『きのう何食べた?』役者バカによる演技合戦が勃発! ベテラン3人に肩を並べる磯村勇斗恐るべし

 5月17日深夜に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。前回のレビューを書いた時点で、今回の第7話の展開にはすでに期待を寄せていた。筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)、小日向大策(山本耕史、以下「小日向さん」)、井上航(磯村勇斗、以下「ジルベール」)が顔をそろえる会食についてである。すなわち、西島、内野、山本、磯村という4人の役者バカが繰り広げる演技合戦を楽しみにしていたのだ。

 中でも、第6話で初登場したばかりのジルベールには注目していた。ケンジから2種の入浴剤をプレゼントされると「えーっ、どうしよう!」と迷い、小日向さんに「ワタル君はベリー系だよね」と促されるや、「なんで大ちゃんが決めるの?」とご機嫌斜めに。シロさんに対しては「自分がゲイってこと以外、ほとんどウソついたことないでしょ?」と、ゲイのヒエラルキーの文脈に沿ってマウンティングを仕掛けにいく。シロさんが往年のアイドル「三谷まみ」のファンと明らかになった瞬間は意味深にケンジへ視線を送るなど、細かい所作で彼は小悪魔っぷりをにじませたのだ。奔放な発言で地雷を踏むかと思いきや、テーブルの下ではサンダル半脱ぎ状態で内股の姿勢をキープするかわいらしさ。一筋縄ではいかないキャラクターを見事に表現していた。芸達者な3人のベテラン俳優としっかり肩を並べていた磯村、恐るべし。

 ケンジはケンジでジルベールと心で会話をし、表情だけでモノローグのキャッチボールをリードした。相変わらず内野は抜群だ。ジルベールにはメロメロの小日向さんも、シロさん&ケンジに対しては「キリッ!」と音が聴こえてきそうなくらいダンディのモードへスイッチを切り替えてみせる。あのメリハリっぷりには笑った。

 そして、三谷まみについて熱弁するシロさん。いつになくはしゃいでいる。いつもは敬語なのに、「マジで!?」と素っ頓狂な声を上げたときの彼の表情は貴重だった。「こないだの大河ドラマも良かったなぁ~」とかみ締めてるけども、このテーブルを囲むのは大河に出た俳優ばかりという事実。こんな細かなフックも秀逸である。

 4人による悲喜こもごもの心理戦を終え、帰路に就いたシロさん&ケンジ。このとき、歩く2人の距離がものすごく近い。場所の違い(恐らく新宿2丁目を歩いている)もあるだろうが、2人して商店街を歩いた初回の空気感とはまるで別物だ。明らかに、シロさんの内で変化が起こっている。ケンジが言う通り、ちょっとだけ“こっち側”に来ているシロさんが見て取れた。

 帰り道の雨に当てられ、シロさんは寝込んでしまった。そんなパートナーを献身的に看護するケンジ。今回は第5話に続いての“ケンジ回”だ。姉たちにかわいがられて育った末っ子だからこそ、大切な人を看病したい欲は異常に高い。

 まずは、だし巻き卵作りにチャレンジするケンジ。サッポロ一番を作る際はエプロンを着けていなかったのに、シロさんのために料理する今回はしっかり着用している。寝室にいるシロさんは心配でうかうか寝ていられない。彼は彼で歴代彼氏の冷たさに振り回されてきた過去があるので、尽くされることに慣れていないのだ。

 シロさんのためにケンジが用意した料理は、確かにどれも見てくれは良くなかった。例えば、うまく焼けずに涙ぐんだだし巻き卵は焦げ付いてしまっているし。

 原作版と違い、西島が演じるドラマ版のシロさんはだいぶ優しい。マンガでは「うまいよ」の一言だけだったのに、ドラマではすべての料理にコメントを出してあげていた。だし巻き卵には「食感ふわふわで味もいい」、雑炊には「鶏肉でタンパク質が摂れる」、白和えには「水っぽくない」と、それぞれへの褒めコメントは実に丁寧だ。風邪気味で味がよくわからないシロさん、実はこのとき、味についてはほとんど言及していなかったりする。でも、いい。いつも自分の料理を褒めてくれるケンジが相手だからこそ、全力で愛を受け止めようとしていた。愛情表現がストレートなケンジとツンデレなシロさん、2人の個性は正反対だ。でも、そんなところに相性の良さを感じてしまう。

 後日、またしても食事を共にしたシロさん&ケンジと小日向さん&ジルベール。この席でのハイライトは、ケンジがシロさんを好きになった理由を明かす場面だろう。

ジルベール「ケンちゃんはどういうタイプが好きなの?」

ケンジ「俺はね、『シティーハンター』の冴羽獠!」

ジルベール「それ、この世にはいないよ。異次元の人だもん(笑)」

ケンジ「い~た~のっ、ここに三次元の冴羽獠が! シロさんに初めて会ったとき、俺、わかったの。“あ~、ここに俺の獠ちゃんがいたーっ!”って。ウフフフフ」

 シロさんは冴羽獠には似ていないと思う。後ろめたさから、目がまったく笑っていないシロさん。そんな彼を、死んだ目の小日向さんと小馬鹿にしたような生温かい笑顔のジルベールが見つめている。あの名場面を実写化すると、こんなに面白くなるのか。やはり、演技派をそろえているドラマはいい。

 この日、シロさんは自宅でバナナケーキを焼いた。

「なんてことはない。俺に一目惚れだったってわけだ(笑)」(シロさん)

 いつもだったら夜遅くのケーキなんてもってのほか。なのに、もう一切れ追加してケンジに盛ってあげたシロさん。ゲイにはモテないタイプだけに「一目惚れされた」という事実が彼を上機嫌にさせた。そして、なぜケンジがあんなにも自分を看病したがったのか理由もわかった。

 実は、“シロさん受難回”でもあった第7話。ひそかに傷つけられていた彼の自意識は「一目惚れされていた」という事実で回復したわけだ。というか、今回は2組のカップルのノロケを視聴者が延々見せられ続けた感がある。7話を総括すると、そういうことになるだろう。

 そして、今夜放送の第8話。予告によると、原作でもとりわけ人気の高いエピソードが放送されるようだ。これをきちんと選んだドラマ制作陣を筆者はリスペクトする。この作品には、日常のいいこともつらいことも美化せず描く良さがある。そんな魅力を如実に表す、筆者の大好きな回だ。楽しみにしている。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』役者バカによる演技合戦が勃発! ベテラン3人に肩を並べる磯村勇斗恐るべし

 5月17日深夜に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。前回のレビューを書いた時点で、今回の第7話の展開にはすでに期待を寄せていた。筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)、小日向大策(山本耕史、以下「小日向さん」)、井上航(磯村勇斗、以下「ジルベール」)が顔をそろえる会食についてである。すなわち、西島、内野、山本、磯村という4人の役者バカが繰り広げる演技合戦を楽しみにしていたのだ。

 中でも、第6話で初登場したばかりのジルベールには注目していた。ケンジから2種の入浴剤をプレゼントされると「えーっ、どうしよう!」と迷い、小日向さんに「ワタル君はベリー系だよね」と促されるや、「なんで大ちゃんが決めるの?」とご機嫌斜めに。シロさんに対しては「自分がゲイってこと以外、ほとんどウソついたことないでしょ?」と、ゲイのヒエラルキーの文脈に沿ってマウンティングを仕掛けにいく。シロさんが往年のアイドル「三谷まみ」のファンと明らかになった瞬間は意味深にケンジへ視線を送るなど、細かい所作で彼は小悪魔っぷりをにじませたのだ。奔放な発言で地雷を踏むかと思いきや、テーブルの下ではサンダル半脱ぎ状態で内股の姿勢をキープするかわいらしさ。一筋縄ではいかないキャラクターを見事に表現していた。芸達者な3人のベテラン俳優としっかり肩を並べていた磯村、恐るべし。

 ケンジはケンジでジルベールと心で会話をし、表情だけでモノローグのキャッチボールをリードした。相変わらず内野は抜群だ。ジルベールにはメロメロの小日向さんも、シロさん&ケンジに対しては「キリッ!」と音が聴こえてきそうなくらいダンディのモードへスイッチを切り替えてみせる。あのメリハリっぷりには笑った。

 そして、三谷まみについて熱弁するシロさん。いつになくはしゃいでいる。いつもは敬語なのに、「マジで!?」と素っ頓狂な声を上げたときの彼の表情は貴重だった。「こないだの大河ドラマも良かったなぁ~」とかみ締めてるけども、このテーブルを囲むのは大河に出た俳優ばかりという事実。こんな細かなフックも秀逸である。

 4人による悲喜こもごもの心理戦を終え、帰路に就いたシロさん&ケンジ。このとき、歩く2人の距離がものすごく近い。場所の違い(恐らく新宿2丁目を歩いている)もあるだろうが、2人して商店街を歩いた初回の空気感とはまるで別物だ。明らかに、シロさんの内で変化が起こっている。ケンジが言う通り、ちょっとだけ“こっち側”に来ているシロさんが見て取れた。

 帰り道の雨に当てられ、シロさんは寝込んでしまった。そんなパートナーを献身的に看護するケンジ。今回は第5話に続いての“ケンジ回”だ。姉たちにかわいがられて育った末っ子だからこそ、大切な人を看病したい欲は異常に高い。

 まずは、だし巻き卵作りにチャレンジするケンジ。サッポロ一番を作る際はエプロンを着けていなかったのに、シロさんのために料理する今回はしっかり着用している。寝室にいるシロさんは心配でうかうか寝ていられない。彼は彼で歴代彼氏の冷たさに振り回されてきた過去があるので、尽くされることに慣れていないのだ。

 シロさんのためにケンジが用意した料理は、確かにどれも見てくれは良くなかった。例えば、うまく焼けずに涙ぐんだだし巻き卵は焦げ付いてしまっているし。

 原作版と違い、西島が演じるドラマ版のシロさんはだいぶ優しい。マンガでは「うまいよ」の一言だけだったのに、ドラマではすべての料理にコメントを出してあげていた。だし巻き卵には「食感ふわふわで味もいい」、雑炊には「鶏肉でタンパク質が摂れる」、白和えには「水っぽくない」と、それぞれへの褒めコメントは実に丁寧だ。風邪気味で味がよくわからないシロさん、実はこのとき、味についてはほとんど言及していなかったりする。でも、いい。いつも自分の料理を褒めてくれるケンジが相手だからこそ、全力で愛を受け止めようとしていた。愛情表現がストレートなケンジとツンデレなシロさん、2人の個性は正反対だ。でも、そんなところに相性の良さを感じてしまう。

 後日、またしても食事を共にしたシロさん&ケンジと小日向さん&ジルベール。この席でのハイライトは、ケンジがシロさんを好きになった理由を明かす場面だろう。

ジルベール「ケンちゃんはどういうタイプが好きなの?」

ケンジ「俺はね、『シティーハンター』の冴羽獠!」

ジルベール「それ、この世にはいないよ。異次元の人だもん(笑)」

ケンジ「い~た~のっ、ここに三次元の冴羽獠が! シロさんに初めて会ったとき、俺、わかったの。“あ~、ここに俺の獠ちゃんがいたーっ!”って。ウフフフフ」

 シロさんは冴羽獠には似ていないと思う。後ろめたさから、目がまったく笑っていないシロさん。そんな彼を、死んだ目の小日向さんと小馬鹿にしたような生温かい笑顔のジルベールが見つめている。あの名場面を実写化すると、こんなに面白くなるのか。やはり、演技派をそろえているドラマはいい。

 この日、シロさんは自宅でバナナケーキを焼いた。

「なんてことはない。俺に一目惚れだったってわけだ(笑)」(シロさん)

 いつもだったら夜遅くのケーキなんてもってのほか。なのに、もう一切れ追加してケンジに盛ってあげたシロさん。ゲイにはモテないタイプだけに「一目惚れされた」という事実が彼を上機嫌にさせた。そして、なぜケンジがあんなにも自分を看病したがったのか理由もわかった。

 実は、“シロさん受難回”でもあった第7話。ひそかに傷つけられていた彼の自意識は「一目惚れされていた」という事実で回復したわけだ。というか、今回は2組のカップルのノロケを視聴者が延々見せられ続けた感がある。7話を総括すると、そういうことになるだろう。

 そして、今夜放送の第8話。予告によると、原作でもとりわけ人気の高いエピソードが放送されるようだ。これをきちんと選んだドラマ制作陣を筆者はリスペクトする。この作品には、日常のいいこともつらいことも美化せず描く良さがある。そんな魅力を如実に表す、筆者の大好きな回だ。楽しみにしている。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』上がりまくったハードルを一瞬で飛び越える、磯村勇斗の逸材っぷり!

 5月10日深夜に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第6話は、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)の自意識が暴走した回である。

 上町法律事務所に女性の司法修習生・長森夕未(真魚)がやって来ることに。指導はシロさんが務めると聞いた矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)は、シロさんが迫られるのでは? とヤキモキした。

 実際、夕未はシロさんに好意のあるそぶりを見せるのだ。この態度にいちいち困惑するシロさん。焦り、慌てふためき、自分が恋愛対象に見られていないか確認すべく、夕未に「彼氏はいないの?」と、ついつい聞いてしまった。

 シロさんの心境がわかっていればこの問いにも納得だが、相手からすると、あまりにも脈略がなかった。ドン引きする夕未。一瞬で顔色が変わった。こっちは尊敬の念を示していただけなのに、中年男が必死こいて彼氏の有無を聞いてきたのだと受け止められてしまったのだ。

 こんなことが起こったそもそもの原因は、シロさんの自己評価の高さにある。だから勝手に1人でしどろもどろになり、結果的に起きてしまったセクハラ事案。まあ、顔が西島秀俊だったら、誰でも自意識過剰になるとは思うが……。

 同時期に、シロさんは小日向大策(山本耕史、以下「小日向さん」)からのお誘い攻撃にも頭を悩ませていた。「一度、どうしても2人でお会いしたい」というメールの文面は強引で、距離の詰め方もエグい。改めて、小日向さんを山本耕史が演じるという配役が絶妙に思えてくる。「この人はこうやって堀北真希を落としたのだろうか?」という……。

 シロさんは小日向さんと待ち合わせた。

「小日向さんは割と俺のタイプなんだ……!」(シロさん)

 あなたの顔を見てればわかる。あからさまにうれしそうだから。でも、小日向さんは恋人とののろけ話を延々語り続けた。交際中の井上航(磯村勇斗、以下「ジルベール」)をシロさんに会わせるのが、今日の小日向さんの目的だった。

 第6話は、「男女からのモテ期到来!」という勘違いから「フラれてガッカリ」というシロさんの自意識過剰回だった。実は、原作において司法修習生のエピソードと小日向さんに誘われるエピソードは別々の回で描かれている。この2つをくっつけたドラマ制作陣のセンスは特筆ものだ。シロさんが独り相撲したエピソードとして、見事1つにまとまった。素晴らしかったと思う。

 なんといっても今回は、待望のジルベール初登場である。原作でも人気の高いキャラクターだけに、ハードルは上がりまくっていた。

 ジルベールを演じる役者は磯村勇斗と、すでに発表済みだ。不安材料はあった。シロさんは彼を見たとき「どこがジルベールじゃ!」と内心でツッコむのだ。本当に美少年だとまずい。となると、磯村はルックスが良すぎる。そういう意味での不安である。

 いや、恐れ入った。磯村自身はイケメンのはずなのに、イケメンと呼ぶには少々惜しいジルベールの雰囲気を彼は仕上げてきていたのだ。ジルベールが、ちゃんとジルベールだった。トロンとした目つき。小汚いけど、なんかかわいい。ゆるさがあって小悪魔感がある。まさに、マンガから飛び出てきたかのような感覚。ジルベールの出番はほんの数分だったが、あの数分だけで絶大なインパクトを残し、事前に上がっていたハードルをはるかに上回る印象を残して見せた。

 磯村といえば、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の相良猛役が記憶に新しい。筆者は同作のレビュー記事で『今日俺』のMVPとして磯村を挙げたが(参照記事)、あのときの彼の作り込み(狂気の再現など)もすごかった。さらに、今回も原作以上に原作っぽいジルベールとして登場。磯村もすごいし、彼を起用したドラマ制作陣の目利きもすごい。素直に驚いた。

 また、磯村に呼応する山本耕史もいい。シロさんと会話するときのダンディさはどこへやら、ジルベールが来た途端にクネクネし始める。渋声から甘声への異常な高低差。原作版小日向とドラマ版小日向には若干の違いがあるが、山本は役を完全に自分のものにしている。

 実は、ジルベールと会話した際、山本は一瞬セリフをかんでいる。そのかみを、磯村は「かわいい」とアドリブでツッコむことでフォローし、OKテイクにさせた。これぞ、まさに丁々発止。

 第7話では、シロさん、小日向さん、ジルベールにケンジを加えた4人が一堂に会して食事するようだ。つまり、西島、内野、山本、磯村という実力派の役者4人が集結する見せ場でもある。この面子による演技合戦が今から楽しみで仕方ない。というか、この面子なのに公安ドラマでも時代劇でもなく、ラブラブなカップル2組による会合が描かれるという事実がすごい。

 司法修習生からはガッカリされ、小日向さんからの誘いは勘違いだった。へこんだシロさんは「今日は何もしたくない」とふさぎ込むが、とはいっても鍋を作ろうとするのがならでは。普通の人なら、こういう日は弁当かカップラーメンで済ますだろうに。今までのグルメドラマと違い、自分で料理を作るところがこのドラマのいいところ。やりきれないことがあっても、料理が発散させてくれる。さらに、その料理を大切な人と食べれば、いつの間にかもやもやは消えている。その過程に救いがあるのだ。また、元気になったシロさんにケンジが安堵している様子も素敵だった。相性がいい人との食事は幸せをもたらせてくれるのだと、改めて実感する。

 また、食べ過ぎようとするケンジをシロさんが咎める場面も秀逸である。

シロさん「おいおいおい! うまいからって食いすぎるなよ」

ケンジ「え~っ。また腹八分目にしとけって言うの?」

シロさん「この後があるからだよ」

ケンジ「……」

 無言の間の後、ニヤッと笑うケンジの喜び方が妙だ。明らかに勘違いしている。シロさんはシメの雑炊のことを言っているのに、ケンジはエロいことを想像している。このドラマ、ちょいちょいそういうのを意外とぶっ込んでくる。

 今夜放送の第7話は、ケンジがどうしてシロさんのことを好きになったか理由を明かすエピソードだ。……というか、気づいたらもう7話か。『きのう何食べた?』は全12話と発表されており、折り返し地点はもう過ぎたということ。すでに、現時点で名残惜しい。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』待望のサッポロ一番登場! 過去最大の飯テロと、そこから見える2人の関係性

 5月3日深夜に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第5話は、矢吹賢二(内野聖陽)が主役の“ケンジ回”だった。

 母・久栄(梶芽衣子)から「年末年始は帰ってこい」と言われた筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)は、ブーブーと子どものように文句を言っている。

「シロさん、前からお母さんのことにケチつけてるけど、『ゲイは恥ずかしいことじゃない。息子がどんなでも受け入れる』って言ってくれるお母さん、俺、すごいと思うよ。たとえ、うわべだけでも理解のある言い方してくれる親に、ちょっとは感謝してもいいんじゃない? ともかく、四の五の言わずにお正月くらい実家に帰って少しは親孝行してらっしゃいな」(ケンジ)

 大人になってから自分のことを怒ってくれる存在は貴重だ。いつもメソメソして子どもっぽく思えるケンジだが、人に対して感謝の言葉を忘れず、いざとなったらシロさんを諭すこともある。実はこのカップル、ケンジのほうが大人な気がする。

 ケンジは強く言いすぎたことを気にしていたが、帰宅すると食卓に用意されていたのは、ガッツリ系のあんかけチャーハンとこってりオイスターソース炒め。シロさんが作ったのはケンジが好きなメニューで、怒ってくれたことへの感謝を料理で示している。普段はおおらかなパートナーからの言葉が響き、シロさんは実家へ帰省することにした。第5話は、このドラマが初めて“食”を中心に据えた回だ。

サッポロ一番の“即食べ”を理解し合って感じるつながり

 シロさんが帰省したことで、ケンジは年越しを1人で過ごすことに。

 ケンジが作るサッポロ一番みそラーメンは、原作を読んだ視聴者にとってずっと待望だった。とにかく、彼が作るラーメンはこってりしている。基本、ケンジはそういうのが好きなのだ(原作では惣菜のとんかつを使い、カツ丼も作っていた)。

 バター投入、味噌投入。これでもう味はしっかりしているのに、さらに粉末スープも投入。シロさんがいたら絶対に許されない料理。背徳感がすごい。しかも、汁まで全部飲んでしまうケンジ。この人、味覚は男なのだ。

「シロさんの料理は大好きだけど、やっぱ袋ラーメンだけは自分流に作って食べたいんだよね~」(ケンジ)

 おいしそうだから困る。匂いまで伝わってきそうだ。このラーメンは深夜にはヤバい。シロさんには悪いが、間違いなく今までで一番の飯テロだった。また、演じる内野がキャラに合わせ、ちゃんとぎこちなく作っているのもすごい。包丁さばきは危なっかしく、卵の殻を割ったり捨てたりしている手さばきは雑。だからこそのシンパシーで、余計に作りたくなる。今年の年越しは、サッポロ一番みそラーメンにしよう。

 ラーメンを作っているとき、ケンジはシロさんからの電話に出なかった。

「なんで電話に出ないんだよ、さっきから何度もかけてるのに! 1人で年越しするのはさぞ寂しかろうと思ってかけてんのに、お前は……」(シロさん)

 ウソだ。本当に寂しいのは自分。一方、普段はシロさん愛がすごいけど、このときばかりはサッポロ一番が最優先だったケンジ。一瞬の逆転がほほえましい。ケンジは隠さず、理由を打ち明けた。

「サッポロ一番食べてた」(ケンジ)

 この言葉を受けて生まれた少しの沈黙にヒヤリとする。

「……サッポロ一番じゃ仕方ねえな。作ったら即食べだよな、あれは(笑)」(シロさん)

 こういうのをわかってくれるパートナーなのだ。このくだりで幸せを感じさせるのがすごい。電話を切った後、ケンジはしみじみした。

「こうして1人の年越しが寂しくないのは、シロさんがちゃんと帰ってきてくれるってわかってるからなんだよねえ」(ケンジ)

 サッポロ一番の即食べを理解するシロさんとのやりとりが、大いなる前提として効いていた。何気なさに重い意味を含ませる構成は見事だ。

 年が明け、シロさんの実家に近所の子どもたちがやって来た。

「うちの親たちは、もう、孫の代わりにお隣の子どもたちをかわいがることに決めたんだ」(シロさん)

 子どもたちは家のトイレの場所を知っているし、久栄は子どもたちがハムを好きだと知っている。両親を見るシロさんの視線が、いろいろなことを考えさせる。孫を連れてこない子と両親の関係は、ゲイに限った話ではない。多くの視聴者に響いたのではないか。

 今回のシロさんの帰省には、理由があったはずだ。でも、それを果たせていない。

シロさん「あのさあ、結局、老い支度の話してないけど、いいの?」

久栄「あぁ~。……もう、わかったでしょ?」

 孫の顔を見られない両親。それを後ろめたく思う息子。これだけで、先を意識する状況は出来上がってしまっていた。すべてを踏まえての「もう、わかったでしょ」だとしたら、泣ける。

おいしさを共有すると絆が深まる

 実家から大量のお餅を持ち帰ったシロさん。これを食べ切るのがシロさんとケンジのミッションだ。早速、2人はレンジで焼いた。

ケンジ「わわわわわわっ! シロさん、膨らんできたよ? ね、シロさんもう出していい? もう、出していいの!?」

シロさん「うん、出していいよぉ」

 どう考えても、何かを暗喩したやりとりじゃないか。気の抜けない脚本である。

 ここから連日、食卓にはお餅料理が登場し続けた。初めはおいしくても、どうしたってじきに飽きる。でも、ケンジは律義に「おいしい」と感謝した。3日目の朝なんて明らかにうんざりしているのに、けなげにも引きつった笑顔をキープ。一方、それに気づかないシロさん。この人は餅をどう消費するかで楽しくなってしまっているのだ。しかし、「餅以外の炭水化物が食べたい~!」と、さすがのケンジもギブアップ。その後に出てきたのは、栗きんとんをのせたトーストだった。こんなの、うまいに決まってる。いつか、これもやってみたい。もちろん、ケンジもこのトーストには満足したようだ。

「おいしいよ。……また来年も食べたいなあ」(ケンジ)

「来年も、お正月は両親と過ごしなさいよ」という意味だろうか。おいしさを共有したら、2人の絆が自然と深まる描写が素敵である。

 このドラマ、週ごとに怒涛の勢いで季節が移ろう。そして、それに呼応したかのように、週ごとに2人のつながりが深まっていくのも感じられるのだ。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』第4話が描いたシロさんとケンジの馴れ初めが至高の域! 梶芽衣子も名演

 4月26日深夜に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)第4話は、父・悟朗(志賀廣太郎)の食道がん手術を控えた筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)にフォーカスした。

 母・久栄(梶芽衣子)は夫が心配で落ち着かず、絵に描いたように取り乱している。そんな姿が、シロさんは意外だったようだ。

シロさん「お母さんってさあ、結構、お父さんのこと好きだったんだね」

久栄「当たり前でしょ……。大好きよ」

 帰宅した久栄は、悟朗がいつも座っている椅子を見ながらしみじみつぶやいた。

「毎日一緒に暮らしてる人って、特別なのねえ」

 今回はこの言葉に尽きる。

天ぷらを揚げるコツ「思い切り」で人生が好転したシロさん

 第4話は3年前にまでさかのぼり、シロさんと矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)の馴れ初めを描いた。当時の彼氏に連れられ、初めて2丁目を訪れたシロさん。端正なルックスから一般社会では女性ウケがいいシロさんも、この界隈だとモテるタイプではない。彼はこのとき、その事実を初めて思い知った。「帰りたい……」と心が折れそうになった瞬間、出会ったのがケンジである。内野聖陽はすごい。目の色だけで、ケンジがシロさんに一目惚れしているのが伝わってくるのだ。でも、2人はそのまま別れた。

 再会したのは、シロさんが髪を切りに美容室へ行ったとき。たまたまシロさんを担当したのがケンジだったのだ。そこで、ケンジはシロさんがパートナーと別れたことを知る。「あっ、そうだったんだ……」と返すケンジから、隠しきれない喜びとチャンスに懸ける意気込みがにじみ出ている。

 このドラマはすごい。原作が描いていないオリジナルシーンの制作に挑み、それが至高の域に達するのだ。友達以上恋人未満の関係性の頃、2人はデートを重ねていた。この時期について、原作は数行の説明だけで済ませている。ドラマ版はここを映像化し、きっちり再現した。カフェで待ち合わせする2人。すでに到着したシロさんに、息を切らせてやって来たケンジがガラス越しに「ゴメーン!」と手を合わせる。当時の様子から、ケンジだけでなくシロさんもちゃんと相手にデレているのがわかる。

 なんといっても、美容室でシロさんがケンジに同居を申し出たくだりである。上階からの水漏れで家が大変な状況にあると沈むケンジ。この時点で、シロさんはもう挙動不審だ。何度も上を見上げ、体は硬直気味。顔にガーゼが被さると、今度は胸板が大きく上下した。原作を知る者なら「あのシーンがついに訪れる」と上気してしまう。そして、シロさんは思い切った。

シロさん「ウチ……、来る?」

 予期せぬ言葉に動揺するケンジは後ずさりし、壁に手をやってモジモジ。ガーゼのせいで状況を把握できないシロさんは「どうした? え? 聞いてる?」。ケンジは「……いいの?」と返答し、2人の同棲生活は始まった。

 この場面で、シロさんの顔にガーゼがかかっているのが憎い。原作ではシロさんの顔にガーゼはかかっていない。でも、ガーゼがかかっているほうが確かにシロさんっぽいのだ。思い切れない性格のシロさんは、顔を見られない状況に助けられた。顔が見えないシチュエーションでアプローチするのも、ツンデレの“ツン”成分過多の彼らしさ十分である。

 久栄に天ぷらをうまく揚げるコツを聞き「思い切りよ。史朗さんに思い切りを求めても無理でしょうけど」と言われたシロさん。天ぷらをおいしく揚げるコツは、人生を好転させる秘訣でもあった。あのとき、シロさんは確かに思い切った。

 この頃から月日は流れ、シロさんとケンジの距離は縮まった。3年前のクリスマスはぎこちなく、2人は姿勢がカチコチだった。くだけた姿勢をとる今年のクリスマスとは大違いである。3年もたてば、家の様子も変化する。テーブルは1人用から2人仕様の大きなサイズとなり、飾ってある絵画は数点追加された。家電の数も明らかに増えている。

 夫を想う久栄が口にした「毎日一緒に暮らす人は特別」という言葉。シロさんはそれを自らとケンジの関係に照らし合わせた。どんなカップルも時がたてば特別な出来事は減る。日常の繰り返しの中で幸せを見つけるようになる。

 悟朗を支える久栄のために、シロさんを通じてケンジはハンドタオルをプレゼントしていた。渡すときにケンジからの物と伝えられなかったシロさんは、電話でその事実を初めて母に告げた。

シロさん「ハンドタオルをくれた人さ……あの……ケンジっていうんだ。俺の……」

久栄「一緒に住んでる彼氏さん?」

シロさん「……うん」

久栄「そう」

シロさん「名前、矢吹賢二って言って」

久栄「……よく気がつく方なのねえ。柄も好みだったわ。ありがとうってお伝えしてね」

 息子の交際相手からのプレゼントと知った瞬間、複雑な感情からわずかな間ができた久栄。でも、すぐに思い直した。息子の心へ寄り添おうと努力する母。複雑さを受け止め、前へ進む親子の一瞬を切り取っている。

 予告を見ると、次回の第5話はかなり楽しみな回だ。ケンジの魅力がかなり放出されるはず。加えて、料理にも注目してほしい。放送終了後、もしかしたら近所のスーパーでサッポロ一番がバカ売れするかもしれない。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』第3話は史上最高の改変! 山本耕史版小日向が色っぽすぎる!!

 4月20日に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第3話。

 今回うなったのは構成の妙だ。「シロさんを理解しようとするもどこかズレた両親」「佳代子さん宅で小日向さんを紹介されるシロさん」「元夫と遊ぶ息子を遠くから見守る今田さんに付き添うシロさん」「シロさんのお父さんに病気が見つかる」という4つのエピソードが見事無理なくつながっていた。こんなに素晴らしい改変は初めて見た気がする。

期待を寄せていた息子を犯罪者と同列にする母親

 筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)が実家に帰る話は、原作でもかなり印象的なエピソードだ。まず、シロさんの「ただいま」に「いらっしゃい」と返す母・久栄(梶芽衣子)の言葉選びが気になる。自宅で待つ矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)ならば、無論、シロさんに「お帰り」と返すのだが。これだけでゲイと距離がある親世代と、シロさんと共に歩くケンジの違いが見て取れる。

 両親も頑張っているが、ところどころで根の深さがこぼれ落ちる。シロさんがエクレアを手土産に持っていくと「こういうことに気が利きすぎるのも女の子みたいねえ」と母は一言。食事していると、唐突に「ゲイでも犯罪者でも、シロさんを受け入れる覚悟はできてる」と、犯罪者とゲイを同列にする認識を露呈。父・悟朗(志賀廣太郎)と2人きりになればひと息つけると思いきや、いきなり「どんな女だったら大丈夫なんだ?」とぶっ込んできたのは衝撃だった。まさか過ぎる角度からの問いかけ。この手の無理解と直面すると、シロさんは目が笑ってない笑顔でいつもやり過ごす。

 この家は、きっとちゃんとしている。エクレアを手づかみではなく、皿に乗せてフォークで食べる品の良さ。シロさんが大事に育てられ、一人っ子として期待を一身に背負っていたことがわかる。しかし、この自慢の息子が孫を連れてくることはない。だから、シロさんも笑顔でやり過ごすことしかできなかった。

 自宅で帰りを待つケンジは、すぐにシロさんの異変に気づいた。というか、帰宅前から心配していた。

ケンジ「何かあった?」

シロさん「それがさ……、いや、普通だったよ」

 受け止める気まんまんのケンジ。愛にあふれている。そんなパートナーへ愚痴ることを思いとどまったシロさん。わかりにくいけど、これも彼なりの愛だ。しかし、ケンジの顔に浮かぶ寂しげな表情が重い。

 ガラッと変わって、シロさんがスーパーでの激安食材シェア仲間の主婦・佳代子さん(田中美佐子)の家にお邪魔した場面。このとき、佳代子の夫・富永さん(矢柴俊博)がシロさんのために連れてきた小日向大策(山本耕史)の登場は第3話で最大のインパクトだった。

 原作の小日向さんはガチムチ系で、山本耕史とはイメージが若干異なる。むしろ、それが良かった。山本版小日向は、原作の10倍くらい色っぽい。表情を動かさず、まばたきしない異常な眼力。端的に圧がすごいのだ。「どうも、小日向大策と申します」と自己紹介されるだけで動揺するシロさん。小日向さんはわざわざシロさんの隣に座り、話し始めた。「もしかして、口説かれる……?」とばかりに顔がこわばるシロさん。しかし、小日向さんは彼氏とのエピソードを口にする。

シロさん「あっ、彼氏いるんですね……」

 何をガッカリしているのかという。

小日向さん「そうだ、筧さん。せっかくですから、今度食事でもどうですか? 連絡先交換しましょう」

 まさかの「ふるふる」で連絡先を交換するシロさんと小日向さん。見つめ合った2人がスマホを揺らす光景は、卑猥な何かを意識してのツーショットのはずだ、きっと。

すれ違いの愛情に寂しげな表情を見せる内野聖陽

 シロさんの実家から連絡が入った。父・悟朗に食道がんが見つかったのだ。その様子を見て心配するケンジ。

ケンジ「俺……何かできること、あるかな?」

シロさん「……いや、別に。今のところないよ(笑)」

 切ない。こういうときこそシロさんの力になりたいケンジ。余計な心配を掛けたくないシロさん。お互いがお互いに愛情があるのに、すれ違って残念な形になってしまっている。

 翌日、シロさんは離婚した元夫に息子の親権を取られた依頼人・今田聖子(佐藤仁美)に連れ添って遊園地へ出掛けた(シロさんの職業は弁護士)。遠くから息子を見守るだけで我を忘れる今田さんを、シロさんは懸命にフォローする。そしてこの日の帰り際、今田さんはシロさんに感謝した。このとき、彼女が口にしたお礼の言葉はシロさんに響いた。

「私って、すごく変じゃないですか。だから、家族ですらまともに接してくれなくて。でも、先生はちゃんと話聞いてくれました。気持ちがしんどいときって、誰か1人でも親身になって話を聞いてくれる人がいると安心するんですね」

 このとき、シロさんの頭に思い浮かんだのはケンジの顔だ。ケンジはシロさんを思い続けているが、シロさんもケンジを思い続けている。帰宅後、シロさんはケンジに言った。

シロさん「親父のことで、もしこの先何かあったときさ、話聞いてもらってもいいかな? 話聞いてくれるだけでいいんだ」

ケンジ「……うん。……聞くよぉ~! もちろんだよ、シロさん」

 感極まり、返答するケンジの声が裏返っているのがいい。

 ドラマではW主演になっているが、原作で主人公的な立ち位置にいるのはシロさんのほうだ。ケンジは、どちらかと言うと“その恋人”という存在。しかし、内野聖陽が演じることで、より感情移入できる愛すべき人に昇華した。それが回り回って、シロさんが感じる幸せとなって着地する。どんなにつらいことがあっても、食事をしながら話を聞いてくれる存在がいるということは、なんて幸せなんだろう。

 そして、やはり構成がいい。今田さんに付き添うエピソードから、シロさんの「話聞いてくれるだけでいいんだ」へつながっていく流れ。なんと自然な改変なのだろうか。

 まだツンケンしていた初回と比べ、第3話では笑顔を見せることも多くなったシロさん。ケンジ→シロさんの愛と、シロさん→ケンジの愛が共鳴した結果だ。感動的な回だったと思う。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』原作超えシーン連発……シロさんの過去を暗喩した”いちごジャム作り”にニヤリ

 

 4月12日放送『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第2話。

 このドラマは、原作に忠実な脚本になっている。マンガのセリフを、かなりそのまま再現している。なのに、生身の人間が演じることで、ドラマでしか成し得ない境地に達する瞬間があるのだ。

ドラマ版が原作を超える瞬間がある

 なんといっても、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)が富永佳代子(田中美佐子)の家に上がり、スイカを食べた場面を取り上げたい。

 本当は逐一種を取り、それをカットして食べたいシロさん。でも、「丁寧な食べ方をしたらゲイだとばれる」と彼は心配した。だから、男らしさを見せるべく、ワイルドにスイカにかぶりつく。

 ここ、ぶっちゃけ、マンガより色気が出ているのだ。原作のシロさんよりもイケメン。異常に険しい顔つきで、口から垂れるスイカの汁を拭う姿。危険な雰囲気である。各ドラマでやたらと公安の任務を背負う西島とマッチし、マジックが起きてしまっている。

「縦から見ても横から見てもカタギじゃないじゃない!」

 そりゃ、佳代子さんもうろたえるというもの。思わず、この場面で筆者は声を出して笑ってしまった。

 まだある。シロさんの元カノ・仁美(大島葉子)が店主を務めるパン屋に、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)が偵察に行ったくだりだ。原作を読んだ際は、「夫の愛人がやってる小料理屋に偵察に行った正妻みたいな気持ちに勝手になられても……」というシロさに共感していた。でも、ドラマになると、不思議とケンジに入れ込んでしまうのだ。「もうちょっとケンジのことを考えてあげてよ!」と応援していた。役者・内野聖陽の力量によるものだと思う。表情や仕草が、あまりにいじらしすぎるからだろうか。

 ケンジの嫉妬に、シロさんは誠実に対応する。仁美と付き合ったのは、女っ気の薄い子だったから。でも、付き合ってみると、やっぱり女の子は女の子だった。このままノンケの仮面をかぶっていくのはキツい。仁美と適当に付き合っていた自分。すると、すぐに仁美のほうから別れを切り出してきた。そのときは正直、ホッとした。

「もしあのまま仁美と付き合い続けていたら、俺、結婚とかしてたかもしれない。子どもだってできてたかもしれない。でも、ゲイであることはやめられないから、奥さんと子どもを裏切って彼氏作って。それでも家族を捨てられないから、結局、彼氏のことも傷つける。そういうの、続けてたと思う……。ゾッとするよ。仁美には悪いことしたって反省してる。だからもう俺は女性とのどうこうっていう、そういうのはないんだ」

 今回のエピソードに、いちごジャム作りを持ってきたところが本当に素晴らしい。煮たいちごから出るアクをすくう工程は、ノンケを装い女性と交際するも「自分には無理」と再認識したシロさんの過去そのままだ。果物から色が抜け白っぽくなる変化は、「もう女性とは付き合わない」と心に決めるに至ったシロさんの変化を暗喩している。

 原作のほうのシロさんは今ではすっかり悟りが入り、迷いもかなり抜けた。長い年月を経たカップルに、波風らしい波風が立つことはもうほとんどない。2人の間の感情の揺れ動きを描くドラマを見ていると懐かしさが湧き上がり、なんとも言えない気持ちになってしまった。

扱っているテーマが毎回、実は重い

 前回のレビューでも書いたが、やはりこの作品は「グルメ」「同性愛」の要素を前面に押し出した人間ドラマである。

 もし、シロさんとケンジが一生添い遂げたとしても、2人は子どもを授かることができない。だから、シロさんは老後のために貯蓄している。ケンジは姉妹の多い家庭に育ったが、シロさんは1人っ子だ。それを考えると、女性との交際歴を持つシロさんをケンジは意固地に責められない。だから、ケンジはシロさんの告白を正面から受け止めた。いちごジャムのトーストを手にわかり合った朝食のシーンは、第2話のハイライトだった。

 サラッと描いているが、『きのう何食べた?』の扱うテーマは毎回重い。そこをチャーミングな作風が救っている。見た後、温かな気持ちになる。原作はもちろん、ドラマ版の今作も、結構奇跡的な出来栄えだと思う。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』原作超えシーン連発……シロさんの過去を暗喩した”いちごジャム作り”にニヤリ

 

 4月12日放送『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第2話。

 このドラマは、原作に忠実な脚本になっている。マンガのセリフを、かなりそのまま再現している。なのに、生身の人間が演じることで、ドラマでしか成し得ない境地に達する瞬間があるのだ。

ドラマ版が原作を超える瞬間がある

 なんといっても、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)が富永佳代子(田中美佐子)の家に上がり、スイカを食べた場面を取り上げたい。

 本当は逐一種を取り、それをカットして食べたいシロさん。でも、「丁寧な食べ方をしたらゲイだとばれる」と彼は心配した。だから、男らしさを見せるべく、ワイルドにスイカにかぶりつく。

 ここ、ぶっちゃけ、マンガより色気が出ているのだ。原作のシロさんよりもイケメン。異常に険しい顔つきで、口から垂れるスイカの汁を拭う姿。危険な雰囲気である。各ドラマでやたらと公安の任務を背負う西島とマッチし、マジックが起きてしまっている。

「縦から見ても横から見てもカタギじゃないじゃない!」

 そりゃ、佳代子さんもうろたえるというもの。思わず、この場面で筆者は声を出して笑ってしまった。

 まだある。シロさんの元カノ・仁美(大島葉子)が店主を務めるパン屋に、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)が偵察に行ったくだりだ。原作を読んだ際は、「夫の愛人がやってる小料理屋に偵察に行った正妻みたいな気持ちに勝手になられても……」というシロさに共感していた。でも、ドラマになると、不思議とケンジに入れ込んでしまうのだ。「もうちょっとケンジのことを考えてあげてよ!」と応援していた。役者・内野聖陽の力量によるものだと思う。表情や仕草が、あまりにいじらしすぎるからだろうか。

 ケンジの嫉妬に、シロさんは誠実に対応する。仁美と付き合ったのは、女っ気の薄い子だったから。でも、付き合ってみると、やっぱり女の子は女の子だった。このままノンケの仮面をかぶっていくのはキツい。仁美と適当に付き合っていた自分。すると、すぐに仁美のほうから別れを切り出してきた。そのときは正直、ホッとした。

「もしあのまま仁美と付き合い続けていたら、俺、結婚とかしてたかもしれない。子どもだってできてたかもしれない。でも、ゲイであることはやめられないから、奥さんと子どもを裏切って彼氏作って。それでも家族を捨てられないから、結局、彼氏のことも傷つける。そういうの、続けてたと思う……。ゾッとするよ。仁美には悪いことしたって反省してる。だからもう俺は女性とのどうこうっていう、そういうのはないんだ」

 今回のエピソードに、いちごジャム作りを持ってきたところが本当に素晴らしい。煮たいちごから出るアクをすくう工程は、ノンケを装い女性と交際するも「自分には無理」と再認識したシロさんの過去そのままだ。果物から色が抜け白っぽくなる変化は、「もう女性とは付き合わない」と心に決めるに至ったシロさんの変化を暗喩している。

 原作のほうのシロさんは今ではすっかり悟りが入り、迷いもかなり抜けた。長い年月を経たカップルに、波風らしい波風が立つことはもうほとんどない。2人の間の感情の揺れ動きを描くドラマを見ていると懐かしさが湧き上がり、なんとも言えない気持ちになってしまった。

扱っているテーマが毎回、実は重い

 前回のレビューでも書いたが、やはりこの作品は「グルメ」「同性愛」の要素を前面に押し出した人間ドラマである。

 もし、シロさんとケンジが一生添い遂げたとしても、2人は子どもを授かることができない。だから、シロさんは老後のために貯蓄している。ケンジは姉妹の多い家庭に育ったが、シロさんは1人っ子だ。それを考えると、女性との交際歴を持つシロさんをケンジは意固地に責められない。だから、ケンジはシロさんの告白を正面から受け止めた。いちごジャムのトーストを手にわかり合った朝食のシーンは、第2話のハイライトだった。

 サラッと描いているが、『きのう何食べた?』の扱うテーマは毎回重い。そこをチャーミングな作風が救っている。見た後、温かな気持ちになる。原作はもちろん、ドラマ版の今作も、結構奇跡的な出来栄えだと思う。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』内野聖陽の再現度に脱帽! 前評判覆し、感動レベルに

 4月5日より、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)がスタートした。2007年より「モーニング」(講談社)で連載している人気漫画のドラマ化である。

 街の小さな法律事務所で働く弁護士・筧史朗(以下「シロさん」)と美容師の矢吹賢二(以下「ケンジ」)は同棲中の同性カップルで、シロさんの日課は事務所を定時に出た後、近所の安売りスーパーへ向かうこと。頭の中で瞬時に夕食の献立を組み立てる彼にとって、月の食費を2万5,000円以内に抑えることは重要課題だ。

内野聖陽が想像以上にケンジそのもの

 漫画の実写化となると、成功の鍵の8割はキャスティングにかかっている。正直、心配していたのはケンジに関してだった。内野聖陽が演じると知ったとき、ちょっと違う気がしたのだ。何しろ、『JIN-仁-』(TBS系)で坂本龍馬を演じたあの人である。男臭いイメージが強すぎる。

 いやいやいや! 漫画を読み、頭の中で想像していたケンジがそこにはいた。まさに、ケンジ。そのまんま、ケンジ。ふとした所作や表情が“動くケンジ”だった。内野の中にケンジがいた。この配役って、ひとつの正解じゃないだろうか? 原作ファンからすると感動のレベルだったと思う。気が早いが、ドラマが最終話を迎える頃には、内野のファンはすごく増えている気がする。

 初回で最も印象的なのはオープニングだった。ケンジが料理中のシロさんをスマホで撮影しているというテイの映像。料理を作るイケメン彼氏を愛おしく思うケンジ。いかにもケンジがやりそうなことだし、撮りそうな動画だった。『きのう何食べた?』には、ストレートな性描写は出てこない。でも、だからこそ、逆にエロい。ケンジのスマホ撮影で始まるオープニングは、絶妙な演出だったと思う。

 一方、シロさんを演じるのは西島秀俊だ。ネット上ではさまざまな意見(賛否どちらもあり)が飛び交っているようだが、なんだかんだ、ビジュアル的にこの人は適任だと思う。基本、テンションが低いシロさんだけに(特に初期のシロさんは、かなり性格がキツい)、抑揚のない西島のセリフ回しはマッチしている。何より、以前から西島は『きのう何食べた?』の読者だったそうだ。

 原作ファンならご存じだと思うが、シロさんは次第に優しくなっていく。話が進むにつれ、彼の良さはドンドン出てくる。不器用なシロさんが見せるケンジへの愛情表現は、見どころのひとつである。

 いや、すでに初回で、シロさんの隠れた優しさは垣間見られた。ケンジがコンビニでハーゲンダッツを通常価格で購入し、無駄遣いを嫌うシロさんが叱ったくだりである。スーパーならハーゲンダッツが2割引で買えることを知るシロさんは、ケンジを叱った。

シロさん「朝と晩の食費を月2万5,000円に抑えるのが俺の最重要課題なんだぞ。……(レシートを見て)高っ!」

ケンジ「(レシートを奪って)いいよ、自分で払うから」

シロさん「(レシートを奪い返し)いいよ、貸せ! お前は貯金しろ!」

 シロさんはケンジからレシートをぶん取り、それを引き出しにしまった。引き出しには「賢二立て替え分」なるラベルが貼ってある。なんだかんだ、シロさんから愛情が窺えるのだ。

 これは、原作にはなかったくだりである。オリジナルの秀逸な描写を生み出したドラマスタッフを評価したい。今回の実写化はうまくいきそうだ。

『きのう何食べた?』は人間ドラマである。シロさんとケンジを描く上で大きな柱になっているのは「年月」だ。

 この作品がスタートしたのは07年。連載が始まってからすでに10年以上の月日がたった。あの頃と比べ、同性愛に対する社会の理解度は明らかに深まっている。加えて、“加齢”というテーマも外せない。連載中にシロさんの両親は大病を経験したし、ケンジの父親は他界した。シロさんもケンジも、若い頃ほど食べられなくなった。原作は、年月とリアルに並走している。

 果たして、この「年月」をワンクールのドラマで描くことができるのか? そこに関しても注目していきたい。『きのう何食べた?』は「グルメ」「同性愛」の要素を前面に押し出した、人間ドラマである。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』内野聖陽の再現度に脱帽! 前評判覆し、感動レベルに

 4月5日より、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)がスタートした。2007年より「モーニング」(講談社)で連載している人気漫画のドラマ化である。

 街の小さな法律事務所で働く弁護士・筧史朗(以下「シロさん」)と美容師の矢吹賢二(以下「ケンジ」)は同棲中の同性カップルで、シロさんの日課は事務所を定時に出た後、近所の安売りスーパーへ向かうこと。頭の中で瞬時に夕食の献立を組み立てる彼にとって、月の食費を2万5,000円以内に抑えることは重要課題だ。

内野聖陽が想像以上にケンジそのもの

 漫画の実写化となると、成功の鍵の8割はキャスティングにかかっている。正直、心配していたのはケンジに関してだった。内野聖陽が演じると知ったとき、ちょっと違う気がしたのだ。何しろ、『JIN-仁-』(TBS系)で坂本龍馬を演じたあの人である。男臭いイメージが強すぎる。

 いやいやいや! 漫画を読み、頭の中で想像していたケンジがそこにはいた。まさに、ケンジ。そのまんま、ケンジ。ふとした所作や表情が“動くケンジ”だった。内野の中にケンジがいた。この配役って、ひとつの正解じゃないだろうか? 原作ファンからすると感動のレベルだったと思う。気が早いが、ドラマが最終話を迎える頃には、内野のファンはすごく増えている気がする。

 初回で最も印象的なのはオープニングだった。ケンジが料理中のシロさんをスマホで撮影しているというテイの映像。料理を作るイケメン彼氏を愛おしく思うケンジ。いかにもケンジがやりそうなことだし、撮りそうな動画だった。『きのう何食べた?』には、ストレートな性描写は出てこない。でも、だからこそ、逆にエロい。ケンジのスマホ撮影で始まるオープニングは、絶妙な演出だったと思う。

 一方、シロさんを演じるのは西島秀俊だ。ネット上ではさまざまな意見(賛否どちらもあり)が飛び交っているようだが、なんだかんだ、ビジュアル的にこの人は適任だと思う。基本、テンションが低いシロさんだけに(特に初期のシロさんは、かなり性格がキツい)、抑揚のない西島のセリフ回しはマッチしている。何より、以前から西島は『きのう何食べた?』の読者だったそうだ。

 原作ファンならご存じだと思うが、シロさんは次第に優しくなっていく。話が進むにつれ、彼の良さはドンドン出てくる。不器用なシロさんが見せるケンジへの愛情表現は、見どころのひとつである。

 いや、すでに初回で、シロさんの隠れた優しさは垣間見られた。ケンジがコンビニでハーゲンダッツを通常価格で購入し、無駄遣いを嫌うシロさんが叱ったくだりである。スーパーならハーゲンダッツが2割引で買えることを知るシロさんは、ケンジを叱った。

シロさん「朝と晩の食費を月2万5,000円に抑えるのが俺の最重要課題なんだぞ。……(レシートを見て)高っ!」

ケンジ「(レシートを奪って)いいよ、自分で払うから」

シロさん「(レシートを奪い返し)いいよ、貸せ! お前は貯金しろ!」

 シロさんはケンジからレシートをぶん取り、それを引き出しにしまった。引き出しには「賢二立て替え分」なるラベルが貼ってある。なんだかんだ、シロさんから愛情が窺えるのだ。

 これは、原作にはなかったくだりである。オリジナルの秀逸な描写を生み出したドラマスタッフを評価したい。今回の実写化はうまくいきそうだ。

『きのう何食べた?』は人間ドラマである。シロさんとケンジを描く上で大きな柱になっているのは「年月」だ。

 この作品がスタートしたのは07年。連載が始まってからすでに10年以上の月日がたった。あの頃と比べ、同性愛に対する社会の理解度は明らかに深まっている。加えて、“加齢”というテーマも外せない。連載中にシロさんの両親は大病を経験したし、ケンジの父親は他界した。シロさんもケンジも、若い頃ほど食べられなくなった。原作は、年月とリアルに並走している。

 果たして、この「年月」をワンクールのドラマで描くことができるのか? そこに関しても注目していきたい。『きのう何食べた?』は「グルメ」「同性愛」の要素を前面に押し出した、人間ドラマである。

(文=寺西ジャジューカ)