「女芸人No.1決定戦THE W」歴代チャンピオンのテレビ対応が素晴らしい。2017年から始まったTHE Wの初代優勝者はゆりやんレトリィバァだったが、第1回の評判は散々だった。「番組が面白くない」というネットの声が多数書きこまれ、今までにないお笑い番組の賞レースなのに、新しい事への苦言が多かった。まだ世間と足並みが揃っていなかった。有名人すらも大会を非難した。そこで、私だけは女芸人研究家…
「阿佐ヶ谷姉妹」カテゴリーアーカイブ
『ゴッドタン』の愛すべき“らしさ”を甦らせた、フジモンVSみなみかわ「転機はヘキサゴンです」
2021年7月21日放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)にゲスト出演した放送作家のオークラは、テレビプロデューサーである佐久間宣行にこう伝えている。
「最近の“お笑い愛”を語る風潮を作り上げたのは、佐久間さんなんじゃないか」(オークラ)
佐久間がプロデューサーを務める『ゴッドタン』(テレビ…
綾野剛のライバルは“阿佐ヶ谷姉妹”!? 中だるみの『アバランチ』、NHKに視聴者流出か
綾野剛主演のフジテレビ系連続ドラマ『アバランチ』に、まさかのライバルが出現した。NHK総合「よるドラ」枠で先週11月8日から放送が始まった『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』だ。
原作は、2018年に幻冬舎から出版された同タイトルのエッセイで、著者は言わずもがな、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子と木村美穂である。姉の“エリコさん”こと渡辺江里子を木村多江が、妹の“ミ…
「クイーン・オブ・地に足」阿佐ヶ谷姉妹の“地の利”と芸能界の椅子取りゲーム
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(10月31~11月6日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
渋谷凪咲「お母さんとお昼寝しながら上沼恵美子さんのラジオ聞いてたり」
芸能界は椅子取りゲームと言われることがある。すでに誰かが座っている席を奪ったり、新しく来た誰かに自分の席を奪われたり。みちょぱこと池田美優がその…
出川哲朗が「ジェラ」した2人の芸能人
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(6月16~22日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
出川哲朗「心の中、超ジェラ」
ジェラ、すなわち、ジェラシー。出川哲朗は、自身が嫉妬している状態を「ジェラ」と言う。そんな出川が先週、テレビで「ジェラ」と2回言った。もちろん、すべてのテレビ番組をチェックしているわけではないので、見落としもあるはずだ。けれど、少なくとも2人に、先週の出川はジェラシーを抱いていた。
1人目は、城島茂。言わずと知れた、TOKIOのリーダーである。19日の『TOKIOカケル』(フジテレビ系)のゲストに呼ばれた出川は、城島への嫉妬を語っていた。
ローションを塗ったジャンプ台を滑り降りて飛距離を競う、そんな企画に出川と城島がともに参加したときのこと。落下地点には、複数のビニールプールが敷き詰められていた。しかし、勢いをつけて飛び出した城島は、片足がプールに、もう片足がプールの外に出るようなところに落下してしまう。プールに見事落ちれば派手に水しぶきが上がり画になるし、プールとプールの隙間に落ちれば、それはそれで「奇跡」として笑いも起きる。が、結果はどちらともいえない中途半端なところ。そんな場面で城島はどうしたか? カメラに映るか映らないかの一瞬で、自分からプールとプールの隙間に体を滑り込ませたのだ。
とっさの機転で笑いを取ったそんな城島に、出川は悔しさを感じたと語る。
「みんな笑ってるけど、オレ正直すっげージェラだった」
2人目は、朝日奈央。NGなしを売りに活躍中の、アイドルグループ出身の女性タレントである。そんな朝日が、22日の『こんな休日どうですか』(同)に出演。内村光良、バカリズム、日村勇紀、武田真治とともにロケをしていた。
で、温泉に入っていたときのこと。このお湯は飲めるらしい。そう聞いた彼女は、浸かっているお湯に直接口をつけ、すかさず飲んだ。本来はコップを使って湯の投入口から飲むものだったようだが、おじさん4人が入っているお湯を躊躇なく飲む朝日。そんな彼女に、日村らは即刻ツッコミを入れていた。
この映像をスタジオで見ていた出川は嫉妬した。
「この出川哲朗も、一瞬躊躇すると思うよ。心の中、超ジェラ」
抱かれたくない男として名前が挙がった時代も今は昔。出川は好感度の高い人気者になった。そんな彼の芸歴は30年近くある。単に芸歴があるだけではない。ロケバラエティやトークバラエティ、ドッキリ企画やゲーム企画など、さまざまなバラエティ番組で最前線のプレイヤーとして活躍し続けている、数少ない芸人のひとりでもある。
そんな出川は、世間の見方の変化とともにスタジオでのトークも増えてきて、最近は少しずつ「語り」始めている。出川のトークは劣って見られることが多いかもしれない。確かに、滑舌ははっきりしていないし、情景の描写もうまいとはいえない。「ジェラ」のような独特の表現も入る。けれど、バラエティ番組の第一線で活躍し、テレビの裏も表も見続けてきた経験に基づくトーク、特に「テレビ芸」の細かい技やバラエティ番組の作り方の変化の解説は、聞いていて「なるほど」と膝を打つことも多い。
城島茂と朝日奈央。アイドルと芸人の境界線上で、少し芸人寄りにいるような2人。出川もまた、もともと役者から出発し、後にリアクション芸人として名をはせた。そんな出川が、同様に芸人以外の分野からリアクション芸に取り組む2人への嫉妬を語る。この「ジェラ」に勝るエールはない。
最近、「お笑い第7世代」というくくりをよく耳にする。発端は、霜降り明星・せいやのラジオでの発言らしい。「M-1グランプリ」で霜降り明星が優勝、キングオブコントでハナコが優勝といったように、2018年は20代の芸人の活躍が目立った。バラエティ番組でも、EXIT、宮下草薙、四千頭身、ゆりやんレトリィバァ、ミキといった若手芸人をよく見る。「お笑い第7世代」は、そんな20代から30代前半ぐらいまでの芸人をくくる言葉として使われているようだ。
ただ、芸人が「世代」ですべて区切れるわけではない。たとえば、阿佐ヶ谷姉妹。ピンクのドレスをまとって歌う彼女たちは、第何世代なのか?
姉妹と名乗りながら血縁関係はない、そんな渡辺江里子と木村美穂の2人が「似ている」という理由でコンビを組んだのは2007年のこと。『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」や『爆笑レッドカーペット』(同) など、テレビに少しずつ出始めたのは10年前後だった。6月7日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「芸歴はっきりさせよう企画」では 、劇団の研究生だった渡辺は1994年には芸能事務所に所属していたともされ、ここから数えるとすでに彼女の芸歴は25年に及ぶ。そして、「第7世代」が躍進したといわれる18年、『THE W』で優勝した2人はすでに40代中盤だった。
そんな「第○世代」の枠外にいる姉妹が、21日の『桃色つるべ』(関西テレビ)に出演。笑福亭鶴瓶やももいろクローバーZとトークしていた。
2人は自分たちのことを「おばさん」と呼ぶ。優勝した『THE W』で披露したのも、おばさんがおばさんのお見舞いに来たり、おばさんがおばさんを誘拐するというネタだった。渡辺は、「おばさん」の定義を次のように語る。
「やっぱりおばさんって、生き物の輝きに涙するようになるっていうか。お花ひとつとっても、ただピンクだなぁ、赤だなぁじゃなくて、はぁー、育ってるわねぇとか、伸びてるわねぇみたいなことで、ちょっとホロっときたり」
生命の輝きに涙するのが「おばさん」。木村はその具体例として、「山菜を食べたときとかに命の輝きを感じて、涙が出る」と語った。
阿佐ヶ谷姉妹の2人からそう聞くとなんだかリアリティがあり、「おばさん」ってそうなのかな、とも思う。けれど、姉妹の実年齢、40代中盤という客観的な事実を知ると、それは少し誇張しすぎな気もする。一回り、あるいは二回りぐらい上の世代の話なんじゃないか、と。けれど、彼女たちが語ると、やっぱり説得力がある。年齢の遠近感がおかしくなってくる。
そんな阿佐ヶ谷姉妹は番組終盤、ただただトルコ行進曲をアカペラで歌うというネタを見せていた。他の番組ではショートバージョンでお送りされることもあるネタだが、この日披露されたのはほぼフルバージョン。もともとこのトルコ行進曲の歌ネタは、安田祥子・由紀さおり姉妹のパロディだったはずだ。しかし、もうそんな文脈も離れ、ピンクの衣装を着た「おばさん」が、なぜだかずっとパヤパヤ、ダバダバ歌っているというおかしみに移行している。歌い始める前、2人は鶴瓶やももクロに優しく語りかけた。
「眠かったら、寝ちゃってください」
お笑いBIG3は、いまだに現役で活躍している。中堅以下は海外に飛び出したり、YouTuberになったり、オンラインサロンを開いたりなど、テレビの外の世界にも活躍の足場を築こうとしている。「上がつかえて、下が出ていけない」という嘆きもよく耳にする。そうこうしているうちに、新世代は順番待ちの列を一気にまくろうとしている。
テレビの中で「面白い」を競い合うそんなお笑い芸人の栄枯盛衰を横目に、世代も年齢も曖昧な、それでいて「おばさん」の世界観は明確な阿佐ヶ谷姉妹は、今日も笑みをたたえてダバダバ歌う。「面白い」のカテゴリーは、「ほほえましい」の方向に少し広がる。
(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)
出川哲朗が「ジェラ」した2人の芸能人
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(6月16~22日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
出川哲朗「心の中、超ジェラ」
ジェラ、すなわち、ジェラシー。出川哲朗は、自身が嫉妬している状態を「ジェラ」と言う。そんな出川が先週、テレビで「ジェラ」と2回言った。もちろん、すべてのテレビ番組をチェックしているわけではないので、見落としもあるはずだ。けれど、少なくとも2人に、先週の出川はジェラシーを抱いていた。
1人目は、城島茂。言わずと知れた、TOKIOのリーダーである。19日の『TOKIOカケル』(フジテレビ系)のゲストに呼ばれた出川は、城島への嫉妬を語っていた。
ローションを塗ったジャンプ台を滑り降りて飛距離を競う、そんな企画に出川と城島がともに参加したときのこと。落下地点には、複数のビニールプールが敷き詰められていた。しかし、勢いをつけて飛び出した城島は、片足がプールに、もう片足がプールの外に出るようなところに落下してしまう。プールに見事落ちれば派手に水しぶきが上がり画になるし、プールとプールの隙間に落ちれば、それはそれで「奇跡」として笑いも起きる。が、結果はどちらともいえない中途半端なところ。そんな場面で城島はどうしたか? カメラに映るか映らないかの一瞬で、自分からプールとプールの隙間に体を滑り込ませたのだ。
とっさの機転で笑いを取ったそんな城島に、出川は悔しさを感じたと語る。
「みんな笑ってるけど、オレ正直すっげージェラだった」
2人目は、朝日奈央。NGなしを売りに活躍中の、アイドルグループ出身の女性タレントである。そんな朝日が、22日の『こんな休日どうですか』(同)に出演。内村光良、バカリズム、日村勇紀、武田真治とともにロケをしていた。
で、温泉に入っていたときのこと。このお湯は飲めるらしい。そう聞いた彼女は、浸かっているお湯に直接口をつけ、すかさず飲んだ。本来はコップを使って湯の投入口から飲むものだったようだが、おじさん4人が入っているお湯を躊躇なく飲む朝日。そんな彼女に、日村らは即刻ツッコミを入れていた。
この映像をスタジオで見ていた出川は嫉妬した。
「この出川哲朗も、一瞬躊躇すると思うよ。心の中、超ジェラ」
抱かれたくない男として名前が挙がった時代も今は昔。出川は好感度の高い人気者になった。そんな彼の芸歴は30年近くある。単に芸歴があるだけではない。ロケバラエティやトークバラエティ、ドッキリ企画やゲーム企画など、さまざまなバラエティ番組で最前線のプレイヤーとして活躍し続けている、数少ない芸人のひとりでもある。
そんな出川は、世間の見方の変化とともにスタジオでのトークも増えてきて、最近は少しずつ「語り」始めている。出川のトークは劣って見られることが多いかもしれない。確かに、滑舌ははっきりしていないし、情景の描写もうまいとはいえない。「ジェラ」のような独特の表現も入る。けれど、バラエティ番組の第一線で活躍し、テレビの裏も表も見続けてきた経験に基づくトーク、特に「テレビ芸」の細かい技やバラエティ番組の作り方の変化の解説は、聞いていて「なるほど」と膝を打つことも多い。
城島茂と朝日奈央。アイドルと芸人の境界線上で、少し芸人寄りにいるような2人。出川もまた、もともと役者から出発し、後にリアクション芸人として名をはせた。そんな出川が、同様に芸人以外の分野からリアクション芸に取り組む2人への嫉妬を語る。この「ジェラ」に勝るエールはない。
最近、「お笑い第7世代」というくくりをよく耳にする。発端は、霜降り明星・せいやのラジオでの発言らしい。「M-1グランプリ」で霜降り明星が優勝、キングオブコントでハナコが優勝といったように、2018年は20代の芸人の活躍が目立った。バラエティ番組でも、EXIT、宮下草薙、四千頭身、ゆりやんレトリィバァ、ミキといった若手芸人をよく見る。「お笑い第7世代」は、そんな20代から30代前半ぐらいまでの芸人をくくる言葉として使われているようだ。
ただ、芸人が「世代」ですべて区切れるわけではない。たとえば、阿佐ヶ谷姉妹。ピンクのドレスをまとって歌う彼女たちは、第何世代なのか?
姉妹と名乗りながら血縁関係はない、そんな渡辺江里子と木村美穂の2人が「似ている」という理由でコンビを組んだのは2007年のこと。『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」や『爆笑レッドカーペット』(同) など、テレビに少しずつ出始めたのは10年前後だった。6月7日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「芸歴はっきりさせよう企画」では 、劇団の研究生だった渡辺は1994年には芸能事務所に所属していたともされ、ここから数えるとすでに彼女の芸歴は25年に及ぶ。そして、「第7世代」が躍進したといわれる18年、『THE W』で優勝した2人はすでに40代中盤だった。
そんな「第○世代」の枠外にいる姉妹が、21日の『桃色つるべ』(関西テレビ)に出演。笑福亭鶴瓶やももいろクローバーZとトークしていた。
2人は自分たちのことを「おばさん」と呼ぶ。優勝した『THE W』で披露したのも、おばさんがおばさんのお見舞いに来たり、おばさんがおばさんを誘拐するというネタだった。渡辺は、「おばさん」の定義を次のように語る。
「やっぱりおばさんって、生き物の輝きに涙するようになるっていうか。お花ひとつとっても、ただピンクだなぁ、赤だなぁじゃなくて、はぁー、育ってるわねぇとか、伸びてるわねぇみたいなことで、ちょっとホロっときたり」
生命の輝きに涙するのが「おばさん」。木村はその具体例として、「山菜を食べたときとかに命の輝きを感じて、涙が出る」と語った。
阿佐ヶ谷姉妹の2人からそう聞くとなんだかリアリティがあり、「おばさん」ってそうなのかな、とも思う。けれど、姉妹の実年齢、40代中盤という客観的な事実を知ると、それは少し誇張しすぎな気もする。一回り、あるいは二回りぐらい上の世代の話なんじゃないか、と。けれど、彼女たちが語ると、やっぱり説得力がある。年齢の遠近感がおかしくなってくる。
そんな阿佐ヶ谷姉妹は番組終盤、ただただトルコ行進曲をアカペラで歌うというネタを見せていた。他の番組ではショートバージョンでお送りされることもあるネタだが、この日披露されたのはほぼフルバージョン。もともとこのトルコ行進曲の歌ネタは、安田祥子・由紀さおり姉妹のパロディだったはずだ。しかし、もうそんな文脈も離れ、ピンクの衣装を着た「おばさん」が、なぜだかずっとパヤパヤ、ダバダバ歌っているというおかしみに移行している。歌い始める前、2人は鶴瓶やももクロに優しく語りかけた。
「眠かったら、寝ちゃってください」
お笑いBIG3は、いまだに現役で活躍している。中堅以下は海外に飛び出したり、YouTuberになったり、オンラインサロンを開いたりなど、テレビの外の世界にも活躍の足場を築こうとしている。「上がつかえて、下が出ていけない」という嘆きもよく耳にする。そうこうしているうちに、新世代は順番待ちの列を一気にまくろうとしている。
テレビの中で「面白い」を競い合うそんなお笑い芸人の栄枯盛衰を横目に、世代も年齢も曖昧な、それでいて「おばさん」の世界観は明確な阿佐ヶ谷姉妹は、今日も笑みをたたえてダバダバ歌う。「面白い」のカテゴリーは、「ほほえましい」の方向に少し広がる。
(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)
「いつか阿佐ヶ谷ハイムを……」阿佐ヶ谷姉妹“ルール”なき共同生活のススメ
人情味あふれる町・阿佐ヶ谷の6畳一間のアパートで、本物の姉妹でない2人の40代女性が、6年間に及ぶ共同生活……その実態は、とにかく「のほほん」だった――。
人気お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のリレーエッセイ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が発売された。ひょんなことから始まった新しい住まい探しを経て、現在は別々の部屋(隣同士)に暮らす2人が、あの長くて短かった蜜月の日を思い返す。そこには「自分以外の誰かと一緒に暮らすこと」のヒントがたっぷりと詰め込まれていた。
***
――この本は夫婦が読んでも、すごく共感できる部分とかがあると思うんですよね。誰かと上手に暮らしていく秘訣みたいなのが詰まっている。
美穂(妹) 上手に暮らせてるんですかね。
――普通に暮らしてたら見過ごしてしまうことも、言葉にして初めて気づく……みたいな。
江里子(姉) それこそ6年ぐらい、空気のように当たり前だと思って、6畳一間に住んでしまっていました。周りから「そんな狭いところに、よく一緒に住めますね」と言われつつ。「どこがおかしいのかな」って思ってたんですけど、書かせていただいてるうちに、美穂さんにもいろいろと折り合いをつけてもらっていたんだなあって。そういう意味では、確かに少し冷静になれたというか。直接ぶつけられないことを、お互いにね、文章でぶつけ合って、分析して。時には、「あいつめ……」みたいな感じで書いて、少し溜飲を下げて、日常に戻るみたいなことができた気がしますね。
美穂 私のほうが、不満が多かったのかしら(笑)。でも書くことで、ストレス発散になりましたね。世間のみなさんに「お姉さんこういう人なんです」ってわかってもらえたら、うれしいです。ただ2人の間のことなんで……みなさんがそれをどう思うのか心配です……。
――もともと、幻冬舎のウェブで連載されていたものをまとめた本ですが、随時アップされるお互いのエッセイを読むときは、やはり緊張するものですか?
江里子 でも美穂さん、言葉に出して(キーボードを)打つんですよ(笑)。しかも、書いてる最中に「これでどうですかね」って、チェックを強要するみたいなところがあるので。
美穂 どう思う? どう思う? みたいな。
江里子 それで何カ所か、もみ消した部分もあるんですけど(笑)。でもそうですね……輪ゴムのこととかね、布巾のこととか、なかなか直せないんですよ。気をつけてても、ついボロが出ちゃう。それでも、読んでからは少し意識するようにはなりました。
美穂 確かに「布巾が嫌い」なんてこと、一緒に住んでないと気づかない(笑)。隣同士とかだったら、たぶんわからなかったと思います。
江里子 いやいや、美穂さんの観察眼ですよ。琴線に触れるところの独特さはすごいなと思ったけれどもね。
美穂 私だって「そうか私の服ダサいんだ」ってなりましたよ! 自分でもちょっと考えたくなかったことです。
江里子 「ダサい」って言ってない。まあ、「小学生みたいな靴下」とは言ったけど。
美穂 それなのに、差し色をしたがる。
江里子 昨夜も仕事から帰って、美穂さんの部屋に行かせてもらったんですよ。そこでおしゃれについて話し合って。美穂さん、「お姉さんのファッションは、普通だ」って言うんです。「私のは機能的だ」って。「普通よりも機能のほうが勝ってる」みたいな、そういうことを言われまして。
美穂 おしゃれが、またわからなくなってきてます……(ため息)。
江里子 おしゃれを機能で語っている美穂さんが、ちょっと不思議でしたけど。
■姉が隣の部屋に引っ越して……
――現在はお2人で住んでいたお部屋に美穂さんが残り、隣のお部屋に江里子さんがお引っ越しされて……でも、今でも同じお部屋に集まって、お話ししたりお茶飲んだりは日常的にされてらっしゃるんですね。部屋を別にして、何が一番変わりましたか?
美穂 お姉さんが一番不満だった、お風呂の順番を私が守ってくれないっていうのが解消されたのかしらね。
江里子 ああ、それはあるかしらね……。
――朝のお風呂の順番ですね(笑)。
江里子「頼むから1カ月ごとに、交互にしてもらえないか」と。
美穂 何回も言われたんですけれどもね。
江里子 時には若干、目に涙を浮かべつつ訴えたこともあったんですけど……守って2日。
美穂 2日ぐらいはね。
江里子 あとはお手洗いね。やっぱり同じ生活リズムだと、だいたいお手洗いに行きたくなるのが同じサイクルなんですよね。
美穂 お姉さんはすぐトイレに引きこもるし。30分ぐらい出てこない。
江里子 お手洗いだけが、私の唯一のプライベートルームみたいになって。個室みたいな気分で。
美穂 そこで1人の時間を楽しんでたから。
江里子 楽しんでた(笑)。
美穂 仕方なくLINEで「トイレに入りたいです」って。
江里子 そのストレスは、なくなったね。
美穂 でも別々になったら、お姉さんのほうが、ちょっと寂しそうなんですよ。
江里子 いや、まあでもそうですね。共同生活が私、結構好きだったので。たとえ自分のスペースが1畳未満であっても、やっぱり一緒にいてもらって、好きなときに好き勝手しゃべることができる相手がいるのは、すごく居心地がよかった。
美穂 でも隣だから。
江里子 お互いの部屋の鍵を持ってるので、「行っていいですか」ってLINEで言って、鍵開けて入らせてもらったり。美穂さんは必ず「ちょっと来てもらえますか」って私を呼びつけるんですけど。
美穂 呼びつけるわけじゃない。
江里子 あ、呼びつけてるわけじゃないの?
美穂 そっちの部屋に行くと、よくないみたいだから。
江里子 まだね、ちょっと部屋が片付いてなくて。
美穂 なかなか入れてくれないんですよ。
江里子 1人になってスペースが広くなったら、そのまま物を置きっぱなしにしちゃう。片付けるのヘタだから、そのまま……美穂さんにも見られたくないんですけど。「見られたくない」って言ってるときこそ、ニヤニヤしながら入ってこようとするんで。
美穂 殺し屋みたいににらまれて。怖かったわ。だから私の部屋で、お茶も打ち合わせもすることになって。
江里子 居心地がいいのよ、あそこに散々住んでたし。
――実家に帰るみたいな気持ち……。
江里子 そうです、そうです。
美穂 お姉さんの部屋でもだんらんしたいですよ。
江里子 まだ整ってない。まだ座布団買ってないのよ、ごめんなさい。
美穂 そういうとこの愛情が、ちょっと足りないんだわ。
江里子 だって、あっちのお部屋のほうがいいでしょう。
美穂 うちにご招待する、っていう気持ちが。
江里子 いや、でも美穂さんのためにラグマットとこたつは買ってきたのよ、ほんとに。でも座布団は買ってない。ごめんなさい。だから、敷いてある布団の上に上がっていいって言ってるじゃない。あら、私たちどうでもいい話を……
■「お姉さんのいびきが……」
――いや、永遠に聞いていたくなります(笑)。小さい頃、自分の部屋を持つことに憧れたけど、いざひとり部屋になると妙に寂しくなる感じを思い出しました。
江里子 わかります! でもやっぱり、隣の部屋でそれぞれに暮らしてるっていうのは、すごくいい選択肢を、奇跡的に得ることができたなあと思って。壁1枚向こうで、なんとなく寝起きしてる感じはわかりますし。時々くしゃみの音とか聞こえますし。ああ、生きてるんだなあ、みたいな。
美穂 お姉さんの電話してる声も聞こえますし、テレビ見て笑ってるバカみたいな声も。
江里子 バカみたいは余計じゃない?
美穂 そういう声も聞こえますけど。
江里子 バカみたいがちょっと余計だけど。
美穂 違うアパートだったら、ちょっと寂しいかもしれないけど。今はちょうどいい安心感がありますね。
――先ほどお風呂の話が出ましたが、2人で暮らしていたときは、ほかにもルールを作っていましたか?
江里子 逆に、ルールをあまり作らなかったことで、私たちはなんとか折り合いつけてこられたのかなっていうのはありましたね。
美穂 まったく守られない。
江里子 こういうルール決めたのに!! ってなると、逆にフラストレーションがたまるじゃないですか。ルールでがんじがらめにするよりも、妥協案を探ってくっていうことが、ここまでこられた理由のひとつかなあとも思ってますね。
美穂 得意なことを各自やったり。
江里子 そうねえ。
美穂 お姉さんがお洗濯したりとか。
江里子 お料理は私で、でも汁ものは美穂さんにやってもらうとか。
美穂 得意分野を各自やったりしてたっていうのが、よかったんですかね。
――どうにも我慢できなくなることはなかったですか?
江里子 どうでした? 私よりも美穂さんのほうがあったんじゃない?
美穂 そうですね。いびき。
江里子 いびきね。
美穂 私が結構宵っ張りなんで、起きてるんですけど、お姉さんは10時ぐらいに眠くなっちゃって。
江里子 私、朝型なんで。
美穂 早めに寝ちゃって。寝た途端いびきをかき始める。寝つきがいい。起きないので。そういうときはYouTubeを大きい音量で見て邪魔したり。
江里子 あとビニール袋ね。
美穂 お姉さんはビニール袋のガサガサした音が嫌いで、ちょっと反応するんですよ、寝てても。それをガサガサガサガサやって。何回もやって、うなされるようにしたりとか。
――うなされる(笑)。
美穂 「うーん」ってうなって、ちょっと止まったりする。それが楽しくて。
■姉妹を悩ませる「出ますよ問題」
――本でも美穂さんのパートは、どこか動物の観察日記みたいな雰囲気を感じました。
江里子 姉の観察日記みたいな感じ。
美穂 そう。書くことで楽しく。
――それまですごい仲よかったのに、一緒に住んだら仲悪くなっちゃうっていうこと、結構あると思うんですよ。
美穂 そっか。嫌いにはなってないですね。
江里子 あら、うれしい。美穂さんに、いっつも言われるんです。「嫌いではないんです」と。「普通です」と。まあ、嫌われてない分、いいですね。
美穂 真ん中ぐらい。
江里子 それはありがたいわね。
美穂 好きでも嫌いでもない。普通。
江里子 ほんとね。普通はありがたいわね。普通って大事よね。
――やっぱり、仲いいと思います(笑)。
美穂 仲いいんですかね。どうなんですかね。
江里子 いや、まあね。
美穂 だいたい2人だもんで。
江里子 そうね。一駅、高円寺から歩いたりもしてるしね、一緒にね。
美穂 薬局も一緒に行きますし。
江里子 そうね。ご飯も食べるしねえ。
――最近はそうでもないですけど、芸人コンビは仲悪いっていうイメージあるじゃないですか。それは照れからくるものかもしれませんが。
江里子 照れ……確かに。照れくさいからあんまり一緒にいないとか、よく言われてますね。ただ私たちは……照れも何もあったもんじゃない。全部バレちゃってるから。今さらもう。私はもともとカッコつけだから、こういうインタビューのときも、ちょっといいこと言おうとしたりしますけど、、それもバレてる。美穂さんに「またカッコつけ」って言われて、反省したりするんですけど。
――それを素直に聞けるのが、すごいと思います。
江里子 機嫌が悪い朝なんかはね。時々イラッとするときありますけどね。言葉尻で腹立たしいこととかいっぱい。まあでも美穂さんも……。
美穂 「出ますよ問題」ね(笑)。
江里子 どっちかが扉を先に出るっていうときに。
美穂 「出ますよ」って言ってほしいっていうのがね。
江里子 なんにも言わずに、先にそーって出てくときがあるんですよ。私、それは嫌だと。「出まーす」って一言言ってもらえるとうれしいなって。そしたら、「出ます」って言ってくれるようにはなったんですけど、なぜか「出ますよ」になった。「よ」がつくと、なんかちょっとカンに触って。「よ」のそのニュアンスが、すごく気になる……。それで返事の「はい」をちょっと語気強めに言ったのが、美穂さんに伝わって「なんかすごい機嫌が悪かったけど、あれはなんだったんだ」と。だから私「『出ますよ』の『よ』が気になったの」って言ったら、それから「よ」をやめてくれたのね。
美穂 だって、そのときの「はい」すごかったんですよ。
――気になるところがちょっとずつ違うのも、いいのかもしれないですね。
江里子 たとえ一緒に暮らしていても、感覚は別ですもんね。そこはわかってもらえないんだろうなとは思ってます。
――基本わかってもらえないってところから始まると、わかってもらえたらすごいうれしいですし。
江里子 あと、すぐに嫌いになられちゃうと困るっていうのがあって。そこはわりと心がけてるところ。危機感を持ってるつもりはあります。
――千鳥ノブさんをして「いま一番ヤバい女芸人」と言わしめる美穂さん(笑)。
美穂 あら、喜んでいいのかしら。
江里子 いいのつけていただいたわね。この本読んでいただいたら、ヤバいってわかると思う。
美穂 私、バレちゃうかしら。
江里子 バレちゃうかしら、じゃないわよ。
■テレビは思い出作り
――本に収録されている書き下ろしの恋愛小説でもやっぱり、片鱗が。
美穂 好きなものをいろいろ入れて書いただけなんですけど。
江里子 いやもう私は、この美穂さんの『3月のハシビロコウ』ができたときに、傑作だなと思って。人間の目じゃない、むしろ動物の目から見た世界……そういう感じの不思議さがあって。美穂さんの実話じゃないんですけど、美穂さんというフィルターを通して生まれた作品なんですよ。書きながら、その都度その都度、私にまたチェックを強要するんです。それがどんどんいい感じになってくる。それで私、ちょっと一回筆を折ろうかって思ったぐらい。こんな面白いもの書けないからどうしよう……ってなったぐらい。
美穂 私の小説のほうは、お姉さんの生態をいっぱい入れられたんで。それでなんか、楽しく書けたんですよ。お姉さんはすごい肩に力が入ってて。すごいかっこつけで書いてたので、そこは「かっこつけだな」って指摘しました。
――厳しい編集者ですね……。
美穂 すごいいいのを書こうとしてるっていう感じは出てたので。「お姉さん、リラックスして」って。
江里子 本当に、なかなか書けなくてね……。私、向田邦子さんが好きで。向田さんのエッセイや小説に、すごく憧れてて。
美穂 理想が。
江里子 そうね。理想が高かったのよ。書いている途中で、山崎ナオコーラさんの本を読ませていただく機会があって。「ああ、ほんとにプロの方ってすごいな」って。「どうしたら、ああなれるんだろう」って、やっぱり、そっちに行こうとしてた。
美穂 その傾向は、すごい強い。何回言い聞かせても、そう思っちゃう。
江里子 美穂さんはちゃんと自分の身の丈を知った感じで、無理はしない。今回は本当に勉強になったわ。
――たくさんテレビにも出て、いわゆる「ブレーク」というのを果たしてもなおスタンスを変えないのは、すごいことだと思います。お2人のお話を聞いていて、だからこの本には希望と癒やしがあるんだなと。夫婦や親子やきょうだいでなくても、こういう関係性を築けるんだ……っていう。
江里子 そんないいように言っていただいてるんですけど、自分たちで選択してこうなったわけじゃなくて。成り行きでなっちゃったみたいなところはすごくあって。だから恥ずかしいんですけど。
美穂 こんなにのほほんと、なんにも考えないで暮らしてる人がいるんだと思って、安心してもらえたらうれしいですね。
江里子 これがずっと続けばいいわね。50代になっても、60代になっても。私は夢があって……。
――なんですか?
江里子 ゆくゆくはここに親とかもね、呼び寄せたりして。
美穂 阿佐ヶ谷にね。
江里子 阿佐ヶ谷ハイムをね。
美穂 みんな住める。
江里子 共同体じゃないですけど。親やお友達とか、何人か寄り集まって住んでるような。阿佐ヶ谷ハイムができたら、って。
――冠番組を持つとか、そういうことではなかった(笑)。
美穂 だいたい今も、「テレビに出させてもらえるのは思い出作り」って言ってますし。
江里子 そうね。タモリさんに会えたわね。
美穂 これからも思い出が増えたら、ぐらいですかね。
(取材・文=西澤千央)
「いつか阿佐ヶ谷ハイムを……」阿佐ヶ谷姉妹“ルール”なき共同生活のススメ
人情味あふれる町・阿佐ヶ谷の6畳一間のアパートで、本物の姉妹でない2人の40代女性が、6年間に及ぶ共同生活……その実態は、とにかく「のほほん」だった――。
人気お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のリレーエッセイ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が発売された。ひょんなことから始まった新しい住まい探しを経て、現在は別々の部屋(隣同士)に暮らす2人が、あの長くて短かった蜜月の日を思い返す。そこには「自分以外の誰かと一緒に暮らすこと」のヒントがたっぷりと詰め込まれていた。
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――この本は夫婦が読んでも、すごく共感できる部分とかがあると思うんですよね。誰かと上手に暮らしていく秘訣みたいなのが詰まっている。
美穂(妹) 上手に暮らせてるんですかね。
――普通に暮らしてたら見過ごしてしまうことも、言葉にして初めて気づく……みたいな。
江里子(姉) それこそ6年ぐらい、空気のように当たり前だと思って、6畳一間に住んでしまっていました。周りから「そんな狭いところに、よく一緒に住めますね」と言われつつ。「どこがおかしいのかな」って思ってたんですけど、書かせていただいてるうちに、美穂さんにもいろいろと折り合いをつけてもらっていたんだなあって。そういう意味では、確かに少し冷静になれたというか。直接ぶつけられないことを、お互いにね、文章でぶつけ合って、分析して。時には、「あいつめ……」みたいな感じで書いて、少し溜飲を下げて、日常に戻るみたいなことができた気がしますね。
美穂 私のほうが、不満が多かったのかしら(笑)。でも書くことで、ストレス発散になりましたね。世間のみなさんに「お姉さんこういう人なんです」ってわかってもらえたら、うれしいです。ただ2人の間のことなんで……みなさんがそれをどう思うのか心配です……。
――もともと、幻冬舎のウェブで連載されていたものをまとめた本ですが、随時アップされるお互いのエッセイを読むときは、やはり緊張するものですか?
江里子 でも美穂さん、言葉に出して(キーボードを)打つんですよ(笑)。しかも、書いてる最中に「これでどうですかね」って、チェックを強要するみたいなところがあるので。
美穂 どう思う? どう思う? みたいな。
江里子 それで何カ所か、もみ消した部分もあるんですけど(笑)。でもそうですね……輪ゴムのこととかね、布巾のこととか、なかなか直せないんですよ。気をつけてても、ついボロが出ちゃう。それでも、読んでからは少し意識するようにはなりました。
美穂 確かに「布巾が嫌い」なんてこと、一緒に住んでないと気づかない(笑)。隣同士とかだったら、たぶんわからなかったと思います。
江里子 いやいや、美穂さんの観察眼ですよ。琴線に触れるところの独特さはすごいなと思ったけれどもね。
美穂 私だって「そうか私の服ダサいんだ」ってなりましたよ! 自分でもちょっと考えたくなかったことです。
江里子 「ダサい」って言ってない。まあ、「小学生みたいな靴下」とは言ったけど。
美穂 それなのに、差し色をしたがる。
江里子 昨夜も仕事から帰って、美穂さんの部屋に行かせてもらったんですよ。そこでおしゃれについて話し合って。美穂さん、「お姉さんのファッションは、普通だ」って言うんです。「私のは機能的だ」って。「普通よりも機能のほうが勝ってる」みたいな、そういうことを言われまして。
美穂 おしゃれが、またわからなくなってきてます……(ため息)。
江里子 おしゃれを機能で語っている美穂さんが、ちょっと不思議でしたけど。
■姉が隣の部屋に引っ越して……
――現在はお2人で住んでいたお部屋に美穂さんが残り、隣のお部屋に江里子さんがお引っ越しされて……でも、今でも同じお部屋に集まって、お話ししたりお茶飲んだりは日常的にされてらっしゃるんですね。部屋を別にして、何が一番変わりましたか?
美穂 お姉さんが一番不満だった、お風呂の順番を私が守ってくれないっていうのが解消されたのかしらね。
江里子 ああ、それはあるかしらね……。
――朝のお風呂の順番ですね(笑)。
江里子「頼むから1カ月ごとに、交互にしてもらえないか」と。
美穂 何回も言われたんですけれどもね。
江里子 時には若干、目に涙を浮かべつつ訴えたこともあったんですけど……守って2日。
美穂 2日ぐらいはね。
江里子 あとはお手洗いね。やっぱり同じ生活リズムだと、だいたいお手洗いに行きたくなるのが同じサイクルなんですよね。
美穂 お姉さんはすぐトイレに引きこもるし。30分ぐらい出てこない。
江里子 お手洗いだけが、私の唯一のプライベートルームみたいになって。個室みたいな気分で。
美穂 そこで1人の時間を楽しんでたから。
江里子 楽しんでた(笑)。
美穂 仕方なくLINEで「トイレに入りたいです」って。
江里子 そのストレスは、なくなったね。
美穂 でも別々になったら、お姉さんのほうが、ちょっと寂しそうなんですよ。
江里子 いや、まあでもそうですね。共同生活が私、結構好きだったので。たとえ自分のスペースが1畳未満であっても、やっぱり一緒にいてもらって、好きなときに好き勝手しゃべることができる相手がいるのは、すごく居心地がよかった。
美穂 でも隣だから。
江里子 お互いの部屋の鍵を持ってるので、「行っていいですか」ってLINEで言って、鍵開けて入らせてもらったり。美穂さんは必ず「ちょっと来てもらえますか」って私を呼びつけるんですけど。
美穂 呼びつけるわけじゃない。
江里子 あ、呼びつけてるわけじゃないの?
美穂 そっちの部屋に行くと、よくないみたいだから。
江里子 まだね、ちょっと部屋が片付いてなくて。
美穂 なかなか入れてくれないんですよ。
江里子 1人になってスペースが広くなったら、そのまま物を置きっぱなしにしちゃう。片付けるのヘタだから、そのまま……美穂さんにも見られたくないんですけど。「見られたくない」って言ってるときこそ、ニヤニヤしながら入ってこようとするんで。
美穂 殺し屋みたいににらまれて。怖かったわ。だから私の部屋で、お茶も打ち合わせもすることになって。
江里子 居心地がいいのよ、あそこに散々住んでたし。
――実家に帰るみたいな気持ち……。
江里子 そうです、そうです。
美穂 お姉さんの部屋でもだんらんしたいですよ。
江里子 まだ整ってない。まだ座布団買ってないのよ、ごめんなさい。
美穂 そういうとこの愛情が、ちょっと足りないんだわ。
江里子 だって、あっちのお部屋のほうがいいでしょう。
美穂 うちにご招待する、っていう気持ちが。
江里子 いや、でも美穂さんのためにラグマットとこたつは買ってきたのよ、ほんとに。でも座布団は買ってない。ごめんなさい。だから、敷いてある布団の上に上がっていいって言ってるじゃない。あら、私たちどうでもいい話を……
■「お姉さんのいびきが……」
――いや、永遠に聞いていたくなります(笑)。小さい頃、自分の部屋を持つことに憧れたけど、いざひとり部屋になると妙に寂しくなる感じを思い出しました。
江里子 わかります! でもやっぱり、隣の部屋でそれぞれに暮らしてるっていうのは、すごくいい選択肢を、奇跡的に得ることができたなあと思って。壁1枚向こうで、なんとなく寝起きしてる感じはわかりますし。時々くしゃみの音とか聞こえますし。ああ、生きてるんだなあ、みたいな。
美穂 お姉さんの電話してる声も聞こえますし、テレビ見て笑ってるバカみたいな声も。
江里子 バカみたいは余計じゃない?
美穂 そういう声も聞こえますけど。
江里子 バカみたいがちょっと余計だけど。
美穂 違うアパートだったら、ちょっと寂しいかもしれないけど。今はちょうどいい安心感がありますね。
――先ほどお風呂の話が出ましたが、2人で暮らしていたときは、ほかにもルールを作っていましたか?
江里子 逆に、ルールをあまり作らなかったことで、私たちはなんとか折り合いつけてこられたのかなっていうのはありましたね。
美穂 まったく守られない。
江里子 こういうルール決めたのに!! ってなると、逆にフラストレーションがたまるじゃないですか。ルールでがんじがらめにするよりも、妥協案を探ってくっていうことが、ここまでこられた理由のひとつかなあとも思ってますね。
美穂 得意なことを各自やったり。
江里子 そうねえ。
美穂 お姉さんがお洗濯したりとか。
江里子 お料理は私で、でも汁ものは美穂さんにやってもらうとか。
美穂 得意分野を各自やったりしてたっていうのが、よかったんですかね。
――どうにも我慢できなくなることはなかったですか?
江里子 どうでした? 私よりも美穂さんのほうがあったんじゃない?
美穂 そうですね。いびき。
江里子 いびきね。
美穂 私が結構宵っ張りなんで、起きてるんですけど、お姉さんは10時ぐらいに眠くなっちゃって。
江里子 私、朝型なんで。
美穂 早めに寝ちゃって。寝た途端いびきをかき始める。寝つきがいい。起きないので。そういうときはYouTubeを大きい音量で見て邪魔したり。
江里子 あとビニール袋ね。
美穂 お姉さんはビニール袋のガサガサした音が嫌いで、ちょっと反応するんですよ、寝てても。それをガサガサガサガサやって。何回もやって、うなされるようにしたりとか。
――うなされる(笑)。
美穂 「うーん」ってうなって、ちょっと止まったりする。それが楽しくて。
■姉妹を悩ませる「出ますよ問題」
――本でも美穂さんのパートは、どこか動物の観察日記みたいな雰囲気を感じました。
江里子 姉の観察日記みたいな感じ。
美穂 そう。書くことで楽しく。
――それまですごい仲よかったのに、一緒に住んだら仲悪くなっちゃうっていうこと、結構あると思うんですよ。
美穂 そっか。嫌いにはなってないですね。
江里子 あら、うれしい。美穂さんに、いっつも言われるんです。「嫌いではないんです」と。「普通です」と。まあ、嫌われてない分、いいですね。
美穂 真ん中ぐらい。
江里子 それはありがたいわね。
美穂 好きでも嫌いでもない。普通。
江里子 ほんとね。普通はありがたいわね。普通って大事よね。
――やっぱり、仲いいと思います(笑)。
美穂 仲いいんですかね。どうなんですかね。
江里子 いや、まあね。
美穂 だいたい2人だもんで。
江里子 そうね。一駅、高円寺から歩いたりもしてるしね、一緒にね。
美穂 薬局も一緒に行きますし。
江里子 そうね。ご飯も食べるしねえ。
――最近はそうでもないですけど、芸人コンビは仲悪いっていうイメージあるじゃないですか。それは照れからくるものかもしれませんが。
江里子 照れ……確かに。照れくさいからあんまり一緒にいないとか、よく言われてますね。ただ私たちは……照れも何もあったもんじゃない。全部バレちゃってるから。今さらもう。私はもともとカッコつけだから、こういうインタビューのときも、ちょっといいこと言おうとしたりしますけど、、それもバレてる。美穂さんに「またカッコつけ」って言われて、反省したりするんですけど。
――それを素直に聞けるのが、すごいと思います。
江里子 機嫌が悪い朝なんかはね。時々イラッとするときありますけどね。言葉尻で腹立たしいこととかいっぱい。まあでも美穂さんも……。
美穂 「出ますよ問題」ね(笑)。
江里子 どっちかが扉を先に出るっていうときに。
美穂 「出ますよ」って言ってほしいっていうのがね。
江里子 なんにも言わずに、先にそーって出てくときがあるんですよ。私、それは嫌だと。「出まーす」って一言言ってもらえるとうれしいなって。そしたら、「出ます」って言ってくれるようにはなったんですけど、なぜか「出ますよ」になった。「よ」がつくと、なんかちょっとカンに触って。「よ」のそのニュアンスが、すごく気になる……。それで返事の「はい」をちょっと語気強めに言ったのが、美穂さんに伝わって「なんかすごい機嫌が悪かったけど、あれはなんだったんだ」と。だから私「『出ますよ』の『よ』が気になったの」って言ったら、それから「よ」をやめてくれたのね。
美穂 だって、そのときの「はい」すごかったんですよ。
――気になるところがちょっとずつ違うのも、いいのかもしれないですね。
江里子 たとえ一緒に暮らしていても、感覚は別ですもんね。そこはわかってもらえないんだろうなとは思ってます。
――基本わかってもらえないってところから始まると、わかってもらえたらすごいうれしいですし。
江里子 あと、すぐに嫌いになられちゃうと困るっていうのがあって。そこはわりと心がけてるところ。危機感を持ってるつもりはあります。
――千鳥ノブさんをして「いま一番ヤバい女芸人」と言わしめる美穂さん(笑)。
美穂 あら、喜んでいいのかしら。
江里子 いいのつけていただいたわね。この本読んでいただいたら、ヤバいってわかると思う。
美穂 私、バレちゃうかしら。
江里子 バレちゃうかしら、じゃないわよ。
■テレビは思い出作り
――本に収録されている書き下ろしの恋愛小説でもやっぱり、片鱗が。
美穂 好きなものをいろいろ入れて書いただけなんですけど。
江里子 いやもう私は、この美穂さんの『3月のハシビロコウ』ができたときに、傑作だなと思って。人間の目じゃない、むしろ動物の目から見た世界……そういう感じの不思議さがあって。美穂さんの実話じゃないんですけど、美穂さんというフィルターを通して生まれた作品なんですよ。書きながら、その都度その都度、私にまたチェックを強要するんです。それがどんどんいい感じになってくる。それで私、ちょっと一回筆を折ろうかって思ったぐらい。こんな面白いもの書けないからどうしよう……ってなったぐらい。
美穂 私の小説のほうは、お姉さんの生態をいっぱい入れられたんで。それでなんか、楽しく書けたんですよ。お姉さんはすごい肩に力が入ってて。すごいかっこつけで書いてたので、そこは「かっこつけだな」って指摘しました。
――厳しい編集者ですね……。
美穂 すごいいいのを書こうとしてるっていう感じは出てたので。「お姉さん、リラックスして」って。
江里子 本当に、なかなか書けなくてね……。私、向田邦子さんが好きで。向田さんのエッセイや小説に、すごく憧れてて。
美穂 理想が。
江里子 そうね。理想が高かったのよ。書いている途中で、山崎ナオコーラさんの本を読ませていただく機会があって。「ああ、ほんとにプロの方ってすごいな」って。「どうしたら、ああなれるんだろう」って、やっぱり、そっちに行こうとしてた。
美穂 その傾向は、すごい強い。何回言い聞かせても、そう思っちゃう。
江里子 美穂さんはちゃんと自分の身の丈を知った感じで、無理はしない。今回は本当に勉強になったわ。
――たくさんテレビにも出て、いわゆる「ブレーク」というのを果たしてもなおスタンスを変えないのは、すごいことだと思います。お2人のお話を聞いていて、だからこの本には希望と癒やしがあるんだなと。夫婦や親子やきょうだいでなくても、こういう関係性を築けるんだ……っていう。
江里子 そんないいように言っていただいてるんですけど、自分たちで選択してこうなったわけじゃなくて。成り行きでなっちゃったみたいなところはすごくあって。だから恥ずかしいんですけど。
美穂 こんなにのほほんと、なんにも考えないで暮らしてる人がいるんだと思って、安心してもらえたらうれしいですね。
江里子 これがずっと続けばいいわね。50代になっても、60代になっても。私は夢があって……。
――なんですか?
江里子 ゆくゆくはここに親とかもね、呼び寄せたりして。
美穂 阿佐ヶ谷にね。
江里子 阿佐ヶ谷ハイムをね。
美穂 みんな住める。
江里子 共同体じゃないですけど。親やお友達とか、何人か寄り集まって住んでるような。阿佐ヶ谷ハイムができたら、って。
――冠番組を持つとか、そういうことではなかった(笑)。
美穂 だいたい今も、「テレビに出させてもらえるのは思い出作り」って言ってますし。
江里子 そうね。タモリさんに会えたわね。
美穂 これからも思い出が増えたら、ぐらいですかね。
(取材・文=西澤千央)