
サンリオ本社に潜入!
1974年の誕生以来、40年近くの長きにわたって世界中で愛され続けている子ネコのマスコットキャラ「ハローキティ」。世代を超えて女子たちの「かわいい」の声を一身に集め続けているキティちゃんが、最近なんだかすごいことになっている。
90年代末から、「ご当地キティ」と称して日本各地の名物を模した携帯ストラップや、浜崎あゆみ、AKB48ら人気タレントやスポーツチーム、「モンスターハンター」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」といったゲーム、アニメキャラ。「Forever21」「サマンサタバサ」「リーボック」などの各種ブランドなどと、業種・タイトルを問わない多彩なコラボレーションを展開。毎回、我々を驚かせ続けているキティちゃんだが、近年はスーパーヒーロー・イチゴマンに変身してみたり、自分と同じフォルムのロボット・KITTYROBOTを作ってみたり、バキバキのクラブサウンドをプレイしまくるDJになってみたりと、ますますもってアグレッシブ。
そこで今回、株式会社サンリオの広報・東松一男さんに、キティちゃんに今何が起きているのか? キティちゃんは今後どこを目指すのかを聞いてみた!
■時代を、そして男女の壁を超えるハローキティ

第1号商品 (C) 1976 SANRIO CO.,LTD.
まず誰もが気になるのが、なぜキティちゃんはサンリオの大黒柱となるほどの人気コンテンツに成長したのかという点であろう。しかし、東松さんは「それはよく分からない」とキャラクターそのものの人気の秘密についての言及は避けつつ、「ハローキティ」の今までの歩みを語ってくれた。
「“ハローキティ”のみならず、弊社のキャラクターはほとんどが商品にデザインするために生まれます。一般的にキャラクターはアニメや漫画、絵本といった作品から生まれて、それを二次利用する形で商品にデザインすることが多かったので、原作のイメージを変えるのが難しく、そこが当社のキャラクターとの大きな違いです。そんな中でハローキティの開発は74年に始まり、それ以降も時代の価値観に合わせてデザインを変化させつつ、仲間やストーリー、設定を増やしていきました」
さらに、1980年より三代目デザイナーに就任した山口裕子氏によるサイン会の開催や、季節や年ごとにグッズの柄を変えるなどの工夫を凝らした商品展開によって、ハローキティは常にサンリオキャラの中で人気上位を維持し続けていた。
そんなハローキティの歴史の中で、大きなターニングポイントとなったのが、96年から97年のこと。この時期より、それまで主に子ども向けキャラクターとして販売されていたハローキティグッズが、女子中高生やOLを中心に人気を博し始めたそうだ。当時、一部メディアにて「華原朋美が雑誌でキティ好きを公言したところ、女子中高生の間でブームが起こった」という報道が行われたそうだが……。

最新のキティ「不思議の国のハローキティ」
(C) 1976, 2013 SANRIO CO.,LTD.
「それも一つの要因だと思いますが、そんなに単純じゃないと思います。80年代以降、高校生くらいの方から『ハローキティがずっと好きだったけれども、どうしても子ども向けのデザインだから、まわりから子どもっぽいと言われる』『自分たちの世代でも持てるものを作ってください』というお手紙をいただくことがあって、すでにいくつか大人向けのグッズも展開していました。しかし、割合としては子ども向けのグッズが大多数でした。それが96~97年ころに弊社に限らず、大人がキャラクター商品を使うというのは子どもっぽいことではない、と考える人が増えてきて、大人向けのキャラクター商品が受け入れられるようになってきました。全人口の年齢の幅を考えれば子どもよりも大人のほうがはるかに割合が多いので、そうなってくるとキティの支持層も圧倒的に大人の割合が多くなってきたわけです」
男子向けグッズに目を向けると、バンダイが高年齢層向けの「ガンプラ」ブランド「MG」シリーズを95年に展開。またアニメファンをターゲットとした深夜アニメの放送が本格化し始めるのも96年頃。偶然かもしれないが、確かにこの頃からそれまで「子ども向け」と捉えられていた娯楽やキャラクターが「大人向け」に展開する動きが活発化してきたようにもみえる。さらに、日本以上にキャラクターグッズを大人が持つということに抵抗のある社会が多い海外でも、2000年以降、日本と同じく大人向けキャラクターグッズが売れるようになる、という価値観の転換が起こったそうだ。
東松さんは、この10年の「ハローキティ」、そしてサンリオの躍進の裏には、社会のキャラクターに対する価値観の転換が大きいと語る。その結果、冒頭にも触れた驚くべきコラボレーションの数々も実現した。
「コラボレーションもキャラクターだけではなくブランドやご当地のものなど多岐にわたることで、キティのファン層が広がっていきました。基本的にサンリオキャラクターは『人と仲良くしていくこと』がコンセプトなので、ほかのキャラクターとのコラボレーションは、コンセプトに合っていると思います」
「人と仲良くしていくこと」をモットーに、まさに「仕事を選ばず」コラボレーションしまくるキティちゃん。彼女にとってのNGは「殺傷能力のある刃物、銃(合法な国であっても)」「タバコ、ワイン以外のお酒」「アダルトグッズ」等だそうだ。
そんな仕事の鬼ことキティちゃん……もといキティさんの今後の展望の一つに、男性向けグッズの定着があるという。
「最初に男性ファッション誌とコラボして誌上限定販売したところ、すごく人気が出まして、原宿のショップで販売するようになったり、吉田カバンさんとコラボしてメンズバッグを出すようになりました。今後は、性を超えて愛されるキャラクターに育ってくれるとうれしいですね」
世代を超えて、今度は性別を超えようとしている「ハローキティ」。彼女の活躍は、まだまだ終わらない。
■サンリオの考える「キャラクター」と「ソーシャル」の関係
現在サンリオは、国内向けにはキャラクターを使った商品を自社開発して「サンリオショップ」など自社で運営する流通網を使った商品展開と、他社にキャラクターを提供した際のライセンス料を受け取るというライセンスビジネスの両輪をベースに展開しているが、海外に対してはもっぱらライセンスビジネスが主流だという。
「アジアは日本と似ている部分が多いですが、欧米は流通構造や条件も全く異なるため、なかなか自社商品専門ショップを広く展開することが困難でした。そこでライセンス中心のビジネスに転換しました」
例えばH&M、Forever21、ZARAといったすでに大きなマーケットを持っているショップブランドと契約し、各ブランドでサンリオキャラを使った商品を開発。そしてそのブランドショップでのみ販売することで、キャラクター商品のクオリティを維持・管理できるというわけである。
サンリオは自社のキャラクターを海外のブランドにライセンスすることで、グローバルな展開が可能となり、ブランド側もサンリオの持つ強力なキャラクターでオリジナル商品を展開することでプレミア感を演出できる。このビジネスモデルで、サンリオキャラクターは世界中に拡散。現在、サンリオキャラクターは109カ国と地域で公式に展開されているという。

DJハローキティ (C) 1976, 2011 SANRIO CO.,LTD.
ほかにも日本国内でサンリオが展開するテーマパークというと、「サンリオピューロランド」(東京都)、「ハーモニーランド」(大分県)の2カ所が有名だが、昨年はマレーシアの「プテリハーバーファミリーテーマパーク」内に「サンリオ・ハローキティ・タウン」を現地企業がライセンス契約により開園。さらに、台湾の航空会社・エバー航空は2005年より日本~台北間の航路に、機体ペイントのみならず各アメニティや機内食など何もかもがキティ一色のハローキティジェットを就航(中断していた時期あり。現在では日本以外の路線にも)。昨年6月にはアラブ首長国連邦の首都・ドバイに、「ハローキティビューティスパ」という高級スパもオープンするなど、サンリオ──そしてハローキティは国境をも超えて活躍している。

KITTYROBOT (C) 2013 SANRIO CO.,LTD.
Original concept by Sanrio Wave HK. All rights reserved.
「昔はキャラクター=子どもというイメージがありました。しかし、オリンピックでもマスコットキャラクターが毎回作られるように、キャラクターは親しみやすさをアピールするために作られます。ただキャラクターグッズの歴史が、アニメや漫画など子どものものから始まったために、たまたま子ども向けというイメージが定着していただけだと思います」
キャラクターの持つ意味合いをそうとらえるサンリオは、起業当初より「ソーシャルコミュニケーションビジネス」を掲げている。
「弊社の事業について、我々は “ソーシャルコミュニケーションビジネス”と呼んでいますが、そこにはキャラクタービジネスではなく、人と人のつながりを円滑にするようなことを事業化していこうという思いがこもっています。その一つの表現方法として、キャラクターとは言葉を使うことなく人と人をつなげるメッセンジャーのようなものと認識しています。
例えばキティちゃんのプレゼントをもらった時、受け取った側はもしかしたらそんなにキティちゃんが好きじゃないかもしれない。でも、少なくとも贈る側のなんらかの好意的な感情をキャラクターデザインから感じることはできると思います。そういうふうに言葉でうまく表現できないことを、キャラクターが代弁してくれるという部分があるんじゃないでしょうか」
■仕事を選ばないキティさんの今後の展望

イチゴマン (C) 1976, 2011, 2012 SANRIO CO.,LTD.
ワールドワイドに、そして世代を超えて活躍する我らがキティちゃんだが、冒頭で触れたように「KITTYROBOT」「イチゴマン」「DJハローキティ」など、さまざまなパフォーマンスに挑戦。毎回、我々を驚かせ、そしてワクワクさせてくれる。
「これからはキティちゃんを一人のエンターテイナーとして育てていこうと考えています。これまでもハーモニーランド、ピューロランドや全国でのショーはやってきたんですが、そうではなく、ピンのタレントとして売り出していきたいですね」
このように語る東松さんが一番楽しそう。キティちゃんの活躍を楽しんでいるのは、誰よりもサンリオのスタッフのようだ。
40年にも及ぶ活動を通じて、名実ともにサンリオを支える大きな大黒柱として君臨するまでに成長したハローキティ。世界中のあらゆる存在とコラボレーションすべく、今日も彼女はみんなのそばで愛嬌をふりまいている。
(取材・文=有田シュン)
●サンリオ
<
http://www.sanrio.co.jp/>