東京都が本格的なBL規制を開始か!? 東京都の不健全図書指定で異例の一挙に5冊指定

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東京都青少年・治安対策本部ホームページより
 いよいよ、BL(ボーイズラブ)への規制が本格化するのだろうか?  10日に開催された東京都の青少年健全育成審議会で、BLと男性向け合わせて一挙に5冊が不健全図書指定された。  東京都が毎月実施している不健全図書指定だが、近年は毎月2~3冊程度で推移しており、一度に5冊も指定されるのは、極めて異例だ。  指定図書の内訳はBLが3冊、男性向けが2冊。  BLは、藍川いたる『かべアナ 学園入獄編』『かべアナ 学園出獄編』(ともにマガジン・マガジン)と、アンソロジー『カーストBL』(フロンティアワークス)。その他は、早乙女もこ乃『つぐなわれ』、甘乃くぐり『いつの間にか背後にキモいオヤジが…』(ともにジーウォーク)である。  ここで目立つのは、BLが一挙に3冊も指定されていること。とりわけマガジン・マガジンの2冊は、2015年1月に指定された『かべアナ』に続くシリーズ。すでに指定されたシリーズ作がありながら、変わらず発行しているということを鑑みて指定候補に挙げられたと考えられる。  また、昨年から審議会に出席している委員からは「BLに対する風当たりは相当厳しい」という声も漏れてきている。 「指定の候補となる図書は、東京都の職員が店頭で購入している。その中で、BLが明らかに目立っているのは間違いありません。出版社側も、すでにどんなことをやったら指定されるのか、わかっていないはずがないでしょう。事態は、指定されるような表現をやめるか、男性向けのように自主規制マークをつけるかを判断するところまできていると思います」  そう語るのは、不健全図書指定の事情をよく知る業界関係者。  今回、指定されたBLのうちマガジン・マガジンは、大手出版社が多く加盟する日本雑誌協会の加盟社。フロンティアワークスは、言わずと知れたアニメイトグループの重要な一角で、数々のアニメ作品にも関係する業界の大手企業。常々、指定回数の累積を避けるために、発行元を別法人に切り替える手段を取る出版社もあるが、「そうしたテクニックは、東京都にバレバレ」といわれてきた。ゆえに、この指定も単なる店頭で目立っているという事実を超えた意図も感じられる。  なお、今回のBL大量指定について東京都青少年課の重成浩司課長に尋ねたところ「まだ公表前なので、お話は公表後にしていただけると……」と丁寧な対応であった。 (取材・文=昼間たかし)

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東京都青少年・治安対策本部ホームページより
 いよいよ、BL(ボーイズラブ)への規制が本格化するのだろうか?  10日に開催された東京都の青少年健全育成審議会で、BLと男性向け合わせて一挙に5冊が不健全図書指定された。  東京都が毎月実施している不健全図書指定だが、近年は毎月2~3冊程度で推移しており、一度に5冊も指定されるのは、極めて異例だ。  指定図書の内訳はBLが3冊、男性向けが2冊。  BLは、藍川いたる『かべアナ 学園入獄編』『かべアナ 学園出獄編』(ともにマガジン・マガジン)と、アンソロジー『カーストBL』(フロンティアワークス)。その他は、早乙女もこ乃『つぐなわれ』、甘乃くぐり『いつの間にか背後にキモいオヤジが…』(ともにジーウォーク)である。  ここで目立つのは、BLが一挙に3冊も指定されていること。とりわけマガジン・マガジンの2冊は、2015年1月に指定された『かべアナ』に続くシリーズ。すでに指定されたシリーズ作がありながら、変わらず発行しているということを鑑みて指定候補に挙げられたと考えられる。  また、昨年から審議会に出席している委員からは「BLに対する風当たりは相当厳しい」という声も漏れてきている。 「指定の候補となる図書は、東京都の職員が店頭で購入している。その中で、BLが明らかに目立っているのは間違いありません。出版社側も、すでにどんなことをやったら指定されるのか、わかっていないはずがないでしょう。事態は、指定されるような表現をやめるか、男性向けのように自主規制マークをつけるかを判断するところまできていると思います」  そう語るのは、不健全図書指定の事情をよく知る業界関係者。  今回、指定されたBLのうちマガジン・マガジンは、大手出版社が多く加盟する日本雑誌協会の加盟社。フロンティアワークスは、言わずと知れたアニメイトグループの重要な一角で、数々のアニメ作品にも関係する業界の大手企業。常々、指定回数の累積を避けるために、発行元を別法人に切り替える手段を取る出版社もあるが、「そうしたテクニックは、東京都にバレバレ」といわれてきた。ゆえに、この指定も単なる店頭で目立っているという事実を超えた意図も感じられる。  なお、今回のBL大量指定について東京都青少年課の重成浩司課長に尋ねたところ「まだ公表前なので、お話は公表後にしていただけると……」と丁寧な対応であった。 (取材・文=昼間たかし)

偉大なる60点マンガ!? 『ツヨシしっかりしなさい』は、こんな内容だった!

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『ツヨシしっかりしなさい(1)』(講談社)
 バシーン!! ツヨシー! しっかりしなさい!! 姉に平手打ちされるシーンが印象的なマンガ、『ツヨシしっかりしなさい』。皆さんは読んだことがありますでしょうか? 1986年から1990年まで「週刊モーニング」(講談社)で連載され、92年にはアニメ化。フジテレビの日曜夜6時という『ちびまる子ちゃん』と同じ枠で放映され、94年にスーパーファミコンでゲーム化までされている、いわば「国民的マンガ」のひとつともいえる作品です。  先日Twitter上で『ツヨシしっかりしなさい』のアニメ版が話題になり、「見ていたはずなのだが、内容はよく覚えていない」「主題歌だけはよく覚えている」「実は、アニメ化なんかされてなかったんじゃないか?」などといった声が多数ありました。国民的マンガであるはずなのに、この存在感の耐えられない薄さ……。そこで今回は、『ツヨシしっかりしなさい』とは一体どんなマンガだったのか、検証してみたいと思います。  本書の作者は永松潔先生。単行本として全19巻が刊行されているだけでなく、続編として『ツヨシもっとしっかりしなさい』『ツヨシしっかり2しなさい』、小学生時代を描く『ツヨシくんしっかりしなさい』などが出ている人気シリーズです。それにしても、これほどまで執拗に「しっかりする」ことを要求されているマンガのキャラクターって、ほかにいるでしょうか?  ほのぼの感あふれる絵柄で、親子そろって楽しめるファミリー向けマンガであるかのようにイメージしがちですが、違います。事実、単行本に書かれている作品キャッチコピーは、このようになっています。 「家庭(ファミリー)という名の戦場で雄々しく生きる男一匹」  戦場、そして男一匹……。家族をテーマとしたマンガにしては、あまりに違和感のあるキーワード。実は『ツヨシしっかりしなさい』とは、気の強い女たちに囲まれた男が家庭内で1人たくましく生きていく姿を描く、サバイバルマンガなのです。  主人公は、井川家の長男である高校生「井川強(ツヨシ)」。井川家は父親が単身赴任しており、同居しているほかの家族は全員女。街で評判の美人だが、気が強く暴力的な長姉・恵子と、恵子ほど気は強くないが、嫌なことはツヨシに押しつける次姉・典子。そして、炊事・洗濯・掃除といった家事を一切やらず、娘には甘いが息子と夫にはやたらと厳しい母・美子。  この女三人衆に逆らえない一番年下のツヨシは、井川家の炊事・洗濯・掃除および家計の管理の一切をやらされている上、ドジったり愚痴ったりすると姉に強烈なビンタを食らうという、舞踏会デビュー前のシンデレラを彷彿とさせる悲惨な状況なのです。日本全国のおっかない姉を持つ男子たちの苦労を代弁する「国民的弟マンガ」といえるのではないでしょうか?  それにしても、長姉&次姉&母の女三人衆の理不尽さは特筆に値します。全弟が号泣間違いなしのエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 【エピソード1】  女三人衆がスナックで飲んでいたところ、お金が足りなくなったため、高校生のツヨシを呼び出してお金を持ってこさせた上、飲酒させます。そこへ、運悪く警察が巡回に。しかし、ここでツヨシとはアカの他人のふりを決め込む女三人衆。ツヨシだけが警察に詰問されます。こんな見事なトカゲの尻尾切りエピソード、見たことないよ! 【エピソード2】  懸賞で1泊2日の伊豆温泉無料招待券を当てたツヨシ。しかし、行けるのは3名のみ。ツヨシ以外の2人は誰が行けるのか? 姉2人と母は露骨にツヨシに擦り寄り、ご機嫌を取るようになりますが、女同士の醜い争いが次第にエスカレート。このままでは家族が崩壊してしまうことを危惧したツヨシ。家族の絆を取り戻すため、旅行券を破り捨ててしまいます。しかし、これが完全に裏目に出て、ツヨシが女三人衆から代わる代わる猛烈なビンタを食らうハメに。最終的に、旅行券はセロテープでつなげれば有効であることがわかり、ツヨシ抜きの女三人衆で伊豆旅行へ行くことになったのでした。こんなトラウマになりそうな懸賞エピソード、ありえないよ! 【エピソード3】  なんの因果か、クリスマスが誕生日のツヨシ。誕生日兼クリスマスパーティをやるから何も食べずに夜まで待っていろ、食べたら殴るぞ! と女三人衆に脅され、家でじっと待っているツヨシ。しかし、女三人衆は、それぞれイケメンや同僚に声をかけられて飲みに行ってしまい、家でパーティーをやることは完全に忘れていました。理由もわからず腹をすかせたまま、1人待ち疲れてちゃぶ台で眠ってしまうツヨシ……。こんな悲惨なバースデーある? 聞いたことないよ!  実は一番しっかり者なのに、周囲に決して評価されず、理不尽な要求をされても、暴力を恐れて反抗できず、ひたすら家事に従事する。単なるコメディを超えた男の絶望がそこにあります。ツヨシ、頼むから強く生きてくれ……その名の通り強く! 読みながら、そう願わざるを得ないのです。  ……と、こんな感じで作品をご紹介したものの、あらためて作品を読み直すまで、「あれ、『ツヨシしっかりしなさい』ってこんな作品だったっけ?」と、まるで記憶がなかったのも事実。一度読み始めると止まらなくなる不思議な中毒性を持っているのですが、読んだ後、どんな話だったか具体的なエピソードが思い出せるかというと、なぜかよく思い出せないのです。  要するに、全米が泣くようなインパクトのある、120点ぐらいの突き抜けた面白さはないけど、30点ぐらいのクソつまらない回もない。いつ読んでもそこそこ楽しい、常に60点ぐらいの面白さを安定的に維持できることこそが、国民的マンガの秘訣なのかもしれません。そう、『ツヨシしっかりしなさい』とは、偉大なる60点マンガなのであります。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

偉大なる60点マンガ!? 『ツヨシしっかりしなさい』は、こんな内容だった!

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『ツヨシしっかりしなさい(1)』(講談社)
 バシーン!! ツヨシー! しっかりしなさい!! 姉に平手打ちされるシーンが印象的なマンガ、『ツヨシしっかりしなさい』。皆さんは読んだことがありますでしょうか? 1986年から1990年まで「週刊モーニング」(講談社)で連載され、92年にはアニメ化。フジテレビの日曜夜6時という『ちびまる子ちゃん』と同じ枠で放映され、94年にスーパーファミコンでゲーム化までされている、いわば「国民的マンガ」のひとつともいえる作品です。  先日Twitter上で『ツヨシしっかりしなさい』のアニメ版が話題になり、「見ていたはずなのだが、内容はよく覚えていない」「主題歌だけはよく覚えている」「実は、アニメ化なんかされてなかったんじゃないか?」などといった声が多数ありました。国民的マンガであるはずなのに、この存在感の耐えられない薄さ……。そこで今回は、『ツヨシしっかりしなさい』とは一体どんなマンガだったのか、検証してみたいと思います。  本書の作者は永松潔先生。単行本として全19巻が刊行されているだけでなく、続編として『ツヨシもっとしっかりしなさい』『ツヨシしっかり2しなさい』、小学生時代を描く『ツヨシくんしっかりしなさい』などが出ている人気シリーズです。それにしても、これほどまで執拗に「しっかりする」ことを要求されているマンガのキャラクターって、ほかにいるでしょうか?  ほのぼの感あふれる絵柄で、親子そろって楽しめるファミリー向けマンガであるかのようにイメージしがちですが、違います。事実、単行本に書かれている作品キャッチコピーは、このようになっています。 「家庭(ファミリー)という名の戦場で雄々しく生きる男一匹」  戦場、そして男一匹……。家族をテーマとしたマンガにしては、あまりに違和感のあるキーワード。実は『ツヨシしっかりしなさい』とは、気の強い女たちに囲まれた男が家庭内で1人たくましく生きていく姿を描く、サバイバルマンガなのです。  主人公は、井川家の長男である高校生「井川強(ツヨシ)」。井川家は父親が単身赴任しており、同居しているほかの家族は全員女。街で評判の美人だが、気が強く暴力的な長姉・恵子と、恵子ほど気は強くないが、嫌なことはツヨシに押しつける次姉・典子。そして、炊事・洗濯・掃除といった家事を一切やらず、娘には甘いが息子と夫にはやたらと厳しい母・美子。  この女三人衆に逆らえない一番年下のツヨシは、井川家の炊事・洗濯・掃除および家計の管理の一切をやらされている上、ドジったり愚痴ったりすると姉に強烈なビンタを食らうという、舞踏会デビュー前のシンデレラを彷彿とさせる悲惨な状況なのです。日本全国のおっかない姉を持つ男子たちの苦労を代弁する「国民的弟マンガ」といえるのではないでしょうか?  それにしても、長姉&次姉&母の女三人衆の理不尽さは特筆に値します。全弟が号泣間違いなしのエピソードを、いくつかご紹介しましょう。 【エピソード1】  女三人衆がスナックで飲んでいたところ、お金が足りなくなったため、高校生のツヨシを呼び出してお金を持ってこさせた上、飲酒させます。そこへ、運悪く警察が巡回に。しかし、ここでツヨシとはアカの他人のふりを決め込む女三人衆。ツヨシだけが警察に詰問されます。こんな見事なトカゲの尻尾切りエピソード、見たことないよ! 【エピソード2】  懸賞で1泊2日の伊豆温泉無料招待券を当てたツヨシ。しかし、行けるのは3名のみ。ツヨシ以外の2人は誰が行けるのか? 姉2人と母は露骨にツヨシに擦り寄り、ご機嫌を取るようになりますが、女同士の醜い争いが次第にエスカレート。このままでは家族が崩壊してしまうことを危惧したツヨシ。家族の絆を取り戻すため、旅行券を破り捨ててしまいます。しかし、これが完全に裏目に出て、ツヨシが女三人衆から代わる代わる猛烈なビンタを食らうハメに。最終的に、旅行券はセロテープでつなげれば有効であることがわかり、ツヨシ抜きの女三人衆で伊豆旅行へ行くことになったのでした。こんなトラウマになりそうな懸賞エピソード、ありえないよ! 【エピソード3】  なんの因果か、クリスマスが誕生日のツヨシ。誕生日兼クリスマスパーティをやるから何も食べずに夜まで待っていろ、食べたら殴るぞ! と女三人衆に脅され、家でじっと待っているツヨシ。しかし、女三人衆は、それぞれイケメンや同僚に声をかけられて飲みに行ってしまい、家でパーティーをやることは完全に忘れていました。理由もわからず腹をすかせたまま、1人待ち疲れてちゃぶ台で眠ってしまうツヨシ……。こんな悲惨なバースデーある? 聞いたことないよ!  実は一番しっかり者なのに、周囲に決して評価されず、理不尽な要求をされても、暴力を恐れて反抗できず、ひたすら家事に従事する。単なるコメディを超えた男の絶望がそこにあります。ツヨシ、頼むから強く生きてくれ……その名の通り強く! 読みながら、そう願わざるを得ないのです。  ……と、こんな感じで作品をご紹介したものの、あらためて作品を読み直すまで、「あれ、『ツヨシしっかりしなさい』ってこんな作品だったっけ?」と、まるで記憶がなかったのも事実。一度読み始めると止まらなくなる不思議な中毒性を持っているのですが、読んだ後、どんな話だったか具体的なエピソードが思い出せるかというと、なぜかよく思い出せないのです。  要するに、全米が泣くようなインパクトのある、120点ぐらいの突き抜けた面白さはないけど、30点ぐらいのクソつまらない回もない。いつ読んでもそこそこ楽しい、常に60点ぐらいの面白さを安定的に維持できることこそが、国民的マンガの秘訣なのかもしれません。そう、『ツヨシしっかりしなさい』とは、偉大なる60点マンガなのであります。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国の“におい”

『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国のにおいの画像1
『進撃の巨人 悔いなき選択 フルカラー完全版(1) 』(講談社)
 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。今回は大人気漫画を通じて、日本が置かれている状況を解説します。  諌山創氏の『進撃の巨人』は、人をむさぼり食う巨人とそれに立ち向かう人類の戦いを描いた大ヒット漫画で、テレビアニメ、実写映画などメディアミックス展開が行われています。以前、僕はこの作品に対する見解をコラムに寄せたことがあります(「週プレNEWS」2013年10月27日掲載)。当時は、人類が高い壁に囲まれた地域の中で生活しているという作中設定が、現在の中国を反映していると分析したのですが、今回は、同時に日本の現状も描かれている、という点に触れてみたいと思います。  作中設定によると、人類が住む壁に囲まれた地域の総面積は、日本の総面積にほぼ匹敵します。この話は以前より中国のネット掲示板で話題になっていますが、つまり『進撃の巨人』の舞台は日本をモデルにしている可能性があります。2013年には、諌山氏の公式ブログがハングル語で荒らされるという事態が発生しましたが、これは登場キャラの「ミカサ」の名前が旧日本軍の戦艦から取られていたこと、「ピクシス司令」のモデルが明治期の日本軍人・秋山好古であることが原因だったようです。  また、『進撃の巨人』の登場人物の大半は西洋系のイメージで描かれていますが、ヒロイン格のミカサは黒髪の東洋系の人物として描かれています。作中では東洋人は減少しているという設定ですが、その名前といい、僕はミカサには、今後少子化による人口減少が予想される日本人のイメージが投影されていると思います。  諌山氏は、Twitter上で日本の朝鮮統治を支持するような発言を行ったこともあり、こうしたところから推測するに、愛国・保守的な人物なのかもしれません。おそらく、日本という国を重ねて描いているのでしょう。 ■作中で暗示される日本と中国の現状  本作からは日本のみならず、中国の“におい”も感じ取ることができます。  巨人から人類を守る壁は三層存在するのですが、最も外側にある地域は「シガンシナ区」と名付けられています。「シナ」、すなわち「支那」は現代では差別語とされる中国を表す言葉であり、それが最も外にあるという点においても、中国と日本の位置関係を表しているかのようです。  また、人類を統治する政府は、「巨人から人類を守る」という大義を振りかざして腐敗政治を行っているのですが、これは外国を仮装敵国として独裁政治を行う中国政府を連想させます。作中では「壁の外の世界は美しい」と記された書籍が禁書扱いされ、所持したり人に広めようとする人物は捕らえられてしまうのですが、これは中国政府による思想弾圧のようです。  そして、人類を取り囲み襲撃する巨人たちは、日本を取り囲む中国、アメリカ、ロシア、といった大国をイメージしているのかもしれません。日本はこれらの国々と比べると国土、軍事力ともにあまりに脆弱です。しかし、日清戦争や日露戦争時、当時の日本人は努力の末、自国より国土や人口がはるかに勝る相手に打ち勝ちました。日本人は巨大な敵にも果敢に立ち向かう勇気と力を持っており、本作においても、こうしたかつての戦前の日本を重ねているところもあるのかもしれません。  以上のことから『進撃の巨人』が人気作品となった要因は、現在の社会事情が作品の至るところに反映され、その要素が作品の世界観に迫真性をもたらしたからだと、僕は推測しています。 
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●そん・こうぶん 中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。 <https://twitter.com/sun_koubun>

「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道

「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道の画像1
(c)吉田貴司
 最近ではウェブ上での展開を中心にしている漫画も増えてきたが、その中でも異彩を放つ作風で話題となっているのが『やれたかも委員会』だ。  あの時、もう一歩踏み出していたら、あの娘とやれたんじゃ……。  そんな甘酸っぱ~い思い出を『やれたかも委員会』が「やれた」のか「やれたとは言えない」のか判定するというこの作品は、新作が公開されるたびに「いや、やれただろう!」「ねーよ!」などのザ・不毛な議論がネット上でヒートアップし、作品外での盛り上がりも見せている。  有料サイトで連載され、それをまとめた第1巻が双葉社より6月28日に発売。さらに2巻に向けての制作費を募るクラウドファンディングもスタートと、紙の雑誌で連載して原稿料をもらうという形ではない、ネット発のヒット作となった『やれたかも委員会』。  ネット時代の漫画家は、どうやって生き抜くべきなのか!? そしてネット漫画で本当に食えるの? ……などなど、作者の吉田貴司氏に聞いた。

■「ハンバーグはおいしかったけど、それでいいんですか?」

――まず、どんな漫画を読んで育つと、こういう作風になるのかを聞きたいんですが。 吉田貴司氏(以下、吉田) 小学校の時に初めて買った漫画が『ドラゴンボール』です。それから『幽☆遊☆白書』『3×3EYES』などを読んできて……。19歳でフリーターになり、その期間にすごく漫画を読んでいましたね。星里もちるさんのラブコメとか、福本伸行さんの『カイジ』とか、だんだんと青年漫画を読むようになって。だから、自分で漫画を描く時も青年誌っぽい作品になりました。 ――投稿を始めたのも、その頃? 吉田 21歳で持ち込みを始めました。大阪出身なんで、夜行バスで東京まで出て出版社を回ったんですけど、どこに行っても全然ダメでしたね。そのまま、22歳になっても一向に漫画家になれなくて。彼女にも「漫画あきらめたほうがいいよ」なんて言われて、ハンバーグ屋さんに就職したんです。そしたら福岡県の店に転勤になって、タコ部屋……もとい社員寮で暮らしながら、朝から晩まで働いていました。 ――社員寮じゃ、漫画を描くのは難しいですよね。 吉田 描けなかったですね。フリーター時代に親友が2人いたんですよ。ひとりは音楽やってて、もうひとりが漫画描いてて。誰かの家に行って、この間読んだ本がああだこうだって話をするような仲間だったんです。僕が就職して、九州に行ってしばらくした頃に2人が店に来て、うれしくてハンバーグをごちそうしたんですけど、アンケートに「ハンバーグおいしかったです。でも、吉田くんはそれで本当にいいんですか?」って書いてあって。 ――青春ですね! クリエイター志向の3人だったのに、それでいいのかよと。 吉田 それを伝えに九州まで来てくれたというのに感動したのかなんなのか、その後いろいろ悩んだ末に仕事は辞めることにしました。それで、大阪に戻ってまたバイトをしながら漫画を描いていたんですが、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で初めて「これ面白いね」って言ってもらえたんですよ。その漫画で努力賞1万円をもらって、うれしくって東京に出てきました。 ――え、1万円もらっただけで!? 吉田 編集者も「何しに来たの?」って言ってましたね(笑)。それから日雇いバイトとかやりながらネームを描いたら「増刊に載っけてあげる」ということになってトントン拍子にデビューできて、このまま行けるのかなーと思ってたら……なんともならなかったですね。その頃、担当から「佐藤秀峰さんがスタッフ募集しているけど、行く?」って言われて、作画スタッフになりました。 ――絵柄も何も、全然違うじゃないですか! 吉田 佐藤さんが僕のデビュー作を読んで「すごい面白かった」と言ってくれたらしくて。佐藤さんにはそれから10年以上たった今でも、お世話になりっぱなしですね。絵柄も何も違いますがなんとか雇ってもらえて、ご飯が食べれました。もちろん、仕事は厳しい面もありましたが。 ――佐藤さんのところで、何を描いてたんですか? 吉田 紙コップとか(笑)。お察しの通り、僕は絵がヘタなんで、なんにも描けないんです。佐藤さんのところって、雇用期間が3年間なんですよ。3年たってダメだったら、漫画家の道をどうするか考えなさいという方針で。でも、僕は1年、2年たってもうまくならないし、下にうまいスタッフがドンドン入ってくるし。絵は毎日リテイクの繰り返しだし、2年半たった頃が地獄でしたね。 ――その頃、自分の漫画は描いていたんですか? 吉田 スタッフに入った当初は佐藤さんの原稿を目の当たりにして、自信喪失してしまいました。「こりゃもう何を描いても仕方ないな」と。みんな陥るらしいですけどね。でも、作画スタッフの仕事がまったくうまくいかないので、逃避のために自分の作品を描きたくなるんですよ。それで描いたものを「モーニング」(講談社)に送ったら、ちばてつや賞の準入選をもらえて。その後、『フィンランド・サガ(性)』という作品で連載させてもらえることになりました。 ――おお、初連載ですね。それで、佐藤さんのところから独立できたんですか? 吉田 しばらくは兼業で描いてたんですけど、2年10カ月目くらいで辞めさせていただきました。月刊連載で20ページ、20万円もらえたので、1人で描いてる分には食べていけたので。でも、それも3巻くらいで終わっちゃって。すぐに次が始まると思って余裕かましてたら全然ネームが通らないし、ほかのところに持っていっても、賞には入っても連載できないみたいな、3年ぐらいそんな生活でしたね。
「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道の画像2

■作画家・編集者とモメて泥沼の展開に

――そんな時期に『やれたかも委員会』も描いていたんですよね。 吉田 そうなんですよ。第1話は2013年に描いています。くすぶっている時期に読み切りをたくさん描いていて、その中の1つでした。『やれたかも委員会』は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で奨励賞をもらったんですが、連載にはならなかったですね。あの形式だと、どうしてもオチがワンパターンになっちゃうと言われて……。 それから別の作品を描き始めて、15年に「これは面白いぞ」というものができたんですね。その『シェアバディ』という作品で連載をやれることになったんです。……絵がダメだから、原作者として。 ――それまでの期間って、何をやって食べていたんですか? 吉田 『フィンランド・サガ(性)』が終わってからは工場で働いていたんですけど、その工場も1年くらいで潰れちゃって。困り果てて、佐藤さんのところに行ったら「ウェブの仕事だったらあるけど、やる?」って言っていただけて。でも、1年くらいたった頃に『シェアバディ』の連載が決まったんで辞めました。 ――勝手ですねー! 吉田田 本当に申し訳ないです。でも初の週刊連載だし、ここは勝負かけようと思ってしまいまして。……その『シェアバディ』も、半年で打ち切られるんですけどね。作画家・編集者とモメるという泥沼の展開になっちゃいまして。 僕は話をじっくり考えたかったんで、持ち込む前に100ページ、連載が始まるまでに200ページ描きためていたんですよ。ところが、始まったら「人気がドベだから話を変えろ」っていうことになって。それまでは絶賛してたくせに。でも、先まで決まってるし、変えられないですよ。別案を作っても、元のクオリティーを下回るのがわかってますから。そしたら、作画家・編集者とで勝手に話を変えちゃったんです。 ――え、そんなことあるんですか! 吉田 そうなんですよ。原作者の僕が知らないキャラを出されても、困るじゃないですか! だから、最後の3巻は読んでもいないですね。……思い出したら、泣きたくなってきました。 それで連載が終わって、また佐藤さんのところに頭を下げに行って……。 ――ええーっ! 吉田 辞めて半年で戻っちゃって(笑)。頭が上がりませんよ、もう。
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■『やれたかも委員会』が話題になってザマア!

――再び佐藤さんのところで働きつつ、自分の作品も描いていた? 吉田 描いてはいたんですけど、『シェアバディ』の泥沼で心が折れ、もう編集者と何かをするのがイヤになっちゃって。だったら、ネットで描いて自分で電子書籍を出せばいいんじゃないかなと思うようになりました。 ――ネットでの展開というのは、佐藤さんの影響も大きいんじゃないですか? 吉田 そうですね。佐藤さんのところで電子書籍の仕事を担当してたので、電子書籍のストアのことや契約の仕方など、見て勉強させていただきました。それで、自分でネット展開するに当たって、どうすればいいかなと考えて、まあ考えてもわからないので、とりあえずTwitterに1ページ漫画を毎日上げるというノルマを課しました。それが16年の2月くらいのことです。 ――それ、お金にはならないですよね? 吉田 ならないですね。とりあえずいろいろと発信して、フォロワーを増やそうとしました。それから同人誌とか作って、500人くらいに売れるようになれば、別にいいかな……と思ってました。でも、最初はフォロワー700人くらいしかいなかったし、知り合いばっかりだったんで、作品を載せてもぜんぜん反応ないんですよ。毎日スベリ倒しで、心がバキバキに折れました。 ――それでも、編集者と一緒にやるよりはマシだと? 吉田 そうですね。 ――Twitterで初めて反応があったのは、いつ頃ですか? 吉田 『やれたかも委員会』がバズッたのが16年の9月なんですけど、それまでほとんど無反応でしたね。女の子がおじさんの気持ちを言う、みたいな漫画が1000RTいったくらいで。それから、9月に1万RTいったネタがあり、そのタイミングで過去の『やれたかも委員会』をネットの有名人の方が見つけてくれて、おかげでものすごく拡散しましたね。  13年にはブログとnoteに上げていたんですけど、それまではまったく無反応でしたから。16年4月に続編として『やれたかも委員会2』を描いて、noteで100円で販売したんですけど、それも4個しか売れず。 ――400円……。 吉田 振り込み手数料を引かれるから、振り込まれもしないんですよ。 ――でも、Twitterに漫画を上げ続けていたことによって、やっと『やれたかも委員会』に日の目が当たったと。 吉田 はい、「1」が20万PVいって、「2」も300個くらい売れて。「なるほどー、バズると、こういうことになるのか」と。そのタイミングでいろんな版元さんから「連載しませんか?」「書籍化しませんか?」って声をかけていただきました。ただ、連載をして原稿料をもらえるというのは魅力的だったんですが、やっぱり……電子書籍の権利を自分で持ちたかったんですね。それを要求したら、どこも通らなかったです。 ――佐藤秀峰さんレベルが要求したら通るけど……。 吉田 まあ、普通に考えて紙書籍のみで「原稿料が回収できるくらい利益になる」と思われないと、その条件はのんでもらえませんよね。打ち合わせで電子書籍の権利の話を出すと、みんな顔色変わるんですよ。「吉田さんと、そんな話はしたくなかった」と。 ――連載の話がナシになっても、電子書籍の権利は押さえたかった? 吉田 やっぱり、収入面についてももちろんそうですが、いろんな側面から電子書籍の権利を持つのは重要だと思います。実は、『フィンランド・サガ(性)』は佐藤さんの会社経由で電子書籍化してるんですよ。その時は電子書籍のことが出版契約書に盛り込まれていなかったので、自分で権利を持ってたんですね。一度、佐藤さんの漫画がセールでバーンと売れたことがあったんですが、僕の漫画もついでに売れて、100万円くらい収入がありました。その経験があったので、これを他人に渡しちゃう手はないなと。 ――とはいえ、noteの有料課金では、3万円くらいしか入っていないわけじゃないですか。原稿料のほうがよかったんじゃないですか? 吉田 いろんな人がその目先にとらわれて、契約に縛られたり、打ち切られたりしているのを見ているんですよ。権利を自分で持って継続して販売していけば、そのうち原稿料分はペイできるのではないかと思います。最初は苦しいけど、試してみる価値は十分あります。 ――ああー。お金以上に、出版社の都合で打ち切られたりしたくないと。 吉田 そうですね。絶対にあっちの都合で変えられたくないというのもあります。でも単行本って、あくまで出版社の商品なので、例えば「セリフを勝手に変えないで」って言っても、向こうの商品だから変える権利があるという理屈は残念ながら通ります。「じゃあ電子は自分でやりますよ。口出さないでください」となります。「スピリッツ」の担当者の時に散々な目に遭いましたからね。私は復讐鬼と化しています。 ――『やれたかも委員会』が話題になって、ザマアみたいな気持ちも……。 吉田 そりゃ、普通にあります。それからは、noteで自主的に連載する形を続けて、非独占だったらほかのサイトに転載してもらっても構わない、というスタンスでやっています。有料サイトのcakesさんからも話が来たんですが、あそこはPV数によってお金がもらえるんですよ。だからnoteで1話200円で販売しつつ、遅れてcakesで1週間限定で無料展開するというやり方にしたら、それが当たりましたね。noteだと、僕のことを好きな人が課金して読んでくれるだけだったけど、cakesで無料公開にすると話題になって、続きを読みたい人がnoteで課金してくれるという流れを作れたんです。 ――お金的には、どのくらいもらえるもんですか? 吉田 cakesとnote合わせて、月に12万円くらいですね。BuzzFeedさんなどのニュースサイトに取り上げられた時には、noteだけで10万とか15万とかいきました。 ――ああ、結構いいですね! まだ、佐藤さんのところの仕事も続けているんですか? 吉田 本当に申し訳ないのですが、先月末に辞めさせていただきました。 もちろんこのまま簡単にうまくいくとは思っていませんが、『やれたかも委員会』の書籍も出るし、クラウドファンディングも始まるし。忙しくなって、仕事がおざなりになっちゃうと申し訳ないと思ったので。
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■『やれたかも委員会』は純愛!?

――『やれたかも委員会』の中身の話もしたいんですが、この漫画のフォーマットって、ツッコミのある『BOYS BE...』ですよね。 吉田 確かに。僕は『BOYS BE...』あんまり読んでないんですけど、そういう青春! 純愛!みたいなものをガッツリやりたいのに、照れ隠しでこういう形式で描いているのかも知れませんね。先日対談させていただいた小説家の保坂和志さんに「今、純愛をそのまま描くとバカだと思われるから、みんな避けるんだけど、この形だと読者も純愛を照れずに読めるよね」って言っていただいて、確かにそうかもなーって思いました。 ――いろんな「やれたかも」な体験談が出てきますけど、吉田さん自身が一番好きな体験談はどれですか? 吉田 うーん、2話目の、ママさんバレーをやっている主婦ですかね……ああいう、女性からグイグイ来るタイプに弱いですね。自分からどう迫ったらいいのかわからない、っていうのもありますが。 ――「あの時、自分から行ってればやれたのに……」みたいな後悔が、たくさんある? 吉田 20代の頃はデートが終わって家に帰ってから「何やってんだろー」って、延々と蛍光灯眺めるみたいな、そんなのばっかりでしたよ。いまだに全然女性との距離の取り方がわからないところはあります。例えば、仕事で知り合った女性とプライベートで食事に行く……なんてことになったら、どうしたらいいのかわからないですもん。ファミレスだとあまりにも味気ないですし、ガッツリ間接照明みたいなところだと「口説く気か?」と警戒されて変な空気になるじゃないですか……。普通にご飯を食べたい時は、どこに行くのが正解なんですか!? ――「やれるかも」という期待が100%なければ、喫茶店でいいですもんね。 吉田 僕は、普通にご飯を食べられればいいと思ってるんです。でも、もしも女性側がアリだったとしたら、それはそれで話が変わってくるというか……。別の問題が出てきますよね? もしかして、最低なこと言ってる気がしてきましたが……すみません。 ――最新作では、初めて女性の体験談が出てきますが、そこでいきなり判定がゆるくなっている気がするんですが? 吉田 ゆるくなってますか? そうですか。特に自分では、そういう気持ちはなかったですが。女性が男性の体験談に対して「やれた」判定を出すことって、正直なかなかないと思うんですよ。女性のほうから「あの時やれたよ」って軽々しく言っちゃう作品なんか描いたら、性犯罪を助長しそうだし……。 ――そんなこと心配しているんですか! 吉田 でも、作品を通して、女性の性欲についても無視はしたくないわけです。僕は男なので、しょせん男都合の漫画しか描けないんですが、ギリギリまで女性の気持ちを考慮できたら面白いんじゃないかと思って描いています。  もちろん、女性の体験談でも「やれたとはいえない」ケースも出てくると思います。女性からアピールしたとしても、男側がダメってケースがあるじゃないですか。特に10代男子って「付き合わないと、やっちゃいけない」とか考えてたりするんで。 ――童貞相手だと、なかなか難しいですよね。 吉田 若い頃は「自分の中ルール」みたいなのが、やはり多い傾向がありますからね。 ――今後の展開ですが、自分の好きなことを描いて、読みたい人が課金してくれればいいというスタイルを続けていくんでしょうか? 吉田 そういう方向に行きたいとは思っています。「吉田さんの漫画だったら買います」という人が1000人くらいいてくれたら、ちょいちょい貯蓄しながらやっていけば大丈夫かなと思うんですよ。とりあえず、今年いっぱいは、書籍の印税も入るし、電子印税も入るし、グッズを作ったりスタンプを作ったりもしようと思ってるんで、食べていけるかなと。『やれたかも委員会』の単行本は年内にもう1冊くらい出したいんですけど、それと同時に新企画も立ち上げて、noteで動かしていこうと考えています。 (取材・文=北村ヂン)
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原作とは完全別物!? ディープすぎる『聖闘士星矢』派生マンガの世界

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『聖闘士星矢 1』(集英社)
『聖闘士星矢』が実写映画化される――先日、こんなニュースが世間を騒がせました。あらためて紹介するまでもありませんが、『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』とは「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1985~90年まで連載されていた、車田正美先生による大ヒットマンガです。  リアルタイムで星矢を読んでいた、僕と同じぐらいの世代の皆さんの中には、30年の時を経て、なぜいま実写化なのか? と思う方も多いかもしれませんが、実は『聖闘士星矢』はスピンオフ作品によって、今もなお大変アツい状況なのです。今回は、そんな『聖闘士星矢』スピンオフマンガの世界をご紹介しましょう。 『聖闘士星矢』はギリシア神話をモチーフとした格闘マンガで、聖闘士(セイント)と呼ばれる少年たちが、星座を冠した聖衣(クロス)という鎧を身にまとって闘います。聖闘士には青銅聖闘士(ブロンズセイント)、白銀聖闘士(シルバーセイント)、黄金聖闘士(ゴールドセイント)という階級があり、主人公のペガサス星矢やその仲間であるドラゴン紫龍、キグナス氷河、アンドロメダ瞬たちは、最下層の青銅聖闘士でありながら、友情・努力・勝利というジャンプ的ご都合主義を武器に、本来は絶対にかなわないはずの白銀聖闘士、黄金聖闘士を打ち倒していくのです。  作品中で一番の人気コンテンツといえるのが、12星座を冠した黄金聖闘士たち。全員が最強レベルの戦闘力を持つというのもさることながら、どいつもこいつもキャラのクセが強すぎるのが魅力です。蟹座はクズ野郎だし、魚座はオカマ野郎だし、牡牛座はデブだし、天秤座はジジイだし、双子座は二重人格だし……とにかく個性の宝庫。聖闘士星矢ブーム全盛期の頃、黄金聖闘士のキャラを自分の星座になぞらえるのがはやったため、蟹座や魚座の人は非常に肩身が狭かったのです。ちなみに僕は魚座ですが、3月生まれの自分をこれほど呪ったことはありませんでした。  そんな一世を風靡した聖闘士星矢のスピンオフマンガですが、現在これだけの作品が出ています。 『聖闘士星矢 EPISODE.G』『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝』『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』『聖闘士星矢 セインティア翔』『聖闘士星矢Ω』  いかがでしょう? 皆さんの想像以上の作品数ではないでしょうか。しかも、これらの作品の多くが長期連載となっているのです。すごいことですね。  ちなみに派生作品のほとんどは車田先生の作画ではない上に、やたらと黄金聖闘士推しなのが特徴です。タイトルに冠されている星矢に関しては、ほぼ脇役扱い、白銀聖闘士に至っては完全に空気です。  というわけで、スピンオフ作品の中で特に読んでおくべき作品をピックアップしてご紹介しましょう。 ■『聖闘士星矢 EPISODE.G』(原作:車田正美 作画:岡田芽武)
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『聖闘士星矢EPISODE.G 1』(秋田書店)
 聖闘士星矢スピンオフマンガの元祖にして、ちょっとスピンさせすぎだろという仕上がりなのがこの『エピG』です。  Gとはもちろん、みんな大好き黄金聖闘士(ゴールドセイント)のG。黄金聖闘士・獅子座のアイオリアが主人公の作品なのですが、そういった設定以前に画が原作とは完全に別物になっているのがツッコミどころです。典型的少年マンガな車田画の原作に対して『エピG』では、目のパーツが顔の半分を占め、体が枝のようにひょろひょろのガリもやしな聖闘士ばかりです。正直、最初は違和感しかないのですが、これに慣れるとクセになってきます。 ■聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話(原作:車田正美 作画:手代木史織)
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『聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話 1』(秋田書店)
『THE LOST CANVAS~』(通称LC)も少女マンガタッチのため車田先生の画の雰囲気とは違いますが、『エピG』ほどの強烈な違和感はなくマイルドで安心して読むことができます。落ち着いて読める、星矢スピンオフマンガといえましょう。  ストーリーはやはり黄金聖闘士がメインですが、原作より243年も昔の前世代の聖闘士たちが活躍する作品となっています。聖闘士は歌舞伎役者の襲名制のごとく、星座ごとに世代交代が行われるのです。例えば魚座のオカマ野郎・アフロディーテの前にもちゃんと先代、先々代の魚座の聖闘士がいて代々受け継がれてきたのです。三代目 J Soul Brothersみたいな感じでしょうか(微妙に違う?)。  ちなみに、よく似たタイトルの『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』(通称ND)という作品があるのですが、こちらは本家の車田先生が描いている正真正銘の星矢続編マンガのため、違和感は限りなくゼロです。当たり前ですが、やっぱり星矢には車田画が一番フィットします。 ■『聖闘士星矢 セインティア翔』(原作:車田正美 作画:久織ちまき)
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『聖闘士星矢セインティア翔 1』(秋田書店)
 元来、聖闘士は女人禁制、もし女子が聖闘士になるのであれば、仮面をかぶり、女であることを捨てなければならないという厳しい掟があります。原作では、魔鈴さんとかシャイナさんといった仮面をかぶった女聖闘士が悲劇のヒロインとして扱われていました。  しかし、このルールには例外がありましてな……というまさかの後付け設定により、顔出しした美少女聖闘士「聖闘少女(セインティア)」が大活躍するマンガが爆誕! セーラームーンのようなノリで楽しめます。 ■『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』(原作:車田正美 作画:岡田芽武)
原作とは完全別物!? ディープすぎる『聖闘士星矢』派生マンガの世界の画像5
『聖闘士星矢EPISODE.Gアサシン 1』(秋田書店)
 タイトルの通り、スピンオフ作品である『エピG』をさらにスピンオフさせて、もはやハンドスピナーみたいな回転力を誇る続編がこの『エピGアサシン』。前作をはるかに上回る超ヤバイ画で、最も異形の聖闘士星矢派生作品となっています。  画はとにかく過剰なまでにキラキラしています。豪華・全ページフルカラーでキラッキラ。キラキラしすぎて、読むのにブルーライトカット眼鏡が必要なレベルです。そして、設定がやたらと現代的。  バトルする場所が新宿西口の地下駐車場や池袋のサンシャイン近辺で、もはやギリシア感はゼロ。かつて活躍した聖闘士達は小宇宙(コスモ)が燃え尽きてしまったらしく、アンドロメダ瞬は練馬で医者やってるし、キグナス氷河は墨田区の飲み屋でバーテンをやっています。星矢は赤いパーカーのフードをかぶったメンタル病みまくりの兄ちゃんだし、「先生が来てくれるなンてッ!!」とか小池一夫風のセリフ回しまで出てくるし……。タイトルでは星矢のスピンオフ作品だとわかっていても、脳がしばらくそうだと認識できません。 ***  というわけで、ディープすぎる聖闘士星矢スピンオフ作品の世界をご紹介しました。かつて「ジャンプ」で『聖闘士星矢』を愛読していた皆さんも、当時を思い出しながら、星矢が今どれだけ進化しているか確かめてみてはいかがでしょうか?  そして、どうせ星矢スピンオフ作品に手を出すなら、スピンオフの究極系である『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』まで、ぜひ読んでみてください。別物すぎて腰を抜かしますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 日本漫画風アレンジで、ヒットの予感?

ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 縦スクロール漫画を日本漫画っぽくアレンジした漫画って?の画像1
『24時のイタズラな彼女』
 一見すると、普通の漫画のようにも思えるが、よく見るとちょっとおかしい。6月初め、そんな漫画が、「BookLive!」や「LINEマンガ」をはじめとする電子コミックサイトに掲載された。タイトルは、『24時のイタズラな彼女』だ。  大企業の競争社会になじめず会社を辞め、彼女からバカにされながらも、コンビニを経営する主人公のマコト。そんなコンビニにバイトで応募してきた破天荒な不良少女・セナが、マコトと彼女との間に割って入り、混乱を巻き起こしていくラブコメ風の漫画だ。テンポも良くて画力も高いのだが、どうにも読んでいて違和感が拭えない。  まず、オールカラーという点が引っかかる。『ドラゴンボール』のような人気作を色塗りするならまだしも、通常、新規連載の作品をカラーで仕上げることなどはない。コストもかかるし、手間もかかるためだ。
ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 縦スクロール漫画を日本漫画っぽくアレンジした漫画って?の画像2
女子高生がリュックサックを背負い、スニーカーを履いている。オールカラーだ
ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 縦スクロール漫画を日本漫画っぽくアレンジした漫画って?の画像3
この寄り目の少女がヒロイン。毎回、コンビニで騒動を起こる
 そして、漫画の描写もおかしい。女子高生は制服を着ているのに、その靴がローファーではなくてスニーカーだったり、登場人物たちがLINEではなくてカカオトークでやりとりしていたり、主人公の男性が左ハンドルの車に乗っている。どうやら、ここは日本ではなさそうだ。  それもそのはず、この漫画は韓国漫画であり、それを日本風にアレンジしたものだったのだ。版元のTOPCOMICS JAPANに問い合わせてみると、おそらく韓国の方なのだろう、癖のある日本語ながらも丁寧に対応してくれた。 「この作品は、韓国で『コンビニのセッピョル』というタイトルで連載中です。韓国では連載半年ながら、月間300万PV以上、総PV数が2,550万超の大人気作です。韓国と中国ではドラマ化の話も進んでいます。今回、この漫画を日本にも広めたいと考え、日本の漫画形式に編集し直したんです」(担当者)
ウェブ漫画バブルの韓国から黒船来航! 縦スクロール漫画を日本漫画っぽくアレンジした漫画って?の画像4
もともとのWEBTOON形式の漫画素材。これを加工したのだという
■縦スクロールの漫画を無理やり日本漫画に変更  韓国では紙文化が2000年代前半には廃れ、その煽りを食らい、漫画文化も虫の息になった。しかし、スマホの隆盛とともに、2000年代後半から「WEBTOON」と呼ばれる漫画文化が盛り上がる。日本漫画とは違い、オールカラーで、1コマずつ縦に読む形式の漫画だ。この『24時のイタズラな彼女』も、もともとはそんなWEBTOON形式のカラー漫画だったのだという。 「『24時のイタズラな彼女』の作家さんは1コマずつ、縦に並べて描いています。それを日本式ページに組み直すのは大変でした。それから、登場人物の名前も悩みました。韓国人の名前だと頭に入りにくいという意見を頂いたので、日本っぽい名前に変更しました。なるべく読者が読む上でのストレスをなくしたいと考えたからです」(同)  それは、ほとんどゼロから構築するようなものだったという。 「韓国では今、WEBTOONバブルが起こっていて、年間1億円以上を売り上げる作品がいくつも生まれています。今回、このようなWEBTOON形式の漫画を完全な日本漫画風に加工したのですが、これは弊社が初めてのケースでしょう。ですが、もしこの漫画が日本の読者に受け入れられるようでしたら、きっと今後、韓国の人気作が日本漫画風に加工されていくと思います」(同)  韓流ドラマは日本でも一大ブームを巻き起こしてきた。しかし、この漫画大国である日本において、果たして韓国漫画は受け入れられるのだろうか? 『24時のイタズラな彼女』は現在、各サイトで6話分のすべてが無料公開中だ。その評価は各読者に委ねたい。 ●LINEマンガ https://manga.line.me/book/detail?id=0027h9od

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『24時のイタズラな彼女』
 一見すると、普通の漫画のようにも思えるが、よく見るとちょっとおかしい。6月初め、そんな漫画が、「BookLive!」や「LINEマンガ」をはじめとする電子コミックサイトに掲載された。タイトルは、『24時のイタズラな彼女』だ。  大企業の競争社会になじめず会社を辞め、彼女からバカにされながらも、コンビニを経営する主人公のマコト。そんなコンビニにバイトで応募してきた破天荒な不良少女・セナが、マコトと彼女との間に割って入り、混乱を巻き起こしていくラブコメ風の漫画だ。テンポも良くて画力も高いのだが、どうにも読んでいて違和感が拭えない。  まず、オールカラーという点が引っかかる。『ドラゴンボール』のような人気作を色塗りするならまだしも、通常、新規連載の作品をカラーで仕上げることなどはない。コストもかかるし、手間もかかるためだ。
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女子高生がリュックサックを背負い、スニーカーを履いている。オールカラーだ
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この寄り目の少女がヒロイン。毎回、コンビニで騒動を起こる
 そして、漫画の描写もおかしい。女子高生は制服を着ているのに、その靴がローファーではなくてスニーカーだったり、登場人物たちがLINEではなくてカカオトークでやりとりしていたり、主人公の男性が左ハンドルの車に乗っている。どうやら、ここは日本ではなさそうだ。  それもそのはず、この漫画は韓国漫画であり、それを日本風にアレンジしたものだったのだ。版元のTOPCOMICS JAPANに問い合わせてみると、おそらく韓国の方なのだろう、癖のある日本語ながらも丁寧に対応してくれた。 「この作品は、韓国で『コンビニのセッピョル』というタイトルで連載中です。韓国では連載半年ながら、月間300万PV以上、総PV数が2,550万超の大人気作です。韓国と中国ではドラマ化の話も進んでいます。今回、この漫画を日本にも広めたいと考え、日本の漫画形式に編集し直したんです」(担当者)
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もともとのWEBTOON形式の漫画素材。これを加工したのだという
■縦スクロールの漫画を無理やり日本漫画に変更  韓国では紙文化が2000年代前半には廃れ、その煽りを食らい、漫画文化も虫の息になった。しかし、スマホの隆盛とともに、2000年代後半から「WEBTOON」と呼ばれる漫画文化が盛り上がる。日本漫画とは違い、オールカラーで、1コマずつ縦に読む形式の漫画だ。この『24時のイタズラな彼女』も、もともとはそんなWEBTOON形式のカラー漫画だったのだという。 「『24時のイタズラな彼女』の作家さんは1コマずつ、縦に並べて描いています。それを日本式ページに組み直すのは大変でした。それから、登場人物の名前も悩みました。韓国人の名前だと頭に入りにくいという意見を頂いたので、日本っぽい名前に変更しました。なるべく読者が読む上でのストレスをなくしたいと考えたからです」(同)  それは、ほとんどゼロから構築するようなものだったという。 「韓国では今、WEBTOONバブルが起こっていて、年間1億円以上を売り上げる作品がいくつも生まれています。今回、このようなWEBTOON形式の漫画を完全な日本漫画風に加工したのですが、これは弊社が初めてのケースでしょう。ですが、もしこの漫画が日本の読者に受け入れられるようでしたら、きっと今後、韓国の人気作が日本漫画風に加工されていくと思います」(同)  韓流ドラマは日本でも一大ブームを巻き起こしてきた。しかし、この漫画大国である日本において、果たして韓国漫画は受け入れられるのだろうか? 『24時のイタズラな彼女』は現在、各サイトで6話分のすべてが無料公開中だ。その評価は各読者に委ねたい。 ●LINEマンガ https://manga.line.me/book/detail?id=0027h9od

“昭和漫画”を現代へ受け継ぐ漫画家・史群アル仙が語る、ADHDとの付き合い方

 昭和漫画を現代へ受け継ぐ漫画家・史群アル仙が語る、ADHDとの付き合い方の画像1
史群アル仙氏
 手塚治虫やちばてつや、永井豪といった漫画家に影響を受け、昭和を彷彿とさせる懐かしくてどこか哀愁漂う作風で人気の漫画家・史群アル仙(シムレアルセン)。不安障害やADHD(注意欠陥・多動性障害)など、メンタル面にさまざまな支障を抱える彼女が、自身の経験を赤裸々につづったコミックエッセイ『史群アル仙のメンタルチップス~不安障害とADHDの歩き方~』(秋田書店)を上梓した。WEB連載時から話題を呼んでいた本作だが、作品を描き上げた現在の心境と、社会的な認知が広がりつつあるADHDについて、アル仙氏に話を聞いた。 *** ――まず、本書を描こうと思った経緯について教えてください。 アル仙 知ってほしいことがある、伝えたいことがある、生きづらさを乗り越える工夫を共有したいという気持ちと、自分みたいな人間を主人公にしたらどんな漫画ができるんだろう? といった思いからです。 ――かなり赤裸々に描かれていますが、ご自身の過去を振り返ることは、つらくありませんでしたか? アル仙 前向きな気持ちが芽生えてからの執筆だったので、基本的にはつらくありませんでした。ふと強烈な出来事を思い出してつらい気持ちになった時は、本書にも登場する恩師・菩須彦(ボスヒコ)さんに助けてもらっていました。ただ、時系列を思い出す作業が一番難しくて、つらかったですね。1カ月の間に大きな出来事が連発したり、半年間何も起こらなかったりと波が大きかったので、どういうふうに描いたらいいのか悩みました。 ――この本を描く前と描いた後で、ご自身の中で変化はありましたか?  アル仙 ほんの少し冷静な目線で、自分の生き方を見つめられるようになったと思います。また、漫画に描けるようにと、日々、生きづらさ対策のアイデアを考えるようになりました。 ――医師の誤診が原因でクスリ漬けにされ、体もメンタルもボロボロの「ゴミクズ時代」のエピソードはかなり強烈です。夢遊病で街を徘徊するようになったり、幻覚に襲われたり、挙げ句の果てには自殺未遂……。この時期は、どれくらい続いたんですか? アル仙 それが詳しく思い出せないんです……。漫画では印象的だったことを抜粋して描きましたが、忘れていることもあるようです。週1でボスヒコさんの絵画教室に通っていた時期だったので、ボスヒコさんやメンバーから、当時の自分の言動を聞いて思い出すこともあります。感覚としては、とてつもなく長い間だった気がします。この時期は、人としての責任感やモラルを完全に失っていました。
 昭和漫画を現代へ受け継ぐ漫画家・史群アル仙が語る、ADHDとの付き合い方の画像2
『メンタルチップス』より(以下同)
――そこから精神科病棟へ入院し、紆余曲折を経て、やっとADHDと診断されたわけですが、もっと早くそう診断されていたら……という思いはありますか? アル仙 小学校・中学校での生活が苦しかったので、その頃に自覚していたら、少しは違ったのかなとも思います。当時は、何度気をつけようと思っても「またできなかった」「なんでできないんだろう……」と、解決の糸口が見えなかったので。その一方で、診断されたところで、学校側も私自身も何もできなかっただろうなあ、とは思いますが……。 ――本書には「障害は免罪符にならない」と書かれていますが、初めからそのような考え方だったのでしょうか? それとも、何かきっかけがあったんですか? アル仙 ADHDだと診断されてすぐは、肩の荷が下りたような気持ちになったのですが、そのうち何かうまくいかないことがあるたびに「どうせADHDだから……」という言葉が頭をよぎりました。ADHDコンプレックスというか。しゃべっては自己嫌悪、行動しては後悔。やがて、いろいろなことをあきらめるようになってしまいました。ADHDを免罪符にして自分を甘やかして逃げて、堕落した生活を送っていました。その時、ボスヒコさんに叱られて、考え直したんです。「不得意なことはあっても、診断を免罪符にして何もかも仕方がないとあきらめていたら、どんどん何もできなくなっていく。診断は免罪符にならないし、してもいけない。不得意なことはあるけれど、できることもある。一生懸命やれば自信を持てる。可能性をあきらめてほしくないな」って。 ――アル仙さんはボスヒコさんとの出会いがきっかけでアートという喜びを知り、漫画家になりたいという夢を取り戻していきました。 アル仙 初対面の時は、体は大きいし、ただ怖い人だと思っていましたが、ハングリー精神とチャレンジ精神の塊で、とても尊敬しています。そして何より、初めて真面目に叱ってくれたことが大きかったです。今までは怒られることはあっても、ちゃんと正しく叱ってくれる人がいなかったから。そして、勇気が出ない時に、ポンと背中を押してくれるんです。 ――2014年からTwitterにアップし始めた1日1ページの漫画「今日の漫画」も、「ストーリー構成がなっとらん!」というボスヒコさんのアドバイスで始めたものなんですよね? 今日の漫画」はわずか半年でフォロワー数6万9,000人を超え、商業誌デビューのきっかけとなりましたが、ご自身にどんな影響を及ぼしたと思いますか? アル仙 そうですね、今から振り返ると、生きる意味をもらったんだと思います。幼い頃から漫画と一緒に生きて、漫画と一緒に死にたいと思っていたので、「今日の漫画」が拡散されたあの日がなかったら、商業誌デビューの際に支えてくれた方々がいなければ、私はとっくに死んでいたと思います。だから自分の命は、読者のみなさんと、支えてくれるみなさんから授かったものだと。そういう意味で「命を粗末にしてはいけない」という言葉は、本当だったんだなって。
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――現在、漫画家としてお忙しい日々を送っていらっしゃると思いますが、忙しすぎてパンクすることはありませんか?  アル仙 執筆量自体は忙しいといえるほどではありませんが、スケジュール管理が苦手で、些細なことでも変化があるとパンクして、パニックになります。その時は、ボスヒコさんに相談し、さらにわかりやすく整理してもらって、助けてもらっています。恥ずかしながら、まだまだ試行錯誤中です。 ――アル仙さんにとって、漫画はどのような存在ですか? アル仙 漫画は私にとって、命と直結しているものです。幼い時から大人になった今まで、人生の相棒でした。対人関係が苦手でも、漫画を通してだとコミュニケーションができました。漫画は私の恋人であり、親友であり、親であり、読者との対話であり、武器であり、目です。 ――最近ではADHD関連本が多数出版されていますが、このように世間の関心が高まること、認知が広がることは好意的に捉えられていますか? ADHDという言葉だけが独り歩きして誤解を生んだり、軽く捉えられてしまうのではないかといった懸念もありますが……。 アル仙 正直に言うと、不安です。執筆中に悩むこともあります。知り合いから、「書類1~2枚と少しの問診だけで、ADHDという診断書がもらえる」というウワサを聞きました。ADHDの症状は、パッと聞いたら誰にでも当てはまるようなこともあります。「自分はADHDなんだから仕方ないだろ」と開き直る人や「あなたはADHDなんだから気をつけてよ」という人にも出会いました。また、ADHDという名称は、あくまで生きづらさを取り除くヒントだと思うので、個人の姿をしっかり見た上で診断してほしい。ADHDの認知と共に、当事者が前向きに対応できるアイデアなどが広まっていったらいいなあと思います。 ――沖田×華さんの『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』(ぶんか社)や永田カビさん『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)など、ADHDやアスペルガーといった生きづらさを赤裸々に明かした告白系漫画も増えていますが、実際に読まれた本はありますか?  アル仙 実は、薬局の待合室で沖田×華さんの漫画を読んだのがきっかけで、発達障害、ADHDの存在を知りました。当時、自分はADHDだと思っていなかったんですが、環境は違えど沖田さんの経験と自分の経験が重なることが多くて。笑えるけど笑えない、けど面白い。そして「自由に自分のことを描いていいんだ」と、感銘を受けたことを覚えています。 ――沖田さんも自分の障害をきちんと受け入れた上で、人生を謳歌されていますよね。それでは最後に、『メンタルチップス』をどんな人に読んでもらいたいですか? アル仙 当事者の方はもちろん、親御さんや周囲の人にも読んでほしいです。私たちは自分をコントロールするのが難しいです。自分でも予想がつかないことをやってしまったりします。そんな私たちが孤立すると、ヘタしたら私の「ゴミクズ時代」みたいになってしまうかもしれない。ADHDの人も、そうでない人も、みんな同じ人間。お互いが工夫して、協力して生きていけたらいいなと思います。  また、当事者の方には「できない」という言葉に押しつぶされないでほしいです。工夫したらできるようになることがある。できることが増えたら、生きづらさが減る。「少しずつでもいい、人生はチャレンジだ」と楽しみながら、ADHDと向き合ってほしいなと思います。生き続けるのがつらい、という言葉は否定できません。死にたいという気持ちも否定できない。だけど、1%の可能性を信じて行動を起こしたら、何かが変わるかもしれない。勝手な言葉かもしれないけど、生きることをあきらめないでほしいです。 (取材・文=編集部) ●史群アル仙Twitter https://twitter.com/shimure_arusen
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