高級和菓子は毒親の味!? 視聴率は下降するもメディアの暴力に斬り込んだ『明日の約束』第3話

「楽しければいいって人間も、世の中にはいるんです。理由があれば騒げるし、憂さを晴らすこともできる。ハロウィンも事件を楽しむのも同じですよ。無関係な奴らは、当事者や関係者たちを叩くのが楽しいんです。世間にとって、あなたたちは生徒を殺した悪者だ」

 高校生の息子を自殺で失ったことから、セレブ主婦・吉岡真紀子(仲間由紀恵)から「息子は学校に殺された」と犯人扱いされているスクールカウンセラーの日向先生(井上真央)。他のドラマにはない人間のダークサイドをじわじわと描いてみせるのが社会派ミステリー『明日の約束』(フジテレビ系)の魅力です。この暗さ、一度ハマると病み付きになります。冒頭の台詞は、週刊誌記者・小嶋(青柳翔)が初対面の日向先生に向かって放った言葉です。

 下校中の日向先生を呼び止め、話を聞かせろと取材を迫る小嶋記者に対し、日向先生は毅然とした表情で「真実を伝えるのがマスコミじゃないんですか? 事実確認もできていないのに、一方的に学校を悪者扱いする方にお答えすることはないと思います」と取材を断ります。これまでマスコミの取材攻勢にさんざん振り回されてきただろう井上真央がこの台詞を口にすると、すごくリアリティーを感じさせます。ところが、まぁ、帰りの駄賃とばかりに小嶋記者も「あなたたちは社会悪なんですよ。だから覚悟しといたほうがいい」と捨て台詞を吐いて去っていきます。学校という性善説の世界で暮らしている人間は、事件やゴシップをニュースにして生活の糧にしているマスコミ業界人にはネギを背負った鴨のように映って見えるようです。

 初回でも触れましたが、このドラマのベースとなっているのは、2005年に長野県で起きた自殺事件の真相を追ったノンフィクション小説『モンスターマザー 長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』(新潮社)。同著の中で、息子が自殺した原因は学校側にあると高山さおり(仮名)は殺人罪で息子が通っていた高校を訴えています。有名なジャーナリストも、人権派弁護士も、県会議員も、息子を失った悲劇のヒロインである高山さおりの虚言癖に、すっかり翻弄されてしまったのです。亡くなった高校生が強豪バレー部に所属していたことから、体育会系の部活=いじめ&しごき、地方の高校=事なかれ主義の隠蔽体質……とすごく分かりやすい図式の中に、ひとりの高校生が抱えていた心の闇を安直にはめ込んでしまったわけです。マスコミ、そして世論を味方につけたモンスターマザーはさらにモンスター化し、担任教師や校長、バレー部の顧問や部員たちをさんざん苦しめ続けました。

 実在の事件が迷走したのは、テレビによる報道も大きな要因となっていたのですが、『明日の約束』の中ではどう扱うのかな、もしかしたらスルーするのかなと思っていたのですが、関西テレビはそこから逃げずに、ちゃんと描こうという姿勢を見せました。校長(羽場裕一)が開いた記者会見は、テレビ番組の演出によって本意が歪められ、学校側はひとりの生徒の自殺を重く受け止めていないものとして視聴者に広まっていきます。人のよい校長は慣れない記者会見の場で、緊張のあまり思わずカメラに向かって明るい表情を見せようとしてしまい、その部分だけがテレビに映し出され、「生徒が自殺したのにニヤついている不謹慎な校長」というイメージが拡散されていったのです。メディアの暴力の怖さを、まざまざと描いた第3話でした。

 バスケット部の顧問・辻先生(神尾佑)は「生徒の自殺は、バスケ部内でいじめがあったからでは?」という疑惑がどんどん大きくなっていくことに責任を感じ、退職届を出して学校を去っていきます。折しも、第3話が放映された10月31日はハロウィンの真っ最中。家族が待つ自宅へと急ぐ辻先生は、ハロウィンの仮装をした謎の人物からスタンガンで襲われるはめになります。多分、この謎の襲撃犯はバスケ部とも、自殺事件とも直接的には関係のない人物ではないでしょうか。テレビからネットへと拡散されていった情報を鵜呑みにして、辻先生をいじめの元凶と思い込み、義侠心から凶行に及んだのではないかと察します(ハズレてたら、ごめんなさい)。メディアの暴力が生み出した、名前も顔もなく、増殖性の高い恐ろしいモンスターです。

 一方、日向先生の母親・尚子(手塚理美)はすこぶるご機嫌な第3話でした。日向に対してヒステリックに叫んでいた先週の毒親ぶりがまるで嘘のよう。いつも恐る恐る自宅のドアを開けている日向ですが、「この間はごめんね。気持ちの整理がつかなくて。本庄さん、素敵な人じゃない。ひなちゃん、幸せになるのよ」とニコニコ顔の尚子に迎えられました。うかつに地雷を踏まないよう、早々に自分の部屋に引き揚げようとする日向に、地元の名店と思われる「風月庵」の新作和菓子を手渡します。「風月庵」の和菓子に罪はありませんし、きっとさぞ美味しいことでしょう。でも、日向には、その和菓子の美味しさすら、つらいのです。母親である尚子のことを100%嫌いになれれば、さっさと自宅を出ていく決心がつくのですが、尚子は感情を爆発させたかと思えば、この日のようにとても優しい表情も見せるのです。毒親とはいえ、母は母。そんな尚子を日向は切り捨てることができません。

 エロ要素はまったくなさげに思えた『明日の約束』ですが、今回は一瞬だけ「おや?」と期待させるシーンがありました。息子の自殺にはスクールカウンセラーも関係していると思い込んでいる真紀子の圧力や、真紀子によって遠隔操作されている小島記者の言動が怖くなった日向先生は、恋人である本庄(工藤阿須加)のマンションへ。ドアが開くなり、「何かあった?」と心配する本庄のたくましい胸板へとしなだれかかる日向。スクールカウンセラーである前に、彼女もひとりの女でした。「今日、泊まってく?」と言いながら顔がほころぶ本庄。フツーの恋愛ドラマなら、次は熱いキスシーンでベッドルームへと雪崩れ込むのがお約束ですが、日向の目に留まったのはテーブルに置かれていた「風月庵」の紙袋!! 尚子は日向が知らない間に、こっそり本庄と接触していたのです。本庄のマンションですら、尚子の影がちらついているように思え、日向は「あの人は、いい母親なんかじゃないよッ」という言葉と共にマンションから飛び出したのです。お預けをくらった本庄は、この夜どのように過ごしたのでしょうか。

 かなり濃い内容の第3話でしたが、視聴率は第1話8.2%→第2話6.2%→第3話5.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という非常に残念な結果に。第3話のラストは、ハロウィン当日ということで仲間由紀恵が死者の霊を呼び出そうとするホラー映画仕立てになっていましたが、これはいかがなものかと。小嶋記者のように目先の視聴率に踊らされずに、社会派ドラマとして迷走することなく最終回まで突き進んでほしいものです。
(文=長野辰次)

毒親の呪詛攻撃にピッピちゃんは耐えられるか? 喪服ウォーズも勃発した『明日の約束』第2話

「ランドセルの中にしまってあったラブレターは破って、捨てておきました。日向(ひなた)がこんなにいやらしい子だったなんて、ママはショックです」

 井上真央主演の社会派ミステリー『明日の約束』(フジテレビ系)。なんか古臭くて野暮ったいタイトルだなぁと思っていたら、日向が小学生の頃に母親の尚子(手塚理美)から強制的に書かされていた交換日記の名前だったんですね。第1話に増して、第2話のエンディングで明かされる交換日記の内容がキョーレツ。尚子の毒親ぶりに、視聴者もショックです。どうやら、その回のテーマとリンクする形で日向と尚子の過去の因果関係が明かされていく模様です。

 かなり綿密に練られた脚本ですが、残念なことに第2話の視聴率は初回の8.2%からさらに下がって、6.2%に(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。自殺した高校生の心の闇を探るという重たいストーリーに付いていけない人は、早々に去っていったようです。毒親バトルがこれから本格的に始まり、ドラマとしてはぐんぐん盛り上がりそうな気配なんですけどね。一度去った視聴者とゴミ回収車は待ってはくれません。

 前回、不登校が続いていた高校1年生の吉岡圭吾(遠藤健慎)から「先生のことが好きになりました」と告白されたスクールカウンセラーの日向先生(井上真央)ですが、自宅に帰った圭吾はなんと首吊り自殺! 日向先生は圭吾の担任・霧島先生(及川光博)と校長(羽場裕一)と3人で吉岡家へ向かいます。ここで圭吾の父親(近江谷太朗)が初登場。「妻が取り乱すので、お引き取りを」と門前払いを喰らわせます。圭吾に過干渉していた母・真紀子(仲間由紀恵)とは対照的に、長男が自宅で死んだにもかかわらず、感情を乱すことなく冷たい対応に終始する父親。圭吾はクラスメイトたちからは無視され、家庭にも居場所がなく、日向先生に懸命にSOSを発信していたことが分かり、日向先生はどんよりと落ち込みます。

 綾瀬はるかの弾むおっぱいで視聴率も弾き出している『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)のようなエロ要素はまるでなさげな『明日の約束』ですが、第2話は井上真央、仲間由紀恵、さらにNHK朝ドラ『ひよっこ』で注目された佐久間由衣が、喪服ウォーズを繰り広げます。森田芳光監督の葬儀に喪服姿の北川景子がノーメイクで現われ、すっぴんでの美形ぶりが大変な話題になりました。普段と違ったナチュラルメイクと泣き崩れた表情にセクシーさを感じるマニアは少なくありません。

 いつにも増して地味に、ブラックフォーマルでまとめてきた日向先生は、校長と霧島先生の後ろに隠れるようにして圭吾のお通夜会場を訪ねますが、ここでも圭吾の母・真紀子から「圭吾の棺の前で土下座してくれますか」と凄まれ、焼香できないまますごすごと退却します。泣きはらした表情ながら、しっかりとパールのネックレスとイヤリングで飾り立てている真紀子の存在感ったら。井上真央主演ドラマですが、お通夜シーンの主役は完全に仲間由紀恵です。後からひょこひょこ現われた、圭吾の幼なじみ・香澄役の佐久間由衣はそれこそ、ひよっこレベルです。喪服の着こなしに、女優陣の視殺線が交叉する怖い怖いシーンでした。
 喪服姿のまま疲れきって自宅に帰ってきた日向先生は、玄関を開けてさらにドッと疲れるはめに。驚いたことに恋人の本庄(工藤阿須加)がリビングで母親の尚子と楽しげに談笑しているではありませんか。自殺騒ぎを聞きつけ、日向のことを心配して本庄は駆け付けてきたようですが、本庄と交際していることを尚子に伝えていなかった日向は、どちらに対しても気まずくて仕方ありません。本庄にはまったく悪気はないのですが、純粋な善意が日向を追い詰めてしまいます。

 子犬のようにキラキラした眼差しで「連絡しても、日向は『心配ない』と言うでしょ?」と訴える本庄を怒るわけにはいきません。圭吾の自殺で動揺している生徒や霧島先生には「感情を抑えるのはよくない」と説いていた日向先生ですが、日向先生自身がどんどんストレスを溜め込んでいく結果に。本庄を最寄り駅まで送っていく日向先生ですが、駅名が「極楽寺」とはあまりにも皮肉です。日向先生の心はすでに地獄の一丁目に差し掛かっています。

 そして第2話最大の見せ場へ。本庄を駅まで見送った日向が自宅に戻ると、本庄の前ではニコニコしていた尚子が毒親モードで待っていました。文鳥のピッピちゃんを相手に「ひどいわよねぇ、ピッピ。3年も付き合っていたのにママに内緒にしてたなんて。あぁ、イヤらしい! ママに隠れてコソコソと付き合って」。

 さらには尚子の口から耳を疑うような暴言が……。

「えらそうにスクールカウンセラーなんて言ってるけど、そんなことやってるから生徒を自殺させちゃうのよ!」

 成人して働いている娘の職業から恋愛まで、日向の人生を全否定です。実の母親の容赦ない仕打ちに、日向はひと言も返せません。ただ二階の自室に逃げ込み、「母は人の心を傷つける天才です」と心の声でつぶやくことしかできません。

 自殺した圭吾は「明日が来るのが怖い」という言葉を残していたそうですが、日向先生も同じ心境でしょう。日向先生の明日が心配です。そして、もっと心配なのが、尚子が飼っている文鳥のピッピちゃんです。日向先生が家にいない間もずっと尚子のポイズントークを浴び続けて、体調に悪影響を与えないか気になります。植物だったら枯れてしまいそうなくらい、尚子のポイズン度は高いです。最終回までピッピちゃんが元気なことを祈ります。

 エンディングに流れる次回予告を見ると、第3話では真紀子はジャーナリスト(青柳翔)を味方に取り込み、日向先生のいる高校に宣戦布告する模様。ついにモンスターマザーとしてフル稼働です。仲間由紀恵vs井上真央vs手塚理美の三つ巴女優バトルの行方に大注目です。
(文=長野辰次)