
どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――
クソにもほどがある! ケチ・セクハラ・つまんないの三拍子リーマン
そのオッサンは1、2回目の来店からいきなり態度がデカく、某大企業の名刺を印籠代わりに「金持ってる」アピールをする50代サラリーマンでした。外見は白髪交じりに眼鏡の普通のおじさんですが、身長がちょっと高くガタイがいいところを見ると、体育会系から来るハラスメント気質があるようです。
飲む酒は毎度、スコッチのシングルモルトをロックでチビチビ飲むスタイル。バー飲みが好きな方ならごく普通の飲み方ではありますが、癖の強いスコッチをオーダーすることで「俺わかってる」感を醸し出そうとしている可能性も否めません。
基本的には部下をいじって笑いものにするか、店員にセクハラする(「おっぱい見せろ」などと言う、体に触る、アフターに誘う等々)しか機能が備わってないご様子。「金ある」発言の割には大した額を使うわけでもなく(ボトルをおねだりしたら無視されました)、趣味、時事ネタなどの世間話はオールスルー。もはや人間として存在している意味がないレベルです。
どうにかしてそのオッサンを撃退しようと思っていたある夜――
オッサンは例によって、仲間内でつまんない話をして居座っています。0時をまわった頃、とある常連のお客さまが女性をお連れになりました。するとそのお連れの女性の、あり得ない至近距離にオッサンがすり寄り始めたのです……!
パーソナルスペースという用語はだいぶ一般的だと思うのですが、果たして彼は知っているのでしょうか? 女性が事態を飲み込めず固まっているのをいいことに、鼻息がかかるような距離で「こういう店よく来るのン?」とかボソボソ話しかけています。
こいつ、マジモンの痴漢だーッ!
女性から離れるようにと私が注意した直後、よく通る声が店内に響き渡りました。
「こういう店では、ほかのお客が連れてきた女性には声をかけないもんですよ」
常連さんの一喝でした。60代後半ながら男として現役感漂う、しかし紳士的な姿勢を決して崩さない常連さんの言葉は重みと迫力をたたえていました。その後は連れのリーマン仲間に諭されてすごすごと撤退したオッサン……(なぜか、こういう迷惑な奴に限って連れの人が超絶いい人なんですよね)。
これにこりて飲みに来ることもなくなるだろうとのんきに構えていたら、なんとオッサンは翌週にもご来店。前回とは違うお連れさまと、何食わぬ顔で飲み始めたオッサン……。ここはなんとしてもトドメを刺さねば! 経営者としてそう判断した私は、あくまでにこやかに、そして店内のお客さま全員に聞こえるように言いました。
「今日はもう、女性のお客さまにセクハラしないでくださいね~~!」
満席の店内に緊張が走り、それからお客さまの視線がオッサンに集まります。慌てながらも必死でとぼけるオッサン。やがて、空気を読んだお連れさま(やっぱり善良そう……気まずい思いさせてゴメンね)に促されて店を出ていきました。仲間内でのマウンティングだけで生きる実感を得ているこのタイプには、「仲間の前で恥をかかせる」攻撃が効果的なんですね。
それからはオッサンの姿を見ていません。そもそも、内輪のポジション取りだけが生きがいの彼のような人種が、「個」を試されるバーに来て楽しいのでしょうか?
思うに人間とは、自分から一番遠い世界に心惹かれるものなのかもしれませんね。
(隔週金曜日・次回は4月13日更新)
プロフィール
浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。
(イラスト=ドルショック竹下)
