「桜を見る会」問題のさらなる発火点に!? 今井絵理子氏との写真流出、沖縄「半グレ」事情とは?

 炎上が続いている「桜を見る会」をめぐる騒動。安倍晋三首相の後援会によるニューオータニでの“接待”疑惑や昭恵夫人の「推薦枠」の存在など、安倍首相が会を私物化していたことを示す状況証拠が次々と明らかになっている。さらに、野党が要求する招待者名簿を破棄するという証拠隠滅の意図をうかがわせるような政権の動きにも批判が集まっている。そんななか、一連の騒動の中でも大きな注目点となっているのが、会への反社会的勢力の介入だ。

「悪質なマルチ商法を展開していたとして警視庁が強制捜査に踏み切った『ジャパンライフ』の会長が招待されていたことがすでに明らかになっていますが、この件については、会への招待状が会員集めに悪用されていたという疑いまで出ています。会にはこの会社以外にも素性の知れない輩が出入りしており、その中には警察当局が『半グレ』としてマークする連中もいたという話です」(全国紙社会部記者)

 永田町では、会に出入りしていたとされるその「半グレ」の素性を暴露する怪文書も出回り、マスコミ関係者を騒然とさせた。この件は一部週刊誌でも報じられたが、その余波を受けたのが東京から遠く離れた沖縄である。

「怪文書に登場した『半グレ』とされる人物が活動拠点としていたのが沖縄だったからです。実は、沖縄ではいま、こうした『半グレ』と呼ばれる連中が勢力を伸ばしており、地元の沖縄県警が警戒を強めています。県警はこの『半グレ』について極秘裏にリストまで作成し、その関係先や資金源などの洗い出しを進めているようです」(同)

 沖縄の「半グレ」事情ににわかに注目が集まったことで、とばっちりを食ったのが、沖縄選出の今井絵理子参議院議員だ。アイドルグループSPEEDの元メンバーで、2016年に自民党から比例区で出馬し、見事初当選を果たした今井氏。「安倍チルドレン」のひとりとしても知られる彼女の地元での”黒い交際”が週刊誌のターゲットになったのだ。

「県警がマークする『半グレ』の組織は全部で3グループとされています。そのひとつのリーダー格と目されている男性と一緒に写る写真が誌面に掲載されたのです。この人物は過去に監禁事件を起こしたり、暴力団とのつながりも指摘されるいわくつきの人物。彼が取り仕切っているとされるグループは、ヤミ金などの非合法なシノギをする一方で地下格闘技イベントを主宰。正規の事業も展開し、地元政治家に献金を重ねるなど、表と裏の顔を併せ持つというのが県警の見立てです」(同)

 関係者によると、今井氏と写真に収まっている男性が所属するグループはメンバー数が十数人。県内で活動し、外国人向けの民泊事業や居酒屋経営などで利益を得ているとされる。「桜を見る会」への出席が取り沙汰された人物が所属するグループは20~30人ほどが所属し、宮古島や石垣島で飲食店やダイビングショップなどを経営し、資金を得る一方、県内の暴力団とのつながりも指摘されている。残りのひとつが本島中部を拠点に40数名が在籍するグループで、メンバーが中古車販売や飲食店、レジャー産業、金融業、建設業を営む一方で、県外の暴力団や半グレグループと連携し、振り込め詐欺の「出し子」や「受け子」の供給源になっているとの指摘もあるという。

「沖縄はいま、インバウンドブームに乗って観光業が絶好調。加えて地価の上昇率も日本一となっており、県警がマークする半グレ以外にも、県内外からさまざまな勢力が進出してきているのです」(同)

 今後、さらなる騒動の発火点になる可能性もゼロではないようだ。

背景に脱ゆとりと一汁三菜の衰退⁉ 小学校で「給食時間の私語禁止」が広がるワケ

 平昌オリンピック時のカーリング女子チームがきっかけで話題となった「もぐもぐタイム」という言葉が今、全国の小学校で形を変えて使われている。給食の全時間および一部時間、私語を禁止する学校やクラスが増えており、「黙食」または「もぐもぐタイム」などと呼ばれているのだ。

 さらに、食べることに集中させるため、授業中と同じように机を黒板に向けたまま食べさせる学校もあるという。

 しかし、無言の給食時間は、児童たちにとって心理的ストレスになることもあるようだ。

「今年の5月ごろ、小学3年になったばかりの息子が、突然『学校に行きたくない』と言いだしたんです。理由を尋ねると、『給食の時間が苦痛』だと。息子によると、新しく担任になった先生の方針で、給食中の私語が禁止になったそうなんです。息子も含め、耐えられずしゃべってしまう児童も多いようで、そのたびに先生の怒号が飛ぶので、それがストレスになっているようでした」

 そう明かすのは、神奈川県在住の30代の主婦、Aさんだ。

「すぐに息子の担任に私語禁止ルールの意味について問い合わせました。すると、『給食時間内に食べきれない児童が多く、十分な栄養摂取をさせるために仕方なく私語禁止にしている』ということでした。息子の小学校の給食時間は25分。配膳の時間を引くと、15分くらいしかないので致し方ない。私が小学生だった時は、給食時間は授業と同じ45分あったと記憶していますが……」(同)

 今の時代、給食時間が25分の小学校は珍しくはないようだ。その理由は「脱ゆとり」とも関係している。2011年に施行された新学習指導要領により、小学校の授業時数は6年間で5645時間となり、旧来より278時間も増加したのだ(※2020年度の改訂により、現行より140時間増えて5785時間となる)。それにより、多くの小学校では、休み時間や給食時間の削減を余儀なくされたのだ。

 一方、都内の小学校で教頭を務める50代の教員は、私語禁止にせざるを得ない別の要因を指摘する。

「子育て世帯に増えている共働き核家族にとって毎食一汁三菜を用意することは難しく、毎食、丼物や麺だけといったワンディッシュメニューという家庭も少なくない。そうした環境に育った児童は、複数のおかずがある給食を食べるのが苦手というケースもある。友達とおしゃべりをしながらだと、時間内に完食できない児童も少なからずいる。そうした児童の親から『給食を完食させてもらわないと、子どもが栄養失調になる』と、お叱りを受けることもある」

 現場にはそれなりの事情があるようだが、給食時間の私語禁止については「食事は楽しく食べるもの」「給食はクラスメイトとの交流の時間なのでは?」「まるで刑務所みたい……」と、SNSでは批判の声も上がっている。

 ちなみに、食事中に会話をしている児童の方が健康というデータもあるようだ(出展:「栄養学雑誌vol.51」)。

 学校給食法第2条にある「学校給食の目標」には「学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと」という一文がある。子どもたちが「つまらない…」と感じてしまう私語禁止の給食で、果たして明るい社交性が身につくものだろうか? および学校関係者は、給食の目的が栄養補給だけではないことを思い出すべきではないか。

沢尻エリカ、尿検査「シロ」――「10年前から薬物使用」の自白を“覆す可能性”を弁護士が解説

 11月16日、合成麻薬MDMAを所持していたとして、麻薬取締法違反容疑で逮捕された沢尻エリカ。2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で、重要な役どころにキャスティングされるなど、名実ともに日本を代表する女優と言える沢尻の薬物逮捕は、世間を激震させた。

 2012年には「週刊文春」(文藝春秋)に大麻使用を詳報されていた沢尻だが、警察の取り調べに対して「(逮捕時に押収された)MDMAは数週間前にイベント会場でもらった。これまでに大麻やLSD、コカインも使った」「10年以上前から違法薬物に手を染めていた」という趣旨の供述をしているそう。ネット上では、その常習性の高さに驚きの声が上がっていたが、一転して、尿鑑定の結果は「陰性」に。毛髪鑑定も残されているものの、「不起訴になる可能性が出てきた」とにわかにささやかれるようになった。

 使用の供述はしているが、検査結果は「シロ」――そんな状況に対し、『バイキング』(フジテレビ系)のMC・坂上忍は、11月22日放送回で、今後、沢尻が供述を覆す可能性について言及し、「今までの供述を貫いてくれた方が」と語っていたが、果たして、供述の変更に見込みはあるのだろうか。弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

自白だけでは有罪にならない

 尿検査「陰性」の一報が伝わった途端、「不起訴」の可能性が高まったと一斉に報じられるようになった沢尻。そもそも「不起訴」とはどういったものなのだろうか。

「不起訴とは、検察が刑事裁判を始めないことを言います。その理由としては『(1)そもそも罪が成立しなかった』『(2)罪は成立するけど、被疑者が高齢である、反省している、また被害額が少ないなどの点を考えた末、起訴しない』『(3)罪は成立するけど証拠が薄い』が挙げられます」

 沢尻は、10年以上前からさまざまな薬物を使用してきたと自白しているだけに、ネット上では「いくら検査がシロでも、不起訴にはならないのでは?」といった疑問の声も出ているが……。

「実は、刑事裁判では、『私は罪を犯しました』という本人の自白だけでは、有罪にはできません。刑事訴訟法319条2項『被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない』とあります。昔々、捜査機関が、自白を得るために、逮捕した人物への拷問を繰り返したことがあったため、自白以外のほかの証拠がなければ有罪にはしません、というルールが確立したのです。なので、『使用した』という自白があっても、尿検査で陽性となるなどの『客観的証拠』がない限り、有罪にはできないのです」

 では、検査結果を受け、沢尻が供述を覆す可能性についてはどうだろうか。ネット上では、「変えない方が、心証がいい気もするけれど」との指摘もあるが……。

「供述を変えることは、民事においても刑事においても、司法の世界ではそれだけで『信用性がない』と判断されます。要するに、『使用した』→『使用してない』と供述を変更する場合、結局、『供述を変えるということは信用ができないので、最初の言葉通り使用したんだろう』と捉えられてしまうのです。なので、彼女が『供述を変える可能性は低い』と考えられるのではないでしょうか」

 「陰性」と判明した今だからこその“たられば”だが、沢尻がもし取り調べにおいて、初めから「使用していない」と主張していれば、「『不起訴』の可能性は高かったでしょうね」と山岸氏。しかし「逆の見方として、『持っている』という自白と、『身辺から違法薬物が発見された』という『客観的証拠』において、起訴された可能性もあります」という。

 今回の逮捕により、沢尻は、『麒麟がくる』ほか、2本のCMを降板になっている。その違約金・賠償金は莫大であることが予想される。

「もともと日本は、違法薬物に対し、とても厳しい姿勢の国。これに加えて『芸能人による違法薬物使用』が、社会的に与えた影響は計り知れないだけに、その社会的制裁は重すぎることはないのではないでしょうか。自分で自分の芸を潰してしまうというのは、こういうことなのだと、しっかり彼女自身に認識させるべきだと、私は思います」

 沢尻の弁護団には、「無罪請負人」として知られる敏腕弁護士が起用されたとも報じられる中、果たして、この事件は、今後どんな展開を見せるのだろうか。

ミクシィが「渋谷スクランブルスクエア」に移転 mixiはすっかり過去の遺物に……ミクシィの現在

【おたぽるより】

 気がついたら、まったく別の会社になっていた。11月1日に開業し、渋谷の新たなランドマークとして話題になっている「渋谷スクランブルスクエア」。地上47階建ての建物には多くの企業がオフィスを移転する予定だ。

 そんな最先端のビルにオフィスを構える企業に含まれているのが、株式会社ミクシィである。同社はSNSの先駆けであるmixiを運営する企業。現在もmixiのサービスは続いているものの、TwitterやFacebookが全盛期の現在では、過去の遺物となっている感がある。

 いったい、なんで利益を上げているというのか?

「『モンスターストライク』とかやってます? もう同社の主力はスマホゲーム事業ですよ」(ゲーム業界関係者)

 プレイしている人も意外に意識していなかったりするが、『モンスターストライク』は現在のミクシィの事業の柱のひとつ。このタイトルは2013年10月にリリース。翌年には長らく同種作品のトップにあった『パズル&ドラゴンズ』を抜き、それまで低迷していた同社の業績を一気に回復させている。公式情報によれば、今年10月現在で世界の累計利用者数は5200万人となっている。

 なるほど、それならば新オフィスへの移転も不思議じゃないと思いきや、浮き沈みの激しいのがスマホゲーム業界。決して将来も含めて安泰とは言い難い。

「同社の売上高の半分は、エンタメ事業が占めています。とはいえ、モンストもすでにリリースから長くなり新規参入ユーザーは多くありません。なにより、モンストの次の作品を開発出来ていないのは致命的なのではないでしょうか」(前同)

 スマホゲーに頼ってはいけないと思ったのか、今年に入ってから競輪車券をネット販売する「チャリロト」や男子バスケットボールの「千葉ジェッツ」を子会社化しているミクシィ。今後は、どんな会社として生き残っていくのか。

(文=大居 候)

宇垣美里アナの柔軟剤CMは「下ネタ」なのか? P&Gの見解を聞いた

 フリーアナウンサーとして活躍する宇垣美里さんが出演するP&Gの柔軟剤「レノアビーズ メンズセレクション」のCMに、「下ネタで不快」という声が一部ネット上で出ている。どんなCMなのか。

 まずこのCMの背景には、柔軟剤「レノアビーズ」を男性たちにも利用してもらいたいというP&Gの意図があると考えられる。柔軟剤で良い香りのする「ビーズ男子」についての特設ページはこちらだ。

 11月1日から公開している「レノアビーズ メンズセレクション」の新CM「ビーズでモテキ」。映像では宇垣さんが「会社の先輩」という設定で、カメラに向かって話しかける。カメラは宇垣さんの「後輩」である男性の視点だ。

 CM冒頭で宇垣さんは「しよう、ビーズ男子」と言う。CMは2パターンあり、 1つは会社のオフィスで宇垣さん演じる先輩社員が後輩から資料を受け取り、目を通しながら「ん? どれ? 悪くないと思うよ」と評してから、「……その香り」とささやく。

 2つめは、仕事帰りらしきワンシーンで、雨の中を宇垣さんが「入れて~」と走ってきて後輩男性のビニル傘に入る。宇垣さんは何かに気づいたように「あ……好きかも……その香り」と笑顔を見せる。

 このCMで宇垣さんに割り振られたセリフが性的な表現を彷彿させるとして、「家族でみるのが気まずい」「CMで下ネタを流すのは止めてほしい」など、批判的な意見が一部から出ている。

 レノアビーズを販売するP&Gジャパンは、どのような意図でCMを製作したのだろうか。広報部の担当者に取材をしたところ、指摘されているような性的な意図はないという。

<弊社の調査では、男性の印象に対して、「香り」についても重要視する女性が多く、その中でも特に、「柔軟剤の香り」への支持が高いことが分かっております。柔軟剤は男女関わらずお使いいただける製品ですので、本CMではその調査結果をベースに、より多くの男性のお客様にも柔軟剤をお試しいただきたいと考え、制作いたしました。そのため、性的な意図は、本CMにはございません>

 確かにこのCMには確信犯的な「性的表現」があるわけではなく、いささか過敏とも言える今回の反応。しかし過去の事例の積み重ねが、消費者の不信感につながっていることは無視できないだろう。

過去には卑猥だとして公開中止になったCMも
 出演者のセリフが性的な表現に聞こえるとして批判、そして同時に「いいね」という評価の両方を受けたCMは少なくない。たとえば、2015年に放送された広瀬すずさんが出演する明星食品「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」のCM。これもカメラに向かって広瀬さんが会話をするというもので、広瀬さんはカップ焼きそばに付いているマヨネーズをかけた後、カメラに向かって「全部出たと?」と博多弁で疑問を投げかける。

 この「全部出たと?」というセリフが話の流れからは不自然であり、「わざと下ネタを入れた」という指摘が多くあった。その後、同CMは問題のセリフを「好きな人おると?」に差し替えている。前述のように、不適切ではないかと指摘する声だけでなく、このCMを「エッチで可愛くて良い」と表する声もあったことを記しておきたい。これは好評価があったから良いCMなのだという意味ではない。良くも悪くも幅広い消費者層に「下ネタ」だと解釈されたということだからだ。

 2017年に公開されたサントリーのビール「頂」のCMも、わざわざ卑猥なセリフを言わせているとして批判を浴び、公開を中止している。このCMも女性たちがビールを飲みながらカメラに向かって喋りかけるというもので、「肉汁いっぱい出ました」「お酒飲みながらしゃぶるのがうみゃあ」「コックゥ~ん! しちゃった」などといったセリフが登場した。

 なお、明星食品もサントリーも、そういった意図はなかったという。

 また壇蜜さんを起用した仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会によるPR動画も炎上した。2017年7月に仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会が観光キャンペーン「仙台・宮城【伊達な旅】夏キャンペーン2017」の一環として制作したPR動画広告で、秋田県出身のタレントである壇蜜さん(役名:お蜜)を起用し、夏の暑さにバテたゆるキャラ(むすび丸)を「涼しい宮城へお連れいたしましょう」と宮城名物を紹介する内容だった。

 壇蜜さんはずんだ餅を放り投げて「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」、牛タンをあ~んして「肉汁トロットロ、牛のし・た」、「え、おかわり? もう~、欲しがりなんですから」といったセリフがあった。動画の視聴者からは、PR動画として適切かとの指摘が相次いだ。

 前述したように、CMのセリフが性的な表現を彷彿させることに対して「面白い」「攻めている」と評価する声もある。しかし、男性をターゲットにした商品やキャンペーンは、美しい女性によるセクシーなアピールが有効だという戦略があるとしたら、その手法は男性消費者も女性消費者もバカにしていないだろうか。

 また、「レノア」CMに関して言えば、先輩女性社員が後輩男性社員の「匂い」に言及することがセクハラではないかという観点もあっていい。別の企業の男性向けスキンケア商品で、女性秘書が「モテる男は肌が違う」といった指南をするCMもあるが、これも同様だ。こういったCMを見て特におかしいと思わないという人たちも、性別が逆だったら強い違和感を覚えないだろうか? 女性から男性へのセクハラはOK、などという歪な線引きはあってはならないだろう。

電車内でのベビーカー利用は「ルール化すべきでない」――ネット上の論争が見落としていること

 ベビーカーで公共交通機関を利用する際、肩身の狭い思いをする人が後を絶たない――ここ何年か、そんな話をよく耳にする。乗客から「邪魔だ」などと直接文句を言われたり、舌打ちされたといった親の体験談がネット上で散見され、親たちへの共感や同情の声が上がる一方、「混雑時にベビーカーで乗って来るのは避けるべき」「スペースを取るからベビーカーは畳んで」「ベビーカー利用者のマナーがなっていないのでは」といった意見も寄せられるなど、“論争”に発展することも珍しくない。

 そんな中、7月31日から、都営大江戸線で「子育て応援スペース」を設けた車両が試験導入されていることをご存じだろうか。これは、市民団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」が小池百合子東京都知事と面会し、電車や地下鉄における「子育て応援車両」設置を求める要望書を提出し、実現化されたものだが、実施の告知がされると、ネット上ではこれまた賛否両論が飛び交うことになった。

 大江戸線の「子育て応援スペース」導入開始から4カ月がたとうとする現在、果たして東京都交通局には、どのような反響が寄せられているのだろうか。また今回、「NPO法人せたがや子育てネット」代表理事、「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」理事の松田妙子氏に、子育てをする人たちがストレスなく、公共交通機関を利用できる社会になるために「必要なこと」は何か、話を聞いた。

大江戸線の「子育て応援スペース」に感謝の声

 現在、大江戸線の車両全58編成のうち3編成の3号車と6号車に導入されている「子育て応援スペース」。車内には、子どもに人気のキャラクター「きかんしゃトーマスとなかまたち」を使用した装飾が施されているが、東京都交通局の公式サイトによると、「小さなお子様連れのお客様だけでなく、お年寄りや車いすをご利用の方など、どなたでもご乗車いただけるスペースです」とのこと。スタートから4カ月弱、どのような「お客様の声」が寄せられているのだろうか。

「『子どもが騒ぐのではないか』といった声も一部ありましたが、『非常に素晴らしい取り組み』『子育て世代としては本当にありがたく感謝』『「子連れで電車に乗っても問題ないよ」と背中を押してもらったようで安心して電車に乗れた』など、多くは感謝や賛同といった好意的なご意見をいただいています」(東京都交通局)

 また、実際の利用者に関しては「誰でもご利用いただけるスペースとしてご案内しておりますので、小さなお子様連れのお客様だけでなく、お年寄りや車いすをご使用の方、通勤中のサラリーマンなど、さまざまなお客様にご利用いただいています」(同)という。

 なお、「子育て応援スペース」は、「来年3月までに7編成に拡大する方針で現在準備を進めているところです」(同)とのこと。大江戸線に限らず、首都圏のJRや地下鉄では、各車両に、車いすやベビーカーを置ける「フリースペース」が設置されるようになるなど、鉄道会社側の子育て環境への配慮は、じわじわと広がりをみせているようだ。

 そんな現状を、国土交通省の「子育てにやさしい移動に関する協議会」において、ベビーカー利用をしやすい環境づくりに取り組んできた松田妙子氏はどのように見ているのだろうか。

「電車でベビーカーを利用する親たちの多くは、『邪魔になっていないかな』と、肩身の狭い思いをしたり、『申し訳ない』と周囲に謝り倒したりしているものです。ほかの乗客の目が気になるので、『胸に「私が子どもを連れて外出する理由」を貼っておきたい』なんて言うお母さんもいましたね。そんな人たちにとって、大江戸線の『子育て応援スペース』設置のような試みは、もちろんウェルカムです」

 また、「子育て応援スペース」という名前がついているものの、「誰でも利用できる」点を、松田氏は「いいなと思っている」という。

「『子ども連れ専用車両をつくってほしい』という人もいますが、私は基本的に反対。『専用』だと、ほかの乗客にハレーションが起こりやすくなりますし、またベビーカー利用者が専用車両以外の車両に乗りにくくなることも考えられます。そうなったら本末転倒ですよね。なので、誰でも乗れる子育て応援スペースや、どこの車両にもあるフリースペースの方が望ましいと思っています」

 さらに、「みんなで子どもを育てていく社会」を理想とする松田氏にとって、専用車両で子どもを「隔離」することは、子育てへの理解を妨げる要因になってしまうのではないかと、考えているそうだ。

「『あーでもない、こーでもない』と言いながら子育てする人たちの姿を“見せる”ことが大事だと思っています。赤ちゃんはどうやって泣くのか、子ども連れの外出にはどんな困り事が出てくるのか……そういったことを、子育てをしていない人にも知ってもらいたいですし、それは、これから子どもを育てる世代の育成にもつながるのではないでしょうか。また、電車内であたふたしている子ども連れの人を目にした人が、手助けするといった状況が生まれることも期待できます。それに今後、超高齢社会となる日本では、子どもは『マイノリティ』になっていきます。街の中に、子どもの姿が当たり前のように“ある”という状況でないと、その存在が社会の一員として“勘定”に入れてもらえなくなり、子どもが暮らしにくい環境になっていくのでは。そうならないためにも、やはり『隔離』はよくないと思いますね」

 ネット上では、よく公共交通機関でのベビーカー利用をめぐって論争が起こる。メディアの中には、炎上が激化しているように伝えるところもあるが、一方で松田氏は理解が進んでいると認識しているようだ。

「もともと、鉄道でのベビーカーの安全利用に関する取り組みは、『子育て応援とうきょう会議』という会議体が、10年ほど前にスタートさせました。当初は反応が悪く、うち(せたがや子育てネット)のホームページにも、『親と子どもを甘やかしている』といった声が寄せられることも多かったのですが、最近では、表立ってそのようなことを言う人は減ってきたような印象です。確実に電車内でのベビーカーの利用は増えていると思います」

 2014年には、国交省が、公共交通機関やエレベーターなどで、ベビーカーを利用しやすくするためのマーク「ベビーカーマーク」を制定し、「車内でベビーカーを折り畳まなくてもよい」と呼びかけた。その影響もあってか、「今では『ベビーカーは畳まなくていい』という風潮になってきた」という。

 しかし、こと「混雑時のベビーカー利用」に関しては、ネット上で苦情を目にする機会は少なくない。

「子ども連れで移動する人にとって、『満員電車にベビーカーで入っていく』って、なかなかできないことだと思うんです。なので、そういう人を見かけたら、『何を考えているんだ』『非常識』と怒るのではなく、『そこまでしなければいけない理由って何なのだろう?』などと、気にかけてあげるような空気が生まれたらいいなと感じます。積極的に声をかけてあげるべき、というわけではなく、『大丈夫だよ』『みんなで一緒に子どもを育てていこう』という空気をつくりたいんです」

 ネット上には、「車内が混み合っているときに、ベビーカーに何度も足を踏まれた」「ほかの乗客のスペースを奪うように、ベビーカーをグイグイ押し込んできた」など、「マナー違反」を厳しく指摘する声も多数上がっているが、「そういうとき、『もしかしたら子育てにしんどさを抱えているのではないか?』などと、周りが心配してあげるような空気があるといいなと思います」という。

「現代の、特に東京では、『周りに知り合いがいない』中で子育てをしている『アウェイ育児』の人がたくさんいます。まったく知らない大勢の乗客をかき分けて、ベビーカーで電車移動をしなければいけない状況にいる人に、優しく寄り添うような空間になってほしいですね」

 例えば、満員電車でのベビーカー利用者に対して、そのほかの乗客が「乗車時間帯の変更」を提案するにしても、「迷惑だから時間をずらせ」と怒るのと、「時間をずらすと、もう少し居心地よく移動できるかもしれないよ」と語りかけるのとでは、受け取り手の抱く印象はまったく異なるだろう。松田氏は混雑時のベビーカー利用問題をめぐる「対立」を煽るような風潮、またその際、「お父さんもおじいちゃんもおばあちゃんも子ども連れで移動するのに、なぜか『お母さんの問題』のように捉えられている点」も疑問だという。

「それから、電車内でのベビーカー利用のルールを決めようという話でもないんです。ルール化してしまうと、例えば、車いすとベビーカーどちらを優先させるべきかといった話になる。この『優先』という言葉が出てきた瞬間、『順位付け』や『評価』が必要となり、それでは誰かが肩身の狭い思いをすることになってしまいます。子連れの人だけに優しくしてほしいというわけではなく、いろいろな事情を抱えた人たちが、同じ空間にいる際、お互いにちょっとずつ配慮し合えるようになるといいよね、ということなんです」

 さらに、ベビーカー問題を「電車内だけのマナー問題」ではなく、もっと広い視点で考えていきたいと松田氏。「子連れで遠出しなければいけない状況そのものをなくすことはできないか」という観点から、「誰もが家から徒歩で通える保育園に入園できる仕組みをつくれないか」「子育中は『在宅勤務可能』という企業を増やせないか」「子どもの検診を近場で受けられるようにできないか」など、「子育て環境をどう変えていくかの問題」として捉えているという。

 最後に松田氏は、公共交通機関でのベビーカー利用問題は、「今後のための練習問題」であるという側面を指摘してくれた。

「超高齢社会になる中、高齢者の方たちが、シルバーカーで乗車してくるという時代が来るかもしれません。また、直近では、来年の東京五輪開催期間に、多くの外国人の方が電車を利用すると思います。そういったさまざまな事情を抱える人や、文化の異なる人が同じ車内にいる際、どのように配慮し合えばいいか――ベビーカー問題はそのためのいい『練習問題』なのではないかと感じますね」

 現在、「世田谷区×WEラブ赤ちゃんプロジェクト」を推進しているという松田氏。これは、赤ちゃんの泣き声を「気にしないで、大丈夫だよ」と温かく見守るメッセージを表明することにより、子育てを応援していくという世田谷区のプロジェクトで、その一環として「泣いてもいいよ!」ステッカーを地域の人に配布しているという。ステッカーをスマートフォンなどに貼ることによって、自分の思いを伝え、子育てする人たちの気苦労を軽減させられれば……という目的があるそうだ。「みんなで子どもを育てていく社会」のために、こうした取り組みに参加してみるのもいいのかもしれない。

松田妙子(まつだ・たえこ)
「NPO法人せたがや子育てネット」代表理事。「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」理事。大学で社会福祉を学んだ後、国立総合児童センター「こどもの城」に勤務。2001年東京で子育て支援グループ「amigo」を立ち上げ、産前・産後中心の支援を地域で展開。現在、子育て支援者の養成や地域のネットワーク化に関わる子育て支援コーディネーターとして活躍。2男1女の母。
「NPO法人せたがや子育てネット」
「世田谷区×WEラブ赤ちゃんプロジェクト」

NHK『ねほりんぱほりん』インフルエンサーの実態――SNSで生まれる“闇”“マウント”の背景とは

11月6日・13日に前後編で放送されたNHK Eテレ『ねほりんぱほりん』が話題となっている。「インフルエンサー」というテーマで、前編「驚きの『いいね』テクニック大公開!」後編「光と闇!マウントを取り合う女たち」と2回にわたり放送された内容について、ITジャーナリストで10代のSNS利用や情報リテラシー教育を専門とし、『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)を刊行した高橋暁子氏が考察する。

 『ねほりんぱほりん』は、山里亮太さんとYOUさんが声を務めるモグラのぬいぐるみ「ねほりん」と「はぽりん」が聞き手となり、ブタのぬいぐるみに扮したゲストが赤裸々トークを繰り広げる番組だ。

 インフルエンサーとは、SNS内で影響力を持ち、企業から依頼を受けて商品などを写真に撮ってSNSに投稿する人のことで、紹介料や商品などをもらうことで仕事として成り立っている。「普通の生活をしている人が、1枚の写真をSNSに投稿するだけで10万円稼ぐ」こともできるわけだ。インフルエンサーとして番組に登場したゲストは、Instagram中心の20代と30代の女性がそれぞれ1名、Twitter中心の20代女性1名の計3人。彼女たちのインフルエンサーの実態や作戦をバラす、あけすけなトークが面白くも怖い。

替えがきく自覚によるマウンティング

 番組を見た素直な感想は、「マウント怖い」「闇が深い」。特に後編は、ゲストに登場した3人の女性たちによるリアルなマウンティングが生々しく、今にもつかみかかりそうな一触即発の雰囲気だった。では、なぜ彼女たちはマウントを取ろうとしており、「自分以外はすべて敵」と言い切るのだろうか。

 それは、彼女たち自身が今の地位が安泰とはまったく感じていないからではないだろうか。人の心をつかむことには多少秀でているけれど、芸能人ほどではなく、あくまで計算とか努力でつかんだ地位であり、運の要素が大きいことも自覚している。

 つらいことがあっても必死に頑張れるのは、高い報酬のためだけではなく、ちやほやされて特別扱いされることで得る満足感が高いからだ。美容系のイベントで配られるお土産の量でフォロワー数がわかるため、ほかの人より多くもらえると優越感があると話していた。けれど、「インフルエンサーは誰でもなれる」と当人も言っている通り、自分が非常に中途半端な存在であり、いつでも替えがきく存在ということがわかっている。だからこそ必死だし、他人を押しのけて少しでも上に行こうとしているのだろう。

 自分もフリーランスだから、彼女たちの心情は多少なりとも理解はできる。選ばれなくては仕事がこなくなり、こなくなれば廃業となる。ただしインフルエンサーとフリーランスが大きく異なるのは、彼女たちにとっては自分以外すべて敵だが、フリーランスでは同業者はむしろ協力者という点だ。フリーランスにも将来への不安はあるが、彼女たちの抱く不安はその比ではないだろう。

 インフルエンサーはフォロワーそれぞれにコメントを返したりできるため、自らの努力次第で信用度が高くなる。つまり、エンゲージメント(※SNSの投稿に対するフォロワーの反応)が高く、口コミの拡散力が高いのだ。「全米が泣いた」よりも「インフルエンサー◯◯ちゃんのオススメ」のほうが効果があり、それ故にインフルエンサーが仕事として成り立つというわけだ。

 彼女たちは「ケーキを紹介して」と依頼された場合、いくらまずくてもけなすことはできない。そこで、「盛り付けが斬新」「内装がかわいかった」などと取り繕うという。また、「『子どもにも食べられる辛さ』と言って」という依頼がきた場合も、実際に辛すぎると思っても「辛すぎる」「マズい」は一切書けないので、「お子さんでもいける子はいけるかも」などと書くそうだ。

 10代の子たちに聞くと、口々に「広告は信じられないから、買い物の前には絶対にSNSで口コミを調べる。はずしたくないから、口コミで評判がいいものを買う」と言う。その子たちがこれを聞いても、本当にSNSの口コミは信じられると言えるだろうか。いくらコメントを返してくれていい人に見えても、彼女たちはインフルエンサーであり一般人ではないのだ。

 以前、ある口コミサイトで、評価がお金で買えるということが話題となった。お金の影響が一切ない純粋な評判を知ることなんて不可能かもしれないと感じてしまった。

インフルエンサービジネスは時代のあだ花か

 英王立公衆衛生協会(RSPH)によると、若者の心の健康に一番悪影響を与えるSNSはInstagramとされている。

 Instagramのインフルエンサー二人は、何をしていても「(投稿するための)写真撮らなきゃ」と思うという。プライベートがなくなり、感動もなくなるそうだ。まさに、Instagramを使うのではなくてInstagramに使われている。

 Twitterのインフルエンサーも、「フォロワーが増えるにつれてエゴサーチと悪意が増える」という。自分の名前で検索して悪口をずっと見てしまうそうだ。どちらもまったく精神衛生上よくないことは明らかだ。

 インフルエンサーになるためには、計算と努力をすればなんとかなりそうだ。しかし、今回の放送を見て、「インフルエンサーにはなりたくない」と思った方も多いのではないか。もちろん、インフルエンサーにも素晴らしい人はいる。しかし、インフルエンサービジネスは時代のあだ花なのかもしれない。

高橋暁子(たかはし・あかつきこ)
ITジャーナリスト。LINE、Instagram、Twitter等のSNS、10代のSNS利用、情報リテラシー教育が専門。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著書、メディア出演多数。

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嵐・二宮和也&伊藤綾子への誹謗中傷――弁護士が「ここまで書いたらアウト!」ラインを解説

 11月12日、嵐・二宮和也が結婚を発表した。ツイッターでは一時、「#二宮の唯一の欠点は伊藤綾子」がトレンド入りするなど、結婚相手である元フリーアナウンサー・伊藤綾子への批判がネット上で噴出している。

 「綾子死ね!」「匂わせクソ女!」といったものから、「伊藤綾子が妊娠してないってそんなはずあるかよ」「不妊治療してたアラフォーBBAが初婚で妊娠3カ月とか下手すると流産しかねないし」など、不確かな情報や臆測での書き込みなど、ネットはまさに無法状態で誹謗中傷の嵐だ。

 しかし先日、タレント・川崎希へのネット中傷が話題になった。3年ほど前からネットでの嫌がらせを受けており、レストランなど行った場所ほぼすべてに、無銭飲食や窃盗をしていたなどの連絡を入れられたり、妊娠を発表してからは「嘘つくな」「流産しろ」といったメッセージが毎日届いていたという。こうしたネット上での嫌がらせに対して、川崎は発信者情報開示請求を行い、投稿者を特定。今後、民事・刑事の両面で、法的措置をとっていくことを明らかにした。

 このように、匿名でもネット上での誹謗中傷、嫌がらせの書き込みは法的に問題になり、訴えられることもある。そこで、ネットに何を書いたら問題なのか、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

 山岸氏は、「『何を書いたら』ではなく、『どんな気持ち・感情を持って書いたか』を考えると簡単です」と言う。

「腹が立った感情、『二宮を取りやがって』『うまくやりやがって』『ズルい』『悔しい』など、自分の思いを相手にぶつけることで、少しでも相手に対する否定的な感情やうっぷんを晴らそうとする。これらの言葉を書けば、大体の場合、誹謗中傷となります。そして、『BBA』や『クソ女』程度の書き込みなら侮辱罪(拘留や科料の罪)ですが、仮に妊娠が事実なら、具体的に『デキ婚がどうのこうの』と事実を書きながら誹謗中傷した場合は、名誉毀損罪(3年以下の懲役や50万円以下の罰金刑など)となります」

 では、もし伊藤が書き込んだ人を訴えた場合、慰謝料は、いくらくらいになるのだろうか?

「具体的な書き込みの内容(誰でも知っている情報か知らない情報か、知られたくない情報か、書き込みを何度も繰り返しているかなど)によります。ただ、ネットでの単発的な書き込み程度なら、50万~100万円程度でしょう。しかし、このようなネット上の誹謗中傷は『誰が書いたか』を特定すること自体が、書き込みをした人にとって、最もプレッシャーになります。なぜなら、ネット上の書き込みは、『どうせバレないだろう』というバカな動機によるからです」

 川崎の例にあるように、書くときは匿名のつもりでも、実際には誰が書いたか、調べればバレてしまう。ネットに書き込む行為は、いってみれば“丸見え”だということを、書く前に意識したほうがいいだろう。

 また、夫である二宮が、「伊藤への誹謗中傷で精神的苦痛を受けた」等の理由で、書いた人を訴えることは可能なのだろうか?

「婚約者・妻への誹謗中傷について、法的な精神的苦痛による損害賠償が認められるケースは極めてまれです。誹謗中傷を受けた本人が自殺してしまったようなケースに限られるでしょう」

 さらに山岸氏は、「これらの書き込みをした人は、よっぽど悔しかったのでしょうね」と、一部の過激なファンの気持ちを思いやりつつ、「『アイドルはみんなのアイドルだから』などと、あたかも高尚な動機を持っているかのような方々が多いようですが、単に『私の二宮を取りやがって』といったレベルの、醜い感情の表れにすぎません」と手厳しい。

 腹の虫が収まらないのは仕方ないかもしれないが、その怒りをネットに向ける前に、一度、冷静になる必要があるだろう。

「#KuToo」石川優実さんはなぜTwitterのクソリプに反応し続けるのか

 2019年10月、グラビア女優でライターの石川優実さんが、英BBCが選ぶ世界の人々に影響を与えた「100人の女性」に選出された。きっかけは今年1月、石川さんがTwitterで、女性が仕事中にヒールやパンプスを強要されることへの疑問をつぶやいたことだった。そのツイートは多くの女性たちの共感と「いいね!」を集め、「#KuToo」運動(「靴」と「苦痛」と「#MeToo」をかけ合わせた造語)が始まった。 

 6月、石川さんは1万8800の署名とともに「職場における女性に対するヒール・パンプスの着用指示に関する要望書」を厚生労働省へ提出。10月にはKDDIが社員の服装規定を廃止したことが報じられ、ソフトバンクやNTTドコモもパンプス以外の靴を認めるようになった。石川さんが発起人となった「#KuToo」は大きなうねりとなり、世の中を変えつつある。

 しかし一方で、石川さんのTwitterには「#KuToo」へのバッシングや、個人攻撃まがいのリプライ――いわゆる”クソリプ”が後を絶たない。「#MeToo」でも見られたようなフェミニズムへのバックラッシュともいえるが、石川さんは根気強く”クソリプ”に返答し続けている。Twitterのブロック機能を使って無視する、という選択肢もあるが、石川さんが立ち向かうのはなぜなのか。

 

『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』(石川優実著/現代書館)
 11月12日、その軌跡が記録された『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』(石川優実著/現代書館)が上梓された。同書には、石川さんとクソリプの闘いが100ページにもわたって収められていてまさに圧巻。石川さんはいったいどんな思いで、どんな理由で、この大量のクソリプに言葉を返してきたのだろう? ご本人に話を聞いた。

 

石川 優実(いしかわ・ゆみ)
1987 年生まれ。グラビア女優・フェミニスト。2005 年芸能界入り。2014 年映画『女の穴』で初主演。2017 年末に芸能界で経験した性暴力を#MeTooし、話題に。それ以降ジェンダー平等を目指し活動。2019 年、職場でのパンプス義務付け反対運動「#KuToo」を展開、世界中のメディアで取り上げられ、英BBC「100 人の女性」に選出される。

Twitterが可視化した「物言う女」への批判
――新刊『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』を上梓された経緯をお話いただけますか。

石川:版元の現代書館さんとは以前からお付き合いがあって、「女性向けのヌードがもっとあってもいいと思う」とお話したことをきっかけに、11月7日に発売された『シモーヌ(Les Simones)Vol.1』 で「ヌードになりませんか?」とお声がけいただいたんです。その撮影日が「#KuToo」の署名を厚労省に提出した直後くらいで、担当編集さんに「ブログやnoteなどとは違って収益につながらないのに、クソリプに返信して大変ですね」と声をかけていただき、その流れで「本を出しませんか?」というお話をいただきました。

――同書には膨大なクソリプが収録されていますが、クソリプへの応酬が起点となった本だったんですね。

石川:私が「女性にだけヒールのある靴を規定するのは女性差別だからやめて下さい」という活動を始めた時のTwitterの反応には、まさに女性差別が現れていて、それをクソリプたちが可視化してくれたなと思いますね。

――石川さんのTwitterを見ていると、まさに「#KuToo」がバックラッシュ(=男女平等や男女共同参画、ジェンダー運動などの流れに反対する運動・勢力)に遭っている状況がよく分かります。

石川:足を引っ張ろうとする人たちがたくさんいますよね。クソリプに書かれていることは、現状が変化しないでほしい、変わっていくのが怖いという人たちの気持ちでもあるのかなとも思うんですけれども。

――「ハッキリと物言う女」への批判が、石川さんにも向けられているように見えます。

石川:2017年に「#MeToo」にからめてグラビア時代の性接待の強要のことなどをnoteに書いた頃は、私もまだ自分のことを責めるような気持ちがあって、「私も悪かったんです」という感じで、謙虚に書いていたんです。ただ、今年になって「#KuToo」を始めたときは、それから時間が経っていたこともあって、態度が結構大きくなっていたんですよ(笑)。

 「#MeToo」の後、フェミニストの先輩たちに「被害者が悪いんじゃなくて、加害者が完全に悪いんだよ」と教えていただいて、私もフェミニズムについて勉強をしているうちに、これからも活動をしていくならいつまでも「自分が悪い」と思っていちゃだめだなと気づいたんです。それでTwitterでも度胸が据わったんです。

 「#KuToo」のきっかけとなったツイートに対しても、「男だって大変な思いをしている」「なぜわざわざ男の人の靴を比較対象に出すのか」とか言われたりしたので、私が「うるせえな」みたいな感じでリプライをしていたら、今度は「性格悪い奴が運動を始めた」「社会運動はそういう態度でやるものじゃない」みたいなことも言われましたね。でも、その態度は誰が決めるんだって話なんですよね。

 

「女性の足は大人になるとヒールを履ける形になる」というクソリプ

クソリプにも真っ向勝負
――新刊では、100ページにも渡って実際に石川さんが受けたクソリプを紹介していて、さらに石川さんがそのひとつひとつを分析したうえで解説やコメントを入れているのがとても面白かったです。アカウントごと引用している点が画期的だなと思いました。

石川:クソリプはスクリーンショットに撮って保存しているんですが、本に載せるにあたっては約50種類のクソリプを厳選しました。推敲の時点では、倍の100種類近くはありましたね(笑)。

 公表された著作物は、引用して利用することができるという著作権法第32条を担当編集さんに教えてもらいました。今回の書籍はクソリプを飛ばす人たちのメンタリティを研究するという正当な範囲内で引用しています。最初は相手のアカウント名まで載せるのはどうなんだろうって話にもなったんですけど、引用のルールに則ると出典を明示することが必須なのでアカウント名を入れました。書籍からの引用も、著者を明記しますよね。私としては「責任を持って書き込みしないとこうやって使われることもあるぞ」と示したい気持ちもあって、最終的にはアカウント名も載せました。URLも載せていて、きちんと法に則って引用しているので、もし変に絡まれたとしても問題はありません。

――これまで有名人・芸能人の方は、バッシングや誹謗中傷され放題なのに、一般人相手だとアカウント名までは明かしにくいし、遠慮してしまうという空気があったと思うんですけど、もしかしたら今後、石川さんのようにアカウントを引用して反論する人も出てくるんじゃないかと思いました。

石川:ぜひそうしてほしいと思います。クソリプを送ってくる人は気軽に発しているかも知れませんが、当たり前ですけど何でもかんでも言っていいわけではないんです。クソリプの先には受け取る人間がいるということを、きちんと分かってほしいなと思います。

――石川さんが特に印象に残っているクソリプはどれですか?

石川:「女性の足は大人になるとヒールを履ける形になる」とか主張していたクソリプには参りましたね。このトンデモツイートは「何言ってんのw」って感じで反響も大きかったので、ベスト・オブ・クソリプとして認定させていただきました。

 

「女性の足は大人になるとヒールを履ける形になる」と主張したベスト・オブ・クソリプ(『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』より、以下同)

石川さんの解説&コメント
 ほかにも、「女性にはペニスがないため突起物であるハイヒールを身に纏いたいという潜在的な願望がある」と主張する男根至上主義的なクソリプもインパクトが強かったです。突起物って……(笑)。

 あと、私は葬儀場で働いていたので「故人様をお見送りするときにはパンプスを履くのが当たり前です」みたいなのもいくつかありました。男性はパンプスなんて履いてないし、私は失礼とされることに性差があるのがおかしいって言っているのに、勘違いされちゃってるんだなって。

 今でも見返していてイヤだなと思うのは、「石川優実じゃなくてもっと誠実な人がこの運動していたらもっと署名が集まったのではないかと思います」というクソリプ。 ほかにも「こんな運動しなければあなたが脱いでいたことは知られずにいたのに、親がかわいそう」というのもムカつきました。この人はきっと、私や私の親が脱ぐことを恥じていると勝手に思っているようですけど、それはこちらが決めること。勝手に決めつけられるのは本当にイヤだなと思います。

――「#KuToo」に対して「女尊男卑が目的なのか」と言っているのに対して、石川さんが<女性が平等を訴えるとなぜか女性優遇を求めていると解釈する人はとても多い。それは男女平等でない現状を理解できていないからじゃないのかなぁ>とコメントされていたのも印象的でした。もしかしたら、このように誤解している方も多いのかなと思います。

 

「女尊男卑が目的だ」と主張するクソリプ

石川さんの解説&コメント
石川:そう思います。女性専用車両について文句を言う人も同じなのかなと思うんですけど、女性専用車両は実際に痴漢問題があるから必要とされているものですよね。一部の人は、それを単に女性が楽するためにあるものだと思っているようなんですが、なぜ女性専用車両ができたのかってことが全然見えてなくて、「フェミニスト=女尊男卑や女性優遇を求めている人たち」と誤解しているんだと思います。

 また、「ヒールを履きたい女性の邪魔をするな」ということを言われたこともありました。でも、私はヒールを履きたい人にはもちろん履いてほしいし、履くか履かないかを選べるようにしたい、ということをずっと言ってきたんですけどね。クソリプの多くは私の主張への誤解からくるものですが、話を聞かない、聞けない人もたくさんいるんだなと思います。

 

クソリプに返信し続ける理由
――それにしても、日々これほど膨大なクソリプに返信し続けるのは容易なことではないですよね。石川さんは、なぜクソリプに返信し続けるんですか?

石川:グラビアの仕事をやってきて、これまで2ちゃんねるやAmazonのレビューにクソリプと同じような人格攻撃や侮辱の言葉をたくさん書かれてきたからです。以前は「私がグラビアの仕事をしているからだ」「売れないから仕方ない」「私が悪いんだ」と思い、黙って見過ごしていました。グラビアをやっていたけれど、誹謗中傷に傷ついて辞めちゃった子も見てきました。

 ただ、芸能人だからといって何を言われても我慢しなきゃいけないとか、言い返すのはみっともないとか言われたりするのは絶対おかしいとずっと思っていたんです。Twitterって、2ちゃんねるやAmazonレビューとは違って、やり取りができるじゃないですか。それもあって、今はちゃんと言い返していこうと思っています。

――精神的に辛い時はありませんでしたか?

石川:誹謗中傷まがいの言葉はグラビアの頃から受けていたのでそんなに辛くはなかったんですけど、「#KuToo」の運動が大きくなるにつれて、私の勤務先の葬儀場を特定しようという動きもありました。勤務先に迷惑がかかるといけないので、そのお仕事は辞めたんですが、その時は本当に辛かったです。

 ただ、クソリプと闘っているといいこともあって。たとえば、やっぱり最初は穏やかに物事を解決しようとして下手に出ちゃうんですけと、その時点で自らの立場を下げているようなものなんだということに気がついて、それからは自分のためにもきちんとブチギレていこうと決めることができました。あとは、こうしてインタビューなどでスラスラと回答できるようになったのは、クソリプに言葉を返すために自分の気持ちや疑問を言語化するトレーニングが生きているのかも。

――クソリプとのやり取りのおかげで、言葉の引き出しが増えた?

石川:そうなんです。たとえば「グラビアをやっているくせに」とクソリプを飛ばされた時、相手は私がグラビアをやっていることについて何がおかしいと言いたいのか、そして自分はその言葉の何に怒っているのか、すぐには分からなかったんです。でも、クソリプについてじっくり考えると、この人は「グラビアを仕事にしている人は社会運動しちゃいけないと思っている=グラビアを仕事にしている人は女性差別にあっても仕方がないと思っている=グラビアを仕事にしている人を差別している」ということになるのか……と分かったんです。

――石川さんが返答を続けることで、誤解が解けたり相手の考え方が変わったりした例はありましたか?

石川:うーん、匿名のクソリプで絡んでくる人にはいないですね。きっと、わかろうって気持ちもないんだと思います。

 ただ、悪意なくクソリプを飛ばすようなタイプの男性の友人から、「ヒステリーな言い方はよくないよ」と言われた時に、私もすぐには言い返せなかったんですけど、ちゃんと考えたうえで「前にそういうこと言ってたけど、よくないよ」って怒ったんです。彼は自分の母親に対しても「ヒステリーだから話を聞かない」と言うこともあったそうなんですが、私が怒った理由を理解してからは、「これも女性差別だったんだね」と改めてくれました。ただし、これは大前提として、友人としての関係性をつくっていく気持ちが互いにあったからこそ成立したのかも知れません。

 私もリアルでは、たとえば会話の中で誰かが差別的な発言をして「んん?」って感じても、やっぱり咄嗟に怒ることはまだできません。あと、これは昔のクセなんですが、相手を立てるような話を提供してしまったりすることもあります。

――石川さんのクソリプ対応を見ていると、一見すると言葉や態度は悪いのかもしれませんが、じつはとても真摯で丁寧な行動だなあと思います。

石川:ありがとうございます(笑)。ただ、相手に対して真摯でいたいというよりは、ただ自分のために、モヤモヤを解き明かしているという感じです。丁寧に説明したところでクソリプしてくる人には伝わらないかもしれないんですけど、自分が納得できることが一番大事なんです。

怒ること、楽しいことは両立する
――今回の著書で石川さんが、「怒るのがめっちゃ楽しい」と仰っていたのもとても印象的でした。

石川:怒ることによって自分の感情を表現できるので、気持ちが安定するんですよね。ストレス解消にもなりますし、健康にも良いと思う(笑)。

 あとは、女性はステレオタイプな女性像、たとえばおしとやかであることを求められているので、喜怒哀楽のなかでもとくに怒るという感情を表出することは良しとされていないと感じていて、違和感があります。

――石川さんを見ていると、イヤな言葉を浴びせられたり、軽んじられたりしたときは、ちゃんと怒ったほうがいいし、怒ってもいいんだよなって思えます。

石川:怒っているロールモデルを見せたいという気持ちはありますね。Twitterで酷いこと言ってくる相手には、わざと強く出たり、言葉遣いを相手に合わせて私もあえて悪くしたりしている側面もあります。もちろん、怒っているだけでは終われないので、きちんと結果を出していきたいとも思っていますね。

――石川さんのその姿に勇気づけられる女性は多いと思います。自分の怒りという感情をないがしろにしていた女性も多いと思います。

石川:私もこれまでは、自分の怒りという感情をちゃんと見てこなかったんですけど、こうやって怒ってみると意外と冷静な自分もいて、楽しいと感じている。この感覚を言語化するのは難しいんですが、怒ることと楽しいことは両立するんじゃないかなと思っているんです。私自身、怒ることができるようになった今の方が幸せなんですよ。

 もちろん、怒りたくない人は怒らなくていいんです。ただ、我慢をしている人には、怒るという選択肢もあるし、怒りを表明するこちら側にきても楽しいよ、と伝えたいです。

 あと、怒っていたら女性はモテない、というのは幻想だと思っています(笑)。私は怒るようになってからの方が男性ともうまくいくようになりましたし、そもそも女性が怒っているだけでイヤだなんていうようなつまらない男性にはモテなくてもいいって思えるようになりましたから。

――私も、怒ってもいい時は、怒れるようになりたいです。

石川:一番大切なのは、自分のために行動するということなんです。「自分を大事にする」という言葉は昔から言われてきたし、上辺だけの言葉は知っていましたけど、私が本当の意味を理解したのは30歳を超えてからなんです。もしどこかモヤモヤした思いを感じている方がいるなら、ジェンダーやフェミニズムのことについて自分なりに調べてみると、もしかしたら解決していくかもしれません。

 「#KuToo」を発信したことでクソリプもたくさん頂戴しましたが、私がすごく心強いなと思っているのは、「#KuToo」の運動を説明する場に呼ばれて行くと、いつも年上のフェミニストの方々がアドバイスをくださったり、優しく応援してくださったりすることなんです。フェミニスト同士が世代を隔てずにつながって、上の世代のフェミニストの先輩たちからもっと学んでいけるようになったらいいなと思いますね。

 怒ることも、フェミニズムについて勉強することも、自分が心地よく生きていくためには何をしたらいいのかという視点で考えてもらえたら嬉しいです。自分を本当に大切にするってどういうことなんだろうと考え始めてから、私は変わりました。

(取材・構成=雪代すみれ)

居酒屋の無断キャンセル事件を弁護士解説! 「嫌がらせ目的」でなければ逮捕されない?

 昨今、「No show」と呼ばれ、社会問題化している「無断キャンセル」問題。これは、飲食店に予約をしたものの、連絡なしに来店せず、食材費などを無駄にしてしまうという、店側にとっては死活問題に発展しかねない恐るべき行為。経済産業省が昨年発表した資料によると、国内の無断キャンセル被害額は推計で年間2000億円にも上り、被害に遭った店が閉店に追い込まれるケースもあるそうだ。

 11月11日、そんな無断キャンセルによって、逮捕者が出たことが判明。6月下旬、東京・有楽町の居酒屋に、偽名を使って17人分の飲み放題付きコースを予約したものの、無断でキャンセルしたとして、50代の男が偽計業務妨害容疑で逮捕されたのだ。なお同じ予約日で、この居酒屋の系列店4店に入っていた8~20人分の団体予約も無断でキャンセルされており、予約者が全て同じ偽名を使っていたことも明らかになっている。

 この逮捕報道を受け、ネット上では、「これで無断キャンセルが減るといいな」といった声が広がっているが、一方で、容疑者の男が偽名を使っている点に着目し、「最初から偽名なのは『嫌がらせ目的』? だから逮捕されたのではないか」という疑問の声も飛び交うことに。というのも、無断キャンセルをする人の多くは、予約段階では来店の意志があり、当然実名で予約していたものの、当日、連絡なしにドタキャンする……というパターンがほとんどとみられるからだ。

 そこで、この疑問を解消するべく、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。

「嫌がらせ目的」でなければ、偽計業務妨害罪には該当しない?

 今回、50代の男が逮捕された、偽計業務妨害容疑とは、一体どのような罪なのだろうか。

「怒鳴ったり、暴力を振るったり、 有形的な力を用いたわけではなく、“情報や人の錯誤を利用する方法”で、他人の業務を妨害するのが『偽計業務妨害罪』です。これは3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。今回、利用するつもりがないとみられるのに、コースメニューなどの予約をしているわけなので、『虚偽の予約をするという方法で、用意した食材を無駄にさせた、その時間にほかの予約を入れることができない状態をつくった』という点において、偽計業務妨害となります」

 ということは、嫌がらせ目的ではなく、無断キャンセルをした場合は、「偽計業務妨害罪に該当しません。『他人の業務を妨害してやろう』という故意がないからです」と山岸氏は指摘する。

 たとえ当人に嫌がらせ目的がなかったとしても、無断キャンセル自体、飲食店にとって死活問題。店側は泣き寝入りするしかないとなると、何とも非情な話だが、民事訴訟を起こし、「債務不履行」で訴える道は考えられるという。

「たとえ『故意』はなくても、利用できないかもしれないのに、うっかり予約をしてしまい、そして実際に行けなかった場合には、その人に『過失』があるかもしれません。この場合、『居酒屋のコースメニューなどの提供を受ける予約という契約』を、『過失』によって履行しなかったことになり、これを『債務不履行』と言います。店側は、債務不履行として、無断キャンセルをした人物に対し、民事上の責任(損害賠償責任)を追及することができるのです」

 無断キャンセルをどう減らしていくかは、店側にとっても大きな課題だ。被害に遭わないために、どのような対策を行うべきなのだろうか。

「予約者の連絡先の把握、また、虚偽の連絡先ではないか確認することではないでしょうか。予約者の電話番号等に折り返し連絡を行い、無断キャンセルが発生した場合の『店側の対応やポリシー』をしっかり伝えるといいと思います。ウェブサイトに明記するのもいいですね。こうすることにより、 お客さんにプレッシャーを与えることができるでしょう」

 一方で、「ドタキャンしなければいけない」状況に陥ってしまった客側が、のちのち飲食店とトラブらないために、「連絡をする」ことは当然として、ほかに注意すべき点はあるのだろうか。山岸氏は、「それは、法的に『どのようにすべきか』という話ではなく、客側の“心”が問われる話」と語る。

「人数が多くなればなるほど、 合理的に考えて、ドタキャンは発生しにくいのでは。したがって、少人数の場合に限りますが、キャンセルの連絡時、まずは『日程の変更』が可能かを確認するなど、そのお店を利用する意思が継続してあることを伝えるべきでしょう。また、事前にお店を利用する『目的』を伝えておけば、キャンセルする際、『こういう理由で、その目的がなされなくなってしまった』と説明でき、店側の理解を得ることもできるかもしれません」

 頻発している無断キャンセル問題が、世の中から減っていくことを願わずにいられない。