キョドコのキョは、恐怖のキョ! 支離滅裂な言動で周囲の男たちを散々に振り回す世にも恐ろしきヒロインとは、吉岡里帆演じる小川今日子ことキョドコに他なりません。キョドコのみならず、『きみが心に棲みついた』(TBS系)には心の歪んだキャラクターがやたらと多く、恋愛ドラマというよりはサイコサスペンスを観ているかのように背筋がゾゾッとさせられます。今週もまた、「キョドコ、それは違うだろ!!」と全視聴者がツッコミを入れてしまう火曜の夜がやってきました。まずは『きみ棲み』第6話を振り返ってみましょう。
下着メーカーに勤める小川今日子(吉岡里帆)、通称キョドコは、野外BBQで上司である星名(向井理)とこじらせた関係だった過去が明かされます。ひとりでBBQ会場を去ったキョドコでしたが、追い掛けてきた漫画誌編集者の吉崎(桐谷健太)と初キスを交わし、ついに交際することに。かつてなくウキウキ気分のキョドコが出社する第6話の始まりです。
一方、キョドコがアシスタントを務めている新プロジェクトのデザイナー・八木(鈴木紗理奈)ですが、大変な窮地に追い込まれます。新ブランド立ち上げの責任者である池脇部長(杉本彩)から、もう1人のデザイナー・堀田(瀬戸朝香)のサポートに八木は回るように言い渡されます。最終プレゼンを目前に控え、何と理不尽な!!
実は池脇部長にとって八木は、10年前に米倉課長をめぐって火花を散らし合った恋敵だったのです。八木と米倉課長との社内恋愛を面白く思わない池脇部長は、八木をメンズインナーへと異動させたという因縁がありました。今回も最終プレゼンもしないまま、八木に再び煮え湯を呑ませようと企んでいたのです。下着メーカーって女性社員同士のバトルがすごいんでしょうか? 今年の入社希望者数に影響が出ないかちょっと心配です。
あまりに露骨な池脇部長のパワハラぶりに、新ブランドのデザイナーの座を八木と争う堀田も我慢なりません。池脇部長の指示に従って荷物を片付け始める八木に向かって、「逃げるんだ、メンズに異動になったときみたいに」「つべこべ言わずに、新しいデザインを描きなよ」とハッパを掛ける堀田でした。吉崎のことで浮かれていたキョドコも動きます。できれば顔を合わせたくない星名のもとに出向き、「最終プレゼンをやらせてください」と懇願するのでした。そんなキョドコに対し、「お前、強気だな。吉崎さんと付き合ってるんだって?」と星名はキョドコがあたふたしてしまうツボをピンポイントで責めるのでした。調教師・星名は、Mっ子・キョコドのことはすべてお見通しです。
第6話の中盤からは、もうデーモン星名の独壇場となります。ついに始まった新ブランドの最終プレゼン。八木チーム、堀田チーム、共に完成したばかりの新作ランジェリーで合否を競うのでした。ところがジャッジを下す池脇部長は、まるで興味がなさそう。八木チームのサンプルを一瞥しただけで「やっぱり堀田のデザインがいいわ。八木には重荷じゃないかしら」とプレゼン勝者を一方的に堀田へ決めようとするのです。これに「待った!」を掛けたのは勝者に選ばれた堀田でした。最終プレゼンの直前に、堀田と八木はサンプルをこっそり交換していたのです。池脇部長が「革新的だわ」と絶賛したサンプルは、八木がデザインしたものだったのです。
堀田の種明かしに動揺する池脇部長は、開発室長である星名に救いを求めますが、このときこそデーモン星名の冷たい魅力が炸裂します。
「プロジェクトを統括する人間が、デザインの中身でなく、人間で判断していたことを私は残念に思います」
かねてより報復人事で悪評の高かった池脇部長を、プレゼン会議の場でばっさりと斬り捨ててみせる星名でした。会社の上層部にはすでに池脇部長の不正ぶりを伝えていました。今回のデーモン星名はダークヒーローのごとく超かっこいい存在です。あえなく池脇部長は現場からの退場を余儀なくされ、新ブランドは堀田と八木の2人体制で発足することに決まります。
■天使と悪魔の顔を持つ男、その名は……!?
池井戸ドラマの主人公のような大活躍を見せた星名でしたが、新ブランドの誕生を一緒に喜ぶ相手はいません。最終プレゼンが終わったことで久しぶりに吉崎に会いに行こうとするキョドコを呼び止め、いつもの星名らしくない庶民じみたラーメン店へ2人で入っていくのでした。吉崎という彼氏ができたキョドコですが、最終プレゼンの根回しをしてくれた星名に対する感謝の気持ちもあり、仲良くラーメンをすすることに。
星名のことを「悪魔のような人」だと嫌っていたはずのキョドコなのに、この日は星名が優しい顔を見せたことから、ついつい大学時代の思い出に花を咲かせてしまいます。結局、星名の支配から完全離脱することはできないキョドコでした。これまで星名への依存から抜け出そうと努力してきたキョドコを見守ってきた視聴者は唖然呆然です。キョドコは笑顔で「今日は私が奢ります♪」とラーメンの替え玉にギョウザまで追加注文しています。職業ドラマとして展開した『きみ棲み』第6話でしたが、本心とは異なる不可解な行動をしてしまう人間の内面の多面性を描いた実に興味深いエピソードではないでしょうか?
星名の悪魔のような魅力はこれだけでは終わりません。星名に再び心を開いたキョドコでしたが、星名は甘い飴をたっぷりキョドコに舐めさせた後には、しっかりお仕置きを用意していました。人気作家・成川(中村アン)が吉崎と夜遅くまで一緒にいるインスタグラム画像をキョドコに見せつけるのでした。星名に替え玉を強要するなど、調子に乗っていたキョドコがたちまちギャフン顔になるのを、星名は心から楽しみます。
星名の留守中にマンションに上がり込み、「母親直伝のシチューなんです」と手料理を作って奥さんぶる飯田(石橋杏奈)にも、星名は冷たいムチを振るいます。飯田に預けていたマンションの合鍵を返させた挙げ句に、「僕、愛のないセックスほど興奮しちゃうようです」と田舎のお嬢さん育ちの飯田に言い放つのでした。『君が心に棲みついた』という題名ですが、視聴者の心に棲みついてしまったのは、天使の顔と悪魔の顔を持つ二重人格者・星名なのかもしれません。
視聴率は第4話・第5話の7.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)からさらにポイントを下げ、過去ワーストの6.9%に。登場キャラクターたちの一貫性のない行動に、視聴者も付いていくのが大変です。予告を見ると第7話では殺人罪で刑務所送りになっていた星名の母親がついに登場し、さらにはキョドコの処女喪失シーンも用意されているようです。大学時代の星名とキョドコに肉体関係がなかったというのも驚きですが、まだまだサプライズが残されているようです。
星名に棄てられた飯田、狙っていた吉崎をキョドコに奪われた為末(田中真琴)、星名を憎むあまりに心を病んでしまった一ノ瀬(西村元基)といったサブキャラたちの伏線は最終回までに回収できるのでしょうか? キョドコも『きみ棲み』の後半戦も、絶望という名のクライマックスへ雪崩れ込むことになりそうです。
(文=長野辰次)
