれ合う教師役で起用された千葉雄大について、ドラマ評論家の成馬零一氏に話を聞いた。  「千葉雄大はこれまで、“年上の女性に愛される気弱な後輩”という役どころで、人気を博してきました。デビュー作の『天装戦隊ゴセイジャー』ではゴセイレッド・アラタ役を演じ、映画『桜蘭高校ホスト部』で人気を確立、その後は、『きょうは会社を休みます。』、『戦う!書店ガール』などで活躍しています。一方、この木10ドラマ枠は『ディア・シスター』や『ラストシンデレラ』の様なアラサー、アラフォーの女性向けの作品が多く、三浦春馬さんや岩田剛典さんといった俳優の人気を後押ししてきました。同枠は彼らのようなイケメン俳優が大人の俳優として活躍するための登竜門の様なところもあり、彼らより上の世代の人たちにアピールする絶好の機会です。千葉雄大が今作でさらに人気を拡大するのは確実でしょう」  出演する作品のほとんどで弟キャラを演じていることから“可愛い年下の男の子”というイメージが広まっている千葉雄大。今回の教師役は今までと違い、大人な男性のイメージがあるがーー。 「年齢的には確実に大人になっているのですが、年上の女性との恋愛なので関係性という面では変わりません。今回の役も含め、着実に“可愛いキャラ”を掴んでいます。少し前のイケメン俳優って、外見だけで評価される事に対して葛藤があったり、本人の意図してないところで消費されてしまう事も多かった。でも、彼には、“かわいい男の子”として消費されることに対する躊躇は感じない。おそらく、福士蒼汰も同じタイプです。このポジションの俳優は意外に少なく、他に考えてもすぐには浮かんでこない。唯一無二に近い存在だからこそ極めてもらいたいです」  年齢的な見地から考えて、“可愛い”というイメージから脱却を計る俳優も居る中で、なぜ千葉雄大はそのイメージを保ち続けることができるのか。そこには、昨今のドラマ事情が関係していると同氏は続ける。  「『オトナ女子』などが特に象徴的なんですけど、最近のテレビドラマはアラサー、アラフォー世代に向けて作られているものが多く、年上女性との恋愛ドラマも増えているんです。そういった状況において、可愛い年下の男の子が求められるのは自然ですし、今後もこの傾向は続くと思います。映画だと若い世代に向けた『アオハライド』とか『ストロボ・エッジ』といった少女漫画系の役にも活躍の場がありますけど、ドラマにおける可愛い後輩役としては、彼が適任でしょう」  現在、26歳で独自のポジションを確立した千葉雄大。今作でさらに多くの女性視聴者を魅了しそうだ。 (文=鈴木詩織)

“宇宙最強”のアクション俳優、ドニー・イェンの魅力と凄み そのサクセス・ストーリーとは? 

【リアルサウンドより】  香港の映画スターには、スケールの大きい煽りがつくことが多い。『男たちの挽歌』などのチョウ・ユンファの場合は「亜州映帝」、『片腕ドラゴン』のジミー・ウォングの場合は「天皇巨星」などがある。そんな香港映画界で今「宇宙最強」と称される俳優がいる。それがドニー・イェンだ。そのアダ名のスケールの通り、彼は間違いなく現存する世界最高のアクション映画人だ。ここ日本では熱烈なファンから「ドニーさん」と呼ばれて親しまれているが、ジャッキー・チェンやブルース・リーに比べると、知名度はまだまだ低い。  『スターウォーズ』シリーズへの出演が決定し、先日から主演作『カンフー・ジャングル』の日本公開が開始され、マイク・タイソンとの対決シーンで話題の『葉問3』の予告編も公開された。世界的に盛り上がりを見せる現状は、ドニーに入門するには絶好のタイミングだと言えるだろう。そこで、今回はドニーのキャリアをまとめ、その魅力と凄みを総括したい。この記事がドニーの入門窓口となれば幸いである。  ドニーは1963年に生まれた。武術家の母から歩き出す頃には武術を仕込まれ、その後、中国の専門の学校に進学して武術を学ぶ。とは言え、真面目な優等生だったわけではなく、かなりヤンチャな生徒だったようだ。当時からブルース・リーの熱烈なファンだったドニーは、程なくして『マトリックス』で国際的に知名度を上げたユエン・ウーピンと出会い、映画界に入る。そして『ドラゴン酔太極拳』で主演デビューを飾る。その後、数年のブランクを経るが、再び映画に復帰。脇役でキレのあるアクションを見せながら、順調にキャリアを積み、ジェット・リー主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』で悪役を演じ、リーと演じた変幻自在の格闘シーンが高く評価された。しかし、本格的な大ブレイクは訪れなかった。悪役・脇役は多かったが、主演映画は少なく(傑作TVドラマ『精武門』では主演を務めたが)、いわゆる「知る人ぞ知る」という立ち位置に留まっていたのである。
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 そんな現状を打破したかったのか、90年代後半になると、自ら監督し、主演した『ドラゴン危機一発’97』を発表する。「俺の活かし方は俺が一番よく知っているんだ」とばかりに、低予算ながら迫力あるファイトシーンを作り上げ、格闘映画ファンの間で大いに話題になった。勢いに乗って監督主演第2作『ドニー・イェン/COOL』を発表するが、ここでドニーの悪い癖が出てしまう。それこそがドニーの最大の個性である、過剰なほどのナルシズムだ。実際ドニーは二枚目であるし、映画スターともなれば、ナルシズムは大切な才能だ。だが、この映画ではそれが行き過ぎた。全編を通してドニーのPV的な要素が強く、肝心の格闘シーンはほとんどない。銃撃戦メインの映画だったが、予算の限界か、見せ場というには地味すぎた。元々低予算だった上に、制作中のトラブルも重なり、同作の現場はかなり過酷だったという。ドニーの監督主演シリーズは同作で打ち止めとなった。  しかし、それでもドニーは歩みを止めなかった。ゼロ年代に入ると、ドニーは裏方として活躍を始める。香港映画は勿論、ハリウッド映画やドイツのTVドラマなど、様々な場所でアクション監督を務めた。また、チャン・イーモウ監督の超大作『HERO』ではジェット・リーと格闘シーンを演じ、アクション俳優としての現役感を強くアピールする。  そして2005年、満を持してドニーは1本の映画に主演する。監督は人間ドラマに定評のあるウィルソン・イップ。脚本は現代香港ノワールの旗手ジョニー・トーとの仕事で知られるセット・カムイェン。共演はジェット・リーの後継者と目される期待の新鋭ウー・ジン、そして香港アクションの大御所サモ・ハン。まさに盤石の布陣で制作されたその映画こそ、『SPL/狼よ、静かに死ね』である。ウー・ジン、サモ・ハンとの総合格闘技をミックスした迫力あるファイト・シーンは大いに話題になり、映画はヒットした。
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 そして、久しぶりに主演として現れたドニーは刑事役ながら、胸元がザックリ開いたシャツに、シルバーのアクセサリーという、およそ刑事に見えないファッションで登場し、変わらぬオレ様感を見せつけた。しかし、それは『COOL』の頃のように映画のバランスを崩してしまうものとは違う、あくまで映画全体のバランスの中でキラリと輝く、俳優ドニーの確固たる「個性」としての、より洗練されたナルシズムだった。  これを皮切りに、ドニーは再び俳優業をメインにしていく。この頃には、アクション俳優としての類稀なる身体能力、俳優としての長い経験で得た演技力、そして裏方で培ったアクション演出の手腕、すべてが高いレベルで整っていた。ここにきて、ようやくドニーは完成されたのである。  そして2008年、遂に大ブレイクを決定づける映画が発表される。『イップマン/序章』だ。実在した格闘家である葉問の活躍を描いた同作は、興行的・批評的にも大成功を収める。名実ともにドニーは、ジャッキー、ジェットと並ぶ「宇宙最強」のアクションスターになったのである。それは映画と真摯に向き合い続け、なおかつ自分を曲げなかった男の、数十年間に及ぶ長い苦労が報われた瞬間であった。  ドニー・イェン、御年52歳。たしかに単純な身体能力の面で言えば、『マッハ!』のトニー・ジャー、『ザ・レイド』のイコ・ウワイス、『デッドロック2』のスコット・アドキンスなどにはかなわないだろう。しかし、ドニーにはアクション監督としての経験で得た、確かな技術がある。ドニーはアクションの見せ方を心得ている人物なのだ。常に革新的なアイディアを格闘シーンに持ち込み、見たことがない格闘シーンを作り上げることができる。時代劇、SF、現代劇、コメディ、ノワール、どのジャンルでも対応できるのも強い。恐らく現代最高の格闘シーンを演出できる映画人の一人だ。  長い苦労を経て培われた確かな実力と、キャリアを通じて一貫する強烈なナルシズム(未だに劇中でよく服を脱ぐことを、ここに付け加えておく)。日本のファンはそれを理解した上で、リスペクトと親しみを込めて「ドニーさん」と呼ぶのである。  最初にも書いたように、ドニーさんのムーブメントは来年以降、国際的な盛り上がりを見せていくことは必至だ。長い苦労を経て宇宙最強まで成り上がった男、ドニー・イェン。そのサクセス・ストーリーはまだ続いているのである。 ■加藤ヨシキ ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。 『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。 ■公開情報 『カンフー・ジャングル』 監督:テディ・チャン 出演:ドニー・イェン/ワン・バオチャン/チャーリー・ヤン/ミシェル・バイ/アレックス・フォン/ルイス・ファン 撮影監督:ホーレス・ウォン 脚本:ラウ・ホーリョン/マック・ティンシュー 原作者:テディ・チャン/ラウ・ホーリョン 製作者:ワン・チョンレイ/アルバート・リー 製作総指揮者:ワン・チョンジュン/アルバート・ヤン/アルヴィン・チョウ アクション監督:ドニー・イェン 100分 中国・香港

藤竜也が明かす、独自の演技論「まずは自分をだますことが、心の支えになる」

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藤竜也

【リアルサウンドより】  観客動員数130万人、興行収入16億円を突破するなど、北野武監督の映画としては、『座頭市』(2003年)に次ぐ歴代2位の好成績を記録した『龍三と七人の子分たち』。そのDVD&Blu-rayが、10月9日(金)より発売&レンタルされている。引退した元ヤクザの“ジジイ”たちが、オレオレ詐欺や悪徳訪問販売でやりたい放題のガキどもと対決する、コメディ・タッチのエンターテインメント映画となった本作。リアルサウンド映画部は、このタイミングで主人公・龍三を演じたベテラン俳優・藤竜也への取材を敢行。メインキャストの平均年齢73歳(!)という前代未聞の本作が、観客の心を捉えた理由について、さらには俳優・藤竜也の“演技論”について、大いに語ってもらった。

「そもそも、こんなにお客さんが入るなんて、想像してなかった」

――本作に関しては、かなりいろいろなメディアの取材を受けていますよね。 藤竜也(以下、藤):そうですね。こんなにたくさん取材をやったのは、生まれて初めてかもしれない。やっぱり、メディアの反応も良かったということなんでしょうね。映画なんてものは、普通こちらからお願いして宣伝していただくようなものじゃないですか。なのに、これほどいろいろな方々に取材してもらって。それは本当にありがたいことですよね。 ――ひと通りの取材を受けて、どんな感想を持ちましたか? 藤:個人的には、ものすごく楽しみました。そう、僕ら役者っていうのは、撮影が終了したら、そこで仕事が終わったようなものなんですよ。だから、こうやってDVDのタイミングで話すようなことは、滅多になくて……それも含めて、楽しいですね。まあ、そもそも、こんなにお客さんが入るなんて、想像してなかったですから。それにまずビックリしました。“ジジイ”が8人も集まって……しかも、若い世代と掴み合いをやるわけじゃないですか? ――安田顕さん率いるオレオレ詐欺の若者グループと対決するという。 藤:そんな映画、ちょっと信じられないわけで……それが面白がられるっていうのは、いったいどういうことなんでしょう? 逆に、僕が聞きたいですよ。
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――やはり「そんな映画はなかった」というのが、大きいのではないでしょうか。年配の方々と若者たちがこういう絡み方をする映画って、あまりなかったですよね。 藤:ああ、年寄りたちと若者が、お互いにやり合うような? でも、言われてみれば、確かにそうかもしれないですね。昔、流行歌であったじゃないですか。「男と女のあいだには、暗くて深い川がある」って。若い世代とジジイたちのあいだにも、そういう川が流れていたのかもしれないですね。で、若い人たちが、川の向こうから「おーい」って声をかけたら、ジジイたちが「なんだー」「こっち来てみろよー」って応えたというか。そんな感じなのかもしれない。 ――確かに。 藤:でも、個人的には、そういう映画のほうがいいですよね。ジジイたちが若者に、上からものを言っているような映画は、僕はあまり好きじゃないな。やっぱり、メッセージ性とかお説教臭さが無いところが、良かったんですかね? 観るときにあまり負担にならないというか……むしろ「バカみたい」っていう(笑)。

「今回の役に関しては、ほとんど何の準備もしてないです」

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――そこで主演の藤さんが果たした役割は、非常に大きかったように思います。 藤:いやあ、そのへんはどうだろう。僕自身は、全然自信が無かったというか……いつも大体そんな感じなんですよ。実際に撮影が始まるまでっていうのは、その自信のなさを、どう克服しようかってことしか考えてないというか、それが仕事みたいなものなんですよね。だから、撮影前に自分の気持ちを整えて……自分がデザインした役になれるように、いろいろと準備をするんです。「本当に俺でいいの?」って思いながら。 ――ちょっと意外です。今回は、事前にどんな準備を? 藤:いや、今回の役に関しては、ほとんど何もしてないです。若い人は知らないかもしれないけど、今回みたいなアウトローの役は、これまでずいぶん演じているんですよ。だから、基本的にその“切り口”は分かっている。 ――“切り口”と言うと? 藤:そういう役の場合は、まず「“恐怖”って何だろう?」というところから考えていって……あと、これは誰でもやっていることだけど、その人物の出身地であるとか、そういう設定がある場合は、実際その土地に行って、自分の目でその風景を見てみるんです。その町をうろうろ歩きながら、「この人は、このへんの学校に通っていたのかな?」とか「この郵便局から手紙を出していたのかな?」とか、いろんなことを考えて。そうすると、だんだん役が馴染んでくるんですよね。 ――なるほど。 藤:まあ、そんなのは、何の足しにもならなかったりするんだけど(笑)。ただ、少なくとも自分のなかでは、それが支えになるんですよ。まずは、自分をだますというかね。僕の場合、事前にそういうことをやらないと、何か不安なんですよね。 ――しかし、今回の「龍三」役を演じる際には、特にそういうこともしなかったんですね。 藤:だって、こういうコメディ仕立てのものっていうのは、これまでやったことがなかったから。そんなの、いまさら勉強のしようがないというか……何と言っても、北野武さんが監督なんだから、そこはもうお任せしようと。僕は、与えられた役を一生懸命やればいいと思っていましたね。

「『この人たち、バカじゃないの?』って、笑って観てもらえたらうれしいですね」

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――とはいえ、実際に映画を観ると、なかなかのコメディリリーフぶりで……。 藤:そう見えましたか(笑)。じゃあ良かったですね。僕自身は、コメディをやっているつもりもなかったんだけど……そのへんは、北野監督のおかげでしょう。得をしました。 ――コミカルなだけではなく「龍三が可愛い」という女性の声も多かったようですが。 藤:そこで言っている「可愛い」っていうのは、今の世の中においてキーワードになっているような「可愛い」でしょ? 「あれ、可愛くない?」とか、よく若い女性が言っているじゃないですか。不思議なトーンでさ(笑)。まあ、英語で言うところの「キュート」ってことなんだろうけど、“ジジイ”の何がキュートなんだろうね。普通“ジジイ”なんてものは、何かしらうるさいことを言って、煙たがれるような存在なのに。それを「可愛い」って言われも、こっちとしては「ウソだろ?」ってぐらいなもので。まあ、悪い気はしないですけどね。嫌われるよりは、よっぽどいいです。 ――ただ、この映画は、そういったコメディ的な可愛らしい要素がありつつも、それだけではないというか……どこか哀愁のようなものも、ちょっと感じられますよね? 藤:そうかもしれないですね。一回目観たときは感じなかったけど、二回目観たらそういう哀愁とかペーソスみたいなものを、ちょっと感じましたね。まあ、それを出そうとしてやったわけではないんですけど。 ――はい。そこはかとなくにじみ出る哀愁というか。 藤:そうですね。映画の作り方として、そういうものを売りにするのは、ものすごい簡単なんですよ。それを強調すればいいだけの話だから。でも、北野さんは、絶対そういうことはしないですよね。そういう叙情性を排しながらも、なおにじみ出るものというか……だって、生きていること自体が悲哀に満ちているわけじゃないですか。歳をとってくれば、ますますそういう哀愁の色は濃くなってくるわけで。だからこそ、それをやっちゃおしまいよっていう北野さんの表現者としての自負が、やはりそこにはあったように思います。にもかかわらず出てしまうものというかね。 ――わかります。 藤:だから、ちょうど良かったんじゃないですかね。やっぱり、何かを押しつけられるのは嫌だものね。自分で勝手に感じるのはいいけど、それを押しつけられたら、やっぱりつまんないじゃないですか。 ――そうですね。では最後、改めて『龍三と七人の子分たち』の見どころを。 藤:まあ、とりあえず、笑って観ていただければ、うれしいですね。特に意気込むことなくダラーっと観て、「この人たち、バカじゃないの?」って笑ってもらえたら、僕は本望ですね。もちろん、そのあとに、いろんなことを、それぞれ感じてもらえたらうれしいですけど、それはもうみなさんにお任せします。 (取材・文=麦倉正樹)
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『龍三と七人の子分たち(通常版)』(バンダイビジュアル)

■作品情報 『龍三と七人の子分たち』 10月9日(金)よりDVD&Blu-rayリリース 「特装限定版」 ※2枚組 Blu-rayスペシャルエディション(BD+DVD)¥7,000(税別) DVDスペシャルエディション(DVD+DVD)¥6,000(税別) <特典ディスク(DVD)> ★総尺150分超えの豪華特典ディスク付き! メイキング「北野流 ジジイ映画の作り方」(ナレーション:下條アトム)(76分)  キャストインタビュー(一龍会 その壱/一龍会 その弐/京浜連合&ママ)(33分) 完成披露試写会舞台挨拶(11分)初日舞台挨拶(21分)島田洋七さん スペシャルトーク(15分) ミニ特番「俺たちに明日なんかいらない ジジイが最高スペシャル!!」(2分)海外版予告編(1分) /総尺159分 「通常版」 Blu-ray¥4,800(税別)BCXJ-1029 DVD ¥3,800(税別)BCBJ-4714 <特典内容> 【映像特典】 ★特報 ★予告 ★TVスポット ★特別映像「ジジイ映画の楽しみ方」 発売・販売元:バンダイビジュアル   (C)2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会

内田有紀の再評価作となるか? 型破りな設定が話題の『偽装の夫婦』を分析

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『偽装の夫婦』公式サイト

【リアルサウンドより】  10月7日よりスタートした天海祐希主演の新ドラマ『偽装の夫婦』(毎週水曜22時~/日テレ)が、初回平均視聴率14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調な滑り出しをみせた。『女王の教室』(2005年)や『家政婦のミタ』(2011年)など、これまで数々のヒット作を生み出してきた脚本家・遊川和彦が、8年ぶりに天海祐希とタッグを組んだことも話題となっているこのドラマ。固く心を閉ざした人嫌いの主人公(天海祐希)が、とある事情によって、かつて愛した男(沢村一樹)と「偽装結婚」する……という話とは聞いていたけれど、実際初回の放送を観てみたところ、これがなかなかどうして、相当ぶっ飛んだ作品となっているのだった。  ある朝の風景。本の山に囲まれた自室で目覚めた嘉門ヒロ(天海祐希)は、オペラのCDを流しながらレトルトのカレーを温め、そこにソースをバシャバシャかけて平らげる。クローゼットには、同じ形の白いシャツがズラリ。そして、鏡の前で笑顔の確認。これは予想以上に変わった人物であるようだ。しかし、驚くのはこれからだ。職場である図書館に向かう途中、マナーの悪い幼稚園児に「母親のしつけが悪いから、そんなガキになるんだよ」、朝からいちゃつくカップルに「おいおい、ここはおめ~の家じゃねえぞ」、親とLINEで喧嘩している女学生に「だったら、ひとりで生きろよ。小娘が!」と、心の中で悪態をつきまくるのだ。その微笑を絶やすことなく。  図書館にやって来た園児たちに、絵本の読み聞かせをするヒロ。そこで彼女は、子どもたちを引率してきた園長代理の男性と、唐突に“運命の再会”を果たす。陽村超治(沢村一樹)……彼こそは、25年前、彼女が心を閉ざすきっかけとなった人物なのだ。かつてと変わらない軽薄さで、ヒロとの再会を喜ぶ超冶。その晩、改めて超冶と落ち合ったヒロは、彼に積年の疑問をぶつける。「25年前、どうして私を捨てたの?」と。しかし、その疑問は、瞬時に氷解する。「俺、ゲイなんだ……」。挙句の果てには、「お前のおかげで、自分に正直に生きる決心がついたんだ!」と感謝される始末。さらに、超冶はたたみかける。余命わずかの母親を安心させるため、「俺と結婚してほしい」と。何という超展開!  しかし、これがなかなか面白い。心を固く閉ざしながら、なるべく他人と関わらないように生きてきたヒロ。彼女が心を閉ざした理由は、超冶の一件だけではなかった。少女時代より、何事も如才なくこなすことができた彼女は、どこにいっても目立つタイプの子どもだった。勉強はできるし運動神経も抜群、ピアノもちょっと練習しただけですぐに弾けてしまう多彩な女の子。まわりの人たちは、そんな彼女に対して一方的な劣等感を抱きながら、勝手にダークサイドに落ちていった。それがヒロには、たまらなく嫌だったのだ。以降、何事も本気を出さず、なるべく目立たぬよう、彼女は生きてきた。しかし、彼女の前に再び現れた超冶は、その内面をズケズケと言い当てるのだった。「やめなさいよ、そんなつまんないこと!」、「私がいたらまわりの人間を不幸にするとか、自分に呪いをかけてるんじゃないわよ!」、「自分にかけた呪いは、自分で解くしかないのよ!」。あれ? 何か絶賛上映中のアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』みたいな話になってきたぞ。ん? “ヒロ”っていう名前、ひょっとして“ヒロイン”から来ているのかしら?  そのエクストリームな人物造形(ヒロの家族関係が、また強烈なことになっている)からも分かるように、本作の基調となるトーンは、思いのほかコメディだった。しかし、その内面には、案外シリアスな“リアル”が詰まっている。まわりの人間とうまくやっていくためには、良くも悪くも自分を押し殺す必要があるのだろうか。それはたとえ、家族や夫婦であっても、変わらないのか。というか、そもそも“家族”や“夫婦”、さらには“誰かを愛する”とは、どういうことなのか。『偽装の夫婦』……見方によっては、ある種、素っ気ないタイトルであるにもかかわらず、そこでコミカルに描きだされるものには、かなりの含蓄が詰まっているようだ。  そして、もう一点。初回を観た限り、個人的ないちばんの発見は、“謎のシングルマザー”役として登場する、内田有紀のミステリアスな“可憐さ”であった。小さな娘の手を取り、左足を引きずりながら(なぜ?)歩く内田有紀のハッとするような美しさ。そう、何を隠そう筆者は、ドラマ『ひとつ屋根の下』(1993年)、『北の国から 2002遺言』(2002年)といった作品はもとより、松尾スズキ原作・監督の映画『クワイエットルームへようこそ』(2007年)、芥川賞作家・絲山秋子による原作を金子修介監督が映画化した『ばかもの』(2010年)、星野智幸による原作を三池聡監督が映画化した『俺俺』(2013年)など、近年の内田有紀出演映画を高く評価する者なのだ。特に『ばかもの』の彼女の演技は、本当に素晴らしかった。その彼女が、かなり重要な役として配置されているらしい。しかし、第一話の最後、彼女は天海祐希演じるヒロに、こうのたまうのだった。「私たちの家族になってくれませんか?」「私、あなたのことを好きになってしまいました」。劇中のヒロの台詞じゃないけれど「はい?」である。というか、沢村一樹演じる超冶の“ゲイ”という設定を含め、このドラマは、“家族”や“夫婦”、さらには“愛”といった問い立ての先に、男女の“セクシュアリティ”の問題をも射程してゆくのだろうか? それはかなり、野心的な試みであるように思われるのだが……ということで、とりあえず次週も観ること決定です! (文=麦倉正樹)

武田梨奈が明かす、過激シーンを乗り越えた心境「落ちる所まで落ちて、見いだせる強さもある」

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【リアルサウンドより】  四肢をなくした元ヤクザ・勝浦茂雄の壮絶な生き様を描いた問題作『木屋町DARUMA』(榊英雄監督)が、10月3日より公開されている。大手出版社が軒並み刊行を拒んだという丸野裕行の小説を映画化した本作では、勝浦茂雄役の遠藤憲一が鬼気迫る怪演を見せているほか、三浦誠己や武田梨奈といった俳優たちも、生々しい体当たりの演技で自身の新境地を切り拓いている。今回、リアルサウンド映画部では父親の借金を返済するために風俗嬢となる娘、新井友里役を演じた武田梨奈にインタビューを行った。前回のインタビュー【武田梨奈が語る、女優としての次のステップ「アクションだけではない、奥行きのある演技がしたい」】にて、人間の暗部も表現できる女優になりたいと語っていた彼女は、過激なシーンの数々にどのような心境で挑んだのかーー。

「卑猥な台詞を言うのは、かなり自分と格闘する必要があった」

ーーまずは今作に出演することが決まったきっかけを教えてください。 武田:よく共演している島津健太郎さんからお花見に誘われて、行ってみたら監督や役者さんなど、映画人がいっぱいいて、恐縮だなと思いながら隅っこでご飯を食べていたら、「君、武田梨奈さんだよね?」って、今作に出演してキャスティングも手がけている木下ほうかさんが話しかけてくださったんです。それで、「今度、こういう映画を撮りたいんだけど、よかったら台本を読んで感想をちょうだい」って、台本を渡されて。読んでみたら、正直なところ感想が言い難い作品だったのですけれど、これに出演すれば役者としての幅が広げられるんじゃないかな、とも思いました。事務所の人にそのことを伝えたら、最初は首をかしげられたけれど、話し合いの末に出演することになりました。 ーー前回、『TOKYO CITY GIRL』のインタビューの際に、武田さんは人間の暗部も表現できるような奥行きのある女優を目指したいと語っていました。今作は裏社会を描いた作品ということもあり、かなり過激なシーンもたくさんありましたね。 武田:そうですね。現場では、遠藤憲一さんが演じる手足のないヤクザの勝浦茂雄と初めて会う冒頭のシーンから、榊監督はじめ、皆さんにはかなり追い込んでいただきました。借金取り立ての嫌がらせとして、新井家に勝浦がやってくるんですけど、私が演じた女子高生の新井友里は、いきなり勝浦にセクハラをされるんです。でも、私は大先輩方との共演ということもあり、緊張していてなかなか殻が破れなくて、何度もNGを出してしまいました。どうしても“お芝居”にしかならなくて、榊監督には「お前はもう帰れ!」って、何度怒鳴られたことか。とにかくずっと怒られっぱなしの現場で、精神的にもかなり追い詰められました。でも、遠藤さんをはじめ、ほかの役者さんたちは「大丈夫だよ、何回だって付き合うから」って言ってくださって……飴と鞭の多い現場で、だからこそ得るものも大きかったように思います。もちろん、どの作品のどの役柄にも難しさはあるけれど、個人的にはこれまでの作品の中で一番、葛藤の多い作品でした。 ーー冒頭のシーンは、もはや演技には見えなかったです。 武田:かなりショッキングなシーンですよね。皆さん、ベテランの役者さんなので、どんどんアドリブを入れてくるんです。おかげで、自分が思っている以上のリアクションが出てきたのかなって思います。
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ーーヒステリーを起こして暴れたり、男性を挑発したり……とにかくこれまでの武田さんでは考えられないシーンの連続で、観たひとはかなり驚くと思います。 武田:普段、生活をする中であそこまで感情をむき出しにすることはないから、本当に難しかったです。特に私は、小さい頃から空手をやっていて、感情をコントロールして表に出さない訓練をしてきたので、余計に難しく感じたように思います。空手の試合では、たとえ痛くてもそれを顔に出してはいけなくて、練習中も絶対に泣いてはいけないんです。泣くときは、トイレに行って誰にも見られないように泣けって教わってきたから、あんな風に人前で叫んで暴れたのは、初めての経験でした。自分の中にあった感情のキャパシティを超えた感じで、後半は自分でも何をしたのか覚えていないくらいです。カットがかかった瞬間、方言を指導してくれている方に「よくあんな言葉、アドリブで出てきたね」って言われて、本当に無意識で暴れていたんだなって。それくらい追い込まれたし、そういう空気を作ってくれた先輩方のおかげで、これまでに見たことのない自分に出会えたんだと思います。
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ーー普段、毅然とした印象の武田さんが演じたからこそ、衝撃的なシーンになっていたと思います。後半、風俗嬢にすっかりなりきって、父親に卑猥な言葉を次々と投げかけるシーンもすごかったですね。 武田:やっぱりあのシーンは一番葛藤しましたね。木下ほうかさんや榊監督には、「女の色気をムンムンに出してほしい。無垢な少女から豹変してほしい」って言われていて、「一回キャバクラにも行ってみたら?」とも提案されていました。キャバクラで働きこそしなかったんですけど、普通は女の子がひとりで行けないような夜の街に行ったりして、なんとかその空気をつかもうと努力はしましたね。皆さんから「本当にこのセリフを武田が言えるのか?」って心配されていて、それも悔しかったから、なんとか覆したかったんです。それで、吹っ切れてあのシーンをやったら、カットがかかった瞬間、寺島進さんが走ってきて、「お前、いったいなにがあったんだ?」って驚かれました。あれほど卑猥な台詞を言うのは、かなり自分と格闘する必要があったけれど、結果的に強烈なシーンになったと思います。正直、親に見せられるかなって不安はありますが(笑)。

「全編を通して“人間のしぶとさ”を感じました」

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ーーでも、武田さんがアクション以外でも実力を発揮できる女優だということは、多くのひとに伝わると思います。映画の中で友里は、人としてどんどん落ちぶれていくわけですが、そのことについてはどう思いましたか? 武田:最初に台本を読んだときは、「友里はかわいそうな女の子だな」という感想しか抱いていなかったんですけれど、実際に演じてからは、人間は落ちる所まで落ちて、初めて見いだせる強さもあるのかもしれないと思いました。諦めというか、一定のラインを越えちゃうと、もう開き直ってしまうというか。最後の方の友里は気が触れてしまっているけれど、セクハラをされて怯えていた頃より、精神的にタフになっている部分もあると思う。少なくとも、寺島進さんが演じる父親よりは強くなっていた。だから、落ちていくのはもちろん不幸なことなんだけど、それでも生きていこうとするしぶとさが、人間にはあるんじゃないかなって。 ーーギリギリまで追い込まれた人間の強さというのは、この映画のテーマのひとつかもしれません。 武田:そうですね。正直、男の美学とか裏社会の壮絶さを描いた作品なので、私には理解できない部分も多かったけれど、だからこそ、そこに染まりきらない友里を演じることができたとも思います。また、作品が完成した後、事務所の方と一緒に試写を観たのですが、男性と女性で大きく感想が違っていたのは、すごく印象深かったですね。男性は「かなりエグい作品だと聞いていたから覚悟していたけれど、それよりむしろ、勝浦や坂本(三浦誠己)に共感するところが大きかった」という感想が多かったのに対し、女性は「トラウマになってしまうようなショッキングな作品だった」という感想が多かったです。私も基本的には女性側の感想と同じだけれど、全編を通して“人間のしぶとさ”みたいなものは感じました。 ーー武田さんは、ご自身をしぶとい人間だと思いますか? 武田:わたしはかなりしぶといですよ(笑)。自分自身のことに関してはいつも納得していなくて、何かに挑戦して、自分を追い込んでいないと気が済まないタイプなんですよね。面倒臭い性格だし、もうちょっと器用に生きれたら良いなとも思うけれど、もし器用なタイプだったら、そもそもこの仕事はしていないはず。なにもせずに気楽に生きている自分は嫌なんですよ。多分、こういう性格になったのも、空手をずっと続けてきた影響があると思う。空手は対戦もするけれど、結局は自分自身との戦いで、試合に負けるって思ったら、本当に負けちゃうんですね。だから、最後の10秒まで気を抜くことができないし、そこで自分が試されるものでもあるんです。空手のそういう部分は、役者の仕事とも通じる部分があると思います。
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ーーたしかに武田さんはストイックな側面が演技にも活かされていますよね。次はどんな役柄に挑戦してみたいですか? 武田:う〜ん、恋愛ものとか、アクションとか、とにかくいろんな役柄に挑戦してはみたいという願望はあるんですけど、最近はキリが無いので、とにかく片っ端から人間を演じてみたいっていう気分なんですよね。だから次は、まったく違う役柄を演じているかもしれない。自分がどう変わっていくのか、わからないからこそ楽しみでもありますね。 (取材・文=松田広宣) ■公開情報 『木屋町DARUMA』 2015年10月3日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー キャスト:遠藤憲一、三浦誠己、武田梨奈、木下ほうか、寺島進、木村祐一 監督:榊英雄 (c)2014「木屋町DARUMA」製作委員会 公式サイト:http://kiyamachi-daruma.com/

寺田心ら『龍三と七人の子分たち』パッケージ化記念イベントに出演 元ヤクザ・龍三たちに扮する

【リアルサウンドより】  映画『龍三と七人の子分たち』のDVDとBlu-ray化を記念して、10月5日に行われたイベントに人気子役・寺田心ら 8名が出席。本作で大暴れする元ヤクザに扮した“こども応援隊”の結成式が行われた。   オールバックにスーツ姿が印象的な龍三に変身した寺田心は「今日はみんなそれぞれ気持ちもなりきってます! カッコイイヒーローになれて僕たちもとても嬉しいです」と満面の笑みで話した。  また、「監督・北野武(ビートたけし)を知っているか」という質問に対しては全員が挙手し、「監督さんも役者さんもお笑い芸人も同時にできてすごい」、「いろいろ面白いことができてとてもステキ」と賞賛した。  本作のDVDとBlu-rayは10月9日にリリースされる。
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『龍三と七人の子分たち(通常版)』(バンダイビジュアル)

■作品情報 『龍三と七人の子分たち』 10月9日(金)よりDVD&Blu-rayリリース 「特装限定版」 ※2枚組 Blu-rayスペシャルエディション(BD+DVD)¥7,000(税別) DVDスペシャルエディション(DVD+DVD)¥6,000(税別) <特典ディスク(DVD)> ★総尺150分超えの豪華特典ディスク付き! メイキング「北野流 ジジイ映画の作り方」(ナレーション:下條アトム)(76分)  キャストインタビュー(一龍会 その壱/一龍会 その弐/京浜連合&ママ)(33分) 完成披露試写会舞台挨拶(11分)初日舞台挨拶(21分)島田洋七さん スペシャルトーク(15分) ミニ特番「俺たちに明日なんかいらない ジジイが最高スペシャル!!」(2分)海外版予告編(1分) /総尺159分 「通常版」 Blu-ray¥4,800(税別)BCXJ-1029 DVD ¥3,800(税別)BCBJ-4714 <特典内容> 【映像特典】 ★特報 ★予告 ★TVスポット ★特別映像「ジジイ映画の楽しみ方」 発売・販売元:バンダイビジュアル   (C)2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会