韓国の山奥で伝説のパンチラに出会う「金のマリリン・モンロー像」

 新たな珍スポットを求め韓国北東部の町、麟蹄(インジェ)郡を訪れた。韓国の基礎自治体(市町村)で人口密度が最も低く、北朝鮮との軍事境界線も有する最果ての町だ。そんな田舎の町に2年前、観光誘致のためになぜかマリリン・モンローの銅像が登場し、ネットで話題を集めているという。

 ソウルから麟蹄までバスで1時間30分。古びたバスターミナルを出るとそこは町の目抜き通りだが、建物は低く空はどこまでも高い。500mほどのその通りを行って帰ってくる間に、軍服を着た若者たちの姿をたびたび見かけた。これぞ、北朝鮮に近い町ならではの風景だろう。

 観光案内所で豆腐料理の店を教えてもらい、むちゃくちゃ辛くてクセになる豆腐鍋を堪能した後、川沿いにあるというモンロー像を探しに向かった。

 ちなみに観光案内所で配布していた観光パンフレットは、マリリン・モンロー像については何も触れていなかった。ネットで検索しても位置情報が現れなかったため、実際に訪れた人のブログの写真を参考に、だいたいのあたりを付けて歩いてみた。

 町の中心地から20~30分ほど歩くと、やがて集落の端っこに到着。そこから先は家ひとつなく、あるのは山と川と自動車ばかりだ。川の方へ降りていくと、雄大な自然に囲まれた、人っ子ひとりいない公園が。

 もしやと思い目を凝らすと、その中心にポツーンと小さく銅像が立っているではないか。土手を下ってそちらに駆け寄ってみる。

 大きさはたぶん等身大、造形は実にリアル。ロングスカートが大胆にめくれているのに、笑顔を絶やさないそのお姿は、間違いなくマリリン・モンローその人だ。

……と言いつつ、あらためてお顔をじっくり眺めると、だんだんマリリン・モンローがこんな顔だったかどうかわからなくなってきて、むしろ実写版『サザエさん』? と心が揺れてくる。

こんな閑散とした場所でパンチラを披露し続けなければならないマリリン・モンローの気分とは、一体どういうものだろう

 銅像の裏には説明が掲げられていた。作品名は『マリリン・モンロー in麟蹄』。1954年、麟蹄郡にあった米軍基地にマリリン・モンローが実際に訪れ、慰問公演を行ったことを記念し建てたのだという。

 しかし、ネット上では「血税の無駄遣い」と散々な言われようだ。報道によると、この銅像だけの製作費で5,500万ウォン(約500万円)。マリリン・モンローが麟蹄に来たといっても米軍に会いに来ただけなので地域との関連は薄く、何よりなぜこんなエッチなポーズなのかと、大いに叩かれている。町の観光パンフレットに登場しないのも仕方ない話だ。

 とはいえ、珍スポ趣味者の私は思う。自然に囲まれてマリリン・モンローのパンチラに対峙するというのも、なかなかのわびさびではないか。

 夏草や兵どもが夢の跡――私が芭蕉より早く生まれていたら、マリリン・モンロー像を前にこう詠み、歴史に名を刻んだだろう。

 無駄に風流な余韻を残し、次なる珍スポへと向かった。そこは最果て麟蹄郡のさらに最深部、隣町との境界の山奥に位置する、性なるパワースポットだ。

●マリリンモンロー像                     
住所 江原道麟蹄郡麟蹄邑南北里

人気韓流スターの実父が勝手に自宅公開「ソン・ジュンギ生家」

 甘いマスクで日本にもファンの多い韓流スター、ソン・ジュンギ。2016年に主演を務めたドラマ『太陽の末裔』で大ブレイク、さらに同ドラマでヒロインを演じた人気女優、ソン・ヘギョと電撃結婚するなど、国民の注目を集めまくる若手トップ俳優だ。とある地方自治体が町おこしとして、ふたりがキスする銅像まで建ててしまったと聞けば、彼の人気がどれほどのものか自ずとわかるだろう。

 さらには結婚生活2年後の今年6月、今度は電撃離婚まで成し遂げてしまうのだが(銅像台なし)、全部含めてさすがソン様、私たち凡人はそこにシビレる憧れるのである。

 そんな大スター、ソン・ジュンギの生まれた家がなんと、そこに住む実の父親により公開されているという。トップスターのプライバシーが、そんなに簡単に開放されていいものなの?

 大統領を筆頭に活躍中の偉人の生まれた家が、周囲の人々の思惑により観光地化されてしまうのは韓国ではよくあることだが、まだ先の長い若手俳優も標的になるなんて……。何はともあれ有名人のプライバシーをのぞいてみたい私、さっそく足を運んでみた。

 ソン・ジュンギ生家は、韓国5番目の規模の地方都市・大田(テジョン)市の山奥にあった。地下鉄の終点駅から、約70分に1本やってくるバスに乗り20分。草木生い茂る、夏休み感あふれるバス停で下車し、来た道を少し戻ると、垣根に色あせた垂れ幕がずらりと並ぶ庭付き一戸建てが現れた。間違いなくここがソン・ジュンギ生家だ。

 半開きの門をくぐると、作業中のおじさん2名が私を迎えてくれた。ひょっとしてソン・ジュンギのお父様……? と思い聞いてみたが、単なる友達だとのこと。お父様は外出中だそうで、ひとまず外観だけじっくり拝見させていただくことに。

 敷地を贅沢に使った平屋の住まい。度肝を抜くのが、テラスにずらりと並ぶソン・ジュンギの等身大立て看板だ。その数ざっと20体はあり、お父様の過剰なサービス精神を感じずにはいられない。

そして何より気になるのが、8月というのにどのソン様もサンタ帽をかぶっているということだ。サンタの足の間をくぐらせる、浮かれたエントランスもヤバい。このクリスマスへの執着ぶりは、いったいなんなんだ?

 意を決して玄関を開けてみようとするが、鍵がかかっていて中に入れなかった。

扉の横には張り紙があり、「こんにちは! 俳優ソン・ジュンギの父です。ご訪問を歓迎します。外出中ですのでご用の方は電話してください」と携帯番号まで表示してある。息子の事務所の許可を得ているとは思えない、尋常ではないウェルカムっぷりである。

 ちなみに韓国人のブログによると、扉の向こうにはテラス以上の物量のソン・ジュンギグッズが鎮座し、ファンがメッセージを書き込めるノートも準備されているそう。

 そのブログを見た時、ここは「尾崎ハウス」かと思った。亡くなる直前の尾崎豊が泥酔状態で庭に倒れていたというお宅で、生前の尾崎とは無関係な家の一室には、尾崎グッズやノートがずらりと並んでいた。

 そんな尾崎ハウスとソン・ジュンギ生家の果てしなく大きな違いは、やはり当事者が生きているかいないかということであろう。その間にある越えてはいけない一線について思いを巡らせながら、現役のスターの生活がしみ込む庭園を散策した。

 そうこうしているうちに、買い物を終えたソン・ジュンギのお父様がご帰宅! 一見するとどこにでもいそうな中年男性だが、目や口元には明らかにソン様のDNAが。

 実父という有名人のプライベートな部分に最接近してしまったことに、私も思わず大興奮。「日本から来ました!」と言うと、向こうから手を差し伸べ、がっちり握手してくれた。おお、このNO JAPANなご時世になんとフレンドリーなことだろう。

 ところが、お父様の「記事でも書くの?」という質問に、「はい! 素敵な訪問記を書きます!」と正直に答えたところ、お父様の顔がさーっと真顔になり、「ここはソン・ジュンギの生まれた家。ほかに言うことはないから、写真撮ったら帰ってね」と言い、さーっと家の中に入ってしまった。

 息子が離婚したばかりで、これまで記者から質問攻めにあったのだろう。心情は察するに余りある。とはいえ、私のように怪しげな男ではなく、目を輝かせた本物のファンが訪れれば、きっと素敵な室内に招待してくれるはずだ。

 正直、ファンルームに招待されなくてホッとするところもあったが……。

 お友達のおじさん2名に見送られて家を出た。下界に戻るバスに揺られながら、ソン・ジュンギと同じDNAを持つ人の、手のぬくもりを思い出していた。

(文・写真=清水2000@simizu2000

●ソン・ジュンギ生家                                

住所 大田広域市東区細川公園路

廃墟への道をひた進む、韓国版「東武ワールドスクウェア」

 ソウル市のお隣・富川(プチョン)市にある、世界の建築物のミニチュアを展示するテーマパーク「アインスワールド」を訪れた。2003年のオープン以来、地域住民に愛されてきたが、近年は施設の老朽化とともに客足も減り、ますますの珍スポ化が進んでいるという。

 バスを降り、人気のないエントランスに立った私は、その荒涼とした景色に息をのんだ。アスファルトの隙間からは雑草が伸び放題。音楽どころか物音すら聞こえず、券売所は閉ざされたままで、底のない倦怠感があたりに充満していた。

 券売所ではなく入場ゲートで直接お金を払い、いよいよ公園内へ。入場料は1万ウォン(約1,100円)。週末の夜だけに行われるライトアップ時なら1万30,00ウォンと、この規模にしてはちょっと高めだ。

 最初に現れたのはイギリスのタワーブリッジ(の模型)。園内はイギリスゾーン、フランスゾーン、ロシアゾーンと分かれ、写真で見たことのある世界の建造物の模型が次から次へと現れる。パンフレットによると「25カ国67個の有名建築物」が展示されているという。

 それぞれの建物は実に精巧だ。しかし、ところどころ破損し色落ちし、雑草は伸び放題、植木は蜘蛛の巣に覆われるなど、管理のずさんさが際立ち、腰砕け感は否めない。周囲には私以外に誰もおらず、まるで人類滅亡後の世界を見学しているような気分になる。

 ヨーロッパを抜け、次に現れたのはアフリカゾーン。そこに大々的に展示されていたのが「キリマンジャロ山」だ。もはや建築物でもない。

 雑草が生い茂る空き地や、もぬけの殻となった売店などを横目に見ながら、やがて登場したアメリカゾーンだ。これぞニューヨークな景色はこの公園のクライマックスといえるが、その朽ちかけた様子に思わず変なため息が出る。よく見ると、ワールドトレードセンターの壁が一部はがれ落ちているのだが、これって倫理的にまずいのではないか。

 その裏にあるのはお待ちかね日本ゾーンだ。展示されていたのは姫路城と熊本城という、日本のことわかってる感のあるラインナップ。背景に描かれた、インチキくさい居酒屋を思わせる「ザ・日本」なイラストがたまらない。

 インドのタージマハールやカンボジアのアンコールワット、最後に韓国ゾーンを見て、地球一周の旅は終わり。所要時間は30分。ミニチュアがただそこにあるだけの、そしてまともに雑草も抜いていないこの場所に、安くもない入場料を払う必要はあったのかというモヤモヤが胸によぎった。

 あらためてネットに書かれた訪問客のレビューを読むと、「高い」「ボロい」「見るものはない」といったネガティブな意見のほかに、「夜なら比較的楽しめる」との意見も目立った。暗いから施設の破損はそれほど気にならない、というのがその理由らしい。

 珍スポ好きの皆さまは、ぜひ太陽が燦燦と降り注ぐ日中に訪れ、ポカーンとしたワールドの細部をじっくり堪能してほしいところである。

(文・写真=清水2000@simizu2000

 

●アインスワールド                                  

住所 京畿道富川市遠美区跳躍路1

休館日 なし

営業時間 10:00~18:00(冬季~17:00、週末・祝日~23:00)

HP www.aiinsworld.com

刑務所の至るところに”顔ハメ”……仁義なきインスタ映えの世界「益山矯導所セット場」

 韓国の若者に大人気の刑務所があると聞き、益山(イクサン)市までやってきた。なんでも、囚人服を着た女の子たちやカップルが、塀の中でインスタ映えする写真を撮りまくっているというのだ。

 最寄りの咸悦(ハミョル)駅まで、ソウルの龍山(ヨンサン)駅から鈍行列車に乗り3時間弱。旅情あふれる田舎の小さな駅舎を降り、そこからタクシーを呼んで現場へ向かった。

 10分ほどで到着したのは畑に囲まれた山間の敷地で、青空の下、巨大な白い塀がそびえ立ち威圧感を放つ……と思いきや、入り口には顔ハメ看板が。

 ここは「矯導所(=日本でいうところの刑務所)セット場」。本物の刑務所ではなく、刑務所のシーンを撮影するために作られた韓国唯一の撮影所だ。廃校となった小学校を市が買い取り改装、2005年にオープンさせた。2万2,132平方メートルの敷地には監獄や取調室などが設けられ、数多くの映画やドラマがここで撮影されている。

 撮影日でなければ一般客も見学できるのだが、17年頃から話題を集めだし、18年には12万人もの来場があった。韓国の若者に大人気のSNSといえばインスタだが、そのユーザーに大きなインパクトを与えたのが、囚人服を着て写真が撮れるということだ。

 事前にインスタで検索してみると、出るわ出るわ浮かれた画像が。檻の中で「ぷいーん」と泣きまねをする囚人女子を筆頭に、警棒を持った相方に過酷な尋問を受ける囚人女子、囚人服を着てキスする囚人カップル、一昔前に日本の女子高生の間で流行った「魔貫光殺砲」を発射する囚人女子たちまで、「面白い」「かわいい」という一言で処理するにはもやっとするフォトジェニックな写真がずらり。インスタ映えのためには囚人になることも厭わない、韓国女子のアグレッシブさに惚れ惚れするばかりだ。

 塀の中に足を踏み入れると、そこは韓国映画で見たような景色。運動場の先には、収監所と思しき建物が立っている。

 ただし私が訪れたのが平日の午前中だったためか、そこまで女子女子している感じではない。いるのは子連れの夫婦と、遠足で訪れたのだろう中学生男子の団体ばかりだ。

 右手に回るとまず現れたのは、いかつい軍用車。しかにそこにはポップな書体で「告白バス」と書かれており、カップル向けのインスタ仕様であることがうかがえる。

 車内は売店となっており、お茶を飲んだり記念品を買ったりできるようだ。なぜここで愛の告白をしなければならないのか……。

 隣のプレハブ建物に入ると、裁判所を再現した部屋とともに、囚人服のレンタルコーナーが。

 しばらく見ていると、中学生男子はみな囚人服ではなく警察服を着用したがり、警棒をぶんぶん振り回している。中学生男子のマインドに国境はないのだと感慨を受けるのだった。

 外に出て収監所へと向かう。その通路沿いに並ぶフェンスには、ずらりと手錠がかけられていた。どうやら、先ほどの「告白バス」で買える「告白手錠」とやらに愛のメッセージを書いて、ここにかければいいらしい。

 フェンスや手すりに南京錠をかけて永遠の愛を誓う「愛の南京錠」というスポットは、韓国はもちろん世界各地にあるが、南京錠ではなく手錠とは……。微妙に重い。

 ポップアートを思わせる囚人の模型を横目に、収監所へと入った。薄暗い独房や取調室は、さすがに迫力満点。さらに、ところどころに顔ハメ看板が登場し、強引な客引きのようにあの手この手で写真撮影を促してくる。館内にはご丁寧にもフリーWi-Fiが飛んでおり、インスタの魔の手から逃れることは不可能。

 特に違和感を感じたのが、この場所に「犯罪はダメ、刑務所生活はしんどい」というメッセージ性が(刑務所の生活を伝える簡単な展示があるとはいえ)限りなくゼロに近いことだ。インスタ映えに特化した、ハッピーな世界観に包まれている。

 最後に面会室を訪れた。そこにはちょうど家族連れが来ており、お父さんが囚人席に、小さい女の子とお母さんが面会に訪れた家族席に座り、鉄格子ごいに手を振りあっていた。子供にこんなシーンを体験させて、親として違和感はないのだろうか?

 建物の後ろにあった美しい菜の花畑(刑務所とは何の関係もないが、インスタ映えはすごい)も眺め、再びタクシーを呼んで駅前へと戻った。どこまでも続く田園風景を眺めながら、何だかとても遠い所に来てしまったなと思った。

 私は叶わなかったが、皆さんがこのスポットを訪れるなら、ぜひとも訪問者の多い週末をお勧めしたい。スマホを眺めているだけでは決してわからない、仁義なきインスタ映えの世界に出会えるはずだ。

(文・写真=清水2000@smizu2000

●益山矯導所セット場                                

住所 全羅北道益山市聖堂面咸郎路207

休館日 月曜、撮影日

営業時間 9:00~18:00

 

オリンピックから1年、町全体が珍スポに?「平昌オリンピック跡地」

 

 日本では東京五輪の観戦チケットの抽選申し込みが終了したばかりだが、2018年に冬季オリンピックのメイン会場となった町、平昌(ピョンチャン)は今どうなっているのか? 正確には、ネット界隈で話題となった裸体像、通称「モルゲッソヨ」がどうなっているのか見てみたいと思い、現地へ向かった。

 バスはソウルを出発し、2時間半かけて会場最寄りの「横渓(フェンゲ)市外バスターミナル」へと向かう。途中、同じ平昌郡であり、目的地のひとつ手前の「珍富(チンブ)共用バスターミナル」を通過した。ここは数年前、衝撃の反共珍スポ「李承福記念館」(参照記事)を取材しに訪れた町だ。

 横渓も似たような雰囲気の牧歌的な田舎町なのだろうと想像していたら、いきなりデザインの整った街並みが現れたので驚いた。オリンピックに合わせて、大通り沿いの建物をリモデリングしたようだ。ただし人通りは少なく閑散としており、空き物件も多く、大通りを抜ければ民家と農耕地が広がっている。

 そして町の至るところに、結構な大きさの平昌オリンピックのマスコット像たちが今も設置されており、じんわりと哀愁を誘う。

 通りを少し歩くと、車のほとんどない広大な駐車場が現れた。ここ「メダルプラザ」はオリンピック当時、ステージやパビリオンが設置され、メダル授賞式などのイベントが行われたが、いまや大部分の設備が撤去され、ぽっかり空くのみ。遠くには聖火台も見える。

 ターミナルに戻り市内バスに乗って、主要競技場となった「アルペンシアリゾート」へと向かった。ここはスキー場のほか、ホテルやカジノも有する一大レジャータウンだ。しかし、それほど賑わっている様子ではない。

 例のマスコット像を筆頭に、フィギュア選手像、「2018」という数字像、高さ40mのよくわからないモニュメントなど乱立するオブジェを横目に、かつてのプレスセンターへと向かう。そこにはあの「モルゲッソヨ」像が、ネットで見たのと変わらない姿で屹立していた!

 念のため説明するとこの像は、韓国の芸術家キム・ジヒョンが制作した「BULLET MAN」という作品であり、以前からここに建っているが、オリンピックを機にその珍妙な造形が注目を集める。現地の人にこれは何かと聞いたところ、「モルゲッソヨ(わかりません)」と答えたというエピソードから、ネット界隈では「モルゲッソヨ」と呼ばれ、AAや動画などファンアートが生み出されることになった。

 それにしても実物のモルゲッソヨは、ネットで見た以上に胸に迫るものがあった。リアルすぎる筋肉、てらりとした質感、ジェントルな性器……。

 オリンピックが終わっても、モルゲッソヨの周りには凛とした空気が張り詰めており、アートと単なるオブジェの違いを見せつけられたのだった。

 アルペンシアリゾート内をひととおり散策した後は、タクシーに乗って山の向こうの「スキージャンプ台」へと移動する。

 実際にオリンピックの競技が行われたこの場所は、周辺を一望できる展望台として活用されており、さらに一般客もジャンプ台の出発地点に立ち、その高さを体験できるようになっている。こちらは平日にも限らず、それなりに訪問客が集まっている印象だ。

 ただし、祭りの後の脱力感が漂っているのは否めない。お土産屋ではいまだに平昌オリンピック公式グッズが販売されているが、ひとつ買えばもうひとつもらえるという投げやりなセールが行われていた。オリンピック当時、スホラン・バンダビ人形は大人気で品切れが続き、高価で転売されるほどのだったのだが……。

 再びタクシーを呼び、さきほど聖火台が見えた敷地へと向かった。タクシーに乗るたびに運転手に「オリンピックで暮らしは良くなったか」と質問してみたのだが、みな口をそろえて「道が広くなっただけ」と話すのが興味深い。

 タクシーは広い道路をひた走り、間もなくだだっ広い更地に到着。ここには平昌オリンピックの開閉幕式が行われた「平昌オリンピックスタジアム」があったが、役割を終えた後はすぐに撤去され、五角形の敷地が遺跡のように残るのみだ。

 その横には何かのオブジェのように聖火台が残されているが、周辺には人っ子ひとりおらず、言いようのない珍スポ感が漂っていた。

 すべての見学を終え、バスターミナルのあるふもとの町まで歩いて降りる。民家の軒先には名物であるファンテ(スケトウダラの干物)がずらりと並び、見ていて飽きない。途中の店でファンテのスープの定食を美味しくいただく。

 再び町の中心部を練り歩くと、町の規模に対してお土産屋がやたら多いことに気が付いた。そこにはオリンピックのグッズが山のように並び、割引価格で販売されている。

 さらにそうしたお土産屋ばかりでなく、カフェやコンビニといった普通の店でも、普通にグッズが売られているのには驚いた。もはやスホラン・バンダビ人形がこの町の特産物のようだ。

 莫大な費用を投資し作られた施設を、オリンピック後にどう有効利用するかが、開催都市の課題だ。平昌は未だに活路を見いだせておらず、空いた施設の維持費に追われているが、果たして我らが東京オリンピックは一体どうなることやら。来年、再来年の東京に思いを馳せつつ、マスコットグッズ大豊作の田舎町を後にした。

(文・写真=清水2000@simizu2000

◆「韓国珍スポ探訪記」過去記事はこちらから

ミス高麗人参から顔ハメまで……高麗人参だけでどこまでやるの?「錦山人参館」

前回までのあらすじ)韓国の真ん中あたりにある「高麗人参すぎる町」、錦山(クムサン)郡を探訪。やたらリアルな巨大高麗人参像、乱舞する高麗人参像、そして町の至る所にある高麗人参キャラクターに圧倒されつつも向かったのは、高麗人参オンリーの博物館「錦山人参館」だ(※韓国で人参=インサムといえば高麗人参のこと)。

 町が莫大な費用を注いで開発したのだろう、だだっ広く、現代的な建築物がぽつぽつ立つ「人参広場」の一角に、その館はあった。外観はシンプルだが、3階建て・建築面積4,173平方メートルというなかなかの規模に、町の覚悟を感じる。

 瓶詰の高麗人参が、マッドサイエンティストの研究室のようにずらりと並ぶロビーを抜け、まず向かったのは「錦山人参歴史館」というコーナーだ。

 高麗人参1500年の歴史を、マネキンで紹介。珍スポファンとしてはおとぼけ人形を期待したいところだが、突っ込む隙がないほどマネキンのクオリティが高く、町の本気度ばかりが伝わってくる。

 2階に上がるとそこには表彰台があり、瓶詰された立派な高麗人参たちが鎮座していた。それぞれ「錦山人参王」「ミスター人参王」「ミス人参王」「人参大王」「特異模型人参王」というタイトルが掲げられている。

 セクシーボディのミス高麗人参を前に想像力の高みを目指した私は、続いて隣のコーナー「人参科学館」へ。

 人参科学館は、高麗人参の成分や効能などを科学的に紹介。中でもぶっ飛んでいたのは、「生活の中の高麗人参(Ginseng in the life)」という展示だ。

 そこはマンションのモデルルームのようにリビング、ダイニングキッチン、寝室、シャワー室が用意されているのだが、栄養剤、お菓子、化粧品、シャンプーなど、これでもかというほどの高麗人参商品があらゆる場所に設置されているのだ。これが町民の日常なのか?

 特にヤバいのは寝室だ。ナイトテーブルには高麗人参ドリンクが置かれ、そして布団の柄は高麗人参キャラクターが……。こんなのどこで手に入るの?

 

 3階に上がると、お待ちかねフォトコーナー。等身大の高麗人参キャラクターの模型もいいが、何より熱いのは高麗人参の顔ハメだろう。私も思わず穴に顔をはめ、しばらくのあいだ高麗人参になりきった。平日の館に、私以外の訪問客が誰もいなかったのは幸いだった。

 

 すべての展示を見終え、1階を目指す。しかし最後の最後に、尋常ではない部屋を発見してしまった。そこは映写室であり、なんと15分のオリジナルドラマを上映しているのだ!

 ドラマのタイトルは『愛も高麗人参も競争力』。サブタイトルには「クムサンちゃんの健康な成長ロマンス」とあり、4人の男女の写真が並ぶ。内容はまったく想像がつかないが、高麗人参をキーワードとした、ロマンスあり成長あり健康ありの韓流ドラマなのだろう……。

 猛烈に観たいと思ったが、係員に聞いたところ団体観光客向けのプログラムだという。残念。

 町民の高麗人参へのあふれる愛におなかいっぱいになりつつ、館を後にした。

 それにしても常設展示でこれだけのレベルなのだから、町の朝鮮人参愛のクライマックスである、毎年秋開催の「錦山人参祭」、そして数年に一度開催される「錦山世界人参エキスポ」は、一体どれだけすごいことになるのだろう。

 ちらっと韓国人のブログを検索してみたところ激しい写真が満載で、これは必ず訪問しなければと胸に誓った。

(文・写真=清水2000<@simizu2000>

●錦山人参館                                                                   

住所 錦山郡錦山邑錦山広場路30

営業時間 9:00~18:00

<https://www.geumsan.go.kr/insam/>

町の至るところに”隠れ人参”が潜む、高麗人参ランド「母子人参像」

 韓国の真ん中あたりに「高麗人参すぎる町」があると聞いて行ってみた。忠清南道(チュンチョンナムド)・錦山(クムサン)郡。人口5万人ほどの小さな町だ。

 特産物の高麗人参が、町おこしのアイテムとして至るところに出現。町のマスコットキャラクターはもちろん高麗人参であり、毎年秋に「錦山人参祭」という一大フェスが開かれるほか、過去に3回「錦山世界人参エキスポ」までも開催されているという。

 錦山市外バスターミナルまで、ソウルからバスで2時間30分。バスが高速道路を降り街中に入ったところで、我々部外者を迎えるように、いきなり巨大な高麗人参2本が車窓を横切った! ちょっと、心の準備がまだなんですけど……。

 やがてバスは小さなバスターミナルに到着。そこは日中から暇そうなお年寄りたちでにぎわっている。ターミナル前のタクシー乗り場には、待ち人のためなのか暇な人のためなのか運動器具やテレビが並んでおり、そんなソウルとはまったく違う景色に興奮してしまう。

 気になるさっきの高麗人参像までは、タクシーで5分、徒歩でも15分ほどの距離。像が立つ場所「錦山歴史文化博物館」の名を告げ、タクシーに乗り込んだ。

 車が目的地に近づくにつれて、遠くの高麗人参が悪夢のようにぐんぐん大きくなっていく。

 博物館で車を降りた私は、非現実的な光景を生み出す高麗人参像をじっくり鑑賞した。

 

 その大きさ、堂々の15メートル。「1500年の高麗人参の歴史を象徴し、15メートルに」したそうだ。取って付けたようなざっくりとした数字が気にはなるが、それはさておき初代ガンダムが18メートルであることを考えると、高麗人参としては異常な大きさであることは間違いない。

 土の中から今まさに掘り出されたような過剰なリアルさもヤバいが、何よりこの人間っぽさはなんなんだ? この像には「母子人参像」という名がついており、母と息子が手をつないで歩く姿をモチーフにしているという。岩石の上に母子の高麗人参がそそり立つというドラマティックな構図も、常軌を逸している。

 巨大高麗人参を後にした私は、バスターミナルを起点として町を歩いてみた。「人参路」と名のついた大通りを進み、漢方薬の香り漂う「錦山国際人参市場」を歩き(通りに並ぶ食堂で、揚げたての高麗人参の天ぷらと高麗人参のマッコリをいただく。美味)、「人参ホテル」という名の観光ホテルを横切ると、現代的な建物がぽつぽつと立つ、だだっ広い敷地に到着した。ここが人参祭や人参エキスポが行われた「人参広場」のようだ。

 何か胸騒ぎがするのでそちらを見ると、金ピカに光る無数のオブジェが。近づいてみると、やはり高麗人参・高麗人参・高麗人参であった。

 ややディフォルメされているが、その姿はまたもや人間っぽい。無表情で右往左往する高麗人参たちに紛れ、異様にハイテンションな高麗人参もいれば、座り込んだり昼寝したりしている高麗人参もいる。「愛らしい」と言えなくもないが、その物量にちょっとした狂気を感じるのは私だけか。

ずっと見ているとどこかに連れていかれそうになるので、撮影もそこそこに公園内を歩く。しかしこれ以外にも、あちらこちらに高麗人参をモチーフにしたデザインやオブジェが……。

 

 ディズニーランドの隅々に丸3つで構成された隠れミッキーが潜むように、あらゆる場所に高麗人参が潜み、こちらをうかがっている。恐るべし、高麗人参ランド。

 高麗人参の圧倒的な存在感に打ちのめされるばかりだが、ひとまず気を引き締め、この公園の一角にある「錦山人参館」へと向かう。そこは高麗人参に関する博物館であり、町の人々の高麗人参愛の中枢と言うべきスポットだった。次回に続く。

(文・写真=清水2000)

●母子人参像

住所 錦山郡錦山邑錦山路1575