すわ「新たな表現規制か?」と情報を知った者は、みな戦々恐々とした。 現在、マンガ家・野上武志氏の単行本『まりんこゆみ』(企画・原案 アナステーシア・モレノ/星海社発行)が、Amazonのサイトで販売停止になっているのだ。 この作品は、ウェブ連載をまとめたもので、世界最強の海兵隊に日本の女子高生が入隊するというギャグテイストの作品。現在も連載は継続中で、単行本は今月10日に発売になったばかり。現在、Amazonの同作品のページでは <調査中の商品 本商品に問題があるとのご指摘をお客様からいただいたため、現在一部の販売を一時的に休止しています。問題が解決され次第、販売を再開いたします> と表示され、注文ができない状態になっている。ほかのネット書店では平常通り販売が継続されており、Amazonが独自の判断で販売を停止していることは明らかだ。 いったい、原因はなんなのか? 本日午前に、出版元の星海社に取材したところ 「当社でも原因がわからず調査中の状態で、何もお話しできないんです」 と、同社も困惑している様子。Amazonのサイトに記された文面からは、なんらかのクレームが寄せられたのではないかと予測される。だが、作者の野上氏の元にも、これまでクレームや嫌がらせめいたメールなどは届いていないという。 作品内で扱っているのは、明らかにアメリカの海兵隊と分かる集団(作中では「アメリゴ合衆国」と表記)。内容紹介で「機密スレスレなまでのリアルさに全世界の現役・OB海兵隊員が騒然」と煽っているだけに、CIAの工作か、はたまたコミンテルンの陰謀か、謎は深まるばかりだ。 この販売停止が注目を集めたのには理由がある。Amazonでは昨年3月、ひとりの女性が「児童ポルノを一切売らないよう、アマゾン社長に直接メールを送りましょう」と呼びかけたことをきっかけとして、ロリコン漫画誌「COMIC LO」(茜新社)が販売停止にされた一件もあるからだ。それゆえ、今回も「表現の自由」にかかわるなんらかの問題ではないかと注目されたのである。 ところが……実際はまったく違った。 本日、夕方に星海社にあったAmazonの返答によれば 「購入者から“本に折れがあった”とクレームがあったため、倉庫の在庫をすべて検品中だそうなんです」(野上氏・談) 大山鳴動して鼠一匹。 (取材・文=昼間たかし)『まりんこゆみ』(星海社)
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オヤジ系漫画誌の一角「漫画サンデー」が廃刊決定 「看板雑誌も赤字には耐えられなかった……」

「漫画サンデー」(実業之日本社)
1月22日号
2012年12月、足かけ24年にわたって連載された新田たつお氏の『静かなるドン』がフィナーレを迎えたばかりの「漫画サンデー」(実業之日本社)が、2013年3月をめどに廃刊することが、明らかになった。
同誌は「漫画ゴラク」(日本文芸社)、「週刊漫画タイムス」(芳文社)と並ぶ、オヤジ系漫画誌の代表格。だが、出せば出すほど赤字がかさむ中で、経営陣は苦渋の決断を迫られたようだ。
「漫画サンデー」は1959年創刊。オヤジ系漫画誌の中でも、骨太な作品を多く掲載してきた。
過去の連載作品は、手塚治虫氏の『一輝まんだら』、水木しげるの『劇画ヒットラー』、杉浦日向子の『百日紅』、畑中純の『まんだら屋の良太』など尽きない。また、かつては、つげ義春が数多くの作品を発表した雑誌でもある。しかし、近年は売れ行きが芳しくはなかったようで、2012年6月からは発行ペースを週刊から月2回へ変更していた。
廃刊の理由は、利益があがらないことに尽きるという。
「よく知られている通り、漫画雑誌は赤字分を単行本で稼ぐもの。ところが、ほかの雑誌も同じ状況でしょうが、『漫画サンデー』でも単行本がまったく売れず、赤字がかさんでいました。それでも、会社の看板であることから発行は継続していましたが、いよいよ限界が来たんです」
と、編集部の関係者は語る。
さらに、漫画家の原稿料も赤字を増やす原因になってきたという。
「『漫画サンデー』では、原稿料を漫画家としてのキャリアに応じて支払うシステムが慣例でした。初めて執筆する漫画家さんでも、それまでのキャリアが長ければ原稿料は高くなるんです。原稿料は、安い方でも『週刊少年ジャンプ』の中堅クラスの2倍程度は支払っていました。単行本で稼ぐビジネスモデルが確立している頃なら、問題はなかったのでしょうが……」(同)
しかし、単行本が売れていないとはいえ、同誌が面白くないわけでは決してない。むしろ、歯ごたえのある作品が盛りだくさんで、ライバル誌の「漫画ゴラク」や「週刊漫画タイムス」とは違う独特の色合いの作品を支持する人は多い。同誌に連載されていた『監禁探偵』(原作:我孫子武丸・作画:西崎泰正)は、2013年初夏に実写映画の公開が決まっている人気作だ。
刊行が月2回になったことなど、不安要素はあったものの「まだまだ、元気な雑誌」と思われていただけに、廃刊の報は残念でならない。
読み捨てられる媒体のイメージが強いオヤジ系漫画誌だが、実のところ少年誌・青年誌とは異なる独特のテイストは見るべきものがある。その一角が崩れてしまうことをきっかけに、ジャンル自体が縮小してしまうことも危惧される。
なお、廃刊後も実業之日本社の漫画部門は継続するが、後継誌の予定はないという。
(取材・文=昼間たかし)
猪瀬直樹新都知事に肉迫! 『ミカドの肖像』の前に脆くも崩れた「表現の自由都市」という妄想

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マンガ家・大橋裕之版『スタンド・バイ・ミー』? 子どもたちのひと夏の冒険を描いた新作『夏の手』

『夏の手』(幻冬舎)
今夏、「サイゾーpremium」のロンドン五輪特別短期集中連載「オリンピック奇想譚」で話題を集めたマンガ家・大橋裕之。そんな彼が新刊を発売した。あらすじは、3人の少年が1人の少女のために、常夏の島・ケロ島にいる「夏さん」を日本に連れてこようとする冒険の物語。そこで発刊を記念して、執筆の裏話も含め、おおいに語っていただいた。
──まずは発刊おめでとうございます。9月26日発売に発売された『夏の手』(幻冬舎)ですが、現在までの反響はどういった感じでしょうか?
大橋裕之(以下、大橋) まだ反響は少ないですが、Twitterでちょろちょろっと。身近な人が読んでくれた感想としては、「わけがわからなかった」という意見も(笑)。あと、「読んで混乱した」とか(笑)。
──そんな意見もあるんですね。「『スタンド・バイ・ミー』を超える名作、誕生!!」と本の帯にもあるように、個人的にはストレートな少年の冒険譚として楽しく読ませていただきました。
大橋 そう言っていただけるとありがたいです。
──『夏の手』は「papyrus」(幻冬舎/隔月刊)の今年2月号から10月号までの連載に、描き下ろしを加えてできた作品だと伺いました。
大橋 実は1話目、2話目は自費出版で出していた「週刊オオハシ」の9巻と10巻で掲載して、あらためて1話目から「papyrus」で連載し直して、「続きを描ければな」と思ったわけです。
──「週刊オオハシ」で描いたころから、続きがなんとなく頭の中にあったということですか?
大橋 そうですね。ずっとぼんやりと続きが頭の中にあって。でも、そのまま途切れちゃっていて……。
──「papyrus」で連載するときは、もともと『夏の手』でいきます、ということだったんですか? それとも新作を描くつもりだったんですか?
大橋 事の発端は、幻冬舎の担当編集者さんが、「自費出版で出していたときの短編を集めて、単行本を出しませんか?」と。それで、この『夏の手』を持っていったらすごく面白がってくれて、「これの続きを描きませんか?」とおっしゃってくれたんです。それで、僕の思いとも合致したというわけです。
──この作品の単行本自体は、三段階の構成になっているんですよね。まずは「週刊オオハシ」掲載時の『夏の手』があり、「papyrus」連載時の『夏の手」があり、描き下ろしの『夏の手』がある。なんでも、描き下ろしの作業はとてつもないスケジュールだったとか?
大橋 68ページの作画を2日間でやりきりました(笑)。どう考えて無理だな、と思ってたんですが、なんとかできちゃいました。
──それでは具体的に、物語の内容に移りますが、3人の少年と1人の少女が出てきて、基本は少年の冒険譚というのがベースですが、恋愛あり、SFチックなところがあります。そこで大橋さん独特のペーソスというか、叙情派でロマンチックな部分も加わって、という感じですよね。
大橋 ありがとうございます。でも、かつてこの作品をマンガ雑誌の賞なんかにも出したんですけど、全然引っかからなくて……。
──物語の筋道としては、「今年は夏が来ない」と言う少女・なっちゃんの言葉を真剣に受け止めた少年3人が、人称化された「夏さん」を探す話ですよね。これは事前に考えていた構想だったんですか?
大橋 昨日、思い出したんですが(笑)、1970年代初頭に活動していた乱魔堂というバンドがいまして、「可笑しな世界」という曲があるんですけど、その歌詞の中に、「夏が来てるって」という歌詞があるんです。その歌詞を耳にしたら、夏が人間のような感じに思えてきて。そこが発想の出発点だったんですね。夏に人格みたいなものがあったら、と思うと、奇妙に思えてきたんです。
──いちばん重要な人物として出てくる少女・みっちゃんのキャラ設定は本当に絶妙ですよね。アホでいじめられっ子の少年・タケシより「アホ」なキャラクターとして登場して、単純な「不思議ちゃん」に思えるし、本当の「キチ○イ」のようにも思えてきました。
大橋 そこはどう捉えてもらってもいいんです。こういう言い方を許してもらえれば、読者まかせですよね。いろんな見方をしてもらって結構です。正直、どこまで人物設定を細かくしていいのか、自分でもわかんないですから(笑)。ただ、この作品を描くにあたり、自分の好きな『スタンド・バイ・ミー』であったり、『グーニーズ』であったり、楳図かずお先生の『わたしは真悟』といった作品を目指して描いていたことは間違いないです。もちろん、あの領域まで届くことは自分でも無理だとはわかっているんですが(笑)。ただ目標としては、そういった作品群が頭の中にありました。
──少年少女の話というくくりでは、そういった作品と同系列ですよね。
大橋 最初の気持ちは、単純にあんな作品作りたいな、と。
──作品を描き終えて、手応えみたいものはありましたか?
大橋 いや、毎回そうなんですけど、自信を持って作品を世に出したことはありません。いわゆる、「手応え」を感じたことがないんです(笑)。
──それはそれで非常に大橋さんらしいですよね(笑)。さて、これはネタバレになるから言えませんが、このラストはとてもポジティブな終わり方ですよね。
大橋 こういう終わりにするのは照れがあったんですけどね。でも、せっかく描くなら、希望を持たせたいな、と。救いのない話にするのは簡単なので。
──これから読む人に、こういう部分に注目して読んでほしいといった点はありますか?
大橋 さらっと自由に読んでほしいです。しょぼいSFとして読んでもらってけっこうですし(笑)。
──さらっと自由に。でも、さらっと自由に読んでも、どうしても大橋さん独特の作品のにおいみたいなものがついて回りますよ。
大橋 そういうものですかね。自分ではあまり意識してないので、特別これといったオススメポイントはないです!(キッパリ) 今回の出版に当たって、インタビューしてくれたのが、まだ「日刊サイゾー」さんだけなので、非常にありがたいです。ほかの媒体でも取り上げていただけるよう、どうぞよろしくお願いします!!
(構成=編集部)
