「紙のマンガ本」がオワコンの時代に突入か……いま、出版業界に必要なのは“スピード感”

 マンガを紙の本で読む時代の終焉が、現実味を帯びているように見える。

 11月末、出版取次大手の日本出版販売(日販)、トーハンの中間決算で、紙のマンガ本離れが進んでいることが、より明確になってきた。

 日販ではコミックス部門の売上が前年同期比で12.7%減少。トーハンでは17.6%の減少となった。実に、2割近くが減ろうとしているわけである。

 トーハンの資料では「相次ぐ大物作品の完結に加え、電子コミックの市場拡大、Webマンガアプリの台頭で紙のマーケットの縮小傾向」が、下落の理由としている。

 もはや出版不況という言葉も当たり前になり、娯楽や情報の分野がWebへと移行していくことは変えられない道筋といえる。今年の年明けから200万部を割った「週刊少年ジャンプ」(集英社)が、一気に180万部台まで部数を減らしたことは、その象徴ともいえる。マンガ絡みで唯一明るい話題なのは「月刊flowers」(小学館)。同誌では今年になり、萩尾望都の『ポーの一族』新シリーズが連載開始。部数を大きく伸ばした。

 つまり、作品の力で部数を確保することが可能であることは明らか。けれども、これはあくまで例外である。

 出版科学研究所の発行する「出版月報」7月号に掲載された2017年上半期の分野別動向によれば、電子書籍市場は、伸びは鈍化したものの前年同期比で21.5%のプラスとなっている。ただ、伸びたとはいえ、まだ規模は小さく、販売金額は1,029億円に過ぎない。この内訳をみると、コミックが777億円。書籍(文字もの)が140億円。雑誌が112億円となっている。

「紙のマンガが電子書籍に食われているのは明らかです。今後も、紙のマンガは厳しくなるでしょう」

 そう話すのは、業界誌「出版ニュース」の清田義昭氏(出版ニュース社代表)。ただ、清田氏からは、こんな話も。

「ちょうど今年も出版業界の十大ニュースを決める時期なんです。それで、電子書籍の話題を何か入れようと思ったのですが、取り立てて大きな話題はないんですよね」

 このことは、紙から電子書籍への移行が、緩慢としか進んでいないことを示している。ここ数年の間に、無料で読むことのできるマンガアプリ、Web雑誌は膨大な数になった。紙の雑誌では売上が少ないからと、Webのみに移行する媒体もある。けれども、Webで連載した作品が単行本になったとき、紙・電子書籍を問わず購入しない読者、すなわち無料でないと読まない読者も増えてきているということだろう。

 こうした変化の中で、出版業界では、まだまだ現在の、取次に本を納品すれば、いったん支払いがあって、配本もしてくれて……という流通システムが続いてくれることを願う人々が多い印象だ。

 紙・電子書籍を問わず、いかに読者の手に届かせるか。そして、お金を払えばより価値のあるものを読むことができると、改めて気づかせる方法は何か。よりビジネスとしてのアイデアが求められる時代になっているように見える。

 筆者も長らく雑誌に記事を書き、年に数冊の単行本を上梓している。取材などで触れるほかの業界と比べて見えてくるのは、出版業界のスピード感のなさであろう。単行本など、ごく一部の「緊急出版」的なものを除けば、企画を立てて、編集者と「やりましょう」という話になってから、長い。「企画会議は来月です」といわれて1カ月くらい待つことはザラだ。

 このスピード感のなさは、問題ばかりではないとしても、やはり漫然としすぎている感は拭えない。いずれ進歩的な変革が起こったりするのだろうか。
(文=昼間たかし)

ついに創刊25周年を達成! アダルトゲーム市場縮小の中で、なぜ専門誌「BugBug」は続いているのか?

 アダルトゲーム関連の老舗月刊誌「BugBug」(富士美出版)が、10月発売の2017年11月号で、創刊25周年を迎えた。アダルトゲーム市場が縮小しているといわれるようになってから、長い年月がたっている。一時は毎月2ケタの雑誌が発売されたこともあるアダルトゲーム雑誌も、今ではわずか数誌となった。そうした中で、サン出版から富士美出版へと出版元を移籍しながら健闘を続ける同誌のマス大澤編集長に、これまでとこれからを聞いた。

 マス大澤氏が編集長に就任したのは1999年。アダルトゲームが隆盛期を迎える直前だった。それから数年。『Kanon』『To Heart』といった、今も語られる名作の登場によって、アダルトゲーム業界は、我が世の春を謳歌する時期を迎えた。雑誌に広告を出稿する制作会社も多く、ページ数も今より3~4割近く分厚かった。当時を知る者にとっては、業界の縮小と共に雑誌も右肩下がりの傾向にあるのではないかと思ってしまう。

 ところが、マス大澤氏は「実際に数々の業界誌が休刊しましたが、うちは安定傾向にある」というのである。

 もともとグラビア雑誌出身のマス大澤氏は、誌面の作り方として、雑誌単体で楽しめるという方針を一貫させてきた。それが顕著なのは、同誌のメインであるゲーム紹介ページ。

 同業他誌と比べると一目瞭然だが、画像の配置がかなり特徴的なのである。近年では、廉価な作品も増えてきたとはいえ、アダルトゲームは比較的高価なコンテンツ。あれもこれもと買うことはできない。そうした中にあって「BugBug」の雑誌としての特徴は、コアなオタク層だけでなく、二次元“も”オカズに使いたいという嗜好周辺のライト層も取り込み、固定読者をつかんで離さないこと。

「顕著なのがDVD付録です。25周年記念の今号では、アペンドディスクにしましたが、いつもは、テレビで見られるビデオ映像にしているんです。それが、読者から好評だったりします」(大澤氏)

 25周年を迎えた号では、表紙に「今月もTVで楽しめる美しょゲーH動画もアリ!!」の文字が。まさか、これが読者を奮い立たせる要素になっているとは!!

 とはいえ、アダルトゲーム全盛期に比べると広告が減り、ページ数が減少したのは事実。ただ、これは業界が縮小して宣伝費が減ったからというわけではない。宣伝費が、数字が見えやすいネットやイベントへと移行しているからだという。それでもまだなお「BugBug」に広告出稿する制作会社が多いのには、理由がある。

「ネットで情報を得る人が増えている中で、雑誌を購入する人は、実際にゲームを購入する可能性も高い、手堅いユーザーなのです」(同)

 改めて「BugBug」という雑誌が、コアなアダルトゲームユーザーとライト層、その両方の股間に刺さる誌面づくりになっているという姿が浮かび上がってくる。

 同業他誌が次々と姿を消していく中で、勝ち残りとなった「BugBug」。25周年を迎え、すでに30周年も視野に入っているといっても、言い過ぎではないだろう。さらなる長寿雑誌への道が確固たるものになるかどうかは、アダルトゲーム業界の動向にかかっている。

 アダルトゲームにおける紙芝居的なAVG(アドベンチャーゲーム)形式というものは、今後も変わる気配はない。ブラウザゲームも次第に存在感を増しているが、まだ現行のスタイルに取って代わるものにはなっていない。あちこちで熱い視線を送られているVRも同様だ。以前記事にしたように、アダルトVRを扱うムックも発売されたりしているが、大ヒットには至っていない。というのも、VRの衝撃を楽しむには、スマホなどを用いた簡易なものでは力不足。どうしても、高価なヘッドセットなどが必要になるからだ。

「VRは、うまくいけば盛り上がると思うので、そこまでは頑張りたいと思っています。近年、Steam(DLゲーム販売サイト)も盛り上がっていますし、業界自体は、まだ盛り上がる余地があります」(同)

 さらに、同人タイトルには有望なものが増えているという。

「今や、個人レベルでアダルトゲームを制作するのも当たり前になってきています。実用重視の作品には、そうした制作スタイルのものも多いのです。これは、お手軽に二次元をオカズにしたい層と合致しているんです。そうしたものも、誌面で紹介していきたいと思っています」(同)

 あくまで「雑誌」という軸からぶれることなく、コアユーザー以外も楽しめる情報を雑多に紹介していくという精神性。それが25周年を達成した秘訣なのか。

 現状維持ではなく、新たな編集者も加わり誌面強化に乗り出しているという「BugBug」。むしろ、二次元をオカズにできる人々が増えいている中で、さらにアダルトゲーム業界が拡大する気配すらあるように見える。
(文=昼間たかし)

ついに創刊25周年を達成! アダルトゲーム市場縮小の中で、なぜ専門誌「BugBug」は続いているのか?

 アダルトゲーム関連の老舗月刊誌「BugBug」(富士美出版)が、10月発売の2017年11月号で、創刊25周年を迎えた。アダルトゲーム市場が縮小しているといわれるようになってから、長い年月がたっている。一時は毎月2ケタの雑誌が発売されたこともあるアダルトゲーム雑誌も、今ではわずか数誌となった。そうした中で、サン出版から富士美出版へと出版元を移籍しながら健闘を続ける同誌のマス大澤編集長に、これまでとこれからを聞いた。

 マス大澤氏が編集長に就任したのは1999年。アダルトゲームが隆盛期を迎える直前だった。それから数年。『Kanon』『To Heart』といった、今も語られる名作の登場によって、アダルトゲーム業界は、我が世の春を謳歌する時期を迎えた。雑誌に広告を出稿する制作会社も多く、ページ数も今より3~4割近く分厚かった。当時を知る者にとっては、業界の縮小と共に雑誌も右肩下がりの傾向にあるのではないかと思ってしまう。

 ところが、マス大澤氏は「実際に数々の業界誌が休刊しましたが、うちは安定傾向にある」というのである。

 もともとグラビア雑誌出身のマス大澤氏は、誌面の作り方として、雑誌単体で楽しめるという方針を一貫させてきた。それが顕著なのは、同誌のメインであるゲーム紹介ページ。

 同業他誌と比べると一目瞭然だが、画像の配置がかなり特徴的なのである。近年では、廉価な作品も増えてきたとはいえ、アダルトゲームは比較的高価なコンテンツ。あれもこれもと買うことはできない。そうした中にあって「BugBug」の雑誌としての特徴は、コアなオタク層だけでなく、二次元“も”オカズに使いたいという嗜好周辺のライト層も取り込み、固定読者をつかんで離さないこと。

「顕著なのがDVD付録です。25周年記念の今号では、アペンドディスクにしましたが、いつもは、テレビで見られるビデオ映像にしているんです。それが、読者から好評だったりします」(大澤氏)

 25周年を迎えた号では、表紙に「今月もTVで楽しめる美しょゲーH動画もアリ!!」の文字が。まさか、これが読者を奮い立たせる要素になっているとは!!

 とはいえ、アダルトゲーム全盛期に比べると広告が減り、ページ数が減少したのは事実。ただ、これは業界が縮小して宣伝費が減ったからというわけではない。宣伝費が、数字が見えやすいネットやイベントへと移行しているからだという。それでもまだなお「BugBug」に広告出稿する制作会社が多いのには、理由がある。

「ネットで情報を得る人が増えている中で、雑誌を購入する人は、実際にゲームを購入する可能性も高い、手堅いユーザーなのです」(同)

 改めて「BugBug」という雑誌が、コアなアダルトゲームユーザーとライト層、その両方の股間に刺さる誌面づくりになっているという姿が浮かび上がってくる。

 同業他誌が次々と姿を消していく中で、勝ち残りとなった「BugBug」。25周年を迎え、すでに30周年も視野に入っているといっても、言い過ぎではないだろう。さらなる長寿雑誌への道が確固たるものになるかどうかは、アダルトゲーム業界の動向にかかっている。

 アダルトゲームにおける紙芝居的なAVG(アドベンチャーゲーム)形式というものは、今後も変わる気配はない。ブラウザゲームも次第に存在感を増しているが、まだ現行のスタイルに取って代わるものにはなっていない。あちこちで熱い視線を送られているVRも同様だ。以前記事にしたように、アダルトVRを扱うムックも発売されたりしているが、大ヒットには至っていない。というのも、VRの衝撃を楽しむには、スマホなどを用いた簡易なものでは力不足。どうしても、高価なヘッドセットなどが必要になるからだ。

「VRは、うまくいけば盛り上がると思うので、そこまでは頑張りたいと思っています。近年、Steam(DLゲーム販売サイト)も盛り上がっていますし、業界自体は、まだ盛り上がる余地があります」(同)

 さらに、同人タイトルには有望なものが増えているという。

「今や、個人レベルでアダルトゲームを制作するのも当たり前になってきています。実用重視の作品には、そうした制作スタイルのものも多いのです。これは、お手軽に二次元をオカズにしたい層と合致しているんです。そうしたものも、誌面で紹介していきたいと思っています」(同)

 あくまで「雑誌」という軸からぶれることなく、コアユーザー以外も楽しめる情報を雑多に紹介していくという精神性。それが25周年を達成した秘訣なのか。

 現状維持ではなく、新たな編集者も加わり誌面強化に乗り出しているという「BugBug」。むしろ、二次元をオカズにできる人々が増えいている中で、さらにアダルトゲーム業界が拡大する気配すらあるように見える。
(文=昼間たかし)

雑誌が売れない……今“レイアウト変更”で、コンビニからエロ本の消滅が近づいている!!

 千葉市からの働きかけを発端として、同市に本社のあるコンビニチェーン・ミニストップがエロ本の取り扱いを全面的に取りやめるというニュースは、まだ批判と賛同の論争の中にある。この騒動の中で、コンビニ事情を知る人々が指摘しているのが、コンビニで雑誌や本が、不人気商品となっていること。売れないものを置いても仕方がない。ならば、どの段階で縮小を図るかというところに、エロ本を規制したい千葉市の意向は幸いしたというわけだ。

 本音としては、エロ本のみならず雑誌や本のすべてを、ほかの売れ筋商品へと置き換えたいと、コンビニチェーンは考えているのだ。

 その動きは、すでに始まっている。先日、都内のオフィス街にあるコンビニに入って違和感を感じた。普段使っているさまざまなコンビニとレイアウトが違う。オフィス街だからだろうか、食べ物や飲料のコーナーはやたらに広い。では、雑誌や本はどこに陳列しているのか。店内をグルグルと回っていると、まだ消滅してはいなかった。でも、極めて狭い棚で売られているのは、限られた週刊誌やマンガ雑誌だけだったのである。

 コンビニの客導線として、雑誌を買いに来た客が、ついでに飲み物やおにぎりを買っていくというスタイルは過去のものになった。これから先、雑誌や本のスペースは縮小されていくのは必然だ。

 中でも業界で注目されているのが、最大手であるセブン-イレブンの動きだ。今年に入り、セブン-イレブンは店内のレイアウト変更を積極的に展開している。このレイアウト変更では、冷凍食品や、コーヒー、そのほか食べ物を扱うスペースが大幅に拡大。その代わりに、雑誌・本の棚が大幅に縮小されているのである。

 店舗の間取りによって違いはあるが、雑誌と本のスペースが縮小しているのは、どこも一緒だ。店舗によるが、新レイアウトでは雑誌・本が6割程度減少している。

 セブン-イレブンでは、今期中に新レイアウトを1,800店舗で実施。2021年までに全店舗のレイアウト変更を完了させるとみられている。

「もはや、コンビニにとって雑誌や本が売れ筋の商品でないことは明らかです。今回、問題になったエロ本にしても、購入する層は老人やネットを用いることのできない限られた人々にすぎない。千葉市の件がなくても、いずれは消えていったでしょう」(アダルト系編集者)

 ミニストップのエロ本排除は、問題にはなっているが、一方で出版業界からの批判の声は思いの外少ない。ここにはもはや、コンビニの動向にガタガタ言ってもしようがないという諦念もうかがえる。

「オリンピックでエロ規制が強まる云々よりも、目下の問題は、コンビニがどの段階で『もう、雑誌はいらない』と言い出すかですよね。考えても仕方がないので、目を背けて仕事している人が多いんじゃないでしょうか。一部のマニア誌やマンガ誌を除けば、エロ本はもう終わりですよ」(同)

 電子書籍が存在感を増す現在。もう、ドキドキしながらレジに持っていくエロ本の時代は終わりか。
(文=昼間たかし)

ミニストップの「排除」で近づく“エロ本絶滅の危機”廃業して無職になる編集者たちの嘆き

 コンビニのミニストップが、来年1月から国内全店約2,200店で成人向け雑誌の販売を中止すると発表した。これには、いわゆる「エロ雑誌」を作る側の業界から「絶滅に近づいた」との悲鳴も聞かれる。

 あるエロ雑誌をひとりで制作している56歳の編集者男性は、売り上げが今後も下がり続けると「廃業して無職になる」と明かす。

「全盛期8人いた編集者は、売り上げが減るたびに雇う費用がなくなってクビになり、2年前から僕ひとりだけ。エロ雑誌しかやってこなかったので、いまさら転職先もない。なんとか自分の給料が出る環境を守ろうと必死ですよ。発売元からは『赤字になったら休刊』と言われていますが、制作予算は過去最低の数十万円で、次の号の制作費を捻出できるギリギリの線でやっています」

 イオングループ傘下のミニストップは、コンビニ最大手のセブン-イレブンなどとは違った独自色の濃い運営で知られる。早くから食事スペースを作るなどの路線で他社との差別化を進めてきたが、今回の決定は、まさにその食事スペースの利用客でもある子ども連れの女性客からの声に対応した結果だとされる。

 ただ、もともとエロ雑誌がミニストップで大きな売り上げをあげていたわけではなく、インターネット普及以来、雑誌全体のセールスが右肩下がりで、弱小雑誌はいつ取り扱いがなくなってもおかしくない状態が続いていた。

 店によっては「エロ雑誌を置く場所を、ほかの商品に使いたい」という要望を出すところもあったという。ましてチェーン全体のイメージに関わるエロ雑誌については、小さな売り上げにこだわるより、全廃して評判を上げ、新規客を獲得する方が正常な経営判断という声も多く、小売業者としては当たり前の話かもしれない。

 セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ大手3社は現時点で今後の対応を決めてはいないが、前出編集者は「エロ雑誌の業界シェアは大手3社で8割以上あって、ミニストップの市場占有率は小さいんですが、イオングループがそういう判断をしたというニュースのインパクトは大きい」という。30年以上もエロ雑誌の制作だけ飯を食ってきたからこそ「いよいよ失業を覚悟しなくてはいけなくなってきた」と諦めムード。

「いまや大手の書店チェーンでもエロ雑誌は置いてくれなくなりましたからね。わずかな部数で成り立つ中途半端なマニア本は、僕みたいに編集者ひとりふたりで細々やってますが、書店流通が全滅状態なので、最後の生命線はコンビニ。これがなくなったら営業終了以外に道はないです」(同)

 この編集者は過去、一部コンビニに対して「プライベートブランド」の独自エロ雑誌の企画を交渉していたことがあるという。

「昔はまだ、そんな話も検討はしてくれましたが、今じゃ打ち合わせのテーブルにもついてくれないです。エロ雑誌の編集部の多くは都内にあるんですが、その東京都には『青少年健全育成条例』があるので、条例に引っかけて潰すのも知事の裁量ですぐやれる話。もしかすると、支持率急落の小池(百合子)知事が人気取りでそこまでやるかもしれないですよ。前に石原(慎太郎)都政でも、歌舞伎町の浄化作戦とかで風俗店が一掃されたでしょう?」(同)

 過去、1冊に数百万円の予算があったエロ雑誌も、「いまでは10分の1以下で、女性の写真や動画を撮る余裕すらもなくなり、AVメーカーなどから素材を借りて作っている状態」と編集者。

「そのAVも出演強要問題が出てから、それまで緩かった出演者の権利保護が厳しくなって、出演作品の二次使用も許可が必要になり、使用しにくくなっています。だから素材供給と流通経路、まさに八方塞がりなんですよ。さらにエロ雑誌は作り手も買い手も高齢化しているので、いずれは絶滅するんでしょうけどね」(同)

 これも止められない時代の流れか。

(文=高山登/NEWSIDER Tokyo)

「上から目線の権力の介入」千葉市が主導するミニストップの“エロ本規制”に、日本雑誌協会からも批判

 コンビニチェーンのミニストップが、来年1月から「成人誌」の取扱を中止することを発表し、出版業界に波紋が広がっている。

 ミニストップの発表では「女性がコンビニを利用する機会が増えているのを受け、中食・内食商品の強化やWAON POINTカードの導入など女性により利便性の高いコンビニエンスストアへの変化」を進めてきたとし「成人誌の陳列対策に取り組んでいた千葉市からの働きかけをきっかけ」として、取扱の中止を判断したとしている。

 千葉市では今年2月、大阪府堺市が一部コンビニで実施している施策と同様に、陳列棚の成人誌に不透明のフィルムを巻いて、表紙の一部を隠す取り組みを試験的に行う方針を発表。しかし、6月になって打診を受けたセブン-イレブンが、この取り組みを断っていたことが明らかになっていた。

 これを受け、筆者の取材に応じた千葉市こども未来局こども未来部健全育成課の小倉哲也氏は「ほかのチェーン店……イオン系列のミニストップさんなどとも話はしている」と、フィルム包装以外の取り組みを企図していることを明らかにしていた。

 千葉市が模倣を目論んだ堺市のフィルム包装は、大阪府が青少年健全育成条例で行っている規制と、出版社側の自主規制を逸脱した施策だと批判の対象になり、日本雑誌協会と日本書籍出版協会が「図書を選択する自由を奪い『表現の自由』を侵害する行為。大阪府の青少年健全育成条例も逸脱している」として繰り返し批判しているもの。そうした批判を知りながらも同様の施策を行おうとした背景には、なんらかの形で目に見える「規制」の成果を挙げたいという意図が見え隠れしている。

 千葉市の熊谷俊人市長は、この件に関して自身のTwitterでコメント。ここで熊谷市長は、次のように記している。

 これまで、出版業界ではコンビニに陳列される「グレーゾーン誌」に2点シール止めを施すなど、さまざまな自主規制を実施している。熊谷市長の「業界の自主改革を期待します」という言葉には、こうした取組の積み重ねが理解できているのか疑問を感じるところだ。

 日本雑誌協会編集倫理委員長の高沼英樹氏は、熊谷市長のツイートに憤りを隠さない。

「熊谷市長のツイートは、上から目線。民間の判断とはいうが、権力の介入ではありませんか」

 高沼氏が問題点として指摘するのは、ミニストップがリリースで記している「成人誌」の基準だ。リリースでは「成人誌」の基準として、日本フランチャイズチェーン協会のガイドラインを「参考」として掲げている。

 

「成人誌」の定義
※(社)日本フランチャイズチェーン協会の自主基準(ガイドライン)より抜粋

1.各都道府県の指定図書類及び出版倫理協議会の表示図書類は取り扱わない。

2.それ以外の雑誌については、各都道府県青少年保護育成条例で定められた未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類を「成人誌」と呼称する。

 

 ここで問題となるのは、2の部分だ。

「このガイドラインでは、どの雑誌が成人雑誌に該当するか基準が曖昧です。『FLASH』(光文社)のような一般週刊誌から『ヤングマガジン』(講談社)のようなマンガ雑誌までもが対象になりかねません」(高沼氏)

 高沼氏が危惧は、すぐにはないとしても、この曖昧な規制がやがて一般誌まで広がっていくことにある。

「条例でやると<表現の自由>にひっかかるから、あくまで民間からという形で、動きを規制したにすぎません」と、実態としては公権力の規制であるとする高沼氏。ミニストップの記者会見は熊谷市長も同席し共同で行われたもの。これを「民間の取組」とするのには、無理がある。

 新たな形の規制強化に、どのような対応をしていけばよいのか?
(文=昼間たかし)

「上から目線の権力の介入」千葉市が主導するミニストップの“エロ本規制”に、日本雑誌協会からも批判

 コンビニチェーンのミニストップが、来年1月から「成人誌」の取扱を中止することを発表し、出版業界に波紋が広がっている。

 ミニストップの発表では「女性がコンビニを利用する機会が増えているのを受け、中食・内食商品の強化やWAON POINTカードの導入など女性により利便性の高いコンビニエンスストアへの変化」を進めてきたとし「成人誌の陳列対策に取り組んでいた千葉市からの働きかけをきっかけ」として、取扱の中止を判断したとしている。

 千葉市では今年2月、大阪府堺市が一部コンビニで実施している施策と同様に、陳列棚の成人誌に不透明のフィルムを巻いて、表紙の一部を隠す取り組みを試験的に行う方針を発表。しかし、6月になって打診を受けたセブン-イレブンが、この取り組みを断っていたことが明らかになっていた。

 これを受け、筆者の取材に応じた千葉市こども未来局こども未来部健全育成課の小倉哲也氏は「ほかのチェーン店……イオン系列のミニストップさんなどとも話はしている」と、フィルム包装以外の取り組みを企図していることを明らかにしていた。

 千葉市が模倣を目論んだ堺市のフィルム包装は、大阪府が青少年健全育成条例で行っている規制と、出版社側の自主規制を逸脱した施策だと批判の対象になり、日本雑誌協会と日本書籍出版協会が「図書を選択する自由を奪い『表現の自由』を侵害する行為。大阪府の青少年健全育成条例も逸脱している」として繰り返し批判しているもの。そうした批判を知りながらも同様の施策を行おうとした背景には、なんらかの形で目に見える「規制」の成果を挙げたいという意図が見え隠れしている。

 千葉市の熊谷俊人市長は、この件に関して自身のTwitterでコメント。ここで熊谷市長は、次のように記している。

 これまで、出版業界ではコンビニに陳列される「グレーゾーン誌」に2点シール止めを施すなど、さまざまな自主規制を実施している。熊谷市長の「業界の自主改革を期待します」という言葉には、こうした取組の積み重ねが理解できているのか疑問を感じるところだ。

 日本雑誌協会編集倫理委員長の高沼英樹氏は、熊谷市長のツイートに憤りを隠さない。

「熊谷市長のツイートは、上から目線。民間の判断とはいうが、権力の介入ではありませんか」

 高沼氏が問題点として指摘するのは、ミニストップがリリースで記している「成人誌」の基準だ。リリースでは「成人誌」の基準として、日本フランチャイズチェーン協会のガイドラインを「参考」として掲げている。

 

「成人誌」の定義
※(社)日本フランチャイズチェーン協会の自主基準(ガイドライン)より抜粋

1.各都道府県の指定図書類及び出版倫理協議会の表示図書類は取り扱わない。

2.それ以外の雑誌については、各都道府県青少年保護育成条例で定められた未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類を「成人誌」と呼称する。

 

 ここで問題となるのは、2の部分だ。

「このガイドラインでは、どの雑誌が成人雑誌に該当するか基準が曖昧です。『FLASH』(光文社)のような一般週刊誌から『ヤングマガジン』(講談社)のようなマンガ雑誌までもが対象になりかねません」(高沼氏)

 高沼氏が危惧は、すぐにはないとしても、この曖昧な規制がやがて一般誌まで広がっていくことにある。

「条例でやると<表現の自由>にひっかかるから、あくまで民間からという形で、動きを規制したにすぎません」と、実態としては公権力の規制であるとする高沼氏。ミニストップの記者会見は熊谷市長も同席し共同で行われたもの。これを「民間の取組」とするのには、無理がある。

 新たな形の規制強化に、どのような対応をしていけばよいのか?
(文=昼間たかし)

ストーカー事件続発の裏で……SNS“悪用”を推奨する女性誌の罪

 千葉県在住の20代男性に「好きだ」「愛してる」「新婚旅行は北海道一周したい」などのメールを3日間で80通以上も一方的に送りつけた疑いで、千葉・我孫子市の無職42歳、中村弘美容疑者が逮捕された。容疑者は調べに対し「好きだからメールをたくさん送った」と容疑を認めているという。

 中村容疑者は、男性が勤務する会社に客として訪れたのがきっかけで、男性の通勤時などに現れるなど、およそ4年間も付きまとったという。ありがちなストーカー事件ではあるのだが、奇妙なのは、容疑者が男性の携帯番号やメールアドレスなどを入手していたことだ。捜査を追っている日刊紙記者によると「捜査中の話ではありますが、容疑者は男性のSNSも毎日閲覧していたらしい」という。

 SNSを駆使したストーカーは近年、社会問題化しつつある話で、法改正のきっかけとなった昨年5月の小金井ストーカー殺人未遂事件は、音楽活動をする女子大生がファンの男に刃物で刺され、一時重体となった。女性は事前に「Twitterで執拗な書き込みをされている」と警察に相談していたが、食い止められなかった。

 法改正では、SNSでしつこくメッセージを送信したりすることも違法とされ、警察が緊急性のあるストーカー行為とみなした場合、事前の警告なしに禁止命令を出せることになった。また、被害者の告訴なしに起訴できる非親告罪にもなっている。

 ストーカー相談窓口を開設するボランティア団体の職員は「DV夫から逃げても、SNSで居場所を特定されストーカーされる例などもあって、いまやSNSで他人をしつこく詮索することも犯罪者予備軍といえる。その傾向が少しでもあれば、どんどん聴取をしてほしい」とまで言っている。

 しかし、ストーカー行為を「恋愛テクニック」と混同して、後押しするメディアもある。主婦の友社の女性誌「mina」2017年11月号では「SNSで彼をオトす10のこと」などという企画を掲載し、「今どきの恋愛上手」が「心を揺さぶるあざとい投稿で男心をコントロールしている」と記載。「趣味は偽造可能!」「彼のSNSをこっそり見つける」などとして、SNSを駆使した男性への追跡方法が書かれているのだ。

 SNSにおける「名前検索のコツ」に始まり、「彼の友達のSNSを探す」「位置情報から根こそぎチェック」などという特定の相手のSNSを探し出し、相手が「非公開」にしていても、ウソをつくなどして友達申請をして近づく方法を教唆。白石梨沙なるライターによる「1年後にプロポーズされる完全プロジェクト」などとした記事は、読者の間でも物議を醸し、「SNSの悪用を推奨している」「同じことを男性がやったら犯罪扱いされる」「いかにもモテない人が考えそうな迷惑行為」など厳しい意見が飛び交っている。

 また、別の雑誌では昨年、「かわいい店員女性を落とす」などとしてSNSを駆使する方法を書いた記事で、コンビニ店員の女性を狙った例が書かれていたことから、一部コンビニで問題視され、この雑誌が本棚から排除寸前となる騒動もあった。

 目的のためなら相手の迷惑も考えず手段を選ばないという雑誌記事の方向性は、まさに一方的な好意を押し付けるストーカーと同じ目線があるようにも見える。前出のボランティア職員は「ストーカーになる人の多くは自分の行為に罪悪感を持たない異常者。この雑誌の書き手も同類なのでは」と手厳しい。ただ、記事を参考にした追跡行動は下手すれば、法改正後の警察の捜査対象にもなりかねない話。そんな女性読者が出ないことを祈りたい。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

ポン中だって“白馬の王子”に夢中! 女囚たちの愛読書は「ハーレクイン・ロマンス」

nakanorumi19 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■獄中はヒマなので、本も読みます

 今年の夏は、7月は暑かったけど、8月の朝晩は寒いくらいの時もありましたね。ホンマお天気だけは、どうしようもないですね。

ムショや拘置所といえば「夏は暑くて冬は寒い」場所の典型で、とにかく夏は暑かった記憶しかありません。布団敷いて寝てるのに、朝には布団の下の畳が汗で濡れてしまうという始末……。毎夏に貸与されるうちわでパタパタとあおぎ、暑い空気をかき回していたものです。それでも女子刑務所はマシなんですよ。男子刑務所は、よく死人が出ないなあという感じです。

 そして、涼しくなってくると、「読書の秋」がやってきます。シャバでは本どころか文字が読めないようなレベルのコたちが、ムショでは必死に字を覚えることも珍しくありません。まあ塀の中は「とにかくヒマ」だからなんですけどね。

 本は、基本的に親族などからの差し入れに頼ります。届いた本は、本来「規律違反」なんですが、同じ房のコたちにも貸してあげて、みんなで読んでいました。施設内には「官本」(かんぼん)といって、備え付けの本もあります。これがまた昭和時代の本ばっかりで、めちゃめちゃ古くて汚かったですね。

■「実話ドキュメント」は、みんな読んでたのに……

 今年はついに「実ドキュ」こと「月刊実話ドキュメント」(マイウェイ出版)の休刊が発表されました。ヤクザを扱う雑誌を作っている会社には銀行がお金を貸してくれないのだそうで、それも失礼な話ですけどね。

 女子刑務所では、「実話時報」(竹書房/こちらもとっくに廃刊)や「実話時代」(三和出版/こちらは健在)などよりも「実ドキュ」のほうが人気でした。企画も組織(暴力団)の人事は少なめで、結構、読者目線だったんです。

 特に、「拘置所通信 塀の中からの真実の叫び」はみんな読んでいて、私も投稿して掲載されたことがあります。接見禁止処分を受けている時などは、弁護士に頼んで投稿してもらえることも人気の秘密でした。まあ内容は結構しょうもないんですが、それでもうれしかったです。

 あとは、「出すに出せない一通の手紙 塀の中のあの人へ…」も好きでしたね。当時の彼からの励ましの手紙が掲載されていたことがあって、「いつまでも待ってる」とか書かれて、もう泣いちゃいましたね。

 当事者にしかわからへんように「○○の□□ちゃんへ」みたいに書くんです。それと、巻末の「逮捕者一覧」に知り合いが出ているかどうかも、いつもチェックしてました。「うわー。○さん、殺人教唆ってアカンやん」みたいな(笑)。こういう実話系の雑誌は、広告もおもしろいのが特徴でしたね。ハゲやED(勃起不全)の薬とか、スタンガンとか防弾ベストとか催涙ガスとかが普通に並んでるんです。

 身内にヤクザが関係していない懲役は、よくも悪くも、もっと「女子らしい」本を読んでます。人気があるのは、やはり「女性セブン」(小学館)や「週刊女性」(主婦と生活社)「女性自身」(光文社)といった女性週刊誌やレディスコミックなどですね。私も獄中で初めてレディコミを読みましたが、エロくてエロくて、おかしな気分になりそうだったので、控えめにしてました。あとは嫁と姑のバトル、実話の怪談「ほんとにあった怖い話」(朝日新聞出版)なんかもみんな好きでした。

 そして、特に人気があったのは、王道ラブロマンスの「ハーレクイン・ロマンス」(ハーパーコリンズ・ジャパン)のシリーズです。『御曹司のプロポーズ』とか『億万長者の花嫁』とか、そういうタイトルの小説で、最近は漫画化もされているようです。

 最初は私も「ポン中のくせに、白馬の王子に憧れるんか!」「そんなもん、私たちは護送車がお迎えやん。腰縄と手錠付きで!」とかバカにしてましたけど、読んでみたら、わりとおもろかったです。さすがロングセラーですよね。興味がある方はお試しください。

 まあ私の場合は『血と骨』(梁石日/幻冬舎)とか『新宿鮫』シリーズ(大沢在昌/光文社)とか『不夜城』(馳星周/KADOKAWA)とかのハードな感じが好きでしたけどね。現実も非現実的な生活のときも、常に気持ちはハードボイルド!! ってことです。

 出所後もちゃんと読書を続けたら、もっと違う人生を歩めたかもしれませんが、もちろん出たら全然読みません。

 せっかくの読書習慣を捨て去るのは、ちょっともったいないですかね。もう少し涼しくなったら、久々に読んでみようかな? ちなみに中で読んだ本で「もういっぺん読みたい本」は、『仁義なき戦い』の著者でもある飯干晃一さんの『天女を背負った極道』です。実際にあった山口組の三代目襲撃事件をモデルにしていて、いい話ではないですが、心にしみました。今は『天女の極道』(祥伝社)に改題されていて、電子書籍でも買えるようです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

“羽生結弦バブル”に群がる出版界、ほぼ無許可で粗製乱造される特集雑誌がバカ売れ!

 ルックスやキャラクターも相まって、圧倒的な人気を博している羽生だが、そうなるとその人気にあやかろうとする者も出てくる。事実、彼の関連書籍やDVD、“オフィシャル”で特集した雑誌の売り上げは軒並み好調で、雑誌、新聞関係者が手を出したくなるのも仕方がない。しかし、人気者だけに取材のハードルは高い。

「フィギュアの選手に取材する方法はいろいろあります。関係者にコネがあるとか、大会の運営にも関わる日本スケート連盟に申請するとかね。しかし、彼らはアスリートですから、広報活動よりトレーニングを優先します。そうなると取材できるのは、選手や連盟と信頼関係があるスポーツ誌や老舗の雑誌などになります。それなのに、堂々と羽生を表紙にしている雑誌は多いですよね。あれは、報道という名目のもと選手や連盟にも許可をとらず、ろくな取材もせず、勝手に出しているんです」

 そう教えてくれたのは、フリー編集者のN氏。N氏によれば、羽生が14年のソチオリンピックで金メダルを取った時から、出版界の“羽生フィーバー”は始まったという。

「当時、『羽生に取材したいけどコネはないか?』といくつかの版元(出版社)から連絡がありましたが、私は芸能の方が専門なのでお断りしました。でも、昔お世話になったニュース系雑誌の編集長に頼まれて、伝手を頼ってスポーツ雑誌の編集者に聞いてみたところ、どの雑誌も独占取材は順番待ちの状態だったようです。それなら仕方がないと、急きょフィギュア専門のライターさんに執筆をお願いし、通信社の写真を使って大会の模様を10ページほど掲載しました。報道としてね。それでも普段より10%ほど実売が伸びたそうです。しかし、そこでいくつかの出版社が、通信社の写真をメインに使って、ほとんど文字がない、ほぼ羽生の写真だけの雑誌を出したから、同業者たちは『どうやって許可をとったんだ!?』と驚いていましたよ」

 その後、大会ごとに2号目、3号目が発売され、N氏が印刷会社から聞いたところでは、ある雑誌は1号目で2万部ほどだった発行部数が、号を重ねるごとに3万、4万と増えていったという。

「出版不況の影響で、定期発行誌でも2万部以下の媒体が多い中、この部数は異常でした。また、2号目、3号目と出せるということは、実売は少なくとも5割か6割を超えていたはず。重版(増刷)した号もあったそうなので、実際はもっと売れていたでしょうね」(元編プロ社員)

 そうしたお祭り状態の中で羽生関連の雑誌は増えていったが、その中で、如実に差が現れ始めた。

「普通の神経を持った編集者なら、特集ならともかく、いくら売れるといっても同じ人間を表紙にし続けることはありません。芸能誌でいえば、いくら売れるといってもジャニタレばかりを表紙にしないようにね。それに、予算をケチって専門のライターではなく、にわかファンやネットで情報を集めただけの人間に記事を書かせるから間違いも多いし、内容の厚みにも差が出ます。実際、フィギュア専門のライターからも、この手の雑誌は見放されていましたね」(出版社社員)

 正規で羽生の特集を作っている編集者たちの苦労や努力を知っただけに、N氏はそうした“非正規”の雑誌を見るたびに、苦々しい気持ちになるという。では、それらを正規の本と、どのように見分ければいいのだろうか?

「主な見分け方は2つ。ひとつ目は写真のクレジットです。海外での大会ならともかく、スポーツ関連の出版社なら、国内の大会では必ずリンクで自分たちの写真を撮ります。アフロなど通信社系の写真だけで誌面を構成している本は、クレジットに通信社名が入っています。自分たちではリンクでの取材に許可をもらえない、あるいは許可を取る気がないということです。もうひとつは、関係者の取材記事がまるでないこと。羽生本人の取材は難しいにしても、彼の後輩である宇野昌磨のように、一緒にフィギュア人気を支える選手や、裏方で活躍している人はたくさんいます。そうした人たちに取材もせず、申し訳程度に『注目選手』とかいうタイトルで、取材コメントのないペラペラの記事を書き、羽生の写真ばかり載せている本は、彼の人気にあやかり金もうけをしようとしているだけです。ネットでは羽生の悪口を面白おかしく書き、雑誌では彼をほめたたえている出版社なんかもその手合いでしょうね。その出版社は、日本スケート連盟から警告を受けていたというウワサですよ」(N氏)

 スポーツ誌、老舗雑誌が正規の手段で取材した羽生の特集雑誌を出版し始めた時期、無許可で羽生の特集雑誌を作っていた出版社、編プロの中には「真似しやがって」とあきれるようなことを言う編集者もいたという。

 羽生を応援している人々にとっては、雑誌を通じて彼の活躍を見ることができるのはうれしいだろう。しかし、彼の人気や活躍に便乗して不誠実な本が出版されていることを知り、見極める目も養ってほしい。