西島秀俊は『真犯人フラグ』救う“ヒーロー”? 鈍感ポンコツ夫でも愛されるワケ

 11月28日に第7話が放送される日本テレビ系日曜ドラマ『真犯人フラグ』。西島秀俊演じる主人公・相良凌介のポンコツぶりに視聴者からさまざまな声が上がっている。

 凌介は、ごく普通のお人好しで優しいマイホームパパ。ある日突然妻子が失踪してしまい日本中から“疑惑の夫”扱いされるが、友人らに助けられながら愛する家族を探そうと奔走する役どころだ。温厚だが鈍感で、物忘れや失くしものも多く…

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西島秀俊は“可哀想な夫”ではなく実は…? 『真犯人フラグ』に奥深さを与えるそのキャリア

 日本テレビの新ドラマ『真犯人フラグ』の第2話が10月17日に放送される。10日に放送された第1話では初回から衝撃のラストが描かれ、大きな反響を呼んでいる本作。主演の西島秀俊をはじめ、宮沢りえや芳根京子、田中哲司、桜井ユキ、柄本時生、迫田孝也ら実力派俳優陣が多数出演する豪華なキャスティングにも注目が集まっている。

 西島が演じるのは、運送会社に勤める平凡なサラリーマン・相良凌介…

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カンヌも絶賛、人間の隠された心の闇を旅する西島秀俊主演の話題作『ドライブ・マイ・カー』

 人間が犯した過ちは、いつまで責められ続けるのだろうか。過去の言動やかつて発表した作品内容の一部を問われ、表舞台からの退場することになったクリエイターたちが近年は少なくない。村上春樹の短編小説を『寝ても覚めても』(18)の濱口竜介監督が映画化した『ドライブ・マイ・カー』は、主人公が亡くなった妻の犯した過ちと向き合い、ひと筋縄では済まない人間の多面性を受け入れていく物語となっている。

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『きのう何食べた?』最終話 “あすなろ抱き”される西島秀俊に見た、ドラマ版ならではの肉付け

 6月28日に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の最終話。

“罵声を浴びせられるケンジ”の描写はなくてよかったのか?

 お正月、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)の両親に会うため、身支度をする矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)。普段はラフな服装の彼が選んだのはトレンチコートだった。彼氏の親と会うとき、ウケの良さそうなワンピースを選ぶ乙女の心境か? しかし、いかんせん似合わない。着慣れてないからか、コートに着られてしまっている(内野聖陽は絶対、似合う人のはずなのに……)。

 シロさんの実家に到着すると、ケンジの姿を見てシロさんの両親はフリーズした。緊張のあまり、お土産を紙袋のまま渡すケンジ。父・悟朗(田山涼成)はスリッパ立てごとケンジに手渡している。全員がギクシャクだ。居間へ行き、おせち料理を出されると、ケンジが最初に口にしたのは数の子だった。“コリコリ”と響き渡る咀嚼音の気まずさと言ったら……。

 空気に耐え切れない母・久栄(梶芽衣子)はシロさんを連れて場を外した。自ずとケンジは悟朗と2人きりに。シロさんと久栄は料理を一緒に作ることで正気を取り戻していく。もう、普段の2人だ。では、ケンジと悟朗はどうか? シロさんの卒業アルバムを見ながら悟朗は息子の若き日を振り返った。

「とにかく、よく勉強する子だった。久栄は喜んでたけど、私は内心あきれてたな。高校生だぞ? ほかにやりたいこともあるだろうに、よくもまあそんなに勉強ばっかりするもんだって」

 父があきれるほど勉強して、弁護士になったシロさん。その理由を、悟朗が送ってきたサラリーマン生活を思い起こさせながらケンジは説明した。

「10代の後半なら史朗さん、もう自分が同性愛者だとわかってたと思うんです。俺もわかってましたから。それで俺は、自分の腕一本でやっていける美容師になりたいって思ってました。昔はサラリーマンになると、上司に結婚を勧められたりするって聞いてたし。弁護士は実力さえあれば一匹狼でやっていける。だから史朗さん、弁護士になるって心に決めて勉強してたんじゃないでしょうか?」

 ケンジの言葉を聞きながら、悟朗の顔つきが晴れやかなものになっていった。この人は自分より息子を理解してくれている。「男同士で付き合っている」という視点から「良き理解者が息子と付き合っている」に転換された瞬間だ。いつしか2人は、ちょこんと横並びで座っていた。父はケンジに安堵したのではないか。

 再び食卓に戻った4人。緊張しているはずのケンジも好物の唐揚げを食べ、思わず素が出た。

「う~ん! 外サクサクで、中やわらかぁ~い!」

 ケンジのリアクションを見た久栄が固まっている。

 同性愛を理解しようとするシロさんの両親。でも、どうしても超えられない壁がある。

「君がそういうスーツを着ているということは、家の中で女の格好をしているのは……史朗のほうかね?」(悟朗)

 どちらかが女の格好をするもの、そんな誤解が両親にはあった。トレンチコートを羽織るケンジを見て「うちの子が女装している」と、一度は受け入れた久栄と悟朗。そのショックが玄関での微妙な空気になった。なのに、いきなりケンジからこぼれ落ちたオネエっぽさ。「え、どういうこと!?」と久栄は混乱する。しかし、「家で女装しているのはケンジ」という誤解をケンジが受け入れることで、両親は安心した。ゲイのことをどうしても理解しきれない2人。だけど、息子を愛している。滑稽さと切なさを同時に描いたくだりである。このドラマはシロさん&ケンジというカップルを描くと共に、さまざまな人たちの物語でもあるのだ。

シロさん「本当にスマン! 頭の固い親たちで……」

ケンジ「いいよ、いいよ。それでご両親がちょっとでも安心できるならいいじゃない。そんなことより俺、夢みたい。恋人の実家に遊びに行って、親御さんとごはん食べる日が来るなんて……。だって、俺には、そんな日が来るなんて、永久にないと思ってたもん。もう、俺ここで死んでもいい(泣)」

シロさん「何言ってんだ。死ぬなんて、そんなこと言うもんじゃない。食い物、油と糖分控えてさ、薄味にして、腹八分目で、長生きしような俺たち」

 シロさんの言葉がプロポーズみたいだ。しかも、ちゃんと食に結び付けた形で幸せを誓っている。

 実は、原作では涙するケンジを抱きしめるシロさんを通りすがりの人が発見し、「キモい」「死ね」と罵声を浴びせ掛けている。ゲイへの偏見を表した、かなり重要な描写だ。ドラマでもこれを入れたほうがよかったか、放送後、ファンの間で意見は分かれた。筆者は入れなくてよかったと思っている。このエピソードが原作で描かれた時期と比べ、時代は動いた。もう、この場面がしっくり来ない社会になった。結婚して子どもを産んで孫を授かって……という2人じゃなくても、慎ましい幸せをかみ締めながら生きていける。そんな前向きさを描くだけで、もう十分だと思うのだ。

 中村屋で買い物をしているシロさんとケンジ。ごんべんのつゆと低脂肪牛乳が激安になっていることに、シロさんは感激した。

「ありがとう、中村屋。最高です! 今年も通わせてもらいます」(シロさん) 

 きっと今までなら心の声としてナレーション処理していたはずなのに、声に出してお礼を言うシロさん。明らかに変わってきている。

 ケンジの誘いで、駅の近くのカフェへ行った2人。店内は女性客ばかりだ。男2人客のシロさんとケンジは、周囲から注目を浴びてしまった。シロさんが居心地悪くしていないか気にするケンジ。一方のシロさんは平然としている。

「いいかげん、もういいかなあと思って(笑)」(シロさん)

 かつては2人で商店街を歩くのも嫌がっていたはずなのに、回を追うごとシロさんを覆う壁が1枚ずつ剥がされていった。「大きいほう食えよ」と、ケンジに大きいスコーンを渡すシロさん。ただ、長生きするためにスコーンにクリームを付けないのが2人流だ。

 自宅に戻ったシロさんはケンジに髪をカットしてもらう。これは漫画の第1話に描かれたエピソードである。1話から12話にかけ次第に変わっていたシロさんが、原作1話につながっていくという構成がニクい。

「俺も相方としては、なるべくお前にはハッピーでいてほしいと思ってんだよ。だから、お前が幸せ感じるなら、これからはカフェぐらい何度でも付き合うよ」(シロさん)

 ケンジがハッピーでいることを望むシロさん。激安商品に感激するシロさんを見るケンジも幸せそうだった。結局、2人はパートナーの幸せを自分の幸せとイコールにしている。愛しさが爆発し、ケンジは後ろからシロさんをハグした。“あすなろ抱き”される西島秀俊。この演出もニクい。そのまま、2人は沈黙する。BGMはあえてなし。まるで、無音の部屋が2人を包み込んでいるようだ。

 最後は2人の料理シーン。海老の処理をしていたケンジは手をケガし、それをシロさんは気遣った。

ケンジ「やだ、シロさん優しい……。惚れ直す!」

シロさん「チャッチャとやれ。海老の鮮度が落ちる」

ケンジ「恋の鮮度は落ちてない、俺たちの?」

シロさん「保ってんじゃないか(笑)?」

ケンジ「良かったぁ~! エービーシーディーイーエフジー、エッチエッチエッチエッチエッチッチィ~」

シロさん「最低だな(笑)」

ケンジ「海老ってなんかエッチじゃん。お尻から動いちゃったりしてさ」

 2人の直接的なスキンシップを極力排除してきた『きのう何食べた?』。でも、ドラマ版は2人のカップルとしての側面もキチンと表現した。

 料理を協力し合ったシロさんとケンジは食卓に座り、最後は「いただきま~す」。同性愛のカップルを描くドラマであり、もっと大きな意味での愛を描くドラマでもあるということ。

 原作だとサラッと描く場面も、あえて感情的に仕上げることが多かったこのドラマ。「現実の世界ならこうなる」と誠実に肉付けした結果だと思う。原作をリスペクトしながら、決して原作のトレースに留まらなかった。すでに十二分の格と人気と知名度を獲得しているのに、あえて新境地に挑戦してくれた西島秀俊と内野聖陽の2人にも拍手を送りたい。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』最終話 “あすなろ抱き”される西島秀俊に見た、ドラマ版ならではの肉付け

 6月28日に放送された『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の最終話。

“罵声を浴びせられるケンジ”の描写はなくてよかったのか?

 お正月、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)の両親に会うため、身支度をする矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)。普段はラフな服装の彼が選んだのはトレンチコートだった。彼氏の親と会うとき、ウケの良さそうなワンピースを選ぶ乙女の心境か? しかし、いかんせん似合わない。着慣れてないからか、コートに着られてしまっている(内野聖陽は絶対、似合う人のはずなのに……)。

 シロさんの実家に到着すると、ケンジの姿を見てシロさんの両親はフリーズした。緊張のあまり、お土産を紙袋のまま渡すケンジ。父・悟朗(田山涼成)はスリッパ立てごとケンジに手渡している。全員がギクシャクだ。居間へ行き、おせち料理を出されると、ケンジが最初に口にしたのは数の子だった。“コリコリ”と響き渡る咀嚼音の気まずさと言ったら……。

 空気に耐え切れない母・久栄(梶芽衣子)はシロさんを連れて場を外した。自ずとケンジは悟朗と2人きりに。シロさんと久栄は料理を一緒に作ることで正気を取り戻していく。もう、普段の2人だ。では、ケンジと悟朗はどうか? シロさんの卒業アルバムを見ながら悟朗は息子の若き日を振り返った。

「とにかく、よく勉強する子だった。久栄は喜んでたけど、私は内心あきれてたな。高校生だぞ? ほかにやりたいこともあるだろうに、よくもまあそんなに勉強ばっかりするもんだって」

 父があきれるほど勉強して、弁護士になったシロさん。その理由を、悟朗が送ってきたサラリーマン生活を思い起こさせながらケンジは説明した。

「10代の後半なら史朗さん、もう自分が同性愛者だとわかってたと思うんです。俺もわかってましたから。それで俺は、自分の腕一本でやっていける美容師になりたいって思ってました。昔はサラリーマンになると、上司に結婚を勧められたりするって聞いてたし。弁護士は実力さえあれば一匹狼でやっていける。だから史朗さん、弁護士になるって心に決めて勉強してたんじゃないでしょうか?」

 ケンジの言葉を聞きながら、悟朗の顔つきが晴れやかなものになっていった。この人は自分より息子を理解してくれている。「男同士で付き合っている」という視点から「良き理解者が息子と付き合っている」に転換された瞬間だ。いつしか2人は、ちょこんと横並びで座っていた。父はケンジに安堵したのではないか。

 再び食卓に戻った4人。緊張しているはずのケンジも好物の唐揚げを食べ、思わず素が出た。

「う~ん! 外サクサクで、中やわらかぁ~い!」

 ケンジのリアクションを見た久栄が固まっている。

 同性愛を理解しようとするシロさんの両親。でも、どうしても超えられない壁がある。

「君がそういうスーツを着ているということは、家の中で女の格好をしているのは……史朗のほうかね?」(悟朗)

 どちらかが女の格好をするもの、そんな誤解が両親にはあった。トレンチコートを羽織るケンジを見て「うちの子が女装している」と、一度は受け入れた久栄と悟朗。そのショックが玄関での微妙な空気になった。なのに、いきなりケンジからこぼれ落ちたオネエっぽさ。「え、どういうこと!?」と久栄は混乱する。しかし、「家で女装しているのはケンジ」という誤解をケンジが受け入れることで、両親は安心した。ゲイのことをどうしても理解しきれない2人。だけど、息子を愛している。滑稽さと切なさを同時に描いたくだりである。このドラマはシロさん&ケンジというカップルを描くと共に、さまざまな人たちの物語でもあるのだ。

シロさん「本当にスマン! 頭の固い親たちで……」

ケンジ「いいよ、いいよ。それでご両親がちょっとでも安心できるならいいじゃない。そんなことより俺、夢みたい。恋人の実家に遊びに行って、親御さんとごはん食べる日が来るなんて……。だって、俺には、そんな日が来るなんて、永久にないと思ってたもん。もう、俺ここで死んでもいい(泣)」

シロさん「何言ってんだ。死ぬなんて、そんなこと言うもんじゃない。食い物、油と糖分控えてさ、薄味にして、腹八分目で、長生きしような俺たち」

 シロさんの言葉がプロポーズみたいだ。しかも、ちゃんと食に結び付けた形で幸せを誓っている。

 実は、原作では涙するケンジを抱きしめるシロさんを通りすがりの人が発見し、「キモい」「死ね」と罵声を浴びせ掛けている。ゲイへの偏見を表した、かなり重要な描写だ。ドラマでもこれを入れたほうがよかったか、放送後、ファンの間で意見は分かれた。筆者は入れなくてよかったと思っている。このエピソードが原作で描かれた時期と比べ、時代は動いた。もう、この場面がしっくり来ない社会になった。結婚して子どもを産んで孫を授かって……という2人じゃなくても、慎ましい幸せをかみ締めながら生きていける。そんな前向きさを描くだけで、もう十分だと思うのだ。

 中村屋で買い物をしているシロさんとケンジ。ごんべんのつゆと低脂肪牛乳が激安になっていることに、シロさんは感激した。

「ありがとう、中村屋。最高です! 今年も通わせてもらいます」(シロさん) 

 きっと今までなら心の声としてナレーション処理していたはずなのに、声に出してお礼を言うシロさん。明らかに変わってきている。

 ケンジの誘いで、駅の近くのカフェへ行った2人。店内は女性客ばかりだ。男2人客のシロさんとケンジは、周囲から注目を浴びてしまった。シロさんが居心地悪くしていないか気にするケンジ。一方のシロさんは平然としている。

「いいかげん、もういいかなあと思って(笑)」(シロさん)

 かつては2人で商店街を歩くのも嫌がっていたはずなのに、回を追うごとシロさんを覆う壁が1枚ずつ剥がされていった。「大きいほう食えよ」と、ケンジに大きいスコーンを渡すシロさん。ただ、長生きするためにスコーンにクリームを付けないのが2人流だ。

 自宅に戻ったシロさんはケンジに髪をカットしてもらう。これは漫画の第1話に描かれたエピソードである。1話から12話にかけ次第に変わっていたシロさんが、原作1話につながっていくという構成がニクい。

「俺も相方としては、なるべくお前にはハッピーでいてほしいと思ってんだよ。だから、お前が幸せ感じるなら、これからはカフェぐらい何度でも付き合うよ」(シロさん)

 ケンジがハッピーでいることを望むシロさん。激安商品に感激するシロさんを見るケンジも幸せそうだった。結局、2人はパートナーの幸せを自分の幸せとイコールにしている。愛しさが爆発し、ケンジは後ろからシロさんをハグした。“あすなろ抱き”される西島秀俊。この演出もニクい。そのまま、2人は沈黙する。BGMはあえてなし。まるで、無音の部屋が2人を包み込んでいるようだ。

 最後は2人の料理シーン。海老の処理をしていたケンジは手をケガし、それをシロさんは気遣った。

ケンジ「やだ、シロさん優しい……。惚れ直す!」

シロさん「チャッチャとやれ。海老の鮮度が落ちる」

ケンジ「恋の鮮度は落ちてない、俺たちの?」

シロさん「保ってんじゃないか(笑)?」

ケンジ「良かったぁ~! エービーシーディーイーエフジー、エッチエッチエッチエッチエッチッチィ~」

シロさん「最低だな(笑)」

ケンジ「海老ってなんかエッチじゃん。お尻から動いちゃったりしてさ」

 2人の直接的なスキンシップを極力排除してきた『きのう何食べた?』。でも、ドラマ版は2人のカップルとしての側面もキチンと表現した。

 料理を協力し合ったシロさんとケンジは食卓に座り、最後は「いただきま~す」。同性愛のカップルを描くドラマであり、もっと大きな意味での愛を描くドラマでもあるということ。

 原作だとサラッと描く場面も、あえて感情的に仕上げることが多かったこのドラマ。「現実の世界ならこうなる」と誠実に肉付けした結果だと思う。原作をリスペクトしながら、決して原作のトレースに留まらなかった。すでに十二分の格と人気と知名度を獲得しているのに、あえて新境地に挑戦してくれた西島秀俊と内野聖陽の2人にも拍手を送りたい。

(文=寺西ジャジューカ)

今夜最終回! 『きのう何食べた?』原作とは別人に……西島シロさんと内野ケンジが愛おしすぎる!

 今夜いよいよ最終回を迎える『きのう何食べた?』(テレビ朝日系)。先週、6月21日放送の第11話の内容をおさらい!

「俺は不幸じゃないことを両親にわかってほしい」

 師走のある土曜日。実家に帰った筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)は、母の久栄(梶芽衣子)がやけに穏やかなのが気になる。夕食後、久栄は意を決して切り出してきた。

「今度の正月、一緒に暮らしている彼氏さん……いえ、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)さんを家に連れてらっしゃい!」

 しかし、シロさんにはまだ迷いがある。久栄の言葉に、シロさんは即答できなかった。

 数日後、シロさんが富永佳代子(田中美佐子、以下「佳代子さん」)の自宅を訪ねると、佳代子さんの夫(矢柴俊博)がため息をついていた。彼氏と8年同棲中の一人娘・ミチル(真凛)に「そろそろ結婚して孫の顔を見せてくれ」と言ったら「結婚する気もないし子どもも欲しくない」と返答され、落ち込んでいるというのだ。それを見て「親の悩みはゲイもノンケも変わらないじゃないか」とシロさんは実感。佳代子さんは「親って変な生き物でしょ?」と笑った。

 クリスマスイブ、シロさんとケンジは小日向大策(山本耕史、以下「小日向さん」)、井上航(磯村勇斗、以下「ジルベール」)を自宅に招き、ディナーをとることにした。ケンジは以前シロさんにもらった指輪をつけ、2人を出迎えた。シロさんとの愛をアピールしてくるケンジを見て、ジルベールはあからさまにムッとする。

 シロさんがふるまった料理を、ジルベールは完食。そして「大みそかはここで年越しパーティをする?」と提案した。しかし、シロさんは「正月はケンジを連れて俺の実家に帰ろうと思ってる」と返答。それを初めて聞いたケンジは戸惑い、ほかの2人も驚きを隠せない様子だ。ジルベールは「親に恋人まで紹介するのはどうかと思う。だって、ただでさえ息子がゲイというだけでショックなのに、その上、ヒゲの生えた恋人まで見せられたら親にとってはダブルショックだ」とシロさんを諌めた。シロさんは「その通りだよ」と受け止めつつ、胸の内を明かす。

「両親は俺がゲイだとわかったとき、俺のことをかわいそうに思っただろう。育て方が悪かったと自分を責めたかもしれない。俺は不幸じゃないことをわかってほしくて、ケンジを連れて帰ろうと思ったんだ」

 ケンジは泣きながら「俺、行くから。絶対、行く」と答えた。

「ケンジを家に連れてこい」と言われたシロさん。迷いのある彼に気づきを与えたのは、佳代子さんの言葉である。

「親って変な生き物でしょ?」

 いつまでたっても、親は子に「こうあってほしい」という思いを抱き続ける。心配のあまり余計なことを口にし、そして“変な生き物”になってしまうのだ。「彼氏を連れてこい」と言い出したり「孫の顔を見せろ」と要求したり……。

「なんだ、親の悩みはゲイもノンケも変わらないじゃないか」(シロさん)

クリスマスディナーの席で、シロさんは「ケンジを連れて実家に帰る」と言った。

「親にゲイの恋人を見せるなんて」(ジルベール)

 この時点で、シロさんの考えに賛成する者はいない。彼らには、ゲイとして生きる苦しみが骨身に沁みている。だから、微妙な反応になってしまった。

「両親は俺がゲイだとわかったとき、最初にどう思ったんだろう。きっと両親は俺がゲイだってわかったとき、俺のことをかわいそうな子だと思っただろう。俺がこんな風になってしまったのは私たちの育て方が悪かったんじゃないかって自分を責めたかもしれない。だから、ゲイのなんたるかを知ってほしいってことじゃなくて、少なくともいま俺が両親が思ってるよりも不幸じゃないんだってことをわかってほしくて……ケンジをうちに連れて帰ろうって思ったんだ」(シロさん)

 あまり感情を見せないシロさんが声を詰まらせ、泣きながら決意を口にしている。「幸せなんだ」ではなく「不幸じゃないんだ」と教えてあげたい。子は親の期待を背負って育つが、多くの子どもは親の期待通りには育たない。なのに「ノーマルじゃない」と自覚しているシロさんは、今の自分にナーバスになってしまう。だから、「自分は不幸じゃない」と親に教えてあげたい。最高の親孝行だ。

 この日、ケンジは指輪をつけた。ジルベールに見せびらかすためだ。まさに、指輪マウント! でも、シロさんに「つけてほしい」とは言わなかった。シロさんの性格を知っているからだ。なのに、シロさんから「実家へ連れて行く」と言われた。シロさんが不幸じゃない理由は、ケンジと一緒にいるからである。普段、ケンジに愛を伝えないシロさんが、小日向さんとジルベールの前でそれを口にした。どんなにうれしかっただろうか。

 泣きながら決意を口にしたシロさん。マンガ版のシロさんはこのセリフを淡々と話していた。一方、ドラマ版はかなり感情的に仕上げてきた。この11話で、西島シロさんと内野ケンジは原作版と完全に違う人になった。

 西島の声でナレーション処理されているシロさんの心の声。そのナレーションが、どんどん少なくなってきている。思うことを口に出し、伝える人に変わってきたからだ。ここにも原作との乖離がある。いい意味で別物だ。

『きのう何食べた?』は、今日放送の12話が最後。11話エンディングで流れた「最終回予告」の5文字が悲し過ぎた。7月からは見れないと思うと寂しくなってしまう。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』内野聖陽がケンジで、西島秀俊がシロさんで良かったと痛感した第10話

 

 6月14日放送の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)第10話。

 ある日、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)宛てに、生活保護を受けている父・賢一(内田文吾)の扶養照会の書類が届いた。ケンジが物心つく頃はほかに女をつくって出ていき、たまに金をせびりに顔を見せていた父。ケンジが中3になってからは、なぜかそれもなくなった。

 ケンジが勤める美容院で、店長の三宅祐(マキタスポーツ)の妻・玲子(奥貫薫)がエステルームを始めることになった。ある日、祐の浮気相手の妹島(延増静美)が来店。玲子は妹島と笑顔で会話している。

 帰宅したケンジに、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)が小日向大策(山本耕史)との飲み会を持ちかけてきた。翌日、美容院でケンジは玲子から「大事な人に絶対に浮気なんかされちゃダメよ。許すなんてそう簡単にできることじゃないんだから」と助言された。

 その日、ケンジはシロさんに「用事ができたから小日向(山本耕史)との食事会に行けなくなった」と伝える。「じゃあ、俺と小日向さんで飲むよ」と返答するシロさんに、ケンジは「シロさんも行くのやめて。2人っきりになっちゃうからダメ」と主張。「2人きりになったところで何も起こらない」と言うシロさんに、ケンジは「恋はたいてい“まさか”から始まる」と不安を爆発させた。「嫌いになったでしょ、俺のこと!? 心が狭いってわかってる。嫉妬深いって最低だもんね!?」と泣くケンジに、シロさんは「嫌ったりしないよ!」と言葉をかけた。そして、飲み会には行けなくなったと小日向に連絡をした。

 週末、店が改装工事のケンジは珍しく休みだ。休日が重なったことにテンションが上がるシロさんは、張り切ってクレープを作り始めた。思わぬ最高の休日に「ありがとね」と言うケンジに、シロさんは「『ごめん』って謝り倒されるより『ありがとう』って言ってもらえたほうがずっとうれしい。だから、もう謝んなくていい」と言葉を掛けた。改めて、ケンジはシロさんに「ありがとう」とお礼を言った。

 シロさんに不安を爆発させたケンジ。それは、ケンジの過去とトラウマが影響している。自分たちを裏切って家を出ていった父親。どんなに深い仲でも、関係が終わることはある。そんな記憶が蘇ったところで、さらに玲子から「浮気されたらダメ」と忠告された。ケンジのトラウマが不安に変化し、浮気経験のある自身の過去も追い打ちをかけた。

「絶対、2人っきりで会わないで……!」(ケンジ)

 原作ではサラッとコメディ調に描かれた場面だ。でも、内野はあえて激しく演じた。違和感はない。血が通ったし、シロさんへの思いが強く伝わってきた。まばたきなし、カメラ回しっぱなし。唇を震わせ、内にあるものを全開にしたケンジ。ケンジ役が内野で良かったと、今回改めて思った。

 対するシロさん。始めは笑顔であきれ気味だった。でも、ケンジの本気を察し、笑顔を引っ込めた。様子の違うケンジに掛けた「なあ……どうした?」の言い方がすごく良い。パートナーの変化に気付いた彼が発した声のトーンは温かい。続く「嫌ったりしないよ!」の声は、まるで本気である。

 シロさんもケンジも、一緒にいることを当たり前と思っていないのだ。法に守られていないからこそ、別れないための努力がゲイカップルは必要と訴えた8話。2人が絆を再確認した9話。そして、今回の10話。見事につながっている。

「どんなに関係の深い人でも、許せない人と続けていくのはしんどいよ……」(ケンジ)

 ケンジの気持ちを尊重し、シロさんはその場で小日向に断りの電話を入れた。直後の「これでいいか?」の言い方も良かった。怒っているのではなく、声のトーンで安心させようとしている。

「もう、いいから。餃子作るぞ? 手洗ってこい」(シロさん)

「嫌われるかも……」と不安に苛まれていたケンジを日常に戻そうとするシロさんの言葉。食事は2人にとって何よりも大切な時間だ。

クレープで思いを伝えたシロさん

 週末。嫉妬が爆発したケンジに、シロさんはクレープをふるまった。体重管理には厳しい彼なのに、明らかに太りそうなブランチである。ケンジは態度で、シロさんは料理で、相手に思いを伝えているということ。

 三谷まみのポスターを発見したケンジ。詰め寄られたシロさんはバレバレの言い訳をしている。2人のこのやり取りは、もはやプレイだろう。ケンジの涙で沸点に達し、シロさんとケンジのイチャチャに着地した10話だった。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』内野聖陽がケンジで、西島秀俊がシロさんで良かったと痛感した第10話

 

 6月14日放送の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)第10話。

 ある日、矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)宛てに、生活保護を受けている父・賢一(内田文吾)の扶養照会の書類が届いた。ケンジが物心つく頃はほかに女をつくって出ていき、たまに金をせびりに顔を見せていた父。ケンジが中3になってからは、なぜかそれもなくなった。

 ケンジが勤める美容院で、店長の三宅祐(マキタスポーツ)の妻・玲子(奥貫薫)がエステルームを始めることになった。ある日、祐の浮気相手の妹島(延増静美)が来店。玲子は妹島と笑顔で会話している。

 帰宅したケンジに、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)が小日向大策(山本耕史)との飲み会を持ちかけてきた。翌日、美容院でケンジは玲子から「大事な人に絶対に浮気なんかされちゃダメよ。許すなんてそう簡単にできることじゃないんだから」と助言された。

 その日、ケンジはシロさんに「用事ができたから小日向(山本耕史)との食事会に行けなくなった」と伝える。「じゃあ、俺と小日向さんで飲むよ」と返答するシロさんに、ケンジは「シロさんも行くのやめて。2人っきりになっちゃうからダメ」と主張。「2人きりになったところで何も起こらない」と言うシロさんに、ケンジは「恋はたいてい“まさか”から始まる」と不安を爆発させた。「嫌いになったでしょ、俺のこと!? 心が狭いってわかってる。嫉妬深いって最低だもんね!?」と泣くケンジに、シロさんは「嫌ったりしないよ!」と言葉をかけた。そして、飲み会には行けなくなったと小日向に連絡をした。

 週末、店が改装工事のケンジは珍しく休みだ。休日が重なったことにテンションが上がるシロさんは、張り切ってクレープを作り始めた。思わぬ最高の休日に「ありがとね」と言うケンジに、シロさんは「『ごめん』って謝り倒されるより『ありがとう』って言ってもらえたほうがずっとうれしい。だから、もう謝んなくていい」と言葉を掛けた。改めて、ケンジはシロさんに「ありがとう」とお礼を言った。

 シロさんに不安を爆発させたケンジ。それは、ケンジの過去とトラウマが影響している。自分たちを裏切って家を出ていった父親。どんなに深い仲でも、関係が終わることはある。そんな記憶が蘇ったところで、さらに玲子から「浮気されたらダメ」と忠告された。ケンジのトラウマが不安に変化し、浮気経験のある自身の過去も追い打ちをかけた。

「絶対、2人っきりで会わないで……!」(ケンジ)

 原作ではサラッとコメディ調に描かれた場面だ。でも、内野はあえて激しく演じた。違和感はない。血が通ったし、シロさんへの思いが強く伝わってきた。まばたきなし、カメラ回しっぱなし。唇を震わせ、内にあるものを全開にしたケンジ。ケンジ役が内野で良かったと、今回改めて思った。

 対するシロさん。始めは笑顔であきれ気味だった。でも、ケンジの本気を察し、笑顔を引っ込めた。様子の違うケンジに掛けた「なあ……どうした?」の言い方がすごく良い。パートナーの変化に気付いた彼が発した声のトーンは温かい。続く「嫌ったりしないよ!」の声は、まるで本気である。

 シロさんもケンジも、一緒にいることを当たり前と思っていないのだ。法に守られていないからこそ、別れないための努力がゲイカップルは必要と訴えた8話。2人が絆を再確認した9話。そして、今回の10話。見事につながっている。

「どんなに関係の深い人でも、許せない人と続けていくのはしんどいよ……」(ケンジ)

 ケンジの気持ちを尊重し、シロさんはその場で小日向に断りの電話を入れた。直後の「これでいいか?」の言い方も良かった。怒っているのではなく、声のトーンで安心させようとしている。

「もう、いいから。餃子作るぞ? 手洗ってこい」(シロさん)

「嫌われるかも……」と不安に苛まれていたケンジを日常に戻そうとするシロさんの言葉。食事は2人にとって何よりも大切な時間だ。

クレープで思いを伝えたシロさん

 週末。嫉妬が爆発したケンジに、シロさんはクレープをふるまった。体重管理には厳しい彼なのに、明らかに太りそうなブランチである。ケンジは態度で、シロさんは料理で、相手に思いを伝えているということ。

 三谷まみのポスターを発見したケンジ。詰め寄られたシロさんはバレバレの言い訳をしている。2人のこのやり取りは、もはやプレイだろう。ケンジの涙で沸点に達し、シロさんとケンジのイチャチャに着地した10話だった。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』大事にしたいのは「指輪」より「関係」……ケンジとシロさんの絆を再確認

 6月7日深夜放送の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)第9話。「俺とお揃いで指輪買ってやるっつったら、どうする?」という筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)のセリフが予告映像であらかじめ流れていた回だ。2週のブランクを設けた今回のタイミングは功を奏したと思う。放送日は6月。まさに、ジューンブライドである。

いつもより、おいしそうじゃないシロさんのナポリタン

 同期の結婚パーティーから帰ってきたシロさんは、自分のためにナポリタンを作った。不思議だ。彼が作るいつもの料理より、なぜかおいしそうに見えない。矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)が自分のために作るサッポロ一番はおいしそうだったのに……。シロさんはケンジがいつも座る食卓のイスを見つめ、心の中でつぶやいた。

「あいつの存在って、大事……」

 そんな心の声を打ち消すかのように、本当の声で「つくづく健康にいいな!」とかぶせるシロさん。心の声さえ認めないのか!? でも、彼はツンデレだ。いつもほどの出来じゃないナポリタンとおいしそうだったケンジのサッポロ一番を比べると、「2人が別れたら引きずるのは俺だと思う」と認めるシロさんの言葉が蘇ってくる。

 シロさんはケンジに、お揃いの指輪の購入を持ちかけた。

「結婚式の2次会で結界が欲しい。アレ付けてるだけで面倒から逃げられるなら安いもんだ」

 照れ隠しだろう。さっき言いかけた「あいつの存在は大事」が彼の本音なのだから。シロさんが見せる態度は冷たい。でも、おなかを空かせたケンジに即興で作ったお茶漬けと切り干し大根が、代わりに愛情を伝えている。

 一方、居酒屋で美容院の店長・三宅祐(マキタスポーツ)の浮気話を聞かされたケンジ。彼は三宅の味方にならなかった。

「別れるつもりがないなら、パートナーは大事にしなよ」

 ケンジも昔は浮気やワンナイトに走ったことがある。三宅を叱ると同時に、自分に言い聞かせていたように見えた。事実、帰宅したケンジはシロさんの料理を食べ「おいちぃー!」と気持ちを伝えるのだ。パートナーを大事にしようとストレートな態度のケンジと、素直じゃないシロさんのコントラストである。

「俺とお揃いで指輪買ってやるっつったら、どうする?」

 このときのシロさんが憎たらしい。頬杖しながらニンマリと切り出す姿は、完全に確信犯。小悪魔の笑みだ。ケンジの横で上町修役のチャンカワイに「惚れてまうやろー!」と言ってほしい。

 異常な倹約家、そしてセクシャリティをカムアウトしていないシロさんから「指輪を買う」と言われたことがケンジには信じられない。コンビニで買うハーゲンダッツはNGでも、指輪ならOK。大喜びするのも当然である。

 アクセサリー店で指輪を選ぶのはケンジ。シロさんはそこから離れ、第三者を振る舞った。そんなシロさんに店員が声を掛ける。

「お連れ様はどちらがお好みですか? ご一緒に着ける物ですから、お連れ様の好みも多少は仰ったほうが……」

「あれ?」と驚くシロさん。付き添いのふりをしていたのに、店員にはカップルだとあっさり見抜かれていた。いつもはシロさんの気持ちを慮りイチャイチャを控えるケンジも、このときはフルスロットル。「やっぱり、こっちかなぁ?」「(イニシャルは)絶対入れる!」と、まったく遠慮しない。ほかのカップルも、どうやらこっちを気にしていなさそう。そうとわかれば、腕を組んでくるケンジにシロさんもほほえみ返す。本心では、シロさんも普通のカップルのように振る舞いたかったのだ。

大事にするのは「指輪」よりも「関係」

 後日、注文の指輪を受け取ったケンジは「ありがとう。大好き!」とニッコリ。「うん」と、シロさんも笑顔で応えた。指に嵌めた指輪を見つめ、ケンジは言った。

ケンジ「大事にする。でも、指輪じゃなくて……。あっ、もちろん指輪は一生大事にするよ。けど、その……大事にするっていうのはさ。シロさん。大事にするよ。大事にする」

シロさん「うん」

 ケンジのこの言葉、原作では心の声の独白だった。でも、ドラマでは2人の会話になった。「パートナーは大事にしろ」と言ったケンジ。指輪はうれしい。だけど、指輪じゃない。一番大事にしたいのは、シロさんとの関係である。

 法に守られていないゲイカップルは別れないための努力が必要と訴えた8話。続く今回は、カップルの絆を再確認する内容。2人以外のゲストが登場せず、シロさんとケンジの関係性にフォーカスする回だった。

(文=寺西ジャジューカ)

『きのう何食べた?』年上のカップルが伝える、ゲイとして生きる苦しみ

 5月24日深夜に『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の第8話が放送された。

 矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)に誘われ、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)はレストランに来ていた。そこでケンジの友だちと会う約束になっており、現れたのは、長島義之(正名僕蔵、以下「ヨシくん」)と本田鉄郎(菅原大吉、以下「テツさん」)の同性カップルだった。男女カップルばかりの周囲の目を気にするシロさんは、2人に愛想のない態度を取ってしまう。シロさんのいら立ちを察したケンジは、帰り道で謝罪。シロさんはケンジに「なんで謝るんだよ、お前は!」と怒鳴ってしまう。

 後日、料理仲間・富永佳代子(田中美佐子)の家でケンジの大好物である桃を分け合ったシロさん。「ケンジのこと大事にしてるのね」と佳代子さんに言われたシロさんは「俺はあいつとは絶対に別れたくないんです!」と返答した。

 その日の夜、ヨシくんとテツさんが突然家へ来ることになった。いつもの料理でもてなしたシロさんに、「相談がある」とテツさんが切り出す。

「自分の財産はすべてヨシくんに渡したいと思ってる。でも、遺言書を書いても、3分の1は両親に渡ってしまう。僕が歯を食いしばって稼いだ金を、田舎の両親にビタ一文渡したくはないんです。ヨシくんと養子縁組をしようと思ってます」

 そこでシロさんの力を借りるべく、ヨシくん&テツさんは「事務所に伺ってもよろしいですか」と頭を下げ、シロさんは依頼を快諾した。

 2人が帰宅した後、シロさんが「そういう目的だったって最初から言えよ」と言うと、ケンジは「いつも言われてるのに学習しないとダメだよね」と肩を落とした。シロさんは「俺がいら立っているのはケンジのせいじゃない。器の小さい俺自身に腹を立ててるんだよ」と心の中で叫んだが、それすら正直に口に出せないでいた。

 翌朝、出勤するシロさんに寝起きのケンジが「今日の夕飯は、シロさんのハンバーグが食べたいなあ。あれ、おいしいんだよねえ」と話しかけた。「わかったよ」と笑顔で返答したシロさんは「ああいう何気ない仲直りの仕方、俺に教えてくれたのはあいつなんだよ」と感謝する。一方、ケンジは冷蔵庫の中に大好物の桃があるのを発見。シロさんの愛情をかみ締めた。

 今回の内容は、原作でも人気の高いエピソードだ。シロさんがもてなした自宅での食事会で、テツさんはシロさんに相談した。

「僕が……歯を食いしばって貯めた金を、田舎の両親に……ビタ一文渡したくないんです」

 原作で、テツさんはこの言葉をサラッと口にしていた。漫画版テツさんから感じたのは静かな怒りだったが、ドラマでのあのシーンからは苦しみがうかがえた。何があったか、詳細は語られない。しかし、両親からセクシャリティを理解されていないこと、つらい思いをしてきたこと、親と深い確執があることを伝えるには十分だった。短い言葉の中から背景を察することができた。テツさんが葛藤しながら言葉を発する間、ヨシくんはずっとテツさんの手を握っている。テツさんは居場所を見つけることができたのだと、2人を見て救われた気持ちになる。

 彼らはシロさん&ケンジよりも年上のゲイカップルだ。この年齢差は大きい。親の意識がまるで違うはずである。かつて、ケンジは「シロさんは贅沢だよね。理解しようとしてくれる親に感謝してもいいんじゃない」と言っていた。ゲイの世界にはテツさんのような思いをした人がたくさんいるのだろう。同性愛への理解がほとんどなかった時代から生きるテツさんの苦しみが、「ビタ一文」という言葉に込められていた。

 そんな2人から依頼を受けて、「事務所にいらしてください」と返答したシロさん。ゲイ同士、多くを語らずともわかり合える部分があったのだと思う。

シロさん→ケンジへの愛が伝わる第8話

 養子縁組を結ぼうとしているヨシくん&テツさん。では、シロさん&ケンジの2人はどうか? 彼らは、法で守られる安定の立場にはいない。だからこそ、別れないために努力を惜しまないことが重要なのだ。

 ケンジと仲直りしたくても、思いを伝えられなかったシロさん。ゴミを捨てに行くケンジを見て「このまま帰ってこないってことも、なくはないんだよな……」と立ち尽くすばかりだった。

 一方、翌朝のケンジはシロさんに「ハンバーグが食べたい」と甘えた。リクエストに笑顔で応えたシロさんは「俺もいつか、あいつみたいになれる日が来るんだろうか」と自問する。冷たいイメージのあるシロさんだが、愛情表現が下手なだけなのだ。ケンジからすれば、「お前みたいになりたい」なんて、最高にうれしい言葉だ。

 8話はシロさんからケンジへの愛が伝わる回だった。このカップルは、精神的に大人なケンジがシロさんのことを包んでいる。一瞬で崩れてもおかしくない関係性だからこそ、一瞬を大切に生きていく。「たまにはうまいの食わせてやりたい」とシロさんが冷蔵庫に入れておいた桃は、その表れではないか?

「あんまぁ~い! はぁ~。俺、すっごく愛されてる」

 桃はケンジの大好物だ。

(文=寺西ジャジューカ)