水川あさみ、菜々緒、沢尻エリカ……“悪女役”で評価される女優が増えた背景

【リアルサウンドより】  女優・水川あさみがTBSドラマ『私を離さないで』で見せた“悪女”の演技が話題だ。綾瀬はるか扮する主人公 恭子を貶めようとする水川の姿を見た視聴者からは、「水川あさみの演技が怖い」「水川あさみはイヤな女が似合う」といった声が多数出ている。  水川のほかにも、最近は悪女を演じて注目を集める女優が目立つ。記憶に新しいところでは、『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(カンテレ)で執拗に主人公を追い詰めるクールな悪女 橘カラを演じた菜々緒や、『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ)で人間関係をかき回す可愛らしい小悪魔 毛利まさこを演じた紗栄子などが挙げられる。  いつの時代のドラマにも、ヒロインの前に立ちはだかる壁となる悪女はいたが、最近特に評判を呼んでいるのはなぜか。ドラマ評論家の成馬零一氏に聞いた。 「最近は、自分の目的を達成するためなら手段を選ばない、といった悪女ならではの行動が、気高さや強さを持った女性として好意的に受け止められるようになってきたのかもしれません。例えば、松本清張シリーズの悪女役でブレイクした米倉涼子はその典型でしょう。悪女を演じることによってクールビューティーなイメージを身につけた彼女は、その後、『交渉人〜THE NEGOTIATOR〜』(テレビ朝日)や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)で凛とした女性を演じ、正統派の女優としても評価されるに至りました。一方で、弱々しさや可愛さを演じる女優は、ぶりっ子として批判されるケースが増えているように感じます。ぶりっ子のイメージの悪さを逆手にとって、人当たりはいいけど実は腹黒いといったタイプの悪女も描かれているのは興味深いところです。また、『女王の教室』(日本テレビ)の天海祐希や『家政婦のミタ』(日本テレビ)の松嶋菜々子など、初めは恐くて冷酷な人に見えるけど、本当は優しい人で、悲しい宿命を背負っていた、というような悪女の描き方もあります。完全な悪として描かず、どちらなのかわからない、心が読めない描き方をするのも、最近の傾向のひとつかもしれません」  特に沢尻エリカ主演のドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ)以降、悪女が評価されるケースは目立っているという。 「『ファーストクラス』の人間関係の描き方は、人が集まるところにはピラミッド式のヒエラルキーが生まれ、その中でいじめや嫉妬が発生するというものでした。菜々緒や沢尻エリカが悪女役で注目され始めたのも『ファーストクラス』からです。このドラマで菜々緒は、悪女というよりもダークヒーローのような役を演じ、泥沼化した人間関係にも動じない毒舌キャラクターとして、視聴者から親しまれました。どんなしがらみにもとらわれず、ありのままに生き抜く強さを持った悪女像が、今は求められているのでしょう。また、スキャンダルなどでマイナスイメージが付いてしまった女優が、それを逆手にとって評価を高めるために悪女という役柄が機能するケースもあります。沢尻はその典型で、彼女の成功はひとつのモデルケースにもなるかもしれません」  では、ドラマを作る制作側としては、どのような基準で悪女役のキャスティングを行っているのだろうか。キャスティングの経験を持つTV制作関係者に話を聞いた。 「基本的に、実際の性格や私生活が悪女であるといった理由だけでキャスティングすることはありません。ただ、パブリックイメージはもちろん重要で、さらにその役柄に適したビジュアルや、過去の実績も踏まえたうえで検討します。一方で、パブリックイメージの良い人や清純派キャラだからこそ、逆に悪女をやってもらい、そのギャップを視聴者に楽しんでもらう、という考え方もあります。ドラマの役柄というのは、大なり小なりその役者を記号化するわけで、そういった意味では、わかりやすく悪女っぽいパブリックイメージの人か、その真逆か、いずれにせよ振れ幅が大きいほど与えるインパクトは強いと思います。昨今、悪女が話題となっているのは、制作側からしてみれば、たまたま良い作品があったとしか言えないところですが、ドラマにおいて重要なポジションであることは間違いありません」  『私を離さないで』の水川あさみの悪女ぶりが話題になっているのは、快活で良識のある大人の女性というイメージの水川が、毒気のある役を演じることでギャップが生じたケースだろう。物語に刺激を与えるスパイスとなる悪女役は、女優にとっても力量を問われる役柄であり、うまくハマればブレイクのきっかけにもなるのは確かである。今後、どんな女優が悪女に挑戦し、新境地を切り開くのか。次クールドラマのキャスティングも楽しみに待ちたい。 (文=編集部) ■ドラマ情報 『わたしを離さないで』 毎週金曜日22時〜TBS系で放送中 出演:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ、鈴木梨央、中川翼、瑞城さくら、ほか 原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ 脚本:森下佳子 音楽:やまだ豊 プロデュース:渡瀬暁彦、飯田和孝 演出:吉田健、山本剛義、平川雄一朗 製作著作:TBS 公式サイト:http://www.tbs.co.jp/never-let-me-go/

吉田羊、なぜ40代でブレイク? 同年代女優と異なるポジションから考える

【リアルサウンドより】
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『ナオミとカナコ』公式サイト

 女優・吉田羊の勢いが止まらない。1月21日には宝石類が似合う著名人を表彰する「日本ジュエリー ベストドレッサー賞」の40代部門に選ばれ、2月4日には「2016年エランドール賞」新人賞を受賞。数々のCMでも活躍するほか、NHK大河ドラマ『真田丸』や本日放送の『ナオミとカナコ』(フジテレビ)でも存在感を発揮し、今年公開の映画『嫌な女』では初の主演も決定している。  「ベストドレッサー賞」受賞の際は、これまで非公開だった年齢がある程度判明して話題となったが、彼女が40代にしてブレイクした背景にはどんな事情があるのか。ドラマ評論家の成馬零一氏に話を聞いた。 「現在活躍している40代の代表的な女優というと、深津絵里や永作博美、宮沢りえなどが挙げられますが、彼女たちは90年代からさまざまな作品に出演しており、視聴者の中でもすでにイメージが固まっています。彼女たちはどんな作品に出ても目立つため、主役級の役柄を演じるなら良いのですが、主役を引き立てるバイプレイヤーとはなりにくい側面もあります。一方で吉田は、舞台出身で非常に高い演技力がありながら、アイドル女優として昔から注目されてきたわけではないので、視聴者が固有のイメージを持っていない。だからこそ、『純と愛』や『HERO』といった作品では、おいしい名脇役のポジションを獲得できたのだと思います。この年代の実力派女優で、彼女のような立ち位置にいるひとは珍しいですね」  『HERO』などの作品で全国区の注目を集めた後のキャリアも、特筆すべき点があるという。  「クールなキャリアウーマン役でブレイクした吉田ですが、その後の作品では異なるイメージの役柄にも挑戦しています。たとえば『映画 ビリギャル』では有村架純の母親役を自然に演じるなどして、家庭的な役柄もできることを証明しました。現在放送されている『ナオミとカナコ』では、持ち前のクールなイメージを保ちつつ、家族愛があることを滲ませるなど、絶妙な演技を披露しています。吉田の演技は、良い意味で現実からの逸脱感がなく、クールな役柄であってもどこか生活感が漂っているのが印象的で、だからこそちょっとした仕草もリアルです。たとえば真矢ミキなどの女優だと、どうしても“銀幕の向こう側のひと”という印象を抱きますが、吉田は本当に身近にいそうで、しかもふとしたことがきっかけで犯罪に手を染めてしまいそうな怖さも持っている。リアリティを保ちながら、非日常にも手が届く女優というか。今年は主演映画も公開されるということですが、その出来次第では一気に深津絵里や宮沢りえらと並ぶ“名女優”として広く認知されるかもしれませんね」  ブレイク中の吉田羊の勢いは、まだまだ止まらなそうだ。 (文=編集部)

吉田羊、なぜ40代でブレイク? 同年代女優と異なるポジションから考える

【リアルサウンドより】
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『ナオミとカナコ』公式サイト

 女優・吉田羊の勢いが止まらない。1月21日には宝石類が似合う著名人を表彰する「日本ジュエリー ベストドレッサー賞」の40代部門に選ばれ、2月4日には「2016年エランドール賞」新人賞を受賞。数々のCMでも活躍するほか、NHK大河ドラマ『真田丸』や本日放送の『ナオミとカナコ』(フジテレビ)でも存在感を発揮し、今年公開の映画『嫌な女』では初の主演も決定している。  「ベストドレッサー賞」受賞の際は、これまで非公開だった年齢がある程度判明して話題となったが、彼女が40代にしてブレイクした背景にはどんな事情があるのか。ドラマ評論家の成馬零一氏に話を聞いた。 「現在活躍している40代の代表的な女優というと、深津絵里や永作博美、宮沢りえなどが挙げられますが、彼女たちは90年代からさまざまな作品に出演しており、視聴者の中でもすでにイメージが固まっています。彼女たちはどんな作品に出ても目立つため、主役級の役柄を演じるなら良いのですが、主役を引き立てるバイプレイヤーとはなりにくい側面もあります。一方で吉田は、舞台出身で非常に高い演技力がありながら、アイドル女優として昔から注目されてきたわけではないので、視聴者が固有のイメージを持っていない。だからこそ、『純と愛』や『HERO』といった作品では、おいしい名脇役のポジションを獲得できたのだと思います。この年代の実力派女優で、彼女のような立ち位置にいるひとは珍しいですね」  『HERO』などの作品で全国区の注目を集めた後のキャリアも、特筆すべき点があるという。  「クールなキャリアウーマン役でブレイクした吉田ですが、その後の作品では異なるイメージの役柄にも挑戦しています。たとえば『映画 ビリギャル』では有村架純の母親役を自然に演じるなどして、家庭的な役柄もできることを証明しました。現在放送されている『ナオミとカナコ』では、持ち前のクールなイメージを保ちつつ、家族愛があることを滲ませるなど、絶妙な演技を披露しています。吉田の演技は、良い意味で現実からの逸脱感がなく、クールな役柄であってもどこか生活感が漂っているのが印象的で、だからこそちょっとした仕草もリアルです。たとえば真矢ミキなどの女優だと、どうしても“銀幕の向こう側のひと”という印象を抱きますが、吉田は本当に身近にいそうで、しかもふとしたことがきっかけで犯罪に手を染めてしまいそうな怖さも持っている。リアリティを保ちながら、非日常にも手が届く女優というか。今年は主演映画も公開されるということですが、その出来次第では一気に深津絵里や宮沢りえらと並ぶ“名女優”として広く認知されるかもしれませんね」  ブレイク中の吉田羊の勢いは、まだまだ止まらなそうだ。 (文=編集部)

波瑠、大野智の相手役は“ハマり役”となるか? ジャニーズ主演作のヒロインに選ばれる理由

【リアルサウンドより】  4月から日本テレビの「水曜ドラマ」枠で放送される『世界一難しい恋』が早くも注目を集めている。老舗旅館の後継ぎで、ホテル経営者の34歳独身男が、一目惚れした女性に好かれるために奔走する姿を描くラブコメディで、主人公の「性格難あり」男を嵐の大野智が演じるのだ。大野は約2年ぶりのドラマ主演であり、初めて挑むラブコメディとなる。  日本テレビ系のドラマでは、一昨年4月期に放送された『弱くても勝てます』に二宮和也が主演して以来となる嵐のメンバーの主演作ということに加え、大きな話題となった『きょうは会社休みます。』の脚本家・金子茂樹のオリジナル脚本ということもあり、かなり大きな期待が込められていると伺える。その証拠に、現在日本テレビのプライムタイム枠で放送されている3本の連続ドラマがテレビ朝日の『相棒』と『スペシャリスト』に次ぐ高視聴率をマークしている中で、次クールの放送となる本作の番宣をかなり早い段階からスタートさせているのだ。  通常ならば次クールに放送されるドラマの番宣は、現在放送中のドラマが佳境を迎える辺りから始まるものだが、今回は1月末に放送された『嵐にしやがれ』の段階ですでに始まっていた。大野智がこれから3ヶ月間共演することになるヒロインと初めて顔を合わせ、一緒に料理を作りながらコミュニケーションを図ろうとする企画が組まれたのだ。そこで今回のドラマのヒロイン役として登場したのが、現在NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』で主演を務めている波瑠である。  今週で第20週目を迎える『あさが来た』は、残りの放送期間が1月半を切り、日本初の女子大設置への動きが出てくるなど、着々とクライマックスに向けて進んでいる。以前彼女を紹介した記事(リンク:女優・波瑠は『あさが来た』でブレイクなるか? “没個性という個性”の可能性を読む)では、彼女がこの朝ドラをきっかけに女優としてブレイクを果たすのか、と期待を込めたが、朝ドラ後の最初の仕事がこのドラマのヒロインであれば、順調にブレイクの階段を登っていると考えて良さそうだ。  朝の連続テレビ小説をきっかけにブレイクした女優といえば、二年前に放送された『ごちそうさん』で主演を務めた杏が真っ先に思い浮かぶ。彼女は直後に主演した日本テレビ系のドラマ『花咲舞が黙ってない』ではタイトルロールを演じるだけでなく、続編が制作されるほどの人気を博し、ブレイクには欠かせない「ハマり役」を獲得したのだ。その後も月9ドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』で個性的なヒロインを演じるなど、公私ともに順調な女優道を歩んでいる。他にも『瞳』のヒロインを演じたのち、ドラマ『メイちゃんの執事』と大ヒット映画『余命一ヶ月の花嫁』で主演を果たした榮倉奈々の例も考えると、朝ドラヒロインは放送終了後の最初の仕事が、その後の女優としての活躍のための大きな鍵と言えるのだ。  その鍵となる『世界一難しい恋』は、波瑠にとって初めてのラブコメディのヒロインとなる。彼女のここ最近の出演作を見ると、一昨年のドラマ『ごめんね青春!』では関ジャニ∞の錦戸亮がかつて思いを寄せていた女性の役を演じ、昨年公開された映画『グラスホッパー』では生田斗真演じる主人公の婚約者で、物語の根幹となる事件の被害者役を演じており、ジャニーズ俳優の相手役が続いている印象を受ける。確実に注目を集めるジャニーズ俳優主演作のヒロインというのは、かなり大きなポジションであり、それだけ彼女の女優としての期待値が高いことの証明でもある。  もっとも、『ごめんね青春!』でコメディ作品を経験しているとはいえ、サブヒロイン的なポジションで出演時間も多くなく、まだまだ喜劇演技に関しては未知数な部分もある。具体的なストーリーは公表されていないが、ホームページを見る限り、彼女が演じる役どころは「何を考えているか分からない謎のKY女」とのことだ。初めて挑むラブコメディで、そんな風変わりなキャラクターを彼女がどう演じ切るのか気になるところだが、少なくとも『あさが来た』でこれまでのイメージを覆すような活発な演技を見せてくれただけに、今回のドラマでさらなる新境地を開拓する可能性は充分にある。  また今回のドラマが彼女のキャリアに大きな一歩となるかどうかは、主演を務める大野智にも懸かっている。同じ嵐の松本潤が主演したドラマのヒロインでは、『花より男子』の井上真央と『失恋ショコラティエ』の石原さとみの二人が究極の「ハマり役」を獲得して大きなブレイクを果たしただけに、大野がどのようなエスコートで、ヒロインを輝かせることができるのかにも注目したいところだ。いずれにしても、4月クール一番の目玉となるドラマであることは間違いない。 ■久保田和馬 映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter ■番組情報 『世界一難しい恋』 4月より毎週水曜日22時~日本テレビ系にて放送 出演:大野智、波瑠、小池栄子、北村一輝 脚本:金子茂樹 制作著作:日本テレビ 公式サイト:http://www.ntv.co.jp/sekamuzu/

『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』はなぜ映画に? 世代別マーケティングの観点から考察

【リアルサウンドより】  高齢化が叫ばれて久しい。具体的な数字で見ると、2015年8月1日現在、50歳以上の日本人は約5742万人であり、総人口に占める比率は約45.8%となっている(詳細は後述するが、50歳以上というのは、テレビ視聴率の階層でいうM3・F3に該当している)。(※1)  また、2015年の「映画館での映画鑑賞」に関する調査では、直近1年以内に映画館で映画鑑賞をした人は全体で35.9%であり、そのうち実写の邦画を見る層としては、男性70代・女性60代・男性40代・男性60代・女性10代・女性50代・女性70代…という順で、人口のボリュームゾーンである高齢者が映画鑑賞の割合においても多数を占めている。(※2)
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 さて、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅in台湾 THE MOVIE』であるが、そもそも、(ご存知の通り)テレビ東京の「土曜スペシャル」という2時間特番枠の単発番組として始まっており、これまでに22回も放送されているほどのアタリ企画である。最高視聴率15.3%(2008年3月22日)を筆頭に、高い数字を叩き出してきた。  この15.3%というのは、関東エリアの世帯視聴率であり、この数字を階層ごとに見てみると、4-12歳の男女:0.3%・13-19歳の男女:0.7%・20-34歳の男性:2.5%・35-49歳の男性:5.8%・50歳以上の男性:16.0%・20-34歳の女性:3.2%・35-49歳の女性:4.0%・50歳以上の女性:14.4%と、50歳以上の男女で構成された視聴者が圧倒的多数を占めている。  視聴率とは、テレビの番組やCMがどのくらいの世帯や人々に見られているかを示すひとつの指標であり、ビデオリサーチが行う調査によって数字が発表される(過去に、ニールセンという競合社もいたが既に撤退)。具体的には、ピープルメータ・オンラインメータシステム・日記式アンケートなどによって計測されている。(※3)  世間一般に視聴率として話題となるのは、「関東エリア」の「世帯視聴率」がほとんどである。これは、東京都(島部を除く)・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県からなる関東エリア内の600世帯にピープルメータを設置して、世帯としてどのくらいの割合が番組を視聴していたかを計測した数字のことを指す。(※4)  また、視聴者の性別・年齢層も計測しており、C層:4-12歳の男女・T層:13-19歳の男女・F1層:20-34歳の女性・F2層:35-49歳の女性・F3層:50歳以上の女性・M1層:20-34歳の男性・M2層:35-49歳の男性・M3層:50歳以上の男性、といった区分などで発表されている。(※5)
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 視聴率は、本来、広告取引の際にテレビの媒体力や広告効果を測るひとつの指標であり、番組の評価軸のひとつでしかないはずであるが、民放は広告収入に依存しており、また、視聴率以外の具体的な評価数値がない(ギャラクシー賞などのテレビ番組を顕彰するシステムはあるが、その性質上、評価数値にはなり得ない)ため、テレビ番組の在り方を左右する唯一にして絶対の影響力を持っているのである。  蛇足になるが、昨今の「テレビがつまらなくなった」という遠因は、この視聴率主義にあることは否定できないだろう。何がウケるのか、言い換えれば、数字が取れたものを追い求めれば、似たような番組や企画が生まれてしまうのは必然だからだ。その中で、テレビ東京がある種の独自性を発揮しているひとつの要因は、他局と比べ、系列ネット局が少ない(例えば、日本テレビは27局あるが、テレビ東京は5局)ため広告収入が少なく、それゆえ、制作費も少ないからと言えるだろう。つまり、制作費の足枷があるため、他局と似たような企画ができないこともあり、自ずと独自性が発揮されてしまうのだろう。  話を『ローカル路線バス乗り継ぎの旅in台湾 THE MOVIE』に戻すと、「なんでこれが映画化!?」「なんてトンガった企画!!」というような見方も当然できるわけだが、日本の人口・番組視聴者・映画鑑賞者という3つのボリュームゾーンであるM3・F3に向けた、極めて直球なマーケティングに裏打ちされた作品と言えなくもないのである。
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 もちろん、テレビの2時間特番を1800円払ってまで見に来る人がいるのかという大きなハードルはあるのだが、しかし一般的な映画に比べれば制作費は少ないため、リクープのハードルも下がっているわけで。もし、この映画が成功をおさめることがあれば、今後の日本映画の在り方に少なからぬ?影響を与える可能性は十分にあるだろう。そういった意味でも、本作は要チェックなのだ。 ■引用文献 ※1 総務省統計局:http://www.stat.go.jp/data/jinsui/ ※2 NTTコム リサーチ:http://research.nttcoms.com/database/data/001974/ ※3 ビデオリサーチ:http://www.videor.co.jp/rating/wh/02.htm ※4 ビデオリサーチ:http://www.videor.co.jp/rating/wh/09.htm ※5 ビデオリサーチ:http://www.videor.co.jp/rating/wh/10.htm ■昇大司 1975年生まれ。広告代理店にて、映像作品の企画などを行う。好きな映画は『アマデウス』『ラストエンペラー』『蜘蛛巣城』など。 ■公開情報 『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』 2月13日全国ロードショー 出演:蛭子能収、太川陽介、三船美佳 配給:アスミック・エース (C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会 公式サイト:http://www.rosenbus-movie.com/

なぜ人は斎藤工をセクシーだと感じるのか? 若手演出家が声と役柄から考察

【リアルサウンドより】  若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第二回は、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』で主演を務める斎藤工の“セクシーさ”を考える。(編集部)  『臨床犯罪学者 火村英生の推理』を視聴しながら、私は同性ながら「斎藤工さんはやっぱりセクシーな人だな」と見とれてしまいました。でも、なぜ斎藤さんの演技を観ると、私たちはセクシーだと感じるのでしょうか? そもそも、セクシーとはどういう魅力を指すのでしょうか? 斎藤工さんの演技から、改めて考えてみたいと思います。  斎藤さんをセクシーだと感じさせる要因はもちろんいくつかありまして、たとえば涼しげな目元や厚みのある唇など、ルックス面に依るところは大きいでしょう。しかし、それよりも私が演出家として見て、特徴的で素敵だと思うのは、彼の声です。    斎藤さんの声は、いわゆる“胸振ボイス”といわれるもので、とても心地よく響きます。“胸振発声法”という言葉を調べてみるとよく分かるかと思いますが、なんとなく字面からも伝わるように、斎藤さんの声は胸の部分を響かせていて、他者に安心感を与える音です。  一般的に人間の声は、体の高い部分(頭部)を響かせると高い音が出やすく、体の低い部分(胸)を響かせると低い音が出やすいと言われています。意識すれば誰しも胸を響かせて一時的に低い音は出せますが、よほど意識し続けなければ、すぐにいつもの癖で自分の声を響かせやすい場所に戻して発声してしまいます。加えて、普段使わない楽器を使っているようなものなので、一時的に胸を響かせたところで魅力のある発声が出来るかと言うと、なかなか難しいところです。  斎藤さんはもともとの声質なのか、トレーニングの賜物なのか、音が低いだけではなく、ちゃんと自然な発声になっています。ですが、単に声が低いから、彼はセクシーだと言いたい訳ではありません。彼のセクシーさは、もう少し奥深いところにあります。  先述したように、胸振ボイスで魅力的な低さの声の持ち主は、他者に対して“安定感”と“安心感”を与えます。その結果として、「この人は正しい事をしてくれそうだ」と感じさせるわけです。しかし、そういう人だからこそ、社会のルールを破りそうな役柄を演じると大きなギャップが生じます。一見すると、不倫などしそうになく、横領したり、ましてや殺人を犯したりといった悪事を働きそうにない人ほど、実はそうではなかったときに危うさを感じさせ、役を演じる上で際立ちます。  だからこそ、斎藤さんが不倫に走る姿は刺激的で、人々の目を引くのです。斎藤さんほど“不倫”の二文字が似合ってしまう罪な男性は、なかなかいないでしょう。(あくまで芝居の話ですよ!)不安定に見える人が不穏な事をするのは普通です。安定している人がルールを遵守するのも普通です。しかし、安定しているように見える人が実は不安定を抱えているというのは、どうにも目を引かれますし、それが性的な意味合いを持った不安定さであれば、危うい色気として立ち上がります。  動物園で「暴れている熊の檻」と「お腹いっぱいのウサギの檻」と「心穏やかなライオンの檻」と、どこかに入らなければいけないとしたら……あ、この場合は普通にウサギしかないですね(笑)。でも、スリルを感じてみたい、ドキドキを味わいたいという好奇心旺盛な人は、「ちょっとどうなるのさ、襲われちゃうのどうなの!?」と不安がりながらも、ついライオンの檻に入ってみたくなるはずです。そしてこの「どうなるかわからないけど気になる!」というドキドキこそが、“セクシーさ”の正体なのではないかと思うのです。  斎藤さんが今回演じている火村英夫と言う役は、名探偵でありながら殺人願望を抱えているというかなり危ない人物です。しかし、斎藤さんは不安定で何をしでかすかわからない主人公を、その胸振ボイスでなんとかギリギリ成立させています。もう、見ているだけでドキドキものですね。『臨床犯罪学者 火村英生の推理』の役どころは、斎藤さんの素敵な声を活かす絶妙なキャスティングなんだなと、改めて感じて楽しい気持ちになりました。ほくほく。 参考:Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔、なぜ同性からもモテるのか? 若手演出家が演技面から考察 ■登米裕一 脚本家・演出家。映画『くちびるに歌を』CX『おわらないものがたり』NHK『謎解きLIVEシリーズ』などの脚本を担当。大学時代に旗揚げをした劇団『キリンバズウカ』の主宰も務める。個性豊かな登場人物たちによる軽快な会話の応酬を持ち味としており、若手作家の躍進著しい演劇界の中でも、大きな注目を集める。また演技指導家としても評価を得ており、現在多くのワークショップ依頼を受けている。 ■ドラマ情報 『臨床犯罪学者 火村英生の推理』 日本テレビ 日曜22:30から放送中  出演者:斎藤工、窪田正孝、優香、山本美月、長谷川京子、生瀬勝久、夏木マリ 公式サイト:http://www.ntv.co.jp/himura/

監督&主演ニール・ヤング! DEVOが原発作業員! 『ヒューマン・ハイウェイ』のヤバさについて

【リアルサウンドより】  日本ではあまり一般的には知られていないかもしれないが、ニール・ヤングほどテクノロジーの進化に対して強い関心を持っているミュージシャンはいないだろう。いや、強い関心というレベルを超えて、それはもはやオブセッション(強迫観念)とでも言うべきかもしれない。  近年のニール・ヤングがその知性と行動力と貴重な時間と莫大な財力を注ぎ込んできたのは、独自の規格の音源ファイルPono Musicの開発と、電気とアルコール燃料で駆動する自動車LincVoltの製作だ。それぞれの技術的なことを説明するとキリがないというか、はっきりと自分の手には余るので、興味のある方は以下の動画で確認していただきたい。現在70歳のニール・ヤングがどれだけイっちゃってるか、わかってもらえるだろう。

Neil Young Explains Pono Music And How It Raised Millions On Kickstarter

Neil Young Shows Haskell Wexler His LincVolt

 ニール・ヤングのすごいところは、新しい音源ファイルの開発も、アルコール燃料自動車の製作も、特許こそとっているもののお金儲けのためではなく、単純なロマンの追求でもなく、最先端なテクノロジーを使って「とにかく最もいい音質で音楽を聴かせたい/聴きたい」「往年のクラシックなアメ車を電気やアルコールで走らせて日常の移動ツールにしたい」と、すべてが「自分のため」であるところだ。彼はあくまでも「自分のため」に、自分の資産を投入し、自分で実験し、自分で開発し、自分で使用する。で、それが晴れて実現可能になったところで、世間に向かってそれをプレゼンする。それも、商品として買ってもらいたいというスタンスというより、「どうだ、これすごいだろ?」とまるで科学マニアの少年のようなスタンスで自慢するのだ。
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 そんなニール・ヤングが映画監督として1978年に撮影した作品『ヒューマン・ハイウェイ』が、初公開の1982年、そして日本で最後にビデオソフトとしてリリースされた1995年から、長い年月を経て遂に日本でBlu-ray/DVDとしてリリースされる。「え? ニール・ヤングが映画監督?」と思う人も多いかもしれないが、彼はバーナード・シェイキーという映画監督としての別名を持っていて、これまで長編作品だけでも5本(うち3本はドキュメンタリー)の作品を残している。  で、今回リリースされる『ヒューマン・ハイウェイ』は1982年の初上映版から8分、ビデオ・バージョンから5分カットして約80分となった、2014年トロント映画祭で初公開されたディレクターズ・カット版。300万ドルもの私財を投げ打って自主制作した作品にディレクターズ・カットもクソもないと思うのだが(通常、ディレクターズ・カットというのは映画会社やプロデューサーからカットされた部分を監督自身が後になって復活させたバージョンを指す)、長年「なんとなく未完成な気がする」(「なんとなく」って!)という思いを抱いていたニール・ヤングが、撮影から35年以上を経て新たに手を入れたのが今回のバージョンなのだ。大きな子供のように好奇心旺盛なニール・ヤングのこと、70年代当時から映画制作にも手を広げていたこと自体は驚くにあたらないが(当時はゴダールの作品に心酔していたという)、彼にとって過去の自分の映画に手を入れることは、ガレージで工具片手にアルコール燃料自動車に改良を加えていくのと同じような感覚なのだろう。  ニール・ヤングのテクノロジーの進化に対するオブセッションは、彼が33歳の時に撮った『ヒューマン・ハイウェイ』においても顕著に表れている。というか、テクノロジーの進化に対するオブセッションそのものが、本作のテーマであると言っていいかもしれない。
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 物語は、放射性物質がダダ漏れの原子力発電所/核廃棄物処理場(!)から始まる。全身から不思議な光を放つほど放射性物質に汚染されてしまっている原発作業員たちを演じているのはDEVO(!)の面々。そして、メインとなる舞台はその原子力発電所/核廃棄物処理場の街の片隅にあるガソリンスタンド兼ダイナー。そこで働くメカニックを演じているのがニール・ヤング(この頃からクルマをいじってる!)、ダイナーのコックが当時アル中&ドラッグ中毒でハリウッドに干されていた頃のデニス・ホッパー(!)、そして店のオーナーが名優ディーン・ストックウェル(当時からニール・ヤングの親友だった)。まさに「奇跡!」のキャスト陣である。
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 その歴史的価値、先見性、そしてバカバカしさから、呆気にとられるしかないシーンが次から次へと飛び出してくる本作。セックス・ピストルズのTシャツを着たニール・ヤングがDEVOをバックに「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ (イントゥ・ザ・ブラック)」を演奏するライブシーンは、中でも垂涎だろう。ちなみに1978年1月セックス・ピストルズ空中分解時におけるジョニー・ロットンの「ロックは死んだ」という言葉へのアンサーソングでもあり、カート・コバーンが遺書でその歌詞を引用したことでも知られるこの曲が初めてレコードとしてリリースされたのは1979年。本作撮影の1年後である。「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ (イントゥ・ザ・ブラック)」が収録されたアルバム『ラスト・ネヴァー・スリープス』は、ニール・ヤングがパンクに触発された作品として知られているが、その3年後、つまり本作の公開年と同じ1982年には、ニール・ヤングの長いキャリアの中でも屈指の迷作とされているテクノアルバム『トランス』もリリースされている。当然、本作で共演したDEVOからの直接的な影響も大きかったはずだ。  「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ (イントゥ・ザ・ブラック)」ネタを広げるなら、本作の撮影に参加した直後、1980年にデニス・ホッパーは同曲に触発されて、その変奏曲「マイ・マイ、ヘイ・ヘイ (アウト・オブ・ザ・ブルー)」のサブタイトルからそのままとった『アウト・オブ・ブルー』というパンク少女が主人公の青春映画を監督。もちろん、作中でも「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ (イントゥ・ザ・ブラック)」を使用していた。また、本作で共演したディーン・ストックウェルとは、1986年のデヴィッド・リンチ『ブルーベルベット』でも再び共演。まるでお互い秘密を共有した者同士のような、息の合った怪演を見せてくれた。
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 「先見性」という意味では、本作が撮影された翌年の1979年、アメリカであのスリーマイル島原子力発電所事故が起こったことにも触れないわけにはいかないだろう。その時点で本作の撮影はほとんど終わっていたはずだが、公開が1982年まで延びた理由の一つは、「原子力発電所のそばに住む人々」という本作の設定を編集段階でより強調したかったためだとも言われている。  音楽シーンの最前線ではパンクとテクノの衝撃が無軌道に交差し、西海岸ではヒッピーカルチャーが死に絶え、アメリカ史上初の核施設大規模事故の重大性に多くの人が怯えていた70年代末〜80年代初頭のアメリカ。物語だけを追っていると迷子になってしまいそうになる(ニール・ヤング版『ギャラクシー街道』なんて言わないように! ちょっと似てるけど!)『ヒューマン・ハイウェイ』だが、本作は当時のカルチャーのあまりにも貴重な一断面であり、ポピュラー音楽や映画の歴史における重要なミッシング・リンクの宝庫なのだ。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)。Twitter ■商品情報 『ヒューマン・ハイウェイ≪ディレクターズ・カット版≫ [Blu-ray]』 発売:2月17日 価格:¥4,800+税 品番:KIXF-352 収録時間:本編約80分+映像特典(ニール・ヤングインタビュー、日本版予告編ほか) 発売/販売:キングレコード株式会社 『ヒューマン・ハイウェイ≪ディレクターズ・カット版≫ [DVD]』 発売:2月17日 価格:¥3,800+税 品番:KIBF-1399 収録時間:本編約80分+映像特典(ニール・ヤングインタビュー、日本版予告編ほか) 発売/販売:キングレコード株式会社

中村アン、ドラマ女優として重宝されるワケ テレビ解説者・木村隆志が考察

【リアルサウンドより】  モデル・タレントの中村アンが、今季放送のドラマで本日夜9時から放送される『家族ノカタチ』(TBS)と毎週火曜夜10時放送の『お義父さんと呼ばせて』(カンテレ)の2本に出演しており、女優としての活動に勢いが付いている。前者はスポーツジムのヨガインストラクター、後者は美人秘書という役柄で、どちらも中村の快活なキャラクターが活きているのが印象的だ。  もともとはバラエティを中心に活動してきた中村だが、近頃はドラマへの出演が目立つ。なぜ彼女がドラマで重宝され始めたのか、テレビ解説者の木村隆志氏に聞いた。 「中村アンさんは、愛嬌とユーモアを兼ね備えた方です。洗練されたビジュアルと、バラエティで鍛えた反応の良さを生かし、主演のキャラクターを際立たせ、笑いを添えるバイプレイヤーの役割をきちんとこなしています。特に『家族ノカタチ』では、香取慎吾と上野樹里が演じる個性的なキャラクターの間に入って、コメディパートの盛り上げ役として機能しています。一般的なモデル女優の方と違い、笑いが絡むシーンにスッと入っていけるのは、彼女ならではの強みでしょう。出演時間こそ短いものの、バラエティ番組やチアリーディングで培った表情の豊かさを活かして、自分を上手にアピールできている印象です。また、彼女のようにサービス精神旺盛な方は、番宣イベントなどでも活躍できるので、演技以外の部分でもドラマを支えられるキャストとして重宝されているのでしょう」  また最近、中村はタレントとしての方向性に変化があり、それが女優業へと仕事の幅を広げるきっかけになったと木村氏は指摘する。 「バラエティ番組を中心に活動していた頃は、“毒舌”や“部屋が汚い”など、ネガティブなイメージを前面に押し出して笑いをとろうとしていましたが、最近は“美ボディ”の持ち主である健康的な女性、あるいは凛とした大人の女性といったイメージが強くなり、どんどん好感度が上がってきているようです。『家族ノカタチ』のインストラクター役や、『お義父さんと呼ばせて』の美人秘書役なども、その流れで配役されたのでしょう。女優としては、この1~2年が勝負時と言えると思います。容姿端麗な上に運動神経もいいなど、幅広い役に適応できる条件が揃っていて、OLなどの基本的な役も経験しているので、今後はより専門的な役を演じていくのではないでしょうか。得意分野であるスポーティーな役柄やコメディのヒロイン役はもちろん、大人として落ち着く年齢にも差し掛かっているので、刑事ものの紅一点や女医などに挑戦する可能性もありそうです」  ドラマの美女枠に出演するモデル出身女優として、頭ひとつ抜けた存在になりつつある中村アン。次のクールのドラマでは、さらなる活躍を見ることができるかもしれない。 (文=泉夏音) ■ドラマ情報 『家族ノカタチ』 毎週日曜日 夜9時から放送中 出演者:香取慎吾、上野樹里、西田敏行、水原希子 脚本:後藤法子 監督:平野俊一、酒井聖博、松田礼人 製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS 公式サイト:http://goo.gl/AYBYWb

蛭子能収、なぜいま人生最大のブレイク期に? 映画版『ローカル路線バス〜』から考える

【リアルサウンドより】  漫画家/タレント・蛭子能収が人気だ。テレビのバラエティ番組で見ない日はないと言っていいくらい人気だ。というか昨今、その著作物も、静かなブームとなっているという。一昨年の夏に出版した自身初の新書『ひとりぼっちを笑うな』(角川新書)がジワリジワリと増刷を繰り返し、現在16刷9万7000部。間もなく10万部を超えようとしているのだとか。さらに、昨年11月には、蛭子が孔子の『論語』を解説する謎の新書『蛭子の論語』(角川新書)も上梓。こちらも好評なのだとか。それにしても、いつの間に彼は、そんなに人気者になったのか。そのきっかけとなったのは、2007年から1年に2回から3回のペースで放送されている旅バラエティ番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京)であるというのが、もっぱらの定説だ。
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 今年の1月2日、その第22弾(!)となる「水戸・偕楽園~長野・善光寺」編(マドンナ:南明奈)がオンエアされた『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』。その番組内容は至ってシンプルだ。太川陽介と蛭子能収に「マドンナ」と呼ばれる女性ゲスト1名を加えた3人が、路線バスを乗り継いで、指定された目的地を目指す。3泊4日という規定の日程内にゴールできれば成功、できなければ失敗だ。この番組の何が異色かというと、期間内にゴールにたどり着くことが第一目的であるため、道中の観光スポットなどはほぼ立ち寄らず、出演者たちが時間に追われながらひたすら旅を進める点である。いわゆる「旅番組」であるにもかかわらず。しかも、毎回紅一点「マドンナ」が参加するとはいえ、基本的には50代の太川と60代の蛭子がメインという、他局ならあり得ない異色のキャスティング。しかし、これがウケた。シリーズ平均視聴率は10%を越え、最高時には、テレ東としては快挙とも言える15.3%を記録したというのだ。
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 それにしても、この番組の一体何が受けたのか。それは、常にリーダーシップを発揮しようとするポジティヴな太川と、隙あらば不平や文句を言いまくるネガティヴな蛭子という、対照的なコンビの掛け合いによるところが大きいだろう。地図を広げながらその都度ルートを確認し、なるべくその土地土地の名所や食べ物を堪能しようとする太川。そして、基本的には太川に従うものの、空気を読まない発言を繰り返し、現地の名産に興味を示すことなくカレーやかつ丼を食し、ホテルを好み民宿に泊まることを拒む蛭子。そのコントラストが、番組の見どころであり、笑いどころとなったのだ。番組当初は、「困ったおじさん」もしくは「協調性のない人間」と見られていた蛭子だが、その常軌を逸した「あり得ない」立ち居振る舞いはやがて番組名物となり、伊集院光をはじめ、番組のファンを公言する人々が続出。今や、テレビ東京の看板番組のひとつである。  その後、そんな「あり得ない」立ち居振る舞いの数々が注目を浴び、他局のバラエティ番組にも続々出演するようになった蛭子能収。無論、タレントとしての蛭子は、すでに30年以上のキャリアを誇るベテランであるけれど、今回のブレイクは過去最大の露出を言えるだろう。そこで、ひとつ気づいたことがある。近年、視聴者が彼に向けるまなざしは、かつてのような嘲笑ではなく、どこか優しいものとなっているのだ。要は、かつてほど「当たり」がきつくなくなったように思うのだ。そして、自著『ひとりぼっちを笑うな』の出版である。インパクトのあるタイトルはもとより、そこで饒舌に語られる蛭子の「哲学」とも言うべき行動原理に、多くの人は驚いた。というか、うっかり「共感」してしまったのだ。「震災直後に叫ばれた“絆”という言葉に対する違和感」に始まり、「昨今の友だち偏重傾向への違和感」を訴え、「友だちはいらない」と言いながら「群れることを嫌い、ひとりでいることを好み」、さらには「自由であるためには、他人の自由も尊重せねばならない」、「戦争ほど個人の自由を奪うものはない」と主張し、「この世に生まれていちばんの喜びは、自分の考えていることを実現すること」であると看破する蛭子。それは思いのほかまっとうというか、多くの人が心の奥底で思っていることを言い当てられたような、不思議にスッキリする読後感があったのだ。極端な話、アドラー心理学をわかりやすく解説し、その前年に大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)にも通じる「気づき」の数々が、この本にはあったのだ。  そして、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』は、結果的に、そんな蛭子の行動原理に、ある種の説得力を持たせる場所として、あるいはそれを実践する場所として、新たな意味を獲得していったのだった。とはいえ、それが映画化されると知ったときには、さすがに筆者も我が目を疑った。2月13日より、新宿ピカデリー他で全国公開される『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』である。基本的なルールや構成は通常の番組と同じであるものの、番組史上初の海外ロケ(台湾)であること、フルハイビジョンの4倍の画素数を持つ4Kカメラで全編撮影されていることなどを謳った今回の映画版。リアルサウンド映画部としては、やはりこれを観逃してはならないだろうと、ひと足先に観覧させてもらったのだが……スクリーンに登場した太川がタイトルコールの後、のっけから「映画になっちゃったよ(笑)」と語りかけ、それに蛭子が「すごいねえ……お客さん、1800円払って来るかねえ?」と答える超展開に、思わずのけぞった。その後、今回の「マドンナ」である三船美佳を呼びこみつつ、聞きなれたキートン山田のナレーションとテロップによって、テレビ番組のようにサクサクと進行してゆく本作。いまだかつて、こんな映画が存在しただろうか? 番組の規定通り、ローカル路線バスを乗り継ぎながら、「3泊4日」で、“台北”から台湾最南端の“ガランピ灯台”を目指す3人の珍道中。確かに「ロードムービー」と言えなくはないけれど……そのとき、はたと気づいたのだ。重要なのは、この「ブレの無さ」なのである。
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(C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

 たとえ、映画になろうとも決して浮き足立つことなく、そのスタンスや構成をいっさい変えようとしなかったテレビ東京。それと同じく、冒頭のシーンで「(映画だから)泣きどころを作ってあげないとね。感動するシーンとか絶対必要でしょ?」と笑いながら発言しつつも、結局のところ、いつも通りゴールを目指して淡々と旅を進める蛭子もまた、まったくブレが無いのだ。そう、真の意味で驚くべきは、この「ブレの無さ」なのである。近年、バラエティに執筆に多忙を極める蛭子だが、そのマイペースな行動哲学は、何も今に始まった話ではない。思えば、テレビで初めて観た頃から、蛭子のマイペースぶりは1ミリもブレることが無かった。ある意味、生まれたときから徹頭徹尾、一貫していると言ってもいいだろう。むしろ、変わったのは世の中であり、蛭子の言動を笑いながら観ている我々のほうなのではないか? 空気を読まない人間として、失笑を買っていたのは、もはや昔のこと。今となっては、世の中の空気やSNSを含む煩雑な人間関係に流されることなく、たとえ他人にどう思われようとも、自分のやりたいように生きている蛭子に、ほのかな「共感」や「憧れ」が生まれ始めているのだ。まさか、あの蛭子さんに共感する日が来ようとは……というか、映画化されようとも、まったくブレること無く淡々と進行してゆく本作を眺めながら、「ところで、これ、テレビの特番と何が違うんだろう……」という素朴な疑問を持ちつつ、「世の中というのは、本当にわからないな」と、ひとりごちる筆者なのであった。 ■麦倉正樹 ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。 ■公開情報 『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』 2月13日全国ロードショー 出演:蛭子能収、太川陽介、三船美佳 配給:アスミック・エース (C)2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会 公式サイト:http://www.rosenbus-movie.com/

『ライチ☆光クラブ』が描く中二病的ロマン 野村周平ら演じる少年たちは“美少女とロボット”に何を夢見る? 

【リアルサウンドより】  演出家の飴屋法水や個性派俳優として知られる嶋田久作らによる劇団「東京グランギニョル」が1985年に上演した伝説の舞台『ライチ☆光クラブ』。これに衝撃を受けた漫画家・古屋兎丸が、20年の時を経て発表した同名コミックは人気作となった。そしてこの度、『先生を流産させる会』(2012)の新鋭・内藤瑛亮監督によって、耽美で退廃的なダーク・ファンタジー映画として生まれ変わり、2月13日より公開される。陽の差し込まない閉塞した廃工場の秘密基地で大人のいない世界を作ろうとする少年たちの愛憎と、彼らが作り上げたロボット“ライチ”と美少女の純愛が、過激で残酷に、そして美しく描かれる。「光クラブ」の創設者タミヤを野村周平、独裁的に君臨する帝王ゼラを古川雄輝、謎めいた美少年ジャイボを間宮祥太朗、囚われのヒロイン・カノンを中条あやみが演じる。  実写化不可能とも言われてきた本作だが、内藤監督は次世代を担うイケメン俳優たちに妖艶な演技を求め、臆することなく残虐な暴力を表現することで、原作ファンも満足させる作品に仕上げると同時に、思春期の暗い衝動と鬱屈に迫ってみせた。本稿では、なぜそのような演出が採用されているのか、またいかにしてフィクション性の高い独創的な世界観を構築しているのか、その理由を探っていきたい。
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(c)2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会

「我々は薄汚い大人たちを否定する。永遠の美を手に入れ、この町に君臨するのだ」──秘密結社「光クラブ」とは、大人を「疲弊しきった醜い」ものと見なし、その存在自体を罪だと否定した美しき少年たち9人が集まって廃墟に創り出した、若さとイノセンスのユートピアである。ここではものの善悪よりも美醜が問われ、美こそがすべてなのだ。『ライチ☆光クラブ』では、支配者ゼラを中心としたホモソーシャルな空間で多感な中学生男子たちが性に関心を覚え、嫉妬に燃える愛憎のドラマが展開される。天才的にチェスを得意とするゼラは、ほかメンバー8人──タミヤ、ジャイボ、カネダ(藤原季節)、ダフ(柾木玲弥)、ニコ(池田純矢)、雷蔵(松田凌)、デンタク(戸塚純貴)、ヤコブ(岡山天音)──を駒に見立てて掌握し、大人を排除した世界を夢見て巨大ロボット作りに励んでいたが、拉致してきた美少女カノンの存在によってクラブに亀裂が走っていく様が描かれる。  舞台となる蛍光町はいつもどんよりとした灰色の空に覆われている。町全体に工場からの黒い排気ガスが溢れ、秘密基地のある廃工場内部は薄暗く色味に欠いている。このような『ライチ☆光クラブ』の景色は、見事に原作漫画の世界観を再現しているとともに、大人世界を嫌悪し屈折した思春期を送る少年たちの心象風景を創り出してもいるだろう。それぞれドイツ語の称号を与えられたメンバーたちが、ドイツ語で指令を飛ばし合い、厳格な敬礼でゼラに忠誠を尽くしていることからは、ゼラがナチスへの憧れを抱いていることが見て取れる。秘密基地(秘密結社)、仲間内だけでのあだ名や合言葉、ナチスへの傾倒、肥大した自己愛と全能感、大人を全否定する誇大妄想に破壊願望、そして歪んだ美少女(処女)への崇拝と軽蔑……そう、14歳を目前に控えたゼラは、いわゆる中二病を煮詰めたような人物なのである。そう考えれば『ライチ☆光クラブ』は、ピュアだからこそ危険な思想に傾いてしまう子どもたちの寓話だと捉えることもできるのではないだろうか。
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(c)2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会

 内藤監督は、デス・ゲーム小説を大胆にアレンジした傑作『パズル』(2014)にて、犯人グループのリーダーでニキビを神経質に気にする湯浅(野村周平)に自身の思春期を投影させていたが、本作でもゼラを決して理解のできない存在としてではなく、共感をも込めて描いているように見える。原作漫画以上に、ゼラがカノンに拒絶されることを極度に恐れ、彼の脆さや幼稚性が強調されているのはそのためだろう。考えてみれば、『ライチ☆光クラブ』は内藤瑛亮が監督する以外には考えられなかった。短編処女作『牛乳王子』(2008)では中学生男子が教室で自慰行為に及んでいるところを同級生の好きな女の子に目撃され笑い者にされてしまい、長編デビュー作『先生を流産させる会』では女子中学生が女教師が妊娠していること自体を「気持ち悪い」ものと嫌悪する──このような少年の女の子への憧れと恐れ、あるいは思春期の大人への屈折した感情や感覚は、最新作『ライチ☆光クラブ』でも色濃く引き継がれている。みんな死ねばいいのに──くすぶっていて暗く鬱屈した学校生活を送る繊細な少年少女の他者/世界への悪意こそ、内藤監督が関心を寄せ続けているものなのだ。  「ひかりクラブ」は、タミヤが幼なじみのカネダとダフとともに小学生の頃に作った秘密基地であったが、ある日、転校生の常川=ゼラが現れたことで、いつしか「崇高な目的」を持った秘密結社「光クラブ」へと変貌した集団である。ホモソーシャルなユートピアは、外部からの異物であるゼラによって再構築されたが、それは再び外部からの異物であるカノンによって破壊される。悪意に満ちた世界の中で、その概念すら知らないロボットのライチと純真な少女カノン──中条あやみの透き通るような白い肌が退廃的な世界の中で一層映え、彼女にある高貴さがカノンにフェミニンさと生命力を加えている──という無垢な者同士のロマンスがまるで異世界のものとして立ち上がってくる。カノンが「讃美歌」をオルガンで弾き語り、彼とともに手を取って踊るとき薄暗い世界がセピア色に輝き出し、また、ライチの瞳に残った記憶の中では彼女は淡い色彩で蘇るのだ。ロボットと美少女の純愛だなんて、中二病的なロマンが詰まっている(本作はセカイ系とも言えるかもしれない)。
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(c)2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会

 ダークで退廃的な空気感の中で、個性の強いキャラクターたちを野村周平や古川雄輝、間宮祥太郎ら最旬の俳優たちが、“リアル風”な芝居でアプローチするのではなく、漫画や舞台上から飛び出してきたかのような明快な口調や立ち居振る舞いで優雅に表現してみせているからこそ、彼らの鬱屈が生々し過ぎず、私たち観客に独自の耽美な世界を堪能させてくれる。『ライチ☆光クラブ』においては、グロテスクで残酷な表現もすべては少年たちの耽美を引き立てるためにあるのだ。愛と憎しみとが交わり、廃墟が赤く染まるグラン・ギニョールは、なんと美しいのだろう。 (文=常川拓也) ■公開情報 『ライチ☆光クラブ』 2016年2月13日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー 出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音、杉田智和 原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版) 監督:内藤瑛亮 脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮 配給・宣伝:日活 制作:マーブルフィルム (c)2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会 公式サイト:www. litchi-movie.com