「本当の恋ってどんなもの?」40代の“ピュアおじさん”が、不倫女性に語った「説教」

(前回はこちら) 

どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

正論がツラい、40代の”ピュアおじさん”

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 「わたしって恋愛体質なんです」と自己申告する女性は多いですが、実際のところ恋愛に純粋さを求めるのは、圧倒的に男性のほうが多数ではないでしょうか。

 2週間に1回ほど、ふらりと訪れてくる彼もそのうちの1人です。都内の中小企業にお勤めの40代、独身。長身ではありますが横幅もだいぶ大きく、そのためか汗っかきで、頭頂部の薄毛が立ち上る湯気のように見えます。

 店に入ってくるときはいつもキョロキョロと周囲をうかがい、やや挙動不審な様子でビールを注文。そして会話もそこそこにカラオケのリモコンとにらめっこをしたのち、満を持してマイクを握り「TSUNAMI」や「真夏の果実」などのラブソングを歌い上げます。正直、歌唱力は中の下レベルですが、歌い終わったあとに「自分はこの歌の歌詞のような恋愛をしてきたんだ」と言わんばかりに、自己流の恋愛哲学を語り始めるのです。

 「本当の恋ってどんなのだと思う? 好きな人のためならすべてを投げうってもいい……それが恋ってものでしょ?」

 「いつかは、好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたいと思うよね?」

 ――もう一度言いますが、彼は薄毛で肥満の中年男性です。いまどき小中学生でも言わないようなふんわりした恋愛トークの連続に度肝を抜かれますが、ここでひるむまいと彼の恋愛経験について聞いてみると、なんと大学時代のエピソードなどをお蔵出し(しかも、「今より40キロくらい痩せてたんだけど……」と言い訳めいた注釈付きです)。初めて付き合った彼女と夜景の見える丘の公園で愛を語らった甘い思い出を、めちゃくちゃ照れながら回想してくれます。いつしか、わたしはひそかに彼を「恋愛マスター」と呼ぶようになりました。

 ある夜、わたしの女友達が飲みに来ているところに恋愛マスターが現れました。この女友達というのが、人妻でありながら淫蕩の限りを尽くしている女性で、たびたびわたしにアバンチュールの報告をしにやって来ます。その夜も彼女はワンナイトな相手とのセックスについて話していたのですが、しばらく難しい顔で聞いていた恋愛マスターが突然、口を開きました。

 「恋愛感情がないのにセックスするのはどうかと思う」

 常、識……? 時が止まります。返答に困っている彼女を前に、さらに続ける恋愛マスター。

 「旦那さんがいるんでしょう? 女は貞操を守らなきゃ!」

 こうも経験値に差のある相手に、よくもまあ真正面から貞操を説けるものだとうっかり感心しそうになりましたが、踏んだ場数では敵わないからこそ、もっともらしい固定観念に頼らざるを得ないのかもしれません。女友達はというと、会話が通じない相手に何をどう伝えたらいいのか、という様子で苦笑いしています。その表情を「俺の説教が効いてる!」と勘違いしたのか、恋愛マスターはとっておきのドヤ顔で一言。

 「本当の恋愛を知らないなんて、みじめな人生だね(笑)」

 発言のあまりの破壊力に、ハイボールを噴き出しそうになるわたしと、笑いをこらえているのか肩が震えている女友達。満足げな彼は動揺するわたしたちなどおかまいなしに、さっさとお会計を済ませ帰ってしまいました。

 1週間ほどして、再び恋愛マスターがご来店。前回の決め台詞による衝撃の余波がまだ残っていたわたしは「こないだはすごかったですね」と切り出しました。すると彼はまったくピンと来ていない様子。いやいや、こんなこと言ってたじゃないですか、とやりとりを再現したところ、

 「えっ……おれ、酔っ払ってそんなこと言ったんだ。デブでハゲのさえないおっさんのくせにそんなこと言うなんておれ、図々しいね……」

 と、まさかの反省。その素直さにすっかり毒気を抜かれてしまったわたしは、以前より彼に優しく接するようになったのでした。意外と自分のこと、客観視できてたんだね……。

(次回・不定期更新)

プロフィール
浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。

(イラスト=ドルショック竹下)

「本当の恋ってどんなもの?」40代の“ピュアおじさん”が、不倫女性に語った「説教」

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どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

正論がツラい、40代の”ピュアおじさん”

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 「わたしって恋愛体質なんです」と自己申告する女性は多いですが、実際のところ恋愛に純粋さを求めるのは、圧倒的に男性のほうが多数ではないでしょうか。

 2週間に1回ほど、ふらりと訪れてくる彼もそのうちの1人です。都内の中小企業にお勤めの40代、独身。長身ではありますが横幅もだいぶ大きく、そのためか汗っかきで、頭頂部の薄毛が立ち上る湯気のように見えます。

 店に入ってくるときはいつもキョロキョロと周囲をうかがい、やや挙動不審な様子でビールを注文。そして会話もそこそこにカラオケのリモコンとにらめっこをしたのち、満を持してマイクを握り「TSUNAMI」や「真夏の果実」などのラブソングを歌い上げます。正直、歌唱力は中の下レベルですが、歌い終わったあとに「自分はこの歌の歌詞のような恋愛をしてきたんだ」と言わんばかりに、自己流の恋愛哲学を語り始めるのです。

 「本当の恋ってどんなのだと思う? 好きな人のためならすべてを投げうってもいい……それが恋ってものでしょ?」

 「いつかは、好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたいと思うよね?」

 ――もう一度言いますが、彼は薄毛で肥満の中年男性です。いまどき小中学生でも言わないようなふんわりした恋愛トークの連続に度肝を抜かれますが、ここでひるむまいと彼の恋愛経験について聞いてみると、なんと大学時代のエピソードなどをお蔵出し(しかも、「今より40キロくらい痩せてたんだけど……」と言い訳めいた注釈付きです)。初めて付き合った彼女と夜景の見える丘の公園で愛を語らった甘い思い出を、めちゃくちゃ照れながら回想してくれます。いつしか、わたしはひそかに彼を「恋愛マスター」と呼ぶようになりました。

 ある夜、わたしの女友達が飲みに来ているところに恋愛マスターが現れました。この女友達というのが、人妻でありながら淫蕩の限りを尽くしている女性で、たびたびわたしにアバンチュールの報告をしにやって来ます。その夜も彼女はワンナイトな相手とのセックスについて話していたのですが、しばらく難しい顔で聞いていた恋愛マスターが突然、口を開きました。

 「恋愛感情がないのにセックスするのはどうかと思う」

 常、識……? 時が止まります。返答に困っている彼女を前に、さらに続ける恋愛マスター。

 「旦那さんがいるんでしょう? 女は貞操を守らなきゃ!」

 こうも経験値に差のある相手に、よくもまあ真正面から貞操を説けるものだとうっかり感心しそうになりましたが、踏んだ場数では敵わないからこそ、もっともらしい固定観念に頼らざるを得ないのかもしれません。女友達はというと、会話が通じない相手に何をどう伝えたらいいのか、という様子で苦笑いしています。その表情を「俺の説教が効いてる!」と勘違いしたのか、恋愛マスターはとっておきのドヤ顔で一言。

 「本当の恋愛を知らないなんて、みじめな人生だね(笑)」

 発言のあまりの破壊力に、ハイボールを噴き出しそうになるわたしと、笑いをこらえているのか肩が震えている女友達。満足げな彼は動揺するわたしたちなどおかまいなしに、さっさとお会計を済ませ帰ってしまいました。

 1週間ほどして、再び恋愛マスターがご来店。前回の決め台詞による衝撃の余波がまだ残っていたわたしは「こないだはすごかったですね」と切り出しました。すると彼はまったくピンと来ていない様子。いやいや、こんなこと言ってたじゃないですか、とやりとりを再現したところ、

 「えっ……おれ、酔っ払ってそんなこと言ったんだ。デブでハゲのさえないおっさんのくせにそんなこと言うなんておれ、図々しいね……」

 と、まさかの反省。その素直さにすっかり毒気を抜かれてしまったわたしは、以前より彼に優しく接するようになったのでした。意外と自分のこと、客観視できてたんだね……。

(次回・不定期更新)

プロフィール
浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。

(イラスト=ドルショック竹下)

【マンガ】目覚めたら美女とキス!? 照れ隠しの酒が招いた、20代の思い出【お酒がやめられない】

「酒に強くも弱くもないわたしは、よくお酒に飲まれる」――。

20代から酒に飲まれつづけた漫画家・緑丘まこが酒と出会いと黒歴史を綴る、飲んだくれコミックエッセイ。土曜のひとり飲みのおともにどうぞ。

(第1回はこちら:酒飲みの聖地・赤羽に、女ひとりでやってきたのだ)
(第2回はこちら:赤羽のユミコさんに見た「酔っぱらいの法則」)
(第3回はこちら:渋谷のコインロッカーに挟まれた三十路の夜)
(第4回はこちら:安ワインが招いた“三日酔い”と血染めバスタブのゆくえ)
(第5回はこちら:涙酒だよおっかさん! 新幹線でエンドレス泥酔の旅)
(第6回はこちら:飲んで飲まれて大号泣! 手みやげ片手に密着警察24時)
(第7回はこちら:おごられ酒は断れない! ”魅惑のタダ酒”で酩酊した結果)

第8回:酒・おぼえていますか ~前編~

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(隔週土曜日・次回は7月28日更新予定)

緑丘まこ(みどりおか・まこ)
兵庫県育ちの30代独女。漫画とゲームとお酒をこよなく愛する。
センベロ居酒屋やレトロなレストランを発掘するのが休日の楽しみ。
お酒は最高の友達。

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隣客にディープキス、パンツ半脱げで昏睡!? 泥酔アラサー女子の「プロすぎる帰り方」

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どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

大迷惑! 狭いトイレで昏睡する“泥酔女子”

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 とある週末、常連のお客さまが連れていらした、30代前半の元気な女性。

 常連さんの会社の後輩である彼女は、かなりの豊満体型もあってか、とにかく酒豪です。甲類焼酎の緑茶割りをガンガン空にしながら、「去年までスナックでバイトしてた」という経験も納得のトークの冴えと、華やかな笑顔を披露していました。

 ところが夜が深まるにつれ、徐々に許容量を超えてきたのか、彼女の目の焦点が定まらなくなってきました。たまたま居合わせた男性客にディープキスをしたり、また別の男性にしなだれかかったりと乱れる彼女を心配するものの、連れてきた張本人である常連さんは「いつもこんな感じなんだよ。男みたいなもんだから、大丈夫大丈夫」とのんきに構えています。

 しばらくしてトイレに立った彼女。こちらの不安は的中し、いつまで経っても個室から出てこなくなってしまいました。金曜の夜、このままトイレを占拠されては困ります。事実、「トイレに行きたいから」という理由で他の店に移動してしまったグループも。困り果てたわたしは、彼女をトイレから引きずり出すという強硬手段を取ることにしました。

 が、おそらくは体重90キロ以上の豊満体型で、その上泥酔して寝ているので動かすことすら困難です。常連さんの力も借りて、やっとの思いで狭いトイレの個室から出したものの、背もたれが低く安定しないカウンターチェアに座らせることもできず、決して広くはない店内で床に転がしておくわけにもいかず……。

 仕方なく一旦、店外の路上に寝かせることに(本当に仕方なくです!)。

 薄暗がりの中、うち上げられた大型水生哺乳動物か、はたまた魚市場のマグロかといった体(てい)の彼女をよく見ると、トイレの途中だったのかパンツがずり落ちたまま。し、しかもパンツに装着された生理用ナプキン(肌に触れる面)が丸見えではないですか! 

 当然同じ女性として看過することはできず、初対面の女性の生理用パンツを、無理やり穿かせ直すという荒業を為し終えたのでした……。

 その後も気にかけて見守っていたところ、一時間ほどたって、奇跡の復活を遂げた彼女。常連さんが「タクシー拾うところまで送るよ」と店を出るよう促すと、豊満女子はさっきまで酔い潰れていたとは思えないくらい元気に「また来るわ!」と片手を上げて帰って行きました。その様子があまりにも豪気かつ爽やかで、こちらとしてはとても迷惑だったはずなのに「この女、飲みのプロだな!」と感心せざるを得ませんでした。

 ちなみに常連さんは、気を遣って実際の飲み代よりだいぶ多めに置いて行ってくださいましたけどね。まいど~!

 

(隔週金曜日・次回は7月20日更新)

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【マンガ】おごられ酒は断れない! ”魅惑のタダ酒”で酩酊した結果【お酒がやめられない】

「酒に強くも弱くもないわたしは、よくお酒に飲まれる」――。

20代から酒に飲まれつづけた漫画家・緑丘まこが酒と出会いと黒歴史を綴る、飲んだくれコミックエッセイ。土曜のひとり飲みのおともにどうぞ。

(第1回はこちら:酒飲みの聖地・赤羽に、女ひとりでやってきたのだ)
(第2回はこちら:赤羽のユミコさんに見た「酔っぱらいの法則」)
(第3回はこちら:渋谷のコインロッカーに挟まれた三十路の夜)
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第7回:おごられ酒は断れない!

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(隔週土曜日・次回は7月14日更新予定)

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「酒に強くも弱くもないわたしは、よくお酒に飲まれる」――。

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第7回:おごられ酒は断れない!

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「オジサンの下心」はバレている! バーのママが目撃した「飲ませオヤジ」のスカッと顛末

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来るたび違う女性を連れてくるオジサン

 そのおじさんは毎回、女の子を同伴していらっしゃいます。

見た感じは50代半ば、チビ。自称会社社長とのことですが、ちょい悪オヤジ風でもなく、ダークスーツにポマードで髪をぴったり撫でつけた昭和風情漂う「シャチョー」さん。連れてくるのもクラブホステスなどいわゆる高めの女ではなく、右も左もわからない上京したての女子大生や、メンタルが弱いらしくお酒の席で急にお薬を飲み始めてしまう女性など、言ってしまえば「金にモノを言わせて、自分がなんとかできそうな女」ばかりです。

そんな女の子を隣に座らせては、ルックスに不似合いな甘い声で90年代バラード(中西○三や徳○英明など、王道のやつ)をささやき、瓶ビールをせいぜい1~2本で切り上げ夜の街へ消えていく……それが同伴おじさんの飲みパターン。

 いえ、別にいいんです。周りに迷惑をかけるような飲み方でもないし、誘いに乗ってきた女の子にお酒を奢って、カラオケでちょっといい気分になっているだけなのですから。ただわたしが生来のゲス気質から「なんで毎回、自分がマウント取れそうな女性ばかりなの?」「どうして二度と同じ女性は連れてこないの?」「『酒弱いからあまり飲まない』って言うけど、本当は後のエレクチオンに影響するからじゃ……?」などと穿った目で見て、勝手に不快に思っていたことは否定できません。

 そんなある夜、同伴おじさんが珍しく強めの美女を連れて来店しました。年は40前後で、ワイルドなロングヘアが似合う、ひと昔前のロックミュージシャンのような目力のある女性。彼女はおじさんに促される前に席について、カウンターに身を乗り出して注文します。

「ねえ、ビール頂戴。なんかこの人が奢ってくれるって言うからサ」

 この前に相当飲んできたのか呂律が回っていませんが、それもまた昭和の女優のような気だるいセクシーさを醸し出しています。これはカタギじゃない……そう予感しましたが、同伴おじさんは上機嫌で「どんどん飲んで。ご馳走してあげるから」などと酒を勧めています(このおじさん、酔わせてヤル気満々である)。

 はじめのうちはスポンサーであるおじさんにしなだれかかったりと「サービス」していた強め美女ですが、ビールを1本、また1本と飲み干すうちに獣へと変貌。同伴おじさんが歌うバラードで気分が昂揚したのか、艶めかしく踊りながら近くに座っていた常連の男性客に抱きついて、ねっとりとしたディープキスを始めたのです。

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「ちょっと、何やってんの!」

 歌を中断してたしなめる同伴おじさん。しかし彼女は

「うるせえ! てめえの女とでも思ってんのか!」

と、100倍くらいの迫力で怒鳴り返します。えーと、ここは昭和? おじさんは、あてが外れたとばかりにサッサとお会計を済ませ、美女を置いて帰ってしまいました。

 後で判明したことですが、その美女は界隈の飲み屋で有名な大トラ女。たしかにややメンタルが不安定だそうなのですが、少女時代から札付きの不良で一通りの悪いことはやっているという筋金入りのお方でした。そう言われるだけあってその後お帰りいただくのがなかなか大変でしたが……。

 下心アリアリの同伴おじさんに一撃お見舞いしてくれて、実にせいせいした夜でした。

(隔週金曜日・次回は7月6日更新)

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浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。

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【マンガ】飲んで飲まれて大号泣! 手みやげ片手に密着警察24時【お酒がやめられない】

「酒に強くも弱くもないわたしは、よくお酒に飲まれる」――。

20代から酒に飲まれつづけた漫画家・緑丘まこが酒と出会いと黒歴史を綴る、飲んだくれコミックエッセイ。土曜のひとり飲みのおともにどうぞ。

(第1回はこちら:酒飲みの聖地・赤羽に、女ひとりでやってきたのだ)
(第2回はこちら:赤羽のユミコさんに見た「酔っぱらいの法則」)
(第3回はこちら:渋谷のコインロッカーに挟まれた三十路の夜)
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第6回:美女だけじゃない、みんなが見てる

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(隔週土曜日・次回は6月30日更新予定)

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セクハラは「脳の病気」!?  異常な性欲おじさんが、1年後“真人間”に変化したワケ

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出禁ギリギリ! 性欲たぎる”セクハラおじさん”

「ここ、カラオケあるの? 1曲いくら?」

 そう言いながら入ってきたおじさんは、たぎる性欲がオーラとして可視化されているようでした。還暦前にしては少々可愛らしいチャイナ・ブルーを飲みながら、カラオケも歌わず、わたしを質問攻めにしてくる性欲おじさん。

「エッチな顔してるね。AV出てた?」

「いくら出したらエッチしてくれる?」

「こういう店に1人で来る女の人って、エッチ誘ったらすぐしてくれるのかなあ?」

 すべての発言に「エッチ」という単語を入れずにはいられない病気かなんかでしょうか。ほかのお客さんとの会話などおかまいなしに、大声でたたみかけてきます。オーセンティックなバーであれば、即出禁レベルでしょう。こちらとしてもやや辟易して、「どこの店でもそんな調子なんですか?」と聞いてみると

「そうなんだよ、俺、性欲がすごいんだよ! ストリップ大好きでよく見に行くんだけど、一度、ポラの撮影(注:ストリップでは公演後にストリップダンサーさんのポラロイドを撮ることができます。1枚1,000円ほど)で嬢のオ××コ触ろうとして、劇場出禁になっちゃったんだよ!」

と一切悪びれることのない強制わいせつ未遂告白。この正直さが、わたしの店ではギリギリ出禁にならない点でもあるのですが……。

 それからというもの、週1ペースで通ってくるようになった性欲おじさん。毎度、初回と同様のテンションかつ大声で「エッチしたい!」「エッチさせて!」「エッチできるかも!」とまくし立てるため、落ち着いてグラスを傾けたいお客さまは彼が来ると撤収してしまいます。それを補って余りあるほど飲み代を落としてくれればいいのですが、クソ客の御多分に漏れずケチ。お酒もさして強くないのでしょうが、ロングカクテルかビールを1~2杯。「1杯、いただいてもいいですか?」と水を向けても、自分が飲んでいる瓶ビールを少し分けてくる程度。何かやらかしたらこれ幸いと引導を渡してやる――機を窺っていたところ、ある時期からぱったりと来店がなくなりました。

 ほかにセクハラターゲットでも見つけたのだろうと、しばらくは存在自体を忘れ平穏な夜を過ごしていました。が、1年以上たったある日、性欲おじさんは再び姿を現したのです。

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「ママひさしぶり。俺のこと覚えてる? まあ、1杯飲んでよ」

 あのケチだった性欲おじさんが、自分からお酒をおごる……だと? 久しぶりの来襲にどう応戦しようかと身構えていたわたしは、完全に肩透かしを食らいます。いただいたウイスキー越しにおじさんの様子を観察していると、以前どす黒く彼を覆っていた性欲オーラが消え、明らかに温和になっていることがわかりました。しかも、ほかのお客さまと普通のテンションで会話をしているではないですか!

 いったい何が彼を変えたのか? 困惑した表情を察したのか、おじさんが口を開きました。

「俺、変わったでしょ? 実は1年前、脳の病気で倒れてさ。手術したら人格変わったみたいなんだ」

 衝撃の告白――ですが、どこか腑に落ちるところもあります。性欲おじさんは「手術したら人格が変わった」と言いましたが、異常なまでに性にアグレッシブで、他人の話を遮ってまで自分の話をまくし立てる以前のあの状態は、脳の疾患によるものだったのではないでしょうか。病気が発覚し手術をしたことで、本来の穏やかな性格を取り戻したと考えるほうが自然です。

 かくして、あらためて常連となった性欲おじさん。かつての性欲ほどではありませんが、今もストリップ好きは健在(ダンサーさんを気遣いながら、しっかりお金を落とす良客になったようですよ)。当バーでは「ちょっとエッチなおじさん」として、そこそこ愛される存在となったのでした。

 

(隔週金曜日・次回は6月22日更新)

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【マンガ】涙酒だよおっかさん! 新幹線でエンドレス泥酔の旅【お酒がやめられない】

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20代から酒に飲まれつづけた漫画家・緑丘まこが酒と出会いと黒歴史を綴る、飲んだくれコミックエッセイ。土曜のひとり飲みのおともにどうぞ。

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(第3回はこちら:渋谷のコインロッカーに挟まれた三十路の夜)
(第4回はこちら:安ワインが招いた“三日酔い”と血染めバスタブのゆくえ)

第5回:車窓を見ながらビールをプシュッと

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(隔週土曜日・次回は6月16日更新予定)

緑丘まこ(みどりおか・まこ)
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