ジブリ高畑勲監督、世界で評価される理由は? 宮崎駿監督との比較から作家性を探る

【リアルサウンドより】  「彼の通ったあとは、ぺんぺん草も生えないですからね」   当時、『おもひでぽろぽろ』のプロデューサーを務めていた宮崎駿が、苦笑いしながらそう表現したのは、同作の監督を務めた、日本アニメーション界の重鎮、高畑勲のことである。  完璧主義者で理想の高い高畑監督の異常なこだわりは、用意された時間と労働力を、限界を超えて費し、スタジオジブリをはじめとする製作環境の屋台骨を軋ませながら、今までに規格外の名作を生み出してきた。最近になって、そのジブリも、高畑・宮崎両監督が、長編作品からの引退を示唆すると、当時製作中だった『思い出のマーニー』を最後に、早々に作品の製作がストップしてしまった。それほどまでに、このスタジオは、「両監督のためのもの」であったという事実が分かる出来事だ。しかし、それも無理はないと思わせるのは、ジブリのみならず、現在の日本の若手・中堅アニメーション監督と比べても、その演出の力量に、あまりに歴然とした差があると感じさせるからだ。  『かぐや姫の物語』では、惜しくもアカデミー賞の受賞を逃した高畑勲監督だが、この度「アニメ界のアカデミー賞」とも呼ばれるアニー賞で、アニメ界の功労者に贈られる「ウィンザー・マッケイ賞」を受賞した。過去にウォルト・ディズニーやフレデリック・バック、そして川本喜八郎、手塚治虫、宮崎駿、大友克洋など日本人クリエイターにも同賞が贈られているが、高畑監督の作品が世界に与えた功績を思うと、むしろ受賞は遅すぎるといえるかもしれない。今回は、世界が評価する高畑作品のすごさはどこにあるのか、宮崎駿監督との比較も交えながら考えていきたい。  東映動画時代、監督として頭角を現し始めた高畑勲は、右腕として宮崎駿を見出し、その後数十年、お互いの作品に協力し、また競い合いながら関係を続けてきた。それまでミリタリーや、東映動画『白蛇伝』などのアニメ美少女に夢中だった宮崎が、東大仏文科出身である高畑の、インテリジェンスや思想、文化的な豊かさや高尚さに傾倒し、憧れていったのは想像に難くない。宮崎は、高畑監督のために身を粉にして作品のレイアウトなどを担当し、作品の質を大幅に向上させた。宮崎は後に、「青春を全て高畑に捧げた」と語る。  主に日本のTVアニメで使われた、数枚の動画を繰り返すことで簡略化を図る「リミテッド・アニメーション」に対抗し、本来のリッチな動きに立ち戻る「フル・アニメーション」にこだわることで、繰り返しの鑑賞にも堪える、高い質を持った作品が、高畑らを中心とした、熱意を持つ優秀なスタッフによって作られていく。だが宮崎駿は、高畑監督の静的な作風に次第に不満を感じ、冒険娯楽活劇を自分で監督することに熱意を燃やし、その後、絶大な人気を集めていく。また高畑も、「それとは違うものを作りたい、作らざるを得ない」と、さらに自分の作風を深化させ、同じスタジオの中にいながら、二人の道は分かれてゆくことになる。  自分で絵コンテを描き、自らが陣頭に立つ「闘将」である宮崎駿と比べ、高畑勲は、自分で作画をしない。彼は、「ディズニーは、すでに無声映画時代から絵を描いていません。あとの半生は、アンサンブルを作り出すことに徹していました」と言っている。ここから、「日本のディズニー」の役割を目指し、自分が日本アニメーションの道を切り拓こうという、高畑監督の強い意志を感じるのである。その達成のためには、独自のアニメ表現を模索することが何より必要だった。  そのひとつが、「日常表現」へのこだわりだ。宮崎駿が、高畑監督の最高傑作だと言う、TVアニメ「アルプスの少女ハイジ」では、地味な生活の描写を、リアリティを持って丁寧に描きあげることで、「生活を通して人間の本質や美を描き得る」ことを証明した。その後、プロデューサーとなった宮崎の資産を投じさせて撮った実写ドキュメンタリー『柳川堀割物語』は、日本に残る、古い水路や水門の仕組みや歴史、そこでの生活について執拗に追った、ただただ研究的な作品である。こんな作品を作ってしまう、病的なまでに他の追随を許さない「生活への探究心」が、凄まじい「静的な熱」を、以後の演出作品にも与えていく。  もうひとつは、アニメーションによる映像表現への実験的取り組みである。代表的なのは、『ホーホケキョ となりの山田くん』で試みられた、従来のペッタリした色の動画とは異なった、「紙に描いた絵が、塗った色がそのまま動き出す」ように見えるという、画期的な表現方法だ。それは監督が研究する、カナダのアニメーション作家フレデリック・バックの作品をはじめ、ロシアや中国のアニメーションの技術を発展させた、非ディズニー的な映像へのアプローチでもある。世界的にCGによる実写的な3D表現が主流になりつつあるなかで、CG技術を使い、手描きの味を活かすという独自性と意義は、日本よりも、むしろ海外で評価され、「山田くん」は、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に永久収蔵されることにもなった。  現時点で最後の作品となる『かぐや姫の物語』は、そのふたつの方法論と美学を極限まで突き詰める、高畑勲監督の代表作といえる傑作になった。さらに、この作品は、理解しづらい「竹取物語」の内容を、仏教哲学や、社会における女性の苦難などを中心に、わずかに改変することによって、より普遍的で、現代に必要とされる作品に生まれ変らせている。原作のテーマを追求し、考え抜くことで、さらに深いところで作品の本質をとらえる。世界の名作や宮沢賢治文学、そして古典に至るまで、高畑監督がアニメ化して新たな生命を吹き込むことができるのは、他を寄せ付けない知性と教養、そして高い志あってこそである。同作の西村プロデューサーは、「高畑監督は、雑談レベルの日常会話ですら高尚すぎて、まともに付いていける人が誰もいないぐらい、ジブリの中でも特別な存在でした」と語っている。  高畑監督作の描くヒロイン達、ヒルダ、ハイジ、じゃりン子チエ、そしてかぐや姫などは、主体性を持って、自分の力で前に進んでいく強さを持っている。かぐや姫が都の屋敷を逃げ出し、山へ走り出すシーンを覚えているだろうか。「女性は男のための消費物である」という封建的で男性優位の社会のシステムに気づいたかぐや姫は、その世界から必死の逃亡をする。与えられた十二単を脱ぎ捨てながら、都の大路を、野山を一気に走り抜ける。この「逃亡」は、現在の、観客に媚びる都合のよい女性キャラの魅力を下敷きにしたアニメが蔓延する現状を見続けてきた、高畑監督の心の叫びでもあるだろう。アニメーションは観客の欲望をそのまま叶えてあげるような、ただの商品でも消費物でもない。「アニメーションとは、全ての表現に勝る芸術である」。この監督の高い志とアニメーションに人生を捧げてきた執念が、ここでの狂気を帯びた怒りの疾走表現に宿っているのである。だからこそ、この場面は本当に感動的だ。  日本にいると、ついついアニメーションというのは盤石な文化で、「日本はアニメ先進国である」と思ってしまう。だがその中で、本当に観る価値のある作品はどれだけあるだろうか。優れて芸術的な作品を生み出すには、ウォルト・ディズニーや東映動画の大川博のように、常識を逸脱したトップの狂気じみた決断があってこそだ。高畑監督や宮崎監督は、スタジオジブリで、それらと同等の狂気と芸術性を保ち、世界のトップ・クリエイターとして、その流れを絶やさなかったという意味でも、考えられている以上に重要な功績を残している。このような普遍的な作品を手がける狂気の作家たちが、いかに例外的に貴重だったかという事実は、これから年月が過ぎることで証明され、伝説的に語られていくだろう。渦中に生きていた我々は、そのことの重大さをまだ実感しきれていない。 ■小野寺系(k.onodera) 映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

堀北真希の女優キャリアはどこに向かう? 清楚系から実力派への道を検証

【リアルサウンドより】  現在放送中のドラマ『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』は少し変わり種の刑事ドラマである。メインとなる刑事七課は全員女性で構成されているだけでなく、主人公が特殊能力を使って事件解決に導くというややSFめいた物語は、一昨年二時間ドラマとして放送された時はかなり浮いて見えたが、今回連続ドラマとして帰ってくると、不思議と何の抵抗もなく見れてしまう。  このドラマで特筆すべきは、何と言っても主役の来宮渚を演じる堀北真希である。他人の心を読む「シンクロ」と呼ばれる特殊能力を秘め、常にクールで毒舌を吐き、表情の大きな変化を見せないこの役柄は、彼女のこれまでのイメージとはかなりかけ離れたキャラクターである。もっとも、人気とは裏腹に、彼女の表情の演技については疑問視する声もよく見かけるだけに、このようなポーカーフェイスキャラは向いているのかもしれない。少なくとも、昨年俳優の山本耕史と電撃結婚をしてから初めての主演作となる今回のドラマは、彼女の女優キャリアにおいて重要な作品であることは間違いない。  88年生まれの女優といえば、新垣結衣、戸田恵梨香、吉高由里子、そして堀北真希。この四人が同年代の女優の中でも群を抜いている。もちろん今回『ヒガンバナ』で共演している高梨臨や、最近CMや映画の出演が相次ぐ森カンナなど、数え上げれば多くの注目すべき女優が並び、俳優陣でも濱田岳や松坂桃李、三浦翔平などまさに黄金世代と呼ぶに相応しいメンバーが揃っている。その中でもかなり早い段階から注目を集めたのが堀北真希であろう。  2003年にデビューを果たすと、その年の秋からは主演ドラマ『ケータイ刑事 銭形舞』がスタートする。この「ケータイ刑事 銭形」シリーズは、初代は宮崎あおいが主演を務め、堀北の後も黒川芽以、夏帆と続いただけに、2000年代前半の若手女優のブレイクを後押しするシリーズであった。その後もホラー映画『渋谷怪談』や喜劇『逆境ナイン』などの映画で、「真面目」かつ「清楚」なイメージを定着させると、同年代の男子たちにとって堀北真希は、憧れの女優という立ち位置ではなく、初恋の女性の理想像として印象付けられたのである。  そして極め付けは大ヒットシリーズとなった映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で見せた、田舎から集団就職で東京にやってきた天真爛漫な女学生の役と、同時期に放送されていたドラマ『野ブタ。をプロデュース』での根暗な役。前者はシリーズを通して彼女が演じる役柄の成長に大きなフォーカスを当てられている重要なキャラクターであり、後者は原作小説では男性だったポジションをあえて女性に変更して作られた、かなり個性の強いキャラクターである。このふたつのギャップで、2005年末にはすでに人気女優としての位置を獲得したのである。  それからは映画やドラマのみならず、人気ゲーム「レイトン教授」シリーズのボイスキャストを務めるなど活動の幅が拡がっただけでなく、演技の幅も多様化してくる。『翼の折れた天使たち』で演じた、保護観察中の引きこもり少女役や、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』では男装して男子校に潜り込むという、かなり挑戦的な役が続くのだ。  そういった若者向けのドラマでの人気先行の印象的な役柄だけでなく、日本テレビ開局55周年ドラマ『東京大空襲』でのヒロインや、ドラマ版『幸福の黄色いハンカチ』では映画で桃井かおりが演じていた役どころを演じるあたり、かなり実力を信頼されている部分も伺える。2012年にNHKの朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』に主演し、全世代からの人気・知名度を獲得したわけだが、それにあやかって話題作ばかり出演するということがなかったのが、より彼女の好感度を上げるのである。女優としての実力で勝負する、その潔さという新たな魅力を獲得することになる。  2013年末に公開された映画『麦子さんと』は、自分を捨てた母親の遺骨を持って、母の育った町を訪れた主人公が、かつて母が町のアイドルだったことを知るヒューマンドラマだ。元々監督の吉田恵輔が堀北真希のファンだったということがきっかけで動き出した映画だけに、アイドルとしての堀北真希が映し出されているだけでなく、与えられた難しい役にも正解を出せる女優としての彼女のポテンシャルの高さも見ることができる。まさに彼女の演技キャリアの集大成と言える作品となった。  清楚系女優から人気女優へステップアップし、実力派女優として開花させた彼女は、ひとつの集大成的作品と結婚を経て、これから女優としての第2章が始まろうとしている。一部では引退説がささやかれているが、このまま引退してしまうのはさすがに勿体無い。昨年の1月クールに放送されていたTBSドラマ『まっしろ』は平均視聴率5.8%の失敗作として語られ、この一本で「低視聴率女優」のレッテルを貼られてしまったわけだが、その前の主演ドラマであった『ミス・パイロット』は全話2桁視聴率を獲得する安定感を見せたし、今回の『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』もまだ10%台を下回らない好調を見せている。今後どんな女優に成長していくのか、楽しみな存在である。 ■久保田和馬 映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter ■ドラマ情報 『ヒガンバナ〜警視庁捜査七課〜』 毎週水曜夜22時から放送中 出演:堀北真希、檀れい、知英、高梨臨、YOU、大地真央、佐野史郎、市川知宏、木本武宏、高橋惠子、DAIGO 脚本:徳永富彦 公式サイト:http://www.ntv.co.jp/higanbana/

堀北真希の女優キャリアはどこに向かう? 清楚系から実力派への道を検証

【リアルサウンドより】  現在放送中のドラマ『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』は少し変わり種の刑事ドラマである。メインとなる刑事七課は全員女性で構成されているだけでなく、主人公が特殊能力を使って事件解決に導くというややSFめいた物語は、一昨年二時間ドラマとして放送された時はかなり浮いて見えたが、今回連続ドラマとして帰ってくると、不思議と何の抵抗もなく見れてしまう。  このドラマで特筆すべきは、何と言っても主役の来宮渚を演じる堀北真希である。他人の心を読む「シンクロ」と呼ばれる特殊能力を秘め、常にクールで毒舌を吐き、表情の大きな変化を見せないこの役柄は、彼女のこれまでのイメージとはかなりかけ離れたキャラクターである。もっとも、人気とは裏腹に、彼女の表情の演技については疑問視する声もよく見かけるだけに、このようなポーカーフェイスキャラは向いているのかもしれない。少なくとも、昨年俳優の山本耕史と電撃結婚をしてから初めての主演作となる今回のドラマは、彼女の女優キャリアにおいて重要な作品であることは間違いない。  88年生まれの女優といえば、新垣結衣、戸田恵梨香、吉高由里子、そして堀北真希。この四人が同年代の女優の中でも群を抜いている。もちろん今回『ヒガンバナ』で共演している高梨臨や、最近CMや映画の出演が相次ぐ森カンナなど、数え上げれば多くの注目すべき女優が並び、俳優陣でも濱田岳や松坂桃李、三浦翔平などまさに黄金世代と呼ぶに相応しいメンバーが揃っている。その中でもかなり早い段階から注目を集めたのが堀北真希であろう。  2003年にデビューを果たすと、その年の秋からは主演ドラマ『ケータイ刑事 銭形舞』がスタートする。この「ケータイ刑事 銭形」シリーズは、初代は宮崎あおいが主演を務め、堀北の後も黒川芽以、夏帆と続いただけに、2000年代前半の若手女優のブレイクを後押しするシリーズであった。その後もホラー映画『渋谷怪談』や喜劇『逆境ナイン』などの映画で、「真面目」かつ「清楚」なイメージを定着させると、同年代の男子たちにとって堀北真希は、憧れの女優という立ち位置ではなく、初恋の女性の理想像として印象付けられたのである。  そして極め付けは大ヒットシリーズとなった映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で見せた、田舎から集団就職で東京にやってきた天真爛漫な女学生の役と、同時期に放送されていたドラマ『野ブタ。をプロデュース』での根暗な役。前者はシリーズを通して彼女が演じる役柄の成長に大きなフォーカスを当てられている重要なキャラクターであり、後者は原作小説では男性だったポジションをあえて女性に変更して作られた、かなり個性の強いキャラクターである。このふたつのギャップで、2005年末にはすでに人気女優としての位置を獲得したのである。  それからは映画やドラマのみならず、人気ゲーム「レイトン教授」シリーズのボイスキャストを務めるなど活動の幅が拡がっただけでなく、演技の幅も多様化してくる。『翼の折れた天使たち』で演じた、保護観察中の引きこもり少女役や、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』では男装して男子校に潜り込むという、かなり挑戦的な役が続くのだ。  そういった若者向けのドラマでの人気先行の印象的な役柄だけでなく、日本テレビ開局55周年ドラマ『東京大空襲』でのヒロインや、ドラマ版『幸福の黄色いハンカチ』では映画で桃井かおりが演じていた役どころを演じるあたり、かなり実力を信頼されている部分も伺える。2012年にNHKの朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』に主演し、全世代からの人気・知名度を獲得したわけだが、それにあやかって話題作ばかり出演するということがなかったのが、より彼女の好感度を上げるのである。女優としての実力で勝負する、その潔さという新たな魅力を獲得することになる。  2013年末に公開された映画『麦子さんと』は、自分を捨てた母親の遺骨を持って、母の育った町を訪れた主人公が、かつて母が町のアイドルだったことを知るヒューマンドラマだ。元々監督の吉田恵輔が堀北真希のファンだったということがきっかけで動き出した映画だけに、アイドルとしての堀北真希が映し出されているだけでなく、与えられた難しい役にも正解を出せる女優としての彼女のポテンシャルの高さも見ることができる。まさに彼女の演技キャリアの集大成と言える作品となった。  清楚系女優から人気女優へステップアップし、実力派女優として開花させた彼女は、ひとつの集大成的作品と結婚を経て、これから女優としての第2章が始まろうとしている。一部では引退説がささやかれているが、このまま引退してしまうのはさすがに勿体無い。昨年の1月クールに放送されていたTBSドラマ『まっしろ』は平均視聴率5.8%の失敗作として語られ、この一本で「低視聴率女優」のレッテルを貼られてしまったわけだが、その前の主演ドラマであった『ミス・パイロット』は全話2桁視聴率を獲得する安定感を見せたし、今回の『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』もまだ10%台を下回らない好調を見せている。今後どんな女優に成長していくのか、楽しみな存在である。 ■久保田和馬 映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter ■ドラマ情報 『ヒガンバナ〜警視庁捜査七課〜』 毎週水曜夜22時から放送中 出演:堀北真希、檀れい、知英、高梨臨、YOU、大地真央、佐野史郎、市川知宏、木本武宏、高橋惠子、DAIGO 脚本:徳永富彦 公式サイト:http://www.ntv.co.jp/higanbana/

蓮佛美沙子、“塩顔”女優の強み 共演者や脚本を引き立てる演技の“隠し味”とは

【リアルサウンドより】  今期も火曜夜10時台は、ドラマの激戦枠となっている。NHKは田中麗奈を主演に岐阜県の山あいの小さな街を舞台とした静かな恋愛劇『愛おしくて』を、TBSは深田恭子とディーン・フジオカのツンデレラブコメディ『ダメな私に恋してください』を、そしてカンテレ制作フジテレビ系では遠藤憲一と渡部篤郎が義理の父と息子になるまでの中年男性の物語『お義父さんと呼ばせて』を、それぞれ放送している。  初回視聴率は、1週遅れのスタートとなった『お義父さんと呼ばせて』がトップだったものの、右肩下がりですでに半分近く数字を落とした。しかし内容的には決してつまらなくなったというわけではなく、むしろ視聴者の感想も好評である。ホームドラマが時流に合わなかったのか、録画組が増えたのか、はたまた今人気のディーン・フジオカ効果で女性層がTBSに移ってしまったのかは定かではないが、オリジナル脚本の内容や出演者の演技が面白いので、ここは一踏ん張りしてもらいたいところである。同作では、和久井映見や新川優愛など、脇を固める女優陣もいい味を出していて、中でもヒロインである蓮佛美沙子の存在が目立っている。同番組復活の鍵となるのは、おそらく彼女ではないか。  蓮佛は、遠藤演じる彼氏と28歳差の年の差カップルで、渡部演じる父と対立する娘という難しい役柄を演じている。一見、田中麗奈や深田恭子に比べ存在感は薄いようにも感じるが、その健気な演技はキャラが濃い主役2人の中和剤となり、名バイプレーヤーと呼ぶにふさわしい存在感を発揮している。昨今は、“塩顔”と呼ばれるあっさりした顔立ちの俳優が絶妙なさじ加減の演技とともに注目されており、蓮佛はまさにその代表格として吉田羊と並んで再評価されつつあるが、今回の役柄ではそんな彼女の魅力が存分に活かされているのである。  実年齢より上に見られがちだが、蓮佛はもうすぐ25歳。顔は知っているという方も少なくないと思うが、2006年のデビューから数多くのドラマや映画に出演し、実は約10年のキャリアがある若き実力派だ。デビュー間もない2007年に出演した映画『転校生-さよなら あなた-』は、男女が入れ替わる大林宣彦の往年の名作『転校生』のリメイク版で、見た目は女性で中身は男、しかもリメイク版では不治の病という設定がプラスされ、相当難しい役柄となっていたのだが、蓮佛は映画初主演にも関わらず違和感なく演じきり、大林監督に「20年に1人の逸材ですよ」と言わしめた。  時にはボーイッシュ、時には影のある女と、数多くの女子高生役を十人十色に演じてきた蓮佛は、幅の広い役柄を演じることについて「『あの人はこういう役』というイメージを作りたくない」と発言するなど、役者として確固たるビジョンを抱いている。その姿勢は2012年に主演した廣木隆一監督の映画『RIVER』でも活かされ、秋葉原無差別殺傷事件で恋人を失った女性という葛藤のある役柄ながら、ドキュメンタリータッチで自然に演じてみせた。「これまでのことを全て削ぎ落としてお芝居ができた」という演技は、映画『ヴァイブレータ』や『軽蔑』など、女優が人生をかけて体当たりする作品を多く手がけてきた廣木監督さえ「上手すぎる」と唸るほどだった。  以降、若手演技派女優として映画やドラマ、CMなどに引っ張りだこ。特にNHKドラマとの相性がよく、2014年のドラマ『聖女』では広末涼子を、先月放送された『大奥 第二部~悲劇の姉妹~』では沢尻エリカを相手に、ライバル役を好演した。しかし、実力があってどんな役柄でもこなせるからこそ、いかんせん“渋い”役柄が多く、なかなか知名度の向上に繋がらなかったのも事実。昨年『37.5℃の涙』で主演した際に、視聴率が伸び悩んだのもそのためだろう。  しかしながら、蓮佛の出演する映画やドラマは総じて評価が高く、のちに隠れた名作と呼ばれることも多い。固定のイメージにとらわれず、色調を抑えた彼女の演技は、まさに隠し味の“塩”のように、周囲の役者や脚本の力を引き出すことができるのだ。だからこそ彼女は制作側にも重宝されるし、今後も息長く活躍できるはずだ。『お義父さんと呼ばせて』もまた、蓮佛の演技が作品の質を高め、より面白い展開となっていくのではないだろうか。 (文=本 手) ■ドラマ情報 『お義父さんと呼ばせて』 毎週火曜22時から放送中 出演者:遠藤憲一、渡部篤郎、蓮佛美沙子 脚本:林宏司 公式サイト:http://www.ktv.jp/otosan/index.html

犬と猫、映画の主役にふさわしいのはどっち? 古今の名作から考察

【リアルサウンドより】  映画に相応しい動物は何なのか。制作側からしてみれば、従順に指示に従ってくれて、かつ映像に躍動感を与えてくる動物が有難い。これまで映画で多用されてきた動物というと、やはり馬であろうか。西部劇を始め、古くから人間と密接な関係を築いてきた馬は最も理想的である。とはいえ現代劇で、街の中を舞台にするとなると馬を使うのはかなりアンバランスである。そう考えると、今最も人間の近くにいる動物である、犬か猫のほうが相応しい時代になってきたのではないだろうか。  そうなると、今度は犬か猫のどちらかを選択しなくてはならない。「犬派」か「猫派」かという問いは、人の趣向に関する問いかけの中でもポピュラーな話題で、実際のところ日本ではペットとして飼われているのは犬の方が多いようだが、最近は猫派の割合が高くなってきているようだ。海外に目を向けてみても、欧米諸国では比較的猫派の方が多数を占め、一方で南米やアジア圏では犬派の方が多いというデータがある。  ここ数年になって、日本映画では犬よりも猫を扱う映画のほうが多くなってきたように思える。数年前に『クイール』や『マリと子犬の物語』など、犬の映画が頻発していたことを考えると、単に流行り廃りのようにも思えるが、意外とそうではない。これまで猫を中心に描いた映画は犬と比べて圧倒的に少なかっただけに、それだけ映画の方法論が増えたということである。
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(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

 何故猫の映画が増えてきたのか。もちろん猫の自由気ままな姿に共鳴する人口が増えていることが大前提であり、そんな自由気ままな役者を映画に起用するために調教方法や撮影方法などを工夫した結果であろう。前述した通り、映画にキャスティングするのであれば、監督やスタッフの指示に従えることが重要である。そういった点で、人間に忠実に従うイメージの強い犬のほうが重宝されている歴史も頷ける。睡眠時間が長く、かつ気まぐれさが売りの猫にとっては、待ちや撮影で長時間を要する現場はいくらボディダブルを使ったところで、どうしてもストレスが大きくなってしまうのである。  では本質的に、犬と猫でそれぞれ映画にもたらす効果が違ってくるのか。例えば犬の映画として代表的なものを挙げてみると『南極物語』や『ハチ公物語』といったみたいに、人間を待ち続ける忠実な姿であったり、『ウォレスとグルミット』シリーズのように主人公をサポートする相棒を演じるイメージが強く、ほとんど主演を張れるだけの器に描かれる。対照的に猫となると、忠実さや相棒のイメージはほとんどなく、どちらかというと騒動の引き金を作ったり、主人公に何らかの変化をもたらす役どころが多い。しいて言うなら悪役やライバルといった助演俳優の立ち位置であろうか。  現在公開中の『猫なんかよんでもこない。』を観てみると、まさにそのイメージに相応しい猫の姿が描かれる。ボクサーの夢を絶たれたうだつの上がらない主人公が、兄の拾ってきた猫の世話をしていくうちに、人間として成長していく姿を描いたシンプルな物語である。ここに登場する二匹の猫は、飼い主である主人公に突然トカゲを持ってきたり(劇中でも説明のある通り、猫は自分よりも下だと思う者に狩りの仕方を教えるためにこのような行動に出るらしい)、ひたすらわがままに振舞う。もっぱら「猫あるある」が描かれる作品ではあるが、猫の存在によって主人公が変化していくというドラマ性は、かなりわかりやすいものがある。
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(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

 しかし、このタイプのドラマ性が生じるのは決して猫だからというわけでもなさそうだ。『猫なんかよんでもこない』を観ながら、想起したのはチャップリンの名作『犬の生活』であり、そこでは浮浪者を演じるチャップリンが野良犬と出会い、共に行動する中で出会う女性と暮らすことを夢に見て、拾った財布を取り返す姿が描かれる。現代の映画で重視されがちな「主人公の成長」という点は皆無ではあるが、少なからず犬の存在が主人公の心情を変化させていることは間違いない。  そう考えてみると、もしかしたら犬と猫で大きく変わることは何もないのかもしれない。『パリ猫ディノの夜』では大泥棒の相棒として忠実な働きを見せる猫が描かれるし、『猫が行方不明』も『ほえる犬は噛まない』も『ベートーベン』シリーズも、周囲の人間たちが奔走する群像喜劇を構成することができている。また、人間の寂しさを紛らわす役割も、『巴里の空の下セーヌは流れる』でたくさんの猫と共に暮らす老婆と、『アモーレス・ペロス』で犬と行動を共にする殺し屋からわかるように、どちらでも担うことができるのである。  さらに、時には恐怖の対象として描かれることも珍しくなく、『呪怨』では不穏さの象徴のように黒猫が描かれる、古典的な演出がされる一方で、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』のように直接的に犬が暴れ回る姿で恐怖が演出されることもある。アプローチの仕方は違えど、人間の近くに存在する両者だから成立することであって、これがあまり馴染みのない動物だと、もっと平坦な恐怖にしかならないのである。
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(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

 ということは、もはや作り手側が「犬派」なのか「猫派」なのかに委ねられてしまうのだ。走っているショットで画面にもたらされる躍動感は犬のほうが俊敏であり美しく見えるが、猫が走る姿も負けてはいない。そしてどちらも人間の予想の範疇を超えた動きを見せるのだから、映画をより映画らしく見せる効果を持っているのだ。もちろん、文化的かつ生物学的な条件で、どちらかのほうが相応しい場合は少なからずあるが、ニュートラルな条件下ではどちらでも映画は作ることができるのである。仮に101匹わんちゃんが101匹ねこちゃんになったとしても、映画であることは変わらなし、どちらでも愛らしいのである。  今年はこの後も『世界から猫が消えなたら』や、韓国映画『ネコのお葬式』など猫を扱う映画が目立つのは、猫派にとってはとても嬉しいことである。もちろん犬の映画も、タイトルからはわからなくてもコンスタントに制作されているし、5月に行われるカンヌ国際映画祭では犬の演技を表彰するパルム・ドッグがあるなんて実に羨ましい(そのうちパルム・キャットもできないだろうか)。夏にはアニメーション映画ではあるが、ペットたちの姿を描いた『ペット』が公開されるので、「犬派」も「猫派」もそれ以外の派閥の人も楽しめることだろう。 ■久保田和馬 映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter ■公開情報 『猫なんかよんでもこない。』 公開中 出演:風間俊介 つるの剛士 松岡茉優 監督・脚本:山本透   共同脚本:林民夫 原作:杉作 主題歌:SCANDAL 「Morning Sun」 (C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会 公式HP:http://nekoyon-movie.com/

Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔、なぜ同性からもモテるのか? 若手演出家が演技面から考察

【リアルサウンドより】  若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する新連載。第一回は、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔をピックアップ。(編集部)  Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔君の演技を見ていると、同性の私から見ても素直にカッコイイと思えるナチュラルさがあります。一方、日常生活で「何だかカッコつけてて嫌よね」と陰口を叩かれている人にたまに出会います。顔が良かったりオシャレだったりもするのに、周囲に受け入れてもらえない人と藤ヶ谷君とは何が違うのか。  私は演出家として様々な演者と向き合って来ましたが、その演者が“呼吸”をコントロール出来ているかどうかを重要視しています。演技の上手い人と言うのは呼吸の仕方が上手い人です。平常時、人はお腹で呼吸をしています。心が安定していると呼吸の重心は低いんですね。しかし、「緊張」「恐怖」「怒り」「哀しみ」と言った何かしらの感情が沸き上がると呼吸の重心も上がります。学校の授業中に先生から指名されると、急に上半身に力が入って肩や胸で息をしてしまう人は多いでしょう。苦手な人物やプレッシャーのかかる出来事などに直面した時に人の呼吸は乱れるもので、それが普通なんです。  でも、藤ヶ谷君が現在出演しているドラマ『MARS~ただ、君を愛してる~』で演じている樫野零は、常に自然な呼吸をしていました。第一話において零がヒロインである麻生キラに出会う場面にしろ、登校時に女子高生に挨拶される場面にしろ、一切呼吸は乱れません。英語教師の吉岡に嫌がらせされる場面でもそうです。板書するように指名されようが、美術室で対峙しようが、脅威を脅威と感じていないかのように安定した呼吸です。ドラマの中で呼吸が乱れる瞬間はほとんどありませんでした。(もちろん走った直後は息が乱れていましたけれど)  藤ヶ谷君がナチュラルにカッコよく見えるのは、普通なら緊張するような場面でもナチュラルな呼吸が出来ているからです。呼吸が乱れない人物は大物に見えます。逆にドラマで小物を演じようと思ったら、わざわざ小物っぽいセリフを言わなくても呼吸の浅さだけで充分表現は出来ます。  日常生活においてもカッコ悪い人、あるいはカッコ悪いと言う印象をこちらが抱いてしまう人は、「カッコつけよう」として緊張しているのか、体のどこかに力が入っているため呼吸も不安定になりがちです。そして、呼吸のリズムは周囲の人に感染します。呼吸が乱れている人のそばにいると、連られて呼吸が乱れてしまうんですね。だから「この人とは一緒にいたくない」と、無意識のうちに思ってしまいます。  逆に呼吸が安定している人を見ていると、こちらも安定した呼吸が出来るために心が安らぎます。さらに、本来なら呼吸(心)が乱れるような場面でさえ安定した呼吸が出来る人だと、頼り甲斐があるように思えて、つい「カッコイイ」と感じてしまいます。これは男女問わずに共通した感覚で、尊敬されている人や安心感を与えられる人ほど、難しい状況でも呼吸の重心は低く安定しています。  もちろん、呼吸を安定させるのは意識してもなかなか難しいものです。それをさらりとできているからこそ、藤ヶ谷君は同性から見てもカッコイイし、なんだか信頼できる男に見えるのでしょう。そしてそんな藤ヶ谷君は、演出家として見ても、やはり魅力的な演者だと感じます。素敵な才能に触れたので心が豊かになりました。ほくほく。 ■登米裕一 脚本家・演出家。映画『くちびるに歌を』CX『おわらないものがたり』NHK『謎解きLIVEシリーズ』などの脚本を担当。大学時代に旗揚げをした劇団『キリンバズウカ』の主宰も務める。個性豊かな登場人物たちによる軽快な会話の応酬を持ち味としており、若手作家の躍進著しい演劇界の中でも、大きな注目を集める。また演技指導家としても評価を得ており、現在多くのワークショップ依頼を受けている。

Juice=Juice主演ドラマ『武道館』放送直前! 3つの切り口から見どころを考察

【リアルサウンドより】  女性アイドルをテーマとした連続ドラマ『武道館』が、いよいよ本日2月6日(土)夜11時40分よりフジテレビにて放送開始される(BSスカパー!版は2月10日(水)夜9時〜)。直木賞作家・朝井リョウ作による小説のドラマ化で、劇中の架空アイドルグループ・NEXT YOUを、実在のアイドルグループであるJuice=Juiceが演じるという趣向。主題歌「Next is you!」はJuice=Juiceの5人がNEXT YOU名義で歌っていて、楽曲プロデュースをつんく♂が担当。劇中のNEXT YOUと実在のJuice=Juiceどちらも日本武道館でのワンマンライブを目標にしているなど、虚実ないまぜのコンテンツとして放送開始前からすでに話題を集めている。  本記事では、放送直前のこのタイミングで、知っておけばよりドラマを楽しめるであろう3つの切り口からドラマ『武道館』の魅力に迫ってみる。

【公式】ドラマ「武道館」 超最速スペシャル映像!

ドラマ「武道館」公式サイト

(1)メンバーの演技経験

 ハロー!プロジェクト所属の5人組アイドルであるJuice=Juiceは、今月3日にちょうど結成3周年を迎え、活動4年目に入ったばかり。歌唱やダンスの実力主義で知られるハロプロの中でも、J=Jの評価は一際高い。 (彼女たちの3年間の活動軌跡については、筆者が先日リアルサウンドに寄稿した記事「Juice=Juice結成3周年を機に、彼女たちの36カ月を振り返る」にまとめてあります)  今回のドラマ主演より以前の、メンバーの演技経験はどれぐらいのものだろうか? 【宮本佳林】  メンバー5人のうち、芸能活動のキャリアが一番古いのは宮本佳林である。2008年11月、9歳でハロプロ研修生に加入(当時の名称はハロプロエッグ)。翌2009年6月には『おじぎでシェイプアップ!』で舞台初出演。以降、2010年からJuice=Juiceが結成された2013年にかけて、『かいぶつのこども』『三億円少女』『今がいつかになる前に』『リボーン 〜命のオーディション〜』『1974』『B・B 〜bumpy buddy〜』『シュガースポット』『もしも国民が首相を選んだら』といった舞台もしくはミュージカル作品計9作に出演している。  また、2010年6月には『星砂の島のちいさな天使 〜マーメイドスマイル〜』で映画初出演も果たしている。研修生としてアイドル歌手を目指してのレッスンに励む傍ら、これだけの演技経験があるのは比較的多い方といっていいだろう。 【高木紗友希】  宮本に次いで演技経験が多いのは高木紗友希。彼女がハロプロ研修生に加入したのは2009年11月だが、その直前の8月には舞台『ココ・スマイル6 〜夏色のキャンバス〜』に出演している。『ココ・スマイル』シリーズは小学生〜高校生をキャストの中心に据えたファミリーミュージカル作品で、過去の出演者にはSKE48の佐藤すみれ、乃木坂46の生田絵梨花、そして同じハロプロのアンジュルムの田村芽実など、のちに有名になっていく女の子が多い。高木もそのひとりに数えられる。  研修生加入後の舞台出演は『今がいつかになる前に』『リボーン 〜命のオーディション〜』ぐらいだが、どちらもJ=J結成前に宮本と共演していたということになる。また、2010年10月公開の映画『ほんとうにあった怖い話 3D劇場版』は5本から構成されるオムニバス作で、そのなかの第3話「誰かいる」を、やはり当時ハロプロエッグだった佐藤綾乃(現在はアップアップガールズ(仮)のメンバー)と二人で主演を務めている。  さらに2010年12月には、小学生向け道徳ドラマ番組『時々迷々』(NHK Eテレ)の一エピソード「ウソ・ウソ・ウソ」に出演。ちなみにこの回の脚本は、ハロプロ演劇への参加も多い坪田文が担当している。  そしてハロプロファンにも馴染み深いのは、2012年1〜3月に放送されていた深夜ドラマ『数学♥女子学園』(日本テレビ)だろう。このドラマはモーニング娘。の田中れいな&道重さゆみをメインキャストに、各回のゲストキャラをすべてハロプロメンバーで固めるという、ファンにとっては夢のように楽しい番組であった。高木は、れいな扮する主人公ニーナに憧れる3人組のひとり・舞浜はる役で出演(ちなみに他の二人は吉橋くるみ、田辺奈菜美)。宮本は、真野恵里菜演じる白金麗子の付き人である目黒ゆう役で出演した。 【植村あかり】  今月に入ってから『ヤングジャンプ』『ヤングガンガン』といった青年漫画誌の表紙を立て続けに飾り、その美少女ぶりが世間に見つかりつつある植村あかり。彼女の演技経験は、Juice=Juice結成直後の2013年4月の舞台『もしも国民が首相を選んだら』(宮本とペアで出演)、そして後述の『恋するハローキティ』ぐらいである。 【宮崎由加・金澤朋子】  Juice=Juice活動1年10ヵ月目の2014年11月、グループの初主演ミュージカル『恋するハローキティ』が上演された。ここまで見てきた3人以外のメンバー、宮崎由加と金澤朋子はこの舞台が演技初挑戦であった。特に金澤はカツラをかぶって男子高校生役を演じ、主役の宮本演じるキティと恋仲になるというストーリーだった。  このように各メンバーごとに演技経験に多少の差はあるが、連続テレビドラマの主演を務めるという点では、今回の『武道館』が5人とも初挑戦である。

(2)演じる役柄とメンバー本人のキャラの違い

 Juice=Juiceの5人が演じることになる、虚構のアイドルグループ・NEXT YOU。すでに原作で設定された5人のキャラと、J=Jメンバー本人のキャラの差が楽しめるのも本作の見どころのひとつだろう。両者にはどのような差があるのだろうか? 【日高愛子=宮本佳林】  NEXT YOUの日高愛子はメンバー唯一の素人出身で、他のメンバーはNEXT YOU結成前から研修活動をしてきている、という設定である。ハロプロ研修生時代から数えると7年のキャリアを誇る宮本とはかなり異なる。また、J=Jではセンターを務めることが多くエースメンバーと目されている宮本だが、NEXT YOUの愛子は立ち位置がセンターではなく一番人気でもないので、そこも異なるところだ。  宮本は、今回のドラマ仕事が決まったあと、他のアイドルグループの自己紹介動画などを見て、初々しさの仕草などを研究したとインタビュー等で発言している。その成果が出ているかどうかも実際のオンエアでチェックしてみたい部分だ。 【堂垣内碧=植村あかり】  NEXT YOUにおいて一番人気かつ不動のセンターなのが堂垣内碧。そしてクールなキャラ(ただしハートは熱い)なのも碧の特徴だが、普段から明るく笑顔の多い植村とは大きく異なるところだろう。ただ、真面目な表情になると一気に大人っぽく見えるので、そこは近いかもしれない。  植村は前述の『恋するハローキティ』でも、男装の金澤を巡って宮本と恋のライバル関係になってしまうというなかなかシリアスな役柄だったのだが、そこは見事に演じていた。今回のドラマではどんな演技を見せてくれるだろうか。 【安達真由=高木紗友希】  「天真爛漫なおてんば娘」がキャッチコピーの「だちまゆ」こと安達真由。これは実際の高木のキャラとは、あまりギャップが無いのではないだろうか。  また、真由はぽっちゃり体型に悩むというエピソードが本編にある。モーニング娘。の鈴木香音のダイエット→リバウンドが話題になったように、アイドルの肥満問題は人々の関心が高い。J=Jのメンバーはスレンダーなタイプが多く、その中では高木も若干ぽっちゃり気味ということになってしまい、そこは作中と現実がリンクしている部分だろう。(とはいえ、ここ数カ月の高木は明らかに以前より痩せてきているともっぱらの評判である) 【坂本波奈=金澤朋子】  NEXT YOUではリーダーなのが「はなさま」こと坂本波奈。演じる金澤は、Juice=Juiceではサブリーダーの役職に就いている。現実のJ=Jでも、しっかりとした利発なトークが金澤の持ち味であり、NEXT YOUの現場にてトーク回しを務める姿は、あまり違和感がない。  はなさまは両親が離婚しており、弟妹3人を育てる母親の手助けをしながらアイドル活動をしているという苦労人だが、金澤は5人兄弟の長女(兄と3人の妹がいる)であり、大家族なところは共通しているといえる。 【鶴井るりか=宮崎由加】  甘えん坊の妹キャラでファンの心を鷲掴みするという設定の「つるりん」こと鶴井るりか。これは、近年「あざかわ(=あざと可愛い)」キャラが定着してきた宮崎には適任の役柄だろう。「握手会での神対応でファンの心をつかむ」というつるりんのキャラ設定は、宮崎をそのまま当て書きしたのでは……と思えるほどだ。  ただ、現実の方の宮崎はJuice=Juiceのリーダーであり、責任ある立場にいるということで役柄とはギャップがある。こうした細かな違いも念頭に入れつつドラマを視聴するとより楽しめるのではないだろうか。

(3)リアリティあふれる制作体制

 本作『武道館』は、まだ放送前ではあるが、漏れ伝わってくる各種情報を統合すると、かなり細部にこだわった作りになるだろうと予測される。  そもそも、架空のアイドルグループを実在のアイドルがそのまま演じるという点で、リアリティの大部分はすでに担保されている。予告動画でも使われているライブシーンは、実際にJuice=Juiceのファンを募集して、クラブチッタ川崎で撮影されたものである。事前に「NEXT YOUのファンのような格好をしてきてもらえると歓迎です」というアナウンスがあり、熱心なファンはTシャツやグッズを自作して撮影に臨んだ。また、当日スタッフの方でもNEXT YOUロゴ入りTシャツを用意し、客席前方の観客に貸し出して着用の上で撮影が行われている。  参加したファンにとっては、NEXT YOUに扮したJuice=Juiceのメンバーが実際に歌い踊っている姿を観ながらいつもと同じように盛り上がったので、あのライブシーンはそのまま現実と同じもの、ということになる。  また、握手会のシーンも、ファンがエキストラ参加した上で撮影されている。映像を見ると、普段のJ=J現場でよく見かける顔、いわゆる「おまいつ(=おまえいつもいるな、の略で常連の意)」が映っていたりして、思わず苦笑してしまうというJ=Jファンも多いのではないだろうか。  ライブ以外のシーンでも、ゲストとして真野恵里菜や矢口真里といったハロプロOGメンバーの出演がすでに発表されている。もしかしたら他にも隠し玉があるかもしれない。  なお、NEXT YOUのつるりんの家庭は裕福だが、はなさまの家庭は経済的に苦しいという対比の設定があり、このあたりの描写はBSスカパー!のみ放送のロング版でシーンが追加されるとのことである。去年12月に、番組公式Twitterで双方の家庭シーンの撮影オフショットが投稿されたのだが、その美術セットの作り込みが結構な話題となった。  話題になったといえば、第2話に水着シーンがあるのもすでに反響が巻き起こっている。Juice=Juiceは、宮本と植村が写真集などで、高木はファンクラブ限定販売のイメージBlu-rayにて水着ショットを披露してはいるが、宮崎と金澤はまだ水着になっていなかった。最初に公開されたのは、昨年12月23日に行われたファンクラブ会員限定イベント「〜メリクリ×Juice×Box〜」の、さらにライブビューイング参加者向けの特典である、ドラマ先行映像のなかのひとつとしてだった。  その後、BSスカパー!での放送開始前スペシャル番組でも少し使われたが、先日2月2日発売の雑誌『SPA!』の巻頭に、紙媒体としては初めて5人全員での水着グラビアが掲載された。これはドラマ第2話との連動企画でもあるのだが、現実とフィクションを自由に行き来できる本作ならではの仕掛けだろう。  全8話が予定されているドラマ『武道館』。「Juice=Juiceファミリー」と呼ばれているJuice=Juiceのファンたちはもちろん必見だが、アイドル文化に関心を寄せる人々にとっても面白く観ることができる要注目のプログラムなのは間違いない。 ■ピロスエ 編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。Twitter

Juice=Juice主演ドラマ『武道館』放送直前! 3つの切り口から見どころを考察

【リアルサウンドより】  女性アイドルをテーマとした連続ドラマ『武道館』が、いよいよ本日2月6日(土)夜11時40分よりフジテレビにて放送開始される(BSスカパー!版は2月10日(水)夜9時〜)。直木賞作家・朝井リョウ作による小説のドラマ化で、劇中の架空アイドルグループ・NEXT YOUを、実在のアイドルグループであるJuice=Juiceが演じるという趣向。主題歌「Next is you!」はJuice=Juiceの5人がNEXT YOU名義で歌っていて、楽曲プロデュースをつんく♂が担当。劇中のNEXT YOUと実在のJuice=Juiceどちらも日本武道館でのワンマンライブを目標にしているなど、虚実ないまぜのコンテンツとして放送開始前からすでに話題を集めている。  本記事では、放送直前のこのタイミングで、知っておけばよりドラマを楽しめるであろう3つの切り口からドラマ『武道館』の魅力に迫ってみる。

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ドラマ「武道館」公式サイト

(1)メンバーの演技経験

 ハロー!プロジェクト所属の5人組アイドルであるJuice=Juiceは、今月3日にちょうど結成3周年を迎え、活動4年目に入ったばかり。歌唱やダンスの実力主義で知られるハロプロの中でも、J=Jの評価は一際高い。 (彼女たちの3年間の活動軌跡については、筆者が先日リアルサウンドに寄稿した記事「Juice=Juice結成3周年を機に、彼女たちの36カ月を振り返る」にまとめてあります)  今回のドラマ主演より以前の、メンバーの演技経験はどれぐらいのものだろうか? 【宮本佳林】  メンバー5人のうち、芸能活動のキャリアが一番古いのは宮本佳林である。2008年11月、9歳でハロプロ研修生に加入(当時の名称はハロプロエッグ)。翌2009年6月には『おじぎでシェイプアップ!』で舞台初出演。以降、2010年からJuice=Juiceが結成された2013年にかけて、『かいぶつのこども』『三億円少女』『今がいつかになる前に』『リボーン 〜命のオーディション〜』『1974』『B・B 〜bumpy buddy〜』『シュガースポット』『もしも国民が首相を選んだら』といった舞台もしくはミュージカル作品計9作に出演している。  また、2010年6月には『星砂の島のちいさな天使 〜マーメイドスマイル〜』で映画初出演も果たしている。研修生としてアイドル歌手を目指してのレッスンに励む傍ら、これだけの演技経験があるのは比較的多い方といっていいだろう。 【高木紗友希】  宮本に次いで演技経験が多いのは高木紗友希。彼女がハロプロ研修生に加入したのは2009年11月だが、その直前の8月には舞台『ココ・スマイル6 〜夏色のキャンバス〜』に出演している。『ココ・スマイル』シリーズは小学生〜高校生をキャストの中心に据えたファミリーミュージカル作品で、過去の出演者にはSKE48の佐藤すみれ、乃木坂46の生田絵梨花、そして同じハロプロのアンジュルムの田村芽実など、のちに有名になっていく女の子が多い。高木もそのひとりに数えられる。  研修生加入後の舞台出演は『今がいつかになる前に』『リボーン 〜命のオーディション〜』ぐらいだが、どちらもJ=J結成前に宮本と共演していたということになる。また、2010年10月公開の映画『ほんとうにあった怖い話 3D劇場版』は5本から構成されるオムニバス作で、そのなかの第3話「誰かいる」を、やはり当時ハロプロエッグだった佐藤綾乃(現在はアップアップガールズ(仮)のメンバー)と二人で主演を務めている。  さらに2010年12月には、小学生向け道徳ドラマ番組『時々迷々』(NHK Eテレ)の一エピソード「ウソ・ウソ・ウソ」に出演。ちなみにこの回の脚本は、ハロプロ演劇への参加も多い坪田文が担当している。  そしてハロプロファンにも馴染み深いのは、2012年1〜3月に放送されていた深夜ドラマ『数学♥女子学園』(日本テレビ)だろう。このドラマはモーニング娘。の田中れいな&道重さゆみをメインキャストに、各回のゲストキャラをすべてハロプロメンバーで固めるという、ファンにとっては夢のように楽しい番組であった。高木は、れいな扮する主人公ニーナに憧れる3人組のひとり・舞浜はる役で出演(ちなみに他の二人は吉橋くるみ、田辺奈菜美)。宮本は、真野恵里菜演じる白金麗子の付き人である目黒ゆう役で出演した。 【植村あかり】  今月に入ってから『ヤングジャンプ』『ヤングガンガン』といった青年漫画誌の表紙を立て続けに飾り、その美少女ぶりが世間に見つかりつつある植村あかり。彼女の演技経験は、Juice=Juice結成直後の2013年4月の舞台『もしも国民が首相を選んだら』(宮本とペアで出演)、そして後述の『恋するハローキティ』ぐらいである。 【宮崎由加・金澤朋子】  Juice=Juice活動1年10ヵ月目の2014年11月、グループの初主演ミュージカル『恋するハローキティ』が上演された。ここまで見てきた3人以外のメンバー、宮崎由加と金澤朋子はこの舞台が演技初挑戦であった。特に金澤はカツラをかぶって男子高校生役を演じ、主役の宮本演じるキティと恋仲になるというストーリーだった。  このように各メンバーごとに演技経験に多少の差はあるが、連続テレビドラマの主演を務めるという点では、今回の『武道館』が5人とも初挑戦である。

(2)演じる役柄とメンバー本人のキャラの違い

 Juice=Juiceの5人が演じることになる、虚構のアイドルグループ・NEXT YOU。すでに原作で設定された5人のキャラと、J=Jメンバー本人のキャラの差が楽しめるのも本作の見どころのひとつだろう。両者にはどのような差があるのだろうか? 【日高愛子=宮本佳林】  NEXT YOUの日高愛子はメンバー唯一の素人出身で、他のメンバーはNEXT YOU結成前から研修活動をしてきている、という設定である。ハロプロ研修生時代から数えると7年のキャリアを誇る宮本とはかなり異なる。また、J=Jではセンターを務めることが多くエースメンバーと目されている宮本だが、NEXT YOUの愛子は立ち位置がセンターではなく一番人気でもないので、そこも異なるところだ。  宮本は、今回のドラマ仕事が決まったあと、他のアイドルグループの自己紹介動画などを見て、初々しさの仕草などを研究したとインタビュー等で発言している。その成果が出ているかどうかも実際のオンエアでチェックしてみたい部分だ。 【堂垣内碧=植村あかり】  NEXT YOUにおいて一番人気かつ不動のセンターなのが堂垣内碧。そしてクールなキャラ(ただしハートは熱い)なのも碧の特徴だが、普段から明るく笑顔の多い植村とは大きく異なるところだろう。ただ、真面目な表情になると一気に大人っぽく見えるので、そこは近いかもしれない。  植村は前述の『恋するハローキティ』でも、男装の金澤を巡って宮本と恋のライバル関係になってしまうというなかなかシリアスな役柄だったのだが、そこは見事に演じていた。今回のドラマではどんな演技を見せてくれるだろうか。 【安達真由=高木紗友希】  「天真爛漫なおてんば娘」がキャッチコピーの「だちまゆ」こと安達真由。これは実際の高木のキャラとは、あまりギャップが無いのではないだろうか。  また、真由はぽっちゃり体型に悩むというエピソードが本編にある。モーニング娘。の鈴木香音のダイエット→リバウンドが話題になったように、アイドルの肥満問題は人々の関心が高い。J=Jのメンバーはスレンダーなタイプが多く、その中では高木も若干ぽっちゃり気味ということになってしまい、そこは作中と現実がリンクしている部分だろう。(とはいえ、ここ数カ月の高木は明らかに以前より痩せてきているともっぱらの評判である) 【坂本波奈=金澤朋子】  NEXT YOUではリーダーなのが「はなさま」こと坂本波奈。演じる金澤は、Juice=Juiceではサブリーダーの役職に就いている。現実のJ=Jでも、しっかりとした利発なトークが金澤の持ち味であり、NEXT YOUの現場にてトーク回しを務める姿は、あまり違和感がない。  はなさまは両親が離婚しており、弟妹3人を育てる母親の手助けをしながらアイドル活動をしているという苦労人だが、金澤は5人兄弟の長女(兄と3人の妹がいる)であり、大家族なところは共通しているといえる。 【鶴井るりか=宮崎由加】  甘えん坊の妹キャラでファンの心を鷲掴みするという設定の「つるりん」こと鶴井るりか。これは、近年「あざかわ(=あざと可愛い)」キャラが定着してきた宮崎には適任の役柄だろう。「握手会での神対応でファンの心をつかむ」というつるりんのキャラ設定は、宮崎をそのまま当て書きしたのでは……と思えるほどだ。  ただ、現実の方の宮崎はJuice=Juiceのリーダーであり、責任ある立場にいるということで役柄とはギャップがある。こうした細かな違いも念頭に入れつつドラマを視聴するとより楽しめるのではないだろうか。

(3)リアリティあふれる制作体制

 本作『武道館』は、まだ放送前ではあるが、漏れ伝わってくる各種情報を統合すると、かなり細部にこだわった作りになるだろうと予測される。  そもそも、架空のアイドルグループを実在のアイドルがそのまま演じるという点で、リアリティの大部分はすでに担保されている。予告動画でも使われているライブシーンは、実際にJuice=Juiceのファンを募集して、クラブチッタ川崎で撮影されたものである。事前に「NEXT YOUのファンのような格好をしてきてもらえると歓迎です」というアナウンスがあり、熱心なファンはTシャツやグッズを自作して撮影に臨んだ。また、当日スタッフの方でもNEXT YOUロゴ入りTシャツを用意し、客席前方の観客に貸し出して着用の上で撮影が行われている。  参加したファンにとっては、NEXT YOUに扮したJuice=Juiceのメンバーが実際に歌い踊っている姿を観ながらいつもと同じように盛り上がったので、あのライブシーンはそのまま現実と同じもの、ということになる。  また、握手会のシーンも、ファンがエキストラ参加した上で撮影されている。映像を見ると、普段のJ=J現場でよく見かける顔、いわゆる「おまいつ(=おまえいつもいるな、の略で常連の意)」が映っていたりして、思わず苦笑してしまうというJ=Jファンも多いのではないだろうか。  ライブ以外のシーンでも、ゲストとして真野恵里菜や矢口真里といったハロプロOGメンバーの出演がすでに発表されている。もしかしたら他にも隠し玉があるかもしれない。  なお、NEXT YOUのつるりんの家庭は裕福だが、はなさまの家庭は経済的に苦しいという対比の設定があり、このあたりの描写はBSスカパー!のみ放送のロング版でシーンが追加されるとのことである。去年12月に、番組公式Twitterで双方の家庭シーンの撮影オフショットが投稿されたのだが、その美術セットの作り込みが結構な話題となった。  話題になったといえば、第2話に水着シーンがあるのもすでに反響が巻き起こっている。Juice=Juiceは、宮本と植村が写真集などで、高木はファンクラブ限定販売のイメージBlu-rayにて水着ショットを披露してはいるが、宮崎と金澤はまだ水着になっていなかった。最初に公開されたのは、昨年12月23日に行われたファンクラブ会員限定イベント「〜メリクリ×Juice×Box〜」の、さらにライブビューイング参加者向けの特典である、ドラマ先行映像のなかのひとつとしてだった。  その後、BSスカパー!での放送開始前スペシャル番組でも少し使われたが、先日2月2日発売の雑誌『SPA!』の巻頭に、紙媒体としては初めて5人全員での水着グラビアが掲載された。これはドラマ第2話との連動企画でもあるのだが、現実とフィクションを自由に行き来できる本作ならではの仕掛けだろう。  全8話が予定されているドラマ『武道館』。「Juice=Juiceファミリー」と呼ばれているJuice=Juiceのファンたちはもちろん必見だが、アイドル文化に関心を寄せる人々にとっても面白く観ることができる要注目のプログラムなのは間違いない。 ■ピロスエ 編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。Twitter

指原莉乃の監督挑戦、橋本環奈の初主演……アイドル映画はなぜ増えている?

【リアルサウンドより】  HKT48指原莉乃が『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』の初監督を務めたことが注目を集めている。AKBグループのドキュメンタリー以外にも、ゆるめるモ!のメンバーが活躍する『女の子よ死体と踊れ』(2015年)や橋本環奈が初主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』(2016年)など、昨今はアイドルを起用した映画が目立つ。  ここ数年続いているアイドルブームの延長として、こうした作品が次々と生まれていることが伺えるが、その性質や背景は作品によって異なるという。『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であるライターの香月孝史氏は、現在のアイドル映画を次のように整理している。 「2000年代後半からグループアイドルを中心にした女性アイドルシーンが活況を見せていますが、このジャンルは歌やダンスを基本的な活動としながらも、グループ内のダイナミズムそのものがコンテンツとして楽しまれるという側面を強く持っています。そのダイナミズムが持つ群像劇としての魅力を広く伝えるための手法のひとつとして、AKB48グループが繰り返し製作しているドキュメンタリー映画群があります。また、そのようなドキュメンタリー性が前提になっているからこそ、乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未が主演を務めた『超能力研究部の3人』のように、劇映画とドキュメンタリーとを混在させたうえで、ドキュメンタリーパート自体をフェイクドキュメンタリーとして仕上げた、ひねりのある作品もより効果的なものになります。また、『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』は、自らもアイドルファンであり、被写体となるHKT48のメンバーでもある指原莉乃が監督を務めています。彼女は監督する自らの姿をも含めて俯瞰的に捉え、AKB48グループのドキュメンタリー群の中でもさらに新しい表現を提示しました。一方で、たとえばゆるめるモ!主演の『女の子よ死体と踊れ』はそうしたドキュメンタリー性の強い作品とは違うアイドル映画です。ただし、いずれの作品も、“彼女たちがアイドルグループである”ことを大前提の売りとしてプロモーションされていくし、“アイドルグループのメンバーである彼女たち”が演技をしているというところまで含めた受容がされていく。その意味で、劇映画であっても彼女たちのパーソナリティーを伝える媒体として機能する面も強いと思います」  一方で、橋本環奈が主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』は、また違った文脈の作品だという。 「もともと、アイドル映画という言葉自体は今日のアイドルブームのずっと前からあるものですよね。たとえば1980年代のアイドル映画というとき、薬師丸ひろ子や原田知世などソロとして活動する若手タレントの主演作がイメージされます。角川映画で製作されたオリジナルの『セーラー服と機関銃』は、その代表作です。今回の新作で主演を務める橋本環奈は、Rev. from DVLのメンバーという意味ではグループアイドルシーンの中にいますが、世間から見るとソロとしての活動が目立ちますし、今回もソロのタレントとしての出演というイメージが強い。また作品自体も、グループアイドルシーンの文脈よりも、角川映画の歴史に寄り添ったものです。そのため、ひとくちに『アイドル映画』といっても、グループアイドルであることを前提にした映画とは少し異なるところにある。今回の『セーラー服と機関銃-卒業-』のような企画の場合、橋本さんのようにソロとしての色を強く印象づけている人の方が似つかわしいのかもしれません」  アイドル映画は、出演するアイドルにとっては活動の幅を広げ、卒業後のキャリアを築くきっかけになるほか、映画に出演するということ自体がブランディングに繋がるなど多くのメリットがあるが、制作側にとっても魅力はある。 「アイドルを起用することで、そのアイドルの固定ファンの動員が見込めるということはもちろんあるでしょう。また、グループアイドルシーンの活況でアイドルの数が増加しているだけでなく、メジャーからインディーズまでスタンスや活動規模も多様化しているため、映画のアイコンとしてアイドルを起用したいときにキャスティングの選択肢が幅広いというのも魅力的でしょう。製作する側の規模も様々あるなかで、アイドルというジャンルが多様であればあるほど、製作側とのマッチングの機会も増えることになる。その結果として、いろいろな文脈で多くのアイドル映画が作られているのだと思います」  数多くのグループアイドルが活躍している昨今、さらに多様なアイドル映画が生まれそうだ。 (取材=編集部)

指原莉乃の監督挑戦、橋本環奈の初主演……アイドル映画はなぜ増えている?

【リアルサウンドより】  HKT48指原莉乃が『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』の初監督を務めたことが注目を集めている。AKBグループのドキュメンタリー以外にも、ゆるめるモ!のメンバーが活躍する『女の子よ死体と踊れ』(2015年)や橋本環奈が初主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』(2016年)など、昨今はアイドルを起用した映画が目立つ。  ここ数年続いているアイドルブームの延長として、こうした作品が次々と生まれていることが伺えるが、その性質や背景は作品によって異なるという。『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であるライターの香月孝史氏は、現在のアイドル映画を次のように整理している。 「2000年代後半からグループアイドルを中心にした女性アイドルシーンが活況を見せていますが、このジャンルは歌やダンスを基本的な活動としながらも、グループ内のダイナミズムそのものがコンテンツとして楽しまれるという側面を強く持っています。そのダイナミズムが持つ群像劇としての魅力を広く伝えるための手法のひとつとして、AKB48グループが繰り返し製作しているドキュメンタリー映画群があります。また、そのようなドキュメンタリー性が前提になっているからこそ、乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未が主演を務めた『超能力研究部の3人』のように、劇映画とドキュメンタリーとを混在させたうえで、ドキュメンタリーパート自体をフェイクドキュメンタリーとして仕上げた、ひねりのある作品もより効果的なものになります。また、『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』は、自らもアイドルファンであり、被写体となるHKT48のメンバーでもある指原莉乃が監督を務めています。彼女は監督する自らの姿をも含めて俯瞰的に捉え、AKB48グループのドキュメンタリー群の中でもさらに新しい表現を提示しました。一方で、たとえばゆるめるモ!主演の『女の子よ死体と踊れ』はそうしたドキュメンタリー性の強い作品とは違うアイドル映画です。ただし、いずれの作品も、“彼女たちがアイドルグループである”ことを大前提の売りとしてプロモーションされていくし、“アイドルグループのメンバーである彼女たち”が演技をしているというところまで含めた受容がされていく。その意味で、劇映画であっても彼女たちのパーソナリティーを伝える媒体として機能する面も強いと思います」  一方で、橋本環奈が主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』は、また違った文脈の作品だという。 「もともと、アイドル映画という言葉自体は今日のアイドルブームのずっと前からあるものですよね。たとえば1980年代のアイドル映画というとき、薬師丸ひろ子や原田知世などソロとして活動する若手タレントの主演作がイメージされます。角川映画で製作されたオリジナルの『セーラー服と機関銃』は、その代表作です。今回の新作で主演を務める橋本環奈は、Rev. from DVLのメンバーという意味ではグループアイドルシーンの中にいますが、世間から見るとソロとしての活動が目立ちますし、今回もソロのタレントとしての出演というイメージが強い。また作品自体も、グループアイドルシーンの文脈よりも、角川映画の歴史に寄り添ったものです。そのため、ひとくちに『アイドル映画』といっても、グループアイドルであることを前提にした映画とは少し異なるところにある。今回の『セーラー服と機関銃-卒業-』のような企画の場合、橋本さんのようにソロとしての色を強く印象づけている人の方が似つかわしいのかもしれません」  アイドル映画は、出演するアイドルにとっては活動の幅を広げ、卒業後のキャリアを築くきっかけになるほか、映画に出演するということ自体がブランディングに繋がるなど多くのメリットがあるが、制作側にとっても魅力はある。 「アイドルを起用することで、そのアイドルの固定ファンの動員が見込めるということはもちろんあるでしょう。また、グループアイドルシーンの活況でアイドルの数が増加しているだけでなく、メジャーからインディーズまでスタンスや活動規模も多様化しているため、映画のアイコンとしてアイドルを起用したいときにキャスティングの選択肢が幅広いというのも魅力的でしょう。製作する側の規模も様々あるなかで、アイドルというジャンルが多様であればあるほど、製作側とのマッチングの機会も増えることになる。その結果として、いろいろな文脈で多くのアイドル映画が作られているのだと思います」  数多くのグループアイドルが活躍している昨今、さらに多様なアイドル映画が生まれそうだ。 (取材=編集部)