2月10日放送の『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の第6話。
このドラマには、「犯人探し→説教→改心」という流れが毎回のフォーマットとしてある。今回の“犯人探し”の対象は生徒ではなく魁皇高校の教師だ。景山澪奈(上白石萌歌)を死に追いやった動画の作成を半グレ集団「ベルムズ」に依頼した悪の根源は誰なのか? 柊一颯(菅田将暉)は5人の教師に迫った。
「名乗り出なかった場合、教室を爆破します」(柊)
教室に監禁されている生徒たちがザワついた。
「お前ら、先生を説得してみるか? 生徒が必死に命乞いをすれば、犯人の心が揺らぐかもしれない。Let’s Think!」(柊)
こうして、3年A組内で教師を対象とした犯人予想が始まった。みんなの意見を募り、最終的に本命視されたのは水泳部顧問の坪井勝(神尾佑)だ。しかも、A組には個人的に坪井に恨みを持つ生徒がいる。
水越涼音(福原遥)は、かつては人一倍練習する水泳部員だった。しかしある日、恋人の中尾連(三船海斗)と一緒にいるときの写真を坪井に差し出され、「男とイチャついてる奴が、練習来ても迷惑なんだよ!」と退部させられた過去がある。涼音はSNSを使って坪井を告発せんと動画を撮影した。
「元水泳部の水越涼音です。私は水泳部の顧問・坪井先生に執拗なセクハラとパワハラを受けました。私に付き合っている男性がいるとわかった途端、水泳の練習にすら参加させてもらえず、退部に追い込まれました。きっと、澪奈も同じ目に遭ったんだと思います。フェイク動画を作ったのは坪井先生に違いありません」
ネットを使って坪井を追い詰める。涼音はそういう腹づもりだ。
実は、坪井が涼音に退部を強制したのには理由があった。涼音は運動誘発性の致死性不整脈だった。過度な練習によって不整脈を起こし、そのまま運動を続けると命を落とす危険性がある。
「俺はお母さんからお前を説得するように頼まれた。『自分が言えばお前は無理してでも大会に出るだろうから』って。でも、俺が言っても同じだと思った。俺には ああいうやり方しか思いつかなかった。でも、結果的にそれがお前を苦しめていたんだな。本当に申し訳なかった」(坪井)
■5日間の“俺の授業”でも変わらなかった生徒たち
涼音による告発動画アップは、すんでで柊がストップを掛けていた。坪井の真意を知り、動画の拡散を後悔していた涼音は、膝から崩れ落ちて安堵する。
「なんだ……よかったぁ……」(涼音)
足元にいる涼音を柊は足蹴にし、引きずり回し、壁に叩きつけた。
「何がよかったんだ。おい、何がよかったんだ。お前が、この動画をネットに流そうとしたことに変わりはない、違うか? この動画が世間に広まったら、坪井先生がどんな目に遭ってたのか、よく考えたのか? なあ! 考えたのか!! お前の不用意な発言で、身に覚えのない汚名を着せられ。本人が! 家族が! 友人が! 傷つけられたかもしれないんだ。お前は取り返しのつかないことをやろうとしたんだ、なあ! わかってんのか!?」(柊)
大前提として、坪井はやり方がよくない。写真をばらまくという形で部を辞めさせられた涼音は深く傷ついた。本人のためを思うなら、病気と向き合わせるべきである。今さら「実は……」と美談でまとめられても腑に落ちない。坪井は涼音を説得する努力を放棄した。不信感を抱かれるのも当然だ。
それを踏まえても、柊は行く。今までのどの生徒よりも、涼音を厳しく指導する。あまりの剣幕に、クラスメートが制止に入った。
「もう、いいじゃん! しょうがないでしょ。結果、やってなかったんだからもう許してあげなよ!」
「そうだよ、涼音だって反省してんだ」
まさに、そういうところだ。
「目を覚ませ! 何がしょうがないんだよ、おい。何を反省してるんだよ! お前ら、いいかげん目を覚ませよ。変わってくれよ! 何がいけなかったのか、上辺だけで物事を見ないで、よく考えるんだよ!」
「目の前の起こっているものをちゃんと目で受け止めて、頭に叩き込んで! 胸に刻むんだよ!! お前ら、それをしないから何回も何回も同じこと繰り返すんじゃねえのか?」
今まで、3年A組は同じことを繰り返してきた。澪奈が自分を避けていると逆恨みし、感情に任せフェイク動画を拡散した宇佐美香帆(川栄李奈)。自分の不幸な境遇を誰も助けてくれないと決め付け、澪奈の盗撮動画をベルムズに渡した甲斐隼人(片寄涼太)。事実を確かめず、「自分は傷ついたから」と感情に身を任せ、取り返しのつかないことを起こしてしまう。それぞれの安易な思いで動画は投稿され、人生をムチャクチャにされた澪奈は自殺した。香帆も甲斐もそれを後悔している。その姿を目の前で見ていたはずの涼音が、また同じ過ちを繰り返そうとした。「変わろう!」と柊は繰り返し説いてきたのに、まだ感情に任せ後先考えず事を起こしてしまう生徒。今まで、何を見ていた!? まだ変わっていない、伝わっていない涼音だからこそ、他のどの生徒よりもキツく行ったのではないか。
「デジタルタトゥー」という言葉がある。ネット上に公開された書き込みは、一度拡散すると完全な削除は不可能という事実を示す表現だ。告発動画が投稿されたら、後で誤解とわかっても取り消せない。澪奈がフェイクの動画で自殺したように、不正確な情報でも坪井の人生は壊れてしまう。
「この動画が世間に広まったら、坪井先生がどんな目に遭ってたのか、よく考えたのか? なあ! 考えたのか!! お前の不用意な発言で、身に覚えのない汚名を着せられ。本人が! 家族が! 友人が! 傷つけられたかもしれないんだ。お前は取り返しのつかないことをやろうとしたんだ、なあ! わかってんのか!?」(柊)
「結果、やってなかったんだから」で許してしまうわけにはいかない。行動そのものを看過しない。よく考えろ。澪奈のような最期を生まないために。「傷ついた」を大義名分に、衝動的に事を起こしてはダメなのだ。
第5話で、柊はこう言っていた。
「景山の事件は、誰が死んでいてもおかしくなかった。ターゲットになったのがたまたま景山だっただけで、お前たちの誰かが同じような目に遭う可能性も十分にあった」
何かの拍子で、誰しもがSNSで標的にされる可能性がある。その意味も含んでの発言だったのではないか? だからこそ、よく考える。「Let’s Think!」なのだ。
柊は、「不用意な発言で身に覚えのない汚名を着せられる人がいる。取り返しのつかないことだ」と強く説いた。そんな彼が、テレビカメラが入る公の場で「真犯人は武智大和(田辺誠一)」と名指しした。やはり、本当に武智が犯人なのだろうか?
柊の呼びかけに対し、教師から名乗りは出なかった。予告どおり教室は爆破された。しかし、柊が爆破したのはA組ではなく、武智が受け持つB組だった。これは「もう授業しないでいいですよ」というメッセージであり、武智への挑発か?
ただ、この教師が“黒幕”というのもひねりがない気もする。次回予告を見ると、郡司真人(椎名桔平)の「柊の狙いは本当にこいつなのか!?」という声も聞こえてくる。
メッセージは存分に伝わってくる。でも、相変わらず先の読めないドラマである。
(文=寺西ジャジューカ)