【TAF2013】熱いブースにやる気を疑うブースも……「アニメ&キャラクター列島JAPAN」で見えた明暗

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 予算が縮小されたものの、今年も無事に閉幕した恒例のイベント「東京国際アニメフェア」。昨年からビジネス主体のイベントへと大きく舵を切ったイベントを、今回も当サイトならではの視点でレポートする。  今回のフェアで目玉のひとつになったのが、土日の一般来場日の2日間にわたって設けられた「アニメ&キャラクター列島JAPAN」だ。  この企画は、全国各地で行われているアニメやマンガ作品、キャラクターを利用した町おこしを一堂に会する目的で行われたものだ。  当初の目的の通り、全国各地の試みが集まったことは間違いない。しかし、それぞれのブースでは温度差がかなり見られた。各ブースでは物販、パネル展示、パンフレットの配布などさまざまな形で工夫を凝らしているところが多かったが、一方で、PRではなくマイナスになってしまうのではないかと心配になってしまうブースも。  中でもその要素が強かったのが「新潟市マンガ・アニメ情報館」「新潟市マンガの家」のブースだ。この2つの施設は展示のほか、体験学習ができる場として新潟市が企画したもの。2月には「新潟市マンガの家」が先行してオープン。「新潟市マンガ・アニメ情報館」は5月オープンを予定している。地域のマンガ大賞である「にいがたマンガ大賞」が開催されるなど、マンガ・アニメ文化が広く受容されている新潟市で初の常設的な施設である。  まさに、本格稼働を前に盛り上がる時期だと思うのだが、肝心の展示はといえば長テーブルの上にチラシが置かれているだけである。説明をする人すら見当たらない(たまたまトイレにでも行っているのかと、幾度か覗いてみたが無人だった)。おそらく限られた予算で出展しているのだろうが、これはひどすぎる。  実のところ、一部の例外を除けばマンガ・アニメを使った町おこしで予算が潤沢なものなど寡聞にして聞かない。昨年、関西の某大都市で(その地方にしては)大規模なアニメ・マンガフェアが実施された。その際、筆者は自治体から実施を受託した事業者に予算を聞いたのだが、驚いた。 「予算は2,000万円なんですけど、会場費が1,200万円だったんです……」  会場は、主催自治体参加の第三セクター。一旦支払ったカネが還流しているような図式だ。残りの800万円で人件費やら何やらを支払ったら、まったく残らない。件の事業者も「スタッフを手弁当で出してもらった企業もあります。毎晩、飲み屋で頭を下げ通しですよ」と、少々渋い顔を。
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 これはまったく極端な事例ではない。どこの地域でも事情は似たようなものだ。各ブースで話を聞いてみたが「ほとんど手弁当です」と話す出展者が多かった。だが「手弁当でもいいからやる」という意気込みの高い出展者も。  秋田県のご当地ヒーローである「超神ネイガー」は、まさにそれ。このヒーローは、県内のほとんどの幼稚園、保育園、保育所などを回って「超神ネイガー交通安全教室」を実施しており、秋田県内限定で圧倒的な認知度を誇る。決して大きく儲かる企画ではないが、企画者に話を聞いたところ、主題歌を歌う歌手の水木一郎氏が「ご当地ヒーローは、ネイガーしかやらない」と言ってくれたという話を、うれしそうに語ってくれた。  マンガやアニメを使った町おこしで重要なのは、この部分に尽きる。観光客がわんさか押しかけて、地域がバブル風味に潤うのなんて、ほんの一握り。多くは、金銭面以外の充実感で成り立っているのだ。ゆえに、マンガやアニメを使った町おこしが、今後もビジネスとして成り立っていくかは、大いに疑問だ。  さらに、マンガやアニメを使った町おこしには「連載や放送が終わったらどうなるか?」という危惧がつきまとう。元祖「聖地」として知られるJR飯田線の田切駅や伊那市周辺には、確かに今でも『究極超人あ~る』のファンがやってくる。でも、それがビジネスに結びつくかといえば、答えはNOだ。今回の出展者にも、そうした危惧を持つ人は多かった。  『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の聖地である秩父市から出展した、秩父アニメツーリズム実行委員会は「昨年は来訪者数がぐっと減りました。今年は、劇場版がありますけれど……」と話す。また、昨年放映された『神様はじめました』の聖地である川越市の出展者は「アニメの放映が終わったので、どうしようかと……」。  結局のところ、マンガやアニメを使った町おこしの多くは、作品のブームに乗っかった一過性のものにすぎない。ゆえに、いかにその後を見通すかが大きな課題といえる。  ブームに乗っかってやってきた人々に地域の魅力を知ってもらい、作品ではなく地域のファンになってもらう方法。地域の特産品を利用して「萌え商品」を売る方法。作品に乗っかるのではなく、独自にコンテンツを開発して地域密着で回していく方法など、やり方はさまざまある。  いずれにしても、地域に愛着を持ち「手弁当でもやる」という人の存在は欠かせない。自己犠牲的な取り組みには批判があるかもしれないが、行政が大金をつぎ込んで大失敗している地域もあることを考えると、どっちがマシだろうか。 (取材・文=昼間たかし)

不可解な“原作改変”繰り返し、視聴者を挑発し続けた『さくら荘のペットな彼女』いよいよ最終話

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『さくら荘のペットな彼女』アニメ公式サイト
 人気ライトノベル原作のアニメ『さくら荘のペットな彼女』が、最終話を目前にして炎上的な意味で熱く燃えている。  先日放送されたばかりの第23話「卒業式」において、原作では描写されていた国歌斉唱シーンおよび式次第から「国歌斉唱」の項目が削除され、日本の学校なら本来掲げられて然るべきである日本国旗が描かれていなかったせいだ。  この事実に、ネット上では大炎上。その一方で「過剰反応じゃね?」と疑問を呈する声もあり、賛否両論が渦巻いている。  問題児の巣窟として悪妙高い学生寮「さくら荘」に集う高校生たちの、夢に向かって悪戦苦闘する姿や淡い恋愛模様が多くの視聴者の心を捉えた『さくら荘~』だが、本作の炎上事件は今回が初ではない。  昨年放送された第6話「雨あがりの青」において、風邪でダウンしたヒロインの一人・青山七海に三鷹仁が韓国の煮込みスープ・サムゲタンを作ってあげたシーンが登場。原作では「シンプルなお粥」と表現されていたはずだが、なぜか韓国料理が不自然な形で出現したことでネットは炎上。  時を同じくして、続々と芸能人がアメブロでサムゲタンについてのエントリーを投下したことから、「これはステマでは?」との疑惑が噴出した。  こういったアニメファンの声に対して、第6話を手がけた脚本家・伊藤美智子はツイッター上で彼らを挑発するような言動を繰り返しアカウントを削除。また、自称アニメ制作会社・サンライズの社員だという人物がツイッター上で「かつお出汁香るシンプルなお粥を美味そうに描くのは至難の業です」とアニメにおけるお粥表現の難しさを訴えるなど、アニメ業界を巻き込んで炎上は拡大した。  さらに6話の演出・絵コンテを手掛けた監督・シリーズ構成のいしづかあつこの名前が放送後に公式サイトから削除されるという事態に至り、制作側からは「作品の制作、演出に対する背景や意図については通常、お応えしておりません」(メディアファクトリー)、「韓国推しの意図は一切ございません」(アニマックス)といった公式コメントが発表された。  このような「前科」があるだけに、他のアニメ以上に厳しい視線にさらされ続けていた『さくら荘~』だが、最後の最後でまたも「やらかしてしまった」わけである(ちなみに今回の絵コンテも、やはりいしづかである)。  今回はまだ関係各所のコメントなどは発表されてはいないが、これら一連の騒動のそもそもの原因は、いわゆる原作改変そのものではないだろう。  多くのアニメファンが憤り、そして制作側への不満を露わにしているのは、「筋の通らない」原作改変が行われているためだ。  映像化する際に原作の設定やストーリーをアレンジする原作改変はこれまでもしばしば見られていた現象であり、例えば反社会的なシーン(未成年の喫煙や飲酒、性行為など)やNHKなどの公共放送で特定の商標を取り扱うシーン(最近の例ではアニメ『バクマン。』の出版社名や雑誌名の改変など)、原作が未完結の作品であるためキャラクターの設定を変更する(2003年版のアニメ『鋼の錬金術師』など)といった例がある。  確かに今までも原作ファンを中心に、こういった原作改変に対する不満が制作側に寄せられることはあったが、メディアの違いや放送時間の都合など、視聴者側も事情を察すれば納得できるものが大半である。  だが『さくら荘~』の場合は、「サムゲタン」にせよ「卒業式」にせよ改変することのメリットや意味合いが不明瞭であり、なおかつツイッターでの発言などから制作側がアニメファン、視聴者を馬鹿にしている感が透けて見える点が問題なのだ。  原作改変はどこまでなら許されるのか。また、制作者は視聴者に対してどう向き合うべきなのか。作品そのものの評価とはまったく異なる次元で、アニメ業界に多くの課題と問題を提示した『さくら荘~』も残すところあと1話。最後まで(いろいろな意味で)見逃すことはできない。  願わくば少しでもななみんが幸せになってくれますように! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

KARAに気を使いすぎ!? ウワサの有料KARAアニメをレビューしてみた

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『KARA THE ANIMATION』
 『ラブライブ!』『AKB0048』『アイカツ!』『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』などなど、リアルワールド同様にアイドル戦国時代真っ最中のアニメ業界。各作品とも独自のキャラとストーリーでファンを魅了している中、3月1日より腰振りダンスで一世を風靡したK-POPアイドルグループ・KARAを題材にしたアニメ『KARA THE ANIMATION』がひっそりとスタートしたのをご存じでしょうか?    クイクイ腰を振りまくるダンスで日本中を席巻し、今年は1月6日にK-POPガールズグループとしては初の単独東京ドーム公演を成功させたとかさせないとか。そんなノリノリでイケイケでゴーゴーなKARAがアニメになったっつーわけで、当然のごとく多くのKARAファンはチェックしているはずの本作。「乗るしかない! このビッグウェーブに!」ということで、早速プレミアム放送中のスマホ向け放送局「NOTTV」にアクセス! 視聴料が500円かかるということですが、マ、この原稿を書けば全然元は取れるかってことでポチってみました。  「アニメーションだからできる、普段と違ったKARAが5つの物語で大活躍!」(公式サイトより)という本作は、KARAメンバー5人をそれぞれ主人公に据えた5本のオムニバス作品で、なんとメンバーがそれぞれ本人キャラクターを演じているそうです。これはKARAファンならうれしい配役と思われますが、本編は終始韓国語で展開するので今一つ演技の上手下手が分からないのが残念。とはいえ、韓国語もペラッペラなK-POPファンの皆様なら、これは無問題でしょう。  で、その中身なんですが、どうやら各メンバーが爆発物処理チームに所属する特殊警察官やら宇宙飛行士やらセクシー消防隊員になって大活躍するアクションものの様子。とりあえず誰が誰なのか、見分けがつかないので「理想的なボディーラインと美しいロングヘアを誇る」(公式サイトのキャッチより)ハラさんをご指名!(こう書くと、なんかいかがわしいお店みたいですね)  モナコ公国第2王子の身辺警護の任についたSPのハラさんは、彼と共に王立銀行に向かいますが、突然テロリストが乱入し、ハラさんや王子たちは追い詰められてしまいます。そこで明らかになる衝撃の事実! そして後半は『逮捕しちゃうぞ』顔負けのパトカーチェイス! と、20分強の短編ながら、なかなかエキサイティングな内容で見応えはあります。  ポイントはセクシーシーンでの「鼻血ブー」描写や、シリアスな展開の中で突然コメディタッチな掛け合い。男顔負けのアクションに惚れた他の王子たちから求婚されて、「もう王子はこりごりよー!」とか叫びながら駆けだすシーンで止め絵! というラストシーンなど、昔懐かしのアニメ演出が頻出する点でしょうか。全体的に「よく日本のアニメを研究しているなあ」といったところで、びっくりしちゃいました。  ただ気になったのは、KARAメンバー以外のキャラがいわゆるモブ顔デザインなのに対して、KARAメンバーはCGバリバリのハンコ絵モデリングという点です。パッと見て髪型以外に見分けがつかないお人形さんみたいなKARAメンバーは、確かに地味な顔つきの他のキャラよりもかわいいし派手に見えるんだけど、なんか違和感があるというか作りものくさいというか……。ある意味、リアルっちゃあリアルなんでしょうけど、もう少しなんとかならんかったんでしょうか?  それでも潤沢な予算で実現した安定のアクション作画のおかげで、20分見ていて飽きないのはプラスポイントでしょう。ただ、これも“割と見られるじゃん”というレベルなんですけど。  全体的に元ネタのKARAに気を使っている感がバリバリの無難な作りになっていて、ツッコミ待ちアニメにしてはちょっとばかりインパクトが弱く、一本のアニメ作品として見るには面白みがない、という芸能人ものアニメにありがちな「誰得アニメ」になってしまった感がありますが、百聞は一見にしかず。今後は劇場公開される計画があるそうなので、いざ全国で公開された日には、日本各地の映画館にKARAファンが大集結するかもしれませんね。いやー、楽しみですねー。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

『ガンダム』『ヤマト』に『鉄人28号』……往年の名作アニメが続々リメイク

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『宇宙戦艦ヤマト2199』
 アニメブーム黎明期を盛り上げた、往年の名作アニメのリメイクが続いている。  まずは4月からTBS系列の日曜夕方5時枠、通称「日5枠」で『宇宙戦艦ヤマト』初代TVシリーズのリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』がスタートする。1974年に読売テレビ制作・日本テレビ系列で放送され、社会現象を引き起こした歴史的ヒット作のリメイクとなる本作は、『ヤマト』でアニメに興味を持ったという出渕裕監督や、OP映像の絵コンテを担当をする庵野秀明をはじめとする、ファースト『ヤマト』世代がスタッフとして数多く参加し、大きな話題を呼んでいる。  原典(この場合、ベースとなった初代TVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』のこと)のエピソードをベースに、現代風に換骨奪胎し再構成。さらに想像力に幅を持たせるというか、わりとテキトーというか、その場の勢いまかせで作られていた原典の設定(青色と肌色が入り乱れるガミラス人とか)にしっかりとした考証を加え、設定上の矛盾点を解消。また、メカ描写や作戦についても限りなくリアルな理由付けが行われたほか、キャラクターも原典のイメージを残しつつ現代風にアップデートされたデザインとなっている。そればかりか、艦橋のマドンナ・森雪以外の女性キャラも追加(おまけにアホ毛、巨乳、ツインテールなどなど強烈なキャラ立ち!)されているのも特徴だ。  ちなみに本作は、TV放送に先駆けて2012年より順次劇場で先行上映されているほか、すでにBlu-ray&DVDも4巻(14話まで収録)リリースされており、TV放映がメディア展開としては最後発となる。TV放映後にソフト化され、その売り上げや話題から劇場版制作が決定するという従来のアニメとは逆の展開をみせる本作は、単純に往年の名作アニメがリメイクされた、という話題性のみならず、新たなビジネスモデルを構築しうる可能性を秘めているといえる。  『ガンダム』のリメイクも控えている。ロボットアニメを「プロレス」から「戦争ドラマ」へと大転換させた1979年の大ヒット作『機動戦士ガンダム』をベースに、大幅なアレンジを加えたリメイク作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ制作が決定している。  本作は、『初代ガンダム』のキャラクターデザインを手掛けた安彦良和自身が、『初代ガンダム』を再解釈。設定やストーリーを再構築した漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を原作にしたアニメ化作品という位置付けとなる。そのため、アニメ版は、厳密には『初代ガンダム』のリメイクではないものの、オリジナルスタッフの手によって『初代ガンダム』が復活する、ということで大きな注目を集めるのは必至。ただ、現時点では2014年に公開されるという噂が流れている程度で、どういう形式で全貌が明らかになるかは不明だ。  どんなに素晴らしいシナリオやキャラクターでヒットを飛ばしたかつての名作アニメも、HDクオリティに合わせて制作される現在の映像や緻密な設定を下敷きにした作品を見慣れた今からすると、どうしても見劣りしてしまうものである。そこで、物語の核になるテーマや大筋は変えずに作品全体をアップデートしていくという形で、旧作を蘇らせようというこの試みは、これまでのアニメ業界にはほとんどなかった流れだ(例えば『マジンガーZ』 『ゲッターロボ』『勇者ライディーン』など、70年代初頭のロボットアニメがゼロ年代に多数復活したが、それらは基本的に続編やスピンアウト的な新作だった)。  ちなみに原典をベースに新作を作る、という従来のリメイク路線は今後も続く模様で、4月からはポップな世界観で新たな鉄人の活躍が描かれる『鉄人28号ガオ!』が『鉄人28号』50周年記念作品としてスタートするほか、80年代を盛り上げた人気アニメの続編『聖闘士星矢Ω』第2期の放送が決定。また、90年代に一時代を築き上げた『美少女戦士セーラームーン』の新作アニメが、『ももいろクローバーZ』の主題歌で今夏公開されることも決定している(媒体は未定)。  さらに70年代に一世を風靡し、90年代にもリメイクされたことのある某変身ヒーローアニメが、原典をベースに女性向けにアレンジされて復活する、という噂も業界内でまことしやかにささやかれている。女性ファンに受けた変身ヒーローアニメといえば、『TIGER & BUNNY』のヒットが記憶に新しいが、今回はその路線を踏襲するらしい。  思い出は美化される、とはよく言われるが、その思い出を裏切らない形で幼い頃に見ていたアニメが復活するなら、オールドタイプなアニメファンも喜ばしい限り。そして、生まれ変わった古典アニメを見た若いアニメファンがシリーズに興味を持ち、幅広い世代が作品のファンになればコンテンツの展開も活発になり、今後も新作が作られていくことだろう。このように世代を超えて愛される作品が増えていけば、アニメが本当の意味で「文化」として定着していくのではないだろうか。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

今年は茅原実里、田村ゆかりが不参加!? 「アニサマ2013」ラインナップはどうなる?

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「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」公式サイトより
 毎年この時期になると、なんとなくソワソワしてしまうアニメ・声優ファンも少なくないのではないだろうか。毎年3月に入ると、その年の8月末に開催される日本最大規模のアニメソングライブイベント「Animelo Summer Live(以下、アニサマ)」の記者発表が行われるためだ。記者発表会場には通常7~8名程度のライブ出演者が登壇し、その年のアニサマのタイトルとテーマが発表されるのが恒例となっている。それ以降、何回かに分けて出演アーティストが公表されていき、最終的におよそ40組程度のアーティストに落ち着くのがここ数年のパターンである。  昨今のアニソンシーンのトレンドを把握する上で非常に重要なイベントとなっているアニサマだが、昨年の「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」は、初回から出演し続けてきたアニサマの顔ともいえるJAM Projectと水樹奈々というビッグネームが不参加となり、その代わりにアーティストとして活動する声優やアニメから生まれた声優ユニットの出演が増加。さながら声優ライブイベントの様相を呈し、多くのアニメ・声優ファンの間で賛否両論を巻き起こした。  アニサマがスタートした05年といえば、同年7月に開催された「Animelo Summer Live 2005 -THE BRIDGE-」に先駆けて、1月に椎名へきるに続いて水樹奈々が武道館で単独ライブを初開催。声優史上2人目の快挙を成し遂げ、『魔法先生ネギま!』のオープニング主題歌「ハッピーマテリアル」がオリコンチャートを席巻したという、ゼロ年代アニソン史のターニングポイントとなった年である。現在に至るアニソン・声優ソングムーブメントの萌芽が芽生え始めた時期とはいえ、まだまだ一部のコアなファンのもの、という印象が主流。そんな過渡期にスタートし、少しずつ規模を拡大していったアニサマの歴史は、まさしくアニソン・声優ソングの地位向上の歴史そのものだといえる。  そんなアニサマだが、なぜ昨年大転換したのだろうか?  JAM Projectの影山ヒロノブは、イベント会場などで「後進に活躍の場を譲る」という趣旨の発言を発しており、アニサマ出演者の世代交代がその目的だといわれているが、とあるアニメ雑誌編集者はこう語る。 「各レーベル間の足並みが揃わなくなってきたことが、大きいと思います。アニサマが始まった頃は、まだまだ声優やアニソンアーティストが大きな会場で単独ライブを行うことが少なく、一致団結して業界の地位を向上させようという空気があったように思います。そのかいあってアニサマの成功以降、アニソンアーティストや声優がライブを行う機会が増え、ファンもライブの楽しみ方を分かってきた。一般メディアにも露出する機会が増えたことでファンのすそ野が広がり、その結果として武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナなど国内最大規模の会場で単独ライブをできるアニソンシンガー、声優が出現してきました。それ自体は大変いいことなのですが、単独でライブを成功させることができるアーティストが増えたことで、“もうわざわざアニサマに出演しなくてもいいじゃないか”という空気が、各レーベルに生まれてきたように感じます」  つまり、大きな会場で単独ライブを行うほどの人気・知名度を獲得したアーティスト・声優にとって、アニサマへの出演に対するメリットが低下してしまった、ということだろうか。確かに、水樹奈々は11年に声優史上初・女性アーティストとしては8人目の快挙となる東京ドーム単独公演を成功させ、JAM Projectもつい先日横浜アリーナでの単独公演を成功させたことからも、アニソンシーンではトップクラスの人気を誇っていることは間違いないだろう。そんな彼らにとっては、顔見せ程度に数曲歌って退場するアニサマへの出演よりも、ガッツリと自分たちの世界観を表現できる単独ライブのほうが魅力的に感じてしまうのも無理からぬこと。ファンにとっても悪くない話だ。  そう考えると、次に出演を辞退しそうなのが、さいたまスーパーアリーナ単独公演を昨年成功させた茅原実里。そして今年6月に同会場での2daysを控えている田村ゆかりであるが、いまやアニサマでは欠かせない盛り上げ隊長ともいえるこの両名が不参加となると、物足りなさを感じてしまうアニソン・声優ファンも多いことだろう。  しかし一方で、アニサマの出演者の傾向の変化は、アニソンの地位が高まった結果だともいえる。すでに単独で大規模なライブを開催できるクラスの人気があるアーティストは、どんどん外へ飛び出し、今後のアニサマはこれからトップを目指すアーティストや期間限定で活躍せざるをえないアニメ発の声優ユニットが一堂に会するアニソンのお祭りとしての性格を、より強めていくことが予想される。  いずれにせよ、そう遠くないタイミングで、今年のアニサマの記者発表が開催されるはずだ。全アニソン・声優ファンは、全裸待機でラインナップ発表を待っていよう! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

うらやまけしからん! 2ちゃん発祥『まおゆう魔王勇者』のラブラブすぎる主人公たち

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『まおゆう魔王勇者』TVアニメ公式サイト
 みなさん、恋していますか?  というわけで今回オススメするのは、すべてのアニメファンが、ラブラブすぎる主人公たちのやりとりに思わず壁ドンしたくなること必至のファンタジーアニメ『まおゆう魔王勇者』だ。  強大な力を持つ「勇者」とナイスバディな人間の女性の姿を持つ「魔王」が、手を取り合って人間と魔族の戦争によって成立しているいびつな社会秩序を正すべく、世界の改革をもくろむというあらすじの本作は、日本最大の匿名掲示板サイト「2ちゃんねる」発祥のコンテンツだ。  当初、「魔王『この我のものとなれ、勇者よ』勇者『断る!』」というタイトルのスレッドで展開していた即興小説が有志の手によってウェブ上にまとめられるようになると、この盛り上がりに注目したゲーム業界関係者によって書籍化プロジェクトが発足。2010年の商業出版を皮切りに、スピンアウト漫画の複数雑誌連載や今回のTVアニメシリーズなど破竹の勢いで成長し続けている、現在進行形のCGMコンテンツなのだ。  そんな本作は、第1話から自分が信じていた正義や社会が、実は健全なものではなく一部の特権階級が作り上げた虚構の上に成立していたものだった、という真実が宿敵から明かされた上に同盟を求められるという、いきなりクライマックスな展開を見せて視聴者を一気に引きつける。  その後も、(中世ヨーロッパ的世界観からすると)オーバーテクノロジーな農耕技術や文化を人間界にもたらし社会制度の変革を促そうとする魔王と勇者の活躍が描かれ、ある種の「歴史のIF」が描かれていく。  しかし、そうそう物事がうまく運ぶわけもなく、性急な改革は少しずつ世界にゆがみをもたらしていくことになるのだ。重厚でシリアスなその世界観は、本格ファンタジー好きな視聴者にも見応え十分なはずだ。  だが、あえて言おう。『まおゆう』の一番の見どころは、ハードな世界観の中で繰り広げられる魔王と勇者のイチャイチャだと!   類まれなる美貌と巨乳を持ついわゆる「いい女」な魔王は、その一方で学問一辺倒の寂しい生活を送りながら、いつか自分に会いに来る勇者とイチャイチャすることを妄想していた……という、残念な素顔を持つことが第1話で明らかとなる。その後、勇者と協力関係を結ぶことに成功した彼女は、堰を切ったように憧れの君へとラブモーションをかけまくるどころか、気がつくとすっかり恋人どころか夫婦のようなラブラブぶりを見せつけまくるのだ。学問に青春を捧げてきた才女が、意外なほどあっさりと結婚して周囲を驚かせる……なんてエピソードも時折耳にするが、まさにそんな感じである。  男性なら誰もが憧れるであろう高嶺の花である魔王(と、その恋敵である女騎士)に言い寄られる勇者こそ、全男性視聴者にとって嫉妬の対象であると同時に、夢と希望の塊だ。戦いはプロフェッショナルながらも、童貞気質で女性の心理には疎い彼と積極的なアプローチを繰り広げる魔王の甘~いやりとりには、見てるこちらもニヤニヤするやら壁をパンチしたくなるやら大忙し(特に魔王と女騎士をはべらせてベッドインした勇者の姿に、思い切り壁ドンした視聴者諸兄は多いことだろう)。  それでも毎回放送を見終えた後になんとも言えない幸福感を感じてしまうのは、やはり「恋する女性はかわいい」からだろう。ビジネスの場ではクールな表情を見せる魔王が、勇者を思って頬を赤らめる姿はどんなヒロインよりもかわいらしく、その幸せそうな表情と声は視聴者の心をもほっこりさせてくれる。つまり「かわいいは正義!」なのだ。  演じる小清水亜美の声も、どこか品のある落ちついた淑女を思わせつつも、ウブな少女らしさを感じさせてキャラクターにピッタリだ。交渉や戦場に立った時のクールな姿と、勇者と一緒に寝ようと枕を持って寝室に忍び寄るようなウブな姿のギャップを見事に演じ切っている彼女には、全力でスタンディングオベーションを送りたい。  彼女の演じたキャラクターといえば、過酷な運命を背負いながらも普通の恋を希求し続けた『交響詩篇エウレカセブン』のアネモネや、長い生の中で人間から迫害も崇拝も受けてきた『狼と香辛料』の狼少女・ホロなど、ハードな設定を持ちながらも少女らしい可憐さを失わない強い少女キャラクターが多く思い浮かぶが(『狼と香辛料』監督・高橋丈夫とシリーズ構成・荒川稔久は『まおゆう』の監督、シリーズ構成も務めている)、『まおゆう』の魔王もまたその系譜に連なるキャラクターだといえる。小清水の代表的キャラクターとなることは間違いない。  そんなわけで、男性アニメファンの皆さんは(女性アニメファンも、もちろん無問題!)ぜひ『まおゆう』を見ながら、全国の同志と一緒にニヤニヤしつつ、壁を思い切りパンチしよう(お隣さんの迷惑にならない程度に)! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

『けいおん!』制作陣集結の『たまこまーけっと』が陥った、“完璧すぎる理想の日常”の落とし穴

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TVアニメ 『たまこまーけっと』
 『涼宮ハルヒの憂鬱』をはじめ、『けいおん!』『氷菓』『中二病でも恋がしたい!』など安定したクオリティのアニメをコンスタントに発表し続け、今日のアニメシーンにおいて欠かせない存在となったアニメ制作スタジオ・京都アニメーション。その最新作である『たまこまーけっと』も、多分にもれず高水準な作画と脚本・演出で我々視聴者を毎回楽しませてくれている。  本作のメインスタッフは、監督・山田尚子、キャラクターデザイン・堀口悠紀子、脚本・吉田玲子という『けいおん!』を手掛けた女性スタッフたち。彼女たちの手によって、うさぎ山商店街の愉快な面々が繰り広げる日常風景が描かれる。言葉を話す謎の鳥デラ=モチマッヅィというファンタジックなキャラクターも存在するものの、基本的には普通の人々が織りなす普通の物語を描く『けいおん!』直系の日常アニメとなっている。  そんな『たまこまーけっと』では、「活気あふれる商店街」「優しすぎる隣人たち」「穏やかな日常」といった、現代の日本ではおそらくほぼ消失してしまったであろう「理想の日常(とコミュニティ)」が描かれ続ける。  この理想的すぎる物語に、違和感と空々しさを抱いてしまうのは筆者だけだろうか? 今時こんなに明るくて活気ある商店街なんて日本全国を探してもそうそうないだろうし、誰が何をしても笑って許してくれる街の人々や、色恋沙汰もなければ友達との大した諍いもない学校生活なんて、毒がなさ過ぎてむしろ不気味だ。ここに、『けいおん!』が劇場版および原作コミックの続編「college編」で露呈させた「日常アニメがその半径を広げれば広げるほど、日常を描けなくなる」に通じる問題点を感じてしまう。  ほぼ軽音部(および、それを取り巻く学校)という閉じたユートピア内での物語を描くことに徹していたTVシリーズと原作コミック『けいおん!』には、小さなコミュニティにフォーカスすればするほど、その外界にはアニメを見ている視聴者と同じ「現実」が存在しているという想像力が作品にあった。この想像力が効果的に発揮されたのが第2期『けいおん!!』終盤である。軽音部のメンバーたちが送る、取るに足らない、しかし何物にも代えがたいモラトリアムである「理想の日常」はやがて終わりを迎え、近い将来「現実の日常」という外界と向き合わねばならないというシビアな想像力が物語に説得力をもたらし、多くの視聴者に登場人物たちへの感情移入を促した。  対して劇場版『けいおん!』は、我々の生きる世界の延長線上にあると信じられていた外界ですらも、軽音部の面々に優しい閉じた世界であったがゆえに、TVシリーズには存在していたギリギリのリアリティが崩壊。原作コミック「college編」については、大学という外界に開かれた場に軽音部の身内ノリを持ち込もうとしたものの失敗。作品自体が方向性を見失い、空中分解してしまった感がある。  そこで『たまこまーけっと』では、より完璧な「理想の日常」を構築するべく、主人公たちの行動半径すべてを「理想の日常」として描くのみならず、デラ=モチマッヅィという外国からやってきたしゃべる鳥という存在を持ち込むことで、この世界はどこまでもファンタジックで理想的な日常が広がっていることを想像させることが選ばれたのだろう。シビアな「現実」が渦巻く世界の片隅に「理想の日常」という避難場所を作るのではなく、どこまでいっても誰も傷つかず、悩むことのない理想の日常「しか存在しない」別次元の世界を創造してしまった『たまこまーけっと』という作品は、結果的に作品の外部に存在する我々視聴者の居場所すら排除してしまったといえる。  身内のみでワイワイ盛り上がっているさまを、部外者である視聴者に「ほら、楽しそうでしょ?」「見て見て!」とアピールしたところで、受け手側としては「はあ、楽しそうですね……」としか言いようがないのである。視聴者の目線不在で、別次元の人々の取るに足らない日常ばかりが繰り返される『たまこまーけっと』に感じる違和感と空々しさは、つまるところ現実とは地続きではない作品に漂う「嘘臭さ」「薄さ」。そして「身内ノリに対する部外者の疎外感」にほかならないのだ。  魅力的なキャラクターデザインや、新人からベテランまでまんべんなく配置したナイスなキャスティング、毎回思わずクスッとさせられるシナリオなど、どこを取っても非常に高いクオリティでまとまった高いポテンシャルを持つ作品だけに、あまりにも安全な作りに落ち付いてしまった点が非常にもったいない。  物語としては、そろそろ折り返し地点を越えてクライマックスに向けて動き出す頃だろうか。理想に彩られた日常を描く『たまこまーけっと』という物語が、どのような「日常」に着地するのか期待したい。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

レギュラー7本! 稀代の万能ボイスアクトレス・堀江由衣の魅力を再考察

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『堀江由衣 キラキラみつばちをめぐる冒険』
学研マーケティング
 今、ほっちゃんが熱い!  「何を今さら?」と言われようがなんだろうが、ほっちゃんこと堀江由衣が今、もっとも注目すべき女性声優なのだ!  正統派ヒロイン声と言うべき可憐な声質と可憐なビジュアルを持つ堀江は、1998年のデビュー後、2000年に伝説の声優ユニット「やまとなでしこ」を田村ゆかりと結成し、多くの声優ファンを魅了。ユニット活動休止後もアイドル声優のトップランナーとして、アニメの出演のみならず音楽活動も精力的に展開。幕張メッセや日本武道館などの大舞台にも立ったことがある。  そんな彼女は2013年2月時点で、レギュラーおよびメインキャラとして現在出演しているテレビアニメ本数は7本。若手のエース・花澤香菜とタイで女性声優のレギュラー出演番組数トップをひた走っていることからも、衰えを知らない彼女の勢いがうかがい知れる。入れ替わりが激しく、なおかつ若手が台頭しがちな昨今の声優シーンの中では、芸歴10年以上の中堅女性声優が、これほど多くの作品でメインキャラを演じることはなかなか珍しい。  現在、彼女は正統派アイドルキャラである『AKB0048 next stage』の6代目柏木由紀、元気なヒロイン『バトルスピリッツ ソードアイズ』のキザクラなど、デビュー当時と変わらぬ瑞々しい少女の声で我々アニメファンを楽しませてくれているが、ここ数年の彼女は名バイプレーヤーとしての評価も高まってきている。  09年『夏のあらし!』では非美少女系キャラの山崎加奈子を演じ、11年『輪るピングドラム』の夏芽真砂子ではドスのきいた声で「怖い女」の演技を披露。デビュー10周年を迎えた2008年頃からメインヒロインを演じると同時に、さまざまな脇役を演じて役者として着実にスキルアップを図ってきた。  さらに、現在放送中のアニメでは『リトルバスターズ!』の主人公・直枝理樹、『さくら荘のペットな彼女』の赤坂龍之介など、それまでほとんど聞くことのなかった少年キャラ声に挑戦。見事に声変わり前後の少年を演じ切っている。  その他、『新世界より』ではシリーズ序盤のキーパーソン・天野麗子といった重要なキャラクターも演じており、いまや彼女は主役から脇役まで。さらには男も女も。人間も動物もなんでも来いの、万能ボイスアクトレスとして引っ張りだこだ。  誰もが「この人の演技はこれ!」と認めるような強烈なキャラクター性か。はたまた、さまざまな声を使い分けて役に寄り添う演技を行うテクニックか。役者の演技を評価する基準は一つではないが、だからこそ、さまざまなキャラクターを見事に演じ切り、なおかつ「このキャラクターはこの声じゃないと!」と思わせてくれる濃い演技を披露する堀江由衣は、今後、声優業界においてますます重要な存在となっていくことだろう。  アイドルとして、そして声優として実に15年もの長期間にわたってトップを走り続けるほっちゃんから、今後も目を離すことができない!  さあ、一緒にほっちゃんにエールを送ろう! ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

飽和する日常系アニメに新星現る? 『琴浦さん』が面白い!

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『琴浦さん』公式サイトより
 1月スタートの新作アニメ『琴浦さん』が、大きな話題を呼んでいる。  他人の心の声を聞くことができてしまう超能力少女・琴浦春香と、彼女のことが大好きなクラスメート・真鍋義久をはじめとする周囲の人々が織り成す日常を描いた本作。そのポップな絵柄や、『みなみけ』『みつどもえ』『ゆるゆり』を手掛けた監督・太田雅彦&シリーズ構成・あおしまたかしコンビがスタッフの中核にいることから、放送開始前は“今回もゆる~い内容の作品なのだろう”と、原作を知らない多くのアニメファンは予想していたはずだ。  しかし、いざフタをあけてみれば、想像以上にハードな人間ドラマと微笑ましい日常ドラマがサンドウィッチ状になったメリハリの利いた作風に多くの視聴者は衝撃を受け、その面白さを話題にするコメントがネット上に一気に拡散。  「ニコニコ動画」では70万再生を突破(ちなみに2012年春アニメ『Fate/Zero』第2期は、およそ35万再生)。同人誌で『琴浦さん』を発行していたところ、現在の担当編集者に声をかけられ、本作で商業デビューを果たした漫画家・えのきづによる原作コミック(マイクロマガジン社発行)の注目度も急上昇。在庫切れが発生し、緊急増刷がかかったほどだ。「知る人ぞ知る面白いコミック」として漫画読みの間では密かに人気があった本作にとって、今回のアニメ化はすでに大成功を収めたといってもいいだろう。  そんな本作の主人公・琴浦さんがうっかり他人の内面を「一方的に」覗き見てしまい、その内面にショックを受けてしまう姿は、Twitterやブログなど、一方的に発信されるSNSツールに翻弄される我々視聴者の姿とダブって見えるのは筆者だけだろうか。これらのツールを使ったことのある読者なら、本来なら直接誰かに言うべきではない自分の内面をつぶやいてしまい、それを読んだ他人から予想だにしない反応がきた。もしくはそんな誰かのつぶやきを目にしてしまい、気まずい気分になってしまった、という経験がある人も少なくはないだろう。  琴浦さんの能力は、問答無用で目に飛び込んでくるSNSツールのようなものだ。SNSツールを通じて他人の悪意や目をそらしたい言動に直面した時、我々はデバイスをOFFにすればいいが、琴浦さんは常時ON状態。望むと望まざると善意も悪意も等しく渦巻く他者の内面と対峙してしまう。  他人の心を読み取れてしまうがゆえに己の家庭を崩壊させ、行く先々で気持ち悪がられるという不幸な生い立ちを送ってきた彼女は、時に涙を流し、時に笑顔で過酷な現実を受け入れていく。琴浦さんの優しくも強いその生きざまは、他人の言葉に一喜一憂し、常に誰かの目線を意識しながら生きる我々そのものであり、彼女に共感し共に悩み戦ってくれるESP研究会の仲間と過ごす「日常」は我々の希望なのだ。  これまで数多くの日常系アニメを手掛けてきた太田監督とあおしま氏が、ここまである種のリアリズムを伴った「日常」を描こうとしている点は非常に興味深い。本作が描こうとしているのは、決して「サディスティックな目線で愛でられるべき不幸な少女の物語」ではなく、「他人の善意も悪意も可視化された世界の中で生きていかざるを得ない我々の希望を描く物語」なのだ。  飽和状態と思われた日常系アニメシーンに颯爽と登場し、あっという間に話題をさらった『琴浦さん』。過酷な現実をスパイスに、どこまで幸福な日常を描くことができるのだろうか? (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

「秋葉原にμ’sがいる!!」“ワシが育てた”アニメ『ラブライブ!』が、なんだかすごい!

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『ラブライブ!』公式サイトより
 お正月ムードも一段落というところで、アニメファン待望の1月クールの新作テレビアニメが続々と放送開始している。その中でも特に大きな話題を呼んでいるのが、女子高校生たちのアイドル活動を描く『ラブライブ!』(TOKYO MX、読売テレビほか)である。  昨年夏に開催されたアニソンフェス「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」(以下、アニサマ2012)には、本作のヒロインたちを演じる女性声優陣が劇中のアイドルユニット「μ’s(ミューズ)」として参加。アニメキャラがグリグリ動くミュージックビデオとまったく同じ振り付けを踊って歌うという、あまり他に類を見ないパフォーマンスを披露し、多くの観客が「あの女の子たちは何者だ!?」と圧倒されたことは記憶に新しい。  もともとは、μ’sの歌う楽曲とドラマパートを収録したCD、ミニドラマを交えたミュージックビデオをセットにしたパッケージと、美少女総合エンタテインメントマガジン「電撃G's magazine」(メディアワークス発行)誌上で展開する日常風景を描くショートストーリーという形で、2010年にスタートした本作。これまでは断片的に語られてきたエピソードの数々が、アニメという形で一本の線につながるということで、今回のアニメ化はファンには待望の企画だったというわけである。  そんなアニメ版『ラブライブ!』第1話のあらすじは以下の通り。  東京都千代田区にある女子校「音ノ木坂学院」は、少子化の影響で入学志望者が減少。現在の1年生が卒業する3年後に廃校となることが発表された。そこで、2年生の高坂穂乃果は、母親も卒業した母校の消失を回避すべく回避策を練る。折しも世間では、学校をアピールするアイドル「スクールアイドル」全盛期。ということで、自分たちもアイドル活動を通じて学校をアピールしていこうと思いつく……というもの。  「学校ごとにアイドルがいる」という設定がジャンプ漫画っぽいなあ……とニヤニヤしてしまうが(自分だけか)、ともあれ本作を見てまずは誰もがハイクオリティな作画に目を奪われることだろう。  『ラブライブ!』のミュージックビデオは、5~6分の短い映像を30分アニメと同等の予算と手間をかけて制作されているそうだが、テレビアニメ版『ラブライブ!』はそのミュージックビデオと遜色ないクオリティなのである。「作画崩壊、何それ?」とでも言わんばかりの安定したビジュアルで、リアルな秋葉原界隈をアイドルたちが駆け抜けるアニメ本編の衝撃は、初めてアニサマ2012でμ’sのステージを見た時と同じか、それ以上。あえて言おう。μ'sが俺たちのよく知る秋葉原に「いる」のである!  この「秋葉原にμ’sがいる」という感覚は、『ラブライブ!』をこれまで応援してきたファンこと「ラブライ部員」にとっては非常に重要な概念である。『ラブライブ!』はCDリリースのたびに、東京都千代田区──つまり、作品の舞台となる秋葉原の各所にてアイドルを演じる声優たちとラブライ部員によるイベント「ラブライ部員とμ’sの課外活動」を頻繁に行っており、そこで結束を強めてきたという歴史がある。いわば『ラブライブ!』のもう一人の主役は、秋葉原という街そのものなのだ。テレビアニメ版『ラブライブ!』では今後、秋葉原の風景がどのように描かれるのか、非常に楽しみである。  ラブライ部員も、μ’sの紡ぐドラマにおいて欠かせない重要な登場人物である。数多くのイベントやライブに参加してきた彼らにとって、少しずつ知名度を上げ、大きなコンテンツに育っていく『ラブライブ!』には、「ワシが育てた」的な感慨でいっぱいなのではないだろうか?  そんなファンと一緒に成長してきた、ファン参加型コンテンツ『ラブライブ!』。今回のテレビアニメ化を機に、まだ未体験の読者もぜひ参加してみよう。「にっこにこにこ~」になること間違いなし! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから