『とと姉ちゃん』第三週目で描かれた、祖母と母の対立ーー母・君子の“朝ドラヒロイン”らしさ

【リアルサウンドより】  大家さんからの妾の誘いをことわった小橋君子(木村多江)は母の青柳滝子(大地真央)に手紙を書く。君子の実家は東京の深川にある老舗の材木問屋・青柳商店。滝子はそこの女将だった。父が他界してから一人で切り盛りして君子を育ててきたが、跡取りにするために強引に縁談を進めようとした滝子に君子は反発し、当時すでに結婚の約束をしていた竹蔵(西島秀俊)と共に浜松へとやってきたのだった。  そのため、ずっと絶縁状態だったのだが、「荷物まとめて、こっちにおいで」という返事をもらった小橋家は浜松に別れを告げて、東京へと向かい青柳商店で暮らすことに。  深川に辿り着いた常子(高畑充季)は町の活気に興奮する。一方、君子は仕事を求めて方々のお店を回るのだが、「四十女を雇うくらいなら若い子を雇う」と、断られてしまう。  そんな君子の姿を見た常子は、少しでも母の役に立てばと、滝子の外回りに同行する。滝子は常子に商売の才覚があることを見抜き、ゆくゆくは青柳商店の女将にしたいと君子に言う。しかし君子は、自分たちを迎え入れたのは、娘の中から女将候補を選ぶためだったのと思い込み、娘たちを連れて青柳商店から出て行ってしまう。  熊本大地震の影響で放送中止となった12話と13話の同時放送からはじまった『とと姉ちゃん』第3週だが、地震情報のテロップで囲まれた画面で見る朝ドラは、やはり今までとは少し違うものに感じられた。  家の二階から深川を見ながら、「(この町も)随分変わりましたね」という君子に対して、青柳商店の筆頭番頭の隈井栄太郎(片岡鶴太郎)は、「震災で全て無くなりましたからねえ」と答える。  震災とは大正12年に起きた関東大震災のことだ。次々と地震情報が画面に表示される中で聞かされる関東大震災についての会話は、なんとも複雑な気持ちにさせられる。朝ドラは明治・大正・昭和が舞台となることが多く、関東大震災から戦争に向かっていく戦前日本の歴史を、現在の日本に重ね合わせて描いてきた。  滝子は「私はね、その普通の暮らしを守ることが自分たちの仕事だとも思ってるのさ。だからいい木を売って、何があっても壊れないような家を造る。それが私らの仕事のやりがいというかね、意地みたいなものなんだ」と、常子に言う。ここで常子は、とと(父)と同じように滝子もまた、「何より日常が大切で愛おしい」のだと考えていることを理解する。  おそらくこの台詞は、本作が東日本大震災を踏まえた上で「日常の大切さ」を描こうとしているのだという宣言だったのだろうが、まさか放送中に大地震が起きるとは作り手も想定しなかっただろう。リアルタイムで放送しているテレビドラマでは、こういう意図せざる形でフィクションと現実が重なってしまうことがある。  本編に戻ろう。今週は、母の君子と祖母の滝子の対立を娘の常子が見つめるという親子三世代の姿が描かれる。女の一代記を描くことが多い朝ドラでは祖母と母の対立を娘が見上げるという構造が度々描かれる。  そのため、戦前(日本の伝統を生きた祖母)と戦後(戦後民主主義の自由を生きた母)の価値観の間で揺れる現在(自由であるが故に、どう生きていいのか迷っている娘)という物語構造となるのだが、滝子の登場によって、より、朝ドラらしい話になったと言える。  面白いのは、理路整然と正論を言うのは滝子の方で、君子の意見の方が被害妄想気味で、言いがかりにしか聞こえないこと。これは、情緒不安定な役を演じることが多い木村多江と、宝塚出身の大地真央の背筋の伸びた堂々とした演技の印象もあるのだろう。  仮に滝子の中に、次の女将候補を選ぶ目論みがあったとしても、そこは一端呑み込んで、まずは娘たちの衣食住を第一と、考えるのが普通ではないかと思ったが、「かか(母)も一人の人間なのだ」というのが、このドラマの人間観なのだろう。もっとも、あれだけ悲壮な覚悟で家を出ながら、青柳商店の隣にある仕出し屋の森田屋に住み込みで働くようになるのだから、ちゃっかりしている。  森田屋の森田まつ(秋野陽子)は滝子とは犬猿の仲で、よりによってそこで働かなくてもと思うのだが、森田屋の二階にいる姿が滝子に見つかった際に、君子が窓を閉める姿がチャーミングで「この女、ただものじゃない」と、思わせる。当初は弱々しくて呑気な母親かと思っていた君子だが、話が進む度に、呑気さの裏側にあるたくましさを見せ始めている。もしかしたら、小橋家の中で一番、朝ドラヒロインらしいのかもしれない。  一方、常子は滝子の得意先回りに同行することで、滝子の人を見極める力に触れることとなる。得意先を回りながら情報収集をして損得を見極める姿は、おそらく常子が編集者として営業回りをする際の指針となっていくのだろう。同時に、常子が青柳家の跡取りである若旦那の青柳清(大野拓朗)に一目ぼれして、すぐに幻滅するくだりをみても、今の常子には、人を見る目があまり無いように見える。三姉妹がままごとをする場面で常子は赤ん坊の役をずっと演じていたが、これは常子がまだ、世の中を理解していないということを表しているのだろう。 ■成馬零一 76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ■番組情報 『とと姉ちゃん』 平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定) 【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分 [再]午後0時45分〜1時ほか 公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

『とと姉ちゃん』第三週目で描かれた、祖母と母の対立ーー母・君子の“朝ドラヒロイン”らしさ

【リアルサウンドより】  大家さんからの妾の誘いをことわった小橋君子(木村多江)は母の青柳滝子(大地真央)に手紙を書く。君子の実家は東京の深川にある老舗の材木問屋・青柳商店。滝子はそこの女将だった。父が他界してから一人で切り盛りして君子を育ててきたが、跡取りにするために強引に縁談を進めようとした滝子に君子は反発し、当時すでに結婚の約束をしていた竹蔵(西島秀俊)と共に浜松へとやってきたのだった。  そのため、ずっと絶縁状態だったのだが、「荷物まとめて、こっちにおいで」という返事をもらった小橋家は浜松に別れを告げて、東京へと向かい青柳商店で暮らすことに。  深川に辿り着いた常子(高畑充季)は町の活気に興奮する。一方、君子は仕事を求めて方々のお店を回るのだが、「四十女を雇うくらいなら若い子を雇う」と、断られてしまう。  そんな君子の姿を見た常子は、少しでも母の役に立てばと、滝子の外回りに同行する。滝子は常子に商売の才覚があることを見抜き、ゆくゆくは青柳商店の女将にしたいと君子に言う。しかし君子は、自分たちを迎え入れたのは、娘の中から女将候補を選ぶためだったのと思い込み、娘たちを連れて青柳商店から出て行ってしまう。  熊本大地震の影響で放送中止となった12話と13話の同時放送からはじまった『とと姉ちゃん』第3週だが、地震情報のテロップで囲まれた画面で見る朝ドラは、やはり今までとは少し違うものに感じられた。  家の二階から深川を見ながら、「(この町も)随分変わりましたね」という君子に対して、青柳商店の筆頭番頭の隈井栄太郎(片岡鶴太郎)は、「震災で全て無くなりましたからねえ」と答える。  震災とは大正12年に起きた関東大震災のことだ。次々と地震情報が画面に表示される中で聞かされる関東大震災についての会話は、なんとも複雑な気持ちにさせられる。朝ドラは明治・大正・昭和が舞台となることが多く、関東大震災から戦争に向かっていく戦前日本の歴史を、現在の日本に重ね合わせて描いてきた。  滝子は「私はね、その普通の暮らしを守ることが自分たちの仕事だとも思ってるのさ。だからいい木を売って、何があっても壊れないような家を造る。それが私らの仕事のやりがいというかね、意地みたいなものなんだ」と、常子に言う。ここで常子は、とと(父)と同じように滝子もまた、「何より日常が大切で愛おしい」のだと考えていることを理解する。  おそらくこの台詞は、本作が東日本大震災を踏まえた上で「日常の大切さ」を描こうとしているのだという宣言だったのだろうが、まさか放送中に大地震が起きるとは作り手も想定しなかっただろう。リアルタイムで放送しているテレビドラマでは、こういう意図せざる形でフィクションと現実が重なってしまうことがある。  本編に戻ろう。今週は、母の君子と祖母の滝子の対立を娘の常子が見つめるという親子三世代の姿が描かれる。女の一代記を描くことが多い朝ドラでは祖母と母の対立を娘が見上げるという構造が度々描かれる。  そのため、戦前(日本の伝統を生きた祖母)と戦後(戦後民主主義の自由を生きた母)の価値観の間で揺れる現在(自由であるが故に、どう生きていいのか迷っている娘)という物語構造となるのだが、滝子の登場によって、より、朝ドラらしい話になったと言える。  面白いのは、理路整然と正論を言うのは滝子の方で、君子の意見の方が被害妄想気味で、言いがかりにしか聞こえないこと。これは、情緒不安定な役を演じることが多い木村多江と、宝塚出身の大地真央の背筋の伸びた堂々とした演技の印象もあるのだろう。  仮に滝子の中に、次の女将候補を選ぶ目論みがあったとしても、そこは一端呑み込んで、まずは娘たちの衣食住を第一と、考えるのが普通ではないかと思ったが、「かか(母)も一人の人間なのだ」というのが、このドラマの人間観なのだろう。もっとも、あれだけ悲壮な覚悟で家を出ながら、青柳商店の隣にある仕出し屋の森田屋に住み込みで働くようになるのだから、ちゃっかりしている。  森田屋の森田まつ(秋野陽子)は滝子とは犬猿の仲で、よりによってそこで働かなくてもと思うのだが、森田屋の二階にいる姿が滝子に見つかった際に、君子が窓を閉める姿がチャーミングで「この女、ただものじゃない」と、思わせる。当初は弱々しくて呑気な母親かと思っていた君子だが、話が進む度に、呑気さの裏側にあるたくましさを見せ始めている。もしかしたら、小橋家の中で一番、朝ドラヒロインらしいのかもしれない。  一方、常子は滝子の得意先回りに同行することで、滝子の人を見極める力に触れることとなる。得意先を回りながら情報収集をして損得を見極める姿は、おそらく常子が編集者として営業回りをする際の指針となっていくのだろう。同時に、常子が青柳家の跡取りである若旦那の青柳清(大野拓朗)に一目ぼれして、すぐに幻滅するくだりをみても、今の常子には、人を見る目があまり無いように見える。三姉妹がままごとをする場面で常子は赤ん坊の役をずっと演じていたが、これは常子がまだ、世の中を理解していないということを表しているのだろう。 ■成馬零一 76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ■番組情報 『とと姉ちゃん』 平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定) 【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分 [再]午後0時45分〜1時ほか 公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

『パープル・レイン』『バットマン』『ハッピーフィート』……プリンスと映画の関わりを振り返る

【リアルサウンドより】  偉大なるミュージシャン、プリンスが4月21日(現地時間)、自宅で急死した。57歳だった。その衝撃は音楽界のみならず、映画界にも及んでいる。プリンスの音楽的な功績については、こちら(プリンスがすべてだった 宇野維正による追悼文)を参照してもらうとして、ここではプリンスと映画の関係性について、ひと通り整理しておきたいと思う。 『プリンス/パープル・レイン』(1984年)
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プリンス『パープル・レイン』

 1978年にアルバム『フォー・ユー』でデビューしたプリンスだが、その名を世界的なものとしたのは言うまでもなく、1984年の映画『パープル・レイン』と同作のサウンドトラックである同タイトルのアルバムだった。“キッド”という役名ではあるものの、複雑な家族関係などはプリンス自身の半生とも重なる青春物語。全編“パープル”の衣装で身を包んだ、その圧倒的なロックスターぶりに度肝を抜かれた人は数知れず。「レッツ・ゴー・クレイジー」、「ビートに抱かれて」、「パープル・レイン」など、その後、プリンスの往年のヒットソングとなってゆく数々の名曲を収録した本作は、彼の紛うことなき代表作のひとつと言えるだろう。そして、この映画で彼はアカデミー賞歌曲・編曲賞(当時)を受賞し、映画界にも大きなインパクトを残すことになる。

『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』(1986年)

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『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン 特別版 [DVD]』

 前作の世界的な成功に気を良くしたプリンスが、遂に自ら監督も手掛けたラブロマンス映画。全編モノクロであることはもちろん、フランスの高級リゾート地、リヴィエラを舞台としたピアニストの物語であることなど、プリンスの知られざる“フランス映画”への憧憬に満ちた一作となっている。映画としては酷評を受けたが、「キッス」など数々の名曲を収録した本作のサウンドトラックも兼ねたアルバム『パレード』は全米ナンバー1ヒットを記録。評論家筋からも高い評価を受けるなど、プリンスの代表的な一枚となっている。

『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』(1987年)

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『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ HDニューマスター版 [Blu-ray]』

 自身のバンドである「ザ・レヴォリューション」を解散させ、作詞・作曲・演奏・プロデュースをほぼひとりで行った2枚組の同名アルバムのコンサートを収録したドキュメント・フィルム。『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』に続き、プリンス自ら監督を手掛けた本作は要所要所にプリンス自身の「芝居」が挿入されるなど、虚実入り混じった異形のライヴ・ドキュメンタリーとなっている。ちなみに、『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる漫画家・荒木飛呂彦が、そのフェイバリットに挙げている一本でもある。

『バットマン』(1989年)

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『バットマン (字幕版)』

 『バットマン』のテレビ・シリーズの大ファンで、幼少時にはそのテーマソングを自らピアノで弾いて妹を楽しませていたという逸話も有名なプリンスは、ティム・バートン監督の依頼を受け、その主題歌「バットダンス」を書き下ろした。同曲は、“ジョーカー”ならぬ“パーティマン”に自らが扮したミュージック・ビデオともども世界的なヒットを果たす。映画のオリジナル・スコアはダニー・エルフマンが担当したが、プリンス自身も本作にインスパイアされたオリジナル盤を制作し、全米チャートで首位を獲得するなど世界的なヒットを記録。この時期にプリンスの存在を知ったという人も多いことだろう。

『プリンス/グラフィティ・ブリッジ』(1990年)

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『プリンス/グラフィティ・ブリッジ 特別版 [DVD]』

 『パープル・レイン』の続編として作られた半自伝的映画パート2。監督、脚本、主演、音楽をプリンスが担当。ロックテイストの強かった『パープル・レイン』に比べてかなりファンク路線が強くなるなど、サウンド的な冒険に満ちた作品ではあったものの、興行的には大失敗に終わる。日本では劇場公開もされなかった。それまで映画制作になみなみならぬ意欲を注いできたプリンスだが、自身が制作した長編映画は本作が最後となってしまった。

『ガール6』(1996年)

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『ガール6 [DVD]』

 プリンスの訃報を受けていち早くブロック・パーティを開催するなど、旧知の間柄として知られるスパイク・リー監督の映画。コントロール・フリークであるため他者の映画の音楽を担当することはほとんどなかったプリンスが、珍しく音楽を担当したことでも知られる本作。タイトル曲をはじめ書き下ろしの新曲は3曲のみだが、自身のファミリーとも呼べるアーティストの楽曲など、そのサントラ盤はプリンス・ファンのあいだでも評価が高い。ちなみに当時は“シンボルマーク”時代ではあったものの、このサウンドトラックは“プリンス”名義として表記されている。

『ハッピーフィート』(2006年)

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『ハッピー フィート [DVD]』

 『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督が手掛けたフルCGアニメ映画『ハッピーフィート』。タップ・ダンスが得意なコウテイペンギンを主人公とした本作は、ペンギンたちが歌い踊る往年のヒットソングが見どころの一作となっている。その一曲としてプリンスの「キッス」を使用する際に、レイティングを踏まえて歌詞の変更を打診されたプリンスは、当初そのオファーを一蹴。しかし、実際の映像を観て快諾するどころか、エンディングテーマ「Song of the Heart」を書き下ろして提供した。ちなみに同曲はゴールデングローブ賞主題歌賞を獲得している。  なお、5月11日から開催されるカンヌ映画祭では、プリンスのスペシャル・トリビュートが行われることが早々と発表されている。 ■麦倉正樹 ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。

EXILE TRIBEが提示する新しいドラマのかたち 集団抗争描く『HiGH&LOW Season2』への期待

【リアルサウンドより】  EXILE、三代目 J Soul Brothers、GENERATIONS、E-girlsなど、EXILE TRIBEのメンバーが総出演するドラマ第2弾『HiGH&LOW Season2』(日本テレビ系)が、4月23日(土)深夜1時10分よりスタートする(一部地域では放送日時が異なる)。2015年に放送された『HiGH&LOW ~THE STORY OF S.W.O.R.D.~』の続編で、映画やマンガ、ライブなどと連動して展開する総合エンターテインメントプロジェクトの一環となる作品だ。今シーズンからはBIGBANGのV.Iが出演することも発表され、さらに注目を集めている。  シーズン1では、不良チームが集まるSWORD地区を舞台に、コブラ(岩田剛典)、ヤマト(鈴木伸之)、ノボル(町田啓太)の友情を軸に、コブラの「山王連合会」、山田裕貴演じる村山良樹の「鬼邪高校」、黒木啓司演じるROCKYの「White Rascals」、窪田正孝演じるスモーキーの「RUDE BOYS」、林遣都演じる日向紀久の「達磨一家」、中村達也演じる家村の闇組織「家村会」の戦いが描かれた本作。ドラマ評論家の成馬零一氏は、その魅力を次のように評する。 「AKIRA主演の『GTO』(関西テレビ、フジテレビ系)やTAKAHIRO主演の『ワイルド・ヒーローズ』(日本テレビ系)など、これまでEXILEメンバーが出演するドラマはいろいろとありましたが、どれも彼らの一番の強みである“身体性”と“集団の動き”を活かしきった作品ではありませんでした。しかし本作は、LDHを率いるHIROが企画・プロデュースを手掛けていることもあり、彼らの魅了を存分に打ち出すことに成功しています。アクションシーン、とりわけ大人数で抗争を繰り広げるモブシーンは圧巻で、ただ人数が多いというだけではなく、一人ひとりがちゃんと演技をして、奥行きのある映像に仕上げています。日本のドラマはもちろん映画でも滅多にお目にかかれない手法で、すごく豪華です。また、ビジュアルもド派手で、良い意味で現実離れした無国籍な世界観を築いているのも注目すべきポイント。スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせるようなビジュアルのチームが近未来的なクラブを仕切っていたり、無名街と呼ばれるスラム街を拠点とするグループが薬物製造に手を染めていたり、いろんな要素を取り込んだ箱庭的な世界観は、どちらかというと漫画やゲームのそれに近い印象です」  一方で、人によって評価がわかれる作品でもあると、同氏は続ける。 「彼らの長所を活かしている反面、登場人物が多すぎることもあってか、ストーリーがわかりにくい部分もあります。脚本はTeam HI-AXという脚本家集団が共同で手掛けているのですが、派手な見せ場を次々と繋ぐように描いている印象を受けました。日本のドラマは良くも悪くも作家主義が強く、ひとりの脚本家が描ききるのが普通です。だからこそ、セリフの内容や人間関係の描き方が評価の対象となりがちで、そういった観点から見ると本作はあまり良く出来た作品とはいえないかもしれません。おそらく、正当な評価を得るのはまだ先になるでしょう。しかし、セリフや人間関係だけがドラマのおもしろさではないはずで、『HiGH&LOW』が集団の抗争を描いてビジュアルのおもしろさを追求したことは、少なくとも日本のドラマ界における新たな試みではありました。テレビ局主導ではないからこそ生まれた企画で、タレントの長所を活かすという意味では、良いシステムなのかもしれません。ミュージック・ビデオを観るように、感覚的に楽しむのをお勧めしたいですね」  不良チームが出揃い、壮大なスケールを感じさせたシーズン1に続き、彼らの物語はどこまで加速するのか。成馬氏が「このままの勢いで独自の路線を突き詰めてほしい」と期待するように、映画や漫画も含めて、さらに飛躍した世界観を提示してくれることを願いたい。 (文=編集部) ■『HiGH&LOW』各情報 ・映画『HiGH&LOW THE MOVIE』 7月16日(土)全国ロードショー(配給:松竹) ・日本テレビ系/地上波ドラマ シーズン2 4月23日(土)24:55~ OAスタート ・ドラマ放送後 Hulu/連続ドラマ特別版  独占配信スタート ・ドラマ『HiGH & LOW SEASON 1 完全版BOX』DVD/ Blu-ray 発売日:4月20日(水) 価格:【DVD】4枚組¥11,400(税別) 【Blu-ray】4枚組¥12,400(税別) HiGH & LOWオフィシャルサイト

EXILE TRIBEが提示する新しいドラマのかたち 集団抗争描く『HiGH&LOW Season2』への期待

【リアルサウンドより】  EXILE、三代目 J Soul Brothers、GENERATIONS、E-girlsなど、EXILE TRIBEのメンバーが総出演するドラマ第2弾『HiGH&LOW Season2』(日本テレビ系)が、4月23日(土)深夜1時10分よりスタートする(一部地域では放送日時が異なる)。2015年に放送された『HiGH&LOW ~THE STORY OF S.W.O.R.D.~』の続編で、映画やマンガ、ライブなどと連動して展開する総合エンターテインメントプロジェクトの一環となる作品だ。今シーズンからはBIGBANGのV.Iが出演することも発表され、さらに注目を集めている。  シーズン1では、不良チームが集まるSWORD地区を舞台に、コブラ(岩田剛典)、ヤマト(鈴木伸之)、ノボル(町田啓太)の友情を軸に、コブラの「山王連合会」、山田裕貴演じる村山良樹の「鬼邪高校」、黒木啓司演じるROCKYの「White Rascals」、窪田正孝演じるスモーキーの「RUDE BOYS」、林遣都演じる日向紀久の「達磨一家」、中村達也演じる家村の闇組織「家村会」の戦いが描かれた本作。ドラマ評論家の成馬零一氏は、その魅力を次のように評する。 「AKIRA主演の『GTO』(関西テレビ、フジテレビ系)やTAKAHIRO主演の『ワイルド・ヒーローズ』(日本テレビ系)など、これまでEXILEメンバーが出演するドラマはいろいろとありましたが、どれも彼らの一番の強みである“身体性”と“集団の動き”を活かしきった作品ではありませんでした。しかし本作は、LDHを率いるHIROが企画・プロデュースを手掛けていることもあり、彼らの魅了を存分に打ち出すことに成功しています。アクションシーン、とりわけ大人数で抗争を繰り広げるモブシーンは圧巻で、ただ人数が多いというだけではなく、一人ひとりがちゃんと演技をして、奥行きのある映像に仕上げています。日本のドラマはもちろん映画でも滅多にお目にかかれない手法で、すごく豪華です。また、ビジュアルもド派手で、良い意味で現実離れした無国籍な世界観を築いているのも注目すべきポイント。スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせるようなビジュアルのチームが近未来的なクラブを仕切っていたり、無名街と呼ばれるスラム街を拠点とするグループが薬物製造に手を染めていたり、いろんな要素を取り込んだ箱庭的な世界観は、どちらかというと漫画やゲームのそれに近い印象です」  一方で、人によって評価がわかれる作品でもあると、同氏は続ける。 「彼らの長所を活かしている反面、登場人物が多すぎることもあってか、ストーリーがわかりにくい部分もあります。脚本はTeam HI-AXという脚本家集団が共同で手掛けているのですが、派手な見せ場を次々と繋ぐように描いている印象を受けました。日本のドラマは良くも悪くも作家主義が強く、ひとりの脚本家が描ききるのが普通です。だからこそ、セリフの内容や人間関係の描き方が評価の対象となりがちで、そういった観点から見ると本作はあまり良く出来た作品とはいえないかもしれません。おそらく、正当な評価を得るのはまだ先になるでしょう。しかし、セリフや人間関係だけがドラマのおもしろさではないはずで、『HiGH&LOW』が集団の抗争を描いてビジュアルのおもしろさを追求したことは、少なくとも日本のドラマ界における新たな試みではありました。テレビ局主導ではないからこそ生まれた企画で、タレントの長所を活かすという意味では、良いシステムなのかもしれません。ミュージック・ビデオを観るように、感覚的に楽しむのをお勧めしたいですね」  不良チームが出揃い、壮大なスケールを感じさせたシーズン1に続き、彼らの物語はどこまで加速するのか。成馬氏が「このままの勢いで独自の路線を突き詰めてほしい」と期待するように、映画や漫画も含めて、さらに飛躍した世界観を提示してくれることを願いたい。 (文=編集部) ■『HiGH&LOW』各情報 ・映画『HiGH&LOW THE MOVIE』 7月16日(土)全国ロードショー(配給:松竹) ・日本テレビ系/地上波ドラマ シーズン2 4月23日(土)24:55~ OAスタート ・ドラマ放送後 Hulu/連続ドラマ特別版  独占配信スタート ・ドラマ『HiGH & LOW SEASON 1 完全版BOX』DVD/ Blu-ray 発売日:4月20日(水) 価格:【DVD】4枚組¥11,400(税別) 【Blu-ray】4枚組¥12,400(税別) HiGH & LOWオフィシャルサイト

『デアデビル』制作陣が明かす、Netflixドラマが描くヒーロー像「デアデビルは身近な場所を救うためにいる」

【リアルサウンドより】  マーベルヒーローの作品群の中で、Netflixオリジナルドラマ『デアデビル』は極めて異色の作品だ。主人公のデアデビルことマシュー・マードック(通称:マット)は盲目の弁護士で、それゆえに“レーダーセンス”と呼ばれる超人的な聴覚や嗅覚、反射神経などを持つものの、空を飛んだり、手からビームを放ったりといった超自然的な能力はない。あくまでひとりの人間として、ヘルズキッチンというひとつの街で犯罪者相手に戦う自警ヒーローだ。悪との戦いはスタントを使わない肉弾戦になり、だからこそ生々しい迫力に満ちている。マットが抱える悩みも、一個人としての正義を問うもので、決して人々の日常から乖離したものではない。製作総指揮を務めるジェフ・ローブによると、彼の人間味こそが、ドラマというスタイルで作品化することの意義であるという。 「もしアベンジャーズが世界を救うためにいるとしたら、デアデビルは身近な場所を救うためにここにいるんだ。多くの意味で、それが人々が没頭できるストーリーなんだよ。映画はエピック・アドベンチャーで、ローラーコースターだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の中で宇宙の彼方に連れて行ってくれたり、『アントマン』でミクロの世界に行ったりという風にね。僕らは映画よりもテレビでやった方が優れているストーリーを語っているんだ。それに、(テレビの方が)エモーショナルなインパクトを与えてくれる」
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Netflixイベントにて、『デアデビル』キャストと制作陣

 1シーズン13話というNetflixドラマの構成も、テレビドラマ独自の魅力を際立たせている。Netflixドラマは、通常のテレビドラマと違い、オンエア前に全話を完成させ、一気に13時間分のエピソードを提供するスタイル。映画と比べ、物語を語る上での時間的優位はもちろんだが、配信のスタイルについても、他のブロードキャスト作品に比べて大きなアドバンテージがあると言える。それはジェフも実感しているようで、「一週間に一度ストーリーを語る方法だと、来週も人々が戻ってくるようにするのが目的になってしまうこともあるんだ。それに対して、Netflixで物語を語る場合は、最初から最後まで滑らかなストーリーにすることできる。鑑賞者も見始めたら、13時間後にはそのストーリーを完結させることが出来るってわけ。それはストーリーテリングにおけるダイナミクスを変化させるんだ」とコメントしている。  長い尺があるからこそ、スーパーヒーロー作品の醍醐味であるアクションシーンだけではなく、人間ドラマもしっかりと描き切ることができる。シーズン1では、マットの内面の葛藤を主軸に描き、シーズン2ではスーパーヒーローのあるべき姿や善悪の境界を問う、より高度な問題が用意されている。主演のチャーリー・コックスはマットの心の葛藤について次のように語る。
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チャーリー・コックス

「マットが自分自身に抱くコンスタントな葛藤は、1シーズンでかなり掘り下げている。彼の行いや自警主義の正義に従事することへの疑問、それに彼の信念からくる葛藤についてね。それはシーズン2でもずっと目にするものだよ。フランク・キャッスルが出てくることで、それは少し影に隠れるけど。フランクはデアデビルに、違う種類のジレンマをもたらすんだ。シーズン1とは違う種類のアイデンティティ・クライシスを与える」  フランク・キャッスル(ジョン・バーンサル)は、別名パニッシャーと言い、シーズン2に登場するヴィラン(悪役)である。ヴィランといっても、彼は彼なりの正義を掲げ、デアデビルとは対照的な手段で街に根付いている悪を殲滅していく。アンチヒーロー、といったイメージに近いだろう。ジョン・バーンサルは二人の関係について「マットとフランクは両方とも正義のためにそこにいるが、彼らの正義の種類は明らかに違う。それを達成する手段も異なっているし、最終的にお互いが望むものも違う。そんな二つの力がぶつかった時にとても面白いドラマが生まれるんだ」と語っている。不殺を貫くマットと、悪人には死を与えるフランク。正義感を持つ者同士であるにも関わらず、相容れないふたりの関係が、本作のテーマをより複雑なものにし、さらに味わい深いドラマを生み出していくのだ。  フランクと同じく、シーズン2から登場するのがマットの元恋人エレクトラ(エロディ・ユン)だ。ミステリアスで怪しげな雰囲気を纏う彼女だが、マットがデアデビルであることを肯定してくれる唯一の理解者でもある。エレクトラを演じるエロディ・ユンは、マーベルへの参加を「エキサイティングな経験だった」と語っている。 「この作品に関わることが出来て、とても興奮したわ。私たちはマット・マードックと彼のジャーニーを語っているの…正義を求めている人のジャーニーをね。彼が弁護士であろうと、夜の自警主義者であろうと関係ないわ。エレクトラにとってもそれは同じで、私はそれを「エレクトラは誰? この女の子は誰なの? 彼女はなにを望んでいるの? 彼女はいいの? 悪いの?」というふうにアプローチしたの。ストーリーの途中や最後に、彼女の真実を見つけられるのを期待しているわ」  善と悪では割り切れないグレーゾーンがあると説き、フランクの存在に苦悩するマットを支えるエレクトラ。しかし、彼女自身も重大な秘密を抱えている様子から察するに、今後の展開を左右する存在であることは間違いない。
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 アイアンマンがアベンジャーズに所属しているように、デアデビルもザ・ディフェンダーズというチームに所属している。デアデビルをはじめ、チームにはジェシカ・ジョーンズ、アイアンフィスト、ルーク・ケイジといったヒーローたちが所属している。制作総指揮のジェフは、そんなディフェンダーズについても、すでにプランは準備していると明かす。 「今僕らはルーク・ケイジのプロダクションをやっていて、アイアン・フィストにも取り掛かっている。最終的にどうなるかというと、彼ら全員がお互いに「ザ・ディフェンダーズ」として出会うことになる。僕らが最初にNetflixとした話では、『デアデビル』も『ジェシカ・ジョーンズ』もシーズン2はなかった。つまり、僕らはこの4つのストーリーを語って、「ザ・ディフェンダーズ」を語り、その後は家に帰る予定だったんだ」  『デアデビル』のシーズン3が制作されているという話はまだ発表されていないようだが、シーズン2の最終話には続編を予感させるラストシーンが用意されていた。『デアデビル』の続編に加え、現在制作中である他のヒーロー作品も気になるところだが、なにより『ザ・ディフェンダーズ』として全員集結する日を多くのファンは待ち望んでいるだろう。 (構成=泉夏音) ■配信情報 『Marvel デアデビル』シーズン2 Netflixにてストリーミング配信中 (C) Netflix. All Rights Reserved. Netflix:https://www.netflix.com/jp/ 

アイドルはなぜ女優を目指すのか? 姫乃たまが“アイドルと映画の関係”を考える

【リアルサウンドより】  先日、『キネマ純情』を観て、映画に出演できるアイドルは強いなあと思いました。90分じっくり観ていると、主演の女優アイドルグループ・ノーメイクスを、どうしても好きになってしまうのです。まだグループ結成から一年ほどしか経っていないので、目にしたことのない方も多いかもしれませんが、作品を観ればきっと好きになると思います。  私はいつもライブに出演する時、「恋をしてほしい」という気持ちで舞台に立っています。歌も踊りも秀でていない地下アイドルの私を好きになってもらうには、「なんとなく気になる」という恋の始まりのような感覚に頼るしかないからです。  しかし、ライブは出演時間が短くて、たいてい15~20分、長くても30分程度しか舞台に立つことができません。恋愛でいうと、一目惚れでなければ気にかけてもらえない短さです。しかも、次々とほかのアイドルの子が登場するので、全員を記憶することは難しいと考えられます。ほとんどの場合、好きなアイドルを観るついでに、何度かライブを目にすることで、ようやく気にかけてもらえるのです。  こうした活動をしていると、まとまった時間じっくり観てもらえて、見終わった後もゆっくり考えてもらえるのは、映画に出演しているアイドルの強みだと思います。そもそもアイドルのライブ自体が、世間的に敷居の高い空間ですが、映画であれば敷居もぐっと下がり、アイドルに興味のない映画ファンの方や、少しだけ興味を持っている人の目にも留まって、広がりがあります。しかも、映画を観ているうちに、アイドルへ親近感のような愛着が芽生えてくるのです。  2011年にAKB48のドキュメンタリーシリーズ『DOCUMENTARY of AKB48』が公開され、2015年にはももいろクローバーZ主演で、平田オリザ原作の『幕が上がる』が映画化、そして今年も、橋本環奈主演の『セーラー服と機関銃-卒業-』が公開されて、世間的にもアイドル映画が話題です。  さらに、同じく10年代からは、インディーズのアイドル映画も盛り上がりを見せています。昨年は、ニューウェーブアイドル・ゆるめるモ!主演の『女の子よ死体と踊れ』が公開されました。今年も冒頭で取り上げたノーメイクスの『キネマ純情』や、五月からは、メジャーデビューを控えているヒップホップアイドルユニット・lyrical schoolの『リリカルスクールの未知との遭遇』が公開されます。
  私も、本当に、極稀に(強調)、アイドル映画に出演する機会があり、2012年にはBiS主演の『アイドル・イズ・デッド』(深谷まで撮影に行ったものの、撮影時間が足らず、後日近所の公園で撮り直し)に、2014年には、いずこねこ主演の『世界の終わりのいずこねこ』(なぜか、私と小明さんの共演シーンだけアドリブ)にも出演させていただきました。  撮影現場へ行くたび、主演のアイドルさんのために、大勢の人が働いていて感動します。インディーズのアイドル映画といっても、主演で映画を製作してもらえるアイドルは、ほんの一握りなのです。  私が出演した二作は、どちらもライブシーンが収録されていたり、役名が芸名のままだったりと、普段の活動を活かした映画でしたが、現在アイドルとして活動している女の子達の中には、アイドルを引退して、女優業への転向を希望している人も多くいます。私の周囲にいるライブアイドルの中でも、女優志望の子は少なくありません。どうしてライブアイドルは女優を目指すのか、以前から不思議に思っていました。  何年も前に関係者の人から、ライブアイドルが演技の仕事を受ける理由を、「人気が陰って仕事が減った時でも、舞台の稽古をしてるってブログに書けば、仕事があるアピールになるから」と、説明されたことがあります。しかし、ライブアイドルはライブの本数が多いため、そのような工作をする必要がありません。なんとなく、その説にはしっくりきませんでした。  直接、女優志望のライブアイドルの子達に話を聞くと、よく「表現することが好き」という言葉がでてきます。本人が言うので、それが答えのすべてだと思うのですが、私自身に主体性がなく、表現することにあまり興味がないため、わかるような、わからないような気持ちで、何年も疑問を放置していました。  そして先日、いくつかのアイドル映画を手がけている監督に話を聞く機会があり、疑問を投げかけてみたところ、「女優は目立つから」と、即答されました。たしかに、ライブでは舞台の隅っこにいる子でも、映像なら彼女だけを映すことができます。現に私は映画を観て、ノーメイクスを好きになりました。目立つって、そういうことでしょうか。ずっと生身の人間が目の前にいるライブでしか活動をしてこなかった私には、映画で目立とうという発想がありませんでした。  また、返り咲きや、一発逆転を狙って、映画で濡れ場に挑戦したがるアイドルの子も多いと聞きました。女優志望のアイドルの中にも、純粋に表現することが好きな子と、目立ったり愛されたりしたい子がいるのかもしれません。  ライブアイドルの話をしていると、いつも承認欲求の問題から逃れられません。そして、欲求をこじらせて失敗してしまうライブアイドルの子が多いのも事実です。私も、舞台女優の仕事を受けてから、女優に転向しようとしてライブの本数を減らし、女優としての仕事も減って、そのままフェードアウトしてしまうライブアイドルの子を、何人か目にしてきました。  しかし、ずっとインディーズアイドルを見てきて思うのは、女の子達が、自分なりの表現を模索して悩むのも、承認されたくてもがくのも、インディーズアイドル文化の醍醐味であるということです。その、胸がざわつくようなインディーズアイドルの愛おしさを、切り取ってくれる映画が増えることと、地下アイドルに興味のない映画ファンの人が、恋に落ちることを願っています。 (姫乃たま(ひめの たま)) 地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。 [HP] http://himeeeno.wix.com/tama [ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな  http://ameblo.jp/love-himeno/ Twitter https://twitter.com/Himeeeno
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シネコンは“単館系/ミニシアター系”の受け皿となり得るか? 『グランドフィナーレ』上映を考える

【リアルサウンドより】  東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第3回は“単館系/ミニシアター系作品”について。  パオロ・ソレンティーノ作品を観ると、これが20年前だったらなあ、と感じずにはいられません。独創的な美しい映像でうっとりさせて、エモーショナルなドラマで感情をくすぐりながらも、ほどよくポエティックで難解。ソレンティーノ作品はかつての「単館系/ミニシアター系」作品のヒットに求められた資質を見事に備えています。『グレート・ビューティ 追憶のローマ』や4月16日に公開された最新作『グランドフィナーレ』はとりわけ。おひとり様シネフィルはもちろんのこと、カルチャー好きカップルのデートにも最適。年配ベテラン勢の心も掴み、さぞかし劇場は賑わったことでしょう。  2016年が始まって間もなく、ひっそりと渋谷シネマライズが閉館しました。いわゆるミニシアター文化の象徴的存在のひとつであったことは紛いなく、個人的にはさすがにもうここまで来た以上「単館系/ミニシアター系作品」という呼び名は廃止すべきじゃないかと思っているくらいです。濃い映画ファンにとっては周知のことでしょうが、もう何年も前からその呼び名は実質を失っています。例えば『グランドフィナーレ』を4月16日から同時公開する劇場は日本全国で20館です。このうち、そのジャンル的呼び名の括りにふさわしい劇場はいくつあるでしょう? 答えは6館です。残りの14館はシネコンなのです。広義にとらえたとしても、単館でもミニシアターでもない劇場が3分の2を占めている作品をそう呼ぶのは、無理があるように思えます。    単に映画館の都合だけで言わせていただければ、実は単館系作品はシネコンでこそ、上映に向いているように思います。まず1つ、失敗のリスクが低いこと。その作品の成否がその期間の劇場の収入とイコールになってしまうミニシアターと違って、シネコンは大作がドカンとヒットしていてくれれば、収入は確保できます。極論を言えばさほど入らなくても良いのです。なぜなら、大作だけではなく良質な小品を好む映画ファンに「ウチはこういうのも上映するんです」とアピールできる、それだけでも十分メリットがあるのです。大きな作品だけを観る方は多いですが、小さな作品だけを観る方は少ないからです。なので、近隣他館との差別化が図れます。  次に、ミニシアターに“敷居の高さ”を感じる方や、そもそも小さな作品の上映情報に触れるチャンネルをもっていないようなライトな映画ファンに予告編やポスター、チラシで訴求することができます。これは大きい。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』に興奮した方や、『家族はつらいよ』で笑っていただいた方に、次はまた違った視点で人生について思い巡らせてみてはいかがでしょうと、そっと『グランドフィナーレ』をご提案する。こういうことはシネコンが得意とすることです。  最後に、上映設備の問題です。こればっかりは一概には言えませんが、一般的には、ミニシアターとシネコンでは上映のクオリティが違います。映像面においても、音響面においても、座席にしても、やはりシネコンの方が質が高いことが多いと思います。とりわけ音楽モノは、ミニシアターを神殿のようにあがめている僕でも、シネコンのクオリティで観たいなあと感じることが多いです。  …と、このように書いてきて、それをひっくり返すようなことを言いますが、シネコンで今のところ単館系作品の興行が成立しているのは、実は「単館系/ミニシアター系作品」という名前がまだ生きているからです。そこにブランド力がまだ残っているからです。他館との差別化が図れる、としたらまさにこの理由です。すでに醸成されたファンや価値が存在しているからなのです。  シネコンに決定的に欠けているもの。それはシネフィルの「優越感」を満たし得ない空間であることです。ミシュラン3つ星のシェフの料理は、ショッピングモールのフードコートで提供されてもその実力を発揮できるでしょうか? 人間は何かを絶対的に計る装置ではありません。それを味わう場所や支払ったコスト、他者の評価やそのレシピに秘められた物語によって、受け止め方はまるで変わってしまうものです。壁ドン恋愛映画を見終わった女子中高生が、キャッキャ、ギャハハと騒いでいるロビーで、映画が始まる前に読もうとバッグに入れてきた純文学のページを繰れるでしょうか? それは難しいかも知れませんが、もし『グランドフィナーレ』をご覧になられる時に限って言えば、その嬌声は偶然にも作品理解を深めてくれるかも知れません。何しろ原題は『YOUTH(若さ)』です(笑)。  シネコンは、ミニシアターに匹敵する「カルチャー空間」を創り得るか? これはシネコンにとってひとつのテーマになりえます。例えばいくつかのシネコンが挑戦して、特別な高級シアターや豪華座席を設けていますが、それは成功しているでしょうか? またその方向性は正しいでしょうか? 大作と並べることで、小さな規模の作品の間口を広げられるのは、ぱっと聴くとメリットしかないように思えますが、敷居が高いことこそ、その作品の価値そのものであるということもあります。ここから見えてくるのは、映画館の“売り物”は“映画”ではない、ということです。“映画”は製作会社や配給会社の“売り物”であって、映画館が売るべきものは、実は“空間”や“文脈”なのです。“文脈”とは、いい意味でも悪い意味でも、入りやすさや入りにくさだったり、劇場の考え方や様々な提供サービスや作品チョイスだったり、歴史があったり新しかったりという“背景”のことです。器で料理が変わるように、映画もまた、観る劇場で変わるのです。  ここのところは掘ったらまだまだ深いので、またの機会に詳しくやりましょう。  You ain't heard nothin' yet!(お楽しみは、これからだ)   (文=遠山武志) ■立川シネマシティ 映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。 『シネマ・ワン』 住所:東京都立川市曙町2ー8ー5 JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分 『シネマ・ツー』 住所:東京都立川市曙町2ー42ー26 JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分 公式サイト:http://cinemacity.co.jp/ ■公開情報 『グランドフィナーレ』 4月16日(土)新宿バルト9、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル池袋ほか全国順次ロードショー 監督:パオロ・ソレンティーノ 出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ 原題:YOUTH/2015/イタリア、フランス、スイス、イギリス/124分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル (c)2015 INDIGO FILM, BARBARY FILMS, PATHE PRODUCTION, FRANCE 2 CINEMA, NUMBER 9 FILMS, C - FILMS, FILM4 公式サイト:http://gaga.ne.jp/grandfinale/

ディカプリオの“熊コート”はどう作られた? 『レヴェナント:蘇えりし者』衣装にスポット

【リアルサウンドより】  レオナルド・ディカプリオ主演作『レヴェナント:蘇えりし者』より、衣装デザインにスポットを当てた特別映像が公開された。  本作は、仲間に息子を殺され、未開の地に取り残されたハンター、ヒュー・グラスの壮絶な復讐劇を描くサバイバルムービー。本年度のアカデミー賞では、監督賞(アレハンドロ・G・イニャリトゥ)、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、撮影賞(エマニュエル・ルベツキ)の3部門に輝いた。  公開された特別映像では、本作の衣装デザインを手掛けた衣装デザイナー、ジャクリーン・ウエストの仕事の一端を確認することができる。本作をはじめ、『アルゴ』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたウエストは、“月並みな描写を超えたい”と考え、本作の時代に詳しいアルフレッド・ジェイコブ・ミラーとカール・ボドマーという2人のアーティストの絵やスケッチなどを参考にして衣装を製作した。  映像内でウエストは「アレハンドロは、着ている物でその人物を表現したいと思っている」と明かし、なかでもディカプリオ演じるヒュー・グラスについては「レオが仲間の猟師に見捨てられて取り残された時に、熊の皮を着るというとても詩的な考えを持っていた。これはとても叙情詩的なイメージだし、命を奪おうとした物に命を救われるというアイロニーがある。皮のおかげで彼は暖かく守られ、川では浮力になってくれる」と振り返る。  一方、グラスを裏切ったトム・ハーディ演じるフィッツジェラルドの衣装については、対照的なものにしたという。ウエストは「フィッツジェラルドは、恐怖に駆られている人だと思うから、彼の衣装には、たくさんの動物を組み合わせた。コートの裏地はカワウソで、帽子は、ビーバーよ」と解説した。500人分の衣装を作ったというウエストは、用いた毛皮や皮も、人道にかなった形で捕獲されたもので製作した。全体を通して暗い色にすることを目指し、その理由として「衣装はどれも薄汚れていて、風雨にさらされている。でも映像は素晴らしいわ。衣装とは対照的に役者たちの目が光っているからよ」と語った。
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トム・ハーディー

■公開映像 『レヴェナント:蘇えりし者』 4月22日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディほか (c)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved. 公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/revenant/

ディカプリオの“熊コート”はどう作られた? 『レヴェナント:蘇えりし者』衣装にスポット

【リアルサウンドより】  レオナルド・ディカプリオ主演作『レヴェナント:蘇えりし者』より、衣装デザインにスポットを当てた特別映像が公開された。  本作は、仲間に息子を殺され、未開の地に取り残されたハンター、ヒュー・グラスの壮絶な復讐劇を描くサバイバルムービー。本年度のアカデミー賞では、監督賞(アレハンドロ・G・イニャリトゥ)、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、撮影賞(エマニュエル・ルベツキ)の3部門に輝いた。  公開された特別映像では、本作の衣装デザインを手掛けた衣装デザイナー、ジャクリーン・ウエストの仕事の一端を確認することができる。本作をはじめ、『アルゴ』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたウエストは、“月並みな描写を超えたい”と考え、本作の時代に詳しいアルフレッド・ジェイコブ・ミラーとカール・ボドマーという2人のアーティストの絵やスケッチなどを参考にして衣装を製作した。  映像内でウエストは「アレハンドロは、着ている物でその人物を表現したいと思っている」と明かし、なかでもディカプリオ演じるヒュー・グラスについては「レオが仲間の猟師に見捨てられて取り残された時に、熊の皮を着るというとても詩的な考えを持っていた。これはとても叙情詩的なイメージだし、命を奪おうとした物に命を救われるというアイロニーがある。皮のおかげで彼は暖かく守られ、川では浮力になってくれる」と振り返る。  一方、グラスを裏切ったトム・ハーディ演じるフィッツジェラルドの衣装については、対照的なものにしたという。ウエストは「フィッツジェラルドは、恐怖に駆られている人だと思うから、彼の衣装には、たくさんの動物を組み合わせた。コートの裏地はカワウソで、帽子は、ビーバーよ」と解説した。500人分の衣装を作ったというウエストは、用いた毛皮や皮も、人道にかなった形で捕獲されたもので製作した。全体を通して暗い色にすることを目指し、その理由として「衣装はどれも薄汚れていて、風雨にさらされている。でも映像は素晴らしいわ。衣装とは対照的に役者たちの目が光っているからよ」と語った。
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トム・ハーディー

■公開映像 『レヴェナント:蘇えりし者』 4月22日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディほか (c)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved. 公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/revenant/