新たな珍スポットを求め韓国北東部の町、麟蹄(インジェ)郡を訪れた。韓国の基礎自治体(市町村)で人口密度が最も低く、北朝鮮との軍事境界線も有する最果ての町だ。そんな田舎の町に2年前、観光誘致のためになぜかマリリン・モンローの銅像が登場し、ネットで話題を集めているという。
ソウルから麟蹄までバスで1時間30分。古びたバスターミナルを出るとそこは町の目抜き通りだが、建物は低く空はどこまでも高い。500mほどのその通りを行って帰ってくる間に、軍服を着た若者たちの姿をたびたび見かけた。これぞ、北朝鮮に近い町ならではの風景だろう。
観光案内所で豆腐料理の店を教えてもらい、むちゃくちゃ辛くてクセになる豆腐鍋を堪能した後、川沿いにあるというモンロー像を探しに向かった。
ちなみに観光案内所で配布していた観光パンフレットは、マリリン・モンロー像については何も触れていなかった。ネットで検索しても位置情報が現れなかったため、実際に訪れた人のブログの写真を参考に、だいたいのあたりを付けて歩いてみた。
町の中心地から20~30分ほど歩くと、やがて集落の端っこに到着。そこから先は家ひとつなく、あるのは山と川と自動車ばかりだ。川の方へ降りていくと、雄大な自然に囲まれた、人っ子ひとりいない公園が。
もしやと思い目を凝らすと、その中心にポツーンと小さく銅像が立っているではないか。土手を下ってそちらに駆け寄ってみる。
大きさはたぶん等身大、造形は実にリアル。ロングスカートが大胆にめくれているのに、笑顔を絶やさないそのお姿は、間違いなくマリリン・モンローその人だ。
……と言いつつ、あらためてお顔をじっくり眺めると、だんだんマリリン・モンローがこんな顔だったかどうかわからなくなってきて、むしろ実写版『サザエさん』? と心が揺れてくる。

こんな閑散とした場所でパンチラを披露し続けなければならないマリリン・モンローの気分とは、一体どういうものだろう
銅像の裏には説明が掲げられていた。作品名は『マリリン・モンロー in麟蹄』。1954年、麟蹄郡にあった米軍基地にマリリン・モンローが実際に訪れ、慰問公演を行ったことを記念し建てたのだという。
しかし、ネット上では「血税の無駄遣い」と散々な言われようだ。報道によると、この銅像だけの製作費で5,500万ウォン(約500万円)。マリリン・モンローが麟蹄に来たといっても米軍に会いに来ただけなので地域との関連は薄く、何よりなぜこんなエッチなポーズなのかと、大いに叩かれている。町の観光パンフレットに登場しないのも仕方ない話だ。
とはいえ、珍スポ趣味者の私は思う。自然に囲まれてマリリン・モンローのパンチラに対峙するというのも、なかなかのわびさびではないか。
夏草や兵どもが夢の跡――私が芭蕉より早く生まれていたら、マリリン・モンロー像を前にこう詠み、歴史に名を刻んだだろう。
無駄に風流な余韻を残し、次なる珍スポへと向かった。そこは最果て麟蹄郡のさらに最深部、隣町との境界の山奥に位置する、性なるパワースポットだ。
●マリリンモンロー像
住所 江原道麟蹄郡麟蹄邑南北里