『透光の樹』が描く老いらくのセックス、無言の愛を“耳で聞く”という快感

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『透光の樹』/文藝春秋

■今回の官能小説
『透光の樹』(高樹のぶ子、文藝春秋)

 ただ欲望に身を預けて互いをむさぼることこそが「セックス」である――若い人はそう信じて疑わないだろう。セックスという行為を、初潮や声変わりなどの肉体的成長の一環としか捉えられないからかもしれない。若い頃のセックスは心がなくても楽しめる。まるで、あらゆる男たちと肌を重ねることこそ女としての勲章でも得られるかのように、若者たちは刹那な快感を求める。

 しかし、歳を重ねれば重ねるほど、そんな一瞬の快感に溺れていた当時の自分に問いかけたくなるはずだ。セックスとは、そんなものではない、と。年齢を重ねることと平行して、セックスに求める思いは次第に変化してくる。では、大人たちのセックスとは何なのか。そして、その先に存在するものは、一体何だろう。