“失われた半分”を求めて人生は続いていく――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』最終話

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 ドラマと主題歌の関係というのは重要だ。

 オープニングの映像に合わせて聞こえてくれば、物語に入り込んでいく気分を盛り上げてくれるし、エンディングやクライマックスで流れたなら、その情感を大いに引き立たせてくれる。名作と言われるドラマを振り返ってみても、そこで使われた音楽との相乗効果によって、作品と曲、両方がヒットした例が多く見られる。そして、この『黄昏流星群』(フジテレビ系)でも、主題歌である、平井堅の「half of me」が、実にいい効果をもたらしていた。

 多くの波乱を抱えながら迎えた最終話。それぞれの登場人物が、新しい道に向かって歩き始めた――。

 若葉銀行の不正融資事件で追い込まれ、飛び降り自殺を図った井上(平山祐介)は、一命をとりとめた。見舞いに行った完治(佐々木蔵之介)は、助けてやれなかったことを詫びる。井上は、完治の立場を慮りながらも、上からの指示であったことを認めようとはしなかった。完治は、何とか不正の真実を暴こうと奔走する。

 真璃子(中山美穂)は、日野(ジャニーズWEST・藤井流星)の母・冴(麻生祐未)が病院に入る手続きに付き添う。そこで冴から「息子から手を引くように」と伝えられるのだ。

 冴の心情は複雑であったろう。息子が、親子ほど年の離れた真璃子に惹かれていることは、十分承知している。息子の気持ちを優先させるなら、二人の関係を認めるべきであるかもしれない。しかし、結婚をしている真璃子と付き合うのは、社会的に許されないことだ。

 そしてもう一つ、彼女は真璃子に嫉妬心を持っていたのではないかと思う。今まで、何をおいても母のことを考えてくれた息子。それが、自分とあまり年の変わらない女性を愛している。その思いには、どこか母に対する思慕のような気持ちが混じっている。そこに、割り切れないものを感じていたのではないだろうか。

 話を聞き、冴の気持ちを理解した真璃子は、日野との関係を断つ。そして、自宅へと戻り、再び完治と生活を始める。

 一方、漁港で働く栞(黒木瞳)は、糖尿病であることを、上司である茅野(美保純)に知られ、事情を話すこととなる。そして、テレビの会見で完治が銀行のために活躍していることを知り、密かに祝福するのだ。

 栞が誕生日用のケーキを買い、一人でろうそくを吹き消すシーンは、解釈が分かれるところかもしれない。自分の誕生日、あるいはケーキを仏壇に供えていたことから、母の誕生日であったと見ることもできるが、私は、一つの成果を出した完治へのお祝いではないかと考える。そして、そんな完治を見て、自分もまた新たな気持ちで生きていこうという、決意の表れでもあったのではないだろうか。

 栞がケーキを切り分けたところで、シーンは変わり、完治が街中で月を見上げ、栞を思い出している。そこで、主題歌が流れる。

 タイトルの「half of me」は、直訳すれば「自分の半分」。歌詞の内容は、別れた恋人のことを思い、「まるで自分の半分が無くなったようだ」と感じている男の心情を歌っている。完治が見上げた月は満月。満ち欠けを繰り返すその姿が、まんまるに輝いているのを見て、二人で過ごした時を思い出すというのは、栞との時間が満ち足りたものであったことを示す暗喩のようなものであろう。それぞれにとって、どこか物悲しい情景であった。

 不正について調べていた完治は、井上の妻(阿南敦子)から、井上が常務から指示を受けていた証拠を手に入れ、事件を解決する。聡美(八木亜希子)と須藤(岡田浩暉)の結婚祝いにも夫婦二人で出かけ、全てがうまくいっているように思えた。

 しかし、ある朝、真璃子は完治に離婚届を差し出す。

「あなたの心の中には別な人が住んでる。そして、私にも他に好きな人がいる」

 そう思いを吐露し、二人は別れることとなる。

 完治は、今回の不正を暴いた功績により、本店に執行役員への就任を打診される。しかし、彼はそれを断り、銀行を辞める。

「人生が100年だとして、あと50年。残りの半生は、自分の新しい可能性を探ってみたい」

 そうして、それぞれが新しい道を歩き始めるのだ。

 3カ月後、真璃子はパン屋で働き始めていた。そんな時、冴が会いたいと言ってくる。病院に行った真璃子に、冴は「息子を見守ってあげて欲しい」と伝えるのだ。自分の意見に従ってくれる、どこまでも優しい息子。彼のわがままを通すには、自分が了承しなければならない。死期の迫った身にあって、彼女は、息子の思いに応えたのだ。

 完治の元には、栞の居場所を知らせるハガキが届く。彼女が糖尿病を患っていることを知った完治は、栞の元へと向かい、再会。ふたりはしっかりと抱きしめ合うのだった。

 3年後、完治と栞は山の中にカフェを開いていた。栞の体調もよく、幸せそうだ。そして、真璃子はパン職人として働き、日野との関係も続いている。もちろん、バックには主題歌が流れてくる。

 悲しい歌であるはずの「half of me」が、どこか優しく語りかけてくるように聞こえる。かつて一つであったはずの自分の半分。それを失うことは、どれほど辛いことだろう。しかし、一度でもその人と一緒になり、ともに過ごせたことは、ある意味幸せなことなのかもしれない。

 完治にとって、「失われた半分」とは、誰であったのだろう。真璃子か、栞か。おそらく、その時々によって、相手は変わっているのだろう。ただ、そんな相手に出会い、そしてその関係を守ろうとすることが、一つの生きがいであったことは間違いないだろう。

 相変わらず世の中は、不倫のニュースが次から次へと出てくる。私も不倫については、いい感情は持っていない。誰かを傷つけるという点において、世間から非難されるべきことだと思うからだ。

 このドラマの中では、不倫の果に結ばれ、幸せになった人たちが描かれた。たくさんの人を傷つけ、自分も傷ついて、それでも欲しいものを手に入れた。許されるべきではないと思いながら、ちょっと羨ましく感じる自分もいる。いろんな思いはあるけれど、こんなハッピーエンドがあってもいいのかな、そう思えるドラマであった。

(文=プレヤード)

幸せとはきっと、大切ななにかに気づくこと――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第9話

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 12月5日に放送された『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)に、中山美穂が出演した。披露したのは、1986年のヒット曲「WAKU WAKUさせて」と、1992年に中山美穂&WANDSとして発表した「世界中の誰よりきっと」の2曲。ドラマ『黄昏流星群』(同)の展開が佳境に入っている中、役の上での彼女の心境を表したような選曲に、思わず唸らされた。

 ドラマはいよいよ第9話、中山美穂演じる真璃子が大きな決断を下す展開だった。

 前回の放送のラスト、車の中で抱き合った真璃子と日野(ジャニーズWEST・藤井流星)。しかし、真璃子が途中で拒んだため、それ以上の関係に進むことはなかった。

 「弱っている者同士は、こんなふうに抱き合ってはいけない」

 真璃子はそう言って、日野と、そして自分の気持ちを押し止めたのだ。

 その頃、完治(佐々木蔵之介)は、銀行への復帰を打診されていた。出世コースに戻れるのは願ってもないことだろうが、出向先での新しい仕事にやりがいを感じていた完治は、戻るべきかどうかと思い悩む。

 そんな完治の思いとは裏腹に、夫が銀行に戻れそうだと知った真璃子は、家を出ていくことを告げる。理由を尋ねる完治に、栞(黒木瞳)との関係を知っていることを告白する。そう言われた完治は、真璃子が家を出ていくことを受け入れるしかなかった。

 真璃子が別れて暮らすことを決断した理由は何だったのだろう? 彼女は何を手に入れたかったのか?

 娘である美咲(石川恋)の駆け落ち、夫の浮気、「子供を育て家庭を守る」ことに専念していた自分に対し、自由に生きている彼らが羨ましくなったのかもしれない。自分が生きていく中で、どうありたいのかということに気づいた結果の行動なのだろう。

 一方、完治との別れを決断した栞は、荻野倉庫を辞め、漁港で働き始めていた。「なぜこんなところで働くのか?」と問われた彼女は、「海が好きだから」と答える。だが、彼女は、本当は山が好きだったはず。完治との思い出を消し去るために、都会でもなく、山でもなく、海に向かったのかもしれない。そして、彼女は医師から糖尿病と診断され、失明の恐れがあるとも指摘されていた。病魔に蝕まれながら、懸命に働くしかなかったのだ。

 完治の出向元の若葉銀行では、不正融資の問題が起きているという。真偽を確かめるため、同期の井上(平山祐介)と会い話をするが、特に問題はないと答えるだけだった。妻との別居、不倫、娘の駆け落ち、全てを話す完治に、井上は言う。

「人生でいちばん大事なのは仕事じゃない。人間だ」

 彼は何かを抱えている。そして気づいたのだろう。人との出会いが、人生を大きく左右するということに。

 荻野倉庫では、銀行への復帰を迷う完治に、課長の川本(中川家・礼二)が、「あなたにしかできない仕事が待ってる」と背中を押す。その声に勇気を得た完治は、銀行へ戻り、不正融資問題の対策に取り組む。その不正融資には、井上が大きく関与していた。

 家を出た真璃子は、友人の聡美(八木亜希子)の家にいた。聡美は、交際していた須藤(岡田浩暉)と結婚するという。居づらさを感じた真璃子は、時間つぶしに街をさまよう。そこで偶然日野と再会する。

 日野は弱っていた。母・冴(麻生祐未)の介護に疲れ、生活も荒れていたのだ。見かねた真璃子は、日野の家に行き、介護を手伝うことにする。

「娘が迷惑かけたことへの罪滅ぼし」という真璃子だが、実際の気持ちはどうだったのだろう。他に居場所が無くなったこともある、日野に息子のような気持ちを抱いているのかもしれない。しかし、明らかに、彼に対する愛情も感じていたはずである。

 真璃子に対し冴は、日野の子供の頃の話をする。愛おしい息子。自分の人生をかけて育ててきた彼の大切さをわかってもらうためだろうか。あるいは、息子との“関係”を疑い、真璃子に、親子ほど歳が離れていることを感じさせるためだろうか。いずれにせよ、冴は、ガンに体を侵され、先が長くないことを知っている。自分のために息子がダメになるのを見たくない。そのためにホスピスに入るという決断をする。

 息子に醜い姿を見せたくない、彼の前では美しくいたい、というのは、まるで恋人に向けたような言葉だ。母親の息子に対する、少し過剰な気持ちが見え隠れする。

 ドラマの終盤では、命に関わるシーンが交錯する。

 家でアイロンを掛ける真璃子の姿を見て、日野は言う。

「このまま時間が止まればいい。母の病気もこれ以上悪くならず、真璃子さんもここにいて……」

 でも、誰も時間を止めることはできない。命を永遠に得ることもできない。

 そして、若葉銀行では、不正融資に関わった人のヒアリングを行う中、中心人物と見られていた井上が、飛び降り自殺を図る。

 漁港で働く栞は、視野が狭くなっていくのを感じる。

 それぞれの希望と絶望が渦巻いて、ラストに向かって収束していく。息詰まるような展開は見ごたえがあった。

 以前から、このドラマには中高年世代に刺さるような、懐かしい演出があることは述べてきた。今回中山美穂の歌番組出演があり、奇しくもその曲の内容とリンクするような感覚が味わえた。もちろん、それを想定して脚本を作ったわけではないだろうが、歌番組側では、ドラマの内容を承知した上で、披露する曲を決めたという理由はあったのではないかと思う。

「世界中の誰よりきっと」の主人公は、最後に本当に愛していた人と出会い、幸せを手にする。一体、今回のドラマで幸せを掴むのは誰なのだろう。

 最終回を残すのみとなったが、完全なハッピーエンドというのは想像しにくい。誰かが幸せになれば、誰かが孤独になる。そんな複雑な人間関係になっているからだ。その関係の糸を少しずつたどりながら、それでもみんなが幸せに向かって歩いていく――。そんなラストを期待したい。

(文=プレヤード) 

幸せとはきっと、大切ななにかに気づくこと――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第9話

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 12月5日に放送された『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)に、中山美穂が出演した。披露したのは、1986年のヒット曲「WAKU WAKUさせて」と、1992年に中山美穂&WANDSとして発表した「世界中の誰よりきっと」の2曲。ドラマ『黄昏流星群』(同)の展開が佳境に入っている中、役の上での彼女の心境を表したような選曲に、思わず唸らされた。

 ドラマはいよいよ第9話、中山美穂演じる真璃子が大きな決断を下す展開だった。

 前回の放送のラスト、車の中で抱き合った真璃子と日野(ジャニーズWEST・藤井流星)。しかし、真璃子が途中で拒んだため、それ以上の関係に進むことはなかった。

 「弱っている者同士は、こんなふうに抱き合ってはいけない」

 真璃子はそう言って、日野と、そして自分の気持ちを押し止めたのだ。

 その頃、完治(佐々木蔵之介)は、銀行への復帰を打診されていた。出世コースに戻れるのは願ってもないことだろうが、出向先での新しい仕事にやりがいを感じていた完治は、戻るべきかどうかと思い悩む。

 そんな完治の思いとは裏腹に、夫が銀行に戻れそうだと知った真璃子は、家を出ていくことを告げる。理由を尋ねる完治に、栞(黒木瞳)との関係を知っていることを告白する。そう言われた完治は、真璃子が家を出ていくことを受け入れるしかなかった。

 真璃子が別れて暮らすことを決断した理由は何だったのだろう? 彼女は何を手に入れたかったのか?

 娘である美咲(石川恋)の駆け落ち、夫の浮気、「子供を育て家庭を守る」ことに専念していた自分に対し、自由に生きている彼らが羨ましくなったのかもしれない。自分が生きていく中で、どうありたいのかということに気づいた結果の行動なのだろう。

 一方、完治との別れを決断した栞は、荻野倉庫を辞め、漁港で働き始めていた。「なぜこんなところで働くのか?」と問われた彼女は、「海が好きだから」と答える。だが、彼女は、本当は山が好きだったはず。完治との思い出を消し去るために、都会でもなく、山でもなく、海に向かったのかもしれない。そして、彼女は医師から糖尿病と診断され、失明の恐れがあるとも指摘されていた。病魔に蝕まれながら、懸命に働くしかなかったのだ。

 完治の出向元の若葉銀行では、不正融資の問題が起きているという。真偽を確かめるため、同期の井上(平山祐介)と会い話をするが、特に問題はないと答えるだけだった。妻との別居、不倫、娘の駆け落ち、全てを話す完治に、井上は言う。

「人生でいちばん大事なのは仕事じゃない。人間だ」

 彼は何かを抱えている。そして気づいたのだろう。人との出会いが、人生を大きく左右するということに。

 荻野倉庫では、銀行への復帰を迷う完治に、課長の川本(中川家・礼二)が、「あなたにしかできない仕事が待ってる」と背中を押す。その声に勇気を得た完治は、銀行へ戻り、不正融資問題の対策に取り組む。その不正融資には、井上が大きく関与していた。

 家を出た真璃子は、友人の聡美(八木亜希子)の家にいた。聡美は、交際していた須藤(岡田浩暉)と結婚するという。居づらさを感じた真璃子は、時間つぶしに街をさまよう。そこで偶然日野と再会する。

 日野は弱っていた。母・冴(麻生祐未)の介護に疲れ、生活も荒れていたのだ。見かねた真璃子は、日野の家に行き、介護を手伝うことにする。

「娘が迷惑かけたことへの罪滅ぼし」という真璃子だが、実際の気持ちはどうだったのだろう。他に居場所が無くなったこともある、日野に息子のような気持ちを抱いているのかもしれない。しかし、明らかに、彼に対する愛情も感じていたはずである。

 真璃子に対し冴は、日野の子供の頃の話をする。愛おしい息子。自分の人生をかけて育ててきた彼の大切さをわかってもらうためだろうか。あるいは、息子との“関係”を疑い、真璃子に、親子ほど歳が離れていることを感じさせるためだろうか。いずれにせよ、冴は、ガンに体を侵され、先が長くないことを知っている。自分のために息子がダメになるのを見たくない。そのためにホスピスに入るという決断をする。

 息子に醜い姿を見せたくない、彼の前では美しくいたい、というのは、まるで恋人に向けたような言葉だ。母親の息子に対する、少し過剰な気持ちが見え隠れする。

 ドラマの終盤では、命に関わるシーンが交錯する。

 家でアイロンを掛ける真璃子の姿を見て、日野は言う。

「このまま時間が止まればいい。母の病気もこれ以上悪くならず、真璃子さんもここにいて……」

 でも、誰も時間を止めることはできない。命を永遠に得ることもできない。

 そして、若葉銀行では、不正融資に関わった人のヒアリングを行う中、中心人物と見られていた井上が、飛び降り自殺を図る。

 漁港で働く栞は、視野が狭くなっていくのを感じる。

 それぞれの希望と絶望が渦巻いて、ラストに向かって収束していく。息詰まるような展開は見ごたえがあった。

 以前から、このドラマには中高年世代に刺さるような、懐かしい演出があることは述べてきた。今回中山美穂の歌番組出演があり、奇しくもその曲の内容とリンクするような感覚が味わえた。もちろん、それを想定して脚本を作ったわけではないだろうが、歌番組側では、ドラマの内容を承知した上で、披露する曲を決めたという理由はあったのではないかと思う。

「世界中の誰よりきっと」の主人公は、最後に本当に愛していた人と出会い、幸せを手にする。一体、今回のドラマで幸せを掴むのは誰なのだろう。

 最終回を残すのみとなったが、完全なハッピーエンドというのは想像しにくい。誰かが幸せになれば、誰かが孤独になる。そんな複雑な人間関係になっているからだ。その関係の糸を少しずつたどりながら、それでもみんなが幸せに向かって歩いていく――。そんなラストを期待したい。

(文=プレヤード) 

嵐の中、人は本当の気持ちを叫び続ける――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第8話

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 父親と娘の関係というのは、微妙なものである。当然「肉親」としての情はあるだろうが、一方で、年頃になると父親を嫌ったり、避けたりする人が多くいるのも事実だ。同じ「異性の親」であっても、母親と息子の関係は、もっとドライな感じがする。それとはまた違った感情が、父と娘にはあるのだと思う。

 ドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)第8話では、父親に対する娘の感情がひとつ露わになった。

 瀧沢家に嵐がやってきた。それぞれが胸の内に秘めていた思いが一気に吹き出し、緊張の中でも平穏を保っていた三人の関係が崩れ去った。家族とはこれほどまでに脆く、壊れやすいものだったのだろうか。

 結婚を前にして、不倫相手の大学教授・戸浪(高田純次)とともに失踪した、娘の美咲(石川恋)。二人の関係を知らなかった母親の真璃子(中山美穂)は驚くが、なにより、夫の完治(佐々木蔵之介)がそれを知っていたにもかかわらず、黙っていたことにショックを受ける。

 美咲の婚約者・日野(ジャニーズWEST・藤井流星)の元に謝罪に行く完治と真璃子。全てを知っていた日野は大人の対応をするが、彼の母・冴(麻生祐未)の怒りは激しく、帰ろうとする完治と真璃子に塩を撒く始末。二人はただただ謝るしかなかった。

 冴にしてみれば、病に冒され、残り少ない命の中で、ようやく見届けられると思っていた息子の結婚がなくなったのである。絶望と怒り、そして悲しみは十分に理解できる。

 一方で、完治と栞(黒木瞳)の関係も、微妙な時を迎えていた。美咲から「父と別れて欲しい」と言われた栞が、完治に別れを告げ、避けるようになったのだ。「どうして会ってくれないのか?」と問う完治に、「今の職場が気に入っている。社内で変な噂が立って辞めるようなことになったら困る」と答える。

 これは、本心なのだろうか。それまで、栞は「瀧沢さんのご迷惑になるから……」と言い続けてきた。おそらくはこちらが本心なのだろう。しかし、相手を慮る言い方では、別れてもらえないと考えた。だからこそ、今回は、「自分が困る」、「自分のことを思ってくれるなら別れて欲しい」と、自分の気持ちに嘘をつき、別れを突きつけたのだと思う。

 完治の家庭では、真璃子が少しずつ本音を話すようになっていた。娘のことをあまり心配していない様子の完治に、「他になにか気になることがあるんじゃないのか?」と、栞の存在を匂わすようなことを言うのだ。

 そんな時、瀧沢家を戸浪の妻・和代(松本留美)が訪ねてくる。

 往年のドラマファンなら、ここで「おおっ!」と思ったのではないだろうか。松本留美といえば、かつてドラマで数々のクセのある役を演じてきた、名バイプレーヤーである。今回のような、「夫の不倫相手の家に乗り込む」などというシチュエーションは、彼女にとってはお手の物であろう。思った通り、彼女は「絶対に離婚はしない」と言い切る、気の強い妻役を実に見事に演じていた。

 一方、完治の会社でも動きがあった。「想い出ボックス」の成功により、社内でも認められた完治。何かとつらく当たってきた課長の川本(中川家・礼二)とも和解し、出向先での仕事にも、これまでなかったような楽しさを覚えるのだった。

 そんな時、完治に美咲から連絡が入る。これから戸浪とロンドンに行くため、成田空港にいるというのだ。急いで駆けつけた完治に、美咲は正直な思いを話す。

 栞に、「父と別れて欲しい」とお願いしたこと。それは、父を取られてしまうのが悔しいという理由からだったこと。初めて聞く娘の思いに、完治も戸惑う。想像するに、そう言われて、完治はどこか嬉しかったのではないだろうか。そして完治は美咲に言う。

「お前はいろんな人を裏切って行くんだ。絶対幸せになれ」

 裏切るということは、相手の信頼や気持ち、もしかすると未来や人生までをも背負うことなのかもしれない。人を裏切ってはいけない。でももし、どうしても裏切らざるを得ない状況に陥ったなら、それだけの覚悟はしておくべきだろう。

 その後、行きつけの飲み屋で偶然会い、完治の強い気持ちを知った栞は、自分も同じ気持ちだと告白し、二人は改めて、一緒に山に行く約束をする。

 しかし、またしても栞を不幸が襲う。目のかすみ、手のしびれ、そんな症状を感じて、医者にかかった彼女は、母親と同じように糖尿病にかかっていたのだ。

 母の苦しむ姿を間近で見てきた分、それが自分の体をも蝕んでいることに、絶望を感じたのかもしれない。彼女はまたしても、完治の前からいなくなろうとする。

 そんな頃、真璃子は、日野と会っていた。以前借りていたハンカチを返していたのだ。もうこれで最後になる、そう言う栞に、日野はお願いごとをする。それに応じ、日野の家でお茶を飲む真璃子。彼女の手を握る息子の姿を、冴は目撃してしまう。そのショックからか、冴は倒れ、病院に運ばれる。容体も落ち着き、真璃子を送る日野。別れる前の車の中で、二人は抱きしめ合う。

 今回、演出上の小物としてうまく使われていたのは、プリクラだった。美咲がいなくなった部屋で、真璃子は母娘で撮ったプリクラを見つける。4枚綴りで、1枚切り抜かれた写真。その1枚は、ロンドンへと旅立つ美咲のスーツケースに貼られていた。美咲の、母への思いが感じられるいいシーンだった。

 次回は、完治が銀行への復帰を打診され、栞の病気は、より深刻なものになっていきそうだ。嵐の中で、徐々に本当の気持ちを吐き出すようになっていった家族。これまで本当の気持ちを抑えてきた真璃子は、日野の思いを受け入れるのか――? 彼らをとりまく嵐はまだまだ続きそうである。

(文=プレヤード) 

幸せを掴むのは強い者ではなく変化できる者──佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第7話

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【幸せを掴むのは強い者ではなく変化できる者──佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第7話】

 連続ドラマの楽しみはいくつかある。初回で見られる出演者たちの役とのハマり具合、人間関係が変化していく中での新たな表情や仕草、最終回で漂ってくる役をやりきった感。それぞれ、俳優というエンターテイナーが、与えられた役とどう向き合ってきたかが、透けて見えることが面白い。

 中でも、物語が中盤に差し掛かり、演者が役になりきった頃、それぞれのキャラクターの輪郭がくっきりと浮かび上がってくるあたりが好きだ。演じる者と演じた役の、人間としての魅力が見えてくると言ったらいいだろうか。

 ドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)第7話。まさに、この物語のキャストの魅力が、グンと上がった回であった。

 入院中の完治(佐々木蔵之介)の元に、学生時代からの友人である須藤(岡田浩暉)と聡美(八木亜希子)がお見舞いにやってくる。ともに離婚を経験した二人は付き合い始めたらしい。祝福する完治に須藤はある相談を持ちかける。

 須藤の相談は、別れた家族との写真やホームビデオを、完治の倉庫で預かってもらえないかというものだった。その依頼に発想を得た完治は、個人の思い出の品を預かる「想い出ボックス」というサービスを提案する。
 
 職場を牛耳る課長の川本(中川家・礼二)には、「ろくな売上げにはならない」と反対されるが、完治は、全て自分一人でやると宣言し、事業を立ち上げる。
 今回は、主題である恋愛劇に加え、企業内での事業立ち上げのドラマでもあった。まさに「プロジェクトX」(NHK)の世界だ。基本的に、日本人はこの手は話が大好きである。規模の差はあれ、現在放送中の「下町ロケット」(TBS系)にも通じる設定であろう。

 ホームページの立ち上げ、ビラ配り、荷物の管理、すべてを一人でこなし、完治は忙しい毎日を送る。出向以来忘れていた、仕事に対する情熱を取り戻したようだ。

 エリート社員という経験をしたことがないので、よくはわからないが、「出向」を「出世競争からの脱落」と捉えて、悲観的になったり、やる気をなくしてしまったりする人が多いようだ。だが、人の幸せなどというのは、出世だけではないはず。硬いものほど簡単に折れてしまうと言うが、いつまでもそのプライドを抱えて落ち込んでいるより、与えられた職場に合わせて自分を変えていき、やりがいのあることを見つけたほうが、ずっと幸せなはずだ。その点では、完治もようやく職場での幸せを掴んだといえる。

 サービス拡充のため、古いビデオや写真をデジカル化する作業も手がけるようになり、ますます完治の負担は増えていく。職場の面々も気にはしているが、川本の目を気にしてか、なかなか手伝おうとはしない。

 そんな忙しさの中で、完治は、栞(黒木瞳)とゆっくり話す時間も取れずにいた。これまで、完治の方が積極的であった交際も、会えない日が続く中、栞の方も寂しさを感じるのだった。

 そして、栞が思い悩んでいることは他にもあった。完治が入院している病院に行った時、完治の娘・美咲(石川恋)と遭遇し、そこで「父と別れて欲しい」と言われていたのだ。

 一方、完治の妻・真璃子(中山美穂)も、思い悩んでいた。夫の浮気、娘の不倫、そして、自身の日野(ジャニーズWEST・藤井流星)との関係。悩む真璃子は、結納を前にし、娘の真意を確かめようとする。しかし、逆に娘から、「本当に完治のことが好きなのか?」と問い詰められてしまう。

 ある日、一人で残業をする完治の元へ、真璃子がやってくる。差し入れを持ち、手伝いに来たのだ。自分にも味方がいると心強く感じる完治。倉庫から見える、きれいな月を見ながら、二人は仲良く差し入れを食べる。

 間の悪いことに、ちょうどその時、真璃子は職場を訪れ、二人の姿を見てしまう。乗り込んでいくのか、見ないふりをするのか……真璃子が選んだのは、その場から立ち去ることだった。

「想い出ボックス」の事業は軌道に乗り始めた。リニューアルされたホームページ、スマートフォン用のアプリなどが功を奏し、ネット上でも話題になり、申込みも急激に増えていったのだ。自分一人では対処しきれない、手伝ってもらいたいと、社員にお願いする完治。頑張る姿を見ていた職場の面々は、協力を申し出、川本もしぶしぶ了承するのだった。

 日野の母・冴(麻生祐未)は、ガンが再発していた。日野は、母にそれを伝えるが、冴は「運が良かった。あなたの結婚式に間に合う」と、むしろホッとした表情を見せるのだった。

 その夜、日野が向かったのは真璃子の元だった。「美咲を送ってきた」そう噓を言って、真璃子を呼び出し、デートに誘い出し、夜の遊園地に行く。

 婚約者に別に好きな人がいるという日野と、夫の不倫に悩む真璃子。パートナーに裏切られた二人の心の傷は、どこか似ているのかもれしれない。日野の思いには応えらせないとしながらも、真璃子はどこかで彼を求めているのだ。

 完治は、美咲の不倫相手の戸浪(高田純次)が、ロンドンの大学に客員教授として行くことになったことを聞かされる。「もう別れた。会いたくても会えない」という美咲を信じるしかなかった。

 そして、美咲と日野の結納が交わされる。どこにでもあるような幸せな家庭。そんなひとときは、嵐の前の静けさであったのかもしれない。

 思い出ボックスの整理も一段落し、従業員は、達成感を覚える。仕事で大切なのは、達成感なのだ。完治自身も、一息つき、栞の家にお礼を言いに行く。しかし、出てきたのは、栞と一緒に食堂で働く小俣(山口美也子)だった。そして、「完治とは別れたい」という栞の言葉を伝えるのだ。

 自宅に帰った完治を待っていたのは、さらなるショックだ。美咲が、戸浪を追ってロンドンに行くという置き手紙があったのだ。完治たちの一家に暗雲が立ち込め始めた…。

 今回は、仕事と恋愛のバランスについて描かれていた。個人的な見解を述べるなら、えてして、忙しく仕事をしている人ほど、恋愛などにも積極的であるように思う。時間的に制限されることはあるが、その分、ストレスや精神的な疲れの中で、誰かを求める気持ちが強まっていくのではないだろうか。最近何かと話題のカルロス・ゴーンだって、あれだけの激務の中で、前妻と離婚し、新しいパートナーを見つけ再婚しているのである。「英雄色を好む」という言葉は、あながち噓ではないのだろう。

 次回は、今回の成功物語とは違って、かなりの波乱が起きそうだ。婚約を破棄した美咲の行方、日野と真璃子の関係に気づく冴、そして栞の体調も気になる。終盤に向かって、魅力が増したキャストとともに、展開を見届けたい。

(文=プレヤード)

噓を嘘だと知りながら、人は誰かに噓をつく――佐々木蔵之介主演ドラマ『黄昏流星群』第6話

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 年代によってのギャップというのは、誰でも感じることがあるだろう。同じものを見ていても、違う見方をしていたり、別な感想を持ったり。突き詰めていけば、それは「違う世界を見ている」ということにもなるのではないだろうか。そして、その違う世界が、何かの偶然で交差して見えた時、年の差カップルが生まれたりするのかもしれない。

 ドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)第6話では、そんな年の差カップルの姿が描かれた。

 栞(黒木瞳)の母の葬儀の夜、彼女と一夜を共にした完治(佐々木蔵之介)。妻の真璃子(中山美穂)には、会社の同期の家に泊まると噓をついていた。もともと完治の不倫を疑っていた真璃子は、それが噓であることを察知する。しかし、完治には自分が気づいていることを知られないようにと、嘘をつくのだ。

 朝になり、栞の家を出た完治は、美しい朝焼けを見て思う。

「全部が輝いて見える。こんなこと自分の人生にはもうないと思っていた」

“黄昏”流星群というタイトルの通り、このドラマの主役は、人生の終盤が見えてきた年代の人たちである。それらの代表でもある完治が“朝日”を見て感動するという仕掛けがニクい。人生は終わりに近づいていても、恋をすることによって、新たな始まりを経験することができるという示唆であろう。

 完治たち親子は、結婚の挨拶のため、娘の美咲(石川恋)の婚約相手である日野(ジャニーズWEST・藤井流星)の自宅を訪れる。出迎えた日野の母・冴(麻生祐未)は、昔ながらの考えの人で、完治たちはすっかりやり込められてしまう。結婚や孫の誕生を急かすような冴の言動にも気圧されっぱなしだ。

 実は、冴が息子の結婚を急ぐのには理由があった。彼女はがんを患っており、息子の結婚と孫の顔を見届けたいと思っていたのだ。

 ここで、ドラマでは2つの命が描かれる。栞の母の死と、冴の寿命。“黄昏”の先にある、死という現実。死に向き合うことで、新たな生を生きる人たちの輪郭があらわになる。年を重ねれば分別がつき、常識的なこと、正しいことをするようになる。しかし、それと同時に、自分に残された時間に限りがあることも実感するのだ。本当にやりたいこと、本当に一緒にいたい人といるのは今しかない、そんな思いにとらわれるのもまた事実なのだ。

 同じような思いは、美咲の不倫相手である戸浪(高田純次)も抱えていた。美咲との関係を終わらせようと、完治は戸浪の元を訪ねる。戸浪は、勤務する大学近くのアパートに一人で暮らしていた。妻にはとっくに見放されており、研究に没頭して生きていたのだ。美咲との関係を問い詰める完治に、戸浪は言う。

「人間として別の軌道をたどっていたが、2人の軌道が何万分の1の確率でたまたま重なっただけ。一瞬だがかけがえのない時間だった」

 そんな戸浪の話を聞き、完治は自分と栞との出会いを思い出す。完治の中で、戸浪への感情が変わっていく。

 完治の出向した荻野倉庫では、財政状況が苦しくなっていた。近くに新しい設備の倉庫ができ、そこに顧客を取られていたのだ。課長の川本(中川家・礼二)は、完治に「若葉銀行に融資をお願いしてほしい」と依頼してくる。審査のため本店へと行った完治だったが、担当者からはにべもなく断られる。融資部長に出世した同期の井上(平山祐介)にもお願いしてみるが、必要な費用までは程遠いものだった。

 一方、美咲の代わりに、日野とともに結婚式場の下見に行った真璃子。そこで、真璃子は、美咲には他に好きな人がいて、それを日野にも正直に話していることを聞かされる。「それでいいのか?」と問い詰める真璃子に、日野は、自分も他に好きな人がいること、そして、それが真璃子であることを告白するのだ。

 ここでもまた、全く違う軌道をたどってきた2人の気持ちが重なる。いや、まだ厳密には日野の一方的な思いかもしれない。しかし、真璃子もまたその思いに心乱されている。

 そんな時、荻野倉庫から真璃子に連絡が入る。完治が社内で事故に遭い、病院に運ばれたというのだ。病室に向かう2人。幸い怪我は大したことがなさそうだった。安心して楽しげに言葉を交わす完治と真璃子を、日野は複雑な思いで見つめるのだった。

 その後、出張に行っていたはずの美咲も病院に駆けつける。そこで完治に、出張は噓で、戸浪と金沢に行っていたことを告白する。完治は、戸浪と別れるよう諭す。納得した美咲は、そのかわりに完治に栞と別れるようにお願いするのだった。

 今回は、見ていてなるほど、と思ったシーンがいくつかあった。一つは、栞の家で目を覚ました朝、完治が朝食を共にし、栞手作りの漬物の美味しさに感動する場面。この翌日、自宅での夕食をとるシーンがあるのだが、完治は明らかに既成品と思われるたくあんを、味気なさそうに食べる。この対比が面白い。自分の家庭のありふれた幸せと、栞との他には無いような幸せを、漬物という小道具で表現しているようだった。

 そして、もうひとつは、完治が戸浪のことを話す時の呼び名である。最初美咲に対し「あいつ」と言っていたが、戸浪と話をし、どこか彼の心情をわかるようになった後は、「先生」と呼んでいるのだ。これは、戸浪のことも、そして美咲の思いも配慮することができるようになった完治の配慮が表われていると言っていいだろう。このような仕掛けが今後も見られることを期待したい。

 さて、いくつもの秘密が明らかになり、それを知ることでまた秘密ができてくる。今の段階で、一番知られていない秘密は、日野の真璃子に対する思いだ。これだけはまだ完治にも美咲にも知られていない。幾重にも重なった噓と真実の間で、完治たちはこれからどんな軌道をたどっていくのだろう。

(文=プレヤード)