現在進行形で動き続ける、奇術的トークステーション『久米宏 ラジオなんですけど』

kumeradio1115.jpg
『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)
しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。  『報道ステーション』(テレビ朝日系)を見ているといまだに、「このニュースについて、久米宏なら何を言うだろう」と考える。それは古舘伊知郎の切れ味の悪さに対する不満であると同時に、久米の鋭さが視聴者に遺した確かな副作用でもある。だがその副作用には、絶好の特効薬がある。『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ 毎週土曜13:00~14:55)というラジオ番組である。  近年はテレビにほとんど出なくなった久米の、現在唯一のレギュラー番組である。ラジオというメディアは基本的に、しゃべり手のポテンシャルを引き出すという機能を持つ。中には大御所が「昔取った杵柄」をただ振り回すだけのラジオ番組も存在するが、この番組における久米は、むしろ新鮮味にあふれている。  この番組において久米の面白さを最も高純度で引き出しているのは、12分間にわたるオープニングトークである。彼の話術の最大の特徴は、「話題が動き続ける」ことにある。毎度12分の長尺の中で、政治・気象・宇宙・スポーツ・カルチャー等々、あらゆるジャンルを自在に横断しつつ複数の話題が入れ替わり立ち替わり登場するのだが、その展開は、ひとつの話が別の話題に「変わる」ことの連続というよりは、やはり話題が「動き続ける」という方が感触的に正しい。完全に転換するわけでも、完全につながっているわけでもない。その絶妙な按配がスリルを生む。  たとえば9月の放送では、まもなく日本シリーズが行われるというスポーツの話題から、「にっぽんシリーズ」か「にほんシリーズ」かという発音問題へとつなぎ、そこから自身のアナウンス学校時代の思い出話へ突入。自分たち新入社員がアナウンス学校でやっていたのは「毎日恥をかくこと」であり、一緒に恥をかいた者同士に生まれる「同期愛」や「連帯感」というものがある、という話へ。そして最後には、会社は違うが同期入社のあのアナウンサーの名を「Mもんた氏」と無意味なイニシャル混じりで挙げ、「擁護するわけではないですけど、同じ年に同じように恥をかいたと思うと、ある種の連帯感というものがある。ただの連帯感ですけど」と複雑な余韻を残してオープニングトークを終えた。  タイムリーなスポーツの話題から入り、自身の思い出話を経て、最後に再びタイムリーな芸能の話題に戻る、という「現在→過去→現在」という時間の往還も見事だが、実は最後の「Mもんた氏」の話題は現在形であると同時に過去の思い出話でもあって、最終的に最も刺激的な話題で現在と過去を包括するという理想的な形で終えている。さらには時制の問題だけでなく、彼の場合、自身と話題との距離感というのも自由自在で、世間的なニュースと自身の身のまわりの出来事が同次元で語られる。この場合であれば、スポーツと芸能ニュースの間にプライベートな話題が挟まれる形になっているが、やはりラストの「Mもんた氏」の話は、芸能ニュースであるとともにプライベートな話でもあるという二重構造になっている。  また、正月一発目のオープニングトークでは、マグロの初競りの話が資本主義原理の話になりマグロの睡眠の話になり、突如目の前のアシスタント堀井美香アナの居眠り疑惑へと発展したのち、総務省の睡眠調査データを持ち出してきて検証した結果、堀井アナはやはり秋田美人だという地点になぜか着地するという、至極アクロバティックな展開。またある時は、ベテルギウスの話がいつの間にやら「小説すばる」(集英社)の話(星つながり)になっていたり、中村勘三郎の話が足利義満にたどり着いたりと、動きながらパスをつないだその先にファンタジーを生み出していく筋立てには、まるで久米自身がよく話題にする欧州最先端のフットボールを目撃しているような興奮がある。  とはいえもちろん、毎度そこまで超難度のアクロバットが決まるわけではなく、特に複数の話題をつなげようという意志が感じられない回もあれば、着地がふわっと流れる場合もある。だが、そんなときにもトークが魅力的に感じられるのは、その展開力や表現力だけでなく、彼の情報収集能力によるところが大きい。そしてその基盤には、彼の「現在形の情報に対する異様なまでの貪欲さ」がある。  そもそもこの風変わりな番組タイトルには、「ラジオなんですけど、テレビの話をしよう」という意味が込められていたという。フリートークでも最近見たドキュメンタリーやニュース、ドラマの話から入ることが多いが、いずれにしろ昔のものではなく、今やっている番組が取り上げられることが圧倒的に多い。ほかにも新聞、本、映画、インターネットなど、あらゆるメディアから得た情報、あるいは自身の日常体験をきっかけに話が進められるが、彼の視点は常に現在を中心に捉え続けている。  歳を重ねるにつれて価値観が凝り固まり、現在の情報に対して閉じた状態で独断を述べる傾向は一般に間違いなくあるが、今の久米は69歳にして、おそらく現在の世界に対して最も開けた状態にあるのではないかと思わせるほどに、あらゆる情報を次々と貪欲に取り込んでいる。やはり仕事を減らしたことにより、自由に使える時間ができたことが大きいと思われるが、その話の端々から伺える博識っぷりは並大抵ではない。  そして知識もやはり、獲れたてが一番おいしい。見た直後のテレビの話や読んだ直後の本の話というのは、なぜか面白い。仕入れたばかりの知識にはまだ確かな熱が残っていて、内容だけでなくそのテンションまで丸ごと相手に伝わるのだろう。だからこの番組には、現在と併走し続ける臨場感があり、動き続ける久米宏の現在進行形がここにある。彼はなお自らを更新し続けている。 (文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>) 「逆にラジオ」過去記事はこちらから

「これぞ大人の対応?」ナイナイ岡村と久米宏の“挨拶論争”は意外な結末に……

kumeradio.jpg
『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)
 お笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史と人気キャスター・久米宏との間で勃発した“挨拶論議”が話題を呼んでいる。  事の発端は、5月10日放送のラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)での岡村の話。今月4日、地下駐車場で前方から久米がマネジャーらしき人物らと3人で歩いて来るのを見て、岡村が「おはようございます」と頭を下げたが、無視されたという。  岡村は「(久米は)確実に気づいたはず。声も出したし頭も下げたし。久米さんはマネジャーさんと話をしながら、そのまま(岡村の)横を素通りしていった。『んっ?』と思いながら、エレベーターで4Fに上がったら、スタッフさんらがいて、みんな挨拶してくれた。楽屋に入って『もうええわ』と思った」と憤慨。最後は「こんなことってある? 芸能界っておかしい。もう芸能界を他人に勧められない。(久米は)もう知らん人になった」とまで言ってのけた。  これにネット上では「久米が悪い」「岡村が根に持ちすぎ」など、賛否両論の声が噴出。あまりの反響に久米は、18日放送の『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)のオープニングトークで、“岡村発言”にリアクション。久米が丸の内のショッピングセンター内の紳士服店で日産自動車のCEOであるカルロス・ゴーン氏に出くわし、面識のある久米が「こんにちは」と挨拶をしたところ、ゴーン氏はチラ見しただけで無視したというのだ。  これには共演者のTBS・堀井美香アナウンサーも「(誰かに)やったことはやり返されるんですね」と大爆笑。久米も挨拶をして無視される気持ちをあらためて知ったと語り「挨拶したら、挨拶してほしい」と語った。  ラジオ関係者は「岡村さんの話を伝え聞いた久米さんが『こりゃマズイ』と考え、冒頭で似たような話をしたそうです。本当にそのような出来事があったかどうかは不明ですが、ムキになって反論するわけでもなく、久米さんは大人の反応をしたと思いますよ」と話す。20年近く司会を務めた報道番組『ニュースステーション』(テレビ朝日系)では、歯に衣着せぬ発言で物議を醸した久米も、今では世間の反応を敏感に感じ取るようになったようだ。