『忘却のサチコ』今度は本格ラップ! なんでもこなす高畑充希の器用っぷり

 年末を迎え、今夜最終回を迎える『忘却のサチコ』(テレビ東京系 )。第11歩(第11話)となる「YO! 夜明けのソルロンタン」を振り返ります。

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■「作家」は曲者だらけ

 担当している姫村先生(長谷川朝晴)の執筆の相談に乗る編集者・佐々木幸子(高畑充希)。

 だが幸子は、小説の登場人物が「なぜ結婚破談になったか?」という話題において、「ケッコン」や「ハダン」の言葉が言えない。

 あげく、結婚式の当日に新郎に逃げたられた記憶が蘇り、フリーズしてしまう。

 その新郎こと俊吾さん(早乙女太一)がどこにいるのか? なぜいなくなったのか? の部分が、もはやグルメパート以上にキモになってきている。今回も出てきた食事は1回のみ。多い時は立ち食い的なのを含め3回くらい食べたりするので、やや少ない印象。

 それはさておき、公園で佇む幸子の背後から、芝の斜面を段ボールに寝そべり、身体を揺すりながら滑って登場した笑顔の姫村先生の不審者感は際立っていた。

 一見ちゃんとして見える人物だけに、そのポテンシャルは未知数。

 このドラマを見ていると、文芸作家というのは異常な人しかいないのだな……と錯覚してしまうほど、ジーニアス黒田(池田鉄洋)といい有村先生(大和田伸也)といい、クセの強い作家ばかり登場する。

 特に幸子ら編集者側からは“機嫌を損ねてはならない相手”だけに、余計にそう描かれているのかもしれないが、このドラマの魅力の1つが曲者だらけの作家先生たちなのは間違いない。

 ちなみに姫村を演じる長谷川朝晴は元ジョビジョバだし、コメディ芝居が上手いのはもちろんなのだが、タレントの千秋のリアル同級生で仲も良かったと知り、不審者感の細かい演技が上手いのも、なぜか納得してしまった。

 

■俊吾は「クソ野郎」

 幸子は編集部の後輩・小林(葉山奨之)の協力のもと、姫村の執筆に生かすべく、結婚が破談になった相手に取材をすることになるのだが、取材の席で聞く破談経験者の意見が、つらい記憶を刺激し、ギアが一段上がってしまう。

「何か止むに止まれぬ理由があったんですよね? 例えば元恋人が、実は血のつながった兄弟だったと判明したとか? そして、許されざる愛から身を引かれた……」

「違います」(破談経験者)

「もしくは、なんらかの組織に命を狙われていて彼女の身を危険から守るために」

「違います」

「もしくは実家が倒産して、莫大な借金を……」

「抱えてません」

「披露宴の最中に突然記憶喪失に……」

「なってません」

 幸子の「何か止むに止まれぬ事情があってほしい」感が溢れ出し、取材される破談経験者も段々とぶった切るように否定しだす。普通に考えたら重い内容なのだが、台詞がいいのか見ていて気持ちのいい掛け合い。

 結局、統計すると「なんとなく好きではなくなった」という漠然とした理由が多く、それに納得できない幸子は、もっと徹底的に調べた方が……とムキになる。

 そんな幸子を、「これ以上、傷口に塩を塗るようなことはしなくても」と小林がなだめる。幸子の「傷口」に、初めてしっかりと触れる小林。

 腫れ物に触るような人たちばかりの中、この小林の踏み込みは新鮮だ。

 さらに、一度再会してるのに再度逃げられ(第7話)、それでも俊吾を信じようとする幸子に、振り向いてもらえない小林の想いが爆発する。

「馬鹿なんですか? 現実見てくださいよ? 2年も付き合った結婚式当日に紙切れ一枚で逃げて、再会しても紙切れ一枚で逃げて、そういう奴をなんて言うかわかりますか? クソ野郎って言うんですよ」と痛烈。

 好きだからこその苛立ち。

「本当に優しい人間が逃げるわけないでしょ? まだそんな人間を引きずってるなんて、佐々木さんも佐々木さんですよ」

 言うだけ言ってしまった後、我に返り後悔するような小林が切ない。

■ラップも上手い高畑充希

 所変わって、幸子の勤め先・文芸誌さららの忘年会。居酒屋とかではなく、温泉の大宴会場のような場所を借り切って全員浴衣での本格的な宴会だ。

 ここで披露される部下たちの一芸を、編集長(吹越満)は「つまらなかったら次の年、あらゆる企画が通らなくなる」ほど楽しみにしてるらしい。

 幸子も例によって生真面目に宴会芸を考えているようで、その候補リストにチラッと見えた文字は、二人羽織や似顔絵描き、作家先生のモノマネ(ジーニアス黒田)と比較的オーソドックスなものから、「一発ギャグ20連発」というリスクの高いものまで並ぶ。

 中には「Tシャツ何枚重ね着できるか」、という「演目」もあり、幸子がいかにこの宴会芸に真剣に取り組んでいるかがわかる。

 その宴会芸で、小林はなんとオペラをアカペラで披露。『夢遊病の女』(ヴィンチェンツォ・ベッリーニ)の中から「どうか許しておくれ、愛しい人よ」を熱唱。

 どうやら強く当たってしまった幸子に謝ってるつもりらしいが、当の幸子は仲居さんにデザートを出すタイミングを指示しており、まったくその歌を聞いてない。聞いててもイタリア語なのでわかるかは不明だが。

 そして、幸子の出番。

 B-BOYの格好で登場した幸子が、シンプルなトラックに乗せてライムを繰り出す。

 それもとりあえずできないなりにラップしてみましたというより、日々、逆おしくらまんじゅうみたいに、井戸端会議みたいに向かい合ってラップでけなし合うやつ(サイファーと言うらしい)やって腕磨いてますといった感じで本格的。

 自己紹介からの「編集のお仕事紹介、必要なスキルは長文読解、読んだ原稿奥深い、校了終えたら即公開、センテンス組み合わせ作る世界、力合わせて交わすは誓い、私たちで作ろう出版業界ーー!」。

 盛り上がる浴衣姿のオーディエンスたち。

 なんか韻を踏んでると「凄い感」が増し、盛り上がりそうなので、若手が宴会芸を披露する際、ラップは意外とありかも。鼻に付く危険性も多分にあるが。

「なんか不思議と上がるな」とご機嫌な編集長だが、後半から盛り上がりのための人柱に選ばれ、ディスられまくる。

「say! 編集長(編集長)長! 長! 長! ゲラチェックをお願いに、そこで見たのはスマホゲーム、こっそりこそこそスマホゲーム(スマホゲーム)、そこで見たのはPC動画(PC動画)!」

 上司をいじって盛り上がるのは、内輪の集まりの鉄則。しかし異様に盛り上がってしまっていただけに、幸子がこの先どこか理不尽な部署に移動させられないかが心配だ。

 

■新大久保で牛骨スープ

 明け方お開きになった後、小林は幸子をソルロンタンの朝食に誘う。

 ソルロンタンは韓国料理で牛骨で出汁を取ったスープ。乳白色でこってりしていそうだが、実はあっさり味で朝飯にもぴったりだという。

 ある程度食べた後、キムチやカクテを混ぜて味変えしてもいいし、ご飯を投入して、おじやにしてもいい。

 石焼の器だからご飯投入後も熱が保たれるのがうれしい。

 調べてみるとこの店は新大久保の「とまと」というサムギョプサル専門店。しかしランチでソルロンタンの定食があるらしいので、サチコ体験したい人は是非。

 

■またまたまた、俊吾さん登場

 帰り道、先日の件を謝り仲直りしつつ、幸子への恋の告白をしかける小林。

 しかし告白する寸前、橋の向こうから現れたのは、なぜか生鮭の発泡スチロールを抱えた俊吾さん。

 漁師っぽいかっこをしてるのが気になるが、しっかり「ただいま」と微笑むその姿は、紛れもなく俊吾さん本人だ。

 三崎漁港に行った際、まるで似ていない地元漁師(東京03・角田晃広)を俊吾だと空目していたことがあった(第4話)ので油断はできないが、いよい大団円だし、さすがに本人であってほしい。

 俊吾さんが消えた理由は気になるものの、それが解決すると幸子が『忘却』する必要もなくなってしまうので、なんとも複雑だ。

 いよいよ今夜最終回。

 来期のドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)で、西島秀俊、小日向文世、野口五郎、さらに近藤正臣ら豪華キャストと共演する幸子、いや充希。

 このドラマを見てると不器用な幸子に親心を抱いてしまうので、次期ドラマへ無事旅立てるのかとお節介にも気になってしまう。まずはこちらの最終回、楽しみに待ってます。

(文=柿田太郎)

 

『忘却のサチコ』漆黒の三代目登場! 新春の『孤独のグルメ』に登場してほしい

 我が道を行く新感覚グルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第10話では、あの有名店のオムライスに幸子がほだされます。

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■「いつも通り=精一杯努める」の幸子

 編集者によるネット討論番組に出演することになった我らが佐々木幸子(高畑充希)。その名も「今必要な恋愛小説」。

 編集長(吹越満)から「いつも通りでいいからな」と言われるも「はい、精一杯努めてまいります!」と高らかに返事する幸子。確かに、いつでも愚直に手抜きなしが幸子の「いつも通り」。編集長はおそらくリラックスさせる意図で言ったのだろうが、そう受け取れない不器用な幸子がかっこいい。

 

■まずは「おやき」で忘却

 しかし本番前、ネット番組→全世界の人が見ている→結婚式当日に失踪した元・新郎の俊吾さん(早乙女太一)が生放送中に現れるかも! と妄想し、パニックになりかけた幸子は、いつものように美味しいものを食べてつらい気持ちを「忘却」することに。

 幸子の目に留まったのは、主催者が長野出身とのことでケータリングに置かれていた「おやき」。

 言わずと知れた、きんぴらやかぼちゃなどの具を小麦の皮で包んで焼いたお惣菜饅頭。

 幸子が選んだのは、定番中の定番の具材、野沢菜。

 奇をてらってない飽きの来ない味は、いつ食べても落ち着く。

 蒸した肉まんよりやや皮が硬めなのも、武骨でいい。素朴を絵に描いたような郷土の味ながら、現代でも通じる惣菜パン的おやつ。

 

■幸子のライバル

 実はこの討論番組のキャスティングは、「月刊スピカ」の尾野真由美(佐藤めぐみ)が裏で手を回し仕組んだもの。

 8話で初登場し、接待の場で幸子に大敗を喫した尾野は、幸子を陥れるために復讐の炎を燃やす、わかりやすい女狐タイプのライバルだ。

 今回も本番前に主催者で司会の社会学者(六角慎司)の手をハプニングを装って握り、色仕掛けに走るなど余念がないが、幸子にストッキングが伝線してることを教えられパニクるなどやはり天敵・幸子にペースを乱される。

 本番中も、社会問題に恋愛を絡めたような作品、読者の知識レベルや倫理観を高められるような小説が必要、毒にも薬にもならない小説は必要ないと強弁し、存在感を示そうと躍起になる尾野。

 それに対し、社会的弱者であろうとなかろうと悩みはさまざまなので、自分の物語だと思える作品を見つけることができるのが「小説」であるから、よって「今必要な恋愛小説」の答えは「全ての恋愛小説」だとある種の正解を出してしまう幸子。

 さらにネット住民が喜びそうな作家と編集者との色恋話をあえて繰り出す尾野に対し、幸子は、小説家とは身体一つで真っ暗な宇宙(未知の世界)へ飛び込んで人類(読者)を新しい世界へと誘うパイオニア「はやぶさ2号」(小惑星探査機)であると、壮大な例えを繰り出す。

 当初そんな存在と恋愛はできないとしていた幸子だが、悩んだ挙句、作家の先生を尊敬しているから、「もし愛する人が作家になったら愛と尊敬を両立させ新しい感情の扉を開くことができるかもしれません」と気持ちを吐き出す。

 尾野が常に視聴者や世論など他者のウケを優先し、ある種、媚びて発言するのに対し、幸子の発言は無茶苦茶ながらも自分の想いが貫かれており、そこに嘘がない。

■幸子は嘘をつかない

 そう、この討論に限らず幸子は嘘をつかないのだ。

 いや、つけないと言ってもいいのかもしれない。

 式の最中に新郎がいなくなった時も、逃げられた悲劇の新婦である以上に、責任を伴う立場の当事者として、自ら状況を正直に淡々と説明、最悪の状況を「以上です」で締めくくり参列者を驚かせた。

 常に嘘がない故に、空気を読むことに長けまくっている現代の世では奇特に見えてしまうことも多いが、そのひたむきさにどこか胸を打たれることも多い。

 他人どころか自らを騙すなど自分に嘘がつけないから、毎度逃げた俊吾さんを思い出しては苦しんでしまうのだろう。

 当初は幸子、というか高畑のコスプレが必ずあったのだが、最近は俊吾さんこと早乙女太一のコスプレに移行してきている。

 今回も、宇宙から来た正義のヒーローや和装の文豪に早乙女が扮しているが、借り物的なコスプレではなくかなりの熱演で、早乙女の新たな魅力を見せてくれている。

 

■三代目登場!

 番組終了後、幸子が立ち寄った店はあの「たいめいけん」。

 オムライスと真っ黒な3代目店長でお馴染みのあの老舗洋食店。

 絶品のカニクリームコロッケやコンソメスープを味わったあと、いよいよ名物タンポポオムライスが到着。

 伊丹十三の映画『たんぽぽ』(1985)でもお馴染みの、切り開くととろとろの卵が溢れるあのオムライス。

 デミグラスソースを纏った卵とチキンライスを口にいれ、思わず目を細める幸子。

 ケチャップもいいが洋食店ならではのデミグラスもいい。

 店長と見分けがつかないくらいの漆黒が卵に映える。

 食べてる最中、第2話のように3代目と踊り出すのでは? とソワソワしたが、無事そういうハプニングもなく終了。3代目の不自然な固い笑顔がよかった。

 ちなみに映画『たんぽぽ』で、このオムライスが登場した時は、デミグラスではなく真っ赤なケチャップをかけている。

 トマトが好物な高畑にはそちらも食べさせてみたかった。

 

■脇役の宝庫

 結局この日も幸子にいいところを持っていかれ、またしてもグギギとなった尾野真由美だが、だんだんその純粋な負けん気が可愛く見えてくるから不思議だ。

 そして、ニコニコ動画らしきサイトで「佐々木さん頑張れ」と必死にコメントを連打する後輩・小林(葉山奨之)も、どんどん存在感を増している。

 そして、堂々としてるがゆえに見落としがちだが、小林より先に「佐々木頑張れ」とコメントを打とうと言い出し、実践していた編集長。

 原作でもそうだが、時折佐々木を想う場面が見られる(恋愛感情かどうかは定かでないが)ので、もっと編集長を活躍させてあげてほしい。

 残りあとわずか。

『孤独のグルメ』新春スペシャルで一部生放送をやるらしいので、そこにサチコがカメオ出演とかしないかなーと期待してますが、叶ったら嬉しいです。
(文=柿田太郎)

『忘却のサチコ』に“ジーニアス黒田”再び! 踊る高畑充希に食う高畑充希……

 高畑充希の魅力を味わい尽くすグルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第9話となる今回もダンス、寸劇、そして見事な食べっぷりと、さまざまな顔を見せてくれました。

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■ジーニアスの恋

 人気作家・ジーニアス黒田先生(池田鉄洋)からアイドルとの対談の替え玉役を頼まれた幸子(高畑充希)の編集部の後輩・小林(葉山奨之)。

 第2話に登場したジーニアス黒田は外見を公表していないため、基本対談などはNGにしているのだが、そのアイドル・桃乃もぎか(岩田華怜)が自分のファンだと知ってしまい、どうしても断れない。なぜならジーニアスも桃乃の大ファンだからだ。

「こんな俺(もっさりロン毛の池田鉄洋)が出ていけるわけない!」との思いから、イケメンの小林が自分(ジーニアス)の替え玉をしないのなら原稿を書かないと駄々をこね、あげく難色を示す小林に土下座までする始末。

 しかし、小林に励まされ、「桃乃ちゃんに作品だけでなく、俺のことも好きになってもらいたい!」と、ダイエットを決意する。

 ダイエットで解決する問題なのだろうか? と思ったが、それは置いておこう。池田さんすみません。

 幸子はダイエットをバックアップするため、近隣のスーパー3軒のお惣菜ラインナップより考案した献立表や、1日の健康的なタイムスケジュールを作成するだけでなく、ジーニアスに運動させるために、桃乃の曲の振り付けまで「身体に叩き込んで」きて、ジーニアスに指導する。

 このアイドルの曲「理想の彼氏はあなただぴょん」が、今時のアイドルっぽい音で無駄にちゃんと作られており、フルで聴きたくなるほど。

 その曲に合わせ、アイドルさながらのダンスを真顔でする高畑充希と、同じ動きをする池田鉄洋。

 第2話のおにぎりミュージカルを思い出すコラボ。

 そして数日後、ダイエット失敗。

 桃乃のCM「牛丼をお腹いっぱい食べる人、好き、好き、大好きー!」にまんまとやられ、何十杯も食べてたらしい。

 悲しきファン心理。

 しかし購買力のあるファンを持つアイドルを使う狙いは、そこだから仕方ない。

 スズキの車を購入し、タマホームで家を建てた太いモノノフ(ももいろクローバーZのファン)も、きっといるはずだ。

 

■ジーニアスの想いが爆発

 ということで対談当日、いつも通りの容姿で現れたジーニアスに鹿のお面(被るタイプ)を装着させ、顔出しNGとして対談させる幸子。

 見た目はバンビーノのネタ「ダンソン~フィーザキ~」の狩られる側を想像してほしい。

 対談中も桃乃の質問に答えず、無言でしばし見とれてしまうダメなジーニアスに、手を叩き意識を戻させるなど、けなげにサポートする幸子。

 しかし桃乃のジーニアスを気遣う心に、ジーニアスの想いが爆発。

「僕、桃乃さんのこと、前のグループ、ブリングトップに入る前の素人時代の踊ってみました動画の頃からずっと見てました! 桃乃ちゃんがアイドルとして成長していく過程が僕の創作意欲の原点になってることは間違いありません!」と熱くぶちまけ、あげく嗚咽を漏らすほど興奮。

 引かるかと思ったが、桃乃もジーニアスの手を握りしめて感激、その後、対談はジーニアスの1人しゃべりが5時間に及んだという。

■このシリーズ一番のジェットコースターな展開

 ふらふらになりながらの帰宅途中、ガッツリといきたい幸子は程よく汚いジンギスカンの店に飛び込む。

 今回は逃げられた俊吾さん(早乙女太一)を忘却するためではなく、単にエネルギー補給としての入店。

 一人席に着き、マトンスライスジンギスカンを注文するが、横の席のカップルから「一人でなんでもできちゃう女って、かわいげないよなあ」と揶揄する声が漏れ聞こえる。

 普通のグルメドラマなら、ここからはただジンギスカンを美味しく食べるだけのシーンになると思うのだが「私、一人でなんでもできるからダメなんでしょうか……かわいげって、なんでしょう……」と、ヒツジ肉の焼ける音をバックに悩む幸子。

 さらに「もしも幸子がきゃぴきゃぴした女の子だったら」の妄想シーンに突入。お揃いのロンTを着た俊吾さんといちゃつきながら、ツインテールでパフェを食べる幸子。

 この幸子、いや高畑充希のツインテールの似合いっぷりが半端なく、素直にかわいいと思いました。すみません。

 この妄想にバットマンのようなマントを広げ、シルクハットを被った白井編集長(吹越満)が登場するのだが、この意味不明なキャラも妙にハマっていて、ジンギスカンの焼ける音で唾液が出かかってる最中に何を見させられているんだろうと変な気持ちになる。

「もしも私がそんな風(きゃぴきゃぴ)だったら、俊吾さんはソバにいてくれた……? ……でも……そんなの私じゃない」

 妄想しつつ悩んでいた幸子がふと真顔に戻り、こちらもハッとさせられたことろに、間髪入れずに

「おまたせしました~マトンスライスジンギスカンになりまーす」と注文が到着。

 相変わらず短い時間に丁寧に詰め込んで、観る側をさりげなく揺さぶる作り。地味なジェットコースターに乗ってるようだ。

「そんなの私じゃない」の言葉の耳に残る中、画面にはボールに入った生のマトンともやしが映っている。余韻の波状攻撃。

 いろいろあるけど、結局身体に食べ物を入れないと始まらない。

 いろいろあるけど、明日からも続いていく。

 フィーザキーされた羊の肉を頬張る幸せそうな幸子。

 どんな人間も、忘却しないと生きていけない。

 うるさいカップルを尻目に、一人でジンギスカンを楽しむ幸子を見ていると、なぜかこちらまで幸せな気持ちになってくる。

 こちらのそんな気持ちなどお構いなしに、画面では幸子は延々もやしの感想とか述べている。油断できないドラマだ。

 今回は前半に早乙女太一、ふせえりとの贅沢な演劇シーンもあり、時間稼ぎのようなシーンで誤魔化さず手間を惜しんでないのがうれしい。

『男はつらいよ』のタイトル前の夢芝居みたいなのが毎回数本入ってくるわけだから、撮る側もやる側も大変だ。

 

■小林の片想いは実るのか?

 体調を崩して対談に来れなかった小林が、幸子しかいない編集部に戻ってくる。

「佐々木さんに早く認めてもらいたいので」と、片想い丸出しの小林。

 対談すっぽかしたお詫びにと飯を誘うが、当然幸子は食べてきたからと断る。

 残念そうな小林に「デザートならまだ入ります」と幸子。

「デザートの美味しい店ですね」と生き返ったように検索しだす小林。

「さ、仕事がんばりますよ!」

「はい!」

 暗い編集部に佇む2人の背中でエンディング。

 なんか合ってるかわからないけど、これぞハッピーエンドという気持ちになりました。

 残りの回もあと少し。最近は小林の片想いぶりがハマっているので、そちら目線でも見てしまう。まったく小林の想いが届いていなさそうだったのに、今回のデザートのくだりはちょっとずるい。

 幸子、わかっててやってるのだろうか……? だとしたら、さじ加減が絶妙。また次回。
(文=柿田太郎)

『忘却のサチコ』サワークリームのような甘酸っぱい葉山奨之に母性を刺激される……今回はロシア料理!

 グルメだけにとらわれない新感覚グルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第8話は幸子(高畑充希)を想う後輩の気持ちが、さらに膨らんだ模様。振り返りましょう。

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■大和田伸也、ふたたび

 ライバル誌に大物作家・有村(大和田伸也)の作品掲載を奪われてしまった幸子が編集者を務める文芸誌「さらら」。担当編集者である小林(葉山奨之)がSNSで有村と接している知った編集長(吹越満)は、「ちゃんと会って話さないとコミュニケーション取ってることにならないでしょ?」と注意するが、「わざわざアポとって対面するのって非合理的じゃないですか?」と言い返す“ザ・イマドキノワカモノ”な小林。

 第3話でモンスター新入社員として登場した頃を彷彿とさせる。

 以前より社会人として「まとも」になったように見えていたが、先輩(幸子)との会話中に会社近くで長崎物産展をやっていたから買ったというカステラを広げ、食べ出すなど、相変わらずのマイペースぶり。

 そういえば初登場した時も会社の冷蔵庫を熊本名物「いきなり団子(だご)」で埋め尽くし幸子に注意されていた。

 おそらく意味はないのだろうが、やけに九州の銘菓ばかり食べてるのが気になる。

 

■長崎カステラで宮崎を思い出してしまう幸子

 小林の教育係で、かつ、有村の前・担当者だった幸子は「有村奪還」に向けて動き出すも、カステラ→長崎→九州→宮崎→俊吾さん(前回宮崎旅行中に再会した)と多少強引な連想ゲームで俊吾さん(結婚式当日に失踪した元・新郎=早乙女太一)を思い出し苦しむ。

 たまらず小林のカステラを一切れもらい、「忘却」を試みる幸子。何度もいうが、幸子は美味しいものを食べているときだけ俊吾のことを忘れられる体質だ。

 ザラメ砂糖の甘さや、ふわふわの食感に酔いしれる、そんな幸子を幸せそうに見つめる小林。彼は今、幸子に片思いしており、三角関係が形成されつつある。

 そんな小林の気持ちなどつゆ知らず、さっそくSNSの投稿から、4時間後にバー「ノクターン」に有村が現れると分析する探偵幸子。

 有村が「SNSに上げた写真のお店と日付と時間を全て書き出し、統計を取った結果」から割り出したという。それが実際当たっているからすごい。

 生真面目すぎる奇人ぶりがクローズアップされがちだが、社員として実にデキる人だ。

 

■王道の展開で光る母性キラー・葉山奨之

 そして、今回そんな幸子の「ライバル」として登場したのが、有村をたぶらかし作品掲載を奪ったライバル誌「月刊スピカ」の尾野(佐藤めぐみ)。

 オンナ丸出しでベタベタと接し、ホステスのように有村をたぶらかす尾野に対し、「今回の作品、物足りなく感じました」と気持ちをまっすぐにぶつける幸子。

 担当でもないくせにと尾野に詰め寄られるも、担当ではないが先生の作品を愛していると、曇りのない眼で真摯に訴える。

 それでいて「ファンである以前に編集者でありたいと思っています。作家の可能性を最大限に引き出すのが編集の仕事です。今回の作品に関しては書き直しをお願いしてもよかったのではないかと思っています」と踏み込む。

 怒ると思われた大物(有村)が、しっかり意見を言ってくれる主人公(幸子)を好意的に受け入れ、ライバル(尾野)が悔しがるという王道のパターン。

 危なっかしくも頼もしい幸子の活躍を、横でハラハラしながら見守る後輩・小林の目線がいい。

 葉山奨之は『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)で上手いんだか下手なんだかわからない悪人役で存在感を見せていたが、こういう少しダメなイマドキな若者役が一番ハマると思う。原作のイケメン小林よりもかわいさが強いのは、葉山だからだろう。なんというか、母性を刺激するオーラがにじみ出ている。

 そう言えば『モンテ・クリスト伯』でも、自分を赤ん坊の頃に生き埋めにした実の母・稲森いずみの母性を歪んだ形ではあるが刺激しまくっていた。

■鈍感なサチコ

 結局、有村から次回の作品掲載の約束を取り付けた幸子は、小林に誘われロシア料理の店に。いわば祝杯だ。

「注文は任せてもらっていいですか?」

「苦手なものとかないですか?」

 小林は片思いしてる幸子とご飯ができる幸せに満ち溢れている。吊り橋効果的なものもあったであろうから尚更だ。

 ピロシキを食べてみたいと考える幸子の気持ちを汲んで「ピロシキは絶対に頼みますね」と言う小林。驚く幸子。

「なんでわかったんですか、私が考えていること」

「それくらい、ちょっと考えたら誰でもわかります」

「みんなそうなんでしょうか……私は今まで相手が何を食べたいかなんて考えたことなかったです」

「僕だって普段はそうですよ」

 実は不器用な2人が、いつも以上に距離の近い会話を自然としてるのが微笑ましい。

 そしてさりげなく幸子への気持ちを口にしている小林だが、こういうことに鈍感な幸子にはまるで届かない。

 小林にはデート、幸子には食事なのだ。

 結局このときも、幸子は俊吾のことを思い出していた。それでも幸子を喜ばそうとメニューを説明する小林が健気だ。

 モンスター後輩だったくせに、感情移入させられるとは少し悔しい。

 

■怒涛のサワークリーム

 まずやってきた皿は「ペリメニ」。小麦粉の皮でひき肉を包んで茹でたロシアの水餃子とのこと。

 ロシアにも餃子が……と幸子は驚いていたが、中国の周りの国には、必ずと言っていいほど餃子っぽい料理が存在する。モンゴルには「ボーズ」という蒸し餃子、ネパールには「モモ」という水餃子が有名だからあの広大なロシアに餃子があるのも頷ける。

 ソースにサワークリームを使っているとのことだが、今回のこの店は「フランス風ロシア料理」とのことで、さらにラタトゥーユまで添えてある。

 フランス風ロシア料理だから馴染みやすいというニュアンスで紹介されていたが、ロシア料理どころかフランス料理すらまともに食べたことがない筆者的には、あまり響かず、なんならサワークリームと聞いてプリングルスのサワークリーム&オニオンを想像してしまう始末。お恥ずかしい。

 続いてピロシキやボルシチなど定番をたいらげ、そしてメインのビーフストロガノフが。

 ハヤシライスとは完全に別物の、でかいビーフがゴロゴロした豪華なやつから湯気が立ち込める。

 ここにもサワークリームが入ってるし、ボルシチにもしっかり添えられていた。日本でいう醤油とか味噌みたいな感覚なのだろう。

 厳密には、本来のロシア料理でよく使うのは「スメタナ」という発酵食品で、実はサワークリームとは別物らしく、こちらはこちらで気になる。ぜひプリングルスで出してほしい。

 一口食べる度に新しい味がどんどん出てくるこの味を「味のマトリョーシカ」を表現する幸子。

 美味しいもの食べている時の幸子は無言ながら、脳内は実に饒舌だ。今回は美味しすぎて幸子の背景にコサックダンスをする群勢が登場。この恒例になりつつある変な効果のシーン、大好きです。

 

■深まる俊吾の謎

 終盤、有村争奪戦に負け悔しがるライバル・尾野が「次会ったら絶対復讐してやる!」と叫ぶなど、割とオーソドックスな展開が目立った回だったが、気になるのはやはり俊吾さんの謎。

 幸子の回想によると、俊吾は入籍を決めていた日が一粒万倍日(一つのいいことが数万倍になるくらい幸運な日とされてる、入籍には大変適した日)だと知り、その日に悪いことをしたらどうなるのか気にしていた。幸子いわく「もちろん数万倍になります」とのことだが、その直後、何かを言おうとしてした俊吾。

 幸子に遮られそれは聞けなかったのだが、あのとき何を言おうとしていたのか? 幸子も今更ながら気にしていた。

 帰り際、本当はオールで幸子と過ごしたい気持ちが見え隠れする、まるでサワークリームのような甘酸っぱい小林と、駅まで急ごうとする何も感じていない幸子。

「本当はちょっと落ち込んでたんです。ありがとうございました。」

 と、理屈屋のくせに素直にしっかり礼をいう小林に、最後まで母性をつつかれる。筆者は中年男性なのに。

「小林さんが有村先生の最高傑作を持ってきてくれるのを楽しみに待っています。」

「早く佐々木さん(幸子)を安心させられるよう頑張ります。」

 こういうのを見せられると、小林と上手くいってほしいと素直に思ってしまう。無理だろうけど、まずは阿部先生(原作者)お願いします。

 そして、第9話には原作に忠実な、あのジーニアス黒田先生(池田鉄洋)が再登場。笑わせてくれつつもホロリとさせられそうな予感が……楽しみです。
(文=柿田太郎)

『忘却のサチコ』グルメドラマなのに展開が気になるなんて……ついに本物の“俊吾さん”が登場!

 高畑充希に笑い、泣かされ、腹まですかされる新感覚なグルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第7話となる今回は、前回の宮崎遠征の続編。友人の結婚式が行われた高級ホテル(シェラトン)で、かつて自身の結婚式の最中に失踪した元・新郎とばったり出くわした問題のシーンからスタートです。

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■幸子、男湯へ

 今まで何度か俊吾さん(元・新郎=早乙女太一)らしき人は登場してきた。しかしそれは幸子の妄想だったり見間違いばかりで、その都度幸子はザワつき、肩をそっと落としてきた。

 今回の「俊吾さん」は、ホテルのロビーを清掃する従業員。慌てた幸子は俊吾さんらしき人物を見失うまいと追いかけ、男湯にまで突入。あげくセグウェイに乗りながら「俊吾さああぁぁぁーーーん!」と松林で絶叫。その声量はカラスの群れが鳴きわめくほどで、おそらく演出というよりハプニング。

 俊吾さん本人か? と、やきもきする視聴者の気持ちを手玉に取るかのように面白シーンを畳み掛ける演出。ちなみにドラマ公式Twitterによると高畑は5分でセグウェイを乗りこなしたというから、お見事。

 

■マツコも夜更かしで食べたトウモロコシ

 結局、俊吾さんは見つからず、疲れ果てた幸子はホテルにて「宮崎の旬なお野菜スープ(月替り)」をオーダー。

 出てきたのは宮崎県産とうもろこし・ゴールドラッシュを使った冷製スープ。

 飲んだことないけど、絶対美味しいであろう黄金色に輝くその見た目。表面は白く泡立ちビールのよう。

 かつて、ゴールドラッシュを紹介していた『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)によると、その糖度は18度。調べてみるとメロンと同じで、イチゴやリンゴ、柑橘類よりは上だが、熟したバナナよりは下くらい。そもそも果物ではないし、茹で汁まで甘いというから、よっぽどだろう。

 そんな、マツコを唸らせた品種をサチコが飲み干す。

 冷たいスープを飲んでるのに、ほわぁ……っとあったかいスープを飲んだかのような吐息を吐く。それだけ沁みる美味さなのが伝わる。

 だが、いつものように生真面目を絵に描いたようなサチコ歩行(進行方向を直角に曲がる)で歩く幸子の顔は曇ったまま。

 美味しいものを食べているときだけ俊吾さんのことを忘れられるというのが、この物語の基本コンセプトなのに、それを揺るがしかねないピンチ。

 それを打開するためにか、タクシードライバー(温水洋一)に教えてもらったネオン輝く繁華街・ニシタチ通りに繰り出した幸子。お目当ては元祖もも焼き・丸万焼鳥本店という地元では誰もが知る人気店。

 

■鶏料理の最高峰・宮崎炭火焼

 宮崎名物・鶏の炭火焼特有の、あの業火の中で焼かれる肉を目の当たりにしたサチコは、

「もはや調理というよりも戦いではないですか…」

「わたし対……鶏!」

 と、徐々にヒートアップ。

「鶏のもも焼き」「鶏のタタキ」「鶏のモツ焼き」と「鶏3連戦!」に挑む。

 鶏のタタキは黄色い皮が炙られ脂が溶けかけながらもレアな肉の弾力はそのまま、歯ごたえを楽しみながら脂の旨味も味わえる一品。水で晒したらしき玉ねぎスライスとの相性も抜群で、幸子の顔に笑みが戻る。

 モツ焼きは口にいれると「風味が一気に広がってくる」という旨味の爆弾。

 たまらずビールを注文する幸子。初めて見かける、幸子、本心からのアルコールオーダー。

 そしていよいよ、もも焼きの登場。見た目はただの焦げ茶色のコマ切れが学食のような銀の皿に乗っているだけの無骨さ。

 タタキには玉ねぎ、モツ焼きには焼いたトマトやシシトウが添えられていたが、もも焼きにはメイン以外何もなし。

 逆に風格すら感じるたたずまい。

 筆者もこの料理が大好きで、鶏料理の中で一番だと勝手に決めている。塩だけの味付けなのに鶏の旨みが炭の風味で包まれて、思い出すだけでヨダレが湧く。

 幸子に至ってはヨダレどころか「暴れてる、誰かが口の中で暴れてる!」とUMAの存在を示唆するほどのハマり具合。

「同じ鶏からこれだけの味の違いを出せるなんて、なんて奥が深いの、鶏!」

 箸が止まらず満足そうな幸子の背景に、荒ぶる猿の群れを効果で入れ込むこのスタッフはなかなか頭おかしい。

 しかし、今回ばかりはグルメ以上に気になるのが俊吾さんは本人なのか問題。

■ついに、俊吾さん登場

 入浴後、牛乳を飲みながら幸せそうに佇むサチコの前に現れたのは、例の「俊吾さん」かもしれない従業員。

 結論からいうと、この俊吾さんは本人だ。気付いた幸子のすっぴんが固まる。

「す、すいません……」と気まずそうに立ち去ろうとするリアル俊吾さんを「あの……!」と呼び止め、ようやく絞り出た続く幸子の言葉が「……お元気でしたか?」。

 かつて24時間テレビで前人未到の200キロマラソンを終え、ゴールしたばかりのヘロヘロの間寛平に向かって「初めまして、裕木奈江です」と自己紹介を丁寧にかました女優・Yを一瞬思い出したが、それはさておき、ドラマを見続け保護者目線になってきてる我々視聴者には、この幸子の不器用さがたまらなく愛おしい。

 何を聞いても「ごめん」としか言わない俊吾さんに対し、

「お会いして早々大変お聞きにくいことをお尋ねしますが~」

「このようなことは申し上げたくはございませんが~」

 と、いつもの幸子より声をやや荒らげながらも、いつもながらの丁寧さを保持しようとする幸子に胸を打たれる。

「仕事が終わったらちゃんと全部話すから」と、0時に焚き火のあるリビング(ホテルのロビーにある)に来てくれと言い残し、俊吾は消えていった。

 夏の日に2人で花火をした記憶を蘇らせながら、焚き火を見つめる幸子。結局俊吾は来なかった。

 幸子の宿泊部屋のドアの下に置いてあった俊吾からの手紙。

「すまない。やはりまだあの日のワケを話すことはできない。ごめん」

 さらに「この手紙を読む頃にはもう僕はこのホテルにはいません。だから探したりはしないでください。本当にごめん。」とつらい内容が。

「どうして……なんで……」と俊吾さんを責めるような口調から一転、「なんでまた行っちゃうの……」と泣き声になるかならないかくらいの掠れた声を絞り出し、気持ちを決壊させ膝をつく幸子。

 我々が思っていた以上に幸子は俊吾さんのことが今でも好きだし、全然『忘却』なんてできちゃいなかった。

 いろいろ笑って見ていたあげく、それを少し申し訳ない気待ちにさせられるなんて、なんだか悔しい。

 その直後一発目のCMで「クリスマス、ケンタッキーにしない?」とパーティーバーレルを抱え笑顔で微笑む幸子、もとい高畑充希。

 もう炭火焼のことすら忘れてしまってるようで、それも悲しい。

 

■温水洋一が男前に

 眠れずに迎えた翌朝。

「こんなときにも」と腹の音が鳴る幸子は、訪れたうどん屋でタクシードライバーと再会。「行きましょ行きましょ」と店内へ連れ込まれる。

 根掘り葉掘り聞いてきたり、つまらない冗談を言ってきたり、リアルな生活で出会ったらきっと鬱陶しく感じてしまうタイプの人かもしれないが、一晩でいろいろ通過し、昨日とは違う景色を見てる幸子には、変わらず接してくる運転手のズケズケさが心地いいに違いない。

 2人で「天玉かうどん」をすする。

 丸天という蒲鉾を揚げた「天」。

 玉子の「玉」。

 天カスの「か」。

 で、「天玉か」。

 うどんの説明をしてくれるだけなのに、温水が昨日より男前に見える。

 讃岐より全然柔らかく、「腰ゼロのうどん」。

 讃岐ブームのおかげで、逆に大阪や福岡、宮崎の柔らかいうどんにも注目が集まるようになった。

「宮崎の人はこの柔らかくてあったかいうどんが大好きなんです。これ食べて、元気をつけて、こっから今日1日を始めるとですよ」

 人間は、口に入れたものからしか身体を作ることはできない。

 柔らかい麺をすすり、汁を飲む幸子は、今回は『忘却』していないように見えた。

 それは美味しくなかったからではなく、忘れずに生きていこうと決めたからではないか。

 そうなるとこの番組が成り立たなくなるのだが、それくらいいい顔をしていた。

 ちなみに原作漫画で俊吾さんと出くわすのは宮崎ではなく、岩手は花巻の湯治場。

 真実を話すからと約束した待ち合わせ時間は、0時ではなく朝の4時。

 さすがに明け方まで待たせて消えているんじゃ鬼畜すぎるから、早めの時間に変えたのだろうか。

 しかし、俊吾さんの、やはりまだ話せない「理由(ワケ)」とは何なのか?

 いつも思い出すのは、フニャコフニャ夫の「ライオン仮面」(ドラえもん)。結末を決めずに展開を引っ張る漫画家(フニャコ)が毎週連載の執筆に困る話だが、作者(阿部潤)は、どこまで見据えて俊吾さんのことを先延ばしにしてるのか心配になる。

 いや、そこを気にするタイプの漫画ではないのは百も承知だが、原作以上にいじらしく真っ直ぐなドラマの幸子に親心を抱くたびにそう思ってしまうのだ。

 俊吾はホテルの従業員仲間に、宮崎に来た理由を「大切な人を傷つけてしまって」(原作では裏切ってしまって)と言っていた。今でも「大切な人」であるのは本心だろう。

 そろそろ佳境を迎えるドラマ終盤、どうまとめるのか。

 原作は連載中だし、ドラマも好評なので、続編を作るためにまだ引っ張ると思われるが、どこまでを描くのか。

 グルメドラマで展開を気にすることになるなんて、悔しいけど続きが楽しみです。
(文=柿田太郎)

 

高畑充希、満島ひかり、早見あかり――食べる女性はなぜあんなにも美しいのか?

 高畑充希の主演ドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)が話題だ。

 出版社に勤務する佐々木幸子(高畑)が、結婚式当日に婚約者・俊吾(早乙女太一)に逃げられるという心の傷を負いながら、様々な食べ物によってそれを乗り越えていくという物語。漫画原作によるコミカルさと、融通が利かない幸子を演じた高畑の演技が見ものだが、なんと言っても一番の魅力は、彼女の食事シーンである。

 ひとつひとつの食材をゆっくりと口に運び、慈しむように味わう。おいしさを表現するモノローグのセリフや、CGを使った演出もいいが、高畑のうっとりとした表情が実に魅力的だ。おそらくは、演技だけでなく、本当においしいと思って食べており、その気持を表現に乗せているのではないかと思う。

 このような演技を見せるためには、いくつかの才能が必要である。

 まず、食べ物を「おいしい」と感じる“感性”だ。これはもしかすると、生まれついての能力、あるいは育ってきた環境によるかもしれない。鮮度の良さや、ちょっとした味付けの違いを感じ分ける舌を持っていないといけない。

 次に、“上品な食べ方”だろう。ただ単に空腹を満たすために、食べ物を口に詰め込むような雑な食べ方では、見ていてあまり気持ちのいいものではない。かと言って、少しずつちょこちょこと食べているのも味気ない。その絶妙な加減を心得ているのだ。演技指導はあるにせよ、食事という日常の行動に、その人の品位のようなものが表れると思う。

 最後に、その根底にある食物に対する“感謝の念”だ。おいしいものをおいしく食べ、自分の命が繋がっていく、その根源的な尊さを感じる気持ち。それは画面を通しても伝わるものだ。

 実は、この「美女と食べ物」系のドラマ、ここ数年で話題作が結構ある。

■後藤まりこ/ドラマ『たべるダケ』(テレビ東京系)

  2013年に放送された、ドラマ『たべるダケ』(テレビ東京系)。これは、とにかく魅力的な食べ方をする謎の女性・シズル(後藤まりこ)に魅了された男・柿野(新井浩文)が、彼女を追って騒動を巻き起こす物語。ロックミュージシャンでもあった後藤の食べっぷりは、まるで音楽をかき鳴らすような迫力と輝きに満ちていた。

 

■武田梨奈/ドラマ『ワカコ酒』シリーズ(テレビ東京系)

 15年から放送され、人気シリーズとなった『ワカコ酒』(テレビ東京系)は、落ち着いたグルメ作品だ。女優の武田梨奈が、主人公・村崎ワカコを演じている。26歳のOLワカコが、会社帰りに、美味い肴を食べながらひとり酒を楽しむというストーリーだ。

 武田の上品で、どこか庶民的な雰囲気が抜群にいい。ゆっくりと美味いつまみを食べ、最後には「ぷしゅー」というセリフと共に、幸せを噛みしめるといった具合だ。

■早見あかり/ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)

 同じく15年放送の『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)も、このカテゴリーだろう。とにかくラーメン好きの女子高生・小泉さん(早見あかり)が、タイトル通り、大好きなラーメンを食べ歩くというもの。

 この時の早見あかりの食べっぷりも見事だった。長い髪を後ろに束ね、手首をコキコキと鳴らしてからラーメンを食べる姿。哲学を持ってラーメンに挑んでいる主人公の思いを、見事に表現していた。彼女は、「ももいろクローバー」の一員として、多くの人の前でパフォーマンスをしてきた人だ。そんな経験がこの役に活きていたことは間違いないだろう。

 

 ■満島ひかり/「キリン一番搾り生ビール」CM

 最後に、ドラマではないが、「キリン一番搾り生ビール」のCMキャラクターを務めている満島ひかりも挙げておきたい。若い女性が一人で焼き肉を食べ、ビールをぐいっと飲む。最後の「あぁ、幸せ!」という時の表情も実にいい。彼女もまた、演技だけではなく、本当においしさを感じていることが伝わってくる。

 これらのドラマ・CMには、実は共通点がある。それは、多くの場合、「女性が一人で食事をしている」ということだ。

 女性というのは、友達や仲間と一緒に行動しがちだし、一昔前には、「女性が一人で食事なんかして……」という風潮があったことも事実だ。しかし、今はそんな時代ではない。女性だって男性と同じように一人で食事し、その幸せを味わえばいい。そもそも食べるという行為は、ごく個人的で孤独なものだ。

 作品で描かれた女性はみな、食事と真剣に向き合い、その何たるかを突き詰めていく。それは、「生きるための糧」かもしれないし、「人生を豊かにするためのもの」であるかもしれない。物語の中で、どこか生きづらさを感じている主人公たちは、「ものを食べる」という行為において開放される。そこにカタルシスが生まれるのである。

 それにしても、なぜ、美女が食事をする姿は、これほどまでに私達の心を惹きつけるのだろうか?

 それは、突き詰めていけば、食べるということが“生命の根源となる行為”だからではないだろうか。そもそも、なぜ男性が美しい女性に惹かれるのか、それはより優良な子孫を残すためだ。生まれながらに備わったものだと言っていい(もちろん容姿に限らず内面も含めてであるが)。

 一方、ものを食べるということも、本能的な欲求だ。その2つが合わさって、我々の目の前に提示されるのだ。それはもう、魅惑的なものに映って当然である。「美しい女性がおいしそうにものを食べる」というだけで、命を授けてくれた神への儀式のようにすら思えてくる。

 近年、大食いの女性タレントが人気であることも、その一端の表れではないかと思う。

「食べる姿が美しいのは名女優」ということもいえるだろう。真剣に食べ物と向き合うことによって、彼女たちはまた、自分自身とも向き合っているのである。

 これからも、見ていてお腹が空いてくるようなドラマが作られるとともに、それを見事に表現してくれる女性が現れることを期待したい。

 ただし、こんなに素敵な女性の食べっぷりばかり見ていると、若手の女性タレントが、食べ歩き番組などで「おいしい~」などと小さな口で頬張っている程度では満足できなくなってしまう。その点はご注意を!

(文=プレヤード)

高畑充希と温水洋一の2人旅『忘却のサチコ』美女と野獣で宮崎を食べまくる

 悲喜こもごもを織り交ぜた新感覚グルメドラメ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第6話は、我らが佐々木幸子(高畑充希)が友人の結婚式に参加するため単身宮崎遠征。美味しいものにまみれた宮崎を、まさかの温水洋一と旅するロードムービーになりました。

(前回までのレビューはこちらから)

■「けっこん」が言えないだけで面白い

 まずドラマ冒頭は、久しぶりとなるお母さん・和代(ふせえり)との親子コントからスタート。

 今回は宮崎に住む友人から結婚式へのお誘いのハガキが来たことで、出席すべきかどうかのやりとりが繰り広げられます。

「ああいうことがあったばかり」で「傷も癒えてない」のだから、無理に出席することはないと心配する和代。

 何度も言ってますが、幸子はかつて自分の式当日に新郎が失踪しており、その記憶を忘れるためにグルメに目覚めたという設定。

 式当日はあり得ないほど淡々と振る舞うも、やはりダメージは根深く、今までさまざまな美味しいものを食べて一時的に元新郎(俊吾さん=早乙女太一)を忘却してきたものの、今回はなんと「けっこん」という言葉が言えないという「後遺症」が判明。

 幸子は「もう傷は癒えてるから」と式へ参加の意向を伝えようとするも

「だからあゆみ(友人)のケッ、ケッ、ケ、クッ、コッ……コッ……ッ……(息が乱れ出す)」

「言えないの? もしかして言えない単語があるの……?!」

 心配する母・和代と、どうしても「けっこん」が言えない幸子のやりとりが、くだらなくも面白い。

「あゆみの……ケッ……ケッッ……ケゴス……!」

「ケゴスって何よおおおおお……!」

「けっこん」が言えないまま幸子は宮崎へ旅立ちます。

 

■機内から九州を満喫・アゴユズスープ

 機内のサービスドリンクに「アゴユズスープ」があるとわかるなり、すぐさまオーダーする幸子。もちろん無料だし、これは飲みたい。

 調べてみると、ソラシドエアのアゴユズスープは長崎県産アゴ出汁と大分県産柚子を使ったスープ、というかお汁で、機内販売もされてる模様。

 最近は全国的にお馴染みになってきたアゴとはトビウオのことで、長崎を中心に九州北部ではお雑煮もアゴ出汁で作る、まさにソウルフード。

 カツオ出汁ともいりこ(煮干し)出汁とも違うあの風味に柚子が加わるなんて、毎日飲みたい。きっとうどん入れても美味いはず。ちなみに長崎の五島うどんも、もちろんアゴ出汁。

 機内から九州気分が高まる幸子。

 

■温水洋一とチキン南蛮

 空港に到着し、タクシーに乗り込むも、ここでも「けっこん」の言葉が言えず「け……けこ……」とカエルみたいになってしまう悲しくもかわいい幸子。

 式までに症状を改善させるため、運転手(温水洋一)に宮崎グルメを案内してもらう。

 やけに宮崎弁が自然だと思ったら、温水は宮崎の都城市出身。そのまんま東国原元県知事と出身もフォルムも同じだとは。

 まずは地元の有名店「ふるさと料理・杉の子」でチキン南蛮と冷汁を賞味。

 本場のチキン南蛮はタルタルソースをケチらずぶっかけてるのが気持ちよく、なんならちょっとしたカレーくらいかかっている。

 ちなみに宮崎チキン南蛮にはタルタルなしで甘酢を通しただけで「チキン南蛮」とする流派(直ちゃん)と、甘酢を通した上でタルタルぶっかけ流派(おぐら)の2流派が存在する。

 タルタルなしも、それはそれで食べてみたい。

 今回はタルタルチキン南蛮だが、それを鼻息をふんふん鳴らせながら貪る幸子。ここまでハッキリと女優の鼻息を聞いたのは初めてかも……と、どうでもいいことに気付きながら、幸子の幸せそうな食べっぷりにこちらの腹も鳴る。

■冷汁に完熟マンゴーの畳み掛け

 そして「冷汁定食」到着。

 きゅうり塩もみ、崩した豆腐、みょうが、シソ大葉が入った冷汁を麦飯にぶっかけてすする。

 見た目は似てるものの「想像した『冷たいお味噌汁』とは全然違う」と驚く幸子。

 この店ではどうかわからないが、焼いたアジのほぐし身やゴマを味噌に加えてすり合わせ、それをすり鉢ごと直火で炙るのが「冷たいだけの味噌汁」にしないキモのようだ。

 さらに移動し、今度は店頭で完熟マンゴーを。切り口に格子状に切れ込みを入れて皮のついたままの裏側をボコッと押すと、身がボコッと出てくるあの切り方。

 太陽のタマゴというブランドマンゴーには、今年の初競りで2個40万の値がついたというから恐ろしい。

 よく高級食材に「食べる宝石」という例え方があるが、本当に宝石が買えるほどの値段。

 ドラマでは当たり前のように運転手がオーダーして幸子に食べさせていたが、安いのでも1個数千円はするはずなので、ケチな筆者はそこにドキドキしました。

 

■縁結びの地でダメージを受ける幸子

 失踪した元新郎のことを、またしても思い出してしまい、元気のなくなった幸子は、運転手に有名な観光名所・青島に連れて来られる。

 しかしそこは今や男女の縁結びとして名を馳せる地、傷口に塩を塗り込まれた幸子は「恥ずかしながら逃げてまいりました」と、横井庄一のように島から帰還する。こちらは徒歩でだが。

 青島は今はほぼ沿岸と地続きになりつつある小さな島で、中央に青島神社があるのだが、江戸時代中期までは神聖な場所のため一般人の参拝が禁じられていたという。

 そのころなら幸子がカップルの猛威に苦しめられることもなかったろうに。

 しかし、海岸で宝貝(コーヒー豆みたいなやつ)を探しだすと(本宮近くの場所に納めると)願いが叶うと教えられ、嫁ぐ友人のためにとフォーマルな装いのまま地べたに張り付き潮干狩り開始。

 友人の幸せのため必死に貝を探す姿は、変人だが純粋な幸子をよく表している。

 見つけた貝殻を友人にあげるのかと思いきや、所定の場所に納めて、初めて「願いが叶う」と聞き「神社側が適度に撒いてるのではないか?」と勘ぐってしまう筆者とは、えらい違いだ。

 しかもその「所定の場所」は狭く、明らかに宝貝ではない貝がてんこ盛りになっている。遠目に見ると、ほぼホタテ貝の山。

「旦那様とずっと幸せでありますように」と友人のために手を合わす幸子。

 ホタテの山を武田久美子のクローゼットとしか思えなかった筆者とはえらい違いだ。

 ちなみに青島に貝殻や砂が集まるのは、黒潮の本流と、四国に当たって跳ね返ってきた流れとの2つの海流がぶつかる場所だからとのこと。『ブラタモリ』で言ってました。

 

■幸子、実は魚に詳しい?

 その後、幸子はすぐそばの「港あおしま」という漁協直営の食堂で新鮮な刺身を味わうことに。

 昼の時間(11時から14時半)しかやっていないのが、なんかプロ御用達な感じがしてうれしい。海鮮定食が到着するも、数種の刺身の中からなんの説明を受けずとも「まずはカンパチ」と箸を伸ばす幸子。

 一目でブリともハマチとも悩まずカンパチと確定する幸子の目利きに驚く。メニューに書いてあったのだろうか……?

 さらに「次はヒラアジ」と続けざまに驚異の目利きを披露。

 アジだとはわかってもヒラアジだなんて切り身からはまずわからないと思うのだが、ガチで見分けてるとしたら、すごい。

 しかし刺身のヘリがピンと立つほど新鮮なのがよくわかる。

 九州特有の甘い醤油に一瞬驚きながらも、美味しく食べる幸子。これが漫画版の井之頭五郎(『孤独のグルメ』)なら食べながらも何かしらの文句を言いそうなものだが。

 湯引きハモ、タチウオも平らげ、一度は心折れかけた結婚式へ向かう決心を固める。

 シーガイアにあるシェラトンホテルの挙式会場にて、友人の目を見てしっかりと「結婚、おめでとう」と伝える幸子。言えました。一歩前進。

 しかししかし、式を終えロビーに出たことろで、またしても俊吾さんらしき人が従業員として働く姿を発見!

 もはや何度目なのか、この俊吾さん発見詐欺。

 なんとなく『母を訪ねて三千里』を思い出すこの構成。さて、次回こそ、次回こそは俊吾さんに出会えるのか?

 ちなみにこの「友人の結婚式のため遠征し、式前にタクシーで地元食を食べ回る」というエピソードは、原作においては香川が舞台となっており、うどんタクシーに乗り(実在するらしい)讃岐うどんを食べまくっている。セルフのうどんをすすりまくる高畑充希も、いつか見てみたい。
(文=柿田太郎)

モテ期到来の『忘却のサチコ』高畑充希の無防備さに、親心がうずきだす!?

 高畑充希演じる極度の堅物OL・佐々木幸子が、結婚式当日に新郎(俊吾さん=早乙女太一)に逃げられたという悪夢(現実)を忘れるため、グルメ道に目覚め邁進する飯テロコメディ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。幸子が慣れないコンパにデートに意欲的に挑戦した第5歩(第5話)を振り返ります。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■簡単に信じてしまう無防備な幸子

「新しい出会いしか過去の恋愛を忘れる方法はないと思うんですよねーワタシ」との持論を持つ同僚の“ザ・ゆるふわ女子”橋本(逢沢りな)に誘われ、合コンに参加することになった雑誌編集者・佐々木幸子(高畑充希)。

 幸子は絵に描いたような堅物なので、当然コンパになど参加しなさそうだが、根底は子どものように素直なので納得してしまうと実に素直に受け入れてしまう。

 今回も「新しい作家を見つけるためにたくさんの原稿を読むでしょ? 合コンも新しい恋を見つけるためのコンテストだと思えばいいんですよ」と橋本に提案され「合コンのコンはコンテストのコン」と簡単に納得しかけたほど。

 以前も池田鉄洋演じる人気作家(ジーニアス黒田)に原稿を依頼する際、コスプレで来たら考えてもいいと言われ、白昼の住宅地で即座に美少女キャラのコスプレを装着するなど、しっかりしているように見えてたまに無防備だ。

 今回はその危険な「素直さ」がいろいろと笑いを生み出す。

 いわば「コンパやデートに不慣れな人間が巻き起こすコント回」なのだが、締めるところは締めて魅せてくれます。

 

■コンパ中に会話をメモる生真面目さ

 ということで始まった3対3の合コン。こじゃれた店で早速乾杯。

「素敵なみなさんと出逢えたことにかんぱーい」「まずは自己紹介、じゃあ女子から!」と、仕切る男性陣はコンパ慣れしてる様子。

 幸子と橋本以外のとある女子ととある男子が同じ大阪出身とのことで盛り上がる一同。

 しかし幸子はテーブルの下で逐一その会話をメモ書きする。

 橋本に事前に受けたアドバイス《男子の自己紹介の内容をしっかり覚えておけば後々の会話で「覚えててくれたんだあ(ハート)」と好感度が上がる》を、幸子なりに実践しているのだ。

 しかし空気もクソも知ったこっちゃない真っ直ぐな幸子は、本領を発揮しだす。

「そちらの方(大阪出身の男子)、公平性を保つため、まず名前をお名乗りください」

「先ほどの発言、『関東人はコレやから』の『コレ』が何を指すのか不明瞭です。教えていただけますか?」

「『意味はない』でよろしいですか?」

 文字にするとドラマで見てた以上にヤベエ奴である。橋本がどんな思惑で幸子を誘ったのかイマイチわからなかったが(人数合わせ?)、こうなると絶対に呼んではいけない人員だ。

■へべれけに酔っ払う幸子

 さらに幸子は《相手と同じ飲み物を頼むと好印象を得られる》という同調行動を利用した橋本のアドバイスに従い、男女構わず、誰かが酒を注文するたびに同じものをオーダー。挙げ句、べろんべろんに酔っ払ってしまう。

「橋本しゃん、合コンのコンは混沌のコンなのれしゅね?」と橋本にへべれけの笑顔で微笑むぐでんぐでんの幸子。

 この極度の不器用さ、ここまでくるとある意味「男性が守ってあげたくなる、男性に都合のいい理想の女子」だ。しかも見た目は高畑充希。危険な男が一方的に深くハマって来そうで心配だが、そこに現れたのは遅れて到着した関西弁イケメン男子・梶(清原翔)。

「すきっ腹で飲むからや(笑)」「なんか食い行かへん?」

 店でうたた寝てして、一人取り残された幸子を屋台へと連れ出す梶。

 しかし関西弁と言うのは会話の距離を詰めるのが早い。賛否はあるだろうが、コンパのためにあるような言語だ。

 

■揚げパンで思い出す記憶

 結論から言うと、梶は小学校まで幸子と同じで(中学で関西に転校)、幸子は忘れて途中まで気づかなかったものの、当時片思いしていたという梶はどんどん幸子にアプローチをかける。

 まず連れて行った先が揚げパン屋台という実にニッチなスポット。わからないが、とにかくモテそうなチョイスだ。

 目の前で油で揚げられ、きな粉の中を転がされたコッペパンが美味くないわけがない。

 幸子は「給食の中で一番好きだった」「懐かしさがこみ上げてくる」と、きな粉をまぶした揚げパンを頬張っていたが、筆者が子どもの頃、給食で出てきた揚げパンは砂糖オンリーがまぶされたもの。筆者は東京だが、地域によって違うのだろうか?

「揚げパンて戦後にできた東京の給食のメニューなんやて。お腹すかせた子らのためにこんな美味いもん考えるなんて、ええ人やったんやろな、給食のおばちゃん(笑)」

 梶が揚げパンを齧りながら言ったセリフだが、地域の話はさて置き、実際これをリアルで言われたら「こいつ毎回この手口で女落としてるな?」と勘ぐってしまいそうなほど小慣れた言い回し。イチゴ牛乳を同時に差し出す手口にも「常習性」を感じるが、それ以上に気になったのが「関西発祥じゃないんかい」というところ。昔の東京のちょいといい話をバリバリの関西弁で語っているところに少々笑ってしまった。

 揚げパンを食べて子どもの頃を思い出していた幸子は、梶が小学校の時のあの「梶くん」だと、ようやく認識する。が、その時の「梶くんですか?」の言い方が、かつてのさくらんぼブービー(芸人)のネタ「カジくんだよね?」彷彿とさせた。懐かしい。

 かつての思い出を喚起させるために揚げパンをチョイスしたのだとしたら、梶はやはり相当なやり手だ。しかも全て自然にこなしている。

 さらに幸子が気づいたこのタイミングで「俺の初恋の人やし」と、さりげなく告白するあたりも手練れすぎている。あの、結婚式にて新郎(俊吾さん)が失踪してもさほど動じなかった幸子が、今回片膝をつくほどよろけていたし。梶くん、恐るべし。

 

■それでも俊吾さんを忘れられない

 なんだかんだで2人はデート(横浜・ズーラシア)するのだが、幸子は橋本にコーディネートされたらしく真っ白なロリータファッション。普段、オバケのQ太郎並みに同じデザインのリクルートスーツしか着ていないのに、この受け入れ方は、やはり無防備。

 ここでも橋本のモテ・アドバイスに従い、

・さりげなくボディタッチ→猿の毛繕いを真似て背中を不審に撫でるのみ

・会話で相手を否定しない→冗談を言われても突っ込まない

・うわ目使い→ヤンキーのメンチ切り

 と、順調に奇人ぶりを積み上げていく幸子。しかし基本、幸子に好意を持ってる梶くんはダメージを受けない。

 だが、幸子はヤマアラシに似てると言われ(これでもかというくらい身を守ってるところが……らしい)、失踪した俊吾さんを思い出してしまう。俊吾さんには、ゆっくり前進するという理由で幸子は亀に似てると言われていたのだ。ささいなことから開いてしまう記憶の扉。

「実は私、婚約者に逃げられてしまって、今もその人のことが忘れられず、少しでも前に進めるかと思っていたところ梶くんにお誘いいただきまして、それで……」

 全てを打ち明けてしまった幸子と、初めて顔を強張らせる梶。

 無言での気まずい帰り道「私、最低だ……」と、どっぷり凹む幸子。だがこんなに人間臭い感情を見せる幸子は初めてで、逆に少し安心してしまう。

 

■結局ナポリタンで忘却

 別れ際の喫茶店で、梶が幸子に食べさせたのは玉ねぎやピーマンゴロゴロ入った昔ながらのナポリタン。隠し味にシイタケやイカ、そしてベーコンとソーセージの肉っ気そろい踏み。味付けにケチャップだけじゃなくトマトも入れることでコクが出しているという。

 先ほどまでの気まずさも忘れ、美味そうに爆食いする幸子。もうその目には俊吾さんも梶くんも映っていない。ただただナポリタンの美味さに酔いしれる。

 タバスコや粉チーズを見つけるたびに目を輝かせて味変えを楽しみ、タバスコをかける際には下顎を突き出し猪木の顔真似まで披露(タバスコを日本に輸入したのはアントニオ猪木)する徹底ぶり。

 ここで最後についてくるコーヒーが飲めないからと勘定を済ませ、立ち去ろうとする梶。

「最後くらいカッコつけさせろや~。俺、待っとるから、佐々木がその婚約者っつう奴のこと忘れられるまで。忘れられたら、一番先に連絡してきてや」

 俊吾さんを忘れられない幸子を想っての実にかっこいい引き際なのだが、悲しいかな幸子が俊吾さんを忘却した際には、梶くんのことも跡形もなく忘却しているはず……。今さっきのナポリタンがそうさせたように。

 原作では、梶くんはもっと少年のような、いかにも恋が実らなそうな「いい人」感の強いキャラだったのだが、ドラマではリアルにイケメンになっていたので、幸子が本気で恋に落ちるのではと見ていてヒヤヒヤしてしまう。

 いや、落ちてもいいのだけど、どこか親心のような気持ちで見守ってしまうのは高畑マジックなのだろうか。

 しかも今回ラストに、前回登場したモンスターなイマドキ新入社員・小林(葉山奨之)が幸子に恋心を抱き出していることが判明し、幸子は完全にモテ期到来。親心がうずきます。

 今回も前回に引き続き狗飼恭子脚本に根本和政監督のペア。このコンビは必ずグッとくるいいシーンを入れてくる。

 今回は、幸子がヤマアラシに似てるというどうでもいい会話の流れで、かつての男(俊吾さん)を思い出してしまったり、正直に話しすぎて梶を傷つけたのでは? と幸子が落ち込んでしまったり。その辺だけやけに描写がリアルだ。

 ここにさらにグルメや面白パートが配置されるのだから、30分ではとても足りないはずだが、このドタバタくらいのペースがモタつかず深夜的に見やすいのかもしれない。

 次回はなんと宮崎ロケ。三崎以上の大遠征で、幸子は何を食べるのか? そして俊吾さんがまたしても登場。果たして今回こそ本人なのか? 楽しみです。
(文=柿田太郎)

モテ期到来の『忘却のサチコ』高畑充希の無防備さに、親心がうずきだす!?

 高畑充希演じる極度の堅物OL・佐々木幸子が、結婚式当日に新郎(俊吾さん=早乙女太一)に逃げられたという悪夢(現実)を忘れるため、グルメ道に目覚め邁進する飯テロコメディ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。幸子が慣れないコンパにデートに意欲的に挑戦した第5歩(第5話)を振り返ります。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■簡単に信じてしまう無防備な幸子

「新しい出会いしか過去の恋愛を忘れる方法はないと思うんですよねーワタシ」との持論を持つ同僚の“ザ・ゆるふわ女子”橋本(逢沢りな)に誘われ、合コンに参加することになった雑誌編集者・佐々木幸子(高畑充希)。

 幸子は絵に描いたような堅物なので、当然コンパになど参加しなさそうだが、根底は子どものように素直なので納得してしまうと実に素直に受け入れてしまう。

 今回も「新しい作家を見つけるためにたくさんの原稿を読むでしょ? 合コンも新しい恋を見つけるためのコンテストだと思えばいいんですよ」と橋本に提案され「合コンのコンはコンテストのコン」と簡単に納得しかけたほど。

 以前も池田鉄洋演じる人気作家(ジーニアス黒田)に原稿を依頼する際、コスプレで来たら考えてもいいと言われ、白昼の住宅地で即座に美少女キャラのコスプレを装着するなど、しっかりしているように見えてたまに無防備だ。

 今回はその危険な「素直さ」がいろいろと笑いを生み出す。

 いわば「コンパやデートに不慣れな人間が巻き起こすコント回」なのだが、締めるところは締めて魅せてくれます。

 

■コンパ中に会話をメモる生真面目さ

 ということで始まった3対3の合コン。こじゃれた店で早速乾杯。

「素敵なみなさんと出逢えたことにかんぱーい」「まずは自己紹介、じゃあ女子から!」と、仕切る男性陣はコンパ慣れしてる様子。

 幸子と橋本以外のとある女子ととある男子が同じ大阪出身とのことで盛り上がる一同。

 しかし幸子はテーブルの下で逐一その会話をメモ書きする。

 橋本に事前に受けたアドバイス《男子の自己紹介の内容をしっかり覚えておけば後々の会話で「覚えててくれたんだあ(ハート)」と好感度が上がる》を、幸子なりに実践しているのだ。

 しかし空気もクソも知ったこっちゃない真っ直ぐな幸子は、本領を発揮しだす。

「そちらの方(大阪出身の男子)、公平性を保つため、まず名前をお名乗りください」

「先ほどの発言、『関東人はコレやから』の『コレ』が何を指すのか不明瞭です。教えていただけますか?」

「『意味はない』でよろしいですか?」

 文字にするとドラマで見てた以上にヤベエ奴である。橋本がどんな思惑で幸子を誘ったのかイマイチわからなかったが(人数合わせ?)、こうなると絶対に呼んではいけない人員だ。

■へべれけに酔っ払う幸子

 さらに幸子は《相手と同じ飲み物を頼むと好印象を得られる》という同調行動を利用した橋本のアドバイスに従い、男女構わず、誰かが酒を注文するたびに同じものをオーダー。挙げ句、べろんべろんに酔っ払ってしまう。

「橋本しゃん、合コンのコンは混沌のコンなのれしゅね?」と橋本にへべれけの笑顔で微笑むぐでんぐでんの幸子。

 この極度の不器用さ、ここまでくるとある意味「男性が守ってあげたくなる、男性に都合のいい理想の女子」だ。しかも見た目は高畑充希。危険な男が一方的に深くハマって来そうで心配だが、そこに現れたのは遅れて到着した関西弁イケメン男子・梶(清原翔)。

「すきっ腹で飲むからや(笑)」「なんか食い行かへん?」

 店でうたた寝てして、一人取り残された幸子を屋台へと連れ出す梶。

 しかし関西弁と言うのは会話の距離を詰めるのが早い。賛否はあるだろうが、コンパのためにあるような言語だ。

 

■揚げパンで思い出す記憶

 結論から言うと、梶は小学校まで幸子と同じで(中学で関西に転校)、幸子は忘れて途中まで気づかなかったものの、当時片思いしていたという梶はどんどん幸子にアプローチをかける。

 まず連れて行った先が揚げパン屋台という実にニッチなスポット。わからないが、とにかくモテそうなチョイスだ。

 目の前で油で揚げられ、きな粉の中を転がされたコッペパンが美味くないわけがない。

 幸子は「給食の中で一番好きだった」「懐かしさがこみ上げてくる」と、きな粉をまぶした揚げパンを頬張っていたが、筆者が子どもの頃、給食で出てきた揚げパンは砂糖オンリーがまぶされたもの。筆者は東京だが、地域によって違うのだろうか?

「揚げパンて戦後にできた東京の給食のメニューなんやて。お腹すかせた子らのためにこんな美味いもん考えるなんて、ええ人やったんやろな、給食のおばちゃん(笑)」

 梶が揚げパンを齧りながら言ったセリフだが、地域の話はさて置き、実際これをリアルで言われたら「こいつ毎回この手口で女落としてるな?」と勘ぐってしまいそうなほど小慣れた言い回し。イチゴ牛乳を同時に差し出す手口にも「常習性」を感じるが、それ以上に気になったのが「関西発祥じゃないんかい」というところ。昔の東京のちょいといい話をバリバリの関西弁で語っているところに少々笑ってしまった。

 揚げパンを食べて子どもの頃を思い出していた幸子は、梶が小学校の時のあの「梶くん」だと、ようやく認識する。が、その時の「梶くんですか?」の言い方が、かつてのさくらんぼブービー(芸人)のネタ「カジくんだよね?」彷彿とさせた。懐かしい。

 かつての思い出を喚起させるために揚げパンをチョイスしたのだとしたら、梶はやはり相当なやり手だ。しかも全て自然にこなしている。

 さらに幸子が気づいたこのタイミングで「俺の初恋の人やし」と、さりげなく告白するあたりも手練れすぎている。あの、結婚式にて新郎(俊吾さん)が失踪してもさほど動じなかった幸子が、今回片膝をつくほどよろけていたし。梶くん、恐るべし。

 

■それでも俊吾さんを忘れられない

 なんだかんだで2人はデート(横浜・ズーラシア)するのだが、幸子は橋本にコーディネートされたらしく真っ白なロリータファッション。普段、オバケのQ太郎並みに同じデザインのリクルートスーツしか着ていないのに、この受け入れ方は、やはり無防備。

 ここでも橋本のモテ・アドバイスに従い、

・さりげなくボディタッチ→猿の毛繕いを真似て背中を不審に撫でるのみ

・会話で相手を否定しない→冗談を言われても突っ込まない

・うわ目使い→ヤンキーのメンチ切り

 と、順調に奇人ぶりを積み上げていく幸子。しかし基本、幸子に好意を持ってる梶くんはダメージを受けない。

 だが、幸子はヤマアラシに似てると言われ(これでもかというくらい身を守ってるところが……らしい)、失踪した俊吾さんを思い出してしまう。俊吾さんには、ゆっくり前進するという理由で幸子は亀に似てると言われていたのだ。ささいなことから開いてしまう記憶の扉。

「実は私、婚約者に逃げられてしまって、今もその人のことが忘れられず、少しでも前に進めるかと思っていたところ梶くんにお誘いいただきまして、それで……」

 全てを打ち明けてしまった幸子と、初めて顔を強張らせる梶。

 無言での気まずい帰り道「私、最低だ……」と、どっぷり凹む幸子。だがこんなに人間臭い感情を見せる幸子は初めてで、逆に少し安心してしまう。

 

■結局ナポリタンで忘却

 別れ際の喫茶店で、梶が幸子に食べさせたのは玉ねぎやピーマンゴロゴロ入った昔ながらのナポリタン。隠し味にシイタケやイカ、そしてベーコンとソーセージの肉っ気そろい踏み。味付けにケチャップだけじゃなくトマトも入れることでコクが出しているという。

 先ほどまでの気まずさも忘れ、美味そうに爆食いする幸子。もうその目には俊吾さんも梶くんも映っていない。ただただナポリタンの美味さに酔いしれる。

 タバスコや粉チーズを見つけるたびに目を輝かせて味変えを楽しみ、タバスコをかける際には下顎を突き出し猪木の顔真似まで披露(タバスコを日本に輸入したのはアントニオ猪木)する徹底ぶり。

 ここで最後についてくるコーヒーが飲めないからと勘定を済ませ、立ち去ろうとする梶。

「最後くらいカッコつけさせろや~。俺、待っとるから、佐々木がその婚約者っつう奴のこと忘れられるまで。忘れられたら、一番先に連絡してきてや」

 俊吾さんを忘れられない幸子を想っての実にかっこいい引き際なのだが、悲しいかな幸子が俊吾さんを忘却した際には、梶くんのことも跡形もなく忘却しているはず……。今さっきのナポリタンがそうさせたように。

 原作では、梶くんはもっと少年のような、いかにも恋が実らなそうな「いい人」感の強いキャラだったのだが、ドラマではリアルにイケメンになっていたので、幸子が本気で恋に落ちるのではと見ていてヒヤヒヤしてしまう。

 いや、落ちてもいいのだけど、どこか親心のような気持ちで見守ってしまうのは高畑マジックなのだろうか。

 しかも今回ラストに、前回登場したモンスターなイマドキ新入社員・小林(葉山奨之)が幸子に恋心を抱き出していることが判明し、幸子は完全にモテ期到来。親心がうずきます。

 今回も前回に引き続き狗飼恭子脚本に根本和政監督のペア。このコンビは必ずグッとくるいいシーンを入れてくる。

 今回は、幸子がヤマアラシに似てるというどうでもいい会話の流れで、かつての男(俊吾さん)を思い出してしまったり、正直に話しすぎて梶を傷つけたのでは? と幸子が落ち込んでしまったり。その辺だけやけに描写がリアルだ。

 ここにさらにグルメや面白パートが配置されるのだから、30分ではとても足りないはずだが、このドタバタくらいのペースがモタつかず深夜的に見やすいのかもしれない。

 次回はなんと宮崎ロケ。三崎以上の大遠征で、幸子は何を食べるのか? そして俊吾さんがまたしても登場。果たして今回こそ本人なのか? 楽しみです。
(文=柿田太郎)

土屋太鳳、高畑充希、葵わかな、作品はヒットしたのに……朝ドラ出身女優たちが嫌われるワケ

 “朝ドラヒロイン”といえば、国民の娘的な存在として、出演後は人気に火がつくのが今までの通例。ヒロインを担当した女優は、その後は国民を味方につけ、CMやドラマに引っ張りだこになるといった大きな飛躍が約束されているものだ。

 しかし昨今、そんな朝ドラヒロインたちが持っていたはずの“好感度”にある変化が見られているという。

「朝ドラのヒロインになったからといって、誰でも国民的な人気を得られる時代じゃなくなってきたということですよね」と語るのは、芸能プロダクション勤務のA氏。

「近年、朝ドラヒロインとしての不動の人気を勝ち取った女優といえば、事務所騒動があったとはいえ、独立した今もCM出演などでおおいに稼いでいる能年玲奈。現在も彼女と『あまちゃん』で演じた天野アキの役柄を重ねあわせ、カリスマ視するファンも多い。しかし、彼女の成功の裏で、好感度の無さに苦しむ者も多いといいます」(同上)

 現在活躍する朝ドラヒロイン出身の女優といえば、『あさが来た』の波留、『べっぴんさん』の芳根京子、『とと姉ちゃん』の高畑充希、『まれ』の土屋太鳳、そして『わろてんか』の葵わかななどがいる。この中で「女性から圧倒的に好感度が低い」とA氏が断言するのが土屋太鳳、高畑充希、葵わかなの3人だ。

「土屋さんはとにかく“過剰なイイ子キャラ”が女子から嫌われています。土屋さんはとにかく感激屋でよく泣く。これまでの映画に関する会見やイベントでも、共演者からの手紙や誕生日ケーキのプレゼントなど、サプライズを仕掛けられるたびに号泣。男性からすればかわいらしくみえますし、実際、映画『青空エール』で共演した竹内涼真さんは土屋さんの涙を拭ったり『太鳳ちゃんに惚れました』と言うなどメロメロ状態。事務所は土屋さんについて、これ以上イベントで男性俳優と絡ませると女性用のCMに出られなくなると危惧していると聞きました」(同上)

 また、同じく女性からの支持が急降下しているのが高畑充希。高畑が女性に嫌われる理由は、その高い演技力と堂々とした態度だというから驚きだ。

「高畑さんはミュージカル出身で歌はうまい、子役あがりで演技もうまい、バラエティ番組では物怖じしないという実力派。しかし、その何でもできるところが同世代から見ると“鼻につく”のだとか。ネットでは特に20代の女性から『自分がうまいと思っている演技』だとか『小柄だし庶民的な顔立ちなのに、イイ女ぶってるのがいけ好かない』と散々です」(同上)

 最後に、『わろてんか』でヒロインを演じ終えたばかりの葵わかな。彼女に関しては「典型的な美人顔」と「優等生キャラ」が女性受けしない理由なのだという。

「同性から支持がある女優というのは特徴のある顔だったり、オシャレな雰囲気といった“トンがった”部分があるもの。しかし葵さんは目鼻立ちが整った典型的な美人顔。加えて元アイドルゆえ、笑顔の作り方も完璧。枠からハミ出さない優等生的なキャラや演技に個性を感じないなど、芸能界では“パッとしなかった朝ドラヒロイン”認定されています。葵さんが女性からの支持を得るためには、実は慶應義塾大学の学生だったり、宝塚好きだったりといった個性を全開にしていかないといけないと思いますね」(同上)

 せっかく朝ドラヒロインというチャンスに恵まれたのに、同性からの好感度は今ひとつだという3人。意識的にキャラを変えないかぎり、“国民的人気”を得るのは難しい!?