『コンフィデンスマンJP』見飽きたフジの“内輪盛り上がり”……ファン以外は楽しめない最終回!?

 『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、6月11日放送の最終話「コンフィデンスマン編」。

 詐欺に嫌気がさしたボクちゃん(東出昌大)は、ダー子(長澤まさみ)とリチャード(小日向文世)の元から去る。引っ越し屋の仕事を始めたボクちゃんは、新入りの従業員・鉢巻秀男(佐藤隆太)と出会う。半年前、鉢巻は結婚詐欺に遭っており、金をだまし取ったのがダー子とリチャードという疑惑が浮上。憤ったボクちゃんはダー子たちが隠れ住むホテルの一室に鉢巻を連れて行く。そこで鉢巻は本性をあらわし、引き連れてきたマフィアとともにダー子たち3人を監禁。鉢巻の真の目的は、中国系マフィアであった父親・孫秀波(麿赤兒)が騙し取られた15億円をダー子たちから取り戻すことだった。

 以上が最終話のつかみ。ラストには大どんでん返しが待っており、SNSでもネットニュースでも「すごい!」「騙された!」などの絶賛の声が相次いだ。

 しかし、本当に賞賛に値する最終回と言えるのだろうか? 喜んでいるのは作品のファンだけではないのか? 最終回で初めて見た視聴者でもついていける内容だったのか?

「目に見えるものが真実とは限らない」という本作のコンセプトになぞらえ、最終話「コンフィデンスマン編」を批判的な目線で振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■出た出た! 出ました! フジお得意の内輪盛り上がり

 賞賛されたラストのどんでん返しをネタバレすると、「最終話は第1話よりも前の物語でした」という時系列のトリック。【毎話ダー子たちの食事を配膳する外国人男性がマフィアの中にいた】や、【ボクちゃんの脱退の回数が1話の時より少ない(1話が400回目の脱退・最終話が398回目の脱退)】などの伏線が張り巡らされていた。

 1話から本作を見て来た私は、素敵なファンサービスだと感じた。しかし、冷静に考えれば、最終話で初めて見た人にとっても面白い内容なのか疑問に思った。

 そこで「コンフィデンスマン 初めて見た」で検索し、好意的なツイートを数えてみると15件前後。「コンフィデンスマン」だけで検索すればこの一週間で1万件近いツイートがあるのに比べ、初めて見た人のリアクションは薄いように思える。また、継続視聴していたファンのツイートの中にも、「中だるみを感じた」などの批判的な意見もある。

 原因は、絶賛されたどんでん返しのために伏線を配置する故に、無理にストーリーを押し進めてしまったせいだと考えられる。

 ラストでダー子たちは鉢巻からも15億円を騙し取るのであるが、「鉢巻秀男がファザコンだから銀行口座のパスワードは父親の言いつけ通りのものにしているだろう」と臆測だけで詐欺に及ぶのは、雑な計画と言える。また、最初から鉢巻を騙すつもりだったという後明かしも唐突過ぎる。一応、前フリとしてあったホテルの部屋番号が各話と違うという映像的伏線も、最終話だけを見た人にとっては「何のこっちゃ」という話である。

 ストーリーの面白さというより、ウォーリーを探せ的な面白さに寄せ過ぎたように思う。同じウォーリー的な楽しみで言えば、映画『サスペリア PART2』(1975年)の方が巧妙なので是非見てほしい。室内に隠れた殺人犯が意外な場所で一瞬映るという映像的伏線は見事だ。犯人捜しの物語で、犯人がチラッと映るのはストーリー上、意味を成している。

 本作に話を戻すと、初めて見た人にとっては鉢巻を騙す物語なのに、「実は最終話は第1話の直前の物語でした」と言われても、「だから何?」という感想しか湧かないだろう。

 内輪盛り上がり的なノリが一因で嫌われたテレビ局が、内輪盛り上がりで物語を終結させた。その結果、視聴率は、9話から0.3%ダウンの9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。最終話まで2ケタに届くことはなかった。映画化の決定で再度注目されたのだから、初めて本作を見る人までファンにするガッツキがほしかった。作品の良さを語り合う相手を増やすこともまた、継続視聴した人に対するファンサービスだと私は思う。

■それでも各話名作ぞろい! 勝手に“ベスト3”

 最終話を酷評してしまったが、本作が名作であることに変わりはない。

 Blu-ray&DVD-BOXが9月19日に発売されるだけでなく、「FODプレミアム」で全話見逃し配信されている。しかし全話見るのは時間と根気が必要。そこで、個人的にお薦めできる三つの回を紹介したい。

【3位】第9話「スポーツ編」

 小池徹平扮するIT社長にニセのバスケチームを売りつけるまでの一話。

 巧妙な伏線が見所の回ではあるが、スポーツアクションが多く、『SLAM DUNK』(集英社)などの名作のパロディも楽しめて、疲れていても見易い一作となっている。

【2位】第3話「美術商編」

 石黒賢演じる美術商の毒舌ぶりが痛快で、『リーガル・ハイ』(同)の古美門弁護士が好きな人には必見の回。美術商のバックグラウンドとキャラクター造詣がしっかりしていたため、美術商の転落後を描いた1シーンはグッとくる。脚本家・古沢良太の作るキャラとセリフの面白さを堪能できる一話。

【1位】第7話「家族編」

 コンゲームが本来持つべき、騙し合いや裏切りをコミカルに楽しむことができる。スリルあり、笑いありなのに、ラストは家族愛に泣かされる。そしてベタなストーリーというわけでもない。エンターテインメントのあるべき姿を提示した珠玉の一作。基本設定さえ押さえておけば、この一話だけ見ても十分楽しむことができる。

 他にも第1話は登場人物とストーリーの設定をおさらいできるし、批判はしたものの最終話も全話見た人にとって楽しめる作りにはなっている。

 映画の公開前におさらいするも良し。リアルタイムで見れなかったから見るも良し。酷評しておいて言うのも掌クルクル過ぎるが、実に楽しい3カ月間を『コンフィデンスマンJP』に与えてもらった。

■これからの“月9”は? フジテレビは……?

 『コンフィデンスマンJP』の後作品として控えるのは、7月期『絶対零度』、10月期は海外ドラマ『SUITS』のリバイバルとウワサされている。共に刑事ドラマと弁護士ドラマで、あらすじやコンセプトを見る限り海外ドラマの事件モノにテイストを寄せるようだ。

 過去には『ガリレオ』や『コード・ブルー』などのシリーズも放映された枠ではあるが、恋愛ドラマのイメージが強い月9の路線変更に勝算はあるのだろうか?

 個人的には海外ドラマの亜流には勝算がないと踏んでいる。

 路線変更には、低視聴率を恐れぬ“チャレンジ精神”。もしくは見向きもされない期間を我慢する“忍耐力”が必要だからだ。

 TBSの『半沢直樹』と『逃げるは恥だが役に立つ』にはチャレンジ精神があった。当時ヒットになりにくいとされた業界モノと恋愛モノ。しかし、それぞれ時代劇要素や社会派要素をエッセンスとして足して、面白いと思わせようとする気概を感じた。

 一方、忍耐力が垣間見えるのはテレビ朝日。「見飽きた」「ダサい」などと言われてきた事件モノを、手を替え品を替え放映し続け、ノウハウを蓄積して『相棒』などのヒットシリーズを生み出した。また忍耐力が若手育成にも作用しているのか、若手スタッフが手掛けた『おっさんずラブ』がブームに至っている。

 近年の視聴者の目は肥えていると言われるが、一番の所以は、画面越しでも作り手の思惑を見抜く感受性にあると思う。制作者の熱意も感じ取れれば、方針の迷走や不安すら見抜いてしまう。小手先のテクニックだけで、現代の視聴者を「面白いよ」と騙すことはできない。

 最後に、私個人の話になるが、幼少期は『北の国から』を見て友達のいない期間を乗り越え、苦学生時代はトレンディドラマを見て、実感できないバブルを感じとった。フジテレビの番組が温かかったから、暗い青春時代を明るく生きることができた。

 かつて視聴者の気持ちに寄り添っていたフジテレビのこれからを見守りつつ、何気ない一日でも「楽しかった」と言わせてくれるテレビの未来に期待をしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』見飽きたフジの“内輪盛り上がり”……ファン以外は楽しめない最終回!?

 『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、6月11日放送の最終話「コンフィデンスマン編」。

 詐欺に嫌気がさしたボクちゃん(東出昌大)は、ダー子(長澤まさみ)とリチャード(小日向文世)の元から去る。引っ越し屋の仕事を始めたボクちゃんは、新入りの従業員・鉢巻秀男(佐藤隆太)と出会う。半年前、鉢巻は結婚詐欺に遭っており、金をだまし取ったのがダー子とリチャードという疑惑が浮上。憤ったボクちゃんはダー子たちが隠れ住むホテルの一室に鉢巻を連れて行く。そこで鉢巻は本性をあらわし、引き連れてきたマフィアとともにダー子たち3人を監禁。鉢巻の真の目的は、中国系マフィアであった父親・孫秀波(麿赤兒)が騙し取られた15億円をダー子たちから取り戻すことだった。

 以上が最終話のつかみ。ラストには大どんでん返しが待っており、SNSでもネットニュースでも「すごい!」「騙された!」などの絶賛の声が相次いだ。

 しかし、本当に賞賛に値する最終回と言えるのだろうか? 喜んでいるのは作品のファンだけではないのか? 最終回で初めて見た視聴者でもついていける内容だったのか?

「目に見えるものが真実とは限らない」という本作のコンセプトになぞらえ、最終話「コンフィデンスマン編」を批判的な目線で振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■出た出た! 出ました! フジお得意の内輪盛り上がり

 賞賛されたラストのどんでん返しをネタバレすると、「最終話は第1話よりも前の物語でした」という時系列のトリック。【毎話ダー子たちの食事を配膳する外国人男性がマフィアの中にいた】や、【ボクちゃんの脱退の回数が1話の時より少ない(1話が400回目の脱退・最終話が398回目の脱退)】などの伏線が張り巡らされていた。

 1話から本作を見て来た私は、素敵なファンサービスだと感じた。しかし、冷静に考えれば、最終話で初めて見た人にとっても面白い内容なのか疑問に思った。

 そこで「コンフィデンスマン 初めて見た」で検索し、好意的なツイートを数えてみると15件前後。「コンフィデンスマン」だけで検索すればこの一週間で1万件近いツイートがあるのに比べ、初めて見た人のリアクションは薄いように思える。また、継続視聴していたファンのツイートの中にも、「中だるみを感じた」などの批判的な意見もある。

 原因は、絶賛されたどんでん返しのために伏線を配置する故に、無理にストーリーを押し進めてしまったせいだと考えられる。

 ラストでダー子たちは鉢巻からも15億円を騙し取るのであるが、「鉢巻秀男がファザコンだから銀行口座のパスワードは父親の言いつけ通りのものにしているだろう」と臆測だけで詐欺に及ぶのは、雑な計画と言える。また、最初から鉢巻を騙すつもりだったという後明かしも唐突過ぎる。一応、前フリとしてあったホテルの部屋番号が各話と違うという映像的伏線も、最終話だけを見た人にとっては「何のこっちゃ」という話である。

 ストーリーの面白さというより、ウォーリーを探せ的な面白さに寄せ過ぎたように思う。同じウォーリー的な楽しみで言えば、映画『サスペリア PART2』(1975年)の方が巧妙なので是非見てほしい。室内に隠れた殺人犯が意外な場所で一瞬映るという映像的伏線は見事だ。犯人捜しの物語で、犯人がチラッと映るのはストーリー上、意味を成している。

 本作に話を戻すと、初めて見た人にとっては鉢巻を騙す物語なのに、「実は最終話は第1話の直前の物語でした」と言われても、「だから何?」という感想しか湧かないだろう。

 内輪盛り上がり的なノリが一因で嫌われたテレビ局が、内輪盛り上がりで物語を終結させた。その結果、視聴率は、9話から0.3%ダウンの9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。最終話まで2ケタに届くことはなかった。映画化の決定で再度注目されたのだから、初めて本作を見る人までファンにするガッツキがほしかった。作品の良さを語り合う相手を増やすこともまた、継続視聴した人に対するファンサービスだと私は思う。

■それでも各話名作ぞろい! 勝手に“ベスト3”

 最終話を酷評してしまったが、本作が名作であることに変わりはない。

 Blu-ray&DVD-BOXが9月19日に発売されるだけでなく、「FODプレミアム」で全話見逃し配信されている。しかし全話見るのは時間と根気が必要。そこで、個人的にお薦めできる三つの回を紹介したい。

【3位】第9話「スポーツ編」

 小池徹平扮するIT社長にニセのバスケチームを売りつけるまでの一話。

 巧妙な伏線が見所の回ではあるが、スポーツアクションが多く、『SLAM DUNK』(集英社)などの名作のパロディも楽しめて、疲れていても見易い一作となっている。

【2位】第3話「美術商編」

 石黒賢演じる美術商の毒舌ぶりが痛快で、『リーガル・ハイ』(同)の古美門弁護士が好きな人には必見の回。美術商のバックグラウンドとキャラクター造詣がしっかりしていたため、美術商の転落後を描いた1シーンはグッとくる。脚本家・古沢良太の作るキャラとセリフの面白さを堪能できる一話。

【1位】第7話「家族編」

 コンゲームが本来持つべき、騙し合いや裏切りをコミカルに楽しむことができる。スリルあり、笑いありなのに、ラストは家族愛に泣かされる。そしてベタなストーリーというわけでもない。エンターテインメントのあるべき姿を提示した珠玉の一作。基本設定さえ押さえておけば、この一話だけ見ても十分楽しむことができる。

 他にも第1話は登場人物とストーリーの設定をおさらいできるし、批判はしたものの最終話も全話見た人にとって楽しめる作りにはなっている。

 映画の公開前におさらいするも良し。リアルタイムで見れなかったから見るも良し。酷評しておいて言うのも掌クルクル過ぎるが、実に楽しい3カ月間を『コンフィデンスマンJP』に与えてもらった。

■これからの“月9”は? フジテレビは……?

 『コンフィデンスマンJP』の後作品として控えるのは、7月期『絶対零度』、10月期は海外ドラマ『SUITS』のリバイバルとウワサされている。共に刑事ドラマと弁護士ドラマで、あらすじやコンセプトを見る限り海外ドラマの事件モノにテイストを寄せるようだ。

 過去には『ガリレオ』や『コード・ブルー』などのシリーズも放映された枠ではあるが、恋愛ドラマのイメージが強い月9の路線変更に勝算はあるのだろうか?

 個人的には海外ドラマの亜流には勝算がないと踏んでいる。

 路線変更には、低視聴率を恐れぬ“チャレンジ精神”。もしくは見向きもされない期間を我慢する“忍耐力”が必要だからだ。

 TBSの『半沢直樹』と『逃げるは恥だが役に立つ』にはチャレンジ精神があった。当時ヒットになりにくいとされた業界モノと恋愛モノ。しかし、それぞれ時代劇要素や社会派要素をエッセンスとして足して、面白いと思わせようとする気概を感じた。

 一方、忍耐力が垣間見えるのはテレビ朝日。「見飽きた」「ダサい」などと言われてきた事件モノを、手を替え品を替え放映し続け、ノウハウを蓄積して『相棒』などのヒットシリーズを生み出した。また忍耐力が若手育成にも作用しているのか、若手スタッフが手掛けた『おっさんずラブ』がブームに至っている。

 近年の視聴者の目は肥えていると言われるが、一番の所以は、画面越しでも作り手の思惑を見抜く感受性にあると思う。制作者の熱意も感じ取れれば、方針の迷走や不安すら見抜いてしまう。小手先のテクニックだけで、現代の視聴者を「面白いよ」と騙すことはできない。

 最後に、私個人の話になるが、幼少期は『北の国から』を見て友達のいない期間を乗り越え、苦学生時代はトレンディドラマを見て、実感できないバブルを感じとった。フジテレビの番組が温かかったから、暗い青春時代を明るく生きることができた。

 かつて視聴者の気持ちに寄り添っていたフジテレビのこれからを見守りつつ、何気ない一日でも「楽しかった」と言わせてくれるテレビの未来に期待をしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』最高視聴率の要因は“小池徹平のネクラ感”と“見事な伏線とパロディの使い方”!?

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)6月4日放送の第9話は「スポーツ編」。最終回目前にして自己最高の視聴率9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。前週から1.2ポイントもアップした。

 映画化も発表され、止まらぬ勢いを見せた。第9話のあらすじは以下の通り。

 IT企業経営者・桂公彦(小池徹平)。彼はスポーツチームを買収しては自分の好き勝手に編成し、弱くなったら売却。それを繰り返し、スポーツファンたちから恨まれていた。ダー子(長澤まさみ)たちはニセモノのバスケットのクラブチームを桂に売りつけ、3年契約7.5憶円を騙し取ろうと企む。

『スラムダンク』(集英社)などからのパロディが目を引く回であったが、伏線を巧みに駆使し、笑いと感動を生み出していた。そのテクニックに触れながら、第9話「スポーツ編」を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■鼻につくIT企業経営者に共感してしまう“異質の1時間”

 伏線の使い方の前に、キャラクターとキャスティングの話からしたい。

 今回のメインゲストはIT経営者の桂を演じた小池徹平。一見、頼りなさそうな小池が経営者という役柄はミスキャストのように思えるが、小池が演じたからこそ良かった。

 世の中のIT企業経営者は鼻につくイメージの人間が多い。容姿・器量・人格が破綻しているにもかかわらず、美女や煌びやかな日常を満喫している(そうでない人もいるが)。

 その身の丈に合わない振る舞いが、鼻についてしまう理由。童顔な小池の身の丈に合わない生意気な振る舞いは、悪目立ちするIT経営者像とマッチしていた。

 この身の丈に合わない感じは、物語にも大きく作用している。小池扮する桂は、学生時代は運動音痴でパッとしない存在。恋した女子は皆、運動部のキャプテンの彼女になってしまう。経営者となり美女との結婚生活を手に入れたが、妻はサッカー選手に寝取られる。スポーツへのコンプレックスが金儲けの原動力となり、プロチームの支配欲求にまで転じる。

 浮かばれない青春を送っていた者は、大人になってからコンプレックスを埋めようと躍起になる。そんな人間の愚かしさが桂の憎らしさの一因となっていた。しかしその憎らしさの正体は、共感であるようにも思える。

 誰しもが完璧な青春など手に入れられない。一流の大学や企業に入った元ガリ勉君が同窓会で調子こいてリア充ぶったり、パッとしなかった女子が彼氏を得た途端「男ってさ~」と、すべてをわかったようなことを言い出したりする。スポーツ選手が引退後に勉強や経営に目覚めたり、勉強も運動も恋愛もソツなくこなした者は自分の普通さを想い悩み、変わったことをしようとする。

 身近な人にも自分自身にも、桂の痛々しさは当てはまるところがあるのではないか。桂という男は万人が共感できる悪役だったのかもしれない。だからこそ、ラストで桂がプロチームを金儲けの道具でなく真剣に育てようとする心境の変化に感動できた。人生とは青春の穴埋め作業なのかもしれないと思わされた1時間だった。

■“見せ球”と“クセ球”、スポーツにも通ずる脚本のテクニック

「スポーツ編」ということで、野球になぞらえて9話で使われた脚本術を紹介したい。

 前置きとして野球には“見せ球”という投球術がある。「速球を投げる前にわざと遅い球を放り、速球をより速く見せる」などがそれに当たる。

 違和感のある球を見せて、渾身の球でアウトを取りにいく。その作法は、脚本で言うところの“伏線”と似ている。

 バスケチームにいたダー子達の仲間、五十嵐(小手伸也)が秘密兵器と呼ばれ続け、その活躍を心待ちにさせる。いよいよ活躍!……という場面で、16秒で交代を余儀なくされ足を引っ張るだけとなる。普通に登場させて失敗させるよりも、秘密兵器という前フリを見せ続けたおかげで笑いの振れ幅は大きくなる。

 ギャグシーンだけでなく、伏線は物語の大きな引っ張りにも使われていた。物語の序盤、桂が魅力的なプロチームの見学中に突然帰宅。そして桂は弱小チームと契約を結ぶ。突然の帰宅という違和感が伏線となり、謎が解けるまでチャンネルを変えられなくなる。

 物語の終盤、その伏線がヒントとなり、チームの買収と弱体化が、わざと赤字部門を出すという会社の税金対策であると同時に、桂のスポーツへの復讐になるという真実を浮き彫りにする。

 余談だが刑事ドラマやミステリーの視聴率が安定するのは、伏線の賜物。誰が何のためにどんなトリックで殺人に至るのか、伏線を散りばめながら視聴者をラストシーンまで誘導できる。

 そして、ネットでも話題となった、『スラムダンク』や『ROOKIES』(ともに集英社)などの名作コミックのパロディ。これは“クセ球”に置き換えられる。クセ球は、ストレートであるがブレる球であるため、バットの芯に当たりにくい特性を持つムービングファストボールなどを指す。

 第9話も、ストレートにやれば、視聴者に「つまらない!」と打ち返される場面で、パロディを使った。不良たちが更生する場面ではドラマ『ROOKIES』(TBS系)の主題歌を流し、「バスケがしたいです」と『スラムダンク』の名言を言わせる。普通の熱血スポ根シーンのはずが、パロディという一クセだけで、元ネタを知る者の喜びに変わり、笑いにもなる。

 また「バスケがしたいです」や「左手は添えるだけ」などの元ネタを知らないという前提で、冒頭に提示しておく配慮は見事だった。知らない人にとっては伏線となり、知っている人にとってはパロディとなる。

 伏線とパロディの使い方が見事だったからこそ、9話の視聴率は上昇するに至ったのではないだろうか。

■最終回、初の2ケタ視聴率となるか!?

 11日には、15分拡大で最終話「コンフィデンスマン編」が放映される。結婚詐欺を題材に、ダー子たちが別のコンフィデンスマンと戦いを繰り広げるようだ。予告によれば、ダー子たちが命の危機が訪れる! ただ、映画化を発表してしまったため、死なないことは明らかなのだが……。

 本レビューも次で最後と寂しさを感じつつ、本作の一ファンとして、最終話「コンフィデンスマン編」の有終の美を期待したい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』最高視聴率の要因は“小池徹平のネクラ感”と“見事な伏線とパロディの使い方”!?

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)6月4日放送の第9話は「スポーツ編」。最終回目前にして自己最高の視聴率9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。前週から1.2ポイントもアップした。

 映画化も発表され、止まらぬ勢いを見せた。第9話のあらすじは以下の通り。

 IT企業経営者・桂公彦(小池徹平)。彼はスポーツチームを買収しては自分の好き勝手に編成し、弱くなったら売却。それを繰り返し、スポーツファンたちから恨まれていた。ダー子(長澤まさみ)たちはニセモノのバスケットのクラブチームを桂に売りつけ、3年契約7.5憶円を騙し取ろうと企む。

『スラムダンク』(集英社)などからのパロディが目を引く回であったが、伏線を巧みに駆使し、笑いと感動を生み出していた。そのテクニックに触れながら、第9話「スポーツ編」を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■鼻につくIT企業経営者に共感してしまう“異質の1時間”

 伏線の使い方の前に、キャラクターとキャスティングの話からしたい。

 今回のメインゲストはIT経営者の桂を演じた小池徹平。一見、頼りなさそうな小池が経営者という役柄はミスキャストのように思えるが、小池が演じたからこそ良かった。

 世の中のIT企業経営者は鼻につくイメージの人間が多い。容姿・器量・人格が破綻しているにもかかわらず、美女や煌びやかな日常を満喫している(そうでない人もいるが)。

 その身の丈に合わない振る舞いが、鼻についてしまう理由。童顔な小池の身の丈に合わない生意気な振る舞いは、悪目立ちするIT経営者像とマッチしていた。

 この身の丈に合わない感じは、物語にも大きく作用している。小池扮する桂は、学生時代は運動音痴でパッとしない存在。恋した女子は皆、運動部のキャプテンの彼女になってしまう。経営者となり美女との結婚生活を手に入れたが、妻はサッカー選手に寝取られる。スポーツへのコンプレックスが金儲けの原動力となり、プロチームの支配欲求にまで転じる。

 浮かばれない青春を送っていた者は、大人になってからコンプレックスを埋めようと躍起になる。そんな人間の愚かしさが桂の憎らしさの一因となっていた。しかしその憎らしさの正体は、共感であるようにも思える。

 誰しもが完璧な青春など手に入れられない。一流の大学や企業に入った元ガリ勉君が同窓会で調子こいてリア充ぶったり、パッとしなかった女子が彼氏を得た途端「男ってさ~」と、すべてをわかったようなことを言い出したりする。スポーツ選手が引退後に勉強や経営に目覚めたり、勉強も運動も恋愛もソツなくこなした者は自分の普通さを想い悩み、変わったことをしようとする。

 身近な人にも自分自身にも、桂の痛々しさは当てはまるところがあるのではないか。桂という男は万人が共感できる悪役だったのかもしれない。だからこそ、ラストで桂がプロチームを金儲けの道具でなく真剣に育てようとする心境の変化に感動できた。人生とは青春の穴埋め作業なのかもしれないと思わされた1時間だった。

■“見せ球”と“クセ球”、スポーツにも通ずる脚本のテクニック

「スポーツ編」ということで、野球になぞらえて9話で使われた脚本術を紹介したい。

 前置きとして野球には“見せ球”という投球術がある。「速球を投げる前にわざと遅い球を放り、速球をより速く見せる」などがそれに当たる。

 違和感のある球を見せて、渾身の球でアウトを取りにいく。その作法は、脚本で言うところの“伏線”と似ている。

 バスケチームにいたダー子達の仲間、五十嵐(小手伸也)が秘密兵器と呼ばれ続け、その活躍を心待ちにさせる。いよいよ活躍!……という場面で、16秒で交代を余儀なくされ足を引っ張るだけとなる。普通に登場させて失敗させるよりも、秘密兵器という前フリを見せ続けたおかげで笑いの振れ幅は大きくなる。

 ギャグシーンだけでなく、伏線は物語の大きな引っ張りにも使われていた。物語の序盤、桂が魅力的なプロチームの見学中に突然帰宅。そして桂は弱小チームと契約を結ぶ。突然の帰宅という違和感が伏線となり、謎が解けるまでチャンネルを変えられなくなる。

 物語の終盤、その伏線がヒントとなり、チームの買収と弱体化が、わざと赤字部門を出すという会社の税金対策であると同時に、桂のスポーツへの復讐になるという真実を浮き彫りにする。

 余談だが刑事ドラマやミステリーの視聴率が安定するのは、伏線の賜物。誰が何のためにどんなトリックで殺人に至るのか、伏線を散りばめながら視聴者をラストシーンまで誘導できる。

 そして、ネットでも話題となった、『スラムダンク』や『ROOKIES』(ともに集英社)などの名作コミックのパロディ。これは“クセ球”に置き換えられる。クセ球は、ストレートであるがブレる球であるため、バットの芯に当たりにくい特性を持つムービングファストボールなどを指す。

 第9話も、ストレートにやれば、視聴者に「つまらない!」と打ち返される場面で、パロディを使った。不良たちが更生する場面ではドラマ『ROOKIES』(TBS系)の主題歌を流し、「バスケがしたいです」と『スラムダンク』の名言を言わせる。普通の熱血スポ根シーンのはずが、パロディという一クセだけで、元ネタを知る者の喜びに変わり、笑いにもなる。

 また「バスケがしたいです」や「左手は添えるだけ」などの元ネタを知らないという前提で、冒頭に提示しておく配慮は見事だった。知らない人にとっては伏線となり、知っている人にとってはパロディとなる。

 伏線とパロディの使い方が見事だったからこそ、9話の視聴率は上昇するに至ったのではないだろうか。

■最終回、初の2ケタ視聴率となるか!?

 11日には、15分拡大で最終話「コンフィデンスマン編」が放映される。結婚詐欺を題材に、ダー子たちが別のコンフィデンスマンと戦いを繰り広げるようだ。予告によれば、ダー子たちが命の危機が訪れる! ただ、映画化を発表してしまったため、死なないことは明らかなのだが……。

 本レビューも次で最後と寂しさを感じつつ、本作の一ファンとして、最終話「コンフィデンスマン編」の有終の美を期待したい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』コメディだけど社会風刺が魅力的! 視聴率ダウンも神回連発するワケ

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 5月28日放送の第8話「美容編」。

 リチャード(小日向文世)が贔屓にしていたメンズエステのエステティシャン福田ほのか(堀川杏美)。ほのかは、美容関連の総合商社『ミカブランド』に採用される。しかし1年後、社長・美濃部ミカ(りょう)の「デブ」「豚」などの暴言やパワハラに耐えかね、ほのかは退社。ダー子(長澤まさみ)たちは、ミカに偽物の化粧水を売りつけ、代理復讐を果たそうとする。以上が導入部のあらすじである。

 第8話の面白さは、物語が思わぬ方向に転ぶ展開にあった。その魅力を語る上で欠かせない中盤から終盤のあらすじにも触れながら、第8話「美容編」を振り返りたい。

■第8話の“影のMVP”は、プロデューサーor編成の判断?

 中盤以降のあらすじは以下のようになっている。

 ダー子はフランスの老舗高級ブランドの人間としてミカに商談を持ち掛ける計画を立てるもアッサリ引き下がる。理由はミカの“美のアスリート”ともいえる、女性を美しくする執念を垣間見たから。儲け話ではミカを揺さぶることはできないと判断する。

 そこでダー子は40歳のド田舎の女に扮して、架空の村に伝わる化粧水・弁天水に興味を持たせることにした。ダー子の実年齢を知らぬミカは、40歳とは思えぬダー子の肌の美しさと弁天水に魅了される。ミカがついに弁天水の権利を3億で買うかと思いきや、ダー子を自分の主催する美人コンテストに出場を提案。ミカは田舎で暮らすダー子に美しさを賞賛される喜びを味合わせようとした。

「一緒に世界中の人を綺麗にしましょう。それまで(弁天水は)待ってるわ」とミカ。

 あとは「弁天水を売る」と宣言するだけ。しかし、ほのかが週刊誌にパワハラをリークしてミカは社長を退任。弁天水を売る計画は失敗に終わる。

 脚本家・古沢良太のブログには、「美容編」は序盤に書き上げ撮影も初期に行われたとあった。「美容編」の置き処を8話という終盤に遅らせた判断は正しかったと言える。「大幅な計画変更」「ターゲットの心理の読み違え」「計画の失敗」は、今までに無い要素だからこそ意外性が高まった。そして、最終話に手強いターゲットを置くならば、この辺りで計画を失敗させた方が、ハラハラしながら今後の話を楽しむことができる。

 プロデューサーか編成サイドの判断かはわからないが、「美容編」が第8話であることは得策だったと言える。

■『コンフィデンスマンJP』に潜む社会風刺

 第8話の魅力は、展開の意外性に留まらない。社会風刺的な一面もスパイスとして潜んでいた。

 パワハラのリークで手に入った50万円で、元気を取り戻す福田ほのか。もともと彼女はミカブランドの入社を喜び、傷つけばミカへのバッシングで癒さやれてしまう。彼女は他者への憧れか批判でしか、自分の価値を保つことができない。美容の仕事も自分をカッコよく見せるためのアクセサリーにすぎなかったのだろう。

 対照的に、ミカにとって美容は人生そのものだった。顔に火傷を負ったせいで、亭主に捨てられ、仕事すら見つからない母の苦労を見て育った。だから女性を美しくすることにストイックであるし、美容の仕事に就きながら痩せようとしないミカを叱責したのも頷ける。ミカは全てを失い団地暮らしとなった後も近所の奥様を綺麗にすることに喜びを感じていた。

「カリスマに勝って、凡人に負けた」

 ミカを騙せたが、ほのかのリークで計画が失敗したダー子の一言にはハッとさせられる。

 近年、パワハラやセクハラで多くの権力者が失脚している。ハラスメントそのものへの批判は仕方ないが、辞職にまで追い込む風潮は有益なのだろうか。批判するからにはその対象の過去の功績や失脚後の損失にも目を向けねばと、記事を書く人間として反省させられた。

■演出家の違いで出る、各話のテイストの違いとは?

 第8話の意外な展開も社会風刺も、“女性の願望”が起点となっている。りょう扮する美濃部ミカの美への執着心が、ダー子に大きく影響していた。計画変更を余儀なくされるし、詐欺師なので目立ってはいけないのに表舞台に出てしまうし、ミカへの共感から騙すことへの罪悪感まで持つ。

 第8話で演出を手掛けたのは、田中亮氏。第5話の「スーパードクター編」でも、かたせ梨乃演じる野々宮ナンシーの魅力が物語の肝になっていた。『ラストシンデレラ』『ディアシスター』(共にフジテレビ)など、女性の心理描写を得意とする田中氏にマッチした脚本だったと言える。

 通常、脚本家は“本打ち”と呼ばれる打ち合わせを重ね、脚本を執筆する。演出家やプロデューサーからのアイデアを脚本に反映することも多い。

 田中氏であれば女性の心境が深堀りされる回になり、「映画マニア編」や「遺跡発掘編」なの演出を手掛けた金井絋氏の回は小ネタやコスプレが多い。近年メガホンを撮り始めた三橋利行氏の場合は古沢良太の書く台詞を尊重し、一言一句が聞き取りやすいように丁寧な演出を心がけている印象だ。

 最終話の前に、今までの回を見直し、誰が演出する回が好きかを確かめてみるのも面白い。個人的には、三橋氏が手掛けた「美術商編」と「家族編」がお薦めである。

 残り2話、誰がメガホンを取るのかも楽しみにしつつ、第9話「スポーツ編」を心待ちにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』コメディだけど社会風刺が魅力的! 視聴率ダウンも神回連発するワケ

(これまでのレビューはこちらから) 

 5月28日放送の第8話「美容編」。

 リチャード(小日向文世)が贔屓にしていたメンズエステのエステティシャン福田ほのか(堀川杏美)。ほのかは、美容関連の総合商社『ミカブランド』に採用される。しかし1年後、社長・美濃部ミカ(りょう)の「デブ」「豚」などの暴言やパワハラに耐えかね、ほのかは退社。ダー子(長澤まさみ)たちは、ミカに偽物の化粧水を売りつけ、代理復讐を果たそうとする。以上が導入部のあらすじである。

 第8話の面白さは、物語が思わぬ方向に転ぶ展開にあった。その魅力を語る上で欠かせない中盤から終盤のあらすじにも触れながら、第8話「美容編」を振り返りたい。

■第8話の“影のMVP”は、プロデューサーor編成の判断?

 中盤以降のあらすじは以下のようになっている。

 ダー子はフランスの老舗高級ブランドの人間としてミカに商談を持ち掛ける計画を立てるもアッサリ引き下がる。理由はミカの“美のアスリート”ともいえる、女性を美しくする執念を垣間見たから。儲け話ではミカを揺さぶることはできないと判断する。

 そこでダー子は40歳のド田舎の女に扮して、架空の村に伝わる化粧水・弁天水に興味を持たせることにした。ダー子の実年齢を知らぬミカは、40歳とは思えぬダー子の肌の美しさと弁天水に魅了される。ミカがついに弁天水の権利を3億で買うかと思いきや、ダー子を自分の主催する美人コンテストに出場を提案。ミカは田舎で暮らすダー子に美しさを賞賛される喜びを味合わせようとした。

「一緒に世界中の人を綺麗にしましょう。それまで(弁天水は)待ってるわ」とミカ。

 あとは「弁天水を売る」と宣言するだけ。しかし、ほのかが週刊誌にパワハラをリークしてミカは社長を退任。弁天水を売る計画は失敗に終わる。

 脚本家・古沢良太のブログには、「美容編」は序盤に書き上げ撮影も初期に行われたとあった。「美容編」の置き処を8話という終盤に遅らせた判断は正しかったと言える。「大幅な計画変更」「ターゲットの心理の読み違え」「計画の失敗」は、今までに無い要素だからこそ意外性が高まった。そして、最終話に手強いターゲットを置くならば、この辺りで計画を失敗させた方が、ハラハラしながら今後の話を楽しむことができる。

 プロデューサーか編成サイドの判断かはわからないが、「美容編」が第8話であることは得策だったと言える。

■『コンフィデンスマンJP』に潜む社会風刺

 第8話の魅力は、展開の意外性に留まらない。社会風刺的な一面もスパイスとして潜んでいた。

 パワハラのリークで手に入った50万円で、元気を取り戻す福田ほのか。もともと彼女はミカブランドの入社を喜び、傷つけばミカへのバッシングで癒さやれてしまう。彼女は他者への憧れか批判でしか、自分の価値を保つことができない。美容の仕事も自分をカッコよく見せるためのアクセサリーにすぎなかったのだろう。

 対照的に、ミカにとって美容は人生そのものだった。顔に火傷を負ったせいで、亭主に捨てられ、仕事すら見つからない母の苦労を見て育った。だから女性を美しくすることにストイックであるし、美容の仕事に就きながら痩せようとしないミカを叱責したのも頷ける。ミカは全てを失い団地暮らしとなった後も近所の奥様を綺麗にすることに喜びを感じていた。

「カリスマに勝って、凡人に負けた」

 ミカを騙せたが、ほのかのリークで計画が失敗したダー子の一言にはハッとさせられる。

 近年、パワハラやセクハラで多くの権力者が失脚している。ハラスメントそのものへの批判は仕方ないが、辞職にまで追い込む風潮は有益なのだろうか。批判するからにはその対象の過去の功績や失脚後の損失にも目を向けねばと、記事を書く人間として反省させられた。

■演出家の違いで出る、各話のテイストの違いとは?

 第8話の意外な展開も社会風刺も、“女性の願望”が起点となっている。りょう扮する美濃部ミカの美への執着心が、ダー子に大きく影響していた。計画変更を余儀なくされるし、詐欺師なので目立ってはいけないのに表舞台に出てしまうし、ミカへの共感から騙すことへの罪悪感まで持つ。

 第8話で演出を手掛けたのは、田中亮氏。第5話の「スーパードクター編」でも、かたせ梨乃演じる野々宮ナンシーの魅力が物語の肝になっていた。『ラストシンデレラ』『ディアシスター』(共にフジテレビ)など、女性の心理描写を得意とする田中氏にマッチした脚本だったと言える。

 通常、脚本家は“本打ち”と呼ばれる打ち合わせを重ね、脚本を執筆する。演出家やプロデューサーからのアイデアを脚本に反映することも多い。

 田中氏であれば女性の心境が深堀りされる回になり、「映画マニア編」や「遺跡発掘編」なの演出を手掛けた金井絋氏の回は小ネタやコスプレが多い。近年メガホンを撮り始めた三橋利行氏の場合は古沢良太の書く台詞を尊重し、一言一句が聞き取りやすいように丁寧な演出を心がけている印象だ。

 最終話の前に、今までの回を見直し、誰が演出する回が好きかを確かめてみるのも面白い。個人的には、三橋氏が手掛けた「美術商編」と「家族編」がお薦めである。

 残り2話、誰がメガホンを取るのかも楽しみにしつつ、第9話「スポーツ編」を心待ちにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)三谷幸喜・クドカンにも劣らぬ古沢良太の手腕! 7話目にして“最高傑作”が誕生!

『コンフィデンスマンJP』の第7話「家族編」が5月21日に放送され、平均視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

 リチャード(小日向文世)はバーで矢島理花(佐津川愛美)と出会う。現在、理花はスリ師をしているが、10億円の遺産を持つ与論要造(竜雷太)の末娘なのであった。ダー子(長澤まさみ)は、刑務所に服役中の理花に成りすまし、余命半年の要造から遺産をもらい受けようとする。しかし、18年ぶりに帰って来た理花がニセモノではないかと、兄・祐弥(岡田義徳)と姉・弥栄(桜井ユキ)は疑う。兄姉からの妨害を受けながら、ダー子は婚約者設定のボクちゃん(東出昌大)と共に、与論要造の信頼を勝ち取る日々が始まる。

 以上が「家族編」のあらすじ。視聴率は前回から0.6ポイント増。感想としては、「『コンフィデンスマンJP』に求めていた面白さはコレなのだ!」と断言できるほど、面白かった。今回は脚本の技術の高さに着眼点を置き、第7話の内容と魅力を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■『コンフィデンスマンJP』には“疑い”が欠けていた?

「面白いけれど、なぜか腑に落ちない」と、本作には何かが欠けていると感じてモヤッとしていた。しかし、第7話を見てモヤが晴れた。この物語には、ダー子たちに疑いの目を向ける存在が欠けていたのだ。疑り深かったのは第1話「ゴッドファーザー編」の江口洋介くらい。他の回のターゲットや周辺人物はスンナリとダー子たちに騙されてしまう。嘘が交錯するコンゲームというジャンルなのに、疑う存在がいなければ緊迫感は出ない。ノリや小ネタに誤魔化され、ハラハラドキドキという、コンゲームにおける楽しみの本質を忘れさせられていた。ある意味、このドラマに騙されていたのだ。

 第7話では、冒頭からダー子を偽物の理花だと気づき、疑う兄と姉の存在がある。屋敷のどこに理花の部屋があるかわかるだろう、と問われたり、DNA鑑定を持ちかけられたり、ピンチの場面が度々訪れる。また、家族というステージが緊張感を高めてくれた。家族には独自の文化と思い出がある、竜雷太演じる与論要造が「今年もアレが楽しみだな」と言えば、要造の言う“アレ”が何なのかわからないダー子たちは右往左往する。

「邪魔者の出現」と「難易度の高いステージの用意」。これらは基本要素であるが、第7話の面白さはそれに留まらない。古沢良太の特異性が存分に発揮されていた。

■脚本家・古沢良太の持つ、“ゲーム的展開”と“演歌の精神”

 まるでRPGゲームの世界を体験したような1時間だった。

 要造に実の娘だと思わせ10億円の遺産を騙し取るまでの“ゴール”。遺産を奪い合う兄姉という“敵”。獄中の理子から得た家族のエピソードという“アイテム”。アイテムの中に、「理子が家族からイジメを受けていた」というカードがある。このカードをどのタイミングで切るのかが、作中の楽しみでもあった。

 屋敷の中で展開する物語であるが、“ステージ”もめくるめく展開を見せる。以下、ネタばれ注意ではあるが……

1、 実の娘だと信じさせるため、兄姉の妨害を乗り越える。

2、兄姉がダー子たちと同じ遺産目当ての偽物の息子&娘だと気づく。

同時にダー子たちも偽物とバレ、牽制し合いながらの要造への媚売り合戦が展開。

3、要造の望みが建前の媚売りでなく本音でぶつかり合える家族の存在だとわかる。

敵対した兄姉と協力し合い、ケンカも罵倒もある普通の家族を目指す。

 遺産10億円ゲットという大目的のため、中間目標が変わりダー子たちの行動ラインまで変化していく。この後も予想を裏切る展開が続くが、オンデマンドで最後まで見てほしい。前述した「本物の理子がイジメを受けていた」というカードを切るタイミングが抜群だったからこそ、ハラハラドキドキ展開のコンゲームは、感動のヒューマンドラマへと変貌する。今まで媚売りに始終していたダー子たちが、要造の望みを知った後での食卓のシーンは、涙がこぼれる。現代日本で家族の食卓がノスタルジーと化してしまったのだと気づかされ、切ない気持ちにさせられた。

 古沢良太の脚本の良さは、視聴者を飽きさせないゲーム的な展開と胸に染みる演歌な部分にある。その両方を併せ持つ脚本家は国内に古沢良太、ただ一人だと思う。

■コメディ作家BIG3古沢良太・宮藤官九郎・三谷幸喜の違いとは?

 古沢良太はビッグネーム故に、三谷幸喜や宮藤官九郎と比較されたり、並べられることがある。同じコメディのジャンルを得意とする3人であるが、笑いのトリガーは明確に違う。しかし、第7話「家族編」は古沢良太の独自の良さに加え、三谷幸喜と宮藤官九郎の得意とする技まで駆使されていた。そのため、コメディ作家大御所3人の違いについて触れてみたい。

 まずは三谷幸喜。彼の笑いは、“状況”で引き起こされる。映画『ラヂオの時間』『THE 有頂天ホテル』やドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)、どの作品も限定された空間で起きてほしくないトラブルに登場人物たちが見舞われる。そして登場人物は誰もが真剣だからこそ、ミスをする際には笑えてしまう。焦って下手を打つ者、考えすぎて見当違いをする者、欲に駆られて事態が見えなくなる者。トラブルの中でそれぞれの個性が浮き彫りとなり、人間ドラマが生じていく。だからこそ、“ドタバタ”ではなく“喜劇”と呼ばれ、作風には気品すら感じられる。

 次に宮藤官九郎。彼の作品の笑いの肝は“緩急”にある。例えば『あまちゃん』(NHK総合)では、天野春子(小泉今日子)の傍若無人な振る舞いで笑いが起き、娘を想う繊細な親心に泣かされる。上京とアイドルになる不安を感じる娘・アキ(能年玲奈)に 「私変わった(成長した)?」と問われた際の返答は圧巻だ。

「変わってないよ、アキは。昔も今も、地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子だけど……だけど、みんなに好かれたね。こっち(岩手)に来て、みんなに好かれた。あんたじゃなくてみんなが変わったんだよ。自信持ちなさい、それはね案外すごいことなんだからね」

 おバカさと真面目さのギャップに魅せられて、登場人物たちは視聴者の心に寄り添う友達となる。だからクドカンドラマの最終回はいつも寂しくなってしまう。

 そして、古沢良太の笑いのトリガーはどこにあるのか? それは登場人物同士の“対立”の中にある。文学ニートとリケジョの恋を描いた『デート』(フジテレビ系)、悪徳弁護士と清廉潔白な弁護士の活躍を描いた『リーガルハイ』(同)。意見の違う者同士のチグハグ感に笑い、相反する主張から物事の本質まで見えそうになる。

 本作第7話「家族編」に話を戻すと、ピンチが次々に起きる“状況”設定には三谷幸喜を、コメディとヒューマンの“緩急”は宮藤官九郎を彷彿とさせた。そして古沢良太自身が得意とする“対立”構図の果てに、家族の本質は血の繋がりには無いというメッセージ性まで感させる。

 無駄な小ネタや自分の見せたい画に執着しなかった三橋利行氏の演出も相まって、古沢良太の脚本の良さが見えたのかもしれない。残り3話。古沢脚本×三橋監督のコンビをまた見られることを期待しつつ、第8話「美のカリスマ編」も楽しみにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)三谷幸喜・クドカンにも劣らぬ古沢良太の手腕! 7話目にして“最高傑作”が誕生!

『コンフィデンスマンJP』の第7話「家族編」が5月21日に放送され、平均視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

 リチャード(小日向文世)はバーで矢島理花(佐津川愛美)と出会う。現在、理花はスリ師をしているが、10億円の遺産を持つ与論要造(竜雷太)の末娘なのであった。ダー子(長澤まさみ)は、刑務所に服役中の理花に成りすまし、余命半年の要造から遺産をもらい受けようとする。しかし、18年ぶりに帰って来た理花がニセモノではないかと、兄・祐弥(岡田義徳)と姉・弥栄(桜井ユキ)は疑う。兄姉からの妨害を受けながら、ダー子は婚約者設定のボクちゃん(東出昌大)と共に、与論要造の信頼を勝ち取る日々が始まる。

 以上が「家族編」のあらすじ。視聴率は前回から0.6ポイント増。感想としては、「『コンフィデンスマンJP』に求めていた面白さはコレなのだ!」と断言できるほど、面白かった。今回は脚本の技術の高さに着眼点を置き、第7話の内容と魅力を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■『コンフィデンスマンJP』には“疑い”が欠けていた?

「面白いけれど、なぜか腑に落ちない」と、本作には何かが欠けていると感じてモヤッとしていた。しかし、第7話を見てモヤが晴れた。この物語には、ダー子たちに疑いの目を向ける存在が欠けていたのだ。疑り深かったのは第1話「ゴッドファーザー編」の江口洋介くらい。他の回のターゲットや周辺人物はスンナリとダー子たちに騙されてしまう。嘘が交錯するコンゲームというジャンルなのに、疑う存在がいなければ緊迫感は出ない。ノリや小ネタに誤魔化され、ハラハラドキドキという、コンゲームにおける楽しみの本質を忘れさせられていた。ある意味、このドラマに騙されていたのだ。

 第7話では、冒頭からダー子を偽物の理花だと気づき、疑う兄と姉の存在がある。屋敷のどこに理花の部屋があるかわかるだろう、と問われたり、DNA鑑定を持ちかけられたり、ピンチの場面が度々訪れる。また、家族というステージが緊張感を高めてくれた。家族には独自の文化と思い出がある、竜雷太演じる与論要造が「今年もアレが楽しみだな」と言えば、要造の言う“アレ”が何なのかわからないダー子たちは右往左往する。

「邪魔者の出現」と「難易度の高いステージの用意」。これらは基本要素であるが、第7話の面白さはそれに留まらない。古沢良太の特異性が存分に発揮されていた。

■脚本家・古沢良太の持つ、“ゲーム的展開”と“演歌の精神”

 まるでRPGゲームの世界を体験したような1時間だった。

 要造に実の娘だと思わせ10億円の遺産を騙し取るまでの“ゴール”。遺産を奪い合う兄姉という“敵”。獄中の理子から得た家族のエピソードという“アイテム”。アイテムの中に、「理子が家族からイジメを受けていた」というカードがある。このカードをどのタイミングで切るのかが、作中の楽しみでもあった。

 屋敷の中で展開する物語であるが、“ステージ”もめくるめく展開を見せる。以下、ネタばれ注意ではあるが……

1、 実の娘だと信じさせるため、兄姉の妨害を乗り越える。

2、兄姉がダー子たちと同じ遺産目当ての偽物の息子&娘だと気づく。

同時にダー子たちも偽物とバレ、牽制し合いながらの要造への媚売り合戦が展開。

3、要造の望みが建前の媚売りでなく本音でぶつかり合える家族の存在だとわかる。

敵対した兄姉と協力し合い、ケンカも罵倒もある普通の家族を目指す。

 遺産10億円ゲットという大目的のため、中間目標が変わりダー子たちの行動ラインまで変化していく。この後も予想を裏切る展開が続くが、オンデマンドで最後まで見てほしい。前述した「本物の理子がイジメを受けていた」というカードを切るタイミングが抜群だったからこそ、ハラハラドキドキ展開のコンゲームは、感動のヒューマンドラマへと変貌する。今まで媚売りに始終していたダー子たちが、要造の望みを知った後での食卓のシーンは、涙がこぼれる。現代日本で家族の食卓がノスタルジーと化してしまったのだと気づかされ、切ない気持ちにさせられた。

 古沢良太の脚本の良さは、視聴者を飽きさせないゲーム的な展開と胸に染みる演歌な部分にある。その両方を併せ持つ脚本家は国内に古沢良太、ただ一人だと思う。

■コメディ作家BIG3古沢良太・宮藤官九郎・三谷幸喜の違いとは?

 古沢良太はビッグネーム故に、三谷幸喜や宮藤官九郎と比較されたり、並べられることがある。同じコメディのジャンルを得意とする3人であるが、笑いのトリガーは明確に違う。しかし、第7話「家族編」は古沢良太の独自の良さに加え、三谷幸喜と宮藤官九郎の得意とする技まで駆使されていた。そのため、コメディ作家大御所3人の違いについて触れてみたい。

 まずは三谷幸喜。彼の笑いは、“状況”で引き起こされる。映画『ラヂオの時間』『THE 有頂天ホテル』やドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)、どの作品も限定された空間で起きてほしくないトラブルに登場人物たちが見舞われる。そして登場人物は誰もが真剣だからこそ、ミスをする際には笑えてしまう。焦って下手を打つ者、考えすぎて見当違いをする者、欲に駆られて事態が見えなくなる者。トラブルの中でそれぞれの個性が浮き彫りとなり、人間ドラマが生じていく。だからこそ、“ドタバタ”ではなく“喜劇”と呼ばれ、作風には気品すら感じられる。

 次に宮藤官九郎。彼の作品の笑いの肝は“緩急”にある。例えば『あまちゃん』(NHK総合)では、天野春子(小泉今日子)の傍若無人な振る舞いで笑いが起き、娘を想う繊細な親心に泣かされる。上京とアイドルになる不安を感じる娘・アキ(能年玲奈)に 「私変わった(成長した)?」と問われた際の返答は圧巻だ。

「変わってないよ、アキは。昔も今も、地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子だけど……だけど、みんなに好かれたね。こっち(岩手)に来て、みんなに好かれた。あんたじゃなくてみんなが変わったんだよ。自信持ちなさい、それはね案外すごいことなんだからね」

 おバカさと真面目さのギャップに魅せられて、登場人物たちは視聴者の心に寄り添う友達となる。だからクドカンドラマの最終回はいつも寂しくなってしまう。

 そして、古沢良太の笑いのトリガーはどこにあるのか? それは登場人物同士の“対立”の中にある。文学ニートとリケジョの恋を描いた『デート』(フジテレビ系)、悪徳弁護士と清廉潔白な弁護士の活躍を描いた『リーガルハイ』(同)。意見の違う者同士のチグハグ感に笑い、相反する主張から物事の本質まで見えそうになる。

 本作第7話「家族編」に話を戻すと、ピンチが次々に起きる“状況”設定には三谷幸喜を、コメディとヒューマンの“緩急”は宮藤官九郎を彷彿とさせた。そして古沢良太自身が得意とする“対立”構図の果てに、家族の本質は血の繋がりには無いというメッセージ性まで感させる。

 無駄な小ネタや自分の見せたい画に執着しなかった三橋利行氏の演出も相まって、古沢良太の脚本の良さが見えたのかもしれない。残り3話。古沢脚本×三橋監督のコンビをまた見られることを期待しつつ、第8話「美のカリスマ編」も楽しみにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』ついに視聴率微増がストップ! 低視聴率の要因は“ストーリーの使い回し”!?

 5月14日放送の『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)第6話「古代遺跡編」。

 ボクちゃん(東出昌大)が訪れた寂れたラーメン屋の夫婦は、地方再生のために計画されたふれあいモールの完成を心待ちにする。しかし2年後、店を再訪すると、計画は産業廃棄物処理場の建設に変更されていた。コンサルタントの斑井満(内村光良)が地方再生を謳い低価格で村の土地を買い、産業処理会社に転売したのだった。

 ダー子(長澤まさみ)たちは、ニセモノの遺跡を発掘させることで処理場の建設をストップさせようと目論む。しかし、元考古学研究者の父親のせいで苦労を強いられた息子の斑井は遺跡発掘そのものを憎んでいた。ダー子はそれを逆手に取り、斑井の父親が唱えた諸説が正しかったと歴史の捏造まで試みる。斑井は、処理場で得る利益と遺跡発掘の情熱との間で心が揺れ動くようになっていく。

 以上が6話のあらすじ。突飛な切り口はいつも通りであるが、今回は過去の回ほどワクワクした気持ちで見ることができなかった。SNS上の書き込みも、「回によって当たり外れがある」「自分には合わなかった」など厳しい意見も目立つ。今回は、その要因を探りながら、第6話を振り返りたい。

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■1話完結型の弱みだけに留まらぬ、本作のマンネリ化

 勿論、批判的な書き込みばかりではなく、好意的な書き込みも多々あった。内村光良が真面目に悪役を演じたことへの賞賛。レキシの楽曲「狩りから稲作へ」がBGMで流れ、アフロヘアのダー子たちがニセモノの土器を作る演出に笑った人も多かったようだ。

 脚本も高い水準を保っていた。産業廃棄物処理場を絶対悪として描かず、建設現場の人間がラーメン屋に集まり店の経営が潤うオチ。遺跡マニア達の情熱に触れた後、斑井が金に群がる女とイチャつく自分を、映し窓に見て我に返る場面。善悪というものを明言せずに視聴者に感じ取らせる、古沢良太の脚本はいい味を出していた。

 しかし、父親のようになりたくない息子が利益至上主義者となり、ダー子たちとの出会いで純粋さを取り戻す構図は第3話「美術商編」と似通っている。しかも石黒賢演じる美術商の方が『リーガルハイ』(同)の主人公・古美門(堺雅人)のように、弁もキャラも立っていて、強敵に見えた。

 全10話もあるのに展開の被りを指摘するのは酷ではあるが、毎話悪人を騙すという骨子が変えられぬ物語ゆえ、肉付けを変えなければ新鮮さが損なわれてしまう。同じ肉付けだとしても、第3話を上回るハラハラする展開と感動を第6話では見せてほしかった。

■平均視聴率2ケタは望み薄。その前に視聴率って必要な指標?

 良し悪しの感想以上に、シビアなのが視聴率。2話で7.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区平均。以下同)と落ち込んだが、3話9.1%、4話9.2%、5話9.3%と微増していただけに、6話の8.2%は手痛い数字であった。

 現在1話から6話までの平均視聴率が8.8%。全10話の平均視聴率を10.0%にするためには、7話から最終話までの各話、約11.8%ずつ出さなければならない。

 ところで、そもそも視聴率という指標になんの意味があるのか?

 テレビマンにとっては査定のようなモノであるが、我々一般視聴者にとってなんら影響を及ぼさない。それにもかかわらず、「面白いのに視聴率がともなわない」「もっとたくさんの人に見てほしい」と言う作品のファンがいる。テレビと視聴率の不思議である。

 これは推察にすぎないが、テレビは同じ時間に同じモノを見ている人がいる安心感を与えてくれるメディアだからなのだと思う。テレビはある意味お祭りと似ていて、大勢の人ごみの中を歩くだけでワクワクするもの。逆に閑散とした出店の通りを歩くと、余計に孤独を感じてしまう。そんな心境から出る言葉が、たくさんの人に見てほしいという期待なのかもしれない。

 今は小説も映画もネット番組も、自分の好きな時間に自由に見られる。テレビもネット配信でそうなりつつあるが、各家庭にブラウン管や液晶画面の箱が置かれている限り、テレビには寂しさを紛らわせる賑やかさが求められる。また、多種多様な楽しみがあるゆえに、自分の趣味趣向に自信を保つことは難しい。だからこそ、自分の好きな作品に対する「面白い」というネット上の評判や高視聴率には、視聴者の寂しさを打ち消し、自信を与える力がある。

 作り手には視聴率を気にせず面白い作品を作ってほしい。同時に視聴率もとってほしい。

 見る側のワガママな意見で、恐縮であるが……。

■第7話「家族編」の期待できる点と、不安なポイント

 家族がテーマで、古沢良太脚本であれば期待が持てる。彼の出世作といえば、山崎貴監督の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』。昭和の家族を描いたこの作品は、30億円を超える興行収入を記録し、古沢良太自身は山崎監督とともに日本アカデミー賞最優秀脚本賞をつかみ取った。

 しかし、金持ち家族の遺産相続が絡むという方向性には不安を覚える。騙す標的が経済ヤクザというのも、第1話「ゴッドファーザー編」と被らないか心配だ。輪をかけて、近年のフジテレビは『モンテ・クリスト伯~華麗なる復讐~』『貴族探偵』『カインとアベル』など、富豪の家族が登場する物語で大コケを連発中なのも心配の一因だ。古沢良太というド真ん中ストレートを投げても結果を出せる本格派をマウンドに立たせながら、過去で失敗したリードを要求し続けるフジテレビの勇気には拍手を送りたい。キャスト・脚本・演出・美術やロケーションに至るまで高水準な作品だけに、各話の方向性の舵取りだけが悩ましい。

 第7話「家族編」を楽しみにしつつ、密かに古沢良太の朝ドラ登板にも期待をしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』もう”パクリばかり”と言わせない! 脱“嫌われフジ”の鍵を握るパロディ演出

 5月7日放送の『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、第5話「スーパードクター編」。

 リチャード(小日向文世)は盲腸のオペを有名外科医・野々宮新琉(永井大)に頼もうとするも、執刀したのはパッとしない田淵安晴(正名僕蔵)だった。実は田淵は腕利きの外科医であり手術は無事成功。新琉が有名になれたのも、田淵が影武者として代理執刀していたおかげだった。それにもかかわらず、野々宮総合病院理事長の野々宮ナンシー(かたせ梨乃)は田淵を解雇。ダー子(長澤まさみ)とボクちゃん(東出昌大)は、田淵の後釜の影武者として病院に潜り込む。そして、ナンシー自身を大動脈瘤と嘘の診断をし、手術代として約3億円を騙し取ろうとしていた。

 以上が第5話のおさらい。ただのぶっ飛んだコメディ回にも見えるが、フジテレビのドラマ作りのターニングポイントとも言える要素が含まれた。何が転換点なのかを、第5話の魅力を交えて、この記事では紹介していく。

(これまでのレビューはこちらから)

■かたせ梨乃の生脚が5話の魅力の象徴?

 第5話の見どころと言えば、ゲストの魅力を引き出した脚本と演出だ。

 Twitterなどでは山田孝之の登場に歓喜の声が上がった。わずか1分程度のカメオ出演であったが、「あんたは仕事を選んだ方がいい!」というボクちゃんのツッコミが、山田孝之自身にも向けられたセリフでクスッと笑えた。

 気は優しいがプレッシャーに弱い新琉役の永井も、実はゲスな田淵役の正名もハマり役だったと言える。新琉の成長や田淵が病院に戻るのを期待しつつ見るストーリーの構造だったが、新琉はオペから逃げ出すし、田淵は恨む患者に捨てセリフを吐いて執刀を拒む始末。葛藤と成長を見せるのがドラマの基本構造であるが、葛藤を抱えたまま煮え切らないのが人生のリアル。役者の演技も相まって納得することができた。

 特に野々宮ナンシー役のかたせが素晴らしい。ダー子たちに騙されたとわかっても一笑に付し、その失敗で病院を手放すキッカケに変えてしまう強さがあった。試合に負けて勝負に勝つタイプの悪役は今回が初めてかもしれない。

 また、ミニスカのゴルフウェア姿のかたせの生脚は、鼻血が出るほど美しかった。普通の感覚なら、60すぎの女優の生足を晒す発想は出てこない。それだけ、役者の長所を演出家が理解していたのだろう。役者の強みを前に出し弱点を薄める匙加減に優れた田中亮氏の演出だったからこそ、5話のゲストたちは輝いたと言える。

■フジ、格好つけたパクリから体当たりのパロディへの路線変更?

 2017年度のフジテレビのドラマの手法は、ヒット作品の手法と似通ることが多かった。例えば『コード・ブルー』。第3シーズンから取り入れた、冒頭と終盤で登場人物が心情を吐露するナレーション。これは、海外の医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』でも丸っきり同じ手法が使われていた。また、地方政治を描いた『民衆の敵』でも、政治の世界を描いた『ハウス・オブ・カード』と同じ、カメラ目線で視聴者に語り掛ける手法が使われていた。

 たまたま似通っただけなのか、パクリなのかは断言できない。しかし、後者だとすれば、同ジャンルのドラマの手法を流用してしまう図々しさに絶句してしまう。

 しかし、ギャグとしてのパロディなら好感が持てる。本作の第5話では、新琉が名ドクターであることを『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)のパロディで紹介。医者が並び歩く場面を『ドクターX』(テレビ朝日系)と同じカメラワークとBGMで演出した。堂々とパクってしまえば、笑えてしまう。

『コード・ブルー』と『民衆の敵』が、ホリエモンなどの起業家の言葉をさも自分の発言のように語る意識高い系のイタい就活生だとすれば、『コンフィデンスマンJP』は忘年会でサンシャイン池崎などに扮して職場を明るくする企業戦士。

 どちらが好きかは人それぞれだが、昨年のフジテレビより今年のフジテレビの方が、プライドを捨てた体当たりなドラマ作りをしていて、好感が持てる。

■『コンフィデンスマンJP』は、“フジテレビ好感度上昇”の鍵となるか?

 前述した、パクリとパロディの違いは、サービス精神の有無にあると思う。

 前者は、「どうせ多くの視聴者は海外ドラマなど見ていない」という開き直りから起きる。

 たとえ、海外ドラマをリスペクトしたオマージュであっても、我が物顔でオリジナルかのように流用すれば、本家のファンは良い気分はしない。結局、視聴者への誠意が足りない。

 一方、他局のヒット作品のパロディは、本家のファンからも愛されるように作られていた。

『モテキ』(テレビ東京系)であれば、岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のロケ地をデートする回で、同映画の名シーンを再現。『打ち上げ花火~』のアニメ映画でのリメイクの際は、モテキの監督・大根仁が脚本家として起用されたほどだ。

『逃げるは恥だが役に立つ』も、『情熱大陸』や『ザ・ベストテン』(いずれもTBS系)など誰もが知る番組を、一目でパロディだとわかるように堂々と演出されていた。

『モテキ』も『逃げ恥』もネタ元への敬意と視聴者を楽しませる誠意を感じる。そのサービス精神があるから、放送枠と局のブランド価値まで高める作品となったのだろう。

『コンフィデンスマンJP』もまた、視聴者を楽しませようとする姿勢が感じ取れる。それは、若者の流行や憧れを物語に投影させて人気を博した90年代前半のトレンディドラマに通じるものだ。恰好をつけず、楽しませることに全力投球な制作姿勢。古き良きフジテレビの精神が受け継がれている。

 5話の平均視聴率は9.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、前回から0.1ポイント増だった。3週連続で上昇しているのは、本作がフジテレビに求められる役割を全うしているからなのかもしれない。

『コンフィデンスマンJP』を皮切りに、フジテレビは愛されるテレビ局に生まれ変われるのか? 第6話「古代遺跡編」も、楽しみにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)