浮き沈みの激しい芸能界。上り調子のタレントの存在を確認することはたやすいが、消えていくタレントを認識するのはなかなか難しい。“干され”という手段を用いていなければ、大半の者は緩やかに露出が減少し、いつしか人知れず消えていくからだ。
しかし、そこに“待った”をかける事例が発生した。2月20日放送『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)にて、不意に有吉弘行が声を上げた。
「最近、蛭子見てないな。ヨシカズ見てないね」
同番組で定期的にリポーターとして起用されていた蛭子能収だったが、四万十川を川下りした昨年11月21日放送分を最後に出演していない。それを、有吉は気にかけたのだ。
それだけだったらちょっとしたイジりで終わる話だが、他番組でも有吉は「蛭子」の名前を口にする。2月24日放送『有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)で、岡本太郎の絵画の話をしている最中、唐突に「ヨシカズ、最近見ねえもんなあ。体調悪いんじゃねえのか? 最近見ねえよヨシカズ」とブッ込み、蛭子について言及。
加えて、有吉の最近のTwitterを見ると、蛭子情報ばかりである。ついには、フォロワーたちから「夜中に蛭子さんをリツイートするのやめてくれませんか?」「蛭子氏ばかりをリツイートするのでフォロー外そうかと思ってる」「蛭子のリツイートしてないで有吉さんを見せて」などと苦情が出る始末だ。
別に、蛭子に対して需要がなくなったわけではない。昨年12月8日放送『土曜スペシャル 太川・蛭子のローカル鉄道寄り道旅2』(同)のロケ中に転倒して右手小指を骨折して以来、気を遣ったスタッフが蛭子に声を掛けていないらしい。それを『かりそめ天国』スタッフから聞いた有吉は、蛭子再起用を促した。
「ちょっと声かけてよ、ヨシカズ。心配になるじゃん。また良からぬこと(98年の麻雀賭博逮捕)が起こるから。麻雀ばっかりやらせちゃダメだよ」
蛭子の露出減を食い止めようとする有吉。この姿勢は、売れない頃お世話になり、ブレーク後のお返しに認知度を高める目的で、ビートたけしがしきりに「ポール牧みたいだな」と、先輩の名前を発し続けていた姿を思い出させる……なんてたとえはさすがに言い過ぎだ。そもそも、有吉は蛭子にそんな義理はないのだから。
■いつもと違う“悪キャラ有吉”に驚いた蛭子
蛭子を引っ張り出そうとする有吉だが、反対に、蛭子は低迷期から脱しようとする有吉の転換期に立ち会っていた。2015年発行『芸能界 蛭子目線』(竹書房)で、蛭子はそのときの様子を漫画にしている。
「元・猿岩石の有吉さんと一緒になった。彼はどちらかというとおとなしい人だ。ツッ込まれてもイヤな顔せず、ボケを演じ、やさしいイメージだった。ところが今日はいつもの有吉さんと違っていた」
漫画では、タレントの堀越のりに向かって「お前はブスだからよー。ブスは黙って聞いてりゃいいんだよ」と汗を垂らしながら毒を放つ有吉が描かれており、それを「いつもの有吉さんと違う。有吉さんが悪キャラになってる」と横目で見ている蛭子がいる。
「まるで堀越さんに恨みでもあるようにツッかかっていた。私はちょっと有吉さんに反論してみた」(蛭子)
蛭子「堀越さんはブスじゃないよ、美人だよ」
有吉「蛭子、お前はテレ東だけしか出演していないだろう」
蛭子「いや、そ……そんなことはないよ」
有吉「テレ東は必要かどうかのトークしてんだよ」
蛭子「テレ東は必要だよ、絶対!!」
有吉「テレ東がなくなったらお前が食えなくなるから必要って言ってるんだろ?」
蛭子「いやいや、テレ東は東スポみたいなもんで」
改めて、蛭子はこのときのことを振り返った。
「有吉さんは自分が強く言ってることを自分でウケているようで、時々、下を向いて笑っていた。有吉さんがキャラを変えようとしているのは間違いない。いつまでもおとなしい有吉では生き残れないと本人が思ったか、マネージャーが考えたか。とにかく、有吉改造計画が進められていると私は思った。しかし、問題は彼の優しい顔である」
「悪キャラ有吉か……。この優しい顔でツっ込みができるのか。彼のセリフにはどことなく無理矢理感が漂うのだ。ただいまテスト中と見える。ツっ込みだからはたしてどうなるか?」
■蛭子のオカズを「ガロでしょ」と尋ねる有吉
蛭子が漫画化したのが、2008~10年に放送されていた『アリケン』(テレビ東京系)の人気企画「アリケンしゃべり場」であることに間違いはない。当時のやりとりは、2009年発売のDVD『アリケン Vol.1』に収録されており、新鮮な有吉の毒舌砲を今でも確認することができる。
「アリケンしゃべり場」は、その名の通り、『真剣10代しゃべり場』(NHK)を真似した討論会企画。「熟女は好きですか?」というテーマの際、くりぃむしちゅー・有田哲平らから自慰行為について尋ねられた蛭子と、それを執拗に追及する有吉のくだりが秀逸だった。
有田「アダルトビデオ見てるでしょうが」
蛭子「見てない、見てない! オナニーするけどさ(笑)」
有田「どうやってするんですか!?」
有吉「何を見るの? ガロでしょ、ガロ」
蛭子「いやいや、ガロじゃないって(笑)」
「芸能界にダメな人間多くない?」というテーマでの、有吉の口撃も勢いがある。
有吉「客観的に見て蛭子さん、いいところ1ミリもないですよ」
蛭子「じゃあ、自分のいいところ言える?」
有吉「あります。優しさ持ってますし」
蛭子「俺もそりゃ、もちろん優しいよ」
有吉「優しくないでしょ」
蛭子「優しい、優しい」
有吉「奥さんが死んで、笑ってたじゃないですか」
蛭子「それは違うよ! 奥さんが死んだときは泣いたよ、いくらなんでも。他の人が死んだときでしょ」
「彼のセリフにはどことなく無理矢理感が漂う」と判定していた蛭子だが、DVDを見る限り、有吉の毒舌は冴えていた。その後の有吉は、ご存知の通り大ブレーク。いまや、テレビ界のど真ん中に位置する天下人である。『アリケン』収録時は様子見だった蛭子も、有吉が成功した後にこう発言している。
「カメラが回っていないところでは、昔と変わらないですよ。俺に対してもすごく優しいし。だからあの毒舌キャラってのは、やっぱり演じてるんだと思いますよ。ホントはすごく優しい人だから。だから、遠慮なしに思い切り、毒舌をやったんじゃないかな。中途半端な感じだとキャラが変えられなかったと思うし、今みたいに成功してないんじゃないかな」
上昇期の有吉を蛭子が語り、引っ込もうとする蛭子のことを有吉が制止する。そんな2人の不思議な関係性は妙だ。面白い。
(文=寺西ジャジューカ)

