米軍では入隊制限への反発も! 我が国ニッポン「自衛隊とLGBT」の知られざる現状

――米軍では今年4月からトランスジェンダーの入隊制限を開始。このトランプ政権の政策には大きな反発が起きている。一方で隣国の韓国では兵士の同性愛が禁止され、こちらも人権団体の非難の対象だ。一方で日本の自衛隊では、LGBTへの対応に関する目立った報道はなし。その存在は緩やかに容認されているように見えるが、本稿における取材でさまざまな問題が見えてきた。

 今年4月から始まった、米軍のトランスジェンダー入隊制限。米軍では、第二次大戦の頃から続いていた同性愛者の従軍禁止がクリントン政権下で条件付きで解除。オバマ政権下ではトランスジェンダーの受け入れ方針も決定していた。そうした流れにも逆行するトランプの政策は強い反発を呼んでいる。

 一方、自衛隊のLGBTへの対応では、ニュースになるようなトピックは少ない。2017年の一部規則の変更で、性的指向・性自認に関する偏見的な言動がセクハラに認定されるようになった程度だ。そのセクハラの注意喚起は、自衛隊のコンプライアンス・ガイダンスにも明記されており、LGBTの存在は自衛隊内で事実上、容認されているようにも見える。 この日米の状況の違いはどう考えるべきなのか。名古屋市立大学人文社会学部准教授で、ジェンダー論、セクシュアリティ論が専門の菊地夏野氏はこう解説する。

「米軍と比較して自衛隊がLGBTに寛容かというと、決してそうは言えません。そもそも米国においてジェンダーやセクシュアリティの問題は、宗教的な信念・価値観に深くかかわるもの。そのため深い議論が長年続いてきました。一方の日本では、LGBT関連の報道は近年増えたものの、メディアも国民もどこかひとごとの雰囲気があります。性別変更にかかわる性同一性障害特例法も、その厳しい要件(婚姻をしている人や未成年の子どもがいる人は申請が認められない)の違憲性を問う裁判が行われているのに、ほとんど報道がありません」

 つまり米国は「ジェンダーやセクシュアリティに関する論争・対立が日本より見えやすいだけ」であり、差別的な実態は日本にも温存されているのだ。

 では自衛隊内ではLGBTの隊員にどのような対応がなされているのか。陸上自衛隊在籍中に自身のセクシュアリティを自覚し、退職後に性別適合手術を行った松﨑志麻氏に話を聞いた。
「96人の同期の女性隊員には、私と同じFTMの人が7人ほどいて、バイセクシュアルや同性愛の隊員も数名いました。私は広くカミングアウトをしている珍しいタイプでしたが、周囲から特別扱いされることもなく、ごく自然に接してくれる人も多かったです」

 ただ、ホルモン治療や性別適合手術の相談をすると、「上司によって対応が分かれる」とのこと。

「理解のある上司のもとでは、ホルモン治療や胸の手術が認められた隊員もおり、航空自衛隊の幹部には性別適合手術まで終えた方もいるそうです。私の場合も、最初の上司は理解のある方でしたが、その次の上司は治療の相談に対して『それだけお金があるなら俺に原付を買ってくれ』と言うような人でした。その上司は私が女性の隊舎に住むことも問題視し、『監視が必要だから一人部屋も認めない』とも言われました」(松﨑氏)

 松﨑氏によると、別の部隊に在籍したFTMの隊員には、事実無根の噂や悪口を周囲やネットに広められた人や、「男なら胸や尻を触っても大丈夫だろ」とセクハラをされた人もいたという。ハラスメントは実態として存在していたのだ。また入隊時は全員が基地内で生活する自衛隊では、共同浴場での入浴もハードルになる。

「FTMの人にとっては共同浴場での入浴は苦痛なのですが、下の階級の隊員は個別のシャワーを利用できない駐屯地(陸上自衛隊の基地)もあります。そのため水しか出ない消灯後のシャワーで、こっそり体を洗っている隊員もいました」(松﨑氏)

 GID(性同一性障害)の診断やホルモン治療、性別適合手術を行う自由が丘MCクリニックの大谷伸久氏も次のように話す。

「一般企業ではGIDの診断書を提出すれば、トイレや更衣室の問題も対応してくれるところが増えていますが、共同浴場もある自衛隊では柔軟な対応はまだ難しい。また規則に基づいて行動するのが原則の組織ですから、GIDの隊員への対応も部隊内で目立たない範囲で行わなければいけないでしょう。対応が上司次第になるのはそのためでしょうし、当院を利用した自衛隊の方によると、『手術したらクビにするぞ』と言った上官もいたそうです」(大谷氏)

 自衛隊はもともと男女の扱いの違いがハッキリした組織であり、「男らしさを中心原理に動く組織」(菊地氏)でもある。「そのため男性から女性へと性別変更するMTFの人は、FTMの人以上に苦労することが多いのではないでしょうか」と菊地氏。実際に松﨑氏の周囲のトランスジェンダーの隊員はほぼ全員がFTM。MTFの知り合いの隊員は、「『なよなよしている』『女とばかり仲良くしすぎ』などといじめの対象になりやすかった」とのこと。ゲイやレズビアンの隊員については「カミングアウトをせずに働き続けている人が多いのではないか」と松﨑氏は話す。

「FTMの隊員が性別変更まで進むのは今も難しいでしょうし、自分らしく生きることをあきらめて自衛隊に残るか、自衛隊を出て性別を変えるかの選択を迫られることになるはずです。私は手術と性別変更のために退職しましたが、自衛隊の仕事は好きで、男性として戻ることも考えました。ただ、問い合わせをすると、『入隊はできても訓練やお風呂等の対応はどうなるかわからない』との回答でした」(松﨑氏)

 現状で自衛隊に求められるのは、トランスジェンダーの隊員の入隊や、在籍時の手術・性別変更等への対応について、一定のルールを設けることだろう。

「自衛隊は何から何まで規則で動き、例外を作りたがらない組織です。上に明確なルールができれば、上官によって対応が異なる問題も解決するのではないでしょうか。また『性別を変えてから入隊する』という選択をする人が出てくれば、女子大がトランスジェンダーの入学について検討を始めているように、自衛隊も何らかの対応を始めると思います」(大谷氏)

 将来的に幹部になる自衛官の教育などでは、「LGBTについての授業も行われるようになったと聞いています」と松﨑氏。なお日本政府と自衛隊のかかわりにも注視する必要がある。
「政府は女性活躍推進政策のアピール材料として、自衛官の女性比率増加を掲げています。それと同様に社会的なイメージアップ戦略として、自衛隊にLGBTに関する制度を設けたり、採用した隊員を広報宣伝に活用していくことも考えられます」(菊地氏)

 ただ、それがイメージアップにとどまるもので、実態が変わらなければやはり問題だ。

「ゲイフレンドリーを積極的に打ち出し、パレスチナ人への人権侵害の事実を覆い隠すイスラエルの政策が『ピンクウォッシュ』と非難されたのと同様のことが、自衛隊で起こる可能性があります。また自衛隊とLGBTの関係は、『男性がマジョリティを占める組織にLGBTが参入することで本当に差別はなくなるのか』『そもそも戦闘も行う組織に加わるべきなのか』といった観点や、自衛隊の存在をどう捉えるかも含めて議論すべきです」(菊地氏)

 男性原理が強く支配する自衛隊と、LGBTの関係を考えること。それは日本社会の問題点や課題と向き合うことにもなるのではないか。(月刊サイゾー9月号『新・戦争論』より)

過去最大の防衛費、専門家が“利権をめぐる派閥争い”に懸念「政治家と軍需産業の癒着が……」

 北朝鮮情勢の緊迫化が衆院選での与党大勝を後押ししたといわれるが、増大する一方の予算案では、防衛費を過去最大5兆2,000億円に増やす方向で調整される見込みだ。

 軍事ジャーナリストの青山智樹氏は「北がミサイルを打てば打つほど、日本の防衛利権の口実ができる」と警鐘を鳴らす。

「単純に増額自体を批判したいのではありません。もともと日本の防衛費は世界標準の半分程度しかないのですから。航空・海上自衛隊は対地攻撃力が微弱で新しい研究が必要だったり、洋上防衛の要ともいえる対艦ミサイルや戦闘機の旧式化という課題もあるので、そこで追加予算が生まれるのは当然です。でも、そういう実質的な使い道ではなく、政治家と軍需産業の癒着となってしまう不安があります」(同)

 青山氏がそう見ているのは、「日本の国防予算は派閥による奪い合いの構図がある」からだという。

「日本は専守防衛なので、侵略してくる他国を上陸前、上陸直後に撃退することが想定されているんですが、そういう区分けじゃなくて、攻めてくる国の想定によって防衛省・自衛隊で内部対立があるんです。主にロシアを想定する派と、中国北朝鮮を想定する派です。ロシア想定派からすると、たとえば近年の動きでも、択捉島に飛行場が作られるなどのインフラ整備には対策が必要と考えるわけです。でも、いま北朝鮮への不安から、対中国・北朝鮮の派閥が勢いづいて、予算獲りを猛プッシュ。特にミサイル防衛については実態の見えにくい『研究開発費』の名目が作れるので、天井知らずなんです」

 もともと北朝鮮への不安による防衛ビジネスともいえる傾向は、テポドン発射兆候による麻生(太郎)政権時代に強まったともいわれる。このとき政権は、記者たちを集めて迎撃ミサイル「パトリオット(PAC3)」の配備を宣伝したが「それは本来、マスコミに見せるべきものではなかった」と青山氏。

「PAC3は移動型で、敵からどこにあるか見つけにくいのが長所なのに、わざわざその姿を示したのは、実戦よりも別の目的があったからとしか思えませんでした。他国ではダミーの車両を走らすなどの工作をするのが通例なのに、そういったことをまったくせず報道陣を招き入れてたのですから」(同)

 事実、このときはミサイル防衛利権がひとつの社会問題にもなっていた。アメリカに引っ張られるがままに小泉(純一郎)政権の04年度から予算付けが始まり、8,000億円を超えると見られる新たな防衛利権が甘い汁になっているのではないかという疑念が生じていた。

「防衛予算というのは、自衛隊に限らず一般的な軍隊でも主要支出は主に人件費なんです。自衛隊の場合、訓練費、居住費を合算すると全体の8割が人件費になるはず。なので過去の予算上下は人を増やすか減らすかが主だったんですが、安倍政権になってからの増額は、それまでと様子が違っていて、自衛隊員の増員がないのに予算が増え続けています」(同)

 導入が見込まれる新型戦闘機F35ライトニングIIは、同盟国にも工場が置かれるため、アメリカ政府はこれに1万人以上の雇用が発生すると試算し、日本の三菱重工などがその4割を担うという話だが、青山氏は「三菱など防衛産業はいま経営難に陥っているといわれるので、そんな景気の良い話ではないはず」と話す。

 この防衛費増大は、中国のさらなる軍備増大の口実を作ることになるという危惧もあり、ロシア・スプートニク紙では「日本の防衛費増額は外交の失敗を意味する」とも伝えている。一般人にはわかりにくい軍事分野だが、いろいろな意味で懸念がありそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

過去最大の防衛費、専門家が“利権をめぐる派閥争い”に懸念「政治家と軍需産業の癒着が……」

 北朝鮮情勢の緊迫化が衆院選での与党大勝を後押ししたといわれるが、増大する一方の予算案では、防衛費を過去最大5兆2,000億円に増やす方向で調整される見込みだ。

 軍事ジャーナリストの青山智樹氏は「北がミサイルを打てば打つほど、日本の防衛利権の口実ができる」と警鐘を鳴らす。

「単純に増額自体を批判したいのではありません。もともと日本の防衛費は世界標準の半分程度しかないのですから。航空・海上自衛隊は対地攻撃力が微弱で新しい研究が必要だったり、洋上防衛の要ともいえる対艦ミサイルや戦闘機の旧式化という課題もあるので、そこで追加予算が生まれるのは当然です。でも、そういう実質的な使い道ではなく、政治家と軍需産業の癒着となってしまう不安があります」(同)

 青山氏がそう見ているのは、「日本の国防予算は派閥による奪い合いの構図がある」からだという。

「日本は専守防衛なので、侵略してくる他国を上陸前、上陸直後に撃退することが想定されているんですが、そういう区分けじゃなくて、攻めてくる国の想定によって防衛省・自衛隊で内部対立があるんです。主にロシアを想定する派と、中国北朝鮮を想定する派です。ロシア想定派からすると、たとえば近年の動きでも、択捉島に飛行場が作られるなどのインフラ整備には対策が必要と考えるわけです。でも、いま北朝鮮への不安から、対中国・北朝鮮の派閥が勢いづいて、予算獲りを猛プッシュ。特にミサイル防衛については実態の見えにくい『研究開発費』の名目が作れるので、天井知らずなんです」

 もともと北朝鮮への不安による防衛ビジネスともいえる傾向は、テポドン発射兆候による麻生(太郎)政権時代に強まったともいわれる。このとき政権は、記者たちを集めて迎撃ミサイル「パトリオット(PAC3)」の配備を宣伝したが「それは本来、マスコミに見せるべきものではなかった」と青山氏。

「PAC3は移動型で、敵からどこにあるか見つけにくいのが長所なのに、わざわざその姿を示したのは、実戦よりも別の目的があったからとしか思えませんでした。他国ではダミーの車両を走らすなどの工作をするのが通例なのに、そういったことをまったくせず報道陣を招き入れてたのですから」(同)

 事実、このときはミサイル防衛利権がひとつの社会問題にもなっていた。アメリカに引っ張られるがままに小泉(純一郎)政権の04年度から予算付けが始まり、8,000億円を超えると見られる新たな防衛利権が甘い汁になっているのではないかという疑念が生じていた。

「防衛予算というのは、自衛隊に限らず一般的な軍隊でも主要支出は主に人件費なんです。自衛隊の場合、訓練費、居住費を合算すると全体の8割が人件費になるはず。なので過去の予算上下は人を増やすか減らすかが主だったんですが、安倍政権になってからの増額は、それまでと様子が違っていて、自衛隊員の増員がないのに予算が増え続けています」(同)

 導入が見込まれる新型戦闘機F35ライトニングIIは、同盟国にも工場が置かれるため、アメリカ政府はこれに1万人以上の雇用が発生すると試算し、日本の三菱重工などがその4割を担うという話だが、青山氏は「三菱など防衛産業はいま経営難に陥っているといわれるので、そんな景気の良い話ではないはず」と話す。

 この防衛費増大は、中国のさらなる軍備増大の口実を作ることになるという危惧もあり、ロシア・スプートニク紙では「日本の防衛費増額は外交の失敗を意味する」とも伝えている。一般人にはわかりにくい軍事分野だが、いろいろな意味で懸念がありそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)