居酒屋の無断キャンセル事件を弁護士解説! 「嫌がらせ目的」でなければ逮捕されない?

 昨今、「No show」と呼ばれ、社会問題化している「無断キャンセル」問題。これは、飲食店に予約をしたものの、連絡なしに来店せず、食材費などを無駄にしてしまうという、店側にとっては死活問題に発展しかねない恐るべき行為。経済産業省が昨年発表した資料によると、国内の無断キャンセル被害額は推計で年間2000億円にも上り、被害に遭った店が閉店に追い込まれるケースもあるそうだ。

 11月11日、そんな無断キャンセルによって、逮捕者が出たことが判明。6月下旬、東京・有楽町の居酒屋に、偽名を使って17人分の飲み放題付きコースを予約したものの、無断でキャンセルしたとして、50代の男が偽計業務妨害容疑で逮捕されたのだ。なお同じ予約日で、この居酒屋の系列店4店に入っていた8~20人分の団体予約も無断でキャンセルされており、予約者が全て同じ偽名を使っていたことも明らかになっている。

 この逮捕報道を受け、ネット上では、「これで無断キャンセルが減るといいな」といった声が広がっているが、一方で、容疑者の男が偽名を使っている点に着目し、「最初から偽名なのは『嫌がらせ目的』? だから逮捕されたのではないか」という疑問の声も飛び交うことに。というのも、無断キャンセルをする人の多くは、予約段階では来店の意志があり、当然実名で予約していたものの、当日、連絡なしにドタキャンする……というパターンがほとんどとみられるからだ。

 そこで、この疑問を解消するべく、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

「嫌がらせ目的」でなければ、偽計業務妨害罪には該当しない?

 今回、50代の男が逮捕された、偽計業務妨害容疑とは、一体どのような罪なのだろうか。

「怒鳴ったり、暴力を振るったり、 有形的な力を用いたわけではなく、“情報や人の錯誤を利用する方法”で、他人の業務を妨害するのが『偽計業務妨害罪』です。これは3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。今回、利用するつもりがないとみられるのに、コースメニューなどの予約をしているわけなので、『虚偽の予約をするという方法で、用意した食材を無駄にさせた、その時間にほかの予約を入れることができない状態をつくった』という点において、偽計業務妨害となります」

 ということは、嫌がらせ目的ではなく、無断キャンセルをした場合は、「偽計業務妨害罪に該当しません。『他人の業務を妨害してやろう』という故意がないからです」と山岸氏は指摘する。

 たとえ当人に嫌がらせ目的がなかったとしても、無断キャンセル自体、飲食店にとって死活問題。店側は泣き寝入りするしかないとなると、何とも非情な話だが、民事訴訟を起こし、「債務不履行」で訴える道は考えられるという。

「たとえ『故意』はなくても、利用できないかもしれないのに、うっかり予約をしてしまい、そして実際に行けなかった場合には、その人に『過失』があるかもしれません。この場合、『居酒屋のコースメニューなどの提供を受ける予約という契約』を、『過失』によって履行しなかったことになり、これを『債務不履行』と言います。店側は、債務不履行として、無断キャンセルをした人物に対し、民事上の責任(損害賠償責任)を追及することができるのです」

 無断キャンセルをどう減らしていくかは、店側にとっても大きな課題だ。被害に遭わないために、どのような対策を行うべきなのだろうか。

「予約者の連絡先の把握、また、虚偽の連絡先ではないか確認することではないでしょうか。予約者の電話番号等に折り返し連絡を行い、無断キャンセルが発生した場合の『店側の対応やポリシー』をしっかり伝えるといいと思います。ウェブサイトに明記するのもいいですね。こうすることにより、 お客さんにプレッシャーを与えることができるでしょう」

 一方で、「ドタキャンしなければいけない」状況に陥ってしまった客側が、のちのち飲食店とトラブらないために、「連絡をする」ことは当然として、ほかに注意すべき点はあるのだろうか。山岸氏は、「それは、法的に『どのようにすべきか』という話ではなく、客側の“心”が問われる話」と語る。

「人数が多くなればなるほど、 合理的に考えて、ドタキャンは発生しにくいのでは。したがって、少人数の場合に限りますが、キャンセルの連絡時、まずは『日程の変更』が可能かを確認するなど、そのお店を利用する意思が継続してあることを伝えるべきでしょう。また、事前にお店を利用する『目的』を伝えておけば、キャンセルする際、『こういう理由で、その目的がなされなくなってしまった』と説明でき、店側の理解を得ることもできるかもしれません」

 頻発している無断キャンセル問題が、世の中から減っていくことを願わずにいられない。

居酒屋の無断キャンセル事件を弁護士解説! 「嫌がらせ目的」でなければ逮捕されない?

 昨今、「No show」と呼ばれ、社会問題化している「無断キャンセル」問題。これは、飲食店に予約をしたものの、連絡なしに来店せず、食材費などを無駄にしてしまうという、店側にとっては死活問題に発展しかねない恐るべき行為。経済産業省が昨年発表した資料によると、国内の無断キャンセル被害額は推計で年間2000億円にも上り、被害に遭った店が閉店に追い込まれるケースもあるそうだ。

 11月11日、そんな無断キャンセルによって、逮捕者が出たことが判明。6月下旬、東京・有楽町の居酒屋に、偽名を使って17人分の飲み放題付きコースを予約したものの、無断でキャンセルしたとして、50代の男が偽計業務妨害容疑で逮捕されたのだ。なお同じ予約日で、この居酒屋の系列店4店に入っていた8~20人分の団体予約も無断でキャンセルされており、予約者が全て同じ偽名を使っていたことも明らかになっている。

 この逮捕報道を受け、ネット上では、「これで無断キャンセルが減るといいな」といった声が広がっているが、一方で、容疑者の男が偽名を使っている点に着目し、「最初から偽名なのは『嫌がらせ目的』? だから逮捕されたのではないか」という疑問の声も飛び交うことに。というのも、無断キャンセルをする人の多くは、予約段階では来店の意志があり、当然実名で予約していたものの、当日、連絡なしにドタキャンする……というパターンがほとんどとみられるからだ。

 そこで、この疑問を解消するべく、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

「嫌がらせ目的」でなければ、偽計業務妨害罪には該当しない?

 今回、50代の男が逮捕された、偽計業務妨害容疑とは、一体どのような罪なのだろうか。

「怒鳴ったり、暴力を振るったり、 有形的な力を用いたわけではなく、“情報や人の錯誤を利用する方法”で、他人の業務を妨害するのが『偽計業務妨害罪』です。これは3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。今回、利用するつもりがないとみられるのに、コースメニューなどの予約をしているわけなので、『虚偽の予約をするという方法で、用意した食材を無駄にさせた、その時間にほかの予約を入れることができない状態をつくった』という点において、偽計業務妨害となります」

 ということは、嫌がらせ目的ではなく、無断キャンセルをした場合は、「偽計業務妨害罪に該当しません。『他人の業務を妨害してやろう』という故意がないからです」と山岸氏は指摘する。

 たとえ当人に嫌がらせ目的がなかったとしても、無断キャンセル自体、飲食店にとって死活問題。店側は泣き寝入りするしかないとなると、何とも非情な話だが、民事訴訟を起こし、「債務不履行」で訴える道は考えられるという。

「たとえ『故意』はなくても、利用できないかもしれないのに、うっかり予約をしてしまい、そして実際に行けなかった場合には、その人に『過失』があるかもしれません。この場合、『居酒屋のコースメニューなどの提供を受ける予約という契約』を、『過失』によって履行しなかったことになり、これを『債務不履行』と言います。店側は、債務不履行として、無断キャンセルをした人物に対し、民事上の責任(損害賠償責任)を追及することができるのです」

 無断キャンセルをどう減らしていくかは、店側にとっても大きな課題だ。被害に遭わないために、どのような対策を行うべきなのだろうか。

「予約者の連絡先の把握、また、虚偽の連絡先ではないか確認することではないでしょうか。予約者の電話番号等に折り返し連絡を行い、無断キャンセルが発生した場合の『店側の対応やポリシー』をしっかり伝えるといいと思います。ウェブサイトに明記するのもいいですね。こうすることにより、 お客さんにプレッシャーを与えることができるでしょう」

 一方で、「ドタキャンしなければいけない」状況に陥ってしまった客側が、のちのち飲食店とトラブらないために、「連絡をする」ことは当然として、ほかに注意すべき点はあるのだろうか。山岸氏は、「それは、法的に『どのようにすべきか』という話ではなく、客側の“心”が問われる話」と語る。

「人数が多くなればなるほど、 合理的に考えて、ドタキャンは発生しにくいのでは。したがって、少人数の場合に限りますが、キャンセルの連絡時、まずは『日程の変更』が可能かを確認するなど、そのお店を利用する意思が継続してあることを伝えるべきでしょう。また、事前にお店を利用する『目的』を伝えておけば、キャンセルする際、『こういう理由で、その目的がなされなくなってしまった』と説明でき、店側の理解を得ることもできるかもしれません」

 頻発している無断キャンセル問題が、世の中から減っていくことを願わずにいられない。

67歳の中国人女性が女児を出産! 祝福モードも「産児制限違反」で罰金!?

 今年9月、インドで74歳の女性が体外受精の末、双子の赤ちゃんを出産した。世界最高齢での出産となったわけだが、中国では先日、67歳の女性が自然妊娠の末、出産していたことがわかった。

「鳳凰新聞」(10月27日付)などによると、山東省ソウ荘市の病院で25日、67歳の女性が女児を出産したという。この女性は68歳の夫との間に30代の息子と娘がおり、孫にも恵まれ、平穏な生活を送っていた。しかし、今年に入り、体調不良が続いていたため3つの病院で検査を受けたが原因不明で、4つ目の病院でようやく妊娠が判明したのだった。

 妊娠発覚当初、高齢出産は母子ともにリスクが高いことや、子どもたちからも反対され、「中絶しなければ親子の縁を切る」とまで言われていたことから、女性は中絶するつもりでいたが、夫の強い説得によって出産を決意したという。

 そして、陣痛からわずか20分という短時間で無事に2560gの女児を出産。女性は糖尿病や高血圧症を患っていたが、母子ともに健康状態は良好で、手術翌日には一般病棟に移され、順調に回復しているという。

 今後、夫婦は出生届を提出するため、紛失してしまった結婚証明書などの再交付の手続きを行う予定だという。中国最高齢の出産となったが、その影響は意外なところにも及んでいる。一人っ子政策を撤廃した中国では現在、条件付きで2人までの子どもの出産を認めている。夫婦にとって3人目の子どもとなった今回の出産で、地元行政が夫婦に対して罰金を言い渡すのか特例を認めるかに、注目が集まっているのだ。

 これまで同国では、2016年12月に、当時64歳の女性が男児を出産したのが最高齢記録だった。医学の進歩によって、こうした事例は増えていくのかもしれない。

(文=青山大樹)

67歳の中国人女性が女児を出産! 祝福モードも「産児制限違反」で罰金!?

 今年9月、インドで74歳の女性が体外受精の末、双子の赤ちゃんを出産した。世界最高齢での出産となったわけだが、中国では先日、67歳の女性が自然妊娠の末、出産していたことがわかった。

「鳳凰新聞」(10月27日付)などによると、山東省ソウ荘市の病院で25日、67歳の女性が女児を出産したという。この女性は68歳の夫との間に30代の息子と娘がおり、孫にも恵まれ、平穏な生活を送っていた。しかし、今年に入り、体調不良が続いていたため3つの病院で検査を受けたが原因不明で、4つ目の病院でようやく妊娠が判明したのだった。

 妊娠発覚当初、高齢出産は母子ともにリスクが高いことや、子どもたちからも反対され、「中絶しなければ親子の縁を切る」とまで言われていたことから、女性は中絶するつもりでいたが、夫の強い説得によって出産を決意したという。

 そして、陣痛からわずか20分という短時間で無事に2560gの女児を出産。女性は糖尿病や高血圧症を患っていたが、母子ともに健康状態は良好で、手術翌日には一般病棟に移され、順調に回復しているという。

 今後、夫婦は出生届を提出するため、紛失してしまった結婚証明書などの再交付の手続きを行う予定だという。中国最高齢の出産となったが、その影響は意外なところにも及んでいる。一人っ子政策を撤廃した中国では現在、条件付きで2人までの子どもの出産を認めている。夫婦にとって3人目の子どもとなった今回の出産で、地元行政が夫婦に対して罰金を言い渡すのか特例を認めるかに、注目が集まっているのだ。

 これまで同国では、2016年12月に、当時64歳の女性が男児を出産したのが最高齢記録だった。医学の進歩によって、こうした事例は増えていくのかもしれない。

(文=青山大樹)

なでしこ寿司の炎上が止まらない! 衛生管理はガバガバ、おまけに画像無断転載疑惑で「銭湯絵師を思い出す」の声も

【おたぽるより】

 東京・秋葉原に店を構える女性寿司職人専門店・なでしこ寿司の炎上が止まらない。

 発端となったのは、ハフポスト日本版が10月25日に公開した記事<「生理が味覚に影響」「化粧がつく」……。差別や偏見を乗り越え、ある女性が寿司職人を続ける理由>。同店の千津井由貴店長の取材を通して、男社会の寿司職人の世界で差別や偏見と戦う女性の姿を取り上げていた。

 なでしこ寿司は記事にも記されているように、調理白衣ではなく着物姿で寿司を握るスタイル。千津井店長がエンターテイメントの一貫として組み入れていると話していた要素だが、同記事に貼られた動画では、カウンター越しに寿司を提供する際に着物の袖がまな板に触れてしまっていることが確認できる。

 そのことを「衛生的にどうなのか」とネット上でツッコまれると、なでしこ寿司のTwitterは「あら探しの為にご視聴ありがとうございます」とまさかの逆ギレ。だが、リサーチをすればするほどなでしこ寿司の“あら”が続々発見され、炎上は収まる気配はない。

「まな板どころか寿司のネタに着物の袖がべったり触れていたことが、なでしこ寿司のインスタグラムより確認されています。ほかにも、過去にTV番組に取り上げられた際、寿司を握る指に絆創膏がついている写真などもネットで拡散されている状態。『衛生管理がガバガバすぎる』の声が続出しています。しかも、それだけでなく過去のTwitterアカウントやグルメサイトに他店などの料理写真を無断転載している疑惑も浮上。ご丁寧に店のロゴまで入れており、『悪質すぎる』の声が殺到しています。衛生管理だけでなく、モラルも低いようです」(エンタメライター)

 ハフポストの記事で千津井店長は「女性が寿司を握るのはだめですか」と読者に問いかけていたが、今回の炎上は「女性どうこう」の問題ではなくなっている。

「なでしこ寿司とはジャンルは違いますが、“同業者からパクっていた”という点で『銭湯絵師の炎上を思い出す』という声も少なくありません。モデルで銭湯絵師見習いの勝海麻衣氏といえば、今年3月ごろに盗作やパクリツイートが次々に発覚し大炎上。所属事務所が作品の盗用を認める謝罪文を掲載するまでに至りました」(同)

 この炎上はどんな結末を迎えるのだろうか……。

首里城再建に向け、安室奈美恵の電撃復活ライブが現実味?

 10月31日未明に発生した首里城の火災で、多くの沖縄県民の心の支えとなってきた「沖縄のシンボル」は一夜にして灰になった。30年かけて復元された建物とともに、城内に保存されていた文化財の状況についても注目が集まっている。

「首里城には琉球王国時代の絵画や漆器、書跡など1510点の資料が収蔵されていました。このうち、県指定有形文化財になっている3点については無事が確認できていますが、文化財全体の3割近い421点は焼損してしまった」(地元紙記者)

 首里城の地下には琉球王国時代の遺構が埋まっており、焼失した正殿など7棟はそのレプリカだ。世界遺産に登録されているのはこの遺構で、こちらへの火災の影響の度合いに関しても大きな懸念材料となっている。

 ひのきや瓦などの資材、職人の調達も難航しそうな気配だが、再建に向けた何より大きなハードルとなりそうなのが資金面での壁だ。

「首里城を含む首里城公園の整備にかかった総事業費はおよそ260億円とされています。このうち正殿の建設にかかったのが、約73億円。ただし、これはあくまでも建築当時の相場で、資材や作業員の人件費は当時よりもさらに上がっている。地価が高騰する中で、人、モノともに不足がちの現状では、さらなるコスト増が予想される。一方で、沖縄県から首里城の管理を任されていた沖縄美ら島財団が加入していた火災保険の支払限度額は最大70億円。これでは数十億円足りない計算になる」(同)

 再建に向けた資金集めの一環として、一部の県民の間では募金の動きも活発化しており、すでにクラウドファンディングを活用した募金額は11月7日正午までに3億8,000万円を突破しているが、再建費用を賄うには程遠い。関係者の間では、資金集めには求心力と発信力のある「旗振り役」ともいうべき存在が欠かせないとの声も上がっているが、そこで名前が取り沙汰されているのが、沖縄が誇るあの歌姫だ。

「昨年、芸能界を引退した安室奈美恵さんです。安室さんは引退に絡むコンサート開催やCD、グッズ販売などで1,000億円の経済効果をもたらしたとされている。今夏には『引退から1年』という節目で、宜野湾市で安室さんの名前を冠した花火大会が開催されたのですが、ここでも億単位の収益を上げたといわれています。すでに財団側は、首里城再建に向けて安室さんになんらかの協力を仰ごうと水面下で動きだしているとの情報もあります」(県政関係者)

 6日付の琉球新報によれば、5日には地元選出の下地幹郎衆院議員(日本維新の会)が安室に音楽制作を依頼するなどして再建への協力をあおぐよう県に提言、地元政界にも待望論が出始めている。

「首里城がある首里地区は安室さんの地元でもある。生まれ故郷の苦境のために、安室さんが人肌脱ぐというのは十二分にあり得る」(同)

 電撃復活の舞台は整った!?

首里城火災、富士山滑落事故……不謹慎YouTuberに法的責任は? 弁護士に聞いた

 10月31日未明に発生した、沖縄県那覇市にある世界遺産・首里城の火災。出火原因は電気系統のトラブルによる可能性が高いとみられているが、火災の第一報を受け、「首里城を燃やしたのは僕です」と名乗りを上げるYouTuberが続出。さらに、こういった炎上狙いの動画を批判する動画も多数アップされ、YouTube上では一時、“首里城火災”がトレンドとなっていた。

 また、28日に富士山を登る様子をライブ配信していた男性が滑落し安否不明となった事故でも、「富士山から滑落した、ニコ生配信者」を名乗り、「無事生きています」との動画を投稿するYouTuberが出現、「不謹慎すぎる」と批判を浴びていた。

 良くも悪くも再生回数がモノを言うYouTubeでは、再生回数に比例して収益が発生する。そのため手っ取り早く数字が稼げる炎上ネタに手を出す者は少なくないが、何か事件が起きるたびに、犯人やその親族になりすます悪質YouTuberもいる。たとえば常習犯として悪名高いYouTuberは、山梨県道志村キャンプ場で起きた小1女児行方不明事件や、さいたま市小4男児殺害事件の犯人になりすまし、批判を浴びている。YouTubeでは「嫌がらせ」や「なりすまし」といったコンテンツを投稿することを禁止しているため、この男はこれまでに何度も収益化を外されたり、アカウント停止措置を受けているのだが、そのたびに名前を変え、懲りずに投稿を続けている。

 こういった動画は軒並み低評価で、チャンネル登録者数自体は少ないものの、周りが騒ぎ立てれば騒ぎ立てるほど、興味本位で見に来た人によって再生回数が伸びてしまうというのは皮肉なところ。相手にしないのが一番ではあるが、愚行を繰り返す不謹慎YouTuberに法的責任はないのだろうか? 弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPCパートナー弁護士の山岸純氏は、次のように解説する。

「こういう不謹慎な者は、たとえ虚構であっても注目を浴びたいという一心しかなく、動画をアップする瞬間には罪の意識もへったくれもないのでしょう。人を殴って金目のものを奪うことに抵抗がない者、お年寄りをだまして金銭を振り込ませる者、有権者に金品を配る政治家、みな共通して『罪の意識』がないわけです。こういった規範意識が鈍磨した連中は、それが『犯罪』であることを身に刻ませることが必須です。さて、今回の件ですが、『自分が放火犯人です」』『富士山から滑落しました』などと虚偽の犯罪や災害を、消防や警察や捜索隊などが見ることを想定してアップしているような場合には(実際は、単に『動画をみんなに見てほしい』という幼稚な考えだけなので極めて難しいと思いますが、軽犯罪法1条16号『虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出ること』、同31号『他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害すること』に該当することが考えられます。この場合、拘留(1日以上30日未満の拘束刑)や科料(1,000円以上1万円以下の財産刑)が科されるので、捜査機関は臆することなくどんどん処罰してほしいところです」

 HIKAKINやはじめしゃちょーなど人気YouTubeは、YouTubeにおけるマナーやモラル向上をユーザーに啓蒙する投稿も行っているが、いくら自由な空間とはいえ、人の不幸で再生回数を稼ぐようなマネは謹んでもらいたいものだ。

首里城火災、富士山滑落事故……不謹慎YouTuberに法的責任は? 弁護士に聞いた

 10月31日未明に発生した、沖縄県那覇市にある世界遺産・首里城の火災。出火原因は電気系統のトラブルによる可能性が高いとみられているが、火災の第一報を受け、「首里城を燃やしたのは僕です」と名乗りを上げるYouTuberが続出。さらに、こういった炎上狙いの動画を批判する動画も多数アップされ、YouTube上では一時、“首里城火災”がトレンドとなっていた。

 また、28日に富士山を登る様子をライブ配信していた男性が滑落し安否不明となった事故でも、「富士山から滑落した、ニコ生配信者」を名乗り、「無事生きています」との動画を投稿するYouTuberが出現、「不謹慎すぎる」と批判を浴びていた。

 良くも悪くも再生回数がモノを言うYouTubeでは、再生回数に比例して収益が発生する。そのため手っ取り早く数字が稼げる炎上ネタに手を出す者は少なくないが、何か事件が起きるたびに、犯人やその親族になりすます悪質YouTuberもいる。たとえば常習犯として悪名高いYouTuberは、山梨県道志村キャンプ場で起きた小1女児行方不明事件や、さいたま市小4男児殺害事件の犯人になりすまし、批判を浴びている。YouTubeでは「嫌がらせ」や「なりすまし」といったコンテンツを投稿することを禁止しているため、この男はこれまでに何度も収益化を外されたり、アカウント停止措置を受けているのだが、そのたびに名前を変え、懲りずに投稿を続けている。

 こういった動画は軒並み低評価で、チャンネル登録者数自体は少ないものの、周りが騒ぎ立てれば騒ぎ立てるほど、興味本位で見に来た人によって再生回数が伸びてしまうというのは皮肉なところ。相手にしないのが一番ではあるが、愚行を繰り返す不謹慎YouTuberに法的責任はないのだろうか? 弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPCパートナー弁護士の山岸純氏は、次のように解説する。

「こういう不謹慎な者は、たとえ虚構であっても注目を浴びたいという一心しかなく、動画をアップする瞬間には罪の意識もへったくれもないのでしょう。人を殴って金目のものを奪うことに抵抗がない者、お年寄りをだまして金銭を振り込ませる者、有権者に金品を配る政治家、みな共通して『罪の意識』がないわけです。こういった規範意識が鈍磨した連中は、それが『犯罪』であることを身に刻ませることが必須です。さて、今回の件ですが、『自分が放火犯人です」』『富士山から滑落しました』などと虚偽の犯罪や災害を、消防や警察や捜索隊などが見ることを想定してアップしているような場合には(実際は、単に『動画をみんなに見てほしい』という幼稚な考えだけなので極めて難しいと思いますが、軽犯罪法1条16号『虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出ること』、同31号『他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害すること』に該当することが考えられます。この場合、拘留(1日以上30日未満の拘束刑)や科料(1,000円以上1万円以下の財産刑)が科されるので、捜査機関は臆することなくどんどん処罰してほしいところです」

 HIKAKINやはじめしゃちょーなど人気YouTubeは、YouTubeにおけるマナーやモラル向上をユーザーに啓蒙する投稿も行っているが、いくら自由な空間とはいえ、人の不幸で再生回数を稼ぐようなマネは謹んでもらいたいものだ。

あいトリと地続きに日本映画は死んでいく――映画業界はなぜ立ち上がらないのか

 10月27日から11月4日にかけて行われた「第25回KAWASAKIしんゆり国際映画祭2019」が、波紋を広げている。

 この映画祭では従軍慰安婦を描いたドキュメンタリー映画『主戦場』が上映される予定だった。しかし、共催の川崎市は、出演者が監督と配給会社を相手に裁判を起こしていることから「裁判になっているようなものを上映するのはどうか」との“懸念”を出す。それを受けて主催者は観客の安全面なども考慮して上映中止を決めた。

 これに対してしんゆり国際映画祭に出品している他の映画の関係者から、抗議の動きが起こる。

 若松プロダクションもそのひとつ。若松プロは製作配給した『止められるか、俺たちを』と『11.25自決の日~三島由紀夫と若者たち』をしんゆり国際映画祭に出品していたが、『主戦場』上映中止への抗議として2作品の出品を取り消した。

 「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」の中止および助成金不公布、映画『宮本から君へ』の助成金内定取り消し問題に続いて起こった「表現の自由」を脅かすこの事件。『止められるか、俺たちを』で脚本を担当した井上淳一氏に話を聞いた。
(このインタビューは10月31日、若松プロダクションにて収録した)

 

【井上淳一】
1965年、愛知県生まれ。大学在学中より若松孝二監督に師事し、若松プロダクションにて助監督を務める。その後、荒井晴彦氏に師事し脚本家に。『戦争と一人の女』『大地を受け継ぐ』『誰がために憲法はある』といった作品では監督を務めている。主な脚本作品には『男たちの大和』『アジアの純真』『あいときぼうのまち』『止められるか、俺たちを』などがある。

──まず始めに、今回の決定を受けてどのように感じられましたか?

井上淳一(以下、井上) 「あいちトリエンナーレ」や、『宮本から君へ』などの問題の延長線上に起きたことは間違いありませんが、関東のローカルな映画祭ですらこういうことが起こってしまうのかと。深刻な問題だなと感じましたね。

──この事件の一番の問題点はどんなところだと思われますか?

井上 今後、他の映画祭で『主戦場』を上映したいと思っても、もっと言えば歴史認識の問題以外でも、沖縄や原発といったテーマで安倍政権の意向と対立する主張を展開する映画をかけたいと思ったら、主催者の頭に「問題が起きるのではないか? 助成金がおりなくなるのではないか?」という考えがよぎり、社会問題を描いた映画がそもそもラインナップされなくなってしまうかもしれないということですね。
 最も死活問題だなと思うのが公民館など公共の施設。僕の映画(『誰がために憲法はある』)はいま日本全国で観てもらっていますが、そういった映画の上映会をやるのは地方では公民館の場合が多い。でも、「政治的に偏った映画はちょっと……」と貸してもらえなくなる可能性も出てくるかもしれない。そうなったら、もう誰も社会的なドキュメンタリー映画なんてつくることができなくなってしまいます。

──ドキュメンタリーに限らず、劇映画でも同じことが起こるような気がします。

井上 企画段階ではねられるものも出てくるだろうなとは当然思います。
 たとえば、関東大震災の朝鮮人虐殺をテーマにした映画をつくるとします。小池百合子東京都知事が朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典への追悼文送付を取りやめて問題になっていますよね。小池都知事がやっていることは、これまで受け継がれてきた、反省すべき日本の負の歴史をなかったことにし、そこに分断線を引くというとんでもないことなわけですよ。
 若松さん(※故・若松孝二監督)だったらこの報道に怒って「朝鮮人虐殺の映画をやってみようか」となったかもしれない。でも、そういった時代の映画をつくるのにはお金がかかる。そのテーマじゃ助成金は受けられない、完成しても上映場所が限られるとなったら、せっかく浮かんだアイデアも動き出す前につぶれてしまうでしょう。
 そうやって日の目を見ずに、水子となって消えていく企画を考えると、これはとんでもないことですよ。

──「忖度」がますます強まるきっかけをつくってしまったわけですね。

井上 川崎市にも映画祭にも当事者意識はないのかもしれない。ただその代わり、強い自己保身だけはある。そのことに怖さを感じますね。
 彼らは『主戦場』の上映中止が「文化を殺す」ことにつながるとはまったく思っていないのでしょうが、今回やったことは「映画を殺す」「映画祭を殺す」ということですよ。
 なぜ、これが色んなことに敷衍していくことだと気づかないのか。

 

『止められるか、俺たちを』©若松プロダクション
最近の日本映画界には社会問題を描いたエンタメ作品が少ない
──そもそも、「映画」と「権力」の関係はどうあるべきなのでしょうか?

井上 「国に異を唱えるような映画をつくるなら自分の金でやれ」という意見はすごくあると思うんです。
 実際、若松さんなんかは自分の映画が助成金を受けられるとは端から思ってなかっただろうし、僕も低予算でやれているというのもあって、個人的にはその信条もなくはないですよ。だって、権力を相手に戦うんだから。
 でも、大原則として、国が芸術に助成金を出すのは、表現の多様性が失われて国策に取り込まれ、戦争を後押ししてしまった戦前のドイツや日本の反省を踏まえてのことであるわけです。
 もっと言えば、権力者を批判したり、その国の負の歴史を振り返るような表現が生まれることは、結果的には国のためになるという理解があった。

──いまの日本ではその発想がどんどん失われているように感じます。

井上 国たるもの、そこらへんはわきまえなければいけない。わきまえる側は僕たちじゃない、国の方なんです。
 だから、ここで原則に立ち返らなければいけない。第二次安倍政権発足以降、74年かけて積み上げてきた民主主義が崩れてしまっていますが、それがついに文化・芸術のところまで来たのかという気が僕はしています。

──出品取り消しの声明文でも触れられていましたが、この騒動で思い浮かべたのは釜山国際映画祭のことです。釜山国際映画祭は2014年に出品されたセウォル号沈没事故を描いたドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル セウォル号』の上映をめぐって助成金カットなどの圧力を受けました。しかし、韓国映画業界がサポートし、映画祭も脅しに負けず上映に踏み切りました。釜山と川崎では180度逆のことが起こっています。

井上 それは韓国映画と日本映画の質を比べたら明らかなわけですよ。周回遅れの1位という言葉がありますが、いま、日本映画は世界と比べて10周遅れのどべですから。それはそうですよ。社会と向き合わず、歴史とも向き合わないのだから。
 ここ最近で『万引き家族』と『新聞記者』以外にシネコンでかかった社会を描いた映画ってあるんですか?
 我々のようにポレポレ東中野でやるようなドキュメンタリー映画と、爪の先ほどの劇映画しかないじゃないっていう。本当に由々しき事態だと思いますよ。

──一方、韓国では1980年に起きた軍事独裁政権に対する民主化運動「光州事件」を描いた映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年公開、日本公開は2018年)がその年の観客動員数1位になっています。

井上 ああいった題材を描きながらも、きちっとエンターテインメントに仕上げて観客を楽しませる技術はすごい。しかも、ソン・ガンホやハ・ジョンウという大スターを起用して、大ヒットさせるという。
 それは、権力と対峙する映画を支持する度量を社会が見せることで、製作者の表現に関する発想も豊かになっているということだと思うんですよ。

──なるほど。

井上 どこかでリミットがかかっていると、表現の発想ってしぼむものなんです。
 たとえば、僕の『誰がために憲法はある』という映画は広島と長崎の原爆に関する朗読劇をやっている女優さんを描いた映画なんですけど、よく言われる「日本の戦争に関する映画は“被害”だけやって“加害”はやらない」という批判がそのまま自分に返ってくる映画になってしまった。
 あとから考えたら単純なことだったんですよ。インタビューをしているとき女優さんに「日本の戦争加害についてどう思っていますか」と聞けばよかった。
 ただ、撮影している間にその質問がまったく思い浮かばなかったんです。自分で規制していたわけではないですが、女優さんとの信頼関係をちゃんと築く前に撮影に入ってしまった。そのことが無意識に発想にリミッターをかけていたと思うんです。編集しているときにそのことに気づいて愕然としました。表現にはそういうことがあるんです。

──アメリカでもエンターテインメント作品に社会的なメッセージが入っていることが多い印象です。

井上 マーベルは映画を通じて「9.11以降の正義とはなにか?」みたいなことを観客に問うているわけですよね。いまやっているDCの『ジョーカー』だってそうです。格差や緊縮財政の問題を描いている。
 僕たちの作る規模の映画はそういう問題に関心のあるしか観に来ません。届く人にしか届かないんです。トランプ大統領の支持者が『ジョーカー』を観に来てそのメッセージを読み取れるかは分かりませんが、それでも「届かない人」にまで届けようという意志は明解です。

──エンターテインメントには政治や社会問題に関心のない人にもメッセージを届かせる力があると思います。

井上 我々は映画をつくっている側の人間だから、映画の力を過大評価しているのかもしれないですけど、やっぱり映画には本や演劇にはない力があるはずなんです。
 1本映画をつくると、観にくるお客さんもそうだけど、それ以外の人にも届かせることができます。たとえば、新聞、テレビ、ラジオ、ネット記事などで映画が紹介されれば、映画を観ない人にも映画の描くテーマは伝わるし、映画から波及するかたちでブックフェアが行われたりイベントが企画されたりもしますよね。

日本映画界全体が立ち上がるべき
──これから日本の映画界はどうしていくべきなのでしょうか?

井上 日本アカデミー賞などで誰かがこの映画祭で起きたことに抗議するため立ち上がるかどうかですね。
 アメリカだったらおそらく、そうなってます。アカデミー賞の受賞スピーチでどれだけの政治的発言を見てきたことか。韓国では釜山国際映画祭のときに立ち上がった。
 でも、いまの日本ではそうなっていない。なんでしんゆり映画祭と同じ時期に開催されている東京国際映画祭の事務局はこの件について声をあげないんだろうって思いますよ。いや、東京国際だけじゃない。他に数多ある映画祭のどこも声を上げない。映画人だって何人声を上げました? 日本映画監督協会だって日本シナリオ作家協会だって、未だに声明ひとつ出していない。
 こういう言い方は傲慢に聞こえるかもしれないけれど、もし若松プロの映画が出品されていない映画祭でこういうことが起こったら、上映ボイコットする映画が出てきたかどうか。ここまで問題が大きく報道されたかどうか。

──なぜ日本の映画界には危機感がないのでしょうか?

井上 映画は想像の産物であるはず。ならば、ちょっとだけ想像力を働かせて、これから起こることを想像して欲しい。いや、想像しなくても歴史を振り返れば、これから起こることは推測がつくはずなんです。「モボ・モガ」なんて言葉が生まれて大衆芸術が花開いた大正デモクラシーの時代から治安維持法成立までは何年も離れていません。
 これまで僕は、「このままでは表現の自由が奪われる」とか「共謀罪は現代の治安維持法だ」とか言ってきた。ただ、その一方でどこかいまの社会ではそんなことは起こらないと、正直、高もくくっていた。
 でも、いまの時代、これまで謳歌してきた自由がいよいよどうなるかわからなくなっている。
 すでに、権力が国民の意見を峻別し、差別と検閲をし始めているわけです。今回、川崎市がやったことはそういうことですよ。
 だから、ここで立ち上がらない映画関係者には「お前ら、ものをつくる資格ないよ」って言いたいぐらいですよ。

(取材、構成:編集部)

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このインタビューの翌々日(11月2日)に、しんゆり映画祭事務局は『主戦場』の再上映を決定、11月4日に上映され、若松プロも同日上映予定だった『止められるか、俺たちを』を復活上映した。このことについて井上氏に追加で話を聞いた。

井上 『主戦場』が上映されたことは素直に良かったと思いますし、映画祭事務局もよく決断したと思います。
 しかし、これをハッピーエンドにしてはいけない。今回は『主戦場』が上映決定していて中止になったから、問題になった。でも、これからはプログラムを決める会議の段階でこういう映画を上映したら、ああいう問題が起きるかもとその段階で切られるようになる可能性が大きい。表面に出ることなく、深く静かに潜航して、第二第三のしんゆり映画祭問題が起こっていく。こうなったら、どうしようもありません。だからこそ、映画に関わる人間も映画祭に関わる人間も、今回の問題を自分の問題と捉えて、ちゃんと見つめ直して欲しい。そういう考えを表現出来なくなってからでは遅いのです。
 まずは、第三者委員会じゃないけれど、今回どういうことが起こり、どういう判断がなされたかを目に見える形で公にしなくてはならない。まずはそこからです。

北大教授「中国で拘束」で思い出される、中国国営放送美人キャスターの不審死

 北海道大学の40代の日本人男性教授が9月に北京を訪問した際、中国当局に拘束されたことがわかった。具体的な容疑については公表されていないが、男性は過去に外務省や防衛省防衛研究所に勤務歴があり、そうした経歴からスパイ疑惑を持たれた可能性が高い。

 中国当局は2015年以降、スパイ行為に関与したとして、少なくとも邦人14人を拘束し、うち8人に実刑を言い渡している。

 一方で、中国人でありながら国外に機密情報を流出させていたとの疑惑の目が向けられている女性がいる。彼女はすでに不審な死を遂げているが、11月18日の4周忌を前に、再び話題となっているのだ。

 方静氏(享年44)は北京広播学院を卒業後、23歳で中国中央テレビ(CCTV)に入局。アナウンサーとしてのキャリアをスタートさせた。堪能な英語力などが評価され、人気ドキュメンタリー番組『焦点訪談』の司会に抜擢され、その後も『中国新聞』『東方時空』『国際観察』などの看板番組のキャスターや司会者を歴任し、確実にキャリアを積み重ねていった。

 豊富な知識や清廉潔白で実直な報道姿勢は中国国内でも高く評価され、テレビ司会者だけでなく慈善活動などにも積極的に参加するようになり、自身で奨学金機構を立ち上げ、多くの子ともたちの学習支援を行うなど、公私ともに彼女の人気は高まっていった。

 そんな中、突如”スパイ疑惑”が持ち上がる。元同僚で、当時北京大学でメディア学部の準教授だった周阿憶氏が2009年6月9日、自身のブログに「方静はスパイだったことがわかった。彼女は軍事関連の情報を入手するため、CCTVで『防務新観察』(中国の軍事や科学をテーマに取り上げる番組)などの番組で司会者をしていたようだ。方静は5月12日にスパイ容疑で当局から取り調べを受けていた」と暴露したのだ。

 これに対して方静氏も急遽ブログを開設し、「ある人がブログ上で悪意ある誹謗中傷の記事を掲載しましたが、まったくの事実無根であり、法的手段をとる準備をしています」と反論した。しかし、この頃から方静はテレビ出演がなくなっていたこともあり、疑惑が深まる中、同12日には中国共産党系メディア・人民日報が「CCTVアナウンサーの方静は、台湾へ中国の機密情報を渡していたスパイ行為の容疑のため、中国国家安全部で調査を受けている」という記事を掲載したことで、大騒ぎとなる。

 しかし、2日後の14日、方静は同局の人気番組『世界週刊』の司会者として突如カムバックを果たす。中国メディアのインタビューに応じた方静氏は、「体調が悪く、一時的に仕事ができなくなっただけで、スパイ行為で取り調べを受けたというのはデマである」と、スパイ疑惑を完全否定している。その後は、スパイ疑惑などなかったかのように同局の看板番組などを歴任し、11年からは同局の管理職として裏方での活躍が増えていったという。

 方静氏は15年11月18日、胃がんで死去したのだが、翌月その死をめぐり、衝撃のニュースが報じられた。実は、台湾で亡くなっていたことが明らかになったのだ。死亡時に台湾にいた理由は現在も明らかにされていないが、同時期に中国国営メディア・環球網は、「15年10月に、中国と台湾の間で捕虜の交換を行った」と報じていたことから、ネット上では、「交換され、台湾に渡った捕虜こそが、まさに方静氏だったのではないか」と、ささやかれているのである。

 方静氏の死には多くの謎が残されている。彼女のプライベートについて、同僚たちは誰も詳しいことを知らず、彼女の母親でさえも台湾に渡っていたことを知らなかったという。

 ネット上では、彼女の4周忌を前に「中国国籍を持つ者が台湾に移住するのは容易ではない。台湾政府と敵対する中国政府の宣伝機関である中国中央テレビの職員となればより一層だ。何か特別な事情があったとしか思えない」「末期のがん患者が親にも知らせず台湾へ旅行に行くとは思えない」といった疑惑が再燃しているが、真相はやぶの中である。

(文=広瀬大介)